(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20221026BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20221026BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
A61F13/511 100
B32B3/30
A61F13/511 300
A61F13/511 400
A61F13/512
(21)【出願番号】P 2018161083
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】中岡 健次
(72)【発明者】
【氏名】丸畠 和也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】池内 昌俊
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-000712(JP,A)
【文献】特開2009-118920(JP,A)
【文献】特開2009-101091(JP,A)
【文献】特表平08-511708(JP,A)
【文献】特開2013-194333(JP,A)
【文献】特開2007-111503(JP,A)
【文献】特開2018-051232(JP,A)
【文献】特開2005-296480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方部、股下部および後方部を長手方向に順に有する吸収性物品であって、
前記長手方向に延びる略シート状の吸収コアと、
前記吸収コアの着用者側の主面を覆うトップシートと、
前記吸収コアの他方の主面を覆うバックシートと、
を備え、
前記トップシートが、
不織布、または、複数の孔が分散して形成されたフィルムである第1シートと、
不織布、または、複数の孔が分散して形成されたフィルムであり、前記第1シートと前記吸収コアとの間に配置され、前記第1シートに接合される第2シートと、
を備え、
前記第2シートが、前記前方部から前記後方部に亘って前記長手方向に延びる帯状である2つの分割シートを有し、
前記2つの分割シートが、前記長手方向に垂直な幅方向に離れて配置され、前記吸収コアの両側部にそれぞれ対向し、
前記第1シートにおいて、前記第2シートと重なる積層領域と、前記第2シートと重ならない非積層領域とが設けられ、
前記積層領域および前記非積層領域が前記吸収コアと重なり、
前記積層領域が、前記吸収コアの前記両側部に対向するとともに、着用者の臀部に接触する一対の側部積層領域を含み、
前記非積層領域が、前記一対の側部積層領域の間に設けられるとともに、前記長手方向において前記前方部から前記後方部に亘る中間非積層領域を含み、
前記第1シートが、前記積層領域において着用者側に突出するとともに、前記長手方向および前
記幅方向に分散配置される複数の第1凸部を有し、
前記中間非積層領域に第1凸部が形成されず、
前記第2シートが、前記積層領域において着用者側または着用者とは反対側に突出する複数の第2凸部を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記第2シートが、伸張された状態で前記第1シートに溶着されており、
前記第1および第2シートにおいて、複数の溶着痕が前記長手方向および前記幅方向に分散配置され、
前記第2シートが収縮することにより、前記複数の第1凸部および前記複数の第2凸部が形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の吸収性物品であって、
前記第2シートにおいて、前記長手方向に沿う縁が前記第1シートにより覆われることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の吸収性物品であって、
前記非積層領域において、前記第1シートが単一のシートとして存在することを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項
4に記載の吸収性物品であって、
前記第1シートの目付が、前記第2シートよりも小さいことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布において、複数の凸部(および凹部)を形成することにより肌触りを向上する手法が提案されている。例えば、特許文献1では、トップシートにおいて、肌側に向かって突出する複数の凸部および凹部を設けた失禁パッドが開示されている。また、特許文献2では、使い捨ておむつのトップシートにおいて、2つのシート要素の両方を波型構造とする手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-42307号公報
【文献】特開2018-23760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1および2では、複数のシートが重ねられた積層シートにおいて、複数の凸部が設けられる。当該積層シートでは、複数のシートの重なりにより、積層方向における透液性または通気性が低くなる。したがって、高い透液性または通気性を有するとともに、肌触りが良好な積層シートが求められている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、高い透液性または通気性を有するとともに、肌触りが良好な積層シートを有する吸収性物品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、前方部、股下部および後方部を長手方向に順に有する吸収性物品であって、前記長手方向に延びる略シート状の吸収コアと、前記吸収コアの着用者側の主面を覆うトップシートと、前記吸収コアの他方の主面を覆うバックシートとを備え、前記トップシートが、不織布、または、複数の孔が分散して形成されたフィルムである第1シートと、不織布、または、複数の孔が分散して形成されたフィルムであり、前記第1シートと前記吸収コアとの間に配置され、前記第1シートに接合される第2シートとを備え、前記第2シートが、前記前方部から前記後方部に亘って前記長手方向に延びる帯状である2つの分割シートを有し、前記2つの分割シートが、前記長手方向に垂直な幅方向に離れて配置され、前記吸収コアの両側部にそれぞれ対向し、前記第1シートにおいて、前記第2シートと重なる積層領域と、前記第2シートと重ならない非積層領域とが設けられ、前記積層領域および前記非積層領域が前記吸収コアと重なり、前記積層領域が、前記吸収コアの前記両側部に対向するとともに、着用者の臀部に接触する一対の側部積層領域を含み、前記非積層領域が、前記一対の側部積層領域の間に設けられるとともに、前記長手方向において前記前方部から前記後方部に亘る中間非積層領域を含み、前記第1シートが、前記積層領域において着用者側に突出するとともに、前記長手方向および前記幅方向に分散配置される複数の第1凸部を有し、前記中間非積層領域に第1凸部が形成されず、前記第2シートが、前記積層領域において着用者側または着用者とは反対側に突出する複数の第2凸部を有する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吸収性物品であって、前記第2シートが、伸張された状態で前記第1シートに溶着されており、前記第1および第2シートにおいて、複数の溶着痕が前記長手方向および前記幅方向に分散配置され、前記第2シートが収縮することにより、前記複数の第1凸部および前記複数の第2凸部が形成されている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の吸収性物品であって、前記第2シートにおいて、前記長手方向に沿う縁が前記第1シートにより覆われる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の吸収性物品であって、前記非積層領域において、前記第1シートが単一のシートとして存在する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の吸収性物品であって、前記第1シートの目付が、前記第2シートよりも小さい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い透液性または通気性を有するとともに、肌触りが良好な積層シートを有する吸収性物品を提供することができる。
【0016】
また、吸収性物品の着用感を向上するとともに、着用者からの排泄物を受ける領域において水分を迅速に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図8】エンボスロールの外周面の一部を示す図である。
【
図9】積層連続シートの製造の流れを示す図である。
【
図12】積層連続シートの製造装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る使い捨て吸収性物品1を広げた状態にて示す平面図である。
図2は、使い捨て吸収性物品1を
図1中のII-IIの位置で長手方向(すなわち、
図1中における上下方向)に垂直な面で切断した断面図である。以下の説明では、使い捨て吸収性物品1を、単に「吸収性物品1」と呼ぶ。吸収性物品1は、着用者の腹側に接触する部位と背側に接触する部位とを、左右両側の接続部4により腰周りで止着して着用するテープタイプの使い捨ておむつである。吸収性物品1は、着用者からの排泄物を受ける。
図1では、着用時に着用者に接触する側(すなわち、着用者側)の面を手前にして吸収性物品1を描いている。
【0019】
吸収性物品1は、略シート状の本体部2と、一対のサイドシート3とを備える。一対のサイドシート3は、本体部2の両側部(すなわち、長手方向に垂直な幅方向の両側の側部)上において本体部2の長手方向に延びる。
図1に示す例では、一対のサイドシート3は、本体部2の長手方向のおよそ全長に亘って配置される。
【0020】
本体部2の
図1中における上側の部位201および下側の部位203はそれぞれ、着用者の腹側および背側の肌に接触する。以下の説明では、当該部位201,203をそれぞれ、「前方部201」および「後方部203」と呼ぶ。また、本体部2のうち、前方部201と後方部203との間において前方部201および後方部203から連続する部位202を「股下部202」と呼ぶ。股下部202は、着用者の股間部に対向する。吸収性物品1では、本体部2が、前方部201、股下部202および後方部203を長手方向に順に有する。
図1に示す例では、前方部201および後方部203の幅方向の幅(以下、単に「幅」ともいう。)は、股下部202の幅よりも大きい。換言すれば、吸収性物品1は、平面視において、いわゆる砂時計型である。
【0021】
吸収性物品1は、本体部2の後方部203の両側部に取り付けられた一対の接続部4をさらに備える。吸収性物品1を着用者に装着する際には、本体部2の前方部201および後方部203をそれぞれ着用者の腹側および背側に接触させた状態で、
図3に示すように、一対の接続部4が、前方部201の外面(すなわち、着用者に接触する面とは反対側の面)の被止着部26に止着される。これにより、後方部203の両側部が前方部201の両側部に接続される。
【0022】
被止着部26は、後述するバックシート23の外面(すなわち、着用者とは反対側の面)上にホットメルト接着剤等により接合される面ファスナのループ部材である。被止着部26は、微細ループ構造を有する。微細ループ構造とは、多数の微細なループ要素の集合を意味する。一対の接続部4の内面には、例えば、被止着部26に対して止着可能な面ファスナのフック部材が設けられる。接続部4の内面とは、吸収性物品1を着用者に装着した状態で、本体部2の前方部201に対向する面である。当該フック部材は、微細フック構造を有する。微細フック構造とは、多数の微細なフック要素の集合を意味する。
【0023】
図1および
図2に示すように、本体部2は、トップシート6と、吸収コア22と、バックシート23とを備える。トップシート6は、透液性のシート部材である。バックシート23は、撥液性または不透液性のシート部材である。吸収コア22は、長手方向に延びる略シート状であり、トップシート6とバックシート23との間に配置される。トップシート6は、吸収コア22の着用者側の主面を覆う。バックシート23は、吸収コア22の他方の主面、すなわち、着用者とは反対側の主面を覆う。
【0024】
トップシート6は、着用者からの排泄物の水分を速やかに捕捉し、当該水分を吸収コア22へと移動させる。吸収コア22は、トップシート6を透過した水分(すなわち、着用者からの排泄物の水分)を吸収して固定する。バックシート23は、バックシート23に到達した排泄物の水分等が、本体部2の外部にしみ出すことを防止する。
【0025】
図2では、図示の都合上、吸収性物品1の各構成を積層方向(厚さ方向)に離して描いている。また、
図1では、図の理解を容易にするために、吸収コア22の輪郭を太い破線にて描いている。
図1に示す例では、前方部201および後方部203における吸収コア22の幅は、股下部202における吸収コア22の幅よりも大きい。換言すれば、吸収コア22は、平面視において、いわゆる砂時計型である。
【0026】
トップシート6は、吸収コア22の周りにおいてバックシート23に固定される。トップシート6とバックシート23との固定は、例えば、ホットメルト接着剤を介して行われる。トップシート6とバックシート23との固定は、例えば、熱融着接合や超音波接合等により行われてもよい。
図2に示す例では、トップシート6の幅は、バックシート23の幅よりも小さく、バックシート23の両側部は、トップシート6の両側縁から幅方向外側に延出している。
【0027】
図1に示すように、本体部2の長手方向の両端部では、幅方向に延びる複数の弾性部材25が、トップシート6とバックシート23との間にホットメルト接着剤等により伸張状態にて接合される。弾性部材25が収縮することによりウエストギャザーが形成され、吸収性物品1の着用時に本体部2が着用者の腰周りに密着する。
【0028】
一対のサイドシート3のそれぞれは、撥液性または不透液性のサイドシート本体31と、弾性部材32a,32bとを備える。サイドシート本体31は、側壁固定部33と、側壁起立部34とを備える。側壁固定部33は、トップシート6の側部上、および、バックシート23のトップシート6から幅方向外側に延出する側部上に固定される。側壁固定部33とトップシート6およびバックシート23との固定は、例えば、ホットメルト接着剤を介して行われる。側壁固定部33とトップシート6およびバックシート23との固定は、例えば、熱融着接合や超音波接合等により行われてもよい。
【0029】
側壁起立部34は、側壁固定部33の内側縁35に連続する。側壁起立部34は、長手方向の両端部においてトップシート6上に重ねられ、トップシート6に固定される。側壁起立部34とトップシート6との固定は、例えば、ホットメルト接着剤を介して行われる。側壁起立部34とトップシート6との固定は、例えば、熱融着接合や超音波接合等により行われてもよい。側壁起立部34は、長手方向の両端部を除き、側壁固定部33および本体部2に直接的に固定されておらず、離間可能である。
【0030】
側壁起立部34の自由端部には、長手方向に延びる弾性部材32aが、ホットメルト接着剤等により伸張状態にて接合される。弾性部材32aが収縮することにより、側壁起立部34の長手方向両端部を除く部位が長手方向に収縮し、立体ギャザーが形成される。側壁起立部34は、
図2に示すように、着用者に向かって起立し、着用者の鼠径部および臀部に接触する。
【0031】
また、本体部2の股下部202の側部では、長手方向に延びる2本の弾性部材32bが、側壁固定部33とバックシート23との間にホットメルト接着剤等により伸張状態にて接合される。弾性部材32bが収縮することにより、側壁固定部33およびバックシート23が着用者側かつ幅方向内側に向かって立ち上がり、着用者の脚の付け根近傍に密着するレッグギャザーとなる。
【0032】
吸収コア22は、例えば、粒状または繊維状の高吸収性材料、および、親水性繊維の集合体のうち、少なくとも一方を吸収材として含む。当該高吸収性材料としては、例えば、粒状の高吸収性ポリマー(SAP(Super Absorbent Polymer))、または、繊維状の高吸収性ファイバー(SAF(Super Absorbent Fiber))が利用される。当該親水性繊維の集合体は、例えば、粉砕されたパルプ繊維またはセルロース繊維により形成される。
【0033】
図2に示す例では、吸収コア22は、上述の親水性繊維の集合体に粒状のSAPを混合したものを、ティッシュペーパーまたは透液性不織布等により包み込むことにより形成される。これにより、親水性繊維の集合体の型崩れ、および、SAPの脱落(特に、吸液後における脱落)を防止することができる。
【0034】
バックシート23は、例えば、疎水性繊維により形成された不透液性もしくは撥液性の不織布(スパンボンド不織布、メルトブロー不織布またはSMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布等)、または、不透液性もしくは撥液性のプラスチックフィルムにより形成される。バックシート23は、当該不織布と当該プラスチックフィルムとの積層体であってもよい。バックシート23にプラスチックフィルムが利用される場合、吸収性物品1のムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(すなわち、通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
【0035】
サイドシート本体31は、疎水性繊維にて形成された不透液性または撥液性の不織布(例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布またはSMS不織布)により形成される。弾性部材25,32a,32bとしては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、または、糸状もしくは帯状の天然ゴム等が利用される。本実施の形態では、ポリウレタン糸が弾性部材25,32a,32bとして利用される。
【0036】
次に、トップシート6の詳細について説明する。
図4は、トップシート6の着用者側の面を示す平面図である。
図5は、トップシート6の吸収コア22側の面(着用者とは反対側の面)を示す底面図である。
図6は、トップシート6を
図4中のVI-VIの位置で切断した断面図である。
図4および
図5では、図中の左右方向に延びるトップシート6の一部を示している。
図4および
図5中の左右方向および上下方向がそれぞれ、既述の長手方向および幅方向となる。また、
図6中の上下方向が積層方向となる。以下の説明では、
図6中の上側および下側をそれぞれ、単に「上側」および「下側」と呼ぶ。長手方向、幅方向および積層方向は、互いに略垂直である。
【0037】
図4ないし
図6に示すトップシート6は、第1不織布シート61と、第2不織布シート62とを備える。トップシート6は積層シートであり、第1不織布シート61および第2不織布シート62は、積層方向(すなわち、
図6中の上下方向)に積層される。
図6に示す例では、第2不織布シート62が、第1不織布シート61の下側に積層される。第1不織布シート61は、前方部201から後方部203に亘って長手方向に延びる帯状である。第2不織布シート62は、幅方向において2つの分割シート621に分離している。各分割シート621は、前方部201から後方部203に亘って長手方向に延びる帯状である。2つの分割シート621は、所定の距離だけ幅方向に離れて配置される。例えば、2つの分割シート621の幅(幅方向の幅)は、互いに同じである。また、第1不織布シート61の幅は、一方の分割シート621における幅方向外側の縁(他方の分割シート621とは反対側の縁)と、他方の分割シート621における幅方向外側の縁との間の距離よりも大きい。本実施の形態では、第1不織布シート61は、複数のシートの積層体ではなく、単一のシートである。また、第2不織布シート62の各分割シート621も、単一のシートである。
【0038】
既述のように、2つの分割シート621は幅方向に離間しており、2つの分割シート621の間では、第2不織布シート62のいずれの部位も、第1不織布シート61に重ならない。同様に、幅方向における各分割シート621の外側、すなわち、他方の分割シート621とは反対側においても、第2不織布シート62のいずれの部位も、第1不織布シート61に重ならない。このように、第1不織布シート61では、第2不織布シート62と重なる積層領域68と、第2不織布シート62と重ならない非積層領域69とが設けられている。
【0039】
図2に示すように、2つの分割シート621は、吸収コア22の両側部(幅方向の端部)にそれぞれ対向する。すなわち、上記積層領域68は、吸収コア22の両側部にそれぞれ対向する一対の領域681(以下、「側部積層領域681」という。)を含む。また、非積層領域69は、一対の側部積層領域681の間に位置する中間非積層領域691と、一対の側部積層領域681の両外側に位置する一対の側縁非積層領域692とを含む。積層領域68、および、非積層領域69の中間非積層領域691が、積層方向において吸収コア22と重なる。側縁非積層領域692は、幅方向における吸収コア22の外側にてバックシート23と接合される。側部積層領域681、中間非積層領域691および側縁非積層領域692は、長手方向において前方部201から後方部203に亘って設けられる。
【0040】
第1不織布シート61および第2不織布シート62のそれぞれは、透液性の不織布により形成されたシート部材である。当該不織布は、例えば、表面を界面活性剤により親水処理された疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)により形成される。当該不織布は、セルロース、レーヨンまたはコットン等の親水性繊維により形成されてもよい。当該不織布は、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布またはスパンレース不織布等である。
図4ないし
図6に示す例では、第1不織布シート61および第2不織布シート62のそれぞれは、エアスルー不織布により形成される。エアスルー不織布以外の不織布が用いられてもよい。
【0041】
第1不織布シート61と、第2不織布シート62(の分割シート621)とは、互いに溶着される。第1不織布シート61と第2不織布シート62との溶着は、例えば、熱エンボス加工により行われる。
図4および
図5では、第1不織布シート61と第2不織布シート62との溶着箇所である複数の溶着痕66(すなわち、エンボス痕)の外縁を細線にて示す。複数の溶着痕66は、積層領域68の全体に亘って、略均等に分散配置される。積層領域68において、第1不織布シート61と第2不織布シート62とは、全面溶着はされておらず、部分的に溶着されている。本実施の形態では、第1不織布シート61と第2不織布シート62との間には接着剤層は設けられておらず、第1不織布シート61と第2不織布シート62との接合は、上述の溶着のみにより実現される。
【0042】
複数の溶着痕66は、複数の第1溶着痕列663と、複数の第2溶着痕列664とを含む。図示の便宜上、
図4および
図5では、第1溶着痕列663および第2溶着痕列664の数を少なく描いており(
図6において同様)、実際には、多数の第1溶着痕列663および第2溶着痕列664が幅方向に並ぶ。各第1溶着痕列663は、トップシート6の長手方向に互いに離間しつつ配列される複数の第1溶着痕661を含む。各第1溶着痕661の形状は、例えば、幅方向に略平行な長辺を有する略長方形状、または、幅方向に略平行に延びる線状である。各第2溶着痕列664は、トップシート6の長手方向に互いに離間しつつ配列される複数の第2溶着痕662を含む。各第2溶着痕662の形状は、例えば、上記長手方向に略平行な長辺を有する略長方形状、または、当該長手方向に略平行に延びる線状である。
【0043】
複数の第1溶着痕列663と、複数の第2溶着痕列664とは、例えば、幅方向に交互に配列される。長手方向のみに着目すると、各第2溶着痕662は、隣接する2つの第1溶着痕661の間に位置する。換言すれば、トップシート6では、長手方向に関して、第1溶着痕661と第2溶着痕662とが交互に配置される。
【0044】
トップシート6は、複数の第1凸部63と、複数の第2凸部64とを備える。複数の第1凸部63および複数の第2凸部64は、積層領域68のみに配置される。
図6に示すように、複数の第1凸部63は、積層方向の一方側である上側(すなわち、第1不織布シート61側)に突出する。複数の第2凸部64は、積層方向の他方側である下側(すなわち、第2不織布シート62側)に突出する。
図4では、第1凸部63を実線にて示して平行斜線を付し、第2凸部64を破線にて示す。
図5では、第1凸部63を破線にて示し、第2凸部64を実線にて示して平行斜線を付す。
図4および
図5では、平行斜線を付す領域が、紙面の手前側に突出する領域を示す。
【0045】
各第1凸部63は、例えば、幅方向に略平行な長辺を有する略長方形状である。各第1凸部63は、第1溶着痕列663において長手方向に隣接する2つの第1溶着痕661の間に位置する。各第1凸部63の幅方向の幅は、第1溶着痕661の幅方向の幅と略同じである。換言すれば、トップシート6では、長手方向に隣接する各2つの第1溶着痕661の間の部位が、第1凸部63となる。
【0046】
各第2凸部64は、例えば、長手方向に略平行に延びる線状または帯状の凸部である。各第2凸部64は、例えば、トップシート6の長手方向の略全長に亘って連続的に延びる。複数の第2凸部64は、互いに離間しつつ幅方向に配列される。
図5に示す例では、各第2溶着痕列664の幅方向の両側に隣接して、2つの第2凸部64が配置される。換言すれば、各第2溶着痕列664は、幅方向にて隣接する2つの第2凸部64の間に位置する。長手方向に配列される複数の第1凸部63を第1凸部列631と呼ぶと、各第1凸部列631は、第2溶着痕列664を挟んで隣接する2本の第2凸部64と、他の第2溶着痕列664を挟んで隣接する2本の第2凸部64との間に位置する。なお、
図6に示すように、第2不織布シート62では、第1凸部63に対向する領域が、第2溶着痕662の部分よりも下側に僅かに突出している。したがって、第2不織布シート62では、第2凸部64よりも高さが低い凸部が当該領域に形成されていると捉えることも可能である。当該凸部は、第1凸部63と同様に、長手方向に断続的に設けられる。
【0047】
ここで、第1凸部63が延びる方向および第2凸部64が延びる方向をそれぞれ、「第1の方向」および「第2の方向」と呼ぶと、トップシート6は、当該第1の方向に長い複数の第1凸部63と、当該第2の方向に長い複数の第2凸部64とを備える。上記第1の方向は積層方向に垂直であり、上記第2の方向は、積層方向および第1の方向に垂直である。なお、当該第2の方向は、必ずしも第1の方向に垂直である必要はなく、第1の方向に交差する方向(すなわち、第2の方向と平行ではない方向)であればよい。第1の方向と第2の方向との成す角度は、好ましくは45度以上である。
【0048】
図2の吸収性物品1を着用者に装着した状態では、一対の側部積層領域681が着用者の臀部に接触する。また、中間非積層領域691近傍が、主として着用者からの排泄物を受ける領域となる。トップシート6の両面に凸部(複数の第1凸部63および複数の第2凸部64)が設けられた積層領域68では、肌触りが良好となる。着用者と吸収コア22との間に、第1不織布シート61のみが配置される中間非積層領域691では、透液性が高いため、排泄物の水分を迅速に吸収コア22に導くことが可能となる。また、第1凸部63および第2凸部64により、着用者の肌と吸収コア22との間の距離が大きくなるため、着用者におけるドライ性を向上することができる。さらに、非積層領域69では、通気性も向上する。特に、長手方向における吸収コア22の外側の領域(前方部201および後方部203における領域)では、吸収性物品1の通気性をより向上することが可能となる。
【0049】
トップシート6では、第1不織布シート61の目付が、第2不織布シート62の目付よりも小さいことが好ましい。これにより、目付が大きい第2不織布シート62により、積層領域68における肌触りをさらに向上しつつ、非積層領域69において、排泄物の水分をより迅速に吸収コア22に導くことが可能となる。非積層領域69における透液性の向上、および、積層領域68における肌触りの向上をより確実に実現するには、第1不織布シート61の目付に対する第2不織布シート62の目付は、1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましい(例えば6倍以下)。トップシート6の設計によっては、第1不織布シート61の目付が、第2不織布シート62の目付以上であってもよい。
【0050】
次に、トップシート6の製造方法について説明する。トップシート6の製造では、長手方向に連続する積層連続シート600(後述の
図7参照)が製造され、積層連続シート600を切断することにより、積層シートである複数のトップシート6が得られる。
図7は、積層連続シート600を製造する製造装置7の一例を示す図である。
図8は、製造装置7の一部を拡大して示す図であり、後述のエンボスロール77の外周面を示している。実際の製造装置7は、図示した構造よりも複雑な構造を有しており、例えば、吸収性物品1の製造装置に含まれる。
図9は、積層連続シート600の製造の流れを示す図である。
【0051】
図7に示すように、製造装置7は、第1保持ロール71と、2つの第2保持ロール72と、速度調節部73と、搬送ロール75と、回収ロール76と、エンボスロール77と、フラットロール78とを備える。製造装置7の上記各構成は、図示省略のフレームに固定される。ロール71,72,75~78の回転軸は互いに平行である。
【0052】
第1保持ロール71は、第1連続シート610を保持する略円柱状または略円筒状の部材である。第1保持ロール71には、略帯状の第1連続シート610が巻き付けられて保持される。第1連続シート610は、積層連続シート600の切断により複数の第1不織布シート61となる連続シートである。第1保持ロール71は、図中における反時計回りに回転する。これにより、第1連続シート610が、第1保持ロール71から送出される。
【0053】
2つの第2保持ロール72は、2つの分割連続シート620をそれぞれ保持する略円柱状または略円筒状の部材である。各第2保持ロール72には、略帯状の分割連続シート620が巻き付けられて保持される。分割連続シート620は、積層連続シート600の切断により複数の分割シート621となる連続シートである。2つの第2保持ロール72は、回転軸の方向に僅かに離間して配置される。各第2保持ロール72は、図中における時計回りに回転する。これにより、分割連続シート620が、第2保持ロール72から送出される。2つの第2保持ロール72から送出される2つの分割連続シート620は、回転軸の方向に互いに離間する。2つの分割連続シート620は、1つの第2連続シートと捉えることが可能である。第2保持ロール72は、
図7中において第1保持ロール71の下方に位置する。なお、図中の上下方向は、実際の製造装置7における上下方向(すなわち、重力方向)と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
第1保持ロール71から送出された第1連続シート610、および、2つの第2保持ロール72から送出された2つの分割連続シート620は、エンボスロール77とフラットロール78との間を通過することにより溶着され、積層連続シート600となる。積層連続シート600は、搬送ロール75を経由して回収ロール76に巻き取られる。以下の説明では、第1保持ロール71から搬送ロール75に至る第1連続シート610の移動方向に沿う方向を、第1連続シート610の「搬送方向」と呼ぶ。また、各第2保持ロール72から搬送ロール75に至る分割連続シート620の移動方向に沿う方向を、分割連続シート620の「搬送方向」と呼ぶ。
【0055】
第1連続シート610は、第1保持ロール71と搬送ロール75との間において、第1連続シート610の搬送方向(すなわち、長手方向)にテンションを加えられつつ保持される。各分割連続シート620は、第2保持ロール72と搬送ロール75との間において、分割連続シート620の搬送方向(すなわち、長手方向)にテンションを加えられつつ保持される。
【0056】
速度調節部73は、第1保持ロール71、2つの第2保持ロール72、搬送ロール75および回収ロール76の回転速度を個別に調節する。速度調節部73が、搬送ロール75による積層連続シート600(第1連続シート610、および、2つの分割連続シート620)の搬送速度を、第1保持ロール71による第1連続シート610の送出速度よりも大きくすることにより、第1保持ロール71と搬送ロール75との間にて移動する第1連続シート610を、第1連続シート610の長手方向(すなわち、搬送方向)に伸張可能である。また、速度調節部73が、搬送ロール75による積層連続シート600の搬送速度を、各第2保持ロール72による分割連続シート620の送出速度よりも大きくすることにより、当該第2保持ロール72と搬送ロール75との間にて移動する分割連続シート620を、分割連続シート620の長手方向(すなわち、搬送方向)に伸張可能である。
【0057】
上述の第1連続シート610の送出速度は、単位時間当たりに第1保持ロール71から送出される第1連続シート610の長さである。分割連続シート620の送出速度についても同様である。また、搬送速度は、単位時間当たりに搬送ロール75により搬送される(すなわち、搬送ロール75上を通過する)積層連続シート600の長さである。
【0058】
エンボスロール77は、第1保持ロール71および第2保持ロール72と搬送ロール75との間において、第1連続シート610の上側に配置される略円筒状の部材である。エンボスロール77は、第1連続シート610の上面(すなわち、分割連続シート620とは反対側の主面)に接触する。エンボスロール77は、紙面に垂直な回転軸を中心として図中における反時計回りに回転する。エンボスロール77の内部には、エンボスロール77の外周面を加熱するヒータ(図示省略)が設けられている。
【0059】
図8に示すように、エンボスロール77の外周面には、上述の複数の溶着痕66に対応する複数の凸部776(以下、「エンボス凸部776」と呼ぶ。)が設けられる。上述の積層連続シート600のうち、複数のエンボス凸部776の頂面(すなわち、径方向の外端面)と接触した部位が、上述の複数の溶着痕66となる。複数のエンボス凸部776は、エンボスロール77の外周面のうち、各分割連続シート620と重なる領域の略全体に亘って、略均等に分散配置されている。換言すると、エンボスロール77の外周面において、2つの分割連続シート620の間に位置する領域779には、複数のエンボス凸部776は配置されない。後述するように、当該領域779にも複数のエンボス凸部776が配置されてもよい。
【0060】
複数のエンボス凸部776は、複数の第1エンボス凸部列773と、複数の第2エンボス凸部列774とを含む。各第1エンボス凸部列773は、エンボスロール77の外周面において、周方向の略全周に亘って延びる。各第1エンボス凸部列773は、周方向に互いに離間しつつ配列される複数の第1エンボス凸部771を含む。各第1エンボス凸部771の頂面の形状は、例えば、エンボスロール77の軸方向に略平行な長辺を有する略長方形状である。各第2エンボス凸部列774は、エンボスロール77の外周面において、周方向の略全周に亘って延びる。各第2エンボス凸部列774は、周方向に互いに離間しつつ配列される複数の第2エンボス凸部772を含む。各第2エンボス凸部772の頂面の形状は、例えば、周方向に略平行な長辺を有する略長方形状である。
【0061】
複数の第1エンボス凸部列773と、複数の第2エンボス凸部列774とは、例えば、上記軸方向に交互に配列される。各第1エンボス凸部771は、上記周方向に関して、周方向に隣接する2つの第2エンボス凸部772の間に位置する。換言すれば、エンボスロール77では、周方向に関して、第1エンボス凸部771と第2エンボス凸部772とが交互に配置される。
【0062】
図7に示すように、フラットロール78は、第1保持ロール71および第2保持ロール72と搬送ロール75との間において、2つの分割連続シート620の下側に配置される略円筒状の部材である。フラットロール78は、分割連続シート620の下面(すなわち、第1連続シート610とは反対側の主面)に接触する。フラットロール78は、エンボスロール77の下側に位置する。フラットロール78は、第1連続シート610および分割連続シート620を挟んで、エンボスロール77と上下方向(すなわち、第1連続シート610および分割連続シート620の積層方向)に対向する。フラットロール78は、紙面に垂直な回転軸を中心として図中における時計回りに回転する。フラットロール78の外周面は、平滑な円筒面である。フラットロール78の内部には、フラットロール78の外周面を加熱するヒータ(図示省略)が設けられている。
【0063】
積層連続シート600を製造する際には、まず、上述の製造装置7において、所定の搬送方向に移動する第1連続シート610の下面に、所定の搬送方向に移動する2つの分割連続シート620が積層される(ステップS11)。製造装置7では、速度調節部73が各第2保持ロール72および搬送ロール75の回転速度を調節することにより、2つの分割連続シート620が長手方向(すなわち、搬送方向)に伸張された状態で移動している。また、速度調節部73が第1保持ロール71および搬送ロール75の回転速度を調節することにより、第1連続シート610は長手方向(すなわち、搬送方向)に伸張されない状態で移動している。ステップS11では、長手方向に伸張された状態の各分割連続シート620が、非伸張状態の第1連続シート610に積層される。
【0064】
積層された第1連続シート610および分割連続シート620は、回転中のエンボスロール77とフラットロール78との間の間隙を通過する。第1連続シート610および分割連続シート620は、予め加熱されているエンボスロール77とフラットロール78とによって、積層方向の両側から挟まれる。これにより、第1連続シート610および分割連続シート620に熱エンボス加工が施され、第1連続シート610と伸張された状態の分割連続シート620とが溶着される(ステップS12)。上述の溶着痕66は、ステップS12において形成される。
【0065】
各分割連続シート620の長手方向における伸張は、長手方向の引張力が解除されると収縮する(すなわち、ある程度または完全に復元する)弾性変形の範囲内における伸張である。第1連続シート610に溶着される際の分割連続シート620の長手方向における伸張率(すなわち、伸張状態の分割連続シート620の長さを、伸張および収縮していない分割連続シート620の自然長で除算した値)は、好ましくは、1.05倍以上かつ1.3倍以下であり、より好ましくは、1.1倍以上かつ1.2倍以下である。また、ステップS12におけるフラットロール78の外周面の温度は、エンボスロール77の外周面の温度(例えば、エンボスロール77のエンボス凸部776の頂面の温度)よりも低い。
【0066】
溶着された第1連続シート610および分割連続シート620(すなわち、積層連続シート600)は、搬送ロール75により、回収ロール76へと送られる。製造装置7では、速度調節部73により搬送ロール75および回収ロール76の回転速度が調節されることにより、搬送ロール75による積層連続シート600の搬送速度よりも、回収ロール76による巻取速度が小さくされる。これにより、搬送ロール75と回収ロール76との間において、各分割連続シート620の伸張が解除され、分割連続シート620が長手方向に収縮する。
【0067】
このように、第1連続シート610に溶着された後の分割連続シート620が収縮することにより、上述の複数の第1凸部63が形成され(ステップS13)、上述の複数の第2凸部64が形成される(ステップS14)。その結果、複数の第1凸部63および複数の第2凸部64を備える(すなわち、凹凸構造を有する)積層連続シート600が得られる。回収ロール76に巻き取られた積層連続シート600は、別途、長手方向に所定の間隔で切断されることにより、積層シートである複数のトップシート6が得られる。
【0068】
上述の例では、第1凸部63は、トップシート6の幅方向に略平行な長辺を有する略長方形状である。換言すれば、第1凸部63は、第1連続シート610、分割連続シート620および積層連続シート600の長手方向に略垂直な方向に長い。また、第2凸部64は、トップシート6の長手方向に略平行に延びる線状または帯状の凸部である。換言すれば、第2凸部64は、第1連続シート610、分割連続シート620および積層連続シート600の長手方向に長い。なお、
図8のエンボスロール77の外周面において、分割連続シート620と重ならない領域(例えば、領域779であり、非積層領域69に対応する領域)に、第1エンボス凸部771および第2エンボス凸部772が設けられてもよい。この場合、トップシート6では、非積層領域69において、第1エンボス凸部771および第2エンボス凸部772により押圧された痕(第1溶着痕661および第2溶着痕662と同形状の痕)が形成される。
【0069】
以上に説明したように、第1不織布シート61および第2不織布シート62の積層シートであるトップシート6では、第1不織布シート61において、第2不織布シート62と重なる積層領域68と、第2不織布シート62と重ならない非積層領域69とが設けられる。そして、積層領域68において、第1不織布シート61が積層方向の一方側に突出する複数の第1凸部63を有し、第2不織布シート62が、積層方向の他方側に突出する複数の第2凸部64を有する。これにより、高い透液性および通気性を有するとともに、肌触りが良好なトップシート6を提供することができる。
【0070】
吸収性物品1におけるトップシート6では、第1凸部63および第2凸部64が設けられる積層領域68が、吸収コア22の両側部に対向する一対の側部積層領域681を含む。また、非積層領域69が、一対の側部積層領域681の間に設けられる中間非積層領域691を含む。吸収性物品1を着用者に装着した状態では、一対の側部積層領域681が着用者の臀部に接触し、中間非積層領域691近傍が、主として着用者からの排泄物を受ける領域となる。これにより、着用者における吸収性物品1の着用感を向上するとともに、着用者からの排泄物を受ける領域(
図2の例では、中間非積層領域691)において、水分を迅速に吸収することができる。
【0071】
一対の側部積層領域681では、着用者側に配置される第1不織布シート61において、幅方向に延びる第1凸部63が形成される。これにより、側部積層領域681にて排泄物が受けられた場合でも、トップシート6の着用者側の面上において、当該排泄物の水分を中間非積層領域691に迅速に導くことができる。また、側部積層領域681では、第1凸部63および第2凸部64が互いに交差する方向に延びるため、側部積層領域681に染み込んだ水分を適切に拡散させることができる。その結果、吸収コア22の広範囲を水分の吸収に利用することができる。
【0072】
非積層領域69において、第1不織布シート61が単一のシートとして存在することにより、非積層領域69における透液性および通気性をさらに向上することができる。また、第1不織布シート61の目付が、第2不織布シート62よりも小さいことにより、非積層領域69における透液性および通気性をより一層向上することができる。
【0073】
吸収性物品1では、第2不織布シート62が、第1不織布シート61と吸収コア22との間に配置され、第2不織布シート62において長手方向に沿う縁が第1不織布シート61により覆われる。これにより、第2不織布シート62の当該縁が着用者の肌を刺激することを防止することができる。
【0074】
トップシート6の製造では、第2不織布シート62が伸張された状態で第1不織布シート61に接合され、第2不織布シート62が収縮することにより、複数の第1凸部63および複数の第2凸部64が形成される。これにより、上記トップシート6を容易に製造することができる。また、第2不織布シート62の伸張率が1.1倍以上であることにより、トップシート6に比較的大きい凹凸構造を設けることができる。第2不織布シート62の伸張率が1.2倍以下であることにより、伸張状態の第2不織布シート62における繊維の破断等を抑制することができる。
【0075】
第1不織布シート61と第2不織布シート62との接合では、フラットロール78が第2不織布シート62に接触し、エンボスロール77が第1不織布シート61に接触する。これにより、伸張状態の第2不織布シート62の損傷を抑制することができる。また、フラットロール78の温度がエンボスロール77の温度よりも低いことにより、伸張状態の第2不織布シート62の損傷をさらに抑制することができる。
【0076】
トップシート6の製造では、第1不織布シート61が伸張された状態で第2不織布シート62に接合されてもよい。すなわち、第1不織布シート61および第2不織布シート62の一方のシートが伸張された状態で、他方のシートに接合されることにより、当該一方のシートの収縮時に、複数の第1凸部63および複数の第2凸部64を形成することが可能となる。また、第1不織布シート61および第2不織布シート62の溶着は、超音波溶着等により行われてもよい。
【0077】
図2の例では、幅方向において一対の側部積層領域681に挟まれる領域の全体が、非積層領域69に含まれるが、
図10に示すように、一対の側部積層領域681の間に、積層領域68の他の領域682(以下、「中央積層領域682」という。)が設けられてもよい。例えば、中央積層領域682は、幅方向の中央に配置され、中央積層領域682と各側部積層領域681との間に中間非積層領域691が配置される。換言すると、
図10のトップシート6では、3つの分割シート621が幅方向に並んでおり、互いに隣接する2つの分割シート621の間の隙間が、中間非積層領域691となる。中央積層領域682の両側に位置する2つの中間非積層領域691では、水分を迅速に吸収することができる。また、中央積層領域682では、側部積層領域681と同様に、第1凸部63および第2凸部64が互いに交差する方向に延びるため(
図4および
図5参照)、染み込んだ水分を適切に拡散させることができる。その結果、吸収コア22の広範囲を水分の吸収に利用することができる。
【0078】
図10のトップシート6において、一対の側部積層領域681を省略することも可能である。
図11に示すトップシート6では、第2不織布シート62が複数の分割シート621に分割されておらず、幅が第1不織布シート61よりも小さい1つの帯状の第2不織布シート62が、幅方向における第1不織布シート61の中央に重ねられる。すなわち、トップシート6では、幅方向の中央に中央積層領域682が配置され、中央積層領域682以外の領域が非積層領域69となる。
【0079】
図11のトップシート6を含む吸収性物品1では、前方部201および後方部203において一対のサイドシート3(
図1参照)の間に位置する中央積層領域682が、着用者の腹側および背側の肌に接触する。これにより、中央積層領域682における複数の第1凸部63および複数の第2凸部64を用いて、吸収性物品1の前方部201および後方部203における肌触りを向上することができる。また、非積層領域69において通気性を向上することができる。股下部202では、中央積層領域682において染み込んだ水分を適切に拡散させることができ、吸収コア22の広範囲を水分の吸収に利用することができる。
【0080】
トップシート6の製造では、
図12に示すように、外周面に複数の凸部が設けられた凸部ロール811,812と、外周面に複数の凹部が設けられた凹部ロール821,822とを用いて、各連続シートに複数の凸部を形成することも可能である。具体的には、第1連続シート610が凸部ロール811と凹部ロール821との間に挟まれることにより、第1連続シート610において複数の第1凸部63が形成される。また、分割連続シート620が、凸部ロール812と凹部ロール822との間に挟まれることにより、分割連続シート620において複数の第2凸部64が形成される。
図12の例では、第1凸部63および第2凸部64は、幅方向に延びる。
【0081】
凹部ロール821,822には、ヒータが設けられており、第1連続シート610および分割連続シート620が、凹部ロール821,822間に挟まれることにより、互いに溶着されて接合される。凹部ロール821,822上の一方のシートが凸部ロール811,812を通過した後、他方のシートと重ねられる前に、当該一方のシートにおいて当該他方のシートと接触する位置に接着剤を塗布することにより、第1連続シート610および分割連続シート620が接着剤により接合されてもよい。
【0082】
積層シートである上記トップシート6、および、トップシート6を用いる吸収性物品1では様々な変形が可能である。
【0083】
図13Aに示すように、第1不織布シート61における第1凸部63と、第2不織布シート62における第2凸部64とが同じ位置に形成されてもよい。この場合に、
図13Bに示すように、第1凸部63の形状と、第2凸部64の形状とが相違してもよい。
図13Aおよび
図13Bのトップシート6では、凸部63,64が長手方向に連続的に延びており、積層領域68において長手方向における水分の拡散性が向上する。例えば、
図12の装置において、周方向に連続する凸部が外周面に設けられた凸部ロールと、周方向に連続する凹部が外周面に設けられた凹部ロールとを用いることにより、長手方向に連続的に延びる凸部63,64を容易に形成することが可能である。また、第1不織布シート61および第2不織布シート62の一方が、長手方向に連続的に延びる凸部を有し、他方が幅方向に連続的に延びる凸部を有してもよい。この場合、積層領域68において長手方向および幅方向の双方に優れた拡散性を有するトップシート6が構成される。トップシート6の設計によっては、複数のドット状の凸部が不規則に形成されてもよい。
【0084】
吸収性物品1の設計によっては、第1不織布シート61および第2不織布シート62の一方のみに凸部が設けられてもよい。例えば、
図14の例では、積層領域68において、第1不織布シート61に第1凸部63が形成され、第2不織布シート62には、凸部が設けられない。この場合でも、積層領域68において良好な肌触りを実現することができる。同様に、第2不織布シート62に第2凸部64が形成され、第1不織布シート61において凸部の形成が省略されてもよい。
【0085】
このように、積層領域68において良好な肌触りを実現するという観点では、第1不織布シート61および第2不織布シート62の一方のシートが、積層領域68において積層方向に突出する複数の凸部を有していればよい。この場合に、不織布シートの収縮を利用して凸部を形成するときには、他方のシートが伸張された状態で当該一方のシートに接合されることが好ましい。これにより、当該他方のシートの収縮により、凸部を容易に形成することが可能となる。一方、積層領域68において肌触りをさらに向上するには、第1不織布シート61に第1凸部63が設けられ、かつ、第2不織布シート62に第2凸部64が設けられることが好ましい。
【0086】
図6等の例では、第1不織布シート61の第1凸部63と、第2不織布シート62の第2凸部64とが積層方向において互いに異なる側に突出するが、
図15に示すトップシート6のように、第1凸部63および第2凸部64が、積層方向の同じ側に突出してもよい。
図15のトップシート6においても、積層領域68における積層方向の厚さを大きくすることができ、第1凸部63および第2凸部64の一方のみが形成される場合に比べて肌触りが向上する。以上のように、積層領域68において肌触りをさらに向上するという観点では、第1不織布シート61が、積層領域68において積層方向の一方側に突出する複数の第1凸部63を有し、第2不織布シート62が、積層領域68において積層方向の他方側または一方側に突出する複数の第2凸部64を有していればよい。
【0087】
また、
図15のトップシート6のように、第2不織布シート62において、第1不織布シート61に覆われない部分が設けられてもよい。第1不織布シート61が複数のシートの積層体であってもよく、第2不織布シート62が複数のシートの積層体であってもよい。一方、非積層領域69において透液性および通気性を向上するという観点では、第1不織布シート61は、単一のシートであることが好ましい。吸収性物品1の設計によっては、第2不織布シート62が第1不織布シート61よりも着用者側に設けられてもよい。
【0088】
トップシート6における積層領域68および非積層領域69の配置は様々に変更されてよい。例えば、股下部202における幅方向の中央部のみに非積層領域69が設けられ、非積層領域69の周囲を囲むように、積層領域68が設けられてもよい。
【0089】
第1不織布シート61および第2不織布シート62は、同じ種類の不織布であってもよく、異なる種類の不織布であってもよい。また、複数の孔が分散して形成されたフィルムを、第1不織布シート61および第2不織布シート62の一方または双方に代えて用いることも可能である。当該フィルムは、例えばプラスチックフィルムであり、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等の樹脂により形成される。例えば、当該複数の孔の直径の平均値は、0.1~2.0mmであり、当該複数の孔の面積比率は、20~80%である。
【0090】
以上のように、トップシート6として用いられる積層シートでは、不織布、または、上記フィルムである第1シートと、不織布、または、上記フィルムである第2シートとが互いに接合され、第1シートにおいて、第2シートと重なる積層領域68と、第2シートと重ならない非積層領域69とが設けられていればよい。
【0091】
上記実施の形態における、トップシート6(積層連続シート600)の製造では、第1不織布シート61(第1連続シート610)は伸張されていない、すなわち、第1不織布シート61の伸張率は実質的に0であるが、第2不織布シート62(分割連続シート620)と共に、第1不織布シート61が伸張されていてもよい。この場合、第1不織布シート61の伸張率は、第2不織布シート62の伸張率とは異なっており、好ましくは、第2不織布シート62の伸張率よりも小さい。そして、溶着後に第1不織布シート61および第2不織布シート62が収縮することにより、トップシート6に凹凸構造が形成される。トップシート6では、第2不織布シート62が長手方向に垂直な方向に伸張されてもよい。
【0092】
吸収性物品1では、トップシート6の一部(例えば、長手方向の中央部)のみが、積層シートにより形成されてもよい。また、吸収性物品1において、着用者の肌に接触する他の部材が、積層シートにより形成されてもよい。この場合に、積層シートが不透液性を有してもよく、当該積層シートでは、非積層領域69において高い通気性が得られる。このように、積層シートの非積層領域69では、高い透液性または通気性が実現されていればよい。
【0093】
上記積層シートは、テープタイプの使い捨ておむつ以外の様々な吸収性物品(例えば、パンツタイプの使い捨ておむつ、補助吸収具、失禁パッドまたは生理用品)において用いられてよい。
【0094】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0095】
1 吸収性物品
6 トップシート
22 吸収コア
23 バックシート
61 第1不織布シート
62 第2不織布シート
63 第1凸部
64 第2凸部
68 積層領域
69 非積層領域
681 側部積層領域
691 中間非積層領域