(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】時計の巻上げ用システム
(51)【国際特許分類】
G04B 7/00 20060101AFI20221026BHJP
G04B 11/02 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G04B7/00
G04B11/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018021525
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2021-01-22
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マロルダ, ブルーノ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-174163(JP,A)
【文献】実公昭49-3332(JP,Y1)
【文献】スイス国特許発明第378229(CH,A5)
【文献】特開2016-114509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 7/00
G04B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ぜんまい(7)を巻上げるための駆動輪列(300;300’)における第1部(301;301’)の第1歯車(6)用の爪装置(110;110’)と、
前記主ぜんまい(7)を巻上げるための
前記駆動輪列(300;300’)の第2部(302;302’)を、前記主ぜんまい(7)を巻上げるための前記駆動輪列(300;300’)の前記第1部(301;301’)と噛合するためのクラッチ装置(120;120’)と、
前記爪装置と前記クラッチ装置とを結合するための結合装置(130;130’
)と、
を含
み、
自動巻上げ時に、回転錘から前記クラッチ装置(120;120’)を介して前記駆動輪列の前記第1部(301;301’)の前記第1歯車(6)に伝達される力を用いて、前記第1歯車(6)が回転されるように構成される
システム(10;10’)。
【請求項2】
前記結合装置(130)は、前記爪装置が作動中に前記クラッチ装置(120)を噛合状態に維持するように配置される、及びまたは前記爪装置が作動解除中に前記クラッチ装置(120)の噛合状態及び解放状態を許可するように配置される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記爪装置は、少なくとも1つの歯(50a;50a’)が設けられた爪(5;5’)と、前記爪を前記爪装置の作動状態に対応する静止位置へ戻すための戻しばね(5a;5a’)とを含み、前記静止位置において前記少なくとも1つの歯は前記第1歯車(6)の歯列(6a)と干渉する、
請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記静止位置において、前記爪は
ストッパ(4a)と接触する、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記クラッチ装置は、水平クラッチ装置である、及びまたは中間歯車(2)が設けられたロッカレバー(3)を含むクラッチ装置であって、前記中間歯車(2)は、
前記クラッチ装置の噛合状態を定義する前記ロッカレバーの第1位置において、前記第1歯車(6)及び
第2歯車(1)と同時に噛合することを意図する、及び
前記クラッチ装置の解放状態を定義する前記ロッカレバーの第2位置において、前記第1歯車(6)と噛合しない、及びまたは前記第2歯車のみと噛合することを意図する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1歯車(6)
は角穴車である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記結合装置(130)は、前記クラッチ装置の部分(72
)と接触により協働する爪装置戻しばね部分(71)を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記結合装置(130’)は、前記爪装置のアーム(5c’)と、前記クラッチ装置の部分(72’
)と接触により協働する前記アームの部分(71’)とを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のシステムを含む、自動小型時計ムーブメント(100;100’)。
【請求項10】
切替車(11、12)を備えた自動巻上げ装
置を含む、
請求項9に記載の
自動小型時計ムーブメント(100;100’)。
【請求項11】
前記爪装置は
自動巻上げモジュールが前記ムーブメントに
組み立てられた状態において、時計職人により作動可能である、
請求項9または10に記載の
自動小型時計ムーブメント。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に記載のシステムまたは請求項9から11のいずれか一項に記載のムーブメン
トの動作方法であって、前記方法は手動巻上げ中に、
前記第1歯車の回転の影響下での前記爪の後退ステップ、
前記結合装置の影響下での前記クラッチ装置の開放ステップ、及び
前記第1歯車の回転の影響下での、前記クラッチ装置の解放ステップ
を含む、動作方法。
【請求項13】
自動巻上げ中に、
前記第1歯車の回転の影響下での前記爪の後退ステップ、
前記結合装置の影響下での前記クラッチ装置の開放ステップ、及び
前記主ぜんまい(7)を巻き上げるための
前記駆動輪列の
前記第2部(302;302’)の第2歯車の回転の影響下での、前記クラッチ装置の締結ステップ
を含む、請求項12に記載の動作方法。
【請求項14】
巻上げの
終了後、前記クラッチ装置を締結状態
に戻すために前記クラッチ装置へ前記結合装置を起動させるステップ
を含む、請求項12または13に記載の動作方法。
【請求項15】
第1駆動輪列部(301;301’)、及び切替車(11、12)を含む第2駆動輪列部(302;302’)と、
前記第1及び第2駆動輪列部を接続するための水平クラッチ装置(120;120’)と
を含
み、
自動巻上げ時に、回転錘から前記切替車(11、12)および前記水平クラッチ装置(120;120’)を介して主ぜんまい(7)に伝達される力を用いて、前記主ぜんまい(7)が巻き上げられるように構成される
主ぜんまい(7)用の巻上げ駆動輪列(300;300’)。
【請求項16】
請求項15に記載の巻上げ駆動輪列を含む、自動小型時計ムーブメント(100;100’)。
【請求項17】
前記ムーブメントは、爪装置(110;110’)を含み、前記爪装置は、
自動巻上げ装置の前記ムーブメントの残り部分への
組立状態において作動可能に配置される、
請求項16に記載の小型時計ムーブメント。
【請求項18】
請求項9から11または16または17のいずれか一項に記載のムーブメントまたは請求項15に記載の駆動輪列または請求項1から8のいずれか一項に記載のシステムを含む、時計(200;200’
)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計システムに関する。本発明はまた、当該システムを含む時計ムーブメントに関する。本発明はまた、当該システムまたは当該ムーブメントを含む時計に関する。本発明はまた、当該システム、当該ムーブメント、または当該時計の動作方法に関する。本発明はまた、主ぜんまいの巻上げ駆動輪列に関する。本発明はまた、当該駆動輪列を含む時計ムーブメントに関する。本発明はまた、当該駆動輪列または当該ムーブメントを含む時計に関する。
【背景技術】
【0002】
手動巻上げまたは自動巻上げ時計の主ぜんまいは、通常、香箱真に直角に取付けられるラチェットと、または少なくとも2つの香箱が設けられたムーブメントの場合には香箱胴と直接、協働するよう設計される爪により張力を受け続けている。更に詳しくは、爪は、主ぜんまいを巻き戻す方向にラチェットを不動化し、手動または自動巻上げ装置が作動すると解放する。
【0003】
従来の手動巻上げムーブメントが解体されると、時計職人は、爪を香箱胴またはラチェット歯列から後退させるという単一動作で主ぜんまいを巻き戻す選択肢がある。自動巻上げを有するムーブメントの場合、特に双方向自動巻上げを有するムーブメントの場合、自動巻上げ装置の設計を理由に、当該動作は不可能である。特に、その構造により、自動巻上げ装置はぜんまいのほどける方向へラチェットを不動化し、これは胴またはラチェット歯列から爪を後退させるだけでは主ぜんまいを巻き戻すには足りないことを意味する。
【0004】
当該自動巻上げ装置は、例えば、非特許文献1に記載の摩擦車を含む。当該歯車は、例えば、ピニオンに固定された3アーム摩擦ばねにより一方向的に結合された歯車及びピニオンを含む。ピニオンは、角穴車と噛み合い、歯車は自動巻上げ駆動輪列と噛み合う。自動巻上げ装置の動作中、歯車とピニオンは、ばねの3つのアームが、歯車の板に設けられた穴に留められることにより、ばねによって運動学的に連結される。手動巻上げ中、ラチェットと自動巻上げ装置の駆動輪列との間の運動学的結合は、ばねの3つのアームが、歯車の板に設けられた穴から取り除かれることにより、切断される。
【0005】
当該構造は、有利には、手動巻上げ駆動輪列を自動巻上げ駆動輪列から解放させることを可能にする。しかしながら、当該構造は、ラチェットと自動巻上げ装置間に確立された駆動輪列の、主ぜんまいのほどきに対応するラチェットの回転方向への切断を可能とせず、これは主ぜんまいが巻上げ装置の一部を形成する爪によりブロックされていることから、主ぜんまいを巻き戻すためにラチェットの歯列から爪を後退させるだけでは足りないことを意味する。更に、当該解決策は、手動巻上げ中に摩擦車により引き起こされる抵抗トルクがあることから、最適ではない。当該解決策は摩耗が生じやすく、集中的な手動巻上げの場合に摩擦車に不必要な損害の危険がある。
【0006】
特許文献1は、自動巻上げ装置と香箱との間の接続を切断するよう設計された解放装置の他の形態を開示する。当該文献において、解放装置は、水平解放装置の形態を取る。当該システムは、とりわけ弓なりの長方形切欠き内で移動するよう設計された角丸駆動車と噛み合うピニオンを含む。手動巻上げ中、ラチェットは、駆動輪列の影響下で時計回り方向に回転される。当該構成において、歯車の歯列は、歯車に付与される力の合力によりラチェットの歯列から解放される。手動巻上げが終了すると、歯車は、線ばねの影響下でラチェット方向に戻される。自動巻上げ装置が作動されると、歯車の歯列は、歯車に付与される力の合力により、ラチェットの歯列と噛合を続ける。当該構成において、手動巻上げ用の駆動輪列は、第2水平クラッチ装置により切断される。
【0007】
当該構成は、有利には、手動巻上げ駆動輪列を自動巻上げ駆動輪列から解放可能にする。しかしながら、手動巻上げ中、歯車は、ばねの影響下で、切欠き内で「振動」しやすい。これは歯車の歯列が、手動巻上げの速度次第でラチェットの歯列に対して高頻度または低頻度でノックする可能性があることを意味する。当該構成は、このため早い段階で摩耗しがちである。更に、開示された装置は、自動巻上げ装置と独立して主ぜんまいに張力をかけ続けることを可能にする爪を有さない。このため、当該装置を組み込む時計は、自動巻上げ装置とは独立して動作することができない。また、自動巻上げ器を解体する際に、主ぜんまいが時宜を逸して制御不能に巻き戻るという問題が残る。このため、当該解決策は最適ではない。
【0008】
特許文献2は、自動巻上げ装置と香箱との間の接続を切断するよう設計された解放装置の他の形態を開示する。当該文献において、解放装置は、垂直解放装置の形態を取る。当該解放装置は、自動巻上げ装置を解体する必要なく、滑動主軸を用いて時計職人が主ぜんまいを巻き戻すことを可能にするという利点がある。自動巻上げ装置は、切替車が設けられた2方向巻上げの自動巻上げ装置の形態を取り、その構造は主ぜんまいに張力をかけ続けることを可能にする。当該解放装置はまた、手動巻上げ中に手動巻上げ輪列と自動巻上げ駆動輪列とを遮断することで、当該構成では切替車を動作させないという利点を有する。しかしながら、手動巻上げ中、クラッチ装置に属する歯列はばねに対して常に動かされ、これはとりわけ持続する手動巻上げの場合に激しい摩耗が生じやすいことを意味する。
【0009】
更に、特許文献1に開示の装置同様、当該装置は自動巻上げ装置と独立して主ぜんまいに張力をかけ続けることを可能にする爪を全く有さない。当該装置を組み込む時計は、自動巻上げ装置と独立して動作することができない。また、自動巻上げ器を解体する際に、主ぜんまいが時宜を逸して制御不能に巻き戻るという問題が残る。更に、上述の装置を補完するため、主ぜんまいに張力を与え続ける爪を設けたと仮定しても、時計職人は、ぜんまいを巻き戻すために2つの独立した、場所の離れた装置を同時に作動しなければならない。時計職人は、一方の手では滑動主軸を作動し、もう一方の手では爪自身を作動しなければならない。このため、当該解決策も、特に保守性に関して十分ではないことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第2707371号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2226687号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】「Theorie d‘horlogerie(時計理論)」 (Reymondin, Monnier, Jeanneret, Pelaratti, Federation des ecoles techniques, 1998年、第8.3.6章、183ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述の欠点を克服可能で従来技術から既知のシステムを改善可能なシステムを提供することである。特に、本発明は、ムーブメントを自動巻上げ装置と独立して動作可能にし、同時に歯列の摩耗現象を回避し、時計職人が主ぜんまいを制御しながら巻き戻すことを可能にするシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、システムは請求項1に定義される。
【0014】
本発明の第1の態様によるシステムの各種実施形態は、従属請求項2から8に定義される。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、ムーブメントは請求項9に定義される。
【0016】
本発明の第1の態様によるムーブメントの各種実施形態は、従属請求項10、11に定義される。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、動作方法は請求項12に定義される。
【0018】
本発明の第1の態様による動作方法の各種実施形態は、従属請求項13、14に定義される。
【0019】
本発明の第1の態様によれば、時計は請求項18に定義される。
【0020】
本発明の第2の態様は、以下の定義で定義される。
【0021】
a)主ぜんまい巻上げ駆動輪列であって、
- 第1駆動輪列部と第2駆動輪列部であって、第2駆動輪列部は切替車を含み、
- 第1駆動輪列部と第2駆動輪列部とを接続するための、水平クラッチ装置と、
を含む、主ぜんまい巻上げ駆動輪列。
【0022】
b) 定義a)にかかる巻上げ駆動輪列であって、切替車は直列または並列に配置される。
【0023】
c) 定義b)にかかる巻上げ駆動輪列であって、切替車は非対称的な歯列の歯車と協働するレバーを含む。
【0024】
d) 定義a)からc)にかかる巻上げ駆動輪列であって、第2駆動輪列部は、自動巻上げ装置、とりわけ自動巻上げモジュールに組み込まれ、または第2駆動輪列部は、自動巻上げ装置、とりわけ自動巻上げモジュールを含み、または第2駆動輪列部は、自動巻上げ装置の一部を構成し、とりわけ自動巻上げモジュールの一部を構成する。
【0025】
e) 定義a)からd)のいずれか1つにかかる巻上げ駆動輪列を含む、自動小型時計ムーブメント。
【0026】
f) 定義e)にかかる小型時計ムーブメントであって、ムーブメントは爪装置を含み、爪装置は自動巻上げ装置がムーブメントの残りに取付けられたときに作動されるよう配置される。
【0027】
g) 定義e)及びf)のいずれか1つにかかるムーブメントまたは定義a)からd)のいずれか1つにかかる駆動輪列を含む、時計、とりわけ腕時計。
【0028】
添付の図面は、本発明に係る時計の2つの実施形態を例示的に図示する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、システムの第1実施形態を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、システムの第1実施形態の、上面図である。
【
図3】
図3は、システムの第1実施形態の、底面図である。
【
図4】
図4は、システムの第1実施形態の、第1構成の図である。
【
図5】
図5は、システムの第1実施形態の、第2構成の図である。
【
図6】
図6は、システムの第1実施形態の、第2構成の図である。
【
図7】
図7は、システムの第2実施形態を含む、本発明にかかる時計の第2実施形態の概略図である。
【
図8】
図8は、好ましくは本発明の文脈で用いられる自動巻上げモジュールの、1実施形態の図である。
【
図9】
図9は、好ましくは本発明の文脈で用いられる自動巻上げモジュールの、1実施形態の図である。
【
図10】
図10は、本発明にかかる自動巻上げ駆動輪列の1実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
時計200の第1実施形態を、
図1から6を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計、特に腕時計である。時計は、ムーブメント100を含む。ムーブメントは、好ましくは機械式及び自動ムーブメントである。ムーブメントは、フレーム4、主ぜんまい7、歯車列及び自動巻上げ器または自動巻上げ装置を含む。自動巻上げ装置は、
図8に示すように、自動巻上げモジュールM’であってもよい。本明細書において「自動巻上げ器」または「自動巻上げ装置」は、ムーブメントの自動巻上げ用の駆動輪列300、300’またはムーブメントの主ぜんまい7、7’の自動巻上げ用の駆動輪列の一部を意味する。駆動輪列の一部は、その力学的エネルギーが主ぜんまいの巻上げに用いられる、少なくとも1つの回転錘8を含む。
【0031】
好みにより、自動巻上げ器は、切替車11、12を含む。このため、自動巻上げ器は、好ましくは2方向である。2方向とは、主ぜんまい7と関連するラチェット6が、回転錘8の回転方向に係らず、ぜんまいを巻く単一の同一方向に駆動されることを意味する。2つの切替車11、12は、一方ではラチェットを主ぜんまいを巻く方向に回転錘8からの運動の伝達で駆動し、他方では、回転錘8の影響下で主ぜんまいを巻き戻す方向にラチェットを不動化することを可能にする。特に、ムーブメントの自動巻上げ用駆動輪列は、当該実施形態において、不可逆である。このため、自動巻上げ器は、好ましくは主ぜんまいを巻き戻す方向にラチェットまたは歯車を不動化するよう設計される。当該特定の構造において、自動巻上げ器は、自動巻上げモジュールM’であってもよい。モジュールは、例えば、
図8及び9に示すように、ムーブメントの香箱受4に固定されるように設計される。モジュールは、例えば2つのブランクM1’、M2’を含み、2つのブランクは自動巻上げ器と回転錘8の異なる歯車列を旋回させる。このため、自動巻上げ用駆動輪列は、潜在的にラチェット用爪または香箱用爪を代替してもよい。
【0032】
有利には、切替車11、12は直列に搭載される。また有利には、切替車11、12はピニオン1に、とりわけピニオンに固定された同軸の歯車13を用いて、接続される。
【0033】
自動巻上げ用駆動輪列300または自動巻上げ駆動輪列は、回転錘8から主ぜんまい7へ延長し、回転錘と主ぜんまいは、駆動輪列に含まれる。
【0034】
手動巻上げ用駆動輪列または手動巻上げ駆動輪列(図示せず)は、りゅうずなど、ユーザが直接動作可能な要素から、主ぜんまい7へ延長し、動作可能な要素と主ぜんまいは、駆動輪列に含まれる。
【0035】
ムーブメントは、システム10の第1実施形態を含み、システム10は、
- 主ぜんまい7を巻上げるための駆動輪列300における第1部301の第1歯車6用の、爪装置110と、
- 主ぜんまい7を巻上げるための駆動輪列300の第1部301と、主ぜんまい7を巻上げるための駆動輪列300の第2部302とを噛合させるための、クラッチ装置120と、
- 爪装置とクラッチ装置とを結合するための結合装置130、特に爪装置とクラッチ装置の動作状態を結合するための装置130と、
を含む。
【0036】
このため、
図10に示すように、主ぜんまい7の巻き上げ用駆動輪列300、300’は、
- 第1駆動輪列部301;301’と、切替車11、12を含む第2駆動輪列部302;302’と、および
- 第1及び第2駆動輪列部を接続するための水平クラッチ装置120, 120’と、
を含む。
【0037】
切替車は、好ましくは直列に配置される。代替的に、切替車は並列に配置される。
【0038】
切替車は、非対称の歯付き歯車113、123とそれぞれ協働する、レバー111、112及び121、122を含む。
【0039】
クラッチ装置120は、主ぜんまい7の巻上げ用、とりわけ自動巻上げ用駆動輪列300の第1部301を、主ぜんまい7の巻上げ用、とりわけ自動巻上げ用駆動輪列300の第2部302から区別することを可能にする。クラッチ装置は、「噛合」と呼ばれる第1状態において、第1及び第2部を接続または固定、とりわけ運動学的に接続または固定して巻上げ駆動輪列を構成することを可能にし、または「解放」と呼ばれる第2状態において、第1及び第2部を切断、とりわけ運動学的に切断することを可能にする。
【0040】
第1駆動輪列部は、主ぜんまい7からクラッチ装置に延長する。
【0041】
第2駆動輪列部は、回転錘8からクラッチ装置に延長する。
【0042】
好みにより、クラッチ装置は、水平クラッチ装置及びまたは中間歯車2が設けられたロッカレバー3を含むクラッチ装置であって、中間車2は、
- 第1巻上げ駆動輪列部分の第1要素、とりわけ第1歯車6と、第2巻上げ駆動輪列部の第2要素、とりわけ第2歯車またはピニオン1とを、
図5に示すようにクラッチ装置の第1噛合状態を定義するロッカレバーの第1位置において同時に噛み合わせること、及び
-
図4に示すようにクラッチ装置の第2解放状態を定義するロッカレバーの第2位置において、第1巻上げ駆動輪列部の第1要素と噛み合わせない、及びまたは第2巻上げ駆動輪列部の第2要素のみと噛み合わせること
が意図される。
【0043】
中間歯車2は、好ましくは、ロッカレバー3上で旋回する。ロッカレバー自体は、フレームまたはムーブメントブランク上の、とりわけ香箱受4の心棒3a周りに旋回取付けされる。代替的に、ロッカレバーは、爪上で旋回してもよく、その反対も可能である。代替的に、中間歯車2は、その範囲がロッカレバー3の移動角距離に実質的に対応する、ムーブメントのフレーム上の長方形の切欠き内で案内されてもよい。
【0044】
このため、中間歯車2は、クラッチ装置の状態に応じて、ムーブメントのフレームの平面内で移動する。
【0045】
ロッカレバー3は、爪ばね5aと協働する。ばねは、好ましくは、ムーブメントブランクに固定され、クラッチ装置に、特にロッカレバーに、作用して
図1に図示する静止位置または噛合状態に戻すよう設計される。当該構成において、(
図6に示す)傾斜を形成するロッカレバーの形状3cは、ムーブメントのフレームに、特にブランクに、とりわけ香箱受に、設けられた(
図6に示す)傾斜4bと接触する。傾斜3cは、例えば、中間歯車2が旋回するピンの壁であってもよい。傾斜4bは、例えば孔の壁であってもよい。傾斜3cと傾斜4bは、中間歯車2と第1歯車6との間の最も精密な中心距離を保証するよう設計され、これにより中間歯車と第1歯車との正確な噛み合いを保証する。
【0046】
戻り動作は、以下に詳細に説明する爪装置の状態により、行われたり行われなかったりする。爪ばねはまた、以下に詳細に説明する結合装置の一部を形成する。
【0047】
好みにより、中間歯車2はピニオン1よりも大きな直径を有する。
【0048】
好みにより、爪装置110は、主ぜんまい7の巻上げ用駆動輪列の第1部の第1歯車6を不動化する。第1歯車は、有利には、角穴車6である。
【0049】
爪装置は、歯またはくちばし50aと爪装置の作動状態に対応し歯が第1歯車6の歯列6aと干渉する(
図1で示す)静止位置に向けて爪を戻すための戻しばね5aが設けられた、爪5を含む。作動状態において、爪は、第1歯車6が回転の一方向へ、とりわけ主ぜんまい7のほどきに対応する、
図1に示すよう反時計方向に回転することを防止する。静止位置において、爪はムーブメントのフレームに、とりわけ香箱受、に設けられた傾斜4aと接触する。爪とばねは、爪が解放状態にあるときにばね5aにより静止位置に戻され、(代替的にまたは前記に加えて)爪が歯列6aと干渉するときに第1歯車6経由で主ぜんまいの作用によりその静止位置に戻されるように、配置される。特に、静止位置において、ばね5aは
図1に示すように、爪に作用することができない。
【0050】
爪は、例えば、香箱受上で旋回するレバー5cである。レバーは、第1歯車の歯列と干渉可能な少なくとも1つの歯で終わる第1アームを含む。レバーは、爪の静止位置を定義するため、傾斜4aと協働するように配置される第2アームを含む。レバーは、爪装置がとりわけ作動解除されたときにばね5aと当接して協働するよう配置される、第3アームを含む。最後に、レバーは、時計職人がとりわけ工具を用いて操作可能な何かになるように設計された第4アームを含んでもよい。
【0051】
第1歯車6が、主ぜんまい7の巻上げに対応する、
図1に示されるのと反対の回転方向に駆動されると、爪は
図4及び5に示す第2位置に位置される。当該位置は、爪の作動解除状態に対応する、クリックされないまたは解放位置である。
【0052】
結合装置は、爪装置の状態とクラッチ装置の状態とを、論理的に結合または連結することを可能にする。
【0053】
結合装置130は、爪装置が作動中にクラッチ装置120の噛合状態を維持するように設計される。このため、
図1に示すように爪が作動状態にあると、結合装置は、クラッチ装置を噛合状態に強制する。
【0054】
結合装置130は、追加的に、爪装置が停止中に、クラッチ装置120の噛合状態と解放状態と許可するように配置される。このため、
図4及び5に示すように爪が停止状態にあると、結合装置は、クラッチ装置と締結状態または解放状態に強制しない。クラッチ装置は、他の考慮事項または要因によって締結及び解放状態のいずれか一方にあってもよい。特に、当該構成において、クラッチ装置の状態は、有利には自動巻上げ駆動輪列の第1及び第2部の状態により決定または判断される。(手動巻上げに起因し、このため自動巻上げ駆動輪列の第2部を駆動することはない)自動巻上げ駆動輪列の第1部の駆動は、クラッチ装置の解放をもたらす。反対に、(回転錘の移動に起因する)自動巻上げ駆動輪列の第2部の駆動は、クラッチ装置の噛合をもたらす。
【0055】
第1実施形態において、結合装置130は、クラッチ装置の部分72と、とりわけクラッチ装置ロッカレバー3部分72と接触により協働する爪装置戻しばね5a部分71を含む。クラッチ装置とばねは、爪が作動中に当該部分が接触し、当該接触がクラッチ装置の噛合状態を、特にクラッチ装置の噛合状態に対応するロッカレバー3の位置を決定するように配置される。
【0056】
時計200’の第2実施形態を、
図7を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計、特に腕時計である。時計は、ムーブメント100’を含む。ムーブメントは機械式及び自動ムーブメントである。ムーブメントは、フレーム、主ぜんまい7、歯車列及び自動巻上げ器または自動巻上げ装置を含む。
【0057】
当該第2実施形態において、第1実施形態の要素と同一または類似の要素は、第1実施形態の要素の参照番号と同一の参照番号が付与される。また、当該第2実施形態において、第1実施形態の他の要素の機能と同一または類似の機能を有する要素は、第1実施形態の要素の参照番号と同一で、「’」が追加された参照番号が付される。
【0058】
ムーブメントは、システム10’の第2実施形態を有し、システムは、
- 爪装置110’と、
- クラッチ装置120’と、
- 爪装置とクラッチ装置とを結合する結合装置130’と、
を有する。
【0059】
当該第2実施形態において、ばね5a’は、レバー5c’の形状を取る爪5’経由でロッカレバー3に作用する。レバー5c’は、爪装置110’の1つのアームである。アームの部分71’は、クラッチ装置の部分72’と、とりわけクラッチ装置のロッカレバー部分またはクラッチ装置のロッカレバー側と、接触により協働する。部分71’は、例えば、アームの一端である。当該装置の動作原理は、第1実施形態のそれと類似する。
図7は、
図1の構成に類似の構成における、静止状態の第2実施形態を図示する。当該静止位置において、レバー5c’は、ムーブメントのフレームに、とりわけ香箱受に設けられた傾斜4aと接触する。代替的に、レバー5c’は、ロッカレバー3に、とりわけ部分71’及び72’経由で突き当たってもよい。この場合、静止位置は、レバーとロッカレバーとの間の接触により定義される。
【0060】
このため、当該第2実施形態において、結合装置130’は、爪装置の部分71’と、クラッチ装置の部分72’とを含む。
【0061】
好みにより、第2実施形態における他の要素は、上述の第1実施形態の要素と同一または類似である。
【0062】
実施例がどれであれ、システムは爪装置の動作に必要な1つ、とりわけ爪ばね5aまたは5a’に加えて、追加のばねを必要としない。実施例がどれであれ、追加の解放機能を発生させるために既存の装置を用いるため、構成は特に小型である。更に、追加のばねは、とりわけ当該ばねが解放ロッカレバーに配置される摩擦ホイルの形態または中間歯車2の旋回に作用するよう設計されたクリップの形態の場合に、付加的な抵抗トルクのため、自動巻上げ駆動輪列の効率性を損なう危険性を抱える。このため当該解決策は、構成及び性能の意味で特に有利である。
【0063】
上述の2つの実施形態において、自動巻上げ駆動輪列の第1部は非常に限定される。第1部は、主ぜんまい7及び角穴車6のみを含む。このため、クラッチ装置は、ラチェット6と直接協働するまたは噛み合う。しかしながら、1以上の中間歯車を、自動巻上げ駆動輪列の第1部の入力とラチェットとの間に設けることも考えられる。例えば、中間香箱を自動巻上げ駆動輪列の第1部の入力とラチェットとの間に介在させてもよい。また、主ぜんまいを香箱胴を用いて直接巻くことを想定することもできる(ラチェットは、特に少なくとも2つの香箱を有するムーブメントの場合に、ムーブメントの歯車列へエネルギーを伝達するために用いられる)。
【0064】
同様に、上述の2つの実施形態において、爪装置は、角穴車6の歯列と直接協働する。しかしながら、爪装置が巻上げ駆動輪列のあらゆる一方向回転歯車と、特に自動巻上げ駆動輪列の第1部のあらゆる歯車と、または代替的に手動巻上げ駆動輪列のあらゆる一方向回転歯車と、直接協働するように計画することも考えられる。
【0065】
ここで「爪」とは、主ぜんまいに張力をかけ続けるよう設計される部品または組立品を意味する。爪は、上述の実施形態のように、いくつかの部品の組立品、特にばねの作用下で巻上げ駆動輪列の第1部の歯車の歯列を割り出すくちばしを有するレバーであってもよい。代替的に、爪は、巻上げ駆動輪列の第1部の歯車の歯列を割り出す1以上の歯が設けられた板ばねであってもよい。
【0066】
有利には、ムーブメントの実施形態がどれであれ、爪装置は、自動巻上げ装置がムーブメントの残りに取付けられている間に作動可能なように設計される。
【0067】
上述のシステムの動作方法を実施する一方法を、以下に説明する。
【0068】
図1から7は、静止状態のシステムを示す。当該構成において、爪5のくちばしまたは歯50a、または爪5’、とりわけレバー5c’のくちばしまたは歯50a’は、歯車6の歯列6aと噛み合う。このため、レバーは香箱受4の傾斜4aとの協働により、主ぜんまいが生成するトルクの影響下で所定の方向に回転する傾向がある歯車6を抑止することができる。当該構成において、ばね5aは、爪になんら影響を及ぼさない。代替的に、ばね5aは、爪に作用してもよい。中間歯車2の歯列2aは、それぞれ、
- 自動巻上げ駆動輪列の第2部の出力を構成する、ピニオン1の歯列1aと、
- 歯車6の歯列6aと、
噛み合う。
このため、ロッカレバー3は、ばね5aまたはロッカレバー部分と接触するレバー5c’の影響下で位置される。
【0069】
手動巻上げ中、動作方法は以下のステップを含む。
- 第1歯車6の回転の影響下での、爪5、5’の後退、
- 結合装置130、130’の影響下での、クラッチ装置120、120’の解除、及び
- 第1歯車6の回転の影響下での、クラッチ装置120、120’の解放。
【0070】
図4に示すような小型時計の手動巻上げ中、第1歯車は、図示しない手動巻上げ駆動輪列により時計回りの方向に駆動される。時計回りの方向への第1歯車6の回転は、一方では爪5;5’のくちばし50a;50a’の歯列6aからの解放を引き起こし、他方では中間歯車2の歯列2aの歯列6aからの解放を引き起こす。効果的に、当該構成において、ばね5aまたはレバー5c’は、爪装置のくちばし50a;50a’の歯列6aの影響下でロッカレバー3から離脱する。これにより、中間歯車2に与えられる第1歯車6の力の合力Rの影響下で、ロッカレバー3が心棒3a周りに反時計回りの方向へ旋回することを可能にする。このため、クラッチ装置は、解放状態に移行する。巻上げ駆動輪列の第1部は、このように巻上げ駆動輪列の第2部から切断される。
【0071】
手動巻上げ構成において、ロッカレバー3は、ばね5aまたはレバー5c’で戻すことはできないことを強調する必要がある。このため、ロッカレバー3は、
図1及び4に図示する位置の間で「振動」することはできず、手動巻上げ中に歯列2a及び6aは接触しない。これは、歯列の時期尚早な摩耗を防止する。
【0072】
自動巻上げ中、動作方法は以下のステップを含む。
- 第1歯車6の回転の影響下での、爪5、5’の後退、
- 結合装置130、130’の影響下での、クラッチ装置120、120’の開放、及び
- 第2歯車の回転の影響下での、クラッチ装置120、120’の噛合。
【0073】
図5に示す自動巻上げ中、第1歯車6は、巻上げ駆動輪列の第2部により、とりわけそれぞれ時計回り及び反時計回りの方向に回転するピニオン1と中間歯車2の影響の下、時計回りの方向に駆動される。歯列2aは、歯列6aと噛み合う。この噛み合いは、中間歯車2に付与される力の合力R’の方向性により、持続的なものとなる。中間歯車2のロッカレバーへの少量の摩擦を提供してもよい。このため、爪装置の歯列6aの影響下で、とりわけ爪装置を作動解除状態に移行させる第1歯車の初期回転後、ばね5aまたはレバー5c’がロッカレバー3から離れたとしても、歯列2a及び6aの噛合は確立され維持される。
【0074】
(自動または手動)巻上げの不在時、すなわち巻上げの停止後、結合装置130、130’は、爪装置110, 110’の作動状態に対応する噛合状態にクラッチ装置120, 120’を戻すよう、クラッチ装置120, 120’に作用する。クラッチ装置は、ばね5aまたは5a’の復帰の影響下で、
図1に図示の噛合状態に戻る。
【0075】
主ぜんまいを巻き戻すためには、時計職人は、手動巻上げ機構を用いて主ぜんまいをわずかに巻上げればよい。当該動作は、爪装置を作動解除させ、クラッチ装置を解放状態に移動させる。時計職人は、その後、爪装置を作動解除状態に維持させつつ、同時に主ぜんまいが巻き戻るために必要な時間だけ主ぜんまいの巻上げを停止する。このため、時計職人は、主ぜんまいを巻き戻すために、ムーブメントに限定された動作のみ実施すればよい。
【0076】
このために、ムーブメントが組み立てられたときに、爪5、5’は、
図9に図示するように、時計職人からのアクセス可能に維持される。当該アクセスは、回転錘のいくつかの位置において、特に
図9に図示する回転錘位置において可能となる。このため、この解決策は、香箱受4上に自動巻上げモジュールが位置するときでも、主ぜんまいを巻き戻す選択肢を時計職人に提供する。
【0077】
好みにより、実施形態または実施形態の代替形態がどれであれ、クラッチ装置の噛合状態を定義するロッカレバーの第1位置において、クラッチ装置、特にロッカレバーは、傾斜4bと接触する。
【0078】
上述のシステムは、自動巻上げ装置が時計ムーブメント上に位置されているにもかかわらず、主ぜんまいを最低限の動作で巻き戻すことができるよう、時計職人により爪が後退されている間、自動巻上げ駆動輪列を解放可能にするという特徴を有する。解放装置は、手動巻上げ中に自動巻上げ装置が圧力を加えられないように、手動巻上げ装置が起動されると作動されるという特徴を有する。当該実施形態は、回転速度が最適化されたクラッチ歯車または「切替」車を採用する2方向自動巻上げ装置が設けられた時計ムーブメントの文脈で特に有利である。もちろん、このような実施形態は、例えばペラトン式自動巻上げ器のような、その他のタイプの自動巻上げ器が設けられた時計ムーブメント内に実施されることもできる。時計ムーブメントは、好ましくは機械式である。時計ムーブメントはまた、電気機械式であってもよい。
【0079】
上述のシステムは、その単純さと簡潔さに鑑みて、特に有利である。
【0080】
本明細書全体において、「爪」または「こはぜ」の文言は、好ましくは部分(通常は歯車またはラチェット)を第1方向のみに停止させ、第2方向(第1方向とは反対)へ回転可能にする機構を意味する。小型時計において、爪は、巻上げ動作が停止すると、ラチェットが逆回転することを阻止する。爪は、ばねの作用の下で、歯車の歯と噛み合うくちばしが設けられたレバーでもよい。
【0081】
本明細書全体において、「作動された爪」の文言は、好ましくは、爪が部分を第1方向のみに停止させ、第2方向に回転可能にすることを意味する。
【0082】
本明細書全体において、「停止された爪」または「クリックされていない爪」の文言は、好ましくは、爪が部分を第1方向と第2方向の両方に回転可能にすることを意味する。
【符号の説明】
【0083】
1 ピニオン
2 中間歯車
3 ロッカレバー
5 爪
6 第1歯車
7 主ぜんまい
10 システム
110 爪装置
120 クラッチ装置
130 結合装置
300 駆動輪列