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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】減衰バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20221026BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20221026BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/32 L
F16F9/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018219898
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020085118
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】五味 瞭汰
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32-9/34
F16F 9/44-9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートが形成されるバルブディスクと、
前記バルブディスクに対して全体が軸方向へ移動可能に設けられて前記ポートを開閉するリーフバルブと、
前記リーフバルブの前記バルブディスクとは反対側に設けられるプレートと、
前記リーフバルブと離間して配置されて前記プレートを介して前記リーフバルブを前記バルブディスクへ向けて付勢する板ばねと、
前記リーフバルブと前記ポートを通る液体の流れに対して直列に設けられる減衰力調整部とを備える
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記リーフバルブは、環状であって、前記バルブディスクに一枚以上積層されており、軸方向長さが前記リーフバルブ全体の軸方向長さよりも長いガイドの外周に摺接可能に装着されている
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記板ばねの変形量を制限するストッパを備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
前記板ばねは、前記プレートの反リーフバルブ側端に直接重ねられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
前記板ばねに前記板ばねの肉厚を貫通する孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の減衰バルブ。
【請求項6】
前記リーフバルブは複数枚設けられており、
前記プレートは、複数の前記リーフバルブのうちで最も前記バルブディスクから離れた位置にある前記リーフバルブに溶接されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の減衰バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減衰バルブは、緩衝器等に利用されている。そして、車両のサスペンションに用いられる緩衝器の中には、車両の走行中に発生する減衰力を自動で調節できる減衰バルブを備えるものがある。
【0003】
そのような減衰バルブの中には、例えば、緩衝器の伸縮作動時に液体が通過する通路の途中に設けられるリーフバルブと、上記通路にこのリーフバルブと直列に設けられ、通路を開閉する弁体と、通電量に応じて弁体の開弁圧を変更可能なソレノイドとを含む減衰力調整部とを有するものがある。当該減衰バルブによれば、弁体の開弁圧を低くすると発生する減衰力を小さくでき、反対に、弁体の開弁圧を高くすると発生する減衰力を大きくできる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-276111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような、減衰力を自動で調整できる減衰バルブにおいて、発生する減衰力を最も小さくするモードをフルソフトとすると、上記減衰バルブではこのフルソフト時の減衰力をなるべく小さくしたいという要望がある。
【0006】
そして、特開2010-276111号公報に記載の減衰バルブのように、減衰力調整部に直列されるリーフバルブの内周側(又は外周側)をバルブディスクで支え、外周側(又は内周側)を撓ませて通路を開くようにした場合、リーフバルブの剛性を下げればフルソフト時の減衰力が小さくなるものの、リーフバルブの剛性を下げるにも限界があり、フルソフト時の減衰力を十分に低減できない場合がある。
【0007】
そうかといって、リーフバルブをリフト式にして、開弁時にリーフバルブ全体がバルブディスクに対して持ち上がるようにすれば、フルソフト時の減衰力を十分に低減できるのではあるが、緩衝器の作動の方向が伸長から収縮、又は収縮から伸長へ切り換わったときに、リーフバルブの閉じ遅れが生じて発生する減衰力の波形に乱れが生じる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、これらの問題を解決し、フルソフト時の減衰力を十分に低減できるとともに、減衰力波形の乱れを防止できる減衰バルブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する減衰バルブは、バルブディスクに対して全体が軸方向へ移動可能に設けられてバルブディスクに形成されるポートを開閉するリーフバルブと、このリーフバルブのバルブディスクとは反対側に設けられるプレートと、リーフバルブと離間して配置されてプレートを介してリーフバルブをバルブディスクへ向けて付勢する板ばねと、リーフバルブとポートを通る液体の流れに対して直列に設けられる減衰力調整部とを備えている。
【0010】
このように、上記減衰バルブのリーフバルブがリフト式となっているので、フルソフト時の減衰力を十分に低減できる。さらに、リーフバルブが板ばねでバルブディスク側へ付勢されているので、リーフバルブの閉じ遅れを防止して、その閉じ遅れに起因する減衰力波形の乱れを防止できる。加えて、板ばねは、プレートを介してリーフバルブを付勢するので、プレートの板厚に応じて板ばねの初期撓みを調整できるとともに、板ばねが軸方向に嵩張らず減衰バルブの組付性を良好にできる。
【0011】
また、上記減衰バルブでは、リーフバルブが環状であって、バルブディスクに一枚以上積層されていて、軸方向長さがリーフバルブ全体の軸方向長さよりも長いガイドの外周に摺接可能に装着されていてもよい。これにより、リーフバルブがガイドに支えられつつ軸方向へ円滑に移動できるので、リーフバルブの閉じ遅れを一層確実に防止できる。
【0012】
また、上記減衰バルブは、板ばねの変形量を制限するストッパを備えていてもよい。これにより、板ばねが所定量以上変形するのをストッパで阻止できる。そして、このように板ばねの変形が阻止されると、リーフバルブがそれ以上開かなくなるので、上記構成によれば、リーフバルブの開口量を制限できる。また、上記減衰バルブでは、板ばねはプレートの反リーフバルブ側端に直接重ねられてもよい。また、上記減衰バルブは、板ばねに板ばねの肉厚を貫通する孔が形成されてもよい。また、上記減衰バルブでは、リーフバルブは複数枚設けられており、プレートは、複数のリーフバルブのうちで最もバルブディスクから離れた位置にあるリーフバルブに溶接されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る減衰バルブによれば、フルソフト時の減衰力を十分に低減できるとともに、減衰力波形の乱れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る減衰バルブを備えた緩衝器を示した縦断面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る減衰バルブを拡大して示した縦断面図である。
図3図2の一部を拡大して示した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品を示す。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る減衰バルブVは緩衝器Dに利用されており、その緩衝器Dは車両のサスペンションに利用されている。なお、本発明に係る減衰バルブを含む緩衝器は、車両以外に利用されてもよいのは勿論、緩衝器以外に利用されてもよい。このように、本発明に係る減衰バルブの利用目的は、適宜変更できる。
【0017】
以下に、本実施の形態の減衰バルブVを含む緩衝器Dの具体的な構造について説明する。本実施の形態において、緩衝器Dは、シリンダ1と、このシリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン10と、一端がピストン10に連結されて他端がシリンダ1外へと突出するピストンロッド11とを備える。そして、車両における車体と車軸の一方にシリンダ1が連結され、他方にピストンロッド11が連結される。
【0018】
このように、緩衝器Dは車体と車軸との間に介装されており、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に移動すると、ピストンロッド11がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮し、ピストン10がシリンダ1内を図1中上下(軸方向)に移動する。なお、図1では、ピストンロッド11がシリンダ1から上方へ突出した状態を示しているが、緩衝器Dをどのような向きで車両に取り付けてもよいのは勿論である。
【0019】
つづいて、シリンダ1の軸方向の一端部には、ピストンロッド11の挿通を許容する環状のヘッド部材12が装着されている。このヘッド部材12は、ピストンロッド11を摺動自在に支持するとともに、シリンダ1の一端を塞ぐ。その一方、シリンダ1の他端はボトムキャップ13で塞がれている。このようにしてシリンダ1内は密閉されており、そのシリンダ1内に気体と液体が封入されている。
【0020】
より詳しくは、シリンダ1内には、ピストン10から見てピストンロッド11とは反対側にフリーピストン14が摺動自在に挿入されており、このフリーピストン14よりピストン10側に作動油等の液体が充填された液室Lが形成されている。その一方、シリンダ1内におけるフリーピストン14から見てピストン10とは反対側に、エア、窒素ガス等の圧縮ガスが封入されたガス室Gが形成されている。
【0021】
このように、シリンダ1内の液室Lとガス室Gは、フリーピストン14で仕切られている。そして、緩衝器Dの伸縮時にピストンロッド11がシリンダ1に出入りすると、フリーピストン14が図1中上下(軸方向)に動いてガス室Gを拡大したり縮小したりして、シリンダ1に出入りするピストンロッド11の体積分を補償する。
【0022】
しかし、緩衝器Dの構成は、図示する限りではなく、適宜変更できる。例えば、ガス室Gに替えて液体とガスを収容するリザーバを設け、緩衝器の伸縮時にシリンダとリザーバとの間で液体をやり取りしてシリンダに出入りするピストンロッド体積分を補償してもよい。さらに、緩衝器を両ロッド型にして、ピストンの両側にピストンロッドを設けてもよく、この場合には、ピストンロッド体積を補償するための構成自体を省略できる。
【0023】
つづいて、シリンダ1内の液室Lは、ピストン10でピストンロッド11側の伸側室L1と、その反対側(反ピストンロッド側)の圧側室L2とに区画されている。そして、このピストン10部に本実施の形態に係る減衰バルブVが具現化されている。
【0024】
その減衰バルブVは、図2に示すように、ピストン10と、このピストン10に積層される伸側と圧側のリーフバルブ2,3とを含むリーフバルブ組立体Rと、このリーフバルブ組立体Rとピストンロッド11との連結部に設けられ、伸側と圧側のリーフバルブ2,3に直列される減衰力調整部Aとを有して構成されている。以下に、減衰バルブVを構成するこれらの部材についてそれぞれ詳細に説明するが、以下の説明では説明の便宜上、特別な説明がない限り、図2、及びその一部を拡大して示した図3中上下を単に「上」「下」という。
【0025】
図2に示すように、ピストン10は、有底筒状で、外周にシリンダ1の内周に摺接するピストンリング10aが装着される筒部10bと、この筒部10bの下端を塞ぐ底部10cとを含む。筒部10bには減衰力調整部Aの後述するケース4が螺合されており、底部10cと減衰力調整部Aとの間に中間室L3が形成されている。そして、ピストン10は、この中間室L3と、ピストン10の下側に形成される圧側室L2とを仕切っている。
【0026】
また、ピストン10の底部10cには、中間室L3と圧側室L2とを連通する伸側と圧側のポート10d,10eが形成されている。さらに、その底部10cの下側に伸側のポート10dを開閉する伸側のリーフバルブ2が積層され、底部10cの上側に圧側のポート10eを開閉する圧側のリーフバルブ3が積層されている。このように、ピストン10は、二室を連通するポートが形成されるとともに、そのポートを開閉するリーフバルブが装着されるバルブディスクとして機能する。
【0027】
伸側のポート10dは、常に中間室L3と連通されており、この中間室L3の圧力が伸側のリーフバルブ2を開く方向へ作用する。そして、中間室L3の圧力を受けて伸側のリーフバルブ2が開くと、液体が伸側のポート10dを通って中間室L3から圧側室L2へと向かう。その一方、圧側のポート10eは、常に圧側室L2と連通されており、この圧側室L2の圧力が圧側のリーフバルブ3を開く方向へ作用する。そして、圧側室L2の圧力を受けて圧側のリーフバルブ3が開くと、液体が圧側のポート10dを通って圧側室L2から中間室L3へと向かう。
【0028】
つづいて、減衰力調整部Aは、筒状で上端がピストンロッド11の先端に設けられる筒部11aに螺合されるとともに下端がピストン10の筒部10bに螺合されるケース4と、このケース4の下端とピストン10との間に挟まれて固定される環状の弁座部材5と、先端部6aがこの弁座部材5の内側に摺動自在に挿入される第一の弁体6と、この第一の弁体6の上側に、ケース4内に摺動自在に挿入される第二の弁体7と、第一、第二の弁体6,7の開弁圧を変更可能な開弁圧調整部Pとを有する。
【0029】
第一の弁体6は、環状であって、弁座部材5の内側に摺動自在に挿入される先端部6aと、この先端部6aの上側に連なって外径が上方へ向かうに従って徐々に拡径する円錐台形状のテーパ部6bと、このテーパ部6bの上端に連なる弁座部6cとを含む。そして、第一の弁体6は、先端部6aを弁座部材5で支えられつつ上下に移動して、テーパ部6bを弁座部材5に形成される環状の第一の弁座5aに離着座させる。また、先端部6aの外周には切欠きが設けられ、第一の弁体6が第一の弁座5aから離れた際に、その内周側と外周側とを連通できるようになっている。
【0030】
その一方、第二の弁体7は、上端に位置する小径部7aと、この小径部7aの下側に連なり外径が小径部7aの外径より大きい大径部7bと、この大径部7bの下側に連なり外径が大径部7bの外径より小さい脚部7cを含む。そして、第二の弁体7は、小径部7aと大径部7bのそれぞれをケース4の内周に摺接させつつ上下に移動して、第一の弁体6における弁座部6cの上端に形成される環状の第二の弁座6dに離着座させる。
【0031】
また、弁座部材5から上方へ突出する第一の弁体6のテーパ部6b及び弁座部6cの外周と、第二の弁体7の脚部7cの外周には、ケース4で囲まれる環状の隙間4aが形成されている。さらにケース4には、その隙間4aと伸側室L1とを連通する通孔4bが形成されており、伸側室L1の圧力がその通孔4bと隙間4aを介して第一、第二の弁体6,7に作用する。
【0032】
より詳しくは、弁座部材5から上方へ突出する第一の弁体6の最大外径部の外径を直径とする円の面積をc1、第一の弁座5aの外径を直径とする円の面積をc2とすると、c1はc2より大きく(c1>c2)、第一の弁体6は伸側室L1の圧力によって上向きに付勢される。また、第二の弁体7の大径部7bの外径を直径とする円の面積をc3、第二の弁座6dの外径を直径とする円の面積をc4とすると、c3はc4より大きく(c3>c4)、第二の弁体7も伸側室L1の圧力によって上向きに付勢される。そして、第一、第二の弁体6,7がその伸側室L1の圧力を受けて上方へ移動すると、第一の弁体6が第一の弁座5aから離れ、液体がこれらの間を通って伸側室L1から中間室L3へと向かう。
【0033】
また、その中間室L3は、第二の弁体7を軸方向に貫通する連通孔7dによって、第二の弁体7における小径部7aの上側に形成される上側隙間4cと連通されている。これにより、上側隙間4cの圧力が中間室L3の圧力と略同じになる。さらに、その中間室L3は、第二の弁体7とピストン10の底部10cとの間であって、周囲を第一の弁体6、弁座部材5、及びピストン10の筒部10bで囲われるように形成されており、中間室L3の圧力が第一、第二の弁体6,7に作用する。
【0034】
より詳しくは、第一の弁体6において、第二の弁座6dの内径を直径とする円の面積をc5、第一の弁体6の最小内径部の内径を直径とする円の面積をc6、第一の弁座5aの内径を直径とする円の面積をc7とすると、c5からc6を減じた面積がc7からc6を減じた面積よりも大きく(c5-c6>c7-c6)、第一の弁体6は中間室L3の圧力によって下向きに付勢される。また、第二の弁体7の小径部7aの外径を直径とする円の面積をc8とすると、上記c5(第二の弁座6dの内径を直径とする円の面積)がc8よりも大きく(c5>c8)、第二の弁体7は中間室L3の圧力によって上向きに付勢される。
【0035】
このように、第一、第二の弁体6,7は、中間室L3の圧力によって上下に分かれる方向へ付勢される。そして、第一、第二の弁体6,7がその中間室L3の圧力を受けて上下に分かれると、第二の弁体7が第二の弁座6dから離れ、液体がこれらの間を通って中間室L3から伸側室L1へと向かう。その一方、第一の弁体6は、中間室L3の圧力によって下向き、即ち、第一の弁座5aに着座する方向(閉じ方向)へ付勢されるので、中間室L3の圧力が上昇しても開かない。
【0036】
以上をまとめると、伸側室L1の圧力は、第一の弁体6を第一の弁座5aから離座させる方向(開方向)へ作用する。その一方、中間室L3の圧力は、第二の弁体7を第二の弁座6dから離座させる方向(開方向)へ作用する。そして、伸側室L1又は中間室L3の圧力を受けて第一の弁体6又は第二の弁体7が開くと、通孔4b、及び隙間4aを介して伸側室L1と中間室L3とが連通される。前述のように、中間室L3には伸側のリーフバルブ2で開閉される伸側のポート10d、及び圧側のリーフバルブ3で開閉される圧側のポート10eが接続されている。
【0037】
つまり、本実施の形態では、通孔4b、隙間4a、中間室L3、及び伸側と圧側のポート10d,10eによって伸側室L1と圧側室L2とを連通する通路Fが構成されている。そして、この通路Fに伸側と圧側のリーフバルブ2,3が並列に設けられるとともに、これらリーフバルブ2,3と直列に第一、第二の弁体6,7が設けられている。そして、第一、第二の弁体6,7の開弁圧を開弁圧調整部Pで変更できる。
【0038】
その開弁圧調整部Pは、本実施の形態において、第二の弁体7における大径部7bの上側に形成される背圧室L4と、伸側室L1の圧力を減圧して背圧室L4へ導く圧力導入通路p1と、背圧室L4と中間室L3とを上側隙間4c及び連通孔7dを介して連通する圧力制御通路p2と、この圧力制御通路p2を開閉するスプール8と、このスプール8に推力を与えるソレノイド(図示せず)と、中間室L3から背圧室L4へ向かう液体の流れのみを許容するとともに、中間室L3の圧力を減圧して背圧室L4へ導く減圧通路p3とを含む。
【0039】
スプール8は、第二の弁体7に形成される収容孔7e内に摺動自在に装着されるとともに、背圧室L4の圧力によって上向きに付勢される。また、スプール8には、ソレノイドによって下向きの推力が与えられる。これにより、背圧室L4の圧力が高まって、その圧力等に起因する上向きの力がソレノイド等に起因する下向きの力に打ち勝つようになると、スプール8が上方へ移動して弁座7fから離れ、圧力制御通路p2を開く。
【0040】
ソレノイドには、通電のためのハーネスH(図1)が接続されており、そのハーネスHは、ピストンロッド11の内側を通って緩衝器Dの外方へと延びている。そして、通電量の変更によりソレノイドの推力が大小するようになっており、ソレノイドの推力を大きくするほどスプール8の開弁圧が高くなる。背圧室L4の圧力は、このスプール8の開弁圧に設定されるので、ソレノイドとスプール8は、背圧室L4の圧力を制御する圧力制御バルブを構成しているといえる。
【0041】
第二の弁体7は、背圧室L4の圧力によって下向き、即ち、第二の弁座6dに着座する方向(閉じ方向)へ付勢される。また、スプール8が弁座7fに着座した状態では、ソレノイドの推力がスプール8を介して第二の弁体7を押し下げる方向へ作用する。つまり、スプール8が弁座7fに着座した状態では、第二の弁体7がソレノイド自体によっても下向き(閉じ方向)に付勢される。そして、第二の弁体7が第二の弁座6dに着座した状態では、第一の弁体6も上記下向き(閉じ方向)の付勢力を受ける。
【0042】
上記構成によれば、緩衝器Dの伸長時にピストン10がシリンダ1内を上方へ移動して伸側室L1を圧縮し、伸側室L1の圧力が上昇すると、伸側室L1の液体が圧力導入通路p1を通って背圧室L4へ流入し、背圧室L4の圧力が上昇する。そして、この背圧室L4の圧力が、ソレノイドの通電量に応じて設定されるスプール8の開弁圧に達するとスプール8が開き、背圧室L4の液体が圧力制御通路p2、上側隙間4c、及び連通孔7dを通って中間室L3へと向かう。このため、緩衝器Dの伸長時には、背圧室L4の圧力が制御される。
【0043】
また、緩衝器Dの伸長時に第一、第二の弁体6,7に作用する伸側室L1の圧力等による上向きの力が背圧室L4の圧力等による下向き力を上回るようになると、第一、第二の弁体6,7が上方へ移動して第一の弁体6が開く。すると、伸側室L1の液体が第一の弁体6と第一の弁座5aとの間にできる隙間を通って中間室L3へ移動するとともに、中間室L3の液体が伸側のリーフバルブ2を開いて圧側室L2へと移動する。
【0044】
このように、伸側室L1から圧側室L2へ向かう液体の流れに対しては、第一の弁体6と、伸側のリーフバルブ2によって抵抗が付与される。このため、緩衝器Dの伸長時には伸側室L1の圧力が上昇し、緩衝器Dがその伸長作動を妨げる伸側の減衰力を発揮する。また、ソレノイドへの通電量の変更によりスプール8の開弁圧を高くすればするほど、背圧室L4の圧力が高くなって第一の弁体6を下向きに付勢する力が大きくなる。すると、第一の弁体6の開弁圧が高くなり、発生する伸側の減衰力が大きくなる。
【0045】
反対に、緩衝器Dの収縮時にピストン10がシリンダ1内を下方へ移動して圧側室L2を圧縮し、圧側室L2の圧力が上昇すると、圧側室L2の液体が圧側のリーフバルブ3を開いて中間室L3へと移動するとともに、中間室L3の液体が減圧通路p3を通って背圧室L4へと移動する。このとき、スプール8の下流側に位置する上側隙間4cの圧力が中間室L3の圧力と略同圧となっていて、スプール8の上流側に位置する背圧室L4の圧力よりも高くなる。このため、スプール8が閉じた状態に維持されて、ソレノイドの推力がスプール8を介して第二の弁体7に作用する。
【0046】
また、前述のように、中間室L3の圧力は、第二の弁体7に対してのみ上向きに作用するので、その第二の弁体7に作用する中間室L3の圧力等による上向きの力がソレノイドの推力等による下向きの力を上回るようになると、第二の弁体7のみが上方へ移動して開く。すると、中間室L3の液体が第二の弁体7と第二の弁座6dとの間にできる隙間を通って伸側室L1へと移動する。
【0047】
このように、圧側室L2から伸側室L1へと向かう液体の流れに対しては、圧側のリーフバルブ3と第二の弁体7によって抵抗が付与される。このため、緩衝器Dの収縮時には圧側室L2の圧力が上昇し、緩衝器Dがその収縮作動を妨げる圧側の減衰力を発揮する。また、通電量の変更によりソレノイドの推力を大きくすればするほど、第二の弁体7を下向きに付勢する力が大きくなる。すると、第二の弁体7の開弁圧が高くなり、発生する圧側の減衰力が大きくなる。
【0048】
つまり、本実施の形態における減衰力調整部Aは、伸側と圧側のリーフバルブ2,3に直列される第一、第二の弁体6,7と、これらの開弁圧を変更可能な開弁圧調整部Pを備えている。そして、その開弁圧調整部Pは、第一の弁体6の開弁圧の変更については、背圧室L4の圧力制御によって行い、第二の弁体7の開弁圧の変更については、背圧室L4の圧力制御に利用されるソレノイドの推力を第二の弁体7に直接作用させ、その推力の調整によって行う。
【0049】
また、本実施の形態では、伸側のリーフバルブ2、圧側のリーフバルブ3、及びバルブディスクであるピストン10を含んでリーフバルブ組立体Rが構成されており、その減衰力調整部Aは、リーフバルブ組立体Rに直列されているともいえる。そして、減衰力調整部Aの構成は、リーフバルブ組立体Rと直列に設けられて、発生する減衰力を大小調節できるようになっている限り、適宜変更できる。
【0050】
つづいて、伸側のリーフバルブ2は、弾性を有する薄い環状板であってピストン10の底部10cの下側に一枚以上積層されている。そして、伸側のリーフバルブ2は、その外周側の撓みが許容された状態で内周側がピストン10の底部10cに固定されている。
【0051】
より詳しくは、ピストン10の底部10cと、これに積層される伸側のリーフバルブ2の中心部には、それぞれ取付孔(符示せず)が形成されており、その取付孔に取付軸15が挿通されている。その取付軸15の一端には、外径が他の部分よりも大径なフランジ部15aが設けられるとともに、取付軸15の他端には、ナット16が螺合される螺子部15bが設けられている。
【0052】
そして、ピストン10の底部10cと伸側のリーフバルブ2の内周部が、フランジ部15aとナット16との間に挟まれて固定される。さらに、伸側のリーフバルブ2に対向する底部10cの下端には、伸側のポート10dの出口を取り囲むようにして伸側の弁座10fが形成されており、伸側のリーフバルブ2の外周部がその伸側の弁座10fに離着座する。これにより、伸側のポート10dの出口が開閉される。
【0053】
その一方、伸側のポート10dの入口は常に開き、中間室L3と連通されていている。そして、緩衝器Dの伸長時に中間室L3の圧力が高まると、伸側のリーフバルブ2の外周部がその圧力を受けて下方へ撓み、伸側の弁座10fから離れて伸側のポート10dを開く。しかし、緩衝器Dの作動の方向が伸長から収縮へ切り換わり、中間室L3の圧力が低下すると、伸側のリーフバルブ2が自身のもつ弾性で外周部を伸側の弁座10fに着座させ、伸側のポート10dを閉じた状態へ戻る。
【0054】
つづいて、圧側のリーフバルブ3は、弾性を有する薄い環状板であってピストン10の底部10cの上側に一枚以上積層されている。そして、圧側のリーフバルブ3は、その全体がピストン10に対して軸方向へ移動できるようにピストン10に装着されている。つまり、本実施の形態では、圧側のリーフバルブ3がリフト式となっている。
【0055】
より詳しくは、図3に示すように、取付軸15の外周であって底部10cの上側にはガイド30が設けられ、このガイド30がピストン10等とともにフランジ部15aとナット16との間に挟まれて固定されている。さらに、そのガイド30は軸方向に重なる複数枚のワッシャ30aからなり、ガイド30全体としての軸方向長さが圧側のリーフバルブ3全体としての軸方向長さよりも長い。
【0056】
そして、圧側のリーフバルブ3は、そのガイド30の外周に摺接し、内周をガイド30で支えられつつ全体がピストン10に対して軸方向へ移動できる。さらに、その圧側のリーフバルブ3に対向する底部10cの上端には、圧側のポート10eの出口を取り囲むようにして圧側の弁座10gが形成されており、圧側のリーフバルブ3の外周部がその圧側の弁座10gに離着座する。これにより、圧側のポート10eの出口が開閉される。
【0057】
また、本実施の形態では、圧側のリーフバルブ3が二枚設けられており、その二枚の圧側のリーフバルブ3のうちの上側のリーフバルブ3の上端外周部にプレート31が溶接されている。その一方、プレート31が溶接されていない下側のリーフバルブ3が圧側の弁座10gに当接する。ここで、閉弁時において、溶接による歪みの生じたリーフバルブを弁座に当接させると、上記歪みによってリーフバルブと弁座との間に不要な隙間ができるが、上記構成によれば、そのような隙間の発生が防止される。
【0058】
プレート31は、環状であって、その幅が圧側の弁座10gの幅よりも若干大きく、圧側のリーフバルブ3を挟んで圧側の弁座10gと向かい合う。そして、このプレート31の上端には、板ばね32が当接している。この板ばね32は、弾性を有する環状板からなり、その内周部がガイド30に積層されてピストン10等とともにフランジ部15aとナット16との間に挟まれて固定されている。その一方、板ばね32の外周側は撓みを許容されており、その板ばね32の外周部がプレート31の上側に重なる。
【0059】
さらに、その板ばね32の上側には、ストッパ33が設けられている。そして、板ばね32の外周部が上方へと撓み、その撓み量(変形量)がある程度大きくなると、板ばね32がストッパ33に当接してそれ以上の撓みが阻止される。つまり、ストッパ33は、板ばね32のピストン10から離れる方向の変形量を制限する。
【0060】
また、圧側のリーフバルブ3が圧側の弁座10gに着座した状態では、板ばね32は、その外周側が内周側よりも若干高くなるように変形している。このため、圧側のリーフバルブ3は、その板ばね32の弾性力によって常に下向き、即ち、圧側の弁座10gに着座する方向(閉じ方向)へ付勢される。
【0061】
その圧側のリーフバルブ3で出口を開閉される圧側のポート10eの入口は常に開き、圧側室L2と連通されている。そして、緩衝器Dの収縮時に圧側室L2の圧力が高まると、圧側のリーフバルブ3全体が板ばね32の附勢力に抗して上方へ持ち上がり、圧側の弁座10gから離れて圧側のポート10eを開く。しかし、緩衝器Dの作動の方向が収縮から伸長へ切り換わり、圧側室L2の圧力が低下すると、圧側のリーフバルブ3が板ばね32の附勢力によって押し下げられて圧側の弁座10gに着座し、圧側のポート10eを閉じた状態へ戻る。
【0062】
また、圧側のリーフバルブ3の開弁時に、板ばね32の外周部の上方への撓み量がある程度大きくなると、ストッパ33に当接する。これにより、板ばね32のそれ以上の変形(撓み)が阻止されて、圧側のリーフバルブ3の上方への移動も阻止される。このように、本実施の形態では、ストッパ33が板ばね32の変形量を制限し、これにより圧側のリーフバルブ3の開口量を制限するようになっている。
【0063】
また、圧側のリーフバルブ3が圧側の弁座10gに着座した状態で、その圧側のリーフバルブ3と板ばね32との間には隙間Sが形成される。その隙間Sは、板ばね32にその肉厚を貫通するように形成された孔32aによって中間室L3と連通されている。これにより、隙間Sと中間室L3との間に差圧が生じ、その差圧で板ばね32が割れるのを防止できる。
【0064】
このように、本実施の形態では、減衰バルブVを構成するリーフバルブ組立体Rが、伸側と圧側のリーフバルブ2,3と、バルブディスクであるピストン10とを有し、圧側のリーフバルブ3がリフト式となっている。さらに、リーフバルブ組立体Rが、プレート31と、板ばね32と、ストッパ33とを有し、リフト式となっている圧側のリーフバルブ3を閉じ方向へ附勢するとともに、その開口量を制限するようになっている。
【0065】
以下、本実施の形態に係る減衰バルブVの作用効果について説明する。
【0066】
本実施の形態において、減衰バルブVは、圧側のポート(ポート)10eが形成されるピストン(バルブディスク)10と、このピストン10に対して全体が軸方向へ移動可能に設けられて圧側のポート10eを開閉する圧側のリーフバルブ(リーフバルブ)3と、この圧側のリーフバルブ3のピストン10とは反対側に設けられるプレート31と、圧側のリーフバルブ3と離間して配置されて上記プレート31を介して圧側のリーフバルブ3をピストン10へ向けて付勢する板ばね32と、圧側のリーフバルブ3と直列に設けられる減衰力調整部Aとを備えている。
【0067】
圧側のリーフバルブ3が移動可能な軸方向とは、圧側のリーフバルブ3の板厚方向のことであり、上記構成によれば、圧側のリーフバルブ3全体がピストン10から離れられる。このように、圧側のリーフバルブ3がリフト式となっている場合、圧側のリーフバルブ3自体のバルブ剛性をそれほど下げなくても開きやすくできる。このため、減衰力調整部Aの調整により発生する減衰力を最も小さく設定するフルソフト時の圧側の減衰力を低減するのに、圧側のリーフバルブ3のバルブ剛性をそれほど下げる必要がなく、圧側のリーフバルブ3のバルブ剛性を確保しつつフルソフト時の圧側の減衰力を十分に低減できる。
【0068】
また、上記減衰バルブVが圧側のリーフバルブ3をピストン10へ向けて、即ち、閉じ方向へ付勢する板ばね32を備えている。このため、緩衝器Dの作動の方向が収縮から伸長へ切り換わったときに、圧側のリーフバルブ3がその板ばね32の付勢力を受けてピストン10側へと移動し、圧側のポート10eを速やかに閉じられる。つまり、上記構成によれば、圧側のリーフバルブ3をリフト式にしたとしてもその閉じ遅れを防止できるので、フルソフト時の圧側の減衰力を十分に低減しつつ閉じ遅れに起因する減衰力波形の乱れを防止できる。
【0069】
さらに、本実施の形態では、板ばね32が圧側のリーフバルブ3と離間して配置され、プレート31を介して圧側のリーフバルブ3を付勢している。このため、板ばね32を支える部分(本実施の形態ではガイド30)とプレート31との高さのバランスにより、板ばね32の初期撓みを調整できる。また、板ばね32を環状板等の平板状の部材にできるので、軸方向に嵩張らない。これにより、リーフバルブ組立体Rの組立工程におけるナット16を締める前の段階で、板ばね32によって他の部材が大きく押し上げられることがなく、リーフバルブ組立体Rの組立性を良好にでき、ひいては減衰バルブVの組立性を良好にできる。
【0070】
また、本実施の形態では、圧側のリーフバルブ3が複数枚設けられ、その最もピストン10から離れた位置にある圧側のリーフバルブ3にプレート31が溶接されている。このように、プレート31を圧側のリーフバルブ3に固定すると、圧側のリーフバルブ3において板ばね32の付勢力を加えようとする位置からプレート31がずれるのを防止できる。このため、圧側のリーフバルブ3の決まった位置に、板ばね32の付勢力を加えられる。
【0071】
さらに、上記構成によれば、プレート31の溶接された圧側のリーフバルブ3以外の圧側のリーフバルブ3が閉弁時にピストン10における圧側の弁座10gに当接する。このように、上記構成によれば、溶接による歪みのない圧側のリーフバルブ3を圧側の弁座10gに当接させられる。このため、閉弁時に圧側のリーフバルブ3と圧側の弁座10gとの間に溶接による歪みによって不要な隙間ができるのを防止し、発生する減衰力がバラツクのを防止できる。
【0072】
また、本実施の形態では、プレート31が環状に形成されるとともに、圧側の弁座10gと軸方向視で重なる位置に設けられている。この弁座と軸方向視で重なる位置とは、リーフバルブを挟んで弁座と向かい合う位置であり、上記構成によれば、圧側のリーフバルブ3が圧側の弁座10gに離着座する部分に板ばね32の付勢力を加えられる。これにより、圧側のリーフバルブ3を圧側の弁座10gに確実に着座させられる。しかし、プレート31の位置、形状、及び接合方法は適宜変更できる。
【0073】
また、本実施の形態では、板ばね32に、その肉厚を貫通する孔32aが形成されている。このため、板ばね32の板厚方向の両側に差圧が生じ、その差圧で板ばね32が割れるのを防止できる。さらに、孔32aの大きさ、形状等に応じて板ばね32のばね定数をチューニングできる。しかし、孔32aを廃し、プレート31と板ばね32との間に切欠き等によって隙間を形成し、これにより板ばね32の板厚方向の両側に差圧が生じるのを防止してもよい。
【0074】
さらに、板ばね32の形状は、環状に限らず適宜変更できる。例えば、板ばねが取付軸15の外周にピストン10等とともに固定される環状の固定部と、この固定部から径方向外側へ放射状に突出する複数の脚部とを有していてもよい。このような場合にも、板ばねの板厚方向の両側に差圧が生じるのを防止できるとともに、脚部の数、幅等に応じて板ばねのばね定数をチューニングできる。
【0075】
また、本実施の形態では、圧側のリーフバルブ3が環状であって、ピストン(バルブディスク)10に一枚以上積層されており、軸方向長さが圧側のリーフバルブ3全体の軸方向長さよりも長いガイド30の外周に摺接可能に装着されている。この圧側のリーフバルブ3全体の軸方向長さとは、ピストン10に積層される圧側のリーフバルブ3が一枚である場合には、その一枚分の板厚に相当し、ピストン10に積層される圧側のリーフバルブ3が複数枚である場合には、各圧側のリーフバルブ3の板厚の合計に相当する。
【0076】
上記構成によれば、圧側のリーフバルブ3がガイド30に支えられつつピストン10に対して軸方向へ円滑に移動できる。このため、圧側のリーフバルブ3の閉じ遅れを一層確実に防止できる。さらに、本実施の形態ではガイド30が積層された複数枚のワッシャ30aを有して構成されるので、ガイド30の軸方向長さ(高さ)の調整が容易である。
【0077】
しかし、ガイド30は、一つの筒部材によって構成されていてもよい。また、本実施の形態では、圧側のリーフバルブ3がガイド30の外周に装着されていて、圧側のリーフバルブ3の外周部がピストン10の圧側の弁座10gに離着座し、これにより圧側のポート10eが開閉される。しかし、圧側のリーフバルブ3の外周にガイドを設け、圧側のリーフバルブ3の内周部を圧側の弁座に離着座させてもよい。
【0078】
また、本実施の形態の減衰バルブVは、板ばね32の変形量を制限するストッパ33を備えている。当該構成によれば、板ばね32が所定量以上変形するのをストッパ33で阻止できる。そして、板ばね32の変形が阻止されると、圧側のリーフバルブ3がそれ以上開かなくなるので、上記構成によれば、圧側のリーフバルブ3の開口量を制限できる。
【0079】
さらに、本実施の形態では、減衰力調整部Aが圧側のリーフバルブ3の下流に位置する第二の弁体7と、この第二の弁体7の開弁圧を調整する開弁圧調整部Pとを有している。このように、リーフバルブの下流側に弁体が位置する場合、緩衝器の作動の方向が切り換わったときにリーフバルブの背圧が高まり難く、リーフバルブに閉じ遅れの問題が生じやすい。このため、上記構成によれば、圧側のリーフバルブ3を板ばね32でピストン10側へ付勢するのが特に有効である。
【0080】
しかし、伸側のリーフバルブ2をリフト式にしてそのピストン10とは反対側にプレートを設け、このプレートを介して伸側のリーフバルブ2を板ばねでピストン10側へ付勢してもよい。
【0081】
さらに、本実施の形態では、本発明に係る減衰バルブが緩衝器Dのピストン10部に具現化されている。しかし、本発明に係る減衰バルブを設ける位置は、適宜変更できる。例えば、緩衝器がユニフロー型となっていて、その伸縮時に液体が伸側室、リザーバ、圧側室の順に一方向で循環する場合には、その循環通路の途中に本発明に係る減衰バルブを設けてもよい。そして、このような場合には、リーフバルブを伸側用と圧側用に分けなくて済む。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
A・・・減衰力調整部、V・・・減衰バルブ、3・・・圧側のリーフバルブ(リーフバルブ)、10・・・ピストン(バルブディスク)、10e・・・圧側のポート(ポート)、30・・・ガイド、31・・・プレート、32・・・板ばね、33・・・ストッパ
図1
図2
図3