(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】コンクリートスランプの推定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
G01N33/38
(21)【出願番号】P 2019007915
(22)【出願日】2019-01-21
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昌周
(72)【発明者】
【氏名】石井 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋二
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-4436(JP,A)
【文献】特開平4-147033(JP,A)
【文献】特開2011-69836(JP,A)
【文献】特開2007-262861(JP,A)
【文献】特開2014-211062(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0011161(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS A 1101に準じて測定されたコンクリートのスランプと、
前記コンクリートから粗骨材を除いたモルタルの硬度であって、ゴム硬度計により測定された硬度
との相間関係に基づいて、測定対象のコンクリートのスランプを推定する方法。
【請求項2】
前記相間関係は、回帰分析によって得られる下記式(1);
y=αx+β (1)
〔式中、
xは、ゴム硬度計により測定されたモルタルの硬度を示し、
yは、コンクリートのスランプ値(cm)を示し、
α及びβは、相互に独立に、実数の定数を示す。〕
で表される回帰式で示され、該回帰式に測定対象のコンクリートから粗骨材を除いたモルタルの硬度を代入し、測定対象のコンクリートのスランプを推定する、請求項1記載の推定方法。
【請求項3】
前記モルタルが下記の(A)及び(B)のうちのいずれかである、請求項1又は2記載の推定方法。
(A)前記コンクリートをウェットスクリーニングして採取されたモルタル
(B)前記コンクリートから粗骨材を除いた配合で作製されたモルタル
【請求項4】
スランプが4~23cmであるコンクリートを対象とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項5】
コンクリートがセメント、粗骨材、細骨材及び水を含むものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスランプの推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの品質を判断する方法として、例えば、JIS A 1101に規定されている「コンクリートのスランプ試験方法」がある。このスランプ試験では、水平面上に設置されたスランプコーン内にコンクリートを充填し、突棒で撹拌した後、スランプコーンを静かに鉛直に引き上げ、コンクリート中央部の下がりを計測する。このようにして測定されたスランプは、コンクリートの流動性の判断指標とされている。しかしながら、スランプ試験では、コンクリートを少なくとも5.5L準備し、2名以上の作業人員を要するため、人員や場所、時間の確保等に多大な労力を費やさなければならなかった。また、スランプ試験で異常が検知された場合には再試験を行うことがあり、作業効率の低下が避けられなかった。
【0003】
そこで、従来スランプ試験を行うことなく、コンクリートスランプを簡便に推定する方法が提案されている。例えば、2種以上の骨材物性と、コンクリートのスランプとの重相関関係を重回帰分析により求め、当該重相関関係に基づいて、各フレッシュコンクリートに用いられている骨材の特性から、スランプを算出する方法が提案されている(特許文献1)。また、細骨材の吸水率、微粒分量、粗粒率及び算術平均粗さに基づき、コンクリートのスランプフロー値を推定する方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-169602号公報
【文献】特開2018-4436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、多大な労力を要することなく、簡便にコンクリートのスランプを推定できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討した結果、JIS A 1101に準じて測定されたコンクリートのスランプと、該コンクリートから粗骨材を除いたモルタルの硬度とに相関関係があり、両者は直線関係が成立すること、そして該直線関係を用いれば、測定対象のコンクリートから粗骨材を除いたモルタルの硬度に基づいてコンクリートのスランプを推定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔5〕を提供するものである。
〔1〕JIS A 1101に準じて測定されたコンクリートのスランプと、
前記コンクリートから粗骨材を除いたモルタルの硬度であって、ゴム硬度計により測定された硬度
との相間関係に基づいて、測定対象のコンクリートのスランプを推定する方法。
〔2〕前記相間関係は、回帰分析によって得られる下記式(1);
y=αx+β (1)
〔式中、
xは、ゴム硬度計により測定されたモルタルの硬度を示し、
yは、コンクリートのスランプ(cm)を示し、
α及びβは、相互に独立に、実数の定数を示す。〕
で表される回帰式で示され、該回帰式に測定対象のコンクリートから粗骨材を除いたモルタルの硬度を代入し、測定対象のコンクリートのクランプを推定する、〔1〕記載の推定方法。
〔3〕前記モルタルが下記の(A)及び(B)のうちのいずれかである、〔1〕又は〔2〕記載の推定方法。
(A)前記コンクリートをウェットスクリーニングして採取されたモルタル
(B)前記コンクリートから粗骨材を除いて作製されたモルタル
〔4〕スランプが4~23cmであるコンクリートを対象とする、〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の推定方法。
〔5〕コンクリートがセメント、粗骨材、細骨材及び水を含むものである、〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の推定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリートを実際に製造しなくても、比較的手間のかからないモルタルを製造するだけで、コンクリートのスランプを精度良く推定することができる。したがって、コンクリートを製造するための労力や手間を節約でき、建設現場の要求に合致したコンクリートを安価に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1で使用したコンクリートについて、注水からの経過時間と、スランプとの関係を示す図である。
【
図2】実施例1で使用したモルタルについて、注水からの経過時間と、硬度との関係を示す図である。
【
図3】実施例1で使用したコンクリートのスランプと、モルタルの硬度との相関関係を示す図である。
【
図4】実施例2で使用したコンクリートについて、注水からの経過時間と、スランプとの関係を示す図である。
【
図5】実施例2で使用したモルタルについて、注水からの経過時間と、硬度との関係を示す図である。
【
図6】実施例2で使用したコンクリートのスランプと、モルタルの硬度との相関関係を示す図である。
【
図7】実施例3で使用したコンクリートについて、注水からの経過時間と、スランプとの関係を示す図である。
【
図8】実施例3で使用したモルタルについて、注水からの経過時間と、硬度との関係を示す図である。
【
図9】実施例3で使用したコンクリートのスランプと、モルタルの硬度との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の推定方法においては、JIS A 1101に準じて測定されたコンクリートのスランプと、該コンクリートから粗骨材を除いて作製されたモルタルの硬度との相関関係を予め求める。
【0011】
(コンクリートスランプ)
先ず、コンクリートを準備する。
コンクリートは、セメント、粗骨材、細骨材及び水を含むものが好ましい。
セメントとしては特に限定されないが、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低アルカリ形ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等の混合セメント、エコセメント、アルミナセメント、超速度セメント等の特殊セメントが挙げられる。セメントは、1種又は2種以上使用することができる。
【0012】
粗骨材としては、コンクリートの製造に使用される一般的なものを用いることができる。例えば、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」附属書A及びJIS A5005「コンクリート用砕石及び砕砂」に規定される粗骨材が挙げられる。具体的には、砂利、砕石、スラグ粗骨材、軽量粗骨材等を挙げることができる。粗骨材は、1種又は2種以上使用することができる。また、粗骨材の最大粒径は、細骨材の粒径よりも大きいものであれば特に限定されないが、通常40mm以下、好ましくは25mm以下、更に好ましくは20mm以下である。
【0013】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、軽量細骨材等が挙げられる。細骨材は、1種又は2種以上使用することができる。また、細骨材の最大粒径は、5mm以下であることが好ましい。
【0014】
水は、コンクリートの強度や流動性等の物性に悪影響を与えないものであれば特に限定されないが、例えば、JIS A 5303付属書Cに規定される上水道水、該上水道水以外の水(例えば、河川水、湖沼水、井戸水、地下水、工業用水)等が挙げられる。
【0015】
また、コンクリートには、所望により、混和剤を含有させてもよい。混和剤としては、例えば、JIS A 6204に規定されているコンクリート用化学混和剤が挙げられる。具体的には、減水剤、AE剤等を挙げることができる。具体例としては、例えば、高性能減水剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤等が挙げられる。また、減水剤の化合物は、例えば、主な成分としてナフタレンスルホン酸、リグニンスルホン酸、メラミンスルホン酸等のホルムアルデヒド縮合物、ポリカルボン酸、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
更に、コンクリートは、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石粉末、珪石粉末、膨張材等を含有することができる。
【0016】
水とセメントとの質量比(水/セメント)は、コンクリートの要求特性に応じて適宜設定可能であるが、通常30~75質量%、好ましくは45~65質量%である。
また、細骨材の割合は、コンクリート中の全骨材量に対して、通常30~60質量%、好ましくは40~50質量%である。
【0017】
コンクリートの製造方法は特に限定されず、当該技術分野で一般的に採用されている方法を採用することができる。例えば、強制練りミキサに、セメント、骨材(細骨材、粗骨材)を入れ、空練りを行い、次いで水、必要により混和剤を加えて混練し、コンクリートを製造することができる。
【0018】
次に、コンクリートのスランプを測定する。
スランプの測定は、注水から所定時間ごとに、JIS A 1101に準じて行う。スランプの測定時間は適宜設定可能であるが、例えば、注水から6分、30分、60分及び90分経過時とすることができる。その具体例として、
図1に、実施例1で使用したコンクリートについて、注水から6分、30分、60分及び90分経過時に測定したスランプを示す。また、
図4に、実施例2で使用したコンクリートについて、注水から6分、30分、60分及び90分経過時に測定したスランプを示す。更に、
図7に、実施例3で使用したコンクリートについて、注水から6分、30分、60分及び90分経過時に測定したスランプを示す。
【0019】
(モルタル硬度)
先ず、コンクリートから粗骨材を除いたモルタルを準備する。
ここで、本明細書において「コンクリートから粗骨材を除いたモルタル」とは、コンクリート中の粗骨材のみが混入されていないモルタルをいう。したがって、当該モルタルは、粗骨材を除いたこと以外は前記コンクリートと同一成分を使用し、モルタル配合中の水、セメント、細骨材の容積比はコンクリート配合と同一とする。
【0020】
モルタルは、例えば、下記の(A)及び(B)のうちのいずれかを使用することができる。
(A)前記コンクリートをウェットスクリーニングして採取されたモルタル
(B)前記コンクリートから粗骨材を除いて作製したモルタル
【0021】
(A)において、「ウェットスクリーニング」とは、練り上がったコンクリートを篩にかけてモルタルを採取することをいう。ウェットスクリーニングは、網篩を用いればよく、例えば目開き4.75mmのJIS Z 8801-1に準拠した金属製網篩を用いて、手動又は機械によって行うことができる。また、ふるい分けは、ふるいに上下動及び水平動を与えてコンクリートを揺り動かし、コンクリートが絶えずふるい面を均等に運動するように行うことが好ましい。機械を用いてふるい分けた場合、更に手でふるい分けしてもよい。
また、(B)において、モルタルの製造は常法にしたがえばよく、十分に練混ぜることができれば特に限定されない。
【0022】
次に、モルタルの硬度を測定する。
モルタル硬度の測定は、例えば、次の手順で行うことができる。先ず、モルタル容器にモルタルを投入し、タッピングして空気を抜いた後、容器開口部の余分なモルタルを定規で除去しながらならし、モルタル表面と容器上面とを一致させる。次いで、容器上面に空気が入らないようにモルタル表面をビニールで覆った後、ゴム硬度計を手で垂直に保持しながら、ゴム硬度計の測定面とビニール上面(測定面)とが平行になったときに、ゴム硬度計をビニール上に静かに載置し、手を放した直後のゴム硬度計の指針を正面から読み取る。
【0023】
モルタル容器としては、耐久性の観点から、金属製であることが好ましい。容器の形状は有底筒体であれば特に限定されないが、容器開口部がゴム硬度計の測定面より大きいものが好ましい。容器の深さは、測定精度の観点から、25mm以上が好ましい。
【0024】
ゴム硬度計は、ウレタンフォームやスポンジ等の柔らかい試料の硬度を測定可能な発泡体用硬度計であって、大きなインデンタと加圧面を有する硬度計が好ましく、例えば、アスカ―ゴム硬度計F型(高分子計器社製)、GS-744G(テクロック社製)、ハードマチックHH-329(ミツトヨ社製)、ゴム硬度計ESC型(エラストロン社製)を使用することができる。
【0025】
モルタル硬度は、注水から所定時間ごとに測定する。
測定時間は適宜設定することが可能であるが、コンクリートスランプとの相関関係を求める点で、コンクリートスランプの測定時間と同一とすることが望ましい。その具体例として、
図2に、実施例1で使用したモルタルについて、注水から6分、30分、60分及び90分経過時に測定した硬度を示す。また、
図5に、実施例2で使用したモルタルについて、注水から6分、30分、60分及び90分経過時に測定した硬度を示す。更に、
図8に、実施例3で使用したモルタルについて、注水から6分、30分、60分及び90分経過時に測定したモルタル硬度を示す。なお、容器にモルタルを投入する際に、測定に供するモルタルを練り返しても構わないが、練り返しの有無を統一するものとする。
【0026】
(回帰分析)
コンクリートのスランプと、モルタル硬度との相関関係について回帰分析を行う。より具体的には、例えば、コンクリートスランプを縦軸とし、モルタル硬度を横軸としてプロットし、最小二乗法により下記式(1)で表される回帰式を求める。モルタル硬度の単位は、SI単位でも、非SI単位でもよく、装置の目盛を用いることもできる。
【0027】
y=αx+β (1)
【0028】
〔式中、
xは、ゴム硬度計により測定されたモルタル硬度を示し、
yは、コンクリートのスランプ(cm)を示し、
α及びβは、相互に独立に、実数の定数を示す。〕
【0029】
図3に、実施例1で使用したコンクリートのスランプと、モルタルの硬度との関係を表す回帰直線を示す。また、
図6に、実施例2で使用したコンクリートのスランプと、モルタルの硬度との関係を表す回帰直線を示す。更に、
図9に、実施例3で使用したコンクリートのスランプと、モルタルの硬度との関係を表す回帰直線を示す。例えば、
図3に示す回帰直線は、回帰式y=-41.96x+27.382で表すことができる。
【0030】
(コンクリートスランプの推定)
測定対象のコンクリートのスランプは、次の方法により推定することができる。
先ず、測定対象のコンクリートから粗骨材を除いたモルタルを作製する。次いで、モルタルの硬度を測定する。なお、モルタルの作製及び硬度の測定は、前記と同様の方法により行うことができる。そして、得られたモルタル硬度を前記回帰式(1)に代入して測定対象のコンクリートのスランプを推定する。
【0031】
なお、測定対象のコンクリートは、高い精度でスランプを推定するために、前記回帰式を求めたコンクリートと
(i)セメントの種類が同一である
(ii)骨材の種類が同一である
(iii)水/セメントの質量比(W/C)が45~65質量%の範囲内である
(iv)全骨材量に対する細骨材の割合(s/a)の差分が±5質量%以内である
という条件をすべて満たすことが好ましい。
また、スランプが、好ましくは4~23cm、より好ましくは4~20cm、更に好ましくは8~23cmであるコンクリートを対象とすることが望ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0033】
1.コンクリート材料
本実施例で使用したコンクリート材料は、以下のとおりである。
【0034】
【0035】
2.スランプの測定
注水から6分、30分、60分及び90分経過時のコンクリートについて、JIS A 1101に準拠してスランプを測定した。
【0036】
3.モルタル硬度の測定
注水から6分、30分、60分及び90分経過時のモルタルについて、ゴム硬度計(商品名:アスカーゴム硬度計F型、高分子計器社製)を用いて硬度を測定した。測定は次の手順で行った。先ず、モルタル容器(サンダイヤ ステンレスシャーレ SUS304,φ120×H25mm)にモルタルを投入し、タッピングして空気を抜いた後、定規で余分な試料をかき取ってならしモルタル表面と容器上面とを正しく一致させた。次いで、容器上面に空気の入らないように、モルタル表面を厚さ11μmのポリ塩化ビニリデン製ビニール(サランラップ(登録商標),AsahiKASEI社製)を被せた。そして、ゴム硬度計を手で垂直に保持しながら、ゴム硬度計の加圧面とビニール上面(測定面)とが平行になったときに、ビニール上にゴム硬度計を静かに置き、手を放した直後のゴム硬度計の指針の位置を正面から読み取った。なお、本実施例で使用したゴム硬度計は、指針が0ポイントの場合は539mN、100ポイントの場合は4460mNに設計されているので、これより1ポイント当たりの応力を算出し、硬度(mN/mm2)を求めた。
【0037】
実施例1
表2に示すコンクリート材料を下記(1)に記載の方法で混練してコンクリートを作製し、下記(2)に記載の方法によりモルタルを採取した。
【0038】
(1)コンクリートの混練
表2に示す、粗骨材、半分の砕砂、セメント、及び残り半分の砕砂の順番で投入した材料を、強制練りミキサ(パン型、公称容量55L)を用いて20秒間空練した後、AE減水剤とAE剤を混入した水を投入して120秒間混練してコンクリートを作製した。なお、コンクリートの混錬は、20±2℃、80%R.H.の環境下の試験室で行った。
【0039】
(2)モルタルの採取
練上がったコンクリートを公称目開き4.75mm(JIS Z 8801-1)の網篩でふるい、モルタルを採取した。
【0040】
(3)スランプ及びモルタル硬度の測定
注水から6分、30分、60分及び90分経過時のコンクリートについて、JIS A 1101に準拠してスランプを測定した。また、注水から6分、30分、60分及び90分経過時のモルタルについて、モルタル硬度を測定した。その結果を表2に併せて示す。また、試料No.1~5の注水から6分、30分、60分及び90分経過時のコンクリートスランプを
図1に示し、試料No.1~5の注水から6分、30分、60分及び90分経過時のモルタル硬度を
図2に示す。
【0041】
(4)回帰分析
前記(3)により得られたコンクリートスランプを縦軸とし、モルタル硬度を横軸としてプロットし、最小二乗法により回帰式を求めた。その結果を
図3に示す。
【0042】
【0043】
実施例2
表3に示すコンクリート材料を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作によりコンクリート及びモルタルを作製した。そして、実施例1と同様の方法により、コンクリートの注水から6分、30分、60分及び90分経過時のスランプと、注水から6分、30分、60分及び90分経過時のモルタル硬度を測定した。その結果を表3に併せて示す。また、試料No.6、7の注水から6分、30分、60分及び90分経過時のコンクリートスランプを
図4に示し、試料No.6、7の注水から6分、30分、60分及び90分経過時のモルタル硬度を
図5に示す。そして、コンクリートスランプを縦軸とし、モルタル硬度を横軸としてプロットし、最小二乗法により回帰式を求めた。その結果を
図6に示す。
【0044】
【0045】
実施例3
表4に示すコンクリート材料を用いて、実施例1と同様の操作によりコンクリートを作製した。また、粗骨材を用いないモルタルを作製した。なお、モルタルの混錬は、モルタル用ホバートミキサー(公称容量4.7リットル)を用い、20±2℃、80%R.H.の環境下の試験室で行った。また、モルタルの混練は、JIS R 5201に準じて低速、140±5rpmで半分の細骨材、セメント、及び残り半分の細骨材を、20秒間空練した後、AE減水剤とAE剤を混入した水を投入して120秒間行った。そして、実施例1と同様の操作により、注水から6分、30分、60分及び90分経過時のコンクリートスランプと、注水から6分、30分、60分及び90分経過時のモルタル硬度を測定した。その結果を表4に併せて示す。また、試料No.8~11の注水から6分、30分、60分及び90分経過時のコンクリートスランプを
図7に示し、試料No.8~11の注水から6分、30分、60分及び90分経過時のモルタル硬度を
図8に示す。そして、コンクリートスランプを縦軸とし、モルタル硬度を横軸としてプロットし、最小二乗法により回帰式を求めた。その結果を
図9に示す。
【0046】
【0047】
図3、6及び9に示すように、コンクリートスランプとモルタル硬度との間に直線関係が成立し、しかも決定係数R
2が1に極めて近いことから、高い精度でコンクリートのスランプを推定できることがわかる。