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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】燃料噴射弁駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/06 20060101AFI20221026BHJP
   F02D 41/20 20060101ALI20221026BHJP
   F02D 41/30 20060101ALI20221026BHJP
   F02M 65/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
F02M51/06 M
F02D41/20
F02D41/30
F02M65/00 306A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018234459
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094570
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】小川 功史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大顕
(72)【発明者】
【氏名】野村 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】黒田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】龍 隆
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/191267(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/174916(WO,A1)
【文献】特開2014-234922(JP,A)
【文献】特開2018-093044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/06
F02D 41/20
F02D 41/30
F02M 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドを有する燃料噴射弁を駆動する燃料噴射弁駆動装置であって、
バッテリ電力を昇圧する昇圧回路と前記ソレノイドの一端との間に配置される第1スイッチング素子と、
バッテリと前記ソレノイドの一端との間に配置される第2スイッチング素子と、
前記ソレノイドの他端とグランドとの間に配置される第3スイッチング素子と、
前記ソレノイドの一端とグランドとの間に配置される第4スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の開閉状態を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記燃料噴射弁の閉弁を検出する閉弁検知期間に前記第4スイッチング素子を開状態とすると共に、前記ソレノイドの他端の電圧変化に基づいて前記燃料噴射弁の閉弁を検知する
ことを特徴とする燃料噴射弁駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子が閉状態となったことを検出した後に、前記第4スイッチング素子を閉状態から開状態とすることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射弁駆動装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記第4スイッチング素子を開状態から閉状態となったことを検出した後に、上記第1スイッチング素子または、上記第2スイッチング素子を閉状態から開状態とする
ことを特徴とする請求項1または2記載の燃料噴射弁駆動装置。
【請求項4】
前記第4スイッチング素子が電界効果トランジスタであり、前記制御部が、前記第4スイッチング素子のゲート電圧に基づいて前記第4スイッチング素子が閉状態となったことを検出する
ことを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載の燃料噴射弁駆動装置。
【請求項5】
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子と共通に接続されたソレノイド側の配線の電圧に基づいて上記第1スイッチング素子及び上記第2スイッチング素子が閉状態となったことを検出する
ことを特徴とする請求項1~4いずれか一項に記載の燃料噴射弁駆動装置。
【請求項6】
前記第1スイッチング素子及び上記第2スイッチング素子が電界効果トランジスタであり、前記制御部が、前記第1スイッチング素子のゲート端子と上記第2スイッチング素子のゲート端子とに接続された配線の電圧に基づいて前記第1スイッチング素子あるいは前記第2スイッチング素子が閉状態となったことを検出する
ことを特徴とする請求項1~4いずれか一項に記載の燃料噴射弁駆動装置。
【請求項7】
前記第1スイッチング素子のソース端子と前記第2スイッチング素子のソース端子との接続箇所と、前記ソレノイドの一端と前記第4スイッチング素子のドレイン端子との接続箇所との間に配置された過電流検知用抵抗器を備えることを特徴とする請求項1~6いずれか一項に記載の燃料噴射弁駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ソレノイドを有する燃料噴射弁を備える内燃機関の制御装置が開示されている。このような特許文献1に開示された制御装置は、燃料噴射弁のソレノイドを駆動することにより内燃機関を制御するものであり、昇圧回路やバッテリからソレノイドへの電力供給状態を切り替えるための複数のスイッチング素子を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6383760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ソレノイドへ供給される電流の遮断により前記弁体が前記弁座と接触する時期を、前記ソレノイドの接地電位側端子と接地電位との間の電圧に基づいて検知している。ところが、特許文献1では、ソレノイドから出力される逆起電流を、グランドからダイオードを介してソレノイドに還流するための還流経路を有しており、この還流経路には、ダイオードが設置されている。このため、ダイオードのVfが逆起電流及び温度等の環境要因により変動することにより、ソレノイドの接地電位側端子と接地電位との間の電圧が変動し、正確な閉弁検知を行うことができない。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ソレノイドを有する燃料噴射弁駆動装置において、ソレノイドの一方側の端子の電圧変化で、より正確に燃料噴射弁の閉弁を検知可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、ソレノイドを有する燃料噴射弁を駆動する燃料噴射弁駆動装置であって、バッテリ電力を昇圧する昇圧回路と上記ソレノイドの一端との間に配置される第1スイッチング素子と、バッテリと上記ソレノイドの一端との間に配置される第2スイッチング素子と、上記ソレノイドの他端とグランドとの間に配置される第3スイッチング素子と、上記ソレノイドの一端とグランドとの間に配置される第4スイッチング素子と、上記第1スイッチング素子、上記第2スイッチング素子、上記第3スイッチング素子及び上記第4スイッチング素子の開閉状態を制御する制御部とを備え、上記制御部が、上記燃料噴射弁の閉弁を検出する閉弁検知期間に上記第4スイッチング素子を開状態とすると共に、上記ソレノイドの他端の電圧変化に基づいて上記燃料噴射弁の閉弁を検知するという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記制御部が、上記第1スイッチング素子及び上記第2スイッチング素子が閉状態となったことを検出した後に、上記第4スイッチング素子を閉状態から開状態とするという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記制御部が、上記第4スイッチング素子を開状態から閉状態となったことを検出した後に、上記第1スイッチング素子または、上記第2スイッチング素子を閉状態から開状態とするという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記第4スイッチング素子が電界効果トランジスタであり、上記制御部が、上記第4スイッチング素子のゲート電圧に基づいて上記第4スイッチング素子が閉状態となったことを検出するという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、上記第1スイッチング素子と上記第2スイッチング素子と共通に接続されたソレノイド側の配線の電圧に基づいて上記第1スイッチング素子及び上記第2スイッチング素子が閉状態となったことを検出するという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、上記第1スイッチング素子及び上記第2スイッチング素子が電界効果トランジスタであり、上記制御部が、上記第1スイッチング素子のゲート端子と上記第2スイッチング素子のゲート端子とに接続された配線の電圧に基づいて上記第1スイッチング素子あるいは上記第2スイッチング素子が閉状態となったことを検出するという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、上記第1~第6いずれかの発明において、上記第1スイッチング素子のソース端子と上記第2スイッチング素子のソース端子との接続箇所と、上記ソレノイドの一端と上記第4スイッチング素子のドレイン端子との接続箇所との間に配置された過電流検知用抵抗器を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを閉状態とし、第4スイッチング素子を開状態とすることによって、ソレノイドに発生した逆起電流をソレノイドに還流させることができ、さらにはソレノイドの一端側がグランドの基準電位にクランプされる。この結果、一端側が基準電位にクランプされない場合と比較して、より正確に燃料噴射弁の閉弁を検知することが可能となる。したがって、本発明によれば、ソレノイドを有する燃料噴射弁駆動装置において、ソレノイドの一方側の端子の電圧変化で、より正確に燃料噴射弁の閉弁を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における燃料噴射弁駆動装置の概略構成図である。
図2】ソレノイドの他端の電圧変化を示すグラフである。
図3】(a)が、第4半導体スイッチを開状態から閉状態に切り替えると共に第2半導体スイッチを閉状態から開状態とする場合における電圧変化を示すタイミングチャートであり、(b)が、第2半導体スイッチを開状態から閉状態に切り替えると共に第4半導体スイッチを閉状態から開状態とする場合における電圧変化を示すタイミングチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁駆動装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る燃料噴射弁駆動装置の一実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sの概略構成図である。この図に示すように、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sは、燃料噴射弁のソレノイドLを駆動する駆動装置であり、外部のバッテリから供給される電力を外部から入力される指令信号に基づいてソレノイドLに供給することによって、燃料噴射弁を駆動する。
【0018】
図1に示すように、燃料噴射弁駆動装置Sは、昇圧回路1と、第1半導体スイッチ2(第1スイッチング素子)と、第2半導体スイッチ3(第2スイッチング素子)と、第3半導体スイッチ4(第3スイッチング素子)と、第4半導体スイッチ5(第4スイッチング素子)と、電流検出用抵抗器6と、逆流防止ダイオード7と、制御部8と、昇圧回生ダイオード10と、過電流検知用抵抗器11とを備えている。
【0019】
昇圧回路1は、車両に搭載されたバッテリから入力される電力を所定の目標電圧に昇圧するチョッパ回路である。この昇圧回路1は、昇圧比が例えば二~十程度であり、制御部8内の昇圧制御部8aによって制御される。
【0020】
第1半導体スイッチ2、第2半導体スイッチ3、第3半導体スイッチ4及び第4半導体スイッチ5は、電界効果トランジスタであり、制御部8にゲート端子が接続され、制御部8によって開閉状態が制御可能とされている。本実施形態において第1半導体スイッチ2、第2半導体スイッチ3、第3半導体スイッチ4及び第4半導体スイッチ5は、MOSトランジスタを用いており、図1に示すように、各々が寄生ダイオードを有している。
【0021】
第1半導体スイッチ2は、昇圧回路1の出力端とソレノイドLの一端(より正確にはソレノイドコイルの一端)との間に配置されている。すなわち、この第1半導体スイッチ2において、ドレイン端子は昇圧回路1の出力端に接続され、ソース端子はソレノイドLの一端に接続され、またゲート端子は制御部8のIpeak制御部8bに接続されている。このような第1半導体スイッチ2は、Ipeak制御部8bによって開閉状態が制御される。
【0022】
第2半導体スイッチ3は、バッテリとソレノイドLの一端(ソレノイドコイルの一端)との間に配置されている。すなわち、この第2半導体スイッチ3において、ドレイン端子は逆流防止ダイオード7を介してバッテリに接続され、ソース端子はソレノイドLの一端に接続され、またゲート端子は制御部8のIhold制御部8cに接続されている。このような第2半導体スイッチ3は、Ihold制御部8cによって開閉状態が制御される。
【0023】
第3半導体スイッチ4は、ソレノイドLの他端(ソレノイドコイルの他端)とグランドG(基準電位)との間に配置されている。すなわち、この第3半導体スイッチ4において、ドレイン端子はソレノイドLの他端に接続され、ソース端子は電流検出用抵抗器6を介してグランドGに接続され、またゲート端子は制御部8のINJスイッチ制御部8dに接続されている。このような第3半導体スイッチ4は、INJスイッチ制御部8dによって開閉状態が制御される。
【0024】
第4半導体スイッチ5は、ソレノイドLの一端(ソレノイドコイルの一端)とグランドGとの間に配置されている。すなわち、この第4半導体スイッチ5において、ドレイン端子はソレノイドLの一端に接続され、ソース端子はグランドGに接続され、ゲート端子は制御部8の還流制御部8eに接続されている。このような第4半導体スイッチ5は、還流制御部8eによって開閉状態が制御される。
【0025】
電流検出用抵抗器6は、一端が第3半導体スイッチ4のソース端子に接続され、他端がグランドGに接続された電流検出用の抵抗器である。すなわち、電流検出用抵抗器6は、第3半導体スイッチ4を介してソレノイドL(ソレノイドコイル)に直列接続されており、ソレノイドLに通電される駆動電流が流れる。このような電流検出用抵抗器6は、電流検出用抵抗器6の一端と他端との間に流れる駆動電流の大きさに応じた電圧(検出電圧)が発生する。
【0026】
また、逆流防止ダイオード7は、カソード端子が第2半導体スイッチ3のドレイン端子に接続され、アノード端子がバッテリの出力端に接続されている。この逆流防止ダイオード7は、第1半導体スイッチ2及び第2半導体スイッチ3が何れも開状態になった場合に、第2半導体スイッチ3を介して、または、第2半導体スイッチ3のみOFF状態(閉状態)であっても第2半導体スイッチ3の寄生ダイオード介して、昇圧回路1の出力電流がバッテリの出力端に流入することを防止するために設けられる補助部品である。
【0027】
制御部8は、上位制御系から入力される指令信号に基づいて昇圧回路1、第1半導体スイッチ2、第2半導体スイッチ3、第3半導体スイッチ4及び第4半導体スイッチ5を制御する集積回路(IC:Integrated Circuit)である。この制御部8は、機能部として、昇圧制御部8aと、Ipeak制御部8bと、Ihold制御部8cと、INJスイッチ制御部8dと、還流制御部8eと、電流検出部8fと、電圧検出部8gと、閉弁検知部8hとを有している。
【0028】
昇圧制御部8aは、昇圧回路1の動作を制御するための昇圧制御信号(PWM信号)を生成して昇圧回路1に出力する。Ipeak制御部8bは、第1半導体スイッチ2を制御するための第1ゲート信号を生成し、第1半導体スイッチ2のゲート端子に第1ゲート信号を出力する。Ihold制御部8cは、第2半導体スイッチ3を制御するための第2ゲート信号を生成し、第2半導体スイッチ3のゲート端子に第2ゲート信号を出力する。INJスイッチ制御部8dは、第3半導体スイッチ4を制御するための第3ゲート信号を生成し、第3半導体スイッチ4のゲート端子に第3ゲート信号を出力する。還流制御部8eは、第4半導体スイッチ5を制御するための第4ゲート信号を生成し、第4半導体スイッチ5のゲート端子に第4ゲート信号を出力する。
【0029】
電流検出部8fは、一対の入力端を備え、一方の入力端が電流検出用抵抗器6の一端に接続され、他方の入力端が電流検出用抵抗器6の他端に接続されている。すなわち、この電流検出部8fには、電流検出用抵抗器6で発生した検出電圧が入力される。このような電流検出部8fは、検出電圧に基づいて駆動電流の大きさを検出(演算)する。
【0030】
電圧検出部8gは、第4半導体スイッチ5のゲート端子と接続されており、第4半導体スイッチ5のゲート電圧を検出する。電圧検出部8gは、第4半導体スイッチ5のゲート電圧をIpeak制御部8b及びIhold制御部8cに出力する。また、図1に示すように、第1半導体スイッチ2のソース端子と第2半導体スイッチ3のソース端子とが接続され、ソレノイドLの一端に接続された共通配線部9が設けられている。電圧検出部8gは、共通配線部9と接続されており、共通配線部9の電圧を検出する。電圧検出部8gは、共通配線部9の電圧を還流制御部8eに出力する。
【0031】
昇圧回生ダイオード10は、カソードを昇圧回路1の出力端に接続され、アノードは第3半導体スイッチ4のドレイン端子及びソレノイドLの他端に接続される。過電流検知用抵抗器11は、共通配線部9の途中部位に配置されている。より詳細には、過電流検知用抵抗器11は、共通配線部9上であって、第1半導体スイッチ2のソース端子と第2半導体スイッチ3のソース端子との接続箇所と、ソレノイドLの一端と第4半導体スイッチ5のドレイン端子との接続箇所との間に配置されている。このような過電流検知用抵抗器11を設置することで、過電流検知用抵抗器1の両端の電圧差に基づいて、第4半導体スイッチ5のショート故障検知、や、インジェクタ一端側(ソレノイドLの一端側)の地絡検知が可能となる。
【0032】
閉弁検知部8hは、ソレノイドLの他端に接続されており、閉弁検知期間において、ソレノイドLの他端の電圧変化に基づいて、燃料噴射弁の閉弁を検知する。図2は、ソレノイドLに対しての駆動電流の供給が停止された後におけるソレノイドLの他端の電圧変化を示すグラフである。ソレノイドLへの駆動電流の供給が停止されると、ソレノイドLにて逆起電力が発生し、ソレノイドLの両端に電圧差(逆起電圧)が生じる。
【0033】
このような逆起電力は、グランドG、第4半導体スイッチ5と第4半導体スイッチ5の寄生ダイオード、ソレノイドL、昇圧回生ダイオード10、昇圧回路1及びバッテリを介してグランドGに還流電流が流れ、主に熱として消費されることにより、時間と共に減少し、一定時間の経過後に消滅する。このような電圧差が消滅するまでに、開弁されていた燃料噴射弁の弁体が弁座に衝突して閉弁され、弁体が弁座に衝突する際に当該電圧差の減少勾配が変化する。このため、図2のグラフの屈曲点(点線部で示す)を検出することによって、閉弁検知部8hは、燃料噴射弁の閉弁を検知する。本実施形態では、弁体が弁座に衝突する瞬間の想定時刻を含めた前後の一定期間を閉弁検知期間とし、この期間中、還流制御部8eが第4半導体スイッチ5を開状態とする。この結果、ソレノイドLの一端が第4半導体スイッチ5を介してグランドGに接続されて基準電圧にクランプされ、図2に示すように、上記電圧差がソレノイドLの他端側のみで生じる。このため、ソレノイドLの他端側での電圧変化が大きくなることで屈曲点が急峻となり、閉弁検知部8hで正確に燃料噴射弁の閉弁を検知することが可能となる。なお、還流制御部8eは、電圧検出部8gの検出結果に基づいて、共通配線部9の電圧が低くなっている(第1半導体スイッチ2及び第2半導体スイッチ3が閉じている)ことを検出してから、第4半導体スイッチ5を開状態とする。
【0034】
ただし、第4半導体スイッチ5の設置によって、第1半導体スイッチ2あるいは第2半導体スイッチ3と第4半導体スイッチ5とが両方とも開状態となることに起因する貫通電流の発生懸念が生じる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sでは、Ipeak制御部8b及びIhold制御部8cは、電圧検出部8gから入力される第4半導体スイッチ5のゲート電圧に基づいて、第4半導体スイッチ5が開状態から閉状態となったことを検出した後に、第1半導体スイッチ2あるいは第2半導体スイッチ3を閉状態から開状態とする。
【0035】
図3(a)は、第4半導体スイッチ5を開状態から閉状態に切り替えると共に第2半導体スイッチ3を閉状態から開状態とする場合における、共通配線部9と、第4半導体スイッチ5のゲート電圧と、第2半導体スイッチ3のゲート電圧との時間変化を示したタイミングチャートである。なお、図3(a)の説明において、第1半導体スイッチ2は常時閉状態であるものとする。また、図3(a)は、半導体スイッチがオフし始めた状態と半導体スイッチがオフした状態の極めて短い時間を表した図である。Ihold制御部8cは、電圧検出部8gから入力される第4半導体スイッチ5のゲート電圧が、第4半導体スイッチ5が閉状態となったことを示す第1基準電圧まで低下した場合には、予め定められた一定のデッドタイムが経過するのを待ってから第2半導体スイッチ3を開状態とする。なお、第4半導体スイッチ5を開状態から閉状態に切り替えると共に第1半導体スイッチ2を閉状態から開状態とする場合には、Ipeak制御部8bは、ここで説明したIhold制御部8cと同様の動作をする。
【0036】
図3(b)は、第2半導体スイッチ3を開状態から閉状態に切り替えると共に第4半導体スイッチ5を閉状態から開状態とする場合における、共通配線部9と、第4半導体スイッチ5のゲート電圧と、第2半導体スイッチ3のゲート電圧との時間変化を示したタイミングチャートである。なお、図3(b)の説明において、第1半導体スイッチ2は常時閉状態であるものとする。また、図3(b)は、半導体スイッチがオフし始めた状態と半導体スイッチがオフした状態の極めて短い時間を表した図である。還流制御部8eは、電圧検出部8gから入力される共通配線部9の電圧(すなわち第2半導体スイッチ3のソース電圧)が第2基準電圧まで低下した場合には、予め定められた一定のデッドタイムが経過するのを待ってから第4半導体スイッチ5を開状態とする。なお、第1半導体スイッチ2を開状態から閉状態に切り替えると共に第4半導体スイッチ5を閉状態から開状態とする場合には、Ipeak制御部8bは、ここで説明したIhold制御部8cと同様の動作をする。
【0037】
次に、このように構成された燃料噴射弁駆動装置Sの動作について、図4を参照して説明する。
【0038】
本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sで燃料噴射弁を閉弁状態から開弁状態に駆動する場合、制御部8は、図4に示すように、駆動開始時の初期期間T1において昇圧回路1が生成する昇圧電圧をソレノイドLに供給し、上記初期期間T1後の保持期間T2においてはバッテリ電圧をソレノイドLに供給させる。
【0039】
すなわち、初期期間T1では、Ipeak制御部8bが第1ゲート信号を第1半導体スイッチ2に出力することによって昇圧回路1が生成する昇圧電圧をソレノイドLの一端(ソレノイドコイルの一端)に供給すると共に、INJスイッチ制御部8dが第3半導体スイッチ4に第3ゲート信号を出力することによって、電流検出用抵抗器6を介してソレノイドLの他端(ソレノイドコイルの他端)をグランドGに接続させる。
【0040】
この結果、初期期間T1では、高い電圧の昇圧電圧がソレノイドLに供給され、よってピーク状の立ち上がり電流がソレノイドLに流れる。このようなピーク状の立ち上がり電流は、燃料噴射弁の開弁動作を高速化するものである。
【0041】
そして、保持期間T2では、Ihold制御部8cが第2ゲート信号を第2半導体スイッチ3に出力することによってバッテリ電力をソレノイドLの一端(ソレノイドコイルの一端)に供給すると共に、INJスイッチ制御部8dが第3半導体スイッチ4に第3ゲート信号を出力することによって、電流検出用抵抗器6を介してソレノイドLの他端(ソレノイドコイルの他端)をグランドGに接続させる。
【0042】
この結果、保持期間T2では、バッテリ電圧がソレノイドLに供給される。ここで、Ihold制御部8cは、所定のデューティ比のPWM信号を第2ゲート信号として第2半導体スイッチ3に供給するので、バッテリ電圧はソレノイドLに対して断続的に供給される。また、上記デューティ比は電流検出部8fが検出した駆動電流の大きさに基づいて設定される。すなわち、Ihold制御部8cは、電流検出部8fが検出した駆動電流の大きさに基づいてPWM信号のデューティ比を設定することにより駆動電流の大きさが所定の目標値を維持するようにフィードバック制御する。
【0043】
この結果、所定の目標値を維持する保持電流がソレノイドLに供給され、以て燃料噴射弁の開弁状態が保持される。また、保持期間T2において上記デューティ比を2段階に変更することによって、保持電流を段階的に変化させることが可能である。
【0044】
また、初期期間T1及び保持期間T2において、第1半導体スイッチ2及び第2半導体スイッチ3がいずれも閉状態である期間(第1ゲート信号及び第2ゲート信号がいずれもロー状態すなわち半導体スイッチが閉となる電圧以下である期間)において、第4半導体スイッチ5が開状態とされる。なお、第3半導体スイッチ4は開状態が維持される。この結果、ソレノイドLで発生する逆起電流が、グランドG、第4半導体スイッチ5と第4半導体スイッチ5の寄生ダイオード、ソレノイドL第3半導体スイッチ4、電流検出用抵抗器6を介してグランドGに流れる。
【0045】
さらに、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sでは、ソレノイドLへの駆動電流の供給後における一定期間を閉弁検知期間とし、この期間中において、第1半導体スイッチ2、第2半導体スイッチ3及び第3半導体スイッチ4がいずれも閉状態とされ、第4半導体スイッチ5が開状態とされる。この間、ソレノイドLの他端の電圧が時間と共に変化するため、制御部8の閉弁検知部8hは、ソレノイドLの他端の電圧変化に基づいて燃料噴射弁の閉弁を検知する。
【0046】
以上のような本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sにおいては、第1半導体スイッチ2と第2半導体スイッチ3とを閉状態とし、第4半導体スイッチ5を開状態とすることによって、ソレノイドLに発生した逆起電流をソレノイドLに還流させることができ、さらにはソレノイドLの一端側がグランドの基準電位にクランプされる。この結果、ソレノイドLにおける電圧変化がソレノイドLの他端側のみで生じ、一端側が基準電位にクランプされない場合と比較して、より正確に燃料噴射弁の閉弁を検知することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sにおいては、制御部8は、第4半導体スイッチ5が開状態から閉状態となったことを検出した後に、第1半導体スイッチ2あるいは第2半導体スイッチ3を閉状態から開状態としている。このため、第4半導体スイッチ5を開状態から閉状態に切り替えると共に第1半導体スイッチ2あるいは第2半導体スイッチ3を閉状態から開状態とする場合に、昇圧回路1あるいはバッテリからグランドGに貫通電流が流れることを防止することができる。
【0048】
また、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sにおいては、第4半導体スイッチ5が電界効果トランジスタであり、制御部8が、第4半導体スイッチ5のゲート電圧に基づいて第4半導体スイッチ5が開状態から閉状態となったことを検出している。このため、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sによれば、確実に第4半導体スイッチ5の開閉状態を検出することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sにおいては、制御部8は、第1半導体スイッチ2及び第2半導体スイッチ3が閉状態となったことを検出した後に、第4半導体スイッチ5を閉状態から開状態とする。このため、第1半導体スイッチ2あるいは第2半導体スイッチ3を開状態から閉状態に切り替えると共に第4半導体スイッチ5を閉状態から開状態とする場合に、昇圧回路1あるいはバッテリからグランドGに貫通電流が流れることを防止することができる。
【0050】
また、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sにおいては、第1半導体スイッチ2及び第2半導体スイッチ3が電界効果トランジスタであり、制御部8が、第1半導体スイッチ2のソース端子と第2半導体スイッチ3のソース端子とに接続された共通配線部9の電圧に基づいて第1半導体スイッチ2及び第2半導体スイッチ3が閉状態となったことを検出する。共通配線部9の電圧は、第1半導体スイッチ2と第2半導体スイッチ3との両方が閉状態となった場合に低くなる。このため、このような共通配線部9の電圧に基づくことによって、第1半導体スイッチ2と第2半導体スイッチ3との両方が確実に閉状態であることを検出することができる。
【0051】
また、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sによれば、第4半導体スイッチ5が開状態となることによって、ソレノイドLの一端が基準電位にクランプされる。このため、ソレノイドLの電圧変化が生じる他端と基準電位とを取り込むシングルエンドアンプを制御部8に内蔵し、このシングルエンドアンプからの出力によって閉弁検知を行うことができる。例えば、上述の特許文献1では、より正確な閉弁検知のために制御部の外部に、高耐圧の大型の差動アンプを設置してアクティブフィルタを構成している。これに対して、本実施形態の燃料噴射弁駆動装置Sによれば、制御部8に内蔵されたシングルエンドアンプで正確な閉弁検知が可能となり、制御部8と別に大型の差動アンプを設置する必要がないため、装置の小型化を実現することができる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部品の組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、還流経路にある昇圧回生ダイオード10及びソレノイドL等により逆起電力が主に熱として消費される。尚、第3半導体スイッチ4のドレイン端子とゲート端子間に設けたツェナーダイオード及びダイオードにて構成されるアクティブクランプ回路でも可能である。
【0054】
なお、図2のグラフの屈曲点はソレノイドの部材や諸形状により勾配が変化する。
【0055】
また、共通配線部9の電圧が低くなっている(第1半導体スイッチ2及び第2半導体スイッチ3が閉じている)ことを検出してから、第4半導体スイッチ5を開状態としているが、第1半導体スイッチ2のゲート電圧及び第2半導体スイッチのゲート電圧が半導体スイッチを閉とする電圧以下より低くなっている(第1半導体スイッチ2及び第2半導体スイッチ3が閉じている)ことを検出してから、第4半導体スイッチ5を開状態としてもよい。
【0056】
例えば、上記実施形態の図4のT2期間において、ソレノイドに接続される弁の跳ね返りにより、弁が閉じることを防止する比較的大きい電流と弁が開状態を保持するための必要な比較的小さい電流を切り替えているが、ソレノイドに接続される弁の跳ね返りにより弁が閉じることを防止する比較的大きい電流の一種類の電流であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1……昇圧回路、2……第1半導体スイッチ(第1スイッチング素子)、3……第2半導体スイッチ(第2スイッチング素子)、4……第3半導体スイッチ(第3スイッチング素子)、5……第4半導体スイッチ(第4スイッチング素子)、6……電流検出用抵抗器、7……逆流防止ダイオード、8……制御部、G……グランド、L……ソレノイド、S……燃料噴射弁駆動装置、10……昇圧回生ダイオード、11……過電流検知用抵抗器
図1
図2
図3
図4