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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221026BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018126041
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020004928
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平中 絢子
(72)【発明者】
【氏名】山本 考史
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183381(JP,A)
【文献】特開2002-015847(JP,A)
【文献】特開2002-124367(JP,A)
【文献】特開2017-212106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する第1の表面を有する板状部材であって、
前記第1の表面が、
前記第1の方向視において環状に、かつ、前記第1の方向において凸状に形成されたシールバンドが位置するシールバンド領域と、
前記第1の方向視において前記シールバンド領域の内側に接し、かつ、前記第1の方向において凸状の複数の突起が形成された内側領域と、
前記第1の方向視において前記シールバンド領域の外側に接する外側領域と、
を含む、板状部材と、
前記板状部材の内部に配置され、かつ、前記第1の方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、前記ヒータライン部の端部に接続されたヒータパッド部と、を有する複数のヒータ電極と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する静電チャックにおいて、
前記複数のヒータ電極は、
前記第1の方向視において、前記内側領域に重なる部分を有し、かつ、前記シールバンド領域に重なる部分を有しない少なくとも1つの内側ヒータ電極と、
前記第1の方向視において、前記外側領域に重なる部分を有し、かつ、前記シールバンド領域に重なる部分を有しない少なくとも1つの外側ヒータ電極と、
を備え
前記第1の方向視において、前記内側ヒータ電極の前記ヒータパッド部の幅は、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の幅と比較して大きく、
前記第1の方向視、かつ、前記シールバンドの幅方向において、前記シールバンド領域と、前記内側ヒータ電極の前記ヒータパッド部の内、前記シールバンド領域に最も近接して配置されている前記ヒータパッド部と、の間には、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の少なくとも一部分が配置されている、ことを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
第1の方向に略直交する第1の表面を有する板状部材であって、
前記第1の表面が、
前記第1の方向視において環状に、かつ、前記第1の方向において凸状に形成されたシールバンドが位置するシールバンド領域と、
前記第1の方向視において前記シールバンド領域の内側に接し、かつ、前記第1の方向において凸状の複数の突起が形成された内側領域と、
前記第1の方向視において前記シールバンド領域の外側に接する外側領域と、
を含む、板状部材と、
前記板状部材の内部に配置され、かつ、前記第1の方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、前記ヒータライン部の端部に接続されたヒータパッド部と、を有する複数のヒータ電極と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する静電チャックにおいて、
前記複数のヒータ電極は、
前記第1の方向視において、前記内側領域に重なる部分を有し、かつ、前記シールバンド領域に重なる部分を有しない少なくとも1つの内側ヒータ電極と、
前記第1の方向視において、前記外側領域に重なる部分を有し、かつ、前記シールバンド領域に重なる部分を有しない少なくとも1つの外側ヒータ電極と、
を備え、
前記第1の方向視において、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の内、前記シールバンドの幅方向において、前記シールバンド領域に最も近接して配置されている第1の部分における幅は、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の内、前記シールバンドの幅方向において、前記ヒータライン部の前記第1の部分に最も近接して配置されている第2の部分における幅と比較して小さい、
ことを特徴とする静電チャック。
【請求項3】
第1の方向に略直交する第1の表面を有する板状部材であって、
前記第1の表面が、
前記第1の方向視において環状に、かつ、前記第1の方向において凸状に形成されたシールバンドが位置するシールバンド領域と、
前記第1の方向視において前記シールバンド領域の内側に接し、かつ、前記第1の方向において凸状の複数の突起が形成された内側領域と、
前記第1の方向視において前記シールバンド領域の外側に接する外側領域と、
を含む、板状部材と、
前記板状部材の内部に配置され、かつ、前記第1の方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、前記ヒータライン部の端部に接続されたヒータパッド部と、を有する複数のヒータ電極と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する静電チャックにおいて、
前記複数のヒータ電極は、
前記第1の方向視において、前記内側領域に重なる部分を有し、かつ、前記シールバンド領域に重なる部分を有しない少なくとも1つの内側ヒータ電極と、
前記第1の方向視において、前記外側領域に重なる部分を有し、かつ、前記シールバンド領域に重なる部分を有しない少なくとも1つの外側ヒータ電極と、
を備え、
前記第1の方向視において、前記外側ヒータ電極の前記ヒータパッド部の幅は、前記外側ヒータ電極の前記ヒータライン部の幅と比較して大きく、
前記第1の方向視において、前記板状部材の中心点と、一の前記外側ヒータ電極の一の前記ヒータパッド部と、を通る仮想直線は、前記一の外側ヒータ電極の前記一のヒータパッド部と、前記一の外側ヒータ電極の前記一のヒータパッド部に最も近接して配置されている前記内側ヒータ電極の前記ヒータパッド部と、を通る仮想直線に、一致しない、
ことを特徴とする静電チャック。
【請求項4】
第1の方向に略直交する第1の表面を有する板状部材であって、
前記第1の表面が、
前記第1の方向視において環状に、かつ、前記第1の方向において凸状に形成されたシールバンドが位置するシールバンド領域と、
前記第1の方向視において前記シールバンド領域の内側に接し、かつ、前記第1の方向において凸状の複数の突起が形成された内側領域と、
前記第1の方向視において前記シールバンド領域の外側に接する外側領域と、
を含む、板状部材と、
前記板状部材の内部に配置され、かつ、前記第1の方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、前記ヒータライン部の端部に接続されたヒータパッド部と、を有する複数のヒータ電極と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する静電チャックにおいて、
前記複数のヒータ電極は、
前記第1の方向視において、前記内側領域に重なる部分を有し、かつ、前記シールバンド領域に重なる部分を有しない少なくとも1つの内側ヒータ電極と、
前記第1の方向視において、前記外側領域に重なる部分を有し、かつ、前記シールバンド領域に重なる部分を有しない少なくとも1つの外側ヒータ電極と、
を備え、
前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の内、前記第1の方向視において前記突起と重なる部分における幅は、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の内、前記第1の方向視において前記突起と重なる部分以外の部分における幅と比較して大きい、
ことを特徴とする静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体を製造する際にウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に略垂直な表面(以下、「上面」という)を有する、例えばセラミックス部材等の板状部材と、板状部材の内部に設けられたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、板状部材の上面にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの上面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、例えば、板状部材の内部に複数のヒータ電極が設けられる。各ヒータ電極に電圧が印加されると、各ヒータ電極が発熱することによって板状部材が加熱され、これにより、板状部材の上面の温度分布の制御性(ひいては、上面に保持されたウェハの温度分布の制御性)が実現される。
【0004】
また、板状部材の内部にヒータ電極を備える静電チャックであって、板状部材の上記第1の表面が、シールバンド領域と、内側領域と、外側領域とを含む静電チャックが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1において、シールバンド領域は、上記第1の方向視において環状に形成されている。このシールバンド領域は、第1の方向において凸状に形成されたシールバンドが位置する領域である。内側領域は、上記第1の方向視においてシールバンド領域の内側に接する領域である。内側領域には、第1の方向において凸状の複数の突起が形成されている。外側領域は、上記第1の方向視においてシールバンド領域の外側に接する領域である。
【0005】
上記静電チャックにおいて、ヒータ電極は、上記第1の方向視において、上記シールバンド領域に重なる部分を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-282047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
静電チャックに保持される対象物は、板状部材の上面の内のシールバンド領域に形成された環状かつ凸状のシールバンドに接する。また、該対象物は、シールバンドに加えて、板状部材における上面の内の内側領域に形成された凸状の複数の突起にも接する。このため、ヒータ電極から、板状部材におけるシールバンドが形成されたシールバンド領域に伝達された熱および板状部材における内側領域の内の突起が形成された部分に伝達された熱は、該対象物に直接的に伝達される。
【0008】
ここで、シールバンド領域に形成されたシールバンドは、板状部材の上面に環状に形成されている。一方、内側領域に形成された複数の突起は、それぞれ独立して形成されている。このため、シールバンドの単位体積当たりの表面積は、各突起の単位体積当たりの表面積と比較して小さい。このような違いにより、シールバンドは、各突起と比較して放熱しにくい構造となっているため、板状部材の上面におけるシールバンド領域は、高温の温度特異点となりやすい。特に、ヒータ電極が、板状部材における第1の方向視でシールバンド領域に重なる部分に配置されている場合には、ヒータ電極の発熱は、最短距離で板状部材の上面におけるシールバンド領域に伝達されるため、シールバンド領域は、更に高温の温度特異点となりやすい。このようなシールバンド領域は、各突起と比較して上記対象物と広範囲にわたって接触するため、シールバンド領域の温度が対象物の温度に与える影響は大きい。
【0009】
そのため、従来の静電チャックでは、板状部材の上面の温度分布の制御性(ひいては、ウェハの温度分布の制御性)の点で向上の余地がある。
【0010】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0012】
(1)本明細書に開示される静電チャックは、第1の方向に略直交する第1の表面を有する板状部材であって、前記第1の表面が、前記第1の方向視において環状に、かつ、前記第1の方向において凸状に形成されたシールバンドが位置するシールバンド領域と、前記第1の方向視において前記シールバンド領域の内側に接し、かつ、前記第1の方向において凸状の複数の突起が形成された内側領域と、前記第1の方向視において前記シールバンド領域の外側に接する外側領域と、を含む、板状部材と、前記板状部材の内部に配置され、かつ、前記第1の方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部と、前記ヒータライン部の端部に接続されたヒータパッド部と、を有する複数のヒータ電極と、を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する静電チャックにおいて、前記複数のヒータ電極は、前記第1の方向視において、前記内側領域に重なる部分を有し、かつ、前記シールバンド領域に重なる部分を有しない少なくとも1つの内側ヒータ電極と、前記第1の方向視において、前記外側領域に重なる部分を有し、かつ、前記シールバンド領域に重なる部分を有しない少なくとも1つの外側ヒータ電極と、を備える。
【0013】
本静電チャックでは、静電チャックに保持される対象物は、板状部材の第1の表面の内のシールバンド領域に形成された環状かつ凸状のシールバンドに接する。また、該対象物は、シールバンドに加えて、板状部材における第1の表面の内の内側領域に形成された凸状の複数の突起にも接する。このため、ヒータ電極から、板状部材におけるシールバンドが形成されたシールバンド領域に伝達された熱および板状部材における内側領域の内の突起が形成された部分に伝達された熱は、該対象物に直接的に伝達される。なお、本静電チャックにおいて、板状部材の第1の表面の内のシールバンド領域と内側領域とは、上記対象物を保持する吸着面として機能する。以下の説明において、板状部材の第1の表面の内のシールバンド領域と内側領域とを合わせた領域を吸着面ということがある。
【0014】
ここで、シールバンド領域に形成されたシールバンドは、板状部材の第1の表面に環状に形成されている。一方、内側領域に形成された複数の突起は、それぞれ独立して形成されている。このため、シールバンドの単位体積当たりの表面積は、各突起の単位体積当たりの表面積と比較して小さい。このような違いにより、シールバンドは、各突起と比較して放熱しにくい構造となっているため、板状部材の第1の表面におけるシールバンド領域は、高温の温度特異点となりやすい。特に、ヒータ電極が、板状部材における第1の方向視でシールバンド領域に重なる部分(以下、「シールバンド領域重なり部分」ともいう)に配置されている場合には、ヒータ電極の発熱は、最短距離で板状部材の第1の表面におけるシールバンド領域に伝達されるため、シールバンド領域は、更に高温の温度特異点となりやすい。このようなシールバンド領域は、各突起と比較して上記対象物と広範囲にわたって接触するため、シールバンド領域の温度が対象物の温度に与える影響は大きい。
【0015】
本静電チャックでは、板状部材の内部に配置された複数のヒータ電極が、内側ヒータ電極と外側ヒータ電極とを備える。内側ヒータ電極は、第1の方向視において、内側領域に重なる部分を有し、かつ、シールバンド領域に重なる部分を有しないヒータ電極である。外側ヒータ電極は、第1の方向視において、外側領域に重なる部分を有し、かつ、シールバンド領域に重なる部分を有しないヒータ電極である。換言すれば、本静電チャックでは、内側ヒータ電極および外側ヒータ電極は、板状部材におけるシールバンド領域重なり部分以外の部分に配置されている。このため、本静電チャックによれば、内側ヒータ電極および外側ヒータ電極の発熱が、最短距離で板状部材の第1の表面におけるシールバンド領域に伝達されることを抑制することができ、ひいては、板状部材におけるシールバンド領域が高温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本静電チャックによれば、板状部材における第1の表面(より詳しくは、吸着面)における温度分布の制御性(ひいては、第1の表面(より詳しくは、吸着面)に保持された対象物の温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0016】
(2)上記静電チャックにおいて、前記第1の方向視において、前記内側ヒータ電極の前記ヒータパッド部の幅は、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の幅と比較して大きく、前記第1の方向視、かつ、前記シールバンドの幅方向において、前記シールバンド領域と、前記内側ヒータ電極の前記ヒータパッド部の内、前記シールバンド領域に最も近接して配置されている前記ヒータパッド部と、の間には、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の少なくとも一部分が配置されている構成としてもよい。上述したように、本静電チャックでは、板状部材の内部に配置された内側ヒータ電極および外側ヒータ電極が、シールバンド領域重なり部分以外の部分に配置された構成を採用していることにより、板状部材におけるシールバンド領域が高温の温度特異点となることを抑制することができる。一方、このように、内側ヒータ電極および外側ヒータ電極が、シールバンド領域重なり部分以外の部分に配置されていることにより、シールバンド領域が低温の温度特異点となるおそれがある。このような構成において、シールバンド領域重なり部分の近傍に内側ヒータ電極のヒータパッド部が配置されると、シールバンド領域はより低温の温度特異点となるおそれがある。これは、第1の方向視において、内側ヒータ電極のヒータパッド部の幅は、内側ヒータ電極のヒータライン部の幅と比較して大きいため、ヒータパッド部での発熱量は、ヒータライン部での発熱量と比較してごく僅かであるためである。
【0017】
本静電チャックでは、第1の方向視、かつ、シールバンドの幅方向において、シールバンド領域と、内側ヒータ電極のヒータパッド部の内、シールバンド領域に最も近接して配置されているヒータパッド部と、の間には、内側ヒータ電極のヒータライン部の少なくとも一部分が配置されている構成を採用している。そのため、本静電チャックによれば、この内側ヒータ電極のヒータライン部の当該一部分の存在により、板状部材におけるシールバンド領域が過度に低温化することを抑制できるため、シールバンド領域が低温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本静電チャックによれば、板状部材における第1の表面(より詳しくは、吸着面)における温度分布の制御性(ひいては、第1の表面(より詳しくは、吸着面)に保持された対象物の温度分布の制御性)を更に向上させることができる。
【0018】
(3)上記静電チャックにおいて、前記第1の方向視において、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の内、前記シールバンドの幅方向において、前記シールバンド領域に最も近接して配置されている第1の部分における幅は、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の内、前記シールバンドの幅方向において、前記ヒータライン部の前記第1の部分に最も近接して配置されている第2の部分における幅と比較して小さい構成としてもよい。上述したように、本静電チャックでは、板状部材の内部に配置された内側ヒータ電極および外側ヒータ電極が、シールバンド領域重なり部分以外の部分に配置された構成を採用していることにより、板状部材におけるシールバンド領域が高温の温度特異点となることを抑制することができる。一方、このように、内側ヒータ電極および外側ヒータ電極が、シールバンド領域重なり部分以外の部分に配置されていることにより、シールバンド領域が低温の温度特異点となるおそれがある。このような構成において、第1の方向視において、板状部材におけるシールバンド領域重なり部分の近傍に幅の大きいヒータライン部(発熱量の小さいヒータライン部)が配置されると、シールバンド領域はより低温の温度特異点となるおそれがある。
【0019】
本静電チャックでは、第1の方向視において、内側ヒータ電極のヒータライン部の内、シールバンドの幅方向において、シールバンド領域に最も近接して配置されている第1の部分における幅は、内側ヒータ電極のヒータライン部の内、シールバンドの幅方向において、ヒータライン部の第1の部分に最も近接して配置されている第2の部分における幅と比較して小さい構成を採用している。換言すれば、本静電チャックでは、内側ヒータ電極のヒータライン部における、板状部材におけるシールバンド領域重なり部分に最も近接して配置されている第1の部分の発熱量は、第2の部分の発熱量と比較して大きい。そのため、本静電チャックによれば、この内側ヒータ電極のヒータライン部の内の、シールバンド領域重なり部分に最も近接して配置されている発熱量の大きい第1の部分の存在により、板状部材におけるシールバンド領域が過度に低温化することを抑制できるため、シールバンド領域が低温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本静電チャックによれば、板状部材の第1の表面(より詳しくは、吸着面)における温度分布の制御性(ひいては、第1の表面(より詳しくは、吸着面)に保持された対象物の温度分布の制御性)を更に向上させることができる。
【0020】
(4)上記静電チャックにおいて、前記第1の方向視において、前記外側ヒータ電極の前記ヒータパッド部の幅は、前記外側ヒータ電極の前記ヒータライン部の幅と比較して大きく、前記第1の方向視において、前記板状部材の中心点と、一の前記外側ヒータ電極の一の前記ヒータパッド部と、を通る仮想直線は、前記一の外側ヒータ電極の前記一のヒータパッド部と、前記一の外側ヒータ電極の前記一のヒータパッド部に最も近接して配置されている前記内側ヒータ電極の前記ヒータパッド部と、を通る仮想直線に、一致しない構成としてもよい。上述したように、本静電チャックでは、板状部材の内部に配置された内側ヒータ電極および外側ヒータ電極が、シールバンド領域重なり部分以外の部分に配置された構成を採用していることにより、板状部材におけるシールバンド領域が高温の温度特異点となることを抑制することができる。一方、このように、内側ヒータ電極および外側ヒータ電極が、シールバンド領域重なり部分以外の部分に配置されていることにより、シールバンド領域が低温の温度特異点となるおそれがある。このような構成において、板状部材におけるシールバンド領域重なり部分に最も近接して配置されている外側ヒータ電極のヒータパッド部(以下、「最近外側ヒータパッド部」ともいう)と、この最近外側ヒータパッド部に最も近接して配置されている内側ヒータ電極のヒータパッド部(以下、「最近内側ヒータパッド部」ともいう)とが、第1の方向視、かつ、シールバンドの幅方向において、同一直線上(すなわち、最短距離)に配置されると、最近外側ヒータパッド部と最近内側ヒータパッド部との間におけるシールバンド領域はより低温の温度特異点となるおそれがある。これは、内側ヒータ電極と同様に、第1の方向視において、外側ヒータ電極のヒータパッド部の幅は、外側ヒータ電極のヒータライン部の幅と比較して大きいため、ヒータパッド部での発熱量は、ヒータライン部での発熱量と比較してごく僅かであるためである。
【0021】
本静電チャックでは、第1の方向視において、板状部材の中心点と、一の外側ヒータ電極の一のヒータパッド部と、を通る仮想直線は、一の外側ヒータ電極の一のヒータパッド部と、一の外側ヒータ電極の一のヒータパッド部に最も近接して配置されている内側ヒータ電極のヒータパッド部と、を通る仮想直線に、一致しない構成を採用している。換言すれば、本静電チャックでは、ともに発熱量の小さい最近外側ヒータパッド部と最近内側ヒータパッド部とが、第1の方向視、かつ、シールバンドの幅方向において、同一直線上(すなわち、最短距離)に配置されていない。そのため、本静電チャックによれば、板状部材におけるシールバンド領域が過度に低温化することを抑制できるため、シールバンド領域が低温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本静電チャックによれば、板状部材における第1の表面(より詳しくは、吸着面)における温度分布の制御性(ひいては、第1の表面(より詳しくは、吸着面)に保持された対象物の温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0022】
(5)上記静電チャックにおいて、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の内、前記第1の方向視において前記突起と重なる部分における幅は、前記内側ヒータ電極の前記ヒータライン部の内、前記第1の方向視において前記突起と重なる部分以外の部分における幅と比較して大きい、ことを特徴とする構成としてもよい。上述したように、本静電チャックによれば、上記対象物は、シールバンドに加えて、板状部材における内側領域に凸状に形成された複数の突起にも接するため、シールバンド領域と同様に、内側ヒータ電極から、この突起における対象物と接する面に伝達された熱は対象物に直接的に伝達される。このため、内側ヒータ電極が、板状部材における、第1の方向視において突起と重なる部分(突起重なり部分)に配置されている場合には、内側ヒータ電極の発熱は、最短距離で突起における対象物と接する面に伝達されるため、内側領域において突起が形成されている部分は高温の温度特異点となりやすい。本実施形態の静電チャックによれば、内側ヒータ電極のヒータライン部の内、第1の方向視において突起と重なる部分における幅は、内側ヒータ電極のヒータライン部の内、第1の方向視において突起と重なる部分以外の部分における幅と比較して大きい構成を採用している。換言すれば、本実施形態の静電チャックによれば、内側ヒータ電極のヒータライン部の内、突起と重なる部分の発熱量は、突起と重なる部分以外の部分の発熱量と比較して小さい。そのため、本実施形態の静電チャックでは、板状部材の内側領域における突起が形成されている部分が高温化することを抑制できるため、内側領域に高温の温度特異点が発生することを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャックでは、板状部材の第1の表面(より詳しくは、吸着面)における温度分布の制御性(ひいては、第1の表面(より詳しくは、吸着面)に保持された対象物の温度分布の制御性)を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】本実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図4】静電チャック100のXZ断面構成を部分的に示す説明図である。
図5】静電チャック100のXY断面構成を部分的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
A.本実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3は、本実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。図3には、図2のIII-IIIの位置における静電チャック100のXY断面構成が示されている。また、図4は、図2のX1部の部分拡大図であり、図5は、図3のX2部の部分拡大図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0025】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス部材10およびベース部材20を備える。セラミックス部材10とベース部材20とは、セラミックス部材10の下面S2(図2参照)とベース部材20の上面S3とが上記配列方向に対向するように配置される。なお、セラミックス部材10は、特許請求の範囲における板状部材に相当する。
【0026】
セラミックス部材10は、略円板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。セラミックス部材10の外周の上側には切り欠きが形成されている。このため、セラミックス部材10の上面S1は、上段と下段とに分かれている。また、セラミックス部材10の上面S1の内の上段の外周には、Z軸方向視において環状、かつ、Z軸方向において凸状のシールバンド180が形成されている。なお、シールバンド180の構成については、後に詳述する。
【0027】
セラミックス部材10の上面S1は、シールバンド領域SRと、内側領域IRと、外側領域ORとから構成されている。より詳細には、上述した上面S1の上段は、シールバンド領域SRと内側領域IRとから構成されており、上面S1の下段は、外側領域ORから構成されている。
【0028】
セラミックス部材10の上面S1におけるシールバンド領域SRは、シールバンド180が位置する領域である。内側領域IRは、Z軸方向視においてシールバンド領域SRの内側に接する領域である。内側領域IRには、Z軸方向において凸状の複数の突起170が形成されている。なお、突起170の構成については、後に詳述する。外側領域ORは、Z軸方向視においてシールバンド領域SRの外側に接する領域である。
【0029】
静電チャック100は、セラミックス部材10の上面S1、より詳しくは、当該上面S1の内の、シールバンド領域SRと内側領域IRとから構成される吸着面Scに、対象物(例えばウェハW)を保持する。セラミックス部材10の上面S1の内の吸着面ScはZ軸方向に略直交し、かつ、当該吸着面ScのZ軸方向視における形状は略円形である。また、セラミックス部材10の上面S1の内の外側領域ORには、例えば、静電チャック100を固定するための治具(不図示)が係合する。なお、セラミックス部材10の上面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」ということがある。
【0030】
セラミックス部材10は、Z軸方向視において、シールバンド領域SRに重なる部分であるシールバンド領域重なり部分SPと、内側領域IRに重なる部分である内側領域重なり部分IPと、外側領域ORに重なる部分である外側領域重なり部分OPと、から構成されている。セラミックス部材10におけるシールバンド領域重なり部分SPおよび内側領域重なり部分IPの厚さ(Z軸方向における厚さであり、以下同様)は、当該セラミックス部材10に形成された切り欠きの分だけ、外側領域重なり部分OPの厚さより厚くなっている。すなわち、セラミックス部材10の外側領域重なり部分OPとシールバンド領域重なり部分SPとの境界BPの箇所で、Z軸方向におけるセラミックス部材10の厚さが変化している。
【0031】
Z軸方向視における、セラミックス部材10のシールバンド領域重なり部分SPの外周の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミックス部材10の外側領域重なり部分OPの外周の直径は例えば60mm~510mm程度(通常は210mm~360mm程度)である(ただし、外側領域重なり部分OPの直径はシールバンド領域重なり部分SPの直径より大きい)。また、セラミックス部材10のシールバンド領域重なり部分SPおよび内側領域重なり部分IPの厚さは例えば1mm~10mm程度であり、セラミックス部材10の外側領域重なり部分OPの厚さは例えば0.5mm~9.5mm程度である(ただし、外側領域重なり部分OPの厚さは内側領域重なり部分IPの厚さより薄い)。
【0032】
上記の通り、セラミックス部材10の上面S1のシールバンド領域SRはシールバンド180が位置する領域である。換言すると、セラミックス部材10の吸着面Scにはシールバンド180が形成されている。具体的には、シールバンド180のZ軸方向視での形状は、図3に示すように、セラミックス部材10の吸着面Scの中心点(以下、単に「中心点PO」ともいう)を中心とした連続的な略円環状である。また、シールバンド180のZ軸方向に平行な断面における形状は、図4に示すように、上方向に凸状の略矩形状である。Z軸方向視におけるシールバンド180の幅A1は、例えば、1mm~5mm程度である。また、Z軸方向におけるシールバンド180の高さH1は、例えば、1mm~3mm程度である。ここで、Z軸方向視におけるシールバンド180の幅A1は、シールバンド180の延伸方向に略直交する方向(図4において、「幅方向D」)における幅である。また、Z軸方向におけるシールバンド180の高さH1は、吸着面Scの内側領域IRの内の突起170が形成されていない部分を基準としたときのシールバンド180の高さである。
【0033】
上記の通り、セラミックス部材10の内側領域IRには柱状の複数の突起170(図1および図2では省略)が形成されている。複数の突起170は、少なくとも一の面方向において互いに等間隔に配置されていることが好ましい。突起170のZ軸方向視での先端の形状は、図5に示すように、略円形状である。また、突起170のZ軸方向に平行な断面における形状は、図4に示すように、上方向に凸状の略矩形状である。Z軸方向視における突起170の直径A2は、0.5mm~3mm程度である。Z軸方向における突起170の高さH2は、例えば、1mm~3mm程度である。なお、突起170は、シールバンド180とともにウェハWを保持する観点から、突起170の高さH2は、シールバンド180の高さH1と略同等である。
【0034】
図2に示すように、セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス部材10の吸着面Scに吸着固定される。なお、ウェハWが吸着面Scに吸着固定された状態では、ウェハWの下面がシールバンド180の頂面(上面)および突起170の頂面(上面)に接触する(図4参照)。そのため、この状態では、吸着面Scにおけるシールバンド180および突起170が形成されていない領域とウェハWの下面との間に、空間が形成される。
【0035】
セラミックス部材10の内部には、また、セラミックス部材10の吸着面Scの温度分布の制御性(すなわち、吸着面Scに保持されたウェハWの温度分布の制御性)のためのヒータ電極50と、ヒータ電極50への給電のための構成とが配置されている。ヒータ電極50の構成については、後に詳述する。
【0036】
図2に示すように、静電チャック100は、複数のヒータ電極50を構成する各ヒータ電極510,530への給電のための構成を備えている。具体的には、図2に示すように、静電チャック100は、ドライバ電極60を備える。ドライバ電極60は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。本実施形態では、ドライバ電極60は、ヒータ電極50より下側に配置されている。ドライバ電極60は、面方向に平行な所定の領域を有するパターンである一対の導電領域(第1の導電領域61および第2の導電領域62)を有する。
【0037】
本実施形態では、ドライバ電極60に対して、内側ヒータ電極510(内側ヒータ電極510A,510B)が接続されている。すなわち、図2および図3に示すように、内側ヒータ電極510について、第1のヒータパッド部513は、導電性材料により形成された第1のヒータ側ビア721を介して、ドライバ電極60の第1の導電領域61に導通しており、第2のヒータパッド部515は、導電性材料により形成された第2のヒータ側ビア722を介して、ドライバ電極60の第2の導電領域62に導通している。以下では、第1のヒータ側ビア721および第2のヒータ側ビア722を、まとめてヒータ側ビア721,722ともいう。
【0038】
また、図2に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4からセラミックス部材10の内部に至る一対の端子用孔110,120が形成されている。各端子用孔110,120は、ベース部材20を上下方向に貫通する貫通孔22と、接着部材30を上下方向に貫通する貫通孔32と、セラミックス部材10の下面S2側に形成された凹部12とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。
【0039】
一対の端子用孔110,120の一方である第1の端子用孔110には、柱状の第1の給電端子741が収容されている。また、第1の端子用孔110を構成するセラミックス部材10の凹部12の底面には、第1の電極パッド731が設けられている。第1の給電端子741は、例えばろう付け等により第1の電極パッド731に接合されている。また、第1の電極パッド731は、第1の給電側ビア711を介して、ドライバ電極60における第1の導電領域61に導通している。同様に、一対の端子用孔110,120の他方である第2の端子用孔120には、柱状の第2の給電端子742が収容されている。また、第2の端子用孔120を構成するセラミックス部材10の凹部12の底面には、第2の電極パッド732が設けられている。第2の給電端子742は、例えばろう付け等により第2の電極パッド732に接合されている。また、第2の電極パッド732は、第2の給電側ビア712を介して、該ドライバ電極60における第2の導電領域62に導通している。なお、以下では、第1の給電端子741および第2の給電端子742を、まとめて給電端子741,742ともいい、第1の電極パッド731および第2の電極パッド732を、まとめて電極パッド731,732ともいい、第1の給電側ビア711および第2の給電側ビア712を、まとめて給電側ビア711,712ともいう。給電端子741,742、電極パッド731,732、および、給電側ビア711,712は、すべて、導電性材料により形成されている。
【0040】
なお、本実施形態では、外側ヒータ電極530についても、内側ヒータ電極510と同様に、ヒータパッド部533,535が一対のヒータ側ビア(図示せず)、ドライバ電極60および一対の給電側ビア(図示せず)を介して電極パッド731,732に導通している。
【0041】
一対の給電端子741,742は、電源(図示せず)に接続されている。内側ヒータ電極510については、電源からの電圧は、一対の給電端子741,742、一対の電極パッド731,732、および、一対の給電側ビア711,712を介してドライバ電極60の一対の導電領域61,62に供給され、さらに、内側ヒータ電極510について設けられた一対のヒータ側ビア721,722を介して内側ヒータ電極510に印加される。また、外側ヒータ電極530については、電源からの電圧は、一対の給電端子741,742、一対の電極パッド731,732、および、一対の給電側ビア711,712を介してドライバ電極60の一対の導電領域61,62に供給され、さらに、外側ヒータ電極530について設けられた一対のヒータ側ビア(図示せず)を介して外側ヒータ電極530に印加される。内側ヒータ電極510および外側ヒータ電極530に電圧が印加されると、内側ヒータ電極510および外側ヒータ電極530が発熱してセラミックス部材10が加熱され、これにより、セラミックス部材10の吸着面Scの温度分布の制御性(すなわち、吸着面Scに保持されたウェハWの温度分布の制御性)が実現される。
【0042】
なお、上記のような構成のセラミックス部材10は、例えば、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートにビア孔の形成やメタライズペーストの充填および印刷等の加工を行い、これらのセラミックスグリーンシートを熱圧着し、切断等の加工を行った上で焼成することにより作製することができる。
【0043】
ベース部材20は、例えばセラミックス部材10の外側領域重なり部分OPの外周と同径の、または、セラミックス部材10の外側領域重なり部分OPの外周より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~370mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。
【0044】
ベース部材20は、セラミックス部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接着部材30によって、セラミックス部材10に接合されている。接着部材30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接着部材30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0045】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接着部材30を介したベース部材20とセラミックス部材10との間の伝熱(熱引き)によりセラミックス部材10が冷却され、セラミックス部材10の吸着面Scに保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0046】
また、図2に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4からセラミックス部材10の吸着面Scにわたって上下方向に延びるピン挿通孔140が形成されている。ピン挿通孔140は、セラミックス部材10の吸着面Sc上に保持されたウェハWを押し上げて吸着面Scから離間させるためのリフトピン(図示せず)を挿通するための孔である。
【0047】
また、図2に示すように、静電チャック100は、セラミックス部材10とウェハWとの間の伝熱性を高めてウェハWの温度分布の制御性をさらに高めるため、セラミックス部材10の吸着面ScとウェハWの表面との間に存在する空間にガス(例えば、ヘリウムガス)を供給する構成を備えている。すなわち、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4から接着部材30の上面にわたって上下方向に延びる第1のガス流路孔131と、第1のガス流路孔131に連通すると共にセラミックス部材10における吸着面Scの内の内側領域IRに開口する第2のガス流路孔132とが形成されている。また、セラミックス部材10の内部には、第2のガス流路孔132と連通すると共に面方向に環状に延びる横流路133が形成されており、セラミックス部材10の下面S2には、第2のガス流路孔132に連通する凹部134が形成されている。凹部134には、通気性を有する充填部材(通気性プラグ)160が充填されている。ヘリウムガス源(不図示)から供給されたヘリウムガスが、第1のガス流路孔131内に流入すると、流入したヘリウムガスは、第1のガス流路孔131から凹部134内に充填された通気性を有する充填部材160の内部を通過してセラミックス部材10内部の第2のガス流路孔132内に流入し、横流路133を介して面方向に流れつつ、セラミックス部材10における吸着面Scの内の内側領域IRに形成されたガス噴出孔から噴出する。このようにして、吸着面ScとウェハWの表面との間に存在する空間に、ヘリウムガスが供給される。
【0048】
A-2.ヒータ電極50等の構成:
次に、ヒータ電極50の構成およびヒータ電極50への給電のための構成について詳述する。上述したように、静電チャック100は、複数のヒータ電極50を備える(図2参照)。ヒータ電極50は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。なお、本実施形態では、ヒータ電極50は、チャック電極40より下側に配置されている。
【0049】
図3に示すように、本実施形態において、複数のヒータ電極50は、2つの内側ヒータ電極510(内側ヒータ電極510Aおよび内側ヒータ電極510B)と、1つの外側ヒータ電極530とを含んでいる。各ヒータ電極510,530は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部511,531と、ヒータライン部511,531の両端部にそれぞれ接続されたヒータパッド部(第1のヒータパッド部513,533および第2のヒータパッド部515,535)とを有する。各ヒータ電極510,530のヒータライン部511,531は、Z軸方向視で略円周状または略螺旋状に延びる形状である。また、Z軸方向視で、ヒータパッド部513,515の幅は、ヒータライン部511の幅より大きく、ヒータパッド部533,535の幅は、ヒータライン部531の幅より大きい。
【0050】
図3および図4に示すように、内側ヒータ電極510は、セラミックス部材10における内側領域重なり部分IPの内部に配置されている。換言すると、内側ヒータ電極510は、Z軸方向視において、内側領域IRに重なる部分を有し、かつ、シールバンド領域SRに重なる部分を有していない。内側ヒータ電極510は、吸着面Scの内の内側領域IRを加熱するためのヒータである。
【0051】
一方、外側ヒータ電極530は、外側領域重なり部分OPの内部に配置されている。換言すると、外側ヒータ電極530は、Z軸方向視において、外側領域ORに重なる部分を有し、かつ、シールバンド領域SRに重なる部分を有していない。外側ヒータ電極530は、低温となりやすい吸着面Sc(すなわち、シールバンド領域SRおよび内側領域IR)の外周付近を補助的に加熱するためのヒータである。
【0052】
シールバンド領域重なり部分SPには、いずれのヒータ電極も配置されていない。そのため、シールバンド領域重なり部分SPは、主として、Z軸方向視で内側ヒータ電極510の内の最も外周側に配置されている内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511と、外側ヒータ電極530のヒータライン部531とによって加熱される。
【0053】
A-3.セラミックス部材10のシールバンド領域重なり部分SPと内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511との位置関係:
図3に示すように、Z軸方向視、かつ、シールバンド180の幅方向Dにおいて、シールバンド領域SRと、内側ヒータ電極510Aのヒータパッド部515との間には、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の内の一部分(例えば、図3中の部分Px)が配置されている。ここで、内側ヒータ電極510Aのヒータパッド部515は、Z軸方向視、かつ、シールバンド180の幅方向Dにおいて、内側ヒータ電極510のヒータパッド部513,515の内、シールバンド領域SRに最も近接して配置されているヒータパッド部である。内側ヒータ電極510Aのヒータパッド部515と同様に、Z軸方向視、かつ、シールバンド180の幅方向Dにおいて、シールバンド領域SRと、内側ヒータ電極510Aのヒータパッド部513との間にも、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の内の一部分が配置されている。すなわち、Z軸方向視、かつ、シールバンド180の幅方向Dにおいて、シールバンド領域SRと、内側ヒータ電極510のヒータパッド部の内、シールバンド領域SRに最も近接して配置されているヒータパッド部513,515との間には、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の一部分が配置されている。
【0054】
A-4.内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の幅について:
図5には、便宜的に、セラミックス部材10の上面S1の内の吸着面Scに形成されている突起170およびシールバンド180が破線で示されている。図4および図5に示すように、本実施形態において、ヒータライン部511の第1の部分P1の幅W1は、ヒータライン部511の第2の部分P2の幅W2と比較して小さい。ここで、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511における第1の部分P1は、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の内、シールバンド領域重なり部分SPに最も近接して配置されている部分である。また、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511における第2の部分P2は、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の内、ヒータライン部511における第1の部分P1に最も近接して配置されている部分である。なお、ヒータライン部511の幅W1,W2を含むヒータライン部511の幅とは、シールバンド180の幅方向Dにおける幅を意味する。ここで、幅方向Dは、セラミックス部材10における上面S1の略径方向である。
【0055】
A-5.内側ヒータ電極510Aのヒータパッド部513,515と外側ヒータ電極530のヒータパッド部533,535との位置関係:
図3には、Z軸方向視において、セラミックス部材10の中心点POと、外側ヒータ電極530のヒータパッド部535と、を通る第1の仮想直線VL1が示されている。図3には、さらに、Z軸方向視において、外側ヒータ電極530のヒータパッド部535と、内側ヒータ電極510の内の最も外周側に配置されている内側ヒータ電極510Aのヒータパッド部513と、を通る第2の仮想直線VL2が示されている。本実施形態において、第1の仮想直線VL1は、第2の仮想直線VL2に一致しない。換言すると、外側ヒータ電極530のヒータパッド部535と、内側ヒータ電極510Aのヒータパッド部513とは、セラミックス部材10の径方向Dにおいて同一直線上に配置されていない。ここで、第1の仮想直線VL1上における外側ヒータ電極530のヒータパッド部535は、第1の仮想直線VL1上において、シールバンド領域重なり部分SPに最も近接して配置されているヒータパッド部535である。また、第2の仮想直線VL2上における内側ヒータ電極510Aのヒータパッド部513は、内側ヒータ電極510Aのヒータパッド部513,515の内、外側ヒータ電極530のヒータパッド部535に最も近接して配置されているヒータパッド部513である。
【0056】
A-6.内側ヒータ電極510のヒータライン部511の幅と突起170との関係:
図4および図5には、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の内、第1の部分P1と、第2の部分P2と、第3の部分P3とが示されている。本実施形態において、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の第3の部分P3の幅W3は、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の第1の部分P1の幅W1と比較して大きく、また、第2の部分P2の幅W2と比較して大きい。ここで、上述した通り、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511における第1の部分P1は、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の内、シールバンド領域重なり部分SPに最も近接して配置されている部分である。内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511における第2の部分P2は、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の内、ヒータライン部511における第1の部分P1に最も近接して配置されている部分である。内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511における第3の部分P3は、Z軸方向視において突起170と重なる部分である。換言すると、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の第3の部分P3は、突起170の幅A2で示される部分において突起170と重なる部分を含んでいる。一方、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の第1の部分P1および第2の部分P2は、突起170と重なる部分以外の部分である。換言すると、内側ヒータ電極510Aのヒータライン部511の第1の部分P1および第2の部分P2は、突起170と重なる部分を含んでいない。なお、セラミックス部材10の吸着面Scに形成されている突起170は点線で示されている。なお、本実施形態の内側ヒータ電極510Bについても、Z軸方向視において突起170と重なる部分を含むヒータライン部511の幅は、突起170と重なる部分を含んでいないヒータライン部511の幅と比較して大きい。
【0057】
A-7.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態における静電チャック100では、Z軸方向に略直交する上面S1を有するセラミックス部材10を備え、セラミックス部材10の上面S1の内の吸着面Sc上に対象物(例えばウェハW)を保持する静電チャック100である。セラミックス部材10の上面S1は、シールバンド領域SRと、内側領域IRと、外側領域ORとを含んでいる。セラミックス部材10のシールバンド領域SRは、Z軸方向視において環状に、かつ、Z軸方向において凸状に形成されたシールバンド180が位置する領域である。セラミックス部材10の内側領域IRは、Z軸方向視においてシールバンド領域SRの内側に接し、かつ、Z軸方向において凸状の複数の突起170が形成された領域である。セラミックス部材10の外側領域ORは、Z軸方向視においてシールバンド領域SRの外側に接する領域である。また、本実施形態の静電チャック100は、2つの内側ヒータ電極510と、外側ヒータ電極530とを含むヒータ電極50を備える。内側ヒータ電極510と、外側ヒータ電極530とは、それぞれ、ヒータライン部511,531と、ヒータパッド部513,515,533,535と、を有する。2つの内側ヒータ電極510(510A,510B)は、Z軸方向視において、内側領域IRに重なる部分を有し、かつ、シールバンド領域SRに重なる部分を有しない。換言すれば、2つの内側ヒータ電極510(510A,510B)は、セラミックス部材10の内側領域重なり部分IPの内部に配置されている。また、外側ヒータ電極530は、Z軸方向視において、外側領域ORに重なる部分を有し、かつ、シールバンド領域SRに重なる部分を有しない。換言すれば、外側ヒータ電極530は、セラミックス部材10の外側領域重なり部分OPの内部に配置されている。
【0058】
本実施形態の静電チャック100では、静電チャック100に保持されるウェハWは、セラミックス部材10の上面S1の内のシールバンド領域SRに形成された環状かつ凸状のシールバンド180に接する。また、ウェハWは、シールバンド180に加えて、セラミックス部材10における上面S1の内の内側領域IRに形成された凸状の複数の突起170にも接する。このため、ヒータ電極50から、セラミックス部材10におけるシールバンド180が形成されたシールバンド領域SRに伝達された熱およびセラミックス部材10における内側領域IRの内の突起170が形成された部分に伝達された熱は、ウェハWに直接的に伝達される。
【0059】
ここで、シールバンド領域SRに形成されたシールバンド180は、セラミックス部材10の上面S1に環状に形成されている。一方、内側領域IRに形成された複数の突起170は、それぞれ独立して形成されている。このため、シールバンド180の単位体積当たりの表面積は、各突起170の単位体積当たりの表面積と比較して小さい。このような違いにより、シールバンド180は、各突起170と比較して放熱しにくい構造となっているため、セラミックス部材10の上面S1におけるシールバンド領域SRは、高温の温度特異点となりやすい。特に、ヒータ電極50が、シールバンド領域重なり部分SPに配置されている場合には、ヒータ電極50の発熱は、最短距離でセラミックス部材10の上面S1におけるシールバンド領域SRに伝達されるため、シールバンド領域SRは、更に高温の温度特異点となりやすい。このようなシールバンド領域SRは、各突起170と比べてウェハWと広範囲にわたって接触するため、シールバンド領域SRの温度がウェハWの温度に与える影響は大きい。
【0060】
本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の内部に配置された複数のヒータ電極50が、内側ヒータ電極510と外側ヒータ電極530とを備える。内側ヒータ電極510は、Z軸方向視において、内側領域IRに重なる部分を有し、かつ、シールバンド領域SRに重なる部分を有しないヒータ電極である。外側ヒータ電極530は、Z軸方向視において、外側領域ORに重なる部分を有し、かつ、シールバンド領域SRに重なる部分を有しないヒータ電極である。換言すれば、本実施形態の静電チャック100では、内側ヒータ電極510および外側ヒータ電極530は、セラミックス部材10におけるシールバンド領域重なり部分SP以外の部分に配置されている。このため、本実施形態の静電チャック100によれば、内側ヒータ電極510および外側ヒータ電極530の発熱が、最短距離でセラミックス部材10の上面S1におけるシールバンド領域SRに伝達されることを抑制することができ、ひいては、セラミックス部材10におけるシールバンド領域SRが高温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10における上面S1(より詳しくは、吸着面Sc)における温度分布の制御性(ひいては、上面S1(より詳しくは、吸着面Sc)に保持されたウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0061】
本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視において、内側ヒータ電極510のヒータパッド部513,515の幅は、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の幅と比較して大きい。また、Z軸方向視、かつ、シールバンド180の幅方向Dにおいて、シールバンド領域SRと、内側ヒータ電極510のヒータパッド部の内、シールバンド領域SRに最も近接して配置されているヒータパッド部515と、の間には、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の一部分(例えば、図3中の部分Px)が配置されている。
【0062】
上述したように、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の内部に配置された内側ヒータ電極510および外側ヒータ電極530が、シールバンド領域重なり部分SP以外の部分に配置された構成を採用していることにより、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10におけるシールバンド領域SRが高温の温度特異点となることを抑制することができる。一方、このように、内側ヒータ電極510および外側ヒータ電極530が、シールバンド領域重なり部分SP以外の部分に配置されていることにより、シールバンド領域SRが低温の温度特異点となるおそれがある。このような構成において、シールバンド領域重なり部分SPの近傍に内側ヒータ電極510のヒータパッド部513,515が配置されると、シールバンド領域SRはより低温の温度特異点となるおそれがある。これは、Z軸方向視において、内側ヒータ電極510のヒータパッド部513,515の幅は、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の幅と比較して大きいため、ヒータパッド部513,515での発熱量は、ヒータライン部511での発熱量と比較してごく僅かであるためである。
【0063】
本実施形態の静電チャックでは、Z軸方向視、かつ、シールバンド180の幅方向において、シールバンド領域SRと、内側ヒータ電極510のヒータパッド部513,515の内、シールバンド領域SRに最も近接して配置されているヒータパッド部513,515と、の間には、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の一部分が配置されている構成を採用している。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、この内側ヒータ電極510のヒータライン部511の当該一部分の存在により、セラミックス部材10におけるシールバンド領域SRが過度に低温化することを抑制できるため、シールバンド領域SRが低温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10における上面S1(より詳しくは、吸着面Sc)における温度分布の制御性(ひいては、上面S1(より詳しくは、吸着面Sc)に保持されたウェハWの温度分布の制御性)を更に向上させることができる。
【0064】
本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視において、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の内、シールバンド180の幅方向Dにおいて、シールバンド領域SRに最も近接して配置されている第1の部分P1における幅W1は、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の内、シールバンド180の幅方向Dにおいて、ヒータライン部511の第1の部分P1に最も近接して配置されている第2の部分P2における幅W2と比較して小さい。
【0065】
上述したように、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の内部に配置された内側ヒータ電極510および外側ヒータ電極530が、シールバンド領域重なり部分SP以外の部分に配置された構成を採用していることにより、セラミックス部材10におけるシールバンド領域SRが高温の温度特異点となることを抑制することができる。一方、このように、内側ヒータ電極510および外側ヒータ電極530が、シールバンド領域重なり部分SP以外の部分に配置されていることにより、シールバンド領域SRが低温の温度特異点となるおそれがある。このような構成において、Z軸方向視において、セラミックス部材10におけるシールバンド領域重なり部分SPの近傍に幅の大きいヒータライン部(発熱量の小さいヒータライン部)が配置されると、シールバンド領域SRはより低温の温度特異点となるおそれがある。
【0066】
本静電チャックでは、Z軸方向視において、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の内、シールバンド180の幅方向Dにおいて、シールバンド領域SRに最も近接して配置されている第1の部分P1における幅W1は、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の内、シールバンド180の幅方向Dにおいて、ヒータライン部511の第1の部分P1に最も近接して配置されている第2の部分P2における幅W2と比較して小さい構成を採用している。換言すれば、本実施形態の静電チャック100では、内側ヒータ電極510のヒータライン部511における、セラミックス部材10におけるシールバンド領域重なり部分SPに最も近接して配置されている第1の部分P1の発熱量は、第2の部分P2の発熱量と比較して大きい。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、この内側ヒータ電極510のヒータライン部511の内の、シールバンド領域重なり部分SPに最も近接して配置されている発熱量の大きい第1の部分P1の存在により、セラミックス部材10におけるシールバンド領域SRが過度に低温化することを抑制できるため、シールバンド領域SRが低温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10の上面S1(より詳しくは、吸着面Sc)における温度分布の制御性(ひいては、上面S1(より詳しくは、吸着面Sc)に保持されたウェハWの温度分布の制御性)を更に向上させることができる。
【0067】
本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視において、外側ヒータ電極530のヒータパッド部533,535の幅は、外側ヒータ電極530のヒータライン部531の幅と比較して大きい。また、Z軸方向視において、第1の仮想直線VL1は第2の仮想直線VL2に一致しない。
【0068】
上述したように、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の内部に配置された内側ヒータ電極510および外側ヒータ電極530が、シールバンド領域重なり部分SP以外の部分に配置された構成を採用していることにより、セラミックス部材10におけるシールバンド領域SRが高温の温度特異点となることを抑制することができる。一方、このように、内側ヒータ電極510および外側ヒータ電極530が、シールバンド領域重なり部分SP以外の部分に配置されていることにより、シールバンド領域SRが低温の温度特異点となるおそれがある。このような構成において、セラミックス部材10におけるシールバンド領域重なり部分SPに最も近接して配置されている外側ヒータ電極530のヒータパッド部535(最近外側ヒータパッド部)と、このヒータパッド部535(最近外側ヒータパッド部)に最も近接して配置されている内側ヒータ電極510のヒータパッド部513(最近内側ヒータパッド部)とが、Z軸方向視、かつ、シールバンド180の幅方向Dにおいて、同一直線上(すなわち、最短距離)に配置されると、外側ヒータ電極530のヒータパッド部535(最近外側ヒータパッド部)と内側ヒータ電極510のヒータパッド部513(最近内側ヒータパッド部)との間におけるシールバンド領域SRはより低温の温度特異点となるおそれがある。これは、内側ヒータ電極510と同様に、Z軸方向視において、外側ヒータ電極530のヒータパッド部535の幅は、外側ヒータ電極530のヒータライン部531の幅と比較して大きいため、ヒータパッド部535での発熱量は、ヒータライン部531での発熱量と比較してごく僅かであるためである。
【0069】
本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視において、セラミックス部材10の中心点POと、一の外側ヒータ電極530の一のヒータパッド部535と、を通る第1の仮想直線VL1は、一の外側ヒータ電極530の一のヒータパッド部535と、一の外側ヒータ電極530の一のヒータパッド部535に最も近接して配置されている内側ヒータ電極510のヒータパッド部513と、を通る第2の仮想直線VL2に、一致しない構成を採用している。換言すれば、本実施形態の静電チャック100では、ともに発熱量の小さい外側ヒータ電極530のヒータパッド部535(最近外側ヒータパッド部)と内側ヒータ電極510のヒータパッド部513(最近内側ヒータパッド部)とが、Z軸方向視、かつ、シールバンド180の幅方向Dにおいて、同一直線上(すなわち、最短距離)に配置されていない。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、セラミックス部材10におけるシールバンド領域SRが過度に低温化することを抑制できるため、シールバンド領域SRが低温の温度特異点となることを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100よれば、セラミックス部材10における上面S1(より詳しくは、吸着面Sc)における温度分布の制御性(ひいては、上面S1(より詳しくは、吸着面Sc)に保持されたウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0070】
本実施形態の静電チャック100では、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の内、Z軸方向視において突起170と重なる部分における幅は、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の内、Z軸方向視において突起170と重なる部分以外の部分における幅と比較して大きい。
【0071】
上述したように、本実施形態の静電チャック100によれば、ウェハWは、シールバンド180に加えて、セラミックス部材10における内側領域IRに凸状に形成された複数の突起170にも接するため、シールバンド領域SRと同様に、内側ヒータ電極510から、この突起170におけるWと接する面に伝達された熱はウェハWに直接的に伝達される。このため、内側ヒータ電極510が、セラミックス部材10における、Z軸方向視において突起170と重なる部分(突起重なり部分)に配置されている場合には、内側ヒータ電極510の発熱は、最短距離で突起170におけるウェハWと接する面に伝達されるため、内側領域IRにおいて突起170が形成されている部分は高温の温度特異点となりやすい。本実施形態の静電チャック100によれば、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の内、Z軸方向視において突起170と重なる部分における幅W3は、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の内、Z軸方向視において突起170と重なる部分以外の部分における幅W1,W2と比較して大きい構成を採用している。換言すれば、本実施形態の静電チャック100によれば、内側ヒータ電極510のヒータライン部511の内、突起170と重なる部分の発熱量は、突起170と重なる部分以外の部分の発熱量と比較して小さい。そのため、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の内側領域IRにおける突起170が形成されている部分が高温化することを抑制できるため、内側領域IRに高温の温度特異点が発生することを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の上面S1(より詳しくは、吸着面Sc)における温度分布の制御性(ひいては、上面S1(より詳しくは、吸着面Sc)に保持されたウェハWの温度分布の制御性)を更に向上させることができる。
【0072】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0073】
上記実施形態の静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10に切り欠きが形成されることにより、セラミックス部材10の上面S1がシールバンド領域SRと内側領域IRとから構成される上段と、外側領域ORから構成される下段とに分かれているが、これに限定されるものではない。すなわち、セラミックス部材10のZ軸方向の厚さが、シールバンド領域SRと、内側領域IRと、外側領域ORとにおいて、略一様であってもよい。
【0074】
また、上記実施形態の静電チャック100は、Z軸方向視で略円周上または螺旋状の複数のヒータ電極50を備えているが、静電チャック100が備えるヒータ電極50の形状や個数は任意に変形可能である。具体的には、内側ヒータ電極510が3つ以上、外側ヒータ電極530が2つ以上備えられていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態の静電チャック100では、複数のヒータ電極50のそれぞれが共通の1対の給電端子741,742に導通しているが、複数のヒータ電極50に給電するための構成は任意に変更可能である。具体的には、複数のヒータ電極50のそれぞれが互いに異なる一対の給電端子に導通していてもよいし、複数のヒータ電極50に導通する一対の給電端子のうち一方の給電端子だけが複数のヒータ電極50に対して共用される給電端子であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態において、各ビアは、単数のビアにより構成されてもよいし、複数のビアのグループにより構成されてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、ビア部分のみからなる単層構成であってもよいし、複数層構成(例えば、ビア部分とパッド部分とビア部分とが積層された構成)であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、セラミックス部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、セラミックス部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。また、上記実施形態の静電チャック100における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0078】
また、本発明は、セラミックス部材10を備える静電チャック100に限らず、セラミックス以外の材料(例えば、樹脂)により形成された板状部材を備える静電チャックにも適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
10:セラミックス部材 12:凹部 20:ベース部材 21:冷媒流路 22:貫通孔 30:接着部材 32:貫通孔 40:チャック電極 50:ヒータ電極 60:ドライバ電極 61:第1の導電領域 62:第2の導電領域 100:静電チャック 110:第1の端子用孔 120:第2の端子用孔 131:第1のガス流路孔 132:第2のガス流路孔 133:横流路 134:凹部 140:ピン挿通孔 160:充填部材 170:突起 180:シールバンド 510:内側ヒータ電極 510A:内側ヒータ電極 510B:内側ヒータ電極 511:ヒータライン部 513:第1のヒータパッド部 515:第2のヒータパッド部 530:外側ヒータ電極 531:ヒータライン部 533:第1のヒータパッド部 535:第2のヒータパッド部 711:第1の給電側ビア 712:第2の給電側ビア 721:第1のヒータ側ビア 722:第2のヒータ側ビア 731:第1の電極パッド 732:第2の電極パッド 741:第1の給電端子 742:第2の給電端子 BP:境界 IP:内側領域重なり部分 IR:内側領域 OP:外側領域重なり部分 OR:外側領域 P1:第1の部分 P2:第2の部分 P3:第3の部分 PO:中心点 S1:上面 S2:下面 S3:上面 S4:下面 SP:シールバンド領域重なり部分 SR:シールバンド領域 Sc:吸着面 W:ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5