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特許7165083エアレスキャップ及びエアレスキャップ付き容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】エアレスキャップ及びエアレスキャップ付き容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20221026BHJP
   B65D 47/32 20060101ALI20221026BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B65D47/20 111
B65D47/32 310
B65D1/02 111
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019050988
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020093833
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2018226219
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228408
【氏名又は名称】日本キム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 信孝
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英一
(72)【発明者】
【氏名】中橋 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】小松原 洋
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 康文
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-082955(JP,U)
【文献】特開2014-091525(JP,A)
【文献】特開2017-214084(JP,A)
【文献】特開2011-189968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 47/32
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する変形可能な収容体に装着され、前記収容体に作用する押圧力によって内容物が注出される際、内容物の注出を許容し、外気の流入を阻止するエアレスキャップであって、
前記エアレスキャップは、内容物が注出される注出口を具備した本体と、前記本体の内部に取り付けられ、前記収容体の内部空間から注出口に至る流路が設けられた中栓と、弾性変形可能であり、前記中栓を本体に取り付けた際に前記本体と中栓との間に介在されて固定状態となる略円形状で略平坦状の弁体と、を有し、
前記中栓は、前記本体に取り付けられ、中央領域に形成された円形の開口を有する基体と、前記円形の開口内に複数の連結部を介して前記基体と一体形成され、傾斜面を備えた圧接部と、前記基体の前記圧接部の径方向外方に形成され、前記弁体の肉厚と同程度の深さを備えて前記弁体が設置される円形の凹所と、前記弁体の外周面から垂下して突出形成される環状突起が嵌合する環状の溝を有する嵌合構造と、を有し、
前記流路は、前記圧接部の周囲で前記複数の連結部間に形成され、
前記圧接部は、前記注出口に向けて膨出することで前記傾斜面を形成すると共に、前記円形の凹所よりも前記注出口側に突出するように形成され
前記弁体と中栓は、前記嵌合構造によって弁体が中栓に付勢されて両者が一体化した状態で前記本体に取り付け可能であり、
前記本体と中栓との間に介在される略平坦状の弁体は、前記円形の凹所に嵌合、設置された状態で、前記圧接部によって中央領域を弾性的に撓ませて前記傾斜面に対する密着状態を維持するように前記基体に保持されており
前記弁体には、前記傾斜面に対する密着状態で傾斜面の中央領域を露出させる開口が形成されており、
前記中栓と弁体は、前記収容体に押圧力が作用した際、前記傾斜面から弾性的に撓んだ状態の弁体を離間させて前記開口を介して内容物の注出を可能にすると共に、前記収容体に作用する押圧力が解除された際、前記傾斜面から離間した弁体傾斜面に密着させて前記開口を閉塞する注出弁を構成している、ことを特徴とするエアレスキャップ。
【請求項2】
前記弁体には、前記傾斜面に対する密着状態で傾斜面を露出させる複数の開口が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のエアレスキャップ。
【請求項3】
前記弁体は、前記流路を塞ぐ領域に、内容物が収容された前記収容体に押圧力が作用した際には、前記注出口の方向に膨出すると共に、前記収容体に作用する押圧力が解除された際には、前記収容体側に反転して前記流路に入り込むことが可能な反転部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアレスキャップ。
【請求項4】
前記弁体の反転部は、弁体の他の部位に比べて肉厚が薄い薄肉領域を備えることを特徴とする請求項3に記載のエアレスキャップ。
【請求項5】
前記中栓の傾斜面は、前記流路を塞ぐ領域で前記弁体の反転部が反転して流路に入り込んだ際の弁体の形状に沿うように形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のエアレスキャップ。
【請求項6】
前記弁体は、エラストマー、又は、弾性プラスチック材によって一体成形されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のエアレスキャップ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載されたエアレスキャップが装着可能な容器であり、
前記内容物を収容する収容体を構成する内側体と、前記内側体を囲繞するように成形された外側体と、前記内側体と外側体との間に空気の流入を許容する外気流入路と、を有し、
前記エアレスキャップは、前記外側体に形成された口部に固定される、ことを特徴とする容器。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載されたエアレスキャップが装着可能な容器であり、
前記エアレスキャップの本体は、断面略楕円形状の溶着部を備えた溶着体に一体形成された口部に固定され、
前記溶着部に、周囲が溶着されたプラスチック製のフィルムシートが溶着されている、ことを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容する容器に装着され、内容物を注出する際に外気の流入を阻止する機能を備えたエアレスキャップ、及び、そのようなエアレスキャップが装着されたエアレスキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日用品分野、食品分野、医療分野、化学分野等では、化粧液や飲料物、薬品、インクやオイル等(以下、これらを内容物と総称する)を収容する容器が知られており、収容される内容物には、時間の経過とともに徐々に品質が劣化するもの、更には、液状、半液状、微細粒子物を分散含有した液状のもの等、様々なものがある。品質が劣化する原因としては、外気との接触による酸化が挙げられるため、容器に装着されて内容物を注出するキャップには、内容物の注出を許容し、外気が流入しない構成が求められている。また、前記容器には、パウチパックのような減容変形する単体容器や、内部に減容変形する内側体、外部に原形復帰可能(スクイーズ性がある)な外側体を配した二重成形容器などが存在している。
【0003】
前記二重成形容器は、外側体を押圧することで内側体に圧力を加えて内容物を注出することができ、外側体は押圧力を解除すると原形復帰し、内側体はそのまま変形した状態(減容変形した状態)が維持される。このような二重成形容器に装着されて外気(空気)を流入させないキャップとして、例えば、特許文献1,2に開示されているように、外側体と内側体との間に外気の流入を許容する逆止弁(吸気弁)を配設すると共に、内側体に設けられた注出口部分に、内容物の外部への通過のみを許容する逆止弁(注出弁)を配設したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-111335号
【文献】実用新案登録第3194661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の二重成形容器は、吸気弁と注出弁が異なる位置に配設されており、それぞれが逆止弁構造を備えているため、容器自体の構造が複雑となって、製造コストが高くなってしまう。すなわち、吸気弁と注出弁に関しては、同じ位置に設置して、それぞれ逆止弁としての機能を発揮できる構造にすることで、容器自体の構造が簡易になり、容器のコストを低減することが可能と考えられる。
【0006】
また、そのような吸気弁機能と注出弁機能を兼ね備えたキャップについては、できるだけ構造を簡略化して、組み付けが容易に行なえることが望ましく、さらに内容物の注出を許容し、外気が流入しない構成の注出弁機能を備えたキャップ(以下、エアレスキャップと称する)は、二重成形された容器に限られず、パウチパックのような単一容器の注出口部分にも適用可能な構造になっていることが望ましい。
このようなエアレスキャップは、最近では、微小繊維質の材料や微粒状のものを分散含有した内容物を収容した容器に取り付けられることがあり、このような内容物であっても、外気の流入を確実に防止して安定した内容物の注出が可能な逆止弁構造となっていることが望ましい。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、構造が簡単で組み付けが容易に行なえると共に、安定した内容物の注出が行え、内容物注出中に空気が容器内に流入しないエアレスキャップ及びエアレスキャップ付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係るエアレスキャップは、内容物を収容する変形可能な収容体に装着され、前記収容体に作用する押圧力によって内容物が注出される際、内容物の注出は許容し、外気は流入しないよう構成されており、前記エアレスキャップは、内容物が注出される注出口を具備した本体と、前記本体の内部に取り付けられ、前記収容体の内部空間から注出口に至る流路が設けられた中栓と、略平坦状で弾性変形可能であり、前記中栓を本体に取り付けた際に前記本体と中栓との間に介在されて固定状態となる弁体と、を有し、前記中栓は、前記本体に取り付けられた状態で、前記弁体の中央領域を弾性変形させて密着状態を維持する傾斜面を備えた圧接部を有しており、前記弁体には、前記傾斜面に対する密着状態で傾斜面の中央領域を露出させる開口が形成されており、前記中栓と弁体は、前記収容体に押圧力が作用した際、前記傾斜面から弁体を離間させて前記流路を開放すると共に、前記収容体に作用する押圧力が解除された際、前記弁体が傾斜面に密着して流路を閉塞する注出弁を構成している、ことを特徴とする。
【0009】
上記した構造のエアレスキャップは、注出口を具備した本体と、前記本体の内部に取り付けられる中栓と、略平坦状で弾性変形可能であり、前記中栓を本体に取り付けた際に前記本体と中栓との間に介在されて固定状態となる弁体の三部品で構成されている。前記弁体は、本体と中栓との間に介在される略平坦状の弾性部材であるため、弁体としての構造が簡略化され、前記中栓は、収容体の内部空間から注出口に至る流路と、弁体を密着させる傾斜面を備えた圧接部を有する構造であるため、構造も簡略化されて、本体、中栓、弁体の組み付けが容易に行なえるようになる。また、注出弁を構成する弾性変形可能な弁体の中央領域を、中栓の圧接部の傾斜面に密着させ、収容体に押圧力が作用した際、弾性部材を傾斜面から離間させて開口を介して内容物の注出状態とし、収容体に作用する押圧力が解除された際、前記弁体を傾斜面に密着して流路を閉塞することから、内容物中に微小粒子物が分散していても、密封時に微小粒子物による外気逆流の流路形成を阻止する効果が大きく密閉性が優れ、逆止弁構造も簡素化されてコストの低減が可能となる。
【0010】
上記したエアレスキャップは、内容物を収容する内側体と、内側体を囲繞するように成形され、内側体との間で空気の流入を許容する外気流入路が形成される外側体と、を有する二重成形された容器、或いは、周囲が溶着されたプラスチック製のフィルムシートで構成される容器(パウチパック)に装着することが可能である。この場合、前者の二重成形容器では、注出口の近傍に吸気口を形成しておき、この吸気口を閉塞するように、前記略平坦状の弁体の一部に吸気弁を形成するだけで良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構造が簡単で組み付けが容易に行なえると共に、安定した内容物の注出が行え、外気の流入が阻止されるエアレスキャップ及びエアレスキャップ付き容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るエアレスキャップ、及び、容器の第1の実施形態を示す図。
図2図1に示す容器に装着されたエアレスキャップの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)はA-A線に沿った断面図。
図3図2(a)のB-B線に沿った断面図。
図4図2(a)のC-C線に沿った断面図。
図5】エアレスキャップを構成する弁体を示す図であり、(a)は平面図、(b)はD-D線に沿った断面図、(c)は側面図。
図6】エアレスキャップを構成する中栓を示す図であり、(a)は平面図、(b)はE-E線に沿った断面図、(c)は側面図。
図7】中栓に弁体を組み付けた状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)はF-F線に沿った断面図、(c)は側面図。
図8図2(c)に示すエアレスキャップの拡大断面図。
図9】エアレスキャップの第1の変形例を示す拡大断面図。
図10】エアレスキャップの第2の変形例を示す拡大断面図。
図11】エアレスキャップの第3の変形例を示す拡大断面図。
図12】エアレスキャップの第4の変形例を示す拡大断面図。
図13】(a)は図12に示す弁体の構成を示す断面図、(b)は弁体の変形例を示す断面図。
図14】本発明に係るエアレスキャップ、及び、容器の第2の実施形態を示す図。
図15図14に示す容器に装着されたエアレスキャップの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図。
図16図14(a)のG-G線に沿った断面図。
図17図14(a)のH-H線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るエアレスキャップは、二重成形された容器、或いは、プラスチック製のフィルムシートを重ね周囲が溶着された容器などに装着され、内容物を注出するに際して、外気が容器の収容部内に流入することのない機能を備えている。
以下、図面を参照しながら、本発明に係るエアレスキャップの実施形態、及び、エアレスキャップを取り付けた容器の実施形態について説明する。
【0014】
図1から図8は、エアレスキャップの第1の実施形態、及び、容器の第1の実施形態を示す図である。
本実施形態の容器100は、内側体101と外側体102を備えた二重成形容器として構成されており、内側体101に内容物が収容され、内側体101と外側体102との間に外気が導入される構造となっている。このような容器100は、使用時において、外側体102の胴部を押圧すると、内側体101が減容変形して内容物が注出される。また、外側体102は、そのスクイーズ性によって原形復帰し、内側体101と外側体102との間には外気が導入されるため、内側体101は、減容変形した状態が維持される。
【0015】
上記の二重成形された容器は公知であるため、その詳細な構造については省略するが、例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)や、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタラートなど)をブロー成形することで製造することが可能である。本発明に用いられる二重成形容器は、その材料や形状、大きさ等の構成については限定されることはない。
【0016】
上記した容器100において、その注出口部分には、エアレスキャップ1が装着される。この実施形態のエアレスキャップ1は、内容物の注出時において、内側体101内に外気が流入することを防止する逆止弁(注出弁)を備えたエアレスキャップ構成、及び、内側体101と外側体102との間に外気の流入のみを許容する逆止弁(吸気弁)構成を備えている。
【0017】
この場合、容器100には、エアレスキャップ1が装着されるための装着構造、及び、内側体101と外側体102との間に外気を流入させるための外気流入路が設けられている。
本実施形態の容器は、内側体101の口部101aが外側体102の口部102aから僅かに突出しており、口部101aの外周に沿って形成されたフランジ101bが、口部102aの開口縁102bに当接して係止された状態となっている。そして、このような係止構造において、フランジ101bと開口縁102bとの間には、一定間隔をおいて周方向に沿った円弧状の切欠部105が形成されており、この切欠部105が外気流入路としての機能を果たしている(以下、外気流入路105とする)。この外気流入路105は、図2図3、及び、図8に示されており、例えば、円周方向に沿って略90°間隔で4箇所形成され、後述するエアレスキャップ1の吸気弁を介して、内側体101と外側体102との間に外気を流入させる機能を果たす。
【0018】
また、外側体102の口部102aの外周面には、雄螺子102cが形成されている。この雄螺子102cには、エアレスキャップ1の本体10に形成された雌ネジ部10cが螺合され、エアレスキャップ1は、容器100に固定される。なお、エアレスキャップ1と容器100の螺合関係は、容器使用後に容器とキャップを分別処理できるよう着脱できるような構造が好ましい。
【0019】
次に、本実施形態のエアレスキャップ1の構成について説明する。
本実施形態のエアレスキャップ1は、内側体101に収容された内容物が注出される注出口11を具備した本体10と、本体10の内部に取り付けられ、内側体の内部空間から注出口11に至る流路24が設けられた中栓20と、略平坦状で弾性変形可能であり、中栓20を本体10に取り付けた際に本体10と中栓20との間に介在されて固定状態となる弁体50と、を有している。
【0020】
前記本体10は、円周壁10aと天板10bを備えた略キャップ状に形成されている。前記円周壁10aの内面には、前記外側体の口部102aに形成された雄螺子102cと螺合する雌ネジ部10cが形成されている。また、天板10bの中央領域には、膨出部10dが形成されており、その中央部に注出口11が形成されている。この膨出部10dの内側は、内容物を注出して容器に対する押圧力が解除された際、内容物が注出口11の開口部分に留まることなく、内部に引き込まれて保持される空間Sを形成している(この空間Sには、内容物の注出を止めたとき、注出口付近の内容物が容器内方に引き戻された場合に内容物が保持される)。
【0021】
前記天板10bの一部には、吸気口(開口)12が形成されている。この吸気口12は、内側体101と外側体102との間に外気を流入させるためのものであり、前記内側体101の口部101aの外周面と、本体10の円周壁10aの内周面との間に形成される環状の隙間S1と連通している。すなわち、外気は、吸気口12を介して隙間S1内に入り込み、更に、上記したフランジ101bと開口縁102bとの間に一定間隔をおいて周方向に沿って形成された外気流入路105を介して、内側体101と外側体102との間に流入可能となっている。
【0022】
また、前記天板10bの裏面には、径方向外側に、容器側に向けて突出する突起14が形成されている。この突起14は、中栓20を本体10に取り付ける際、後述する弁体50の吸気弁55が吸気口12に位置決めできる位置決め構造を構成している。突起14は、例えば、180°間隔で2箇所形成されており、各突起14に対して90°の位置に、前記吸気口12が形成され、これにより、本体10に対する中栓20の正確な位置決め、及び組み付けを容易にしている。
【0023】
次に、主に図6を参照して、中栓20の構成について説明する。
中栓20は、前記本体10(天板10bの裏面側)との間に、略平坦状で弾性変形可能な弁体50を介在させて保持すると共に、容器内の内容物を注出口11に案内して流出させる機能を有している。すなわち、本体10との間に介在される弁体50と協働して、内容物を、流路24を介して注出口11に流出させると共に、外気を容器内に流入させない逆止弁(注出弁)としての機能を発揮する。
【0024】
中栓20の基体21は、円板状に形成されており、その一方の面には、前記内側体101の口部101aに圧入される環状突起21aが形成されている。この環状突起21aの先端は、径方向内側に傾斜しており、口部101aに圧入し易いように構成されている。なお、環状突起21aが口部101aに圧入されると、両者の間には隙間が生じることはなく、外気が容器側に流入することはない。
【0025】
また、前記基体21には、弁体50の中央領域を弾性変形させて密着状態を維持する傾斜面22aを備えた圧接部22が一体的に形成されている。本実施形態の圧接部22は、略円柱状に形成されており、基体21の中央領域に形成された円形の開口21b内に、複数の連結部22bを介して一体的に形成されている。連結部22bは、例えば、90°間隔で4箇所形成されており、これにより、圧接部22は、中栓20の中央部に一体的に保持され、その圧接部22の周囲には、前記流路24が形成される。
【0026】
前記基体21の圧接部22aの径方向外周面には、前記弁体50が入り込んで保持される円形の凹所25が形成されており、この凹所25は、弁体50の肉厚と同程度の深さを備えている。そして、前記圧接部22は、弁体50が凹所25内に設置された状態で、その中央領域を弾性的に撓ませるように、凹所25の底面25aよりも僅かに上方に突出している。すなわち、その突出する部分に、中央に向けて次第に高くなるように形成された傾斜面22aに対して、弁体50の中央領域が弾性的に変形することで密着状態が維持され、内容物をシールした状態に維持している。なお、弁体50の中央領域が弾性的に変形して密着状態となれば、凹所25aを設けない形状にしても良い。
【0027】
本実施形態における前記傾斜面22aは、圧接部22の表面で、ドーム状に膨出する形状となっており、周方向に亘って弁体50の中央領域が隙間なく一様に密着するように構成されている。すなわち、圧接部22が注出口11に向けて膨出するように形成されることで、その傾斜面22a全体に弁体50が一様に密着することができ、内容物を注出口側に流出させないシール機能を発揮する。
【0028】
また、凹所25の底面25aには、環状の溝25bが形成されている。この溝25bは、弁体50の外周面から垂下して突出形成される環状突起51が嵌合する部分となっており、この嵌合構造によって、弁体50は中栓20に付勢されて一体化することができ、このようにユニット化された弁体50と中栓20は、本体10に対して容易に組み込むことが可能となる。
【0029】
前記基体21の凹所25よりも径方向外方のリング状の領域27には、一方の面に内側体101の口部101aの上端面が密着すると共に、他方の面に本体10の天板10bの裏面が密着する(図4参照)。この場合、リング状の領域27には、径方向両側に一対の切欠き27aが形成されると共に、各切欠き27aに対して90°の位置に切欠き27bが形成されている。
前記一対の切欠き27aは、中栓20を本体10に組み付ける際、天板10bの裏面に形成された前記突起14と係合し、切欠き27bは、天板10bに形成された吸気口12に位置付けられる。この切欠き27bの位置には、後述する弁体50に形成された吸気弁55が位置付けされる。
【0030】
以上のように構成される本体10及び中栓20は、それぞれ、ポリプロピレン、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂を型成形することによって、それぞれワンピースとして一体形成することが可能である。
【0031】
前記弁体50は、図5に示すように、薄肉厚の略平坦状で、例えば、弾性プラスチック、シリコン、エラストマー等、弾性変形可能な材料で一体形成されている。弁体50は略円形状に形成されており、一方の面には、前記中栓20に形成された環状の溝25bに嵌合する環状突起51が形成されている。また、その中央領域には、前記圧接部22の傾斜面22aに対する密着状態で、傾斜面22aの中央領域(頂部)を露出させる開口53が形成されている。
【0032】
前記内側体に押圧力が作用して内容物が流路24を介して押し出し作用を受けた際、傾斜面22aに密着した弁体は、弾性密着力に抗して、密着領域(傾斜面22aと密着する領域)54を傾斜面22aから離間させ、前記開口53を介して内容物の注出を可能にする。すなわち、弁体50の傾斜面22aに対する密着領域54及び開口53は、流路24を介して内容物の流出を許容すると共に、容器に対する押圧力が解除された際、再び弾性力によって密着領域54が傾斜面22aに密着し、外気の流入を阻止する(流路24を閉塞する)逆止弁(注出弁)としての機能を発揮する。その際、内容物中の微小粒状物が傾斜面22aと弁体50との間に挟まっても、弁体50がその弾性によって押え包み込み、微小粒状物による隙間形成を抑制し、隙間を介しての外気の流入を防止することで外気流入阻止効果が高まる。
【0033】
また、弁体50の外周部の一部には、径方向に突出する突片が形成されている。この突片は、弁体50が中栓20に組み付けられた際、前記切欠き27bに位置し、かつ、天板10bに形成された吸気口12に位置付けられて吸気弁55を構成する。この吸気弁55の先端は、図8に示すように、吸気口12の近傍の天板10bの裏面に当接しており、内側体101と外側体102の間の空間が負圧になった際、下方に弾性変形して隙間S1内に外気の流入を許容すると共に、流入した外気を外部に流出させない逆止弁として機能する。
【0034】
上記した形状の弁体50については、薄肉厚の略平坦状に構成されることから、インジェクション成型、プレス加工等によって一体形成することが可能であり、物性的には、硬度が30~80度、伸縮率が50~800%程度の材料を用いることが好ましい。厚みは使用材料の硬度、伸縮性、中栓傾斜角度等に応じて、適切に設定することが好ましい。
【0035】
次に、上記したエアレスキャップ1の組立方法、及び、内容物注出時の動作について説明する。
まず、図5に示す弁体50を図6に示す中栓20に組み付ける(組付けた状態を図7に示す)。両部材の組み付けに際しては、吸気弁55を中栓の切欠き27bに位置合わせしつつ、弁体50の環状突起51を、中栓20の凹所25の底面25aに形成された環状の溝25bに嵌合すれば良く、これにより、弁体50は、中栓20の凹所25内に設置され、両者は一体化(ユニット化)される。
この状態で、弁体50の中央の密着領域54は、図8に拡大して示すように、圧接部22の傾斜面22aに所定の弾性力で密着している。なお、弁体50に形成される開口53の径を変更することで、弁体50の傾斜面22aに対する密着領域54(密着幅L)を容易に変更することが可能であり、また、傾斜面22aの凹所25の底面25aに対する傾斜角度αを変更することで、密着領域54における密着力を容易に変更することが可能である。
【0036】
そして、一体化された弁体50及び中栓20は、中栓20の一対の切欠き27aを、天板10bの裏面に形成された突起14に係合させることで、吸気口12には、弁体50に形成された吸気弁55が位置付けされる。
すなわち、上記した構成によれば、エアレスキャップ1の組立を容易に行なうことができる。
【0037】
上記したように組み立てられたエアレスキャップ1は、容器100の外側体102の口部102aに螺合して固定される。この状態で、中栓20の環状突起21aが内側体101の口部101aに圧入され、弁体50は、本体10と中栓20との間に介在して内側体の口部に位置付けされると共に、弁体50に形成された吸気弁55が吸気口12に位置付けされる。
【0038】
内側体101に収容された内容物は、弁体50の中央領域が圧接部22の傾斜面22aに所定の弾性力で密着しているため、外部に流出することはない。そして、外側体102に押圧力を加えると内側体101も押圧力を受け、内容物は、その押圧力によって、圧接部22の周囲の流路24を流れて弁体50と傾斜面22aとの密着領域54を開放し、弁体50の中央に形成された開口53を介して注出口11から注出される。このとき、内側体101は、減容変形する(減容変形した分、内容物が注出される)。
【0039】
外側体102に対する押圧力を解除すると、外側体102はスクイーズ性により原形復帰し、その分、外気を吸引しようとする(内側体101と外側体102の間は負圧になっており、外気を吸引しようとする)。外気は、吸気口12を介して下側に弾性変形した吸気弁55を介して、内側体101の口部101aの外周面と、本体10の円周壁10aの内面との間に形成される環状の隙間S1に入り込み、更に、外気流入路105を介して、内側体101と外側体102との間に流入し、負圧を解消する。この場合、内側体101と外側体102との間に流入した外気は、吸気弁55が吸気口12を閉塞するため、外部に流出することはなく、内側体101は、減容変形した状態が維持される。
【0040】
また、外側体102に対する押圧力を解除すると、内側体101に対する押圧力も解除されるため、弁体50の密着領域54が傾斜面22aに密着して、外気の流入が阻止される(流路24が閉塞される)。このとき、弁体50の中栓20の流路24の上面を覆う部位の弁体厚みを中央部よりも薄肉とすることにより流路24の密封や開放をスムーズに行わせることができ、さらに容器への押圧力を解除したときに内側体のわずかな形状復帰により内側体内部が僅かに負圧となり、流路を覆う部位の弁体が内側体の内方に引かれ内側に凹入変形し、注出口11の開口部近傍の内容物が内方に引かれて空間Sに保持され、注出口11の開口端付近に残存することが軽減される。
【0041】
上記したエアレスキャップ1は、本体10、中栓20及び弁体50の構造が簡単であり、これらの部材の組み付けが容易に行なえる。また、単に、中栓20の圧接部22の傾斜面22aの傾斜角度αや、弁体50の開口53の大きさ(密着幅L)、更には、弁体50の肉厚、素材等を変更することで、液状、半液状、微細粒状物を分散含有した液状の内容物に応じて、確実に弁体50が傾斜面22aに密着できる最適な構成を容易に提供することが可能となる。
【0042】
なお、上記したように、圧接部22の傾斜面の傾斜角度αや密着幅Lを変える以外にも、例えば、図9図11に示すように構成することで、内容物に適した構成を容易に得ることが可能である。
【0043】
図9に示す構成(第1の変形例)は、圧接部22の頂部に、凸状部22cを形成しており、弁体50の開口部53の周囲の内縁領域を変形させて凸状部22cに沿って弾性変形させている。このような構成によれば、内容物の密閉性をより向上することが可能となる。
図10に示す構成(第2の変形例)は、圧接部22の頂部に、凹状部22dを形成しており、弁体50の開口部53の周囲の内縁領域を変形させて凹状部22dに沿って弾性変形させている。このような構成によれば、密閉性を向上させることができる。
図11に示す構成(第3の変形例)は、弁体50の中央部に開口を形成するのではなく、密着する傾斜面22aに対する密着領域54に複数の開口53aを形成している。このような開口53aは、例えば、円周上に沿って複数個形成することが可能であり、その形成個数を減らしたり、密着幅Lの中央寄りに形成することで、シール性を高めることができる。
【0044】
図12及び図13(a)は、第4の変形例を示す図である。
この変形例の弁体50は、前記流路24を塞ぐ領域に、内容物が収容された前記収容体に押圧力が作用した際、点線Bで示すように、前記注出口11の方向に膨出すると共に、前記収容体に作用する押圧力が解除された際、実線Aで示すように、前記収容体側に反転して流路24に入り込むことが可能な反転変形部58を備えている。
【0045】
このような反転変形部58は、図13(a)に示すように、中央の開口53の周囲を予め凹状に窪ませることで形成されており、弁体50の形成時に一体形成することが可能である。
このような形状の弁体50は、収容体に押圧力が作用していない状態では、凹状に窪んだ反転変形部58が圧接部22の周囲の流路24に入り込んでおり、そこから径方向内側(密着領域54)は、圧接部22の傾斜面22aに圧接された状態となっている。この状態で、収容体に押圧力を作用させると、反転変形部58の領域が流路24側から押し上げるような押圧作用を受けて膨出変形し、これにより密着領域54が傾斜面22aから離間して内容物が注出される。
【0046】
そして、収容体に対する押圧力を解除すると、そのスクイーズ性によって、収容体の容積がわずかに元に戻ろうとし、弁体内側の内容物は収容体内方へ引かれ弁体50は流路24の内方へ引かれる。また、弁体50は、反転変形部58が元の形状に戻ろうとし、膨出した部分が再び流路24に入り込もうとする。この凹状の形状に戻ろうとする形状変化によって、注出口11から空間Sに至る部分が容量減少し、注出口11の先端部から内容物が内方へ吸い込まれる(サックバック)ようになる。すなわち、収容体に対する押圧力を解除すると、弁体50に、元に戻ろうとする復元力が作用し、その力が反転変形部58を効果的に反転変形させて上記したサックバック効果を高める(内容物が注出口に留まらない)ことが可能となる。
【0047】
上記した弁体50の構成において、反転変形部58は、図13(b)に示すように、弁体の他の部位に比べて肉厚が薄い薄肉領域58aを備えていることが好ましい。このように、反転部を薄肉厚化することで、この部分が反転変形して膨出すること、及び、その状態から反転して凹状に変形して流路24に入り込むことが容易になり、サックバック効果を高めることが可能となる。
【0048】
また、前記中栓の圧接部22の傾斜面22aは、流路24を塞ぐ領域で弁体50の反転変形部58が反転して流路24に入り込んだ際の弁体の形状に沿うように形成しておくことが好ましい。具体的には、図13(a)に示すように、反転変形部58を形成することによって、反転変形部58から径方向内側の領域58bは、上方に向けて湾曲するような形状となり、この形状に沿うように、傾斜面22aを図12に示すような形状(図8に示す傾斜角度αよりも大きい角度となる湾曲形状)にすれば良い。
【0049】
このような弁体の構成、及び、圧接部の構成によれば、収容体に対する押圧力を解除したときの弁体と傾斜面との密着面積が増加する。したがって、微小粒状物が混在している内容物(液)を用いた場合において、それが弁体と傾斜面との間に残っても、柔軟な弾性弁体がそれを覆うような状態となり、当該部分での密閉性が保持される。
【0050】
なお、図12及び図13に示した弁体50の構成については、図9から図11に示した弁体構造においても適用することが可能である。
【0051】
上記した中栓20に形成される圧接部22の形状、配設態様、及び、流路24についても適宜変形することが可能である。例えば、圧接部22については円筒状に形成し、その流路については、圧接部22の内部に連通する構成であっても良い。
【0052】
図14から図17は、本発明に係るエアレスキャップ、及び、容器の第2の実施形態を示す図である。
上記した実施形態では、容器として、二重成形タイプのものを例示したが、プラスチック製のフィルムシートを重ねた容器(パウチパック)にも適用することが可能である。具体的には、容器200は、例えば、図14に示すような矩形のフィルムシート201a,201bを重ね合わせ、斜線で示す部分をヒートバー等によって熱溶着することで形成される。このような容器は、内容物が注出されるにしたがって萎むように柔軟性を有しており、使い切った後は、そのまま廃棄することが可能である。
【0053】
前記フィルムシート201a,201bは、柔軟性を有する合成樹脂製であり、例えば、溶着し易いように、ポリエチレンやポリプロピレンなどによって形成されている。また、その表面側は、注出物に対するバリア性(ガスバリア性および遮光性)を高めるように、ナイロン、アルミホイルなどを積層した、いわゆる複合層で構成されている。このような容器は、下縁部に底壁を溶着して自立体として構成しても良いし、厚さ方向に側壁を溶着してガゼット体として構成しても良い。
【0054】
このような容器200に取り付けられるエアレスキャップ1Aの構成について説明する。
なお、第1実施形態のエアレスキャップと同様な構成、機能を有する部分には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0055】
上記した構造の容器200には、その上端縁に、エアレスキャップ1Aを固定するための溶着体80が介在して溶着されており、この溶着体80には、前記フィルムシート201a,201bが溶着されるように、断面略楕円形状の溶着部81を備えている。また、前記溶着体80には、上方に向けて突出する円筒状の口部85が一体形成されており、その口部85の雄螺子部85aにエアレスキャップ1Aが螺合、固定されるようになっている。
【0056】
この場合、本実施形態のエアレスキャップ1Aは、収容体200が単体構造であるため、第1の実施形態のような吸気弁を形成する必要がなく、構造が簡素化されている。すなわち、エアレスキャップ1Aの本体10Aには、第1の実施形態のような吸気口が形成されておらず、かつ、中栓20と一体化される弾性変形可能な弁体50Aには、第1の実施形態のような吸気弁が形成されていない。
【0057】
このように、収容体がパウチパックとして構成されていても、本体及び弁体の形状を僅かに変更するだけで良いため、製造コストを低減することが可能となる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
上記したエアレスキャップについては、平板状で弾性変形可能に形成された弁体を中栓と本体との間に介在し、中栓に設けられた傾斜面を有する圧接部に密着させて注出弁が構成されていれば良く、それ以外の構成については適宜変形することが可能である。例えば、本体10,10Aには、注出口を閉塞するためのキャップ(ヒンジ式、スクリュー式など)が別途、装着されていても良い。また、注出口の配設位置を弁体50の開口部の真上部とせず、位置関係をずらして、例えば、注出内容物を真上の壁面に当ててから注出口に向かうようにすることで、内容物の急な注出を緩和し、注出口から穏やかに流出させることができる。その他、所望により、圧接部の構成、及び流路の形成方法など、種々変形することが可能である。
【0059】
また、収容体についても、種々変形することが可能であり、例えば、外気流入路の形成方法や、エアレスキャップの装着方法等、適宜変形することが可能である。さらに、上述した実施形態や変形例については、ある実施形態や変形例の構成要素を別の実施形態や変形例の構成要素に置換したり、組み合わせて実施しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1,1A エアレスキャップ
10,10A 本体
12 吸気口
20 中栓
22 圧接部
22a 傾斜面
50,50A 弁体
55 吸気弁
58 反転部
100,200 収容体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17