IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特許7165037電力変換装置および電力変換装置の制御方法
<>
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図1
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図2
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図3
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図4
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図5
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図6
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図7
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図8
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図9
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図10
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図11
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図12
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図13
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図14
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図15
  • 特許-電力変換装置および電力変換装置の制御方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20221026BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20221026BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20221026BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/12 A
H02M7/12 K
H02M7/493
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018225184
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020089216
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智道
(72)【発明者】
【氏名】菊池 輝
(72)【発明者】
【氏名】川添 裕成
(72)【発明者】
【氏名】清藤 康弘
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0333612(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0187276(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0218986(US,A1)
【文献】特開2017-139895(JP,A)
【文献】特開2014-018015(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーバッファを含む単位変換器がN(Nは正の整数)段接続されるとともに、前記N段接続された単位変換器に第1リアクトルが直列接続され、交流の各相に設けられた第1アームと、
エネルギーバッファを含む単位変換器がM(Mは正の整数)段接続されるとともに、前記M段接続された単位変換器に第2リアクトルが直列接続され、前記第1アームに並列接続された第2アームと、
前記第1アームと前記第2アームとの間を同一相内で循環する並列アーム間循環電流を制御する制御部と、
前記第1リアクトルまたは前記第2リアクトルに直列接続された第1電流検出器と、
前記第1アームと前記第2アームの並列回路に直列接続された第2電流検出器と、を備え、
前記第1電流検出器の検出精度は前記第2電流検出器の検出精度よりも低い電力変換装置。
【請求項2】
エネルギーバッファを含む単位変換器がN(Nは正の整数)段接続されるとともに、前記N段接続された単位変換器に第1リアクトルが直列接続され、交流の各相に設けられた第1アームと、
エネルギーバッファを含む単位変換器がM(Mは正の整数)段接続されるとともに、前記M段接続された単位変換器に第2リアクトルが直列接続され、前記第1アームに並列接続された第2アームと、
前記第1アームと前記第2アームとの間を同一相内で循環する並列アーム間循環電流を制御する制御部と、
前記第1リアクトルまたは前記第2リアクトルに直列接続された第1電流検出器と、
前記第1アームと前記第2アームの並列回路に直列接続された第2電流検出器と、備え、
前記第1電流検出器は、前記第1アームに流れる第1アーム電流と前記第2アームに流れる第2アーム電流の差電流を検出する電力変換装置。
【請求項3】
エネルギーバッファを含む単位変換器がN(Nは正の整数)段接続されるとともに、前記N段接続された単位変換器に第1リアクトルが直列接続され、交流の各相に設けられた第1アームと、
エネルギーバッファを含む単位変換器がM(Mは正の整数)段接続されるとともに、前記M段接続された単位変換器に第2リアクトルが直列接続され、前記第1アームに並列接続された第2アームと、
前記第1アームと前記第2アームとの間を同一相内で循環する並列アーム間循環電流を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1アームと前記第2アームのそれぞれについての循環電流指令値と前記並列アーム間循環電流との偏差が減少する方向に前記並列アーム間循環電流を制御する電力変換装置。
【請求項4】
前記単位変換器は、前記エネルギーバッファとして直流コンデンサを備え、
前記制御部は、前記第1アームと前記第2アームのそれぞれについての直流コンデンサの平均値であるアーム平均電圧値を演算し、前記第1アームのアーム平均電圧値と前記第2アームのアーム平均電圧値の偏差が減少する方向に前記並列アーム間循環電流を制御する請求項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記アーム平均電圧値の移動平均値を演算し、前記アーム平均電圧値が含有する交流電圧変動分を減少させる請求項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1アームのアーム平均電圧値と前記第2アームのアーム平均電圧値の偏差に基づいて算出した循環電流補正値を加算することで前記第1アームの循環電流指令値を算出する場合、前記循環電流補正値を減算することで前記第2アームの循環電流指令値を算出し、
前記循環電流補正値を減算することで前記第1アームの循環電流指令値を算出する場合、前記循環電流補正値を加算することで前記第2アームの循環電流指令値を算出する請求項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1アームおよび前記第2アームに流れるアーム電流が含有する交流電流と直流電流と前記並列アーム間循環電流を分離するアーム電流成分分離部と、
各相の単位変換器ごとの直流コンデンサ電圧の相平均電圧値を全ての単位変換器の直流コンデンサ電圧平均値に追従させる各相間バランス制御部と、
前記第1アームと前記第2アームのそれぞれについての直流コンデンサの平均値であるアーム平均電圧値を演算し、前記第1アームのアーム平均電圧値と前記第2アームのアーム平均電圧値の偏差が減少する方向に前記並列アーム間循環電流を制御する並列アーム間バランス制御部と、
前記第1アームと前記第2アームのそれぞれについての循環電流指令値と前記並列アーム間循環電流との偏差が減少する方向に前記並列アーム間循環電流を制御する循環電流制御部と、
前記交流電流を交流電流指令値に追従させる交流電流制御部と、
前記直流電流を直流電流指令値に追従させる直流電流制御部と、
前記循環電流制御部から出力される循環電圧指令値、前記交流電流制御部から出力される交流電圧指令値および前記直流電流制御部から出力される直流電圧指令値に基づいて、前記単位変換器に入力するゲートパルスを生成するゲートパルス生成部とを備える請求項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
エネルギーバッファを含む単位変換器がN(Nは正の整数)段接続されるとともに、前記N段接続された単位変換器に第1リアクトルが直列接続され、交流の各相に設けられた第1アームと、
エネルギーバッファを含む単位変換器がM(Mは正の整数)段接続されるとともに、前記M段接続された単位変換器に第2リアクトルが直列接続され、前記第1アームに並列接続された第2アームと、
前記第1アームと前記第2アームとの間を同一相内で循環する並列アーム間循環電流を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記並列アーム間循環電流に任意の周波数を有する交流循環電流を含有させる電力変換装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記電力変換装置に流れる直流電流の電流振幅値に基づいて前記交流循環電流の電流振幅値を決定する請求項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1アームおよび前記第2アームの直流コンデンサの最大電圧と最小電圧の電圧偏差が一定値以下の場合、前記交流循環電流を出力しないよう制御する請求項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
エネルギーバッファを含む単位変換器がN(Nは正の整数)段接続されるとともに、前記N段接続された単位変換器に第1リアクトルが直列接続され、交流の各相に設けられた第1アームと、
エネルギーバッファを含む単位変換器がM(Mは正の整数)段接続されるとともに、前記M段接続された単位変換器に第2リアクトルが直列接続され、前記第1アームに並列接続された第2アームとを備える電力変換装置の制御方法であって、
前記第1アームと前記第2アームとの間を同一相内で循環する並列アーム間循環電流を制御し、前記第1アームと前記第2アームのそれぞれについての循環電流指令値と前記並列アーム間循環電流との偏差が減少する方向に前記並列アーム間循環電流を制御する電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュラーマルチレベル変換器(MMC:Modular Multilevel Converter)が適用された電力変換装置および電力変換装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モジュラーマルチレベル変換器は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのオン・オフ制御可能な自己消弧形半導体スイッチング素子を用いて、当該スイッチング素子の耐圧以上の電圧を出力する電力変換装置である。
【0003】
特許文献1によれば、三相交流電力と直流電力間の電力変換を実現するモジュラーマルチレベル変換器において、複数直列接続されたサブモジュール(単位変換器)とリアクトルで構成するアームを直流回路P側および直流回路N側の各相それぞれ配置した構成が開示されている。特許文献1に開示された技術では、交流回路が三相であるため、合計6つのアームでモジュラーマルチレベル変換器を構成している。モジュラーマルチレベル変換器の単位変換器には、双方向チョッパ回路や単相ブリッジ回路などの単相回路が用いられる。
【0004】
特許文献1に開示されているモジュラーマルチレベル変換器が適用された電力変換装置を大容量化する方法として、例えば、特許文献2に開示されているように、電力変換装置を多重化する方法がある。また、特許文献3に開示されているように、電力変換装置内のスイッチング素子を並列構成して、電力変換装置を大容量化する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2010-512136号公報
【文献】特開2003-189629号公報
【文献】特開2014-230307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示されている大容量化手法では、電力変換装置を制御するための制御部、連系変圧器および開閉装置などの装置が多重数だけ必要になるため、電力変換装置の大型化および制御の複雑化を招いていた。
【0007】
特許文献3に開示されている大容量化手法では、スイッチング素子のゲート駆動電圧のばらつきおよびスイッチング素子の特性ばらつきによる電流集中が1つの素子に発生するのを防止するため、例えば、同じ特性を有するスイッチング素子を選別したり、ゲート駆動電圧の電圧制御などを実施したりする必要があると考えられる。
【0008】
一方、電力変換装置にモジュラーマルチレベル変換器を適用する場合、各相のアームを並列接続することで、電力変換装置の多重化や素子の並列構成を回避して電力変換装置の大容量化を実現できる。
【0009】
しかし、各相のアームを並列接続する大容量化手法では、並列アームに流れるアーム電流のアンバランスに起因して、単位変換器内の直流コンデンサ電圧がアンバランスとなる。直流コンデンサ電圧のアンバランスが拡大すると、スイッチング素子の耐電圧以上の高電圧が発生し、スイッチング素子が破壊する恐れがある。スイッチング素子を破壊から保護するためには、電力変換装置を停止させなければならず、電力変換装置の運用効率の低下を招いていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その目的は、並列接続された各相のアームの単位変換器内の直流コンデンサ電圧のアンバランスを低減することが可能な電力変換装置および電力変換装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、第1の観点に係る電力変換装置は、エネルギーバッファを含む単位変換器がN(Nは正の整数)段接続されるとともに、前記N段接続された単位変換器に第1リアクトルが直列接続され、交流の各相に設けられた第1アームと、エネルギーバッファを含む単位変換器がM(Mは正の整数)段接続されるとともに、前記M段接続された単位変換器に第2リアクトルが直列接続され、前記第1アームに並列接続された第2アームと、前記第1アームと前記第2アームとの間を同一相内で循環する並列アーム間循環電流を制御する制御部を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、並列接続された各相のアームの単位変換器内の直流コンデンサ電圧のアンバランスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1の単位変換器の回路構成の一例を示す図である。
図3図3は、図1の電力変換制御部の構成を示すブロック図である。
図4図4は、図1の電力変換装置の交流電流の電流経路を示す図である。
図5図5は、図1の電力変換装置の直流電流の電流経路を示す図である。
図6図6は、図1の電力変換装置の並列アーム間循環電流の電流経路を示す図である。
図7図7は、図1の並列アーム間バランス制御部の構成を示すブロック図である。
図8図8は、図1の循環電流制御部の構成を示すブロック図である。
図9図9は、図1の並列アーム間循環電流と、並列アーム間の電圧バランスとの関係を示す図である。
図10図10は、図1の並列アーム間の電圧アンバランスの解消時の各部の動作波形を示すタイミングチャートである。
図11図11は、第2実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図12図12は、図11のメインアームに設けられた電流検出器のその他の構成を示すブロック図である。
図13図13は、第3実施形態に係る電力変換装置に適用される電力変換制御部の構成を示すブロック図である。
図14図14は、図13の並列アーム間バランス制御部の構成を示すブロック図である。
図15図15は、図14の交流循環電流振幅決定部で決定される交流循環電流の振幅の一例を示す図である。
図16図16は、図14の交流循環電流振幅決定部で決定される交流循環電流の振幅のその他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、以下の説明では、モジュラーマルチレベル変換器(MMC:Modular Multilevel Converter)が適用された電力変換装置として、U相、V相およびW相の三相交流と直流との間の電力変換を実現する交直変換器を例にとる。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図1において、電力変換装置1は、U相、V相およびW相の各相のP側(上側とも言う)およびN側(下側とも言う)ごとに、第1アームとしてメインアーム10UP、10VP、10WP、10UN、10VN、10WNと、第2アームとしてサブアーム11UP、11VP、11WP、11UN、11VN、11WNとを備える。また、電力変換装置1は、交流電圧検出器12と、電力変換制御部13とを備える。
【0016】
U相、V相およびW相の各相のP側およびN側ごとに、メインアーム10UP、10VP、10WP、10UN、10VN、10WNとサブアーム11UP、11VP、11WP、11UN、11VN、11WNは並列接続されている。
【0017】
なお、図1では、各相のP側およびN側ごとに、1つのサブアーム11UP、11VP、11WP、11UN、11VN、11WNを設けた例を示したが、各相のP側およびN側ごとに、複数のサブアームを設けるようにしてもよい。ここで、各メインアームに並列接続されるサブアームの個数を増大させることにより、電力変換装置を大容量化することができる。
【0018】
各メインアーム10UP、10VP、10WPと、各サブアーム11UP、11VP、11WPは、各相のP側に配置されている。各メインアーム10UN、10VN、10WNと、各サブアーム11UN、11VN、11WNは、各相のN側に配置されている。
【0019】
各メインアーム10UP、10VP、10WPと、各サブアーム11UP、11VP、11WPの一端は、直流端子Pに接続されている。メインアーム10UPと、サブアーム11UPの他端は、交流端子Uに接続され、メインアーム10VPと、サブアーム11VPの他端は、交流端子Vに接続され、メインアーム10WPと、サブアーム11WPの他端は、交流端子Wに接続されている。
【0020】
各メインアーム10UN、10VN、10WNと、各サブアーム11UN、11VN、11WNの一端は、直流端子Nに接続されている。メインアーム10UNと、サブアーム11UNの他端は、交流端子Uに接続され、メインアーム10VNと、サブアーム11VNの他端は、交流端子Vに接続され、メインアーム10WNと、サブアーム11WNの他端は、交流端子Wに接続されている。直流端子P、Nは直流回路に連系し、交流端子U、V、Wは三相交流回路に連系する。
【0021】
メインアーム10UPは、N(Nは正の整数)個の単位変換器100UPm_j(j=1~N)、リアクトル101および電流検出器102を備える。単位変換器100UPm_j(j=1~N)、リアクトル101および電流検出器102は直列接続されている。各単位変換器100UPm_jは、エネルギーバッファである直流コンデンサを含む。各単位変換器100UPm_jは、双方向チョッパセルを用いるようにしてもよいし、フルブリッジセルを用いるようにしてもよい。リアクトル101は、メインアーム10UPを介して循環するスイッチングリプル電流を抑制する。電流検出器102は、メインアーム10UPに流れるアーム電流iUPmを検出する。
【0022】
サブアーム11UPは、M(Mは正の整数)個の単位変換器100UPs_j(j=1~M)、リアクトル111および電流検出器112を備える。単位変換器100UPs_j(j=1~N)、リアクトル111および電流検出器112は直列接続されている。各単位変換器100UPs_jは、エネルギーバッファである直流コンデンサを含む。各単位変換器100UPs_jは、双方向チョッパセルを用いるようにしてもよいし、フルブリッジセルを用いるようにしてもよい。リアクトル111は、サブアーム11UPを介して循環するスイッチングリプル電流を抑制する。電流検出器112は、サブアーム11UPに流れるアーム電流iUPsを検出する。
【0023】
なお、メインアーム10UPの単位変換器100UPm_jの個数と、サブアーム11UPの単位変換器100UPs_jの個数は、必ずしも同数(つまり、N=M)である必要はなく、異なっていてもよい。
【0024】
各メインアーム10VP、10WP、10UN、10VN、10WNは、メインアーム10UPと同等の構成であるため説明を省略する。また、各サブアーム11VP、11WP、11UN、11VN、11WNは、サブアーム11UPと同等の構成であるため説明を省略する。
【0025】
交流電圧検出器12は、交流ACの交流電圧vSxを検出する。交流電圧vSxの“x”は、U、V、W相の三相のうちのいずれかを表す。
【0026】
電力変換制御部13は、第1アームと第2アームとの間を同一相内で循環する並列アーム間循環電流を制御する。例えば、電力変換制御部13は、メインアーム10UPとサブアーム11UPとが並列接続された並列アーム内で循環する並列アーム間循環電流を制御する。同様に、電力変換制御部13は、メインアーム10VPとサブアーム11VPとが並列接続された並列アーム内で循環する並列アーム間循環電流を制御し、メインアーム10UPとサブアーム11UPとが並列接続された並列アーム内で循環する並列アーム間循環電流を制御する。P側についても同様に、電力変換制御部13は、メインアーム10UNとサブアーム11UNとが並列接続された並列アーム内で循環する並列アーム間循環電流を制御し、メインアーム10VNとサブアーム11VNとが並列接続された並列アーム内で循環する並列アーム間循環電流を制御し、メインアーム10WPとサブアーム11WNとが並列接続された並列アーム内で循環する並列アーム間循環電流を制御する。
【0027】
なお、以下の説明では、並列アームは、互いに並列接続されたメインアームとサブアームのことを言う。また、単にアームと言うときは、U相、V相およびW相の各相のP側およびN側ごとのメインアームとサブアームのことを指す。
【0028】
このとき、電力変換制御部13は、交流電圧検出器12で検出した交流電圧vSx、各メインアーム10UP、10VP、10WP、10UN、10VN、10WNの電流検出器102で検出したアーム電流ixym、各サブアーム11UP、11VP、11WP、11UN、11VN、11WNの電流検出器112で検出したアーム電流ixys、各メインアーム10UP、10VP、10WP、10UN、10VN、10WNの単位変換器内の直流電圧検出器にて検出した直流コンデンサ電圧vCxym_j(j=1~N)、各サブアーム11UP、11VP、11WP、11UN、11VN、11WNの単位変換器内の直流電圧検出器にて検出した直流コンデンサ電圧vCxys_j(j=1~M)、有効電力指令Prefおよび無効電力指令Qrefを入力として、各メインアーム10UP、10VP、10WP、10UN、10VN、10WNの単位変換器に与えるゲートパルスgxym_j(j=1~N)と、各サブアーム11UP、11VP、11WP、11UN、11VN、11WNの単位変換器に与えるゲートパルスgxys_j(j=1~M)を出力する。このとき、電力変換制御部13は、電力変換装置1が融通する有効電力Pおよび無効電力Qを有効電力指令Prefおよび無効電力指令Qrefにそれぞれ追従させるようなゲートパルスgxym_j、gxys_jを生成する。
【0029】
なお、アーム電流ixym、ixys、直流コンデンサ電圧vCxym_j、vCxys_jおよびゲートパルスgxym_j、gxys_jのそれぞれの“x”は、U相、V相およびW相の三相のうちのいずれかを表す。また、アーム電流ixym、ixys、直流コンデンサ電圧vCxym_j、vCxys_jおよびゲートパルスgxym_j、gxys_jのそれぞれの“y”は、P側アームまたはN側アームのうちのいずれかを表す。また、アーム電流ixym、、直流コンデンサ電圧vCxym_jおよびゲートパルスgxym_jのそれぞれの“m”はメインアーム、アーム電流ixys、直流コンデンサ電圧vCxys_jおよびゲートパルスgxys_jのそれぞれの“s”はサブアームを表す。
【0030】
ここで、電力変換制御部13は、第1アームと第2アームとの間を同一相内で循環する並列アーム間循環電流を制御することにより、各相の並列アームの単位変換器内の直流コンデンサ電圧のアンバランスを低減することができ、電力変換装置1を安定して運用することを可能としつつ、電力変換装置1の大容量化を実現することができる。このため、図1のモジュラーマルチレベル変換器を系統連系用電力変換器に適用することにより、大容量で長距離の送電に適した高圧直流送電を用いて、風力発電、太陽光発電および太陽熱発電などの再生可能エネルギーを連系させることができる。
【0031】
また、第1アームに並列接続される第2アームの個数を増大させることで、系統周波数を維持するための揚水発電システムの大容量化に対応することができ、再生可能エネルギーの拡大に対応することができる。このとき、第1アームと第2アームとの間を同一相内で循環する並列アーム間循環電流を制御することにより、並列アームに分流する電流ばらつきに起因する各相の並列アームの単位変換器内の直流コンデンサ電圧のアンバランスの拡大を防止することができ、揚水発電システムの運転継続に支障をきたすのを防止することができる。
【0032】
電力変換装置1は、第1アームに並列接続される第2アームの個数を増大させることで大容量化を実現でき、大容量化に伴って遮断器および変圧器を増加させる必要がない。このため、電力変換装置1は、地下に電気品を設置するために設置場所が限られる揚水発電システムに有用である。
【0033】
なお、図1のモジュラーマルチレベル変換器は、系統連系用電力変換器以外にも、誘導電動機のためのモータドライブ装置などに適用してもよい。
【0034】
図2は、図1の単位変換器の回路構成の一例を示す図である。なお、図2では、図1のメインアーム10UPの単位変換器100UPm_1の回路構成の一例を示すが、他の単位変換器についても同様に構成することができる。
図2において、単位変換器100UPm_1は、スイッチング回路201と、エネルギーバッファである直流コンデンサ202と、直流電圧検出器203と、ゲート駆動回路204を備える。直流コンデンサ202は、スイッチング回路201に並列接続されている。
【0035】
スイッチング回路201は、スイッチング素子205、206と、環流ダイオード207、208を備える。スイッチング素子205には環流ダイオード207が並列接続され、スイッチング素子206には環流ダイオード208が並列接続されている。スイッチング素子205、206は直列接続されている。スイッチング素子206の両端には、単位変換器100UPm_1の出力端子a、bが設けられている。出力端子a、b間には、単位変換器100UPm_1の出力電圧voUPm_1が出力される。各スイッチング素子205、206は、IGBTであってもよいし、IGBT以外の自己消弧形半導体スイッチング素子であってもよい。
【0036】
直流電圧検出器203は、直流コンデンサ202の直流コンデンサ電圧vCUPm_1を検出し、その検出値を図1の電力変換制御部13へ伝送する。
【0037】
ゲート駆動回路204は、電力変換制御部13から単位変換器100UPm_1へ伝送されるゲートパルスgUPm_1が入力される。ゲート駆動回路204は、ゲートパルスgUPm_1に応じて、各スイッチング素子205、206のオンとオフを切り替えるゲート駆動電圧を生成し、各スイッチング素子205、206に印加する。このとき、単位変換器100UPm_1の出力電圧voUPm_1として、直流コンデンサ電圧vCUPm_1または零のどちらか一方が出力される。すなわち、スイッチング素子205がオン、スイッチング素子206がオフされると、出力電圧voUPm_1として直流コンデンサ電圧vCUPm_1が出力され、スイッチング素子205がオフ、スイッチング素子206がオンされると、出力電圧voUPm_1として零が出力される。
【0038】
なお、図2の例では、単位変換器100UPm_1として双方向チョッパ回路を用いた場合を示したが、単位変換器100UPm_1は、双方向チョッパ回路に限定されるものではなく、単相ブリッジ回路などの他の単相回路を用いるようにしてもよい。
【0039】
図3は、図1の電力変換制御部の構成を示すブロック図である。
図3において、電力変換制御部13は、アーム電流分離部301、電力制御部302、交流電流制御部303、直流電流制御部304、各相間バランス制御部305、並列アーム間バランス制御部306、循環電流制御部307、加算器308m、308p、ゲートパルス生成部309m、309sおよび平均値演算部310、311を備える。
【0040】
アーム電流分離部301は、アーム電流ixym、ixysが含有する交流電流iSx、直流電流iDCおよび並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを分離する。アーム電流ixym、ixysを分離することにより、アーム電流ixym、ixysが含有する各電流成分を制御することができる。
【0041】
交流電流iSxは、U相、V相およびW相の各相ごとに分離される。並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysは、U相、V相およびW相の各相のP側およびN側ごとかつメインアームおよびサブアームごとに分離される。
【0042】
図4は、図1の電力変換装置の交流電流の電流経路を示す図である。
図4において、交流電流iSxは、電力変換装置1の交流回路を介して流れる電流成分である。U相、V相およびW相の各相の交流電流iSxは、P側メインアーム、P側サブアーム、N側メインアームおよびN側サブアームに1/4ずつ分流する。三相3線交流回路において、U相、V相およびW相の各相の交流電流の和は零であるため、直流回路に交流電流iSxが流れることはない。この交流電流iSxを制御することで、三相交流回路と電力変換装置1の間の有効電力Pと無効電力Qを制御することができる。交流電流iSxの“x”は、U、V、W相の三相のうちのいずれかを表す。
【0043】
図3のアーム電流分離部301は、図1の各メインアーム10UP、10VP、10WP、10UN、10VN、10WNの電流検出器102で検出されたアーム電流ixymと、各サブアーム11UP、11VP、11WP、11UN、11VN、11WNの電流検出器112で検出されたアーム電流ixysに基づいて、以下の(1)式から(3)式を用いることにより、交流電流iSxを演算可能である。アーム電流分離部301は、交流電流iSxを電力制御部302および交流電流制御部303に入力する。
【0044】
iSU=(iUPm+iUPs)-(iUNm+iUNs) ・・・(1)
iSV=(iVPm+iVPs)-(iVNm+iVNs) ・・・(2)
iSW=(iWPm+iWPs)-(iWNm+iWNs) ・・・(3)
【0045】
図5は、図1の電力変換装置の直流電流の電流経路を示す図である。
図5において、直流電流iDCは、電力変換装置1の直流回路を介して流れる電流成分である。直流電流iDCは、U相、V相およびW相の各相のメインアームおよびサブアームに1/6ずつ分流する。このとき、直流電流iDCの向きと大きさを制御することで、直流電力PDCを制御できる。
【0046】
図3のアーム電流分離部301は、図1の各メインアーム10UP、10VP、10WP、10UN、10VN、10WNの電流検出器102で検出されたアーム電流ixymと、各サブアーム11UP、11VP、11WP、11UN、11VN、11WNの電流検出器112で検出されたアーム電流ixysに基づいて、以下の(4)式を用いることにより、直流電流iDCを演算可能である。アーム電流分離部301は、直流電流iDCを直流電流制御部304に入力する。
【0047】
iDC=1/2×{(iUPm+iUPs)+(iUNm+iUNs)+(iVPm+iVPs)+(iVNm+iVNs)+(iWPm+iWPs)+(iWNm+iWNs)}
・・・(4)
【0048】
図6は、図1の電力変換装置の並列アーム間循環電流の電流経路を示す図である。
図6において、並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysは、各アームを流れる電流成分であるが、三相交流回路にも直流回路にも流出しない電流である。このため、各相の並列アームにおいて、メインアームに流れる並列アーム間循環電流iCCxymと、サブアームに流れる並列アーム間循環電流iCCxysは、大きさが等しく向きが逆である。各並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysは、各相の並列アームにおけるアーム電流ixym、ixys間の差電流に等しい。
【0049】
アーム電流ixym、ixysが含有する並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを分離し、並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを制御して、各アームの直流コンデンサの充電期間および放電期間を制御することで、各相の並列アームの単位変換器内の直流コンデンサ電圧のアンバランスを低減することができる。
【0050】
図3のアーム電流分離部301は、図1の各メインアーム10UP、10VP、10WP、10UN、10VN、10WNの電流検出器102で検出されたアーム電流ixymと、各サブアーム11UP、11VP、11WP、11UN、11VN、11WNの電流検出器112で検出されたアーム電流ixysに基づいて、以下の(5)式から(10)式を用いることにより、並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを演算可能である。アーム電流分離部301は、並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを循環電流制御部307に入力する。
【0051】
iCCUPm=-iCCUPs=1/2×(iUPm-iUPs) ・・・(5)
iCCUNm=-iCCUNs=1/2×(iUNm-iUNs) ・・・(6)
iCCVPm=-iCCVPs=1/2×(iVPm-iVPs) ・・・(7)
iCCVNm=-iCCVNs=1/2×(iVNm-iVNs) ・・・(8)
iCCWPm=-iCCWPs=1/2×(iWPm-iWPs) ・・・(9)
iCCWNm=-iCCWNs=1/2×(iWNm-iWNs) ・・・(10)
【0052】
図3に戻り、電力制御部302は、電力変換装置1が三相交流回路と授受する有効電力Pおよび無効電力Qを有効電力指令値Prefおよび無効電力指令値Qrefにそれぞれ追従させる。電力制御部302は、交流電流指令値iSxrefを演算し、交流電流制御部303の指令値として入力する。電力制御部302は、交流電圧vSxおよび交流電流iSxに基づいて、有効電力Pおよび無効電力Qを演算する。
【0053】
三相交流回路と授受する有効電力Pが発生した場合、各単位変換器内の直流コンデンサは、有効電力Pに応じた充放電エネルギー変動(電圧変動)が発生する。そのため、電力制御部302は、全ての単位変換器の直流コンデンサ電圧の平均電圧値vCを直流コンデンサ電圧指令値vCrefに追従させるための直流電流iDCを流すことで、直流コンデンサ電圧を一定に保つよう制御する。つまり、三相交流回路と有効電力Pを授受する場合は、直流回路とも直流電力PDCを授受し、有効電力P=直流電力PDCの関係が成り立つように電力変換制御部13を構築することで、直流コンデンサ電圧を一定に保つことができる。
【0054】
交流電流制御部303は、電力制御部302から得られる交流電流指令値iSxrefを入力として、交流電流iSxを交流電流指令値iSxrefに追従させるように単位変換器の出力電圧の合計値を補正する。このとき、交流電流制御部303は、単位変換器の出力電圧の合計値を補正するための交流電圧指令値vSxrefを生成し、加算器308m、308pに入力する。
【0055】
直流電流制御部304は、直流電流iDCを直流電流指令値iDCrefに追従させる。直流電流指令値iDCrefは、直流電力PDCが出力されるように決定される。直流電流制御部304は、直流電圧指令値vDCref/2を生成し、加算器308m、308pに入力する。P側アームとN側アームに直流電圧指令値vDCrefを半分ずつ出力することで、直流端子Pと直流端子Nとの間で直流電圧指令値vDCrefが出力される。
【0056】
各相間バランス制御部305は、各相上下アームの単位変換器ごとの直流コンデンサ電圧の相平均電圧値vCxを全ての単位変換器の直流コンデンサ電圧平均値vCに追従させる。各相上下アームの単位変換器ごとの直流コンデンサ電圧の相平均電圧値vCxは、単位変換器の直流コンデンサ電圧の平均値を各相ごとに演算することで得られる。全ての単位変換器の直流コンデンサ電圧平均値vCは、全ての単位変換器の直流コンデンサ電圧の平均値を演算することで得られる。
【0057】
このとき、平均値演算部310は、直流コンデンサ電圧vCxym_j、vCxys_jに基づいて相平均電圧値vCxを算出し、各相間バランス制御部305に入力する。また、平均値演算部311は、直流コンデンサ電圧vCxym_j、vCxys_jに基づいて直流コンデンサ電圧平均値vCを算出し、直流電流制御部304および各相間バランス制御部305に入力する。
【0058】
各相間バランス制御部305は、各相循環電流指令値iCCxrefを生成し、並列アーム間バランス制御部306に入力する。このとき、各相間バランス制御部305は、相平均電圧値vCxが低い相は直流コンデンサを充電する期間が長くなるようにゲートパルスgxym_j、gxys_jを制御し、相平均電圧値vCxが高い相は直流コンデンサを放電する期間が長くなるようにゲートパルスgxym_j、gxys_jを制御する。この制御により、各相間バランス制御部305は、各相間に発生する電圧アンバランスを解消することができる。
【0059】
並列アーム間バランス制御部306は、並列アームの直流コンデンサ電圧のアンバランスが解消するように並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを制御するための循環電流指令値iCCxymref、iCCxysrefを生成し、循環電流制御部307に入力する。並列アーム間バランス制御部306は、メインアームおよびサブアームのそれぞれについて、U相、V相およびW相の各相のP側およびN側ごとに循環電流指令値iCCxymref、iCCxysrefを生成し、並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysをアームごとに制御する。
【0060】
循環電流制御部307は、並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを循環電流指令値iCCxymref、iCCxysrefに追従させる。このとき、循環電流制御部307は、循環電圧指令値vCCxymref、vCCxysrefを生成する。そして、循環電流制御部307は、循環電圧指令値vCCxymrefを加算器308mに入力し、循環電圧指令値vCCxysrefを加算器308pに入力する。
【0061】
循環電流制御部307は、アームごとに独立した循環電流制御系を備え、各アームの循環電流指令値iCCxymref、iCCxysrefと、各アームに流れる並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysの偏差が解消される方向に制御する。各アームに流れる並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを制御することで、並列接続されたメインアームとサブアームについて、そのメインアームの直流コンデンサ電圧の平均値と、そのサブアームの直流コンデンサ電圧の平均値の電圧アンバランスを解消することができる。
【0062】
ここで、各相循環電流iCCxと並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysとの関係は、以下の(11)式から(13)式で与えられる。
【0063】
iCCU=iCCUPm+iCCUPs=iCCUNm+iCCUNs ・・・(11)
iCCV=iCCVPm+iCCVPs=iCCVNm+iCCVNs ・・・(12)
iCCW=iCCWPm+iCCWPs=iCCWNm+iCCWNs ・・・(13)
【0064】
加算器308mは、交流電圧指令値vSxref、循環電圧指令値vCCxymrefおよび直流電圧指令値vDCrefの1/2をメインアームごとにそれぞれ加算することで、アーム電圧指令値Vxymrefを生成し、ゲートパルス生成部309mに入力する。加算器308sは、交流電圧指令値vSxref、循環電圧指令値vCCxysrefおよび直流電圧指令値vDCrefの1/2をサブアームごとにそれぞれ加算することで、アーム電圧指令値Vxysrefを生成し、ゲートパルス生成部309sに入力する。
【0065】
ゲートパルス生成部309mは、アーム電圧指令値Vxymrefと、搬送波Carrierを比較することで、各メインアームのN個の単位変換器ごとにゲートパルスgxym_jを生成し、各メインアームのN個の単位変換器ごとに設けられた図2のゲート駆動回路204へ入力する。ゲートパルス生成部309sは、アーム電圧指令値Vxysrefと、搬送波Carrierを比較することで、各サブアームのM個の単位変換器ごとにゲートパルスgxys_jを生成し、各サブアームのM個の単位変換器ごとに設けられたゲート駆動回路204へ入力する。
【0066】
図7は、図1の並列アーム間バランス制御部の構成を示すブロック図である。
図7において、並列アーム間バランス制御部306は、U相、V相およびW相の各相ごとに各相並列アーム間バランス制御部306U、306V、306Wを備える。各相並列アーム間バランス制御部306U、306V、306Wは、U相、V相およびW相のそれぞれについて、並列アームの直流コンデンサ電圧のアンバランスが解消するように並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを制御する。相並列アーム間バランス制御部306Uは、ゲイン乗算部400、403P、403N、平均値演算部401、減算器402P、402N、404P、404Nおよび加算器405P、405Nを備える。
【0067】
ゲイン乗算部400は、各相間バランス制御部305から得られるU相循環電流指令値iCCUrefに対し、メインアームとサブアームにそれぞれ1/2ずつ分流させるようゲイン1/2を乗算し、減算器404P、404Nおよび加算器405P、405Nに入力する。
【0068】
平均値演算部401は、メインアーム10UPの直流コンデンサ電圧vCUPm_jのアーム平均電圧値vCUPmを演算し、減算器402Pに入力する。平均値演算部401は、サブアーム11UPの直流コンデンサ電圧vCUPs_jのアーム平均電圧値vCUPsを演算し、減算器402Pに入力する。平均値演算部401は、メインアーム10UNの直流コンデンサ電圧vCUNm_jのアーム平均電圧値vCUNmを演算し、減算器402Nに入力する。平均値演算部401は、サブアーム11UNの直流コンデンサ電圧vCUNs_jのアーム平均電圧値vCUNsを演算し、減算器402Nに入力する。
【0069】
このとき、制御性能を向上させるために、三相交流回路の一周期または半周期などの移動平均値演算により直流コンデンサの交流変動分を除去してもよい。
【0070】
減算器402Pは、アーム平均電圧値vCUPmからアーム平均電圧値vCUPsを減算することで、電圧偏差DvCUPを生成し、ゲイン乗算部403Pに入力する。減算器402Nは、アーム平均電圧値vCUNmからアーム平均電圧値vCUNsを減算することで、電圧偏差DvCUNを生成し、ゲイン乗算部403Nに入力する。
【0071】
ゲイン乗算部403Pは、電圧偏差DvCUPに制御ゲインを乗算することで、循環電流補正値DiCCUPを生成し、減算器404Pおよび加算器405Pに入力する。ゲイン乗算部403Nは、電圧偏差DvCUNに制御ゲインを乗算することで、循環電流補正値DiCCUNを生成し、減算器404Nおよび加算器405Nに入力する。
【0072】
減算器404Pは、U相循環電流指令値iCCUrefの1/2から循環電流補正値DiCCUPを減算することで、循環電流指令値iCCUPmrefを生成し、循環電流制御部307に入力する。加算器405Pは、U相循環電流指令値iCCUrefの1/2に循環電流補正値DiCCUPを加算することで、循環電流指令値iCCUPsrefを生成し、循環電流制御部307に入力する。
【0073】
減算器404Nは、U相循環電流指令値iCCUrefの1/2から循環電流補正値DiCCUNを減算することで、循環電流指令値iCCUNmrefを生成し、循環電流制御部307に入力する。加算器405Nは、U相循環電流指令値iCCUrefの1/2に循環電流補正値DiCCUNを加算することで、循環電流指令値iCCUNsrefを生成し、循環電流制御部307に入力する。
【0074】
なお、各相並列アーム間バランス制御部306V、306Wは、各相並列アーム間バランス制御部306Uと同等の構成であるため説明を省略する。
【0075】
これにより、各アームの直流コンデンサ電圧の平均値が低いアームは直流コンデンサの充電期間が長くなるようにゲートパルスを制御し、各アームの直流コンデンサ電圧の平均値が高いアームは直流コンデンサの放電期間が長くなるようにゲートパルスを制御することができる。このため、並列アーム間バランス制御部306は、並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysに基づいて、並列アーム間の電圧アンバランスを解消することができる。
【0076】
図8は、図1の循環電流制御部の構成を示すブロック図である。
図8において、循環電流制御部307は、並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを循環電流指令値iCCxymref、iCCxysrefに追従させる。循環電流制御部307は、U相、V相およびW相の各相ごとに各相循環電流制御部307U、307V、307Wを備える。各相循環電流制御部307Uは、減算器1011~1014およびゲイン乗算部1021~1024を備える。
【0077】
減算器1011は、循環電流指令値iCCUPmrefから並列アーム間循環電流iCCUPmを減算し、ゲイン乗算部1021に入力する。ゲイン乗算部1021は、循環電流指令値iCCUPmrefと並列アーム間循環電流iCCUPmとの偏差に制御ゲインを乗算することで、循環電圧指令値vCCUPmrefを生成し、図3の加算器308mに入力する。
【0078】
減算器1012は、循環電流指令値iCCUPsrefから並列アーム間循環電流iCCUPsを減算し、ゲイン乗算部1022に入力する。ゲイン乗算部1022は、循環電流指令値iCCUPsrefと並列アーム間循環電流iCCUPsとの偏差に制御ゲインを乗算することで、循環電圧指令値vCCUPsrefを生成し、図3の加算器308sに入力する。
【0079】
減算器1013は、循環電流指令値iCCUNmrefから並列アーム間循環電流iCCUNmを減算し、ゲイン乗算部1023に入力する。ゲイン乗算部1023は、循環電流指令値iCCUNmrefと並列アーム間循環電流iCCUNmとの偏差に制御ゲインを乗算することで、循環電圧指令値vCCUNmrefを生成し、加算器308mに入力する。
【0080】
減算器1014は、循環電流指令値iCCUNsrefから並列アーム間循環電流iCCUNsを減算し、ゲイン乗算部1024に入力する。ゲイン乗算部1024は、循環電流指令値iCCUNsrefと並列アーム間循環電流iCCUNsとの偏差に制御ゲインを乗算することで、循環電圧指令値vCCUNsrefを生成し、加算器308sに入力する。
【0081】
なお、各相循環電流制御部307V、307Wは、各相循環電流制御部307Uと同等の構成であるため説明を省略する。
【0082】
図9は、図1の並列アーム間循環電流と、並列アーム間の電圧バランスとの関係を示す図である。なお、以下の説明では、図9(b)のメインアーム10UPの並列アーム間循環電流iCCUPmおよびサブアーム11UPの並列アーム間循環電流iCCUPsの変化と、メインアーム10UPの直流コンデンサ電圧vCUPm_jのアーム平均電圧値vCUPmとサブアーム11UPの直流コンデンサ電圧vCUPs_jのアーム平均電圧値vCUPsとの偏差DvCUPとの関係を例にとる。
【0083】
図9(a)において、時刻t1では、図1の並列アーム間バランス制御部306が停止しており、時刻t2にて動作を開始したとする。ここで、メインアーム10UPに流れる並列アーム間循環電流iCCUPmと、サブアーム11UPに流れる並列アーム間循環電流iCCUPsが一致している場合、メインアーム10UPとサブアーム11UPのコンデンサ電圧バランスは保たれる。
【0084】
一方、図9(a)の時刻t1において、何らかの外乱により、並列アーム間循環電流iCCUPm、iCCUPsのアンバランスが拡大すると、サブアーム11UPの直流コンデンサ電圧vCUPs_jのアーム平均電圧値vCUPsがメインアーム10UPの直流コンデンサ電圧vCUPm_jのアーム平均電圧値vCUPmより高くなり、電圧アンバランスが発生する。この電圧アンバランスが発生すると、メインアーム10UPの直流コンデンサ電圧vCUPm_jのアーム平均電圧値vCUPmとサブアーム11UPの直流コンデンサ電圧vCUPs_jのアーム平均電圧値vCUPsとの偏差DvCUPが発生し、この偏差DvCUPが拡大すると、図2のスイッチング素子205、206の耐圧以上の高電圧が発生する恐れがある。この偏差DvCUPの拡大を放置した場合、スイッチング素子205、206が破壊される恐れがあるために、図1の電力変換装置1を停止させなければならない。
【0085】
次に、時刻t2において、並列アーム間バランス制御部306が動作を開始したものとする。このとき、並列アーム間バランス制御部306は、メインアーム10UPの直流コンデンサ電圧vCUPm_jのアーム平均電圧値vCUPmとサブアーム11UPの直流コンデンサ電圧vCUPs_jのアーム平均電圧値vCUPsとの偏差DvCUPを解消するために、循環電流補正値DiCCUPを生成する。そして、並列アーム間バランス制御部306は、メインアーム10UPに流れる循環電流iCCUPmを循環電流補正値DiCCUPだけ増やし、サブアーム11UPに流れる循環電流iCCUPsを循環電流補正値DiCCUPだけ減らすよう制御する。つまり、並列アーム間に流れる循環電流が循環電流補正値DiCCUP分だけ増加する。
【0086】
このとき、メインアーム10UPに流れる循環電流iCCUPmは循環電流補正値DiCCUPだけ増えるので、メインアーム10UPの直流コンデンサが充電され、メインアーム10UPの直流コンデンサ電圧vCUPm_jのアーム平均電圧値vCUPmは上昇する。一方、サブアーム11UPに流れる循環電流iCCUPsは循環電流補正値DiCCUPだけ減るので、サブアーム11UPの直流コンデンサが放電され、サブアーム11UPの直流コンデンサ電圧vCUPs_jのアーム平均電圧値vCUPsは下降する。このため、メインアーム10UPの直流コンデンサ電圧vCUPm_jのアーム平均電圧値vCUPmとサブアーム11UPの直流コンデンサ電圧vCUPs_jのアーム平均電圧値vCUPsとの偏差DvCUPが減少し、メインアーム10UPとサブアーム11UPのコンデンサ電圧のアンバランスを解消することができる。
【0087】
なお、図9の説明では、並列アーム間バランス制御部306によるアーム間の電圧アンバランスの解消作用を説明するために、時刻t2にて並列アーム間バランス制御部306が動作を開始したものとしたが、並列アーム間バランス制御部306は、常時動作させることができる。この場合、時刻t1において何らかの外乱が発生した場合においても、偏差DvCUPの発生を未然に防止することができ、スイッチング素子205、206を保護することができる。
【0088】
以下、図1の並列アーム間バランス制御部306を適用した場合の各部動作波形を説明する。
【0089】
図10は、図1の並列アーム間の電圧アンバランスの解消時の各部の動作波形を示すタイミングチャートである。なお、図10では、U相P側アームの直流コンデンサの電圧アンバランスが発生した場合を示した。図10の縦軸は、上から、交流電圧vSUと、交流電流iSUと、有効電力P、無効電力Qと、U相P側アームの並列アーム間循環電流iCCUPm、iCCUPsと、並列アーム間バランス制御部306の循環電流補正値DiCCUPと、U相P側アームの直流コンデンサ電圧のアーム平均電圧値VCUPm、VCUPsを示す。横軸は、時間tを示す。
【0090】
図10の時刻t1において、並列アーム間バランス制御部306は停止しており、時刻t2に動作を開始したものとする。時刻t1において、各アームに流れる並列アーム間循環電流iCCUPm、iCCUPsは概ね同値(iCCUPm+iCCUPs=0)である。この時、U相P側アームの直流コンデンサ電圧のアーム平均電圧値VCUPm、VCUPsは概ね一定に保たれている。
【0091】
その後、時刻t1からt2の区間において、U相P側アームに外乱を与えると、並列アーム間循環電流iCCUPm、iCCUPsの電流バランスが徐々に崩れ、それに応じて、アーム平均電圧値VCUPm、VCUPsの電圧アンバランスが拡大している。
【0092】
次に、時刻t2において、並列アーム間バランス制御部306の動作を開始したものとする。このとき、並列アーム間バランス制御部306は、U相P側アームの直流コンデンサ電圧の電圧アンバランスを解消する方向に循環電流補正値DiCCUPを生成する。この循環電流補正値DiCCUPの生成により、メインアーム10UPに流れる循環電流iCCUPmと、サブアーム11UPに流れる循環電流iCCUPsに差が発生する。つまり、並列アーム間バランス制御部306の動作にて、循環電流補正値DiCCUPに応じた循環電流が並列アーム間に流れる。
【0093】
次に、時刻t2以降では、並列アーム間バランス制御部306の動作により、アーム平均電圧値VCUPm、VCUPsの電圧バランスが概ね一定に保たれるよう制御され、並列アーム間の直流コンデンサの電圧アンバランスが並列アーム間循環電流によって解消される。
【0094】
上述した実施形態では、第1アーム(メインアーム)、第2アーム(サブアーム)の2つのアームの並列回路の動作を説明した。しかし、本発明は、2つのアームの並列回路に限定されることなく、並列アーム間に循環電流を流せる回路構成であれば、2つ以上のアームの並列回路に拡張することが可能である。
【0095】
以上説明したように、上述した実施形態によれば、電力変換装置1の大容量化が可能であり、並列アーム間の直流コンデンサ電圧の電圧アンバランスを並列アーム間循環電流にて解消できるので、電力変換装置1を安定に運転することが可能である。
【0096】
図11は、第2実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略し、同一の記号で示す。
図11において、電力変換装置2は、U相、V相およびW相の各相のP側およびN側ごとに、第1アームとしてメインアーム20UP、20VP、20WP、20UN、20VN、20WNと、第2アームとしてサブアーム21UP、21VP、21WP、21UN、21VN、21WNとを備える。また、電力変換装置2は、交流電圧検出器12と、電力変換制御部13と、電流検出器711~716を備える。
【0097】
U相、V相およびW相の各相のP側およびN側ごとに、メインアーム20UP、20VP、20WP、20UN、20VN、20WNとサブアーム21UP、21VP、21WP、21UN、21VN、21WNは並列接続されている。
【0098】
各メインアーム20UP、20VP、20WPと、各サブアーム21UP、21VP、21WPは、各相のP側に配置されている。各メインアーム20UN、20VN、20WNと、各サブアーム21UN、21VN、21WNは、各相のN側に配置されている。
【0099】
各メインアーム20UP、20VP、20WPと、各サブアーム21UP、21VP、21WPの一端は、直流端子Pに接続されている。メインアーム20UPと、サブアーム21UPの他端は、電流検出器711を介して交流端子Uに接続され、メインアーム20VPと、サブアーム21VPの他端は、電流検出器713を介して交流端子Vに接続され、メインアーム20WPと、サブアーム21WPの他端は、電流検出器715を介して交流端子Wに接続されている。
【0100】
各メインアーム20UN、20VN、20WNと、各サブアーム21UN、21VN、21WNの一端は、直流端子Nに接続されている。メインアーム20UNと、サブアーム21UNの他端は、電流検出器712を介して交流端子Uに接続され、メインアーム20VNと、サブアーム21VNの他端は、電流検出器714を介して交流端子Vに接続され、メインアーム20WNと、サブアーム21WNの他端は、電流検出器716を介して交流端子Wに接続されている。
【0101】
なお、図11では、電流検出器711~716を交流側に接続した例を示したが、電流検出器711~716を直流側に接続するようにしてもよい。
【0102】
メインアーム20UPは、N個の単位変換器100UPm_j、リアクトル101および電流検出器701を備える。単位変換器100UPm_j、リアクトル101および電流検出器701は直列接続されている。電流検出器701は、メインアーム20UPに流れるアーム電流iUPmを検出する。電流検出器701の検出精度は、電流検出器711の検出精度よりも低くすることができる。
【0103】
サブアーム21UPは、M個の単位変換器100UPs_jおよびリアクトル111を備える。単位変換器100UPs_jおよびリアクトル111は直列接続されている。
【0104】
メインアーム20UNは、N個の単位変換器100UNm_j、リアクトル121および電流検出器702を備える。単位変換器100UNm_j、リアクトル121および電流検出器702は直列接続されている。電流検出器702は、メインアーム20UNに流れるアーム電流iUNmを検出する。電流検出器702の検出精度は、電流検出器712の検出精度よりも低くすることができる。
【0105】
サブアーム21UNは、M個の単位変換器100UNs_jおよびリアクトル131を備える。単位変換器100UNs_jおよびリアクトル131は直列接続されている。
【0106】
各メインアーム20VP、20WPは、メインアーム20UPと同等の構成であるため説明を省略する。各サブアーム21VP、21WPは、サブアーム21UPと同等の構成であるため説明を省略する。各メインアーム20VN、20WNは、メインアーム20UNと同等の構成であるため説明を省略する。各サブアーム21VN、21WNは、サブアーム21UNと同等の構成であるため説明を省略する。
【0107】
電流検出器711は、アーム電流iUPm、iUPsの和を検出する。電流検出器712は、アーム電流iUNm、iUNsの和を検出する。電流検出器713は、アーム電流iVPm、iVPsの和を検出する。電流検出器714は、アーム電流iVNm、iVNsの和を検出する。電流検出器715は、アーム電流iWPm、iWPsの和を検出する。電流検出器716は、アーム電流iWNm、iWNsの和を検出する。
【0108】
電力変換制御部13は、アーム電流ixym、ixysが含有する交流電流iSx、直流電流iDCおよび並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを分離し、交流電圧指令値vSxref、直流電圧指令値vDCrefおよび循環電圧指令値vCCxymref、vCCxysrefに基づいて、交流電流iSx、直流電流iDCおよび並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxyの各電流成分を制御する。
【0109】
このとき、各電流検出器711~716の検出値から、各アーム電流ixymの検出値を減算することで、電力変換制御部13に入力されるアーム電流ixysの値を算出することができる。
【0110】
ここで、電力変換制御部13は、交流電流iSxに基づいて交流電流制御を実施する。交流電流iSxは、(1)式から(3)式に示すように、各相のP側およびN側ごとのアーム電流iWNm、iWNsの和で与えられる。各相のP側およびN側ごとのアーム電流iWNm、iWNsの和は、各電流検出器711~716の検出値に等しい。
【0111】
ここで、各電流検出器711~716のオフセットおよび温度ドリフトなどにより、交流電圧指令値vSxrefに直流電圧成分が含まれると、三相交流回路に連系する連系変圧器の鉄心を直流偏磁させる可能性がある。この直流偏磁を抑制するため、各電流検出器711~716として高精度な電流検出器を使用し、各電流検出器711~716のオフセットおよび温度ドリフトを低減する。これにより、各電流検出器711~716の直流成分を最小化することができ、電力変換制御部13は、連系変圧器に流入する電流直流成分を抑制するよう交流電流制御を実施することができる。
【0112】
一方、電力変換制御部13は、直流電流iDCに基づいて直流電流制御を実施し、並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxyに基づいて循環電流制御を実施する。直流電流制御および循環電流制御では、連系変圧器の直流偏磁に寄与しない。このため、直流電流制御および循環電流制御を実施するために、電流検出器711~716よりも低精度の電流検出器を用いてもよく、電流検出器701、702の検出精度を電流検出器711~716の検出精度よりも低くすることができる。このため、図1の構成では、高精度な電流検出器を12個使用する必要があるのに対して、図11の構成では、高精度な電流検出器を6個使用し、低精度な電流検出器を6個使用すればよく、図1の構成に対してコストダウンを図ることができる。
【0113】
なお、図11では、メインアームとサブアームのうちのメインアーム側に電流検出器を設け、サブアーム側の電流検出器を省略した例を示したが、サブアーム側に電流検出器を設け、メインアーム側の電流検出器を省略するようにしてもよい。
【0114】
図12は、図11のメインアームに設けられた電流検出器のその他の構成を示すブロック図である。
図12において、U相P側アームとして、図11のメインアーム20UPとサブアームの21UPの代わりに、メインアーム30UPとサブアーム31UPを用いるようにしてもよい。U相N側アーム、V相P側アーム、V相N側アーム、W相P側およびW相N側アームについても同様である。
【0115】
メインアーム30UPは、図11の電流検出器701の代わりに電流検出器721を備える。電流検出器721は、アーム電流iUPm、iUPsの差を検出する。メインアーム30UPの単位変換器100UPm_j、リアクトル101および電流検出器721は直列接続されている。サブアーム31UPの単位変換器100UPm_jとリアクトル101とメインアーム30UPの電流検出器721は直列接続されている。メインアーム30UPの一端は、直流端子Pに接続されている。メインアーム30UPの他端は、交流端子Uに接続されている。サブアーム31UPの一端は、直流端子Pに接続されている。サブアーム31UPの他端は、電流検出器721を介して交流端子Uに接続されている。ただし、電流検出器721に流れるアーム電流iUPm、iUPsが互いに逆になるようにメインアーム30UPとサブアーム31UPは交流端子Uに接続される。電流検出器721に流れるアーム電流iUPm、iUPsを逆にするために、サブアーム31UPと交流端子Uとの接続経路を、電流検出器721を通して周回させることができる。
【0116】
ここで、(5)式から(10)式に示したように、アーム電流iUPm、iUPsの差電流に係数1/2を乗算した値は、アーム間を循環する並列アーム間循環電流iCCUPm、または-iCCUPsである。この結果、電流検出器721の検出値に係数1/2を乗算することで、並列アーム間循環電流iCCUPm、または-iCCUPsを得ることができる。
【0117】
このため、図11の電流検出器701の代わりに電流検出器721を用いることにより、アーム電流iUPm、iUPsの差電流を求めるための減算器を不要とすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0118】
図13は、第3実施形態に係る電力変換装置に適用される電力変換制御部の構成を示すブロック図である。なお、第1実施形態および第2実施形態と同様の構成については、説明を省略し、同一の記号で示す。
図13において、この電力変換装置は、図3の電力変換制御部13の代わりに電力変換制御部23を備える。電力変換制御部23は、図3の並列アーム間バランス制御部306の代わりに並列アーム間バランス制御部801を備える。
【0119】
並列アーム間バランス制御部801は、並列アーム間循環電流に任意の周波数を有する交流循環電流を含有させる。このとき、並列アーム間バランス制御部801は、電力変換装置に流れる直流電流iDCの電流振幅値に基づいて、交流循環電流の交流循環電流振幅値を決定することができる。
【0120】
モジュラーマルチレベル変換器は、各アームに十分なアーム電流が流れる場合、単位変換器の直流コンデンサに充分な充放電電流が流れるので、バランス制御にて直流コンデンサの電圧バランスを保つことができる。一方、無負荷運転または軽負荷運転時のようなアーム電流が極めて小さい運転条件の場合、直流コンデンサの充放電電流が小さくなり、バランス制御による直流コンデンサの電圧バランスをとるのが難しくなる。
【0121】
このため、並列アーム間バランス制御部801は、無負荷運転または軽負荷運転時は並列アーム間循環電流を流すように制御する。これにより、無負荷運転または軽負荷運転時においても、並列アームに循環電流が流れ続け、直流コンデンサに充分な充放電電流が流れるので、バランス制御にて直流コンデンサの電圧バランスを保つことができる。
【0122】
ここで、無負荷運転または軽負荷運転時には、通常運転時に比べて直流電流iDCの電流振幅値が小さくなる。このため、直流電流iDCの電流振幅値に基づいて交流循環電流振幅値を決定することにより、無負荷運転または軽負荷運転時には、並列アーム間循環電流に交流循環電流を含有させ、通常運転時には、並列アーム間循環電流に交流循環電流を含有させないようにすることができる。この結果、無負荷運転または軽負荷運転時においても、直流コンデンサに充分な充放電電流を流すことができ、バランス制御にて直流コンデンサの電圧バランスを保つことができる。また、通常運転時には、バランス制御に充分な充放電電流を維持しつつ、電力変換に寄与しない循環電流が過度に流れるのを防止することができ、回路損失を低減できる。
【0123】
図14は、図13の並列アーム間バランス制御部の構成を示すブロック図、図15は、図14の交流循環電流振幅決定部で決定される交流循環電流の振幅の一例を示す図、図16は、図14の交流循環電流振幅決定部で決定される交流循環電流の振幅のその他の例を示す図である。
【0124】
図14において、並列アーム間バランス制御部801は、U相、V相およびW相の各相ごとに各相並列アーム間バランス制御部801U、801V、801Wを備える。各相並列アーム間バランス制御部801U、801V、801Wは、U相、V相およびW相のそれぞれについて、電力変換装置の運転時の負荷に基づいて、並列アームの直流コンデンサ電圧のアンバランスが解消するように並列アーム間循環電流iCCxym、iCCxysを制御する。各相並列アーム間バランス制御部801Uには、交流循環電流生成部901および電流出力判定部904P、904Nが、図7の各相並列アーム間バランス制御部306Uに追加されている。交流循環電流生成部901は、交流循環電流振幅決定部902および交流電流生成部903を備える。
【0125】
交流循環電流振幅決定部902は、直流電流iDCに応じて交流循環電流振幅値iCCampを決定し、交流電流生成部903に出力する。交流循環電流振幅決定部902は、図15に示すように、直流電流iDCが最大値iDCmaxになるまで、一定の最大振幅値iCCampmaxを交流循環電流振幅値iCCampとして出力するようにしてもよい。または、交流循環電流振幅決定部902は、図16に示すように、直流電流iDCの増大に応じて交流循環電流振幅値iCCampを減少させるようにしてもよい。
【0126】
交流電流生成部903は、交流循環電流振幅値iCCampおよび周波数fを持つ交流循環電流iCCsinを生成し、電流出力判定部904P、904Nに出力する。周波数fは、零以外(直流以外)で任意に設定可能である。
【0127】
電流出力判定部904Pは、交流循環電流生成部901から出力される交流循環電流iCCsinをU相P側並列アームのコンデンサ電圧に応じて出力するか否かを判定し、その判定結果に応じて交流循環電流iCCsinPを減算器404Pおよび加算器405Pに出力する。交流循環電流iCCsinPは、U相P側並列アームのコンデンサ電圧の最大値と最小値の偏差がある一定値を超える場合、交流循環電流iCCsinに設定され、U相P側並列アームのコンデンサ電圧の最大値と最小値の偏差が一定値以下である場合、零に設定される。
【0128】
減算器404Pは、U相循環電流指令値iCCUrefの1/2から循環電流補正値DiCCUPおよび交流循環電流iCCsinPを減算することで、循環電流指令値iCCUPmrefを生成し、循環電流制御部307に入力する。加算器405Pは、U相循環電流指令値iCCUrefの1/2に循環電流補正値DiCCUPおよび交流循環電流iCCsinPを加算することで、循環電流指令値iCCUPsrefを生成し、循環電流制御部307に入力する。
【0129】
電流出力判定部904Nは、交流循環電流生成部901から出力される交流循環電流iCCsinをU相N側並列アームのコンデンサ電圧に応じて出力するか否かを判定し、その判定結果に応じて交流循環電流iCCsinNを減算器404Nおよび加算器405Nに入力する。交流循環電流iCCsinNは、U相N側並列アームのコンデンサ電圧の最大値と最小値の偏差がある一定値を超える 場合、交流循環電流iCCsinに設定され、U相N側並列アームのコンデンサ電圧の最大値と最小値の偏差が一定値以下である場合、零に設定される。
【0130】
減算器404Nは、U相循環電流指令値iCCUrefの1/2から循環電流補正値DiCCUNおよび交流循環電流iCCsinNを減算することで、循環電流指令値iCCUNmrefを生成し、循環電流制御部307に入力する。加算器405Nは、U相循環電流指令値iCCUrefの1/2に循環電流補正値DiCCUNおよび交流循環電流iCCsinNを加算することで、循環電流指令値iCCUNsrefを生成し、循環電流制御部307に入力する。
【0131】
これにより、無負荷運転または軽負荷運転時においても、並列アーム間循環電流を流すことができ、直流コンデンサ電圧アンバランスを解消できる。また、コンデンサ電圧アンバランスが小さいアームには、交流循環電流iCCsinを流さないようにすることができ、交流循環電流iCCsinが流れることによる回路損失を低減できる。
【0132】
また、図9(a)に示すように、減算器404Pおよび加算器405Pに入力される循環電流補正値DiCCUPの直流成分に基づいて、並列アームの直流コンデンサ電圧のアンバランスが解消されように並列アーム間循環電流iCCUPm、iCCUPsが制御される。このとき、周波数fの交流循環電流iCCsinが減算器404Pおよび加算器405Pに入力された場合においても、交流循環電流iCCsinは1周期ごとに直流成分が0になるため、循環電流補正値DiCCUPによる並列アーム間循環電流iCCUPm、iCCUPsの制御に影響が及ぶのを防止することができる。
【0133】
なお、各相並列アーム間バランス制御部801V、801Wは、各相並列アーム間バランス制御部801Uと同等の構成であるため説明を省略する。
【符号の説明】
【0134】
1 電力変換装置、10 メインアーム、11 サブアーム、12 交流電圧検出器、13 電力変換制御部、100xym_j、100xys_j 単位変換器、101 リアクトル、102 電流検出器、201 スイッチング回路、202 直流コンデンサ、203 直流電圧検出器、204 ゲート駆動回路、301 アーム電流成分分離部、302 電力制御部、303 交流電流制御部、304 直流電流制御部、305 各相間バランス制御部、306、801 並列アーム間バランス制御部、306U、306V、306W、801U、801V、801W 各相アーム間バランス制御部、307 循環電流制御部、308 加算器、309 ゲートパルス生成部、401 平均値演算部、402P、402N、404P、404N 減算器、403P、403N ゲイン乗算部、405P、405N 加算器、701 電流検出器、901 交流循環電流生成部、902 交流循環電流振幅決定部、903 交流電流生成部、904P、904N 電流出力判定部、1011~1014 減算器、1021~1024 ゲイン乗算部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16