(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20221026BHJP
H05B 3/03 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 R
H05B3/03
(21)【出願番号】P 2018118859
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 寛人
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228361(JP,A)
【文献】国際公開第2016/030719(WO,A1)
【文献】特開2015-018704(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05B 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する略平面状の第1の表面を有する板状部材と、
前記板状部材の内部に配置された少なくとも1つのヒータ電極と、
第1の給電端子と第2の給電端子とから構成された給電端子対と、
前記板状部材の前記第1の方向における第1の位置の内部に配置されたドライバ電極対であって、前記第1の給電端子と前記ヒータ電極とに電気的に接続された第1のドライバ電極と、前記第2の給電端子と前記ヒータ電極とに電気的に接続された第2のドライバ電極と、から構成されたドライバ電極対と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記第1のドライバ電極は、前記第1の方向視で、前記板状部材の中心点を中心とする仮想円の円周の一部分に沿って延びる第1の円弧状部分であって、前記ヒータ電極に電気的に接続された第1のヒータ側接続点と、前記第1のヒータ側接続点に対して前記仮想円の円周方向に離間し、かつ、前記第1の給電端子に電気的に接続された第1の端子側接続点と、を含む第1の円弧状部分を有し、
前記第2のドライバ電極は、前記第1の方向視で、前記仮想円の円周の他の一部分に沿って延びる第2の円弧状部分であって、前記ヒータ電極に電気的に接続された第2のヒータ側接続点と、前記第2のヒータ側接続点に対して前記仮想円の円周方向に離間し、かつ、前記第2の給電端子に電気的に接続された第2の端子側接続点と、を含む第2の円弧状部分を有する、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、
前記第1のドライバ電極の前記第1の円弧状部分において、前記第1のヒータ側接続点は、前記仮想円の円周方向に沿った一方の端部に位置し、前記第1の端子側接続点は、前記仮想円の円周方向に沿った他方の端部に位置し、
前記第2のドライバ電極の前記第2の円弧状部分において、前記第2のヒータ側接続点は、前記仮想円の円周方向に沿った一方の端部に位置し、前記第2の端子側接続点は、前記仮想円の円周方向に沿った他方の端部に位置し、
前記ドライバ電極対は、前記第1の方向視で、前記仮想円の円周の全長に対する、前記第1の円弧状部分と重なる前記仮想円の円周の部分の長さと前記第2の円弧状部分と重なる前記仮想円の円周の部分の長さとの合計の比が、2分の1以上となるように構成されている、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の保持装置において、
前記ドライバ電極対は、前記第1の方向視で、前記第1の円弧状部分と重なる前記仮想円の円周の部分の長さと前記第2の円弧状部分と重なる前記仮想円の円周の部分の長さとの合計が、前記仮想円の円周の全長と略等しくなるように構成されている、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の保持装置において、
複数の前記給電端子対と、
前記複数の給電端子対に対応して設けられた複数の前記ドライバ電極対と、
を備え、
前記複数のドライバ電極対のそれぞれについて、前記仮想円の径は互いに異なる、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項5】
請求項4に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、前記複数のドライバ電極対の1つを構成する前記第1のドライバ電極上の前記第1の端子側接続点と前記板状部材の前記中心点とを結ぶ仮想線分は、前記複数のドライバ電極対の他の1つを構成する前記第1のドライバ電極上の前記第1の端子側接続点と前記板状部材の前記中心点とを結ぶ仮想線分と重ならない、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の保持装置において、さらに、
前記板状部材の前記第1の方向における前記第1の位置の内部に配置されたダミー電極であって、前記板状部材より熱伝導率の高い材料により形成され、前記第1の方向視で前記仮想円の円周と重ならず、前記給電端子と電気的に接続されていないダミー電極を備える、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の保持装置において、さらに、
前記板状部材の前記第1の方向における前記第1の位置の内部に配置されたダミー電極であって、前記板状部材より熱伝導率の高い材料により形成され、前記第1の方向視で前記仮想円の円周と重なり、前記給電端子と電気的に接続されていないダミー電極を備える、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の保持装置において、さらに、
前記板状部材の前記第1の方向における前記第1の位置とは異なる第2の位置の内部に配置された他層ドライバ電極であって、前記第1のドライバ電極の前記第1の円弧状部分の前記第1の端子側接続点と電気的に接続されていると共に、前記第1の方向視で前記第1の端子側接続点より前記板状部材の前記中心点に近い位置において、前記第1の給電端子と電気的に接続されている、他層ドライバ電極を備える、
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体を製造する際にウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に略直交する略平面状の表面(以下、「吸着面」という)を有するセラミックス部材と、セラミックス部材の内部に配置されたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、セラミックス部材の吸着面にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、例えば、セラミックス部材の内部にヒータ電極が設けられる。ヒータ電極に電圧が印加されると、ヒータ電極が発熱することによってセラミックス部材が加熱され、これにより、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が実現される。
【0004】
ヒータ電極への給電のため、静電チャックには、ヒータ電極に電気的に接続されたドライバ電極と、ドライバ電極に電気的に接続された給電端子とが設けられる。このような構成では、電源から、給電端子およびドライバ電極を介して、ヒータ電極に電力が供給される。上記第1の方向視でのドライバ電極の形状は、例えば、セラミックス部材の中心点付近を頂点とする扇形である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ドライバ電極において、給電端子に電気的に接続された点(以下、「端子側接続点」という)と、ドライバ電極におけるヒータ電極に電気的に接続された点(以下、「ヒータ側接続点」という)とが、セラミックス部材の径方向(セラミックス部材の中心点から外周側に向かう方向)に離間する構成が採用されることがある。このような構成では、ヒータ電極への給電の際に、ドライバ電極において上記径方向に電流が流れ、ドライバ電極における電流経路付近の領域が局所的に発熱する。このようなドライバ電極におけるセラミックス部材の径方向に沿った局所的な発熱は、セラミックス部材の吸着面における局所的な温度特異点の発生を招き、セラミックス部材の吸着面における温度分布の制御性が低下するおそれがある。このように、従来の静電チャックでは、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御性(ひいては、吸着面に保持されるウェハの温度分布の制御性)の点で向上の余地がある。
【0007】
なお、このような課題は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャックに限らず、板状部材を備え、板状部材の表面上に対象物を保持する保持装置一般に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略直交する略平面状の第1の表面を有する板状部材と、前記板状部材の内部に配置された少なくとも1つのヒータ電極と、第1の給電端子と第2の給電端子とから構成された給電端子対と、前記板状部材の前記第1の方向における第1の位置の内部に配置されたドライバ電極対であって、前記第1の給電端子と前記ヒータ電極とに電気的に接続された第1のドライバ電極と、前記第2の給電端子と前記ヒータ電極とに電気的に接続された第2のドライバ電極と、から構成されたドライバ電極対と、を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記第1のドライバ電極は、前記第1の方向視で、前記板状部材の中心点を中心とする仮想円の円周の一部分に沿って延びる第1の円弧状部分であって、前記ヒータ電極に電気的に接続された第1のヒータ側接続点と、前記第1のヒータ側接続点に対して前記仮想円の円周方向に離間し、かつ、前記第1の給電端子に電気的に接続された第1の端子側接続点と、を含む第1の円弧状部分を有し、前記第2のドライバ電極は、前記第1の方向視で、前記仮想円の円周の他の一部分に沿って延びる第2の円弧状部分であって、前記ヒータ電極に電気的に接続された第2のヒータ側接続点と、前記第2のヒータ側接続点に対して前記仮想円の円周方向に離間し、かつ、前記第2の給電端子に電気的に接続された第2の端子側接続点と、を含む第2の円弧状部分を有する。本保持装置では、ヒータ電極への給電の際に、第1のドライバ電極の第1の円弧状部分において、第1の端子側接続点と第1のヒータ側接続点とを結ぶ電流経路が、板状部材の中心点を中心とする上記仮想円の円周方向に略平行になり、かつ、第2のドライバ電極の第2の円弧状部分において、第2のヒータ側接続点と第2の端子側接続点とを結ぶ電流経路も、上記仮想円の円周方向に略平行になる。そのため、本保持装置では、各ドライバ電極の円弧状部分において、上記仮想円の円周方向に沿って局所的に発熱するが、そのような円周方向に沿った局所的な発熱を原因とする第1の表面における局所的な温度特異点の発生は、上記仮想円の円周方向に略平行に延びるヒータ電極の配置や形状を工夫することによって容易に抑制することができる。従って、本保持装置によれば、板状部材の第1の表面の温度分布の制御性(ひいては、第1の表面に保持される対象物の温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0011】
(2)上記保持装置において、前記第1の方向視で、前記第1のドライバ電極の前記第1の円弧状部分において、前記第1のヒータ側接続点は、前記仮想円の円周方向に沿った一方の端部に位置し、前記第1の端子側接続点は、前記仮想円の円周方向に沿った他方の端部に位置し、前記第2のドライバ電極の前記第2の円弧状部分において、前記第2のヒータ側接続点は、前記仮想円の円周方向に沿った一方の端部に位置し、前記第2の端子側接続点は、前記仮想円の円周方向に沿った他方の端部に位置し、前記ドライバ電極対は、前記第1の方向視で、前記仮想円の円周の全長に対する、前記第1の円弧状部分と重なる前記仮想円の円周の部分の長さと前記第2の円弧状部分と重なる前記仮想円の円周の部分の長さとの合計の比が、2分の1以上となるように構成されている構成としてもよい。本保持装置では、ヒータ電極への給電の際に、各ドライバ電極の円弧状部分において、上記仮想円の円周の2分の1以上に沿って電流が流れる。従って、本保持装置によれば、各ドライバ電極の円弧状部分において、上記仮想円の円周方向における発熱のばらつきを抑制することができるため、該円周方向に沿った発熱のばらつきを原因とする第1の表面における局所的な温度特異点の発生を抑制することができ、板状部材の第1の表面の温度分布の制御性を向上させることができる。
【0012】
(3)上記保持装置において、前記ドライバ電極対は、前記第1の方向視で、前記第1の円弧状部分と重なる前記仮想円の円周の部分の長さと前記第2の円弧状部分と重なる前記仮想円の円周の部分の長さとの合計が、前記仮想円の円周の全長と略等しくなるように構成されている構成としてもよい。本保持装置では、ヒータ電極への給電の際に、各ドライバ電極の円弧状部分において、上記仮想円の円周の略全体に沿って電流が流れる。従って、本保持装置によれば、各ドライバ電極の円弧状部分において、上記仮想円の円周方向における発熱のばらつきを効果的に抑制することができるため、該円周方向に沿った発熱のばらつきを原因とする第1の表面における局所的な温度特異点の発生を効果的に抑制することができ、板状部材の第1の表面の温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。
【0013】
(4)上記保持装置において、複数の前記給電端子対と、前記複数の給電端子対に対応して設けられた複数の前記ドライバ電極対と、を備え、前記複数のドライバ電極対のそれぞれについて、前記仮想円の径は互いに異なる構成としてもよい。本保持装置によれば、互いに独立して電圧が印加される複数のドライバ電極対のそれぞれについて、各ドライバ電極の円弧状部分に電流が流れることによる発熱に起因する板状部材の第1の表面における局所的な温度特異点の発生を、互いに径の異なる各仮想円の円周方向に略平行に延びるヒータ電極の配置や形状を工夫することによって容易に抑制することができ、板状部材の第1の表面の温度分布の制御性を向上させることができる。
【0014】
(5)上記保持装置において、前記第1の方向視で、前記複数のドライバ電極対の1つを構成する前記第1のドライバ電極上の前記第1の端子側接続点と前記板状部材の前記中心点とを結ぶ仮想線分は、前記複数のドライバ電極対の他の1つを構成する前記第1のドライバ電極上の前記第1の端子側接続点と前記板状部材の前記中心点とを結ぶ仮想線分と重ならない構成としてもよい。本保持装置では、互いに独立して電圧が印加される複数のドライバ電極対のそれぞれについて、第1の給電端子と接続される各第1の端子側接続点の位置が、円周方向に互いに離間している。従って、本保持装置によれば、各第1の端子側接続点の位置が集中することに起因する板状部材の第1の表面における局所的な温度特異点の発生を抑制することができ、板状部材の第1の表面における温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。
【0015】
(6)上記保持装置において、さらに、前記板状部材の前記第1の方向における前記第1の位置の内部に配置されたダミー電極であって、前記板状部材より熱伝導率の高い材料により形成され、前記第1の方向視で前記仮想円の円周と重ならず、前記給電端子と電気的に接続されていないダミー電極を備える構成としてもよい。本保持装置では、各ドライバ電極対を構成するドライバ電極に電流が流れることによる発熱が、ダミー電極の存在によって面方向に良好に伝達される。従って、本保持装置によれば、ドライバ電極に電流が流れることによる発熱に起因する板状部材の第1の表面における局所的な温度特異点の発生を効果的に抑制することができ、板状部材の第1の表面における温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。
【0016】
(7)上記保持装置において、さらに、前記板状部材の前記第1の方向における前記第1の位置の内部に配置されたダミー電極であって、前記板状部材より熱伝導率の高い材料により形成され、前記第1の方向視で前記仮想円の円周と重なり、前記給電端子と電気的に接続されていないダミー電極を備える構成としてもよい。本保持装置によれば、ドライバ電極対を構成するドライバ電極に電流が流れることによる発熱が、ダミー電極の存在によって上記仮想円の円周方向に沿って良好に伝達される。従って、本保持装置によれば、ドライバ電極対を構成するドライバ電極に電流が流れることによる発熱に起因する板状部材の第1の表面における局所的な温度特異点の発生を効果的に抑制することができ、板状部材の第1の表面における温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。
【0017】
(8)上記保持装置において、さらに、前記板状部材の前記第1の方向における前記第1の位置とは異なる第2の位置の内部に配置された他層ドライバ電極であって、前記第1のドライバ電極の前記第1の円弧状部分の前記第1の端子側接続点と電気的に接続されていると共に、前記第1の方向視で前記第1の端子側接続点より前記板状部材の前記中心点に近い位置において、前記第1の給電端子と電気的に接続されている、他層ドライバ電極を備える、ことを特徴とする構成としてもよい。本保持装置によれば、板状部材の第1の表面における温度分布の制御性を向上させつつ、第1の給電端子を板状部材の中心点付近に配置することができる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、CVDヒータ等のヒータ装置、真空チャック、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図3】第1実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図4】第1実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図5】第1実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図6】比較例における静電チャック100XのXY断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図7】第2実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図8】第3実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、
図2は、第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、
図3から
図5は、第1実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図3には、
図2のIII-IIIの位置における静電チャック100のXY断面構成が示されており、
図4には、
図2のIV-IVの位置における静電チャック100のXY断面構成が示されており、
図5には、
図2のV-Vの位置における静電チャック100のXY断面構成が示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0021】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス部材10およびベース部材20を備える。セラミックス部材10とベース部材20とは、セラミックス部材10の下面S2(
図2参照)とベース部材20の上面S3とが上記配列方向に対向するように配置される。
【0022】
セラミックス部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1を有する板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。セラミックス部材10の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミックス部材10の厚さは例えば1mm~10mm程度である。セラミックス部材10は、特許請求の範囲における板状部材に相当し、セラミックス部材10の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」という。
【0023】
図2に示すように、セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス部材10の吸着面S1に吸着固定される。
【0024】
セラミックス部材10の内部には、また、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)のためのヒータ電極層500と、ヒータ電極層500への給電のための構成とが配置されている。これらの構成については、後に詳述する。なお、このような構成のセラミックス部材10は、例えば、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートにビア孔の形成やメタライズペーストの充填および印刷等の加工を行い、これらのセラミックスグリーンシートを熱圧着し、切断等の加工を行った上で焼成することにより作製することができる。
【0025】
ベース部材20は、例えばセラミックス部材10と同径の、または、セラミックス部材10より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。
【0026】
ベース部材20は、セラミックス部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接着層30によって、セラミックス部材10に接合されている。接着層30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接着層30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0027】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接着層30を介したベース部材20とセラミックス部材10との間の伝熱(熱引き)によりセラミックス部材10が冷却され、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0028】
A-2.ヒータ電極層500等の構成:
次に、ヒータ電極層500の構成およびヒータ電極層500への給電のための構成について詳述する。上述したように、静電チャック100は、ヒータ電極層500を備える(
図2参照)。ヒータ電極層500は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。なお、本実施形態では、Z軸方向において、ヒータ電極層500は、チャック電極40より下側に配置されている。
【0029】
ここで、
図3に示すように、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10に、面方向(Z軸方向に直交する方向)に並ぶ4つの仮想的な領域であるセグメントSE(SEa,SEb,SEc,SEd)が設定されている。より詳細には、セラミックス部材10が、Z軸方向視で、セラミックス部材10の中心点P0を中心とする同心円状の境界線BLによって4つの仮想的な円環状領域(ただし、中心点P0を含む領域のみは円状領域)であるセグメントSEに分割されている。以下では、各セグメントSEに対応して設けられた構成を示す符号の末尾に、対応するセグメントSEの添え字(a,b,c,d)を付すことがある。
【0030】
図3に示すように、ヒータ電極層500は、複数のヒータ電極50(50a,50b,50c,50d)を含んでいる。本実施形態では、ヒータ電極層500は、各セグメントSEに2つずつ、合計8つのヒータ電極50を含んでいる。各ヒータ電極50は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部56と、ヒータライン部56の各端部に接続された第1のヒータパッド部51および第2のヒータパッド部52とを有する。以下では、第1のヒータパッド部51および第2のヒータパッド部52を、まとめてヒータパッド部51,52ともいう。Z軸方向視で、ヒータパッド部51,52の幅は、ヒータライン部56の幅より大きい。また、Z軸方向視での各ヒータ電極50のヒータライン部56の形状は、略円形である。
【0031】
また、静電チャック100は、ヒータ電極層500を構成する各ヒータ電極50への給電のための構成を備えている。具体的には、
図2に示すように、静電チャック100は、給電端子対81を備える。なお、
図2には、1つの給電端子対81のみが示されているが、本実施形態では、静電チャック100は、4つのセグメントSEに対応する4つの給電端子対81を備えている。
【0032】
各給電端子対81は、第1の給電端子811と、第2の給電端子812とから構成されている。第1の給電端子811および第2の給電端子812は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。以下では、第1の給電端子811および第2の給電端子812を、まとめて給電端子811,812ともいう。
【0033】
各給電端子対81を構成する給電端子811,812は、ベース部材20の下面S4からセラミックス部材10の内部に至る端子用孔110内に収容されている。各端子用孔110は、ベース部材20を上下方向に貫通する貫通孔22と、接着層30を上下方向に貫通する貫通孔32と、セラミックス部材10の下面S2側に形成された凹部12とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。各端子用孔110を構成するセラミックス部材10の凹部12の底面には、導電性材料により形成された電極パッド82が設けられている。給電端子811,812は、例えばろう付け等により、電極パッド82に接合されている。
【0034】
また、
図2に示すように、静電チャック100は、ヒータ電極層500を構成する各ヒータ電極50への給電のための構成として、上層ドライバ電極層600と下層ドライバ電極層700とを備える。上層ドライバ電極層600および下層ドライバ電極層700は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。本実施形態では、Z軸方向において、下層ドライバ電極層700は、ヒータ電極層500より下側に配置されており、上層ドライバ電極層600は、ヒータ電極層500と下層ドライバ電極層700との間に配置されている。すなわち、下層ドライバ電極層700は、上層ドライバ電極層600より下面S2側(吸着面S1とは反対側)に配置されている。
【0035】
図4に示すように、上層ドライバ電極層600は、4つのセグメントSEに対応する(換言すれば、4つの給電端子対81に対応する)4つの上層ドライバ電極対60(60a,60b,60c,60d)を有している。各上層ドライバ電極対60は、第1の上層ドライバ電極61と、第2の上層ドライバ電極62とから構成されている。以下では、第1の上層ドライバ電極61および第2の上層ドライバ電極62を、まとめて上層ドライバ電極61,62ともいう。上層ドライバ電極対60は、特許請求の範囲におけるドライバ電極対に相当し、セラミックス部材10のZ軸方向における上層ドライバ電極対60が配置された位置は、特許請求の範囲における第1の位置に相当し、第1の上層ドライバ電極61は、特許請求の範囲における第1のドライバ電極に相当し、第2の上層ドライバ電極62は、特許請求の範囲における第2のドライバ電極に相当する。上層ドライバ電極層600に含まれる各上層ドライバ電極対60の構成については、後にさらに詳述する。
【0036】
図5に示すように、下層ドライバ電極層700は、4つのセグメントSEに対応する4つの下層ドライバ電極対70(70a,70b,70c,70d)を有している。各下層ドライバ電極対70は、第1の下層ドライバ電極71と、第2の下層ドライバ電極72とから構成されている。以下では、第1の下層ドライバ電極71および第2の下層ドライバ電極72を、まとめて下層ドライバ電極71,72ともいう。下層ドライバ電極71,72は、特許請求の範囲における他層ドライバ電極に相当し、セラミックス部材10のZ軸方向における下層ドライバ電極対70が配置された位置は、特許請求の範囲における第2の位置に相当する。また、以下では、第1の上層ドライバ電極61、第2の上層ドライバ電極62、第1の下層ドライバ電極71および第2の下層ドライバ電極72を、まとめてドライバ電極61,62,71,72ともいう。下層ドライバ電極層700に含まれる各下層ドライバ電極対70の構成については、後にさらに詳述する。
【0037】
図2から
図4に示すように、各上層ドライバ電極対60を構成する第1の上層ドライバ電極61は、第1のヒータ側接続点65において、ヒータ電極層500と上層ドライバ電極層600との間を接続するビア85を介して、対応するセグメントSEに配置された各ヒータ電極50の第1のヒータパッド部51に電気的に接続されている。また、
図2、
図4および
図5に示すように、各上層ドライバ電極対60を構成する第1の上層ドライバ電極61は、第1の端子側接続点63において、上層ドライバ電極層600と下層ドライバ電極層700との間を接続するビア84と、下層ドライバ電極対70を構成する第1の下層ドライバ電極71と、下層ドライバ電極層700と電極パッド82との間を接続するビア83と、電極パッド82とを介して、第1の給電端子811に電気的に接続されている。同様に、
図2から
図4に示すように、各上層ドライバ電極対60を構成する第2の上層ドライバ電極62は、第2のヒータ側接続点66において、ビア85を介して、対応するセグメントSEに配置された各ヒータ電極50の第2のヒータパッド部52に電気的に接続されている。また、
図2、
図4および
図5に示すように、各上層ドライバ電極対60を構成する第2の上層ドライバ電極62は、第2の端子側接続点64において、ビア84と、下層ドライバ電極対70を構成する第2の下層ドライバ電極72と、ビア83と、電極パッド82とを介して、第2の給電端子812に電気的に接続されている。
【0038】
各給電端子対81を構成する給電端子811,812は、電源(図示せず)に接続されている。電源からの電圧は、給電端子対81を構成する給電端子811,812、電極パッド82、ビア83、下層ドライバ電極対70を構成する下層ドライバ電極71,72、ビア84、上層ドライバ電極対60を構成する上層ドライバ電極61,62、および、ビア85を介して、各ヒータ電極50に印加される。各ヒータ電極50に電圧が印加されると、各ヒータ電極50が発熱してセラミックス部材10が加熱され、これにより、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)が実現される。なお、本実施形態では、セグメントSE毎に独立した経路でヒータ電極50に電圧が印加されるため、セグメントSE毎に独立してヒータ電極50の発熱量を制御することができ、吸着面S1の温度分布の高精度での制御を実現することができる。
【0039】
なお、ドライバ電極61,62,71,72は、下記の(1)から(3)までの少なくとも1つを満たすという点で、ヒータ電極50と相違する。
(1)ドライバ電極61,62,71,72の電流が流れる方向に対して垂直方向の断面積は、ヒータ電極50の同様の断面積の10倍以上である。
(2)面方向において、ドライバ電極61,62,71,72は1つのセグメントSEより大きな面積を有する。
(3)ドライバ電極61,62,71,72における、ヒータ電極50側につながるビアから給電端子811,812側につながるビアまでの間の抵抗は、ヒータ電極50における、ドライバ電極61,62につながる一方のビアから他方のビアまでの間の抵抗の5分の1以下である。
【0040】
A-3.上層ドライバ電極層600に含まれる各上層ドライバ電極対60および下層ドライバ電極層700に含まれる各下層ドライバ電極対70の詳細構成:
次に、上層ドライバ電極層600に含まれる各上層ドライバ電極対60の構成、および、下層ドライバ電極層700に含まれる各下層ドライバ電極対70の構成について、さらに詳細に説明する。
【0041】
上述したように、上層ドライバ電極層600に含まれる各上層ドライバ電極対60は、第1の上層ドライバ電極61と第2の上層ドライバ電極62とから構成されている。
図4に示すように、本実施形態では、Z軸方向視で、第1の上層ドライバ電極61の形状は、おおよそ、セラミックス部材10の中心点P0を中心とする仮想円VCに沿った1つの円環を半分に分割した一方の半円環形状であり、第2の上層ドライバ電極62の形状は、該円環を半分に分割した他方の半円環形状である。そのため、第1の上層ドライバ電極61は、Z軸方向視で、上記仮想円VCの円周の一部分に沿って延びる第1の円弧状部分を有し、かつ、第2の上層ドライバ電極62は、Z軸方向視で、上記仮想円VCの円周の他の一部分に沿って延びる第2の円弧状部分を有する。本実施形態では、第1の上層ドライバ電極61の全体が、上述した第1の円弧状部分に該当し、第2の上層ドライバ電極62の全体が、上述した第2の円弧状部分に該当するため、以下では、第1の円弧状部分61および第2の円弧状部分62ともいう。なお、第1の円弧状部分61および第2の円弧状部分62は、Z軸方向視で、線状であってもよいし、径方向に幅を持ったベタ形状であってもよい。
【0042】
上述したように、第1の円弧状部分(第1の上層ドライバ電極)61は、ヒータ電極50に電気的に接続された第1のヒータ側接続点65と、第1の下層ドライバ電極71や電極パッド82等を介して第1の給電端子811に電気的に接続された第1の端子側接続点63とを含んでいる。第1の円弧状部分61において、第1の端子側接続点63は、第1のヒータ側接続点65に対して、上記仮想円VCの円周方向に離間している。本実施形態では、Z軸方向視で、第1の円弧状部分61において、第1のヒータ側接続点65は、上記仮想円VCの円周方向に沿った一方の端部に位置し、第1の端子側接続点63は、仮想円VCの円周方向に沿った他方の端部に位置している。
【0043】
また、上述したように、第2の円弧状部分(第2の上層ドライバ電極)62は、ヒータ電極50に電気的に接続された第2のヒータ側接続点66と、第2の下層ドライバ電極72や電極パッド82等を介して第2の給電端子812に電気的に接続された第2の端子側接続点64とを含んでいる。第2の円弧状部分62において、第2の端子側接続点64は、第2のヒータ側接続点66に対して、上記仮想円VCの円周方向に離間している。本実施形態では、Z軸方向視で、第2の円弧状部分62において、第2のヒータ側接続点66は、上記仮想円VCの円周方向に沿った一方の端部に位置し、第2の端子側接続点64は、上記仮想円VCの円周方向に沿った他方の端部に位置している。
【0044】
上述したように、本実施形態では、Z軸方向視で、第1の上層ドライバ電極61の形状は、おおよそ、上記仮想円VCに沿った1つの円環を半分に分割した一方の半円環形状であり、第2の上層ドライバ電極62の形状は、該円環を半分に分割した他方の半円環形状である。そのため、本実施形態では、上層ドライバ電極対60を構成する第1の上層ドライバ電極61および第2の上層ドライバ電極62は、Z軸方向視で、第1の円弧状部分61と重なる仮想円VCの円周の部分の長さと第2の円弧状部分62と重なる仮想円VCの円周の部分の長さとの合計が、仮想円VCの円周の全長と略等しくなるように構成されている。なお、ここで言う「略等しい」とは、上記各円周部分の長さの合計が、上記円周の全長の90%以上であることを意味する。
【0045】
なお、上層ドライバ電極層600に含まれる複数の上層ドライバ電極対60のそれぞれについて、上記仮想円VCの径は互いに異なっている。より具体的には、より外周側に位置するセグメントSEに配置されたヒータ電極50に電気的に接続された上層ドライバ電極対60ほど、上記仮想円VCの径が大きくなっている。
【0046】
また、本実施形態では、Z軸方向視で、1つの上層ドライバ電極対60(例えば、上層ドライバ電極対60a)を構成する第1の上層ドライバ電極61上の第1の端子側接続点63とセラミックス部材10の中心点P0とを結ぶ仮想線分VL(例えば、仮想線分VLa)は、他の1つの上層ドライバ電極対60(例えば、上層ドライバ電極対60b)を構成する第1の上層ドライバ電極61上の第1の端子側接続点63とセラミックス部材10の中心点P0とを結ぶ仮想線分VL(例えば、仮想線分VLb)と重なっていない。このことは、1つの上層ドライバ電極対60(例えば、上層ドライバ電極対60a)を構成する第1の上層ドライバ電極61上の第1の端子側接続点63の位置と、他の上層ドライバ電極対60(例えば、上層ドライバ電極対60b)を構成する第1の上層ドライバ電極61上の第1の端子側接続点63の位置とが、セラミックス部材10の中心点P0を中心とした周方向に離間していることを意味する。本実施形態では、すべての上層ドライバ電極対60について、第1の上層ドライバ電極61上の第1の端子側接続点63の位置が、上記周方向に互いに離間している。
【0047】
同様に、本実施形態では、Z軸方向視で、1つの上層ドライバ電極対60を構成する第2の上層ドライバ電極62上の第2の端子側接続点64とセラミックス部材10の中心点P0とを結ぶ仮想線分は、他の1つの上層ドライバ電極対60を構成する第2の上層ドライバ電極62上の第2の端子側接続点64とセラミックス部材10の中心点P0とを結ぶ仮想線分と重なっていない。本実施形態では、すべての上層ドライバ電極対60について、第2の上層ドライバ電極62上の第2の端子側接続点64の位置が、セラミックス部材10の中心点P0を中心とした周方向に互いに離間している。
【0048】
また、
図5に示すように、本実施形態では、各下層ドライバ電極対70を構成する第1の下層ドライバ電極71は、Z軸方向視で、ビア84を介した第1の上層ドライバ電極61との接続位置(すなわち、第1の上層ドライバ電極61における第1の端子側接続点63の位置)よりセラミックス部材10の中心点P0に近い位置において、ビア83および電極パッド82を介して第1の給電端子811と電気的に接続されている。同様に、本実施形態では、各下層ドライバ電極対70を構成する第2の下層ドライバ電極72は、Z軸方向視で、ビア84を介した第2の上層ドライバ電極62との接続位置(すなわち、第2の上層ドライバ電極62における第2の端子側接続点64の位置)よりセラミックス部材10の中心点P0に近い位置において、ビア83および電極パッド82を介して第2の給電端子812と電気的に接続されている。
【0049】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態の静電チャック100は、Z軸方向に略直交する略平面状の吸着面S1を有するセラミックス部材10を備え、セラミックス部材10の吸着面S1上に対象物(例えばウェハW)を保持する保持装置である。静電チャック100は、セラミックス部材10の内部に配置された少なくとも1つのヒータ電極50と、第1の給電端子811と第2の給電端子812とから構成された給電端子対81と、セラミックス部材10のZ軸方向における所定の位置の内部に配置された上層ドライバ電極対60とを備える。上層ドライバ電極対60は、第1の給電端子811とヒータ電極50とに電気的に接続された第1の上層ドライバ電極61と、第2の給電端子812とヒータ電極50とに電気的に接続された第2の上層ドライバ電極62とから構成されている。第1の上層ドライバ電極61は、Z軸方向視で、セラミックス部材10の中心点P0を中心とする仮想円VCの円周の一部分に沿って延びる第1の円弧状部分61を含む。第1の円弧状部分61は、ヒータ電極50に電気的に接続された第1のヒータ側接続点65と、第1のヒータ側接続点65に対して上記仮想円VCの円周方向に離間し、かつ、第1の給電端子811に電気的に接続された第1の端子側接続点63とを含む。また、第2の上層ドライバ電極62は、Z軸方向視で、上記仮想円VCの円周の他の一部分に沿って延びる第2の円弧状部分62を含む。第2の円弧状部分62は、ヒータ電極50に電気的に接続された第2のヒータ側接続点66と、第2のヒータ側接続点66に対して上記仮想円VCの円周方向に離間し、かつ、第2の給電端子812に電気的に接続された第2の端子側接続点64とを含む。本実施形態の静電チャック100は、このような構成を有しているため、以下に説明するように、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0050】
図6は、比較例における静電チャック100XのXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図6には、
図4に示された本実施形態の静電チャック100のXY断面構成に対応する比較例の静電チャック100XのXY断面構成が示されている。
図6に示す比較例の静電チャック100Xでは、本実施形態の静電チャック100と同様に、上層ドライバ電極層600が、複数のセグメントSEに対応する複数の上層ドライバ電極対60を有しており、各上層ドライバ電極対60は、第1の上層ドライバ電極61と、第2の上層ドライバ電極62とから構成されている。ただし、比較例の静電チャック100Xでは、セラミックス部材10に設定されたセグメントSEの数は2つであり、上層ドライバ電極層600が、2つのセグメントSEに対応する2つの上層ドライバ電極対60(60a,60c)を有している。また、比較例の静電チャック100Xでは、各第1の上層ドライバ電極61および各第2の上層ドライバ電極62の構成が、本実施形態の静電チャック100とは異なる。具体的には、比較例の静電チャック100Xでは、第1の上層ドライバ電極61が、セラミックス部材10の中心点P0付近を頂点とする扇形であり、第1の上層ドライバ電極61において、ヒータ電極50に電気的に接続された第1のヒータ側接続点65と、第1の給電端子811に電気的に接続された第1の端子側接続点63とが、セラミックス部材10の中心点P0を中心とする仮想円の円周方向ではなく、セラミックス部材10の径方向(セラミックス部材10の中心点P0から外周側に向かう方向)に離間している。すなわち、比較例の静電チャック100Xでは、第1の上層ドライバ電極61が、本実施形態における第1の円弧状部分(Z軸方向視で、上記仮想円の円周の一部分に沿って延びる部分であり、ヒータ電極50に電気的に接続された第1のヒータ側接続点65と、第1のヒータ側接続点65に対して上記仮想円の円周方向に離間し、かつ、第1の給電端子811に電気的に接続された第1の端子側接続点63とを含む部分)を有していない。同様に、比較例の静電チャック100Xでは、第2の上層ドライバ電極62が、セラミックス部材10の中心点P0付近を頂点とする扇形であり、第2の上層ドライバ電極62において、ヒータ電極50に電気的に接続された第2のヒータ側接続点66と、第2の給電端子812に電気的に接続された第2の端子側接続点64とが、セラミックス部材10の中心点P0を中心とする仮想円の円周方向ではなく、セラミックス部材10の径方向に離間している。すなわち、比較例の静電チャック100Xでは、第2の上層ドライバ電極62が、本実施形態における第2の円弧状部分(Z軸方向視で、上記仮想円の円周の一部分に沿って延びる部分であり、ヒータ電極50に電気的に接続された第2のヒータ側接続点66と、第2のヒータ側接続点66に対して上記仮想円の円周方向に離間し、かつ、第2の給電端子812に電気的に接続された第2の端子側接続点64とを含む部分)を有していない。
【0051】
比較例の静電チャック100Xは上記構成であるため、
図6において白抜き矢印で示すように、ヒータ電極50への給電の際に、上層ドライバ電極61,62において、セラミックス部材10の径方向に電流が流れ、上層ドライバ電極61,62における電流経路付近の領域が局所的に発熱する。このような上層ドライバ電極61,62におけるセラミックス部材10の径方向に沿った局所的な発熱は、セラミックス部材10の吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を招く。また、そのような上層ドライバ電極61,62におけるセラミックス部材10の径方向に沿った局所的な発熱を原因とする吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を、ヒータ電極50の配置や形状を工夫することによって抑制することは容易ではない。従って、比較例の静電チャック100Xでは、セラミックス部材10の吸着面S1における温度分布の制御性が低下するおそれがある。なお、
図6には、上層ドライバ電極層600が2つのセグメントSEに対応する2つの上層ドライバ電極対60を有している比較例を示したが、上層ドライバ電極層600が3つ以上のセグメントSEに対応する3つ以上の上層ドライバ電極対60を有している構成においても、第1の上層ドライバ電極61が本実施形態における第1の円弧状部分を有しておらず、第2の上層ドライバ電極62が本実施形態における第2の円弧状部分を有していなければ、同様に、セラミックス部材10の吸着面S1における温度分布の制御性が低下するおそれがある。
【0052】
これに対し、本実施形態の静電チャック100は上述のような構成を有しているため、
図4において白抜き矢印で示すように、ヒータ電極50への給電の際に、第1の上層ドライバ電極61の第1の円弧状部分61において、第1の端子側接続点63と第1のヒータ側接続点65とを結ぶ電流経路が、セラミックス部材10の中心点P0を中心とする上記仮想円VCの円周方向に略平行になり、かつ、第2の上層ドライバ電極62の第2の円弧状部分62において、第2のヒータ側接続点66と第2の端子側接続点64とを結ぶ電流経路も、上記仮想円VCの円周方向に略平行になる。そのため、本実施形態の静電チャック100では、各上層ドライバ電極61,62の円弧状部分において、上記仮想円VCの円周方向に沿って局所的に発熱するが、そのような円周方向に沿った局所的な発熱を原因とする吸着面S1における局所的な温度特異点の発生は、上記仮想円VCの円周方向に略平行に延びるヒータ電極50の配置や形状を工夫することによって容易に抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、ウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。なお、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性が高いとは、吸着面S1全体の温度分布が均一に近いことと、セグメントSE毎に吸着面S1の温度分布が均一に近いこととの少なくとも一方の意味を含む。
【0053】
また、本実施形態の静電チャック100では、第1の上層ドライバ電極61の第1の円弧状部分61において、第1のヒータ側接続点65は、上記仮想円VCの円周方向に沿った一方の端部に位置し、第1の端子側接続点63は、上記仮想円VCの円周方向に沿った他方の端部に位置する。また、第2の上層ドライバ電極62の第2の円弧状部分62において、第2のヒータ側接続点66は、上記仮想円VCの円周方向に沿った一方の端部に位置し、第2の端子側接続点64は、上記仮想円VCの円周方向に沿った他方の端部に位置する。また、本実施形態の静電チャック100では、上層ドライバ電極対60(第1の上層ドライバ電極61および第2の上層ドライバ電極62)は、Z軸方向視で、第1の円弧状部分61と重なる上記仮想円VCの円周の部分の長さと第2の円弧状部分62と重なる上記仮想円VCの円周の部分の長さとの合計が、上記仮想円VCの円周の全長と略等しくなるように構成されている。そのため、本実施形態の静電チャック100では、ヒータ電極50への給電の際に、各上層ドライバ電極61,62の円弧状部分61,62において、上記仮想円VCの円周の略全体に沿って電流が流れる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、各上層ドライバ電極61,62の円弧状部分61,62において、上記仮想円VCの円周方向における発熱のばらつきを効果的に抑制することができるため、該円周方向に沿った発熱のばらつきを原因とする吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態の静電チャック100は、複数の給電端子対81と、複数の給電端子対81に対応して設けられた複数の上層ドライバ電極対60とを備え、複数の上層ドライバ電極対60のそれぞれについて、上記仮想円VCの径が互いに異なる。そのため、本実施形態の静電チャック100では、互いに独立して電圧が印加される複数の上層ドライバ電極対60のそれぞれについて、各上層ドライバ電極61,62の円弧状部分61,62に電流が流れることによる発熱に起因するセラミックス部材10の吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を、互いに径の異なる各仮想円VCの円周方向に略平行に延びるヒータ電極50の配置や形状を工夫することによって容易に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、複数の上層ドライバ電極対60の1つを構成する第1の上層ドライバ電極61上の第1の端子側接続点63とセラミックス部材10の中心点P0とを結ぶ仮想線分VLは、複数の上層ドライバ電極対60の他の1つを構成する第1の上層ドライバ電極61上の第1の端子側接続点63とセラミックス部材10の中心点P0とを結ぶ仮想線分VLと重ならない。そのため、本実施形態の静電チャック100では、互いに独立して電圧が印加される複数の上層ドライバ電極対60のそれぞれについて、第1の給電端子811と接続される各第1の端子側接続点63の位置が、円周方向に互いに離間していると言える。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、各第1の端子側接続点63の位置が集中することに起因するセラミックス部材10の吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1における温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。なお、本実施形態の静電チャック100では、第2の上層ドライバ電極62についても同様の構成となっている。すなわち、Z軸方向視で、複数の上層ドライバ電極対60の1つを構成する第2の上層ドライバ電極62上の第2の端子側接続点64とセラミックス部材10の中心点P0とを結ぶ仮想線分は、複数の上層ドライバ電極対60の他の1つを構成する第2の上層ドライバ電極62上の第2の端子側接続点64とセラミックス部材10の中心点P0とを結ぶ仮想線分と重ならない。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、各第2の端子側接続点64の位置が集中することに起因するセラミックス部材10の吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1における温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態の静電チャック100は、さらに、セラミックス部材10のZ軸方向における上層ドライバ電極対60が配置された位置とは異なる位置の内部に配置された下層ドライバ電極対70を備える。下層ドライバ電極対70を構成する第1の下層ドライバ電極71は、第1の上層ドライバ電極61の第1の円弧状部分61の第1の端子側接続点63と電気的に接続されていると共に、Z軸方向視で第1の端子側接続点63よりセラミックス部材10の中心点P0に近い位置において、第1の給電端子811と電気的に接続されている。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10の吸着面S1における温度分布の制御性を向上させつつ、第1の給電端子811をセラミックス部材10の中心点P0付近に配置することができる。なお、本実施形態の静電チャック100では、第2の下層ドライバ電極72についても同様の構成となっている。すなわち、下層ドライバ電極対70を構成する第2の下層ドライバ電極72は、第2の上層ドライバ電極62の第2の円弧状部分62の第2の端子側接続点64と電気的に接続されていると共に、Z軸方向視で第2の端子側接続点64よりセラミックス部材10の中心点P0に近い位置において、第2の給電端子812と電気的に接続されている。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10の吸着面S1における温度分布の制御性を向上させつつ、第2の給電端子812をセラミックス部材10の中心点P0付近に配置することができる。なお、下層ドライバ電極対70の位置は、上層ドライバ電極対60の位置より、下面S2側(吸着面S1とは反対側)であることが好ましい。下層ドライバ電極対70においては、セラミックス部材10の径方向に電流が流れ、該電流経路付近の領域が局所的に発熱するため、セラミックス部材10の吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を招くおそれがあるところ、該下層ドライバ電極対70を上層ドライバ電極対60と比較して吸着面S1から離れた位置に配置することにより、下層ドライバ電極対70における局所的な発熱が、吸着面S1までの比較的長い伝熱経路を経てなじみ、かつ、上層ドライバ電極対60による発熱によってもなじむため、吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を抑制することができるからである。
【0057】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図7には、
図4に示された第1実施形態の静電チャック100のXY断面構成に対応する第2実施形態の静電チャック100のXY断面構成が示されている。以下では、第2実施形態の静電チャック100の構成の内、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0058】
図7に示すように、第2実施形態の静電チャック100では、上層ドライバ電極層600が、2つの上層ドライバ電極対60(60a,60b)を有している。2つの上層ドライバ電極対60a,60bの構成は、上述した第1実施形態における2つの上層ドライバ電極対60a,60bの構成と同一である。
【0059】
第2実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10のZ軸方向における上層ドライバ電極対60が配置された位置(
図7に示す位置)におけるセラミックス部材10の中心点P0付近に、上層ドライバ電極対60が配置されていない領域が存在する。第2実施形態の静電チャック100では、該領域(上述した各上層ドライバ電極対60に対応する仮想円VCに重ならない領域)に、ダミー電極69が配置されている。ダミー電極69は、給電端子対81(第1の給電端子811および第2の給電端子812)と電気的に接続されていない(すなわち、電力が供給されない)電極であり、セラミックス部材10より熱伝導率の高い材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。本実施形態では、ダミー電極69は、Z軸方向視で、セラミックス部材10の中心点P0を中心とする略円形であり、上述した上層ドライバ電極対60が配置されていない領域のほとんどすべてを埋めるように配置されている。
【0060】
このように、第2実施形態の静電チャック100は、セラミックス部材10のZ軸方向における上層ドライバ電極対60が配置された位置の内部に配置されたダミー電極69を備える。ダミー電極69は、セラミックス部材10より熱伝導率の高い材料により形成されており、Z軸方向視で上述した各上層ドライバ電極対60に対応する仮想円VCと重ならない。そのため、第2実施形態の静電チャック100によれば、各上層ドライバ電極対60を構成する上層ドライバ電極61,62に電流が流れることによる発熱が、ダミー電極69の存在によって面方向に良好に伝達される。従って、第2実施形態の静電チャック100によれば、上層ドライバ電極61,62に電流が流れることによる発熱に起因するセラミックス部材10の吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1における温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。
【0061】
C.第3実施形態:
図8は、第3実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図8には、
図4に示された第1実施形態の静電チャック100のXY断面構成に対応する第3実施形態の静電チャック100のXY断面構成が示されている。以下では、第3実施形態の静電チャック100の構成の内、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0062】
図8に示すように、第3実施形態の静電チャック100では、上層ドライバ電極層600が、4つの上層ドライバ電極対60(60a,60b,60c,60d)を有している。4つの上層ドライバ電極対60の内、最も外周側に位置するセグメントSEaに対応する上層ドライバ電極対60a以外の3つの上層ドライバ電極対60b,60c,60dの構成は、上述した第1実施形態における3つの上層ドライバ電極対60b,60c,60dの構成と同一である。
【0063】
第3実施形態の静電チャック100では、上層ドライバ電極対60aは、Z軸方向視で、第1の上層ドライバ電極61の第1の円弧状部分61と重なる仮想円VCaの円周の部分の長さと第2の上層ドライバ電極62の第2の円弧状部分62と重なる仮想円VCaの円周の部分の長さとの合計が、仮想円VCの円周の全長と略等しくない。すなわち、上記仮想円VCa上に、第1の上層ドライバ電極61の第1の円弧状部分61も、第2の上層ドライバ電極62の第2の円弧状部分62も配置されていない領域が存在する。第3実施形態の静電チャック100では、該領域に、ダミー電極69が配置されている。ダミー電極69は、給電端子対81(第1の給電端子811および第2の給電端子812)と電気的に接続されていない(すなわち、電力が供給されない)電極であり、セラミックス部材10より熱伝導率の高い材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。本実施形態では、ダミー電極69は、Z軸方向視で、セラミックス部材10の中心点P0を中心とする略円弧状であり、上述した第1の上層ドライバ電極61も第2の上層ドライバ電極62も配置されていない領域のほとんどすべてを埋めるように配置されている。
【0064】
このように、第3実施形態の静電チャック100は、セラミックス部材10のZ軸方向における上層ドライバ電極対60が配置された位置の内部に配置されたダミー電極69を備える。ダミー電極69は、セラミックス部材10より熱伝導率の高い材料により形成されており、Z軸方向視で上述した上層ドライバ電極対60aに対応する仮想円VCaと重なる。そのため、第3実施形態の静電チャック100によれば、上層ドライバ電極対60aを構成する上層ドライバ電極61,62に電流が流れることによる発熱が、ダミー電極69の存在によって上記仮想円VCaの円周方向に沿って良好に伝達される。従って、第3実施形態の静電チャック100によれば、上層ドライバ電極対60aを構成する上層ドライバ電極61,62に電流が流れることによる発熱に起因するセラミックス部材10の吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を効果的に抑制することができ、セラミックス部材10の吸着面S1における温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。
【0065】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態の静電チャック100は、上層ドライバ電極層600および下層ドライバ電極層700を備えるが、静電チャック100が上層ドライバ電極層600のみを備えるとしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、セラミックス部材10に設定されたセグメントSEの個数や形状、ヒータ電極50の個数や形状、給電端子対81の個数や形状、上層ドライバ電極対60の個数や形状、下層ドライバ電極対70の個数や形状等は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、セラミックス部材10に100個以上のセグメントSEが設定されているとしてもよいし、セラミックス部材10に1つのみのセグメントSEが設定されている(換言すれば、セラミックス部材10がセグメント分けされていない)としてもよい。また、上記実施形態では、上層ドライバ電極対60を構成する第1の上層ドライバ電極61の全体が、Z軸方向視でセラミックス部材10の中心点P0を中心とする仮想円VCの円周の一部分に沿って延びる第1の円弧状部分に該当するとしているが、第1の上層ドライバ電極61の一部分が第1の円弧状部分に該当するとしてもよい。同様に、上記実施形態では、上層ドライバ電極対60を構成する第2の上層ドライバ電極62の全体が、Z軸方向視でセラミックス部材10の中心点P0を中心とする仮想円VCの円周の一部分に沿って延びる第2の円弧状部分に該当するとしているが、第2の上層ドライバ電極62の一部分が第2の円弧状部分に該当するとしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、Z軸方向視で、第1の上層ドライバ電極61の第1の円弧状部分において、第1のヒータ側接続点65は、仮想円VCの円周方向に沿った一方の端部に位置し、第1の端子側接続点63は、仮想円VCの円周方向に沿った他方の端部に位置しており、第2の上層ドライバ電極62の第2の円弧状部分において、第2のヒータ側接続点66は、仮想円VCの円周方向に沿った一方の端部に位置し、第2の端子側接続点64は、仮想円VCの円周方向に沿った他方の端部に位置しており、かつ、第1の上層ドライバ電極61および第2の上層ドライバ電極62は、Z軸方向視で、第1の円弧状部分と重なる仮想円VCの円周の部分の長さと第2の円弧状部分と重なる仮想円VCの円周の部分の長さとの合計が、仮想円VCの円周の全長と略等しくなるように構成されている。しかし、必ずしもこのような構成が採用される必要はなく、少なくとも第1の上層ドライバ電極61が上述した第1の円弧状部分に該当する部分を有し、かつ、第2の上層ドライバ電極62が上述した第2の円弧状部分に該当する部分を有する構成を採用すれば、上述したように、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性を向上させることができるという効果を奏する。ただし、Z軸方向視で、第1の上層ドライバ電極61の第1の円弧状部分において、第1のヒータ側接続点65は、仮想円VCの円周方向に沿った一方の端部に位置し、第1の端子側接続点63は、仮想円VCの円周方向に沿った他方の端部に位置しており、第2の上層ドライバ電極62の第2の円弧状部分において、第2のヒータ側接続点66は、仮想円VCの円周方向に沿った一方の端部に位置し、第2の端子側接続点64は、仮想円VCの円周方向に沿った他方の端部に位置しており、かつ、第1の上層ドライバ電極61および第2の上層ドライバ電極62は、Z軸方向視で、仮想円VCの円周の全長に対する、第1の円弧状部分と重なる仮想円VCの円周の部分の長さと第2の円弧状部分と重なる仮想円VCの円周の部分の長さとの合計の比が、2分の1以上となる構成を採用すれば、上記仮想円VCの円周方向における発熱のばらつきを抑制して、吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を抑制することができるため、好ましい。さらに、このような構成であって、かつ、上記実施形態のように、第1の上層ドライバ電極61および第2の上層ドライバ電極62は、Z軸方向視で、第1の円弧状部分と重なる仮想円VCの円周の部分の長さと第2の円弧状部分と重なる仮想円VCの円周の部分の長さとの合計が、仮想円VCの円周の全長と略等しい構成を採用すれば、上記仮想円VCの円周方向における発熱のばらつきを効果的に抑制して、吸着面S1における局所的な温度特異点の発生を効果的に抑制することができるため、さらに好ましい。
【0069】
また、上記実施形態では、Z軸方向視で、1つの上層ドライバ電極対60を構成する第1の上層ドライバ電極61上の第1の端子側接続点63とセラミックス部材10の中心点P0とを結ぶ仮想線分VLが、他の1つの上層ドライバ電極対60を構成する第1の上層ドライバ電極61上の第1の端子側接続点63とセラミックス部材10の中心点P0とを結ぶ仮想線分VLと重ならない構成が採用されているが、必ずしもこのような構成が採用される必要はない。
【0070】
また、上記第2実施形態および第3実施形態におけるダミー電極69の個数や形状等は、あくまで一例であり、種々変更可能である。
【0071】
また、上記実施形態の静電チャック100における各部材の形成材料は、あくまで一例であり、任意に変更可能である。例えば、上記実施形態では、静電チャック100は、セラミックスにより形成されたセラミックス部材10を備えているが、セラミックス部材10に代えて、セラミックス以外の材料(例えば、樹脂材料)により形成された板状部材を備えているとしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、各ビアは、単数のビアにより構成されてもよいし、複数のビアのグループにより構成されてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、ビア部分のみからなる単層構成であってもよいし、複数層構成(例えば、ビア部分とパッド部分とビア部分とが積層された構成)であってもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、セラミックス部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、セラミックス部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。
【0074】
また、本発明は、セラミックス部材10とチャック電極40とを備え、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、板状部材を備え、板状部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、CVDヒータ等のヒータ装置や真空チャック等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10:セラミックス部材 12:凹部 20:ベース部材 21:冷媒流路 22:貫通孔 30:接着層 32:貫通孔 40:チャック電極 50:ヒータ電極 51:第1のヒータパッド部 52:第2のヒータパッド部 56:ヒータライン部 60:上層ドライバ電極対 61:第1の円弧状部分(第1の上層ドライバ電極) 62:第2の円弧状部分(第2の上層ドライバ電極) 63:第1の端子側接続点 64:第2の端子側接続点 65:第1のヒータ側接続点 66:第2のヒータ側接続点 69:ダミー電極 70:下層ドライバ電極対 71:第1の下層ドライバ電極 72:第2の下層ドライバ電極 81:給電端子対 82:電極パッド 83:ビア 84:ビア 85:ビア 100:静電チャック 110:端子用孔 500:ヒータ電極層 600:上層ドライバ電極層 700:下層ドライバ電極層 811:第1の給電端子 812:第2の給電端子 BL:境界線 P0:中心点 S1:吸着面 S2:下面 S3:上面 S4:下面 SE:セグメント VC:仮想円 VL:仮想線分 W:ウェハ