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特許7164945補修用シール、補修用シールの製造方法及び補修構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】補修用シール、補修用シールの製造方法及び補修構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/07 20060101AFI20221026BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
E04F13/07 G
B32B27/00 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017218715
(22)【出願日】2017-11-14
(65)【公開番号】P2019090204
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕明
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-025271(JP,A)
【文献】特開2009-196173(JP,A)
【文献】米国特許第06607621(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に少なくとも1層以上の下塗層と、着色層と、クリヤー層とをこの順に配した化粧パネルに使用される補修用シールであって、
前記補修用シールは、前記化粧パネルと同じ表面特性を有し、
透明又は半透明な樹脂製の基材シート
記基材シートの表面側に設けられ、前記着色層と同一の塗料からなる補修着色層、及び前記補修着色層の表面側に設けられ、前記クリヤー層と同一の塗料からなる補修クリヤー層を有する補修多層体と、
前記基材シートの裏面側に設けられ、透明又は半透明な接着層と、
前記接着層の裏面側に剥離シートと、を備え、
前記補修用シールを前記剥離シートから剥がし、前記補修用シールを前記化粧パネルに貼付した状態の前記補修用シールの側部において、前記基材シート及び前記接着層を通して前記化粧パネルの前記着色層の色を見ることができることを特徴とする補修用シール。
【請求項2】
前記基材シートは、芳香族系ポリイミドからなる請求項1記載の補修用シール。
【請求項3】
前記接着層は、シリコーン系樹脂からなる請求項1記載の補修用シール。
【請求項4】
前記基材シートと前記補修着色層との間に設けられ、透明、半透明又は前記補修着色層と同色であるプライマー層を有する請求項1記載の補修用シール。
【請求項5】
前記剥離シートは、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリイミド系の樹脂シート又は前記樹脂シートに離型剤を塗布したシートである請求項1に記載の補修用シール。
【請求項6】
基板の上に少なくとも1層以上の下塗層と、着色層と、クリヤー層とをこの順に配した化粧パネルに使用する補修用シールの製造方法であって、
透明又は半透明な樹脂製の基材シート、前記基材シートの裏面側に設けられた透明又は半透明な接着層、及び前記接着層の裏面側に設けられた剥離シートを有する中間シートを準備する第1準備工程と、
前記下塗層が形成された前記基板と同じ表面特性を有するベースパネルを準備する第2準備工程と、
前記剥離シートが前記ベースパネルの表面側に向いた状態で前記中間シートを載置し、前記基材シート上に前記着色層と同一の塗料を塗装して補修着色層を形成した後、前記クリヤー層と同一の塗料を塗装して補修クリヤー層を形成する塗装工程と、
からなることを特徴とする補修用シールの製造方法。
【請求項7】
前記ベースパネルは、前記化粧パネルである請求項6の補修用シールの製造方法。
【請求項8】
基板の上に少なくとも1層以上の下塗層と、着色層と、クリヤー層をこの順に配した化粧パネルに補修用シールを用いて補修した補修構造であって、
前記化粧パネルは、表面に少なくとも前記クリヤー層が剥離された凹部を有し、
前記補修用シールが前記凹部を覆うように前記化粧パネルに貼付され、
前記補修用シールは、前記化粧パネルと同じ表面特性を有し、
前記補修用シールは、透明又は半透明な樹脂製の基材シート
記基材シートの表面側に設けられ、前記着色層と同一の塗料からなる補修着色層、及び前記補修着色層の表面側に設けられ、前記クリヤー層と同一の塗料からなる補修クリヤー層を有する補修多層体と、
前記基材シートの裏面側に設けられ、透明又は半透明な接着層と、
前記接着層の裏面側に剥離シートと、を備え、
前記補修用シールを前記剥離シートから剥がし、前記補修用シールを前記化粧パネルに貼付した状態の前記補修用シールの側部において、前記基材シート及び前記接着層を通して前記化粧パネルの前記着色層の色を見ることができることを特徴とする補修構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材用の補修用シール、補修用シールの製造方法及び補修構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に化粧パネルに使用される補修用シールが開示されている。化粧パネルは、基板の上に下塗層(下塗り層)と、着色層(上塗り層)と、クリヤー層(コート層)とをこの順に配している。補修用シールは、化粧パネルと同一の塗料を使用し、化粧パネルと同一の塗膜構成を有する補修塗膜体を剥離シート(シート)の表面に形成している。補修塗膜体は、化粧パネルを形成する際、基板上に剥離シートを貼り付け、一緒に塗装している。このため、補修塗膜体は、下塗層と、着色層と、クリヤー層とをこの順に配している。この補修用シールによれば、補修後の外観の色差がなく、良好となる。
【0003】
なお、特許文献2には、化粧パネル(被着体)の色を隠蔽するための顔料を含有する基材シートの表面に、着色層にあたる絵柄模様層、クリヤー層にあたるアンダーコート層及び表面保護層を順次設けた化粧シートが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、以下の補修方法が開示されている。この補修方法では、まず、多彩模様塗膜の塗装時に、多彩模様塗膜に使用した塗料と同一の塗料を使用して、剥離シート上に多彩模様塗膜の構成と同じである着色層(ベース層及び多彩模様層)、クリヤー層を順次設けたパッチフィルムを作製する。そして、パッチフィルムを多彩模様塗膜の欠損部より多少大きめに切断し、剥離シートを剥離したパッチフィルムを接着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-25271号公報
【文献】特開2013-22836号公報
【文献】特開平10-220033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の補修用シールは、補修塗膜体が化粧パネルの塗膜構成と同じであるため、補修塗膜体の柔軟性が劣る傾向がある。このため、化粧パネルの表面に少なくともクリヤー層が剥離されたねじ穴等の凹部があり、その凹部を補修するために、補修用シールから剥離シートを剥がし、化粧パネルのクリヤー層上に貼付作業時に補修塗膜体にクラックが入り易く、クラック発生部の補修塗膜体が剥離してしまう可能性がある。特に、化粧パネルにねじ穴(ビス穴)があり、そのねじ穴を補修する際、ねじ穴内のパテ埋めが無い箇所やそのパテ埋めが不十分な箇所では、補修塗膜体とねじ頭との間に空間ができるため、補修塗膜体に生じる歪みによりクラックが発生し、パテ等と接着していない補修塗膜体が剥離する。
【0007】
なお、特許文献2の化粧シートは、化粧パネルの着色層(上塗り層)やコート層と同一の塗膜構成であることを意図していないことから、色合わせが困難であり、隠蔽させた基材シート及び着色層の縁部が斜視確認時に目立つ可能性があることから、補修用シールに用いることが困難である。
【0008】
また、特許文献3のパッチフィルムでは、ベース色と絵柄模様層との色が異なることから、絵柄模様塗膜の欠損部に接着したパッチフィルムの補修部分を見た場合、パッチフィルムの切断面の縁部が斜視確認時に特に目立つ恐れがある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、貼付作業時にクラックや剥離が発生し難く、かつ補修後に目立ち難い補修用シールを提供することを解決すべき課題としている。また、貼付作業時にクラックや剥離が発生し難く、かつ補修後に目立ち難い補修構造を提供することも解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様の補修用シールは、基板の上に少なくとも1層以上の下塗層と、着色層と、クリヤー層とをこの順に配した化粧パネルに使用される補修用シールであって、
前記補修用シールは、前記化粧パネルと同じ表面特性を有し、透明又は半透明な樹脂製の基材シートを備え、前記基材シートの表面側に設けられ、前記着色層と同一の塗料からなる補修着色層、及び前記補修着色層の表面側に設けられ、前記クリヤー層と同一の塗料からなる補修クリヤー層を有する補修多層体と、前記基材シートの裏面側に設けられ、透明又は半透明な接着層と、前記接着層の裏面側に剥離シートと、を備え、前記補修用シールを前記剥離シートから剥がし、前記補修用シールを前記化粧パネルに貼付した状態の前記補修用シールの側部において、前記基材シート及び前記接着層を通して前記化粧パネルの前記着色層の色を見ることができることを特徴とする。
【0011】
第1の態様の補修用シールは、補修多層体が基材シート、補修着色層及び補修クリヤー層を有し、補修多層体が化粧パネルの下塗層と同様の塗膜を有さないことから、補修多層体が比較的薄くなる。また、補修多層体が樹脂製の基材シートを有し、柔軟性を有している。このため、化粧パネルの表面の補修作業時に補修多層体にクラックが入り難く、補修用シールが化粧パネルから剥離し難い。
【0012】
また、この補修用シールは、化粧パネルと同じ表面特性を有しているので、補修用シール自体が目立ち難い。更に、基材シートが透明又は半透明であり、接着層も透明又は半透明であるため、化粧パネルに貼付した場合においても補修多層体の側面の縁取り部で基材シート及び接着層の色が視認され難い。特に、斜視確認時に化粧パネルの着色層が透けて見え、補修箇所が目立ち難い。
【0013】
したがって、第1の態様の補修用シールは、貼付作業時にクラックや剥離が発生し難く、かつ補修後に目立ち難い。
【0014】
また、基材シートの厚さは、約0.01mm~約0.2mmであり、この範囲であれば、塗装乾燥時にしわがより難く、化粧パネルからの出っ張りは目立ち難い。また、接着層の厚さは、約0.01mm~約0.1mmであり、この範囲であれば、補修用シールは目立ち難い。
【0015】
同一塗料とは、組成が同一であればよく、実際に貼付する化粧パネルの色と厳密に同一であることを意味しない。
すなわち、化粧パネルの塗料をそのまま使用することや、化粧パネルの経時での色変化を想定して、経時後の色と合うように色を微調整した塗料を使用することが可能である。
【0016】
本発明の第2の態様として、基材シートは芳香族系ポリイミドからなることが好ましい。
この場合、補修用シールが高い耐熱性を発揮し、かつ優れた寸法安定性も発揮する。また、樹脂シールの耐薬品性が高く、溶剤系塗料を使用できるため、補修用シールに溶解やしわが発生し難い。さらに、製造後の補修用シールにおいて、強熱乾燥で基材シートが変形し難く、しわがより難い。また、基材シートと補修着色層との間の密着性は良好である。
【0017】
本発明の第3の態様として、接着層は、シリコーン系樹脂からなることが好ましい。
この場合、補修用シールを製造する場合において、基材シートの表面に補修着色層と補修クリヤー層を塗装し、強熱乾燥される場合において、接着層の接着力の低下が発生し難くなる。
【0018】
本発明の第4の態様として、補修用シールは、基材シートと補修着色層との間に設けられ、透明、半透明又は補修着色層と同色であるプライマー層を有することが好ましい。この場合、基材シートと補修着色層との密着性を容易に高めることができる。
【0019】
本発明の第5の態様として、補修用シールは、剥離シートを有していることが好ましい。この場合、剥離シートとして、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリイミド系の樹脂シート又は前記樹脂シートに離型剤を塗布したシートが例示されるが、剥離シートは接着層から剥離可能で、補修用シールの製造工程で収縮や反りなど形状、寸法に異常が発生しない材料であれば特に制限はない。
【0020】
本発明の第の態様の補修用シールの製造方法は、基板の上に少なくとも1層以上の下塗層と、着色層と、クリヤー層とをこの順に配した化粧パネルに使用する補修用シールの製造方法であって、透明又は半透明な樹脂製の基材シート、前記基材シートの裏面側に設けられた透明又は半透明な接着層、及び前記接着層の裏面側に設けられた剥離シートを有する中間シートを準備する第1 準備工程と、
前記下塗層が形成された前記基板と同じ表面特性を有するベースパネルを準備する第2準備工程と、
前記剥離シートが前記ベースパネルの表面側に向いた状態で前記中間シートを載置し、前記基材シート上に前記着色層と同一の塗料を塗装して補修着色層を形成した後、前記クリヤー層と同一の塗料を塗装して補修クリヤー層を形成する塗装工程と、からなることを特徴とする。
【0021】
の態様の製造方法により、補修用シール部材を容易に製造できる。より詳細には、この製造方法では、化粧パネルの着色層やクリヤー層と同一の塗料を用いて補修用シールを製造するため、着色層と補修着色層とが同色となり、クリヤー層と補修クリヤー層とが同色となる。また、この製造方法では、剥離シートがベースパネルの表面側を向いた状態で中間シートをベースパネル上に載置して補修用シールを製造するため、補修用シールが化粧パネルの表面の凹凸と同様な形状の模様を呈している。また、この製造方法は、特に化粧パネルをロールコーター塗装する場合のように、被塗物と接触して塗装を行う場合に好適である。
【0022】
ベースパネルは、下塗層が形成された基板と同じ表面特性を有する。このベースパネルとしては、基板の上に下塗層を配した第1パネルの他、基板の上に下塗層及び着色層を施し、第1パネルと同じ表面特性を有する第2パネル、基板の上に下塗層、着色層及びクリ
ヤー層を配し、第1、2パネルと同じ表面特性を有する化粧パネル等を採用することができる。
【0023】
本発明の第の態様の補修用シールの製造方法として、ベースパネルは、化粧パネルであることが好ましい。この化粧パネルは、下塗層が形成された基板と同じ表面特性を有しており、この製造方法は、特に化粧パネルが高光沢な鏡面状の平坦な表面を有する場合に好適である。
【0024】
本発明の第8の態様の補修構造は、基板の上に少なくとも1層以上の下塗層と、着色層と、クリヤー層をこの順に配した化粧パネルに補修用シールを用いて補修した補修構造であって、前記化粧パネルは、表面に少なくとも前記クリヤー層が剥離された凹部を有し、前記補修用シールは、前記化粧パネルと同じ表面特性を有し、前記補修用シールが前記凹部を覆うように前記化粧パネルに貼付され、前記補修用シールは、透明又は半透明な樹脂製の基材シート、前記基材シートの表面側に設けられ、前記着色層と同一の塗料からなる補修着色層、及び前記補修着色層の表面側に設けられ、前記クリヤー層と同一の塗料からなる補修クリヤー層を有する補修多層体と、前記基材シートの裏面側に設けられ、透明又は半透明な接着層と、前記接着層の裏面側に剥離シートと、を備え、前記補修用シールを前記剥離シートから剥がし、前記補修用シールを前記化粧パネルに貼付した状態の前記補修用シールの側部において、前記基材シート及び前記接着層を通して前記化粧パネルの前記着色層の色を見ることができることを特徴とする。
【0025】
第8の態様の補修構造では、第1の様態の補修用シールで述べた効果を有し、化粧パネルの表面にキズ等の凹部があれば、凹部を補修し、補修箇所を目立たないようにすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の補修用シールは、貼付作業時にクラックや剥離が発生し難く、かつ補修後に目立ち難い。また、本発明の製造方法によれば、本発明の補修用シールを製造することができる。さらに、本発明の補修構造によれば、補修用シールが貼付作業時にクラックや剥離が発生し難く、かつ補修後に目立ち難い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態に係る化粧パネルの一部破断の斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る化粧パネルの模式拡大断面図である。
図3図3は、実施形態の補修用シールの模式拡大断面図である。
図4図4は、実施形態の補修構造の一部破談の斜視図である。
図5図5は、実施形態の補修用シールの製造方法において、第1、2準備工程時の模式拡大断面図である。
図6図6は、実施形態の補修用シールの製造方法において、第1塗装工程時の模式拡大断面図である。
図7図7は、実施形態の補修用シールの製造方法において、第2塗装工程時の模式拡大断面図である。
図8図8は、実施形態の補修用シールの製造方法において、切り出し工程時の模式拡大断面図である。
図9図9は、実施形態の補修構造の模式拡大断面図である。
図10図10は、実施形態でプライマー層を有する補修用シールの模式拡大断面図である。
図11図11は、実施形態の補修用シールの製造方法において、ベースパネルとして、化粧パネルを用いる第1、2準備工程時の模式拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0029】
本実施形態では、図1に示す建築用の化粧パネル1が用いられる。この化粧パネル1は複数枚が隣接して家屋等の構造体に対して配設されることにより、外壁等を構成するためのものである。
【0030】
なお、本実施形態の化粧パネルは外壁用のパネルに限られるものでは無く、内壁用等、各種の化粧パネルが適用され得る。
【0031】
本実施形態の化粧パネル1は光沢度80~100という高光沢な鏡面状の平坦な表面を有しているが、化粧パネル1の形状は、高光沢もの、平坦な表面に限定されるものではなく、所望の光沢度、形状を採り得る。
【0032】
化粧パネル1は、図2に示すように、窯業系の基板1aの上に塗膜層を形成したものである。塗膜層は、基板1aの側から順に、第1下塗層1bと、第2下塗層1cと、着色層1dと、クリヤー層1eからなっている。第1下塗層1b、第2下塗層1c、着色層1d、及びクリヤー層1eは、いずれも塗料からなる層である。
【0033】
第1下塗層1bは、基板1aと下塗層1cとの密着性確保のための層であり、化粧パネル1の組成や形状に応じた塗料が選択されている。第1下塗層1bに用いられる塗料の種類は、特に限定されるものでは無いが、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の塗料が用いられる。下塗層1bは、本実施形態の場合は、顔料を有していないウレタン系塗料からなっている。ウレタン樹脂系塗料を用いることは、基板1aの表層に浸透し、基板表面の強度を補強できる点から好ましい。
【0034】
第2下塗層1cは、平滑性や色など化粧パネル1が所望な外観を得るためのベースとなる層であり、化粧パネル1の所望の外観に応じた塗料が選択されている。第2下塗層1cに用いられる塗料の種類も、特に限定されるものでは無いが、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の塗料が用いられ、本実施形態の場合は、アクリル系塗料からなっている。アクリル系塗料を用いることは、平滑な塗膜外観を得やすい点から好ましい。
【0035】
第1下塗層1b及び第2下塗層1cの膜厚及び色は、化粧パネル1が所望な色、外観を得られれば、特に制限されるものではない。本実施形態の場合、第1下塗層1bの膜厚は約0.005~約0.1mmであり、第2下塗層1cの膜厚は約0.01~約0.1mmである。
【0036】
着色層1dは、化粧パネル1の色を最も決定付ける層であり、化粧パネル1の外観の色に応じた塗料が選択されている。着色層1dに用いられる塗料の種類は、特に限定されるものでは無いが、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、フッ素系等の塗料が用いられ、本実施形態の場合は、アクリルウレタン系塗料からなっている。アクリルウレタン系塗料を用いることは、平滑な外観を得やすい点から好ましい。
着色層1dの膜厚も、特に制限されるものではないが、本実施の形態の場合、約0.01~約0.1mmである。
【0037】
着色層1dに用いられる塗料に配合されている顔料等の種類は、特に限定されるものでは無いが、酸化チタン、弁柄、黄色酸化鉄、カーボンブラック、コバルトブルー等の無機系着色顔料、及びフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド等の有機着色顔料、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム等の体質顔料、アルミペースト、マイカ、シリカ、樹脂ビーズ等の意匠性材料等から適宜必要なものを使用することができる。
【0038】
着色層1dに用いられる塗料は、後述する補修用シール7の補修着色層70bを形成するためにも用いられる。
【0039】
クリヤー層1eは、艶外観を決定する層であり、また紫外線をカットし、着色層1dを保護する機能を有する層である。このクリヤー層1eは、後述する補修用シール7の補修クリヤー層70cと同様に透明又は半透明の層である。クリヤー層1eによって、化粧パネル1は光沢度80~100という高光沢な表面を形成している。クリヤー層1eに用いられる塗料の種類は、特に限定されるものでは無いが、ウレタン系、アクリル系、シリコン系、フッ素系等の塗料が用いられ、本実施形態の場合は、アクリルウレタン系塗料からなっている。アクリルウレタン系塗料を用いることは、高硬度な塗膜を得やすい点から好ましい。
クリヤー層1eの膜厚も、特に制限されるものではないが、本実施形態の場合、約0.01~約0.1mmである。
【0040】
下塗層1b、1c、着色層1d、クリヤー層1eに用いられる塗料は、塗料の形態が水性系、溶剤系、無溶剤系など、所望の外観、物性が得られるものが選択される。
また塗料には、必要に応じて、分散剤、表面調整剤、消泡剤、増粘剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の添加剤が配合できる。
【0041】
本実施形態では、塗膜層は以上の4つの層から構成されているが、これに限られるものでは無く、必要に応じて更に他の塗膜層を有しても良い。また、下塗層1b、1cは、1層からなっても良い。
【0042】
化粧パネル1には、躯体に固定するためのねじ穴3が貫設されており、ねじ穴3にはねじ5が捩じ込まれている。ねじ5は、ねじ頭5aが基板1a内に位置するようになっている。このため、図3及び図4に示すように、ねじ穴3の開口部を補修用シール7によって補修を行う。
【0043】
図3に示す様に、補修用シール7は、補修多層体70と接着層71とからなる。
補修多層体70は、基材シート70aと、基材シート70aの表面に設けられた補修着色層70bと、補修着色層70bの表面に設けられた補修クリヤー層70cとからなる。
【0044】
尚、補修クリヤー層70cは、補修着色層70bの表面側に形成されていれば足り、補修クリヤー層70cと補修着色層70bとの間に他の塗膜層等の層が介在されていても良い。
【0045】
また、後述する図10に示す様に、補修用シール8の様に、基材シート70aと補修着色層70bの間に透明、半透明又は着色層1dと同色であるプライマー層70dを有することができる。
【0046】
基材シート70aは、透明又は半透明の樹脂製のシートである。樹脂の種類は、特に限定されるものでは無いが、ポリイミド、ポリエステル等が用いられ、本実施形態の場合は、透明な黄金色から赤褐色を呈する芳香族系ポリイミド樹脂が好ましい。芳香族系ポリイミド樹脂を用いることは、耐熱性と寸法安定性の点から好ましい。
基材シート70aの厚さは、補修用シール7を化粧パネル1に貼りつけた際に、補修用シール7が目立たないならば、特に限定されるものではないが、化粧パネル1のクリヤー層1eの膜厚と略同等に設定されることが好ましい。本実施形態の場合、基材シート70aの厚さは、約0.01~約0.2mmである。0.01mm未満では、塗装乾燥時に塗膜表面にしわがよりやすく、0.2mmを超えると、補修用シールの厚みによる化粧パネルからの出っ張りが目立ち易い。この範囲であれば、補修用シールの化粧パネルからの出っ張りがほぼ目立たない。
【0047】
補修着色層70bは、本補修用シール7が貼りつけられる化粧パネル1の着色層1dと同一の塗料からなる塗膜層である。ここで、同一の塗料とは、同一の組成を有すれば足り、化粧パネル1の着色層1dと厳密に同一の色を有するものである必要はない。化粧パネル1の外観の色合いは、経年変化等により、本来有していた色とは異なる色合いを呈することがあるため、補修着色層70bの色は、この変化後の色に合わせる方が好ましい場合もある。従って、補修着色層70bの色と実際に補修用シール7の貼り付けられる化粧パネル1の経年変化前の製造時の着色層1dの色とは必ずしも一致するものでは無い。
補修着色層70bの厚さは、補修用シール7を化粧パネル1に貼りつけた際に、補修用シール7が目立たないならば、特に限定されるものではないが、化粧パネル1の着色層1dの膜厚と略同等に設定されることが好ましい。本実施形態の場合、補修着色層70bの厚さは、約0.01~約0.1mmである。
【0048】
補修クリヤー層70cは、本補修用シール7が貼りつけられる化粧パネル1のクリヤー層1eと同一の塗料からなる透明又は半透明の塗膜層である。ここで、同一の塗料とは、上記の補修着色層70bの場合と同様に、同一の組成を有すれば足り、化粧パネル1のクリヤー層1eと厳密に同一の色を有するものである必要はない。即ち、補修クリヤー層70cの色は、補修用シール7が貼り付けられる化粧パネル1の色に適合するように、透明又は半透明な色が選択され、補修クリヤー層70cの色と化粧パネル1を製造時のクリヤー層1eの色とは必ずしも一致するものでは無い。
補修クリヤー層70cの厚さは、補修用シール7を化粧パネル1に貼りつけた際に、補修用シール7が目立たないならば、特に限定されるものではないが、化粧パネル1のクリヤー層1eの膜厚と略同等に設定されることが好ましい。本実施形態の場合、補修クリヤー層70cの厚さは、約0.01~約0.1mmである。
【0049】
接着層71は、透明又は半透明な層であり、剥離シート72上に形成されている。即ち、接着層71は、補修多層体70の基材シート70aの裏面側に位置し、基材シート70aにおいて、補修着色層70bが形成された側とは反対側に形成されている。
接着層71は、補修多層体70を化粧パネル1に貼りつけるための樹脂である。樹脂の種類は、特に限定されるものでは無いが、シリコーン系、アクリル系、オレフィン系、エポキシ系等が用いられ、本実施形態の場合は、シリコーン系樹脂からなっている。シリコーン系樹脂を用いることは、加熱による接着力の低下が起きにくい点から好ましい。
【0050】
接着層71の厚さは、補修用シール7を化粧パネル1に貼りつけた際に、補修用シール7が目立たないならば、特に限定されるものではないが、本実施形態の場合、接着層71の厚さは、約0.01~約0.1mmである。
【0051】
剥離シート72は、接着層71から剥離可能なシートであり、補修用シール7を化粧パネル1に貼りつける際に、作業者は、剥離シート72から補修用シール7を剥がして、接着層71を介して補修多層体70を化粧パネル1に貼りつけるようになっている。
【0052】
剥離シート72としては、例えば、ポリオレフィン系やポリエステル系、ポリイミド系の樹脂シート等やこれらの樹脂シートに剥離剤を塗布したもの等が使用される。
【0053】
図10に示す、基材シート70aと補修用着色層70bの間にプライマー層70dを設ける場合には、プライマー層70dは、透明、半透明又は補修着色層70bと同色な層を得られる塗料を用いる。
このプライマー層70dは、基材シート70aと補修着色層70bとの間の密着性を向上するための塗膜層である。
このプライマー層70dを形成する塗料の種類は、特に限定されるものでは無いが、シリコーン系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系等の塗料が用いられ、本実施形態の場合は、エポキシ系樹脂からなっている。エポキシ系樹脂は、密着性向上効果が優れる点で好ましい。
【0054】
以下、補修用シール7と剥離シート72を合わせた構成を補修用シール部材700(図10のプライマー層70dを有する場合は701)と呼ぶ。
【0055】
以下に補修用シール部材700の製造方法を示す。まず、第1準備工程として、図5に示すように、中間シート9を準備する。中間シート9は、基材シート70aと、基材シート70aの裏面に設けられた接着層71と、接着層71の裏面に設けられた剥離シート72とからなる。上記した通り、基材シート70aの表面にはプライマー層70dを有することができる。
【0056】
また、第2準備工程として、ベースパネルとしての第1パネル15を準備する。第1パネル15は、基板1aと、基板1a上に設けられた第1、2下塗層1b、1cとからなる。そして、剥離シート72が第1パネル15の表面側に向いた状態で中間シート9を載置する。なお、基材シート70aから脱着可能なテープ等で中間シート9を第1パネル15に固定する。
【0057】
そして、第1塗装工程として、図6に示すように、溶剤系2液型アクリルウレタン塗料を第1パネル15及び中間シート9に塗装し、次いで、加熱強制乾燥する。これにより、第1パネル15上に着色層1dを形成するとともに、基材シート70a上に補修着色層70bを形成する。この着色層1dと補修着色層70bとは、同一の塗料から形成される。
【0058】
なお、ここでの同一塗料とは、同一組成、同一の色であることを意味する。すなわち第1塗装工程では、補修用シール7を所望な色、外観とするための補修着色層70bの色が選択され、この塗料にて着色層1dも形成される。
【0059】
また、第2塗装工程として、図7に示すように、溶剤系2液型アクリルウレタンクリヤー塗料をさらに着色層1d及び補修着色層70bの表面に塗装する。次いで、加熱強制乾燥する。これにより、着色層1d上にクリヤー層1eを形成するとともに、補修着色層70b上に補修クリヤー層70cを形成する。クリヤー層1eと補修クリヤー層70Cとは、同一の塗料から形成される。
【0060】
なお、ここでの同一塗料とは、同一組成、同一の色、外観であることを意味する。すなわち第2塗装工程では、補修用シール7を所望な色、外観とするための補修クリヤー層70cの色、外観が選択され、この塗料にてクリヤー層1eも形成される。
【0061】
この後、図8に細線で示すように、切り出し工程として、第1パネル15から補修用シール部材700を剥がし、所望の大きさに切り出す。こうして補修用シール部材700が容易に製造される。
【0062】
尚、図10に示すプライマー層70dを有する補修用シール8は、中間シートの基材シート70aの表面にエポキシ樹脂系塗料を塗装し、プライマー層70dを形成してしる中間シートを使用し、上記補修用シール部材701を製造する。
【0063】
この製造方法では、化粧パネル1の着色層1dやクリヤー層1eと各々同一の塗料を用いて補修用シール部材700を製造しているため、着色層1dと補修着色層70bとが同色となり、クリヤー層1eと補修クリヤー層70cとが同色となる。
この場合、補修用シールと添付する化粧パネルと補修用シールの色差△E*は3以下であれば目立ち難い。△E*は、好ましくは、2以下、更に好ましくは1以下である。これらの場合、目視によって補修用シールの色差は目立たない。
【0064】
また、この製造方法では、剥離シート72が第1パネル15の表面側を向いた状態で中間シート9を第1パネル15上に載置して補修用シール部材700を製造するため、補修用シール部材700が第1パネル15の表面特性の影響、すなわち目視確認できる表面の凹凸形状の影響を受けるため、化粧パネル1と同様な光沢や凸凹形状の外観を得ることができる。
特に、補修着色層70bやクリヤー層70cをロールコーターなど、中間シート9と接触する塗装機で塗装した場合は、化粧パネル1と同等の外観を得やすい。
【0065】
また図11に示すように、下塗層1b、1cを塗装した基板1aと同じ表面特性を有するベースパネルとして、化粧パネル1を用いて、中間シート9を上記補修用シール7の製造方法で製造することができる。
【0066】
以上の製造方法によって製造された補修用シール部材700により、実際の化粧パネル1の表面のねじ穴3を補修する場合には、図4、9に示すように、補修用シール部材700から剥離シート72を剥がし、補修用シール7を化粧パネル1のクリヤー層1e上に貼付し、密着させる。こうして、補修用シール7により化粧パネル1のねじ穴3を隠蔽する補修構造を得る。
【0067】
ねじ穴3は、化粧パネル1を固定するのに使用されるねじ5のねじ頭5aの大きさに合わせて空けられる。したがって、ねじ穴3の大きさは限定されるものではない。本実施形態では、ねじ穴3の直径が5~25mmである。
【0068】
補修用シール7の大きさは、ねじ穴3の断面積S1の2~10倍が好ましい。
本実施形態では、補修用シール7は、直径10~50mmの円形であり、補修用シール7の面積は、ねじ穴3の断面積S1の2~10倍となるようにする。
【0069】
補修用シール7がねじ穴3の断面積S1に対して2倍よりも小さければ、化粧パネルとの接着性が劣り、補修用シール7の端部からの剥離が発生し易くなる。また補修用シール7がねじ穴3の断面積S1に対して10倍を超えると、補修箇所が目立ち易くなる。
【0070】
(実施例と比較例)
実施形態の実施例と比較例を表1~表3に示す。
表1の実施例1~5と比較例1~5では、ベースパネルとして第1パネル15を用いて、補修着色層は紺色の溶剤系2液型アクリルウレタン塗料をスプレー塗装し、補修用クリヤー層は透明な溶剤系2液型アクリルウレタン塗料をエアースプレー塗装して試験体を作製した。
また表3の実施例6,7と比較例6では、ベースパネルとして化粧パネル1を用いて、補修着色層は白色の溶剤系2液型アクリルウレタン塗料をロールコーター及びフローコーターで塗装し、補修用クリヤー層は透明な溶剤型2液型アクリルウレタン塗料をフローコーターで塗装した。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
(実施例1)
実施形態の製造方法により実施例1の補修用シール部材700を製造した。この際、図5及び表1に示すように、基板1aと下塗層1bと下塗層1cの3層からなる第1パネル15上に中間シート9を載置した。中間シート9は、黄褐色の0.025mmのポリイミド製の基材シート70aと、膜厚0.03mmの無色透明なシリコーン系の接着層71と、剥離シート72とからなる。
【0075】
図6に示すように、これらの上から着色層1d及び補修着色層70bの紺色の塗料を150g/m2塗布し、平均膜厚0.05mmを得た。また、図7に示すように、その上にクリヤー層1e及び補修クリヤー層70cの塗料を130g/m2塗布し、平均膜厚0.05mmを得た。こうして得られた補修用シール7の厚さが0.155mmであった。補修用シール部材700の塗装乾燥後の状態に異常はなかった。
【0076】
図9に示すように、この補修用シール7にて化粧パネル1に補修した。そして、基材シート70aと補修着色層70bとの間の密着性の評価を行った。この評価は、補修クリヤー層70c側からX状に補修用シール7のみに切り込みを入れ、その位置にセロテープ(登録商標)を貼付し、その後、そのセロテープ(登録商標)を剥がし、補修着色層70bの剥離の有無を確認することによって行った。この結果、基材シート70aと補修着色層70bとの間での剥離はなかった。
【0077】
また、株式会社堀場製作所製ハンディー光沢計「グロスチェッカーIG-320」を用いて、化粧パネル1と補修用シール7の表面の光沢値を測定したところ、化粧パネル1及び補修用シール7は、光沢度90という高光沢な鏡面状の平坦な表面を有していた。
そして、化粧パネル1と補修用シール7との色差ΔE*を測定したところ、色差ΔE*は1未満であった。
なお、色差ΔE*の測定は、コニカミノルタ社製分光測色計CM-600dを使用して行った。色差測定条件は、測色径:φ8mm、視野:10°、光源:D65、モード:SCIである。
【0078】
直径11mmのねじ穴3に対して、直径20mmの補修用シール7を貼り付け、作業性、外観の確認を行った。ねじ穴断面積S1に対して補修用シール7の面積は、3.3倍となる。
【0079】
貼付作業時や貼付後に補修多層体70にクラックが入ることはなかった。また、補修箇所について、補修用シール7の表面側から3m離れた位置で正面から確認を行うとともに、表面側に対して傾斜した位置の左右及び上下からの斜視視認を行った。正面からの視認及び斜視視認において、化粧パネル1と補修用シール7の色は合っており、補修用シール7の側面の縁取り部が目立つこともなかった。これらの結果も表1に示す。
【0080】
このように、実施例1の補修多層体70は、柔軟な基材シート70aを有することから、貼付作業時や貼付後に補修多層体70にクラックが入らず、補修多層体70は、化粧パネル1から剥離し難い。
【0081】
また、この補修用シール7は、表面側から視認できる補修着色層70bよりも化粧パネル1側に位置する基材シート70aが透明であり、接着層71も透明であるため、補修多層体70の縁取り部で基材シート70a及び接着層71が視認され難い。特に、図9に示す斜視確認時に基材シート70aと接着層71から着色層1dの色が透けて見え、補修用シール7の側面がより目立ち難くなるため、補修箇所が目立ち難い。
【0082】
したがって、この補修用シール7は、貼付作業時及び貼付後にクラックや剥離が発生し難く、かつ補修後に目立ち難い。
【0083】
(実施例2)
実施形態の製造方法により、実施例2の補修用シール7を製造した。表1に示すように、ポリイミド製の基材シート70aの厚さは0.05mmである。他の構成は実施例1の補修用シール7と同様である。この補修用シール7も実施例1と同様に製造される。得られた補修用シール7の厚さは0.18mmであった。補修用シール部材700の塗装乾燥後の状態に異常はなかった。
【0084】
実施例2の補修用シール7によって実施例1と同様の補修構造が得られた。補修用シール7は、光沢度90という高光沢な鏡面状の平坦な表面を有していた。実施例2の補修用シール7の結果も表1に示す。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0085】
(実施例3)
実施形態の製造方法により、図10に示すような実施例3の補修用シール部材701を製造した。これらの補修用シール部材701では、基材シート70aと補修着色層70bの間にプライマー層70dを有している。
【0086】
このプライマー層70dは、予め中間シート9の基材シート70aの表面側に塗布されている。他の製造方法は実施例1と同様である。また、補修用シール部材701から剥離シート72を剥がし、補修用シール8を化粧パネル1のクリヤー層1e上に貼付し、密着させた。これにより、実施形態の補修構造を得ることができる。なお、実施形態においては、同一の構成については、同一の符号を付して説明を簡略化する。
【0087】
実施例3の補修用シール8では、表1に示すように、厚さが0.1mmの無色透明なポリエステル製の基材シート70aを採用している。また、プライマー層70dは、膜厚が0.03mmの透明なエポキシ樹脂系の塗料である。補修着色層70bの膜厚が0.04mmであり、補修クリヤー層70cの膜厚が0.04mmである。こうして得られた補修用シール8の厚さは0.24mmであった。補修用シール部材701の塗装乾燥後の状態に異常はなかった。
【0088】
実施例3の補修用シール8によって実施例1と同様の補修構造が得られた。補修用シール8は、光沢度85という高光沢な鏡面状の平坦な表面を有していた。実施例3の補修用シール8の結果も表1に示す。
【0089】
この補修用シール8は、基材シート70aと補修着色層70bとの間に透明なプライマー層70dを有するため、基材シート70aと補修着色層70bとの密着性が高まっている。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0090】
(実施例4)
実施形態の製造方法により、実施例4の補修用シール8を製造した。この際、表1に示すように、厚さが0.2mmの無色透明なポリエステル製の基材シート70aを採用している。また、プライマー層70dは、膜厚が0.03mmのエポキシ樹脂系の塗料である。補修着色層70bの膜厚が0.08mmであり、補修クリヤー層70cの膜厚が0.04mmである。こうして得られた補修用シール8の厚さは0.38mmであった。補修用シール部材701の塗装乾燥後の状態に異常はなかった。
【0091】
実施例4の補修用シール8によって実施例1と同様の補修構造が得られた。補修用シール8は、光沢度85という高光沢な鏡面状の平坦な表面を有していた。化粧パネル1との色差ΔEは1.5であった。実施例4の補修用シール8の結果も表1に示す。他の作用効果は実施例2と同様である。
【0092】
(実施例5)
実施形態の製造方法により実施例5の補修用シール7を製造した。この際、表1に示すように、厚さが0.1mmの無色透明なポリエステル製の基材シート70aを採用している。また、補修着色層70bの膜厚が0.04mmであり、補修クリヤー層70Cの膜厚が0.04mmである。他の構成は実施例1の補修用シール7と同様である。この補修用シール7も実施例1と同様に製造される。得られた補修用シール7の厚さは0.21mmであった。補修用シール部材700の塗装乾燥後の状態に異常はなかった。
【0093】
実施例5の補修用シール7によって実施例1と同様の補修構造が得られた。補修用シール7は光沢度82という高光沢な鏡面状の平坦な表面を有していた。実施例5の補修用シール7の結果も表1に示す。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0094】
(比較例1)
比較例1の補修用シールでは、表2に示すように、基材シートを採用していない。中間シートの代わりに補修着色層を
剥離可能な不透明なポリプロピレンシートを用い実施例1と同様に塗装し、このポリプロピレンシートから剥離した塗膜の補修着色塗膜側に不透明白色のシリコーン接着層を設けた。
【0095】
この補修用シールでは、基材シートを採用していないため、化粧パネルに貼付し難く、補修多層体にクラックを生じた。また、この補修用シールでは、白色で不透明な接着層を採用しているため、斜視確認において、補修箇所が目立った。
【0096】
(比較例2)
比較例2の補修用シールでは、表2に示すように、紙製の不透明な基材シートを採用している。他の製造方法は実施例1と同様である。
【0097】
この補修用シールでは、紙製の基材シートを採用しているため、塗装乾燥後にしわが発生しているとともに、光沢度が45と低く、かつ色差ΔEが5.5もあった。また、この補修用シールでは、基材シートが不透明であることから、斜視確認において、補修箇所が目立った。
【0098】
(比較例3、4)
比較例3、4の補修用シールでは、表2に示すように、接着層が白色不透明である。他の製造方法は実施例1と同様である。
【0099】
これらの補修用シールでは、補修用着色層が紺色であり、接着層が白色不透明であることから、補修多層体の縁取り部で接着層の白色が容易に視認され、斜視確認おいても、補修箇所が目立った。
【0100】
(比較例5)
比較例5の補修用シールでは、表2に示すように、アルミニウム製の不透明な基材シートを採用した。他の製造方法は実施例1と同様である。
【0101】
この補修用シールでは、アルミニウム製の基材シートを採用しているため、補修多層体の縁取り部で基材シートの銀色が容易に視認された。また、斜視確認おいても、補修箇所がやや目立った。
【0102】
(実施例6)
実施形態の製造方法により、表3の実施例6の補修用シール7を製造した。この際、図11及び表3に示すように、ベースパネルとしての化粧パネル1上に中間シート9を載置した。化粧パネル1は、第1下塗層1bと、第2下塗層1cと、白色の着色層1dと、クリヤー層1eとをこの順に配したものである。化粧パネル1の表面は実施形態の第1パネル15と同じ表面特性を有している。
【0103】
図6から図8の補修用シール部材の製造方法では、第1パネル15が化粧パネル1に置き換えて製造した。
着色層1d及び補修着色層70bとして、白色の溶剤系2液型アクリルウレタン塗料を90g/m塗装して形成した。また、クリヤー層1e及び補修クリヤー層70cとして、透明な溶剤系2液型アクリルウレタンクリヤー塗料をフローコーターにて80g/m塗装して形成した。そして、図8と同様、化粧パネル1から補修用シール部材700を剥がすとともに、所望の大きさに切り出す。こうして補修用シール部材700が製造される。
【0104】
実施例6の補修用シール7では、表3に示すように、ポリイミド製の基材シート70aの厚さは0.025mmである。着色層1d及び補修着色層70bの白色の平均膜厚0.035mmを得た。また、クリヤー層1e及び補修クリヤー層70cの平均膜厚0.025mmを得た。得られた補修用シール7の厚さは0.115mmであった。補修用シール部材700の塗装乾燥後の状態に異常はなかった。
【0105】
実施例6の補修用シール7によって実施例1と同様の補修構造が得られた。補修用シール7は、光沢度88という高光沢な鏡面状の平坦な表面を有していた。実施例6の補修用シール7の結果も表3に示す。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0106】
(実施例7)
実施形態の製造方法では、図10に示すような、表3の実施例7の補修用シール8を製造した。ベースパネルとしての化粧パネル1上に中間シート9を載置し、補修用シール部材701を製造する。中間シートの9の基材シート70aの表面側には、化粧パネル1上に載置する前に補修着色層70bと同じ白色のプライマー層70dを平均膜厚0.03mm形成している。他の製造方法は実施例6と同様である。
【0107】
実施例7で得られた補修用シール8の厚さは0.145mmであった。補修用シール部材701の塗装乾燥後の状態に異常はなかった。
【0108】
実施例7の補修用シール8によって実施例1と同様の補修構造が得られた。補修用シール8は、光沢度88という高光沢な鏡面状の平坦な表面を有していた。実施例7の補修用シール8の結果も表3に示す。
【0109】
この補修用シール8は、基材シート70aと補修着色層70bとの間に白色のプライマー層70dを有するため、基材シート70aと補修着色層70bとの密着性が高まっている。他の作用効果は実施例7と同様である。
【0110】
(比較例6)
比較例6の補修用シールでは、透明なプライマー層を有するアルミニウム製の不透明な基材シートを採用した。他の製造方法は実施例5と同様である。
【0111】
この補修用シールでは、アルミニウム製の基材シートを採用しているため、補修多層体の縁取り部で基材シートの銀色が容易に視認された。また、斜視確認おいても、補修箇所がやや目立った。
【0112】
以上において、本発明を実施例1~7に即して説明したが、本発明は上記実施例1~7に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0113】
例えば、上記実施例1~7では、第2準備工程において、基板の上に下塗層を配した第1パネル15をベースパネルとして用いたが、基板の上に下塗層及び着色層を施し、第1パネルと同じ表面特性を有する第2パネルをベースパネルとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1a…基板
1b、1c…下塗層(1b…第1下塗層、1c…第2下塗層)
1d…着色層
1e…クリヤー層
1…化粧パネル、ベースパネル
7、8…補修用シール
70a…基材シート
70b…補修着色層
70c…補修クリヤー層
70d…プライマー層
70…補修多層体
72…剥離シート
71…接着層
9…中間シート
15…第1パネル(ベースパネル)
3…ねじ穴、凹部
5…ねじ
5a…ねじ頭
S1…ねじ穴の断面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11