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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】車両の対象物情報提供装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20221026BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221026BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20221026BHJP
   B60R 1/00 20220101ALI20221026BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G08G1/16 D
G08G1/16 C
G01C21/36
B60R1/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017188790
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019064319
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真壁 俊介
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-257286(JP,A)
【文献】特開2017-122640(JP,A)
【文献】特開2015-134521(JP,A)
【文献】特開2014-229100(JP,A)
【文献】特開2012-208111(JP,A)
【文献】特開2011-108175(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/00
G08G 1/16
G01C 21/36
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が進行する道路または周囲に存在する対象物であって前記車両の乗員により視認可能な状態にある視野内の対象物についての情報を取得する対象物情報取得部と、
前記車両から遮蔽物により遮られることなく視認可能な乗員の視野内の前記対象物が、気象条件に基づく視界不良によって視認されない場合、又は、気象条件に起因した道路環境の変化によって視認されない場合に、前記対象物の情報を出力する出力装置と、
を有し、
前記対象物情報取得部は、
視野内において視認されない前記対象物が複数ある場合に、前記車両に最も近いものを優先して選択し、選択した前記対象物が有視界で視認可能となるタイミングに基づいて前記対象物の情報の出力を開始すると共に、前記車両の進行に伴って前記対象物が実際に有視界で視認可能となった場合に前記対象物の情報の出力を終了させ、複数の前記対象物の情報を連続的に出力させる
車両の対象物情報提供装置。
【請求項2】
前記出力装置は、
前記車両の乗員の視野に表示する表示装置であり、
乗員の視野において視野内の前記対象物が視認される方向または位置に沿った位置に、視野内の前記対象物の情報を視認可能に表示する、
請求項1記載の車両の対象物情報提供装置。
【請求項3】
気象条件に基づく視界不良には、降雪又は豪雨が含まれ、
気象条件に起因した道路環境の変化には、積雪又は土砂崩れが含まれる、
請求項1又は2記載の車両の対象物情報提供装置。
【請求項4】
前記車両の位置および進行方向を取得する位置取得装置、を有し、
前記対象物情報取得部は、前記車両の位置および進行方向に基づいて、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物を特定する、
請求項1からのいずれか一項記載の車両の対象物情報提供装置。
【請求項5】
前記車両の乗員の視野を認識または推定する可視認識装置、を有し、
前記対象物情報取得部は、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物から、前記可視認識装置により認識または推定された視野により前記車両から遮蔽物により遮られることなく視認可能なものを選択して、視野内の前記対象物を特定する、
請求項1からのいずれか一項記載の車両の対象物情報提供装置。
【請求項6】
前記車両の車外を可視光により撮像する撮像装置、を有し、
前記対象物情報取得部は、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物から、視野内のものであって、前記撮像装置による可視光の撮像画像に撮像されていないものを、実際には有視界で視認されていない視野内の前記対象物として特定する、
請求項1からのいずれか一項記載の車両の対象物情報提供装置。
【請求項7】
前記対象物情報取得部は、
視野内の前記対象物として、前記車両が進行する道路に設けられた標識若しくは信号、または前記車両が進行する道路の近くのランドマークを特定する、
請求項1からのいずれか一項記載の車両の対象物情報提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車といった車両において対象物の情報を提供する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、運転者を含む乗員が乗車し、運転者の操作により移動可能である。この場合、運転者は、車両に表示された案内経路にしたがって操作して移動することがある。
また、近年、自動車の運行安全性を高めるために、各種の情報を運転者へ提供するようになっている。たとえば、特許文献1では、ヘッドアップディスプレイに、視認が困難な衝突対象についての注意喚起を表示する。
また、近年、車両においては自動運転の開発が始まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-173619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの車両の移動では、車両に乗車した運転者を含む乗員が、車両が正しく移動しているかを確認しようとすることがある。
たとえば、自動運転中の場合、降雪や豪雨などの気象条件により十分な視野が確保できない場合、または積雪や土砂崩れなどにより道路環境が変化している場合には、乗員は、車両が正しく移動しているかを自ら確認したいと考える可能性が高い。
【0005】
しかしながら、乗員が車両の走行を自ら確認することは、必ずしも容易ではない。たとえば、初めて訪れる見知らぬ土地の道路の場合、しばらく訪れていない間に道路沿いの景色が変化している場合、または新たな道路ができて道路状況が変化している場合、自らの記憶などに基づいて確認することは困難である。この場合、乗員は、交差点の行き先標識や国道の番号標識などによりかろうじて確認できるだけである。
しかも、降雪や豪雨などにより周辺の景色を確認すること自体が難しい状況もあり得る。
これらの場合、車両が正しく移動しているかを確認するためには、乗員は長い時間をかけて車外を観察することになる。または、長い時間をかけて車外を観察しても、確認し切れない場合も考えられる。
【0006】
このように、車両では、車両が正しく移動しているかを容易に確認できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の対象物情報提供装置は、車両が進行する道路または周囲に存在する対象物であって前記車両の乗員により視認可能な状態にある視野内の対象物についての情報を取得する対象物情報取得部と、前記車両から遮蔽物により遮られることなく視認可能な視野内の前記対象物が、実際には有視界で視認されない場合に、前記対象物の情報を出力する出力装置と、を有する。
【0008】
好適には、前記出力装置は、前記車両の乗員の視野に表示する表示装置であり、乗員の視野において視野内の前記対象物が視認される方向または位置に沿った位置に、視野内の前記対象物の情報を視認可能に表示する、とよい。
【0009】
好適には、前記出力装置は、視野内の前記対象物が有視界で視認可能となるタイミングに基づいて、視野内の前記対象物の情報の出力を開始する、とよい。
【0010】
好適には、前記出力装置は、出力していた視野内の前記対象物が有視界で視認可能な状態になった場合、視野内の前記対象物の情報の出力を終了する、とよい。
【0011】
好適には、前記出力装置は、前記車両の乗員の視野が他の移動体または積雪により遮られている視界不良の場合、実際には有視界で視認されていない視野内の前記対象物の情報を出力する、とよい。
【0012】
好適には、前記車両の位置および進行方向を取得する位置取得装置、を有し、前記対象物情報取得部は、前記車両の位置および進行方向に基づいて、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物を特定する、とよい。
【0013】
好適には、前記車両の乗員の視野を認識または推定する可視認識装置、を有し、前記対象物情報取得部は、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物から、前記可視認識装置により認識または推定された視野により前記車両から遮蔽物により遮られることなく視認可能なものを選択して、視野内の前記対象物を特定する、とよい。
【0014】
好適には、前記車両の車外を可視光により撮像する撮像装置、を有し、前記対象物情報取得部は、前記車両が進行する道路または周囲に存在する対象物から、視野内のものであって、前記撮像装置による可視光の撮像画像において視認可能に撮像されていないものを、実際には有視界で視認されていない視野内の前記対象物として特定する、とよい。
【0015】
好適には、前記対象物情報取得部は、視野内の前記対象物として複数がある場合、前記車両の近くのものを優先して特定する、とよい。
【0016】
好適には、前記対象物情報取得部は、視野内の前記対象物として、前記車両が進行する道路に設けられた標識若しくは信号、または前記車両が進行する道路の近くのランドマークを特定する、とよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、車両から遮蔽物により遮られることなく視認可能な視野内の対象物についての情報を、それが実際には有視界で視認されない場合に出力する。
たとえば、視野内の対象物が有視界で視認可能となるタイミングに基づいて、視野内の対象物の情報の出力を開始する。
これにより、乗員は、車両から遮蔽物により遮られることなく視認可能な視野内の対象物について認識することができる。
また、その後に実際に視野内の対象物が有視界で視認できる場合には、その情報を予め得た状態で容易に確認できる。
視野内の対象物の情報と実際に視認したものとが一致する確認することにより、車両が正しく移動していることを容易に確認できる。
特に、乗員に情報を出力して視認させる対象物を、車両から遮蔽物により遮られることなく視認可能なものとすることにより、乗員が視線を大きくずらすことなく確認し易い対象物を確認対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車および走行する道路の一例の模式的な説明図である。
図2図2は、図1の自動車に搭載される対象物情報提供装置の構成の説明図である。
図3図3は、図2の対象物情報取得部による処理の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図2の出力制御部による処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、視界良好時において視野内の対象物の情報を提供する状態の一例の説明図である。
図6図6は、第2実施形態における対象物情報取得部の処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、視界不良時において視野内の対象物の情報を提供する状態の一例の説明図である。
図8図8は、第3実施形態の出力制御部による処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、視界の良否に応じた視野内の対象物の情報提供の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車1および走行する道路の一例の模式的な説明図である。
図1の道路沿いには、制限速度や車道の番号などを表示する複数の道路標識が離散的に並べて設けられる。また、他の道路が分岐する交差点の手前には、進路ごとの行き先を表示する道路標識が設けられる。また、道路の路面には、横断歩道のゼブラマーク、制限速度のマーク、停止線のマークなどの道路標識が描画されてもよい。図1には、複数の速度標識41と、行き先標識42とが図示されている。この中、自動車1から離れた速度標識41は、車道にはみ出た積雪61により遮られて、車内から直接的に視認することができない。
そして、自動車1は、乗員室に乗員を乗せた状態で道路を走行する。自動車1は、自動運転による制御または乗員の操作により加速し、減速し、左右へ操舵される。これにより、自動車1は、制限速度で道路を走行し、停止線において停車し、交差点で所望の方向へ進行し、乗員の目的地などへ向けて移動できる。
【0021】
ところで、このような自動車1の移動において、自動車1に乗車した運転者を含む乗員が、自動車1が正しく移動しているかを確認したい場合がある。
たとえば、自動運転中の場合、降雪や豪雨などの気象条件により十分な視野が確保できない場合、または積雪61や土砂崩れなどにより道路環境が変化している場合には、乗員は、自動車1が正しく移動しているかを自ら確認したいと考える可能性が高い。
【0022】
しかしながら、乗員が自動車1の走行を自ら確認することは、必ずしも容易ではない。たとえば、初めて訪れる見知らぬ土地の道路の場合、しばらく訪れていない間に道路沿いの景色が変化している場合、または新たな道路ができて道路状況が変化している場合、自らの記憶などに基づいて確認することは困難である。この場合、乗員は、道路において離散的に設けられる交差点の行き先標識42や国道の番号標識などによりかろうじて確認できるだけである。
しかも、降雪や豪雨などにより周辺の景色を確認すること自体が難しい状況もあり得る。
したがって、自動車1が正しく移動しているかを確認しようとする場合、乗員は長い時間をかけて車外を観察することが必要になる。しかも、長い時間をかけて車外を観察したとしても、十分に確認できないこともあり得る。
【0023】
このように、自動車1では、自動車1が正しく移動しているかを容易に確認できるようにすることが求められている。
【0024】
図2は、図1の自動車1に搭載される対象物情報提供装置10の構成の説明図である。
図2の対象物情報提供装置10は、GPS(Global Positioning System)受信装置11、無線通信装置12、車外カメラ13、車内カメラ14、記憶部15、タイマ16、表示装置17、およびこれらが接続されるマイクロコンピュータ18、を有する。
マイクロコンピュータ18は、たとえばECU(Electric Control Unit)として自動車1に設けられるものでよい。マイクロコンピュータ18は、たとえば記憶部15に記憶されたプログラムを読み込んで実行する。これにより、マイクロコンピュータ18に、対象物情報取得部21、出力制御部22、が実現される。
【0025】
GPS受信装置11は、複数のGPS衛星からの電波を受信し、これにより自動車1の位置情報を得る。また、GPS受信装置11は、時間を変えて計測された複数の位置に基づいて、自動車1の移動方向および移動速度を得ることもできる。
【0026】
無線通信装置12は、たとえば商用携帯用電波や小規模無線通信電波を送受することにより、図示外のサーバなどとデータを送受する。
【0027】
車外カメラ13は、自動車1の前方などの周囲を撮像するカメラである。可視光の車外の撮像画像には、自動車1が走行する道路の路面、道路沿いの標識などの視認可能な状態にある対象物が撮像され得る。
なお、視認可能な状態にある対象物とは、車内の乗員から、他の物体により遮られることなく視認可能な状態にあるものをいう。そして、悪天候や積雪などの変化する走行環境によりたとえば一時的に視認がし難くなった状態にあるものは、視認可能な状態にある対象物に含まれる。
【0028】
車内カメラ14は、車室を撮像するカメラである。車内の撮像画像には、たとえば乗員の視野を認識または推定するために用いることができる顔などが撮像され得る。
【0029】
記憶部15は、マイクロコンピュータ18が実行するプログラムやそのプログラムの実行の際に使用するデータなどを記憶する。本実施形態では、たとえば視野内の対象物の位置、表示内容などのデータが記憶されてよい。視野内の対象物には、たとえば自動車1が進行する道路の路面に描画された標識、道路沿いに設けられた標識および信号、自動車1が進行する道路の近くに存在するランドマーク、などがある。記憶部15には、これらの標識、信号、ランドマークそのものの画像や、対応する画像が記憶される。
【0030】
タイマ16は、時間を計測する。タイマ16は、制御タイミングなどを計測できる。
【0031】
表示装置17は、乗員に対して画像を表示するものである。本実施形態では、乗員の視野に対して画像を表示する。このような表示装置17には、たとえば、乗員に装着するヘッドマウントディスプレイ装置、フロントガラスに映像を投影するプロジェクタ装置、がある。
【0032】
対象物情報取得部21は、たとえば自動運転中に自動車1が進行する道路または周囲に存在する対象物であって、自動車1の乗員により既に視認可能な状態にある視野内の対象物を特定し、その特定した対象物に対応する画像情報を出力制御部22に表示させる。
【0033】
出力制御部22は、表示装置17による表示を制御する。
基本的には、既に視認可能な状態にあるはずの視野内の対象物が有視界で視認可能な状態にない場合に、視野内の対象物が有視界で視認可能となるタイミングに基づいて、該視野内の対象物に対応する画像を、表示装置17に視認可能に表示させる。視野内の対象物に対応する画像は、たとえば乗員の視野において視野内の対象物が視認される方向または位置に沿った位置に、表示させる。
また、表示されている視野内の対象物が有視界で視認可能な状態になった場合、その後に直ちに視野内の対象物の画像の表示を終了する。
【0034】
次に、対象物情報提供装置10による、視野内の対象物の情報の提供処理について説明する。
図3は、図2の対象物情報取得部21による処理の一例を示すフローチャートである。
対象物情報取得部21は、図3の処理を繰り返し実行する。
【0035】
図3の対象物情報の取得処理において、対象物情報取得部21は、まず、自動車1の位置および進行方向を取得し(ステップST1)、自動車1が走行する道路において進行方向に存在する対象物や該道路の周囲に存在する対象物を特定する(ステップST2)。
たとえば、対象物情報取得部21は、GPS受信装置11から、自動車1の位置および進行方向を取得する。
そして、対象物情報取得部21は、取得した自動車1の位置および進行方向に基づいて、自動車1の進路前方において自動車1から遮蔽物により遮られることなく視認可能な所定の抽出範囲(たとえば1分程度で移動する範囲)を特定し、その抽出範囲内に存在する対象物の情報を記憶部15から取得する。
これにより、対象物情報取得部21は、自動車1が走行する道路に存在する対象物や該道路の周囲に存在する1乃至複数の対象物であって、自動車1から遮蔽物により遮られることなく視認可能なものを特定できる。
ここで、遮蔽物は、道路またはその周囲に固定的に設置された家などの構造物をいう。これにより、たとえば家の陰に隠れて道路から視認することができない側道の標識などは抽出対象物から除くことができる。
【0036】
次に、対象物情報取得部21は、自動車1に乗車している乗員の視野を認定し(ステップST3)、視野内の対象物を特定する(ステップST4)。
たとえば、対象物情報取得部21は、車内カメラ14による車内の撮像画像に基づいて乗員の視線および視野範囲を認定する。なお、対象物情報取得部21は、予め設定された乗員の視野の情報を取得してもよい。
そして、対象物情報取得部21は、認定した乗員の視線および視野範囲に基づいて、既に抽出した1乃至複数の対象物の中で、該視野の範囲内のものを特定する。自動車1が進行する道路または周囲に存在する1乃至複数の対象物から、認識または推定された視野内のものを特定する。
【0037】
次に、対象物情報取得部21は、視野内の対象物が複数であるか否かを判断する(ステップST5)。
複数の視野内の対象物が特定されている場合、対象物情報取得部21は、最も自動車1の近くのものを選択する(ステップST6)。現在の自動車1の位置に最も近いものを選択する。
【0038】
1つの視野内の対象物を特定または選択した後、対象物情報取得部21は、該1つの視野内の対象物の表示を出力制御部22に指示する(ステップST7)。
【0039】
図4は、図2の出力制御部22による処理の一例を示すフローチャートである。
出力制御部22は、図4の出力処理を、繰り返し実行する。出力制御部22は、対象物情報取得部21から出力指示があった場合に図4の出力処理を実行してもよい。
【0040】
図4の対象物情報の出力処理において、出力制御部22は、まず、対象物情報取得部21からの出力指示の有無を確認する(ステップST11)。出力指示がない場合、出力制御部22は、図4の処理を終了する。
【0041】
出力指示がある場合、出力制御部22は、出力指示に係る視野内の対象物が通常のクリアな有視界で視認可能な距離になりそうか否かを繰り返し判断する(ステップST12)。
ここで、通常のクリアな有視界で視認可能な距離とは、たとえば100メートル程度の距離でよい。
そして、通常のクリアな有視界で視認可能な距離になりそうである場合、有視界で視認される前に、出力制御部22は、出力指示に係る視野内の対象物の情報を、表示装置17に表示させる(ステップST13)。出力制御部22は、たとえば記憶部15から、出力指示に係る視野内の対象物に対応する表示マークを読み込み、それを乗員の視野において、視野内の対象物が視認される方向となる位置に表示させる。
これにより、表示装置17は、乗員の視野において視野内の対象物が視認される方向の位置に、出力指示に係る視野内の対象物に対応する表示マークが表示される。表示マークの表示が開始される。
【0042】
表示を開始した後、出力制御部22は、出力指示に係る視野内の対象物が実際に有視界で視認可能になったか否かを繰り返し判断する(ステップST14)。
そして、実際に有視界で視認可能になった場合、出力指示に係る視野内の対象物の情報の表示を終了させる(ステップST15)。表示装置17は、表示していた視野内の対象物に対応する表示マークの表示を終了する。
【0043】
図5は、視界良好時において視野内の対象物の情報を提供する状態の一例の説明図である。
【0044】
図5(A)は、図1の位置にある自動車1から前方を視認した場合の車窓風景である。視界良好であるため、道路の左側には、複数の速度標識41が道路沿いに離散的に並べて視認可能なはずの状態にある。しかしながら、実際には、遠くの速度標識41は、車道にはみ出した積雪61により遮られて、車内から直接的に視認することができない。
そして、自動車1が道路に沿って前へ進行すると、図5(B)に示すように、図中に破線で示した視野において速度標識41が視認される位置に、視野内の速度標識の画像51が表示される。
その後、速度標識の画像51を有視界で視認可能な距離まで自動車1が進むと、図5(C)に示すように、実際の速度標識41が車内から視認可能となる。そして、速度標識の画像51は消去される。
この場合、乗員は、速度標識41が視認可能となる前に、図5(B)の視野内に表示された速度標識の画像51を視認できる。その後、図5(C)に示すように実際に速度標識41が視認可能な状態なると、乗員はその実際の速度標識41を視認できる。
乗員は、画像として表示された速度標識41と、その直後に実際に視認した速度標識41とを、それらの位置を重ねて連続的に視認することにより、自動車1が正しく進行していることを容易に確認できる。
【0045】
以上のように、本実施形態では、自動車1から遮蔽物により遮られることなく視認可能な視野内の対象物についての情報を、それが実際には有視界で視認されない場合に出力する。たとえば、視野内の対象物が有視界で視認可能となるタイミングに基づいて、視野内の対象物の情報の出力を開始する。これにより、乗員は、車両から遮蔽物により遮られることなく視認可能な視野内の対象物であって、既に視認可能な状態にあるはずの視野内の対象物について認識することができる。また、その後に実際に視野内の対象物が有視界で視認できる場合には、その情報を予め得た状態で容易に確認できる。視野内の対象物の情報と実際に視認したものとが一致する確認することにより、自動車1が正しく移動していることを容易に確認できる。
特に、乗員に情報を出力して視認させる対象物を、自動車1から遮蔽物により遮られることなく視認可能なものとすることにより、乗員が視線を大きくずらすことなく確認し易い対象物を確認対象とすることができる。
【0046】
本実施形態では、たとえば出力装置が自動車1の乗員の視野に表示する表示装置17であり、乗員の視野において視野内の対象物が視認される方向または位置に沿った位置に、視野内の対象物の情報を視認可能に表示することにより、既に視認可能な状態にあるはずの視野内の対象物についての情報を、確実に乗員に示すことができる。また、たとえば出力後に実際に視野内の対象物を視認した場合に、視野内の対象物と情報とを容易に関連付けて理解することができる。これに対して、仮にたとえば自動車1の乗員の視野の外や周辺視野に表示した場合、実際に有視界で視認した視野内の対象物と情報との関連性を即座に理解できない可能性がある。
【0047】
本実施形態では、出力していた視野内の対象物が有視界で視認可能な状態になった場合、所定のタイミングで視野内の対象物の情報の出力を終了する。これにより、特定の視野内の対象物がいつまでも出力され続けないようにできる。
また、複数の視野内の対象物を連続的に出力することが可能になる。その結果、乗員は、連続的に出力される複数の視野内の対象物に基づいてそれぞれを有視界で確認できる。乗員は、複数の連続的な確認をすることにより、自動車1が正しく移動していることについて確証を得ることが可能になる。
【0048】
本実施形態では、自動車1の位置および進行方向に基づいて、自動車1が進行する道路または周囲に存在する対象物を特定する。そして、自動車1が進行する道路または周囲に存在する対象物から、可視認識装置により認識または推定された視野内のものを選択して、視野内の対象物を特定する。よって、視野内の対象物を実際に特定し、その情報を出力できる。
【0049】
本実施形態では、視野内の対象物として複数がある場合、自動車1の近くのものを優先して特定する。よって、気象条件などの実際の環境下においても有視界で視認可能なものを視野内の対象物として特定できる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る自動車1の対象物情報提供装置10について説明する。以下の説明では、第1実施形態と同一の符号を使用し、主に第1実施形態との相違点について説明する。
【0051】
図6は、第2実施形態における対象物情報取得部21の処理の一例を示すフローチャートである。
図6のステップST3において車内カメラ14の車内の撮像画像に基づいて乗員の視野を取得した後、対象物情報取得部21は、車外カメラ13による車外の撮像画像を取得し(ステップST21)、それらの双方に基づいて、撮像されていない視野内の対象物を特定する(ステップST22)。
たとえば、対象物情報取得部21は、車外カメラ13から、可視光による車外の撮像画像を取得する。可視光による車外の撮像画像は、実際に乗員が有視界で視認可能な車外を撮像した画像に好適に対応し得る。
そして、対象物情報取得部21は、特定した乗員の視野に基づいて、視野内の対象物を特定する。
また、対象物情報取得部21は、取得した可視光による車外の撮像画像に基づいて、撮像画像に実際に撮像されている対象物を特定する。
その後、予め特定していた視野内の対象物から、撮像されている対象物を除いて、視認可能な状態にない視野内の対象物を特定する。
【0052】
次に、対象物情報取得部21は、視野内の対象物が複数であるか否かを判断する(ステップST5)。
複数の視野内の対象物が特定されている場合、対象物情報取得部21は、最も自動車1の近くのものを選択する(ステップST6)。現在の自動車1の位置に最も近いものを選択する。
1つの視野内の対象物を特定または選択した後、対象物情報取得部21は、該1つの視野内の対象物の表示を出力制御部22に指示する(ステップST7)。
【0053】
図7は、視界不良時において視野内の対象物の情報を提供する状態の一例の説明図である。
【0054】
図7(A)は、図1の位置ある自動車1から前方を視認した場合の車窓風景である。たとえば積雪61により、道路沿いに離散的に並べて設けられた複数の速度標識41の中の、奥側の速度標識41は視認できない。また、降雪による視界不良のため、行き先標識42も視認可能な状態にない。
この状態から自動車1が道路に沿って前へ進行すると、図7(B)に示すように、図中に破線で示した視野において、積雪61の上に、奥側の速度標識の画像51が表示される。積雪61の後側には、視野内の奥側の速度標識41が存在している。
さらに自動車1が道路に沿って前へ進行すると、図7(C)に示すように、積雪61の後ろに隠れていた視野内の奥側の速度標識41が有視界で視認可能になる。奥側の速度標識の画像51は消去され、新たに視野内の行き先標識の画像52が、行き先標識42が視認される方向の位置に表示される。
その後さらに自動車1が道路に沿って前へ進行すると、図7(D)に示すように、行き先標識42が視認可能になる。そして、行き先標識の画像52は消去される。
この場合、乗員は、視界不良であるにもかかわらず、視野内の奥側の速度標識41と、視野内の行き先標識42とを、視野において視認される方向の位置に表示された画像として認識できる。そして、それぞれの画像の認識後に実際にそれぞれの視野内の標識を視認することができる。
乗員は、画像として表示された標識と、その直後に実際に視認した標識とにより、自動車1が正しく進行していることを容易に確認できる。特に、複数の標識について連続的に確認できるので、自動車1が正しく進行していることについて確証を得ることができる。
【0055】
以上のように、本実施形態では、自動車1の位置および進行方向に基づいて、自動車1が進行する道路または周囲に存在する対象物を特定する。そして、自動車1が進行する道路または周囲に存在する対象物から、視野内のものであって、撮像装置による可視光の撮像画像において視認可能に撮像されていないものを、視野内の対象物として特定する。よって、視野内の対象物を実際に特定し、その情報を出力できる。
しかも、撮像装置による可視光の撮像画像において視認可能に撮像されているもの特定するようにしているので、降雪や豪雨などの気象条件により十分な視野が確保できない場合には、その実際の視野に基づいて、視野内の対象物を特定できる。これにより、気象条件などの実際の環境下において十分な視野が得られない場合でも、その環境下において有視界で視認可能な視野内の対象物を特定することができる。
【0056】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る自動車1の対象物情報提供装置10について説明する。以下の説明では、第1実施形態と同一の符号を使用し、主に第1実施形態との相違点について説明する。
【0057】
図8は、第3実施形態の出力制御部22による処理の一例を示すフローチャートである。
出力制御部22は、図8の出力処理を、繰り返し実行する。出力制御部22は、対象物情報取得部21から出力指示があった場合に図8の出力処理を実行してもよい。
【0058】
図8の対象物情報の出力処理において、出力制御部22は、ステップST11において出力指示があると判断した後、視界の良否について判断する(ステップST31)。
出力制御部22は、車外カメラ13の車外の撮像画像を用いて、視界の良否を判断する。
たとえば、画像の全体が白味かかっている場合、降雪などにより視界が不良であると判断する。それ以外の場合は、視界が良好であると判断する。視界が良好である場合、出力制御部22は、図8の処理を終了する。
【0059】
視界が不良である場合、出力制御部22は、出力指示に係る視野内の対象物が通常のクリアな有視界で視認可能な距離になりそうか否かを繰り返し判断し(ステップST12)、その後の表示処理を実行する。
【0060】
図9は、視界の良否に応じた視野内の対象物の情報提供の一例の説明図である。
視界が不良である場合、図9(A)に示すように、積雪61の上に、速度標識の画像51が表示される。
これに対して、視界が良好である場合、図9(B)に示すように、速度標識の画像51は、表示されなくなる。
【0061】
以上のように、本実施形態では、自動車1の乗員の視野が他の移動体または積雪61により遮られている視界不良の場合にのみ、それらと重ねて視野内の対象物の情報を出力する。よって、乗員の視野が他の移動体または積雪61により遮られている視界不良の場合には、情報の助けにより視野内の対象物を認識できる。しかも、視界不良でない状況においては視野内の対象物が出力されないので、たとえば乗員が確認をしない状況下においては視野内の対象物が過度に出力されないようになり、煩わしさや慣れを乗員に与えないようにできる。
また、乗員の視野が他の移動体または積雪61以外のもの、たとえば道路沿いの建物のような固有の視界遮蔽物により視認できないようになっている場合においては、その対象物の情報を出力しないようにできる。
【0062】
なお、本実施形態では、積雪61の場合のみ視界が不良であると判断している。
この他にもたとえば、視界内に他の自動車1などの移動体が存在して、他の移動体の後側について直接的に視認することができない場合においても、視界が不良であると判断してよい。この場合、他の自動車1の後側に存在する道路標識に対応する画像を、他の自動車1と重ねて表示することができる。
【0063】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…自動車(車両)、10…対象物情報提供装置、11…GPS受信装置、12…無線通信装置、13…車外カメラ、14…車内カメラ、15…記憶部、16…タイマ、17…表示装置(出力装置)、18…マイクロコンピュータ、21…対象物情報取得部、22…出力制御部、41…速度標識(視野内の対象物)、42…行き先標識(視野内の対象物)、51…速度標識の画像(視野内の対象物の情報)、52…行き先標識の画像(視野内の対象物の情報)、61…積雪
図1
図2
図3
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図7
図8
図9