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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】錠剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/24 20060101AFI20221026BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20221026BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221026BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20221026BHJP
【FI】
A61K36/24
A61K31/197
A61K47/46
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/12
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P25/20
A61P3/06
A61P9/12
A61P9/00
A61P13/12
A61P25/00
A61P25/22
A61P25/24
A61P43/00 121
A61K9/20
A61K127:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018112297
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019214528
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102496
【氏名又は名称】エスエス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 亮
(72)【発明者】
【氏名】滝口 景介
(72)【発明者】
【氏名】山浦 裕治
(72)【発明者】
【氏名】吉村 理
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-093842(JP,A)
【文献】特表2008-515833(JP,A)
【文献】特開2005-232045(JP,A)
【文献】日本栄養・食糧学会大会講演要旨集,2011年,Vol.65th ,Page.226 ,3J-08a
【文献】機能性表示食品データベース ネルリラ(F631),2021年,[online],[2022年5月17日検索],<URL:https://db.plusaid.jp/foods/F631>,<URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B091YG8WPX/ref=emc_b_5_i>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/327
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)、(b)(c)及び(d)を含有する錠剤組成物。
(a)γ-アミノ酪酸 5質量%以上60質量%以下
(b)ラフマ抽出物 2.5質量%以上30質量%以下
(c)ラベンダー末 3質量%以上50質量%以下
(d)結晶セルロース、還元麦芽糖水飴、二酸化ケイ素及びステアリン酸カルシウム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
γ-アミノ酪酸(GABA)は、脳内で基本的に抑制性の神経伝達物質として機能している物質である。γ-アミノ酪酸はストレスにより誘導されるドーパミンなどの興奮性神経伝達物質の過剰分泌を抑制し、リラックス効果や抗ストレス作用を発揮し、睡眠の質を改善することが知られている。また、血圧降下作用やコレステロール低下作用を有することが知られている。
【0003】
一方、ラフマはキョウチクトウ科に属する多年性草本であり、「中華人民共和国薬典」に記載されている植物で、心臓病、腎炎、高血圧、不眠症、神経衰弱などに対し明の時代より治療薬として利用されてきた。ラフマの抽出物の作用メカニズムとして脳内の抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)の取り込みを促進するメカニズムが知られており、現代日本においては、リラックス効果や抗ストレス作用を目的に服用されている。また、近年では動物実験において抗不安作用、抗鬱作用、血圧上昇抑制作用などについても示されている。
【0004】
ラフマ抽出物は脳内抑制神経伝達物質ギャバ受容体の作動剤として作用すると示唆されていることから、ラフマ抽出物とγ-アミノ酪酸の同時接種により、リラックス効果や抗ストレス作用が増強することが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-93842号公報
【文献】特許第5534196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のようにラフマ抽出物とγ-アミノ酪酸とを配合した組成物は、抗ストレス剤として有用であることから、これらの成分を含有する錠剤を製造し、その崩壊性について検討したところ、これら2成分を含有する錠剤は崩壊性が悪いことが判明した。崩壊性の改善においては崩壊剤を添加する方法が知られている一方、特に健康食品においては一般消費者の合成添加剤への抵抗感がある。合成添加剤を使わない方法としては、大葉乾燥粉末を含有させることで崩壊性を改善する方法が報告されている(特許文献2)。しかしながら、この方法は大葉乾燥粉末および動物由来軟骨抽出物を含有することに限定されており、ラフマ抽出物とγ-アミノ酪酸とを含有する場合においては前例がない。
従って、本発明の課題は、ラフマ抽出物とγ-アミノ酪酸とを含有し、崩壊性が改善された錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、ラフマ抽出物とγ-アミノ酪酸とを配合し、通常の流通経路で破損が生じない程度の硬度を有する錠剤を製造し、その崩壊性について検討してきたところ、種々の可食性植物を配合しても崩壊性が向上しないにもかかわらず、ラベンダーを一定量配合すれば、崩壊性が改善された錠剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の発明〔1〕及び〔2〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕次の成分(a)、(b)及び(c)を含有する錠剤組成物。
(a)γ-アミノ酪酸 5質量%以上60質量%以下
(b)ラフマ抽出物 2.5質量%以上30質量%以下
(c)ラベンダー 3質量%以上50質量%以下
〔2〕さらに、賦形剤、結合剤、流動化剤及び滑沢剤から選ばれる1種以上を含有する〔1〕記載の錠剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の錠剤は、γ-アミノ酪酸とラフマ抽出物とを含有し、崩壊性に優れ、速やかに吸収される錠剤である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の錠剤組成物は、次の成分(a)、(b)及び(c)を含有する。
(a)γ-アミノ酪酸 5質量%以上60質量%以下
(b)ラフマ抽出物 2.5質量%以上30質量%以下
(c)ラベンダー 3質量%以上50質量%以下。
【0012】
成分(a)はγ-アミノ酪酸(GABA)であり、脳内で主に抑制性の神経伝達物質として機能し、リラックス効果、抗ストレス効果、睡眠の質改善作用を有することが知られている成分である。化学合成により得られたγ-アミノ酪酸を用いてもよく、γ-アミノ酪酸を含有する植物の抽出物等を用いてもよい。
【0013】
成分(a)の含有量は、リラックス効果、抗ストレス効果、睡眠の質改善作用、良好な崩壊性及び服用を容易にするための適切な大きさを維持する観点から、5質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましく、15質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
【0014】
成分(b)はラフマ抽出物であり、リラックス効果、抗ストレス効果、睡眠の質改善作用を有する成分である。ラフマ抽出物としては、ラフマの葉より水、エタノール、含水エタノール、グリコール、グリセリン等で抽出された抽出物が挙げられる。ラフマの葉の水、エタノール又は含水エタノールによる抽出物が好ましい。ラフマ抽出物は、市販品を用いることもできる。
【0015】
錠剤組成物中の成分(b)の含有量は、リラックス効果、抗ストレス効果、崩壊性及び服用を容易にするための適切な大きさを維持する観点から、乾燥固形分換算で2.5質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましく、7.5質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0016】
成分(a)と成分(b)の含有質量比(a/b)(乾燥固形分質量比)は、リラックス効果、抗ストレス効果の発現性の点から0.1~10が好ましく、0.5~5がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
【0017】
成分(c)は、ラベンダーであり、本発明の錠剤組成物において崩壊性改善剤として作用する。後記実施例に示すように、種々の可食性植物の中でラベンダーが特異的に優れた崩壊性改善作用を示す。
ラベンダーとしては、ラベンダーの花であるのが好ましい。さらにラベンダーの花のうち、ラベンダーの花の乾燥粉末であり、ラベンダー末として市販されているものを用いるのが特に好ましい。
【0018】
錠剤組成物中の成分(c)の含有量は、崩壊性の改善作用の点から、乾燥固形分換算で3質量%以上50質量%以下が好ましく、4質量%以上45質量%以下がより好ましく、5質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
錠剤組成物中の成分(a)と成分(b)の合計量に対する成分(c)の含有量の質量比((a+b)/c)(乾燥固形分換算)は、崩壊性の改善効果、製造に適した成形性を維持する観点から、0.15~30が好ましく、0.33~15がより好ましく、0.56~6がさらに好ましい。
【0020】
本発明の錠剤組成物には、前記成分以外に良好な錠剤の形態とするための成分、例えば賦形剤、結合剤、流動化剤、及び滑沢剤から選ばれる1種以上を含有させることができる。
【0021】
賦形剤としては、例えば、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素、無水硫酸ナトリウム、無水リン酸水素カルシウム、塩化ナトリウム、含水無晶形酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、硫酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、酸化マグネシウム等の無機系賦形剤;結晶セルロース、デンプン(トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン等)、果糖、カラメル、カンテン、キシリトール、パラフィン、ショ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、白糖、ブドウ糖、プルラン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、マルチトール、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、トレハロース、還元パラチノース、マルトース等の有機系賦形剤等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
結合剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、還元麦芽糖水飴、デンプン(トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン等)、デキストリン、プルラン、アラビアゴム、カンテン、アカシア、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
流動化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、二酸化ケイ素が挙げられる。さらに滑沢剤としても使用される、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ナタネ硬化油、タルク等も流動化剤として使用される。
【0024】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ナタネ硬化油、タルク等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
錠剤としては、通常の硬度を有する錠剤であればよく、裸錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠等が挙げられる。錠剤の硬度は、一般的に錠剤破壊強度測定器を用い錠剤の直径方向の破壊強度として測定されるが、好ましい硬度は、15N~300Nであり、より好ましくは30~150Nであり、さらに好ましくは40~100Nである。錠剤の硬度は、市販の錠剤破壊強度測定機、例えば、藤原製作所製KHT-40N型等により測定できる。
【0026】
本発明の錠剤組成物の崩壊性は、第一七改正日本薬局方の崩壊試験法を参考に補助盤を用いて実施した崩壊試験において、20分以内が好ましく、18分以内がより好ましく、15分以内がさらに好ましい。
【0027】
本発明の錠剤組成物の投与量は、成分(a)及び成分(b)の合計量として成人1日あたり、100~300mgが好ましく、120~180mgがより好ましく、140mg~160mgがさらに好ましい。
【実施例
【0028】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0029】
参考例1
有効成分としてγ-アミノ酪酸及びラフマ抽出物を含有する錠剤を製造し、その錠厚、硬度及び崩壊時間を測定した。
錠剤の製造は、定法に従い表1に示す各成分の50倍量を秤量し、ステアリン酸カルシウムを除いた各成分を32メッシュの篩で篩過したのちに袋混合し、さらにステアリン酸カルシウムを加え袋混合したものを、単発打錠機(KORSCH製EK-0型)にて打錠した。
錠厚は、デジマチックインジケータ(ミツトヨ製ID-C150B型により測定した。硬度は、デジタル硬度計(藤原製作所製KHT-40N型)により測定した。崩壊時間は、崩壊試験器(富山産業製NT-40H型)により測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例1
参考例1のように、γ-アミノ酪酸とラフマ抽出物を配合した錠剤の崩壊時間は遅いことが判明した。そこで、種々の成分を配合し、崩壊時間が短縮される成分を探索した。その結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
*5:ラベンダー末 MOP(福田龍)
*6:カミツレ末(福田龍)
*7:オレンジピール末(福田龍)
*8:レモングラス末(福田龍)
*9:陳皮末(福田龍)
*10:ペパーミント末(福田龍)
*11:ローズヒップ末 殺菌品(日本粉末薬品)
【0034】
その結果、種々の可食性植物の中で、ラベンダーが特異的に崩壊時間を短縮することが判明した。
【0035】
実施例2
実施例1の処方に対し、還元麦芽糖水飴と結晶セルロースの比率を変えた処方で、同様の試験を行った。その結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
その結果、還元麦芽糖水飴と結晶セルロースの比率を変えても参考例1に比べて崩壊時間を短縮することが判明した。
【0038】
実施例3及び実施例4
実施例1の処方に対し、GABAの配合量を2倍もしくはラフマ抽出物の配合量を3倍にした処方で、同様の試験を行った。その結果を表3に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
その結果、ラフマ抽出物の配合量が変化しても、ラベンダーの添加により崩壊時間を短縮できることが判明した。
【0041】
実施例5~実施例10
ラベンダーの配合量を変化させて、崩壊時間に及ぼす影響を検討した。
【0042】
【表5】
【0043】
その結果、ラベンダーを3質量%以上配合すれば崩壊時間の短縮が認められた。