(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】粘性土解泥処理の品質管理方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
E02F 7/00 20060101AFI20221026BHJP
G01N 33/24 20060101ALI20221026BHJP
G01N 9/24 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
E02F7/00 D
G01N33/24 E
G01N9/24 B
G01N9/24 C
(21)【出願番号】P 2019032269
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
(72)【発明者】
【氏名】浜谷 信介
(72)【発明者】
【氏名】野中 宗一郎
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-275369(JP,A)
【文献】特開2001-227002(JP,A)
【文献】特開2011-252369(JP,A)
【文献】特開平10-147950(JP,A)
【文献】実開平06-059200(JP,U)
【文献】特開2011-047155(JP,A)
【文献】特開2016-056603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 7/00
G01N 33/24
G01N 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性土の解泥処理についての品質管理方法であって、
前記解泥時の粘性土の水分・濃度・密度の内の少なくともいずれか1つを連続的に測定し、
前記測定値が所定範囲内に収束した時点で前記解泥が完了したと判断
し、
前記判断前の所定時間内における前記測定値に基づいて前記測定値の平均値を算出し、前記所定範囲を前記平均値の80~120%とする、粘性土解泥処理の品質管理方法。
【請求項2】
前記所定範囲を前記平均値の
90~
110%とする請求項1に記載の粘性土解泥処理の品質管理方法。
【請求項3】
前記解泥を行う所定領域内の複数点で前記測定を行い、
前記複数地点での各測定値が前記所定範囲内に収束した時点で前記解泥が完了したと判断する請求項1または2に記載の粘性土解泥処理の品質管理方法。
【請求項4】
前記粘性土の量および前記解泥に使用する機械の少なくともいずれかに応じて、前記解泥を行う所定領域内の1点または複数点において前記測定を行う請求項1乃至3のいずれかに記載の粘性土解泥処理の品質管理方法。
【請求項5】
前記粘性土についてバケットにより解泥操作を行う際に前記測定を前記バケットにおいて行う請求項1乃至4のいずれかに記載の粘性土解泥処理の品質管理方法。
【請求項6】
粘性土の解泥処理についての品質管理システムであって、
前記解泥時の粘性土の水分・濃度・密度の内の少なくともいずれか1つを連続的に測定する測定センサを有する測定手段と、
前記測定値が所定範囲内に収束した時点で前記解泥が完了したと判断する判断手段と
、
前記判断前の所定時間内における前記測定値に基づいて前記測定値の平均値を算出する算出手段と、を備え、
前記所定範囲が前記平均値の80~120%である粘性土解泥処理の品質管理システム。
【請求項7】
前記所定範囲が前記平均値の
90~
110%である請求項6に記載の粘性土解泥処理の品質管理システム。
【請求項8】
前記解泥を行う所定領域内の複数点にそれぞれ配置された複数の前記測定センサにより前記測定を行い、
前記判断手段は、前記複数の測定センサによる各測定値が前記所定範囲内に収束した時点で前記解泥が完了したと判断する請求項6または7に記載の粘性土解泥処理の品質管理システム。
【請求項9】
前記粘性土についてバケットにより解泥操作を行い、
前記測定センサを前記バケットに配置する請求項6乃至8のいずれかに記載の粘性土解泥処理の品質管理システム。
【請求項10】
前記解泥の際の粘性土を貯留部に貯留し、前記貯留部において前記解泥を行い、
前記測定センサを前記貯留部内の1点または複数点に配置する請求項
6乃至9のいずれかに記載の粘性土解泥処理の品質管理システム。
【請求項11】
前記測定センサが前記解泥の際の粘性土内に位置しかつ前記粘性土の深さの半分から上側に位置するように前記測定センサを配置する請求項
6乃至10のいずれかに記載の粘性土解泥処理の品質管理システム。
【請求項12】
外部端末との間で通信を行う通信手段と、
前記外部端末を特定する情報を記憶し登録する記憶手段と、をさらに備え、
前記解泥が完了したと前記判断手段が判断した際に、前記通信手段は前記記憶手段に登録されている外部端末に前記解泥が完了した旨を通知する請求項
6乃至11のいずれかに記載の粘性土解泥処理の品質管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性土の解泥処理についての品質管理方法・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘性土に改質材として製鋼スラグ等を混合した混合材料を、浅場・干潟造成材、潜堤材、地盤材料等として使用することが知られている。この使用時には、粘性土の解泥、加水・調泥、改質材添加後の混合、打設等の操作が必要である。
【0003】
バックホウ等を使用して粘性土の解泥を行う場合、一定の品質を確保するためには、均質な状態となるまで解泥作業を行う必要がある。このため、従来の粘性土の解泥は、事前確認として、解泥試験を行い、解泥時間を決定し、その解泥時間で実際の解泥処理をしていた。
【0004】
特許文献1は、泥水式シールド工法においてチャンバー内の泥水の粘性をリアルタイムかつ正確に測定できる泥水粘性測定システムを提供するために、チャンバーに近接した排泥管の流路に設けられ、粗粒分を含む泥水を本流としての排泥管に流して粗粒分が除かれた泥水を支流に流す分流装置と、分流装置から分岐して粗粒分が除かれた泥水を流す支流としての分岐管と、分岐管に設けられて分流装置から泥水を導入するポンプと、ポンプの導入力を調整する制御装置と、分岐管に設けられて粗粒分が除去された泥水の粘性を測定する振動式粘度計と、から構成される泥水粘性測定システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粘性土の解泥施工管理のため、湿潤密度を測定する場合、安定的な数値を得るためには1試料あたり数リットル(L)必要であり、複数点での試料採取(必要に応じて採取場所や採取深度を変える)、運搬、測定は煩雑な作業となる。このため、施工の初期段階で粘性土の解泥試験を行い、含水比や湿潤密度の経時変化を測定し、この測定値が一定の値に収束するまでの時間を均一化に必要な時間として、以後の施工における解泥時間を決定する方法が一般的である。しかし、大規模な施工において粘性土の採取場所や採取深度が変化した場合等、粘性土の性状(土質や含水比)が試験時と異なると解泥の過不足が生じることになる。このため、粘性土の解泥工程において解泥時間の不足が生じた場合、粘性土の品質がばらついてしまうおそれが生じ、かかる品質のバラツキは、粘性土への改質材等の添加・混合による混合材料の品質管理上好ましくない。また、効率的な施工のためには解泥の完了を迅速に判断可能であることが望まれている。
【0007】
また、特許文献1の泥水粘性測定システムによれば、泥水の粘性測定のため粗粒分が除かれた泥水を分岐管に流す分流装置、分流装置から泥水を分岐管に導入するポンプ、ポンプの導入力を調整する制御装置等が必要で、複雑なシステム構成となってしまう。
【0008】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、粘性土の解泥処理を行う際に、事前の解泥試験が不要で、解泥の完了時期を迅速かつ適切に判断でき、解泥処理の品質管理を簡単な構成で適切に行うことができる粘性土解泥処理の品質管理方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための粘性土解泥処理の品質管理方法は、粘性土の解泥処理についての品質管理方法であって、前記解泥時の粘性土の水分・濃度・密度の内の少なくともいずれか1つを連続的に測定し、前記測定値が所定範囲内に収束した時点で前記解泥が完了したと判断し、前記判断前の所定時間内における前記測定値に基づいて前記測定値の平均値を算出し、前記所定範囲を前記平均値の80~120%とするものである。
【0010】
この粘性土解泥処理の品質管理方法によれば、解泥時の粘性土の水分・濃度・密度の内の少なくともいずれか1つを連続的に測定し、その測定値が収束し所定範囲内に収まった時点を、測定値の上昇や下降の傾向が収まり測定値のバラツキの収束を確認できた時点とし、かかる時点は、粘性土の水分・濃度・密度が所定範囲内のほぼ一定値に収束し、粘性土の解泥が充分に進み完了した時である。このように、解泥処理の品質管理を簡単な構成で適切に行い、水分・濃度・密度の測定値の所定範囲内への収束に基づいて解泥の完了を迅速かつ適切に判断でき、均質な材料(粘性土)を得ることができる。また、従来のような事前の解泥試験が不要となる。
【0011】
上記粘性土解泥処理の品質管理方法において、前記判断前の所定時間内における前記測定値に基づいて前記測定値の平均値を算出し、前記所定範囲を前記平均値の80~120%、好ましくは90~110%とする。なお、この場合、判断前の第1の所定時間T1内における測定値の平均値Avを算出し、判断時点の測定値が平均値Avから得た所定範囲内となった時点で適合と判断し、次に第2の所定時間T2内における測定値が平均値Avから得た所定範囲内である(所定範囲を超えない)時点で解泥の完了と判断するようにしてもよい。
【0012】
また、前記解泥を行う所定領域内の複数点で前記測定を行い、前記複数地点での各測定値が前記所定範囲内に収束した時点で前記解泥が完了したと判断することができる。
【0013】
また、前記粘性土の量および前記解泥に使用する機械の少なくともいずれかに応じて、前記解泥を行う所定領域内の1点または複数点において前記測定を行うことが好ましい。
【0014】
また、前記粘性土についてバケットにより解泥操作を行う際に前記測定を前記バケットにおいて行うことができる。
【0015】
上記目的を達成するための粘性土解泥処理の品質管理システムは、粘性土の解泥処理についての品質管理システムであって、前記解泥時の粘性土の水分・濃度・密度の内の少なくともいずれか1つを連続的に測定する測定センサを有する測定手段と、前記測定値が所定範囲内に収束した時点で前記解泥が完了したと判断する判断手段と、前記判断前の所定時間内における前記測定値に基づいて前記測定値の平均値を算出する算出手段と、を備え、前記所定範囲が前記平均値の80~120%である。
【0016】
この粘性土解泥処理の品質管理システムによれば、解泥時の粘性土の水分・濃度・密度の内の少なくともいずれか1つを連続的に測定し、その測定値が収束し所定範囲内に収まった時点を、測定値の上昇や下降の傾向が収まり測定値のバラツキの収束を確認できた時点とし、かかる時点は、粘性土の水分・濃度・密度が所定範囲内のほぼ一定値に収束し、粘性土の解泥が充分に進み完了した時である。このように、解泥処理の品質管理を簡単な構成で適切に行い、水分・濃度・密度の測定値の所定範囲内への収束に基づいて解泥の完了を迅速かつ適切に判断でき、均質な材料(粘性土)を得ることができる。また、従来のような事前の解泥試験が不要となる。
【0017】
上記粘性土解泥処理の品質管理システムにおいて、前記判断前の所定時間内における前記測定値に基づいて前記測定値の平均値を算出する算出手段を備え、前記所定範囲が前記平均値の80~120%、好ましくは90~110%である。
【0018】
また、前記解泥を行う所定領域内の複数点にそれぞれ配置された複数の前記測定センサにより前記測定を行い、前記判断手段は、前記複数の測定センサによる各測定値が前記所定範囲内に収束した時点で前記解泥が完了したと判断するように構成できる。
【0019】
また、前記粘性土についてバケットにより解泥操作を行い、前記測定センサを前記バケットに配置するように構成できる。
【0020】
また、前記解泥の際の粘性土を貯留部に貯留し、前記貯留部において前記解泥を行い、前記測定センサを前記貯留部内の1点または複数点に配置するように構成できる。
【0021】
また、前記測定センサが前記解泥の際の粘性土内に位置しかつ前記粘性土の深さの半分から上側に位置するように前記測定センサを配置することが好ましい。
【0022】
また、外部端末との間で通信を行う通信手段と、前記外部端末を特定する情報を記憶し登録する記憶手段と、をさらに備え、前記解泥が完了したと前記判断手段が判断した際に、前記通信手段は前記記憶手段に登録されている外部端末に前記解泥が完了した旨を通知するように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の粘性土解泥処理の品質管理方法・システムによれば、粘性土の解泥処理を行う際に、事前の解泥試験が不要で、解泥の完了時期を迅速かつ適切に判断でき、解泥処理の品質管理を簡単な構成で適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態による粘性土の解泥処理における品質管理方法の基本的なステップS01~S04を説明するためのフローチャートである。
【
図2】
図1の完了判定のステップS03におけるさらに詳しいステップS21~S24を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図1の粘性土の解泥処理を実行可能な土運船を概略的に示す側断面図(a)および上面図(b)である。
【
図4】
図1,
図2のステップS02~S04,S21~S24を実行可能な測定系の構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図5】
図3(b)のバケットに測定センサを配置した状態を概略的に示す側面図である。
【
図6】
図3(a)(b)の土運船の貯留部やバケットにおける測定センサの各配置位置を示す上面図(a)~(d)である。
【
図7】鋼製コンテナに貯留した粘性土や改質土を解泥する場合の測定センサの各配置位置を示す上面図(a)~(d)である。
【
図8】本測定例において粘性土(液性限界:62.6wL)の解泥時に超音波濃度計により含水比を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0026】
図1は本実施形態による粘性土の解泥処理における品質管理方法の基本的なステップS01~S04を説明するためのフローチャートである。
図2は、
図1の完了判定のステップS03におけるさらに詳しいステップS21~S24を説明するためのフローチャートである。
図3は、
図1の粘性土の解泥処理を実行可能な土運船を概略的に示す側断面図(a)および上面図(b)である。
図4は、
図1,
図2のステップS02~S04,S21~S24を実行可能な測定系の構成例を概略的に示すブロック図である。
【0027】
図1のように、粘性土について粘性土の貯留部10において解泥処理を行う(S01)。解泥処理は、たとえば、
図3(a)(b)のように、土運船SPの土槽からなる貯留部10に粘性土を貯留した土運船SPを接岸し、貯留部10に隣接して複数のバックホウ11,14を陸上側に配置して行うことができる。バックホウ11,14には、バックホウ11,14から延びてバケット12,15が連結されている。
【0028】
貯留部10においてバックホウ11,14によりバケット12,15を
図3(b)のように、左右に移動させる、前後に移動させるように操作し、加えてバケット12,15の各移動時に上下動も行う(図示省略)ことで、貯留部10内の粘性土とその上の水とを攪拌させ流動させて混合した粘性土Gとする。たとえば、バケット12を左方向mに破線の位置まで移動させることで粘性土Gを図の矢印方向a,a’に流動させ、また、バケット15を矢印手前方向nに破線の位置まで移動させることで粘性土Gを図の矢印方向b,b’に流動させる。このようなバケット12,15の左右移動、前後移動および上下移動を組み合わせて操作することで攪拌・流動による粘性土Gの解泥処理を行う。
【0029】
この解泥処理の間に粘性土Gの含水比等の連続的測定を行う(S02)。かかる測定は、含水比等を測定するための測定器、たとえば、
図4の超音波濃度計13,16により行い、
図3(a)(b)のように、上面から見て横に長い長方形状の貯留部10の長辺の両角に配置された超音波濃度計13,16(
図4)用の2つの測定センサ20,30を用いる。測定センサ20,30は、貯留部10に貯留された粘性土G内に位置して測定を行うが、貯留部10における粘性土Gの深さ(縦方向の長さ)の半分から上側に位置するように配置される。このため、解泥処理毎に貯留部10に貯留される粘性土の容量が増減し粘性土の深さが上下する場合は、測定センサ20,30の測定位置を予め上下に調整することが好ましい。なお、超音波濃度計は、測定対象物中に超音波を発振して濃度や水分を測定するもので、連続的な測定が可能である。
【0030】
次に、ステップS02で得た含水比等の測定値が収束し、所定範囲内に収まったか否かを判定し(S03)、測定値が所定範囲内に収束した場合、粘性土の解泥処理が完了したと判断する(S04)。また、測定値が所定範囲内に収まらない場合は、ステップS01に戻り解泥処理を続ける。
【0031】
次に、
図1のステップS03の完了判定の一例について
図2~
図4を参照して説明する。
図4の測定系は、
図3(a)(b)の測定センサ20,30による測定データが超音波濃度計13,16からパーソナルコンピュータ(パソコン)PCに送られて取り込まれ、パソコンPCは、測定データから測定時間とともに測定値を記録し、所定時間内に測定した測定値から測定値の平均値を算出し、平均値から所定範囲を算出する。また、測定値が所定範囲内にあるか否かを判定し、それらの結果を液晶等からなる表示部DPに表示するようになっている。超音波濃度計13,16とパソコンPCとは、適当なインターフェイスを介して有線または無線で接続することができる。また、パソコンPCが粘性土の解泥処理の完了と判断すると、インターネット等の通信網Iを介して、外部の携帯端末SM1,SM2,SM3に対し解泥完了の情報を送信する。
【0032】
図4の測定系により、
図1,
図2のステップS02で、たとえば、超音波濃度計13,16により所定の時間間隔で測定値を連続的に測定し測定時間とともにパソコンPCが自動的に記録する。
【0033】
すなわち、直近の所定時間T1内の測定値の平均値Avを算出し(S21)、この平均値Avから所定範囲を求める。所定範囲は、平均値Avの80~120%とするが、これに限定されず、たとえば90~110%としてもよい。
【0034】
次に、所定時間T1経過後の測定値が平均値Avから得た所定範囲内にあるか否かを判定する(S22)。
【0035】
測定値が所定範囲内に適合すると判定されると(S23)、次に、第2の所定時間T2内における測定値が平均値Avから得た所定範囲内である(所定範囲を超えない)か否かを判定し(S24)、測定値が所定範囲を超えない場合は粘性土の解泥処理の完了と判断する(S04)。
【0036】
なお、ステップS22で測定値が所定範囲内に適合しない場合やステップS24で測定値が所定範囲を超えた場合には、ステップS01に戻る。また、解泥処理完了の情報は、
図4のように、インターネット等の通信網Iを介してバックホウ11,14の操作部11b,14bの携帯端末SM1,SM2に送信されてオペレータに通知され、オペレータはバックホウ11,14による解泥操作を終了する。
【0037】
図1,
図2の品質管理方法について具体的な時間を例にして説明すると、ステップS02で超音波濃度計13,16により、たとえば1秒に1データを取得するという連続的測定を行い、ステップS21でたとえば直近の1分間(所定時間T1)内で測定した60のデータから測定値の平均値Avを算出し、平均値Avから所定範囲を求め、ステップS22でその後の瞬間値(測定値)が所定範囲内に適合すると判定すると、次に、ステップS24でたとえば2分間(所定時間T2)内で同様に測定値を連続的に測定し、その120の各瞬間値が所定範囲を超えないと判定すると、解泥の完了と判断する。これらの演算処理および判定・判断処理を
図4のパソコンPCが行い、その結果を表示部DPに表示する。
【0038】
次に、本実施形態による粘性土の解泥処理についての品質管理システムについて説明すると、この品質管理システムは、粘性土の解泥処理について品質管理を行うように、解泥時の粘性土の水分・濃度・密度の内の少なくともいずれか1つを連続的に測定するために測定センサ20,30(
図3(a)(b))を含む超音波濃度計13,16と、超音波濃度計13,16による測定値が所定範囲内に収束した時点で解泥が完了したと判断するパソコンPCと、を備えて構成される。なお、粘性土の含水比等を連続的に測定するための測定器としてRI密度水分計を用いてもよい。
【0039】
また、パソコンPCは、インターネット等の通信網Iを介してスマートフォンやタブレット等の携帯端末SM1,SM2,SM3と通信可能なように携帯端末SM1,SM2、SM3の各アドレスを予めハードディスク等の記憶装置に記憶し登録しておき、解泥処理完了と判断すると、その解泥完了情報を外部の携帯端末SM1,SM2、SM3に送信して通知するようになっている。
【0040】
また、本実施形態の品質管理システムを構成する
図4の測定系のうち、パソコンPCと表示部DPは、たとえば、施工現場事務所や管理事務所等に設置し、リアルタイムで解泥処理の品質管理の状況を確認できる。また、
図3(b)のバックホウ11,14の操作部11b,14bに
図4の携帯端末SM1,SM2を設置しておくことで、バックホウ11,14のオペレータが解泥処理の完了を容易に知ることができる。また、携帯端末SM3を解泥処理の責任者や管理者等が携帯することで、パソコンPC・表示部DPから離れた位置で解泥処理の完了を知ることができる。
【0041】
以上のように、本実施形態による粘性土解泥処理についての品質管理方法・システムでは、粘性土に流動性があることを利用し、貯留部内において粘性土の一部をバックホウによるバケットの操作により攪拌し、必要に応じて攪拌する場所を変更し、粘性土の全体が均一化するまでの状況を確認することで、解泥処理の完了を判断できる。
【0042】
すなわち、本実施形態によれば、解泥時の粘性土の水分・濃度・密度の内の少なくともいずれか1つを連続的に測定し、その測定値が収束し所定範囲内に収まった時点を、測定値の上昇や下降の傾向が収まり測定値のバラツキの収束を確認できた時点とし、かかる時点は、粘性土の水分・濃度・密度が所定範囲内のほぼ一定値に収束し、粘性土の解泥が充分に進み完了した時である。このように、水分・濃度・密度の測定値の所定範囲内への収束に基づいて解泥の完了を迅速かつ適切に判断でき、解泥処理の品質管理を簡単な構成で適切に行い、均質な材料(粘性土)を得ることができる。また、従来のような事前の解泥試験が不要となる。
【0043】
また、貯留部10では、含水比が低い粘性土が含まれている場合、粘性土の塊が下方に沈降している可能性があり、測定センサを下方に設置すると、粘性土の塊が測定センサ周辺に付着し、適正な値が得られない可能性があるが、
図3(a)のように、超音波濃度計13,16(
図4)の測定センサ20,30の測定位置が貯留部10における粘性土の深さの半分よりも上側にあるので、かかる測定時の不具合を未然に防止できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、粘性土の解泥を行う1地点また複数地点の測定データをパソコンで一元管理し、リアルタイムで解泥時間の管理を行うことができる。すなわち、粘性土の解泥時に水分や濃度や密度を連続的に測定し、測定値をリアルタイムに確認し、測定値の上昇や下降の傾向が収まり、バラツキが平均値の±20%以下に、望ましくは±10%以下に収束した段階でバックホウ・バケットによる解泥処理を終了できる。
【0045】
上述のように、測定データをリアルタイムで確認しながら解泥時間を適切に管理できるため、効率的な解泥施工が可能である。また、対象の粘性土の土質が変化した場合でも、適切な解泥時間で解泥を行うことができるので、粘性土を均質な材料にできる。
【0046】
次に、
図5~
図7を参照して測定センサの配置例について説明する。
図5は、
図3(b)のバケットに測定センサを配置した状態を示す側面図である。
図6は、
図3(a)(b)の土運船の貯留部やバケットにおける測定センサの配置位置を示す上面図(a)~(d)である。
図7は、鋼製コンテナに貯留した粘性土を解泥する場合の測定センサの配置位置を示す上面図(a)~(d)である。
【0047】
図5のように、
図6(c)のバックホウ11のバケット12の背面部12aに測定センサ20を配置し、測定センサ20は、バックホウ11のアーム11aやブームに沿って延びたケーブル20aを通して、バックホウ11の操作部11bに設置された超音波濃度計本体部28と接続し、測定データは超音波濃度計本体部28から無線または有線によりパソコンPC(
図4)へ送られる。このように、測定センサ20と超音波濃度計本体部28とを有線で接続し、バケット12による粘性土G中での解泥処理の際に測定センサ20により含水比や密度等の測定値を連続的に取得できる。かかる測定値を、バックホウ11による解泥の作業範囲の代表値とすることができる。なお、
図6(c)のもう1つのバックホウ14のバケット15にも同様に測定センサ30(
図6(d))を配置してもよい。また、後述の
図7(a)~(d)の鋼製コンテナ40の場合、RI密度水分計を短辺または長辺の外側やバックホウのバケットに取り付ける方法もある。
【0048】
本実施形態では、対象とする粘性土の量や解泥に使用する機械に応じて、1点から複数点で測定値を取得することが好ましい。たとえば、数百~2000m3の土槽を持つ土運船で数m3のバケットを使用して解泥をバックホウの操作で行う場合は土槽の四隅のうち1~4地点、数百m3のポンドで実施する場合には1~4地点、数~20m3程度のベッセルや鋼製コンテナや鋼製水槽で解泥を行う場合には、四隅のうち1~2地点での測定を行うことが好ましい。
【0049】
たとえば、4地点で測定する場合、
図6(a)のように、土運船SPの上方から見て長方形状の土槽からなる貯留部10の四隅に測定センサ21~24を配置する。2地点で測定する場合、
図6(b)のように貯留部10の対角線上角に測定センサ21,24を配置し、または、
図3(b)のように長辺の両角に配置する。また、
図6(c)のように、バックホウ11のバケット12に測定センサ20を配置し(
図5)、貯留部10のバックホウ11から離れた側の角に測定センサ23を配置し、または、
図6(d)のように、バックホウ11,14のバケット12,15にそれぞれ測定センサ20,30を配置する。
【0050】
また、比較的容積の小さい鋼製コンテナを粘性土の貯留部とし、2地点で測定する場合、
図7(a)のように、上面から見て縦に長い長方形状の鋼製コンテナ40の長辺の両角に測定センサ25,26を配置し、または、
図7(b)のように、鋼製コンテナ40の対角線上の角に測定センサ25,27を配置する。また、1地点で測定する場合、
図7(c)のように、鋼製コンテナ40の1つの角に測定センサ25を配置し、また、鋼製コンテナ40には配置せず、
図5,
図7(d)のように測定センサ20をバックホウ11のバケット12に配置する。
【0051】
なお、土運船等での解泥において複数台のバックホウを使用する場合には、各バケットに
図5のように測定センサを配置するようにしてもよい(
図6(d))。また、測定センサを1地点に配置する場合には、その測定地点が全体を代表できるように配置位置を決め、また、複数地点に配置する場合には、それぞれの測定センサの測定値が解泥の一定範囲の測定値を代表できるように各配置位置を決め、各測定値のバラツキと収束が確認できるようにする。
【0052】
また、複数地点で測定した場合、各測定地点での測定値が収束するとともに所定時間内で所定範囲を超えない段階で解泥処理の完了と判定することができる。なお、この場合、複数地点の測定値の平均値を求め、この平均値の80~120%(好ましくは90~110%)の範囲を所定範囲として完了を判定するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態で測定する水分や密度は、所定範囲内の値が得られるまでの時間を確認するための指標であり、必ずしも正確な値である必要はなく、たとえば、濃度計の測定値を含水比に換算する必要はない。品質管理上必要となる含水比や湿潤密度は、別途所定の試験方法により測定し、たとえば、含水比はJIS A 1203に基づいて、湿潤密度はJIS A 1225に基づいて測定してもよい。
【0054】
〈測定例〉
粘性土の解泥をバックホウ・バケットで行った時に超音波濃度計により粘性土の含水比を測定した測定例の結果を
図8に示す。
図8の測定例では、20m
3の鋼製水槽で粘性土(液性限界:62.6wL)を解泥した。測定には株式会社芝浦セムテックから販売されている超音波式濃度計SDM-5100を用いた。
図8から明らかなように、含水比の測定値(縦軸)は、時間とともに混合初期の大きな変動が収まり、数値の上昇や下降が見られなくなった。瞬間の測定値が、直近1分間の測定値の移動平均値の90~110%の範囲内に収束するまでの時間は、解泥開始から約11分である。8分54秒の時の測定値が移動平均の90~110%を超えたが、その後の2分間の測定値は、この範囲を超えなかったので、この時点(解泥開始から約11分経過時)を解泥処理完了と判定した。
【0055】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態では、測定器として粘性土の含水比や密度を測定可能なRI密度水分計を用いてもよいが、RI密度水分計は、含水比を中性子線水分計により連続的に測定し、密度をγ線密度計により連続的に測定するもので、両者は別々に構成される。粘性土の含水比および密度を測定する場合にはRI密度水分計を用い、含水比または密度を測定する場合には中性子線水分計またはγ線密度計を用いることができる。
【0056】
また、測定センサによる粘性土の含水比等の測定値の変動が大きい場合には、所定範囲を80~120%として判定することになるが、この場合、平均値Avが上昇傾向あるいは下降傾向にないことを合せて判定するようにしてもよい。あるいは、連続して取得した2~10個程度の測定値の移動平均値を測定値とし、この測定値がたとえば1分間の測定値の移動平均値の90~110%の範囲内に収束するか否かで判定してもよい。
【0057】
また、
図3等では、土運船を接岸し、陸上側に配置したバックホウにより解泥処理を行ったが、これに限定されず、台船等に予め配置したバックホウにより行うようにしてもよいことはもちろんである。
【0058】
また、本実施形態では、粘性土の解泥処理をバケットとバックホウとにより行ったが、これに限定されず、バケットと他の建設機械とを用いてもよく、また、他の処理装置を用いてもよく、たとえば、土運船や台船や陸上のヤード等に据え付けられたバケット駆動装置とバケットとを用いてもよい。
【0059】
また、本実施形態における粘性土の解泥処理とは、粘性土の塊をより小さくして均一化する目的で行われる。
【0060】
また、本発明の粘性土解泥処理の品質管理方法・システムによれば、粘性土の解泥処理を行う粘性土解泥処理方法・システムを構成可能である。たとえば、かかる粘性土解泥処理システムは、解泥対象の粘性土を貯留する貯留部と、貯留部において解泥を行うバックホウ・バケット等の処理装置と、上述の品質管理システムと、を備えて構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、粘性土の解泥処理を行う際に、事前の解泥試験が不要で、解泥の完了時期を迅速かつ適切に判断でき、解泥処理の品質管理を簡単な構成で適切に行うことができるので、粘性土の解泥を効率よく行うことができ、かつ、処理された粘性土の品質を一定に保つことができる。得られた均質な粘性土は、改質材等の添加・混合により作製される混合材料の品質管理上好ましい。
【符号の説明】
【0062】
10 貯留部
11,14 バックホウ
12,15 バケット
13,16 超音波濃度計
20,30 測定センサ
21~27 測定センサ
28 超音波濃度計本体部
40 鋼製コンテナ
G 粘性土
PC パソコン
SP 土運船
SM1~SM3 携帯端末(外部端末)