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特許7165061NOx浄化装置及びそれを用いたNOx浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】NOx浄化装置及びそれを用いたNOx浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/56 20060101AFI20221026BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20221026BHJP
   B01D 53/74 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B01D53/56 400
F01N3/08 C
B01D53/74 ZAB
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019003188
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020110761
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千和
(72)【発明者】
【氏名】濱口 豪
(72)【発明者】
【氏名】坂本 淑幸
(72)【発明者】
【氏名】榊原 雄二
(72)【発明者】
【氏名】畑中 美穂
(72)【発明者】
【氏名】高田 圭
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】野竹 康正
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-104468(JP,A)
【文献】特開平10-113540(JP,A)
【文献】特開2013-112546(JP,A)
【文献】特開2013-066884(JP,A)
【文献】特開2005-075772(JP,A)
【文献】特開2006-346624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/18
B01D 53/22
B01D 53/34-53/86
B01D 53/92
B01D 53/96
F01N 3/00- 3/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素のオキソ酸、そのイオン及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種の窒素オキソ酸類を窒素のオキソ酸換算で0.01~30質量%含有するアルミノケイ酸塩からなる固体電解質と、前記固体電解質の一方の面上に配置されたアノード電極膜と、前記アノード電極膜と対向するように前記固体電解質の他方の面上に配置されたカソード電極膜と、前記アノード電極膜及び前記カソード電極膜に電気的に接続された通電装置と、を備えていることを特徴とするNOx浄化装置。
【請求項2】
前記窒素オキソ酸類が、硝酸、硝酸イオン及び硝酸塩からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のNOx浄化装置。
【請求項3】
前記アルミノケイ酸塩がゼオライトであることを特徴とする請求項1又は2に記載のNOx浄化装置。
【請求項4】
前記アノード電極膜及び前記カソード電極膜が貴金属を含有する電極膜であることを特徴とする請求項1~のうちのいずれか一項に記載のNOx浄化装置。
【請求項5】
請求項1~のうちのいずれか一項に記載のNOx浄化装置の前記アノード電極膜と前記カソード電極膜との間に電圧を印加しながら、NOx及び水分を含む排ガスを前記NOx浄化装置に導入することによって、前記アノード電極膜上で前記排ガス中の水分を電気分解して水素イオンを生成させ、前記カソード電極膜上で前記水素イオンを前記排ガス中のNOxと反応させてNOxを除去することを特徴とするNOx浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx浄化装置及びそれを用いたNOx浄化方法に関し、より詳しくは、水の電気分解を利用したNOx浄化装置及びNOx浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気化学素子に電圧を印加することによりNOxを浄化させる方法が研究されてきた。また、このような方法に用いられるNOx浄化装置としては、様々な構成の装置が開示されている。
【0003】
例えば、特開2004-141750号公報(特許文献1)には、水素イオンを選択的に透過させる導電性の固体電解質膜と、この固体電解質膜表面の一部に配設された電子導電性基材と陽極酸化を促進する触媒よりなる第1の電極と、前記固体電解質膜表面の他の部分に配設された電子導電性基材と陰極還元を促進する触媒よりなる第2の電極と、この第2の電極に隣接して配設された多孔体の金属酸化物に担持された白金族触媒とを備えた窒素酸化物分解素子、並びに、この窒素酸化物分解素子を備えた窒素酸化物分解装置が開示されている。
【0004】
また、特開2016-104468号公報(特許文献2)には、酸化シリコンからなる多孔性電解質膜と、前記多孔性電解質膜の一方の面上に配置されたカソード電極と、前記多孔性電解質膜の他方の面上に配置されたアノード電極と、前記カソード電極及び/又は前記多孔性電解質膜に担持されている貴金属触媒と、前記アノード電極及び前記カソード電極に接続されている通電装置と、を備えているNOx浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-141750号公報
【文献】特開2016-104468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の窒素酸化物分解素子においては、固体電解質膜として高分子固体電解質であるナフィオン(登録商標)が用いられているため、耐熱性の観点から、260℃以上の温度条件下では使用できないという問題があり、さらに、固体電解質膜としてナフィオン(登録商標)を用いた場合には、室温付近でのNOx浄化性能が十分なものではなかった。また、特許文献2に記載のNOx浄化装置においても、室温付近でのNOx浄化性能が必ずしも十分なものではなく、さらに優れたNOx浄化性能を有するNOx浄化装置の開発が求められるようになってきた。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、30℃程度の室温付近の低温においても十分に高いNOx浄化性能を有しており、かつ、耐熱性にも優れているNOx浄化装置、並びに、それを用いたNOx浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アノード電極膜とカソード電極膜との間に、窒素のオキソ酸、そのイオン及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種の窒素オキソ酸類を含有するアルミノケイ酸塩からなる固体電解質が配置された電気化学素子(電気化学セル)を用いることによって、30℃程度の室温付近の低温においても十分に高いNOx浄化性能を有しており、かつ、耐熱性にも優れているNOx浄化装置が得られるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のNOx浄化装置は、窒素のオキソ酸、そのイオン及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種の窒素オキソ酸類を窒素のオキソ酸換算で0.01~30質量%含有するアルミノケイ酸塩からなる固体電解質と、前記固体電解質の一方の面上に配置されたアノード電極膜と、前記アノード電極膜と対向するように前記固体電解質の他方の面上に配置されたカソード電極膜と、前記アノード電極膜及び前記カソード電極膜に電気的に接続された通電装置と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のNOx浄化装置においては、前記窒素オキソ酸類が、硝酸、硝酸イオン及び硝酸塩からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0011】
また、本発明のNOx浄化装置においては、前記アルミノケイ酸塩がゼオライトであることが好ましい。
【0013】
また、本発明のNOx浄化装置においては、前記アノード電極膜及び前記カソード電極膜が貴金属を含有する電極膜であることが好ましい。
【0014】
本発明のNOx浄化方法は、前記本発明のNOx浄化装置の前記アノード電極膜と前記カソード電極膜との間に電圧を印加しながら、NOx及び水分を含む排ガスを前記NOx浄化装置に導入することによって、前記アノード電極膜上で前記排ガス中の水分を電気分解して水素イオンを生成させ、前記カソード電極膜上で前記水素イオンを前記排ガス中のNOxと反応させてNOxを除去することを特徴とする方法である。
【0015】
なお、本発明によって、30℃程度の室温付近の低温においても十分に高いNOx浄化性能を有しており、かつ、耐熱性にも優れているNOx浄化装置が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明にかかる電気化学セル(固体電解質とアノード電極膜とカソード電極膜とを備えるもの)に窒素酸化物(NOx)及び水分(水蒸気、HO)を含む排ガスを接触させ、アノード電極膜とカソード電極膜との間に電圧を印加すると、図1に示すように、アノード電極膜1上において、排ガス中の水分(水蒸気、HO)が電気分解されて水素イオン(プロトン、H)と電子(e)が生成する。水素イオン(H)は固体電解質2を通って、また、電子(e)は通電回路を通ってカソード電極膜3へ移動する。カソード電極膜3へ移動した水素イオン(H)と電子(e)はカソード電極膜3上でNOxと反応し、NOxが窒素分子(N)と水分子(HO)に電気化学的に還元分解される。また、一酸化二窒素(NO)が生成した場合には、NOは水素イオン(H)及び電子(e)と更に反応して窒素分子(N)と水分子(HO)に還元分解される。本発明に用いられる固体電解質2は、窒素のオキソ酸、そのイオン及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種の窒素オキソ酸類を含有するアルミノケイ酸塩からなるものであり、このように窒素オキソ酸類を含有するアルミノケイ酸塩はプロトン(H)伝導性に非常に優れている。このため、アノード電極膜1上で生成した水素イオン(H)は、固体電解質2を通って速やかにカソード電極膜3に移動する。その結果、カソード電極膜3上でのNOxの還元分解が促進され、30℃程度の室温付近の低温においても十分に高いNOx浄化性能が得られるようになると本発明者らは推察する。また、本発明に用いられる固体電解質2は、マトリックスが耐熱性に優れているアルミノケイ酸塩であるため、例えば600℃以上という高温のガスが流通する排ガス流路内に晒された後においても室温にて優れたNOx浄化性能が発揮されるようになると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、30℃程度の室温付近の低温においても十分に高いNOx浄化性能を有しており、かつ、耐熱性にも優れているNOx浄化装置、並びに、それを用いたNOx浄化方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明におけるNOx浄化の反応メカニズムを示す模式図である。
図2】本発明のNOx浄化装置の好適な一実施態様を模式的に示す概略縦断面図である。
図3】実施例で作製したNOx浄化装置を構成するために用いられた反応容器の斜視図である。
図4】実施例において図3に示す反応容器を用いて構成されたNOx浄化装置の縦断面図である。
図5図4に示すNOx浄化装置のA-A断面図である。
図6】実施例1~3及び比較例1~3で作製したNOx浄化装置についてNOx浄化性能(NO減少率)を評価した結果を示すグラフである。
図7】実施例4~6で作製したNOx浄化装置についてNOx浄化性能(NO減少率)を評価した結果を示すグラフである。
図8】実施例7~8で作製したNOx浄化装置についてNOx浄化性能(NO減少率)を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は前記図面に示すものに限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。
【0019】
〔NOx浄化装置〕
先ず、本発明のNOx浄化装置について説明する。図2は本発明のNOx浄化装置の好適な一実施態様を模式的に示す概略縦断面図である。図2に示すNOx浄化装置は、窒素のオキソ酸、そのイオン及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有するアルミノケイ酸塩からなる固体電解質2と、前記固体電解質2の一方の面上に配置されたアノード電極膜1と、前記アノード電極膜1と対向するように前記固体電解質2の他方の面上に配置されたカソード電極膜3とを備える電気化学セル4、並びに、電極配線1a及び3aによって前記アノード電極膜1及び前記カソード電極膜3に電気的に接続された通電装置5を備えるものである。なお、窒素のオキソ酸、そのイオン及びその塩を、「窒素オキソ酸類」と総称する。
【0020】
本発明に用いられる固体電解質2は、少なくとも一種の前記窒素オキソ酸類を含有するアルミノケイ酸塩(以下、「窒素オキソ酸類含有アルミノケイ酸塩」ともいう)からなるものであり、耐熱性に優れている。このため、本発明のNOx浄化装置においては、電気化学セル4を、内燃機関等から排出された高温(例えば、600℃以上)のガスが流通する排ガス流路6内に設置することが可能となり、そのような高温条件下に晒された後においても室温にて優れたNOx浄化性能が発揮される。また、窒素オキソ酸類含有アルミノケイ酸塩はプロトン(H)伝導性にも優れており、アノード電極膜1で生成した水素イオン(H)が固体電解質2を通って速やかにカソード電極膜3へ移動するため、カソード電極膜3でのNOxの還元分解が促進され、30℃程度の室温付近の低温においても十分に高いNOx浄化性能が得られる。
【0021】
本発明に用いられる固体電解質2においては、基材(担体、マトリックス等)となるアルミノケイ酸塩に、窒素のオキソ酸、そのイオン及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種(窒素オキソ酸類)が含有されている。窒素のオキソ酸としては、硝酸(HNO)、亜硝酸(HNO)、次亜硝酸(H)が挙げられ、窒素のオキソ酸のイオンとしては、硝酸イオン(NO )、亜硝酸イオン(NO )、次亜硝酸イオン(N 2-)が挙げられる。また、窒素のオキソ酸の塩としては、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウム等の硝酸塩;亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩;次亜硝酸ジナトリウム、ビス次亜硝酸カルシウム四水和物等の次亜硝酸塩が挙げられる。このような窒素オキソ酸類は、1種のものが単独で含有されていても、2種以上のものが混在した状態で含有されていてもよい。
【0022】
本発明に用いられる固体電解質2においては、他の陽イオンを含まないという観点から、前記窒素オキソ酸類として、硝酸、硝酸イオン及び硝酸塩からなる群から選択される少なくとも一種が含有されていることが好ましく、硝酸及び/又は硝酸イオンが含有されていることがより好ましい。
【0023】
また、本発明に用いられるアルミノケイ酸塩は、ケイ酸塩中にあるケイ素原子の一部がアルミニウム原子に置換された構造を有するものであり、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、水素イオン、アンモニウムイオン等のカチオンを含んでいる物質である。このようなアルミノケイ酸塩としては、排ガス中の水を吸着しやすく、また、電極面積が増加して活性点が増加するという観点から多孔質であることが好ましく、高温における安定性に優れているという観点からゼオライトであることが特に好ましい。
【0024】
本発明において好適に用いられるゼオライトとしては、ZSM-5型、BEA型、モルデナイト型、Y型、L型、フェリエライト型、A型、X型等の各種ゼオライトが挙げられる。これらのゼオライトの中でも、より高いNOx浄化性能が得られる傾向にあるという観点から、ZSM-5型ゼオライト、Y型ゼオライトがより好ましく、ZSM-5型ゼオライトが特に好ましい。これらのゼオライトは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、前記ゼオライトとして、イオン交換したゼオライト(例えば、Cu-ZSM-5型ゼオライト)を用いてもよい。
【0025】
また、本発明において好適に用いられるゼオライトにおいては、水の吸着性が高く、また、高温における安定性に優れているという観点から、SiOとAlとのモル比がSiO/Al=10~3000であることが好ましく、10~2500であることがより好ましい。また、本発明において好適に用いられるゼオライトにおいては、構造の安定性が高いという観点から、平均細孔径が0.1~2.0nmであることが好ましく、0.2~1.0nmであることがより好ましい。さらに、本発明において好適に用いられるゼオライトが粉末状の場合は、成型性の良さという観点から、平均粒子径が0.01~500μmであることが好ましく、0.1~100μmであることがより好ましい。
【0026】
本発明に用いられる固体電解質においては、前記窒素オキソ酸類が前記アルミノケイ酸塩に含有されているが、前記固体電解質における前記窒素オキソ酸類の含有量が、窒素のオキソ酸換算で、0.01~30質量%であることが好ましく、0.02~20質量%であることがより好ましい。前記窒素オキソ酸類の含有量が、前記下限未満では、十分なプロトン(H)伝導性が得られず十分なNOx浄化性能が得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、他の部材が酸によって腐食されやすくなる傾向にある。
【0027】
本発明に用いられる固体電解質において、前記窒素オキソ酸類が前記アルミノケイ酸塩に含有される形態は特に限定されず、例えば、担体としての前記アルミノケイ酸塩に前記窒素オキソ酸類が担持されている形態であっても、マトリックスとしての前記アルミノケイ酸塩中に前記窒素オキソ酸類が分散して包含されている形態であってもよい。また、前記窒素オキソ酸類が前記アルミノケイ酸塩に吸着されている場合、その形態は、物理吸着であっても、化学吸着であってもよい。
【0028】
また、前記窒素オキソ酸類を前記アルミノケイ酸塩に含有させる方法も特に限定されず、例えば、以下の方法が好適に採用される。
(i)前記窒素オキソ酸類の溶液を前記アルミノケイ酸塩に含浸させた後に乾燥する含浸担持法。
(ii)前記アルミノケイ酸塩にNOx(好ましくはNO)を含有するガス(NOx処理ガス)を長時間にわたって接触させることによって前記アルミノケイ酸塩に前記窒素オキソ酸類を吸着させるNOx処理法(好ましくはNO処理法)。
【0029】
なお、(i)の方法における前記窒素オキソ酸類の溶液の濃度は、特に制限されないが、0.1~40質量%が好ましく、また、乾燥条件も特に制限されないが、乾燥温度は60~150℃が好ましく、乾燥時間は1分~50時間が好ましい。
【0030】
このような(i)の方法としては、前記アルミノケイ酸塩に前記窒素オキソ酸類の溶液を含浸させた後に、得られた窒素オキソ酸類含有アルミノケイ酸塩を用いて所望形状の固体電解質を形成する方法であっても、前記窒素オキソ酸類を含有していない前記アルミノケイ酸塩を用いて所望形状の固体電解質前駆体を形成した後に、得られた固体電解質前駆体に前記窒素オキソ酸類の溶液を含浸させて前記固体電解質を得る方法であってもよい。
【0031】
また、(ii)の方法における前記NOx処理ガスにおけるNOx濃度は、特に制限されないが、10~5000ppmが好ましく、また、接触条件も特に制限されないが、温度は5~100℃が好ましく、時間は1分~5時間が好ましい。さらに、前記NOx処理ガスにおけるバランスガスとしては、特に制限はないが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等の不活性ガスが好ましく、ヘリウムが特に好ましい。また、前記NOx処理ガスには、3~50質量%の水分(HO)がさらに含有されていることが好ましい。さらに、前記NOx処理ガスには、10ppm~25質量%の酸素や、1ppm~1質量%C(炭素換算濃度)の炭化水素ガス(メタン、エタン、プロパン、ブタン等のパラフィン系炭化水素、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン系炭化水素、等)がさらに含有されていてもよい。
【0032】
このような(ii)の方法の一実施形態としては、前記窒素オキソ酸類を含有していない前記アルミノケイ酸塩を用いて所望形状の固体電解質前駆体を形成し、その固体電解質前駆体を備える電気化学セルをガス流路内に配置した状態とし、アノード電極膜とカソード電極膜との間に電圧を印加することなく前記固体電解質前駆体に前記NOx処理ガス(例えば、NOxを含有する排ガスでもよい)を接触させることによって前記窒素オキソ酸類を吸着させる方法であってもよい。
【0033】
本発明に用いられる固体電解質の厚さは、特に制限されないが、0.1~10mmが好ましく、0.2~5mmがより好ましい。固体電解質の厚さが前記下限未満では、強度が不足したり、アノード電極膜とカソード電極膜が接触したりする場合があり、他方、前記上限を超えると、抵抗が大きくなる傾向にある。
【0034】
本発明に用いられる固体電解質(又は、前記窒素オキソ酸類を含有していない固体電解質前駆体)の形状は、特に制限されないが、板状(プレート状)、シート状、フィルム状、管状が好ましい。
【0035】
また、本発明に用いられる固体電解質(又は、固体電解質前駆体)を成形する方法も、特に制限されないが、例えば、前記窒素オキソ酸類含有アルミノケイ酸塩の粉末(又は、前記窒素オキソ酸類を含有していないアルミノケイ酸塩の粉末)を圧縮成形(圧粉成形)することによって、所望形状の固体電解質(又は、固体電解質前駆体)を得ることができる。
【0036】
さらに、固体電解質の密度を増加させ、プロトン(H)伝導性をより向上させるという観点から、前記圧縮成形(圧粉成形)された固体電解質(又は、固体電解質前駆体)を加熱又は焼成して乾燥体又は焼結体を形成することが好ましい。加熱又は焼成温度としては特に制限はないが、110~800℃が好ましく、また、加熱又は焼成時間としては特に制限はないが、10分間~5時間が好ましい。
【0037】
本発明に用いられる固体電解質2の一方の面上にはアノード電極膜1が配置されており、他方の面上には前記アノード電極膜1と対向するようにカソード電極膜3が配置されている。このようなアノード電極膜及びカソード電極膜としては導電性を有する金属膜であればよく、特に制限されないが、アノード電極膜上における水分(水蒸気、HO)の電気分解及びカソード電極膜上におけるNOxの還元分解がより促進されるという観点から、貴金属、Ir、AgO、Cu、Ti、SnO等を含有する電極膜が好ましく、貴金属(Pt、Rh、Pd等)を含有する電極膜がより好ましく、貴金属からなる電極膜がさらにより好ましく、Pt電極膜が特に好ましい。
【0038】
このようなアノード電極膜及びカソード電極膜の厚さとしては特に制限はないが、100nm~10μmが好ましく、150nm~1μmがより好ましい。アノード電極膜及びカソード電極膜の厚さが前記下限未満では、触媒としての活性点が不足し、不活性になったり、電極膜の抵抗が大きくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、電極膜と固体電解質との界面で生成したプロトン(H)がNOxと十分に反応しなかったり、水分やNOx等との接触性が低下する傾向にある。
【0039】
アノード電極膜及びカソード電極膜の形成方法としては特に制限はないが、例えば、固体電解質(又は、固体電解質前駆体)の面上に電極材料を、塗布する方法、蒸着させる方法が挙げられる。電極材料としては、金属ペースト(例えば、Ptペースト)、金属ターゲット(例えば、Ptターゲット)、有機金属等が挙げられる。また、塗布又は蒸着後の電極材料を焼成して乾燥体又は焼結体を形成するようにしてもよい。焼成温度としては特に制限はないが、300~600℃が好ましく、焼成時間としては特に制限はないが、1~5時間が好ましい。
【0040】
本発明のNOx浄化装置においては、このようなアノード電極膜1及びカソード電極膜3と通電装置5とが電極配線1a及び3aによって電気的に接続されている。このような通電装置としては直流の電圧を印加できるものであれば特に制限はなく、公知の通電装置(直流電源)を適宜採用することができる。電極配線としては特に制限はなく、Au線、Pt線、Ni線、Cu線、Ag線等が挙げられる。また、電極配線1a及び3aは、アノード電極膜1及びカソード電極膜3に直接接合されていてもよいし、電極配線1a及び3aが接合された金属メッシュ(Auメッシュ、Ptメッシュ、Niメッシュ、Agメッシュ等)を介してアノード電極膜1及びカソード電極膜3と接触させてもよい。
【0041】
また、本発明のNOx浄化装置において、電気化学セル4(アノード電極膜1と固体電解質2とカソード電極膜3とを備えるもの)は、通常、ガス流路(例えば、排ガス流路)6内に設置される。特に、本発明に用いられる固体電解質2が耐熱性に優れていることから、内燃機関等から排出された高温(例えば、600℃以上)のガスが流通する排ガス流路6内に電気化学セル4を設置することができる。
【0042】
〔NOx浄化方法〕
次に、本発明のNOx浄化方法を、図2に示すNOx浄化装置を用いた場合を例に説明する。このような図2に示すNOx浄化装置を用いてNOxを浄化するNOx浄化方法は、本発明のNOx浄化方法の好適な一実施態様である。なお、前記本発明のNOx浄化装置の好適な一実施態様において説明した内容と重複する内容については省略する。
【0043】
本発明のNOx浄化方法においては、前記NOx浄化装置のアノード電極膜1とカソード電極膜3との間に電圧を印加しながら、NOx及び水分を含む排ガスを前記NOx浄化装置の入ガス供給路6aからガス流路6に導入して、前記排ガスをアノード電極膜1に接触させる(NOx浄化処理)。
【0044】
アノード電極膜1とカソード電極膜3との間に印加する電圧としては、1~20Vが好ましく、2~8Vがより好ましい。印加する電圧が前記下限未満では、反応に必要な水の電気分解が十分に進行しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、プロトン(H)伝導に必要な固体電解質中の水分が失われたり、固体電解質や電極膜が劣化しやすくなる傾向にある。
【0045】
また、アノード電極膜1とカソード電極膜3との間の電流値としては、1mA/cm~1.5A/cmが好ましく、10mA/cm~1A/cmがより好ましい。電極膜間の電流値が前記下限未満では、反応に必要な水の電気分解が十分に進行しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、固体電解質や電極膜が劣化しやすくなる傾向にある。
【0046】
前記排ガスとアノード電極膜1とを接触させる方法としては特に制限はないが、例えば、内燃機関から排出されるガス中のNOxを浄化する場合、内燃機関からの排ガスが流通するガス流路6内に電気化学セル4(アノード電極膜1と固体電解質2とカソード電極膜3とを備えるもの)を設置することによって、前記排ガスとアノード電極膜1とを接触させることができる。
【0047】
このように前記排ガスをアノード電極膜1に接触させることによって、図1に示すように、アノード電極膜1上で前記排ガス中の水分(水蒸気、HO)が電気分解されて水素イオン(プロトン、H)と電子(e)が生成する。このようにして生成した水素イオン(H)は固体電解質2を通って、電子(e)は通電回路を通ってカソード電極膜3へ移動する。カソード電極膜3上では、アノード電極膜1から移動してきた前記水素イオン(H)及び前記電子(e)が前記排ガス中のNOxと反応する。これにより、NOxは窒素分子(N)と水分子(HO)に電気化学的に還元分解され、前記排ガス中のNOxは除去される。また、カソード電極膜3上において、NOxが完全に分解されず、一酸化二窒素(NO)が生成した場合には、NOは水素イオン(H)及び電子(e)と更に反応して窒素分子(N)と水分子(HO)に還元分解され、前記排ガス中のNOxは除去される。その後、このようにNOxが除去された排ガスは浄化ガスとして出ガス排出路6bから排出される。
【0048】
本発明のNOx浄化方法においては、プロトン(H)伝導性に優れた固体電解質2を使用しているため、アノード電極膜1からカソード電極膜3への水素イオン(H)の移動が促進される。その結果、カソード電極膜3上でのNOxと水素イオン(H)との反応も促進されるため、30℃程度の室温付近の低温においても十分に高いNOx浄化性能を得ることができる。
【0049】
本発明のNOx浄化方法を適用することが可能な排ガスとしてはNOx及び水分を含むものであればよく、特に制限はないが、例えば、HOを相対湿度として50%以上含む排ガスが好ましく、HOを相対湿度として70~100%含む排ガスがより好ましい。このような排ガスに本発明のNOx浄化方法を適用すると、カソード電極膜3上におけるNOxと水素イオン(H)との反応性が向上する傾向にある。
【0050】
また、本発明のNOx浄化方法においては、NOx及び水分を含む排ガスを前記NOx浄化装置の入ガス供給路6aからガス流路6に導入する前記NOx浄化処理に先立って、アノード電極膜とカソード電極膜との間に電圧を印加することなく、水分(HO)のみを含有する(NOxは含有しない)HO処理ガスを前記固体電解質に接触させることによって予め水分を吸着させておく前処理を施してもよい(HO処理)。このようなHO処理に用いるHO処理ガスにおけるHO濃度は、特に制限されないが、3~50質量%が好ましく、また、接触条件も特に制限されないが、温度は5~100℃が好ましく、時間は1分~5時間が好ましい。さらに、前記HO処理ガスにおけるバランスガスとしては、特に制限はないが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等の不活性ガスが好ましく、ヘリウムが特に好ましい。
【0051】
また、本発明のNOx浄化方法において、NOx及び水分を含む前記排ガスにHガスを更に導入してもNOx浄化性能は向上しない。すなわち、本発明のNOx浄化方法においては、水の電気分解により生成する水素イオン(H)を利用することによって、Hガスを使用しなくても、十分に高いNOx浄化性能を得ることができる。
【0052】
以上、図2を参照して本発明のNOx浄化装置及びNOx浄化方法の好適な実施形態について説明したが、本発明のNOx浄化装置及びNOx浄化方法は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例
【0053】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
ZSM-5型ゼオライト粉末(東ソー株式会社製「HSZ840HOA」、SiO/Al(モル比)=40、平均粒子径:10μm、平均細孔径:0.58nm)0.35gを用いて圧力300kgf/cmの条件で圧粉成型を行い、直径20mm、厚さ1mmのゼオライトプレート(円板)を作製し、得られたゼオライトプレートを大気中、700℃で1時間焼成して固体電解質前駆体を得た。次に、得られた固体電解質前駆体の両面に、真空蒸着装置(株式会社日本ビーテック製「スパッタ蒸着装置」)を用いて厚さ250nmのPt蒸着膜を形成した後、一辺10mmの正方形の板状に切り出し、固体電解質前駆体2’の両面にアノード電極膜1及びカソード電極膜3が形成されている電気化学セル4を得た。
【0055】
次いで、得られた電気化学セル4を用いて、図3図5に示すNOx浄化装置を作製した。すなわち、先ず、図3は、NOx浄化装置を構成するために用いられた反応容器7(直径50mmの円板状容器)の斜視図であり、反応容器7の内部には、入ガス供給路6aから出ガス排出路6bに連通している横方向のガス流路(図示せず)が形成されており、さらに、前記ガス流路の一部に電気化学セルを配置するための縦方向の貫通孔8(断面が一辺10mmの正方形)が形成されている。
【0056】
また、図4は、図3に示す反応容器7を用いて構成されたNOx浄化装置の縦断面図であり、図5は、図4に示すNOx浄化装置のA-A断面図である。図4及び図5に示すNOx浄化装置においては、電気化学セル4は、両面が金メッシュ9(4mm×10mm)を介して挟持部材10(9mm×9mm×9mm)により挟持された状態で反応容器7の貫通孔8の内部に配置されており、挟持部材10の端面にはガス流路6に連通するガス拡散路6c(溝の幅:0.5mm、溝の深さ:0.5mm、溝のピッチ:1mm)が形成されている。さらに、アノード電極膜1に当接している金メッシュ9に電極配線1aが、カソード電極膜3に当接している金メッシュ9に電極配線3aがそれぞれ電気的に接続されており、電極配線1a及び電極配線3aが通電装置である直流電源5に接続されている。
【0057】
そして、このように固体電解質前駆体2’の両面にアノード電極膜1及びカソード電極膜3が形成されている電気化学セル4を反応容器7の内部に配置した後、アノード電極膜1とカソード電極膜3との間に電圧を印加することなく、入ガス供給路6aから表1に示す成分及び流量のガス(NO処理ガス)を30℃で40分流通させることにより(NO処理)、固体電解質前駆体2’に硝酸成分を吸着せしめて、本発明に係る固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。
【0058】
このようにして得られたNOx浄化装置における固体電解質2中の硝酸の含有量をイオンクロマトグラフィーシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製「ICS-3000」)により定量したところ、固体電解質2における硝酸の含有量は0.46質量%であった。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例2)
実施例1と同様にして得られた、固体電解質前駆体2’の両面にアノード電極膜1及びカソード電極膜3が形成されている電気化学セル4(一辺10mmの正方形の板状)に、濃度10質量%の硝酸水溶液を含浸せしめた後、120℃で12時間乾燥させて、硝酸の含有量が4質量%である固体電解質2を備えた本発明に係る電気化学セル4を得た。
【0061】
次いで、得られた電気化学セル4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、図3図5に示すNOx浄化装置を作製した後、アノード電極膜1とカソード電極膜3との間に電圧を印加することなく、入ガス供給路6aから表2に示す成分及び流量のガス(HO処理ガス)を30℃で40分流通させることにより(HO処理)、HO処理が施された本発明に係る固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。
【0062】
【表2】
【0063】
(実施例3)
ZSM-5型ゼオライト粉末(東ソー株式会社製「HSZ840HOA」、SiO/Al(モル比)=40、平均粒子径:10μm、平均細孔径:0.58nm)に硝酸水溶液を含浸せしめた後、150℃で12時間乾燥させて、硝酸の含有量が4質量%である硝酸含有ゼオライト粉末を得た。
【0064】
次に、得られた硝酸含有ゼオライト粉末0.35gを用いて圧力300kgf/cmの条件で圧粉成型を行い、直径20mm、厚さ1mmの硝酸含有ゼオライトプレート(円板)を作製し、得られた硝酸含有ゼオライトプレートを大気中、700℃で1時間焼成して固体電解質を得た。次に、得られた固体電解質の両面に、真空蒸着装置(株式会社日本ビーテック製「スパッタ蒸着装置」)を用いて厚さ250nmのPt蒸着膜を形成した後、一辺10mmの正方形の板状に切り出し、固体電解質2の両面にアノード電極膜1及びカソード電極膜3が形成されている電気化学セル4を得た。
【0065】
次いで、得られた電気化学セル4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、図3図5に示すNOx浄化装置を作製した後、アノード電極膜1とカソード電極膜3との間に電圧を印加することなく、入ガス供給路6aから表2に示す成分及び流量のガス(HO処理ガス)を30℃で40分流通させることにより(HO処理)、HO処理が施された本発明に係る固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。
【0066】
(実施例4)
NO処理におけるNO処理ガスを表3に示す成分及び流量のガスとし、さらにこのNO処理ガスを流通させる温度及び時間をそれぞれ24℃及び120分としたこと以外は実施例1と同様にして本発明に係る固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。このようにして得られたNOx浄化装置における固体電解質2中の硝酸の含有量を実施例1と同様にして定量したところ、固体電解質2における硝酸の含有量は約1質量%であった。
【0067】
【表3】
【0068】
(実施例5)
ゼオライト粉末として、ZSM-5型ゼオライト粉末(東ソー株式会社製「HSZ890HOA」、SiO/Al(モル比)=1500、平均粒子径:10μm、平均細孔径:0.58nm)0.31gを用いたこと以外は実施例4と同様にして本発明に係る固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。このようにして得られたNOx浄化装置における固体電解質2中の硝酸の含有量を実施例1と同様にして定量したところ、固体電解質2における硝酸の含有量は1.0質量%であった。
【0069】
(実施例6)
ゼオライト粉末として、ZSM-5型ゼオライト粉末(東ソー株式会社製「HSZ891HOA」、SiO/Al(モル比)=1500、平均粒子径:4μm、平均細孔径:0.58nm)0.31gを用いたこと以外は実施例4と同様にして本発明に係る固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。このようにして得られたNOx浄化装置における固体電解質2中の硝酸の含有量を実施例1と同様にして定量したところ、固体電解質2における硝酸の含有量は0.9質量%であった。
【0070】
(実施例7)
NO処理におけるNO処理ガスを表4に示す成分及び流量のガスとしたこと以外は実施例1と同様にして本発明に係る固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。このようにして得られたNOx浄化装置における固体電解質2中の硝酸の含有量を実施例1と同様にして定量したところ、固体電解質2における硝酸の含有量は2.3質量%であった。
【0071】
【表4】
【0072】
(実施例8)
ゼオライト粉末として、Y型ゼオライト粉末(ユニオン昭和株式会社製「USKY-2000」、SiO/Al(モル比)=200、平均粒子径:10μm以下)0.23gを用いたこと以外は実施例7と同様にして本発明に係る固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。このようにして得られたNOx浄化装置における固体電解質2中の硝酸の含有量を実施例1と同様にして定量したところ、固体電解質2における硝酸の含有量は4.6質量%であった。
【0073】
(比較例1)
NO処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較のための固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。このようにして得られたNOx浄化装置における固体電解質2中の硝酸の含有量を実施例1と同様にして定量したところ、固体電解質2における硝酸の含有量は0質量%であった。
【0074】
(比較例2)
NO処理に代えて、アノード電極膜1とカソード電極膜3との間に電圧を印加することなく、入ガス供給路6aから表2に示す成分及び流量のガス(HO処理ガス)を30℃で40分流通させることによりHO処理を施したこと以外は実施例1と同様にして、比較のための固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。このようにして得られたNOx浄化装置における固体電解質2中の硝酸の含有量を実施例1と同様にして定量したところ、固体電解質2における硝酸の含有量は0質量%であった。
【0075】
(比較例3)
ZSM-5型ゼオライト粉末(東ソー株式会社製「HSZ840HOA」、SiO/Al(モル比)=40、平均粒子径:10μm、平均細孔径:0.58nm)にリン酸水溶液を含浸せしめた後、150℃で12時間乾燥させて、リン酸の含有量が4質量%であるリン酸含有ゼオライト粉末を得た。次に、得られたリン酸含有ゼオライト粉末を用いたこと以外は実施例3と同様にして、比較のための固体電解質2を備えたNOx浄化装置を得た。
【0076】
<NOx浄化性能評価試験1>
実施例1~3及び比較例1~3で得られたNOx浄化装置について、以下のようにして性能評価試験(NOx浄化試験)を行なった。すなわち、評価対象のNOx浄化装置の入ガス供給路6aから表5に示す成分及び流量のガス(模擬排ガス、相対湿度:100%)を30℃で流通させながら、アノード電極膜1とカソード電極膜3との間に4Vの電圧を10秒間印加したところ、実施例1:80mA/cm、実施例2:320mA/cm、実施例3:25mA/cm、比較例1:7mA/cm、比較例2:4mA/cm、比較例3:10mA/cmの電流が流れた。このときの出ガス排出路6bからの出ガス中のNO濃度を、質量分析器(キャノンアネルバ株式会社製「四重極型質量分析計M-101QA-TDF」)を用いて質量電荷比(m/z)=30として測定した。なお、NO濃度と質量分析ピーク強度との関係は、予め既知の濃度のNOを含む混合ガスを用いて校正した。その結果、出ガス中のNO濃度の減少率(非通電時に対する通電時のNO減少率)は、図6に示すように、実施例1:47.5%、実施例2:50.4%、実施例3:38.0%、比較例1:14.1%、比較例2:13.1%、比較例3:29.0%であった。
【0077】
【表5】
【0078】
<NOx浄化性能評価試験2>
実施例4~6で得られたNOx浄化装置について、以下のようにして性能評価試験(NOx浄化試験)を行なった。すなわち、評価対象のNOx浄化装置の入ガス供給路6aから表6に示す成分及び流量のガス(模擬排ガス、相対湿度:100%)を24℃で流通させながら、アノード電極膜1とカソード電極膜3との間に4Vの電圧を10秒間印加したところ、実施例4:120mA/cm、実施例5:108mA/cm、実施例6:260mA/cmの電流が流れた。このときの出ガス排出路6bからの出ガス中のNO濃度を性能評価試験1と同様にして測定したところ、出ガス中のNO濃度の減少率(非通電時に対する通電時のNO減少率)は、図7に示すように、実施例4:49.5%、実施例5:64.2%、実施例6:56.1%であった。
【0079】
【表6】
【0080】
<NOx浄化性能評価試験3>
実施例7~8で得られたNOx浄化装置について、以下のようにして性能評価試験(NOx浄化試験)を行なった。すなわち、評価対象のNOx浄化装置の入ガス供給路6aから表7に示す成分及び流量のガス(模擬排ガス、相対湿度:100%)を30℃で流通させながら、アノード電極膜1とカソード電極膜3との間に4Vの電圧を10秒間印加したところ、実施例7:350mA/cm、実施例8:730mA/cmの電流が流れた。このときの出ガス排出路6bからの出ガス中のNO濃度を性能評価試験1と同様にして測定したところ、出ガス中のNO濃度の減少率(非通電時に対する通電時のNO減少率)は、図8に示すように、実施例7:69.7%、実施例8:70.5%であった。
【0081】
【表7】
【0082】
<評価>
図6~8に示した結果からも明らかな通り、前記窒素オキソ酸類を含有するアルミノケイ酸塩からなる固体電解質を備えた本発明のNOx浄化装置によれば、前記窒素オキソ酸類が実質的に含有されていない固体電解質を備えたNOx浄化装置や、前記窒素オキソ酸類に代えてリン酸を含有する固体電解質を備えたNOx浄化装置に比べて、30℃程度の室温付近の低温において顕著に高いNOx浄化性能が発揮されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明によれば、30℃程度の室温付近の低温においても十分に高いNOx浄化性能を有しており、かつ、耐熱性にも優れているNOx浄化装置、並びに、それを用いたNOx浄化方法を提供することが可能となる。
【0084】
したがって、本発明のNOx浄化装置及びそれを用いたNOx浄化方法は、自動車排ガス処理、低温排ガス処理、分散型コージェネレーションシステム、長距離トンネルや工場等の閉鎖空間におけるNOx浄化等に使用でき、特に、ディーゼルエンジンや燃料消費率の低い希薄燃料式(リーンバーン)エンジン等の内燃機関からの排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化するためのNOx浄化装置及びそれを用いたNOx浄化方法として特に有用である。
【符号の説明】
【0085】
1:アノード電極膜、1a:電極配線、2:固体電解質、2’:固体電解質前駆体、3:カソード電極膜、3a:電極配線、4:電気化学セル、5:通電装置、6:ガス流路、6a:入ガス供給路、6b:出ガス排出路、6c:ガス拡散路、7:反応容器、8:貫通孔、9:金メッシュ、10:挟持部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8