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特許7165057喫食時の冷涼感が向上した、高濃度のCO2を含む氷を含有する冷菓
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】喫食時の冷涼感が向上した、高濃度のCO2を含む氷を含有する冷菓
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/00 20060101AFI20221026BHJP
   A23G 9/04 20060101ALI20221026BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
A23G9/00 101
A23G9/04
A23G9/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018553792
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2017041761
(87)【国際公開番号】W WO2018101116
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2016234877
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591107034
【氏名又は名称】日本液炭株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】辻 愛
(72)【発明者】
【氏名】長須 弘真
(72)【発明者】
【氏名】神辺須 雅子
(72)【発明者】
【氏名】小野田 航二
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-512035(JP,A)
【文献】特表平11-514529(JP,A)
【文献】特開2007-002005(JP,A)
【文献】特開2004-194532(JP,A)
【文献】特開2016-189762(JP,A)
【文献】特開2009-148168(JP,A)
【文献】特開2007-236207(JP,A)
【文献】特開昭61-219342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO含有率が3重量%以上の氷と、塩化ナトリウムとを含有し、前記塩化ナトリウムが冷菓ミックス全量に対して0.01~1.5重量%であることを特徴とする冷菓。
【請求項2】
CO含有率が3重量%以上の氷が、COハイドレートであることを特徴とする請求項1に記載の冷菓。
【請求項3】
CO含有率が3重量%以上の氷の含有量が、冷菓ミックス全量に対して1~50重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷菓。
【請求項4】
CO含有率が3重量%以上の氷を含有する冷菓の製造において、塩化ナトリウムを冷菓ミックス全量に対して0.01~1.5重量%となるように前記冷菓に含有させる工程を含むことを特徴とする冷菓の製造方法。
【請求項5】
CO含有率が3重量%以上の氷を含有する冷菓の製造において、塩化ナトリウムを冷菓ミックス全量に対して0.01~1.5重量%となるように前記冷菓に含有させる工程を含むことを特徴とする、前記冷菓を喫食した際の前記氷由来の冷涼感を向上する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO含有率の高い氷(以下、「高濃度CO氷」とも表示する。)を含有する冷菓(以下、「高濃度CO氷含有冷菓」とも表示する。)であって、喫食時における高濃度CO氷由来の冷涼感が向上した高濃度CO氷含有冷菓に関する。また、本発明は、かかる高濃度CO氷含有冷菓の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
高濃度のCOを含む(CO含有率の高い)氷の一種として、COハイドレート(二酸化炭素ハイドレート)という物質が知られている。COハイドレートとは、水分子の結晶体の空寸に二酸化炭素分子を閉じ込めた包接化合物をいう。結晶体を形成する水分子は「ホスト分子」、水分子の結晶体の空寸に閉じ込められている分子は「ゲスト分子」または「ゲスト物質」と呼ばれる。COハイドレートは、融解するとCO(二酸化炭素)と水に分解するため、融解時にCOを発生させる。COハイドレートは、COと水を、低温、かつ、高圧のCO分圧という条件にすることにより製造することができ、例えば、ある温度であること、及び、その温度におけるCOハイドレートの平衡圧力よりもCO分圧が高いことを含む条件(以下、「COハイドレート生成条件」とも表示する。)において製造することができる。上記の「ある温度であること、及び、その温度におけるCOハイドレートの平衡圧力よりもCO分圧が高い」条件は、非特許文献1のFigure 2.や、非特許文献2のFigure 7.やFigure 15.に開示されているCOハイドレートの平衡圧力曲線(例えば縦軸がCO圧力、横軸が温度を表す)において、かかる曲線の高圧側(COハイドレートの平衡圧力曲線において、例えば縦軸がCO圧力、横軸が温度を表す場合は、該曲線の上方)の領域内の温度とCO圧力の組合せの条件として表される。また、COハイドレートは、水の代わりに微細な氷をCOと、低温、かつ、低圧のCO分圧という条件下で反応させて製造することもできる。COハイドレートを製造する際のCOの圧力が高くなるほど、また、COと水の温度が低くなるほど、COハイドレートのCO含有率が高くなる傾向がある。COハイドレートのCO含有率は、COハイドレートの製法にもよるが、約3~28重量%程度とすることができ、炭酸水のCO含有率(約0.5重量%程度)と比較して顕著に高い。
【0003】
COハイドレートの用途として、COハイドレートを飲料に添加、混合することが知られている。例えば特許文献1には、COハイドレートを飲料に混合することにより、その飲料に炭酸を付与して、炭酸飲料を製造することが、特許文献2には、COハイドレートを氷で覆って形成した炭酸補充媒体を飲料に添加することによって、ぬるくなった飲料を冷却すると共に、気が抜けた飲料に炭酸ガスを補充することが開示されている。
【0004】
また、COハイドレートの用途として、COハイドレートを、カキ氷、アイスクリーム等の冷菓に混入することも知られている。例えば特許文献3には、COハイドレートを、カキ氷、アイスクリーム等の冷菓に混入することにより、該冷菓を喫食した者の口腔内でCOハイドレートが融解することとなり、その結果、該冷菓において、炭酸特有のシュワシュワ感の他、口中で冷菓が弾けるような刺激的な食感を発生させられることが開示されている。また、特許文献4には、アイススラリーと、氷の粒と、二酸化炭素-水抱接化合物含有粒子とを混合してウォーターアイスを製造すると、6ヶ月間冷凍貯蔵した後であっても、冷凍庫から取り出した後すぐにスプーンですくうことが可能なウォーターアイスが得られることが開示されている。また、特許文献5には、水、甘味料、香味料、NOハイドレート粒子(又はNOハイドレート・COハイドレート混合粒)、及び必要に応じて安定化剤、乳化剤、タンパク質を含み、公知のものと異なる食味特性(例えば味覚)を有する冷凍菓子製品が開示されている。
【0005】
冷菓には、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓等が含まれる。アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスについては、食品衛生法に基づく「乳及び乳製品の成分規格に関する省令」に規定があり、乳成分(乳固形分、乳脂肪分)の含有量により区分されている。かかる乳成分の含有量の区分について述べると、アイスクリームとは、乳固形分を15.0%以上(うち乳脂肪が8.0%以上)含んでいるものであり、アイスミルクとは、乳固形分を10.0%以上(うち乳脂肪が3.0%以上)含んでいるものであり、ラクトアイスとは乳固形分3.0%以上入っているものである。また、氷菓の乳成分含有量は、乳固形分3.0%未満である。
【0006】
ところで、従来より、ヒトの皮膚や口腔、喉に対して冷たい感覚(冷涼感)、すなわち冷感効果を与える冷感剤は、歯磨剤、菓子(例えば、チューインガム、キャンディー等)、たばこ、ハップ剤、化粧料などに使用されている。これら冷涼感を与えるフレーバー物質として、L-メントール(エル-メントール)が現在広く使用されているが、その冷感効果は持続性に欠け、また、使用量を多くすると冷感効果が増強される反面、苦味を伴うことがあるという欠点がある。また、L-メントールはアイスクリーム類に使用されることもあるが、ミント風味を生じさせるため、目的とするアイスクリーム類の香味によっては香味バランスが損なわれてしまう場合があった。L-メントールを用いずにアイスクリーム類の冷涼感を強調する技術として、特許文献6には、アイスクリーム類に含まれる乳成分由来のタンパク質のうち、乳清タンパク質の割合を25%以上に設定することにより、食感が軽く、口溶けが良くなり、アイスクリーム特有の冷涼感がより強調されたアイスクリーム類が得られることが開示されている。
【0007】
一方、特許文献7には、容器詰炭酸飲料に、50ppm以上2000ppm未満のメタリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩を含有させることにより、炭酸飲料で発生する気泡がきめ細かくなり、かつ気泡が維持される結果、容器詰炭酸飲料を開封後に再栓保存した場合においても、高ガス圧炭酸飲料における爽快な刺激感、あっさりとした風味とさわやかな清涼感を維持できることが開示されている。しかし、かかる特許文献7において、メタリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩が発揮するのは、高濃度CO氷を含有するアイスクリーム類等の「高濃度CO氷含有冷菓」における「冷涼感」ではなく、「炭酸飲料」における「清涼感」等である。飲食品における清涼感とは、ヒトの口腔、喉における爽やかな感覚を意味し、冷涼感とは、ヒトの口腔、喉に対して冷たい感覚(冷涼感)を意味する。
【0008】
以上のように、高濃度CO氷を含有するアイスクリーム類等の高濃度CO氷含有冷菓の冷涼感を向上させるために、ナトリウム塩やカリウム塩等の塩類を該高濃度CO氷含有冷菓に含有させることはこれまでに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-224146号公報
【文献】特許4969683公報
【文献】特許4716921号公報
【文献】特許4169165号公報
【文献】特許2781822号公報
【文献】特開2005-130751号公報
【文献】国際公開第2010/035869号
【非特許文献】
【0010】
【文献】J. Chem. Eng. Data (1991) 36, 68-71
【文献】J. Chem. Eng. Data (2008), 53, 2182-2188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、喫食時における高濃度CO氷由来の冷涼感が向上した高濃度CO氷含有冷菓や、該高濃度CO氷含有冷菓の製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、様々な検討を行ったところ、CO含有率が3重量%以上の氷を含有する冷菓の製造において、ナトリウム塩等の塩類を前記冷菓に含有させることによって、本発明の課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)CO含有率が3重量%以上の氷と、塩類とを含有することを特徴とする冷菓や、
(2)CO含有率が3重量%以上の氷が、COハイドレートであることを特徴とする上記(1)に記載の冷菓や、
(3)塩類が、ナトリウム塩、カリウム塩及びカルシウム塩からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の冷菓や、
(4)ナトリウム塩が、塩化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムから選択される1種又は2種であることを特徴とする上記(3)に記載の冷菓や、
(5)ナトリウム塩が、塩化ナトリウムであることを特徴とする上記(4)に記載の冷菓や、
(6)塩類の含有量が、冷菓ミックス全量に対して0.001~1.5重量%であることを特徴とする上記(1)~(5)のいずれかに記載の冷菓や、
(7)CO含有率が3重量%以上の氷の含有量が、冷菓ミックス全量に対して1~50重量%であることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載の冷菓に関する。
【0014】
また、本発明は、
(8)CO含有率が3重量%以上の氷を含有する冷菓の製造において、塩類を前記冷菓に含有させる工程を含むことを特徴とする冷菓の製造方法に関する。
【0015】
さらに、本発明は、
(9)CO含有率が3重量%以上の氷を含有する冷菓の製造において、塩類を前記冷菓に含有させる工程を含むことを特徴とする、前記冷菓を喫食した際の前記氷由来の冷涼感を向上する方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、喫食時における高濃度CO氷由来の冷涼感が向上した高濃度CO氷含有冷菓を提供することができる。また、本発明によれば、かかる高濃度CO氷含有冷菓の製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、
[1]CO含有率が3重量%以上の氷と、塩類とを含有することを特徴とする冷菓(以下、「本発明の冷菓」とも表示する。):や、
[2]CO含有率が3重量%以上の氷を含有する冷菓の製造において、塩類を前記冷菓に含有させる工程を含むことを特徴とする冷菓の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。):や、
[3]CO含有率が3重量%以上の氷を含有する冷菓の製造において、塩類を前記冷菓に含有させる工程を含むことを特徴とする、前記冷菓を喫食した際の前記氷由来の冷涼感を向上する方法(以下、「本発明の向上方法」とも表示する。):などの実施態様を含んでいる。
【0018】
<塩類>
本発明で使用する「塩類」(以下、「本発明における塩類」とも表示する。)としては、高濃度CO氷含有冷菓の冷涼感を向上させることができる塩類である限り特に制限されないが、ナトリウム塩、カリウム塩及びカルシウム塩からなる群から選択される1種又は2種以上の塩類(好ましくは無機塩類)が好ましく、ナトリウム塩及びカリウム塩からなる群から選択される1種又は2種以上の塩類(好ましくは無機塩類)がより好ましく、より優れた冷涼感の向上効果を得る観点から、ナトリウム塩からなる群から選択される1種又は2種以上の塩類(好ましくは無機塩類)がさらに好ましい。
【0019】
上記のナトリウム塩としては、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム等が挙げられ、より優れた冷涼感の向上効果を得る観点から、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが好ましく挙げられ、より優れた冷涼感の向上効果と、後味のガス臭さの抑制効果を得る観点から、最も好ましいものとして塩化ナトリウムが挙げられる。上記のリン酸ナトリウムとしては、メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられ、中でも、メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが好ましく、メタリン酸ナトリウムがより好ましい。これらのナトリウム塩は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書における「ナトリウム塩」には、便宜上、水酸化ナトリウムも含まれるものとする。
【0020】
上記のカリウム塩としては、塩化カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウム、水酸化カリウム、アセスルファムカリウム等が挙げられ、塩化カリウム、炭酸カリウムが好ましく挙げられる。上記のリン酸カリウムとしては、メタリン酸カリウム、ピロリン酸二カリウム、ピロリン酸四カリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カリウム等が挙げられ、中でも、メタリン酸カリウム、ピロリン酸二カリウム、ピロリン酸四カリウム、ポリリン酸カリウムが好ましく、メタリン酸カリウムがより好ましい。これらのカリウム塩は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの1種又は2種以上のカリウム塩と、前述の1種又は2種以上のナトリウム塩を併用してもよい。なお、本明細書における「カリウム塩」には、便宜上、水酸化カリウムも含まれるものとする。
【0021】
上記のカルシウム塩としては、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウム、酢酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、サッカリンカルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等が挙げられる。これらのカルシウム塩は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書における「カルシウム塩」には、便宜上、水酸化カルシウムも含まれるものとする。
【0022】
<CO含有率が3重量%以上の氷>
本発明で使用する「CO含有率が3重量%以上の氷」(高濃度CO氷)としては、CO含有率が3重量%以上の氷である限り特に制限されず、COハイドレートではない高濃度CO氷であってもよいが、より十分な発泡感を得る観点から、COハイドレートであることが好ましい。また、本発明における高濃度CO氷として、COハイドレートを用いずに、COハイドレートではない高濃度CO氷を用いてもよいし、COハイドレートではない高濃度CO氷を用いずに、COハイドレートを用いてもよいし、COハイドレートではない高濃度CO氷と、COハイドレートを併用してもよい。
【0023】
本発明における高濃度CO氷(好ましくはCOハイドレート)の形状としては、本発明の冷菓の香味設計等に応じて適宜設定することができ、例えば、略球状;略楕円体状;略直方体形状等の略多面体形状;あるいは、これらの形状にさらに凹凸を備えた形状;などが挙げられ、また、高濃度CO氷(好ましくはCOハイドレート)の塊を適宜破砕して得られる様々な形状の破砕片(塊)であってもよい。
【0024】
本発明における高濃度CO氷(好ましくはCOハイドレート)の大きさとしては、本発明の冷菓の香味設計等に応じて適宜設定することができ、喫食のし易さや、適度な発泡感を得るなどの観点から、例えば、高濃度CO氷(好ましくはCOハイドレート)の最大長として1~30mm、1~20mm、1~15mm、1~10mmなどが挙げられる。本明細書において「高濃度CO氷の最大長」とは、高濃度CO氷のその塊の表面の2点を結び、かつ、その塊の重心を通る線分のうち、最も長い線分の長さを意味する。なお、高濃度CO氷が例えば略楕円体状である場合は、前記最大長は長径(最も長い直径)を表し、略球状である場合は、前記最大長は直径を表し、略直方体形状である場合は、対角線の中で最も長い対角線の長さを表す。
【0025】
本発明における高濃度CO氷(好ましくはCOハイドレート)のCO含有率としては、3重量%以上である限り特に制限されず、本発明における冷菓の香味設計等に応じて適宜設定することができるが、一般に好ましい程度の発泡感を得る観点から、好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、さらに好ましくは9重量%以上であることが挙げられ、CO含有率の上限として例えば、25重量%以下、20重量%以下、16重量%以下であることが挙げられる。
【0026】
本発明における高濃度CO氷のCO含有率は、本発明における高濃度CO氷を製造する際の「CO分圧の高低」などにより調整することができ、例えばCO分圧を高くすると、高濃度CO氷のCO含有率を高くすることができる。また、高濃度CO氷がCOハイドレートである場合は、COハイドレートを製造する際の「CO分圧の高低」、「脱水処理の程度」、「圧密成型処理を行うか否か」、「圧密成型処理する場合の圧密の圧力の高低」などにより調整することができる。例えば、COハイドレートを製造する際の「CO分圧を高くし」、「脱水処理の程度を上げ」、「圧密成型処理を行い」、「圧密成型処理する場合の圧密の圧力を高くする」と、COハイドレートのCO含有率を高くすることができる。なお、COハイドレート等の高濃度CO氷が融解すると、該COハイドレート等の高濃度CO氷に含まれていたCOが放出され、その分の重量が減少するので、COハイドレート等の高濃度CO氷のCO含有率は、例えば、COハイドレート等の高濃度CO氷を常温で融解させた際の重量変化から、下記式を用いて算出する事ができる。
(CO含有率)=(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)/融解前のサンプル重量)
【0027】
本発明における高濃度CO氷の製造方法としては、CO含有率が3重量%以上の氷を製造できる限り特に制限されない。COハイドレートではない高濃度CO氷の製造方法としては、COハイドレート生成条件を充たさない条件下で原料水中にCOを吹き込みながら原料水を冷凍する方法が挙げられる。また、COハイドレートの製造方法としては、COハイドレート生成条件を充たす条件下で原料水中にCOを吹き込みながら原料水を攪拌する気液攪拌方式や、COハイドレート生成条件を充たす条件下でCO中に原料水をスプレーする水スプレー方式等の常法を用いることができる。これらの方式で生成されるCOハイドレートは、通常、COハイドレートの微粒子が、未反応の水と混合しているスラリー状であるため、COハイドレートの濃度を高めるために、脱水処理を行うことが好ましい。脱水処理によって含水率が比較的低くなったCOハイドレート(すなわち、比較的高濃度のCOハイドレート)は、ペレット成型機で一定の形状(例えば球状や直方体状)に圧縮成型することが好ましい。圧縮成型したCOハイドレートは、そのまま本発明に用いてもよいし、必要に応じてさらに破砕等したものを用いてもよい。なお、COハイドレートの製造方法としては、前述のように、原料水を用いる方法が比較的広く用いられているが、水(原料水)の代わりに微細な氷(原料氷)をCOと、低温、かつ、低圧のCO分圧という条件下で反応させてCOハイドレートを製造する方法を用いることもできる。
【0028】
上記の「COハイドレート生成条件」は、前述したように、その温度におけるCOハイドレートの平衡圧力よりCO分圧(CO圧力)が高い条件である。上記の「COハイドレートの平衡圧力よりもCO分圧が高い条件」は、非特許文献1(J. Chem. Eng. Data (1991) 36, 68-71)のFigure 2.や、非特許文献2(J. Chem. Eng. Data (2008), 53, 2182-2188)のFigure 7.やFigure 15.に開示されているCOハイドレートの平衡圧力曲線(例えば縦軸がCO圧力、横軸が温度を表す)において、かかる曲線の高圧側(COハイドレートの平衡圧力曲線において、例えば縦軸がCO圧力、横軸が温度を表す場合は、該曲線の上方)の領域内のCO圧力と温度の組合せの条件として表される。COハイドレート生成条件の具体例として、「-20~4℃の範囲内」と「二酸化炭素圧力1.8~4MPaの範囲内」の組合せの条件や、「-20~-4℃の範囲内」と「二酸化炭素圧力1.3~1.8MPaの範囲内」の組合せの条件が挙げられる。
【0029】
本発明における高濃度CO氷は、COと氷のみからなる高濃度CO氷であってもよいが、COと氷のほかに任意成分を含んでいてもよい。高濃度CO氷における該任意成分としては、例えば、乳成分、乳脂肪以外の油脂、甘味成分、安定剤、乳化剤、風味原料、着色料、香料、酸味料、アルコール、及び、カフェインからなる群から選択される1種又は2種以上の物質が挙げられる。なお、かかる高濃度CO氷における任意成分は、後述の本発明の冷菓における任意成分に関する記載にて詳述する。
【0030】
<本発明の冷菓>
本発明の冷菓としては、CO含有率が3重量%以上の氷と、塩類とを含有している限り特に制限されない。
【0031】
本明細書において「冷菓」とは、凍結状態で消費者に提供される菓子を意味し、具体的には以下の(A)及び(B)を含む。
(A)アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓)
食品衛生法上の規定に基づく乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に適合するもの、あるいは食品衛生法の規定に基づく食品、添加物等の規定に基づく食品、添加物等の規格基準に適合し、液糖もしくは他食品を混和した液体を冷凍したもの又は食用氷を粉砕し、これに液糖若しくは他食品を混和して再凍結したものであって、凍結状のまま食用に供するもの、またはこれらに類するもの。
(B)アイスクリーム類を含む又は含まない凍結状態の菓子。
【0032】
具体的には、上記(A)には、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、アイスキャンデー、みぞれ、かき氷、シャーベット、シェイク等が挙げられる。また、上記(B)における「アイスクリーム類を含む凍結状態の菓子」としては、フローズンヨーグルト、アイスケーキ(アイスとスポンジケーキ等を含む凍結状態の菓子)などが挙げられる。
【0033】
また、本明細書における「冷菓」には、CO含有率が3重量%以上の氷と、塩類とを含有しているものであって、CO含有率が3重量%以上の氷を除いた部分が、上記(A)又は(B)に該当するものも含まれる。
【0034】
本発明における冷菓は、喫食した際に高濃度CO氷から生じるCOガスの発泡感が、冷菓本来の風味や食感と合わさって、従来の冷菓になかった新規な食感、風味を醸し出すことができる。本発明における冷菓は、喫食時における高濃度CO氷由来の冷涼感が向上しており、好ましい態様では、冷菓を喫食した際の高濃度CO氷由来の後味のガス臭さも抑制されている。また、本発明における冷菓は、喫食時における高濃度CO氷由来の冷涼感が向上することに伴い、爽快感やリフレッシュ感も向上していることが好ましい。
【0035】
本発明における塩類の使用量(冷菓における塩類の含有量又は添加量)としては、特に制限されず、本発明における塩類の種類や、本発明における冷菓の任意成分の組成等に応じて、当業者は適宜設定することができる。本発明の効果を十分に得る観点から、本発明における塩類の好ましい使用量(含有量又は添加量)として、冷菓ミックス全量に対して0.001~1.5重量%、好ましくは0.01~1.5重量%が挙げられ、あるいは、0.01~0.15重量%や、0.15~1.5重量%や、0.18~1.5重量%が挙げられる。なお、本明細書において「冷菓ミックス」とは、高濃度CO氷以外の冷菓の原材料の全部又は一部(好ましくは全部)の混合物を意味し、本明細書において「冷菓ミックス全量」とは、高濃度CO氷以外の冷菓の原材料の全部の混合物を意味する。また、本発明における塩類は市販のものを使用することができる。
【0036】
冷涼感の向上効果や後味のガス臭さの抑制効果の観点から、塩化ナトリウムの好ましい使用量(含有量又は添加量)としては、冷菓ミックス全量に対して0.001~1.5重量%、好ましくは0.01~1.5重量%が挙げられ、あるいは、0.01~0.15重量%や、0.15~1.5重量%や、0.18~1.5重量%が挙げられ、重曹の好ましい使用量(含有量又は添加量)としては、冷菓ミックス全量に対して0.1~1.5重量%、好ましくは0.25~1.5重量%、より好ましくは0.25~0.5重量%が挙げられ、メタリン酸ナトリウムの好ましい使用量(含有量又は添加量)としては、冷菓ミックス全量に対して0.5~1.5重量%、好ましくは1.0~1.5重量%が挙げられる。
【0037】
本発明における高濃度CO氷の使用量(冷菓における高濃度CO氷の含有量)としては、特に制限されず、本発明における高濃度CO氷のCO含有率、本発明における塩類の種類、本発明における塩類の冷菓における含有量、本発明における冷菓の任意成分の組成等に応じて、当業者は適宜設定することができる。高濃度CO氷のCO含有率等にもよるが、本発明の効果を十分に得る観点から、本発明における高濃度CO氷の好ましい使用量として、冷菓ミックス全量に対して1~50重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは3~15重量%が挙げられる。
【0038】
本発明の冷菓は、本発明における高濃度CO氷と、本発明における塩類のみから構成されている冷菓であってもよいが、かかる高濃度CO氷と、塩類のほかに、任意成分を含んでいてもよい。本発明の冷菓における該任意成分としては、例えば、乳成分、乳脂肪以外の油脂、甘味成分、安定剤、乳化剤、風味原料、着色料、香料、酸味料、アルコール、及び、カフェインからなる群から選択される1種又は2種以上の物質が挙げられる。本発明の冷菓が任意成分を含んでいる場合、該任意成分は、本発明における高濃度CO氷に含まれており、冷菓ミックスに含まれていなくてもよいし、本発明における高濃度CO氷に含まれておらず、冷菓ミックスに含まれていてもよいし、本発明における高濃度CO氷と冷菓ミックスの両方に含まれていてもよい。本発明における高濃度CO氷と冷菓ミックスの両方に任意成分が含まれている場合、任意成分の種類や濃度は、高濃度CO氷と冷菓ミックスとで同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、かかる任意成分は市販のものを使用することができる。また、任意成分の使用量(冷菓における任意成分の濃度)は、本発明を妨げない範囲で適宜設定することができる。
【0039】
上記の「乳成分」には、動物(好ましくはウシ)の乳、又はその分画成分や加工品等が含まれる。乳の分画成分や加工品としては、生クリーム、バター、バターミルク、バターミルク粉、脱脂乳、部分脱脂乳、還元全脂乳、還元脱脂乳、還元部分脱脂乳、全脂濃縮乳、脱脂濃縮乳、部分脱脂濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ、還元ホエイ、濃縮ホエイ、ホエイ粉等が挙げられる。かかる乳成分は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記の「乳脂肪以外の油脂」としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまわり油、こめ油、ベニバナ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、パーム核油等の植物油脂;牛脂、豚脂等の動物油脂;植物油脂や動物油脂を分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂;等が挙げられる。かかる乳脂肪以外の油脂は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記の「甘味成分」とは、甘味を呈する成分のことをいい、かかる甘味成分には、黒砂糖、白下糖、カソナード(赤砂糖)、和三盆、ソルガム糖、メープルシュガーなどの含蜜糖、ザラメ糖(白双糖、中双糖、グラニュー糖など)、車糖(上白糖、三温糖など)、加工糖(角砂糖、氷砂糖、粉砂糖、顆粒糖など)、液糖などの精製糖、単糖類(ぶどう糖、果糖、木糖、ソルボース、ガラクトース、異性化糖など)、二糖類(蔗糖 、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖、パラチノースなど)、オリゴ糖類(フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガーなど)、糖アルコール類(エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール、オリゴ糖アルコール、粉末還元麦芽糖水飴)などのような糖質甘味料の他、天然非糖質甘味料(ステビア抽出物、カンゾウ抽出物等)や合成非糖質甘味料(アスパルテーム、アセスルファムK等)のような高甘味度甘味料などの甘味料が挙げられる。甘味成分は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記の「安定剤」としては、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、タマリンドガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、タラガム、カルボキシメチルセルロース、水溶性セルロース、ペクチン、ポリデキストロース、プルラン、プロピレングリコール、ゼラチン、アラビアガム、ダイユータンガム、デンプン、デキストリン、アルギン酸、イナゴマメゴム等が挙げられ、中でも、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ローカストビーンガムなどが好ましく挙げられ、中でも、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガムがより好ましく挙げられる。安定剤は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記の「乳化剤」としては、食用として使用できるものを広く採用することができ、例えば、モノグリセリド(グリセリン脂肪酸エステル)、有機酸モノグリセリド(酢酸モノグリセリド、酢酸酒石酸混合モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、りんご酸モノグリセリド等)、ジグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(ポリグリセリンポリリシノレート)、レシチン、キラヤサポニン、ユッカサポニン、大豆サポニン、化工澱粉(酸分解澱粉、酸化澱粉、α化澱粉、グラフト化澱粉、カルボキシメチル基、ヒドロキシアルキル基等を導入したエーテル化澱粉、酢酸、リン酸等を反応させたエステル化澱粉、2ヶ所以上の澱粉の水酸基間に多官能基を結合させた架橋澱粉、湿熱処理澱粉等)等が挙げられる。乳化剤は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記の「風味原料」としては、果汁、果肉、抹茶、レーズン、ココア、卵黄等が挙げられる。風味原料は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明の冷菓における塩類や、任意成分の濃度は、その冷菓を融解して得られる溶液について、例えばHPLC法、GC-MS法、LC-MS法などの公知の方法を適用することにより測定することができる。
【0046】
本発明の冷菓は、カップ容器、コーン、ワッフル生地などに充填されていなくてもよいが、充填されていてもよい。また、本発明の冷菓は、包装容器内に収容されていてもよいし、収容されていなくてもよい。
【0047】
本発明の冷菓を保存する際には、該冷菓の凍結状態を保持することが好ましい。保存温度の上限温度としては、好ましくは0℃以下、より好ましくは-5℃以下、さらに好ましくは-10℃以下、より好ましくは-15℃以下、さらに好ましくは-20℃、より好ましくは-25℃が挙げられ、下限温度としては、-273℃以上、-80℃以上、-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上などが挙げられる。
【0048】
本明細書において「高濃度CO氷由来の冷涼感が向上した」高濃度CO氷含有冷菓とは、本発明における塩類を含有させないこと以外は、同種の原料を同じ最終濃度になるように用いて同じ製法で製造した高濃度CO氷含有冷菓(以下、「比較高濃度CO氷含有冷菓」とも表示する。)と比較して、高濃度CO氷由来の冷涼感が向上した高濃度CO氷含有冷菓を意味する。本発明では、ヒトの口腔、喉に対して感じられる冷たい感覚を冷涼感として評価した。
【0049】
本明細書において「高濃度CO氷由来の後味のガス臭さが抑制された」高濃度CO氷含有冷菓とは、上記の比較高濃度CO氷含有冷菓と比較して、高濃度CO氷由来の後味のガス臭さが抑制された高濃度CO氷含有冷菓を意味する。本発明では、炭酸ガスを含む飲食物を口に含んだ際に、鼻に炭酸ガスが抜ける事によって鼻の粘膜が刺激される刺激臭を高濃度CO氷由来の後味のガス臭さとして評価した。
【0050】
ある高濃度CO氷含有冷菓の「高濃度CO氷由来の冷涼感」や「高濃度CO氷由来の後味のガス臭さ」が、比較高濃度CO氷含有冷菓と比較してどのようであるか(例えば、向上しているかどうか、抑制されているかどうか)は、訓練されたパネラーであれば、容易かつ明確に決定することができる。評価の基準や、パネラー間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができ、例えば、後述の実施例の「[2]COハイドレート含有冷菓サンプルの官能評価」に記載の評価基準等を用いた方法と同様の方法、好ましくは、後述の実施例の「[2]COハイドレート含有冷菓サンプルの官能評価」に記載の評価基準等を用いた方法と同じ方法を好適に用いることができる。より具体的には、後述の実施例の「[2]COハイドレート含有冷菓サンプルの官能評価」に記載の評価基準において、比較高濃度CO氷含有冷菓と比較して、高濃度CO氷由来の冷涼感が、明確に向上している(評価:「○」)高濃度CO氷含有冷菓や、やや向上している(評価:「△」)高濃度CO氷含有冷菓は、「高濃度CO氷由来の冷涼感が向上した」高濃度CO氷含有冷菓に含まれる。また、後述の実施例の「[2]COハイドレート含有冷菓サンプルの官能評価」に記載の評価基準において、比較高濃度CO氷含有冷菓と比較して、高濃度CO氷由来の後味のガス臭さが、明確に抑制されている(評価:「○」)高濃度CO氷含有冷菓や、やや抑制されている(評価:「△」)高濃度CO氷含有冷菓は、「後味のガス臭さが抑制された」高濃度CO氷含有冷菓に含まれる。
【0051】
<本発明の冷菓の製造方法>
本発明の冷菓の製造方法は、CO含有率が3重量%以上の氷(高濃度CO氷)と、塩類とを冷菓が含有するようにすること以外は、公知の冷菓の製造方法を用いることができる。アイスクリーム類の一般的な製造方法としては、原材料の混合、均質化、加熱殺菌、冷却、エージング、フリージング、充填・包装、硬化、という各工程を含んでいる製造方法が挙げられる。なお、本発明の冷菓の製造方法により、本発明の冷菓を製造することができる。
【0052】
本発明の冷菓の製造方法としては、CO含有率が3重量%以上の氷を含有する冷菓の製造において、塩類を前記冷菓に含有させる工程を含んでいる限り特に制限されないが、高濃度CO氷以外の冷菓の原材料の全部又は一部(好ましくは全部)の混合物(冷菓ミックス)と、高濃度CO氷を混合する工程を含んでいることが好ましく、以下の工程X及び工程Yを含んでいることがより好ましい。
塩類を含有する冷菓ミックスを調製する工程X:
冷菓ミックスと、CO含有率が3重量%以上の氷とを混合する工程Y:
【0053】
工程Xで調製される冷菓ミックスは、高濃度CO氷以外の冷菓の原材料の全部を含んでいることが好ましい。かかる工程Xとしては、塩類を冷菓ミックスに添加する工程や、高濃度CO氷以外の冷菓の原材料の全部を混合して冷凍ミックスを調製する工程が好ましく挙げられる。本発明の製造方法は、上記工程Xと工程Yの間に、上記工程Xで調製した冷菓ミックスを均質化処理及び/又は加熱殺菌処理する工程を有していなくてもよいが、上記工程Xで調製した冷菓ミックスを均質化処理及び/又は加熱殺菌処理する工程を有していることが好ましく、上記工程Xで調製した冷菓ミックスを均質化処理及び加熱殺菌処理する工程を有していることがより好ましい。
【0054】
工程Yにおける冷菓ミックスは、高濃度CO氷以外の冷菓の原材料の全部を含んでいることが好ましい。工程Yで、冷菓ミックスと、高濃度CO氷とを混合する際の前記冷菓ミックスの温度は-8~5℃が好ましい。工程Yにおける冷菓ミックスと、高濃度CO氷との混合は、エージング工程又はフリージング工程で行うことが好ましい。
【0055】
工程Yで冷菓ミックスと高濃度CO氷とを混合すると、本発明の冷菓が得られる。本発明の製造方法は、工程Yで得られた本発明の冷菓を充填・包装する工程、及び/又は、本発明の冷菓を硬化する工程を、工程Yより後に有していることが好ましい。
【0056】
本発明の冷菓の好ましい態様のうち、本発明の冷菓の製造方法の好ましい態様として使用することができる態様は、本発明の冷菓の製造方法の好ましい態様として使用することができる。
【0057】
<本発明の冷菓における冷涼感を向上する方法>
本発明の向上方法は、冷菓を喫食した際の高濃度CO氷由来の冷涼感を向上する方法である。
【0058】
本発明の向上方法としては、CO含有率が3重量%以上の氷を含有する冷菓の製造において、塩類を前記冷菓に含有させる工程を含んでいる限り特に制限されないが、高濃度CO氷以外の冷菓の原材料の全部又は一部(好ましくは全部)の混合物(冷菓ミックス)と、高濃度CO氷を混合する工程を含んでいることが好ましく、上記の工程X及び工程Yを含んでいることがより好ましい。
【0059】
本発明の冷菓の製造方法の好ましい態様のうち、本発明の向上方法の好ましい態様として使用することができる態様は、本発明の向上方法の好ましい態様として使用することができる。
【0060】
本発明の向上方法の実施態様のうち、好ましい実施態様は、冷菓を喫食した際の高濃度CO氷由来の冷涼感を向上することに加えて、冷菓を喫食した際の高濃度CO氷由来の後味のガス臭さを抑制することができる。かかる好ましい実施態様には、冷菓ミックス全量に対して0.001~1.5重量%(好ましくは0.01~1.5重量%)の塩化ナトリウムを含有する本発明の冷菓や、冷菓ミックス全量に対して0.1~1.5重量%(好ましくは0.25~1.5重量%、より好ましくは0.25~0.5重量%)の重曹を含有する本発明の冷菓や、冷菓ミックス全量に対して0.5~1.5重量%(好ましくは1.0~1.5重量%)のメタリン酸ナトリウムを含有する本発明の冷菓が含まれる。
【0061】
<本発明のその他の態様>
本発明の態様には、喫食した際の高濃度CO氷由来の冷涼感が向上した冷菓を製造するための、高濃度CO氷及び低融点油脂の使用:や、喫食した際の高濃度CO氷由来の冷涼感が向上し、かつ、高濃度CO氷由来の後味のガス臭さが抑制された冷菓を製造するための、高濃度CO氷及び低融点油脂の使用:なども含まれる。
【0062】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0063】
[1]COハイドレート含有冷菓の調製
[1-1]COハイドレートの調製
先行文献(特許第3090687号、特表2004-512035、特許第4969683号)を参考に、COハイドレートの生成を行った。具体的には、4Lの水にCOガスを3MPaとなるように吹き込み、撹拌をしながら1℃でハイドレート生成反応を進行させ、COハイドレートを含むシャーベット状のスラリーを作製した。このシャーベット状のスラリーを、-20℃まで冷却した後、COハイドレートとして回収し、液体窒素上で1粒の直径が1mm~7mmとなるよう調製した。なお、これらのCOハイドレートのCO含有率は15%であった。
【0064】
[1-2]冷菓ミックスの調製
アイスクリームフリーザー(TGM-800N、タイジ社製)を用いて、以下の表1に示す組成の冷菓ミックスを調製した。なお、塩類の添加の有無、塩類の種類、及び、冷菓ミックス中の塩類の終濃度(重量%)は、後述の表2に示す。塩類として、塩化ナトリウム(NaCl)、重曹(炭酸水素ナトリウム)又はメタリン酸Na(メタリン酸ナトリウム)を用いた。塩化ナトリウムはアイスクリーム類に添加される代表的な塩類である。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
[1-3]COハイドレート含有冷菓サンプルの調製
上記[1-2]で調製した各冷菓ミックス 30gに対して、上記[1-1]で調製したCOハイドレート(直径1mm~7mm)を3gずつ添加し、混合して、各COハイドレート含有冷菓サンプル(比較例1~2、実施例1~9)とした。
【0068】
[2]COハイドレート含有冷菓サンプルの官能評価
上記[1-3]で調製した各COハイドレート含有冷菓サンプル(比較例1~2、実施例1~9)の食感や味覚について、訓練されたパネラー3名により官能評価を実施した。官能評価の基準としては、冷涼感については、塩類無添加のCOハイドレート含有冷菓サンプル(比較例1)と比較して、そのCOハイドレート含有冷菓サンプルにおける「冷涼感」が明確に向上している(「○」)、やや向上している(「△」)、向上しているか分からない(「×」)、とし、「COハイドレート由来の後味のガス臭さ」については、塩類無添加のCOハイドレート含有冷菓サンプル(比較例1)と比較して、そのCOハイドレート含有冷菓サンプルにおける「COハイドレート由来の後味のガス臭さ」が明確に抑制されている(「○」)、やや抑制されている(「△」)、抑制されているか分からない(「×」)、とした。かかる官能評価の結果を以下の表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3の結果に示されているように、塩類を冷菓ミックスに添加していない比較例1サンプルと比べて、0.001~1.5重量%の塩化ナトリウム(NaCl)を冷菓ミックスに添加した実施例1~5サンプルでは、口内に入れた際の冷涼感が明確に向上する(評価「○」)ことが示された。ただ、0.0001重量%の塩化ナトリウムを冷菓ミックスに添加したサンプル(比較例2サンプル)では、比較例1サンプル(塩類無添加)と比べて、口内に入れた際の冷涼感が向上しているか分からなかった(評価「×」)。
【0071】
塩化ナトリウム以外の塩類に関して述べると、0.25~0.5重量%の重曹を冷菓ミックスに添加した実施例6、7サンプルも、比較例1サンプル(塩類無添加)と比べて、口内に入れた際の冷涼感が明確に向上した(評価「○」)。また、0.1~1.0重量%のメタリン酸ナトリウムを冷菓ミックスに添加した実施例サンプル8、9も、比較例1サンプル(塩類無添加)と比べて、口内に入れた際の冷涼感がやや向上した(評価「△」)。これらの結果から、塩化ナトリウム、重曹、メタリン酸ナトリウムのいずれの塩類でも、添加により、冷涼感が向上することが分かった。また、冷涼感の向上の程度がより高い点で、メタリン酸ナトリウムよりも、塩化ナトリウムや重曹が好ましいことも分かった。なお、塩類を添加した実施例1~9では、COハイドレート含有冷菓サンプルにおける「冷涼感」の向上に伴い、爽快感やリフレッシュ感も向上した。
【0072】
ところで、比較例1サンプル(塩類無添加)は、炭酸ガス独特のガス臭さが後味に残ってしまうという課題も有していたが、上記塩類を加えることで、炭酸ガス独特のガス臭さを抑制できるという効果(評価「○」又は「△」)も得られた(表3)。かかるガス臭さの抑制効果の程度がより高い点で、メタリン酸ナトリウムよりも重曹が好ましく、重曹よりも塩化ナトリウムが好ましいことが示された(表3)。
【0073】
冷涼感の向上効果の程度と、後味のガス臭さの抑制の程度の両方を考慮すると、メタリン酸ナトリウムよりも重曹が好ましく、重曹よりも塩化ナトリウムが好ましいことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、喫食時における高濃度CO氷由来の冷涼感が向上した高濃度CO氷含有冷菓を提供することができる。また、本発明によれば、かかる高濃度CO氷含有冷菓の製造方法等を提供することができる。