(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】氷菓モールド冷却装置
(51)【国際特許分類】
A23G 9/26 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
A23G9/26
(21)【出願番号】P 2022075708
(22)【出願日】2022-05-02
【審査請求日】2022-05-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500324130
【氏名又は名称】サイトー機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】池上 司
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-146223(JP,A)
【文献】特開2011-067198(JP,A)
【文献】特開2021-073875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温のブラインを貯留するブライン槽と、
前記ブライン槽を囲うように設置され前記ブライン槽から溢れたブラインを回収するブライン回収槽と、
氷菓のモールドが複数固定したモールドユニットの両端を保持して前記モールドを前記ブライン槽に浸漬しながら長辺方向に搬送する搬送部と、
前記ブライン槽にブラインを供給するブライン供給管と、
前記ブライン供給管と接続するとともに前記ブライン槽の両長辺の下部に設置された槽内供給管と、
両側の前記槽内供給管の間に架け渡すように複数接続したブライン吐出管と、
前記ブライン吐出管の側面に複数設けられ前記ブライン供給管から供給されるブラインを前記ブライン槽内に吐出する吐出口と、
前記吐出口の吐出方向に設置され吐出されたブラインを上方に向ける誘導板と、を有する氷菓モールド冷却装置において、
前記ブライン槽の両長辺下部に外方向に突出した供給管収容部を設けるとともに、前記供給管収容部に前記槽内供給管が設置され、全てのモールドの下方に前記ブライン吐出管が位置
し、
さらに、前記ブライン回収槽の下部が前記供給管収容部の突出に対応して外側に張り出し、断面視で略クランク形状を呈しながら、前記ブライン回収槽の容量を維持することを特徴とする氷菓モールド冷却装置。
【請求項2】
ブライン供給管が供給管収容部の側方からブライン槽内に引き込まれ、槽内供給管と接続することを特徴とする請求項1記載の氷菓モールド冷却装置。
【請求項3】
誘導板が上方に略直角に屈曲し、吐出口から吐出したブラインを直上側に誘導することを特徴とする請求項1記載の氷菓モールド冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷菓材料が注入されたモールドを冷却してアイスキャンディーなどの氷菓を製造する氷菓モールド冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アイスキャンディーなどの氷菓の製造装置として、所謂バイターラインと称される氷菓モールド冷却装置が一般的に普及している。このバイターラインと称される氷菓モールド冷却装置は、氷菓の型となるモールドMが横方向に複数固定した例えば
図1に示すモールドユニット3a、3bをブライン槽内に貯留した低温のブライン中に浸漬し、順次移動させながら氷菓材料の充填やスティックの挿入などを行い、連続的に氷菓を製造する装置である。尚、氷菓モールド冷却装置に用いる代表的なモールドユニット3a、3bは、
図1(a)、(b)の正面図及び
図1(c)の上面図に示すように、一列に配列した複数の開口6を備え両端部に後述の搬送チェーン42への固定部7を備えたモールドプレート5と、この開口6と上端縁が固定し氷菓の型となるモールドMとで主に構成されている。尚、このうち
図1(b)に示すモールドユニット3bは、モールドMの下部を連結する棒状もしくは板状の補強部材4を有する。
【0003】
そして、このような氷菓モールド冷却装置に関し、本願発明者らは下記[特許文献1]に記載の発明を行った。ここで、
図5は[特許文献1]に示す従来の氷菓モールド冷却装置10のブライン槽部分を示す上面図である。また、
図6は従来の氷菓モールド冷却装置10の
図5中のXa-Xa線での短辺方向の部分略断面図であり、また
図7は
図5中のYa-Ya線での長辺方向の部分略断面図である。
【0004】
これらの
図5~
図7に示す従来の氷菓モールド冷却装置10は、低温のブラインを貯留するブライン槽20’と、このブライン槽20’から溢れたブラインを回収するブライン回収槽30’と、モールドユニット3a、3bの両端を保持してモールドMをブライン槽20’に浸漬しながら長辺方向に搬送する搬送部と、ブライン槽20’にブラインを供給するブライン供給管25a’と、このブライン供給管25a’と接続しブライン槽20’の両長辺の下部に設置された槽内供給管25b’と、この槽内供給管25b’の間に架け渡すように複数接続したブライン吐出管50’と、このブライン吐出管50’の側面に複数設けられブラインを吐出する吐出口26と、この吐出口26から吐出されたブラインを上方のモールドM側に向ける略逆ハの字形状の誘導板27’と、を有している。
【0005】
次に、従来の氷菓モールド冷却装置10を用い、表層と内部とで味(氷菓材料)の異なる氷菓を製造する手順を
図8を用いて簡単に説明する。尚、
図2~
図9においては、ブライン槽20、20’におけるモールドユニット3a、3bと搬送チェーン42の図示を部分的に省略する。また、ここでの上手側及び前側とはモールドユニット3a、3bの進行方向に対して上手側(上流側)を意味し、下手側、後側とはモールドユニット3a、3bの進行方向における下手側(下流側)を意味する。
【0006】
先ず、表層と内部とで氷菓材料の異なる氷菓を製造する場合、氷菓モールド冷却装置10の上手側には製造設備として、第1の氷菓材料を充填する第1の充填装置12aと、モールドM内の未凍結の氷菓材料を吸引除去する吸引装置13と、第2の氷菓材料を充填する第2の充填装置12bと、氷菓の持ち手となるスティックをモールドM内に挿入するスティックインタサータ14と、が少なくとも配置される。また、ブライン槽20の下手側には回収設備として、ブライン槽20から引き上げられたモールドMを温めて氷菓の外側を一部融解するデフロスト装置16と、スティックを挟持してモールドM内から氷菓を引き抜く抜取り装置17と、が少なくとも配置される。
【0007】
また、氷菓モールド冷却装置10のブライン槽20’には図示しないブライン冷却装置で所定の温度に冷却されたブラインがブライン供給管25a’、槽内供給管25b’、ブライン吐出管50’を介して供給される。また、ブライン槽20’の前後には搬送部としての駆動ギア44が設けられ、この駆動ギア44間にはブライン槽20’の両長辺に沿うように搬送チェーン42が架け渡される。そして、これら左右に位置する両搬送チェーン42の間にモールドユニット3a、3bを架け渡すようにして固定する。そして、駆動ギア44が回転すると搬送チェーン42が移動し、これに伴ってモールドユニット3a、3bがブライン槽20’の上手側から下手側に向けて移動する。
【0008】
そして、モールドユニット3a、3bが第1の充填装置12aの動作位置に達すると、第1の充填装置12aは各モールドM内に氷菓の表層側となる第1の氷菓材料を所定量注入する。注入された第1の氷菓材料はブライン槽20’内のブラインによって冷却され、モールドMと接触している外側から徐々に凍結する。そして、モールドM内の第1の氷菓材料の凍結層の厚みが概ね目標の厚みとなるところで、モールドユニット3a、3bは吸引装置13の動作位置に達する。モールドユニット3a、3bが吸引装置13の動作位置に達すると、吸引装置13はノズルを各モールドM内に挿し入れて内側の未凍結の第1の氷菓材料を吸引除去する。次に、モールドユニット3a、3bは第2の充填装置12bの動作位置に移動する。そして、第2の充填装置12bは第1の氷菓材料の凍結層の内側に(氷菓の内部を構成する)第2の氷菓材料を所定量注入する。この第2の氷菓材料はモールドユニット3a、3bがブライン槽20’内を進行する間に冷却され徐々に凍結する。そして、第2の氷菓材料が所定の半凍結状態となるところで、モールドユニット3a、3bはスティックインタサータ14の動作位置に達する。モールドユニット3a、3bがスティックインタサータ14の動作位置に達すると、スティックインタサータ14は半凍結状態の第2の氷菓材料に氷菓の持ち手となるスティックを挿し入れる。そして、モールドユニット3a、3bは残りのブライン槽20’内を進んで第2の氷菓材料は完全に凍結する。
【0009】
そして、モールドM内の氷菓材料が完全に凍結し、モールドユニット3a、3bがブライン槽20’の終端部近傍に到達すると、搬送チェーン42は徐々に上昇し、これによりモールドユニット3a、3bはブライン槽20から引き上げられる。そして、デフロスト装置16によってモールドMが温められ、氷菓とモールドMとの接触部分が融解する。次に、抜取り装置17が氷菓材料中に挿入したスティックを挟持して氷菓ごとモールドMから引抜く。これにより氷菓が完成する。尚、氷菓が引き抜かれたモールドユニット3a、3bは後側の駆動ギア44で反転した後、モールド洗浄部18によって洗浄され、前側の駆動ギア44で再反転した後、再度氷菓の製造に給される。
【0010】
このように、ブライン槽20’の上手側には複数の製造設備が設置される。そして特に多くの層構成を有する複雑な氷菓を製造する場合には、製造設備の設置台数も多くなり製造設備の設置領域がブライン槽20’の多くの範囲を占めることとなる。このような場合、下手側の凍結領域が短くなり、通常の搬送速度ではブライン槽20’の終端でも氷菓材料の凍結が間に合わず製品が完全に凍結しない虞がある。このため、モールドユニット3a、3bの搬送速度を全体的に遅らせる必要があり、生産性が悪化するという問題点がある。
【0011】
この問題点に対し、本願発明者らは下記[特許文献2]に記載の発明を行った。この[特許文献2]に記載の氷菓モールド冷却装置10Aは、
図9(a)~(c)に示すように、下手側のブラインの吐出部分を、壁面に吐出口82を有するブライン吐出壁80で構成し、このブライン吐出壁80の間にモールドMを通過させる。これにより、モールドMはブライン吐出壁80の間を通過する際に左右のブライン吐出壁80から低温のブラインが至近距離で噴き付けられ急速に冷却される。
【0012】
このように、[特許文献2]に記載の氷菓モールド冷却装置10Aは、ブライン吐出壁80による急速冷却が可能なため、短い距離でも短時間で氷菓材料を完全に凍結することができる。これにより、上手側における製造設備の設置台数や設置領域が増えた場合でも、モールドユニットの搬送速度を遅らせることなく、氷菓の製造が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第5226134号公報
【文献】特許第6718187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、[特許文献2]に記載の氷菓モールド冷却装置10Aでは、モールドMの間に十分な間隙Aが存在する
図1(a)に示すモールドユニット3aのみが使用可能であり、十分な間隙Aが存在しないモールドユニットや、モールドMの下部を補強部材4で連結した
図1(b)に示すモールドユニット3bはブライン吐出壁80の間を通ることが出来ず使用できないという問題点がある。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、冷却効率が高く、またモールドユニットの構造を問わない氷菓モールド冷却装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
(1)低温のブラインを貯留するブライン槽20と、前記ブライン槽20を囲うように設置され前記ブライン槽20から溢れたブラインを回収するブライン回収槽30と、氷菓のモールドMが複数固定したモールドユニット3a、3bの両端を保持して前記モールドMを前記ブライン槽20に浸漬しながら長辺方向に搬送する搬送部と、前記ブライン槽20にブラインを供給するブライン供給管25aと、前記ブライン供給管25aと接続するとともに前記ブライン槽20の両長辺の下部に設置された槽内供給管25bと、両側の前記槽内供給管25bの間に架け渡すように複数接続したブライン吐出管50と、前記ブライン吐出管50の側面に複数設けられ前記ブライン供給管25aから供給されるブラインを前記ブライン槽20内に吐出する吐出口26と、前記吐出口26の吐出方向に設置され吐出されたブラインを上方に向ける誘導板27と、を有する氷菓モールド冷却装置において、
前記ブライン槽20の両長辺下部に外方向に突出した供給管収容部22を設けるとともに、前記供給管収容部22に前記槽内供給管25bが設置され、全てのモールドMの下方に前記ブライン吐出管50が位置し、
さらに、前記ブライン回収槽30の下部が前記供給管収容部22の突出に対応して外側に張り出し、断面視で略クランク形状を呈しながら、前記ブライン回収槽30の容量を維持することを特徴とする氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)ブライン供給管25aが供給管収容部22の側方からブライン槽20内に引き込まれ、槽内供給管25bと接続することを特徴とする上記(1)記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)誘導板27が上方に略直角に屈曲し、吐出口26から吐出したブラインを直上側に誘導することを特徴とする上記(1)記載の氷菓モールド冷却装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る氷菓モールド冷却装置は、ブライン槽の両長辺の下部に供給管収容部を設け、この供給管収容部に槽内供給管を設置する。これにより、モールドユニットの全てのモールドの下方にブライン吐出管を位置させることができる。また、エア抜孔の高さを考慮することなく、ブライン吐出管をモールドに近づけることができる。さらに、本発明に係る氷菓モールド冷却装置の誘導板は上方に略直角に屈曲しており、吐出口から噴出した低温のブラインを直上に噴射する。これにより、本発明に係る氷菓モールド冷却装置は、モールドユニットの構造を問わず従来よりも極めて高い冷却能力を有し、上手側における製造設備の設置台数や設置領域が増えた場合でも、モールドユニットの搬送速度を遅らせることなく、氷菓の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】氷菓モールド冷却装置に用いるモールドユニットを示す図である。
【
図2】本発明に係る氷菓モールド冷却装置のブライン槽部分を示す上面図である。
【
図3】本発明に係る氷菓モールド冷却装置の短辺方向の部分略断面図である。
【
図4】本発明に係る氷菓モールド冷却装置の長辺方向の部分略断面図である。
【
図5】従来の氷菓モールド冷却装置のブライン槽部分を示す上面図である。
【
図6】従来の氷菓モールド冷却装置の短辺方向の部分略断面図である。
【
図7】従来の氷菓モールド冷却装置の長辺方向の部分略断面図である。
【
図8】氷菓モールド冷却装置の動作を説明する図である。
【
図9】[特許文献2]に記載の氷菓モールド冷却装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る氷菓モールド冷却装置100の実施の形態について図面に基づいて説明する。尚、従来の装置と同様の構成に関しては同符号にて表す。ここで、
図2は、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100のブライン槽部分を示す上面図である。また、
図3は本発明に係る氷菓モールド冷却装置100の
図2中のXb-Xb線での短辺方向の部分略断面図であり、また
図4は
図2中のYb-Yb線での長辺方向の部分略断面図である。
【0020】
先ず、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、従来の氷菓モールド冷却装置10と同様、長尺で低温のブラインを貯留するブライン槽20と、このブライン槽20から溢れたブラインを回収するブライン回収槽30と、モールドユニット3a、3bの両端を保持してモールドMをブライン槽20に浸漬しながら長辺方向に搬送する搬送部と、ブライン槽20にブラインを供給するブライン供給管25aと、このブライン供給管25aと接続するとともにブライン槽20の両長辺の下部に設置された槽内供給管25bと、左右両側の槽内供給管25bの間に架け渡すように複数接続したブライン吐出管50と、このブライン吐出管50の側面に複数設けられブライン供給管25aから供給されるブラインをブライン槽20内に吐出する吐出口26と、この吐出口26の吐出方向に設置され吐出されたブラインを上方のモールドM側に向ける誘導板27と、を有している。
【0021】
また、氷菓モールド冷却装置100の搬送部は、従来の氷菓モールド冷却装置10と同様にモールドユニット3a、3bを保持してブライン槽20に浸漬しながら搬送するものであり、ブライン槽20の長辺の両側に配設された搬送チェーン42と、ブライン槽20の前後に設けられこの搬送チェーン42を回転させる駆動ギア44と、この駆動ギア44を回転させる図示しないモータ等の回転手段と、を有している。そして、モールドユニット3a、3bは両端の固定部7を介して左右の搬送チェーン42の間に架け渡すように固定される。また、駆動ギア44が回転動作すると搬送チェーン42は前後の駆動ギア44の間を移動する。また、搬送チェーン42はブライン槽20の前端部及び後端部に設けられた図示しないテンションローラもしくはガイド等によって、前端部では下降し、後端部では上昇する。これにより、搬送チェーン42によって保持されたモールドユニット3a、3bは、ブライン槽20の前端部で下降してモールドMがブラインに浸漬し、そのままブライン槽20内を移動して、後端部でブライン槽20から引き上げられる。そして、氷菓モールド冷却装置100に設置された各製造設備、回収設備の動作位置に順次移動する。
【0022】
次に、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100の特徴的な構成を、従来の氷菓モールド冷却装置10と比較しながら説明を行う。先ず、氷菓モールド冷却装置100のブライン槽20は、長さが約十数メートルの長尺の槽であり、
図3の略断面図に示すように、ブライン槽20の両長辺の下部に外方向に突出した供給管収容部22を有している。そして、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100では、従来の氷菓モールド冷却装置10においてブライン槽20’の両長辺の下部に設置されていた槽内供給管25bを、この供給管収容部22に設置する。また、本発明のブライン吐出管50は、この供給管収容部22に収容された左右両側の槽内供給管25bの間に架け渡すように接続する。このため、本発明のブライン吐出管50は従来の氷菓モールド冷却装置10のブライン吐出管50’よりも長く、ブライン槽20の上面開口部の幅と略同等の長さとなる。
【0023】
ここで、従来の氷菓モールド冷却装置10は供給管収容部22が存在せず、槽内供給管25b’は
図5、
図6に示すように単純にブライン槽20’の両長辺の下部に設置されていた。このため、モールドユニット3a、3bの外側のモールドM(
図5、
図6中では左右両端から3つ目までのモールドM)は、吐出口26の無い槽内供給管25b’の上方を移動することとなり、内側のモールドMとの間で冷却速度に差が生じ、特に短時間で冷却を行う場合等では氷菓材料の凍結状態にバラつきが生じる可能性があった。
【0024】
しかしながら、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、前述のように槽内供給管25bが供給管収容部22に設置されるため、槽内供給管25bはモールドユニット3a、3bの移動経路上から外れ、モールドユニット3a、3bの移動範囲には位置しない。また、ブライン吐出管50がブライン槽20の上面開口部の幅と略同等の長さとなり、
図2、
図3に示すように、モールドユニット3a、3bの全てのモールドMの下方にブライン吐出管50が位置することとなる。これにより、モールドMには同一の条件で低温のブラインが噴き付けられ、場所による凍結状態のバラつきを防止することができる。
【0025】
また、氷菓モールド冷却装置では、冷却能力の調整のため一部の吐出口26を閉塞する場合がある。このとき、従来の氷菓モールド冷却装置10では両脇の槽内供給管25b’部分に吐出口26が無く、これら両脇部分では吐出口26の閉塞による流量調節が出来なかった。しかしながら、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100では、モールドユニット3a、3bの移動領域の下方の全てに吐出口26が存在するため、吐出口26の閉塞による流量調整を中央部とサイド部とで同等の条件で行うことができる。これにより、吐出口26の閉塞による流量調節においても場所による凍結状態のバラつきを防止することができる。
【0026】
また、槽内供給管25b、25b’の上面にはブライン中に巻き込まれたエアを外部に放出するエア抜孔28が複数設けられている。前述のように、従来の氷菓モールド冷却装置10では槽内供給管25b’の上方をモールドMが通過するため、このエア抜孔28から放出されるエアも凍結状態のバラつきに影響を与える可能性が有った。しかしながら、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、槽内供給管25bが供給管収容部22に収容されているため、エア抜孔28から放出されるエアは供給管収容部22の天井からブライン槽20の縁を通って外部に排出される。このため、放出されたエアがモールドMの冷却に悪影響を及ぼすことがない。尚、供給管収容部22の天井面はエア抜孔28から排出されたエアが停留せずに速やかにブライン槽20側に流れるよう、内側(ブライン槽20の本体側)が高い傾斜面とすることが好ましい。
【0027】
また、通常、エア抜孔28は槽内供給管25b、25b’から若干突出しているため、従来の氷菓モールド冷却装置10では上を通過するモールドMがエア抜孔28と接触しないよう十分なクリアランスを設ける必要があった。このため、ブライン吐出管50をモールドMに近づけるためには配管を屈曲させるなどの設計変更が必要となり安易に行えるものではなかった。
【0028】
しかしながら、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100では、エア抜孔28が供給管収容部22にあるため、エア抜孔28の高さを考慮する必要が無い。このため、単純にブライン吐出管50の位置を上げることでブライン吐出管50をモールドMに近づけることができる。これにより、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、低温のブラインを従来の氷菓モールド冷却装置10よりも近い位置でモールドMに噴き付けることが可能となり、従来よりも高い冷却能力を得ることができる。
【0029】
さらに、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100では、従来、ブライン槽20’の底面から引き入れていたブライン供給管25a’を供給管収容部22の側方から引き込み槽内供給管25bに接続する。これにより、ブライン槽20の底上げが可能となり、ブライン槽20の容積を減らすことができる。これにより、供給管収容部22の形成によるブライン槽20の容量の増加分を相殺し、さらには低減することが可能となる。そして、使用するブラインの量を減らすことで、ブラインの冷却コストを低減することができる。
【0030】
また、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100のブライン回収槽30は、下部が供給管収容部22の突出に対応して外側に張り出し、断面視で略クランク形状を呈する。これにより、ブライン回収槽30の容量を適正な値に維持することができる。
【0031】
さらに、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100の誘導板27は、略逆ハの字形状であった従来の氷菓モールド冷却装置10の誘導板27’とは異なり、
図4に示すように、上方に略直角に屈曲している。これにより、吐出口26から噴出した低温のブラインは誘導板27によって直上に向かって噴射され、より近距離でモールドMに噴き付けることができる。これにより、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、前述のブライン吐出管50の近接配置と、この略直角の誘導板27とにより、従来よりも極めて高い冷却能力を得ることができる。
【0032】
次に、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100の動作を説明する。先ず、従来の装置と同様に目的とする氷菓を製造するための製造設備、回収設備を設置する。また、製造する氷菓と対応したモールドユニット3a、3bを氷菓モールド冷却装置100の左右の搬送チェーン42に架け渡すようにして固定する。尚、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は補強部材4の有無に関わらず、いずれのモールドユニット3a、3bも使用可能である。また、ブライン槽20にはブライン冷却装置で-30℃~-36℃程度の所定の温度に冷却されたブライン(一般的には塩化カルシウム溶液が用いられる)がブライン供給管25a、槽内供給管25b、ブライン吐出管50、吐出口26を介して供給され、規定の水位もしくは満水状態に維持される。尚、通常、槽内供給管25bは上手側と下手側とで分かれて設けられ、ブライン供給管25aはブライン槽20の略中央部分から引き入れられて上手側と下手側の槽内供給管25bにそれぞれ個別に接続するのが一般的である。
【0033】
次に、氷菓モールド冷却装置100の搬送部を動作させる。これにより、駆動ギア44が回転し、搬送チェーン42が前後の駆動ギア44の間を移動する。この搬送チェーン42の移動に伴ってモールドユニット3a、3bも移動する。そして、モールドユニット3a、3bのモールドMがブライン槽20内に貯留した低温のブラインに浸漬する。このとき、ブライン槽20から溢れた余剰なブラインは、ブライン槽20の外周に設置されたブライン回収槽30に落水し、ブライン回収タンク及びブライン返送管を介してブライン冷却装置に返送される。そして、返送されたブラインはブライン冷却装置にて再度所定の温度に冷却された後、ブライン供給管25a、槽内供給管25b等を介してブライン槽20に供給される。
【0034】
また、モールドユニット3a、3bが各製造設備の動作位置に達すると、氷菓材料の注入や吸引、スティックの挿入等が行われる。これらの動作はモールドMがブライン槽20に浸漬した状態のまま行われるため、モールドM内に注入された氷菓材料は、ブライン槽20内の低温のブラインにより冷却され凍結する。このとき、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、ブライン吐出管50がモールドユニット3a、3bの全てのモールドMの下方に近接して配置されており、且つ誘導板27がブライン吐出管50から噴出した低温のブラインを直上に向けてより近距離でモールドMに噴き付けるため、従来の氷菓モールド冷却装置10よりも冷却効率が高く、短時間での冷却と氷菓材料の凍結とを行うことができる。尚、各製造設備が設置されているブライン槽20の上手側では比較的緩やかな冷却が要求される場合がある。この場合、上手側のブライン供給管25aの流量を下げることにより、上手側の冷却能力を調整することができる。また、一部の吐出口26を塞ぎ、動作する吐出口26の数を調節することで上手側の冷却能力を調整することができる。
【0035】
各製造設備による動作が完了すると、次にモールドユニット3a、3bは下手側に移動し、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100による高い冷却能力で急速に冷却されモールドM内の氷菓材料は凍結する。氷菓材料が凍結したモールドユニット3a、3bはブライン槽20の終端部で引き上げられ、デフロスト装置16によってモールドMと氷菓との接触部分が融解される。そして、抜取り装置17によってスティックが挟持されモールドMから引抜かれることで氷菓として完成する。完成した氷菓は次工程に送られ包装等の然るべき処理が行われる。また、氷菓が抜き取られたモールドユニット3a、3bはモールド洗浄部18によって洗浄された後、再度氷菓の製造に給される。
【0036】
以上のように、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、ブライン槽20の両長辺の下部に供給管収容部22を設け、この供給管収容部22に槽内供給管25bを設置する。そして、ブライン吐出管50をブライン槽20の上面開口部の幅と略同等の長さに延ばし、モールドユニット3a、3bの全てのモールドMの下方にブライン吐出管50を位置させる。これにより、モールドユニット3a、3bの場所による凍結状態のバラつきを防止することができる。また、吐出口26の閉塞による流量調整をモールドユニット3a、3bの中央部とサイド部とで同等の条件で行うことができる。
【0037】
また、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、槽内供給管25bが供給管収容部22にあるため、エア抜孔28の高さを考慮する必要が無く、単純にブライン吐出管50の位置を上げることでブライン吐出管50をモールドMに近づけることができる。これにより、低温のブラインを近い位置でモールドMに噴き付けることが可能となり、従来よりも高い冷却能力を得ることができる。
【0038】
さらに、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、ブライン供給管25aを供給管収容部22の側方から引き込み槽内供給管25bに接続する。これにより、ブライン槽20の底上げが可能となり、ブライン槽20の容積を減らすことができる。これにより、ブラインの冷却コストを低減することができる。
【0039】
またさらに、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100の誘導板27は上方に略直角に屈曲しており、吐出口26から噴出した低温のブラインを直上に噴射する。これにより、低温のブラインを従来よりも近距離でモールドMに噴き付けることができる。そして、本発明に係る氷菓モールド冷却装置100は、前述のブライン吐出管50の長尺化と近接配置、及びこの略直角の誘導板27とにより、モールドユニットの構造を問わず、従来よりも極めて高い冷却能力を得ることができる。これにより、モールドMへの冷却効率が向上し、上手側における製造設備の設置台数や設置領域が増えた場合でも、モールドユニットの搬送速度を遅らせることなく、氷菓の製造が可能となる。
【0040】
尚、本例で示した氷菓モールド冷却装置100、ブライン槽20、ブライン回収槽30、ブライン吐出管50、その他の各部の構成、形状、数、動作機構、配管経路、デザイン等は一例であり、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
3a、3b モールドユニット
20 ブライン槽
22 供給管収容部
25a ブライン供給管
25b 槽内供給管
26 吐出口
27 誘導板
30 ブライン回収槽
50 ブライン吐出管
100 氷菓モールド冷却装置
M モールド
【要約】
【課題】冷却効率が高く、またモールドユニットの構造を問わない氷菓モールド冷却装置を提供する。
【解決手段】この氷菓モールド冷却装置は、ブライン槽の両長辺の下部に供給管収容部を設け、この供給管収容部に槽内供給管を設置する。これにより、モールドユニットの全てのモールドの下方にブライン吐出管を位置させることができる。また、エア抜孔の高さを考慮することなく、ブライン吐出管をモールドに近づけることができる。さらに、この氷菓モールド冷却装置の誘導板は上方に略直角に屈曲しており、吐出口から噴出した低温のブラインを直上に噴射する。これにより、この氷菓モールド冷却装置は、モールドユニットの構造を問わず従来よりも極めて高い冷却能力を有し、上手側における製造設備の設置台数や設置領域が増えた場合でも、モールドユニットの搬送速度を遅らせることなく、氷菓の製造が可能となる。
【選択図】
図3