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  • 特許-砂質土の最大密度計測方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】砂質土の最大密度計測方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/04 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
E02D1/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018238275
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100954
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月18日 https://www.gakkai-web.net/gakkai/geokanto/contents/index.html 平成30年11月2日 第15回地盤工学会関東支部発表会
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】秋本 哲平
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-324429(JP,A)
【文献】特開2008-002205(JP,A)
【文献】特開2009-132002(JP,A)
【文献】特開2012-042403(JP,A)
【文献】実開昭55-126966(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/04
E02D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料用砂質土の質量を計測するとともに、締め固めた前記試料用砂質土の体積を計測し、前記試料用砂質土の質量及び体積から前記試料用砂質土の最大密度を求める砂質土の最大密度計測方法において、
前記試料用砂質土を投入した有底筒状の容器を、底部を外側に向けて遠心機のローターに設置し、該ローターを回転させて前記容器に遠心力を作用させて前記試料用砂質土を容器内で締固めることを特徴とする砂質土の最大密度計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に改良地盤の強度測定に必要な砂質土の最大密度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液注入による改良地盤の強度は、薬液シリカ濃度によって異なるため、施工前に配合試験を行い、注入する薬液のシリカ濃度を決定する。
【0003】
その際、薬液注入による改良地盤の強度は、砂質土の密度によっても異なることから、配合試験では、砂質土の乾燥密度を対象地盤と一致させるため、対象地盤の不攪乱試料を採取し、湿潤密度試験と含水比試験を実施し、乾燥密度を算定している。
【0004】
しかしながら、一般的に砂質土の不攪乱試料採取は、採取率が低く、試料採取が困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、従来では、配合試験の乾燥密度を算定する方法として、対象地盤のN値と有効土被り圧から対象地盤の相対密度を仮定し、その相対密度に対応する乾燥密度を設定することが知られている。
【0006】
その際、乾燥密度は、配合試験試料の最小密度・最大密度試験(JIS A 1224)(以下、JIS法という)の結果から設定する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、JIS法の適用範囲は、細粒分含有率Fc≦5%となっており、細粒分含有率が高い砂質土は適用範囲外であり、細粒分含有率Fc>5%の砂質土で試験を行った場合、砂質土が緩い状態即ち、十分に締まった状態とならない場合が多い。
【0008】
仮定した相対密度に対応する乾燥密度を算定するためには、最小密度と最大密度が必要であり、砂質土においても物理的に作り得る最大密度を計測する方法が必要となる。
【0009】
そこで、物理的に作り得る最大密度を計測する方法として、突き固めによる土の締固め試験(JIS A 1210)(以下、締固め法という)が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平09-3866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の如き締固め法は、砂質土の最大密度の計測においても適用性が認められているものの、試験を実施するために多くの試料(3kg×6=18kg)が必要であり、最大密度の計測作業に手間がかかるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、少量の試料で簡易に砂質土の最大密度を計測することができる砂質土の最大密度計測方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、試料用砂質土の質量を計測するとともに、締め固めた前記試料用砂質土の体積を計測し、前記試料用砂質土の質量及び体積から前記試料用砂質土の最大密度を求める砂質土の最大密度計測方法において、前記試料用砂質土を投入した有底筒状の容器を、底部を外側に向けて遠心機のローターに設置し、該ローターを回転させて前記容器に遠心力を作用させて前記試料用砂質土を容器内で締固めることにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る砂質土の最大密度計測方法は、請求項1に記載の構成を具備することによって、物理的に作り得る最大密度を少量の試料で簡易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る砂質土の最大密度計測方法を使用した相対密度に対応した乾燥密度算定方法の手順を示すフローチャートである。
図2】本発明に係る砂質土の最大密度計測方法の手順を示すフローチャートである。
図3図1中の容器を示す断面図であって、(a)は締め固める前の状態、(b)は締め固めた後の状態を示す図である。
図4】本発明に係る砂質土の締固め作業の概略を説明するための平面図、(b)同断面図である。
図5】JIS法、締固め法及び遠心法を用いて算定した乾燥密度と含水比の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る砂質土の最大密度計測方法の実施態様を図1図5に示した実施例に基づいて説明する。
【0017】
図1は、配合試験の乾燥密度ρを決定する方法の手順を示し、対象地盤のN値と有効土被り圧から対象地盤の相対密度Dを仮定し、その相対密度Dに対応する乾燥密度ρを本発明に係る砂質土の最大密度計測方法(以下、遠心法という)によって求められた最大密度ρdmaxを用いて設定するようになっている。
【0018】
尚、ここで砂質土とは、粗粒分>50%、且つ、砂分≧礫分のものをいい、細粒分含有率が50%未満であれば砂質土に分類される可能性がある。
【0019】
配合試験の乾燥密度ρを決定するには、先ず、対象地盤のN値及び土被り圧を計測し、そのN値や土被り圧より相対密度Dを仮定する。
【0020】
次に、対象地盤の攪乱試料を採取し、この採取した試料を用いて砂質土の最小密度ρdmin及び最大密度ρdmaxを計測する。
【0021】
最小密度ρdminの計測は、例えば、既知の配合試験試料の最小密度・最大密度試験(JIS A 1224)(以下、JIS法という)によって行う。
【0022】
このJIS法による最小密度ρdminの計測は、先ず、規定された体積のモールドの質量md1を予め計測しておき、そのモールドの底面中央に規定された漏斗を立て、漏斗内に試料を投入する。
【0023】
そして、漏斗を一定の速度で鉛直方向に持ち上げ、20~30秒でモールドの上端面全周から試料を溢れさせる。
【0024】
次に、モールドの上端面の縁に直ナイフを乗せ、素早く滑らせて試料の余盛部分を取り除く。
【0025】
そして、この状態の試料とモールドの質量mを測定し、以下の式より最小密度ρdminを算出する。
【数1】
そして、この最小密度ρdminの計測を複数回行う。
【0026】
次に、本発明に係る遠心法の具体的な手順を説明する。尚、図中符号1は、計測に用いる容器である。
【0027】
この容器1は、有底筒状の透明なプラスチック容器であって、一般に市販されている小型の遠心機に適用可能なものを使用する。尚、図中符号2はキャップである。
【0028】
先ず、事前に容器1の質量md2を計測した後、図3(a)に示すように、対象地盤より採取した試料用砂質土3を容器1に投入し、試料用砂質土3及び容器1の合計質量mを計測する。
【0029】
また、この作業を繰り返し、容器1に試料用砂質土3を投入したものを複数作成してもよい(本実施例では、1回につき6検体)。
【0030】
次に、各容器1の上端をキャップ2で閉鎖し、図4に示すように、この容器1を遠心機のローター4に底部を外側及び下に向けて放射状に設置する。尚、図中符号5は遠心機の回転軸であって、図示しない電動機等の動力によってローター4が回転軸5回りに高速回転するようになっている。
【0031】
そして、遠心機のローター4を所定の遠心加速度(本実施例では3000G)によって一定時間(10分)回転させ、試料用砂質土3を投入した各容器1に遠心力を作用させて試料用砂質土3を締固め、図3(b)に示すように、物理的に作り得る最大密度ρdmaxの試料を作成する。
【0032】
次に、容器1を遠心機より取り出し、締固め後の試料用砂質土3の高さ、即ち、上端面6の位置を計測するとともに、その上端面6の位置を容器1に記入する。
【0033】
尚、本実施例においては、容器1を遠心機のローター4に対し斜め向きに設置するため、締固め後の試料用砂質土3の上端面6は、容器1に対して傾いた状態となり、上端面6の位置を容器1に記入する際は、その傾斜した状態にあわせて記入する。
【0034】
その後、容器1より試料用砂質土3を取り出し、しかる後、容器1内の記入された試料用砂質土3の上端面6の高さまで水を入れ、その水量から締固め後の試料用砂質土3の体積Vを計測する。
【0035】
尚、遠心機には、遠心力の上昇とともに容器1が水平になる装置も使用されており、この装置を使用することによって、容器1が遠心方向に向けられた状態で回転するので、締固め後の試料用砂質土3の上端面6が略水平となる。よって、試料用砂質土3の上端面6の位置を水平に容器1に記入することができ、試料用砂質土3の体積Vの計測を高い精度で行うことができる。
【0036】
そして、以下の式より最大密度ρdmaxを算出する。
【数2】
【0037】
そして、相対密度Dは、次式で定義されるので、仮定された相対密度D、最小密度ρdmin、最大密度ρdmaxから乾燥密度ρを算出することができる。
【数3】
【0038】
次に、遠心法を用いて計測された最大密度ρdmaxの効果について検討する。
【0039】
細粒分含有率Fcがそれぞれ39.9%、34.9%の砂質土を使用し、遠心法によって乾燥密度ρを算定した結果を表1に示す。尚、試験は、1ケースにつき3本実施し,その平均値を示している。
【0040】
【表1】
【0041】
また、上記の乾燥密度ρの算出に併せて行ったJIS法、突き固めによる土の締固め試験(JIS A 1210)(以下、締固め法という)及び遠心法の各方法によって算出した最大密度ρdmaxの計測結果を比較した結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
さらに、図5は、JIS法、締固め法及び遠心法を用いて算定した乾燥密度ρと含水比の関係を示している。
【0044】
表2に示すように、遠心法によって計測した最大密度ρdmaxは、JIS法による場合に対し約1.2倍となっており、細粒分含有率Fc>30%の砂質土の場合においても締固め法と同等又はそれ以上の結果が得られた。
【0045】
また、図5に示すように、締固め法及び遠心法は、JIS法に比べて最大乾燥密度ρが大きくなり、含水比による影響も同じような傾向を示している。
【0046】
よって、本発明に係る遠心法は、砂質土の最大密度を計測する方法として、物理的に作り得る最大密度を少量の試料で簡易に把握することができる。
【0047】
尚、使用する遠心機の態様は、上述の実施例に限定されるものではなく、容器1に遠心力を作用させることができるものであればどのような態様であってもよい。
【0048】
また、試料用砂質土を投入した容器1に遠心力を作用させる条件は、上述の実施例に限定されず、状況に応じて遠心加速度及び回転時間を自由に設定することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 容器
2 キャップ
3 試料用砂質土
4 ローター
5 回転軸
6 上端面位置
図1
図2
図3
図4
図5