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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/14 20160101AFI20221026BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20221026BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20221026BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20221026BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20221026BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20221026BHJP
   B60L 7/18 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B60W20/14
B60K6/485 ZHV
B60K6/547
B60W10/08 900
B60L50/16
B60L3/00 S
B60L7/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018137248
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020011699
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠史
(72)【発明者】
【氏名】福田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】北田 勇介
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-244568(JP,A)
【文献】特開2009-196457(JP,A)
【文献】特開2016-164026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/14
B60K 6/485
B60K 6/547
B60W 10/08
B60L 50/16
B60L 3/00
B60L 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン出力軸(13)の回転により駆動され、回転エネルギにより発電する発電機(22)と、前記発電機により発電された電力を蓄える蓄電池(21)と、前記蓄電池に蓄えられた電力により前記エンジン出力軸に回転トルクを付与するモータ(25)と、を備えた車両(100)に適用され、
前記車両の減速中においてドライバから前記車両の減速度合が現在の減速度合よりも小さくなる減速要求を取得する減速要求取得部(S10)と、
前記減速要求を取得した場合に、前記エンジン出力軸の回転方向とは逆向きで作用し、かつ、前記発電機が発電することにより発生する回収トルク(Te)を含むネガティブトルク(Tn)を前記発電機の回収トルクに基づいて算出するトルク算出部(S16)と、
前記減速要求を取得した場合に、前記蓄電池に蓄えられた蓄電量(Qe)を取得する蓄電量取得部(S20)と、
前記減速要求に対して前記ネガティブトルクに基づく前記車両の減速度合(An)が大きいかを判定する判定部(S22)と、
前記判定部が大きいと判定した場合に、前記蓄電量に応じて、前記モータに前記回転トルクを付与させる制御部(S32)と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電量が所定の下限値よりも大きいことを条件に、前記モータに前記回転トルクを付与させる請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記車両の速度(Vm)を取得する車速取得部(S28)を備え、
前記制御部は、前記車両の速度が所定の基準速度よりも遅い場合に、前記モータに前記回転トルクを付与させる請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
エンジンの回転速度(Ne)を取得する回転速度取得部(S40)を備え、
前記制御部は、前記エンジンの回転速度が所定の基準回転速度よりも大きい場合に、前記モータに前記回転トルクを付与させる請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記車両は、前記エンジン出力軸の回転により駆動され、圧縮機(30)と冷媒経路内に設けられた蓄冷器(36)とを含む冷凍サイクル(39)を備え、
前記圧縮機は、前記回転エネルギを熱エネルギとして前記蓄冷器に回収するものであり、
前記トルク算出部は、前記発電機の回収トルクと、前記圧縮機が前記回転エネルギを回収することにより発生する前記圧縮機の回収トルク(Tc)と、を含む前記ネガティブトルクを前記発電機の回収トルク及び前記圧縮機の回収トルクに基づいて算出する請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにより駆動する補機としては、冷凍サイクル中の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、及び発電機が挙げられる。特許文献1には、ドライバの減速要求により車両が減速を開始すると、燃料噴射がカットされた燃料カット状態で両補機(圧縮機及び発電機)を駆動させて、エンジンの回転エネルギを蓄冷器及び蓄電器に回収させるシステムが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、回転エネルギを回収する際に、蓄冷要求量と蓄電要求量とのバランスに基づき、減速時における両補機の回収トルク分配率を設定する。そして、圧縮機の回収トルクの応答遅れにより、圧縮機の実回収トルクが回収トルク分配率に応じた圧縮機の目標回収トルクに上昇するまでの応答待ち期間では、発電機の実回収トルクを駆動トルク分配率に応じた発電機の目標回収トルクよりも上昇させる。これによれば、応答待ち期間において、蓄冷器及び蓄電器に回収される回転エネルギの量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5387500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮機及び発電機の回収トルクが大きいほど、蓄冷器及び蓄電器に回収される回転エネルギの量を増加させることができる。エンジンの回転エネルギは、圧縮機及び発電機の回収トルクや、エンジンの吸気経路のポンピングロスにより発生する損失トルクにより減少する一方、ギア等を介してエンジンに接続されたモータの回転トルクにより増加する。そのため、圧縮機及び発電機の回収トルクが大きいと、エンジンの回転エネルギの減少量が増加し、それにより車両の減速度合が大きくなる。そして、この車両の減速度合が過剰に大きいと、ドライバが減速度合をゆるめるべく、アクセルペダルを踏みこむ。この結果、車両の減速時に燃料カット状態を継続することができなくなり、車両の燃費が悪化する問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両の減速時において、車両の燃費の悪化を抑制できる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エンジン出力軸の回転により駆動され、回転エネルギにより発電する発電機と、前記発電機により発電された電力を蓄える蓄電池と、前記蓄電池に蓄えられた電力により前記エンジン出力軸に回転トルクを付与するモータと、を備えた車両に適用され、前記車両の減速中においてドライバから前記車両の減速度合が現在の減速度合よりも小さくなる減速要求を取得する減速要求取得部と、前記減速要求を取得した場合に、前記エンジン出力軸の回転方向とは逆向きで作用し、かつ、前記発電機が発電することにより発生する回収トルクを含むネガティブトルクを前記発電機の回収トルクに基づいて算出するトルク算出部と、前記減速要求を取得した場合に、前記蓄電池に蓄えられた蓄電量を取得する蓄電量取得部と、前記減速要求に対して前記ネガティブトルクに基づく前記車両の減速度合が大きいかを判定する判定部と、前記判定部が大きいと判定した場合に、前記蓄電量に応じて、前記モータに前記回転トルクを付与させる制御部と、を備える。
【0008】
車両の減速時には、発電機の発電によりエンジンの回転エネルギが回収され、それに応じた減速度合で車両が減速する。この車両の減速度合がドライバの減速要求に対して大きいと、ドライバが減速度合をゆるめるべく、アクセルペダルを踏みこむ。この結果、車両の燃費が悪化する。特に、車両の減速度合が小さくなる場合には、例えば発電機の応答遅れ等により、ドライバの減速要求に対して車両の減速度合が大きくなりやすく、車両の燃費が悪化しやすい。
【0009】
本発明の制御装置では、車両の減速度合が現在の減速度合よりも小さくなる減速要求を取得した場合において、この減速要求に対して車両の減速度合が大きいと判定された場合に、蓄電量に応じて、モータに回転トルクを付与させる。これにより、ドライバの減速要求に対するネガティブトルクの過剰分をモータからの回転トルクにより補うことができ、車両の減速度合がドライバの減速要求に対して大きくなることを抑制することができる。この結果、車両の減速時にドライバがアクセルペダルを踏みこむことが抑制され、車両の燃費の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エンジン制御システムの概略を示す構成図。
図2】第1実施形態の回収制御処理を示すフローチャート。
図3】要求減速度合とブレーキストローク量との関係を示す図。
図4】車両の減速時におけるネガティブトルクの推移を示す図。
図5】ネガティブトルクと要求減速トルクとの関係を示す図。
図6】第2実施形態の回収制御処理を示すフローチャート。
図7】第3実施形態の回収制御処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の制御装置が適用される車両100のエンジン制御システムについて、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、車両100は、内燃機関としてのエンジン10と、制御装置としてのECU40とを備えている。
【0012】
エンジン10は、車両100に搭載される筒内噴射式の4サイクルガソリンエンジンである。具体的には、エンジン10は、4つの気筒を備える4気筒エンジンである。車両100に搭載されたエンジン10の各気筒には、エンジン10の燃焼室に燃料を供給するための燃料噴射弁11が備えられている。
【0013】
燃料の燃焼によって発生するエネルギは、エンジン10のクランク軸13の回転動力として取り出される。この回転動力は、変速装置14を介して車両100の図示しない駆動輪へと伝達される。なお、本実施形態において、クランク軸13が「エンジン出力軸」に相当する。
【0014】
クランク軸13には、スタータ20が接続されている。スタータ20は、図示しないイグニッションスイッチのオンによりバッテリ21から電力供給されて始動し、エンジン10を始動させるべくクランク軸13に初期回転を付与する。
【0015】
クランク軸13には、ギア機構17を介してモータ25に接続されている。モータ25は、力行駆動の機能を有し、具体的には、MG(Motor Generator)である。モータ25は、バッテリ21から電力供給されてクランク軸13に推進力である回転トルクTmを付与するものである。
【0016】
オルタネータ22は、クランク軸13の回転エネルギにより駆動して発電する発電機である。つまり、オルタネータ22は、エンジン10の回転エネルギを電気エネルギとして回収する回収装置である。オルタネータ22の駆動軸23に機械的に連結されたプーリ24は、ベルト15及びクランクプーリ16を介してクランク軸13と機械的に連結されている。オルタネータ22は、オルタネータ22のロータコイルに流す励磁電流を調節することで、発電量を調節可能である。バッテリ21は、オルタネータ22により発電された電力を蓄える蓄電池である。オルタネータ22とバッテリ21とによって、蓄電システム29が構成されている。ECU40は、バッテリ21からバッテリ21の蓄電量Qeを取得し、この蓄電量Qeが適正範囲となるように、オルタネータ22による発電量を制御する。
【0017】
車両100には、車室内を冷却する冷却システムが搭載されている。この冷却システムは、冷凍サイクル39に冷媒を循環させるべく冷媒を吸入・吐出する圧縮機30や、冷媒経路31a内に設けられたコンデンサ31、レシーバ32、膨張弁33、及び蒸発器34等を備えて構成されている。
【0018】
圧縮機30は、クランク軸13の回転エネルギにより駆動され、圧縮機30に備えられた電磁駆動式のコントロールバルブ(CV)30aの通電操作によって、冷媒の吐出容量を連続的に可変設定可能な可変容量型圧縮機である。圧縮機30の駆動軸37に機械的に連結されたプーリ38は、ベルト15及びクランクプーリ16を介してクランク軸13と機械的に連結されている。このクランク軸13の回転動力が圧縮機30に伝達される状況下において、CV30aへの通電操作により上記吐出容量が調節される。なお、圧縮機30では、上記吐出容量が0より大きくなる状態を圧縮機30が駆動される状態とし、上記吐出容量が0となる状態を圧縮機30が停止される状態とする。
【0019】
コンデンサ31は、DCモータ等によって回転駆動される図示しないファンから送風される空気(外気)と、圧縮機30から吐出供給される冷媒との熱交換が行われる部材である。レシーバ32は、コンデンサ31より流入した冷媒を気液分離して且つ分離された液冷媒を一時的に貯蔵し、液冷媒のみを下流側に供給するために設けられるものである。レシーバ32に貯蔵された液冷媒は、膨張弁33によって急激に膨張され霧状とされる。霧状とされた冷媒は、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器34に供給される。
【0020】
蒸発器34では、DCモータ等によって回転駆動されるファン(エバファン)35から送風された空気と、上記霧状とされた冷媒とが熱交換することで、冷媒の一部又は全部が気化する。これにより、エバファン35から送風された空気が冷却され、冷却された空気が車室内へと送風されることで車室内を冷房することが可能となる。なお、蒸発器34の出口直近には、冷媒温度を検出する冷媒温度センサ34aが設けられている。また、蒸発器34から流出した冷媒は、圧縮機30の吸入口に吸入される。
【0021】
本実施形態の冷凍サイクル39では、蒸発器34に蓄冷器36が取り付けられている。蓄冷器36は、冷媒の熱を蓄えるパラフィン等の蓄冷剤を封入して構成される。例えばアイドル運転時に所定の停止条件が成立するとエンジン10を自動停止させるいわゆるアイドル停止制御では、エンジン10の自動停止により圧縮機30も自動停止する。蓄冷器36が取り付けられていると、圧縮機30が停止された状況下、エバファン35から送風された空気と蓄冷器36とが熱交換することにより、上記送風された空気が冷却され、冷却された空気が車室へと送られることで車室内を冷房することが可能となる。蓄冷器36への蓄冷は、例えば所定の冷房要求量に対して圧縮機30を余剰運転させることで行われる。つまり、圧縮機30は、エンジン10の回転エネルギを熱エネルギとして回収する回収装置である。
【0022】
ECU40には、車両乗員により操作されるA/Cスイッチの操作信号であって、車室内を冷房すべく圧縮機30を駆動させる信号や、車両乗員により操作される目標温度設定スイッチの操作信号であって、車室内の目標温度を設定する信号、車室内温度を検出する車室内温度センサ及び冷媒温度センサ34a等の検出信号が入力される。ECU40は、これら入力に応じてROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、エバファン35や、CV30a等の各種機器を操作する。そして、これら各種機器を操作することで、圧縮機30の駆動制御や車室内の冷房制御等を行う。
【0023】
圧縮機30の駆動制御では、圧縮機30のCV30aに流す通電量を調整することで、蓄冷器36の蓄冷量Qcを調整可能である。ECU40は、冷房要求量に対して圧縮機30を余剰運転させた余剰運転量に基づいて蓄冷器36の蓄冷量Qcを算出する。ECU40は、この蓄冷量Qcが適正範囲となるように、CV30aの通電量を制御する。なお、本実施形態において、オルタネータ22及び圧縮機30が「回収装置」に相当し、バッテリ21及び蓄冷器36が「蓄積部」に相当し、蓄電量Qe及び蓄冷量Qcが「エネルギ蓄積量」に相当する。
【0024】
また、車両100には、油圧駆動式のブレーキアクチュエータ80を備えている。ブレーキアクチュエータ80は、ドライバによるブレーキ操作量に応じたブレーキトルクTbを発生させ、クランク軸13の回転を停止させる。
【0025】
ECU40は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。ECU40には、各種センサなどから各々検出信号が入力される。なお、図1では前述したセンサの他、エンジン回転速度Neを検出する回転速度センサ26、車速Vmを検出する車速センサ27を示している。ECU40は、上記入力に応じて、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁11による燃料噴射制御等、エンジン10の燃焼制御を実施する。
【0026】
さらに、ECU40は、車両100の減速時においてエンジン10の回転エネルギを回収する回収制御を実施する。すなわち、ECU40は、ドライバからの減速要求を取得した場合に、燃料噴射弁11からの燃料噴射をカットした状態で、車両100を減速走行させる処理を実施する。ECU40は、この減速走行時に、クランク軸13の回転駆動力によりオルタネータ22及び圧縮機30を駆動させて、ネガティブトルクTnを発生させる制御を実施する。これにより、エンジン10の回転エネルギは、熱エネルギに変換されて蓄冷器36に蓄冷されるとともに、電気エネルギに変換されてバッテリ21に蓄電されることとなる。
【0027】
ここで、ネガティブトルクTnとは、エンジン10のクランク軸13の回転方向とは逆向きで作用するトルクであり、発電トルクTe、駆動トルクTc、及び損失トルクTlを含む。発電トルクTeは、オルタネータ22を駆動させることで発生するトルクであり、駆動トルクTcは、圧縮機30を駆動させることで発生するトルクである。また、損失トルクTlは、エンジン10内での振動や摩擦等により発生するトルクであり、吸気管51内の圧力損失であるポンプロスを含む。なお、本実施形態において、発電トルクTe及び駆動トルクTcが「回収トルク」に相当する。
【0028】
ところで、発電トルクTe及び駆動トルクTcが大きいほど、バッテリ21及び蓄冷器36に回収される回転エネルギの量を増加させることができる。一方、発電トルクTe及び駆動トルクTcが大きいと、これらを含むネガティブトルクTnが大きくなり、エンジン10の回転エネルギの減少量が増加する。特に、ドライバから車両100の減速度合が現在の減速度合よりも小さくなる減速要求を取得した場合には、オルタネータ22や圧縮機30の応答遅れにより、ドライバの減速要求に対して車両100の減速度合が大きくなりやすい。そして、この車両100の減速度合が過剰に大きいと、ドライバが減速度合をゆるめるべく、アクセルペダルを踏みこむ。この結果、車両100の減速時に燃料カット状態F/Cを継続することができなくなり、車両100の燃費が悪化する問題が生じる。
【0029】
本実施形態のECU40は、上記問題を解決するために回収制御処理を実施する。回収制御処理では、ドライバから車両100の減速度合が現在の減速度合よりも小さくなる減速要求を取得した場合に、この減速要求に対してネガティブトルクTnに基づく車両100の減速度合が大きいかを判定する。そして、ドライバの減速要求に対してネガティブトルクTnに基づく車両100の減速度合が大きいと判定された場合に、バッテリ21の蓄電量Qeに応じて、モータ25に回転トルクTmを付与させる。これにより、ドライバの減速要求に対するネガティブトルクTnの過剰分をモータ25からの回転トルクTmにより補うことができ、車両100の減速度合がドライバの減速要求に対して大きくなることを抑制することができる。この結果、車両100の減速時にドライバがアクセルペダルを踏みこむことが抑制され、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0030】
図2に本実施形態の回収制御処理のフローチャートを示す。この制御処理は、例えば車両100の減速中、ECU40により所定周期で繰り返し実行される。
【0031】
回収制御処理を開始すると、まずステップS10において、特定減速要求Dsを取得したかを判定する。ここで、特定減速要求Dsとは、例えばドライバによりブレーキ操作量であるブレーキストローク量Sbが減少されたなど、車両100の減速度合が現在の減速度合よりも小さくなる減速要求である。具体的には例えば、所定の基準減速度合Akよりも大きい急減速中の減速度合から、基準減速度合Akよりも小さい緩減速中の減速度合に変更する減速要求が特定減速要求Dsに相当する。なお、本実施形態において、ステップS10の処理が「減速要求取得部」に相当する。
【0032】
ステップS10で否定判定すると、回収制御処理を終了する。一方、ステップS10で肯定判定すると、ステップS11において、要求減速度合Axを算出する。要求減速度合Axは、ステップS10で取得した特定減速要求Dsにおいてドライバが要求する減速度合であり、ブレーキストローク量Sb、ドライバによるアクセル操作量であるアクセルストローク量Sa、及びエンジン回転速度Neから算出することができる。例えば、図3に示すように、要求減速度合Axは、ブレーキストローク量Sbが多いほど大きくなる関係を有する。また、要求減速度合Axは、エンジン回転速度Neが大きくなるほど、要求減速度合Axが増加する側にシフトし、エンジン回転速度Neが小さくなるほど、要求減速度合Axが減少する側にシフトする。
【0033】
ステップS12において、現在の減速度合における発電トルクTe及び駆動トルクTcを算出する。具体的には、ステップS10で特定減速要求Dsを取得した時点における発電トルクTe及び駆動トルクTcを算出する。発電トルクTeは、エンジン回転速度Ne及びオルタネータ22のロータコイルに流す励磁電流量から算出することができる。また、駆動トルクTcは、エンジン回転速度Ne及び圧縮機30のCV30aへの通電量から算出することができる。
【0034】
ステップS14において、応答処理を実施する。応答処理では、ステップS10で取得した特定減速要求Dsに基づいて、ステップS12で算出された発電トルクTeを減少させる。応答処理では、急激な発電量の減少によるオルタネータ22の故障や、エンジン10のクランク軸13上のトルクショックを抑制するために、発電量を緩やかに減少させる。この結果、発電トルクTeは所定の時定数τeで減少する。応答処理では、この時定数τeに基づく応答遅れを考慮した発電トルクTeが算出される。
【0035】
また、応答処理では、ステップS10で取得した特定減速要求Dsに基づいて、ステップS12で算出された駆動トルクTcを減少させる。応答処理では、急激な駆動量の減少による圧縮機30故障や、エンジン10のクランク軸13上のトルクショックを抑制するために、駆動量を緩やかに減少させる。この結果、駆動トルクTcは所定の時定数τcで減少する。応答処理では、この時定数τeに基づく応答遅れを考慮した駆動トルクTcが算出される。
【0036】
ステップS16において、ステップS14で算出された駆動トルクTc及び駆動トルクTcに基づいてネガティブトルクTnを算出する。ネガティブトルクTnは、駆動トルクTc及び駆動トルクTcの他、損失トルクTlを含む。損失トルクTlはポンプロスを含んでおり、このポンプロスは、エンジン回転速度Ne等から算出することができる。なお、本実施形態において、ステップS16の処理が「トルク算出部」に相当する。
【0037】
ステップS18において、ステップS16で算出されたネガティブトルクTnに基づく車両100の減速度合Anを算出する。続くステップS20において、バッテリ21から蓄電量Qeを取得し、蓄冷器36から蓄冷量Qcを取得する。なお、本実施形態において、ステップS20の処理が「蓄電量取得部」に相当する。
【0038】
ステップS22において、ステップS18で算出された減速度合Anが、ステップS11で算出された要求減速度合Axよりも大きいかを判定する。なお、本実施形態において、ステップS22の処理が「判定部」に相当する。
【0039】
ステップS22で否定判定すると、回収制御処理を終了する。一方、ステップS22で肯定判定すると、ステップS20で取得された蓄電量Qeに応じて、モータ25に回転トルクTmを付与させる付与処理(ステップS24~S34)を実施する。付与処理では、まずステップS24において、ネガティブトルクTnの超過量Tdを算出する。具体的には、要求減速度合Axを満たす要求減速トルクTxを算出し、ネガティブトルクTnから要求減速トルクTxを差し引いたものが超過量Tdとなる。
【0040】
次に、ステップS20で取得された蓄電量Qeと蓄電下限値Qedとを比較し、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きいことを条件に、モータ25に回転トルクTmを付与させる。具体的には、ステップS26において、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きいかを判定する。ここで、蓄電下限値Qedは、バッテリ21の過放電保護を図るために定められた蓄電量Qeの下限値であり、例えば一定値である。バッテリ21は、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きい場合に放電し、小さい場合に放電を停止する。
【0041】
ステップS26で否定判定すると、バッテリ21が放電不可能であると判定する。この場合、バッテリ21に蓄えられた電力により回転トルクTmを付与できないため、回収制御処理を終了する。一方、ステップS26で肯定判定すると、バッテリ21が放電可能であると判定する。この場合、バッテリ21に蓄えられた電力により回転トルクTmを付与できるため、ステップS28に進む。
【0042】
ステップS28において、車速センサ27を用いて現在の車速Vm、つまり、ステップS10で特定減速要求Dsを取得した時点における車速Vmを取得する。続くステップS30において、ステップS28で取得された車速Vmが所定の基準速度Vkよりも遅いかを判定する。ステップS30で否定判定すると、つまり車速Vmが基準速度Vkよりも速い高速域に属する場合、回収制御処理を終了する。なお、本実施形態において、ステップS28の処理が「車速取得部」に相当する。
【0043】
一方、ステップS30で肯定判定すると、つまり車速Vmが基準速度Vkよりも遅い低速域に属する場合、ステップS32において、ステップS24で算出した超過量Tdに対応する回転トルクTmをモータ25に付与させ、回収制御処理を終了する。なお、本実施形態において、ステップS32の処理が「制御部」に相当する。
【0044】
続いて、図4図5に回収制御処理の一例を示す。ここで、図4は、車両100の減速時におけるネガティブトルクTnの推移を示す。図4において、(a)はブレーキストローク量Sbの推移を示し、(b)は車速Vmの推移を示し、(c)は燃料カット状態F/Cの推移を示す。また、(d)は要求減速トルクTxの推移を示し、(e)はネガティブトルクTnの推移を示し、(f)は回転トルクTmの推移を示す。なお、図4(c)において、実線は、本実施形態の回収制御処理における各値の推移を示し、破線は、従来技術における各値の推移を示す。
【0045】
また、図5は、ネガティブトルクTnと要求減速トルクTxとの関係を示し、(a)は、従来技術における上記関係を示し、(b)は、本実施形態の回収制御処理における上記関係を示す。なお、図4,5において、要求減速トルクTx,ネガティブトルクTnは、エンジン10のクランク軸13の回転方向とは逆向きで作用することから、負側に増大する量として記載されている。
【0046】
図4に示すように、時刻t1にドライバによりブレーキペダルが踏み込まれ、ブレーキストローク量Sbが第1ブレーキストローク量Sb1に上昇すると、車両100が減速を開始し、車速Vmが減速度合Asで低下する。このとき、燃料カット状態F/Cがオン状態に切り替わるとともに、要求減速トルクTxが、第1トルクT1に上昇する。なお、時刻t1の前後において、回転トルクTmはゼロに維持される。
【0047】
時刻t3に車速Vmが基準速度Vkよりも低下する。そして、その後の時刻t4にドライバによるブレーキペダルの踏み込みが緩和され、ブレーキストローク量Sbが、第1ブレーキストローク量Sb1よりも小さい第2ブレーキストローク量Sb2に減少すると、車両100の減速度合が、現在の減速度合Asよりも小さい要求減速度合Axへと移行する。このとき、要求減速トルクTxが第1トルクT1よりも減少して第2トルクT2に減少する。第2ブレーキストローク量Sb2は、例えばブレーキペダルを完全に踏み込んだ状態を100%とした場合に2%よりも小さい量である。なお、ドライバにより、ブレーキストローク量Sbが第1ブレーキストローク量Sb1から第2ブレーキストローク量Sb2に減少されることが、特定減速要求Dsに相当する。
【0048】
図4(e)に示すように、ネガティブトルクTnの変化は、上述した発電トルクTe及び駆動トルクTcの応答遅れにより、要求減速トルクTxの変化に対して遅延する。具体的には、ネガティブトルクTnは、時刻t1よりも後の時刻t2において第1トルクT1に上昇し、時刻t4よりも後の時刻t5において第2トルクT2に減少する。この結果、時刻t4から時刻t5までの期間Hにおいて、ネガティブトルクTnが要求減速トルクTxよりも大きくなる。
【0049】
車両100の減速時に、ネガティブトルクTnが要求減速トルクTxよりも大きくなると、ネガティブトルクTnに基づく減速度合Anがドライバの要求減速度合Axよりも大きくなる。図5(a)に示すように、従来技術では、減速度合Anが要求減速度合Axよりも大きくなると、ドライバは減速度合Anをゆるめるべく、アクセルペダルを踏みこむ。つまり、要求減速トルクTxに対するネガティブトルクTnの超過量Tdを、アクセルペダルを踏みこむことによるアクセルトルクTaにより補う。この結果、図4(c)に破線で示すように、車両100の減速時に燃料カット状態F/Cがオフ状態に切り替わり、燃料噴射が再開されることで、車両100の燃費が悪化する。つまり、燃料カット状態F/Cによる燃費低減効果が軽減されてしまう。
【0050】
図5(b)に示すように、本実施形態では、減速度合Anが要求減速度合Axよりも大きくなると、モータ25に回転トルクTmを付与させる。つまり、図5に矢印Yaで示すように、要求減速トルクTxに対するネガティブトルクTnの超過量Tdを、アクセルトルクTaではなく、モータ25からの回転トルクTmにより補う(図4(f)参照)。この結果、図4(c)に実線で示すように、車両100の減速時に燃料カット状態F/Cによる燃費低減効果が継続され、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0051】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0052】
・車両100の減速時には、オルタネータ22及び圧縮機30によりエンジン10の回転エネルギが回収され、それに応じた減速度合Anで車両100が減速する。この車両100の減速度合Anがドライバの要求減速度合Axに対して大きいと、ドライバは減速度合Anをゆるめるべく、アクセルペダルを踏みこむ。この結果、車両100の燃費が悪化する。特に、車両100の減速度合Anを現在の減速度合から減少させて要求減速度合Axとする場合には、オルタネータ22及び圧縮機30の応答遅れにより、車両100の減速度合Anが要求減速度合Axに対して大きくなりやすく、車両100の燃費が悪化しやすい。
【0053】
・本実施形態では、車両100の減速度合Anを要求減速度合Axに減少させる特定減速要求Dsを取得した場合において、要求減速度合Axよりも車両100の減速度合Anが大きいと判定された場合に、蓄電量Qeに応じて、モータ25に回転トルクTmを付与させる。これにより、ネガティブトルクTnの超過量Tdをモータ25からの回転トルクTmにより補うことで、車両100の減速度合Anが要求減速度合Axより大きくなることを抑制することができる。この結果、車両100の減速時にドライバがアクセルペダルを踏みこむことが抑制され、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0054】
・オルタネータ22では、急激な発電量の減少によるオルタネータ22の故障や、エンジン10のクランク軸13上のトルクショックを抑制するために、発電量の減少における時定数τeが予め決められている。そのため、発電トルクTeを減少させる場合に、この時定数τeよりも早く発電トルクTeを減少させることができない。また、圧縮機30では、急激な駆動量の減少による圧縮機30の故障や、エンジン10のクランク軸13上のトルクショックを抑制するために、駆動量の減少における時定数τcが予め決められている。そのため、駆動トルクTcを減少させる場合に、この時定数τcよりも早く駆動トルクTcを減少させることができない。
【0055】
・本実施形態では、ネガティブトルクTnを算出する際に、応答処理において、オルタネータ22及び圧縮機30の応答遅れに基づいて発電トルクTe及び駆動トルクTcを減少させ、ネガティブトルクTnを算出する。これにより、オルタネータ22及び圧縮機30の故障や、エンジン10のクランク軸13上のトルクショックを抑制しつつ、ネガティブトルクTnに基づく減速度合Anがドライバの要求減速度合Axよりも大きくなることを抑制することができる。この結果、車両100の燃費の悪化を好適に抑制することができる。
【0056】
・モータ25は、バッテリ21の電力によりエンジン10に回転トルクTmを付与しており、モータ25に回転トルクTmを付与させると、バッテリ21の蓄電量Qeが減少する。これにより、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも小さくなると、バッテリ21から放電することができない。本実施形態では、蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きいことを条件に、発電トルクTeを減少させる。これにより、車両100の減速時に、バッテリ21の動作を確保しながら、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0057】
・通常、車速Vmが遅いほど、エンジン10が有する回転エネルギが小さく、ネガティブトルクTnに基づく減速度合Anと要求減速度合Axとに差が生じた場合に、その影響が大きくなる。したがって、ドライバは、減速度合Anと要求減速度合Axとの差が僅かであっても、アクセルペダルを踏みこみ、車両100の燃費が悪化する。特に、図4の期間Hに示すように、車速Vmが基準速度Vkよりも遅い低速域に属する場合、減速度合Anが要求減速度合Axよりも大きいと、ドライバは意図に反して車両100が停止すると誤解し、アクセルペダルを踏みこみやすい。
【0058】
・本実施形態では、車速Vmが基準速度Vkよりも遅い場合に、モータ25に回転トルクTmを付与させるので、車速Vmが遅く、ネガティブトルクTnに基づく減速度合Anがドライバの要求減速度合Axよりも大きくなりやすい場合でも、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に第2実施形態に係る車両100について図6を用いて説明する。第2実施形態に係る車両100は、第1実施形態に係る車両100と比べて、回収制御処理が異なる。以下では、第2実施形態に係る回収制御処理について説明する。
【0060】
図6に本実施形態の回収制御処理のフローチャートを示す。図6に示すように、本実施形態の回収制御処理が、第1実施形態の回収制御処理と異なる点は、車速Vmの代わりにエンジン回転速度Neを取得し、取得したエンジン回転速度Neに基づいてモータ25に回転トルクTmを付与させるかを判定する点である。なお、図6において、先の図2で説明した内容と同一の内容については、説明を省略する。
【0061】
本実施形態の回収制御処理では、ステップS26で蓄電量Qeが蓄電下限値Qedよりも大きいと判定すると、ステップS40において、回転速度センサ26を用いてエンジン回転速度Neを取得する。続くステップS42において、ステップS40で取得されたエンジン回転速度Neが所定の基準回転速度Nkよりも大きいかを判定する。ステップS42で否定判定すると、回収制御処理を終了する。一方、ステップS42で肯定判定すると、ステップS32に進む。なお、本実施形態において、ステップS40の処理が「回転速度取得部」に相当する。
【0062】
・以上説明した本実施形態によれば、エンジン回転速度Neに基づいてモータ25に回転トルクTmを付与させるかを判定する。通常、エンジン回転速度Neが大きいほど、オルタネータ22及び圧縮機30の応答遅れにより、ネガティブトルクTnの変化が要求減速トルクTxの変化に対して遅延する遅延時間が長くなり、ネガティブトルクTnの超過量Tdが大きくなりやすい。したがって、ドライバは、減速度合Anと要求減速度合Axとの差に基づいて、アクセルペダルを踏みこみ、車両100の燃費が悪化しやすい。
【0063】
・本実施形態では、エンジン回転速度Neが基準回転速度Nkよりも大きい場合に、モータ25に回転トルクTmを付与させるので、ネガティブトルクTnの超過量Tdが大きくなりやすい場合でも、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に第3実施形態に係る車両100について図7を用いて説明する。第3実施形態に係る車両100は、第1実施形態に係る車両100と比べて、冷凍サイクル39を備えない点で異なる。以下では、第3実施形態に係る回収制御処理について説明する。
【0065】
図7に本実施形態の回収制御処理のフローチャートを示す。本実施形態の回収制御処理では、ステップS10で特定減速要求Dsを取得したと判定すると、ステップS50において、現在の減速度合における発電トルクTeを算出する。続くステップS14において、応答処理が実施され、オルタネータ22の応答性に基づいて、ステップS50で算出された発電トルクTeを減少させる。そして、続くステップS16において、ネガティブトルクTnが発電トルクTe及び損失トルクTlに基づいて算出される。また、ステップS18で車両100の減速度合Anが算出されると、ステップS52において、バッテリ21から蓄電量Qeを取得する。
【0066】
・以上説明した本実施形態によれば、発電トルクTeに基づく車両100の減速度合Anが要求減速度合Axよりも大きいと判定された場合に、蓄電量Qeに応じて、モータ25に回転トルクTmを付与させる。これにより、ネガティブトルクTnの超過量Tdをモータ25からの回転トルクTmにより補うことができる。この結果、車両100の減速時にドライバがアクセルペダルを踏みこむことが抑制され、車両100の燃費の悪化を抑制することができる。
【0067】
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、次のように実施されてもよい。
【0068】
・上記実施形態では、要求減速度合Axをブレーキストローク量Sbやエンジン回転速度Neから算出する例を示したが、これに限られない。例えば、ECU40にブレーキストローク量Sbやエンジン回転速度Neに対して要求減速度合Axが予め規定されたマップ情報が記憶されており、このマップ情報と、取得されたブレーキストローク量Sbやエンジン回転速度Neに基づいて要求減速度合Axが決定されてもよい。
【0069】
・上記実施形態では、現在の減速度合における発電トルクTe及び駆動トルクTcを算出し、これらに時定数τe,τcに基づく応答処理を実施することで、ネガティブトルクTnの算出に用いられる発電トルクTeや駆動トルクTcを算出する例を示したが、これに限られない。例えば、ECU40に現在の減速度合と要求減速度合Axとの差に対応して発電トルクTeを減少させる減少量が予め規定されたマップ情報が記憶されていてもよい。そして、このマップ情報と、現在の減速度合における発電トルクTeに基づいてネガティブトルクTnの算出に用いられる発電トルクTeが決定されてもよい。駆動トルクTcについても同様である。
【0070】
・第1,第2実施形態では、蓄冷器36を蒸発器34に設けているが、蓄冷器36の配置はこれに限られず、例えば、圧縮機30の冷媒吸入口と蒸発器34との間に蓄冷器36が接続されてもよければ、蒸発器34と蓄冷器36とが並列に接続されていてもよい。
【0071】
・第2実施形態では、回収制御処理において車速Vmの代わりにエンジン回転速度Neを取得する例を示したが、車速Vmとエンジン回転速度Neとの両方を取得してもよい。つまり、車速Vmとエンジン回転速度Neとの両方を取得し、取得した車速Vmとエンジン回転速度Neとに基づいてモータ25に回転トルクTmを付与させるかを判定してもよい。
【0072】
・第2実施形態では、回転速度センサ26を用いてエンジン回転速度Neを取得する例を示したが、これに限られない。たとえば、車速センサ27を用いて車速Vmを取得し、この車速Vmからエンジン回転速度Neを取得してもよい。また、車速Vmとともに変速装置14のギア比を取得し、車速Vmと変速装置14のギア比とからエンジン回転速度Neを取得してもよい。本実施形態において、車速Vm及び変速装置14のギア比が「相関値」に相当する。
【符号の説明】
【0073】
13…クランク軸、21…バッテリ、22…オルタネータ、25…モータ、100…車両、An…減速度合、Qe…蓄電量、Te…蓄電トルク、Tn…ネガティブトルク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7