(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
H02K33/16 A
(21)【出願番号】P 2018185529
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】武井 宏光
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207200546(CN,U)
【文献】特開2006-179397(JP,A)
【文献】実開昭50-146524(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
可動体と、
前記可動体と前記支持体とに接続された接続体と、
コイルおよび前記コイルに第1方向で対向する磁石を備え、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向に対して交差する第2方向に相対移動させる磁気駆動機構と、
を有し、
前記支持体は、前記コイルまたは前記磁石を保持するホルダと、前記第1方向の一方側で前記ホルダを支持する第1カバー部材と、前記第1方向の他方側で前記ホルダを支持して前記ホルダを前記第1カバー部材との間に挟持する第2カバー部材とからなり、
前記第1カバー部材、前記ホルダおよび前記第2カバー部材は、前記第1方向および前記第2方向に対して交差する第3方向における前記支持体の中心を通る前記第2方向の軸線を跨ぐ一方の対角位置において、前記第1方向間が締結部材によって締め付けられ、
前記第1カバー部材または前記第2カバー部材のどちらか一方には、前記第2方向の軸線を跨ぐ他方の対角位置に、前記第1方向において前記第2カバー部材または前記第1カバー部材のどちらか他方に達する高さの一対の突出部が設けられ、
前記ホルダは、前記第2方向の軸線を跨ぐ他方の対角位置に、一対の前記突出部を貫通させる一対の貫通穴が設けられ、
前記第2カバー部材または前記第1カバー部材のどちらか一方には、前記第2方向の軸線を跨ぐ他方の対角位置に、一対の前記突出部の各先端部の周囲を囲む一対の取付穴が設けられ、
前記突出部の外周面と前記取付穴の内周面には当接する当接部が
、前記突出部の軸方向に延びるように前記取付穴の内周面に形成されているリブ状の複数の突起で形成され
、前記突出部の先端部の周囲と前記取付穴の内周との間における前記当接部が形成されていない箇所には、所定の隙間が形成されている
アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材はスナップフィットによって互いに固定されていることを特徴とする請求項
1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記接続体は粘弾性部材であり、前記可動体と前記支持体とが対向する位置で前記可動体および前記支持体の双方に接するように配置されていることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種振動を発生させるアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気駆動機構によって振動を発生させる機器として、第1方向で対向するコイルおよび磁石を備えた磁気駆動機構により、可動体を支持体に対して第1方向に対して交差する第2方向に振動させるアクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
同文献の
図14に示される支持体は、第1方向であるZ軸方向の一方側Z1に位置する第1ケースと、第1ケースにZ軸方向の他方側Z2で被さる第2ケースと、第1ケースと第2ケースの間に配置されるホルダとから構成され、これらは四隅が4本の固定ネジで相互が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクチュエータを機器に取り付けて使用するユーザの利便性を考慮すると、4本の固定ネジの内、一方の対角の一対の固定ネジは支持体の固定用に使用し、他方の対角の一対の固定ネジは、ユーザにおけるアクチュエータの機器固定用に用いることが考えられる。
【0006】
しかしながら、一方の対角の一対の固定ネジだけを使用して支持体を固定すると、他方の対角が固定されていないため、この他方の対角において、第1ケースと第2ケースとの間に僅かな隙間が生じる。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、磁気駆動機構によって振動を発生させるアクチュエータであって、支持体の固定強度を確保することが可能なアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するためになされたもので、本発明のアクチュエータは、支持体と、可動体と、可動体と支持体とに接続された接続体と、コイルおよびコイルに第1方向で対向する磁石を備え、可動体を支持体に対して第1方向に対して交差する第2方向に相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、支持体は、コイルまたは磁石を保持するホルダと、第1方向の一方側でホルダを支持する第1カバー部材と、第1方向の他方側でホルダを支持してホルダを第1カバー部材との間に挟持する第2カバー部材とからなり、第1カバー部材、ホルダおよび第2カバー部材は、第1方向および第2方向に対して交差する第3方向における支持体の中心を通る第2方向の軸線を跨ぐ一方の対角位置において、第1方向間が締結部材によって締め付けられ、第1カバー部材または第2カバー部材のどちらか一方には、第2方向の軸線を跨ぐ他方の対角位置に、第1方向において第2カバー部材または第1カバー部材のどちらか他方に達する高さの一対の突出部が設けられ、ホルダは、第2方向の軸線を跨ぐ他方の対角位置に、一対の突出部を貫通させる一対の貫通穴が設けられ、第2カバー部材または第1カバー部材のどちらか一方には、第2方向の軸線を跨ぐ他方の対角位置に、一対の突出部の各先端部の周囲を囲む一対の取付穴が設けられ、前記突出部の外周面と前記取付穴の内周面には当接する当接部が、前記突出部の軸方向に延びるように前記取付穴の内周面に形成されているリブ状の複数の突起で形成され、前記突出部の先端部の周囲と前記取付穴の内周との間における前記当接部が形成されていない箇所には、所定の隙間が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、第1方向間が締結部材によって締め付けられない、第2方向の軸線を跨ぐ支持体の他方の対角位置において、一方のカバー部材に設けられた一対の突出部が他方のカバー部材に設けられた一対の取付穴に嵌合されている。前記突出部の外周面と前記取付穴の内周面には当接する当接部が形成されているので、一対の突出部と一対の取付穴とに形成された当接部で当接することで、支持体の他方の対角位置における第1カバー部材および第2カバー部材間の動きが抑止されて、支持体としての第1カバー部材および第2カバー部材間の固定強度を確保することが可能になる。
【0010】
本発明によれば、前記当接部は、複数の突起で形成されている。これにより、突出部と取付穴との間で圧入することで、支持体としての第1カバー部材および第2カバー部材の動きが抑止されて、第1カバー部材および第2カバー部材間の固定強度が増加し、固定強度を高めることが可能になる。
【0011】
本発明によれば、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材にはスナップフィットによって互いに固定されていることが好ましい。これにより、支持体としての第1カバー部材および第2カバー部材の動きが抑止されて、第1カバー部材および第2カバー部材間の固定強度が増加し、固定強度を高めることが可能になる。さらに、第1カバー部材と第2カバー部材との取付時間を短縮することが可能になる。
【0012】
本発明において、前記接続体は粘弾性部材であり、前記可動体と前記支持体とが対向する位置で前記可動体および前記支持体の双方に接するように配置されていることが好ましい。これにより、前記弾性部材は、厚さ方向(第1方向)と交差する方向(せん断方向)に変形するため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を発揮する。このため、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上させることができるので、微妙なニュアンスをもつ振動を実現することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアクチュエータによれば、第1方向間が締結部材によって締め付けられない、第2方向の軸線を跨ぐ支持体の他方の対角位置において、一方のカバー部材に設けられた一対の突出部が他方のカバー部材に設けられた一対の取付穴に嵌合されている。前記突出部の外周面と前記取付穴の内周面には当接する当接部が形成されているので、一対の突出部と一対の取付穴とに形成された当接部で当接することで、支持体の他方の対角位置における第1カバー部材および第2カバー部材間の動きが抑止されて、支持体としての第1カバー部材および第2カバー部材間の固定強度を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
【
図2】
図1に示すアクチュエータのXZ断面図である。
【
図3】
図1に示す配線基板およびネジを外した状態の斜視図である。
【
図4】
図1に示すアクチュエータを分解して第1方向の他方側からみたときの分解斜視図である。
【
図5】
図1に示すアクチュエータを分解して第1方向の一方側からみたときの分解斜視図である。
【
図6】
図2に示す磁気駆動機構を分解して第1方向の他方側からみたときの分解斜視図である。
【
図7】
図2に示す磁気駆動機構を分解して第1方向の一方側からみたときの分解斜視図である。
【
図8】
図6および
図7に示すホルダに保持される部品を分解して第1方向の一方側からみた分解斜視図である。
【
図9】
図3に示すアクチュエータの第2カバー部材を外して配線基板の図示を省略した状態の斜視図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
【
図12】
図10に示すアクチュエータの第2カバー部材およびネジを外して配線基板の図示を省略した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、互いに交差する3つの方向を各々、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yとして説明する。また、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yは、互いに直交する方向である。また、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付し、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付して説明する。また、各図において同一または相当する部分には同一符号を付して説明する。
【0016】
また、本発明を適用したアクチュエータ1は、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6を有しており、磁気駆動機構6は、コイル7と磁石8とを有している。かかる磁気駆動機構6では、コイル7が支持体2(一方側部材)の側に設けられ、磁石8が可動体3(他方側部材)の側に設けられた態様、および磁石8が支持体2(他方側部材)の側に設けられ、コイル7が可動体3(一方側部材)の側に設けられた態様を採用することができる。以下の説明では、コイル7が支持体2の側に設けられ、磁石8が可動体3の側に設けられた態様を中心に説明する。
【0017】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すアクチュエータ1のXZ断面図である。
図3は、
図1に示す配線基板15およびネジ18を外した状態の斜視図である。
【0018】
図1および
図2に示すように、本形態のアクチュエータ1は、全体として、第2方向Xの寸法が第3方向Yの寸法より大きい直方体形状を有している。また、
図2に示すように、支持体2と、支持体2に移動可能に支持された可動体3と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6とを有しており、磁気駆動機構6は、可動体3を第2方向Xに振動させる。
【0019】
図1、
図2および
図3に示すように、支持体2は、カバー11とホルダ60とを有しており、カバー11の内側に、
図2に示す可動体3および磁気駆動機構6が配置されている。カバー11は、第1方向Zの一方側Z1に位置する第1カバー部材16と、第1カバー部材16に対して第1方向Zの他方側Z2から重なる第2カバー部材17とを有しており、第1カバー部材16および第2カバー部材17は、四角形の平面形状を有している。第1カバー部材16と第2カバー部材17との間には、四角形の平面形状を有するホルダ60が配置されており、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17は、端部160、600、170が第1方向Zで重なっている。従って、カバー11の外面側110は、第1カバー部材16の端部160、ホルダ60の端部600、および第2カバー部材17の端部170によって構成されている。
【0020】
(第1カバー部材16の構成)
図4は、
図1に示すアクチュエータ1を分解して第1方向Zの他方側Z2からみたときの分解斜視図である。
図2および
図4に示すように、第1カバー部材16には、第1方向Zの他方側Z2に向かって開口する四角形の凹部165が形成されている。また、凹部165の底部には、第2方向Xで並ぶ2つの凹部166、167が形成されている。凹部165の対角位置には貫通穴16aが形成されている。すなわち、凹部165において、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの一方側Y1および他方側Y2に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの一方側Y1および他方側Y2に位置する角部分に貫通穴16aが形成されている。また、凹部166、167の第3方向Yの両端部には貫通穴16bが形成されている。
【0021】
第1カバー部材16において、凹部165は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部161と、第2方向Xの他方側X2に位置する第2壁部162と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3壁部163と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部164とによって囲まれている。第1方向Zからみたとき、第1壁部161および第2壁部162の幅(第2方向Xの寸法)は、第3壁部163および第4壁部164の幅(第3方向Yの寸法)より広い。第3壁部163の外面には、第2方向Xに沿って延在する凹部168が形成されている。
【0022】
第3壁部163には、第2方向Xに沿って第1方向Zの他方側Z2に突出した複数の凸板部163aが所定の間隔に形成されている。また、第1壁部161および第2壁部162には、外縁から第1方向Zの他方側Z2に突出した凸板部161a、162aが第3方向Yの中央に形成されている。
【0023】
第3壁部163および第4壁部164の第2方向Xの両端には、第1方向Zの一方側Z1に向けて開口した位置決め用の穴16cが形成されている。また、可動体3は振動を生じさせるとき支持体2に対して第2方向Xに相対移動させられるが、この相対移動は、第3方向Yにおける支持体2の中心を通る第2方向Xの軸線C(
図1参照)を中心軸にして行われる。第1カバー部材16の、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ一方の対角位置には一対の貫通穴16eが形成され、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ他方の対角位置には一対の貫通穴16fが形成されている。すなわち、第1カバー部材16において、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分に貫通穴16eが形成され、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分に貫通穴16fが形成されている。
【0024】
また、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ他方の対角位置における、貫通穴16fの軸線C寄りには、第1方向Zにおいて第2カバー部材17に達する高さの一対の円柱状ボス16gが突出部として設けられている。本形態では、円柱状ボス16gは、
図1に示すように、第2カバー部材17の側面に僅かに達しない高さに形成されている。
【0025】
(第2カバー部材17の構成)
図5は、
図1に示すアクチュエータ1を分解して第1方向Zの一方側Z1からみたときの分解斜視図である。
図2および
図5に示すように、第2カバー部材17は、以下に説明するように、第1カバー部材16に対して第1方向Zで略対称に形成されている。まず、第2カバー部材17には、第1方向Zの一方側Z1に向かって開口する四角形の凹部175が形成されている。また、凹部175の底部には、第2方向Xで並ぶ2つの凹部176、177が形成されている。第2カバー部材17において、凹部175は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部171と、第2方向Xの他方側X2に位置するに第2壁部172と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3壁部173と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部174とによって囲まれている。第1方向Zからみたとき、第1壁部171および第2壁部172の幅(第2方向Xの寸法)は、第3壁部173および第4壁部174の幅(第3方向Yの寸法)より広い。第3壁部173の外面には、第2方向Xに沿って延在する凹部178が形成されている。
【0026】
第3壁部173に形成された凹部178の外面には、第2方向Xに沿ってさらに深い凹部179が延在している。また、第1壁部171には、外縁から第1方向Zの一方側Z1に突出した凸板部171aが第3方向Yの中央に形成され、第2壁部172には、外縁から第1方向Zの他方側Z2にへこんだ凹部172aが第3方向Yの中央に形成されている。
【0027】
第3壁部173および第4壁部174の第2方向Xの両端には、第1方向Zの一方側Z1に向けて開口した位置決め用の穴17cが形成されている。また、第2カバー部材17の、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ一方の対角位置には一対の貫通穴17eが形成され、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ他方の対角位置には一対の貫通穴17fが形成されている。すなわち、第2カバー部材17において、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分に貫通穴17eが形成され、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分に貫通穴17fが形成されている。
【0028】
また、第2カバー部材17の、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ他方の対角位置における、貫通穴17fの軸線C寄りには、一対の取付穴17gが形成されている。一対の取付穴17gは、第2カバー部材17がホルダ60を介して第1カバー部材16に取り付けられると、第1カバー部材16の他方の対角位置における、貫通穴16fの軸線C寄りに形成された一対の円柱状ボス16gの各先端部の周囲を囲む。本形態では、取付穴17gの内周面には当接部17jとしての突起が複数形成されている。すなわち、軸方向に延びるように形成されたリブ状の突起が内周面に複数形成されている。このリブ状の突起が円柱状ボス16gの外周面に圧入されて当接している。また、当接部17jが形成されていない箇所は、円柱状ボス16gの先端部の周囲と取付穴17gの内周との間に所定の隙間を有する。
【0029】
(磁気駆動機構6の構成)
図6は、
図2に示す磁気駆動機構6の第1方向Zの他方側Z2からみた分解斜視図、
図7は磁気駆動機構6の第1方向Zの一方側Z1からみた分解斜視図である。
図8は、
図6、
図7に示すホルダ60に保持される部品を分解して第1方向Zの一方側Z1からみた分解斜視図である。
図2、および
図6~
図8に示すように、磁気駆動機構6は、コイル7と、コイル7に対して第1方向Zで対向する磁石8とを有している。本形態において、コイル7は、第2方向Xで並列するように配置された2つのコイル71、72からなり、コイル7は、第3方向Yに長辺701(有効部分)が延在する長円形状の空芯コイルである。コイル7はホルダ60と取付板68との間に保持されており、支持体2の側に設けられている。
【0030】
(ホルダ60の構成)
図2、および
図6~
図8に示すように、ホルダ60は、2つのコイル保持穴66、67が第2方向Xで並列するように形成されており、コイル保持穴66、67の各々にコイル7が配置されている。コイル保持穴66、67は貫通穴であり、第3方向Yの両端部には、コイル保持穴66、67の第1方向Zの他方側Z2の端部に受け部661、671が形成されている。従って、コイル保持穴66、67に第1方向Zの一方側Z1からコイル7を装着すると、コイル7の短辺702(無効部分)が受け部661、671によって第1方向Zの他方側Z2で支持された状態となる。
【0031】
ホルダ60は、コイル保持穴66、67が形成されている部分に対して、第2方向Xの一方側X1、第2方向Xの他方側X2、第3方向Yの一方側Y1、および第3方向Yの他方側Y2に、第1壁部61、第2壁部62、第3壁部63、および第4壁部64を備えている。第1方向Zからみたとき、第1壁部61および第2壁部62の幅(第2方向Xの寸法)は、第3壁部63および第4壁部64の幅(第3方向Yの寸法)より広い。
【0032】
ホルダ60には、コイル保持穴66と第1壁部61との間に第1開口部601が形成され、コイル保持穴67と第2壁部62との間に第2開口部602が形成されている。第1開口部601、および第2開口部602はホルダ60を第1方向Zで貫通している。
【0033】
第1壁部61には、第1方向Zの一方側Z1に凹部611が形成され、第1方向Zの他方側Z2に凹部612が形成されている。凹部611、612は、第1壁部61の第3方向Yの中央に形成されている。第2壁部62には、第1方向Zの一方側Z1に凹部621が形成され、第1方向Zの他方側Z2に凹部622が形成されている。凹部621、622は、第2壁部62の第3方向Yの中央に形成されている。第3壁部63の外面側には、第1方向Zの一方側Z1に複数の凹部631が第3方向Yの他方側Y2に窪んで第2方向Xに沿って形成されている。また、第3壁部63には、第1方向Zの他方側Z2に突出する凸部632が第2方向Xに沿って延在している。
【0034】
第3壁部63および第4壁部64の第2方向Xの両端には、第1方向Zの一方側Z1に突出した位置決め用の凸部60cと、第1方向Zの他方側Z2に突出した位置決め用の凸部60dとが形成されている。また、
図8に示すように、コイル保持穴66、67の第1方向Zの一方側Z1の周囲には、取付板68よりも一回り大きな面積で、取付板68の厚さ分だけ窪んだ凹部69が形成されている。この凹部69の底面四隅には、位置決め突起691が第1方向Zの一方側Z1に突出して形成されている。位置決め突起691どうし間の形成ピッチは、取付板68の四隅に設けられた穴681どうしの形成ピッチと同じになっており、取付板68は、各穴681に各突起691が挿入されて凹部69に嵌められて固定される。この状態で、コイル7は、接着剤等によって取付板68に接着されることで、ホルダ60に固定される。
【0035】
ホルダ60の第2方向Xの軸線Cを挟む一方の対角位置には一対の貫通穴60eが形成され、第2方向Xの軸線Cを挟む他方の対角位置には一対の貫通穴60fが形成されている。すなわち、ホルダ60において、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分に貫通穴60eが形成され、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分に貫通穴60fが形成されている。
【0036】
また、第3壁部63および第4壁部64の、第2方向Xの軸線Cを挟む他方の対角位置における、貫通穴60fの軸線C寄りには、一対の貫通穴60gが形成されている。貫通穴60gは、第1カバー部材16に形成された一対の突出部16gを遊びを持って貫通させる直径を有する。
【0037】
第3壁部63の外面には、第2方向Xに沿って延在する凹部630が形成されており、凹部630の底面には、第3方向Yの一方側Y1に突出した位置決め用の凸部636が第2方向Xに沿って3個並んで台形状に形成されている。また、第3壁部63には、コイル保持穴66、67から第3壁部63の外面(凹部630の底面)まで延在するガイド溝637が4本形成されている。
【0038】
(支持体2の構成)
本形態では、
図9に示すように、第1カバー部材16の上にホルダ60を第1方向Zに重ね、さらに、ホルダ60の上に第2カバー部材17を第1方向Zに重ねた状態で、第2カバー部材17の貫通穴17e、ホルダ60の貫通穴60e、および第2カバー部材17の貫通穴17eにネジ18を止め、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17を第1方向Zで締結する。その結果、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17は、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ一方の対角位置において、第1方向Z間が締結部材であるネジ18によって締め付けられ、支持体2が形成される。
【0039】
その際、第1カバー部材16に形成された円柱状ボス16gは、ホルダ60の貫通穴60gを貫通して、
図9に示すように先端部がホルダ60から突出し、第2カバー部材17がホルダ60に重ねられることで、先端部の周囲が第2カバー部材17に形成された取付穴17gの内周に囲まれる。つまり、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ他方の対角位置において、円柱状ボス16gの先端部周囲が取付穴17gの内周に囲まれる。円柱状ボス16gの頭は、第2カバー部材17から第1方向Zの他方側Z2に突出しない。また、第1カバー部材16の凸板部163aがホルダ60の凹部631に嵌り、第1カバー部材16の凸板部161a、162aがホルダ60の凹部611、621に嵌る。また、第1カバー部材16の穴16cにホルダ60の凸部60cが嵌る。また、第2カバー部材17の凹部179にホルダ60の凸部632が嵌り、第2カバー部材17の凸板部171aがホルダ60の凹部612に嵌る。また、第2カバー部材17の穴17cにホルダ60の凸部60dが嵌る。このようにして、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17は互いに位置決めされた状態で連結される。また、ガイド溝637は、ホルダ60と第1カバー部材16との間で穴638として開口する。
【0040】
なお、第1カバー部材17の貫通穴16f、ホルダ60の貫通穴60f、および第2カバー部材17の貫通穴17fは、アクチュエータ1を各種機器に搭載する際、機器のフレームに対して止める図示しないネジが止められる。本形態では、ネジ18および図示しないネジを止めた際、ネジ18および図示しないネジの頭は、第2カバー部材17から第1方向Zの他方側Z2に突出しない。
【0041】
(コイル7の端部の処理)
このように構成したアクチュエータ1においては、
図1および
図2に示すように、支持体2に用いたカバー11は、外面側110に、第2方向Xの一方側X1に位置する第1側面111と、第2方向Xの他方側X2に位置するに第2側面112と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3側面113と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4側面114とを有している。ここで、第3側面113および第4側面114の第2方向Xの長さは、第1側面111および第2側面112の第3方向Yの長さより長い。本形態では、第3側面113には、コイル7を構成するコイル線の巻き始めの第1端部706、および巻き終わりの第2端部707が各々電気的に接続された配線基板15が固定されている。
【0042】
本形態では、ホルダ60にガイド溝637が形成されているため、ホルダ60のコイル保持穴66、67にコイル7を固定する際、巻き始めの第1端部706、および巻き終わりの第2端部707をガイド溝637を通して外側に引き出しておき、その後、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17を第1方向Zに重ねて連結する。その結果、第1端部706、および第2端部707は穴638から引き出された状態となる。
【0043】
また、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17を第1方向Zに重ねて連結した後、凹部168、630、178に配線基板15を固定することができる。その際、ホルダ60の両端の凸部636を配線基板15の位置決め用の穴155に嵌めると共に、中央の凸部636を配線基板15の切り欠き152に当接させることで、配線基板15の位置決めを行い、その後、接着剤等によって配線基板15を固定する。それゆえ、配線基板15を介して外部からコイル7を駆動することができる。ここで、配線基板15には、穴638を開放状態とする切り欠き150が形成されているので、穴638から引き出された第1端部706および第2端部707を切り欠き150を通して配線基板15のランド151の各々まで延在させ、ランド151にハンダ付する。その結果、2つのコイル7は、直列に電気的に接続される。なお、2つのコイル7は、並列に電気的に接続してもよい。
【0044】
(可動体3の構成)
図2、および
図4~
図8に示すように、可動体3は、コイル7に対して第1方向Zの一方側Z1で対向する第1板部860を備えた第1ヨーク86と、コイル7に対して第1方向Zの他方側Z2で対向する第2板部870を備えた第2ヨーク87とを有しており、磁石8は、第1ヨーク86の第1板部860のコイル7と対向する面、および第2ヨーク87の第2板部870のコイル7と対向する面の少なくとも一方に保持されてコイル7に第1方向Zで対向している。
【0045】
本形態では、磁石8として、第1ヨーク86の第1板部860のコイル7と対向する面に接着等の方法で固定された第1磁石81と、第2ヨーク87の第2板部870のコイル7と対向する面に接着等の方法で固定された第2磁石82とが設けられている。この状態で、第1磁石81は、コイル7の長辺701に第1方向Zの一方側Z1で対向し、第2磁石82は、コイル7の長辺701に第1方向Zの他方側Z2で対向している。第1磁石81および第2磁石82は各々、厚さ方向(第1方向Z)で分極着磁されており、第1磁石81においてコイル7に対向する面と、第2磁石82においてコイル7と対向する面は異なる極に着磁されている。本形態では、第1磁石81および第2磁石82は各々、2つのコイル7(コイル71、72)の計4つの長辺701に対向する2つの磁石からなる。
【0046】
本形態において、第1ヨーク86は、第1板部860から第1方向Zの他方側Z2に向けて第2ヨーク87と重なる位置まで延在して第2ヨーク87と連結された第1連結板部861と、第1磁石81に対して第1連結板部861とは反対側で第1板部860から第1方向Zの他方側Z2に向けて第2ヨーク87と重なる位置まで延在して第2ヨーク87と連結された第2連結板部862とを備えている。第1連結板部861および第2連結板部862は各々、第1板部860において第2方向Xの互いに反対側に位置する端部から第1方向Zの他方側Z2に向けて折れ曲がっている。このため、第1連結板部861は、コイル7に対して第2方向Xの一方側X1を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて延在し、第2連結板部862は、コイル7に対して第2方向Xの他方側X2を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて延在している。その際、第1連結板部861は、コイル7に対して第2方向Xの一方側X1でホルダ60の第1開口部601を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて延在し、第2連結板部862は、コイル7に対して第2方向Xの他方側X2でホルダ60の第2開口部602を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて延在している。
【0047】
本形態では、第1連結板部861および第2連結板部862は、溶接により第2ヨーク87の端部と連結されている。より具体的には、第1連結板部861の第1方向Zの他方側Z2の端部861aは、第2ヨーク87の第2板部870の第1側面871に重なって第1連結板部861と第2ヨーク87の第1側面871とが溶接されている。同様に、第2連結板部862の第1方向Zの他方側Z2の端部は、第2ヨーク87の第2板部870の第2側面872に重なって第2連結板部862と第2ヨーク87の第2側面872とが溶接されている。
【0048】
第1連結板部861の端部861a、および第1側面871のうちの一方には、他方に形成された凹部に嵌って溶接された凸部が形成され、第2連結板部862の端部862a、および第2側面872のうちの一方には、他方に形成された凹部に嵌って溶接された凸部が形成されている。本形態では、第2板部870に形成された凸部873が第1連結板部861の端部861aに形成された凹部863に嵌って溶接され、第2板部870に形成された凸部874が第2連結板部862の端部862aに形成された凹部864に嵌って溶接されている。
【0049】
(ストッパの構成)
図2に示すように、本形態では、可動体3に用いた第1ヨーク86の第1連結板部861に対して第2方向Xの一方側X1には、第1カバー部材16の第1壁部161、ホルダ60の第1壁部61、および第2カバー部材17の第1壁部171の内面が、連続した平面(第1被当接部118)を構成した状態で対向している。したがって、第1連結板部861は、可動体3が第2方向Xの一方側X1に移動した際に第1被当接部118と当接して可動体3の第2方向Xの一方側X1への可動範囲を規制する第1ストッパを構成している。
【0050】
同様に、第2連結板部862に対して第2方向Xの他方側X2には、第1カバー部材16の第2壁部162、ホルダ60の第2壁部62、および第2カバー部材17の第2壁部172の内面が、平面(第2被当接部119)を構成した状態で対向している。したがって、第2連結板部862は、可動体3が第2方向Xの他方側X2に移動した際に第2被当接部119と当接して可動体3の第2方向Xの他方側X2への可動範囲を規制する第2ストッパを構成している。
【0051】
(接続体90および粘弾性部材9の構成)
図2、
図4および
図5に示すように、支持体2および可動体3に対して、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体90が設けられている。本形態において、接続体90は、支持体2と可動体3とが第1方向Zで対向する個所に設けられた粘弾性部材9であり、第1方向Z、第2方向X、および第3方向Y方向に弾性的に変形可能である。粘弾性とは、粘性と弾性の両方を合わせた性質のことであり、ゲル状部材、プラスチック、ゴム等の高分子物質に顕著に見られる性質である。従って、粘弾性部材9として、各種ゲル状部材を用いることができる。また、粘弾性部材9として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0052】
本形態において、接続体90として粘弾性部材9のみが支持体2および可動体3の双方に接続されている。本形態において、粘弾性部材9として、可動体3の第1ヨーク86と支持体2の第1カバー部材16とが第1方向Zで対向する個所に第1粘弾性部材91が配置され、可動体3の第2ヨーク87と支持体2の第2カバー部材17とが第1方向Zで対向する個所に第2粘弾性部材92が配置されている。より具体的には、第1粘弾性部材91は、第1ヨーク86の第1板部860と第1カバー部材16の凹部166、167の底部との間に2つ配置され、第2粘弾性部材92は、第2ヨーク87の第2板部870と第2カバー部材17の凹部176、177の底部との間に2つ配置されている。
【0053】
ここで、第1粘弾性部材91は、第1ヨーク86の第1板部860と第1カバー部材16の凹部166、167の底部との間で第1方向Zに圧縮された状態で配置され、第2粘弾性部材92は、第2ヨーク87の第2板部870と第2カバー部材17の凹部176、177の底部との間で第1方向Zに圧縮された状態で配置されている。第1粘弾性部材91は、支持体2と接する面(第1カバー部材16の凹部166、167の底部)に接着され、可動体3と接する面(第1ヨーク86)と接着されている。第2粘弾性部材92は、支持体2と接する面(第2カバー部材17の凹部176、177の底部)に接着され、可動体3と接する面(第2ヨーク87)と接着されている。
【0054】
本形態において、粘弾性部材9(第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92)は、針入度が10度から110度であるシリコーン系ゲルである。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されており、この値が小さい程、硬いことを意味する。粘弾性部材9は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、粘弾性部材9は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。これに対して、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。一方、本形態のように、粘弾性部材9が厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。従って、粘弾性部材9では、運動方向によるバネ力が一定となる。それ故、本形態のように、粘弾性部材9のせん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもった振動を実現することができる。
【0055】
(基本動作)
本形態のアクチュエータ1において、コイル7に交流を印加すると、可動体3は、第2方向Xに振動するため、アクチュエータ1における重心が第2方向Xに変動する。このため、利用者は、第2方向Xの振動を体感することができる。その際、コイル7に印加する交流波形を調整して、可動体3が第2方向Xの一方側X1に移動する加速度と、可動体3が第2方向の他方側X2に移動する加速度とを相違させれば、利用者は、第2方向Xにおいて方向性を有する振動を体感することができる。
【0056】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1においては、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17は、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ一方の対角位置において、第1方向Z間が締結部材であるネジ18によって締め付けられる。また、第1方向Z間がネジ等の締結部材によって締め付けられない、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ支持体2の他方の対角位置において、第1カバー部材16に設けられた一対の円柱状ボス16gの先端部の周囲が、第2カバー部材17に設けられた一対の取付穴17gに囲まれる。第1方向Y間が締結部材によって締め付けられない、第2方向Xの軸線を跨ぐ支持体2の他方の対角位置において、第2カバー部材17に設けられた一対の円柱ボス16gが第1カバー部材16に設けられた一対の取付穴17gに嵌合されている。円柱ボス16gの外周面と取付穴17gの内周面には当接する当接部17jが形成されているので、円柱ボス16gと取付穴17gとに形成された当接部17jで当接することで、支持体2の他方の対角位置における第1カバー部材16および第2カバー部材17間の動きが抑止されて、第1カバー部材16および第2カバー部材17間の固定強度を確保することが可能になる。
【0057】
また、本形態では、一対の円柱状ボス16gは、各先端部の周囲と一対の取付穴17gの内周との間に所定の隙間を有する。このため、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ支持体2の他方の対角位置において、第1カバー部材16と第2カバー部材17との間に隙間が生じると、一対の円柱状ボス16gの各先端部の周囲と一対の取付穴17gの内周との間に傾きが生じ、一対の円柱状ボス16gの各先端部の周囲が一対の取付穴17gの内周に当接する。このように、支持体2の他方の対角位置において、一対の円柱状ボス16gの先端部の周囲が一対の取付穴17gに当接することで、支持体2の他方の対角位置における第1カバー部材16および第2カバー部材17間の動きが抑止されて、第1カバー部材16および第2カバー部材17間の固定強度が確保される。このため、支持体2の他方の対角位置に生じる、第1カバー部材16と第2カバー部材17との間の隙間に起因して、可動体3の支持体2に対する相対移動によって支持体2から異音が生じることを抑制または防止することが可能になる。
【0058】
(実施形態の変形例)
上記実施形態では、一対の円柱状ボス16gは、各先端部の周囲と一対の取付穴17gの内周との間に所定の隙間を有する場合について説明したが、一対の取付穴17gの内周に圧入される複数の突起を各先端部の外周囲に有するように構成してもよい。本構成によれば、第1カバー部材16と第2カバー部材17の部品成型時の寸法精度により、製品の組立時に一対の円柱状ボス16gと一対の取付穴17gとの相対位置に寸法誤差が生じても、一対の円柱状ボス16gの各先端部の外周囲における複数の突起が一対の取付穴17gの内周に圧入されることで、一対の円柱状ボス16gと一対の取付穴17gとの相対位置が矯正される。したがって、部品成型時に生じる部品の寸法誤差が吸収され、一対の円柱状ボス16gと一対の取付穴17gとの間には安定した嵌め合いが形成される。このため、支持体2の他方の対角位置に生じる、第1カバー部材16と第2カバー部材17との間の隙間に起因して、可動体3の支持体2に対する相対移動によって支持体2から異音が生じるのが安定して防止される。
【0059】
(他の実施形態)
上記実施形態では、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17は、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ一方の対角位置において、第1方向Z間が締結部材であるネジ18によって締め付けられ、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ他方の対角位置において、円柱状ボス16gの先端部周囲が取付穴17gの内周に囲まれることで、相互が固定された。しかし、
図10に示すアクチュエータ1Aのように、第1カバー部材16および第2カバー部材17間にスナップフィット方式の固定部材を設け、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17間の固定をより強固にするように構成してもよい。
【0060】
スナップフィット方式の固定部材は、第1カバー部材16および第2カバー部材17の一方の、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ他方の対角位置に近い位置の側面に設けられる突起部16hと、第1カバー部材16および第2カバー部材17の他方の、第2方向Xの軸線Cを跨ぐ他方の対角位置に近い位置の側面に設けられるフック部17hとから構成される。本形態では、突起部16hは、第1カバー部材16の第2方向Xの一方側X1および他方側X2の両端の側面に、第3方向Yに延在して互いに離反する方向に突出して一対設けられている。フック部17hは、第2カバー部材17の第2方向Xの一方側X1および他方側X2の両端の側面に、第1方向Zの一方側Z1にUの字状に突出して一対設けられている。フック部17hは突起部16hに係合する係合部を構成し、突起部16hに係合することで、フック部17hが有する弾性により第1カバー部材16および第2カバー部材17間に第1方向Zにおいて互いに近付かせる力を作用させる。
【0061】
上記実施形態ではカバー11の外面側110は平面であったが、
図10、
図11および
図12に示すように、本形態では、突起部16hが設けられる第1カバー部材16の外面側には、フック部17hの外周囲が嵌まる凹部16iが形成されている。また、フック部17hのUの字状部内周には突起部16hが嵌まる切り欠き17iが矩形状に形成されている。これら以外の本形態のアクチュエータ1Aの構成は、上記実施形態のアクチュエータ1と同様な構成をしている。
【0062】
本構成によれば、第1カバー部材16および第2カバー部材17の一方の、他方の対角位置に近い位置の側面に設けられた突起部16hに、第1カバー部材16および第2カバー部材17の他方の、他方の対角位置に近い位置の側面に設けられたフック部17hが係合することで、第1カバー部材16および第2カバー部材17間には、他方の対角位置に近い位置の第1方向Zにおいて、互いを近付かせる力が作用する。したがって、この力により、支持体2の他方の対角位置において、部品の寸法精度の影響を受けずに、第1カバー部材16と第2カバー部材17との間に隙間が生じるのが抑制され、支持体2を構成する各部品をガタつきなく組み付けることができる。このため、一対の円柱状ボス16gの先端部の周囲が一対の取付穴17gに囲まれることで、第1カバー部材16および第2カバー部材17間の動きが抑止されて第1カバー部材16および第2カバー部材17間の固定強度が確保されると共に、突起部16hにフック部17hが係合することで、第1カバー部材16と第2カバー部材17との間に隙間が生じるのが抑制されて、第1カバー部材16および第2カバー部材17間がガタつかなくなる。このため、支持体2の他方の対角位置に生じる、第1カバー部材16と第2カバー部材17との間の隙間に起因して、可動体3の支持体2に対する相対移動によって支持体2から異音が生じることを抑制または防止することが可能になる。
【0063】
また、本形態では、支持体2が、第3方向Yの寸法が第2方向Xの寸法より小さく、突起部16hおよびフック部17hが、第1カバー部材16および第2カバー部材17の第2方向Xの両側面における、小さな寸法の第3方向Yにおける中心の軸線C上に設けられている。このように突起部16hおよびフック部17hが、可動体3が振動する方向である第2方向Xの軸線C上に設けられることで、可動体3が振動しても第1カバー部材16と第2カバー部材17との間の密着性が維持される。このため、第1カバー部材16および第2カバー部材17間がガタつくのが強固に抑制され、可動体3の支持体2に対する相対移動によって支持体2から生じる異音を防止する効果が向上する。
【0064】
(実施形態および他の実施形態の変形例)
上記実施形態および他の実施形態では、2つの磁石8(第1磁石81および第2磁石82)を有していたが、例えば、コイル7に対して第1方向Zの一方側Z1のみに磁石8が配置され、第1方向Zの他方側Z2に第2ヨーク87のみが存在する態様の場合に本発明を適用してもよい。
【0065】
上記実施形態および他の実施形態では、粘弾性部材9としてシリコーン系ゲル等のゲル状部材を用いたが、ゴム等を粘弾性部材として用いてもよい。また、上記実施形態および他の実施形態では、接続体90として粘弾性部材9を用いたが、バネ等の弾性部材を用いてもよい。
【0066】
上記実施形態および他の実施形態では、コイル7およびホルダ60が支持体2に設けられ、磁石8およびヨークが可動体3に設けられていたが、コイル7およびホルダ60が可動体3に設けられ、磁石8およびヨークが支持体2に設けられている場合に本発明を適用してもよい。また、上記実施形態および他の実施形態では、可動体3を第2方向Xのみに駆動するアクチュエータ1に本発明を適用したが、可動体3を第2方向Xおよび第3方向Yに駆動するアクチュエータ1に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1、1A…アクチュエータ、2…支持体、3…可動体、6…磁気駆動機構、7、71、72…コイル、8…磁石、9…粘弾性部材(接続体)、10…位置決めピン、11…カバー、15…配線基板、16…第1カバー部材、16a、16b、16e、16f、17e、17f、60e、60f、60g…貫通穴、16c、17c、155、638、681…穴、16g…円柱状ボス(突出部)、16h…突起部、16i、69…凹部、17…第2カバー部材、17g…取付穴、17h…フック部(係合部)、17j…当接部、18、19…ネジ、60…ホルダ、60c、60d、636、873、874…凸部、61、161、171…第1壁部、62、162、172…第2壁部、63、163、173…第3壁部、64、164、174…第4壁部、66、67…コイル保持穴、68…取付板、81…第1磁石、82…第2磁石、86…第1ヨーク、87…第2ヨーク、90…接続体、91…第1粘弾性部材、92…第2粘弾性部材、110…外面側、111…第1側面、112…第2側面、113…第3側面、114…第4側面、118…第1被当接部、119…第2被当接部、601…第1開口部、602…第2開口部、637…ガイド溝、661、671…受け部、701…長辺、702…短辺、706…第1端部、707…第2端部、860…第1板部、861…第1連結板部、862…第2連結板部、870…第2板部、X…第2方向、Y…第3方向、Z…第1方向