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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20221026BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20221026BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20221026BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20221026BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20221026BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20221026BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20221026BHJP
   B60L 7/14 20060101ALN20221026BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20221026BHJP
【FI】
B60W10/00 120
B60L15/20 S
B60T8/1755 C
B60W10/04
B60W10/18
B60W30/02
B60W40/02
B62D6/00
B60L7/14
B60L9/18 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017162533
(22)【出願日】2017-08-25
(65)【公開番号】P2019038415
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-07-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 毅
(72)【発明者】
【氏名】家永 寛史
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】阪口 晋一
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 洵弥
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】水野 治彦
【審判官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-106364(JP,A)
【文献】特開2012-240444(JP,A)
【文献】特開2014-113905(JP,A)
【文献】特開2011-204125(JP,A)
【文献】特開2010-52525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W10/00-10/30
B60W30/00-60/00
G08G1/00-99/00
B62D6/00-6/10
B60T7/12-8/1769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置情報及び走行路における風に関する風情報を取得する取得部と、
前記風情報に含まれる風速の横風成分が閾値より高い区間である横風区間に前記車両が進入する際に、前輪に駆動力を付与し後輪に制動力を付与する制駆動制御を開始する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記後輪に付与される制動力の前記制駆動制御における目標値である目標制動力を、前記横風区間における風速の横風成分に基づいて算出し、
前記制駆動制御を開始するまでの間に前記前輪及び前記後輪の駆動力配分率を第2時間変化率で前輪駆動状態の配分率へ移行させ、
前記前輪及び前記後輪の駆動力配分率を前記前輪駆動状態の配分率へ移行させた後において、前記車両が前記横風区間の開始地点に到達するより前に前記制駆動制御を開始し、
前記制駆動制御を開始した後において、前記車両が前記開始地点に到達するまでの間に前記後輪に付与される制動力を第1時間変化率で前記目標制動力へ移行させる、
車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記車両が前記開始地点に到達するまでの到達時間を算出し、
前記前輪及び前記後輪の駆動力配分率が前記制駆動制御の実行されていない通常時における配分率から前記第2時間変化率で前記前輪駆動状態の配分率へ移行するまでの配分率移行時間を算出し、
前記制駆動制御が開始される時点から前記後輪に付与される制動力が前記第1時間変化率で前記目標制動力へ移行するまでの制動力移行時間を算出し、
前記前輪及び前記後輪の駆動力配分率の前記前輪駆動状態の配分率への移行が開始される時点を、前記到達時間、前記配分率移行時間及び前記制動力移行時間に基づいて決定する、
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記制駆動制御において、加速要求に応じた駆動力を前記後輪に付与される制動力と釣り合う駆動力に加算して得られる駆動力を前記前輪に付与する、
請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記目標制動力を、前記車両のロール剛性に影響を与える前記車両の特性に基づいて算出する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記車両は、ドライバによる転舵をアシストするパワーステアリング機構を備え、
前記制御部は、前記制駆動制御において、前記前輪に付与される駆動力における前記制駆動制御が実行されることに起因する増分を打ち消すように、前記パワーステアリング機構による転舵のアシスト量を制御する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の車両が横風を受けることに起因して走行安定性が低下することを抑制するための技術が提案されている。具体的には、走行路における風速の横風成分が比較的高い場合、車両にロール方向の力が作用することによって走行安定性が低下し得る。特に、風速の横風成分が比較的高い区間に車両が進入する際に、走行安定性が顕著に低下し得る。そこで、風速の横風成分が比較的高い区間に車両が進入する際に車両のロール剛性を増大させる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-106364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、横風に起因する走行安定性の低下を抑制するための技術としてさらなる技術が提供されることが望ましいと考えられる。例えば、特許文献1では、車両のロール剛性の増大を実現するために、車両における各特性を調整可能な調整機構(例えば、サスペンションの減衰力を調整するための電磁弁を含む機構)を設ける必要が生じる。それにより、車両の部品点数が増大し得る。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、走行中の車両が横風を受けることに起因して走行安定性が低下することを抑制することが可能な、新規かつ改良された車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両の位置情報及び走行路における風に関する風情報を取得する取得部と、前記風情報に含まれる風速の横風成分が閾値より高い区間である横風区間に前記車両が進入する際に、前輪に駆動力を付与し後輪に制動力を付与する制駆動制御を開始する制御部と、を備え、前記制御部は、前記後輪に付与される制動力の前記制駆動制御における目標値である目標制動力を、前記横風区間における風速の横風成分に基づいて算出し、前記制駆動制御を開始するまでの間に前記前輪及び前記後輪の駆動力配分率を第2時間変化率で前輪駆動状態の配分率へ移行させ、前記前輪及び前記後輪の駆動力配分率を前記前輪駆動状態の配分率へ移行させた後において、前記車両が前記横風区間の開始地点に到達するより前に前記制駆動制御を開始し、前記制駆動制御を開始した後において、前記車両が前記開始地点に到達するまでの間に前記後輪に付与される制動力を第1時間変化率で前記目標制動力へ移行させる、車両の制御装置が提供される。前記制御部は、前記車両が前記開始地点に到達するまでの到達時間を算出し、前記前輪及び前記後輪の駆動力配分率が前記制駆動制御の実行されていない通常時における配分率から前記第2時間変化率で前記前輪駆動状態の配分率へ移行するまでの配分率移行時間を算出し、前記制駆動制御が開始される時点から前記後輪に付与される制動力が前記第1時間変化率で前記目標制動力へ移行するまでの制動力移行時間を算出し、前記前輪及び前記後輪の駆動力配分率の前記前輪駆動状態の配分率への移行が開始される時点を、前記到達時間、前記配分率移行時間及び前記制動力移行時間に基づいて決定してもよい。
【0007】
前記制御部は、前記制駆動制御において、加速要求に応じた駆動力を前記後輪に付与される制動力と釣り合う駆動力に加算して得られる駆動力を前記前輪に付与してもよい。
【0009】
前記制御部は、前記目標制動力を、前記車両のロール剛性に影響を与える前記車両の特性に基づいて算出してもよい。
【0012】
前記車両は、ドライバによる転舵をアシストするパワーステアリング機構を備え、前記制御部は、前記制駆動制御において、前記前輪に付与される駆動力における前記制駆動制御が実行されることに起因する増分を打ち消すように、前記パワーステアリング機構による転舵のアシスト量を制御してもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、走行中の車両が横風を受けることに起因して走行安定性が低下することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る制御装置が搭載される車両の概略構成の一例を示す模式図である。
図2】同実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】同実施形態に係る制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】同実施形態に係る制御装置が搭載される車両がトンネル内を走行している様子の一例を示す説明図である。
図5】同実施形態に係る制御装置による制駆動制御の開始前後における各状態量の推移の一例を示す説明図である。
図6】同実施形態に係る制御装置による制駆動制御によって車両に作用する力の様子の一例を示す説明図である。
図7】応用例に係る制御装置が搭載される車両の概略構成の一例を示す模式図である。
図8】応用例に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<1.車両の構成>
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100が搭載される車両1の構成について説明する。なお、以下で説明する車両1は本実施形態に係る制御装置100が搭載される車両の一例に過ぎず、制御装置100が搭載される車両はこのような例に特に限定されない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る制御装置100が搭載される車両1の概略構成の一例を示す模式図である。図1では、車両1の進行方向を前方向とし、進行方向に対して逆方向を後方向とし、進行方向を向いた状態における左側及び右側をそれぞれ左方向及び右方向として、車両1が示されている。図2は、本実施形態に係る制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
車両1は、例えば、図1に示したように、フロントディファレンシャル装置13fと、リヤディファレンシャル装置13rと、モータ15fと、モータ15rと、インバータ17fと、インバータ17rと、バッテリ19と、車速センサ31と、通信装置41と、カーナビゲーション装置43と、制御装置100とを備える。
【0019】
モータ15fは、バッテリ19から供給される電力を用いて、左前輪11a及び右前輪11bへ伝達される動力を出力可能である。モータ15fから出力された動力は、フロントディファレンシャル装置13fへ伝達される。フロントディファレンシャル装置13fは、左前輪11a及び右前輪11bと、駆動軸を介してそれぞれ連結されている。モータ15fから出力された動力は、フロントディファレンシャル装置13fによって、左前輪11a及び右前輪11bへ分配して伝達される。なお、モータ15fは、図示しない減速装置を介してフロントディファレンシャル装置13fと接続され得る。
【0020】
モータ15fは、例えば、多相交流式であり、インバータ17fを介してバッテリ19と電気的に接続されている。バッテリ19から供給される直流電力は、インバータ17fによって交流電力に変換され、モータ15fへ供給される。それにより、モータ15fによって動力が生成される。なお、モータ15fは、車両1の減速時に車両1の運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能を有してもよい。モータ15fが発電機として機能する場合、左前輪11a及び右前輪11bの回転エネルギを用いてモータ15fにより発電された交流電力は、インバータ17fによって直流電力に変換され、バッテリ19へ蓄電される。
【0021】
モータ15rは、バッテリ19から供給される電力を用いて、左後輪11c及び右後輪11dへ伝達される動力を出力可能である。モータ15rから出力された動力は、リヤディファレンシャル装置13rへ伝達される。リヤディファレンシャル装置13rは、左後輪11c及び右後輪11dと、駆動軸を介してそれぞれ連結されている。モータ15rから出力された動力は、リヤディファレンシャル装置13rによって、左後輪11c及び右後輪11dへ分配して伝達される。なお、モータ15rは、図示しない減速装置を介してリヤディファレンシャル装置13rと接続され得る。
【0022】
モータ15rは、例えば、多相交流式であり、インバータ17rを介してバッテリ19と電気的に接続されている。バッテリ19から供給される直流電力は、インバータ17rによって交流電力に変換され、モータ15rへ供給される。それにより、モータ15rによって動力が生成される。なお、モータ15rは、車両1の減速時に車両1の運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能を有してもよい。モータ15rが発電機として機能する場合、左後輪11c及び右後輪11dの回転エネルギを用いてモータ15rにより発電された交流電力は、インバータ17rによって直流電力に変換され、バッテリ19へ蓄電される。
【0023】
車速センサ31は、車両1の車速を検出し、検出結果を出力する。
【0024】
通信装置41は、車両1の外部の外部装置と通信を行う。具体的には、通信装置41は、走行路における風に関する風情報を外部装置から受信する。そして、通信装置41は、受信した風情報を制御装置100へ出力する。
【0025】
例えば、通信装置41は、走行路に設けられる横風センサにより検出され送信される風情報を横風センサから受信する。その場合、通信装置41は、横風センサの設置位置の周辺の特定区間の走行路における風速の横風成分(換言すると、走行路の幅方向成分)を示す情報を風情報として受信し得る。
【0026】
カーナビゲーション装置43は、ドライバによる入力操作に応じてドライバが所望する目的地までの経路、距離及び到達時間等を予測し、それらを示す情報を表示する。また、カーナビゲーション装置43は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信すること等によって車両1の現在位置を算出し得る。また、カーナビゲーション装置43は、予測した情報及び算出した情報を制御装置100へ出力する。
【0027】
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0028】
また、制御装置100は、車両1に搭載される各装置と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。例えば、制御装置100は、車速センサ31、通信装置41及びカーナビゲーション装置43と通信を行う。本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0029】
制御装置100は、例えば、図2に示したように、取得部110と、制御部130とを備える。
【0030】
取得部110は、制御装置100が行う処理において用いられる各種情報を取得する。また、取得部110は、取得した情報を制御部130へ出力する。
【0031】
例えば、取得部110は、車速センサ31、通信装置41及びカーナビゲーション装置43と通信することによって、各装置から出力される情報を取得する。具体的には、取得部110は、車両1の車速を示す情報を車速センサ31から取得する。また、取得部110は、走行路における風に関する風情報を通信装置41から取得する。また、取得部110は、車両1の現在位置を示す位置情報及び目的地までの予測経路を示す情報をカーナビゲーション装置43から取得する。
【0032】
なお、取得部110は、車速センサ31、通信装置41及びカーナビゲーション装置43から取得した情報に対してさらに演算処理を施すことによって情報を取得してもよい。
【0033】
また、取得部110は、車両1の外部の外部装置と通信を行う機能を有していてもよく、その場合、車両1の構成から通信装置41は省略され得る。
【0034】
制御部130は、取得部110により取得された情報を用いて各処理を実行する。制御部130は、具体的には、横風区間に車両1が進入する際に、前輪に駆動力を付与し後輪に制動力を付与する制駆動制御を開始する。横風区間は、風速の横風成分が閾値より高い区間である。閾値は、具体的には、車両1が横風を受けることに起因して車両1の走行安定性が顕著に低下する程度に風速の横風成分が高いか否かを判定し得る値に設定される。閾値は、例えば、車両1の重量、形状又は寸法等の車両1の特性に応じて異なり得る。また、閾値は、例えば、制御装置100の記憶素子に記憶され得る。
【0035】
制御部130は、例えば、検出部131と、判定部132と、到着時間算出部133と、目標制動力算出部134と、移行時間算出部135と、モータ制御部136とを備える。
【0036】
検出部131は、風情報に基づいて横風区間の検出を行う。
【0037】
判定部132は、各種判定処理を実行する。
【0038】
到着時間算出部133は、車両1が横風区間の開始地点に到達するまでの時間である到達時間Taを算出する。
【0039】
目標制動力算出部134は、制駆動制御において後輪に付与される制動力の目標値である目標制動力を算出する。
【0040】
移行時間算出部135は、制駆動制御の開始前後において変化する車両1の状態量の移行にかかる時間である移行時間を算出する。このような状態量は、例えば、前輪及び後輪の駆動力配分率と、後輪に付与される制動力とを含む。ゆえに、移行時間算出部135は、例えば、前輪及び後輪の駆動力配分率の移行時間である配分率移行時間Trと、制駆動制御において後輪に付与される制動力の移行時間である制動力移行時間Tbとを算出する。
【0041】
モータ制御部136は、インバータ17f及びインバータ17rの動作を制御することによって、モータ15fから前輪へ伝達される動力及びモータ15rから前輪へ伝達される動力を制御する。それにより、モータ制御部136は、前輪へ付与される制駆動力及び後輪へ付与される制駆動力を互いに独立に制御し得る。具体的には、車輪へ回転方向と同一方向の動力が伝達される場合、車輪へ駆動力が付与される。一方、車輪へ回転方向と反対方向の動力が伝達される場合、車輪へ制動力が付与される。
【0042】
モータ制御部136は、制駆動制御において、前輪に駆動力を付与し後輪に制動力を付与する。具体的には、モータ制御部136は、制駆動制御において、前輪に回転方向と同一方向の動力が伝達され後輪に回転方向と反対方向の動力が伝達されるように、インバータ17f及びインバータ17rの動作を制御する。
【0043】
また、モータ制御部136は、制駆動制御の実行されていない通常時において、前輪及び後輪へ駆動力を付与し得る。例えば、モータ制御部136は、制駆動制御の実行されていない通常時において、前輪及び後輪の間の配分比が1:1となるように、前輪及び後輪へ駆動力を付与し得る。なお、通常時における前輪及び後輪の間の駆動力の配分比は、このような例に限定されず、例えば、前輪又は後輪の一方にのみ駆動力が付与されてもよい。
【0044】
<2.制御装置の動作>
続いて、図3図6を参照して、本実施形態に係る制御装置100の動作について説明する。
【0045】
図3は、本実施形態に係る制御装置100が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3に示される制御フローは、例えば、あらかじめ設定された設定時間おきに繰り返される。なお、図3に示される制御フローは、制駆動制御が実行されていない状態において開始される。
【0046】
図3に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS501において、取得部110は、風情報を取得する。
【0047】
図4は、本実施形態に係る制御装置100が搭載される車両1がトンネルA1内を走行している様子の一例を示す説明図である。例えば、トンネルA1の出口には、横風センサ5が設けられる。横風センサ5は、トンネルA1の出口からトンネルA1の外部側へ走行路に沿って延在する区間A2の走行路における風速の横風成分を示す情報を風情報として検出し、送信する。ゆえに、トンネルA1内を走行する車両1は、トンネルA1の出口の近傍の区間A2についての風速の横風成分を示す情報を風情報として横風センサ5から受信し得る。よって、取得部110は、横風センサ5から送信される風情報を取得し得る。横風センサ5から送信される風情報には、区間A2の開始地点P1及び終了地点P2の位置を含む区間A2の位置を示す位置情報が含まれる。なお、トンネルA1内において、風速の横風成分は閾値以下となっているので、制駆動制御は実行されない。ゆえに、トンネルA1内において、モータ制御部136は、例えば、前輪及び後輪へ1:1の配分比で駆動力を付与する。
【0048】
次に、ステップS503において、検出部131は、取得された風情報に基づいて横風区間の検出を行う。
【0049】
例えば、図4に示される例において、検出部131は、トンネルA1の出口の近傍の区間A2についての風速の横風成分が閾値より高い場合に、区間A2を横風区間として検出する。一方、検出部131は、トンネルA1の出口の近傍の区間A2についての風速の横風成分が閾値以下である場合に、区間A2を横風区間として検出しない。
【0050】
次に、ステップS505において、判定部132は、横風区間が検出されたか否かを判定する。横風区間が検出されたと判定された場合(ステップS505/YES)、ステップS506へ進む。一方、横風区間が検出されたと判定されなかった場合(ステップS505/NO)、ステップS501へ戻る。
【0051】
次に、ステップS506において、取得部110は、車両1の位置情報を取得する。
【0052】
次に、ステップS507において、到着時間算出部133は、車両1が横風区間の開始地点に到達するまでの到達時間Taを算出する。
【0053】
例えば、図4に示される例において、区間A2が横風区間として検出された場合、到着時間算出部133は、車両1の車速を示す情報、車両1の位置情報及び区間A2の開始地点P1の位置情報に基づいて到達時間Taを算出する。到着時間算出部133は、具体的には、車両1の位置情報及び区間A2の開始地点P1の位置情報に基づいて車両1の現在位置から区間A2の開始地点P1までの走行路に沿った距離を算出し得る。ここで、到着時間算出部133は、例えば、カーナビゲーション装置43又は制御装置100の記憶素子に記憶される地図情報と、車両1の位置情報とに基づいて車両1が走行する走行路を特定し得る。また、到着時間算出部133は、例えば、カーナビゲーション装置43から取得される目的地までの予測経路を示す情報に基づいて、車両1が走行する走行路を特定し得る。
【0054】
次に、ステップS509において、目標制動力算出部134は、後輪に付与される制動力の制駆動制御における目標値である目標制動力を算出する。
【0055】
具体的には、目標制動力算出部134は、目標制動力を、横風区間における風速の横風成分に基づいて算出する。例えば、図4に示される例において、区間A2が横風区間として検出された場合、目標制動力算出部134は、区間A2についての風速の横風成分が大きいほど、大きな値を目標制動力として算出する。
【0056】
また、目標制動力算出部134は、目標制動力を、車両1のロール剛性に影響を与える車両1の特性に基づいて算出してもよい。具体的には、目標制動力算出部134は、目標制動力を、車両1の重量、形状又は寸法等の車両1の特性に基づいて算出し得る。例えば、目標制動力算出部134は、車両1の重量が軽いほど、大きな値を目標制動力として算出し得る。また、例えば、目標制動力算出部134は、車両1の左右方向の投影面積が大きいほど、大きな値を目標制動力として算出し得る。
【0057】
次に、ステップS511において、移行時間算出部135は、前輪及び後輪の駆動力配分率の移行時間である配分率移行時間Trを算出する。
【0058】
具体的には、移行時間算出部135は、前輪及び後輪の駆動力配分率が制駆動制御の実行されていない通常時における配分率から第2時間変化率で前輪駆動状態の配分率へ移行するまでの時間を配分率移行時間Trとして算出する。例えば、制駆動制御の実行されていない通常時における前輪の駆動力配分率が0.5である場合、移行時間算出部135は、前輪の駆動力配分率が第2時間変化率で1.0へ移行するまでの時間を配分率移行時間Trとして算出する。制駆動制御の実行されていない通常時における前輪の駆動力配分率を示す情報は、例えば、制御装置100の記憶素子に記憶され得る。
【0059】
第2時間変化率は、時間経過によらず一定の時間変化率であってもよく、時間経過に伴い変化し得る時間変化率であってもよい。また、第2時間変化率は、制駆動制御の実行されていない通常時における配分率によらず同一の時間変化率であってもよい。第2時間変化率は、ドライバへ与える違和感を低減し得るような時間変化率であることが好ましい。第2時間変化率は、例えば、車両1の設計仕様等に基づいて設定され得る値であり、制御装置100の記憶素子に記憶され得る。
【0060】
次に、ステップS513において、移行時間算出部135は、制駆動制御において後輪に付与される制動力の移行時間である制動力移行時間Tbを算出する。
【0061】
具体的には、移行時間算出部135は、制駆動制御が開始される時点から後輪に付与される制動力が第1時間変化率で目標制動力へ移行するまでの時間を制動力移行時間Tbとして算出する。ここで、制駆動制御が開始される時点において、車両1は後輪に制動力が付与されていない状態となっている。ゆえに、制動力移行時間Tbは、後輪に付与される制動力が0から第1時間変化率で目標制動力へ移行するまでの時間に相当する。
【0062】
第1時間変化率は、時間経過によらず一定の時間変化率であってもよく、時間経過に伴い変化し得る時間変化率であってもよい。また、第1時間変化率は、目標制動力によらず同一の時間変化率であってもよい。第1時間変化率は、ドライバへ与える違和感を低減し得るような時間変化率であることが好ましい。第1時間変化率は、例えば、車両1の設計仕様等に基づいて設定され得る値であり、制御装置100の記憶素子に記憶され得る。
【0063】
次に、ステップS515において、判定部132は、到達時間Taが配分率移行時間Tr及び制動力移行時間Tbの合計以下であるか否かを判定する。到達時間Taが配分率移行時間Tr及び制動力移行時間Tbの合計以下であると判定された場合(ステップS515/YES)、ステップS517へ進む。一方、到達時間Taが配分率移行時間Tr及び制動力移行時間Tbの合計以下であると判定されなかった場合(ステップS515/NO)、ステップS506へ戻る。
【0064】
ステップS517において、モータ制御部136は、前輪及び後輪の駆動力配分率の移行を実行する。
【0065】
図5は、本実施形態に係る制御装置100による制駆動制御の開始前後における各状態量の推移の一例を示す説明図である。図5では、制駆動制御の実行されていない通常時における前輪の駆動力配分率が0.5である場合における前輪の駆動力配分率及び後輪に付与される制動力の推移の一例が示されている。
【0066】
例えば、図5に示される例では、時刻t1において、到達時間Taが配分率移行時間Tr及び制動力移行時間Tbの合計と一致し、前輪及び後輪の駆動力配分率の第2時間変化率での移行が開始される。そして、時刻t1から配分率移行時間Trが経過した時刻t2において、前輪及び後輪の駆動力配分率の移行が完了し、前輪及び後輪の駆動力配分率は前輪駆動状態の配分率となる。
【0067】
次に、ステップS519において、モータ制御部136は、制駆動制御を開始し、後輪に付与される制動力の移行を実行する。
【0068】
図6は、本実施形態に係る制御装置100による制駆動制御によって車両1に作用する力の様子の一例を示す説明図である。
【0069】
上述したように、モータ制御部136は、制駆動制御において、前輪に駆動力を付与し後輪に制動力を付与する。具体的には、モータ制御部136は、制駆動制御において、加速要求に応じた駆動力を後輪に付与される制動力と釣り合う駆動力に加算して得られる駆動力を前輪に付与する。それにより、前輪に付与される駆動力と後輪に付与される制動力との合力は、加速要求に応じた駆動力と一致する。
【0070】
例えば、制御装置100は、車両1に設けられるアクセル操作量を検出するセンサからの検出結果を加速要求として取得し得る。その場合、モータ制御部136は、このように取得された検出結果に基づいて加速要求に応じた駆動力を算出し得る。また、例えば、制御装置100は、種々の車両制御を実行する他の制御装置により算出された加速要求を示す情報を他の制御装置から取得し得る。その場合、モータ制御部136は、このように取得された加速要求を示す情報に基づいて加速要求に応じた駆動力を算出し得る。
【0071】
制駆動制御では、図6に示されるように、前輪に駆動力が付与され後輪に制動力が付与されるので、車体の下部を前後方向に引っ張る方向に力が作用する。それにより、車体に下方向の力が作用する。このように、制駆動制御が行われることによって、車両1の車高を低くすることができる。
【0072】
例えば、図5に示される例では、前輪及び後輪の駆動力配分率の移行が完了した時刻t2において、制駆動制御が開始され、後輪に付与される制動力の第1時間変化率での移行が開始される。そして、時刻t2から制動力移行時間Tbが経過した時刻t3において、後輪に付与される制動力の移行が完了し、後輪に付与される制動力は目標制動力となる。また、時刻t3において、車両1は、例えば、図4に示される横風区間として検出された区間A2の開始地点P1に到達する。
【0073】
このように、モータ制御部136は、横風区間に車両1が進入する際に、制駆動制御を実行する。具体的には、モータ制御部136は、制駆動制御を開始するまでの間に前輪及び後輪の駆動力配分率を第2時間変化率で前輪駆動状態の配分率へ移行させる。また、モータ制御部136は、車両1が横風区間の開始地点に到達するより前に制駆動制御を開始し、車両1が横風区間の開始地点に到達するまでの間に後輪に付与される制動力を第1時間変化率で目標制動力へ移行させる。
【0074】
次に、ステップS521において、取得部110は、車両1の位置情報を取得する。
【0075】
次に、ステップS523において、判定部132は、車両1が横風区間の終了地点P2に到達したか否かを判定する。車両1が横風区間の終了地点P2に到達したと判定された場合(ステップS523/YES)、ステップS525へ進む。一方、車両1が横風区間の終了地点P2に到達したと判定されなかった場合(ステップS523/NO)、ステップS521へ戻る。
【0076】
ステップS525において、モータ制御部136は、制駆動制御を終了する。
【0077】
このように、モータ制御部136は、横風区間から車両1が退出した場合に、制駆動制御を終了する。なお、モータ制御部136は、横風区間から車両1が退出した後に、後輪に付与される制動力を所定の時間変化率で移行させることにより、車両1を後輪に制動力が付与されていない状態にしてもよい。当該所定の時間変化率は、例えば、第1時間変化率と一致してもよい。また、モータ制御部136は、後輪に付与される制動力の移行が完了した後に、前輪及び後輪の駆動力配分率を所定の時間変化率で制駆動制御の実行されていない通常時における配分率へ移行させてもよい。当該所定の時間変化率は、例えば、第2時間変化率と一致してもよい。
【0078】
次に、図3に示される制御フローは終了する。
【0079】
上記では、車両1が特定区間の走行路における風速の横風成分を示す情報を横風センサから風情報として受信し、検出部131が取得された風情報に基づいて横風区間の検出を行う例について説明したが、車両1がこのような風情報と異なる風情報を受信する場合であっても、横風区間の検出は実現され得る。例えば、車両1が各地点についての風向及び風速を示す情報をこのような情報を管理する外部装置から風情報として受信する場合、検出部131は、カーナビゲーション装置43又は制御装置100の記憶素子に記憶される地図情報と取得された風情報とに基づいて走行路において風速の横風成分が閾値以下である横風区間を検出し得る。
【0080】
また、上記では、横風区間がトンネルA1の出口からトンネルA1の外部側へ走行路に沿って延在する区間A2である例について説明したが、横風区間はこのような例に特に限定されない。例えば、防風柵が設置されている区間と防風柵が設置されていない区間との接続部分から防風柵が設置されていない区間側へ走行路に沿って延在する区間では風速の横風成分が比較的高いので、このような区間は横風区間となり得る。
【0081】
また、上記では、制駆動制御の実行されていない通常時における前輪の駆動力配分率が0.5である場合について主に説明したが、通常時における前輪の駆動力配分率は、このような例に限定されず、例えば、1.0であってもよい。その場合、通常時において、車両1は前輪駆動状態となっているので、図3に示される制御フローからステップS517に相当する駆動力配分率の移行処理は省略される。
【0082】
<3.制御装置の効果>
続いて、本実施形態に係る制御装置100の効果について説明する。
【0083】
本実施形態に係る制御装置100では、風速の横風成分が閾値より高い区間である横風区間に車両1が進入する際に、前輪に駆動力を付与し後輪に制動力を付与する制駆動制御が開始される。それにより、横風区間に車両1が進入する際に、車体に下方向の力を作用させることによって、車両1の車高を事前に低くすることができる。ゆえに、横風区間に車両1が進入する際に、車両1のロール剛性を事前に増大させることができる。したがって、走行中の車両1が横風を受けることに起因して走行安定性が低下することを抑制することができる。
【0084】
さらに、本実施形態に係る制御装置100では、前輪に駆動力を付与し後輪に制動力を付与する制駆動制御によって車両1のロール剛性が増大されるので、車両1における各特性を調整可能な調整機構を設けることなく横風に起因する走行安定性の低下を抑制することが実現される。ゆえに、車両1における各特性を調整可能な調整機構を設けることにより車両の部品点数が増大することを抑制することができる。また、車両1のロール剛性を増大させるために、このような調整機構によりサスペンションの減衰力やスタビライザの剛性を調整することが考えられるが、その場合にはドライバビリティが低下し得る。ここで、本実施形態によれば、サスペンションの減衰力やスタビライザの剛性等の車両1における特性が調整されることによるドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制駆動制御において、加速要求に応じた駆動力を後輪に付与される制動力と釣り合う駆動力に加算して得られる駆動力が前輪に付与され得る。それにより、前輪に付与される駆動力と後輪に付与される制動力との合力を加速要求に応じた駆動力と一致させることができるので、車体に下方向の力を作用させつつ、加速要求に応じて適切に車両1を走行させることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る制御装置100では、後輪に付与される制動力の制駆動制御における目標値である目標制動力が、横風区間における風速の横風成分に基づいて算出され得る。それにより、横風区間における風速の横風成分の大きさに応じて目標制動力を適切に算出することができる。ゆえに、制駆動制御を実行することにより横風に起因する走行安定性の低下を抑制しつつ、必要以上に後輪に制動力が付与されることによる燃費の悪化を抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態に係る制御装置100では、目標制動力が、車両1のロール剛性に影響を与える車両1の特性に基づいて算出され得る。それにより、車両1の特性に応じて目標制動力をより適切に算出することができる。ゆえに、制駆動制御を実行することにより横風に起因する走行安定性の低下を抑制しつつ、必要以上に後輪に制動力が付与されることによる燃費の悪化を抑制する効果をより向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態に係る制御装置100では、車両1が横風区間の開始地点に到達するより前に制駆動制御が開始され、車両1が横風区間の開始地点に到達するまでの間に後輪に付与される制動力が第1時間変化率で目標制動力へ移行され得る。それにより、後輪に付与される制動力がステップ的に切り替えられることを抑制することができる。ゆえに、後輪に付与される制動力の急峻な変化に起因してドライバへ違和感が与えられることを抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制駆動制御が開始されるまでの間に前輪及び後輪の駆動力配分率が第2時間変化率で前輪駆動状態の配分率へ移行され得る。それにより、前輪及び後輪の駆動力配分率がステップ的に切り替えられることを抑制することができる。ゆえに、前輪及び後輪の駆動力配分率の急峻な変化に起因してドライバへ違和感が与えられることを抑制することができる。
【0090】
<4.応用例>
続いて、図7及び図8を参照して、応用例について説明する。
【0091】
図7は、応用例に係る制御装置200が搭載される車両2の概略構成の一例を示す模式図である。図7では、車両2の進行方向を前方向とし、進行方向に対して逆方向を後方向とし、進行方向を向いた状態における左側及び右側をそれぞれ左方向及び右方向として、車両2が示されている。図8は、応用例に係る制御装置200の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0092】
車両2は、例えば、上述した車両1と比較して、ステアリングホイール51と、トルクセンサ53と、パワーステアリング機構55とをさらに備える。
【0093】
パワーステアリング機構55は、ドライバのステアリングホイール51を介した転舵をアシストする。パワーステアリング機構55は、例えば、図示しない電動モータを備え、電動モータが駆動されることによって、ドライバによる転舵のアシストを行う。それにより、車両2の旋回の支援が実現される。
【0094】
トルクセンサ53は、ドライバによる転舵により生じるステアリング操舵トルクを検出し、検出結果を制御装置200へ出力する。
【0095】
制御装置200は、上述した制御装置100と比較して、パワーステアリング機構55の動作を制御する機能をさらに有する。制御装置200の制御部230は、例えば、上述した制御装置100の制御部130と比較して、パワーステアリング制御部231をさらに備える。
【0096】
パワーステアリング制御部231は、パワーステアリング機構55の動作を制御することによって、パワーステアリング機構55による転舵のアシスト量を制御する。具体的には、パワーステアリング制御部231は、パワーステアリング機構55の電動モータの動作を制御することにより、パワーステアリング機構55による転舵のアシスト量を制御する。
【0097】
例えば、パワーステアリング制御部231は、ドライバによるステアリング操舵トルクに応じて転舵のアシスト量を制御する。具体的には、パワーステアリング制御部231は、ドライバによるステアリング操舵トルクが大きいほど、転舵のアシスト量を大きくする。
【0098】
また、パワーステアリング制御部231は、制駆動制御において、前輪に付与される駆動力における制駆動制御が実行されることに起因する増分を打ち消すように、パワーステアリング機構55による転舵のアシスト量を制御する。ここで、前輪に付与される駆動力における制駆動制御が実行されることに起因する増分は、加速要求が同一である場合についての制駆動制御の実行時と制駆動制御の実行されていない通常時との間での前輪に付与される駆動力の差に相当する。
【0099】
上述したように、制駆動制御において、具体的には、加速要求に応じた駆動力を後輪に付与される制動力と釣り合う駆動力に加算して得られる駆動力が前輪に付与される。また、通常時において、前輪及び後輪の双方へ駆動力が付与され得る。ゆえに、加速要求が同一である場合であっても、制駆動制御の実行時には、制駆動制御の実行されていない通常時と比較して、前輪に付与される駆動力が増大し得る。それにより、制駆動制御が実行されることに起因して、転舵が重くなる感覚がドライバへ与えられる場合がある。
【0100】
応用例に係る制御装置200では、制駆動制御において、前輪に付与される駆動力における制駆動制御が実行されることに起因する増分が打ち消されるように、パワーステアリング機構55による転舵のアシスト量が制御される。それにより、制駆動制御が実行されることに起因して、転舵が重くなる感覚がドライバへ与えられることを抑制することができる。ゆえに、ステアリング操舵に関する違和感が増大することを抑制することができる。
【0101】
<5.むすび>
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置100では、風速の横風成分が閾値より高い区間である横風区間に車両1が進入する際に、前輪に駆動力を付与し後輪に制動力を付与する制駆動制御が開始される。それにより、横風区間に車両1が進入する際に、車両1の車高を事前に低くすることができるので、走行中の車両1が横風を受けることに起因して走行安定性が低下することを抑制することができる。
【0102】
さらに、本実施形態に係る制御装置100では、車両1における各特性を調整可能な調整機構を設けることなく横風に起因する走行安定性の低下を抑制することが実現されるので、車両の部品点数が増大することを抑制することができる。また、サスペンションの減衰力やスタビライザの剛性等の車両1における特性が調整されることによるドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0103】
上記では、制御装置100が搭載される車両の例として車両1について説明したが、制御装置100が搭載される車両は、前輪に駆動力を付与可能であり後輪に制動力を付与可能であればよく、このような例に限定されない。例えば、制御装置100は、前輪へ伝達される動力を出力可能なエンジンを駆動源として備える車両に搭載されてもよい。その場合、制御装置100は、エンジンの動作を制御することにより、前輪に駆動力を付与し得る。また、制御装置100は、車両に設けられ後輪を制動するブレーキ装置の動作を制御することにより、後輪に制動力を付与し得る。それにより、前輪に駆動力を付与し後輪に制動力を付与する制駆動制御が実行され得る。
【0104】
また、上記では、制駆動制御において、制御装置100によりインバータ17rの動作が制御されることにより、後輪に回転方向と反対方向の動力が伝達されることによって後輪に制動力が付与される例について説明したが、他の方法によって後輪に制動力が付与されてもよい。例えば、制御装置100は、制駆動制御において、車両1に設けられ後輪を制動するブレーキ装置の動作を制御することにより、後輪に制動力を付与してもよい。その場合、車両1の構成からインバータ17r及びモータ15rは省略され得る。
【0105】
また、上記では、横風センサ5から送信される風情報に含まれる横風区間の終了地点P2の情報に基づいて横風区間の終了地点に到達したか否かを判定する例について説明したが、他の方法によって終了地点に到達したと判定してもよい。例えば、車両1に設けられた圧力センサ等によって横風を検知して、横風成分が閾値より低くなった時に横風区間の終了地点に到達したと判定してもよい。また、走行路において横風区間の開始地点P1から所定距離離れた地点を横風区間の終了地点P2と設定して、当該所定距離を過ぎた時点で横風区間の終了地点に到達したと判定してもよい。
【0106】
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。例えば、図3に示したフローチャートについて、ステップS501及びステップS503の処理は当該フローチャートに示された順序で実行されなくてもよく、並列的に実行されてもよい。また、ステップS506~ステップS513の処理は当該フローチャートに示された順序で実行されなくてもよく、一部について並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0107】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0108】
1,2 車両
11a 左前輪
11b 右前輪
11c 左後輪
11d 右後輪
13f フロントディファレンシャル装置
13r リヤディファレンシャル装置
15f,15r モータ
17f,17r インバータ
19 バッテリ
31 車速センサ
41 通信装置
43 カーナビゲーション装置
51 ステアリングホイール
53 トルクセンサ
55 パワーステアリング機構
100,200 制御装置
110 取得部
130,230 制御部
131 検出部
132 判定部
133 到着時間算出部
134 目標制動力算出部
135 移行時間算出部
136 モータ制御部
231 パワーステアリング制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8