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特許7165006めっき装置およびそれを用いためっき方法
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  • 特許-めっき装置およびそれを用いためっき方法 図1
  • 特許-めっき装置およびそれを用いためっき方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】めっき装置およびそれを用いためっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/06 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
C25D7/06 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018181156
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020050911
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 恭平
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-193955(JP,U)
【文献】特開平04-198494(JP,A)
【文献】特開平04-210491(JP,A)
【文献】特開2012-251182(JP,A)
【文献】特開2016-189358(JP,A)
【文献】特開2011-143758(JP,A)
【文献】特開2006-336082(JP,A)
【文献】特開平11-106990(JP,A)
【文献】特開昭56-121277(JP,A)
【文献】実開昭56-170268(JP,U)
【文献】特開平03-072094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00-7/12
C25D 17/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる複数のピンが鉛直方向下側部に形成された帯板状の素材をその幅方向が鉛直方向になる状態で搬送しながらめっきする装置において、素材の鉛直方向下端を外周面で支持する支持ロールが設けられ、これらの支持ロールの両側面の間でその両側面に対して略垂直方向に延びるように外周面に互いに一定の間隔で離間して複数の溝部が形成され、素材が搬送される間に複数のピンの各々の先端部が複数の溝部の各々に順次収容されることを特徴とする、めっき装置。
【請求項2】
前記溝部の間隔が素材の複数のピンの間隔と略同一であることを特徴とする、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記複数の溝部の各々の断面が略三角形であることを特徴とする、請求項1または2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記支持ロールが、前記素材をめっきするめっき槽の外側に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項5】
前記支持ロールが、前記めっき槽の入口側と出口側に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載のめっき装置。
【請求項6】
帯板状の素材をその幅方向が鉛直方向になる状態で搬送しながらめっきする方法において、素材の鉛直方向下側部に、その素材の長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる複数のピンを形成し、その素材の鉛直方向下端を外周面で支持する支持ロールの両側面の間でその両側面に対して略垂直方向に延びるように外周面に互いに一定の間隔で離間して複数の溝部を形成し、素材が搬送される間に複数のピンの各々の先端部を複数の溝部の各々に順次収容させることを特徴とする、めっき方法。
【請求項7】
前記溝部の間隔を素材の複数のピンの間隔と略同一にすることを特徴とする、請求項6に記載のめっき方法。
【請求項8】
前記複数の溝部の各々の断面を略三角形にすることを特徴とする、請求項6または7に記載のめっき方法。
【請求項9】
前記支持ロールを、前記素材をめっきするめっき槽の外側に配置することを特徴とする、請求項6乃至8のいずれかに記載のめっき方法。
【請求項10】
前記支持ロールを、前記めっき槽の入口側と出口側に配置することを特徴とする、請求項9に記載のめっき方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置およびそれを用いためっき方法に関し、特に、帯板状の素材をその幅方向が鉛直方向になる状態で搬送しながらめっきする装置およびそれを用いためっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチやコネクタなどの接点や端子などの材料として、銅や銅合金などの導体素材の最外層に各種のめっき皮膜を形成しためっき材が使用されている。このようなめっき材を製造する装置として、バッチ式のめっき槽で処理する装置が知られているが、バッチ式のめっき槽で処理する装置では、帯板状の素材にめっき皮膜を形成するのが困難である。
【0003】
帯板状の素材にめっき皮膜を形成する装置として、帯状の銅板などの被めっき材がコイル状に巻かれた巻出機と、この巻出機から巻き出された被めっき材をコイル状に巻き取るための巻取機を備え、これらの間で被めっき材をその幅方向が鉛直方向になる状態で水平方向に直線状に搬送する、めっき材の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-336082号公報(段落番号0017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コネクタ材などの材料として使用される帯板状の素材をその幅方向が鉛直方向になる状態で搬送しながらめっきする場合、素材の鉛直方向下側部に、その素材の長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる複数のピンを形成した後に、その素材のピンをめっきする場合がある。また、素材をめっきするめっき槽の外側に略円筒形の支持ロールを設け、その支持ロールの外周面で素材の下端を支持しながらその素材を搬送することにより、その素材が水平方向に直線状に安定して搬送できるようにする場合がある。
【0006】
しかし、長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる複数のピンを形成した素材の下端を略円筒形の支持ロールの外周面で支持しながら搬送すると、素材のピンが支持ロールの外周面との抵抗により撓んで、隣接するピン同士が接触して、ピンが傷ついたり、摩耗粉が生じるという問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、帯板状の素材をその幅方向が鉛直方向になる状態で搬送しながらめっきする装置において、素材の鉛直方向下側部に、その素材の長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる複数のピンを形成し、その素材の鉛直方向下端を外周面で支持する支持ロールを設けた場合に、素材が搬送される間に、素材のピンが支持ロールの外周面との抵抗により撓んで、隣接するピン同士が接触するのを防止することができる、めっき装置およびそれを用いためっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、帯板状の素材をその幅方向が鉛直方向になる状態で搬送しながらめっきする装置において、素材の鉛直方向下側部に、その素材の長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる複数のピンを形成し、その素材の鉛直方向下端を外周面で支持する支持ロールを設け、この支持ロールの両側面の間でその両側面に対して略垂直方向に延びるように外周面に互いに一定の間隔で離間して複数の溝部を形成し、素材が搬送される間に複数のピンの各々の先端部を複数の溝部の各々に順次収容することにより、素材のピンが支持ロールの外周面との抵抗により撓んで、隣接するピン同士が接触するのを防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によるめっき装置は、帯板状の素材をその幅方向が鉛直方向になる状態で搬送しながらめっきする装置において、素材の鉛直方向下側部に、その素材の長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる複数のピンが形成され、その素材の鉛直方向下端を外周面で支持する支持ロールが設けられ、この支持ロールの両側面の間でその両側面に対して略垂直方向に延びるように外周面に互いに一定の間隔で離間して複数の溝部が形成され、素材が搬送される間に複数のピンの各々の先端部が複数の溝部の各々に順次収容されることを特徴とする。
【0010】
このめっき装置において、溝部の間隔が素材の複数のピンの間隔と略同一であるのが好ましく、複数の溝部の各々の断面が略三角形であるのが好ましい。また、支持ロールが、素材をめっきするめっき槽の外側に配置されているのが好ましく、めっき槽の入口側と出口側に配置されているのがさらに好ましい。
【0011】
また、本発明によるめっき方法は、帯板状の素材をその幅方向が鉛直方向になる状態で搬送しながらめっきする方法において、素材の鉛直方向下側部に、その素材の長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる複数のピンを形成し、その素材の鉛直方向下端を外周面で支持する支持ロールの両側面の間でその両側面に対して略垂直方向に延びるように外周面に互いに一定の間隔で離間して複数の溝部を形成し、素材が搬送される間に複数のピンの各々の先端部を複数の溝部の各々に順次収容させることを特徴とする、めっき方法。
【0012】
このめっき方法において、溝部の間隔を素材の複数のピンの間隔と略同一にするのが好ましく、複数の溝部の各々の断面を略三角形にするのが好ましい。また、支持ロールを、素材をめっきするめっき槽の外側に配置するのが好ましく、めっき槽の入口側と出口側に配置するのがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、板状の素材をその幅方向が鉛直方向になる状態で搬送しながらめっきする装置およびそれを用いためっき方法において、素材の鉛直方向下側部に、その素材の長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる複数のピンを形成し、その素材の鉛直方向下端を外周面で支持する支持ロールを設けた場合に、素材が搬送される間に、素材のピンが支持ロールの外周面との抵抗により撓んで、隣接するピン同士が接触するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明によるめっき装置の実施の形態を概略的に示す平面図である。
図2図1のめっき装置を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるめっき装置の実施の形態では、帯板状の素材をその幅方向が鉛直方向になる状態で搬送しながらめっきする装置において、素材の鉛直方向下側部に、その素材の長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる複数のピンが形成され、その素材の鉛直方向下端を外周面で支持する支持ロールが設けられ、この支持ロールの両側面の間でその両側面に対して略垂直方向に延びるように外周面に互いに一定の間隔で離間して複数の溝部が形成され、素材が搬送される間に複数のピンの各々の先端部が複数の溝部の各々に順次収容されるようになっている。
【0016】
このように素材が搬送される間に複数のピンの各々の先端部が複数の溝部の各々に順次収容されるようにすることにより、素材のピンが支持ロールの外周面との抵抗により撓んで、隣接するピン同士が接触するのを防止することができる。
【0017】
このめっき装置において、溝部の間隔が素材の複数のピンの間隔と略同一であるのが好ましく、複数の溝部の各々の断面が略三角形であるのが好ましい。このように溝部の間隔が素材の複数のピンの間隔と略同一にすることにより、素材を搬送する間に素材のピンと支持ロールの溝部との位置決めが容易になり、複数の溝部の各々の断面が略三角形にすることにより、複数のピンの各々の先端部を複数の溝部の各々に順次収容し易くなる。また、支持ロールが、素材をめっきするめっき槽の外側に配置されているのが好ましく、めっき槽の入口側と出口側に配置されているのがさらに好ましい。
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明によるめっき材装置およびそれを用いためっき方法の実施の形態について説明する。
【0019】
図1および図2は、本発明によるめっき装置の実施の形態を概略的に示す図であり、図1はめっき装置を上から見た状態を示し、図2はめっき装置を略横方向から見た状態を示している。
【0020】
図1および図2に示すように、本発明によるめっき装置の実施の形態は、帯状の銅板などの帯板状の金属からなる素材(被めっき材)10がコイル状に巻かれた巻出機12と、この巻出機12から巻き出された素材10をコイル状に巻き取るための巻取機14を備え、これらの間で素材10をその幅方向が鉛直方向になる状態で水平方向に直線状に搬送するようになっている。
【0021】
素材10の鉛直方向下側部には、その素材10の長手方向に互いに一定の間隔で離間して幅方向に延びる多数のピン10aが形成されている。
【0022】
巻出機12と巻取機14の間には、素材10上にめっきを行うためのめっき槽16が配置され、巻出機12から巻き出された素材10が巻取機14に巻き取られる間に、素材10がめっき槽16の略中央部を連続的に通過するようになっている。
【0023】
めっき槽16の入口側と巻出機12の間と、めっき槽16の出口側と巻取機14の間には、素材10を挟むように一対のブライドルロール18が設けられている。これらのブライドルロール18は、これらの間を通過する素材10に当接し、ブライドルロール18の回転によって素材10が搬送されるようになっている。これらのブライドルロール18の回転数は、(図示しない)付属のエンコーダによって(図示しない)制御装置にフィードバックされ、ブライドルロール18の回転数を制御して素材10の搬送速度を一定に維持するようになっている。
【0024】
また、めっき槽16の入口側と巻出機12側のブライドルロール18との間と、めっき槽16の出口側と巻取機14側のブライドルロール18との間には、素材10を挟むように一対の給電ロール20が設けられている。これらの給電ロール20は、これらの間を通過する素材10に当接し、素材10に電流を供給するようになっている。
【0025】
また、巻出機12側のブライドルロール18と給電ロール20との間には、巻出機12側のブライドルロール18側から順に、前処理工程として電解脱脂を行って素材10上の油脂を除去するための(図示しない)電解脱脂槽と、前処理工程として素材10上の酸化皮膜を除去するための(図示しない)酸洗槽とが設けられ、巻取機14側の給電ロール20とブライドルロール18との間には、巻取機14側の給電ロール20側から順に、めっきされた素材10を純水などにより洗浄してめっき液を除去するための(図示しない)後処理水槽と、めっきされた素材10を熱風乾燥などにより乾燥するための(図示しない)乾燥槽とが設けられており、これらの電解脱脂槽、酸洗槽、めっき槽16、後処理水槽および乾燥槽は、直線状(直列)に配置されている。
【0026】
また、めっき槽16の入口側と巻出機12側の給電ロール20との間と、めっき槽16の出口側と巻取機14側の給電ロール20との間には、素材10の鉛直方向下端を支持しながら回転する支持ロール22が設けられている。支持ロール22には、その両側面22aの間で両側面22aに対して略垂直方向に延びるように外周面に互いに一定の間隔で離間して(断面が略三角形の)複数の溝部22bが形成されている。これらの溝部22bの間隔は、素材10の複数のピン10aの間隔と略同一になっており、素材10が搬送される間に支持ロール22上の素材10の複数のピン10aの各々の先端部が支持ロール22の複数の溝部22bの各々に順次収容されるようになっている。
【0027】
このように支持ロール22の外周面に(素材10の複数のピンの間隔と略同一の間隔で離間して両側面の間で両側面に対して略垂直方向に延びるように)複数の溝部22bを設けることにより、素材10が搬送されるときに、ピン10aが支持ロール22の外周面との抵抗により撓んで、隣接するピン10a同士が接触してピン10aが傷ついたり、摩耗粉が生じるのを防止することができる。
【0028】
なお、支持ロール22は、めっき槽16の入口側と出口側の他に、上述した電解脱脂槽、酸洗槽、後処理水槽および乾燥槽の各々の入口側と出口側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 素材(被めっき材)
10a ピン
12 巻出機
14 巻取機14
16 めっき槽
18 ブライドルロール
20 給電ロール
22 支持ロール
22a 側面
22b 溝部
図1
図2