(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】生コンクリート量推定装置及びこれを備えたミキサ車
(51)【国際特許分類】
B28C 5/42 20060101AFI20221026BHJP
B60P 3/16 20060101ALI20221026BHJP
G01G 19/08 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B28C5/42
B60P3/16 Z
G01G19/08 Z
(21)【出願番号】P 2018090775
(22)【出願日】2018-05-09
【審査請求日】2021-01-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 茂
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-063924(JP,A)
【文献】特開平08-210905(JP,A)
【文献】特開2016-068530(JP,A)
【文献】実開平05-003942(JP,U)
【文献】特開平09-193134(JP,A)
【文献】特開2017-072556(JP,A)
【文献】特表2007-521997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
B60P 3/16
G01G 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサ車に回転可能に搭載されるミキサドラム内の生コンクリート量を推定する生コンクリート量推定装置であって、
前記ミキサドラムを支持する架台部の地面方向への沈み込み量を検出する沈み込み検出部と、
前記沈み込み検出部で検出された前記架台部の沈み込み量に基づいて前記ミキサドラム内の生コンクリート量を推定するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記ミキサドラム内に生コンクリートが積載されていない状態において前記沈み込み検出部により検出された積載前沈み込み量と、前記ミキサドラム内に生コンクリートが積載された状態において前記沈み込み検出部により検出された積載後沈み込み量と、前記積載前沈み込み量が検出されてから前記積載後沈み込み量が検出されるまでの間に前記ミキサドラム内に投入された生コンクリートの投入量と、を前記ミキサドラム内に生コンクリートが投入される度に記憶する記憶部と、
前記ミキサドラム内に生コンクリートが投入される度に前記記憶部に記憶される前記積載前沈み込み量、前記積載後沈み込み量及び前記投入量に基づいて、前記架台部の沈み込み量と前記ミキサドラム内の生コンクリート量との間の相関性を
前記ミキサドラム内に生コンクリートが投入される度に演算する演算部と、
前記ミキサドラム内に生コンクリートが投入される度に前記演算部により演算される前記相関性に基づいて、前記沈み込み検出部で検出される現在の沈み込み量から前記ミキサドラム内の現在の生コンクリート量を推定する推定部と、を有することを特徴とする生コンクリート量推定装置。
【請求項2】
ミキサ車に回転可能に搭載されるミキサドラム内の生コンクリート量を推定する生コンクリート量推定装置であって、
前記ミキサドラムを支持する架台部の地面方向への沈み込み量を検出する沈み込み検出部と、
前記沈み込み検出部で検出された前記架台部の沈み込み量に基づいて前記ミキサドラム内の生コンクリート量を推定するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記ミキサドラム内に生コンクリートが積載されていない状態において前記沈み込み検出部により検出された積載前沈み込み量と、前記ミキサドラム内に生コンクリートが積載された状態において前記沈み込み検出部により検出された積載後沈み込み量と、前記積載前沈み込み量が検出されてから前記積載後沈み込み量が検出されるまでの間に前記ミキサドラム内に投入された生コンクリートの投入量と、を記憶する記憶部と、
前記積載前沈み込み量、前記積載後沈み込み量及び前記投入量に基づいて、前記架台部の沈み込み量と前記ミキサドラム内の生コンクリート量との間の相関性を演算する演算部と、
当該相関性に基づいて、前記沈み込み検出部で検出される現在の沈み込み量から前記ミキサドラム内の現在の生コンクリート量を推定する推定部と、を有し、
前記記憶部には、前記ミキサドラム内に積載される生コンクリート量に応じて変化する前記架台部の沈み込み量の変化傾向が予め記憶されており、
前記推定部は、推定された前記ミキサドラム内の現在の生コンクリート量を前記変化傾向に基づいて補正することを特徴とする生コンクリート量推定装置。
【請求項3】
ミキサ車に回転可能に搭載されるミキサドラム内の生コンクリート量を推定する生コンクリート量推定装置であって、
前記ミキサドラムを支持する架台部の地面方向への沈み込み量を検出する沈み込み検出部と、
前記沈み込み検出部で検出された前記架台部の沈み込み量に基づいて前記ミキサドラム内の生コンクリート量を推定するコントローラと、
前記ミキサ車の傾きを検出する傾斜検出部と、を備え、
前記コントローラは、
前記ミキサドラム内に生コンクリートが積載されていない状態において前記沈み込み検出部により検出された積載前沈み込み量と、前記ミキサドラム内に生コンクリートが積載された状態において前記沈み込み検出部により検出された積載後沈み込み量と、前記積載前沈み込み量が検出されてから前記積載後沈み込み量が検出されるまでの間に前記ミキサドラム内に投入された生コンクリートの投入量と、を記憶する記憶部と、
前記積載前沈み込み量、前記積載後沈み込み量及び前記投入量に基づいて、前記架台部の沈み込み量と前記ミキサドラム内の生コンクリート量との間の相関性を演算する演算部と、
当該相関性に基づいて、前記沈み込み検出部で検出される現在の沈み込み量から前記ミキサドラム内の現在の生コンクリート量を推定する推定部と、を有し、
前記傾斜検出部で検出された前記ミキサ車の傾きに基づいて前記相関性を補正し、補正された前記相関性に基づいて前記ミキサドラム内の現在の生コンクリート量を推定することを特徴とする生コンクリート量推定装置。
【請求項4】
前記記憶部には、前記積載前沈み込み量が記憶される際に前記傾斜検出部により検出された積載前傾斜量と、前記積載後沈み込み量が記憶される際に前記傾斜検出部により検出された積載後傾斜量と、がさらに記憶され、
前記演算部は、前記積載前沈み込み量を前記積載前傾斜量により補正するとともに前記積載後沈み込み量を前記積載後傾斜量により補正することによって前記相関性を補正し、
前記推定部は、補正された前記相関性に基づいて、前記沈み込み検出部で検出される現在の沈み込み量を前記傾斜検出部で検出される現在の傾斜量により補正して得られる実際の現在の沈み込み量から前記ミキサドラム内の現在の生コンクリート量を推定することを特徴とする請求項3に記載の生コンクリート量推定装置。
【請求項5】
前記コントローラにより推定された前記ミキサドラム内の現在の生コンクリート量を表示する表示部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4の何れか1つに記載の生コンクリート量推定装置。
【請求項6】
前記コントローラにより推定された前記ミキサドラム内の現在の生コンクリート量を外部へ送信可能な送信部をさらに備えることを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載の生コンクリート量推定装置。
【請求項7】
前記沈み込み検出部は、前記ミキサドラム内の生コンクリートが排出される際に、前記ミキサドラム内において生コンクリートが偏る側の前記架台部の沈み込み量を検出可能な位置に少なくとも設けられることを特徴とする請求項1から6の何れか1つに記載の生コンクリート量推定装置。
【請求項8】
前記沈み込み検出部は、前記ミキサ車の前後方向及び幅方向の少なくとも何れかの方向において、所定の間隔をあけて複数配置されることを特徴とする請求項1から7の何れか1つに記載の生コンクリート量推定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の生コンクリート量推定装置を備えることを特徴とするミキサ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサドラム内の生コンクリート量を推定する装置及びこれを備えたミキサ車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モルタルやレディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリートを内容物として積載可能なミキサドラムを備えるミキサ車において、ミキサドラム内の生コンクリート量を推定する生コンクリート量推定装置が開示されている。この生コンクリート量推定装置では、ミキサドラム内を撮像した撮像画像において生コンクリートが占める面積等に基づいて生コンクリート量が推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の生コンクリート量推定装置では、ミキサドラムの底部に生コンクリートを滞留させた状態で撮像画像を撮像する。このため、例えば、ミキサドラムから生コンクリートを排出する排出作業中であれば、生コンクリート量を推定するには、一旦、排出作業を中断する必要がある。このように、生コンクリート量を推定するたびにミキサドラムの操作を中断すると、打設作業等の作業効率を低下させてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ミキサドラムが操作されている場合であってもミキサドラム内の生コンクリート量を推定可能な生コンクリート量推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、ミキサドラム内の生コンクリート量を推定する生コンクリート量推定装置が、ミキサドラムを支持する架台部の地面方向への沈み込み量を検出する沈み込み検出部と、沈み込み検出部で検出された架台部の沈み込み量に基づいてミキサドラム内の生コンクリート量を推定するコントローラと、を備え、コントローラは、ミキサドラム内に生コンクリートが積載されていない状態において沈み込み検出部により検出された積載前沈み込み量と、ミキサドラム内に生コンクリートが積載された状態において沈み込み検出部により検出された積載後沈み込み量と、積載前沈み込み量が検出されてから積載後沈み込み量が検出されるまでの間にミキサドラム内に投入された生コンクリートの投入量と、をミキサドラム内に生コンクリートが投入される度に記憶する記憶部と、ミキサドラム内に生コンクリートが投入される度に記憶部に記憶される積載前沈み込み量、積載後沈み込み量及び投入量に基づいて、架台部の沈み込み量とミキサドラム内の生コンクリート量との間の相関性をミキサドラム内に生コンクリートが投入される度に演算する演算部と、ミキサドラム内に生コンクリートが投入される度に演算部により演算される相関性に基づいて、沈み込み検出部で検出される現在の沈み込み量からミキサドラム内の現在の生コンクリート量を推定する推定部と、を有することを特徴とする。
【0007】
第1の発明では、コントローラにより、積載前沈み込み量、積載後沈み込み量及び投入量に基づいて、架台部の沈み込み量とミキサドラム内の生コンクリート量との間の相関性が演算され、演算された相関性に基づいて、沈み込み検出部で検出される現在の沈み込み量からミキサドラム内の現在の生コンクリート量が推定される。このため、作業者は、ミキサドラムから生コンクリートを排出する排出作業中であっても作業を中断することなく、ミキサドラム内の生コンクリートの残量を把握することができる。
【0008】
第2の発明は、記憶部には、ミキサドラム内に積載される生コンクリート量に応じて変化する架台部の沈み込み量の変化傾向が予め記憶されており、推定部は、推定されたミキサドラム内の現在の生コンクリート量をこの変化傾向に基づいて補正することを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、推定部において推定されたミキサドラム内の現在の生コンクリート量が、ミキサドラム内に積載される生コンクリート量に応じて変化する架台部の沈み込み量の変化傾向に基づいて補正される。このように緩衝装置等の特性により車両毎に異なる架台部の沈み込み量の変化傾向に基づいて推定量を補正することによって、推定精度を向上させることができる。
【0010】
第3の発明は、生コンクリート量推定装置が、ミキサ車の傾きを検出する傾斜検出部をさらに備え、コントローラが、傾斜検出部で検出されたミキサ車の傾きに基づいて相関性を補正し、補正された相関性に基づいてミキサドラム内の現在の生コンクリート量を推定することを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、記憶部には、積載前沈み込み量が記憶される際に傾斜検出部により検出された積載前傾斜量と、積載後沈み込み量が記憶される際に傾斜検出部により検出された積載後傾斜量と、がさらに記憶され、演算部は、積載前沈み込み量を積載前傾斜量により補正するとともに積載後沈み込み量を積載後傾斜量により補正することによって相関性を補正し、推定部は、補正された相関性に基づいて、沈み込み検出部で検出される現在の沈み込み量を傾斜検出部で検出される現在の傾斜量により補正して得られる実際の現在の沈み込み量からミキサドラム内の現在の生コンクリート量を推定することを特徴とする。
【0012】
第3及び第4の発明では、傾斜検出部で検出されたミキサ車の傾きに基づいて相関性が補正され、補正された相関性に基づいてミキサドラム内の現在の生コンクリート量が推定される。このため、生コンクリートを積載する際と生コンクリートを排出する際とにおいて架台部の傾斜が異なる場合であっても、ミキサドラム内の生コンクリート量を正確に推定することができる。
【0013】
第5の発明は、生コンクリート量推定装置が、コントローラにより推定されたミキサドラム内の現在の生コンクリート量を表示する表示部をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
第5の発明では、コントローラにより推定されたミキサドラム内の現在の生コンクリート量が、表示部に表示される。作業者は、表示部に表示されたミキサドラム内の現在の生コンクリート量を見ることによって、排出作業中であっても作業を中断することなく、ミキサドラム内の生コンクリートの残量を把握することができる。
【0015】
第6の発明は、生コンクリート量推定装置が、コントローラにより推定されたミキサドラム内の現在の生コンクリート量を外部へ送信可能な送信部をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
第6の発明では、コントローラにより推定されたミキサドラム内の現在の生コンクリート量が、送信部により外部へ送信される。このため、複数のミキサ車のミキサドラム内の現在の生コンクリート量をコンクリートプラントにおいて把握することが可能となり、作業現場へ過不足なく効率的に生コンクリートを配送することができる。
【0017】
第7の発明は、沈み込み検出部が、ミキサドラム内の生コンクリートが排出される際に、ミキサドラム内において生コンクリートが偏る側の架台部の沈み込み量を検出可能な位置に少なくとも設けられることを特徴とする。
【0018】
第7の発明では、ミキサドラム内において生コンクリートが偏る側の架台部の沈み込み量を検出可能な位置に沈み込み検出部が設けられる。このように架台部の沈み込み量の変化が比較的大きい部分に沈み込み検出部を設けることで、推定精度を向上させることができる。
【0019】
第8の発明は、沈み込み検出部が、ミキサ車の前後方向及び幅方向の少なくとも何れかの方向において、所定の間隔をあけて複数配置されることを特徴とする。
【0020】
第8の発明では、ミキサ車の前後方向及び幅方向の少なくとも何れかの方向において、所定の間隔をあけて、沈み込み検出部が複数配置される。このように配置される複数の沈み込み検出部の出力値に基づいてミキサドラム内の生コンクリート量を推定することで、推定精度を向上させることができる。
【0021】
第9の発明は、ミキサ車が第1から第8の発明の生コンクリート量推定装置を備えることを特徴とする。
【0022】
第9の発明では、ミキサ車が、第1から第8の発明の生コンクリート量推定装置を備える。このため、ミキサドラムの操作状況に関わらず、ミキサ車のミキサドラム内の生コンクリート量を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ミキサドラムの操作状況に関わらずミキサドラム内の生コンクリート量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る生コンクリート量推定装置を搭載したミキサ車の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る生コンクリート量推定装置を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る生コンクリート量推定装置において生コンクリート量を推定する際のフローチャートである。
【
図4】沈み込み量と生コンクリート量との相関性を示すグラフである。
【
図5A】生コンクリート量に応じて変化する沈み込み量の変化傾向を示すグラフである。
【
図5B】沈み込み量に応じた補正係数を示すグラフである。
【
図6】傾斜時の実際の沈み込み量と検出された沈み込み量との相違について説明するための図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る生コンクリート量推定装置において傾斜量を考慮して生コンクリート量を推定する際のフローチャートである。
【
図8A】実際の積載前沈み込み量の算出について説明するための図である。
【
図8B】実際の積載後沈み込み量の算出について説明するための図である。
【
図9】傾斜に基づいて補正された沈み込み量と生コンクリート量との相関性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る生コンクリート量推定装置について説明する。
【0026】
まず、
図1を参照して、生コンクリート量推定装置100を備えるミキサ車10の全体構成について説明する。
【0027】
ミキサ車10は、ミキサドラム2内に投入されたモルタルやレディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリート(以下、「生コン」と称する。)を運搬する車両である。以下の説明では、ミキサ車10が積載物として生コンを積載する場合について説明する。
【0028】
図1に示すように、ミキサ車10は、シャシフレーム11上に配置され車両の前後方向に延びる架台部1と、架台部1上に回転自在に搭載されるミキサドラム2と、ミキサドラム2を回転駆動するドラム駆動装置7と、外部から投入される生コンをミキサドラム2内へと導くホッパー4と、ミキサドラム2から排出される生コンを所定位置に誘導するシュート5と、を備える。
【0029】
ミキサドラム2は、回転軸C1を中心として回転する円筒状容器であり、車両後方側の後端部には生コンの投入と排出とが行われる開口部2aが設けられ、車両前方側の前端部には回転軸C1に沿って外部に向かって延在する駆動軸2bが設けられる。ミキサドラム2は、開口部2aが設けられる後端部側が前端部側よりも上方に持ち上げられた状態で架台部1に支持される。
【0030】
ミキサドラム2の駆動軸2bは、ドラム駆動装置7内に設けられる油圧モータ(図示省略)にギアボックス(図示省略)を介して連結される。このため、ミキサドラム2は、油圧モータによって正回転方向又は逆回転方向に回転駆動される。なお、ミキサドラム2の駆動軸2bは、ギアボックスを介してミキサ車10の走行用エンジン(図示省略)に連結されてもよく、この場合、ミキサドラム2は走行用エンジンによって回転駆動される。また、ミキサドラム2を回転駆動させるモータとしては、油圧モータに代えて、電動モータが用いられてもよい。
【0031】
ミキサドラム2内には、一対のブレード3a,3bがミキサドラム2の内壁面に沿って螺旋状に配設されている。一対のブレード3a,3bがミキサドラム2とともに回転することによって、ミキサドラム2内に投入された生コンの攪拌等が行われる。
【0032】
ホッパー4は、ミキサ車10の上方から投入される生コンをミキサドラム2内へと導くためにミキサドラム2の開口部2aの上方に配置される。一方、ミキサドラム2の開口部2aの下方には、ミキサドラム2から排出される生コンを所定位置に誘導するために、シュート5が配置される。
【0033】
上記構成のミキサ車10において、ミキサドラム2が車両後方から見て左回転である正回転方向に回転駆動されると、ブレード3a,3bは、ミキサドラム2内の生コンを攪拌しながらミキサドラム2の前方へと移動させる。一方、ミキサドラム2が逆回転方向に回転駆動されると、ブレード3a,3bは、生コンを攪拌しながらミキサドラム2の後方へと移動させる。このようにミキサドラム2を逆回転させることで、ミキサドラム2の開口部2aから生コンを排出させることができる。ミキサドラム2の開口部2aから排出された生コンは、シュート5を介して所定位置に誘導される。
【0034】
また、ホッパー4を介してミキサドラム2内に生コンが投入される際には、攪拌時よりもミキサドラム2を高速で正回転させて、投入された生コンを速やかにミキサドラム2の前方へと移動させる。なお、車両後方から見て右方向への回転が正回転方向となるようにブレード3a,3bを配置してもよい。
【0035】
次に、ミキサドラム2内の生コン量を推定する生コンクリート量推定装置100について説明する。
【0036】
図2に示すように、生コンクリート量推定装置100は、ミキサドラム2を支持する架台部1の地面方向への沈み込み量を検出する沈み込み検出部としての距離センサ20と、ミキサ車10の傾きを検出する傾斜検出部としての傾斜センサ22と、距離センサ20及び傾斜センサ22の検出値に基づいてミキサドラム2内の生コン量を推定するコントローラ30と、作業者により生コン投入量等が入力される入力部40と、コントローラ30が推定した生コン量を表示する表示部50と、コントローラ30が推定した生コン量を外部へ送信可能な送信部60と、を備える。
【0037】
距離センサ20は、
図1に示すように、架台部1に設けられ、架台部1と図示しない後輪の車軸との間の距離を計測するレーザ変位センサである。ここで、架台部1と、シャシフレーム11に図示しない緩衝装置を介して組み付けられる車軸と、の間の距離は、架台部1上の重量に応じて緩衝装置が伸縮することにより変化する。つまり、距離センサ20によって、架台部1と車軸との間の距離の変化を検出することによって、架台部1の地面方向への沈み込み量が検出される。距離センサ20で検出された架台部1の沈み込み量は、有線又は無線の通信手段によってコントローラ30へと入力される。
【0038】
なお、距離センサ20は、架台部1と車軸との間の距離変化を計測するものに限定されず、架台部1の地面方向への沈み込み量を検出することができれば、例えば、シャシフレーム11に設けられシャシフレーム11と車軸との間の距離やシャシフレーム11と地面との間の距離の変化を計測するものであってもよい。なお、一般的に地面は表面に凹凸があり検出値に誤差が生じやすいため、距離センサ20は、緩衝装置を介して連結されるいわゆるバネ上部材とバネ下部材との間の距離変化を計測するものとすることが好ましい。
【0039】
また、距離センサ20としては、レーザを利用した変位センサに限定されず、架台部1の地面方向への沈み込み量を検出することができれば、どのような形式のものであってもよく、超音波を利用したものであってもよい。また、地面方向への架台部1の沈み込み量が変化すると、緩衝装置も変形することから、例えば緩衝装置を構成するダンパの伸縮量を検出するストロークセンサを沈み込み検出部として用いることも可能である。また、地面方向への架台部1の沈み込み量が変化すると、架台部1やシャシフレーム11に生じる歪み量も変化することから、例えば架台部1やシャシフレーム11の歪み量を検出する歪みゲージを沈み込み検出部として用いることも可能である。
【0040】
傾斜センサ22は、
図1に示すように、距離センサ20と同様に架台部1に設けられ、水平面に対するミキサ車10の傾斜量を車両の前後方向及び車幅方向において検出するセンサである。傾斜センサ22で検出されたミキサ車10の傾斜量は、有線又は無線の通信手段によってコントローラ30へと入力される。なお、傾斜センサ22は、ミキサ車10の傾きを検出することができれば何処に設けられていてもよく、シャシフレーム11に設けられていてもよい。
【0041】
コントローラ30は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成され、運転席等の水やほこりが侵入するおそれが低い場所に設置される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ30は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0042】
コントローラ30は、
図2に示すように、距離センサ20及び傾斜センサ22の検出値や入力部40を介して入力された情報を記憶する記憶部31と、記憶部31に記憶された値を用いて所定の演算を行う演算部32と、距離センサ20及び傾斜センサ22の検出値や記憶部31に記憶された値、演算部32で演算された演算値を用いてミキサドラム2内の現在の生コン量を推定する推定部33と、を有する。各部の機能については、後述の生コン量推定方法の説明において詳述する。なお、記憶部31、演算部32及び推定部33は、コントローラ30の各機能を、仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。例えば、演算部32や推定部33で行われる演算や推定は、主にCPUにより行われ、記憶部31で行われる記憶は、RAMやROMにより行われる。
【0043】
入力部40は、作業者が生コンの投入量等を入力する操作パネルであり、ミキサドラム2の回転を操作する図示しない操作部の近くまたは運転席に設けられる。入力部40を介して入力された生コン量等の情報は、有線又は無線の通信手段によってコントローラ30に送信される。なお、入力部40は、作業者が携帯可能な携帯端末であってもよい。
【0044】
表示部50は、推定部33で推定された生コン量を数値やグラフで表示するモニタであり、入力部40と一体的に設けられる。推定部33で推定された生コン量は、有線又は無線の通信手段によって表示部50に送信され、作業者は、表示部50に表示された内容を見ることによってミキサドラム2内の現在の生コン量を把握することができる。なお、表示部50は、入力部40とは別に設けられていてもよい。
【0045】
送信部60は、Wi-Fi(登録商標)等の無線LANに対応する無線通信部や第三世代移動通信(3G)等の携帯電話通信網に対応する無線通信部であり、コントローラ30の内部に設けられる。推定部33で推定された生コン量は、送信部60を介してコンクリートプラント等の外部施設へ送信される。なお、送信部60は、外部との通信状態を良好な状態とするために、外部に露出される場所に配置されてもよい。
【0046】
次に、
図3のフローチャートと
図4のグラフとを参照して、生コンクリート量推定装置100によりミキサドラム2内の現在の生コン量を推定する方法について説明する。
【0047】
まず、ステップS11において、ミキサドラム2内に生コンが積載されていない状態か否かが検出される。具体的には、コンクリートプラントにおいてミキサ車10が停車し、生コンの投入を待っているときに、作業者により入力部40を介してミキサドラム2の状態が「積載前状態」であることが入力されると、コントローラ30は、ミキサドラム2内に生コンが積載されていない状態であると判定する。なお、ミキサドラム2内に生コンが積載されていない状態であるか否かは、ミキサ車10がコンクリートプラント内に位置していることを示す位置情報及びミキサドラム2の駆動負荷が低いことを示す駆動状態情報から判定されてもよい。
【0048】
ミキサドラム2の状態が「積載前状態」であると判定されると、ステップS12に進み、記憶部31において、「積載前状態」であると判定された時に距離センサ20により検出された沈み込み量が積載前沈み込み量S1として記憶される。
【0049】
続いて、ステップS13において、入力部40を介して生コンの投入量V1が入力されたか否かが判定される。作業者によって「積載前状態」であることが入力されてからミキサドラム2内に投入された生コンの投入量V1は、通常、コンクリートプラントにおいて計測される。このように計測された投入量V1が作業者により入力部40に入力されると、ステップS14に進み、記憶部31において、作業者により入力された生コンの投入量V1が記憶されるとともに、投入量V1が入力された時に距離センサ20により検出された沈み込み量が積載後沈み込み量S2として記憶される。なお、投入量V1の入力は、作業者により手入力されることに代えて、無線通信によりコンクリートプラントから送信された投入量V1をミキサ車10で受信することによって行われてもよい。
【0050】
このように、記憶部31には、ミキサドラム2内に生コンが積載されていない状態において距離センサ20により検出された積載前沈み込み量S1と、ミキサドラム2内に生コンが積載された状態において距離センサ20により検出された積載後沈み込み量S2と、積載前沈み込み量S1が検出されてから積載後沈み込み量S2が検出されるまでの間にミキサドラム2内に投入された生コンの投入量V1と、が記憶される。なお、積載前沈み込み量S1、積載後沈み込み量S2及び投入量V1は、コンクリートプラントにおいてミキサドラム2内に生コンが投入される度に更新される。
【0051】
記憶部31に積載前沈み込み量S1、積載後沈み込み量S2及び投入量V1が記憶されると、続くステップS15において、演算部32によりこれらの値に基づいて架台部1の沈み込み量と生コン量との相関性が演算される。具体的には、
図4に示すように、沈み込み量が積載前沈み込み量S1であるときの生コン量をゼロとし、沈み込み量が積載後沈み込み量S2であるときの生コン量を投入量V1とした場合に描かれる直線(一次関数)を数式化する。このように数式化された架台部1の沈み込み量と生コン量との相関性は、記憶部31に記憶される。
【0052】
次にステップS16では、ステップS15で演算された架台部1の沈み込み量と生コン量との相関性に基づき、ミキサドラム2内の生コン量の推定が行われる。具体的には、距離センサ20により検出された現在の沈み込み量Snが推定部33に入力されると、推定部33は、
図4に示すように、現在の沈み込み量Snに対応する推定量Vnを記憶部31に記憶された一次関数を用いて算出し、算出された値をミキサドラム2内の現在の生コン量(推定量Vn)として出力する。
【0053】
具体的には、例えば、積載前沈み込み量S1が50mmであり、積載後沈み込み量S2が150mmであり、投入量V1が5.0m3であった場合、
推定量Vn=0.05*現在の沈み込み量Sn-2.5
という、一次関数の式が求められる。そして、現在の沈み込み量Snが120mmであれば、この式からミキサドラム2内の現在の生コン量は、3.5m3になっていると推定される。
【0054】
なお、上述の一次関数の式によらず、以下のような過程によってミキサドラム2内の現在の生コン量を推定してもよい。
【0055】
積載前沈み込み量S1が50mmであり、積載後沈み込み量S2が150mmであり、投入量V1が5.0m3であった場合、5.0m3の生コン量に対して架台部1は100mmだけ沈み込んだことになる。この場合、架台部1の沈み込み量が1mm変化すれば、ミキサドラム2内の生コン量は0.05m3だけ変化すると推定される。したがって、現在の沈み込み量Snが120mmであれば、積載後沈み込み量S2と比較して30mmだけ沈み込み量が減少していることから、ミキサドラム2から1.5m3の生コンが排出され、ミキサドラム2内には3.5m3の生コンが残っていると推定される。
【0056】
このようにステップS16において生コン量の推定が完了すると、続くステップS17において、推定部33で推定された推定量Vnが表示部50に表示される。表示部50には、例えば、「残り3.5m3」、「残り70%」といった具体的な数値やグラフが表示される。このため、作業者は、表示部50に表示された内容を見ることで容易にミキサドラム2内の現在の生コン量、すなわち、生コンの残量を把握することができる。
【0057】
続くステップS18では、入力部40を介して作業者により生コン量の推定終了の指示がなされたか否かが判定される。入力部40に表示される推定終了ボタンが作業者によって押されると、コントローラ30は生コン量の推定を終了する。一方で、推定終了ボタンが作業者に押されない限り、コントローラ30は生コン量の推定を継続する。
【0058】
つまり、コントローラ30は、推定終了ボタンが押されなければ、距離センサ20により検出された現在の沈み込み量Snを順次取り込み、取り込まれた現在の沈み込み量Snに応じた推定量Vnを順次出力する。このため、表示部50には、ミキサドラム2から生コンを排出する排出作業によって徐々に減少するミキサドラム2内の現在の生コン量がリアルタイムで表示される。なお、コントローラ30が、距離センサ20により検出された現在の沈み込み量Snを取り込む時間間隔は作業者によって適当な長さに設定可能である。
【0059】
このように、ミキサドラム2内の現在の生コン量が表示部50に表示されるため、作業者は、排出作業中であっても作業を中断することなく、表示部50を見るだけでミキサドラム2内の生コンの残量をリアルタイムで把握することができる。また、経験が浅い作業者であっても、生コンの残量を容易に把握することが可能になるとともに、表示部50を打設現場の現場監督へ見せることで生コンの残量を容易に報告することが可能となる。加えて、作業者の経験の差によってミキサドラム2内の生コンの残量の把握にばらつきが生じることを防止することができる。
【0060】
また、推定部33で推定された推定量Vnは、送信部60を介してコンクリートプラントへもリアルタイムで送信可能である。このため、例えば、複数のミキサ車10のミキサドラム2内の現在の生コン量をコンクリートプラントにおいてリアルタイムで把握することが可能となり、作業現場へ過不足なく効率的に生コンを配送することができる。また、この結果として、生コンの廃棄量が低減されるとともに、ミキサ車10の配送効率が向上することで、生コンの製造コスト及び配送コストを低減することもできる。
【0061】
作業現場での排出作業が終了すると、ミキサ車10は、再びコンクリートプラントへと戻る。そして、生コンを投入可能な状態となると、入力部40を介してミキサドラム2の状態が「積載前状態」であることが作業者により入力され、再び、記憶部31に積載前沈み込み量S1、積載後沈み込み量S2及び投入量V1が記憶される。
【0062】
このように、記憶部31に記憶されるこれらの値は、コンクリートプラントにおいてミキサドラム2内に生コンが投入される度に更新されるため、経年変化により緩衝装置を構成する板バネ等の弾性係数が変化したとしても、生コン量を推定するにあたってその影響を受けることはない。また、記憶部31に記憶されるこれらの値は、ミキサ車10毎に異なるため、ミキサ車10毎に正確な生コン量を推定することが可能となる。
【0063】
なお、ステップS14において、記憶部31に積載後沈み込み量S2を記憶させるタイミング、すなわち、作業者が入力部40を介して生コンの投入量V1を入力するタイミングは、コンクリートプラントにおいてミキサドラム2内への生コンの投入が完了したときから作業現場でミキサドラム2から生コンを排出させる前までの間であればどのようなタイミングであってもよい。
【0064】
しかしながら、生コン量の推定精度を向上させるためには、記憶部31に積載後沈み込み量S2を記憶させるタイミングは、コンクリートプラントにおいてミキサドラム2内への生コンの投入が完了したときよりも、作業現場でミキサドラム2から生コンが排出される直前であることが好ましい。以下に記憶部31に積載後沈み込み量S2を記憶させるタイミングをミキサドラム2から生コンが排出される直前とすることが好ましい理由について説明する。
【0065】
生コン量の推定を行う必要があるのは、主にミキサドラム2から生コンを排出する排出作業中である。ミキサドラム2から生コンを排出する際には、ミキサドラム2は車両後方から見て右回転である逆回転方向に回転駆動される。このときミキサドラム2内の生コンは、撹拌されながら車両後方から見てミキサドラム2の左側に偏った状態となる。このため、車両後方から見て架台部1の左側の方の沈み込み量が大きくなる。
【0066】
一方、コンクリートプラントにおいてミキサドラム2内への生コンの投入が完了したときには、ミキサドラム2は車両後方から見て左回転である正回転方向に回転駆動されている。このため、架台部1の沈み込み量は、生コン排出時とは反対側である車両後方から見て架台部1の右側の方が大きくなる。
【0067】
このため、距離センサ20が車両後方から見て左側寄りに設けられていると、距離センサ20から出力される沈み込み量は、コンクリートプラントにおいてミキサドラム2内への生コンの投入が完了したときよりも生コンを排出する直前の方が大きくなる。したがって、生コンの投入が完了したときに積載後沈み込み量S2を記憶部31に記憶させてしまうと、生コンを排出させる際に推定される生コンの推定量Vnは大きめに推定されてしまうことになる。
【0068】
同様に、距離センサ20が車両後方から見て右側寄りに設けられていると、距離センサ20から出力される沈み込み量は、生コンを排出する直前よりも生コンの投入が完了したときの方が大きくなる。したがって、生コンの投入が完了したときに積載後沈み込み量S2を記憶部31に記憶させてしまうと、生コンを排出させる際に推定される生コンの推定量Vnは小さめに推定されてしまうことになる。
【0069】
このように、生コンの投入が完了したときに積載後沈み込み量S2を記憶部31に記憶させてしまうと、推定誤差が生じるおそれがあることから、記憶部31に積載後沈み込み量S2を記憶させるタイミングは、ミキサドラム2から生コンが排出される直前とすることが好ましい。
【0070】
また、上述のように、生コン排出時には、車両後方から見て架台部1の左側の方の沈み込み量が大きくなる。つまり、車両後方から見て架台部1の右側よりも左側の方が、ミキサドラム2から生コンを排出している間に、排出される所定の生コン量に対して沈み込み量が変化する割合が大きい。このように沈み込み量の変化が比較的大きい部分に距離センサ20を設けることで、ミキサドラム2内の生コン量の推定精度を向上させることができるため、距離センサ20は、車両後方から見て左側寄りに設けることが好ましい。なお、ミキサ車10の仕様が、車両後方から見て左回転にミキサドラム2を回転駆動させることでミキサドラム2から生コンを排出する仕様である場合には、生コン排出時には、車両後方から見て架台部1の右側の方の沈み込み量が大きくなるため、距離センサ20は、車両後方から見て右側寄りに設けることが好ましい。
【0071】
また、推定精度を向上させるためには、距離センサ20を複数設け、各距離センサ20の出力値に基づいて推定された推定量Vnの平均値を最終的な推定量Vnとして出力することが好ましい。なお、上述のように生コンをミキサドラム2内に投入する際とミキサドラム2から排出する際とでは、ミキサドラム2の回転方向が切り換えられることで、ミキサドラム2内において生コンが偏る位置が車両の前後方向及び左右方向に変化することになる。このようにミキサドラム2内において生コンが偏る位置が変化すると、車両後方から見て架台部1の左右の沈み込み量に差が生じるとともに、車両の前後方向においても架台部1の沈み込み量に差が生じることとなる。このため、距離センサ20を複数設ける場合は、車両の幅方向において距離センサ20を対称的に配置したり、車両の前後方向において距離センサ20を所定の間隔をあけて配置したりすることが好ましい。
【0072】
続いて、ミキサドラム2内の生コン量の推定精度を向上させるための二つの補正方法について説明する。
【0073】
まず、
図5A及び
図5Bを参照し、第1の補正方法について説明する。
【0074】
上述の生コン量推定方法では、架台部1の沈み込み量と生コン量との相関性が比例関係にあると仮定して、生コン量を推定している。しかしながら、架台部1の沈み込み量と生コン量との相関性は、緩衝装置の特性によって変わるものであって、例えば、
図5Aに実線で示されるように曲線的な関係となる場合もある。
【0075】
このため、記憶部31には、ミキサドラム2内に積載される生コン量に応じて変化する架台部1の沈み込み量の変化傾向が予め記憶されている。具体的には、生コンが積載されていないミキサドラム2内に例えば0.5m
3ずつ生コンを投入し、投入された生コン量が入力部40を介して作業者により入力される度に、距離センサ20で検出される沈み込み量を記憶部31に記憶させることによって、
図5Aに実線で示されるような変化傾向を取得する。
【0076】
そして、演算部32において、取得された変化傾向と
図5Aに破線で示される直線とから、
図5Bに示されるような、沈み込み量と生コン量との相関性が比例関係にあると仮定した場合に対する変化傾向の比率が補正係数として演算される。具体的には、ミキサドラム2内に投入された生コンの投入量V1が第1投入量Vn1であった場合、積載前沈み込み量S1から第1投入量Vn1に対応する第1沈み込み量Sn1までの補正係数は、
図5Bに示されるように第1補正係数C1となる。また、ミキサドラム2内に投入された生コンの投入量V1が第1投入量Vn1よりも少ない第2投入量Vn2であった場合、積載前沈み込み量S1から第2投入量Vn2に対応する第2沈み込み量Sn2までの補正係数は、
図5Bに示されるように第1補正係数C1よりも大きい第2補正係数C2となる。このように補正係数は、ミキサドラム2内に投入された生コンの投入量V1に応じて異なる大きさとなる。
【0077】
このように導出された補正係数を、推定部33において推定量Vnに乗じることで得られた補正後の推定量Vnを最終的な推定量Vnとして出力することにより、推定量Vnの推定精度を向上させることができる。また、緩衝装置の特性は、経年変化するおそれがあるため、上述の変化傾向を定期的に更新することにより、ミキサドラム2内の生コン量の推定精度をさらに向上させることができる。なお、上述の変化傾向は、ミキサ車10毎に取得されるため、各ミキサ車10において推定されるミキサドラム2内の生コン量の推定精度を向上させることができる。
【0078】
次に、第2の補正方法について説明する。
【0079】
一般的にコンクリートプラントでは、ミキサ車10は比較的傾斜が小さい平坦な場所において生コンが投入される一方で、生コンが排出される作業現場は、平坦な場所ばかりではなく、比較的傾斜が大きい山間部となることもある。
【0080】
上述のように、距離センサ20は、バネ上部材とバネ下部材または地面との間の距離変化を計測するものであるため、距離センサ20で検出される沈み込み量は、地面に対してほぼ垂直な方向における架台部1の沈み込み量である。しかしながら架台部1は、実際には重力方向に沈み込む。このため、
図6に示すように、ミキサドラム2から生コンを排出する際に、架台部1が水平方向に対して傾斜量αnだけ傾斜している場合、傾斜量αnが大きいほど、距離センサ20で検出される沈み込み量Snは、実際の沈み込み量Srnよりも小さな値となる。
【0081】
このため、例えば、上述の積載後沈み込み量S2が、架台部1の傾斜が比較的小さいコンクリートプラント等において記憶部31に記憶された後、架台部1の傾斜が比較的大きい作業現場においてミキサドラム2内の生コン量の推定が行われると、
図6に示すように、距離センサ20で検出される沈み込み量Snは実際の沈み込み量Srnよりも小さな値となることから、ミキサドラム2から生コンが排出されていないにも関わらず、生コンが減っていると推定されるおそれがある。
【0082】
このような推定誤差を除去するため、コントローラ30は、傾斜センサ22の検出値に基づいて架台部1の沈み込み量と生コン量との相関性を補正し、補正された相関性に基づいてミキサドラム2内の現在の生コン量を推定する。
【0083】
この第2の補正方法を用いて現在の生コン量を推定する方法について、
図6~9を参照して説明する。なお、
図7は、架台部1の傾斜量αnを考慮して生コン量を推定する際のフローチャートであり、
図8A及び
図8Bは、ミキサドラム2に生コンを積載する前後において、実際の沈み込み量と検出された沈み込み量との関係を示した図であり、
図9は、架台部1の傾斜を考慮して得られた沈み込み量と生コン量との相関性を示したグラフである。
【0084】
まず、
図7のステップS21において、ステップS11と同様に、ミキサドラム2内に生コンが積載されていない状態か否かが検出される。
【0085】
ミキサドラム2の状態が「積載前状態」であると判定されると、ステップS22に進み、記憶部31において、「積載前状態」であると判定された時に距離センサ20により検出された沈み込み量が積載前沈み込み量S1として記憶されるとともに、傾斜センサ22により検出された傾斜量が積載前傾斜量α1として記憶される。
【0086】
続いて、ステップS23において、ステップS13と同様に、入力部40を介して生コンの投入量V1が入力されたか否かが判定される。投入量V1が作業者によって入力部40に入力されると、ステップS24に進み、記憶部31において、作業者により入力された生コンの投入量V1が記憶されるとともに、投入量V1が入力された時に距離センサ20により検出された沈み込み量が積載後沈み込み量S2として記憶され、傾斜センサ22により検出された傾斜量が積載後傾斜量α2として記憶される。
【0087】
このように、記憶部31には、ミキサドラム2内に生コンが積載されていない状態において距離センサ20により検出された積載前沈み込み量S1と、ミキサドラム2内に生コンが積載された状態において距離センサ20により検出された積載後沈み込み量S2と、積載前沈み込み量S1が検出されてから積載後沈み込み量S2が検出されるまでの間にミキサドラム2内に投入された生コンの投入量V1と、に加えて、積載前沈み込み量S1が記憶される際に傾斜センサ22により検出された積載前傾斜量α1と、積載後沈み込み量S2が記憶される際に傾斜センサ22により検出された積載後傾斜量α2と、が記憶される。
【0088】
記憶部31にこれらの値が記憶されると、続くステップS25において、演算部32により、これらの値に基づいて架台部1の沈み込み量と生コン量との補正された相関性が演算される。
【0089】
具体的には、まず、積載前沈み込み量S1と積載前傾斜量α1とから実際の積載前沈み込み量Sr1が演算され、積載後沈み込み量S2と積載後傾斜量α2とから実際の積載後沈み込み量Sr2が演算される。
【0090】
続いて、
図9に示すように、沈み込み量が実際の積載前沈み込み量Sr1であるときの生コン量をゼロとし、沈み込み量が実際の積載後沈み込み量Sr2であるときの生コン量を投入量V1とした場合に描かれる直線(一次関数)を数式化する。このように数式化された架台部1の沈み込み量と生コン量との補正された相関性は、記憶部31に記憶される。
【0091】
次にステップS26では、推定部33において、距離センサ20により検出された現在の沈み込み量Snと、傾斜センサ22により検出された現在の傾斜量αnと、から実際の現在の沈み込み量Srnが演算される。
【0092】
続くステップS27では、ステップS25で演算された架台部1の沈み込み量と生コン量との補正された相関性と、ステップS26で演算された実際の現在の沈み込み量Srnと、に基づき、ミキサドラム2内の生コン量の推定が行われる。
【0093】
具体的には、推定部33は、ステップS16と同様にして、
図9に示すように、実際の現在の沈み込み量Srnに対応する推定量Vnを記憶部31に記憶された一次関数を用いて算出し、算出された値をミキサドラム2内の現在の生コン量(推定量Vn)として出力する。
【0094】
このようにステップS27において生コン量の推定が完了すると、続くステップS27において、ステップS17と同様に、推定部33で推定された推定量Vnが表示部50に表示される。
【0095】
そして、続くステップS29では、ステップS18と同様に、入力部40を介して作業者により生コン量の推定終了の指示がなされたか否かが判定される。入力部40に表示される推定終了ボタンが作業者によって押されると、コントローラ30は生コン量の推定を終了する。一方で、推定終了ボタンが作業者に押されない限り、コントローラ30は生コン量の推定を継続し、ミキサドラム2内の現在の生コン量をリアルタイムで出力し続ける。
【0096】
このように、ミキサ車10の傾斜を考慮してミキサドラム2内の現在の生コン量を推定することにより、生コン量の推定精度を向上させることができる。
【0097】
なお、ステップS24において、記憶部31に積載後沈み込み量S2及び積載後傾斜量α2を記憶させるタイミング、すなわち、作業者が入力部40を介して生コンの投入量V1を入力するタイミングは、コンクリートプラントにおいてミキサドラム2内への生コンの投入が完了したときであってもよいし、作業現場でミキサドラム2から生コンを排出させるときであってもよい。コンクリートプラントにおいてミキサドラム2内への生コンの投入が完了したときに作業者により投入量V1が入力部40に入力されると、積載後傾斜量α2は、積載前傾斜量α1とほぼ同じ値となり、作業現場でミキサドラム2から生コンを排出させるときに作業者により投入量V1が入力部40に入力されると、積載後傾斜量α2は、現在の傾斜量αnとほぼ同じ値となる。
【0098】
このように第1の補正方法及び第2の補正方法により推定量Vnを補正することによって、ミキサドラム2内の生コン量の推定精度を向上させることができる。なお、第1の補正方法と第2の補正方法とは、両方同時に行われてもよい。また、推定精度が要求されない場合は、何れの補正方法も行われなくともよい。
【0099】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0100】
生コンクリート量推定装置100では、コントローラ30により、積載前沈み込み量S1、積載後沈み込み量S2及び投入量V1に基づいて、架台部1の沈み込み量とミキサドラム2内の生コン量との間の相関性が演算され、演算された相関性に基づいて、距離センサ20で検出される現在の沈み込み量Snからミキサドラム2内の現在の生コン量が推定される。そして、推定されたミキサドラム2内の現在の生コン量は、表示部50にリアルタイムで表示される。
【0101】
したがって、作業者は、ミキサドラム2から生コンを排出する排出作業中であっても作業を中断することなく、表示部50を見ることでミキサドラム2内の生コンの残量をリアルタイムで把握することができる。また、経験が浅い作業者であっても、生コンの残量を容易に把握することが可能になるとともに、表示部50を打設現場の現場監督へ見せることで生コンの残量を容易に報告することが可能となる。加えて、作業者の経験の差によってミキサドラム2内の生コンの残量の把握にばらつきが生じることを防止することができる。
【0102】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0103】
生コンクリート量推定装置100は、ミキサドラム2を支持する架台部1の地面方向への沈み込み量を検出する距離センサ20と、距離センサ20で検出された架台部1の沈み込み量に基づいてミキサドラム2内の生コン量を推定するコントローラ30と、を備え、コントローラ30は、ミキサドラム2内に生コンが積載されていない状態において距離センサ20により検出された積載前沈み込み量S1と、ミキサドラム2内に生コンが積載された状態において距離センサ20により検出された積載後沈み込み量S2と、積載前沈み込み量S1が検出されてから積載後沈み込み量S2が検出されるまでの間にミキサドラム2内に投入された生コンの投入量V1と、を記憶する記憶部31と、積載前沈み込み量S1、積載後沈み込み量S2及び投入量V1に基づいて、架台部1の沈み込み量とミキサドラム2内の生コン量との間の相関性を演算する演算部32と、当該相関性に基づいて、距離センサ20で検出される現在の沈み込み量Snからミキサドラム2内の現在の生コン量を推定する推定部33と、を有する。
【0104】
この構成では、コントローラ30により、積載前沈み込み量S1、積載後沈み込み量S2及び投入量V1に基づいて、架台部1の沈み込み量とミキサドラム2内の生コン量との間の相関性が演算され、演算された相関性に基づいて、距離センサ20で検出される現在の沈み込み量Snからミキサドラム2内の現在の生コン量が推定される。このため、作業者は、表示部50に表示されたミキサドラム2内の現在の生コン量を見ることによって、ミキサドラム2から生コンを排出する排出作業中であっても作業を中断することなく、ミキサドラム2内の生コンの残量を把握することができる。また、経験が浅い作業者であっても、生コンの残量を容易に把握することが可能になるとともに、表示部50に表示されたミキサドラム2内の現在の生コン量を打設現場の現場監督へ見せることで生コンの残量を容易に報告することが可能となる。加えて、作業者の経験の差によってミキサドラム2内の生コンの残量の把握にばらつきが生じることを防止することができる。
【0105】
また、生コンクリート量推定装置100は、コントローラ30により推定されたミキサドラム2内の現在の生コン量を表示する表示部50をさらに備える。
【0106】
この構成では、コントローラ30により推定されたミキサドラム2内の現在の生コン量が、表示部50に表示される。作業者は、表示部50に表示されたミキサドラム2内の現在の生コン量を見ることによって、排出作業中であっても作業を中断することなく、ミキサドラム2内の生コンの残量を把握することができる。
【0107】
また、生コンクリート量推定装置100は、コントローラ30により推定されたミキサドラム2内の現在の生コン量を外部へ送信可能な送信部60をさらに備える。
【0108】
この構成では、コントローラ30により推定されたミキサドラム2内の現在の生コン量が、送信部60によりコンクリートプラント等の外部へ送信される。このため、例えば、複数のミキサ車10のミキサドラム2内の現在の生コン量をコンクリートプラントにおいてリアルタイムで把握することが可能となり、作業現場へ過不足なく効率的に生コンを配送することができる。また、この結果として、生コンの廃棄量が低減されるとともに、ミキサ車10の配送効率が向上することで、生コンの製造コスト及び配送コストを低減することもできる。
【0109】
また、記憶部31には、ミキサドラム2内に積載される生コン量に応じて変化する架台部1の沈み込み量の変化傾向が予め記憶されており、推定部33は、推定されたミキサドラム2内の現在の生コン量を変化傾向に基づいて補正する。
【0110】
この構成では、推定部33において推定されたミキサドラム2内の現在の生コン量が、ミキサドラム2内に積載される生コン量に応じて変化する架台部1の沈み込み量の変化傾向に基づいて補正される。このように緩衝装置等の特性により車両毎に異なる沈み込み量の変化傾向に基づいて、推定量Vnを補正することによりミキサドラム2内の生コン量の推定精度を向上させることができる。
【0111】
また、距離センサ20は、ミキサドラム2内の生コンが排出される際に、ミキサドラム2内において生コンが偏る側の架台部1の沈み込み量を検出可能な位置に少なくとも設けられる。
【0112】
この構成では、ミキサドラム2内において生コンが偏る側の架台部1の沈み込み量を検出可能な位置に距離センサ20が設けられる。ミキサドラム2内において生コンが偏る側では、所定の生コン量の変化に対する架台部1の沈み込み量の変化が比較的大きくなる。このように架台部1の沈み込み量の変化が比較的大きい部分に距離センサ20を設けることで、ミキサドラム2内の生コン量の推定精度を向上させることができる。
【0113】
また、距離センサ20は、ミキサ車10の前後方向及び幅方向の少なくとも何れかの方向において、所定の間隔をあけて複数設けられる。
【0114】
この構成では、ミキサ車10の前後方向及び幅方向の少なくとも何れかの方向において、所定の間隔をあけて、距離センサ20が複数配置される。このように配置される複数の距離センサ20の出力値に基づいてミキサドラム2内の生コン量を推定することで、推定精度を向上させることができる。
【0115】
また、生コンクリート量推定装置100は、ミキサ車10の傾きを検出する傾斜センサ22をさらに備え、コントローラ30は、傾斜センサ22で検出されたミキサ車10の傾きに基づいて相関性を補正し、補正された相関性に基づいてミキサドラム2内の現在の生コン量を推定する。
【0116】
また、記憶部31には、積載前沈み込み量S1が記憶される際に傾斜センサ22により検出された積載前傾斜量α1と、積載後沈み込み量S2が記憶される際に傾斜センサ22により検出された積載後傾斜量α2と、がさらに記憶され、演算部32は、積載前沈み込み量S1を積載前傾斜量α1により補正するとともに積載後沈み込み量S2を積載後傾斜量α2により補正することによって相関性を補正し、推定部33は、補正された相関性に基づいて、距離センサ20で検出される現在の沈み込み量Snを傾斜センサ22で検出される現在の傾斜量αnにより補正して得られる実際の現在の沈み込み量Srnからミキサドラム2内の現在の生コン量を推定する。
【0117】
これらの構成では、傾斜センサ22で検出されたミキサ車10の傾きに基づいて相関性が補正され、補正された相関性に基づいてミキサドラム2内の現在の生コン量が推定される。このため、生コンを積載する際と生コンを排出する際とにおいて架台部1の傾斜が異なる場合であっても、ミキサドラム2内の生コン量をより正確に推定することができる。
【0118】
また、ミキサ車10は、生コンクリート量推定装置100を備える。
【0119】
この構成では、ミキサ車10が、上記構成の生コンクリート量推定装置100を備える。このため、ミキサドラム2の操作状況に関わらず、ミキサ車10のミキサドラム2内の生コン量を容易に把握することができる。
【0120】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0121】
100・・・生コンクリート量推定装置、1・・・架台部、2・・・ミキサドラム、10・・・ミキサ車、20・・・距離センサ(沈み込み検出部)、22・・・傾斜センサ(傾斜検出部)、30・・・コントローラ、31・・・記憶部、32・・・演算部、33・・・推定部、40・・・入力部、50・・・表示部、60・・・送信部