(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】油圧ショベル駆動システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20221026BHJP
F15B 11/17 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
E02F9/22 K
F15B11/17
(21)【出願番号】P 2018187512
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】青木 誠司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 守行
(72)【発明者】
【氏名】弓達 陽治
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-299027(JP,A)
【文献】特開2005-299376(JP,A)
【文献】特許第6235917(JP,B2)
【文献】特開2012-241803(JP,A)
【文献】特開2008-115990(JP,A)
【文献】特開2008-274988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブーム制御弁を介してブームシリンダへ作動油を供給し、第1バケット制御弁を介してバケットシリンダへ作動油を供給する第1ポンプと、
第1アーム制御弁を介してアームシリンダへ作動油を供給
し、第2ブーム制御弁を介して前記ブームシリンダへ作動油を供給する第2ポンプと、
旋回制御弁を介して旋回モータへ作動油を供給し、第2バケット制御弁を介して前記バケットシリンダへ作動油を供給する第3ポンプと、
バケット掘削操作またはバケットダンプ操作が他の操作と同時に行われるときは前記第1バケット制御弁と前記第2バケット制御弁の一方または双方を作動させ、バケット掘削操作が単独で行われるときは前記第1バケット制御弁と前記第2バケット制御弁の双方を作動させる制御装置と、
を備え、
前記第1ポンプは、第2アーム制御弁を介して前記アームシリンダへ作動油を供給し、
前記第3ポンプは、第3アーム制御弁を介して前記アームシリンダへ作動油を供給し、
前記制御装置は、アーム引き操作が単独で行われるときに、前記第1アーム制御弁、前記第2アーム制御弁および前記第3アーム制御弁を作動させ、アーム引き操作またはアーム押し操作がブーム上げ操作と同時に行われるときに、前記第1アーム制御弁のみまたは前記第1アーム制御弁および前記第3アーム制御弁を作動させる、油圧ショベル駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル駆動システムは、一般に、油圧アクチュエータとして旋回モータ、ブームシリンダ、アームシリンダおよびバケットシリンダを含み、これらの油圧アクチュエータへは1つまたは2つのポンプから作動油が供給される。近年では、例えば大型の油圧ショベル向けに、3つのポンプが用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1~第3ポンプを含む油圧ショベル駆動システムが開示されている。具体的に、ブームシリンダおよびアームシリンダのそれぞれへは、ブーム制御弁またはアーム制御弁を介して第1ポンプおよび第2ポンプから作動油が供給され、旋回モータへは、旋回制御弁を介して第3ポンプから作動油が供給される。また、バケットシリンダへは、バケット制御弁を介して第2ポンプおよび第3ポンプから作動油が供給される。
【0004】
より詳しくは、バケットシリンダへは、バケット操作が旋回操作と同時に行われるときは第1バケット制御弁を介して第2ポンプから作動油が供給され、旋回操作が行われずにバケット操作が行われるときは第2バケット制御弁を介して第3ポンプから作動油が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された油圧ショベル駆動システムに対しては、バケットシリンダの速度をより速くしたいという要望がある。
【0007】
そこで、本発明は、バケットシリンダの速度をより速くすることができる油圧ショベル駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の油圧ショベル駆動システムは、ブーム制御弁を介してブームシリンダへ作動油を供給し、第1バケット制御弁を介してバケットシリンダへ作動油を供給する第1ポンプと、アーム制御弁を介してアームシリンダへ作動油を供給する第2ポンプと、旋回制御弁を介して旋回モータへ作動油を供給し、第2バケット制御弁を介して前記バケットシリンダへ作動油を供給する第3ポンプと、バケット掘削操作またはバケットダンプ操作が他の操作と同時に行われるときは前記第1バケット制御弁と前記第2バケット制御弁の一方または双方を作動させ、バケット掘削操作が単独で行われるときは前記第1バケット制御弁と前記第2バケット制御弁の双方を作動させる制御装置と、
を備える、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、少なくともバケット掘削操作が単独で行われるときは、第1ポンプと第3ポンプの双方からバケットシリンダへ作動油が供給されるので、バケットシリンダの速度をより速くすることができる。
【0010】
例えば、前記ブーム制御弁および前記アーム制御弁は、それぞれ第1ブーム制御弁および第1アーム制御弁であり、前記第1ポンプは、第2アーム制御弁を介して前記アームシリンダへ作動油を供給し、前記第2ポンプは、第2ブーム制御弁を介して前記ブームシリンダへ作動油を供給してもよい。さらに、前記第3ポンプは、第3アーム制御弁を介して前記アームシリンダへ作動油を供給してもよい。
【0011】
前記制御装置は、アーム引き操作が単独で行われるときに、前記第1アーム制御弁、前記第2アーム制御弁および前記第3アーム制御弁を作動させ、アーム引き操作またはアーム押し操作がブーム上げ操作と同時に行われるときに、前記第1アーム制御弁のみまたは前記第1アーム制御弁および前記第3アーム制御弁を作動させてもよい。この構成によれば、アーム引き操作が単独で行われるときは、第1ポンプ、第2ポンプおよび第3ポンプの全てからアームシリンダへ作動油が供給されるので、アームシリンダの速度をより速くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バケットシリンダの速度をより速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベル駆動システムの主回路図である。
【
図2】
図1に示す油圧ショベル駆動システムの操作系回路図である。
【
図4】変形例の油圧ショベル駆動システムの一部の主回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および
図2に、本発明の一実施形態に係る油圧ショベル駆動システム1を示し、
図3に、その駆動システム1が搭載された油圧ショベル10を示す。
【0015】
図3に示す油圧ショベル10は自走式であり、走行体11を含む。また、油圧ショベル10は、走行体11に旋回可能に支持された旋回体12と、旋回体12に対して俯仰するブームを含む。ブームの先端には、アームが揺動可能に連結されており、アームの先端には、バケットが揺動可能に連結されている。旋回体12には、運転席が設置されたキャビン13が設けられている。なお、油圧ショベル10は自走式でなくてもよい。
【0016】
駆動システム1は、油圧アクチュエータとして、
図3に示すブームシリンダ14、アームシリンダ15およびバケットシリンダ16を含むとともに、
図1に示す旋回モータ17および図示しない左右一対の走行モータを含む。旋回モータ17は旋回体12を旋回させ、ブームシリンダ14はブームを俯仰させ、アームシリンダ15はアームを揺動させ、バケットシリンダ16はバケットを揺動させる。
【0017】
また、駆動システム1は、上述した油圧アクチュエータへ作動油を供給する第1主ポンプ21、第2主ポンプ23および第3主ポンプ25を含む。ブームシリンダ14へは、第1主ポンプ21および第2主ポンプ23から第1ブーム制御弁51および第2ブーム制御弁54を介して作動油が供給される。アームシリンダ15へは、第2主ポンプ23、第1主ポンプ21および第3主ポンプ25から第1アーム制御弁64、第2アーム制御弁61および第3アーム制御弁67を介して作動油が供給される。バケットシリンダ16へは、第1バケット制御弁41および第2バケット制御弁44を介して第1主ポンプ21および第3主ポンプ25から作動油が供給される。旋回モータ17へは、旋回制御弁56を介して第3主ポンプ25から作動油が供給される。図示は省略するが、一対の走行モータのそれぞれへは走行制御弁を介して第1主ポンプ21または第2主ポンプ23から作動油が供給される。以下では、走行制御弁についての説明を省略する。
【0018】
上述した制御弁は、全てスプール弁である。本実施形態では、全ての制御弁がパイロット圧に応じて作動する。ただし、全ての制御弁が電磁パイロット式であってもよい。また、本実施形態では、第2ブーム制御弁54が2位置弁であり、その他の制御弁が3位置弁である。すなわち、第2ブーム制御弁54は1つのパイロットポートを有するが、第2ブーム制御弁54以外の制御弁は一対のパイロットポートを有する。第2ブーム制御弁54は、ブーム上げ操作が行われるときにのみ作動する。ただし、第2ブーム制御弁54は、ブーム上げ操作が行われるときおよびブーム下げ操作が行われるときに作動する3位置弁であってもよい。
【0019】
具体的に、第1バケット制御弁41、第1ブーム制御弁51および第2アーム制御弁61は、第1ポンプライン31により第1主ポンプ21と接続されている。第1ポンプライン31は、第1主ポンプ21につながる共通路と、この共通路から分岐して第1バケット制御弁41、第1ブーム制御弁51および第2アーム制御弁61につながる複数の分岐路を含む。第1主ポンプ21と接続された全ての制御弁はタンクライン33によりタンクと接続されている。また、本実施形態では、第1ポンプライン31の全ての分岐路の上流側で共通路からセンターバイパスライン32が分岐しており、このセンターバイパスライン32が第1主ポンプ21と接続された全ての制御弁を経由してタンクまで延びている。
【0020】
第2ブーム制御弁54および第1アーム制御弁64は、第2ポンプライン34により第2主ポンプ23と接続されている。第2ポンプライン34は、第2主ポンプ23につながる共通路と、この共通路から分岐して第2ブーム制御弁54および第1アーム制御弁64につながる複数の分岐路を含む。第2主ポンプ23と接続された第2ブーム制御弁54以外の制御弁はタンクライン36によりタンクと接続されている。また、本実施形態では、第2ポンプライン34の全ての分岐路の上流側で共通路からセンターバイパスライン35が分岐しており、このセンターバイパスライン35が第2主ポンプ23と接続された全ての制御弁を経由してタンクまで延びている。
【0021】
第2バケット制御弁44、旋回制御弁56および第3アーム制御弁67は、第3ポンプライン37により第3主ポンプ25と接続されている。第3ポンプライン37は、第3主ポンプ25につながる共通路と、この共通路から分岐して第2バケット制御弁44、旋回制御弁56および第3アーム制御弁67につながる複数の分岐路を含む。第3主ポンプ25と接続された全ての制御弁はタンクライン39によりタンクと接続されている。また、本実施形態では、第3ポンプライン37の全ての分岐路の上流側で共通路からセンターバイパスライン38が分岐しており、このセンターバイパスライン38が第3主ポンプ25と接続された全ての制御弁を経由してタンクまで延びている。
【0022】
第1ブーム制御弁51は、第1ブーム上げ供給ライン53およびブーム下げ供給ライン52によりブームシリンダ14と接続されている。第2ブーム制御弁54は、第2ブーム上げ供給ライン55により第1ブーム上げ供給ライン53と接続されている。
【0023】
第1アーム制御弁64は、第1アーム引き供給ライン66および第1アーム押し供給ライン65によりアームシリンダ15と接続されている。第2アーム制御弁61は、第2アーム引き供給ライン63により第1アーム引き供給ライン66と接続されているとともに、第2アーム押し供給ライン62により第1アーム押し供給ライン65と接続されている。第3アーム制御弁67は、第3アーム引き供給ライン69により第1アーム引き供給ライン66と接続されているとともに、第3アーム押し供給ライン68により第1アーム押し供給ライン65と接続されている。
【0024】
第1バケット制御弁41は、第1バケット掘削供給ライン42および第1バケットダンプ供給ライン43によりバケットシリンダ16と接続されている。第2バケット制御弁44は、第2バケット掘削供給ライン45により第1バケット掘削供給ライン42と接続されているとともに、第2バケットダンプ供給ライン46により第1バケットダンプ供給ライン43と接続されている。
【0025】
旋回制御弁56は、左旋回供給ライン57および右旋回供給ライン58により旋回モータ17と接続されている。
【0026】
第1主ポンプ21、第2主ポンプ23および第3主ポンプ25は、図略のエンジンにより駆動される。第1主ポンプ21、第2主ポンプ23および第3主ポンプ25のそれぞれは、傾転角が変更可能な可変容量型のポンプ(斜板ポンプまたは斜軸ポンプ)である。第1主ポンプ21の傾転角は第1レギュレータ22により調整され、第2主ポンプ23の傾転角は第2レギュレータ24により調整され、第3主ポンプ25の傾転角は第3レギュレータ26により調整される。
【0027】
本実施形態では、第1主ポンプ21、第2主ポンプ23および第3主ポンプ25の吐出流量が電気ポジティブコントロール方式で制御される。このため、第1レギュレータ22、第2レギュレータ24および第3レギュレータ26は、電気信号により作動する。例えば、第1レギュレータ22、第2レギュレータ24および第3レギュレータ26のそれぞれは、主ポンプ(21、23または25)が斜板ポンプである場合、主ポンプの斜板と連結されたサーボピストンに作用する油圧を電気的に変更するものであってもよいし、主ポンプの斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。
【0028】
ただし、第1主ポンプ21、第2主ポンプ23および第3主ポンプ25の吐出流量は油圧ネガティブコントロール方式で制御されてもよい。この場合、第1レギュレータ22、第2レギュレータ24および第3レギュレータ26は油圧により作動する。あるいは、第1主ポンプ21、第2主ポンプ23および第3主ポンプ25の吐出流量はロードセンシング方式で制御されてもよい。
【0029】
上述したキャビン13内には、
図2に示すようなブーム操作装置81、アーム操作装置82、バケット操作装置83および旋回操作装置84を含む複数の操作装置が配置されている。各操作装置は、対応する油圧アクチュエータを可動させるための操作を受ける操作部(操作レバーまたはフットペダル)を含み、操作部の操作量に応じた操作信号を出力する。
【0030】
具体的に、ブーム操作装置81は、操作レバーの傾倒角に応じた大きさのブーム操作信号(ブーム上げ操作信号またはブーム下げ操作信号)を出力し、アーム操作装置82は、操作レバーの傾倒角に応じた大きさのアーム操作信号(アーム引き操作信号またはアーム押し操作信号)を出力する。また、バケット操作装置83は、操作レバーの傾倒角に応じた大きさのバケット操作信号(バケット掘削操作信号またはバケットダンプ操作信号)を出力し、旋回操作装置84は、操作レバーの傾倒角に応じた大きさの旋回操作信号(左旋回操作信号または右旋回操作信号)を出力する。
【0031】
なお、複数の操作装置のうちの1つまたは複数のペアが一体となっていてもよい。例えば、ブーム操作装置81とバケット操作装置83とが一体となり、アーム操作装置82と旋回操作装置84とが一体となってもよい。
【0032】
本実施形態では、各操作装置が操作信号として電気信号を制御装置8へ出力する電気ジョイスティックである。このため、全ての制御弁のパイロットポートは、電磁比例弁71~78と接続されている。
【0033】
より詳しくは、第1ブーム制御弁51のパイロットポートは一対の電磁比例弁73と接続されており、第2ブーム制御弁54のパイロットポートは電磁比例弁74と接続されている。第1アーム制御弁64のパイロットポートは一対の電磁比例弁77と接続されており、第2アーム制御弁61のパイロットポートは一対の電磁比例弁76と接続されており、第3アーム制御弁67のパイロットポートは一対の電磁比例弁78と接続されている。第1バケット制御弁41のパイロットポートは一対の電磁比例弁71と接続されており、第2バケット制御弁44のパイロットポートは一対の電磁比例弁72と接続されている。旋回制御弁56のパイロットポートは一対の電磁比例弁75と接続されている。
【0034】
電磁比例弁71~78は、副ポンプ27と接続されている。副ポンプ27は、第1主ポンプ21、第2主ポンプ23および第3主ポンプ25を駆動するエンジンにより駆動される。
【0035】
本実施形態では、電磁比例弁71~78が、指令電流と二次圧が正の相関を示す正比例型である。ただし、電磁比例弁71~78のそれぞれは、指令電流と二次圧が負の相関を示す逆比例型であってもよい。
【0036】
上述した制御装置8は、各操作装置の操作部が操作を受けたときに、その操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど対応する主ポンプ(21、23および/または25)の吐出流量が増大するように対応するレギュレータ(22、24および/または26)を制御する。例えば、制御装置8は、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有するコンピュータであり、ROMに記憶されたプログラムがCPUにより実行される。
【0037】
また、制御装置8は、各操作装置の操作部が操作を受けたときに、対応する制御弁を電磁比例弁を介して制御する。具体的に、制御装置8は、操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど、対応する制御弁の作動量(スプールストローク)を大きくする。
【0038】
例えば、制御装置8は、ブーム上げ操作が単独で行われるとき(ブーム操作装置81からブーム上げ操作信号が出力され、他の操作装置から当該操作装置が中立であることを示す操作信号が出力されているとき)は、第1ブーム制御弁51と第2ブーム制御弁54の双方を作動させる。
【0039】
一方、ブーム上げ操作がアーム引き操作またはアーム押し操作と同時に行われるときは、制御装置8は、ブームに関しては、第2ブーム制御弁54を作動させずに第1ブーム制御弁51のみを作動させる。アームに関しては、制御装置8は、第2アーム制御弁61を作動させずに、第1アーム制御弁64のみ、または第1アーム制御弁64および第3アーム制御弁67を作動させる。第3アーム制御弁67を作動させるか否かは、アーム操作量とブーム操作量との比率に応じて決定される。すなわち、その比率が閾値未満であれば第3アーム制御弁67を作動させず、閾値以上であれば第3アーム制御弁67を作動させる。あるいは、第3アーム制御弁67を作動させるか否かは、アームシリンダ15の諸元値(ヘッド直径、ロッド直径、ストローク量)とブームシリンダ14の諸元値(ヘッド直径、ロッド直径、ストローク量)のバランスに応じて予め決定されてもよい。
【0040】
また、制御装置8は、アーム引き操作が単独で行われるときは、第1アーム制御弁64、第2アーム制御弁61および第3アーム制御弁67の全てを作動させる。一方、アーム押し操作が単独で行われるときは、制御装置8は、第3アーム制御弁67を作動させずに第1アーム制御弁64および第2アーム制御弁61を作動させるか、第1アーム制御弁64、第2アーム制御弁61および第3アーム制御弁67の全てを作動させる。アーム押し操作が単独で行われるときに第3アーム制御弁67を作動させるか否かは、アーム操作量に応じて決定される。すなわち、アーム操作量が閾値未満であれば第3アーム制御弁67を作動させず、閾値以上であれば第3アーム制御弁67を作動させる。あるいは、第3アーム制御弁67を作動させるか否かは、アームシリンダ15の諸元値(ヘッド直径、ロッド直径、ストローク量)に応じて予め決定されてもよい。
【0041】
また、制御装置8は、バケット掘削操作が単独で行われるときは、第1バケット制御弁41および第2バケット制御弁44の双方を作動させる。一方、バケットダンプ操作が単独で行われるときは、制御装置8は、第2バケット制御弁44を作動させずに第1バケット制御弁41を作動させるか、第1バケット制御弁41および第2バケット制御弁44の双方を作動させる。バケットダンプ操作が単独で行われるときに第2バケット制御弁44を作動させるか否かは、バケット操作量に応じて決定される。すなわち、バケット操作量が閾値未満であれば第2バケット制御弁44を作動させず、閾値以上であれば第2バケット制御弁44を作動させる。あるいは、第2バケット制御弁44を作動させるか否かは、バケットシリンダ16の諸元値(ヘッド直径、ロッド直径、ストローク量)に応じて予め決定されてもよい。
【0042】
一方、バケット掘削操作またはバケットダンプ操作が他の操作と同時に行われるときは、制御装置8は、第1バケット制御弁41と第2バケット制御弁44の一方または双方を作動させる。例えば、バケット掘削操作またはバケットダンプ操作が左旋回操作または右旋回操作と同時に行われるときは、制御装置8は、第2バケット制御弁44を作動させずに第1バケット制御弁41を作動させる。このとき、第1主ポンプ21がバケットシリンダ16専用、第3主ポンプ25が旋回モータ17専用となる。
【0043】
また、バケット掘削操作またはバケットダンプ操作がアーム引き操作またはアーム押し操作と同時に行われるときは、制御装置8は、第1バケット制御弁41を作動させずに第2バケット制御弁44を作動させるか、第1バケット制御弁41と第2バケット制御弁42の双方を作動させる。第1バケット制御弁41を作動させるか否かは、バケット操作量とアーム操作量との比率に応じて決定される。すなわち、その比率が閾値未満であれば第1バケット制御弁41を作動させず、閾値以上であれば第1バケット制御弁41を作動させる。アームに関しては、制御装置8は、第3アーム制御弁67を作動させずに第1アーム制御弁64および第2アーム制御弁61を作動させる。このとき、バケット操作量とアーム操作量との比率が閾値未満の場合は、第1主ポンプ21および第2主ポンプ23がアームシリンダ15専用、第3主ポンプ25がバケットシリンダ16専用となる。
【0044】
さらには、例えば、バケット掘削操作またはバケットダンプ操作がブーム上げ操作およびアーム引き操作と同時に行われるときは、制御装置8は、第1バケット制御弁41を作動させずに第2バケット制御弁44を作動させる。ブームおよびアームに関しては、制御装置8は、第2ブーム制御弁54を作動させずに第1ブーム制御弁51を作動させ、第2アーム制御弁61および第3アーム制御弁67を作動させずに第1アーム制御弁64のみを作動させる。このとき、第1主ポンプ21がブームシリンダ14専用、第2主ポンプ23がアームシリンダ15専用、第3主ポンプ25がバケットシリンダ16専用となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の駆動システム1では、少なくともバケット掘削操作が単独で行われるときは、第1主ポンプ21と第3主ポンプ25の双方からバケットシリンダ16へ作動油が供給されるので、バケットシリンダ16の速度をより速くすることができる。
【0046】
また、本実施形態では、アーム引き操作が単独で行われるときは、第1主ポンプ21、第2主ポンプ23および第3主ポンプ25の全てからアームシリンダ15へ作動油が供給されるので、アームシリンダ15の速度をより速くすることができる。
【0047】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0048】
例えば、ブーム操作装置81、アーム操作装置82、バケット操作装置83および旋回操作装置84のそれぞれは、操作信号としてパイロット圧を出力するパイロット操作弁であってもよい。この場合、第1ブーム制御弁51用の電磁比例弁73を省略し、第1ブーム制御弁51のパイロットポートをパイロット操作弁であるブーム操作装置81と接続してもよい。この点は、第1アーム制御弁64および旋回制御弁56でも同様である。第1バケット制御弁41は、バケット操作装置83がパイロット操作弁である場合でも、一対の電磁比例弁を介して71を介して制御される。パイロット操作弁が採用される場合、パイロット操作弁から出力されるパイロット圧が圧力センサで検出されて電気信号として制御装置8へ入力される。
【0049】
また、センターバイパスライン32,35,38の代わりに、ポンプライン(31、34または37)の共通路から分岐して制御弁を経由せずにタンクまで延びる、アンロード弁が設けられたアンロードラインが採用されてもよい。
【0050】
また、
図4に示すように、第1アーム制御弁64は、アーム引き時にアームシリンダ15から第1アーム押し供給ライン65を通じて排出される作動油を、逆止弁を介して第1アーム引き供給ライン66へ流入させるように構成されてもよい。このような作動油が再生される構成であれば、第3アーム制御弁67が無くてもアーム引き時にアームシリンダ15の速度を速くすることができる。
【0051】
より詳しくは、
図4に示す構成では、第1ポンプライン31の第2アーム制御弁61用の分岐路に逆止弁91が設けられ、第2ポンプライン34の第1アーム制御弁64用の分岐路に逆止弁92が設けられている。また、第1アーム制御弁64は、タンクライン36だけでなくタンクライン93によってもタンクと接続されている。タンクライン36はアーム押し専用であり、タンクライン93はアーム引き専用である。タンクライン93には、アーム引き操作時のアームシリンダ15への供給圧に応じて作動する可変絞り94が設けられている。
【0052】
ただし、上述したアーム引き時に作動油が再生される構成に加えて、第3アーム制御弁67が採用されていれば、再生される作動油の流量を低減させることができ、エネルギーロスを抑制することができる。なお、第1アーム制御弁64がアーム引き時に作動油が再生されるように構成されるか否かに拘らず、第3アーム制御弁67が省略されてもよい。
【0053】
また、第3アーム制御弁67が省略される場合は、第2アーム制御弁61も省略されてもよい。また、第3アーム制御弁67が省略されるか否かに拘らず、第2ブーム制御弁54が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 油圧ショベル駆動システム
10 油圧ショベル
14 ブームシリンダ
15 アームシリンダ
16 バケットシリンダ
17 旋回モータ
21 第1主ポンプ
23 第2主ポンプ
25 第3主ポンプ
41 第1バケット制御弁
44 第2バケット制御弁
51 第1ブーム制御弁
54 第2ブーム制御弁
56 旋回制御弁
61 第2アーム制御弁
64 第1アーム制御弁
67 第3アーム制御弁
8 制御装置