(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ダイカスト部材のレーザ溶接方法及びダイカスト製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20221026BHJP
【FI】
B23K26/21 A
B23K26/21 N
(21)【出願番号】P 2019028073
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】坂井 哲男
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-011465(JP,A)
【文献】特開平11-138282(JP,A)
【文献】国際公開第2011/068201(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/032176(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含む第1部材とダイカストにより形成された第2部材との接触面を含む溶接予定部分に第1レーザ光を照射することにより、第1溶け込み部分を形成する工程と、
前記第1溶け込み部分を形成した前記溶接予定部分に第2レーザ光を照射することにより、第2溶け込み部分を形成し、前記第1部材と前記第2部材とを溶接する工程と、
を備え、
前記第1溶け込み部分の幅は前記第2溶け込み部分の幅の半分以下であり、
前記第1溶け込み部分の深さは前記第2溶け込み部分の深さよりも深
く、
前記溶接予定部分における前記第1レーザ光の照射領域の軌跡は前記第2レーザ光の照射領域の軌跡よりも長いダイカスト部材のレーザ溶接方法。
【請求項2】
金属を含む第1部材とダイカストにより形成された第2部材との接触面を含む溶接予定部分に第1レーザ光を照射することにより、第1溶け込み部分を形成する工程と、
前記第1溶け込み部分を形成した前記溶接予定部分に第2レーザ光を照射することにより、第2溶け込み部分を形成し、前記第1部材と前記第2部材とを溶接する工程と、
を備え、
前記第1溶け込み部分の幅は前記第2溶け込み部分の幅の半分以下であり、
前記第1溶け込み部分の深さは前記第2溶け込み部分の深さよりも深
く、
前記溶接予定部分における前記第1レーザ光の照射領域の軌跡は前記第2レーザ光の照射領域の軌跡よりも長いダイカスト製品の製造方法。
【請求項3】
前記第1溶け込み部分は、複数の直線状の部分を含む請求項2記載のダイカスト製品の製造方法。
【請求項4】
前記第1溶け込み部分は、1本の曲線状である請求項2記載のダイカスト製品の製造方法。
【請求項5】
前記第1溶け込み部分は、複数のドット状の部分を含む請求項2記載のダイカスト製品の製造方法。
【請求項6】
前記第2溶け込み部分は、前記接触面に沿った線状である請求項2~5のいずれか1つに記載のダイカスト製品の製造方法。
【請求項7】
前記第1溶け込み部分は、前記第2部材の一部が一旦溶融して凝固した部分を含む請求項2~6のいずれか1つに記載のダイカスト製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、ダイカスト部材のレーザ溶接方法及びダイカスト製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストにより金属部材を形成し、これを他の金属部材とレーザ溶接によって接合することにより、製品を製造する場合がある。このような場合に、レーザ溶接時に欠陥が生じ、生産性が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、生産性を向上可能なダイカスト部材のレーザ溶接方法、ダイカスト製品の製造方法及びダイカスト製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法は、金属を含む第1部材とダイカストにより形成された第2部材との接触面を含む溶接予定部分に第1レーザ光を照射することにより、第1溶け込み部分を形成する工程と、前記第1溶け込み部分を形成した前記溶接予定部分に第2レーザ光を照射することにより、第2溶け込み部分を形成し、前記第1部材と前記第2部材とを溶接する工程と、を備える。前記第1溶け込み部分の幅は前記第2溶け込み部分の幅の半分以下である。前記第1溶け込み部分の深さは前記第2溶け込み部分の深さよりも深い。
【0006】
実施形態に係るダイカスト製品の製造方法は、金属を含む第1部材とダイカストにより形成された第2部材との接触面を含む溶接予定部分に第1レーザ光を照射することにより、第1溶け込み部分を形成する工程と、前記第1溶け込み部分を形成した前記溶接予定部分に第2レーザ光を照射することにより、第2溶け込み部分を形成し、前記第1部材と前記第2部材とを溶接する工程と、を備える。前記第1溶け込み部分の幅は前記第2溶け込み部分の幅の半分以下である。前記第1溶け込み部分の深さは前記第2溶け込み部分の深さよりも深い。
【0007】
実施形態に係るダイカスト製品は、金属を含む第1部材と、ダイカストにより形成され、前記第1部材に溶接された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に形成された溶け込み部分と、を備える。前記溶け込み部分の下面には、線状又は複数のドット状の凸部が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法を示すフローチャート図である。
【
図2】(a)は第1の実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法を示す平面図であり、(b)はその断面図である。
【
図3】(a)は第1の実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法を示す平面図であり、(b)はその断面図である。
【
図4】(a)は第1の実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法を示す平面図であり、(b)はその断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法を示す平面図である。
【
図6】第3の実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法を示す平面図である。
【
図7】第4の実施形態に係るダイカスト製品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法を示すフローチャート図である。
図2(a)~
図4(b)は本実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法を示す図である。
図2(a)は平面図であり、
図2(b)は
図2(a)と同じ工程を示す断面図である。
図3(a)及び(b)、
図4(a)及び(b)についても同様である。
【0010】
本実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法は、ダイカスト製品の製造方法の一部である。本実施形態においては、第1部材11と第2部材12をレーザ溶接して、ダイカスト製品を製造する。少なくとも第2部材12はダイカストによって形成されたダイカスト部材である。以下、詳細に説明する。
【0011】
先ず、
図2(a)及び(b)に示すように、第1部材11及び第2部材12を用意する。第1部材11及び第2部材12は金属を含み、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。第2部材は、ダイカストにより形成された部材であり、内部にボイド20を不可避的に含んでいる。第1部材11は、ダイカストによって形成された部材であってもよく、他の方法によって形成された部材であってもよい。本実施形態においては、第1部材11もダイカストによって形成されたものとする。このため、第1部材11内にもボイド20が不可避的に含まれている。そして、第1部材11と第2部材12とを接触させる。第1部材11と第2部材12との接触面13を含む部分が、溶接予定部分14となる。
【0012】
次に、
図1のステップS1に示すように、予備照射工程を実施する。
図3(a)及び(b)に示すように、溶接予定部分14に第1レーザ光L1を照射する。第1レーザ光は、例えば、ディスクレーザ、シングルモードファイバーレーザ又はマルチモードファイバーレーザである。第1レーザ光L1の照射領域51を例えば接触面13に沿って移動させ、この移動を複数回繰り返す。又は、複数本の第1レーザ光L1を同時に照射して、複数の照射領域51を例えば接触面13に沿って平行に移動させる。なお、照射領域51は、接触面13に交差する方向に移動させてもよい。
【0013】
第1レーザ光L1を照射することにより、第1部材11及び第2部材12のうち少なくとも一方の一部が一旦溶融して凝固する。この結果、溶接予定部分14に第1溶け込み部分21が形成される。上方、すなわち、第1レーザ光L1を照射する方向から見て、第1溶け込み部分21の形状は、複数の直線状の部分を含むパターンとなる。第1溶け込み部分21の幅は、溶接予定部分14の幅の半分以下である。第1溶け込み部分21における直線状の部分は、接触面13に平行な方向に延びていてもよい。この場合、溶接予定部分14及び第1溶け込み部分21の「幅」は、接触面13に直交する方向の長さである。
【0014】
第1レーザ光L1の照射により、第1溶け込み部分21が一時的に溶融すると、第1溶け込み部分21及びその近傍に形成されていたボイド20内の気体は、溶融状態の第1溶け込み部分21を介して外部に排出される。これにより、ボイド20は消滅するか、又は、内部が減圧される。第1レーザ光L1の照射領域51の間隔は、溶接予定部分14の全体が第1レーザ光L1による熱影響を受け、溶接予定部分14内に存在する全てのボイド20が消滅又は減圧されるような間隔とする。なお、溶接予定部分14の外部に存在するボイド20は消滅も減圧もされずにそのまま残留するが、これは後の溶接工程に影響を及ぼさないため、問題はない。
【0015】
次に、
図1のステップS2に示すように、溶接工程を実施する。
図4(a)及び(b)に示すように、第1溶け込み部分21を形成した溶接予定部分14に、第2レーザ光L2を照射する。第2レーザ光L2も、例えば、ディスクレーザ、シングルモードファイバーレーザ又はマルチモードファイバーレーザである。第2レーザ光L2の照射領域52の直径は第1レーザ光L1の照射領域51の直径よりも大きい。照射領域52の直径は照射領域51の直径の例えば2倍以上である。照射領域52は接触面13に沿って移動させる。第2レーザ光L2の照射により、第1部材11の一部、第2部材12の一部、溶け込み部分21の上部が一旦溶融し、その後凝固して、溶接予定部分14全体に第2溶け込み部分22が形成される。逆に言えば、照射領域52の直径は、照射領域52の1回の移動により溶接予定部分14全体に溶け込み部分22が形成されるような直径とする。
【0016】
第1溶け込み部分21の幅W1は、第2溶け込み部分22の幅W2の半分以下である。例えば、第2溶け込み部分22の幅W2は1mm(ミリメートル)以下であり、第1溶け込み部分21の幅W1は0.2mm以下である。第1溶け込み部分21及び第2溶け込み部分22のうち、第1部材11及び第2部材12の上面上に突出した部分が、ビードとなるため、第1溶け込み部分21及び第2溶け込み部分22の幅は、それぞれのビードの幅と略等しい。また、第1溶け込み部分21の深さD1は、第2溶け込み部分22の深さD2よりも深い。本明細書において、「深さ」とは、第1部材11及び第2部材12におけるレーザ光が照射される面からの距離である。
【0017】
このようにして、第2溶け込み部分22が形成され、第1部材11と第2部材12が溶接されることにより、ダイカスト製品1が製造される。ダイカスト製品1においては、金属を含む第1部材11と、金属を含みダイカストにより形成された第2部材12が設けられている。第1部材11及び第2部材12は例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなる。第2部材12は第1部材11にレーザ溶接されている。
【0018】
そして、第1部材11と第2部材12の間に、接触面13に跨がるように、溶け込み部分23が形成されている。溶け込み部分23は、上述の第1溶け込み部分21と第2溶け込み部分22が一体化したものである。溶け込み部分23の下面23aには、線状の凸部24が形成される。凸部24は、第1溶け込み部分21の下部、すなわち、第1溶け込み部分21のうち、第2溶け込み部分22の一部にならなかった部分である。
【0019】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、
図3(a)及び(b)に示す工程において、溶接予定部分14に対して第1レーザ光L1を照射する。これにより、第1溶け込み部分21及びその近傍に形成されていたボイド20に封入されていた気体が、溶融状態の溶け込み部分21を介して外部に排出される。この結果、ボイド20が消滅するか、内部が大幅に減圧される。このとき、第1レーザ光L1の直径は溶接予定部分14に対して十分に小さく、第1溶け込み部分21の体積も十分に小さいため、ボイド20からの気体の放出に伴って、第1部材11及び第2部材12が大きく損傷を受けることはない。一方、第1溶け込み部分21の深さは、その後に形成される第2溶け込み部分22の深さよりも深いため、第2溶け込み部分22の形成時に障害となる可能性があるボイド20は、全て消滅するか減圧されて無害化される。
【0020】
その後、
図4(a)及び(b)に示す工程において、溶接予定部分14に第2レーザ光L2を照射する。これにより、第1部材11と第2部材12が溶接されて、ダイカスト製品1が製造される。このとき、溶接予定部分14に形成されていたボイド20は消滅しているか減圧されているため、ボイド20に起因して、溶融した溶け込み部分22が飛散することを抑制できる。このため、ボイド20に起因した不良品が発生しにくく、ダイカスト製品1の生産性が高い。
【0021】
なお、仮に、第1レーザ光L1を照射する予備照射工程を実施せずに、いきなり第2レーザ光L2を照射する溶接工程を実施すると、高圧の気体が封入されたボイド20が、溶融状態にある溶け込み部分22に接触する。ボイド20内の気体は、ダイカスト時に封入された気体であるか、又は、ボイド20内の残渣物が第2レーザ光L2の照射により昇華して発生した気体であると推定される。本発明者らのシミュレーションによれば、予備照射工程を施されていないボイド20内の圧力は、例えば300気圧程度である。この高圧ガスにより、溶融状態にある溶け込み部分22が飛散する。溶け込み部分22は体積が大きいため、飛散量も多く、第1部材11及び第2部材12には大きな凹み又は穴等の欠陥が形成される。
【0022】
凹み又は穴等の欠陥が大きすぎると、二重レーザ溶接や肉盛り溶接等の手段によって修復できず、ダイカスト製品は不良品となる。このため、ダイカスト製品の生産性が低下する。特に、製造しようとするダイカスト製品が、ハードディスクドライブの筐体のような密閉容器の場合は、穴を修復しようとして追加のレーザ溶接を行うと、密閉容器内に設けられた内部部材が損傷を受ける可能性があるため、修復が困難である。また、ダイカスト製品が小型である場合は、ボイド20の飛散によって形成される欠陥が相対的に大きくなるため、修復がより困難である。
【0023】
これに対して、本実施形態によれば、先ず、直径が小さい第1レーザ光L1によってボイド20を消滅又は無害化しておき、その後、第2レーザ光L2によって溶接を行うため、ボイド20に起因した欠陥の発生を抑制し、ダイカスト製品1の生産性を向上させることができる。
【0024】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法を示す平面図である。
【0025】
図5に示すように、本実施形態においては、第1溶け込み部分21が1本の曲線状になるように、溶接予定部分14に対して第1レーザ光L1の照射領域51を移動させる。例えば、照射領域51の軌跡を蛇行した曲線とする。但し、照射領域51の軌跡は蛇行した曲線には限定されず、溶接予定部分14全体にボイド20を消滅又は無害化できる程度の熱影響を及ぼすことができればよい。照射領域51の軌跡は、「一筆書き」ができるような曲線とすることが好ましい。これにより、第1レーザ光L1の照射時間を短縮することができ、ダイカスト製品の生産性をより向上させることができる。
【0026】
本実施形態における上記以外のレーザ溶接方法は、前述の第1の実施形態と同様である。すなわち、第1レーザ光L1によってボイド20を消滅又は減圧した後、第2レーザ光L2を照射して第1部材11と第2部材12を溶接する。このとき、第1レーザ光L1によって形成される第1溶け込み部分21の幅は第2レーザ光L2によって形成される第2溶け込み部分22の幅の半分以下とし、第1溶け込み部分21の深さは第2溶け込み部分22の深さよりも深くする。
【0027】
このようにして製造されたダイカスト製品2においては、溶け込み部分の下面に1本の曲線状の凸部が形成される。本実施形態における上記以外のダイカスト製品の構成及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0028】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。
図6は、本実施形態に係るダイカスト部材のレーザ溶接方法を示す平面図である。
【0029】
図6に示すように、本実施形態においては、第1溶け込み部分21が複数のドット状の部分を含むように、溶接予定部分14に対して照射領域51を移動させる。例えば、照射領域51を第1部材11及び第2部材12に対して移動させながら、第1レーザ光L1をパルス状に照射する。この場合も溶接予定部分14全体に、ボイド20を消滅又は減圧できる程度の熱影響を及ぼすことができるように、照射領域51の配置を制御する。照射領域51は、周期的に配列させることが好ましい。
【0030】
このようにして形成されたダイカスト製品3においては、溶け込み部分の下面にドット状の凸部が複数形成される。凸部は周期的に配列されていてもよい。本実施形態における上記以外のレーザ溶接方法、ダイカスト製品の構成及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0031】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。
図7は、本実施形態に係るダイカスト製品を示す断面図である。
【0032】
図7に示すように、本実施形態に係るダイカスト製品4は、密閉容器であり、例えば、ハードディスクドライブの筐体である。ダイカスト製品4においては、ハウジング41と、ハウジング41にレーザ溶接された蓋42が設けられている。ハウジング41の形状は、上面が開口した箱状である。蓋42は、ハウジング41の上面に溶接されている。ハウジング41はダイカストにより形成されており、金属からなり、例えばアルミニウムを含む。蓋42は、例えばプレス法により形成されており、金属からなり、例えばアルミニウムを含む。したがって、ハウジング41にはボイド20が不可避的に含有されているが、蓋42にはボイド20は含有されていない。
【0033】
ハウジング41と蓋42との溶接方法は、前述の第1、第2又は第3の実施形態と同様である。但し、蓋42にはボイド20は含まれていないため、蓋42には第1レーザ光L1を照射する必要はない。
【0034】
ダイカスト製品4において、ハウジング41と蓋42との接合部分には、溶け込み部分43が形成されている。溶け込み部分43の下面には、凸部44が形成されている。凸部44は、ハウジング41内のみに形成されており、蓋42内には形成されていない。凸部44の形状は、例えば線状である。凸部44の形状は、例えば、複数本の直線状であってもよく、1本の曲線状であってもよい。又は、凸部44は周期的に配列された複数のドット状であってもよい。なお、蓋42にも第1レーザ光L1を照射してもよい。この場合は、凸部44は蓋42内にも形成される。
【0035】
なお、前述の第1~第4の実施形態においては、突合せ溶接を行う例を示したが、本発明はこれには限定されない。例えば、重ね溶接及び隅肉溶接についても、本発明を適用することが可能である。
【0036】
以上説明した実施形態によれば、生産性を向上可能なダイカスト部材のレーザ溶接方法、ダイカスト製品の製造方法及びダイカスト製品を実現することができる。
【0037】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。また、前述の実施形態は、相互に組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1、2、3、4:ダイカスト製品
11:第1部材
12:第2部材
13:接触面
14:溶接予定部分
20:ボイド
21:第1溶け込み部分
22:第2溶け込み部分
23:溶け込み部分
23a:下面
24:凸部
41:ハウジング
42:蓋
43:溶け込み部分
44:凸部
51、52:照射領域
L1:第1レーザ光
L2:第2レーザ光