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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
F04D19/04 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018135713
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020012423
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】大立 好伸
(72)【発明者】
【氏名】前島 靖
(72)【発明者】
【氏名】高阿田 勉
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194040(JP,A)
【文献】特開2002-155891(JP,A)
【文献】特開2018-080609(JP,A)
【文献】特開2004-116328(JP,A)
【文献】特開2015-229949(JP,A)
【文献】特開2010-025122(JP,A)
【文献】特開2002-180988(JP,A)
【文献】特開2017-089582(JP,A)
【文献】特開2017-166360(JP,A)
【文献】特開2018-40277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転によってガスを吸気し排気する真空ポンプであって、
前記回転体の温度調整に用いられる温度調整部品と、
前記温度調整部品を制御する制御手段と、
前記制御手段による前記温度調整部品の制御状態を時系列的に取得する取得手段と、
前記取得手段で取得した前記制御状態の時系列的変化を監視することでポンプ内生成物の堆積量を推定しポンプメンテナンス時期を判定する判定手段と、
を備え
前記温度調整部品は、加熱手段及び/又は冷却手段であり、
前記制御状態は、制御サイクルにおける前記加熱手段のON時間及び/又は前記冷却手段のON時間であることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記冷却手段のON時間は、前記冷却手段を流れる冷却媒体の流量調節操作に用いられるバルブのON時間であること
を特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
回転体の回転によってガスを吸気し排気する真空ポンプであって、
前記回転体の温度調整に用いられる温度調整部品と、
前記温度調整部品を制御する制御手段と、
前記制御手段による前記温度調整部品の制御状態を時系列的に取得する取得手段と、
前記取得手段で取得した前記制御状態の時系列的変化を監視することでポンプ内生成物の堆積量を推定しポンプメンテナンス時期を判定する判定手段と、
を備え、
前記温度調整部品は、加熱手段であり、
前記制御状態は、制御サイクルにおける前記加熱手段の電圧値、電流値、消費電力量のいずれか少なくとも一つであること
を特徴とする真空ポンプ。
【請求項4】
回転体の回転によってガスを吸気し排気する真空ポンプであって、
前記回転体の温度調整に用いられる温度調整部品と、
前記温度調整部品を制御する制御手段と、
前記制御手段による前記温度調整部品の制御状態を時系列的に取得する取得手段と、
前記取得手段で取得した前記制御状態の時系列的変化を監視することでポンプ内生成物の堆積量を推定しポンプメンテナンス時期を判定する判定手段と、
を備え、
前記温度調整部品は、冷却手段であり、
前記制御状態は、制御サイクルにおける前記冷却手段を流れる冷却媒体の流量またはその温度であること
を特徴とする真空ポンプ。
【請求項5】
前記堆積量の推定若しくは前記ポンプメンテナンス時期の判定の際の条件として、所定の種類と流量のガスを前記真空ポンプ内に流すこと
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記堆積量の推定若しくは前記ポンプメンテナンス時期の判定の際の条件として、所定の種類と流量のパージガスを前記真空ポンプ内に流すこと
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記堆積量の推定若しくは前記ポンプメンテナンス時期の判定の際の条件として、前記回転体が所定の回転速度で回転していること
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記回転体の内側に位置するステータコラムと、
前記ステータコラムをポンプベースから断熱する第1の断熱手段と、
前記ステータコラムを冷却する冷却手段と、を備え、
前記ステータコラムの熱が前記ポンプベースに移行することを低減したこと
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
前記回転体の外周側にネジ溝排気流路を形成するネジ溝排気部ステータと、
前記ネジ溝排気部ステータを加熱する為の昇温リングと、
前記ネジ溝排気部ステータおよび前記昇温リングをポンプベースから断熱する第2の断熱手段と、
前記ネジ溝排気部ステータまたは前記昇温リングに配置した温度センサと、を備え、
前記ネジ溝排気部ステータや前記昇温リングの熱が前記ポンプベースに移行することを低減したこと
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス装置、フラット・パネル・ディスプレイ製造装置、ソーラー・パネル製造装置におけるプロセスチャンバ、その他の真空チャンバのガス排気手段として利用される真空ポンプに関し、特に、ポンプメンテナンスの必要性を正確に判断するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の真空ポンプとしては、例えば特許文献1に記載の真空ポンプ(1)が知られている。この真空ポンプ(以下「従来の真空ポンプ(1)」という)は、回転体としてポンプロータ(4a)を備え、ポンプロータ(4a)の回転によってガスを吸気し排気する構造になっている。
【0003】
特許文献1の段落0035の記載を参照すると、従来の真空ポンプ(1)では、ポンプ内に生成物が堆積してガス流路が狭くなるのに連れて、タービン翼部の圧力が上昇してくると、ロータ回転数を定格回転数(定格回転速度)に維持するのに必要なモータ(10)の電流が増加するとともに、ガス排気に伴う発熱が増加し、その結果、ロータ温度(Tr)が上昇傾向になる。そうなると、従来の真空ポンプ(1)では、ロータ温度(Tr)が所定温度となるように温調を行っているので、ベース(3)の加熱量が減少する。すなわち、ポンプ内での生成物の堆積に伴ってベース温度(Tb)は低下すると想定される。
【0004】
以上のことから、従来の真空ポンプ(1)においては、ポンプ内に堆積した生成物(以下「ポンプ内生成物」という)の堆積状況を判断するために、ベース(3)に温度センサ(6)を設置し、当該温度センサ(6)でベース(3)の温度を監視している。
【0005】
しかしながら、従来の真空ポンプ(1)におけるベース(3)は、前述の通り、ガス排気に伴う熱(ガスとの摩擦熱)やモータ(10)からの熱など、ステータ(32)以外の他の部分からの熱の影響を受けていること、および、高温化が必要な部分についての目標温度を達成するために、当該ベース(3)はヒータ(5)で加熱されることから、ポンプ内生成物が所定量堆積しても、ベース(3)の温度は、前述の想定通りには下がらない可能性がある。このため、ベース(3)の温度からポンプ内生成物の堆積状況を正確に判断することや、その堆積状況からポンプメンテナンスの必要性を正確に判断することは困難である。
【0006】
以上の説明において、カッコ内の符号は特許文献1で用いられている符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-194040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ポンプメンテナンスの必要性を正確に判断するのに好適な真空ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、回転体の回転によってガスを吸気し排気する真空ポンプであって、前記回転体の温度調整に用いられる温度調整部品と、前記温度調整部品を制御する制御手段と、前記制御手段による前記温度調整部品の制御状態を時系列的に取得する取得手段と、前記取得手段で取得した前記制御状態の時系列的変化を監視することでポンプ内生成物の堆積量を推定しポンプメンテナンス時期を判定する判定手段と、を備え、前記温度調整部品は、加熱手段及び/又は冷却手段であり、前記制御状態は、制御サイクルにおける前記加熱手段のON時間及び/又は前記冷却手段のON時間であることを特徴とする。
【0011】
前記本発明において、前記冷却手段のON時間は、前記冷却手段を流れる冷却媒体の流量調節操作に用いられるバルブのON時間であることを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明は、回転体の回転によってガスを吸気し排気する真空ポンプであって、前記回転体の温度調整に用いられる温度調整部品と、前記温度調整部品を制御する制御手段と、前記制御手段による前記温度調整部品の制御状態を時系列的に取得する取得手段と、前記取得手段で取得した前記制御状態の時系列的変化を監視することでポンプ内生成物の堆積量を推定しポンプメンテナンス時期を判定する判定手段と、を備え、前記温度調整部品は、加熱手段であり、前記制御状態は、制御サイクルにおける前記加熱手段の電圧値、電流値、消費電力量のいずれか少なくとも一つであることを特徴とする
【0013】
また、本発明は、回転体の回転によってガスを吸気し排気する真空ポンプであって、前記回転体の温度調整に用いられる温度調整部品と、前記温度調整部品を制御する制御手段と、前記制御手段による前記温度調整部品の制御状態を時系列的に取得する取得手段と、前記取得手段で取得した前記制御状態の時系列的変化を監視することでポンプ内生成物の堆積量を推定しポンプメンテナンス時期を判定する判定手段と、を備え、前記温度調整部品は、冷却手段であり、前記制御状態は、制御サイクルにおける前記冷却手段を流れる冷却媒体の流量またはその温度であることを特徴とする
【0014】
前記本発明において、前記堆積量の推定若しくは前記ポンプメンテナンス時期の判定の際の条件として、所定の種類と流量のガスを前記真空ポンプ内に流すことを特徴としてもよい。
【0015】
前記本発明において、前記堆積量の推定若しくは前記ポンプメンテナンス時期の判定の際の条件として、所定の種類と流量のパージガスを前記真空ポンプ内に流すことを特徴としてもよい。
【0016】
前記本発明において、前記堆積量の推定若しくは前記ポンプメンテナンス時期の判定の際の条件として、前記回転体が所定の回転速度で回転していることを特徴としてもよい。
【0017】
前記本発明において、前記回転体の内側に位置するステータコラムと、前記ステータコラムをポンプベースから断熱する第1の断熱手段と、前記ステータコラムを冷却する冷却手段と、を備え、前記ステータコラムの熱が前記ポンプベースに移行することを低減したことを特徴としてもよい。
【0018】
前記本発明において、前記回転体の外周側にネジ溝排気流路を形成するネジ溝排気部ステータと、前記ネジ溝排気部ステータを加熱する為の昇温リングと、前記ネジ溝排気部ステータおよび前記昇温リングをポンプベースから断熱する第2の断熱手段と、前記ネジ溝排気部ステータまたは前記昇温リングに配置した温度センサと、を備え、前記ネジ溝排気部ステータや前記昇温リングの熱が前記ポンプベースに移行することを低減したことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、真空ポンプの具体的な構成として、温度調整部品(例えば、冷却管やヒータなど)の制御状態を時系列的に取得し、取得した制御状態の時系列的変化を監視することでポンプ内生成物の堆積量を推定しポンプメンテナンス時期を判定するという構成を採用した。このため、ベースの温度変化を基にポンプメンテナンス時期を判定する従来の手法に比べ、ポンプ内生成物の堆積量を正確に推定したり、その推定からポンプメンテナンスの必要性を正確に判定したりすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用した真空ポンプ(その1)の断面図。
図2】本発明を適用した真空ポンプ(その2)の断面図。
図3図1または図2図4の真空ポンプを制御するポンプコントローラの説明図。
図4】本発明を適用した真空ポンプ(その3)の断面図。
図5図4の真空ポンプにおける昇温リングの拡大図。
図6】ヒータのON時間と生成物の堆積量との関係を示したグラフ図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
《本発明の第1の実施形態》
図1は、本発明を適用した真空ポンプ(その1)の断面図、図3は、図1または図2図4の真空ポンプを制御するポンプコントローラの説明図である。
【0023】
図1の真空ポンプP1は、筒状の外装ケース1と、外装ケース1内に配置された回転体2と、回転体2を回転可能に支持する支持手段3と、回転体2を回転駆動する駆動手段4と、回転体2の回転によりガスを吸気するための吸気口5と、吸気口5から吸気したガスを排気するための排気口6と、吸気口5から排気口6に向かって移行するガスの流路7と、を備え、かつ、回転体2の回転によってガスを吸気し排気する構造になっている。
【0024】
外装ケース1は、筒状のポンプケース1Aと筒状のポンプベース1Bとをその筒軸方向に締結ボルトで一体に連結した有底円筒形になっており、ポンプケース1Aの上端部側は前記吸気口5として開口している。吸気口5は、真空雰囲気中で所定のプロセスを実行する装置、例えば半導体製造装置のプロセスチャンバ等のように高真空となる真空チャンバ(図示省略)に接続される。
【0025】
ポンプベース1Bの下端部側面には排気ポート8が設けられており、排気ポート8の一端は前記流路7に連通し、同排気ポート8の他端は前記排気口6として開口した形態になっている。排気口6は図示しない補助ポンプに連通接続される。
【0026】
ポンプベース1Bを冷却する手段として、図1の真空ポンプP1では、ポンプベース1Bに対して冷却管24(以下「ベース冷却管24という」)を取付けている。
【0027】
ポンプケース1A内の中央部にはステータコラム9が設けられている。ステータコラム9は、ポンプベース1Bから吸気口5の方向に向けて立ち上がった構造になっている。このような構造のステータコラムには各種電装部品(後述の駆動モータ15などを参照)が取付けられている。図1の真空ポンプでは、ステータコラム9とポンプベース1Bとが一部品として一体化した構造を採用しているが、これに限定されることはない。例えば、図示は省略するが、ステータコラムとポンプベースは別部品として構成されてもよい。
【0028】
ステータコラム9の外側には前記回転体2が設けられている。つまり、ステータコラム9は回転体2の内側に位置するように構成されており、回転体2は、ポンプケース1A及びポンプベース1Bに内包され、かつ、ステータコラム9の外周を囲む円筒形状になっている。
【0029】
ステータコラム9の内側には回転軸12が設けられている。回転軸12は、その上端部側が吸気口5の方向を向くように配置されている。また、この回転軸12は、磁気軸受(具体的には、公知の2組のラジアル磁気軸受13と1組のアキシャル磁気軸受14)により回転可能に支持されている。さらに、ステータコラム9の内側には駆動モータ15が設けられており、この駆動モータ15により回転軸12はその軸心周りに回転駆動される。
【0030】
回転軸12の上端部はステータコラム9の円筒上端面から上方に突出しており、この突出した回転軸12の上端部に対して回転体2の上端側がボルト等の締結手段で一体に固定されている。したがって、回転体2は、回転軸12を介して、磁気軸受(ラジアル磁気軸受13、アキシャル磁気軸受14)で回転可能に支持されており、この支持状態で駆動モータ15を起動することにより、回転体2は、回転軸12と一体にその軸心周りに回転することができる。要するに、図1の真空ポンプP1では、磁気軸受が回転体2を回転可能に支持する支持手段として機能し、また、駆動モータ15が回転体2を回転駆動する駆動手段として機能する。
【0031】
そして、図1の真空ポンプP1は、吸気口5から排気口6までの間に、ガス分子を排気する手段として機能する複数の翼排気段16を備えている。
【0032】
さらに、図1の真空ポンプP1は、複数の翼排気段16の下流部、具体的には複数の翼排気段16のうち最下段の翼排気段16(16-n)から排気口6までの間に、ネジ溝ポンプ段17を備えている。
【0033】
《翼排気段16の詳細》
図1の真空ポンプP1では、回転体2の略中間より上流が複数の翼排気段16として機能する。以下、複数の翼排気段16を詳細に説明する。
【0034】
回転体2の略中間より上流の回転体2外周面には、回転体2と一体に回転する回転翼18が複数設けられており、これらの回転翼18は、翼排気段16(16-1、16-2、…16-n)ごとに、回転体2の回転中心軸(具体的には回転軸12の軸心)若しくは外装ケース1の軸心(以下「ポンプ軸心」という)を中心として放射状に所定間隔で配置されている。なお、回転翼18は、その構造上、回転体2と一体に回転するので、回転体2を構成する要素であり、以下、回転体2と言うときは回転翼18を含むものとする。
【0035】
一方、外装ケース1内(具体的には、ポンプケース1Aの内周側)には、複数の固定翼19が設けられており、各固定翼19のポンプ径方向およびポンプ軸心方向の位置は、ポンプベース1B上に多段に積層された複数の固定翼スペーサ20で位置決め固定されている。これらの固定翼19もまた、回転翼18と同じく、翼排気段16(16-1、16-2、…16-n)ごとに、ポンプ軸心を中心として放射状に所定間隔で配置されている。
【0036】
つまり、各翼排気段16(16-1、16-2、…16-n)は、吸気口5から排気口6までの間に多段に設けられるとともに、翼排気段16(16-1、16-2、…16-n)ごとに放射状に所定間隔で配置された複数の回転翼18と固定翼19とを備え、これらの回転翼18と固定翼19とでガス分子を排気する構造になっている。
【0037】
いずれの回転翼18も、回転体2の外径加工部と一体的に切削加工で切り出し形成したブレード状の切削加工品であって、ガス分子の排気に最適な角度で傾斜している。いずれの固定翼19もまた、ガス分子の排気に最適な角度で傾斜している。
【0038】
複数の固定翼スペーサ20のうち、最下段の固定翼スペーサ20E(20)は、ポンプベース1Bと最下段の固定翼19に接触していることにより、複数の固定翼19および固定翼スペーサ20の熱をポンプベース1B側へ逃がす手段として機能する。
【0039】
回転体2(複数の回転翼18を含む)の熱は、固定翼19や固定翼スペーサ20側に放射され、最終的に、最下段の固定翼スペーサ20E(20)とポンプベース1Bとの接触部を通じてポンプベース1B側に移行する。このために、図1の真空ポンプP1では、ベース冷却管24に冷却媒体を流すことで、ポンプベース1Bを冷却している。
【0040】
《複数の翼排気段16での排気動作の説明》
以上の構成からなる複数の翼排気段16において、最上段の翼排気段16(16-1)では、駆動モータ15の起動により、回転軸12および回転体2と一体に複数の回転翼18が高速で回転し、回転翼18の回転方向前面かつ下向き(吸気口5から排気口6に向かう方向、以降下向きと略する)の傾斜面により吸気口5から入射したガス分子に下向き方向かつ接線方向の運動量を付与する。このような下向き方向の運動量を有するガス分子が、固定翼19に設けられている回転翼18と回転方向に逆向きの下向きの傾斜面によって、次の翼排気段16(16-2)へ送り込まれる。
【0041】
次の翼排気段16(16-2)およびそれ以降の翼排気段16でも、最上段の翼排気段16(16-1)と同じく、回転翼18が回転し、前記のような回転翼18によるガス分子への運動量の付与と固定翼19によるガス分子の送り込み動作とが行なわれることで、吸気口5付近のガス分子は、回転体2の下流に向かって順次移行するように排気される。
【0042】
以上のような複数の翼排気段16でのガス分子の排気動作からも分かるように、複数の翼排気段16では、回転翼18と固定翼19との間に設定された隙間がガスを排気するための流路(以下「ブレード間排気流路7A」という)になっている。
【0043】
《ネジ溝ポンプ段17の詳細》
図1の真空ポンプP1は、回転体2の略中間より下流がネジ溝ポンプ段17として機能する。以下、ネジ溝ポンプ段17を詳細に説明する。
【0044】
ネジ溝ポンプ段17は、回転体2の外周側(具体的には、回転体2の略中間より下流の回転体2部分の外周側)にネジ溝排気流路7Bを形成する手段として、ネジ溝排気部ステータ21を有しており、ネジ溝排気部ステータ21は、真空ポンプの固定部品として外装ケース1(具体的にはポンプベース1B)の内側に配置されるように取付けてある。
【0045】
ネジ溝排気部ステータ21は、その内周面が回転体2の外周面に対向するように配置された円筒形の固定部材であって、回転体2の略中間より下流の回転体2部分を囲むように配置してある。
【0046】
そして、回転体2の略中間より下流の回転体2部分は、ネジ溝ポンプ段17の回転部品として回転する部分であって、ネジ溝排気部ステータ21の内側に、所定のギャップを介して挿入・収容されている。
【0047】
ネジ溝排気部ステータ21の内周部には、深さが下方に向けて小径化したテーパコーン形状に変化するネジ溝22を形成してある。このネジ溝22はネジ溝排気部ステータ21の上端から下端にかけて螺旋状に刻設してある。
【0048】
前記のようなネジ溝22を備えたネジ溝排気部ステータ21により、回転体2の外周側には、ガスを排気するためのネジ溝排気流路7Bが形成される。図示は省略するが、先に説明したネジ溝22を回転体2の外周面に形成することで、前記のようなネジ溝排気流路7Bが設けられるように構成してもよい。
【0049】
ネジ溝ポンプ段17では、ネジ溝22と回転体2の外周面でのドラック効果によりガスを圧縮しながら移送するため、かかるネジ溝22の深さは、ネジ溝排気流路7Bの上流入口側(吸気口5に近い方の流路開口端)で最も深く、その下流出口側(排気口6に近い方の流路開口端)で最も浅くなるように設定してある。
【0050】
ネジ溝排気流路7Bの入口(上流開口端)は、先に説明したブレード間排気流路7Aの出口、具体的には、最下段の翼排気段16-nを構成する固定翼19とネジ溝排気部ステータ21との間の隙間(以下「最終隙間GE」という)に向って開口し、また、同ネジ溝排気流路7Bの出口(下流開口端)は、ポンプ内排気口側流路7Cを通じて排気口6に連通している。
【0051】
ポンプ内排気口側流路7Cは、回転体2やネジ溝排気部ステータ21の下端部とポンプベース1Bの内底部との間に所定の隙間(図1の真空ポンプP1では、ステータコラム9の下部外周を一周する形態の隙間)を設けることによって、ネジ溝排気流路7Bの出口から排気口6に連通するように形成してある。
【0052】
ポンプベース1Bの温度を監視する手段として、ポンプベース1Bには温度センサ25を取り付けてある。
【0053】
《ネジ溝ポンプ段17での排気動作の説明》
先に説明した複数の翼排気段16での排気動作による移送によって最終隙間GE(ブレード間排気流路7Aの出口)に到達したガス分子は、ネジ溝排気流路7Bに移行する。移行したガス分子は、回転体2の回転によって生じるドラッグ効果によって、遷移流から粘性流に圧縮されながらポンプ内排気口側流路7Cに向かって移行する。そして、ポンプ内排気口側流路7Cに到達したガス分子は排気口6に流入し、図示しない補助ポンプを通じて外装ケース1の外へ排気される。
【0054】
《真空ポンプP1内におけるガスの流路7の説明》
以上の説明から分かるように、図1の真空ポンプP1は、ブレード間排気流路7A、最終隙間GE、ネジ溝排気流路7B、および、ポンプ内排気口側流路7Cを含んで構成されるガスの流路7を備え、この流路7を通ってガスは吸気口5から排気口6に向かって移行する。
《ポンプコントローラ26の説明》
図1の真空ポンプP1は、その起動や再起動、ならびに、磁気軸受(ラジアル磁気軸受13、アキシャル磁気軸受14)による回転体2の支持制御、駆動モータ15による回転体2の回転数制御ないしは回転速度制御など、真空ポンプP1全体を統括制御するポンプコントローラ26を備えている。
【0055】
ポンプコントローラ26の具体的なハードウエア構成例として、図1の真空ポンプP1では、CPU、ROM、RAM、入出力(I/O)インターフェース等のハードウエア資源からなる数値演算処理装置によってポンプコントローラ26を構成しているが、この構成に限定されることはない。
【0056】
《回転体2の温度調整およびポンプメンテナンスの判定に関する構成の説明》
図1および図3を参照すると、図1の真空ポンプP1は、回転体2の温度調整に用いられる温度調整部品30と、温度調整部品30を制御する制御手段31と、制御手段31による温度調整部品30の制御状態を時系列的に取得する取得手段32と、取得手段32で取得した制御状態の時系列的変化を監視することでポンプ内生成物の堆積量を推定しポンプメンテナンス時期を判定する判定手段33と、を備える。
【0057】
温度調整部品30の具体的な構成例として、図1の真空ポンプP1では、ヒータ34および先に説明したベース冷却管24を採用している。ヒータ34は、ポンプベース1Bに設置され、回転体2およびネジ溝排気部ステータ21を加熱する手段(加熱手段)として使用される。ベース冷却管24は、ポンプベース1Bに設置され、回転体2およびポンプベース1Bを冷却する手段(冷却手段)として使用される。
【0058】
制御手段31の具体的な構成として、図1の真空ポンプP1では、回転体2の内端面と対向するステータコラム9の上部に第2の温度センサ35を設置し、この第2の温度センサ35で測定した温度が回転体2の現在の温度としてポンプコントローラ26に出力される構成、ならびに、ポンプコントローラ26が制御手段31として機能する構成を採用している。
【0059】
ポンプコントローラ26では、制御手段31の制御処理として、第2の温度センサ35から出力された測定値(回転体2の現在の温度)と目標値(回転体2の設定温度)とを比較し、かつ、その測定値と目標値の差分を補償するように、ヒータ34(加熱手段)のON時間やベース冷却管24(冷却手段)を流れる冷却媒体の流量調節操作に用いられるバルブ(以下「ベース冷却管24のバルブ」という)のON時間を増減するなど、温度調整部品30(ヒータ34、ベース冷却管24)を制御しているが、このような制御方式に限定されることはない。
【0060】
例えば、前述のようにヒータ34のON時間を増減する代わりに当該ヒータ34の電圧値、電流値、消費電力量のいずれか少なくとも一つを増減してもよいし、また、ベース冷却管24のバルブのON時間を増減する代わりに、ベース冷却管24(冷却手段)を流れる冷却媒体の流量または温度を制御してもよい。
【0061】
第2の温度センサ35の設置場所は、前例(ステータコラム9の上部付近)に限定されることはなく、必要に応じて適宜変更してよい。また、前述の目標値(回転体2の設定温度)は、ポンプコントローラ26のROM、RAM等の記憶手段に格納し、ポンプコントローラ26におけるCPUの処理に応じて適宜その記憶手段から読み出されるように構成してもよい。さらに、第2の温度センサ35から出力された測定値(回転体Rの現在の温度)は、ポンプコントローラ26の入出力(I/O)インターフェースを介して当該ポンプコントローラ26に入力されるように構成してもよい。
【0062】
取得手段32の具体的な構成として、図1の真空ポンプP1では、ポンプコントローラ26が取得手段として機能するように構成している。かかる機能を実現するために、ポンプコントローラ26は、制御手段31による温度調整部品30の制御状態、すなわちヒータ34の制御状態として、当該ヒータ34のON時間あるいは電流値又は消費電力量、そして、ベース冷却管24の制御状態として、ベース冷却管24のバルブのON時間あるいはベース冷却管24を流れる冷却媒体の流量または温度を時系列的に取得する。このような取得の処理はプログラムとしてポンプコントローラ26のCPUで実行することができる。
【0063】
判定手段33の具体的な構成として、図1の真空ポンプP1では、ポンプコントローラ26が判定手段33として機能するように構成している。かかる機能を実現するために、ポンプコントローラ26は、前述の取得手段(ポンプコントローラ26)で取得した制御状態を時系列的に記憶し、記憶した制御状態の時系列的変化を監視することでポンプ内生成物の堆積量を推定しポンプメンテナンス時期を判定する。この推定や判定の処理もまたプログラムとしてポンプコントローラ26のCPUで実行することができる。
【0064】
《ポンプ内生成物の堆積量の推定について》
真空ポンプP1の流路7、例えば、ネジ溝排気流路7Bに生成物(ポンプ内生成物)が堆積し、その堆積量が増えると、ポンプ内生成物によってネジ溝排気流路7Bの流路断面が狭まる。このため、ポンプ内生成物が堆積していない状態と比べて、回転体2の回転抵抗が増え、駆動モータ15の負荷が大となり、駆動モータ15の発熱量が増え、回転体2の温度が比較的高くなる。このことから、ヒータ34のON時間は減る(例えば、図5中の符号OT1からOT2の変化を参照)、または、ヒータ34の電流値または消費電力は減る。一方、ベース冷却管24のバルブのON時間は増える、または、ベース冷却管24を流れる冷却媒体の流量は増える、若しくは、ベース冷却管24を流れる冷却媒体の温度は上昇する。
【0065】
要するに、制御サイクルにおけるヒータ34のON時間とポンプ内生成物の堆積量との両者は、所定の密接な相関関係を有している(例えば、図6のグラフGを参照)。これと同様に、ヒータ34の電流値または消費電力とポンプ内生成物の堆積量との両者、および、ベース冷却管24のバルブのON時間とポンプ内生成物の堆積量との両者、並びに、ベース冷却管24を流れる冷却媒体の流量またはその温度とポンプ内生成物の堆積量との両者も、所定の密接な相関関係を有している。図6のグラフGを参照すると、ヒータ34のON時間がOT1からOT2のように減る方向に変化したとき、ポンプ内生成物の堆積量はA1からA2のように増加していることが分かる。なお、図6のグラフGは、線形の例であるが、下に凸の曲線(反比例など)や上に凸の曲線となる可能性もある。
【0066】
したがって、温度調整部品30の制御状態の時系列的な変化として、ヒータ34のON時間の時系列的な変化を監視する、または、ベース冷却管24のバルブのON時間の時系列的な変化を監視する、あるいは、ヒータ34の電流値または消費電力の時系列的な変化を監視することで、ポンプ内生成物の堆積量を推定することができる。このことは、温度調整部品30としてヒータ34以外の加熱手段やベース冷却管24以外の冷却手段を採用した場合も同様である。
【0067】
以上例示した監視対象は、ヒータ34のON時間、ベース冷却管24のバルブのON時間、ヒータ34の電流値または消費電力の時系列的な変化であり、これらの監視対象のうちいずれか1つの監視対象から個別にポンプ内生成物の堆積量を推定(独立推定方式)してもよいし、2つ以上の監視対象から総合的に判断してポンプ内生成物の堆積量を推定すること(総合推定方式)も可能である。総合的推定方式の具体例は、次の通りである。
【0068】
《総合的推定方式の具体例》
この具体例の説明では、温度調整部品3の制御状態の時系列的変化の一事例として、ヒータ34のON時間は減り(第1の監視情報)、ヒータ34の電流値または消費電力は減っているが(第2の監視情報)、ベース冷却管24のバルブのON時間は変化していない(第3の監視情報)という監視情報が得られているものとする。
【0069】
前記事例では、第3の監視対象だけではネジ溝排気流路7Bにポンプ内生成物が堆積していると判定し難い。しかし、ネジ溝排気流路7Bにポンプ内生成物が堆積していると判定するのに必要な情報として、第1の監視情報と第2の監視情報が得られているから、トータル的に推定の判定条件を満たしているものとし、第1の監視情報と第2の監視情報とに基づいてポンプ内生成物の堆積量を推定する。この際、第1の監視情報から推定されるポンプ内生成物の堆積量と、第2の監視情報から推定されるポンプ内生成物の堆積量との平均値をポンプ内生成物の堆積量として採用してもよい。
【0070】
《ポンプメンテナンス時期の判定について》
ポンプコントローラ26では、例えば、ポンプ内生成物の堆積量が所定の閾値(例えば図6中の符号OTThを参照)を超えたと推定した時点で、ポンプメンテナンス時期の到来とみなして警報を鳴らす、あるいはポンプメンテナンス時期の必要性あるいは不要性を図示しない表示装置で表示してもよい。その際、かかる閾値を段階的に複数設定し、段階ごとに、所定の閾値を超えたと推定した時点で所定の表示をする構成、例えば、第1段階ではポンプメンテナンスの必要性はない旨を表示し、第2段階では近々ポンプメンテナンスを行う必要性がある旨を表示し、第3段階では至急ポンプメンテナンスを行う必要性がある旨を表示するなど、ポンプメンテナンスの必要性のレベルを段階的に引き上げもよい。
【0071】
図1の真空ポンプP1では、先に説明したポンプ内生成物を推定する若しくはポンプメンテナンス時期を判定する際の条件として、所定の種類と流量のガスを真空ポンプ内に流す構成、または、所定の種類と流量のパージガス(例えばNガス)を真空ポンプ内に流す構成、あるいは、回転体2が所定の回転速度で回転していることを条件とする構成を採用することで、より一層的確にメンテナンス時期を判定できるようにしている。
【0072】
《本発明の第2の実施形態》
図2は、本発明を適用した真空ポンプ(その2)の断面図である。
【0073】
図2の真空ポンプP2の基本的な構成や、図2の真空ポンプP2を制御するポンプコントローラとして図3のポンプコントローラ26が使用されることは、図1の真空ポンプP1と同様であるため、同一の部材には同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0074】
図2の真空ポンプP2では、ステータコラム9に取付けられている各種電装部品の発熱によって温度上昇したステータコラム9の熱がノイズ(制御における外乱)としてポンプベース1B全域に亘って移行することを低減するために、ポンプベース1Bに第1の断熱手段として断熱スペーサ10を組み込んでいる。
【0075】
したがって、ステータコラム9とポンプベース1Bは断熱スペーサ10で相互に断熱された状態になっている。そして、断熱されたステータコラム9を冷却するために、図2の真空ポンプP1では、冷却管11(以下「ステータコラム冷却管11」という)をステータコラム9に取付けている。一方、断熱されたポンプベース1Bは前述のベース冷却管24によって冷却される。
【0076】
図2の真空ポンプP2によると、前述の通り、断熱スペーサ10によってポンプベース1Bはステータコラム9から断熱されているから、温度センサ25は、ステータコラム9からの熱の影響を受けず、ポンプベース1Bの温度を正確に検出することができる。
【0077】
《本発明の第3の実施形態》
図4は、本発明を適用した真空ポンプ(その3)の断面図、図5は、図4の真空ポンプにおける昇温リングの拡大図である。
【0078】
図4の真空ポンプP3の基本的な構成や、図4の真空ポンプP3を制御するポンプコントローラとして図3のポンプコントローラ26が使用されることは、図1の真空ポンプP1と同様であるため、同一の部材には同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0079】
図4の真空ポンプP3では、ネジ溝排気部ステータ21を加熱する手段としてネジ溝排気部ステータ21に昇温リング40を設置し、第2の断熱手段41によってネジ溝排気部ステータ21および昇温リング40をポンプベース1Bから断熱することで、ネジ溝排気部ステータ21や昇温リング40の熱がノイズとしてポンプベース1Bに移行することを低減している。
【0080】
図5を参照すると、昇温リング40は、ネジ溝排気部ステータ21の外周を囲むリング部材42と、リング部材42に埋設されたヒータ34(温度調整部品30)と、を備えており、リング部材42には、ネジ溝排気部ステータ21に当接する第1の当接部43と、ポンプベース1Bに当接する第2の当接部44とを設けている。
【0081】
第1の当接部43は、ヒータ34の熱をネジ溝排気部ステータ21に伝達する伝熱経路として機能させるため、第2の当接部44よりも比較的広い面積でネジ溝排気部ステータ21に接触するように構成してある。また、この第1の当接部43は、ネジ溝排気部ステータ21をポンプ軸心方向およびポンプ径方向に位置決めする手段としても機能する。
【0082】
第2の当接部44は、ヒータ34の熱がポンプベース1B側に伝わり難くなるようにするため、第1の当接部43付近に比べて薄肉の形状とすることで、第1の当接部43よりも小面積でポンプベース1Bに接触するように構成してある。
【0083】
ネジ溝排気部ステータ21とポンプベース1Bとの間には第1の断熱空隙45が設けられ、また、昇温リング40とポンプベース1Bとの間には、断熱材としても機能するOリング等のシール部材46と、第2の断熱空隙47とが設けられており、そのような第1および第2の断熱空隙ならびにシール部材46が第2の断熱手段41として機能することにより、ネジ溝排気部ステータ21および昇温リング40はポンプベース1Bから断熱された状態になっている。
【0084】
以上説明した図1図2図4の真空ポンプP1、P2、P3では、その具体的な構成として、ベース冷却管24やヒータ34などの温度調整部品30の制御状態を時系列的に取得し、取得した制御状態の時系列的変化を監視することでポンプ内生成物の堆積量を推定しポンプメンテナンス時期を判定するという構成を採用した。このため、ポンプベース1Bの温度変化を基にポンプメンテナンス時期を判定する従来の手法に比べ、ポンプ内生成物の堆積量を正確に推定したり、ポンプメンテナンスの必要性を正確に判定したりすることが可能である。
【0085】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 外装ケース
1A ポンプケース
1B ポンプベース
2 回転体
3 支持手段
4 駆動手段
5 吸気口
6 排気口
7 ガスの流路
7A ブレード間排気流路
7B ネジ溝排気流路
7C ポンプ内排気口側流路
8 排気ポート
9 ステータコラム
10 断熱スペーサ(第1の断熱手段)
11 ステータコラム冷却管(冷却管)
12 回転軸
13 ラジアル磁気軸受
14 アキシャル磁気軸受
15 駆動モータ
16 翼排気段
16-1 最上段の翼排気段
16-n 最下段の翼排気段
17 ネジ溝ポンプ段
18 回転翼
19 固定翼
20 固定翼スペーサ
20E 最下段の固定翼スペーサ
21 ネジ溝排気部ステータ
22 ネジ溝
24 ベース冷却管(冷却手段/温度調整部品)
25 温度センサ
26 ポンプコントローラ
30 温度調整部品
31 制御手段
32 取得手段
33 判定手段
34 ヒータ(温度調整部品)
35 第2の温度センサ
40 昇温リング
41 第2の断熱手段
42 リング部材
43 第1の当接部
44 第2の当接部
45 第1の断熱空間(第2の断熱手段)
46 シール部材(第2の断熱手段)
47 第2の断熱空間(第2の断熱手段)
GE 最終隙間
P1、P2、P3 真空ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6