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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】建設機械における給脂配管配設構造
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
E02F9/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019042209
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020143539
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】宮田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】巽 耕太
(72)【発明者】
【氏名】古賀 弘和
(72)【発明者】
【氏名】天谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】西本 和史
(72)【発明者】
【氏名】越間 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏弥
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-53653(JP,U)
【文献】特開平8-158402(JP,A)
【文献】特開平5-202534(JP,A)
【文献】実開平5-14250(JP,U)
【文献】特開2006-132224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/28-3/43
3/84-3/85
9/00-9/28
F15B 11/00-11/22
21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの先端部に第一ピン軸を介して揺動自在に軸支される作業アタッチメントと、基端部がアームに支持され作業アタッチメントを揺動させるべく伸縮作動する伸縮シリンダと、一端部が作業アタッチメントに第二ピン軸を介して揺動自在に軸支され、他端部が伸縮シリンダの先端部に第三ピン軸を介して揺動自在に軸支されるパワーリンクと、一端部がパワーリンク他端部と伸縮シリンダ先端部とを軸支する前記第三ピン軸に揺動自在に軸支され、他端部がアームの左右側面部に第四ピン軸を介して揺動自在に軸支される左右一対のアイドラリンクとを備えてなる建設機械において、前記アイドラリンクに給脂配管を配設するにあたり、該アイドラリンクは、両端側に第三、第四ピン軸用のピン孔が形成された平板状のリンク本体部を有するとともに、該リンク本体部のリンク幅を反作業アタッチメント方向に延設させてリンク本体部から反作業アタッチメント方向に突出する突出部を形成し、該突出部の左右外側面の左右内方に、リンク長方向に伸び、反作業アタッチメント側あるいは左右内方側の少なくとも何れか一方側が開口した給脂配管配設スペースを設け、該給脂配管配設スペースに、突出部の突出先端面よりも反作業アタッチメント方向に突出することなく且つリンク本体部の左右内側リンク面よりも左右内方に突出しない状態で給脂配管を配設する構成にしたことを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造。
【請求項2】
請求項1において、給脂配管配設スペースは、突出部の突出先端面からリンク本体部の左右内側リンク面に向けて斜めに切欠かれた形状のものであり、反作業アタッチメント側および左右内方側が開口していることを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造。
【請求項3】
請求項1において、給脂配管配設スペースは、突出部の突出先端面からリンク本体部の左右内側リンク面に向けてL字形状に切欠かれた形状のものであり、反作業アタッチメント側および左右内方側が開口していることを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造。
【請求項4】
請求項1において、給脂配管配設スペースは、突出部の突出先端面に凹設され、反作業アタッチメント側が開口した凹溝形状のものであることを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造。
【請求項5】
請求項1において、給脂配管配設スペースは、突出部の左右内側面に凹設され、左右内方側が開口した凹溝形状のものであることを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項において、給脂配管配設スペースのリンク長方向両端部に、給脂配管を固定するための配管固定部を設けたことを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項において、アイドラリンクの給脂配管配設スペースに配設された給脂配管は、パワーリンクのアーム対向側リンク面に配置された分配弁に接続され、該分配弁からパワーリンクの一端部および他端部に給脂される構成であることを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械における給脂配管配設構造の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば油圧ショベル等の建設機械になかには、機体本体に装着されるフロント作業部に、アームと、該アームの先端部に揺動自在に軸支されるバケットと、基端部がアームに支持されてバケットを揺動させるべく伸縮作動するバケットシリンダとを備えるとともに、これらアームとバケットとバケットシリンダの先端部とを、一端部がバケットに揺動自在に軸支され、他端部がバケットシリンダ先端部に揺動自在に軸支されるパワーリンクと、一端部がパワーリンク他端部とバケットシリンダ先端部との軸支部に揺動自在に軸支され、他端部がアームに揺動自在に軸支されるアイドラリンクとからなるリンク機構を用いて連結するように構成したものがある。
ところで、前記油圧ショベルのフロント作業部のように複数の部材同士が揺動自在に軸支されているものでは、これら軸支部に定期的な給脂が必要となる。しかしながら、建設機械の車両サイズが大型であって地上から軸支部へのアクセスが困難であったり、各軸支部間の距離が離れていたり、軸支部が多数あるような場合には、各軸支部への給脂作業は煩雑であって手間がかかる作業となる。そこで、車両のアクセスしやすい箇所に給脂用ニップルを集中させて配置し、該集中配置した給脂用ニップルから各軸支部まで給脂配管を配設して給脂するようにした集中給脂システムや、車両に給脂用ポンプを搭載するとともに適宜箇所に分配弁を設け、所定のタイミングでポンプを稼働させて分配弁から各軸支部まで給脂配管を経由して給脂するようにした自動給脂システムが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような集中給脂システムや自動給脂システムを、前述した油圧ショベルのフロント作業部に採用する場合、前記パワーリンクの一端部および他端部を軸支する各軸支部に給脂するには、アーム側面を這わせた給脂配管をアイドラリンクを経由してパワーリンクにまで至るように配設する必要がある。しかしながら、バケット近傍に設けられるアイドラリンクは掘削時等に土砂を被ることもあって、アイドラリンクに配設された給脂配管は破損しやすいという問題がある。そこで、前記特許文献1のものでは、アイドラリンクの内部に中空状のグリース通路を形成し、該アイドラリンク内部のグリース通路を経由してパワーリンクの軸支部に給脂するように構成されている。また、特許文献1には、他例として、アイドラリンクのリンク側面部に凹溝状のグリース溝を形成するとともに、該凹溝を覆蓋する薄板状の蓋体をリンク側面部に溶着する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-53653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のように、アイドラリンクの内部に中空状のグリース通路を形成する構成にすると、アイドラリンクの構造が複雑となって製造コストが過大になるという問題がある。また、特許文献1の他例のように、アイドラリンクのリンク側面部に凹溝を形成するとともに該凹溝を薄板状の蓋体で覆蓋する構成にしたものでは、蓋体の溶接にコストがかかるとともに、土砂等との衝突により薄板状の蓋体自体や蓋体とリンク側面部との溶着部が破損してしまうリスクが高いと懸念される。しかるに、蓋体自体や蓋体溶着部が破損してしまうと、都度の修理が必要であるうえ、溶着部の破損に伴いアイドラリンクに亀裂などが発生してしまう惧れがあって、アイドラリング自体の強度に影響が出てしまうことも危惧しなければならないという問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、アームの先端部に第一ピン軸を介して揺動自在に軸支される作業アタッチメントと、基端部がアームに支持され作業アタッチメントを揺動させるべく伸縮作動する伸縮シリンダと、一端部が作業アタッチメントに第二ピン軸を介して揺動自在に軸支され、他端部が伸縮シリンダの先端部に第三ピン軸を介して揺動自在に軸支されるパワーリンクと、一端部がパワーリンク他端部と伸縮シリンダ先端部とを軸支する前記第三ピン軸に揺動自在に軸支され、他端部がアームの左右側面部に第四ピン軸を介して揺動自在に軸支される左右一対のアイドラリンクとを備えてなる建設機械において、前記アイドラリンクに給脂配管を配設するにあたり、該アイドラリンクは、両端側に第三、第四ピン軸用のピン孔が形成された平板状のリンク本体部を有するとともに、該リンク本体部のリンク幅を反作業アタッチメント方向に延設させてリンク本体部から反作業アタッチメント方向に突出する突出部を形成し、該突出部の左右外側面の左右内方に、リンク長方向に伸び、反作業アタッチメント側あるいは左右内方側の少なくとも何れか一方側が開口した給脂配管配設スペースを設け、該給脂配管配設スペースに、突出部の突出先端面よりも反作業アタッチメント方向に突出することなく且つリンク本体部の左右内側リンク面よりも左右内方に突出しない状態で給脂配管を配設する構成にしたことを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造である。
請求項2の発明は、請求項1において、給脂配管配設スペースは、突出部の突出先端面からリンク本体部の左右内側リンク面に向けて斜めに切欠かれた形状のものであり、反作業アタッチメント側および左右内方側が開口していることを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造である。
請求項3の発明は、請求項1において、給脂配管配設スペースは、突出部の突出先端面からリンク本体部の左右内側リンク面に向けてL字形状に切欠かれた形状のものであり、反作業アタッチメント側および左右内方側が開口していることを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造である。
請求項4の発明は、請求項1において、給脂配管配設スペースは、突出部の突出先端面に凹設され、反作業アタッチメント側が開口した凹溝形状のものであることを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造である。
請求項5の発明は、請求項1において、給脂配管配設スペースは、突出部の左右内側面に凹設され、左右内方側が開口した凹溝形状のものであることを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造である。
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか一項において、給脂配管配設スペースのリンク長方向両端部に、給脂配管を固定するための配管固定部を設けたことを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造である。
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか一項において、アイドラリンクの給脂配管配設スペースに配設された給脂配管は、パワーリンクのアーム対向側リンク面に配置された分配弁に接続され、該分配弁からパワーリンクの一端部および他端部に給脂される構成であることを特徴とする建設機械における給脂配管配設構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、アイドラリンクの給脂配管配設スペースに配設された給脂配管を保護できるとともに、アイドラリンクの構造が複雑になることなく、製造コストを抑制できる。
請求項2、3,4,5の発明とすることにより、給脂配管配設スペースの形成が簡単であるとともに、給脂配管配設スペースに、突出部の突出先端面よりも反バケット方向に突出することなく且つリンク本体部の左右内側リンク面よりも左右内方に突出しない状態で給脂配管を配設できる。
請求項6の発明とすることにより、アイドラリンクに配設された給脂配管が不用意にズレてしまうことを防止できる。
請求項7の発明とすることにより、パワーリンクに配置された分配弁の破損や故障のリスクを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】油圧ショベルの側面図である。
図2】アームとバケットとバケットシリンダとを連結するリンク機構部分を示す図である。
図3】給脂配管が配設されたアイドラリンクを示す図であって、(A)は正面図、(B)は(A)のX-X端面図、(C)は平面図、(D)は(B)の要部拡大図である。
図4】給脂配管が配設されたアイドラリンクの一部斜視図である。
図5】分配弁が配置されたパワーリンクを示す図である。
図6】(A)、(B)、(C)は給脂配管配設スペースの他例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は建設機械の一例である油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、下部走行体2、該下部走行体2に旋回ベアリング3aを介して旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業部4等から構成されるとともに、該フロント作業部4は、基端側が上部旋回体3に上下揺動自在に軸支されるブーム5、該ブーム5の先端部に揺動自在に支持されるアーム6、該アーム6の先端部に揺動自在に支持されるバケット(本発明の作業アタッチメントに相当する)7、これらブーム5,アーム6、バケット7を揺動せしめるべく伸縮作動するブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ(本発明の伸縮シリンダに相当する)10等を備えて構成されている。
【0009】
前記バケット7は、アーム6の先端部に第一ピン軸11を介して揺動自在に軸支されており、また、バケットシリンダ10は、基端部がアーム6の基端側に揺動自在に支持されているが、該バケットシリンダ10の先端部(ロッド先端部)とバケット7とアーム6とは、パワーリンク12と左右一対のアイドラリンク13とからなるリンク機構によって連結されている。
【0010】
前記パワーリンク12は、一端部がバケット7に第二ピン軸14を介して揺動自在に軸支され、他端部がバケットシリンダ10のロッド先端部に第三ピン軸15を介して揺動自在に軸支されている。この場合に、パワーリンク12の他端部は、二股状に分割された左右の軸支部12aを有し、該左右の軸支部12aがバケットシリンダ10のロッド先端部の左右外側において第三ピン軸15に軸支されるようになっている。そして、パワーリンク12は、両端部が前記第二、第三ピン軸14、15に軸支された状態で、一方のリンク面12cがアーム6の先端部に対向するようになっているが、該アーム対向側リンク面12cには、後述する給脂用の第三分配弁(本発明のパワーリンクのアーム対向側リンク面に配置された分配弁に相当する)21が配置されている。
【0011】
また、前記左右一対のアイドラリンク13は、一端部がパワーリンク12の他端部とバケットシリンダ10のロッド先端部とを軸支する前記第三ピン軸15に揺動自在に軸支され、他端部がアーム6の左右側面部6aに第四ピン軸16を介して揺動自在に軸支されている。この場合に、左右一対のアイドラリンク13の一端部は、パワーリンク12他端部の左右の軸支部12aの左右外側において第三ピン軸15に軸支され、また、他端部は、アーム6の左右側面部6aから突出する第四ピン軸16の左右両端部にそれぞれ軸支されるようになっている。そして、アイドラリンク13は、前記第三、第四ピン軸15、16に両端部が軸支された状態で、リンク幅方向一方側がバケット7に対向するようになっているとともに、アイドラリンク13には、アーム6側から伸びる後述の給脂配管22cをアイドラリンク13を経由して前記パワーリンク12に配置の第三分配弁21に至るように配設するための給脂配管配設スペース23が形成されているが、該給脂配管配設スペース23については後述する。尚、本発明では、左右一対のアイドラリンク13の互いに対向する側を左右内側とし、反対向側を左右外側とする。
【0012】
次いで、油圧ショベル1に設けられる自動給脂システムについて説明する。図1において、18は給脂用ポンプ、19はブーム5に配置される第一分配弁、20はアーム6に配置される第二分配弁、21は前記パワーリンク12に配置される第三分配弁であって、これら分配弁19~21は、給脂用ポンプ18から供給されるグリースを中継、分岐して、油圧ショベル1に設けられる複数の軸支部に流すようになっている。つまり、給脂用ポンプ18から供給されたグリースは、給脂用ポンプ18から第一分配弁19に至る給脂配管22a、第一分配弁19から第二分配弁20に至る給脂配管22b、第二分配弁20から第三分配弁21に至る給脂配管22cを経由して、各分配弁19~21に流れるようになっているとともに、各分配弁19~21からは、これら各分配弁19~21から各軸支部に至る給脂配管(図1には図示せず)を経由して各軸支部にグリースが流れるようになっている。尚、図1では、わかりやすくするために、給脂用ポンプ18、第一、第二、第三分配弁19、20、21、給脂配管22a、22b、22cは全て実線で示してある。
前記給脂用ポンプ18は、所定時間毎等の予め設定された条件で自動的に稼働してグリースを供給するように構成されている。また、分配弁は、油圧ショベル等の建設機械の大きさ等に対応させて適宜数適宜箇所に配置することができる。さらに、分配弁を、逆止弁や、手動で給脂できるニップル部分を備えた構成のものとすることもできる。
また、本実施の形態では、第一分配弁19からは、旋回ベアリング3a、ブーム5基端部の軸支部、ブームシリンダ8基端部および先端部の軸支部、アームシリンダ9基端部の軸支部に給脂配管(図示せず)を介してグリースが供給され、第二分配弁20からは、ブーム5先端部とアーム6基端部との軸支部、アームシリンダ9先端部の軸支部、バケットシリンダ10基端部の軸支部、第一ピン軸11を介してのアーム6先端部とバケット7との軸支部、第四ピン軸16を介してのアイドラリンク13他端部とアーム6との軸支部に給脂配管(図示せず)を介してグリースが供給され、さらに、第三分配弁21からは、図5に示す如く、パワーリンク12両端部の軸支部、つまり、第二ピン軸14を介してのパワーリンク12一端部とバケット7との軸支部12b、第三ピン軸15を介してのパワーリンク12他端部とアイドラリンク13一端部およびバケットシリンダ10先端部との軸支部12aに、給脂配管22dを介してグリースが供給されるようになっている。
【0013】
ここで、前述したように、アーム6に配置された第二分配弁20からパワーリンク12に配置された第三分配弁21に至る給脂配管22cは、アーム6側からアイドラリンク13を経由してパワーリンク12に至るように配設されているとともに、アイドラリンク13には、前記給脂配管22cが配設される給脂配管配設スペース23が設けられており、以下に、アイドラリンク13および給脂配管配設スペース23の構造について説明する。
【0014】
前記アイドラリンク13は、平板状のリンク本体部13aを有し、該リンク本体部13aの両端側には、前記第三、第四ピン軸15,16がそれぞれ挿通されるピン孔13b、13cが形成されるとともに、リンク本体部13aのリンク幅(ピン孔13b、13cの中心部を結ぶ線に直交する方向の幅)は上記ピン孔13b、13cの孔径よりも幅広に設定されていて、該リンク本体部13aのリンク幅によってアイドラリンク13に強度上必要とされるリンク幅を確保できるようになっている。さらに、アイドラリンク13には、リンク本体部13aのリンク幅を反バケット7側に延設させることでリンク本体部13aから反バケット7方向に突出する突出部(耳部)13dが形成されており、該突出部13dの左右外側面13eの左右内方には、リンク長方向(ピン孔13b、13cの中心部を結ぶ線に平行な方向)に伸びる給脂配管配設スペース23が設けられている。該給脂配管配設スペース23は、突出部13dの突出先端面13fからリンク本体部13aの左右内側リンク面13gに向けて斜めに切欠かれた形状をしていて、その左右外方側は突出部13dの左右外側面13eによって覆蓋され、また、バケット7側はリンク本体部13aによって覆蓋される一方、反バケット7側および左右内方側は開口した状態になっている。そして、該給脂配管配設スペース23には、給脂配管22cが、突出部13dの突出先端面13fよりも反バケット7方向に突出することなく且つリンク本体部13aの左右内側リンク面13gよりも左右内方に突出しない状態で配設されるようになっており、これにより、バケット7側や左右外方側から飛散する土砂等が給脂配管22cに衝突することを、突出部13dの左右外側面13eおよびリンク本体部13aによって確実に防止できるとともに、反バケット7側や左右内方側から飛散する土砂等は、微細なものでなければ給脂配管22cよりも先に突出部13dの突出先端面13fやリンク本体部13aの左右内側リンク面13gに接触することになって、給脂配管22cを有効に保護できることになる。
【0015】
さらに、前記給脂配管配設スペース23のリンク長方向両端部には、給脂配管22cを固定するための配管固定部23aが設けられており、該配管固定部23aに固定されることによって、給脂配管配設スペース23に配設された給脂配管22cがズレてしまうことを防止できるようになっている。尚、配管固定部としては、給脂配管を支持するサポート形状のものであっても良いし、給脂配管の端部が埋め込まれる形のブロック形状のものであっても良い。ブロック形状の場合には、アイドラリンクの給脂配管配設スベースに配される部分の給脂配管と、その前後の給脂配管とを連結するコネクタを兼ねた構造とすることもできる。
【0016】
叙述の如く構成された本実施の形態において、油圧ショベル1は、アーム6の先端部に第一ピン軸11を介して揺動自在に軸支されるバケット(作業アタッチメント)7と、基端部がアーム6に支持されバケット7を揺動させるべく伸縮作動するバケットシリンダ(伸縮シリンダ)10と、一端部がバケット7に第二ピン軸14を介して揺動自在に軸支され、他端部がバケットシリンダ10の先端部に第三ピン軸15を介して揺動自在に軸支されるパワーリンク12と、一端部がパワーリンク12他端部とバケットシリンダ10先端部とを軸支する前記第三ピン軸15に揺動自在に軸支され、他端部がアーム6の左右側面部6aに第四ピン軸16を介して揺動自在に軸支される左右一対のアイドラリンク13とを備えているが、このものにおいて、アイドラリンク13に給脂配管22cを配設するにあたり、該アイドラリンク13は、両端側に第三、第四ピン軸15、16用のピン孔13b、13cが形成された平板状のリンク本体部13aを有するとともに、該リンク本体部13aのリンク幅を反バケット7方向に延設させてリンク本体部13aから反バケット7方向に突出する突出部13dが形成されている。さらに、該突出部13dの左右外側面13eの左右内方には、リンク長方向に伸び、反バケット7側あるいは左右内方側の少なくとも何れか一方側が開口した形状の給脂配管配設スペース23が設けられており、該給脂配管配設スペース23には、給脂配管22cが、突出部13dの突出先端面13fよりも反バケット7方向に突出することなく且つリンク本体部13aの左右内側リンク面13gよりも左右内方に突出しない状態で配設されることになる。
【0017】
この結果、前記給脂配管配設スペース23に配設された給脂配管22cは、左右外方側が突出部13dの左右外側面13eによって覆蓋され、また、バケット7側はリンク本体部13aによって覆蓋されることになって、バケット7側や左右外方側から飛散する土砂等が給脂配管22cに衝突することを確実に防止できることになる。一方、バケット7側や左右外方側からよりは少ないが反バケット7側や左右内方側から飛散する土砂等があっても、微細なものでなければ給脂配管22cよりも先に突出部13dの突出先端面13fやリンク本体部13aの左右内側リンク面13gに接触することになって、給脂配管22cを有効に保護できることになる。しかも、前記給脂配管配設スペース23は、反バケット7側あるいは左右内方側の少なくとも何れか一方側が開口した形状のものであるから、アイドラリンクの内部に中空状の給脂通路を形成するもののようにアイドラリンクの構造が複雑になることなく、アイドラリンク13の製造コストを抑制できるとともに、給脂配管22cの修理や交換も容易に行えることになる。尚、本実施の形態では、左右のアイドラリンクは何れも給脂配管配設スペースを有する左右対称形状に形成されていて、左右何れのアイドラリンクを経由してもパワーリンクに給脂配管を配設できるようになっているが、左右何れか一方のアイドラリンクにのみ給脂配管配設スペースを設ける構成にしてもよい。
【0018】
さらに、本実施の形態において、前記給脂配管配設スペース23は、突出部13dの突出先端面13fからリンク本体部13aの左右内側リンク面13gに向けて斜めに切欠かれた形状のものであって、反バケット7側および左右内方側が開口しているが、このような形状の給脂配管配設スペース23は形成が簡単であるとともに、給脂配管22cを、突出部13dの突出先端面13fよりも反バケット7方向に突出することなく且つリンク本体部13aの左右内側リンク面13gよりも左右内方に突出しない状態で配設できることになる。
【0019】
また、前記給脂配管配設スペース23のリンク長方向両端部には、給脂配管22cを固定するための配管固定部23aが設けられており、これにより、アイドラリンク13に配設された給脂配管22cが不用意にズレてしまうことを防止できる。
【0020】
さらに、前記アイドラリンク13の給脂配管配設スペース23に配設された給脂配管22cは、パワーリンク12のアーム対向側リンク面12cに配置された分配弁21に接続され、該分配弁21からパワーリンク12の一端部および他端部に給脂される構成となっており、而して、アイドラリンク13に配設された給脂配管22cおよびパワーリンクに配置された分配弁21を介して、パワーリンク12の両端部の軸支部12a、12bに給脂できることになるが、この場合に分配弁21は、パワーリンク12のアーム対向側リンク面12cに配置されることでアーム6によって保護された状態となっており、これにより分配弁21の破損や故障のリスクを大幅に低減することができる。
【0021】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、給脂配管配設スペースの形状としては、突出部の左右外側面の左右内方に設けられていて、リンク長方向に伸び、反作業アタッチメント側あるいは左右内方側の少なくとも何れか一方側が開口した形状であれば良く、例えば、図6(A)に示す如く、突出部13dの突出先端面13fからリンク本体部13aの左右内側リンク面13gに向けてL字状に切欠かれた形状であって、反作業アタッチメント側および左右内方側が開口している給脂配管配設スペース24、図6(B)に示す如く、突出部13dの突出先端面13fに凹設された凹溝形状のもので、反作業アタッチメント側が開口している給脂配管配設スペース25,図6(C)に示す如く、突出部13dの左右内側面13iに凹設された凹溝形状のもので、左右内方側が開口している配管配設スペース26でも良いが、これらの形状の配管配設スペース24、25、26の形成は簡単であるとともに、何れの形状の給脂配管配設スペース24、25、26においても、給脂配管22cを、突出部13dの突出先端面13fよりも反作業アタッチメント方向に突出することなく且つリンク本体部13aの左右内側リンク面13gよりも左右内方に突出しない状態で配設できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に給脂配管を配設する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
6 アーム
7 バケット
10 バケットシリンダ
11 第一ピン軸
12 パワーリンク
12a アーム対向側リンク面
13 アイドラリンク
13a リンク本体部
13d 突出部
13e 突出部の左右外側面
13f 突出先端面
13g リンク本体部の左右内側リンク面
14 第二ピン軸
15 第三ピン軸
16 第四ピン軸
21 第三分配弁
22c 給脂配管
23 給脂配管配設スペース
23a 配管固定部
24 給脂配管配設スペース
25 給脂配管配設スペース
26 給脂配管配設スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6