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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20221026BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
F16K31/06 305Z
F16K31/06 305H
H01F7/16 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018074243
(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2019183937
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐木 真琴
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-150271(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0090881(US,A1)
【文献】特開2002-206654(JP,A)
【文献】実開平6-56580(JP,U)
【文献】特開2003-148531(JP,A)
【文献】特開2008-169963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド部材により閉位置と開位置間を進退変位自在に支持されるプランジャ,及びこのプランジャの後端面に対向するインナヨークを有し、かつ電磁気力により前記プランジャを前記開位置へ変位させるステータ部を有する電磁駆動部と、前記プランジャの先端に固定し、かつ流体が流通する流体通路に臨む弁体部,及びこの弁体部に対向した位置に設け、かつ前記流体通路の一方側に連通する弁座部を有する弁機構部と、一端側を前記プランジャの後端面の軸方向に形成した保持凹部に挿入するとともに、他端側が前記インナヨークに形成した規制凹部に圧接し、かつ位置規制されるコイルスプリングを用いたスプリング部材とを備えてなる電磁弁において、前記スプリング部材を、一端から軸方向所定区間に設けた複数ターンを密着巻にした巻構造による第一スプリング部と、他端から軸方向所定区間に設けた複数ターンを密着巻にした巻構造による第二スプリング部と、前記第一スプリング部と前記第二スプリング部間の第三スプリング部により構成し、前記第三スプリング部の外径を、前記第一スプリング部及び前記第二スプリング部の双方の外径よりも小径に形成するとともに、前記第一スプリング部及び前記第三スプリング部を除いた前記第二スプリング部のみを前記規制凹部に収容してなることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記流体として、少なくとも空気を含む気体を適用することを特徴とする請求項1記載の電磁弁。
【請求項3】
前記第三スプリング部は、外径を軸方向に沿って同一径に選定した巻構造により構成することを特徴とする請求項1記載の電磁弁。
【請求項4】
前記第三スプリング部は、軸方向の両側に対して中央側を相対的に小径に選定した巻構造により構成することを特徴とする請求項1記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の流体が流通する流体通路に接続することにより当該流体通路を一定周期で開閉する用途などに用いて好適な電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体通路に接続することにより当該流体通路を開閉する電磁弁としては、特許文献1に開示されるショックレス弁、特許文献2に開示される電磁弁、特許文献3に開示される電磁開閉弁などが知られている。
【0003】
これらの電磁弁は、いずれも、ガイド部材により閉位置と開位置間を進退変位自在に支持されるプランジャ,及びこのプランジャの後端面に対向するインナヨークを有し、かつ電磁気力によりプランジャを開位置へ変位させるステータ部を有する電磁駆動部と、プランジャの先端に固定し、かつ流体が流通する流体通路に臨む弁体部,及びこの弁体部に対向した位置に設け、かつ流体通路の一方側に連通する弁座部を有する弁機構部と、一端側を、プランジャの後端面(又はこの後端面に対向するインナヨーク)に形成した保持凹部に挿入し、かつ他端側を、インナヨーク(又はプランジャの後端面)に圧接させたスプリングとを備えており、これにより、電磁駆動部に給電して電磁気力を発生させれば、プランジャはインナヨーク側へ吸引され、プランジャの先端に固定した弁体部が開位置へ変位するとともに、電磁駆動部に対する給電を解除すれば、プランジャはスプリングの弾発力によりインナヨーク側から離間する方向へ付勢され、弁体部が閉位置へ変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-162858号公報
【文献】特開2016-205523号公報
【文献】特開2017-020534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の電磁弁は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
第一に、通常の使用、即ち、頻繁な繰り返し動作が要求されない使用態様においては、特に支障となる不具合は生じないが、頻繁な繰り返し動作が要求される使用態様であって、横向きや傾斜した取付態様、更には振動を含む使用態様など、使用環境によっては、スプリングとこのスプリングの一端側を挿入した保持凹部間に擦れが生じることにより減耗し、最終的にスプリングの破断を招く。結局、この場合、電磁弁の動作不能を来し、電磁弁の耐久性低下及び信頼性低下を招く難点があった。
【0007】
第二に、スプリングと保持凹部間の擦れを防止する対策を施すことにより、この問題の解決は可能であり、例えば、スプリングを強度の高い素材により形成したり、或いは保持凹部を大径に形成し又は形状変更するなどの対策が考えられる。しかし、この場合、コスト面で不利になるとともに、安定性が失われることにより動作性能に悪影響を及ぼすなどの弊害が発生する。結局、低コスト性及び安定性を確保しつつ、長期使用においてもスプリングの破断を回避するという双方の目的を満たす有効な解決策が講じられていないのが実情である。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した電磁弁の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電磁弁1は、上述した課題を解決するため、ガイド部材3により閉位置Xcと開位置Xo間を進退変位自在に支持されるプランジャ4,及びこのプランジャ4の後端面4rに対向するインナヨーク5を有し、かつ電磁気力によりプランジャ4を開位置Xoへ変位させるステータ部6を有する電磁駆動部2と、プランジャ4の先端に固定し、かつ流体が流通する流体通路8に臨む弁体部9,及びこの弁体部9に対向した位置に設け、かつ流体通路8の一方側に連通する弁座部10を有する弁機構部7と、一端12f側をプランジャ4の後端面4rの軸方向Fsに形成した保持凹部11に挿入するとともに、他端12r側がインナヨーク5に形成した規制凹部13に圧接し、かつ位置規制されるコイルスプリングを用いたスプリング部材12とを備えてなる電磁弁を構成するに際して、スプリング部材12を、一端12fから軸方向Fsへ所定区間Zaに設けた複数ターンを密着巻にした巻構造Maによる第一スプリング部12aと、他端12rから軸方向Fsへ所定区間Zbに設けた複数ターンを密着巻にした巻構造Mbによる第二スプリング部12bと、第一スプリング部12aと第二スプリング部12b間の第三スプリング部12cにより構成し、第三スプリング部12cの外径Lcを、第一スプリング部12a及び第二スプリング部12bの双方の外径La,Lbよりも小径に形成するとともに、第一スプリング部12a及び第三スプリング部12cを除いた第二スプリング部12bのみを規制凹部13に収容してなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電磁弁1は、好適な態様により、第三スプリング部12cは、外径Lcを軸方向Fsに沿って同一径に選定した巻構造Mcxにより構成してもよいし、軸方向Fsの両側Xs…に対して中央側Xcを相対的に小径に選定した巻構造Mcyにより構成してもよい。なお、適用する流体としては、少なくとも空気Aを含む気体を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る電磁弁1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 頻繁な繰り返し動作が要求される使用態様であって、横向きや傾斜した取付態様、更には振動を含む使用態様など、様々な使用環境においても、スプリング部材12と保持凹部11間の擦れが生じないため、減耗によるスプリング部材12の破断を回避できる。したがって、電磁弁1の耐久性及び信頼性を飛躍的に高めることができるとともに、基本的にスプリング部材12の巻き方により対処できるため、低コスト性及び実施容易性を確保しつつ、スプリング部材12の破断を回避するという双方の目的を有効に達成することができる。しかも、スプリング部材12以外は、基本的に変更が不要になるため、汎用性にも優れる。
【0013】
(2) 第一スプリング部12a及び第二スプリング部12bを構成するに際し、複数ターンを密着巻にした巻構造Ma及びMbにより構成したため、一端12f側及び他端12r側におけるスプリング間の遊びを0又は低減できる。これにより、一端12f側及び他端12r側の横振れを抑制できるとともに、スプリング部材12全体の位置及び伸縮動作を安定に行わせることができる。特に、一端12f側と他端12r側を組合わせたため、より効果を高めることができる。
【0014】
(3) インナヨーク5に、収容したスプリング部材12の他端12rを位置規制する規制凹部13を設け、スプリング部材12の他端12rの位置を規制できるようにしたため、スプリング部材12の他端12rの横振れや位置ずれを、より確実に阻止し、更なる安定化を図ることができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、第三スプリング部12cを構成するに際し、外径Lcを軸方向Fsに沿って同一径に選定した巻構造Mcxにより構成すれば、径の異なる二つの巻芯により、スプリング部材12の製作が可能になるため、製作の容易性及び低コスト性を確保できる。
【0016】
(5) 好適な態様により、第三スプリング部12cを構成するに際し、軸方向Fsの両側Xs…に対して中央側Xcを相対的に小径に選定した巻構造Mcyにより構成すれば、特に、スプリング部材12のスプリング特性を確保しつつ、軸直角方向の振動(強震)に対してより強くできるとともに、必要により径の変更等によりスプリング特性を容易に設定(調整)することができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、流体として、少なくとも空気A(一般的には気体)を適用すれば、本発明に係る電磁弁1が有するメリットを効果的かつ有効に発揮させることが可能となり、空気Aの供給又は停止を制御する用途に最適となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好適実施形態に係る電磁弁の要部断面図、
図2】同電磁弁に用いるスプリング部材の平面図、
図3】同電磁弁に用いるスプリング部材の正面図、
図4】同電磁弁に用いるスプリング部材の第二スプリング部の拡大図を含む要部の断面図、
図5】同電磁弁に用いるスプリング部材の模式的原理構成図、
図6】同電磁弁に用いるスプリング部材の変更例を示す模式的原理構成図、
図7】同電磁弁の全体構造を示す正面断面図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本発明の理解を容易にするため、本実施形態に係る電磁弁1の全体構造について、図7を参照して説明する。
【0021】
この電磁弁1は、大別して、電磁駆動部2,弁機構部7及び本発明の要部を構成するスプリング部材12を備える。電磁駆動部2は、基本構成として、ガイド部材3により進退変位自在に支持されるプランジャ4と、このプランジャ4を電磁気力により開位置Xoへ変位可能なステータ部6とを備える。また、弁機構部7は、基本構成として、プランジャ4の先端に固定し、かつ流体が流通する流体通路8に臨む弁体部9と、この弁体部9に対向した位置に設け、かつ流体通路8の一方側に連通する弁座部10とを備える。
【0022】
次に、電磁弁1における各部の構成について説明する。電磁弁1の下部位置には、弁機構部7を配設するためのベースブロック21を備えるとともに、このベースブロック21の内部には流体通路8を設ける。この場合、流体通路8の一方側は、流体の流出口8eとなり、ベースブロック21の底面中央付近に設けるとともに、流体通路8の他方側は、流体の流入口8iとなり、ベースブロック21の底面における流出口8eに隣接して設ける。したがって、流入口8iと流出口8eは流体通路8を介して連通し、流入口8iと流出口8e間における流体通路8は弁機構部7の配設空間となる。この配設空間には、底面側から上方に突出する筒形の弁座部10を一体形成し、この弁座部10の内部が流出口8eに連通する。
【0023】
また、弁座部10の上方に位置するベースブロック21には、上面まで貫通する円形状の開口部21sを形成し、この開口部21sの内面に形成した段差形状部とベースブロック21の上面を利用して電磁駆動部2を組付ける。これにより、開口部21sに対して、上面側からリング形に形成したストッパ22を組入れることができるとともに、このストッパ22の上面に、磁性素材により円筒形に形成したガイド部材3の下端部を組入れることができる。
【0024】
さらに、ガイド部材3の内部には、磁性素材により円柱形に形成したプランジャ4を進退変位自在(軸方向変位自在)に挿入し、このプランジャ4の先端に、ゴム素材により所定の厚さを有する円盤状に形成した弁体部9を組込む。この場合、プランジャ4の先端面には収容凹部4iを形成するとともに、収容凹部4iの縁部には、中心方向に突出することにより、収容した弁体部9を保持する周方向に沿ったリング形の係止爪4icを一体形成する。これにより、この収容凹部4iに、ゴム素材により形成した弁体部9を押し込むことができるとともに、弁体部9は弁座部10に対向し、弁体部9と弁座部10は流体通路8を開閉する弁機構部7を構成する。なお、弁体部9には、この弁体部9を開閉方向に変位させる際に空気が流通する通気通路9sが形成されている。
【0025】
一方、プランジャ4の外周面の先端には外方に突出するリング凸条形の規制部4sを一体形成する。この規制部4sは、プランジャ4が上方へ変位した際に前述したストッパ22に係止し、プランジャ4の変位が規制されるため、弁体部9は開位置Xoに停止する。したがって、ストッパ22は、プランジャ4の位置を規制するストッパ機能を備えるとともに、流体通路8を密閉するためのシーリング機能及びプランジャ4が衝突した際の衝撃を緩和するダンパ機能を兼ねている。
【0026】
そして、プランジャ4の上端面の中央位置から軸方向には本発明の要部を構成するスプリング部材12の一端12f側を収容する保持凹部11を形成するとともに、この保持凹部11の底面中央位置と前述した収容凹部4iの底面中央位置間には通気孔部31を形成し、収容凹部4iと保持凹部11間を連通させる。なお、図1中、23,24は、プランジャ4の外周面に装着したウェアリングを示す。
【0027】
他方、電磁駆動部2において、32は、磁性素材によりコの字形に折曲形成したアウタヨークであり、このアウタヨーク32における水平のヨーク下部32dには円孔部32hを形成する。この円孔部32hはガイド部材3の外周面に嵌合する。また、33は、樹脂素材により円筒形に形成したコイルボビン33bにコイルワイヤ33wを巻回して構成したコイルユニットである。
【0028】
さらに、5は、磁性素材により円柱形に形成したインナヨークである。このインナヨーク5は、前述したガイド部材3の外径と同一径に選定する。このインナヨーク5は、コイルボビン33bの内部における上側位置に収容するとともに、収容した際には、コイルボビン33bの内周面に形成した規制突起部33bcにより位置が規制される。また、インナヨーク5におけるプランジャ4に対向する対向面の中央には、後述するスプリング部材12の他端12rを位置規制する規制凹部13を形成する。したがって、図4に示すように、この規制凹部13における底面部13dの径Lmは、後述するスプリング部材12の他端12rの外径Lbに対して、同一又は稍小さい径に選定することが望ましい。このような規制凹部13を設ければ、スプリング部材12の他端12rの位置を規制できるため、スプリング部材12の他端12rの横振れや位置ずれを、より確実に阻止し、更なる安定化を図ることができる利点がある。
【0029】
次に、本発明の要部を構成する電磁弁用スプリング部材(以下、スプリング部材)12について、図1図6を参照して具体的に説明する。
【0030】
実施形態で示すスプリング部材12は、基本的にコイルスプリングを用いたものであり、図3に示すように、ディメンションとして、最大直径(La,Lb)が3〔mm〕程度、軸方向Fsの全長Luが10〔mm〕程度、線径Lsが0.3〔mm〕程度であり、形成素材としてはステンレス材(磁性ステンレス)を用いている。
【0031】
スプリング部材12の基本構成は、図3に示すように、一端12fから軸方向Fsへ所定区間Zaの第一スプリング部12aと、他端12rから軸方向Fsへ所定区間Zbの第二スプリング部12bと、第一スプリング部12aと第二スプリング部12b間の第三スプリング部12cからなり、特に、第三スプリング部12cの外径Lcは、第一スプリング部12a及び第二スプリング部12bの外径La,Lbの双方よりも小径となるように形成する。なお、例示の場合、第一スプリング部12a外径Laと第二スプリング部12bの外径Lbを同一に選定した場合を示したが、必ずしも同一である必要はなく一方を異ならせてもよい。
【0032】
また、第一スプリング部12aは、複数ターンを密着巻にした巻構造Maにより構成する。このような巻構造Maにより構成すれば、一端12f側におけるスプリング間の遊びを0に(又は低減)できるため、特に一端12f側の横振れを抑制できるとともに、スプリング部材12全体の位置及び伸縮動作を安定に行わせることができる。さらに、複数ターンとしては、例示の場合、三ターンが望ましい。二ターンの場合には、上述した作用効果を十分に享受できないとともに、四ターン以上の場合には、上述した作用効果を確保する観点からは不必要なターンが含まれることになりサイズ面及びコスト面からも不利になる。なお、密着巻としてスプリング間の遊びを0、即ち、隙間を0にすることが望ましいが、必ずしも0であることを要せず、僅かな隙間が存在する状態も含まれる。この場合であっても遊びをある程度低減できるため、その分、上述した作用効果を期待することができる。
【0033】
第二スプリング部12bも第一スプリング部12aも同様に構成する。即ち、複数ターンを密着巻にした巻構造Mbにより構成する。このような巻構造Mbにより構成すれば、他端12r側におけるスプリング間の遊びを0に(又は低減)できるため、特に他端12r側の横振れを抑制できるとともに、一端12f側と組合わせることにより、スプリング部材12全体の位置及び伸縮動作を更に安定させることができる。さらに、複数ターンとしては、第一スプリング部12aと同様に、三ターンが望ましく、また、密着巻として、隙間が0又は僅かな隙間が存在する状態の双方が含まれる。
【0034】
第三スプリング部12cは、外径Lcを、第一スプリング部12aの外径La(例示は3〔mm〕程度)及び第二スプリング部12bの外径Lb(例示は3〔mm〕程度)よりも、0.3〔mm〕程度小径に形成する。これにより、図1に示すように、スプリング部材12の一端12f側(第一スプリング部12a側)を保持凹部11に収容した際には、第三スプリング部12cの外郭部分と保持凹部11の内壁面間には、少なくとも(La-Lc)/2のクリアランスCsが設けられることになり、例示の場合、このクリアランスCsは、0.15〔mm〕程度に設定される。
【0035】
また、第三スプリング部12cは、外径Lcを軸方向Fsに沿って同一径に選定した巻構造Mcxにより構成する。したがって、この巻構造Mcxは、図5に示すように、第三スプリング部12cに対して仮想線で示す左右の包絡線HpとHqは平行となる。このような巻構造Mcxにより構成すれば、径の異なる二つの巻芯により、スプリング部材12の製作が可能になるため、製作の容易性及び低コスト性を確保できる利点がある。
【0036】
一方、図6に示すように、第三スプリング部12cを構成するに際し、軸方向Fsの両側Xs…に対して中央側Xcを相対的に小径に選定した巻構造Mcyにより構成してもよい。したがって、図6の場合には、仮想線で示す左右の包絡線Hv,Huは、それぞれ円弧状となり、第三スプリング部12cの中央側Xcを絞り込んだ形状となる。このような巻構造Mcyにより構成すれば、特に、スプリング部材12のスプリング特性を確保しつつ、軸直角方向の振動(強震)に対してより強くできるとともに、必要により径の変更等によりスプリング特性を容易に設定(調整)することができる利点がある。
【0037】
このように、第三スプリング部12cの巻構造としては、図5図3)及び図6に限定されるものではなく、外径Lcを、第一スプリング部12a及び第二スプリング部12bの外径La,Lbよりも小径に形成することを条件として、各種巻構造により実施可能である。したがって、この第三スプリング部12cが、スプリング部材12の実質的スプリング部分を構成する。
【0038】
このようなスプリング部材12を備える本実施形態に係る電磁弁1は、次のように組立てることができる。
【0039】
まず、図7に示すように、コイルユニット33におけるコイルボビン33bの内部に、上からインナヨーク5を挿入する。これにより、インナヨーク5は、コイルボビン33bの内周面に形成した規制突起部33bcに係止し、コイルボビン33bに対して、インナヨーク5の位置が規制される。次いで、この状態のコイルユニット33を、コの字形のアウタヨーク32の内側に装着するとともに、ガイド部材3を、アウタヨーク32のヨーク下部32dに形成した円孔部32hに対して下から挿入する。これにより、ガイド部材3は、コイルボビン33bの内部に下から挿入される。そして、この状態において、アウタヨーク32の最下面よりも上方に位置する構造部分を樹脂モールド51により覆う。なお、コイルユニット33からは二本の配線を含む引出ケーブル34が外部に導出される。
【0040】
また、プランジャ4を用意する。このプランジャ4には、予め、弁体部9を組込む。さらに、このプランジャ4には、外周面に対して上からストッパ22を装填するとともに、収容凹部11に、スプリング部材12の一端12f側を挿入する。プランジャ4は、この状態のまま、ガイド部材3の内部へ下から挿入するとともに、この状態のアセンブリをベースブロック21の上面に組付ける。この場合、ベースブロック21の開口部21sに形成した段差部に、上から、ストッパ22及びガイド部材3を嵌入れるとともに、樹脂モールド51には取付孔を設け、この取付孔と固定ボルト等の固定具52を利用して、樹脂モールド51をベースブロック21の上面に固定する。これにより、図7に示す本実施形態に係る電磁弁1を組立てることができる。
【0041】
次に、スプリング部材12を備える本実施形態に係る電磁弁1の機能(動作)及び使用方法について、図1図7を参照して説明する。
【0042】
例示は、電磁弁1を、空気A(流体)を流通させる流体通路8に接続した場合を示す。このように、流体として、空気A(一般的には気体)を適用すれば、本発明に係る電磁弁1の有するメリットを最も効果的かつ有効に発揮させることができるため、空気Aの供給又は停止を制御する用途に最適となる。
【0043】
まず、図示を省略した電源スイッチがOFFの状態を想定する。この状態では、コイルユニット33に給電が行われないため、ステータ部2に磁極は発生しない。したがって、プランジャ4は、スプリング部材12により下方向に押圧され、弁体部9が弁座部10に圧接する。この状態を図1に示す。これにより、弁体部9は閉位置Xcとなり、流体通路8は閉状態、即ち、遮断状態となる。
【0044】
次に、電源スイッチをONにした状態を想定する。この状態では、コイルユニット33に対して給電が行われるため、ステータ部2が励磁され、インナヨーク5の上下にS極とN極がそれぞれ発生する。この際、アウタヨーク32,ガイド部材3,プランジャ4,インナヨーク5,アウタヨーク32の経路で磁力線が通過する。これにより、プランジャ4は、インナヨーク5の磁極に吸引され、スプリング部材12の弾力に抗して上方向へ変位するとともに、ストッパ22に係止した位置で停止する。この状態を図7に示す。これにより、弁体部9は開位置Xoとなり、流体通路8は開状態、即ち、開放された流通状態となる。図7中、点線矢印がこの状態における空気Aの流通方向を示し、空気Aは、流入口8i→流体通路8→弁体部9と弁座部10間→流出口8eの経路で流通する。
【0045】
そして、この状態で電源スイッチをOFFにすれば、インナヨーク5側の吸引力が解除されるため、プランジャ4は、スプリング部材12により下方向に変位する。即ち、図1に示す状態となる。
【0046】
このように、本実施形態に係る電磁弁1は、基本構成として、ガイド部材3により閉位置Xcと開位置Xo間を進退変位自在に支持されるプランジャ4,及びこのプランジャ4の後端面4rに対向するインナヨーク5を有し、かつ電磁気力によりプランジャ4を開位置Xoへ変位させるステータ部6を有する電磁駆動部2と、プランジャ4の先端に固定し、かつ流体が流通する流体通路8に臨む弁体部9,及びこの弁体部9に対向した位置に設け、かつ流体通路8の一方側に連通する弁座部10を有する弁機構部7と、一端12f側を、プランジャ4の後端面4rに形成した保持凹部11に挿入し、かつ他端12r側を、インナヨーク5に圧接させたスプリング部材12とを備えてなる電磁弁1を構成するに際して、スプリング部材12を、一端12fから軸方向Fsへ所定区間Zaの第一スプリング部12aと、他端12rから軸方向Fsへ所定区間Zbの第二スプリング部12bと、第一スプリング部12aと第二スプリング部12b間の第三スプリング部12cにより構成し、第三スプリング部12cの外径Lcを、第一スプリング部12a及び第二スプリング部12bの双方の外径La,Lbよりも小径に形成してなるため、電磁弁1(電磁弁用スプリング部材12)は、頻繁な繰り返し動作が要求される使用態様であって、横向きや傾斜した取付態様、更には振動を含む使用態様など、様々な使用環境においても、スプリング部材12と保持凹部11間の擦れが生じないため、減耗によるスプリング部材12の破断を回避できる。
【0047】
したがって、電磁弁1の耐久性及び信頼性を飛躍的に高めることができるとともに、基本的にスプリング部材12の巻き方により対処できるため、低コスト性及び実施容易性を確保しつつ、スプリング部材12の破断を回避するという双方の目的を有効に達成することができる。しかも、スプリング部材12以外は、基本的に変更が不要になるため、汎用性にも優れる。
【0048】
なお、第一スプリング部12a,第二スプリング部12b及び第三スプリング部12cを設けない従来のスプリング部材、即ち、軸方向における外径を第一スプリング部12aの外径に一致させるとともに、巻線ピッチを第三スプリング部12cと同じに設定した従来のスプリング部材を使用した電磁弁について、ON/OFFを繰り返す動作実験を行った場合、ほぼ7億回程度で破断を招いたが、本実施形態に係るスプリング部材12を使用した電磁弁1について、ON/OFFを繰り返す動作実験を行った結果、12億回の実験を3回繰り返した場合であっても、破断のみならず大きな傷の発生も見られないなど、本実施形態に係る電磁弁1の有用性を確保できた。
【0049】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0050】
例えば、閉位置Xcと開位置Xo間を進退変位自在に支持されるプランジャ4とは、閉位置Xcと開位置Xoの二位置に切り換える場合と、閉位置Xcと開位置Xo間における途中の中間位置に停止する場合を含めて閉位置Xcと開位置Xo間を移動する場合の双方を含む概念である。また、第一スプリング部12aの巻構造Maにおける複数ターン及び第二スプリング部12bの巻構造Mbにおける複数ターンは、例示の場合、三ターンが望ましいが、使用する電磁弁の各種形態に対応して二ターン以上の任意のターン数を選定できる。さらに、流体には、空気Aを適用することが望ましいが、ガス,水蒸気等の気体,或いは水,溶液等の液体などであっても同様に適用可能である。一方、電磁駆動部2を構成するに際し、スプリング部材12によりプランジャ4を閉位置Xcへ変位させる場合を示したが、スプリング部材12によりプランジャ4を開位置Xoへ変位させる場合であってもよい。したがって、電磁駆動部2の構成は、例示に限定されるものではなく、同様の機能を発揮する各種原理に基づく電磁駆動部2を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る電磁弁は、空気等の流体が流通する流体通路を一定周期で開閉する用途をはじめ、流体通路を開閉(可変制御を含む)するための様々な分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:電磁弁,2:電磁駆動部,3:ガイド部材,4:プランジャ,4r:プランジャの後端面,5:インナヨーク,6:ステータ部,7:弁機構部,8:流体通路,9:弁体部,10:弁座部,11:保持凹部,12:スプリング部材,12f:スプリング部材の一端,12r:スプリング部材の他端,12a:第一スプリング部,12b:第二スプリング部,12c:第三スプリング部,13:規制凹部,Xc:閉位置,Xo:開位置,Xs…:巻構造の両側,Xc:巻構造の中央側,Fs:軸方向,Za:所定区間,Zb:所定区間,Lc:第三スプリング部の外径,La:第一スプリング部の外径,Lb:第二スプリング部の外径,Ma:巻構造,Mb:巻構造,Mcx:巻構造,Mcy:巻構造,A:空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7