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特許7165051シフトマルチビーム素子を使用した角度サブピクセルレンダリングマルチビューディスプレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】シフトマルチビーム素子を使用した角度サブピクセルレンダリングマルチビューディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20221026BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20221026BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G09F9/00 361
G09F9/00 336D
F21S2/00 433
G02F1/13357
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018511678
(86)(22)【出願日】2016-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 US2016050451
(87)【国際公開番号】W WO2017213676
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2019-07-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】PCT/US2016/036495
(32)【優先日】2016-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2016/040584
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/214,970
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514274546
【氏名又は名称】レイア、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEIA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】ファッタル,デイヴィッド エー.
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】中塚 直樹
【審判官】濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-528156(JP,A)
【文献】特表2016-505898(JP,A)
【文献】特開2010-101912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
G09G 3/00-5/42
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビューディスプレイであって、
イトバルブの複数のサブアレイ備えるマルチビューピクセルと、
光を導波光として導くように構成される導光板、および前記導波光の一部を、異なる角度方向を有する放出光として放出するように構成される複数のマルチビーム素子を備え、前記複数のマルチビーム素子の各マルチビーム素子が、前記マルチビューピクセルのライトバルブの異なる1つのサブアレイに対応し、かつ各マルチビーム素子が、前記マルチビューピクセルの中心に向かって前記ライトバルブの前記異なる1つのサブアレイの中心に対する空間的ずれを有する、バックライトとを備え、
前記マルチビーム素子のサイズが、前記マルチビューピクセルの前記ライトバルブの複数のサブアレイ内のライトバルブのサイズの25パーセントと100パーセントとの間であり、各マルチビーム素子の前記空間的ずれによって前記放出光の角度的ずれが提供され、前記ライトバルブの複数のサブアレイが、前記放出光の前記角度的ずれの結果として前記マルチビューディスプレイの視距離内にマルチビュー画像の複数の指向性ビューを生成するように交差する複数の調光ビームを提供するように構成される、マルチビューディスプレイ。
【請求項2】
前記複数のマルチビーム素子のうちのマルチビーム素子が、前記導光板の表面に回折格子を備え、前記回折格子が、前記導波光の前記一部を、異なる回折角を有する前記放出光として回折により放出するように構成される、請求項1に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項3】
前記回折格子が、線形チャープ回折格子を含む、請求項2に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項4】
前記回折格子が、複数の回折格子を含む、請求項2または3に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項5】
前記複数のマルチビーム素子のうちの1つのマルチビーム素子が、マイクロ反射素子およびマイクロ屈折素子の一方または両方を備え、前記マイクロ反射素子が、前記導波光の前記一部を前記放出光として反射により放出するように構成され、かつ前記マイクロ屈折素子が、前記導波光の前記一部を前記放出光として屈折により放出するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項6】
前記マルチビーム素子の形状が、前記マルチビューピクセルの形状に相似である、請求項1からのいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項7】
前記マルチビーム素子が、前記導光板の第1の表面および第2の表面の一方に設けられ、前記マルチビーム素子が、前記第1の表面を通して前記導波光の一部を放出するように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項8】
前記導光板の入力に光学的に結合される光源をさらに備え、前記光源が、非ゼロ伝播角度を有する前記導波光、および所定のコリメーション率に従ってコリメートされる前記導波光の一方または両方を提供するように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項9】
記ライトバルブの前記1つのサブアレイの前記中心に対する前記空間的ずれが、前記ライトバルブの前記サイズの何分の一かに等しい距離を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項10】
マルチビューディスプレイであって、
複数のマルチビューピクセルを有し、各マルチビューピクセルが、ライトバルブの複数のサブアレイ備える、スクリーンと、
複数のマルチビーム素子を有し、各マルチビーム素子が、前記ライトバルブの1つのサブアレイに対応し、かつ前記マルチビューピクセルの中心に向かって前記ライトバルブの対応する前記1つのサブアレイの中心に対する空間的ずれを有し、前記マルチビーム素子のサイズが、前記マルチビューピクセルにおける前記ライトバルブの前記複数のサブアレイ内のライトバルブのサイズの25パーセントと100パーセントとの間である、バックライトとを備え、
前記複数のマルチビーム素子が、前記バックライトからの光を、異なる角度方向を有する放出光として放出するように構成され、かつ、前記複数のマルチビーム素子の前記空間的ずれが、前記ライトバルブの複数のサブアレイが前記マルチビューディスプレイの視距離内にマルチビュー画像の指向性ビューとして交差する複数の調光ビームを提供するように、前記放出された光の角度的ずれを提供するように構成される、マルチビューディスプレイ。
【請求項11】
前記バックライトが、
光を導波光として導くように構成される導光板であり、前記複数のマルチビーム素子が、前記導光板の表面に設けられる、導光板と、
前記導光板のエッジに連結される光源であって、前記導波光として前記導光板の内へ結合される光を発生する光源とを備え、
前記導光板の内へ結合された光の一部が、前記マルチビーム素子によって前記導光板から前記放出光として放出される、請求項10に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項12】
記光源が、非ゼロ伝播角度を有する前記導波光、および所定のコリメーション率に従ってコリメートされる前記導波光の一方または両方を提供するように構成される、請求項11に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項13】
前記複数のマルチビーム素子のうちのマルチビーム素子が、前記バックライトからの前記光を、前記放出光として回折により放出するように構成される回折格子を備える、請求項10から12のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項14】
前記回折格子が、複数の回折格子を含む、請求項13に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項15】
前記複数のマルチビーム素子のうちのマルチビーム素子が、マイクロ反射素子およびマイクロ屈折素子の一方または両方を備え、前記マイクロ反射素子が、前記バックライトからの前記光を前記放出光として反射により放出するように構成され、かつ前記マイクロ屈折素子が、前記バックライトからの前記光を前記放出光として屈折により放出するように構成される、請求項10から14のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項16】
記ライトバルブの前記1つのサブアレイの前記中心に対する前記マルチビーム素子の前記空間的ずれが、前記ライトバルブの前記複数のサブアレイ内の1つのライトバルブの前記サイズの何分の一かに等しい距離を含む、請求項10から15のいずれか一項に記載のマルチビューディスプレイ。
【請求項17】
マルチビュー画像を表示する方法であって、
光源によって発生される光を導光板内へ光学的に結合するステップと、
前記マルチビュー画像の一連の二次元(2D)画像のピクセル強度をマルチビューピクセルのライトバルブの複数のサブアレイのライトバルブに割り当てるステップと、
前記光の一部を前記導光板の複数のマルチビーム素子から放出するステップであって、各マルチビーム素子が、ライトバルブの1つのサブアレイに対応し、かつマルチビューピクセルの中心に向かって前記ライトバルブの前記1つのサブアレイの中心に対する空間的ずれを有する、ステップと、
前記放出された光部分を、前記割り当てられたピクセル強度に従って、前記マルチビューピクセルの前記ライトバルブの前記複数のサブアレイの複数のライトバルブを使用して変調するステップとを含み、
前記複数のライトバルブから出る複数の調光ビームが、前記複数のマルチビーム素子の空間的ずれに従って交差して、ライトバルブの複数のサブアレイから視距離で前記マルチビュー画像の指向性ビューを生成し、かつマルチビーム素子のサイズが、前記ライトバルブの前記複数のサブアレイ内のライトバルブのサイズの25パーセントと100パーセントとの間である、方法。
【請求項18】
前記マルチビュー画像の前記一連の2D画像のピクセル強度を割り当てるステップが、
同じピクセル座標を有する複数の前記2D画像のピクセルを前記マルチビューピクセルに割り当てるステップと、
連続する2D画像における前記同じピクセル座標を有する前記複数のピクセルのピクセル強度を、前記マルチビューピクセルの前記ライトバルブの前記複数のサブアレイのライトバルブに交互の順に割り当てるステップとを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記一連の2D画像の各2D画像が、1つまたは複数の三次元(3D)物体または3D場面の異なるビューである、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年6月8日出願の国際出願第PCT/US2016/36495号パンフレット、および2016年6月30日出願の国際出願第PCT/US2016/40584号パンフレットの優先権を主張し、その内容全体を参照により援用する。
【背景技術】
【0002】
電子ディスプレイは、多種多様な装置および製品のユーザに情報を伝達するためのほぼ遍在している媒体である。最も一般的に利用される電子ディスプレイは、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、電界発光ディスプレイ(EL)、有機発光ダイオード(OLED)およびアクティブマトリクスOLED(AMOLED)ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ(EP)、ならびに電気機械または電気流体光変調を利用する様々なディスプレイ(たとえば、デジタルマイクロミラーデバイス、エレクトロウェッティングディスプレイなど)を含む。一般に、電子ディスプレイは、アクティブディスプレイ(すなわち、光を放出するディスプレイ)、またはパッシブディスプレイ(すなわち、別の光源によって提供される光を変調するディスプレイ)に類別することができる。アクティブディスプレイの最も明らかな例には、CRT、PDPおよびOLED/AMOLEDがある。放出光を考えたとき通常パッシブであると分類されるディスプレイは、LCDおよびEPディスプレイである。パッシブディスプレイは、本質的な低消費電力を含むがこれに限定されない魅力的な動作特性をしばしば呈するとはいえ、光を放出することができないことを考えると、多くの実際的応用ではいくぶん使用が限定される。
【0003】
放出光に伴うパッシブディスプレイの限界を克服するために、多くのパッシブディスプレイは外部光源に連結される。連結された光源は、これらのそれ以外の点ではパッシブであるディスプレイが光を放出して、実質的にアクティブディスプレイとして機能するようにすることができる。そのような連結される光源の例がバックライトである。バックライトは、それ以外の点ではパッシブであるディスプレイの背後に配置されてパッシブディスプレイを照明する光源(しばしばパネルバックライト)とすることができる。たとえば、バックライトは、LCDまたはEPディスプレイに連結され得る。バックライトは、LCDまたはEPディスプレイを通過する光を放出する。放出光はLCDまたはEPディスプレイによって変調され、そして今度は、調光がLCDまたはEPディスプレイから放出される。しばしば、バックライトは、白色光を放出するように構成される。次いでカラーフィルタを使用し、白色光をディスプレイで使用される様々な色に変換する。カラーフィルタは、たとえば、LCDもしくはEPディスプレイの出力に(一般的でない)、またはバックライトとLCDもしくはEPディスプレイとの間に配置され得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示は以下の[1]から[20]を含む。
[1]マルチビューディスプレイであって、
ライトバルブの複数のサブアレイを有するマルチビューピクセルと、
光を導波光として導くように構成される導光板、および上記導波光の一部を、異なる角度方向を有する放出光として放出するように構成される複数のマルチビーム素子を備え、上記複数のマルチビーム素子の各マルチビーム素子が、上記マルチビューピクセルの異なるライトバルブの1つのサブアレイに対応し、かつ各マルチビーム素子が、上記マルチビューピクセルの中心に向かって上記ライトバルブの1つのサブアレイの中心に対する空間的ずれを有する、バックライトとを備え、
上記マルチビーム素子(the multibeam element)のサイズが、上記マルチビューピクセルの上記ライトバルブの複数のサブアレイ内のライトバルブ(a light valve)のサイズに相当し、かつ、上記放出光の角度的ずれが、各マルチビーム素子の上記空間的ずれによって提供され、上記ライトバルブの複数のサブアレイが、上記放出光の上記角度的ずれの結果として上記マルチビューディスプレイの視距離内にマルチビュー画像の指向性ビュー(directional views)を生成するように交差する調光ビーム(modulated light beams)を提供するように構成される、マルチビューディスプレイ。
[2]上記複数のマルチビーム素子のうちのマルチビーム素子(a multibeam element)が、上記導光板の表面に回折格子を備え、上記回折格子が、上記導波光の上記一部を、異なる回折角(different diffraction angles)を有する上記放出光として回折により放出するように構成される、上記[1]に記載のマルチビューディスプレイ。
[3]上記回折格子が、線形チャープ回折格子を含む、上記[2]に記載のマルチビューディスプレイ。
[4]上記回折格子が、複数の回折格子を含む、上記[2]に記載のマルチビューディスプレイ。
[5]上記複数のマルチビーム素子のうちのマルチビーム素子(a multibeam element)が、マイクロ反射素子およびマイクロ屈折素子の一方または両方を備え、上記マイクロ反射素子が、上記導波光の上記一部を上記放出光として反射により放出するように構成され、かつ上記マイクロ屈折素子が、上記導波光の上記一部を上記放出光として屈折により放出するように構成される、上記[1]に記載のマルチビューディスプレイ。
[6]上記マルチビーム素子の上記サイズが、上記ライトバルブの複数のサブアレイ内のライトバルブ(a light valve)の上記サイズの25パーセントと100パーセントとの間である、上記[1]に記載のマルチビューディスプレイ。
[7]上記マルチビーム素子の形状が、上記マルチビューピクセルの形状に相似である、上記[1]に記載のマルチビューディスプレイ。
[8]上記マルチビーム素子が、上記導光板の第1の表面および第2の表面の一方に設けられ、上記マルチビーム素子が、上記第1の表面を通して上記導波光の一部を放出するように構成される、上記[1]に記載のマルチビューディスプレイ。
[9]上記導光板の入力に光学的に結合される光源をさらに備え、上記光源が、非ゼロ伝播角度を有する上記導波光、および所定のコリメーション率に従ってコリメートされる上記導波光の一方または両方を提供するように構成される、上記[1]に記載のマルチビューディスプレイ。
[10]上記ライトバルブの1つのサブアレイの上記中心に対する上記空間的ずれが、上記ライトバルブの上記サイズの何分の一かに等しい距離を含む、上記[1]に記載のマルチビューディスプレイ。
[11]マルチビューディスプレイであって、
複数のマルチビューピクセルを有し、各マルチビューピクセルが、ライトバルブの複数のサブアレイを有する、スクリーンと、
複数のマルチビーム素子を有し、各マルチビーム素子が、ライトバルブの1つのサブアレイに対応し、かつ上記マルチビューピクセルの中心に向かって上記対応するライトバルブの1つのサブアレイの中心に対する空間的ずれを有し、上記マルチビーム素子(the multibeam element)のサイズが、上記マルチビューピクセルにおける上記ライトバルブの複数のサブアレイ内のライトバルブ(a light valve)のサイズに相当する、バックライトとを備え、
上記複数のマルチビーム素子が、上記バックライトからの光を、異なる角度方向を有する放出光として放出するように構成され、かつ、上記マルチビーム素子(the multibeam elements)の上記空間的ずれ(the spatial offsets)が、上記ライトバルブの複数のサブアレイが上記マルチビューディスプレイの視距離内にマルチビュー画像の指向性ビューとして交差する調光ビーム(modulated light beams)を提供するように、上記放出光の角度的ずれ(angular offsets)を提供するように構成される、マルチビューディスプレイ。
[12]上記バックライトが、
光を導波光として導くように構成される導光板であり、上記複数のマルチビーム素子が、上記導光板の表面に設けられる、導光板と、
上記導光板のエッジに連結される光源であって、上記導波光として上記導光板の内へ結合される光を発生する光源とを備え、
上記導光板の内へ結合された光の一部が、上記マルチビーム素子によって上記導光板から上記放出光として放出される、上記[11]に記載のマルチビューディスプレイ。
[13]上記光源が、非ゼロ伝播角度を有する上記導波光、および所定のコリメーション率に従ってコリメートされる上記導波光の一方または両方を提供するように構成される、上記[12]に記載のマルチビューディスプレイ。
[14]上記複数のマルチビーム素子のうちのマルチビーム素子(a multibeam element)が、上記バックライトからの上記光を、上記放出光として回折により放出するように構成される回折格子を備える、上記[11]に記載のマルチビューディスプレイ。
[15]上記回折格子が、複数の回折格子を含む、上記[14]に記載のマルチビューディスプレイ。
[16]上記複数のマルチビーム素子のうちのマルチビーム素子(a multibeam element)が、マイクロ反射素子およびマイクロ屈折素子の一方または両方を備え、上記マイクロ反射素子が、上記バックライトからの上記光を上記放出光として反射により放出するように構成され、かつ上記マイクロ屈折素子が、上記バックライトからの上記光を上記放出光として屈折により放出するように構成される、上記[11]に記載のマルチビューディスプレイ。
[17]上記ライトバルブの1つのサブアレイの上記中心に対する上記マルチビーム素子の上記空間的ずれが、上記ライトバルブの複数のサブアレイ内のライトバルブ(a light valve)の上記サイズの何分の一かに等しい距離を含む、上記[11]に記載のマルチビューディスプレイ。
[18]マルチビュー画像を表示する方法であって、
光源によって発生される光を導光板内へ光学的に結合するステップと、
上記マルチビュー画像の一連の二次元(2D)画像のピクセル強度をマルチビューピクセルのライトバルブの複数のサブアレイのライトバルブ(light valves)に割り当てるステップと、
上記光の一部を上記導光板の複数のマルチビーム素子から放出するステップであって、各マルチビーム素子が、ライトバルブの1つのサブアレイに対応し、かつマルチビューピクセルの中心に向かって上記ライトバルブの1つのサブアレイの中心に対する空間的ずれを有する、ステップと、
上記放出光部分を、上記割り当てられたピクセル強度に従って、上記マルチビューピクセルの上記ライトバルブの複数のサブアレイのライトバルブを使用して変調するステップとを含み、
上記ライトバルブから出る調光ビーム(modulated light beams)が、上記マルチビーム素子の空間的ずれに従って交差して、ライトバルブの複数のサブアレイから視距離で上記マルチビュー画像の指向性ビュー(directional views)を生成し、かつマルチビーム素子(a multibeam element)のサイズが、上記ライトバルブの複数のサブアレイ内のライトバルブ(a light valve)のサイズに相当する、方法。
[19]上記マルチビュー画像の上記一連の2D画像のピクセル強度を割り当てるステップが、
同じピクセル座標を有する複数の上記2D画像のピクセルを上記マルチビューピクセルに割り当てるステップと、
連続する2D画像における上記同じピクセル座標を有する上記ピクセル(the pixels)のピクセル強度(pixel intensities)を、上記マルチビューピクセルの上記ライトバルブの複数のサブアレイのライトバルブに交互の順に割り当てるステップとを含む、上記[18]に記載の方法。
[20]上記一連の2D画像の各2D画像が、1つまたは複数の三次元(3D)物体または3D場面の異なるビューである、上記[18]に記載の方法。
本明細書に記載の原理による例および実施形態の様々な特徴は、同様の参照数字が同様の構造要素を示す添付の図面に例示される様々な例と併せて以下の詳細な記載を参照して、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A-B】[図1A]マルチビューディスプレイ例によって生成されるマルチビュー画像の透視図を例示する。[図1B]マルチビューディスプレイから発する光ビームの角度成分の図形表現を例示する。
図2A-B】[図2A]マルチビューディスプレイ例の等角図を例示する。[図2B図2Aに例示されるマルチビューディスプレイの線I-Iに沿った横断面図を例示する。
図2C図2Aに例示されるマルチビューディスプレイの分解等角図を例示する。
図3図2Bに例示されるマルチビューディスプレイの、マルチビューディスプレイの導光板内へ光が結合されている横断面図を例示する。
図4】全内部反射の例を例示する。
図5A-B】透過モードおよび反射モードマルチビーム素子の例の横断面図を例示する。
図5C-D】複数の回折格子を含む透過モードおよび反射モードマルチビーム素子の例の横断面図を例示する。
図6A-C】マイクロ構造マルチビーム素子の例の横断面図を例示する。
図7】マルチビューディスプレイの複数組のライトバルブおよび対応する空間的偏差を有するマルチビーム素子の平面図を例示する。
図8】[図8A]四組のライトバルブおよび対応する空間的偏差を有するマルチビーム回折格子を備えるマルチビューピクセル例の平面図を例示する。[図8B図8Aに例示されるマルチビューピクセルの線II-IIに沿った横断面図を例示する。
図9】[図9A]三次元(3D)物体の例としての文字「R」を例示する。[図9B図9Aに例示される3D文字「R」の一連の二次元(2D)画像を例示する。
図10図9Bにおける8つの異なる2D画像の領域に対応する複数組のピクセル例の拡大図を例示する。
図11】マルチビューディスプレイの3つの隣接するマルチビューピクセルの横断面図を例示する。
図12】マルチビューディスプレイのマルチビューピクセルの複数組のライトバルブのライトバルブから発する指向性ピクセルを例示する。
図13】マルチビュー画像を表示する方法のフロー図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
一定の例および実施形態は、上述した図に例示される特徴に加えて、およびそれらの代わりに存在するものである他の特徴を有することができる。これらおよび他の特徴は、上述した図を参照して下記される。
【0007】
本明細書に記載の原理による例および実施形態は、シフトマルチビーム素子を使用したマルチビューディスプレイにおける角度サブピクセルレンダリングを提供する。本明細書に記載のように、マルチビューディスプレイは、マルチビュー画像の複数の異なるビューを異なるビュー方向に提供するように構成される電子ディスプレイまたはディスプレイシステムである。特に、用語「マルチビュー画像」に使用される用語「マルチビュー」は、異なる透視図を表す、または多くの異なるビューのビュー間の角度視差を含む複数またはいくつかの異なるビューを指す。加えて、用語「マルチビュー」は、2つより多い異なるビュー(すなわち、最低でも3つのビューおよび一般に3つより多いビュー)を含む。このように、「マルチビューディスプレイ」は、2つの異なるビューを提供または表示して場面または画像を表すのみである立体ディスプレイから区別される。しかしながら、マルチビュー画像およびマルチビューディスプレイが2つより多いビューを含むのに対して、マルチビュービューの2つのみを一度に見るように選択することによって(たとえば、1つの目につき1つのビュー)、マルチビュー画像は一対の立体画像として見ることができる(たとえば、マルチビューディスプレイ上で)ことに留意されたい。
【0008】
様々な実施形態によれば、マルチビューディスプレイは、複数のマルチビューピクセルを有するスクリーンを備える。各マルチビューピクセルは、複数組のライトバルブを備える。さらに、マルチビューディスプレイは、複数のマルチビーム素子が構成される導光板に光学的に結合される光源を備えるバックライトを含む。各マルチビーム素子は、一組のライトバルブに対応し、そして各マルチビーム素子のサイズは、一組のライトバルブ内のライトバルブのサイズに相当する。マルチビーム素子およびライトバルブを説明するために使用される用語「サイズ」は、たとえば、長さ、幅または面積とすることができる。加えて、各マルチビーム素子は、対応する一組のライトバルブの中心に関して、空間的にずらされ(is spatially offset)、または同等に空間的偏差を有する(has a spatial offset)。特に、マルチビーム素子は、マルチビューピクセルの略中心に向けて空間的偏差を有するようにすることができる。いくつかの実施形態において、マルチビーム素子の形状は、マルチビューピクセルの形状に相似である。
【0009】
様々な実施形態において、マルチビューピクセルの複数組のライトバルブは、対応するマルチビーム素子によるバックライトから外へ結合される光(the light coupled out of backlight)を変調する。マルチビーム素子の空間的偏差(ずれ)(spatial offset)は、複数組のライトバルブから出る調光ビームの角度的偏差(ずれ)(angular offset)を生じさせる。角度的偏差の結果として、各マルチビューピクセルと関連付けられる複数組のライトバルブから出る調光ビームはインターリーブ(interleave)(交差)して、スクリーンから視距離でマルチビュー画像を生じさせる。本明細書に記載の原理の様々な実施形態によれば、インターリーブ調光ビームを有するマルチビューディスプレイは、マルチビューディスプレイの「ネイティブ」解像度より高いと認められる解像度、すなわち、インターリーブ光ビームを伴わないマルチビューディスプレイの解像度より高い解像度を有するマルチビュー画像を提供することができる。特に、様々な実施形態によれば、ネイティブより高いと認められる解像度は、マルチビューディスプレイによって提供されるインターリーブ調光ビームに伴う角度サブピクセルレンダリングの結果であり得る。
【0010】
図1Aは、マルチビューディスプレイ例100によって生成されるマルチビュー画像の透視図を例示する。図1Aに例示されるように、マルチビューディスプレイ100は、複数の画像を同時に表示することができる。各画像は、異なるビュー方向または視点からの場面または物体の異なるビューを提供する。図1Aにおいて、ビュー方向は、マルチビューディスプレイ100から様々な異なる主角度方向に延びる矢印として例示される。異なるビューは、矢印の末端に陰影ポリゴンパネルとして例示される。たとえば、図1Aにおいて、4つのポリゴンパネル102~105が、異なる対応するビュー方向106~109からのマルチビュー画像の4つの異なるビューを表す。マルチビューディスプレイ100が、物体(たとえば、図9A~9Bに関して以下に例示されるように、三次元文字「R」)のマルチビュー画像を表示するために使用されると仮定する。観察者がマルチビューディスプレイ100を方向106に見ると、観察者には物体のビュー102が見える。しかしながら、観察者がマルチビューディスプレイ100をビュー方向109から見ると、観察者には同じ物体の異なるビュー105が見える。例示の簡略化のため、異なるビューが、図1Aにおいては、マルチビューディスプレイ100の上方にあるとして例示されることに留意されたい。実際には、異なるビューがマルチビューディスプレイ100のスクリーン上に実際に同時に表示され、観察者が単にマルチビューディスプレイ100の自分のビュー方向を変更することによって異なるビュー方向から物体または場面を見ることを可能にしている。
【0011】
ビュー方向、または同等にマルチビューディスプレイのビュー方向に対応する方向を有する光ビームは、一般に角度成分(α,β)によって与えられる主角度方向を有する。角度成分αは、光ビームの「俯仰成分」または「仰角」と称される。角度成分βは、光ビームの「方位成分」または「方位角」と称される。仰角αは、垂直面(たとえば、マルチビューディスプレイのスクリーンの平面に垂直)内の角度である一方、方位角βは、水平面(たとえば、マルチビューディスプレイのスクリーンの平面と平行)内の角度である。
【0012】
図1Bは、マルチビューディスプレイ100上の一点から、たとえば、図1Aにおけるビュー方向108などのビュー方向に対応する特定の主角度方向に放出される、または発する光ビーム110の角度成分(α,β)の図形表現を例示する。光ビーム110は、マルチビューディスプレイ100内の特定の原点「O」と関連付けられる中心線を有する。
【0013】
図2Aは、マルチビューディスプレイ例200の等角図を例示する。図2Bは、図2Aにおける線I-Iに沿ったマルチビューディスプレイ200の横断面図を例示する。図2Cは、マルチビューディスプレイ200の分解等角図を例示する。図2A~2Cに例示されるように、マルチビューディスプレイ200は、バックライト202と、次いでライトバルブのアレイを備えるスクリーン204とを備える。例示されるように、ライトバルブのアレイにおけるライトバルブは、四角によって表される。たとえば、ライトバルブは、四角206によって表される。バックライト202は、導光板208と、導光板208のエッジに光学的に結合される光源210とを備える。様々な実施形態によれば、光源210によって発生される光は、光源210に隣接した導光板208のエッジに沿って導光板208内へ結合される。
【0014】
導光板208は、実質的に平面で平行な第1および第2の表面212および214をそれぞれ有するプレートまたはスラブ光導波路とすることができる。導光板208は、いくつかの異なる光学的に透明な材料のいずれか1つを含む、あるいは、石英ガラス、アルミノけい酸アルカリガラス、ほうけい酸ガラスなどの、様々な種類のガラス、ならびに、ポリ(メタクリル酸メチル)もしくはアクリルガラス、およびポリカーボネートなどの、実質的に光学的に透明なプラスチックもしくはポリマーの1つまたは複数を含むがこれらに限定されない各種の誘電材料のいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態において、導光板208は、導光板208の表面の少なくとも一部上のクラッド層(例示せず)を含んで、全内部反射(TIR)をさらに促進することができる。
【0015】
光源210は、1つまたは複数の光学放出体を備えることができる。光学放出体は、発光ダイオード(LED)、レーザ、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード、プラズマベースの光学放出体、蛍光ランプ、白熱電球、および何らかの他の光源とすることができる。光源210によって生成される光は、特定の波長とすることができ(すなわち、特定の色とすることができ)、または波長の範囲(たとえば、白色光)にわたる、またはそれを含むことができる。いくつかの実施形態において、光源210は、各組の光学放出体がその他の組の光学放出体によって生成される波長または波長の範囲と異なる特定の波長または波長の範囲の光を生成する複数組の光学放出体を含むことができる。たとえば、光源210は、1つまたは複数の各組の光学放出体が原色(たとえば、赤、緑および青)の1つを生成する複数組の光学放出体を備えることができる。
【0016】
図2A~2Cに例示されるように、ライトバルブのアレイは、破線四角によって画定される複数組のライトバルブに仕切られる。図2A~2Cの例では、各組のライトバルブは、16個のライトバルブの4×4サブアレイを含む。たとえば、一組のライトバルブ216は、破線四角によって画定されるライトバルブの4×4アレイを含む。各組のライトバルブは、導光板208のマルチビーム素子218に対応する。図2A~2Cの例では、マルチビーム素子218は、導光板208の第1の表面212上の四角形状の陰影パッチによって表される。様々な実施形態によれば、各マルチビーム素子218のサイズは、ライトバルブ206のサイズに相当する。たとえば、マルチビーム素子218のサイズは、ライトバルブ206のサイズの約1/2と約2倍との間とすることができ、たとえば、以下の式(2)を参照されたい。
【0017】
マルチビューディスプレイの例および実施形態が、図2A~2Cに例示されるように、ライトバルブの4×4サブアレイ(すなわち、16個のライトバルブのサブアレイ)を含む複数組のライトバルブを参照して本明細書に例示および記載されるが、複数組のライトバルブを形成するために使用されるライトバルブの数は、ライトバルブのN×Nサブアレイとすることができ、ここでNが2以上の整数であることに留意されたい。複数組のライトバルブは、ライトバルブの矩形N×Mサブアレイとすることもでき、ここでNは2以上の整数であり、Mは0以上の整数である。
【0018】
複数組のライトバルブは、グループ化されてマルチビューピクセルのアレイのマルチビューピクセルを形成することができる。「マルチビューピクセル」は、マルチビューディスプレイの同様の複数の異なるビューの各々における「ビュー」ピクセルを表す複数組のライトバルブである。特に、マルチビューピクセルは、マルチビュー画像の異なるビューの各々におけるビューピクセルに対応する、またはそれを表す複数組のライトバルブを有することができる。その上、マルチビューピクセルの複数組のライトバルブは、複数組のライトバルブの各々が異なるビューの対応する1つの所定のビュー方向と関連付けられるという点で、いわゆる「指向性ピクセル」である。さらに、様々な例および実施形態によれば、マルチビューピクセルの複数組のライトバルブによって表される異なるビューピクセルは、異なるビューの各々における同等の、または少なくとも実質的に同様の位置または座標を有することができる。たとえば、図2Aおよび2Cに例示されるスクリーン204の24組のライトバルブは、グループ化されて6つのマルチビューピクセルのアレイを形成することができ、各マルチビューピクセルが四組のライトバルブの2×2アレイを備える。図2Cにおいて、四組のライトバルブの2×2アレイを備えるマルチビューピクセル例が、破線四角220によって画定される。一定の実施形態において、マルチビューピクセルのアレイのマルチビューピクセルは、九組のライトバルブの3×3アレイ、16組のライトバルブの4×4アレイ、および25組のライトバルブの5×5アレイから形成されることができ、または含むことができる。他の実施形態において、マルチビューピクセルのアレイのマルチビューピクセルは、複数組のライトバルブの矩形アレイから形成されることができ、または含むことができる。一般に、マルチビューピクセルのアレイのマルチビューピクセルは、K×L組のライトバルブのK×Lアレイから形成されることができ、または含むことができ、ここでKは2以上の整数であり、Lは1以上の整数である。
【0019】
図3は、光源210によって生成される光302が導光板208に入力される、またはその中へ結合されるマルチビューディスプレイ200の横断面図を例示する。光302は、導光板208の第1および第2の表面212および214に関して非ゼロ伝播角度(たとえば、約30~35度)で導光板208内に結合される。マルチビューディスプレイ200は、1つまたは複数のレンズ、ミラーまたは同様の反射体(たとえば、チルトコリメーティング反射体)を含むことができ、そして光源210によって生成される光を非ゼロ伝播角度で導光板208内へ結合するために、1つまたは複数のプリズム(例示せず)を使用することができる。光302は、コリメート光302として、たとえば、光302のコリメートビームとして導光板208に入力される、またはその中へ結合することができる。光302がコリメート光ビーム内でコリメートされる程度は、σによって示されるコリメーション率によって表される。コリメーション率は、コリメート光ビーム内の光線の角拡散を定義する。たとえば、コリメーション率σは、コリメート光302のコリメートビーム内の大半の光線が特定の角拡散内(たとえば、導波光のコリメートビームの中心または主角度方向のまわりに+/-σ度)であることを明示することができる。コリメート光302の光線は、角度に関してガウス分布を有することができ、そして角拡散は、コリメート光ビームのピーク強度の半分によって求められる角度とすることができる。
【0020】
導光板208は、導光板208の第1の表面212と第2の表面214との間でTIRに従って非ゼロ伝播角度で光302を導くように構成される。図4は、導光板208内で伝播することができ、かつ導光板208の表面402(たとえば、表面402は第1の表面212または第2の表面214とすることができる)の同じ点に入射する2つの光線の軌跡を例示する。例示されるように、表面402は、導光板208と空気(または別の材料)404との間の境界であり、導光板208より低い屈折率を有する。一点鎖線406は表面402に対する法線方向を表し、θは法線方向406に対する臨界角を示す。入射角は、法線方向406に関して測定される。臨界角θより大きい角度で表面402に入射する光はTIRを受ける。たとえば、方向矢印408によって表される光は臨界角θより大きい角度で表面402に入射するので、方向矢印410によって表されるように、光はTIRによって内部反射される。方向矢印412によって表されるように、臨界角θより小さい角度で表面402に入射する光は、方向矢印414によって表されるように、表面402を通して透過される。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、マルチビーム素子218は、入射光を回折するように構成される回折格子を備えることができる。特に、マルチビーム素子218は、周期的または準周期的に配列される複数の回析フィーチャを備えることができる。たとえば、マルチビーム素子218は、一次元(1D)アレイに配列される複数の回析フィーチャ(たとえば、材料表面の複数の溝または稜)を含むことができる。他の例では、マルチビーム素子218は、回析フィーチャの二次元(2D)アレイとすることができる。マルチビーム素子218は、導光板208の材料表面の隆起または穴の2Dアレイとすることができる。マルチビーム素子218は、様々な実施形態に従って、ウェットエッチング、イオンミリング、フォトリソグラフィ、異方性エッチングおよびプラズマエッチングを含むがこれらに限定されない、多くの異なるマイクロ加工技術のいずれか1つを使用して形成または製造することができる。
【0022】
光が導光板208内からマルチビーム素子218に入射すると、回折格子を備えるマルチビーム素子218は、マルチビーム素子218を通して導光板208から光を回折により外へ結合する(diffractively coupling out)ことによって透過回折を提供する。マルチビーム素子218を通して回折光を透過するように構成されるマルチビーム素子218は、本明細書における定義によれば、「透過モード」マルチビーム素子と称される。他方、入射光を回折も反射もする(反射回折)ように構成されるマルチビーム素子218は、本明細書における定義によれば「反射モード」マルチビーム素子と称される。一般に、マルチビーム素子218は、回折によって、またはそれを使用して(すなわち、回析角度で)光を再方向付け、またはその角度を変更もする。特に、回折は、マルチビーム素子218によって外へ結合される光を、マルチビーム素子218に入射する光(すなわち、入射光)の伝播方向と異なる伝播方向に伝播するようにする。回折による光の伝播方向の変化は、「回析再方向付け」と称される。結果として、マルチビーム素子218は、マルチビーム素子218に入射する光を回折的に再方向付けする回析フィーチャを含む構造であることができ、そして導光板208内で伝播する光がマルチビーム素子218に入射する場合、マルチビーム素子218は、同じく導光板208から光を回折により外へ結合することができる。マルチビーム素子によって導光板208から回折散乱される光の形状は、回析フィーチャの構造および構成に依存する。
【0023】
いくつかの実施形態において、マルチビーム素子218は、回折格子の全体を通して実質的に一定または不変の回析フィーチャ間隔を有する回折格子を備えることができる。図5Aは、導光板208の第1の表面212に形成された、実質的に一定または不変の回析フィーチャ間隔を有する回折格子として構成される透過モードマルチビーム素子502の横断面図を例示する。回析フィーチャ間隔dは、マルチビーム素子502にわたって一定または不変である。マルチビーム素子502に入射する光は、マルチビーム素子502を通して回折透過されるか、または導光板208から回折により外へ結合され、そしてマルチビーム素子502は、「透過モード」マルチビーム素子502と称される。回析フィーチャ間隔dは、サブ波長(すなわち、光の波長より小さい)とすることができる。マルチビーム素子502と相互作用する特定の波長λの光を考える。光がマルチビーム素子502から出るときに、光は回析フィーチャによって透過され、および異なる方向に散乱されるが、しかし光波は異なる位相でマルチビーム素子502から出るので、波は建設的および破壊的に干渉し、波が建設的に干渉する光ビームを生じさせる。たとえば、隣接する回析フィーチャから出る波間の光路差が波長の半分(すなわち、λ/2)であるとき、波は位相を異にして出て、破壊的干渉を通じて相殺され得る。他方、隣接する回析フィーチャから出る波間の光路差が波長λに等しいとき、波は建設的に干渉して、最大強度で出る光ビームを生じさせる。マルチビーム素子502から最大強度で出る光は、図5Aに方向矢印504によって表され、そして各光線がマルチビーム素子502から法線方向506に関して第1の表面212に出る回折角は、回折方程式に従って計算され得る。
【0024】
【数1】
式中
mは回折次数(すなわち、m=…-2,-1,0,1,2,…)であり、
nは導光板208の屈折率であり、
θiは法線方向506に対する光の入射角であり、
θmは導光板208から回折により外へ結合されるm番目の光線の法線方向506に対する回折角である。
【0025】
図5Bに例示される別の例では、マルチビーム素子508は、導光板208の第2の表面214に形成される回折格子とすることができる。マルチビーム素子508は、回折格子の回析フィーチャおよび溝を埋めて「反射モード」マルチビーム素子508を生じさせる、銀、アルミニウムまたは別の反射材料などの反射コーティング510を含む。回折格子は、反射コーティング510によって第1の表面212に向けて反射され、そして回折により外へ結合された光514として出る回折光512を生じさせる。第1の表面212に沿って導光板208から出る光514は、導光板208および周囲空気の屈折率間の差のために屈折される。回析フィーチャは、屈折を反映するように構成されてもよい。他の実施形態(例示せず)において、マルチビーム素子218は、導光板208の第1および第2の表面212および214間に設けられる回折格子とすることができる。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、マルチビーム素子218は、チャープ回折格子を備えることができる。本明細書における定義によれば、チャープ回折格子の回析フィーチャ間隔は、チャープ回折格子の範囲または長さにわたって変化する。いくつかの実施形態において、チャープ回折格子は、距離とともに線形に変化する回析フィーチャ間隔のチャープを有する、または呈することができる。このように、チャープ回折格子は、本明細書における定義によれば、「線形チャープ」回折格子である。他の実施形態において、チャープ回折格子は、回析フィーチャ間隔の非線形チャープを呈することができる。指数チャープ、対数チャープ、または別の、実質的に不均一もしくはランダムであるが、それでも単調に変化するチャープを含むがこれに限定されない、様々な非線形チャープを使用することができる。正弦波チャープまたは三角チャープまたはのこぎり波状チャープなどであるがこれに限定されない、非単調チャープを利用することもできる。非線形チャープのいずれかの組合せも利用することができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、マルチビーム素子218は、様々な回析特性を有する複数の回折格子を備えることができる。図5Cは、複数の回折格子518~521を備えるマルチビーム素子例516の横断面図を例示する。図5Dは、複数の回折格子526~532を備えるマルチビーム素子例524の平面図を例示する。図5Cにおける横断面図は、マルチビーム素子516の4つの回折格子518~521を通る横断面図を表すことができる。図5Cに例示されるように、マルチビーム素子516の複数の回折格子518~521は、導光板208の第1の表面212に提供され、各回折格子は異なるフィーチャ間隔dを有する。さらに、図示されるように、第1の回折格子518は、マルチビーム素子516内で第2の回折格子519から独立しており、かつそれに隣接している。マルチビーム素子516および524のサイズが、図5Cおよび5D両方においてsによって示される一方、回析マルチビーム素子524の境界が、図5Dに破線を使用して例示される。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、マルチビーム素子内の回折格子の差分密度は、マルチビーム素子516および524のそれぞれの異なる回析マルチビーム素子によって回折により外へ結合される光の相対強度を制御するように構成されてもよい。言い換えれば、回析マルチビーム素子516および524は、その回折格子の異なる密度を有することができ、そして異なる密度(すなわち、回折格子の差分密度)は、外へ結合された光の相対強度を制御するように構成されてもよい。特に、回折格子複数性内でより少ない回折格子を有する回析マルチビーム素子516は、比較的より多くの回折格子を有する別のマルチビーム素子より低い強度(またはビーム密度)を有する外へ結合された光を生成することができる。回折格子の差分密度は、たとえば、回折格子に欠ける、または、なしである、マルチビーム素子524内の図5Dに図示される位置533および534などの位置を使用して提供することができる。マルチビーム素子516および524は、図5Bを参照して上記したように、溝を埋め、かつ回析フィーチャを覆って複数の回折格子を備える反射モードマルチビーム素子を形成する反射材料を用いて、導光板208の第2の表面214に形成することもできる。
【0029】
他の実施形態によれば、マルチビーム素子218は、マイクロ屈折素子を備えることができる。図6Aは、マルチビーム素子602がマイクロ屈折素子を備える導光板208の横断面図を例示する。様々な実施形態によれば、マイクロ屈折マルチビーム素子602は、導光板208から異なる角度にわたって光302の一部を外へ結合された光604として屈折により外へ結合する(refractively couple out)ように構成される。マイクロ屈折マルチビーム素子602は、半球形、角胴形または角柱形(すなわち、斜面を有する形状)を含むがこれに限定されない様々な形状のいずれかを有することができる。様々な実施形態によれば、マイクロ屈折マルチビーム素子602は、例示されるように、導光板208の第1の表面212から伸長または突出することができるか、または第1の表面212のキャビティもしくは凹部とすることができる(例示せず)。いくつかの実施形態において、マイクロ屈折マルチビーム素子602は、導光板208としての材料を備えることができる。他の実施形態において、マイクロ屈折マルチビーム素子602は、第1の表面212に隣接した、およびいくつかの例では、それと接触した別の材料を備えることができる。
【0030】
さらに他の実施形態によれば、マルチビーム素子218は、マイクロ反射素子を備えることができる。図6Bは、マルチビーム素子608が第2の表面214に沿って設けられる角柱形状のマイクロ反射素子を備える導光板208の横断面図を例示する。図6Cは、マルチビーム素子610が第2の表面214に沿って設けられる半球形のマイクロ反射素子を備える導光板208の横断面図を例示する。マイクロ反射マルチビーム素子608および610は、反射材料もしくはその層(たとえば、反射金属)を利用する反射体またはTIRに基づく反射体を含むことができるが、これに限定されない。他の実施形態(例示せず)において、マイクロ反射マルチビーム素子は、第1および第2の表面212および214間に導光板208内に設けることができる。
【0031】
特に、図6Bは、導光板208内に伸長する反射小面が構成された角柱形状のマイクロ反射マルチビーム素子608を例示する。角柱状のマイクロ反射マルチビーム素子608の小面は、導光板208から光612の一部を反射(すなわち、反射により外へ結合(reflectively couple))するように構成される。小面は、光302の伝播方向に対して斜めにされるか、または傾けられ(すなわち、傾斜角を有し)て導光板208から光の一部を反射することができる。小面は、導光板208内に反射材料を使用して形成することができる(たとえば、図6Bに例示されるように)か、または、様々な実施形態によれば、第2の表面214の角柱状のキャビティの表面とすることができる。角柱状のキャビティが利用されると、キャビティ表面での屈折率変化が反射(たとえば、TIR)を提供することができるか、または、小面を形成するキャビティ表面が反射材料で被覆されて、たとえば、反射を提供することができる。
図6Cにおいて、例示された半球形のマイクロ反射素子610は、実質的に滑らかな曲面を有する。半球形のマイクロ反射マルチビーム素子610の面曲率は、光302が曲面と作る入射点に応じて、光302の一部を反射する。図6Cにおける半球形のマイクロ反射マルチビーム素子610は、導光板208内に伸長する反射材料か、または、図6Cに図示されるように、第2の表面214に形成されるキャビティ(たとえば、半円形のキャビティ)とすることができる。図6Bおよび6Cにおいて、反射光612および614の主角度方向が、一般に、外へ結合された光616および618が空気(または同様の包囲物質)中へ第1の表面212を出る際に、屈折率の変化により屈折されることに留意されたい。
【0032】
図2Cを参照して上記したように、マルチビューピクセルのアレイは、複数組のライトバルブのアレイから形成することができる。マルチビューピクセルの各組のライトバルブと関連付けられるマルチビーム素子は、マルチビューピクセルの中心に向けて空間的偏差を有し得る。
【0033】
図7は、マルチビューディスプレイ700の16組のライトバルブ例および対応するマルチビーム素子の平面図を例示する。例示されるように、マルチビューディスプレイ700における各組のライトバルブは、ライトバルブの4×4アレイを含み、破線四角によって画定される。たとえば、一組のライトバルブ702は、ライトバルブの4×4アレイを含む。図7において、16組のライトバルブ例は、グループ化されて4つのマルチビューピクセルを形成し、各マルチビューピクセルが四組のライトバルブの2×2アレイを備える。たとえば、四組のライトバルブ702~705がグループ化されて、マルチビューピクセル706を形成する。図7は、四組のライトバルブ702~705から形成されるマルチビューピクセル706の拡大図を含む。マルチビューピクセル706の拡大図は、対応する組のライトバルブ702~705と関連付けられる4つのマルチビーム素子708~711がマルチビューピクセル706の中心712に向けて空間的にずらされていることを表す。
【0034】
様々な実施形態によれば(たとえば、図7に例示されるように)、マルチビーム素子(たとえば、例示されたマルチビーム素子708~711)のサイズは、ライトバルブのサイズに相当する。用語「サイズ」は、長さ、幅または面積を指すことができる。マルチビーム素子のサイズは、マルチビーム素子の一辺の長さsによって、またはマルチビーム素子の面積s×sによって与えられ得る(図5~6では、マルチビーム素子のサイズはsによって示される。)。図7では、ライトバルブの長さがdxによって示され、そしてライトバルブのサイズは、長さdxによって、またはライトバルブの面積、たとえば、dx×dxによって与えられ得る。本明細書における定義によれば、マルチビーム素子のサイズは、マルチビーム素子サイズがライトバルブのサイズ(たとえば、dx)およびマルチビューピクセルにおけるライトバルブの組数の両方の関数であるという点で、ライトバルブにサイズが「相当する」。たとえば、マルチビューピクセルにおける複数組のライトバルブのp×pアレイの場合、マルチビーム素子サイズは、ライトバルブサイズdxをpの約1/2(すなわち、p/2)で割ることによって与えられ得る。そのため、マルチビューピクセルにおける複数組のライトバルブの2×2アレイの場合(たとえば、図7および8Aに例示されるように)、マルチビーム素子のサイズは、ライトバルブのサイズの約25パーセント(25%)と約100パーセント(100%)との間とすることができる。言い換えれば、いくつかの実施形態によれば、ライトバルブのサイズdxに対するマルチビーム素子のサイズは、以下の条件を充足することができる:
【0035】
【数2】
【0036】
他の例では、たとえば、2×2アレイの例の場合、マルチビーム素子サイズは、ライトバルブサイズの約30パーセント(30%)もしくはライトバルブサイズの約40パーセント(40%)より大きい、またはライトバルブサイズの約50パーセント(50%)より大きく、そしてマルチビーム素子は、ライトバルブサイズの約100パーセント(100%)より小さい、またはライトバルブサイズの約80パーセント(80%)より小さい、またはライトバルブサイズの約70パーセント(70%)より小さい、またはライトバルブサイズの約60パーセント(60%)より小さい。そのため、「相当サイズ」によって、マルチビーム素子サイズは、複数組のライトバルブの2×2アレイの場合、2で割ったライトバルブサイズの約75パーセント(75%)と約150(150%)との間とすることができる。別の例では、マルチビーム素子がライトバルブにサイズが相当することができれば、マルチビューピクセル内の複数組のライトバルブのp×pアレイにおいて、マルチビーム素子サイズは、ライトバルブの組数pの1/2で割ったライトバルブサイズの約125パーセント(125%)と約85パーセント(85%)との間である。いくつかの実施形態によれば、マルチビーム素子の相当サイズおよびライトバルブサイズは、マルチビューディスプレイのビュー間の暗帯を低減、またはいくつかの例では最小化すると同時に、マルチビューディスプレイのビュー間の重なりを低減、またはいくつかの例では最小化するように選ぶことができる。
【0037】
図7の例では、各マルチビーム素子708~711は、マルチビューピクセルの中心に向けてxおよびy方向に距離δだけ空間的偏差を有し、ここで距離δは、ライトバルブのプラスまたはマイナスのサイズまたは長さdxとすることができる(たとえば、-dx≦δ≦dx)。たとえば、空間的偏差距離δは、図7に例示されるように、複数組のライトバルブの2×2アレイの場合、2で割った(dx/2)約dxのプラスまたはマイナスとすることができる。マルチビューディスプレイ700の平面図は、3つの他のマルチビューピクセル716~718の四組のライトバルブに対応する4つのマルチビーム素子も、3つのマルチビューピクセル716~718の中心に向けて空間的偏差を有していることも表す。複数組のライトバルブ702~706などの、4×4の組のライトバルブの各々は、16個の異なるビューを生じさせる。結果として、マルチビューピクセル706、716~718の各々は、おおよそ4×dxの認められる解像度を有する64個のビューを生じさせる。他の実施形態において、対応する一組のライトバルブの中心からマルチビューピクセルの中心に向かうマルチビーム素子の空間的偏差の距離は、xおよびy方向の一方のみにあることができる。図7がマルチビーム素子708~711およびライトバルブ(たとえば、ライトバルブ716~718)の相対サイズの一定比率の描写を提供するものと意図されるのではなく、それよりも単に様々な例示された素子の一定の関係側面を提供するだけであることに留意されたい。
【0038】
マルチビューピクセルの対応する組のライトバルブに対するマルチビーム素子の空間的偏差は、導光板から外へ結合される光に、マルチビーム素子自身によって提供される異なる角度に加えて角度的偏差(またはチルト)を提供するように構成される。図8Aは、破線四角によって識別される四組のライトバルブ802~805および4つの対応するマルチビーム素子806~809を備えるマルチビューピクセル例800の平面図を例示する。図8Bは、図8Aに例示される線II-IIに沿ったマルチビューピクセル800の横断面図を例示する。図8Aにおいて、マルチビーム素子806~809は、導光板208から異なる角で光を外へ結合するように構成される。さらに、例示されたマルチビーム素子806~809は、方向矢印812によって示されるように、マルチビューピクセル800の中心810に向けて空間的偏差を有する図8Bにおいて、導光板208内を伝播する光302は、方向矢印816および817によって表されるように、マルチビーム素子807および808に入射する。マルチビーム素子807および808は、図5A~5Dおよび6A~6Cを参照して上記したように、異なる角で光を外へ結合するように構成される。図8がマルチビーム素子806~809およびライトバルブ(たとえば、ライトバルブ716~718)の相対サイズの一定比率の描写を提供するものと意図されるのではなく、それよりも単に様々な例示された素子の一定の関係側面を提供するだけであることに留意されたい。
【0039】
図8Bにおいて、方向矢印818は、マルチビーム素子807から外へ結合された光の経路を表す。経路が方向矢印818によって表される外へ結合された光は、一組のライトバルブ803のライトバルブを通過する。さらに図8Bにおいて、方向矢印819は、マルチビーム素子808から外へ結合された光の経路を表す。経路が方向矢印819によって表される外へ結合された光は、例示されるように、一組のライトバルブ804のライトバルブを通過する。マルチビーム素子の(または同等に仮想光源の)空間的偏差は、各組のライトバルブの中心に設けられるスクリーン204に対する外へ結合された光の法線方向に関して角度的偏差dθを生じさせる。一般に、角度的偏差dθは、特定の一組のライトバルブと関連付けられる外へ結合された光の光ビームのすべてに実質的に等しく当てはまる。たとえば、図8Bにおいて、一点鎖線820および821は、それぞれ、複数組のライトバルブ803および804の中心でスクリーン204に対する法線方向を表す。一点鎖線823は、マルチビーム素子807の中心に対する法線方向を表す。マルチビーム素子807から異なる角で外へ結合された光は、法線方向823に関してφで表され、一組のライトバルブ803の法線方向820に関して角度的偏差dθを含む。マルチビーム素子807および808が図5A~5Dを参照して上記した回折格子として構成される一定の実施形態において、異なる角度は回折角である(すなわち、φ=θm)。
【0040】
図8Bに例示されるように、マルチビーム素子から外へ結合された光は、対応する一組のライトバルブのライトバルブを通過する。マルチビューピクセルの複数組のライトバルブから出る調光ビームが、スクリーン204を過ぎた距離でインターリーブする。複数組のライトバルブのライトバルブは、図1Aを参照して上記したマルチビュー画像の異なるビューを生じさせるために変調され得るが、図9~12を参照して下記される。
【0041】
図9~12は、マルチビューピクセルの複数組のライトバルブを使用してマルチビュー画像の異なるビューを投影することを例示する。図9Aは、マルチビュー画像の異なるビューに投影されることになる三次元(3D)物体の例としての文字「R」を例示する。文字Rはxy平面に在り、かつz方向に突出する。1~8とラベル付けした方向矢印は、xz平面に在る曲線902に沿った3D文字Rの8つの異なるビュー方向を表す。図9Bは、1~8とラベル付けした3D文字「R」の一連の8つの異なる二次元(2D)画像を例示する。各2D画像は、図9Aに例示される文字Rの8つの異なるビューの1つを表示する。図9Bの画像1~8は、観察者の目904が曲線902に沿って対応するビュー方向に3D文字Rを眺めたときに、観察者に見えるであろう文字Rの別個のビューを表す。言い換えれば、画像1~8は、曲線902に沿って2D文字Rのマルチビュー画像を形成する。たとえば、図9Bの2D画像3は、図9Aのビュー方向3の文字Rのビューを表示する。一連の画像1~8は、連続的であるか、または図9Aのビュー方向1~8に対応する空間遷移で配列される。たとえば、図9Bにおける画像3から画像2または4いずれかへの観察者の注意の変化は、図9Aにおけるビュー方向3からビュー方向2または4いずれかへの変化に同等である。
【0042】
図9Bに例示される2D画像の各々は、一組のピクセルを含む。各ピクセルは、強度および画像における対応するアドレスまたは座標位置を有する(たとえば、ピクセルは(x,y,ピクセル強度)に等しい)。図10は、図9Bの画像1~8の領域911~918に対応する八組のピクセル例1001~1008の拡大図を例示する。たとえば、図10の一組のピクセル1001は、図9Bにおける画像1の領域911におけるピクセルの拡大図である。図10において、複数組のピクセル1001~1008は、図9Bの対応する画像1~8における同じアドレスまたは座標位置を有する。たとえば、一組のピクセル1001における1a、1bおよび1cとラベル付けした隣接するピクセルのトリプレットは、一組のピクセル1005における5a、5bおよび5cとラベル付けした隣接するピクセルのトリプレットと同じ座標(x,y)を有する。簡略化のために、図10の例では、ピクセルの強度は2値であり(すなわち、黒および白)、斜線を付したピクセルが図9Bの領域911~918における文字Rのエッジに対応する。他の実施形態において、ピクセルは、赤、緑および青などのカラーピクセルとすることができ、そして強度は、各ピクセルから放出される光量を制御するために変調され得る。
【0043】
図11は、上記したマルチビューディスプレイ200の3つの隣接するマルチビューピクセル1101~1103の横断面図、およびマルチビューピクセルのライトバルブへの2D画像のピクセル強度の割当てを例示する。破線1104および1105は、マルチビューピクセル1101~1103間の境界を表す。点線1106~1108は、マルチビューピクセル1101~1103を構成する複数組のライトバルブ間の境界を表す。たとえば、マルチビューピクセル1101は、一組のライトバルブ1109および一組のライトバルブ1110を備える。図11は、マルチビューピクセル1101~1103の複数組のライトバルブのライトバルブの行への図10に例示される隣接するピクセルのトリプレットのピクセル強度の割当てを例示する。図11に例示されるように、画像1~8における同じ座標を有する隣接するピクセルのトリプレットのピクセルは、同じマルチビューピクセル画像に割り当てられる。たとえば、図11において、ピクセル1a、2a、3a、4a、5a、6a、7aおよび8aは、図10の画像1~8における同じ座標を有し、マルチビューピクセル1101に割り当てられる。ピクセル1b、2b、3b、4b、5b、6b、7bおよび8bは、画像1~8における同じ座標を有し、マルチビューピクセル1102に割り当てられる。ピクセル1c、2c、3c、4c、5c、6c、7cおよび8cは、画像1~8における同じ座標を有し、マルチビューピクセル1103に割り当てられる。連続する画像における同じ座標を有するピクセルの強度は、マルチビューピクセルの複数組のライトバルブのライトバルブに交互の順に割り当てられる。方向矢印1112~1115などの方向矢印は、マルチビューピクセル1102に割り当てられるピクセルの強度が二組のライトバルブ1109および1110のライトバルブに割り当てられる交互の順を表す。たとえば、方向矢印1112は、一組のライトバルブ1109における第1のピクセルへの画像1におけるピクセル1bのピクセル強度の割当てを表す。方向矢印1113は、一組のライトバルブ1110における第1のピクセルへの画像2(画像1に隣接)におけるピクセル2bのピクセル強度の割当てを表す。方向矢印1114は、一組のライトバルブ1109における第2のピクセルへの画像1におけるピクセル3bのピクセル強度の割当てを表す。方向矢印1115は、一組のライトバルブ1110における第2のピクセルへの画像2におけるピクセル4bのピクセル強度の割当てを表す。画像1~8におけるピクセルの強度は、ライトバルブの強度を変調してピクセルの強度と実質的に一致させることによって、一組のライトバルブのライトバルブに割り当てられ得る。たとえば、複数組のライトバルブ1109および1110のライトバルブ1116および1117は、それぞれ、ピクセル1bおよび6bの強度に実質的に一致するように変調される。
【0044】
導光板のマルチビーム素子から外へ結合された光は、対応する一組のライトバルブに伝播する。一組のライトバルブの変調されたライトバルブを通して透過された光は、マルチビューディスプレイ200のスクリーン204から離れて伝播する調光ビームを生じさせる。図11を参照して上記したようにマルチビューピクセルの複数組のライトバルブによって生じられた一定の調光ビームは、スクリーン204から離れてインターリーブし、それによってマルチビュー画像における画像の指向性ピクセルを生じさせる。
【0045】
図12は、たとえば、図11のマルチビューピクセル1102の複数組のライトバルブ1109および1110のライトバルブから発する指向性ピクセルを例示する。マルチビーム素子1201および1202は、たとえば、図8A~8Bを参照して上記したように、対応する組のライトバルブ1109および1110から光を外へ結合する。実線方向矢印1204は、図11を参照して上記した一組のライトバルブ1109のライトバルブから調光ビームとして出る外へ結合された光を表す。破線方向矢印1206は、図11を参照して上記した一組のライトバルブ1110のライトバルブから調光ビームとして出る外へ結合された光を表す。図12に例示されるように、ピクセル2b、3b、4b、5b、6bおよび7bに対応する指向性ピクセルは、視距離1208内でインターリーブする。ピクセル1bおよび8bに対応する調光ビームは、視距離1208内で複数組のライトバルブ1109および1110から出力されるその他の調光ビームとインターリーブすることはない。言い換えれば、一連の画像1~8における最初および最後の画像のピクセルに対応する調光ビームは、視距離1208内で一連の画像2~7における画像のピクセルに対応する調光ビームとインターリーブすることはない。複数組のライトバルブ1109および1110から出力される調光ビームのインターリーブは、ピクセルを並べ替えて、およそ視距離1208で画像1~8の順序と一致させる。観察者の目1210がx方向にスクリーン204上を移動するにつれて、調光ビームからの光が一連の画像1~8と同じ順序で観察者の目に入る。その他のマルチビューピクセルが同じように作動されると、観察者の目が視距離1208からスクリーン204上を移動するにつれて、観察者には画像1~8が連続した順序で見え、図1Aを参照して上記したマルチビュー画像体験を再現する。
【0046】
図13は、マルチビュー画像を表示する方法のフロー図を例示する。ブロック1301において、導光板へ光学的に結合される光源によって発生される光が、図2および3を参照して上記したように、導光板内へ光学的に結合される。ブロック1302において、マルチビュー画像の一連の二次元(2D)画像のピクセル強度が、図10および11を参照して上記したように、マルチビューピクセルの複数組のライトバルブのライトバルブに割り当てられる。ブロック1303において、導光板内を伝播する光の一部が、図6を参照して上記したように、導光板の複数のマルチビーム素子から外へ結合される。調光ビームは、図8および12を参照して上記したように、調光ビームをインターリーブするために、異なる角および角度的偏差を有する。ブロック1304において、外へ結合された光が、図12を参照して上記したように、割り当てられたピクセル強度に従ってマルチビューピクセルの複数組のライトバルブのライトバルブで変調される。インターリーブされ、かつ変調された光ビームは、マルチビュー画像の異なるビューに対応する指向性ピクセルである。
【0047】
開示した実施形態の以上の記載が、いかなる当業者も本開示を製作または使用することを可能にするために提供されることが認識される。これらの実施形態に対する様々な変更は当業者にとって容易に明らかであろうし、本明細書に定義される一般的な原理は、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用することができる。したがって、本開示は、本明細書に例示される実施形態に限定されるものと意図されるのではなく、本明細書に開示される原理および新規な特徴と一貫した最も広い範囲を与えられるものとする。
【符号の説明】
【0048】
100 マルチビューディスプレイ
102~105 ビュー
106~109 ビュー方向
110 光ビーム
200 マルチビューディスプレイ
202 バックライト
204 スクリーン
208 導光板
210 光源
212 第1の表面
214 第2の表面
216 一組のライトバルブ
218 マルチビーム回折格子
302 光
402 表面
404 空気
406 法線方向
502 マルチビーム回折格子
504 回折により外へ結合された光
506 法線方向
508 マルチビーム素子
510 反射コーティング
512 回折光
514 光
516 マルチビーム素子
518 回折格子
519 回折格子
520 回折格子
521 回折格子
524 マルチビーム素子
526 回折格子
527 回折格子
528 回折格子
529 回折格子
530 回折格子
531 回折格子
532 回折格子
533 位置
534 位置
602 マルチビーム素子
604 光
608 マルチビーム素子
610 マルチビーム素子
612 光
614 光
616 光
618 光
700 マルチビューディスプレイ
702~705 ライトバルブの組
706 マルチビューピクセル
708~711 マルチビーム回折格子
712 中心
716~718 マルチビューピクセル
800 マルチビューピクセル
802~805 ライトバルブの組
806~809 マルチビーム回折格子
810 中心
820~821 仮想光源
822~824 法線方向
902 曲線
904 観察者の目
911~918 領域
1001~1008 ピクセルの組
1101~1103 マルチビューピクセル
1109~1110 ライトバルブの組
1201~1202 マルチビーム回折格子
1208 視距離
1210 観察者の目
図1A-B】
図2A-B】
図2C
図3
図4
図5A-B】
図5C-D】
図6A-C】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13