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特許7165034膨張袋体の連結具、及び連結具により連結された膨張袋体
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  • 特許-膨張袋体の連結具、及び連結具により連結された膨張袋体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】膨張袋体の連結具、及び連結具により連結された膨張袋体
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20221026BHJP
   E21D 11/18 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
E21D11/04 Z
E21D11/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018223218
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020084667
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 順一
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-259696(JP,A)
【文献】特開2001-295598(JP,A)
【文献】特開昭56-131800(JP,A)
【文献】特開平10-280891(JP,A)
【文献】特開2003-148091(JP,A)
【文献】特開2005-256348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0336728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
E21D 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材を注入させて膨張させる複数の膨張袋体を重なり合うように連結させる膨張袋体の連結具において、充填材が注入されて膨張される膨張袋体を挿入し、膨張後の膨張袋体を保持する筒状部を、1方向に重なるように複数配置させると共に、前記の筒状部相互が重なる部分に、筒状部の軸方向に沿って所要幅で筒状部相互を連結させる連結部を設けた膨張袋体の連結具が、挿入可能で且つ膨張後の前記の膨張袋体を保持した前記の筒状部を保持する大径の筒状部を、前記の1方向に重なるように複数配置させ、この大径の筒状部相互が重なる部分に、その軸方向に沿って所要幅で大径の筒状部相互を連結させる連結部を設けたことを特徴とする膨張袋体の連結具。
【請求項2】
充填材を注入させて膨張させる複数の膨張袋体を重なり合うように連結させる膨張袋体の連結具において、充填材が注入されて膨張される膨張袋体を挿入し、膨張後の膨張袋体を保持する筒状部を、1方向に重なるように複数配置させると共に、前記の筒状部相互が重なる部分に、筒状部の軸方向に沿って所要幅で筒状部相互を連結させる連結部を設け、前記の連結部に、硬質材料で構成された変型防止材を設けたことを特徴とする膨張袋体の連結具。
【請求項3】
請求項1に記載した膨張袋体の連結具において、筒状部の軸方向に沿って所要幅で筒状部相互を連結させる連結部に、硬質材料で構成された変型防止材を設けたことを特徴とする膨張袋体の連結具。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載した膨張袋体の連結具において、前記の筒状部の軸方向の一端側を閉塞させて、前記の筒状部を袋状に形成したことを特徴とする膨張袋体の連結具。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載した膨張袋体の連結具を用い前記の各筒状部内に、それぞれ充填材が注入されて膨張される膨張袋体を挿入したことを特徴とする連結具により連結された膨張袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水やセメント等の充填材を注入させて膨張させる複数の膨張袋体を重ねるようにして連結させる膨張袋体の連結具、及び連結具により連結された膨張袋体に関するものである。特に、土木構造物間等の隙間や土木構造物と地山との隙間等の隙間部分に、水やセメント等の充填材を注入させて膨張させる複数の膨張袋体を重ねるようにして設置するにあたり、膨張された各膨張袋体相互の重なり位置等がずれないように、各膨張袋体相互を適切に重ね合わせた状態で維持できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来においては、特許文献1に示されるように、水やセメント等の充填材を注入させて膨張させる膨張袋体を、土木構造物間の隙間や土木構造物と地盤との隙間等の隙間部分に設置し、この膨張袋体内に水やセメント等の充填材を注入して膨張袋体を膨張させて、前記の隙間の間詰め材として使用するようにしたものや、特許文献2に示されるように、空気を注入させるチューブを外袋に収納させ、これを前記のような隙間に差し込んで、前記のチューブ内に空気を注入させて膨張させ、エアジャッキとして用いるようにしたもの等が提案されている。
【0003】
ここで、土木構造物を所定の位置に設置できなかったなどの理由により、前記のような隙間が想定以上に大きくなることがあり、この場合には、前記のような1つの膨張袋体に充填材を注入させて膨張させただけでは、その膨張量に限界があり、このように大きくなった隙間を十分に埋めることができなくなることがあった。
【0004】
このような場合、従来においては、新たな膨張袋体や木材などを間詰め材として準備し、1つの膨張袋体で十分に埋めることができなかった隙間の部分に、これらを詰め込むようにして対応していた。
【0005】
しかし、十分に埋めることができなかった隙間の確認や、この隙間に対応した新たな間詰め材を準備して、これを前記の隙間部分に詰め込む作業が必要となるので、施工期間が長くなるという問題があった。
【0006】
また、土木構造物間等の隙間が大きな場合にも対応できるようにするため、予め寸法が大きい膨張袋体を準備することが考えられるが、隙間が狭い場合には、この膨張袋体を隙間の適切な位置に設置できなくなったり、また膨張袋体を隙間に設置できた場合であっても、大きい膨張袋体の余剰部分にモルタル等の充填材が注入されるようになって、コストアップにつながる等の問題があった。
【0007】
また、土木構造物間の隙間や土木構造物と地盤との隙間が大きな場合には、膨張袋体を上下に2つ以上重ねて使用することも考えられるが、膨張袋体内に充填材を注入させて膨張させた場合に、膨張された膨張袋体の断面形状が楕円形状になるため、膨張された膨張袋体を重ねた状態では、膨張袋体相互の安定性が極めて悪くなり、例えば、2つの膨張袋体を重ねた状態で前記のような隙間部分に設置し、各膨張袋体内に充填材を注入させて膨張させた場合、各膨張袋体の断面形状が楕円形状になり、重なった状態にある2つの膨張袋体が横滑りして、膨張袋体相互の上下重なり状態が崩れ、所望の膨らみ高さが得られず、前記のような隙間を十分に埋めることができなくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-295598号公報
【文献】登録実用新案第3026155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、土木構造物間の隙間や土木構造物と地山との隙間等の隙間部分に、水やセメント等の充填材を注入させて膨張させる複数の膨張袋体を重ねるようにして設置する場合に、膨張された各膨張袋体相互の重なり位置等がずれないように、各膨張袋体相互を適切に重ね合わせた状態で維持できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における膨張袋体の連結具においては、前記のような課題を解決するため、充填材を注入させて膨張させる複数の膨張袋体を重なり合うように連結させる膨張袋体の連結具において、充填材が注入されて膨張される膨張袋体を挿入し、膨張後の膨張袋体を保持する筒状部を、1方向に重なるように複数配置させると共に、前記の筒状部相互が重なる部分に、筒状部の軸方向に沿って所要幅で筒状部相互を連結させる連結部を設けた膨張袋体の連結具が、挿入可能で且つ膨張後の前記の膨張袋体を保持した前記の筒状部を保持する大径の筒状部を、前記の1方向に重なるように複数配置させ、この大径の筒状部相互が重なる部分に、その軸方向に沿って所要幅で大径の筒状部相互を連結させる連結部を設けた
【0011】
ここで、このような膨張袋体の連結具において、前記のように筒状部相互が重なる部分に、筒状部の軸方向に沿って所要幅で筒状部相互を連結させる連結部が設けられた各筒状部内にそれぞれ膨張袋体を挿入させ、各膨張袋体内に充填材を注入させて膨張袋体を膨張させた場合、各筒状部内における膨張した膨張袋体の外周面が各筒状部の内周面に密着することにより一体化されると共に、各筒状部内において膨張された膨張袋体相互が、筒状部相互を所要幅で連結させた連結部によって平坦な状態で接触するようになり、各筒状部内において膨張された膨張袋体相互の位置がずれたりするのが抑制される。
また、軸方向が長尺な膨張袋体を保持させる場合、各筒状部の軸方向も長尺にすることで、各筒状部内に長尺な膨張袋体を挿入し膨張袋体内に充填材を注入させて膨張袋体を膨張させた場合に、それぞれの筒状部内で膨張された膨張袋体の軸方向の位置がずれたりするのが抑制される。
なお、軸方向が長尺な膨張袋体を保持させる場合、膨張袋体の長さ方向に所要幅の筒状部を有する連結具を複数用いて、所要間隔を介して設けることも可能である。
【0012】
そして、このような膨張袋体の連結具において、複数の筒状部を、1方向に例えば上下方向に重なるように配置させるにあたり、筒状部の数は2以上であれば特に限定されず、数多くの筒状部を上下方向に重なるように配置させることができる。
【0013】
また、本発明に係る膨張袋体の連結具においては、前記の膨張袋体の連結具が挿入可能で且つ膨張後の前記の膨張袋体を保持した前記の筒状部を保持する大径の筒状部を前記の1方向に重なるように複数配置させ、この大径の筒状部相互が重なる部分に、その軸方向に沿って所要幅で大径の筒状部相互を連結させる連結部を設けるようにした
【0014】
このようにすると、充填材を注入させて膨張させる複数の膨張袋体を重なり合うように連結させた膨張袋体の連結具がさらに大径の筒状部内に挿入されると共に、この大径の筒状部体相互を連結部によって連結されることになり、膨張袋体の連結具における筒状部を、1方向にさらに数多く重なり合うように連結させることが安定して行えるようになる。
また、前記の膨張袋体の連結具においては、筒状部の軸方向に沿って所要幅で筒状部相互を連結させる連結部に、硬質材料で構成された変型防止材を設けることができる。
【0015】
また、本発明に係る膨張袋体の連結具において充填材を注入させて膨張させる複数の膨張袋体を重なり合うように連結させる膨張袋体の連結具において、充填材が注入されて膨張される膨張袋体を挿入し、膨張後の膨張袋体を保持する筒状部を、1方向に重なるように複数配置させると共に、前記の筒状部相互が重なる部分に、筒状部の軸方向に沿って所要幅で筒状部相互を連結させる連結部を設け、前記の連結部に、硬質材料で構成された変型防止材を設けるようにした。このようにすると、各筒状部内において膨張された膨張袋体相互が、筒状部相互を所要幅で連結させた連結部に設けた前記の変型防止材によってより確実に平坦な状態で接触するようになり、各筒状部内において膨張された膨張袋体相互の位置がずれたりするのが一層抑制される。
【0016】
また、本発明に係る膨張袋体の連結具において、筒状部の軸方向の一端側を閉塞させて、前記の筒状部を他端が開口した袋状に形成することができる。このようにすると、筒状部の軸方向の一端側が上下方向の下側に位置したときや、手の届かない例えば構造物内に配置する場合において、筒状部内の膨張袋体が筒状部の軸方向の一端側から抜け出たり、大きく突出したりすることを抑制できる。
【0017】
また、前記のように筒状部の軸方向の一端側を閉塞させた場合、この筒状部の軸方向の他端側から膨張袋体を挿入させた後、この筒状部の軸方向の他端側を面接合ファスナー等によって閉塞させるようにすることもできる。
【0018】
そして、本発明の連結具により連結された膨張袋体においては、前記のような膨張袋体の連結具における各筒状部内に、それぞれ膨張袋体を挿入させるようにする。
【発明の効果】
【0019】
本発明における膨張袋体の連結具において、前記のように筒状部相互が重なる部分に筒状部の軸方向に沿って所要幅で筒状部相互を連結させる連結部が設けられた各筒状部内に、それぞれ膨張袋体を挿入させるようにしたため、この状態で、各膨張袋体内に充填材を注入させて各膨張袋体を膨張させた場合、各筒状部内における各膨張袋体の外周面膨張が各筒状部によりの内周面に密着すること体により一体化して保持されると共に、各筒状部内において膨張された膨張袋体相互が、筒状部相互を所要幅で連結させた連結部によって平坦な状態で接触するようになり、各筒状部内において膨張された膨張袋体相互の位置がずれたりするのが抑制される。
【0020】
この結果、本発明における膨張袋体の連結具における各筒状部内にそれぞれ膨張袋体を挿入させ、各膨張袋体内に充填材を注入させて、各膨張袋体を膨張させるようにすると、土木構造物間等の隙間や土木構造物と地山との隙間等の隙間部分に、充填材を注入させて膨張させる複数の膨張袋体を重ねるように設置して、各膨張袋体に充填材を注入させて膨張させた際に、膨張された各膨張袋体相互が前記の膨張袋体の連結具によりずれたりすることがなく、膨張袋体相互が適切に重なり合って連結された状態で維持できるようになり、どのような大きさの隙間部分に対しても、前記のようにして隙間を簡単かつ適切に埋めることができるようになる。
【0021】
また、本発明においては、大きい膨張袋体を用いた従来の場合のように、大きい膨張袋体の余剰部分にモルタル等の充填材が充填されてコストアップになるということがなく、材料費のコストダウンを図ることができ、さらに膨張袋体を設置する隙間のスペースに制限がある場所であっても、膨張袋体をはみ出さずに設置して、隙間を十分に埋めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る膨張袋体の連結具を示し、(A)は2つの筒状部を内周側と外周側の2重筒状に配置させ、その軸方向に沿って筒状部相互を所要幅で縫製して、中央に縫製されていない空間を有する連結部を形成した状態を示した概略部分説明図、(B)は軸方向に沿った連結部を設けた2つの筒状部を外周側の筒状部を反転させて、2つの筒状部を前記の連結部により上下方向に重なるように連結させた状態で、連結部の中央における縫製されていない空間内に樹脂板からなる変型防止材を挿入させた状態を示した概略部分説明図である。
図2】前記の第1の実施形態に係る膨張袋体の連結具において、(A)は連結部により上下方向に重なるように連結された前記の2つの筒状部内にそれぞれ膨張袋体を挿入させた状態を示した概略説明図、(B)は2つの筒状部内に挿入させた各膨張袋体内に充填材を注入させた状態を示した概略説明図である。
図3】前記の第1の実施形態に係る膨張袋体の連結具において、前記の筒状部内に挿入させる膨張袋体の概略部分説明図である。
図4】前記の第1の実施形態に係る膨張袋体の連結具において、2つの筒状部の一端側をそれぞれ縫製して閉塞させる一方、2つの筒状部におけるそれぞれの他端側に面接合ファスナーを設け、2つの筒状部におけるそれぞれの他端側を開閉可能にした状態を示した概略説明図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る膨張袋体の連結具を示し、(A)は外周側の筒状部内に内周側の2つの筒状部を配置させ、上側に位置する内周側の筒状部を外周側の筒状部の上側の内周面に接触させ、軸方向に沿って筒状部相互を所要幅で縫製して連結部を形成すると共に、下側に位置する内周側の筒状部を外周側の筒状部の下側の内周面に接触させ、軸方向に沿って筒状部相互を所要幅で縫製して連結部を形成した状態を示した概略部分説明図、(B)は軸方向に沿った連結部によって連結させた3つの筒状部を外周側の筒状部を反転させて、外周側の筒状部の上下に内周側の2つの筒状部を重なるように連結させた状態で、前記の2つの連結部内の隙間に樹脂板からなる変型防止材を挿入させた状態を示した概略部分説明図である。
図6】前記の第2の実施形態に係る膨張袋体の連結具において、3つの筒状部内にそれぞれ膨張袋体を挿入して使用する状態を示し、(A)は前記の3つの筒状部内にそれぞれ膨張袋体を挿入させて、構造物と地盤との間の隙間部分に設置させた状態を示した概略説明図、(B)は下に移置する2つの筒状部内に挿入された各膨張袋体内に充填材を注入させて、2つの筒状部内の各膨張袋体を膨張させた状態を示した概略説明図、(C)は下に移置する2つの筒状部内に挿入させた各膨張袋体を膨張させた状態、上に位置する残りの1つの筒状部内に挿入された膨張袋体内に充填材を注入させて膨張させ、構造物と地盤との間の隙間部分において圧力を加えて、両者を広げるように保持させた状態を示した概略説明図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る膨張袋体の連結具を示し、前記の第1の実施形態における膨張袋体の連結具を挿入させる大径の筒状部を上下方向に重なるように2つ配置させ、この大径の筒状部相互が重なる部分に、その軸方向に沿って所要幅で大径の筒状部相互を連結させる連結部を設けると共に、前記の2つの大径の筒状部内にそれぞれ第1の実施形態における膨張袋体の連結具を挿入させた状態を示した概略説明図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る膨張袋体の連結具を示し、(A)は2つの筒状部を内周側と外周側の2重筒に配置させ、その軸方向に沿って上に位置する筒状部の上に所要幅になった薄い樹脂シートを配置させると共に、この樹脂シートの上に前記の軸方向に所要間隔を介するようにして所要幅になった複数の樹脂板からなる変型防止材を配置させ、ボルト等の連結部材により前記の変型防止材と一緒に2つの筒状部を連結させて、軸方向に沿った連結部を設けた状態を示した概略部分説明図、(B)は前記のようにして軸方向に沿った連結部を設けた2つの筒状部を外周側の筒状部を反転させて、2つの筒状部を前記の連結部により上下方向に重なるように連結させた状態を示した概略部分説明図である。
図9】本発明の第5の実施形態に係る膨張袋体の連結具において、(A)は軸方向の長さが短い2つの筒状部を、上下に重ね合わせるようにして所要幅で接合させて連結させた状態を示した概略斜視図、(B)は前記の2つの筒状部を膨張袋体の長さ方向に所要間隔を介して複数設け、このように複数設けた2つの筒状部内にそれぞれ膨張袋体を挿入させ、各膨張袋体内に充填材を注入させて膨張させた状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る膨張袋体の連結具及び連結具により連結された膨張袋体を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る膨張袋体の連結具及び連結具により連結された膨張袋体は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0024】
(第1の実施形態)
第1の実施形態における膨張袋体の連結具においては、図1(A)に示すように、2つの筒状部10,10を内周側と外周側の2重筒状に配置させ、2重筒状になった2つの筒状部10,10相互を、その軸方向に沿って所要幅を介するようにして縫製して、中央に縫製されていない空間部分11aを有する所要幅の連結部11を形成するようにした。
【0025】
次いで、前記のように連結部11を形成した2重筒状になった2つの筒状部10,10を反転させて、図1(B)に示すように、2つの筒状部10,10が前記の連結部11により上下方向に重なるように連結させた状態で、前記の連結部11の中央部における空間部分11a内に樹脂板12aからなる変型防止材12を挿入させるようにした。樹脂板12aは、例えば厚み2~5mmの硬質塩化ビニル樹脂板が好適であるが、膨張袋体の寸法や使用用途などを鑑みて適宜選択すればよい。また、変形防止材12は樹脂板に限定される事無く、金属板や木材などより剛性の高い材料を用いることができる。
【0026】
そして、この実施形態における膨張袋体の連結具においては、前記のように2つの筒状部10,10を前記の連結部11により上下方向に重なるように連結させて、前記の連結部11の中央部における空間部分11a内に樹脂板12aからなる変型防止材12を挿入させた状態で、図2(A)に示すように、各筒状部10,10内にそれぞれ膨張袋体20,20を挿入させ、その後、図2(B)に示すように、各膨張袋体20,20内にそれぞれ充填材Xを注入させて、各膨張袋体20,20を膨張させるようにした。なお、各筒状部10,10内に挿入させて充填材Xを注入させる膨張袋体20としては、図3に示すように、充填材が漏れ出さない密封の袋体で構成され、その一端に充填材Xを膨張袋体20内に注入させる充填口金21が設けられたものを用いるようにしている。
【0027】
ここで、前記のようにして各筒状部10,10内に挿入させた各膨張袋体20,20内にそれぞれ充填材Xを注入させた場合、各筒状部10,10内において膨張された各膨張袋体20,20相互が前記のように変型防止材12を挿入させた連結部11の部分で平坦な状態で接触するようになり、各筒状部10,10内で膨張されたそれぞれの膨張袋体20,20が安定した状態で維持されるようになる。なお、このように各筒状部10,10内で膨張された各膨張袋体20,20が重なり合った状態で安定して維持されるようにするためには、前記の筒状部10の周長に対して、前記の連結部11の幅を15~35%程度にすることが好ましい。15%未満であると安定性が維持できず各膨張袋体20,20が重なり合った状態が崩れやすくなる。また35%を超えると膨張袋体20,20の所望する膨張径が得にくくなるので好ましくない。
【0028】
また、この実施形態においては、筒状部10,10を連結部11により上下方向に重なるように連結させた状態で、連結部11の中央部における空間部分11a内に樹脂板12aからなる変型防止材12を挿入させるようにしたが、前記の筒状部10,10における連結部11全体を強く縫い合わせたり、強固な接着剤で接着させたりすることにより、連結部11により筒状部10,10相互を変形しないように強く接合させることができる場合には、前記のように連結部11の中央部に空間部分11aを設けて樹脂板12aからなる変型防止材12を挿入させる必要はない。
【0029】
また、この実施形態においては、前記のように各筒状部10,10内に各膨張袋体20,20を挿入させると共に、各膨張袋体20,20内にそれぞれ充填材Xを注入させて、各筒状部10,10内において各膨張袋体20,20を膨張させるにあたり、各筒状部10,10内において重なり合うようにして設けた各膨張袋体20,20における軸方向の位置がずれたり、各膨張袋体20,20が各筒状部10,10から飛び出したりするのを防止するため、図4に示すように、各筒状部10,10の一端側にそれぞれ縫製により閉塞させた閉塞部13,13を設ける一方、各筒状部10,10におけるそれぞれの他端側に面接合ファスナー14,14を設け、各筒状部10,10におけるそれぞれの他端側を開閉可能にすることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
第2の実施形態における膨張袋体の連結具においては、図5(A)に示すように、外周側の筒状部10の内周側における上側と下側との位置にそれぞれ筒状部10,10を配置させ、上側に位置する内周側の筒状部10を外周側の筒状部10の上側の内周面に接触させ、この状態で、上側に位置する内周側の筒状部10と外周側の筒状部10との相互を軸方向に沿って所要幅を介するように縫製し、中央に縫製されていない空間部分11aを有する所要幅の連結部11を形成すると共に、下側に位置する内周側の筒状部10を外周側の筒状部10の下側の内周面に接触させ、この状態で、下側に位置する内周側の筒状部10と外周側の筒状部10との相互を軸方向に沿って所要幅を介するように縫製し、中央に縫製されていない空間部分11aを有する所要幅の連結部11を形成するようにした。
【0031】
次いで、軸方向に沿った各連結部11,11によって連結された3つの筒状部10,10,10を外周側の筒状部だけ裏表逆になるように反転させ、外周側の筒状部10の上下に内周側の2つの筒状部10,10が重なるようにして連結させた状態で、前記の2つの連結部11,11の中央部における空間部分11a,11a内に樹脂板12a,12aからなる変型防止材12,12を挿入させるようにした。
【0032】
そして、この実施形態における膨張袋体の連結具においても、前記のように連結部11,11により上下方向に重なるように連結された3つの筒状部10,10,10内にそれぞれ膨張袋体20,20,20を挿入させ、このように挿入させた各膨張袋体20,20,20内にそれぞれ充填材Xを注入させて、各膨張袋体20,20,20を膨張させるようにする。
【0033】
次に、この実施形態における膨張袋体の連結具を使用し、構造物Y1と地盤Y2との間の隙間部分Sにおいて、構造物Y1と地盤Y2との間に圧力を加えて両者を広げるようにして保持させる場合を、図6(A)~(C)に基づいて説明する。
【0034】
先ず、図6(A)に示すように、上下方向に重なるように連結された3つの筒状部10,10,10内にそれぞれ膨張袋体20,20,20を挿入させて、構造物Y1と地盤Y2との間の隙間部分Sに設置させる。次いで、図6(B)に示すように、下に移置する2つの筒状部10,10内に挿入された各膨張袋体20,20内にそれぞれ充填材Xを注入させて、2つの筒状部10,10内における各膨張袋体20,20を膨張させ、その後、図6(C)に示すように、上に位置する残りの1つの筒状部10内に挿入された膨張袋体20内に充填材Xを注入させて膨張させ、構造物Y1と地盤Y2との間に圧力を加えて、構造物Y1と地盤Y2との間の隙間部分Sを広げるようにして保持させるようにする。このようにすると、構造物Y1と地盤Y2との間の隙間部分Sにおいて、3つの筒状部10,10,10内に挿入させた各膨張袋体20,20,20内に充填材Xを注入させて膨張させた際に、各膨張袋体20,20,20が構造物Y1と地盤Y2との間における反力により重なり合った状態で固定され、3つの筒状部10,10,10内に挿入させた各膨張袋体20,20,20の重なりが適切に維持された状態になり、これによって構造物Y1と地盤Y2との間に圧力を加えることができるようになる。
【0035】
(第3の実施形態)
第3の実施形態における膨張袋体の連結具においては、図7に示すように、前記の第1の実施形態に示すようにして2つの筒状部10,10を連結部11により上下方向に重なるように連結させた膨張袋体の連結具を2つ用い、この第1の実施形態における各膨張袋体の連結具を、それぞれ大径の2つの筒状部100,100内に挿入させて上下方向に重なるように2つ配置させ、この大径の筒状部100,100相互が重なる部分に、その軸方向に沿って所要幅で大径の筒状部相互を連結させる連結部110を設けている。
【0036】
そして、この実施形態における膨張袋体の連結具においては、前記のように第1の実施形態に示す2つの膨張袋体の連結具を、それぞれ大径の筒状部100,100内に挿入させ、その後、図示していないが、前記の第1の実施形態に示す2つの膨張袋体の連結具における4つの各筒状部10,10,10,10内にそれぞれ前記の膨張袋体20,20,20,20を挿入させ、このように挿入させた各膨張袋体20,20,20,20内にそれぞれ充填材Xを注入させて、各膨張袋体20,20,20,20を膨張させるようにする。
【0037】
このようにした場合、前記の第1の実施形態に示す2つの膨張袋体の連結具においては、それぞれ前記のように各筒状部10,10内において膨張された各膨張袋体20,20,20,20相互が、前記のように変型防止材12,12が挿入された各連結部11,11の部分で平坦な状態で接触するようになり、各筒状部10,10内で膨張されたそれぞれの膨張袋体20,20,20,20が安定した状態で維持されると共に、この2つの膨張袋体の連結具を挿入させた2つの大径の筒状部100,100も、これらが重なる部分にその軸方向に沿って所要幅で設けた連結部110によって平坦な状態で接触して、2つの大径の筒状部100,100内に挿入された2つの膨張袋体の連結具も安定した状態で維持されるようになり、4つの筒状部10,10,10,10内で膨張された各膨張袋体20,20,20,20の重なりがずれたりするのが抑制されて、安定した状態で維持されるようになる。
【0038】
(第4の実施形態)
第4の実施形態における膨張袋体の連結具においては、前記の第1の実施形態に示す膨張袋体の連結具に対して、2つの筒状部10,10相互を上下方向に重なるように連結させる連結部11だけを変更させ、それ以外は、前記の第1の実施形態に示す膨張袋体の連結具と同様に構成した。
【0039】
ここで、この実施形態における膨張袋体の連結具においては、図8(A)に示すように、2つの筒状部10,10を内周側と外周側の2重筒に配置させ、2重筒状になった2つの筒状部10,10相互を上下方向に重なるように連結させる連結部11を設けるにあたり、この2重筒状になった上側に位置する筒状部10の上に、その軸方向に沿って所要幅になった薄い樹脂シート12bを配置させると共に、この樹脂シート12bの上に前記の軸方向に所要間隔を介するようにして所要幅になった複数の樹脂板12cからなる変型防止材12を配置させ、ボルト等の連結部材11bにより前記の樹脂シート12bと樹脂板12cとからなる変型防止材12と一緒に2つの筒状部10,10相互を上下方向に重なるように連結させた。なお、薄い樹脂シート12bは、自立する程度の剛性を有するが、連結させた2つの筒状部を反転させる時に裏返し動作を妨げない程度の柔軟性を有するものを用いる。例えば厚さ0.1~0.2mmの硬質ポリプロピレン製シートなど硬質で薄肉なものが好適である。
【0040】
次いで、前記のように2重筒状になった2つの筒状部10,10相互を上下方向に重なるようにして、連結部材11bを用いた連結部11によって連結させた状態で、図8(B)に示すように、この2重筒状になった2つの筒状部10,10を反転させ、2つの筒状部10,10が連結部11により上下方向に重なるように連結された部分において、前記の樹脂シート12bの上に軸方向に所要間隔を介するようにして所要幅になった複数の樹脂板12cが設けられてなる変型防止材12が、一方の筒状部10の内周面側に位置するようにして、2つの筒状部10,10を前記の連結部11により上下方向に重なるように連結させた。
【0041】
その後は、図示していないが、前記の第1の実施形態における膨張袋体の連結具と同様に、各筒状部10,10内にそれぞれ膨張袋体20,20を挿入させ、その後、各膨張袋体20,20内にそれぞれ充填材Xを注入させて、各膨張袋体20,20を膨張させるようにする。なお、この実施形態における膨張袋体の連結具においても、各筒状部10,10内において膨張された各膨張袋体20,20相互が、前記のように樹脂シート12bの上に軸方向に所要間隔を介するようにして所要幅になった複数の樹脂板12cが設けられた変型防止材12により、前記の連結部11の部分において平坦な状態で接触するようになり、各筒状部10,10内で膨張されたそれぞれの膨張袋体20,20が安定した状態で維持されるようになる。
【0042】
(第5の実施形態)
第5実施形態における膨張袋体の連結具においては、図9(A)に示すように、軸方向の長さが短い2つの筒状部10,10を上下に重ね合わせるようにして、この2つの筒状部10,10を所要幅で接合させ、このように接合された部分において、上下に重ね合わせ2つの筒状部10,10を強く縫い合わせて連結部11を形成し、この連結部11により前記の2つの筒状部10,10を強く接合させるようにした。
【0043】
また、この実施形態においては、図9(B)に示すように、前記のように上下に重ね合わせるようにして連結部11により連結された軸方向の長さが短い2つの筒状部10,10からなる連結具を、その軸方向に所要間隔を介して複数配置させると共に、このように複数配置された2つの筒状部10,10における上側に位置する各筒状部10と、下側に位置する各筒状部10とに、それぞれ充填材Xを注入させる膨張袋体20,20を挿入させ、これらの膨張袋体20,20内に充填材Xを注入させて膨張させるようにしている。なお、前記の各膨張袋体20,20においては、その両端部に縫製などによって閉塞させた閉塞部22を設け、各膨張袋体20,20内に注入させた充填材Xが漏れ出さないようにしている。
【0044】
そして、この実施形態のように、連結部11により連結された軸方向の長さが短い2つの筒状部10,10を用いて軸方向に所要間隔を介して複数配置させると、軸方向に所要間隔を介して複数配置された各筒状部10,10内において膨張された各膨張袋体20,20相互が、前記のように複数配置された上下の各筒状部10,10を強く接合させるようにして連結する前記の各連結部11において平坦な状態で保持されるようになり、各筒状部10,10内で膨張されたそれぞれの膨張袋体20,20が安定した状態で維持されるようになる。
【0045】
なお、本発明の実施形態において、筒状部10や連結部11は筒状布帛や織物層と樹脂層が一体に形成した消防ホースのような筒状物が好適に使用される。
なお、筒状部10や連結部11は、基布やターポリンなどのシート状物を縫製することで形成することも可能である。例えば連結部11をシート状物を丸めて縫製して作り、その連結部11を平坦に折り畳んで、その幅方向の耳部に沿って別のシート状物の端部をアーチ状に縫製することで筒状部10を形成することも可能である。
もちろん筒状物やシート状物を組み合わせて製作することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 :筒状部
11 :連結部
11a :空間部分
11b :連結部材
12 :変型防止材
12a :樹脂板
12b :樹脂シート
12c :樹脂板
13 :閉塞部
14 :面接合ファスナー
20 :膨張袋体
21 :充填口金
22 :閉塞部
100 :筒状部
110 :連結部
S :隙間部分
X :充填材
Y1 :構造物
Y2 :地盤

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9