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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221026BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20221026BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
B05C11/08
H01L21/30 569C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018189984
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020061405
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】猶原 英司
(72)【発明者】
【氏名】沖田 有史
(72)【発明者】
【氏名】角間 央章
(72)【発明者】
【氏名】増井 達哉
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-009812(JP,A)
【文献】特開2016-136572(JP,A)
【文献】特開2015-152475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B05C 11/08
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持部に基板を保持させる保持工程と、
前記基板保持部を回転させて、前記基板を回転させる回転工程と、
前記基板保持部の外周を囲むカップ部材を上昇させて、前記カップ部材の上端を、前記基板保持部に保持された前記基板の上面よりも高い上端位置に位置させる上昇工程と、
前記上端位置よりも低い位置にあるノズルの吐出口から、前記基板保持部に保持された前記基板の上面の端部に、処理液を吐出するベベル処理工程と、
前記ノズルの前記吐出口から吐出される処理液と、前記基板の上面に写る前記処理液である鏡像とを含む撮像領域であって、前記基板保持部に保持された前記基板の上方の撮像位置から見た撮像領域を、カメラに撮像させて、撮像画像を取得する撮像工程と、
前記撮像画像における前記処理液と前記鏡像とに基づいて、前記処理液の着液位置を監視する監視工程と
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記撮像画像において、前記処理液および前記鏡像を含む全体像が前記処理液と前記鏡像との境界において屈曲しており、
前記監視工程においては、前記処理液の前記全体像の屈曲位置に基づいて前記着液位置を求める、基板処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記監視工程において、
前記撮像画像に対してエッジ検出処理および二値化処理を行って得られた二値化画像から、前記処理液の吐出方向に沿って延びる第1直線成分と、前記鏡像の吐出方向に沿って延びる第2直線成分とを検出し、前記第1直線成分と前記第2直線成分との交点を前記屈曲位置として求める、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記カメラの露光時間は基板が1回転するのに要する時間以上に設定される、基板処理方法。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の基板処理方法であって、
基板が1回転するのに要する時間以上の時間内に前記カメラによって取得された複数の撮像画像を積分または平均して得られた撮像画像における前記全体像に基づいて、前記着液位置を求める、基板処理方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記監視工程においては、
前記撮像画像における前記基板の周縁の位置を特定し、
前記基板の周縁の位置を基準とした前記処理液の前記着液位置を求める、基板処理方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記監視工程は、
求めた前記着液位置が所定の範囲内にないときに、その旨を報知部に報知させる工程を含む、基板処理方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記監視工程において、
機械学習済みの分類器によって、前記撮像画像を、着液位置の異常なしのカテゴリ、および、着液位置の異常ありのカテゴリのいずれかに分類する、基板処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理方法であって、
前記監視工程において、
前記撮像画像から、前記ノズルの直下に位置し、前記処理液のおよび前記鏡像を含む領域を切り出し、切り出した領域の画像を前記分類器に入力する、基板処理方法。
【請求項10】
基板を保持し、前記基板を回転させる基板保持部と、
前記基板保持部の外周を囲むカップ部材と、
前記カップ部材を上昇させて、前記カップ部材の上端を、前記基板保持部に保持された前記基板の上面よりも高い上端位置に位置させる昇降機構と、
前記上端位置よりも低い位置にある吐出口を有し、前記吐出口から、前記基板保持部に保持された前記基板の上面の端部に、処理液を吐出するノズルと、
前記ノズルの前記吐出口から吐出される処理液と、前記基板の上面に写る前記処理液である鏡像とを含む撮像領域であって、前記基板保持部に保持された前記基板の上方の撮像位置から見た撮像領域を、カメラに撮像させて、撮像画像を取得するカメラと、
前記撮像画像における前記処理液と前記鏡像とに基づいて、前記処理液の着液位置を監視する画像処理部と
を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して処理を行う装置として、基板を水平面内で回転させつつ、その基板の表面に吐出ノズルから処理液を吐出する基板処理装置が用いられている。吐出ノズルから基板の略中央へと着液した処理液は基板の回転に伴う遠心力によって全面に広がって、その周縁から外側に飛散する。処理液が基板の全面に広がることにより、基板の全面に対して処理液を作用させることができる。処理液としては、基板に対する処理に応じた薬液または洗浄液などが採用される。
【0003】
このような基板処理装置において、処理液が適切に吐出されているか否かを監視すべく、カメラを設ける技術が提案されている(特許文献1~5)。
【0004】
また半導体基板の製造工程において、その基板の周縁端部上に残留した種々の膜が、基板のデバイス面に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
そこで、従来から、基板の周縁端部から当該膜を除去するためのベベル処理が提案されている。ベベル処理においては、基板を水平面内で回転させつつ、その基板の端部へと吐出ノズルから除去用の処理液を吐出することにより、当該処理液によって基板の周縁端部の膜を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-173148号公報
【文献】特開2017-29883号公報
【文献】特開2015-18848号公報
【文献】特開2016-122681号公報
【文献】特開2008-135679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ベベル処理においては、基板の端部のみに処理液を供給すればよいので、その処理液の流量は少なくなる。つまり、吐出ノズルから吐出された液柱状の処理液は細くなる。よって、この液柱状の処理液は、基板の回転に伴う気流、および、周囲に発生する静電気等の諸要因の影響を受けやすく、その吐出状態は変動しやすい。具体的には、当該諸要因に起因して、処理液の基板に対する着液位置がずれ得る。着液位置のずれはプロセスに悪影響を与えるため、処理液の吐出状態を監視できることが望ましい。
【0008】
しかしながら、ベベル処理においては、吐出ノズルと基板との間の間隔が狭いので、吐出ノズルから吐出された液柱状の処理液を撮像するには、工夫が必要である。
【0009】
そこで、本願は、基板の端部に吐出された液柱状の処理液の着液位置を監視できる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基板処理方法の第1の態様は、基板保持部に基板を保持させる保持工程と、前記基板保持部を回転させて、前記基板を回転させる回転工程と、前記基板保持部の外周を囲むカップ部材を上昇させて、前記カップ部材の上端を、前記基板保持部に保持された前記基板の上面よりも高い上端位置に位置させる上昇工程と、前記上端位置よりも低い位置にあるノズルの吐出口から、前記基板保持部に保持された前記基板の上面の端部に、処理液を吐出するベベル処理工程と、前記ノズルの前記吐出口から吐出される処理液と、前記基板の上面に写る前記処理液である鏡像とを含む撮像領域であって、前記基板保持部に保持された前記基板の上方の撮像位置から見た撮像領域を、カメラに撮像させて、撮像画像を取得する撮像工程と、前記撮像画像における前記処理液と前記鏡像とに基づいて、前記処理液の着液位置を監視する監視工程とを備える。
【0011】
基板処理方法の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記撮像画像において、前記処理液および前記鏡像を含む全体像が前記処理液と前記鏡像との境界において屈曲しており、前記監視工程においては、前記処理液の前記全体像の屈曲位置に基づいて前記着液位置を求める。
【0012】
基板処理方法の第3の態様は、第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記監視工程において、前記撮像画像に対してエッジ検出処理および二値化処理を行って得られた二値化画像から、前記処理液の吐出方向に沿って延びる第1直線成分と、前記鏡像の吐出方向に沿って延びる第2直線成分とを検出し、前記第1直線成分と前記第2直線成分との交点を前記屈曲位置として求める。
【0013】
基板処理方法の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記カメラの露光時間は基板が1回転するのに要する時間以上に設定される。
【0014】
基板処理方法の第5の態様は、第2または第3の態様にかかる基板処理方法であって、基板が1回転するのに要する時間以上の時間内に前記カメラによって取得された複数の撮像画像を積分または平均して得られた撮像画像における前記全体像に基づいて、前記着液位置を求める。
【0015】
基板処理方法の第6の態様は、第1から第5のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記監視工程においては、前記撮像画像における前記基板の周縁の位置を特定し、前記基板の周縁の位置を基準とした前記処理液の前記着液位置を求める。
【0016】
基板処理方法の第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記監視工程は、求めた前記着液位置が所定の範囲内にないときに、その旨を報知部に報知させる工程を含む。
【0017】
基板処理方法の第8の態様は、第1から第7のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記監視工程において、機械学習済みの分類器によって、前記撮像画像を、着液位置の異常なしのカテゴリ、および、着液位置の異常ありのカテゴリのいずれかに分類する。
【0018】
基板処理方法の第9の態様は、第8の態様にかかる基板処理方法であって、前記監視工程において、前記撮像画像から、前記ノズルの直下に位置し、前記処理液のおよび前記鏡像を含む領域を切り出し、切り出した領域の画像を前記分類器に入力する。
【0019】
基板処理装置の態様は、基板を保持し、前記基板を回転させる基板保持部と、前記基板保持部の外周を囲むカップ部材と、前記カップ部材を上昇させて、前記カップ部材の上端を、前記基板保持部に保持された前記基板の上面よりも高い上端位置に位置させる昇降機構と、前記上端位置よりも低い位置にある吐出口を有し、前記吐出口から、前記基板保持部に保持された前記基板の上面の端部に、処理液を吐出するノズルと、前記ノズルの前記吐出口から吐出される処理液と、前記基板の上面に写る前記処理液である鏡像とを含む撮像領域であって、前記基板保持部に保持された前記基板の上方の撮像位置から見た撮像領域を、カメラに撮像させて、撮像画像を取得するカメラと、前記撮像画像における前記処理液と前記鏡像とに基づいて、前記処理液の着液位置を監視する画像処理部とを備える。
【発明の効果】
【0020】
基板処理方法の第1の態様および基板処理装置の態様によれば、基板の端部に吐出された液柱状の処理液の着液位置を監視できる。
【0021】
基板処理方法の第2の態様によれば、屈曲位置は基板Wの上面の上に位置するので、着液位置をより高い精度で求めることができる。
【0022】
基板処理方法の第3の態様によれば、適切に屈曲位置を求めることができる。
【0023】
基板処理方法の第4の態様によれば、基板の上面のパターンが平均化されて一様化されるので、撮像画像において処理液の鏡像に含まれるノイズを低減できる。
【0024】
基板処理方法の第5の態様によれば、基板の上面のパターンが平均化されて一様化されるので、撮像画像において処理液の鏡像に含まれるノイズを低減できる。
【0025】
基板処理方法の第6の態様によれば、基板の周縁に対する着液位置を求めるので、より適切に着液位置を監視できる。
【0026】
基板処理方法の第7の態様によれば、作業者が着液位置異常を認識できる。
【0027】
基板処理方法の第8の態様によれば、高い精度で異常を検出できる。
【0028】
基板処理方法の第9の態様によれば、処理液とは関連性の低い領域の影響を除去して分類を行うことができるので、その分類精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】基板処理装置の構成の概略的な一例を示す図である。
図2】処理ユニットの構成の概略的な一例を示す平面図である。
図3】処理ユニットの構成の概略的な一例を示す断面図である。
図4】カメラによって取得された撮像画像の一例を概略的に示す図である。
図5】カメラとカメラ保持部との構成の一例を概略的に示す斜視図である。
図6】基板処理の一例を示すフローチャートである。
図7】監視処理の一例を示すフローチャートである。
図8】撮像画像の一部を拡大した図である。
図9】二値化画像の一例を概略的に示す図である。
図10】処理ユニットの構成の概略的な一例を示す平面図である。
図11】処理ユニットの構成の概略的な一例を示す平面図である。
図12】制御部の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0031】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0032】
<基板処理装置の概要>
図1は、基板処理装置100の全体構成を示す図である。基板処理装置100は、基板Wに対して処理液を供給して基板Wに対する処理を行う装置である。基板Wは、例えば半導体基板である。この基板Wは略円板形状を有している。
【0033】
この基板処理装置100は、基板Wを水平面内で回転させつつ、基板Wの端部に処理液を供給することにより、基板Wの周縁端部に付着した不要物を除去することができる。この周縁端部の幅(径方向に沿う幅)は例えば0.5~3[mm]程度である。不要物としては、例えばSiO膜、SiN膜およびポリシリコン膜などの膜、および、パーティクル等が挙げられる。このような不要物を除去する処理液としては、フッ酸(HF)、リン酸(HPO)、アンモニア(NH)と過酸化水素(H)との混合溶液(SC-1)、および、フッ硝酸(フッ酸と硝酸(HNO)の混合液)などが挙げられる。基板処理装置100は、基板Wを回転させつつ、基板Wの端部に処理液を供給することにより、不要物を除去する。このような処理はベベル処理とも呼ばれる。
【0034】
基板処理装置100は、インデクサ102、複数の処理ユニット1および主搬送ロボット103を備える。インデクサ102は、装置外から受け取った未処理の基板Wを装置内に搬入するとともに、処理済みの基板Wを装置外に搬出する機能を有する。インデクサ102は、複数のキャリアを載置するとともに移送ロボットを備える(いずれも図示省略)。キャリアとしては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)またはSMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、あるいは、収納した状態で基板Wを外気に曝すOC(open cassette)を採用することができる。移送ロボットは、当該キャリアと主搬送ロボット103との間で基板Wを移送する。
【0035】
基板処理装置100には、12個の処理ユニット1が配置されている。詳細な配置構成は、3個の処理ユニット1を積層したタワーが主搬送ロボット103の周囲を囲むように4個配置されるというものである。換言すれば、主搬送ロボット103を囲んで配置された4個の処理ユニット1が3段に積層されており、図1はそのうちの1層を示している。なお、基板処理装置100に搭載される処理ユニット1の個数は12に限定されるものではなく、例えば8個または4個であっても良い。
【0036】
主搬送ロボット103は、処理ユニット1を積層した4個のタワーの中央に設置されている。主搬送ロボット103は、インデクサ102から受け取った未処理の基板Wを各処理ユニット1に搬入するとともに、各処理ユニット1から処理済みの基板Wを搬出してインデクサ102に渡す。
【0037】
<処理ユニット>
次に、処理ユニット1について説明する。以下、基板処理装置100に搭載された12個の処理ユニット1のうちの1つを説明するが、他の処理ユニット1についても同様である。図2は、処理ユニット1の平面図である。また、図3は、処理ユニット1の縦断面図である。
【0038】
処理ユニット1は、チャンバー10内に、主たる要素として、基板Wを水平姿勢(基板Wの法線が鉛直方向に沿う姿勢)に保持する基板保持部20と、基板保持部20に保持された基板Wの上面に処理液を供給するための3つの処理液供給部30,60,65と、基板保持部20の周囲を取り囲む処理カップ(カップ部材)40と、カメラ70とを備える。また、チャンバー10内における処理カップ40の周囲には、チャンバー10の内側空間を上下に仕切る仕切板15が設けられている。また処理ユニット1には、制御部9および報知部93が設けられている。
【0039】
<チャンバー>
チャンバー10は、鉛直方向に沿う側壁11、側壁11によって囲まれた空間の上側を閉塞する天井壁12および下側を閉塞する床壁13を備える。側壁11、天井壁12および床壁13によって囲まれた空間が基板Wの処理空間となる。また、チャンバー10の側壁11の一部には、チャンバー10に対して主搬送ロボット103が基板Wを搬出入するための搬出入口およびその搬出入口を開閉するシャッターが設けられている(いずれも図示省略)。
【0040】
チャンバー10の天井壁12には、基板処理装置100が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバー10内の処理空間に供給するためのファンフィルタユニット(FFU)14が取り付けられている。ファンフィルタユニット14は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバー10内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPAフィルタ)を備えており、チャンバー10内の処理空間に清浄空気のダウンフローを形成する。ファンフィルタユニット14から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレートを天井壁12の直下に設けるようにしても良い。
【0041】
<基板保持部>
基板保持部20は例えばスピンチャックである。この基板保持部20は、鉛直方向に沿って延びる回転軸24の上端に水平姿勢で固定された円板形状のスピンベース21を備える。スピンベース21の下方には回転軸24を回転させるスピンモータ22が設けられている。スピンモータ22は、回転軸24を介してスピンベース21を水平面内にて回転させる。また、スピンモータ22および回転軸24の周囲を取り囲むように筒状のカバー部材23が設けられている。
【0042】
円板形状のスピンベース21の外径は、基板保持部20に保持される円形の基板Wの径よりも若干大きい。よって、スピンベース21は、保持すべき基板Wの下面の全面と対向する保持面21aを有している。
【0043】
スピンベース21の保持面21aの周縁部には複数(本実施形態では4本)のチャックピン26が立設されている。複数のチャックピン26は、円形の基板Wの外周円に対応する円周上に沿って均等な間隔をあけて(本実施形態のように4個のチャックピン26であれば90°間隔にて)配置されている。複数のチャックピン26は、スピンベース21内に収容された図示省略のリンク機構によって連動して駆動される。基板保持部20は、複数のチャックピン26のそれぞれを基板Wの外周端に当接させて基板Wを把持することにより、当該基板Wをスピンベース21の上方で保持面21aに近接した水平姿勢にて保持することができるとともに(図3参照)、複数のチャックピン26のそれぞれを基板Wの外周端から離間させて把持を解除することができる。
【0044】
複数のチャックピン26による把持によって基板保持部20が基板Wを保持した状態にて、スピンモータ22が回転軸24を回転させることにより、基板Wの中心を通る鉛直方向に沿った回転軸CXまわりに基板Wを回転させることができる。ここでは、基板保持部20は図2において反時計回り方向に回転するものとする。
【0045】
<処理液供給部>
処理液供給部30は吐出ノズル31と固定部材32と移動機構33とを備えている。固定部材32は吐出ノズル31を固定する部材であり、例えばノズルアーム321とノズル基台322とを備えている。ノズルアーム321の先端には吐出ノズル31が取り付けられている。ノズルアーム321の基端側はノズル基台322に固定して連結されている。移動機構33はこの固定部材32を変位させることで、吐出ノズル31を移動させる。例えば移動機構33はモータであって、ノズル基台322を、鉛直方向に沿った軸のまわりで回動させる。ノズル基台322が回動することにより、図2中の矢印AR34にて示すように、吐出ノズル31は基板Wの端部の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で水平方向に沿って円弧状に移動する。
【0046】
処理液供給部30は複数の吐出ノズル31を備えていてもよい。図2および図3の例では、吐出ノズル31として3つの吐出ノズル31が示されている。3つの吐出ノズル31はノズルアーム321を介してノズル基台322に固定されている。よって、3つの吐出ノズル31は互いに同期して移動する。3つの吐出ノズル31は、処理位置において基板Wの周方向に沿って並ぶ位置に設けられている。3つの吐出ノズル31の周方向における間隔は例えば10数[mm]程度である。
【0047】
図3に例示するように、吐出ノズル31は配管34を介して処理液供給源37に接続されている。配管34の途中には開閉弁35が設けられている。吐出ノズル31の先端の下面には吐出口(不図示)が形成されている。開閉弁35が開くことにより、処理液供給源37からの処理液が配管34の内部を流れて吐出ノズル31の吐出口から吐出される。吐出ノズル31が処理位置で停止した状態で吐出された処理液は、基板保持部20に保持された基板Wの上面の端部に着液する。基板Wが回転することにより、吐出ノズル31からの処理液が基板Wの周縁端部の全領域に供給されて、当該周縁端部の不要物が除去される(ベベル処理)。
【0048】
配管34の途中にはそれぞれサックバック弁36が設けられていてもよい。サックバック弁36は処理液の吐出停止時において配管34内の処理液を吸い込むことにより、吐出ノズル31の先端から処理液を引き込む。これにより、吐出停止時において処理液が吐出ノズル31の先端から比較的大きな塊(液滴)として落下するぼた落ちが生じにくい。
【0049】
複数の吐出ノズル31が設けられる場合には、吐出ノズル31は、互いに異なる処理液供給源37に接続されてもよい。つまり処理液供給部30は、複数種の処理液が供給されるように構成されていてもよい。あるいは、複数の吐出ノズル31の少なくとも2つが同じ処理液を供給してもよい。
【0050】
また、本実施形態の処理ユニット1には、上記の処理液供給部30に加えてさらに2つの処理液供給部60,65が設けられている。本実施形態の処理液供給部60,65は、上記の処理液供給部30と同様の構成を備える。すなわち、処理液供給部60は吐出ノズル61と固定部材62と移動機構63とを有している。固定部材62は固定部材32と同様に、ノズルアーム621とノズル基台622と有している。ノズルアーム621の先端には吐出ノズル61が取り付けられており、その基端にはノズル基台622が連結されている。移動機構63は例えばモータであって、ノズル基台622を回動させることにより、吐出ノズル61を、矢印AR64にて示すように基板Wの端部の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で円弧状に移動させる。この吐出ノズル61も基板Wの端部に処理液を供給する。基板Wが回転することにより、吐出ノズル61からの処理液が基板Wの周縁端部の全領域に供給されて、当該周縁端部の不要物が除去される(ベベル処理)。
【0051】
処理液供給部65は吐出ノズル66と固定部材67と移動機構68とを有している。固定部材67はノズルアーム671とノズル基台672とを有している。ノズルアーム671の先端には吐出ノズル66が取り付けられており、その基端にはノズル基台672が連結されている。移動機構68は例えばモータであって、ノズル基台672を回動させることにより、吐出ノズル66を、矢印AR69にて示すように基板Wの略中央の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で円弧状に移動させる。この吐出ノズル66は基板Wの略中央に処理液を供給する。基板Wが回転することにより、吐出ノズル66からの処理液が基板Wの中心から広がってその周縁から外側に飛散される。これにより、基板Wの上面の全てに処理液を作用させることができる。
【0052】
処理液供給部60,65の各々も複数種の処理液が供給されるように構成されていてもよい。あるいは、処理液供給部60,65の各々は単一の処理液が供給されるように構成されていてもよい。
【0053】
処理液供給部60,65はそれぞれの吐出ノズル61,66が処理位置に位置する状態で、基板保持部20に保持された基板Wの上面に処理液を吐出する。なお、処理液供給部60,65の少なくとも一方は、純水などの洗浄液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体を基板Wに噴射する二流体ノズルであっても良い。また、処理ユニット1に設けられる処理液供給部は3つに限定されるものではなく、1つ以上であれば良い。処理液供給部60,65の各吐出ノズルも、処理液供給部30と同様に配管を介して処理液供給源に接続され、またその配管の途中には開閉弁が設けられ、さらにサックバック弁が設けられてもよい。以下では、代表的に処理液供給部30を用いたベベル処理について述べる。
【0054】
<処理カップ>
処理カップ40は、基板保持部20を取り囲むように設けられている。処理カップ40は内カップ41、中カップ42および外カップ43を備えている。内カップ41、中カップ42および外カップ43は昇降可能に設けられている。具体的には、処理ユニット1には、昇降機構44が設けられており、昇降機構44は内カップ41、中カップ42および外カップ43を個別に昇降させることができる。昇降機構44は例えばボールねじ機構を有している。
【0055】
内カップ41、中カップ42および外カップ43が上昇した状態では、処理カップ40の上端(ここでは外カップ43の上端)は基板Wの上面に対して上方に位置している。以下では、外カップ43が上昇した状態での外カップ43の上端の高さ位置を処理カップ40の上端位置とも呼ぶ。処理カップ40の上端位置と基板Wとの鉛直方向における間隔は例えば2[mm]~10数[mm]程度に設定され得る。
【0056】
内カップ41、中カップ42および外カップ43が上昇した状態では、基板Wの周縁から飛散した処理液は内カップ41の内周面に当って落下する。落下した処理液は適宜に第1回収機構(不図示)によって回収される。内カップ41が下降し、中カップ42および外カップ43が上昇した状態では、基板Wの周縁から飛散した処理液は中カップ42の内周面に当って落下する。落下した処理液は適宜に第2回収機構(不図示)によって回収される。内カップ41および中カップ42が下降し、外カップ43が上昇した状態では、基板Wの周縁から飛散した処理液は外カップ43の内周面に当って落下する。落下した処理液は適宜に第3回収機構(不図示)によって回収される。これによれば、異なる処理液をそれぞれ適切に回収することができる。
【0057】
以下では、外カップ43が上昇した状態を処理カップ40が上昇した状態として説明する。つまり、処理カップ40が上昇した状態は、内カップ41、中カップ42および外カップ43の全てが上昇した状態と、中カップ42および外カップ43のみが上昇した状態と、外カップ43のみが上昇した状態を含む。
【0058】
<仕切板>
仕切板15は、処理カップ40の周囲においてチャンバー10の内側空間を上下に仕切るように設けられている。仕切板15は、処理カップ40を取り囲む1枚の板状部材であっても良いし、複数の板状部材をつなぎ合わせたものであっても良い。また、仕切板15には、厚さ方向に貫通する貫通孔や切り欠きが形成されていても良く、本実施形態では処理液供給部30,60,65のノズル基台322,622,672を支持するための支持軸を通すための貫通孔(不図示)が形成されている。
【0059】
仕切板15の外周端はチャンバー10の側壁11に連結されている。また、仕切板15の処理カップ40を取り囲む端縁部は外カップ43の外径よりも大きな径の円形形状となるように形成されている。よって、仕切板15が外カップ43の昇降の障害となることはない。
【0060】
また、チャンバー10の側壁11の一部であって、床壁13の近傍には排気ダクト18が設けられている。排気ダクト18は図示省略の排気機構に連通接続されている。ファンフィルタユニット14から供給されてチャンバー10内を流下した清浄空気のうち、処理カップ40と仕切板15と間を通過した空気は排気ダクト18から装置外に排出される。
【0061】
<カメラ>
カメラ70は、チャンバー10内であって仕切板15よりも上方に設置されている。カメラ70は、例えば撮像素子(例えばCCD(Charge Coupled Device))と、電子シャッター、レンズなどの光学系とを備える。カメラ70は、次で説明する撮像領域を撮像することができる。すなわち、撮像領域は、基板Wに対して上方の撮像位置から見た領域であって、吐出ノズル31から基板Wに向かって流下する処理液Lq1と、基板Wの上面に写る処理液Lq1とを含む領域である。
【0062】
図4は、カメラ70によって取得された画像データ(以下、撮像画像と呼ぶ)IM1の一例を概略的に示す図である。図4の例では、撮像画像IM1には、3つの吐出ノズル31の先端が含まれている。この撮像画像IM1では、3つの吐出ノズル31のうち中央に位置する吐出ノズル31から吐出された略液柱状の処理液Lq1が含まれている。ここでいう略液柱状の処理液Lq1とは、吐出ノズル31の先端から基板Wの上面に向かって流下する処理液Lq1をいう。
【0063】
また撮像画像IM1において、基板Wの上面には、吐出ノズル31の先端および略液柱状の処理液Lq1が含まれている。これは、照明部71からの光が吐出ノズル31および処理液Lq1で反射した後に、基板Wの上面で鏡面反射してカメラ70の受光面で受光されることによる。つまり、基板Wの上面がミラーとして機能しており、その上面に吐出ノズル31の外観が写っているのである。カメラ70はこの撮像画像IM1を制御部9へと出力する。
【0064】
以下では、撮像画像IM1において基板Wの上面に写る略液柱状の処理液Lq1を処理液Lq1の鏡像Lqm1と呼ぶ。また、撮像画像IM1において処理液Lq1と、その鏡像Lqm1とを含む像を、全体像とも呼ぶ。
【0065】
図2に例示するように、カメラ70は移動可能に設けられるとよい。図2の例では、カメラ70は処理液供給部60の固定部材62に固定されている。より具体的な例として、カメラ70を保持するカメラ保持部73が設けられており、このカメラ保持部73が固定部材62のノズルアーム621に連結されている。例えば、カメラ保持部73はその基端側において、締結部材(例えばねじ)によりノズルアーム621の先端部に固定され、先端側において、締結部材によりカメラ70を固定して保持する。カメラ保持部73は例えば金属(例えばステンレス)等により形成される。移動機構63は固定部材62を変位ささせることにより、カメラ70を基板Wの上方の撮像位置に移動させる。具体的には、移動機構63はノズル基台622を回動させることにより、カメラ70を、基板Wの上方の撮像位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で往復移動させることができる。
【0066】
図2の例では、吐出ノズル31の待機位置はカメラ70の待機位置に対して、時計回り方向に略90度ずれた位置にある。この吐出ノズル31およびカメラ70は、各々の待機位置から互いに近づくように移動して、それぞれ処理位置および撮像位置で停止する。カメラ70はその撮像位置において、吐出ノズル31の先端と、その先端から吐出される略液柱状の処理液Lq1とを含む撮像領域を撮像できる姿勢で、カメラ保持部73に保持されている。図2の例では、カメラ保持部73はノズルアーム621に対して時計回り方向側に斜めに突出しており、その先端側においてカメラ70を保持する。
【0067】
ここで、吐出ノズル31が処理位置で停止し、かつ、カメラ70が撮像位置で停止した状態における、カメラ70と吐出ノズル31との位置関係の一例について述べる。以下では、3つの吐出ノズル31のうち中央に位置する吐出ノズル31を用いて当該位置関係を説明する。
【0068】
図2の例では、カメラ70は平面視において、吐出ノズル31に対して基板Wの中心側に位置している。つまり、カメラ70の基板Wに対する径方向の位置は吐出ノズル31の径方向の位置よりも基板Wの中心側に位置している。
【0069】
また図2の例では、カメラ70は平面視において、基板Wの径方向よりも周方向に近い方向から3つの吐出ノズル31の先端を撮像している。つまり、カメラ70の基板Wに対する周方向の位置は吐出ノズル31の周方向の位置に対して一方側にずれている。さらに言い換えれば、平面視において、基板Wの中心と吐出ノズル31とを結ぶ仮想的な直線L1とカメラ70の光軸とがなす角度θ1(0<θ1<90)は、直線L1に直交する仮想的な直線L2とカメラ70の光軸とがなす角度θ2(0<θ2<90)よりも大きい。これによれば、撮像画像IM1において、処理液Lq1の基板Wに対する着液位置の径方向位置を見やすくすることができる。ただし角度θ2が小さすぎると、撮像位置から見て、3つの吐出ノズル31が奥行き方向に並んで重なり得る。この場合、3つの吐出ノズル31の全てを撮像画像IM1に含めることが難しいので、撮像位置から見て3つの吐出ノズル31が適度に横方向にずれるように、角度θ2が設定されるとよい。
【0070】
またカメラ70がより周方向に近い方向から撮像領域を撮像することにより、撮像位置から見て、3つの吐出ノズル31は奥行き方向に互いにずれる。この3つの吐出ノズル31の奥行き方向における間隔は例えば数[mm]~10数[mm]程度である。カメラ70の被写界深度は、これら3つの吐出ノズル31の輪郭が明確となる程度に大きく設定される。またカメラ70と吐出ノズル31との間の距離は例えば約100[mm]程度である。
【0071】
図2の例では、カメラ70は吐出ノズル31に対して基板保持部20の回転方向の上流側に位置している。吐出ノズル31に対して上流側では、その下流側に比べて、基板Wの周縁端部上の処理液Lq1の量が少なくなり得る。なぜなら、処理液Lq1は基板Wの回転に伴って基板Wの周縁から外側に飛散し得るからである。よって、カメラ70が吐出ノズル31に対して上流側に位置していれば、処理液Lq1がカメラ70に付着したり、あるいは、処理液Lq1の気化成分がカメラ70に対して影響を及ぼしたりしにくい。つまり、カメラ70が吐出ノズル31に対して上流側に位置することは、カメラ70の保護という観点で好適である。
【0072】
さて、吐出ノズル31が処理液Lq1を吐出する際には、処理カップ40は上昇した状態にある。基板Wの周縁から飛散する処理液Lq1を処理カップ40で受け止めるためである。この状態では、吐出ノズル31の先端(吐出口)は処理カップ40の上端位置よりも低い位置にある。例えば、処理カップ40の上端位置と基板Wの上面との間の鉛直方向における間隔は約2[mm]~10数[mm]程度に設定され、吐出ノズル31と基板Wとの間の間隔は約2[mm]程度以下(例えば約1[mm]程度)に設定される。
【0073】
ここで、比較のために、カメラ70による撮像位置を処理カップ40よりも外側に設定する場合について述べる。例えば、処理カップ40よりも外側の空間のうち吐出ノズル31に近い側(図3のチャンバー10内の右上の領域)に撮像位置を設定する。処理カップ40の上端位置は吐出ノズル31の先端よりも高い位置にあるので、この処理カップ40が撮像を阻害し得る。つまり、処理カップ40よりも外側の撮像位置から略液柱状の処理液Lq1を撮像しようとしても、当該処理液Lq1は処理カップ40によって遮られ得る。この処理カップ40を避けるべく撮像位置をより高い位置に設定すると、吐出ノズル31を斜め上方から撮像することになる。吐出ノズル31の先端と基板Wとの間隔は狭いので、略液柱状の処理液Lq1を斜め上方から撮像しようとすると、今度は、当該処理液Lq1はその吐出ノズル31によって遮られ得る。
【0074】
そこで、処理カップ40よりも外側の空間のうち、基板Wの中心に対して吐出ノズル31とは反対側(図3のチャンバー10内の左上の領域)に撮像位置を設定することも考えられる。これにより、吐出ノズル31から吐出される略液柱状の処理液Lq1を撮像することは可能かもしれない。しかしながら、吐出ノズル31の先端とカメラ70の撮像位置との間の距離が長くなるので、高解像度のカメラ70または望遠用のカメラ70を必要とする。
【0075】
これに対して、本実施の形態では、撮像位置が基板Wの上方にあるので、高さ方向において、その撮像位置を基板Wの上面に近づけることが容易であり、カメラ70の光軸を水平方向に沿わせやすい。よって、カメラ70は処理カップ40および吐出ノズル31によって遮られることなく、吐出ノズル31から吐出される略液柱状の処理液Lq1を撮像できる。カメラ70の光軸と水平面とのなす角度は例えば10数[度]程度以下に設定され得る。
【0076】
また平面視において、カメラ70を吐出ノズル31に近づけることも可能である。よって、より低解像度の、または、望遠を必要としない、より安価なカメラを採用することができる。このようなカメラのサイズは小さいので好適である。図4の例では、カメラ70と吐出ノズル31との間の距離が短いので、撮像画像IM1には基板Wの周縁の一部のみが含まれている。
【0077】
ここで、カメラ70の高さ方向における撮像位置の一例ついて述べる。カメラ70の撮像位置は、カメラ70の撮像素子による受光面の下端が処理カップ40の上端位置と同じ、または当該上端位置よりも低い位置となるように設定されてもよい。例えばカメラ70と基板Wの上面との間の距離は1[mm]~5[mm]程度に設定され得る。これにより、カメラ70を基板Wの上面により近づけることができ、カメラ70の光軸をより水平方向に沿わせることができる。
【0078】
あるいは、カメラ70の筐体の下端が処理カップ40の上端位置と同じ、または当該上端位置よりも低い位置となるように、カメラ70の撮像位置を設定してもよい。
【0079】
またカメラ保持部73がカメラ70の下面を支持する場合もあり得る。図5は、カメラ70およびカメラ保持部73の一例を概略的に示す斜視図であり、図5においては、基板Wおよび吐出ノズル31も示されている。図5の例では、カメラ保持部73は、L字状の連結部材731と、カメラ70の上面側に位置する上面部材732と、カメラ70の側面側に位置する側面部材733と、カメラ70の下面側に位置する下面部材734とを有している。連結部材731はノズルアーム621から水平方向に延びる第1棒状部材と、その棒状部材の先端から鉛直下方へと延びる第2棒状部材とを有している。第2棒状部材の先端は上面部材732に連結されている。図5の例では、上面部材732、側面部材733および下面部材734は板状の形状を有している。上面部材732および下面部材734はその厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で配置されており、側面部材733はその厚み方向が水平方向に沿う姿勢で配置されている。側面部材733は上面部材732および下面部材734を連結する。下面部材734はカメラ70を支持する支持部材としても機能する。
【0080】
このような構造において、カメラ70の撮像位置は、下面部材734の下端が処理カップ40の上端位置と同じ、または当該上端位置よりも低い位置となるように設定されてもよい。これによっても、カメラ70を基板Wの上面により近づけることができ、カメラ70の光軸をより水平方向に沿わせることができる。
【0081】
<照明部>
図3に示すように、チャンバー10内であって仕切板15よりも上方には、照明部71が設けられている。照明部71は例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源を含む。照明部71が照射する光の波長は特に制限されないものの、例えば可視光または近赤外光を採用できる。図3の例では、照明部71はカメラ70よりも上方に配置されている。例えば、照明部71は平面視においてカメラ70と重なる位置に配置される(図2参照)。照明部71はカメラ保持部73によって保持されてもよい。例えば照明部71はカメラ保持部73の上面部材732の上面に固定されてもよい。通常、チャンバー10内は暗室であるため、カメラ70が撮像を行うときには照明部71が撮像領域に光を照射する。
【0082】
<制御部>
制御部9は基板処理装置100の各種構成を制御して基板Wに対する処理を進行する。また制御部9はカメラ70によって取得された撮像画像IM1に対して画像処理を行う。よって、制御部9は画像処理部として機能する。カメラ70は基板Wの上方の撮像位置から吐出ノズル31の先端を撮像するので、カメラ70によって取得される撮像画像IM1には、吐出ノズル31から吐出される略液柱状の処理液Lq1が適切に含まれている。制御部9はこの撮像画像IM1に対する画像処理により、吐出ノズル31から吐出された処理液Lq1の着液位置を監視する(ベベル監視)。この監視処理の一例は後に詳述する。
【0083】
制御部9のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部9は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクなどを備えて構成される。制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって、基板処理装置100の各動作機構が制御部9に制御され、基板処理装置100における処理が進行する。また制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することにより、画像処理を行う。なお制御部9の機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0084】
<報知部>
報知部93は例えば音声出力部(例えばスピーカ)またはディスプレイなどである。報知部93は作業者に対して種々の報知を行うことができる。例えば音声出力部が報知音(ブザーまたは音声)を出力したり、あるいは、ディスプレイが報知情報を表示することにより、作業者に対して種々の報知を行うことができる。報知部93の報知は制御部9によって制御される。
【0085】
<制御部の動作>
図6は、基板処理の一例を示すフローチャートである。まずステップS1にて、主搬送ロボット103によって基板Wが基板保持部20上に搬送される。基板保持部20は、搬送された基板Wを保持する。
【0086】
次にステップS2にて、制御部9は移動機構33を制御して吐出ノズル31を処理位置へと移動させ、移動機構63を制御してカメラ70を撮像位置へと移動させる。次にステップS3にて、制御部9は昇降機構44を制御して処理カップ40を上昇させ、スピンモータ22を制御してスピンベース21を回転させる。スピンベース21の回転速度は例えば約1000[rpm]以上に設定される。
【0087】
次にステップS4にて、制御部9はカメラ70を制御して撮像を開始させる。カメラ70は所定のフレームレート(例えば60フレーム/秒)で撮像領域を撮像し、取得した撮像画像IM1を制御部9に順次に出力する。制御部9は後に詳述するように撮像画像IM1に対する画像処理に基づいて処理液Lq1の吐出状態を監視する。
【0088】
次にステップS5にて、制御部9は吐出ノズル31からの処理液Lq1の吐出を開始する。具体的には、制御部9は開信号を開閉弁35に出力する。開閉弁35はこの開信号に基づいて開動作を行って配管34を開く。これにより、処理液供給源37からの処理液Lq1が吐出ノズル31から吐出されて、基板Wの上面の端部に着液する。処理液Lq1の流量は例えば数~数十[ml/分]程度に設定される。この流量は、基板Wの全面を処理する際の処理液の流量(例えば処理液供給部65の吐出ノズル66から吐出される処理液の流量)に比して少ない。
【0089】
基板Wを回転させながら基板Wの端部に処理液Lq1が吐出されることにより、処理液Lq1は基板Wの周縁端部の全領域に作用する。この処理液Lq1により、基板Wの周縁端部に付着した不要物を除去することができる(ベベル処理)。3つの吐出ノズル31の吐出口からは、不要物(例えば膜)の種類に応じた処理液Lq1が順次に吐出され得る。なお3つの吐出ノズル31の少なくとも2つの吐出口から同時期に処理液が吐出されてもよい。
【0090】
このベベル処理において、基板Wの周縁端部に付着した不要物を適切に除去するためには、処理液Lq1の流量を高い精度で制御することが望ましい。
【0091】
また、基板Wの上面のうち周縁端部以外のデバイス領域にはデバイスが形成される。処理液Lq1は膜を除去するので、このデバイス領域に進入することは望ましくない。デバイス領域内の必要な膜を除去し得るからである。その一方で、周縁端部に存在する不要な膜は除去する必要がある。この要求を満足すべく、ベベル処理においては、処理液Lq1の着液位置を高い精度で制御することが望ましい。処理液Lq1の基板Wに対する着液位置の必要精度は例えば数十(例えば50)[μm]程度である。
【0092】
ベベル処理においては処理液Lq1の流量は少ないので、処理液Lq1は基板Wの回転に伴う気流の影響、または、周囲の静電気の影響を受けやすく、その着液位置等が変動し得る。
【0093】
制御部9は監視処理において、この処理液Lq1の吐出状態を監視する。監視処理の具体的な動作については後に詳述する。
【0094】
制御部9はベベル処理の終了条件が成立したときに、ステップS6にて、吐出ノズル31からの処理液Lq1の吐出を停止する。ベベルの処理の終了条件は特に限定される必要はないものの、例えばステップS5からの経過時間が所定時間に至るという条件を採用することができる。制御部9はこの終了条件の成立に応答して、閉信号を開閉弁35に出力する。開閉弁35はこの閉信号に基づいて閉動作を行って配管34を閉じる。これにより、処理液Lq1の吐出が終了する。なおサックバック弁36が設けられる場合には、制御部9は吸い込み信号をサックバック弁36へと出力する。
【0095】
処理液Lq1の吐出停止の後に、基板Wを乾燥させる工程が適宜に行われてもよい。次にステップS7にて、制御部9はカメラ70に撮像を終了させる。つまり、監視処理を終了する。次にステップS8にて、制御部9はスピンモータ22を制御してスピンベース21の回転を終了し、また昇降機構44を制御して処理カップ40を下降させる。次にステップS9にて、制御部9は移動機構33および移動機構63をそれぞれ制御して、吐出ノズル31およびカメラ70をそれぞれの待機位置に移動させる。
【0096】
図7は、監視処理の動作の一例を示すフローチャートである。図7に示す処理フローは撮像画像IM1が制御部9に入力される度に実行される。まずステップS11にて、制御部9は撮像画像IM1のうち以下に説明する判定領域R2を特定する。
【0097】
図8は、撮像画像IM1の拡大図の一例を概略的に示す図である。図8の例では、一つの吐出ノズル31の先端付近の領域R1を拡大した図が示されている。判定領域R2は、撮像画像IM1のうち吐出ノズル31の直下の領域であり、吐出ノズル31から基板Wへ吐出される略液柱状の処理液Lq1の少なくとも一部と、基板Wの上面に写る処理液Lq1の鏡像Lqm1の少なくとも一部とを含む領域である。この判定領域R2には、処理液Lq1と、その鏡像Lqm1との境界B1が含まれる。
【0098】
この判定領域R2は撮像画像IM1において吐出ノズル31とは離れた位置に設定される。判定領域R2の横方向の幅は、吐出ノズル31から吐出される処理液Lq1の液注幅よりも広くなるように設定される。判定領域R2の横方向の位置は、処理液Lq1の幅方向の両端がその判定領域R2内に含まれるように設定される。判定領域R2の縦方向の幅は、判定領域R2が処理液Lq1とその鏡像Lqm1とを含むように設定される。
【0099】
この撮像画像IM1内の判定領域R2は吐出ノズル31に対して予め設定される。つまり、吐出ノズル31と判定領域R2との相対的な位置関係が予め設定されている。この位置関係を示す情報は制御部9の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0100】
ところで、吐出ノズル31に対するカメラ70の相対位置は移動機構33,63の精度に応じて変動し得るので、撮像画像IM1内の吐出ノズル31の位置も変動し得る。そこで、制御部9は撮像画像IM1内の吐出ノズル31の位置を特定し、特定した吐出ノズル31に対して所定の位置関係にある判定領域R2を特定するとよい。この撮像画像IM1内の吐出ノズル31の位置を特定すべく、吐出ノズル31の先端の外観を含む参照画像も制御部9の記憶媒体に予め記憶される。制御部9は参照画像に基づいたパターンマッチングにより、撮像画像IM1内における吐出ノズル31の位置を特定し、その特定された吐出ノズル31に対して、所定の相対位置関係に基づいて判定領域R2を特定する。これにより、撮像画像IM1内において吐出ノズル31の位置が変動しても、その吐出ノズル31の位置に対応して適切に判定領域R2を特定することができる。
【0101】
吐出ノズル31が処理液Lq1を吐出している状態では、判定領域R2には、その略液柱状の処理液Lq1の一部が含まれる。照明部71が照射した光は処理液Lq1で反射してカメラ70で受光されるので、処理液Lq1を反映する画素の輝度値は、他の画素の輝度値に比して高くなる。なおカメラ70がグレースケールのモノクロカメラである場合には、画素の画素値が輝度値を示すといえる。ここでは一例として、カメラ70はモノクロカメラであるとする。
【0102】
次にステップS12にて、制御部9は、判定領域R2内の処理液Lq1の全体像に基づいて、処理液Lq1の着液位置を特定する。この着液位置の特定方法の一例について以下に説明する。
【0103】
図8に例示するように、全体像は基板Wの表面において(つまり、処理液Lq1とその鏡像Lqm1との境界B1において)、屈曲している。これは、ベベル処理においては、吐出ノズル31からの処理液Lq1の吐出方向が基板Wに対して鉛直ではなく、基板Wの回転に伴う気流等に諸要因に起因して若干斜めとなるからである。また、この屈曲の程度(処理液Lq1の吐出方向とその鏡像Lqm1の吐出方向とがなす角度)はカメラ70の撮像方向(具体的には角度θ2)に依存するので、この屈曲が明確になるようにカメラ70の撮像方向が設定されるとよい。
【0104】
この屈曲位置は基板Wの上面における処理液Lq1の着液位置を示しているので、制御部9は、撮像画像IM1においてこの屈曲位置を特定する。具体的には、例えば制御部9は判定領域R2に対してエッジ検出処理および二値化処理を行って、二値化画像IM2を取得する。図9は、二値化画像IM2の一例を概略的に示す図である。図9では、高い画素値(ここでは「1」)を有する画素が白抜きで示され、低い画素値(ここでは「0」)を有する画素が砂地のハッチングで示されている。つまり、白抜きの領域は、撮像画像IM1の判定領域R2内において輝度値の変化が急峻となる領域を示し、砂地の領域は撮像画像IM1の判定領域R2内において輝度値の変化が緩やかな領域を示している。以下では、この白抜きで示される領域を、高画素値領域R4とも呼ぶ。
【0105】
図9に例示するように、二値化画像IM2の高画素値領域R4には、処理液Lq1の吐出方向に沿って延びる直線成分LC1と、その鏡像Lqm1の吐出方向に沿って延びる直線成分LC2とが含まれている。直線成分LC1の下側の一端および直線成分LC2の上側の一端は、処理液Lq1とその鏡像Lqm1との境界B1において、吐出方向に応じた連結角度で互いに連結されている。
【0106】
制御部9はこの二値化画像IM2に基づいて直線成分LC1と直線成分LC2とを特定する。この特定は公知の手法を採用すればよいものの、例えば以下のようにして行ってもよい。
【0107】
図9の例では、二値化画像IM2において、高画素値領域R4には、吐出ノズル31の先端部および基板Wの周縁を示す領域R41を含んでいるので、まず、二値化画像IM2においてこの領域R41を除去してもよい。例えばマスク処理により領域R41を除去できる。
【0108】
高画素値領域R4における領域R41以外の領域R42は、処理液Lq1およびその鏡像Lqm1を示している。そこで、この二値化画像IM2に対して更にエッジ検出処理を行い、そのエッジが所定以上の長さで延在する直線成分を特定する。なお、処理液Lq1の吐出方向の範囲は予め実験またはシミュレーション等により想定できるので、直線成分LC1および直線成分LC2の各々の延在方向の範囲も予め設定できる。よって、制御部9は、延在方向が予め設定された範囲内となる直線成分を領域R41において特定する。
【0109】
また図9に例示するように、直線成分LC1は右上から左下に向かって延び、直線成分LC2は左上から右下に向かって延びる。よって、制御部9は、右上から左下に向かって延びる直線成分を直線成分LC1として特定し、右上から左下に向かって延びる直線成分を直線成分LC2として特定する。
【0110】
次に制御部9は直線成分LC1および直線成分LC2の交点を屈曲位置として求める。制御部9はこの屈曲位置に基づいて処理液Lq1の着液位置を求める。例えば屈曲位置を着液位置として求めてもよい。
【0111】
なお図9の例では、一つの直線成分LC1および一つの直線成分LC2の組を示しているものの、実際には、複数の組が特定され得る。そこで、これら複数の組の各々の屈曲位置に基づいて着液位置を求めてもよい。例えば複数の屈曲位置の平均を着液位置として求めてもよい。
【0112】
次にステップS13にて、制御部9は、求めた着液位置と位置基準値との差(絶対値)が所定の位置許容値以上であるか否かを判定する。つまり、制御部9は着液位置が適切な範囲内にあるか否かを判定する。位置基準値としては、適切な着液位置を示す値を採用できる。例えば正常に処理液Lq1が吐出された状態で撮像された複数の撮像画像IM1に基づいて、正常な着液位置の平均値を算出し、その平均値を位置基準値として採用してもよい。位置許容値も予め設定される。位置基準値および位置許容値は例えば制御部9の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0113】
当該差が位置許容値以上であるときには、ステップS14にて、制御部9は報知部93にその旨(つまり着液異常異常)を報知させ、処理を終了する。一方で、当該差が許容値未満であるときには、ステップS14を実行せずに、処理を終了する。
【0114】
以上のように、制御部9によれば、撮像画像IM1における処理液Lq1とその鏡像Lqm1とを含む全体像に基づいて、着液位置を求めている。この全体像には、処理液Lq1とその鏡像Lqm1との境界B1が含まれており、その境界B1は処理液Lq1の基板Wへの着液位置を反映している。つまり、着液位置の情報を含んだ全体像に基づいて適切に着液位置を求まることができる。
【0115】
また上述の例では、全体像の屈曲点を求め、その屈曲点に基づいて着液位置を特定している。屈曲点は処理液Lq1とその鏡像Lqm1との境界B1上に位置するので、適切に着液位置を求めることができる。
【0116】
<処理液Lq1の鏡像Lqm1>
基板Wの上面には、例えば金属パターン、半導体パターン、絶縁層パターンおよびレジストパターンなどの種々のパターンが形成され得る。よって、基板Wの上面に写る処理液Lq1(つまり鏡像Lqm1)は、これらのパターンの影響を受ける。つまり、処理液Lq1の鏡像Lqm1にノイズが含まれる。
【0117】
そこで、カメラ70の露光時間を基板Wの1回転に要する回転時間以上に設定するとよい。これによれば、撮像画像IM1における基板Wのパターンが平均化されて一様化されるので、撮像画像IM1における処理液Lq1の鏡像Lqm1をより正確な像とすることができる。言い換えれば、処理液Lq1の鏡像Lqm1に含まれるノイズを低減することができる。よって、処理液Lq1の鏡像Lqm1の吐出方向(つまり直線成分LC2)を求めやすい。
【0118】
あるいは、露光時間が回転時間よりも短くてもよい。制御部9は、回転時間よりも長い所定時間内に撮像された複数の撮像画像IM1を積分または平均して、所定時間ごとに加工画像を生成してもよい。所定時間ごとの加工画像においては、基板Wの上面のパターンが平均化されて一様化されるので、処理液Lq1の鏡像Lqm1をより正確な像とすることができる。
【0119】
<カメラの固定>
また上述の例では、カメラ70は、吐出ノズル61と同様に固定部材62に固定されている。つまり、カメラ70を移動させる機構と吐出ノズル61を移動させる機構とを兼用している。よって、各々に専用の機構を設ける場合に比して、製造コストおよびサイズを低減できる。
【0120】
図10は、処理ユニット1Aの構成の一例を概略的に示す平面図である。処理ユニット1Aはカメラ70の固定対象という点を除いて、処理ユニット1と同様の構成を備えている。この処理ユニット1Aにおいて、カメラ70は、撮像対象となる吐出ノズル31と同じように固定部材32に固定されている。より具体的には、カメラ保持部73はノズルアーム321の側方において、ノズルアーム321に連結されている。カメラ保持部73はカメラ70を保持する。カメラ70はこのカメラ保持部73を介して固定部材32に固定されることとなる。カメラ70およびカメラ保持部73はノズルアーム321に対して、反時計回り方向側(つまり吐出ノズル31の待機位置から処理位置へ向かう側)に配置されている。またカメラ70は、吐出ノズル31の先端およびその吐出ノズル31から吐出される処理液Lq1を撮像可能な姿勢で、カメラ保持部73に保持される。
【0121】
移動機構33がノズル基台322を回動させることにより、吐出ノズル31およびカメラ70を、その位置関係を維持しながら、それぞれ処理位置および撮像位置に移動させることができる。カメラ70の撮像位置と吐出ノズル31の処理位置との位置関係は処理ユニット1と同様である。
【0122】
この処理ユニット1Aによっても、処理ユニット1と同様に、カメラ70は吐出ノズル31から吐出される略液柱状の処理液Lq1を適切に撮像することができる。
【0123】
またカメラ70が吐出ノズル31と同じ固定部材32に固定されるので、カメラ70を吐出ノズル31に対して高い精度で位置決めできる。つまり、処理ユニット1では、吐出ノズル31およびカメラ70が互いに異なるノズルアーム321,621に固定されているので、移動機構33,63の精度に鑑みて、カメラ70とノズルアーム321との間には比較的広いマージンを設ける必要があるのに対して、処理ユニット1Aでは、吐出ノズル31およびカメラ70が同じノズルアーム321に固定されるので、カメラ70とノズルアーム321との間のマージンをより狭く設定できる。つまりカメラ70をよりノズルアーム321に近づけることができる。これによれば、カメラ70はより周方向に近い方向から吐出ノズル31を撮像できる。よって、撮像画像IM1において処理液Lq1の径方向の吐出位置を特定しやすい。
【0124】
<カメラ保護>
処理液Lq1がフッ酸を含む場合、カメラ70の筐体の下面もしくはカメラ保持部73の下面部材734の下端面は、耐薬品性の材料で形成されているとよい。要するに、カメラ70を保護する保護部材74がカメラ70の下面側に設けられているとよい。保護部材74としては、フッ酸に対する薬品性が高い、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂または塩化ビニル樹脂などの耐薬品性樹脂またはステンレスなどの金属を採用することができる。
【0125】
これによれば、基板Wの上方に位置するカメラ70が、処理液Lq1の気化成分によって腐食される可能性を低減することができる。よって、カメラ70の信頼性を高めることができる。
【0126】
<基板に対する着液位置>
上述の例では、制御部9は、吐出ノズル31の位置を基準とした判定領域R2内の画素に基づいて処理液Lq1の着液位置を求めた。つまり、吐出ノズル31の位置を基準とした着液位置を求めることで、その着液位置を監視した。これは、例えば、移動機構33による吐出ノズル31の位置精度が高い場合に特に有効である。しかるに、その位置精度が比較的低い場合もある。そこで、制御部9は基板Wの周縁の位置を基準とした処理液Lq1の着液位置を監視してもよい。
【0127】
制御部9は基板Wの周縁の位置を基準とした着液位置を求めるべく、撮像画像IM1における基板Wの周縁の位置(以下、基板周縁位置と呼ぶ)を特定する。まず制御部9は撮像画像IM1のうち以下で説明する周縁領域R3を特定する(図8も参照)。
【0128】
周縁領域R3は撮像画像IM1において基板Wの周縁の一部を含む領域である。図8の例では、周縁領域R3は矩形状の形状を有している。この周縁領域R3の位置は判定領域R2と同様に、吐出ノズル31の位置に対応して予め設定されている。つまり、吐出ノズル31と周縁領域R3との相対的な位置関係が予め設定されている。この位置関係を示す情報は制御部9の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0129】
制御部9はパターンマッチングにより撮像画像IM1内における吐出ノズル31の位置を特定し、特定した吐出ノズル31の位置に基づいて周縁領域R3を特定する。そして、制御部9は周縁領域R3内の基板Wの基板周縁位置を特定する。例えば制御部9はエッジ検出処理などの画像処理に基づいて、基板Wの周縁を特定する。これにより、吐出ノズル31の位置を基準とした基板Wの基板周縁位置を特定することができる。
【0130】
制御部9は上述のように、いずれも吐出ノズル31の位置を基準とした着液位置および基板周縁位置を特定できる。よって、制御部9はこれらの位置に基づいて、基板周縁位置を基準とした着液位置を特定することができる。例えば予め基準となるテーブル情報を実験等により生成する。具体的には、予め制御部9の制御により、吐出ノズル31の処理位置を適宜に変更し、その都度、吐出ノズル31から処理液Lq1を吐出させるとともに、撮像画像IM1を取得する。そして、吐出ノズル31の各処理位置において、処理液Lq1の着液位置と基板Wの周縁との間の距離を測定し、その際の撮像画像IM1における基板端部位置と吐出位置との間の位置関係を特定する。そして、測定した距離と、特定した位置関係とを互いに対応付けて、これらをテーブル情報として予め制御部9の記憶媒体に記憶しておく。
【0131】
制御部9は、撮像画像IM1内の基板周縁位置と吐出位置との位置関係を特定し、特定した位置関係と、テーブル情報とに基づいて、基板Wの周縁と処理液Lq1の着液位置との間の距離(つまり基板Wの周縁を基準とした着液位置)を算出する。
【0132】
制御部9は、基板Wの周縁の位置を基準とした着液位置を求めることができるので、より適切に着液位置を監視することができる。
【0133】
<着液位置の特定>
上述の例では、制御部9は直線成分LC1と直線成分LC2との屈曲位置に基づいて着液位置を求めた。しかるに、必ずしもこれに限らない。
【0134】
図9に例示するように、二値化画像IM2の高画素値領域R4のうち領域R42(処理液Lq1とその鏡像Lqm1に相当する領域)は、処理液Lq1とその鏡像Lqm1との境界B1において、横方向に広がっている。これは、処理液Lq1が基板Wの上面に着液する際に周囲に若干広がるから、と考えることができる。つまり、この広がり部分は、処理液Lq1とその鏡像Lqm1との境界、ひいては着液位置を反映している、といえる。
【0135】
そこで、制御部9は二値化画像IM2において領域R42が広がる部分を特定し、その広がり部分の位置に基づいて着液位置を求めてもよい。具体的には、制御部9は領域R42のうち、横方向において最も端に位置する2点(つまり広がり部分の両端)を特定し、その両端の中心位置を着液位置として求めてもよい。
【0136】
<撮像光学系>
図11は、処理ユニット1Bの構成の一例を概略的に示す図である。処理ユニット1Bは撮像光学系を除いて、処理ユニット1と同様の構成を有している。処理ユニット1Bにおいては、ミラー75が設けられている。ミラー75は基板Wの上方の撮像位置に配置され、カメラ70は基板Wの上方以外の領域に配置されている。図11に例示するように、カメラ70は平面視において処理カップ40の上方に位置してもよい。ミラー75は撮像領域からの光をカメラ70の受光面に向かって反射させる。よって、カメラ70は、基板Wの上方の撮像位置から見た撮像領域を撮像することができる。
【0137】
図11に例示するように、ミラー75は移動可能に設けられているとよい。図11の例では、ミラー75は処理液供給部60の固定部材62に固定されている。より具体的な例として、ミラー75を保持するミラー保持部76が設けられており、このミラー保持部76が固定部材62のノズルアーム621に連結されている。例えばミラー保持部76はその基端側において、締結部材(例えばねじ)によりノズルアーム621の先端部に固定され、その先端側において、締結部材によりミラー75を固定して保持する。ミラー保持部76は例えば金属(例えばステンレス)等により形成される。移動機構63はノズル基台622を回動させることにより、このミラー75を、基板Wの上方の撮像位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で往復移動させることができる。移動機構63がミラー75を撮像位置に移動させることにより、撮像領域からの光をミラー75からカメラ70へと反射させることができる。
【0138】
ミラー75の位置(撮像位置)と吐出ノズル31との平面視上の位置関係は、処理ユニット1におけるカメラ70の位置(撮像位置)と吐出ノズル31との位置関係と同様である。撮像位置は基板Wに近いことが望ましく、例えばミラー75の反射面の下端が処理カップ40の上端位置と同じ、または当該上端位置よりも低い位置となるように、撮像位置を設定してもよい。あるいは、ミラー保持部76が、ミラー75の下方側に配置された下面部材を有しているときには、当該下面部材の下端が処理カップ40の上端位置と同じ、または当該上端位置よりも低い位置となるように、撮像位置を設定してもよい。これにより、カメラ70は、より水平に近い方向に沿って撮像位置から見た撮像領域を撮像することができる。つまり、撮像位置からの撮像方向をより水平に沿わせやすい。
【0139】
処理ユニット1Bによれば、カメラ70を基板Wの上方以外の領域に配置することができるので、処理液Lq1のカメラ70に対する影響を低減することができる。例えば処理液Lq1がカメラ70に付着したり、あるいは、処理液Lq1の気化成分がカメラ70に付着する可能性を低減することができる。よって、たとえ処理液Lq1がフッ酸を含んでいても、カメラ70の腐食を招きにくい。
【0140】
なおカメラ70は処理ユニット1B内において実質的に移動不能に固定されていてもよく、あるいは移動可能に固定されていてもよい。
【0141】
またミラー75は必ずしも処理液供給部60の固定部材62に固定されている必要はなく、処理ユニット1Aのカメラ70と同様に、処理液供給部30の固定部材32に固定されていてもよい。これによれば、ミラー75をよりノズルアーム321に近づけることができるので、撮像位置からの撮像方向をより周方向に沿わせやすい。
【0142】
<機械学習>
上述の例では、制御部9は撮像画像IM1に対して画像処理を行って、処理液Lq1の着液位置を求め、これが適切な範囲内にあるか否かを判定した。しかしながら、制御部9は機械学習を用いて判定を行ってもよい。
【0143】
図12は、制御部9の内部構成の一例を概略的に示す図である。制御部9は分類器91および機械学習部92を備えている。分類器91には、カメラ70からの撮像画像IM1が順次に入力される。分類器91は、入力された各撮像画像IM1を、吐出ノズル31の吐出状態量(流量または吐出位置)に関するカテゴリに分類する。カテゴリはクラスとも呼ばれ得る。カテゴリとしては、吐出状態量について異常ありのカテゴリ、および、異常なしのカテゴリを採用することができる。より具体的には、着液位置について異常がないことを示す第1カテゴリと、着液位置について異常があることを示す第2カテゴリとを採用することができる。
【0144】
この分類器91は、複数の教師データを用いて機械学習部92によって生成される。つまり、この分類器91は機械学習済みの分類器であるといえる。機械学習部92は、機械学習のアルゴリズムとして、例えば、近傍法、サポートベクターマシン、ランダムフォレストまたはニューラルネットワーク(ディープラーニングを含む)などを用いる。ニューラルネットワークは特徴量を自動で生成するので、設計者が特徴ベクトルを決定する必要がない。
【0145】
教師データは画像データ、および、その画像データがどのカテゴリに分類されるのかを示すラベルを含んでいる。画像データは、カメラ70によって撮像された撮像画像であり、予め生成されている。各画像データには、正しいカテゴリがラベルとして付与される。この付与は、作業者によって行うことができる。機械学習部92はこれらの教師データに基づいて機械学習を行って分類器91を生成する。
【0146】
一例として、近傍法によりフレームを分類する分類器91について説明する。分類器91は、特徴ベクトル抽出部911と、判定部912と、判定データベース913が記憶された記憶媒体とを備えている。特徴ベクトル抽出部911には、カメラ70からの撮像画像の各フレームが順次に入力される。特徴ベクトル抽出部911は所定のアルゴリズムにしたがって撮像画像IM1の特徴ベクトルを抽出する。この特徴ベクトルは吐出ノズル31の吐出状態に応じた特徴量を示したベクトルである。当該アルゴリズムとしては、公知のアルゴリズムを採用できる。特徴ベクトル抽出部911はその特徴ベクトルを判定部912に出力する。
【0147】
判定データベース913には、機械学習部92によって複数の教師データから生成された複数の特徴ベクトル(以下、基準ベクトルと呼ぶ)が記憶されており、その基準ベクトルは各カテゴリに分類されている。具体的には、機械学習部92は複数の教師データに対して特徴ベクトル抽出部911と同じアルゴリズムを適用して複数の基準ベクトルを生成する。そして機械学習部92は、当該基準ベクトルに対して教師データのラベル(正しいカテゴリ)を付与する。
【0148】
判定部912は特徴ベクトル抽出部911から入力された特徴ベクトルと、判定データベース913に記憶された複数の基準ベクトルとに基づいて撮像画像IM1を分類する。例えば判定部912は特徴ベクトルが最も近い基準ベクトルを特定し、特定した基準ベクトルのカテゴリに撮像画像IM1を分類してもよい(最近傍法)。これにより、判定部912は、分類器91(特徴ベクトル抽出部911)に入力された撮像画像をカテゴリに分類することができる。
【0149】
制御部9は分類器91によって各撮像画像IM1を第1カテゴリおよび第2カテゴリのいずれか一つに分類する。この分類は、処理液Lq1の着液位置が適切な範囲内にあるか否かを判定していることを意味する。機械学習により分類を行うので、高い精度で異常を検出することができる。
【0150】
<分類器への入力>
上述の例では、分類器91への入力データとして、撮像画像IM1の全領域を採用しているものの、必ずしもこれに限らない。例えば制御部9は、撮像画像IM1のうち判定領域R2の画像を切り出して、その画像を分類器91に入力してもよい。この場合、機械学習部92に入力される学習データとしても、判定領域R2を示す画像を採用する。
【0151】
これによれば、分類器91は、吐出状態とは関連性の低い領域の影響を除去して分類を行うことができるので、その分類精度を向上することができる。
【0152】
なお、基板Wの周縁を基準とした着液位置を監視すべく、判定領域R2のみならず、周縁領域R3を分類器91に入力してもよい。この場合、機械学習部92に入力される学習データとしても、判定領域R2および周縁領域R3を示す画像を採用する。あるいは、判定領域R2と周縁領域R3とを含む矩形状の領域を撮像画像IM1から切り出し、この画像を分類器91に入力してもよい。
【0153】
<サーバ>
上述の例では、基板処理装置100に設けられた制御部9が機械学習によって分類器91を生成し、その分類器91によりフレームを分類した。しかるに、この制御部9による機械学習機能(分類器91および機械学習部92)の少なくとも一部の機能がサーバに設けられていてもよい。
【0154】
以上、本基板処理装置の実施の形態について説明したが、この実施の形態はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。上述した各種の実施の形態および変形例は適宜に組み合わせて実施することができる。
【0155】
また基板Wとしては、半導体基板を採用して説明したが、これに限らない。例えばフォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板または光磁気ディスク用基板などの基板を採用してもよい。
【符号の説明】
【0156】
9 画像処理部(制御部)
20 基板保持部
31 ノズル(吐出ノズル)
33 移動機構
40 カップ部材(処理カップ)
44 昇降機構
70 カメラ
91 分類器
93 報知部
100 基板処理装置
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12