IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許7165066クリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材
<>
  • 特許-クリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材 図1
  • 特許-クリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材 図2
  • 特許-クリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材 図3
  • 特許-クリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】クリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材
(51)【国際特許分類】
   B08B 1/00 20060101AFI20221026BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B08B1/00
H01L21/68 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019014553
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020121273
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】深道 佑一
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-103639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00-1/04
B08B 5/00-13/00
H01L 21/304
H01L 21/67-21/683
C09J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーニング層を備えるクリーニングシートであって、
該クリーニング層がポリベンゾオキサゾールを含み、
該クリーニング層中の該ポリベンゾオキサゾールの含有割合が50重量%~100重量%であり、
該クリーニング層の400nmにおける透過率が50%以上であり、
該クリーニング層の200℃の環境下に3時間曝した後の400nmにおける透過率が50%以上である、
クリーニングシート。
【請求項2】
前記クリーニング層の厚みが1μm~500μmである、請求項1に記載のクリーニングシート。
【請求項3】
粘着剤層を含む、請求項1または2に記載のクリーニングシート。
【請求項4】
支持体を含む、請求項1から3までのいずれかに記載のクリーニングシート。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載のクリーニングシートと搬送部材を有する、クリーニング機能付搬送部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板などの製造装置や検査装置など、異物を嫌う各種の基板処理装置では、搬送装置(代表的には、チャックテーブルなど)と基板とを物理的に接触させながら搬送する。その際、搬送装置に異物が付着していると、後続の基板をつぎつぎと汚染するため、定期的に装置を停止し、洗浄処理する必要があった。その結果、処理装置の稼動率が低下するという問題や装置の洗浄処理のために多大な労力が必要となるという問題があった。
【0003】
このような問題を克服するため、板状部材を基板処理装置内に搬送することにより搬送装置に付着している異物を除去する方法(特許文献1参照)が提案されている。この方法によれば、基板処理装置を停止させて洗浄処理を行う必要がないので、処理装置の稼動率が低下するという問題は解消される。しかし、この方法によっては、搬送装置に付着している異物を十分に除去することができていない。
【0004】
一方、粘着性物質を固着した基板をクリーニング部材として基板処理装置内に搬送することにより、搬送装置に付着した異物を除去する方法(特許文献2参照)が提案されている。この方法は、特許文献1に記載の方法に比べて、異物の除去性に優れる。しかし、特許文献2に記載の方法においては、粘着性物質と搬送装置との接触部分が強く接着しすぎて離れなくなる問題が生じ得る。その結果、粘着性物質を固着した基板を確実に搬送できないという問題や、搬送装置を破損させるという問題が生じ得る。
【0005】
上記のような各種問題などを解決する手段として、本出願人は、アクリル系ポリマー、ポリイミド、ポリエステルをクリーニング層として採用した、基板処理装置内に搬送する搬送部材に好適に用い得るクリーニングシートを報告している(特許文献3、4)。
【0006】
クリーニングシートは、異物を除去することを目的とした部材であるため、異物確認のために可能な限り透明性が高いことが好ましい。しかしながら、従来のクリーニングシートにおいては、クリーニング層の透明性が低いため、異物の存在を十分に視認することができないという問題がある。
【0007】
また、近年、半導体デバイスの多様化に伴い、基板処理装置内において、高温条件で搬送等を行わなければならないプロセス領域を設定することが求められることがある。しかし、上記のような従来のクリーニングシートは、耐熱性が十分ではなく、例えば、200℃レベルの高温条件下においては、クリーニング層が加熱変色してしまい、異物の存在を十分に視認することがさらに困難になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-87458号公報
【文献】特開平10-154686号公報
【文献】特開2007-307521号公報
【文献】特開2010-259970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、基板処理装置内に搬送する搬送部材に好適に用い得る、異物除去性能および透明性に優れたクリーニングシートを提供することにある。また、そのようなクリーニングシートと搬送部材を有する、異物除去性能および透明性に優れたクリーニング機能付搬送部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のクリーニングシートは、クリーニング層を備えるクリーニングシートであって、該クリーニング層の400nmにおける透過率が50%以上であり、
該クリーニング層の200℃の環境下に3時間曝した後の400nmにおける透過率が50%以上である。
【0011】
一つの実施形態においては、上記クリーニング層の厚みが1μm~500μmである。
【0012】
一つの実施形態においては、本発明のクリーニングシートは、粘着剤層を含む。
【0013】
一つの実施形態においては、本発明のクリーニングシートは、支持体を含む。
【0014】
本発明のクリーニング機能付搬送部材は、上記クリーニングシートと搬送部材を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板処理装置内に搬送する搬送部材に好適に用い得る、異物除去性能および透明性に優れたクリーニングシートを提供することができる。また、そのようなクリーニングシートと搬送部材を有する、異物除去性能および透明性に優れたクリーニング機能付搬送部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明のクリーニングシートの一つの実施形態を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明のクリーニングシートの別の一つの実施形態を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明のクリーニングシートのさらに別の一つの実施形態を示す概略断面図である。
図4図4は、本発明のクリーニング機能付搬送部材の一つの実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪≪1.クリーニングシート≫≫
本発明のクリーニングシートは、クリーニング層を備える。本発明のクリーニングシートは、クリーニング層のみから構成されていてもよいし、他の層を有していてもよい。
【0018】
本発明のクリーニングシートは、好ましくは、耐熱性に優れ、高温環境下においても十分に使用可能である。このような高温環境としては、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは200℃以上であり、さらに好ましくは250℃以上であり、さらに好ましくは300℃以上であり、特に好ましくは350℃以上である。
【0019】
本発明のクリーニングシートは、それが備えるクリーニング層の400nmにおける透過率が50%以上であり、好ましくは55%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは65%以上であり、特に好ましくは70%以上である。クリーニング層の400nmにおける透過率が上記範囲内にあれば、透明性が高いために、異物視認性に優れるクリーニングシートを提供することができる。
【0020】
本発明のクリーニングシートは、それが備えるクリーニング層の、200℃の環境下に3時間曝した後の、400nmにおける透過率が50%以上であり、好ましくは55%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは65%以上であり、特に好ましくは70%以上である。クリーニング層の200℃の環境下に3時間曝した後の400nmにおける透過率が上記範囲内にあれば、高温環境下に曝した後においても透明性が高いために、高温環境下に曝した後においても異物視認性に優れるクリーニングシートを提供することができる。
【0021】
図1は、本発明のクリーニングシートの一つの実施形態を示す概略断面図である。図1において、クリーニングシート100は、クリーニング層10と、保護フィルム20とを有する。保護フィルム20は、クリーニング層10の保護等を目的として備えられ得るものであり、目的に応じて省略されてもよい。すなわち、本発明のクリーニングシートは、クリーニング層10のみから構成されていてもよい。
【0022】
図2は、本発明のクリーニングシートの別の一つの実施形態を示す概略断面図である。図2において、クリーニングシート100は、保護フィルム20と、クリーニング層10と、粘着剤層30とを有する。保護フィルム20は、クリーニング層10の保護等を目的として備えられ得るものであり、目的に応じて省略されてもよい。
【0023】
図3は、本発明のクリーニングシートのさらに別の一つの実施形態を示す概略断面図である。図3において、クリーニングシート100は、保護フィルム20と、クリーニング層10と、支持体40と、粘着剤層30とを有する。保護フィルム20は、クリーニング層10の保護等を目的として備えられ得るものであり、目的に応じて省略されてもよい。
【0024】
本発明のクリーニングシートの厚みは、その構成によって、任意の適切な厚みが採用され得る。
【0025】
≪1-1.クリーニング層≫
クリーニング層は、400nmにおける透過率が上記範囲内にあれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な材料から構成され得る。
【0026】
クリーニング層は、好ましくはポリベンゾオキサゾールを含む。
【0027】
ポリベンゾオキサゾールは、耐熱性および絶縁性を有する樹脂であり、バンプ保護膜、層間絶縁膜などとして半導体デバイスに用いられている。このように耐熱性に優れるポリベンゾオキサゾールについて、種々の実験・検討を行った結果、ポリベンゾオキサゾールを含む層が、耐熱性に優れるのみならず、異物除去性能および透明性にも優れるという予期しない効果を発現できることを見出し、よって、ポリベンゾオキサゾールを含む層が、高温条件で搬送等を行わなければならないプロセス領域が設定された基板処理装置内に搬送するクリーニングシートに好ましく利用できることが判明した。
【0028】
本発明のクリーニングシートは、それが備えるクリーニング層がポリベンゾオキサゾールを含む場合、異物除去性能、耐熱性、および透明性により優れる。このため、本発明のクリーニングシートは、それが備えるクリーニング層がポリベンゾオキサゾールを含む場合、高温条件で搬送等を行わなければならないプロセス領域が設定された基板処理装置内に搬送する、異物除去などを目的とする搬送部材に好適に用い得る。
【0029】
クリーニング層がポリベンゾオキサゾールを含む場合、クリーニング層中のポリベンゾオキサゾールの含有割合は、好ましくは50重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは90重量%~100重量%であり、特に好ましくは95重量%~100重量%であり、最も好ましくは98重量%~100重量%である。クリーニング層中のポリベンゾオキサゾールの含有割合が上記範囲内にあれば、異物除去性能、耐熱性、および透明性により一層優れたクリーニングシートを提供することができる。
【0030】
クリーニング層中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分が含まれていてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、ポリベンゾオキサゾール以外の耐熱性樹脂、界面活性剤、可塑剤、酸化防止剤、導電性付与剤、紫外線吸収剤、光安定化剤などが挙げられる。
【0031】
クリーニング層の厚みは、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは3μm~100μmであり、さらに好ましくは5μm~50μmである。クリーニング層の厚みが上記範囲内にあることにより、異物除去性能および透明性に優れるとともに、基板処理装置内への搬送性能にも優れたクリーニングシートを提供することができる。
【0032】
クリーニング層は実質的に粘着力を有さない。すなわち、例えば、粘着性物質から形成されたクリーニング層や、粘着テープを固着することで形成したクリーニング層は、本発明におけるクリーニング層からは除外される。本発明のクリーニングシートが実質的に粘着力を有するクリーニング層を備えると、該クリーニング層と、例えば、基板処理装置内の搬送装置との接触部分が強く接着しすぎて離れなくなるおそれがある。その結果、基板を確実に搬送できないという問題や、搬送装置を破損させるという問題が生じるおそれがある。
【0033】
クリーニング層は、上述の通り、実質的に粘着力を有さない。具体的には、シリコンウェハのミラー面に対する、JIS-Z-0237で規定される180°引き剥がし粘着力Aが、好ましくは0.20N/10mm未満であり、より好ましくは0.01~0.10N/10mmである。クリーニング層のシリコンウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180°引き剥がし粘着力Aがこのような範囲内にあれば、クリーニング層は実質的に粘着力を有さず、該クリーニング層と、例えば、基板処理装置内の搬送装置との接触部分との粘着性が低減でき、その結果、基板を確実に搬送し得るとともに、搬送装置が破損し難くなり得る。
【0034】
クリーニング層は、400℃における熱重量減少が、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2.5%以下であり、最も好ましくは2%以下である。クリーニング層の400℃における熱重量減少が上記範囲内にあれば、耐熱性により優れたクリーニングシートを提供することができる。
【0035】
クリーニング層は、500℃における熱重量減少が、好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは6%以下であり、特に好ましくは4%以下であり、最も好ましくは3%以下である。クリーニング層の500℃における熱重量減少が上記範囲内にあれば、耐熱性により一層優れたクリーニングシートを提供することができる。
【0036】
クリーニング層の400℃および500℃における熱重量減少は、例えば、熱分析計(TG-DTA)「Thermo plus TG8120」(株式会社リガク製)を用いて測定できる。
【0037】
クリーニング層は、熱分解温度が、好ましくは380℃以上であり、より好ましくは400℃以上であり、さらに好ましくは430℃以上であり、特に好ましくは470℃以上であり、最も好ましくは500℃以上である。クリーニング層の熱分解温度が上記範囲内にあれば、耐熱性により優れたクリーニングシートを提供することができる。
【0038】
クリーニング層の熱分解温度は、例えば、熱分析計(TG-DTA)「Thermo plus TG8120」(株式会社リガク製)を用いて測定できる。
【0039】
クリーニング層は、200℃におけるアウトガス発生量が、好ましくは300ppm以下であり、より好ましくは250ppm以下であり、さらに好ましくは200ppm以下であり、特に好ましくは150ppm以下であり、最も好ましくは100ppm以下である。クリーニング層の200℃におけるアウトガス発生量が上記範囲内にあれば、耐熱性により優れたクリーニングシートを提供することができる。また、クリーニング層の200℃におけるアウトガス発生量が上記範囲に比べて多すぎると、発生したアウトガスによる周辺への汚染(例えば、基板処理装置内の汚染など)が起こってしまうおそれがある。
【0040】
クリーニング層は、300℃におけるアウトガス発生量が、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは300ppm以下であり、特に好ましくは100ppm以下であり、最も好ましくは50ppm以下である。クリーニング層の300℃におけるアウトガス発生量が上記範囲内にあれば、耐熱性により優れたクリーニングシートを提供することができる。また、クリーニング層の300℃におけるアウトガス発生量が上記範囲に比べて多すぎると、発生したアウトガスによる周辺への汚染(例えば、基板処理装置内の汚染など)が起こってしまうおそれがある。
【0041】
クリーニング層のアウトガス発生量は、例えば、所定量の試料を試料カップに入れ、加熱炉型パイロライザー(例えば、フロンティア・ラボ社製の「PY2020iD」)にて200℃で10分間または300℃で10分間加熱し、揮発した成分は一部を液体窒素に浸したカラム中にトラップし、加熱終了する。その後に、カラムを液体窒素から取り出して電子イオン化法(EI法)にてGC/MS(例えば、SHIMADZU製の「GCMS-QP2020」)を測定する。
【0042】
クリーニング層は、25℃における弾性率が、好ましくは0.5GPa以上であり、より好ましくは0.7GPa以上であり、さらに好ましくは1.0GPa以上であり、特に好ましくは1.3GPa以上であり、最も好ましくは1.5GPa以上である。クリーニング層の25℃における弾性率が上記範囲内にあれば、異物除去性能により優れたクリーニングシートを提供することができる。
【0043】
クリーニング層は、200℃における弾性率が、好ましくは0.1GPa以上であり、より好ましくは0.3GPa以上であり、さらに好ましくは0.5GPa以上であり、特に好ましくは0.8GPa以上であり、最も好ましくは1.0GPa以上である。クリーニング層の200℃における弾性率が上記範囲内にあれば、高温環境下においても異物除去性能に優れるクリーニングシートを提供することができる。
【0044】
クリーニング層の25℃および200℃における弾性率は、例えば、「RSA G2」(TAインスツルメント製)を用いて測定できる。
【0045】
クリーニング層は、ダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力Bが、好ましくは10N/10mm以上であり、より好ましくは15N/10mm以上であり、さらに好ましくは20N/10mm以上であり、特に好ましくは25N/10mm以上であり、最も好ましくは30N/10mm以上である。クリーニング層のダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力Bが上記範囲内にあれば、例えば、クリーニング層とダミーウェハ等の搬送部材との密着性が高くなり、クリーニング中にクリーニング層がダミーウェハ等の搬送部材から剥離し難くなる。
【0046】
クリーニング層のダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力Bは、例えば、ダミーウェハとしてのシリコンウェハのミラー面にクリーニング層を形成し、JIS-Z-0237に準じて測定できる。
【0047】
クリーニング層は、クロスカット法によるダミーウェハのミラー面に対するクリーニング層の残存数が、好ましくは15/25以上であり、より好ましくは18/25以上であり、さらに好ましくは20/25以上であり、特に好ましくは23/25以上であり、最も好ましくは25/25以上である。クリーニング層のクロスカット法によるダミーウェハのミラー面に対するクリーニング層の残存数が上記範囲内にあれば、例えば、クリーニング層とダミーウェハ等の搬送部材との密着性がより高くなり、クリーニング中にクリーニング層がダミーウェハ等の搬送部材からより剥離し難くなる。
【0048】
クリーニング層のクロスカット法によるダミーウェハのミラー面に対するクリーニング層の残存数は、例えば、試験面にカッターナイフを用いて素地に対する6本の平行な切り傷を2mm間隔で作り、さらに該切り傷に直交するように同様に6本の平行な切り傷を2mm間隔で作ることによって、25個の碁盤目を作り、碁盤目部分に16N/20mmの粘着力を有するテープ(例えば、日東電工株式会社製の「BT-315ST」)を強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を標準図と比較して評価することによって測定できる。
【0049】
≪1-2.支持体≫
本発明のクリーニングシートは、支持体を備えていても良い。支持体は単層であっても多層体であってもよい。
【0050】
支持体の厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは1μm~400μmであり、さらに好ましくは1μm~300μmであり、特に好ましくは1μm~200μmであり、最も好ましくは1μm~100μmである。
【0051】
支持体は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な支持体を採用し得る。このような支持体としては、例えば、プラスチックやエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックのフィルムが挙げられる。プラスチックやエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックの具体例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミドなどが挙げられる。
【0052】
支持体の材料の分子量などの諸物性は、目的に応じて適宜選択され得る。
【0053】
支持体の成形方法は、目的に応じて適宜選択され得る。
【0054】
支持体の表面は、隣接する層との密着性、保持性などを高めるために、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的または物理的処理、下塗剤によるコーティング処理などが施されていてもよい。
【0055】
≪1-3.粘着剤層≫
本発明のクリーニングシートは、粘着剤層を備えていても良い。このような粘着剤層の材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な材料を採用し得る。このような粘着剤層の材料としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤などを採用し得る。
【0056】
粘着剤層は、例えば、ダミーウェハのミラー面に貼り付けるために設けられる。これにより、搬送部材としてのダミーウェハに本発明のクリーニングシートが貼り付けられ、本発明のクリーニング機能付搬送部材となり得る。
【0057】
粘着剤層は、ダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力Cが、好ましくは10N/10mm以上であり、より好ましくは15N/10mm以上であり、さらに好ましくは20N/10mm以上であり、特に好ましくは25N/10mm以上であり、最も好ましくは30N/10mm以上である。粘着剤層のダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力Cが上記範囲内にあれば、例えば、粘着剤層とダミーウェハとの密着力が高くなり、クリーニング中にクリーニングシートがダミーウェハから剥離し難くなる。
【0058】
粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm~200μmであり、より好ましくは2μm~100μmであり、さらに好ましくは3μm~80μmであり、特に好ましくは4μm~60μmであり、最も好ましくは5μm~50μmである。
【0059】
≪1-4.保護フィルム≫
本発明のクリーニングシートは、クリーニング層や支持体や粘着剤層などを保護するため、保護フィルムを有してもよい。保護フィルムは、適切な段階で剥離され得る。
【0060】
保護フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なフィルムを採用し得る。このようなフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0061】
保護フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な剥離処理が施されてもよい。剥離処理は、代表的には、剥離剤によってなされる。剥離剤としては、例えば、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、フッ素系剥離剤、脂肪酸アミド系剥離剤、シリカ系剥離剤などを挙げることができる。
【0062】
保護フィルムの厚みは、好ましくは1μm~100μmである。
【0063】
保護フィルムの形成方法は、目的に応じて適宜選択され、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法などにより形成することができる。
【0064】
≪1-5.クリーニングシートの製造方法≫
クリーニングシートの製造方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な製造方法を採用し得る。このような製造方法としては、例えば、(1)クリーニング層のワニス溶液を支持体上にキャストし、スピンコーター等で均一に成膜した後に、加熱することで、支持体上に直接クリーニング層を形成する方法、(2)ラベルおよび補強部の構成材料となる粘着フィルム(ラベル支持体の片面にクリーニング層、他面に通常の粘着剤層を設けたもの)をセパレータ上に貼付する方法などによって、セパレータと粘着フィルムからなる積層体を形成し、次いで、この積層体の粘着フィルムのみをラベルおよび/または補強部の各形状に同時にまたは別々に打ち抜き、不要な粘着フィルムをセパレータから剥離除去する方法、などが挙げられる。
【0065】
≪≪2.クリーニング機能付搬送部材≫≫
本発明のクリーニング機能付搬送部材は、本発明のクリーニングシートと搬送部材を有する。
【0066】
図4は、本発明のクリーニング機能付搬送部材の一つの実施形態を示す概略断面図である。図4において、クリーニング機能付搬送部材300は、クリーニングシート100と搬送部材200を有する。クリーニングシート100が粘着剤層を有する場合は、好ましくは、クリーニングシート100の搬送部材200側の最外層が粘着剤層となる。
【0067】
搬送部材としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な搬送部材を採用し得る。このような搬送部材としては、例えば、半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)、LCD、PDPなどのフラットパネルディスプレイ用基板、コンパクトディスク、MRヘッドなどが挙げられる。これらの搬送部材の中でも、基板処理装置内におけるウェハの搬送装置のクリーニングを目的とする場合は、代表的には、半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)が挙げられる。
【実施例
【0068】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、それらに何ら制限されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
【0069】
<クリーニング層のシリコンウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180°引き剥がし粘着力Aの測定>
シリコンウェハのミラー面にクリーニング層を形成し、JIS-Z-0237に準じて測定した。
【0070】
<クリーニング層の400nmにおける透過率の測定>
分光光度計「V-670」(日本分光製)を用い、クリーニング層の400nmにおける透過率を測定した。
【0071】
<クリーニング層の200℃の環境下に3時間曝した後の400nmにおける透過率の測定>
クリーニング層を200℃の環境下に3時間曝した後に、分光光度計「V-670」(日本分光製)を用い、クリーニング層の400nmにおける透過率を測定した。
【0072】
<粘着剤層のダミーウェハのミラー面に対するJIS-Z-0237で規定される180度引き剥がし粘着力C>
ダミーウェハとしてのシリコンウェハのミラー面に粘着剤層を形成し、JIS-Z-0237に準じて測定した。
【0073】
<クリーニング性能評価>
例えば、異物検査装置(KLA Tencor製、SFS6200)(以下、装置Aとする)を用いて、シリコンウェハのミラー面上の0.200μm以上の異物数を測定することにより評価できる。
より詳細には、クリーニング機能付搬送部材を、クリーニングシート製造用のライナーフィルム剥離装置(日東精機製、HR-300CW)(以下、装置Bとする)に搬送し、クリーニング機能付搬送部材の搬送前後の異物数を測定することで評価できる。
【0074】
<搬送性評価>
例えば、装置Bにおいて、クリーニング機能付搬送部材をチャックテーブル上に搬送し、真空吸着を行い、真空を解除した後、リフトピンにてクリーニング機能付搬送部材をチャックテーブルから剥離できるかどうかで評価できる。
【0075】
[製造例1]:ポリベンゾオキサゾールのワニスの製造
攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール):36.6g、ピリジン:27.7g、N-メチル-2-ピロリドン:500gを仕込み、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール)が完全に溶解するまで室温で攪拌した。その後、トリメチルクロロシラン:27.2gを1分間かけて滴下し、60分間室温で攪拌した。その後、4,4’-ビス(クロロカルボニル)ジフェニルエーテル:29.5gを5分間かけてゆっくりと添加し、室温で5時間攪拌した。
得られた合成液を2Lのイオン交換水に滴下し、得られた沈殿物を100℃で24時間乾燥し、乾燥後の沈殿物に4倍量のN-メチル-2-ピロリドンを加えて再溶解することで、ポリベンゾオキサゾールのワニスを得た。
【0076】
[実施例1]:ポリベンゾオキサゾールを含むクリーニング層(1a)を備えるクリーニング機能付搬送部材(1c)の製造と評価
製造例1で得られたポリベンゾオキサゾールのワニスを8インチシリコンウェハのミラー面上にスピンコートにより塗工し、150℃で30分間加熱し、N-メチル-2-ピロリドンを除去した後、真空下、300℃で2時間加熱して、ポリベンゾオキサゾールを含むクリーニング層(1a)の厚みが10μmであるクリーニング機能付搬送部材(1c)を得た。
各種評価結果を表1に示した。
【0077】
[比較例1]:ポリイミドを含むクリーニング層(C1a)を備えるクリーニング機能付搬送部材(C1c)の製造と評価
ポリエーテルジアミン(ハインツマン製、ED-2003):32.2g、p-フェニレンジアミン:9.4gを、N-メチル-2-ピロリドン:286.3g中で溶解した。次に、3,3,4,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物:30gを加え、70℃で6時間攪拌し、ポリイミドのワニスを得た。
ポリイミドのワニスを8インチシリコンウェハのミラー面上にスピンコートにより塗工し、150℃で30分間加熱し、N-メチル-2-ピロリドンを除去した後、真空下で、300℃で2時間加熱して、ポリイミドを含むクリーニング層(C1a)の厚みが10μmであるクリーニング機能付搬送部材(C1c)を得た。
各種評価結果を表1に示した。
【0078】
[比較例2]:アクリル樹脂を含むクリーニング層(C2a)を備えるクリーニングシート(C2b)の製造と評価
アクリル酸-2-エチルヘキシル:75部、アクリル酸メチル:20部、アクリル酸:5部からなるモノマー混合液から得たアクリル系ポリマー:100部に対して、ポリエチレングリコールジメタクリレート:50部、ウレタンアクリレート:50部、ベンジルジメチルケタール:3部、および、ジフェニルメタンジイソシアネート:3部を均一に混合し、紫外線硬化型の粘着剤溶液とした。この粘着剤溶液を乾燥後の厚みが40μmになるようにセパレータ(ポリオレフィンフィルム)に塗布し、365nmの紫外光を1000mJ/cm照射し、硬化させた。
以上によって、アクリル樹脂を含むクリーニング層(C2a)を備えるクリーニングシート(C2b)を得た。
各種評価結果を表1に示した。
【0079】
[比較例3]:クリーニングシート(C2b)と搬送部材を有するクリーニング機能付搬送部材(C2c)の製造と評価
クリーニングシート(C2b)のセパレータと反対側の面を、8インチシリコンウェハのミラー面にハンドローラーで貼り付け、次に、セパレータを剥離し、クリーニング機能付き搬送部材(C2c)を作成した。
各種評価結果を表1に示した。
【0080】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のクリーニングシートおよびクリーニング機能付搬送部材は、各種の製造装置や検査装置のような基板処理装置のクリーニングに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0082】
クリーニングシート 100
クリーニング層 10
保護フィルム 20
粘着剤層 30
支持体 40
クリーニング機能付搬送部材 300
搬送部材 200
図1
図2
図3
図4