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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】コークス炉用れんが積体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/02 20060101AFI20221026BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C10B29/02
F27D1/16 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019061243
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158688
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】首藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】梶原 定二
(72)【発明者】
【氏名】神農 茂
(72)【発明者】
【氏名】西村 昂希
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205676411(CN,U)
【文献】特開2018-145286(JP,A)
【文献】特開昭63-11770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 29/02
F27D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のれんがを使用して製造されるコークス炉用れんが積体の製造方法であって、
直交する関係に配置された複数のパネルの対向するそれぞれの表面に、位置決めブロックを設けたれんが積補助具を使用し、
このれんが積補助具の位置決めブロックにれんがを当接しながら当該れんがを位置決めして施工する工程を含む、コークス炉用れんが積体の製造方法。
【請求項2】
れんが積補助具は、
水平に配置された底パネルと、
底パネルの長辺側側面側に、底パネルの表面又は底パネルの表面の延長面に対して垂直かつ底パネルの長手方向中心軸に対して平行になるように設けられた長辺パネルとを具備し、
底パネルの表面には、位置決めブロックとして底パネルの表面に対して水平な表面を有する底面ブロックが設けられ、
長辺パネルの底パネルと対向する方の表面には、位置決めブロックとして底パネルに対して、水平な上面と垂直な表面、又は水平な上面と垂直な表面と垂直な側面を有する長辺ブロックが設けられている、請求項1に記載のコークス炉用れんが積体の製造方法。
【請求項3】
れんが補助具は、底パネルの短辺側側面側に、底パネルの表面又は底パネルの表面の延長面に対して垂直かつ底パネルの長手方向中心軸に対して垂直になるように設けられた短辺パネルをさらに有し、
短辺パネルの底パネルと対向する方の表面には、位置決めブロックとして底パネルに対して、水平な上面と垂直な表面、又は水平な上面と垂直な表面と垂直な側面を有する短辺ブロックが設けられている、請求項2に記載のコークス炉用れんが積体の製造方法。
【請求項4】
長辺パネル及び/又は短辺パネルに設けられた位置決めブロックの上面は、れんが積体の各段の上面の設計位置に配置されている、請求項2又は請求項3に記載のコークス炉用れんが積体の製造方法。
【請求項5】
長辺パネルに設けられた位置決めブロックにおいて底パネルに対して垂直な側面は、底パネルに対して垂直なれんが接合面の設計位置に配置されている、請求項2~4のいずれか一項に記載のコークス炉用れんが積体の製造方法。
【請求項6】
長辺パネルに設けられた位置決めブロックは、れんがのコーナー部に合わせて配置されている、請求項2~5のいずれか一項に記載のコークス炉用れんが積体の製造方法。
【請求項7】
長辺パネル及び/又は短辺パネルは、底パネルに対して着脱可能に設けられている、請求項2~6のいずれか一項に記載のコークス炉用れんが積体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉で使用されるれんが積体の製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
コークス炉では、れんがをライニングする際に、作業能率向上のためにあらかじめ複数のれんがをモルタル目地で接合したれんが積体が使用されている。
例えば、特許文献1には、コークス炉の築炉に際して、省力化のためにれんがを事前に組み立てたプレライニングブロック(れんが積体)を使用する築炉方法が開示されている。
【0003】
一方、コークス炉は貫通孔や溝を有する複雑な構造をしており、これら貫通孔や溝を複数のれんがで形成しなければならない。コークス炉内で築炉作業を行う場合は、築炉中にれんがの基準位置からの距離を測定して設計位置と照合し、れんがの位置を正しい位置に修正することが可能である。このため、複数のれんがでも貫通孔や溝をずれないように形成することができる。また、寸法精度が要求されない部位で炉全体の寸法を調整することもできる。
【0004】
これに対して、炉外で製造された複数のれんが積体を炉内へ搬入して組み立てる場合は、れんが積体どうしの貫通孔や溝を合致させるためには、れんが積体に高い寸法精度が要求されることになる。
しかしながら、単に人が図面を見ながられんがを積み上げるだけでは、寸法合わせに非常に手間を要し、しかも寸法精度が確保し難い問題があった。さらに、使用するれんが自体にも寸法のバラツキがあるため、設計どおりの寸法で、れんが積体を製造することは非常に手間を要する作業であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-223647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複数のれんがよりなるコークス炉用れんが積体を、高寸法精度かつ高作業能率で製造することのできる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、直交する関係で配置された複数のパネルの対向するそれぞれの表面にそれぞれ位置決めブロックを設け、この位置決めブロックにれんがを当接させながら施工して行くことで、れんが積体の側面(外周面)のれんがの位置決めを高精度でできるため、この側面(外周面)のれんがを基準として他のれんがを施工することで、れんが積体全体を高精度で製造することができることを新たに見出した。
【0008】
すなわち、本発明の一観点によれば、次のコークス炉用れんが積体の製造方法が提供される。
複数のれんがを使用して製造されるコークス炉用れんが積体の製造方法であって、
直交する関係に配置された複数のパネルの対向するそれぞれの表面に、位置決めブロックを設けたれんが積補助具を使用し、
このれんが積補助具の位置決めブロックにれんがを当接しながら当該れんがを位置決めして施工する工程を含む、コークス炉用れんが積体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コークス炉用れんが積体を高寸法精度で製造することができるため、炉内での位置のずれを最小にすることができる、また、れんが積体製造時にれんがの位置決めを簡単に行うことができるため作業能率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a】本発明の第一の実施例で製造するコークス炉用れんが積体の正面図。
図1b図1aに示すコークス炉用れんが積体の右側面図。
図1c図1aに示すコークス炉用れんが積体の4段目のみの平面図。
図1d図1aに示すコークス炉用れんが積体の3段目のみの平面図
図1e図1aに示すコークス炉用れんが積体の2段目のみの平面図。
図1f図1aに示すコークス炉用れんが積体の1段目のみの平面図。
図2】本発明の第一の実施例で使用するれんが積補助具の正面図。
図3図2に示すれんが積補助具の左側面図。
図4図2に示すれんが積補助具の底パネルのみの平面図。
図5図2に示すれんが積補助具の長辺パネルに設けられた長辺ブロックの斜視図。
図6a】本発明の第二の実施例で製造するコークス炉用れんが積体の正面図。
図6b図6aに示すコークス炉用れんが積体の右側面図。
図6c図6aに示すコークス炉用れんが積体の平面図。
図7】本発明の第二の実施例で使用するれんが積補助具の正面図。
図8図7に示すれんが積補助具の左側面図。
図9図7に示すれんが積補助具の底パネルのみの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を実施例に基づき説明する。なお、以下の説明では「コークス炉用れんが積体」を単に「れんが積体」という。
【0012】
(第一の実施例)
まず、第一の実施例で製造するれんが積体1について説明する。
図1a~fに示すように、このれんが積体1は、コークス炉のピラーウォール用のれんが積体で、両側が階段状になっている。1段目には9個のれんが11、2段目には7個のれんが11、3段目には5個のれんが11、4段目には3個のれんが11がそれぞれ使用され、れんが11どうしはモルタル14で接合されている。図1a及び図1c~fに示すように、れんが積体1の長辺側の両側面には縦に連続する2つの溝12がある。このれんが積体1は溝12の位置を他のれんが積体などと合わせるため、これら溝12部分に高い寸法精度が要求されている。具体的には、溝12の左側面を基準面としてれんが積体1の右側面までは1210±1.5mm、れんが積体1の左側面までは640±1.5mm、全長は1850+1.5,-2.5mmの寸法精度で設計されている。また、2つのれんが11で構成される溝12の幅も高精度な寸法管理が適用される。
なお、れんが11間のモルタル目地厚みは3mmで設計されている。また、各れんが11は凸ダボ15と凹ダボ16とを有している。
【0013】
次に、第一の実施例で使用するれんが積補助具2について説明する。
図2及び図3に示すように、このれんが積補助具2においては、架台6に底パネル3と長辺パネル4が直交する関係で保持されている。すなわち、架台6の上板61に板状の底パネル3が取り付けられ、この底パネル3の長辺側には板状の長辺パネル4が底パネル3の表面の延長面に対して垂直かつ底パネル3の長手方向中心軸に対して平行になるように取り付けられている。
【0014】
この長辺パネル4は、架台6の上板61に対して着脱可能かつ垂直度が調整可能に設けられた長辺側基板63に取り付けられている。すなわち、長辺パネル4は底パネル3に対して着脱可能かつ垂直度が調整可能に設けられている。そして、これらのパネル(底パネル3及び長辺パネル4)の対向する側の表面には、それぞれ位置決めブロックとして底面ブロック31及び長辺ブロック41が配置されている。
【0015】
なお、架台6は上板61と上板61に取り付けられた高さが調節可能な4本の脚62とで構成され、脚62の高さを調整することで水準器等を使用して底パネル3の表面が水平になるように調整可能である。
【0016】
図4において、底パネル3の表面には底面ブロック31が取り付けられている。この底面ブロック31は、直方体で高さは30mmであり、その表面32は底パネル3の表面に対して平行な面となっている。したがって、架台6の脚62の高さ調整により、底面ブロックの表面32は水平面となる。そして、この底面ブロックの表面32がれんが積体1における各れんがの高さの基準面となる。なお、底面ブロック31は樹脂製で、表面を研磨加工することで水平面を設けている。
【0017】
また、底面ブロック31どうしは隙間を設けて配置されているが、この隙間のうち長辺側の隙間34にはれんがの凸ダボ15が入ることでれんがを水平に保持することができる。一方、短辺側の隙間35は、れんが積体1にバンドを巻くための隙間で、れんが積作業が終わった後、この隙間35を利用して上下方向にバンドを巻いてれんが積体を補強することができる。なお、長辺パネル4とは反対側の長辺側の底面ブロック31には、前述の溝12に嵌合するための溝用突起36を設けている。
【0018】
図4において、一番左端の底面ブロック31の左側面と一番右端の底面ブロック31の右側面との距離はれんが積体1の全長と等しく、それぞれの面はれんがを配置する際の基準面となっている。
【0019】
図5には、長辺パネル4に設けられている長辺ブロック41を示している。長辺ブロック41は、その上面42が底パネル3の表面と平行に、表面43と側面44が底パネル3の表面と垂直になるように長辺パネル4に取り付けられている。また、長辺ブロック41の高さHは30mmである。なお、これらの関係は、第二の実施例で説明する短辺パネル5における短辺ブロック51の場合も同様である。本実施例において長辺ブロック41は樹脂製で、表面43を研磨仕上げしたものを使用している。
【0020】
図2には、長辺パネル4に設けた長辺ブロック41に当接するれんが積体の1列目のれんがを想像線で示している。まず、1段目のれんが用の長辺ブロックについて説明すると、左から2番目のれんがを除いてそれぞれのれんがの上部のコーナー部17に当接するように長辺ブロック41が長辺パネル4に設けられている。このコーナー部17に当接するように設けられた長辺ブロック41は、それぞれのれんがのコーナー部17の設計位置に合わせて配置されている。また、それぞれのれんがの下端部18にも当接するように長辺ブロック41が設けられている。さらに、溝用長辺ブロック45が溝12に嵌合するように設けられており、この溝用長辺ブロック45は1段目のれんがの溝12から4段目のれんがの溝12まで連続している。この長辺パネル4においては2段目から上も同様な配列で長辺ブロック41を配置している。
【0021】
次に、このれんが積補助具2を使用してれんが積体1を製造する手順について説明する。
このれんが積体1は、溝用長辺ブロック45に当接するれんがを基準として施工して行く。すなわち、図2においてまず、溝用長辺ブロック45にそれぞれの溝12が嵌合するように、れんが積体の1段目の1列目の2つのれんがどうしをモルタルで接合して配置する。このとき、溝用長辺ブロック45、底面ブロック31及び長辺ブロック41のそれぞれの表面にれんがの溝12の内面、並びに下端部18及びコーナー部17の表面がしっかりと当接するように配置する。続いて、れんが積体の1列目の図2において右側に次のれんがをモルタルを介して配置する、このとき、長辺パネル4の2つの長辺ブロック41の表面にれんがをしっかりと当接させるとともに、このれんがのコーナー部17の右側面をこの部位に位置する長辺ブロック41の右側面と一致させることで、れんがの長手方向の位置決めを行う。このときの位置決めはモルタルの厚みで調整する。モルタルの厚みは3mmを基準としているが、この長辺ブロック41の位置に合わせてモルタルの厚みを例えば2~4mmの間で調整する。図2右側の次のれんがも同様に施工するが、この右端のれんがは、その右側面を一番右側の底面ブロック31の右側面に合わせる。図2の左端のれんがも同様に施工することで、れんが積体の1段目の1列目(長辺パネル側)のれんがの施工が終わる。
【0022】
次に、れんが積体の1段目の2列目のれんがを施工する。まず、溝12を有するれんが(図1f参照)を底面ブロック31に設けた溝用突起36にその溝12を嵌合させるように位置決めしてモルタルを介して1列目のれんがに接合する。次に、その右隣のれんがは、先に施工した溝12を有するれんがとコーナー部が合致するようにモルタルの厚みを調整して施工し、右端のれんがは、右から2番目の底面ブロック31の右側面にその右側面を合わせるように施工する。最後に左端のれんがは、左から2番目の底面ブロック31の左側面にその左側面を合わせて施工する。なお、この2列目のれんがの施工時には、2列目のれんがの長辺側側面側に水糸を張って位置決めを行うこともできる。
【0023】
続いて、れんが積体の2段目の1列目のれんがの施工においては、モルタルの厚みを調整することで、各れんがのコーナー部17の上面と位置決めブロック41の上面とを一致させながら高さ方向の位置決めを行うことにより、れんがの水平度を確保する。この作業以外は1段目の1列目と同じ要領で施工する。また、れんが積体の2段目の2列目は、れんがの溝12を下のれんがの溝12の表面と表面どうしが合致するように配置する。なお、2列目のれんがは1列目のれんがの高さを基準としつつ、さらに水糸を使用して上面の水平度を確保することで、より寸法精度を確保することができる。
3段目と4段目のれんがの施工も2段目と同様に行う。
【0024】
以上説明したように、れんが積体の1列目の1段目から4段目において溝12を有するのれんがは、溝用長辺ブロック45に嵌合(当接)させて施工するため、簡単な作業で溝12の内面のズレの発生を防止することができる。そして、各段のれんがは、この溝12を有するれんがを基準にし、かつれんがのコーナー部17に合わせて配置されている長辺ブロック41によって位置決めされるため、各れんがの位置決めを簡単な作業で高精度に行うことができる。さらに、1列目のれんがは上部と下部とが長辺ブロック41の表面に当接しているため、れんが積体の1列目の側面は垂直に形成される。しかも、長辺ブロック41の上面とれんがの上面とが一致するように、モルタルでれんがの高さを調整しているため、れんが積体の高さの寸法精度も高精度になっている。
【0025】
また、長辺パネル4は架台6に対して着脱可能に設けられているため、れんが積体の施工が完了後は、取り外して別の架台に取り付けることができ、れんが積体を養生しながら直ぐに次のれんが積体のれんが積作業に取り掛かることができる。
【0026】
(第二の実施例)
図6a~cに、第二の実施例で製造するれんが積体を示している。
このれんが積体1は1段当たり10個のれんが11を4段積上げることで製造され、れんが11どうしはモルタル14で接合されている。図6cに示すように、れんが積体1の長手側の両側面には2つの溝12があり、また内側に貫通孔13がある。このれんが積体1は溝12や貫通孔13の位置を他のれんが積体などと合わせるため、これらの部分に高い寸法精度が要求されている。具体的には、れんが積体1の右側面を基準面として、溝12の右側面までは1240±1.5mm、溝12の左側面までは1300±1.5mm、貫通孔13の左側面までは7600±2.0mm、全長は1650±1.5mmの寸法精度で設計されている。
なお、れんが11間のモルタル目地厚みは3mmで設計されている。また、各れんが11は凸ダボ15と凹ダボ16とを有している。
【0027】
次に、第二の実施例で使用するれんが積補助具2について説明する。
図7及び図8に示すように、このれんが積補助具2においては、架台6に底パネル3と長辺パネル4と短辺パネル5とが直交する関係で保持されている。すなわち、架台6の上板61に板状の底パネル3が取り付けられ、この底パネル3の長辺側には板状の長辺パネル4が底パネル3の表面の延長面に対して垂直かつ底パネル3の長手方向中心軸に対して平行になるように架台の上板61に取り付けられている。さらに、底パネル3の短辺側には板状の短辺パネル5が、底パネル3の表面の延長面及び長辺パネル4に対して垂直になるように架台6の上板61に取り付けられている。なお、この長辺パネル4と短辺パネル5とは、架台6の上板61に対して着脱可能かつ垂直度が調整可能に設けられた長辺側基板63と短辺側基板64にそれぞれ取り付けられている。すなわち、長辺パネル4及び短辺パネル5は底パネル3に対して着脱可能かつ垂直度が調整可能に設けられている。そして、これらのパネル(底パネル3、長辺パネル4及び短辺パネル5)の内面側(対向する側の表面)には、それぞれ位置決めブロックとして底面ブロック31、長辺ブロック41及び短辺ブロック51が配置されている。
【0028】
なお、架台6は上板61と上板61に取り付けられた高さが調節可能な4本の脚62とで構成され、脚62の高さを調整することで底パネル3の表面が水平になるように調整可能である。
【0029】
図9において、底パネル3の表面には底面ブロック31が取り付けられている。この底面ブロック31は、直方体で高さは30mmであり、その表面32は底パネル3の表面に対して平行な面となっている。したがって、架台6の脚62の高さ調整により、底面ブロックの表面32は水平面となる。そして、この底面ブロック31の表面32がれんが積体1における各れんがの高さの基準面となる。なお、底面ブロック31は樹脂製で、表面を研磨加工することで水平面を設けている。
【0030】
また、底面ブロックの側面33は底パネル3の表面に対して垂直になっている。底面ブロック31どうしは隙間を設けて配置されているが、この隙間のうち長辺側の隙間34にはれんがの凸15ダボが入ることでれんがを水平に保持することができる。一方、短辺側の隙間35は、れんが積体1にバンドを巻くための隙間で、れんが積作業が終わった後、この隙間35を利用して上下方向にバンドを巻いてれんが積体を補強することができる。なお、長辺パネル4とは反対側の長辺側の底面ブロック31には、前述の溝12に嵌合するための溝用突起36を設けている。
【0031】
図7には、長辺パネル4に設けた長辺ブロック41に当接するれんが積体の1列目のれんがを想像線で示している。まず、1段目のれんが用の長辺ブロックについて説明すると、左から2番目のれんがを除いてそれぞれのれんがの上部のコーナー部17に当接するように長辺ブロック41が長辺パネル4に設けられている。このコーナー部17に当接するように設けられた長辺ブロック41は、それぞれのれんがのコーナー部17の設計位置に合わせて配置されている。また、それぞれのれんがの下端部18に当接するように長辺ブロック41が設けられている。さらに、溝12の際にも、溝12を有するれんがが当接するように長辺ブロック41が配置されている。この長辺パネル4においては2段目から上も同様な配列で長辺ブロック41を配置している。
【0032】
図8において、この短辺パネル5には、短辺ブロック51として、長い短辺ブロック52が4個と、短い短辺ブロック53が8個取り付けられている。長い短辺ブロックの上面54は、れんが積体の各段のれんがの上面の設計位置に配置され、れんがの水平面の基準の一つとなる。また、これら12個の短辺ブロック51の表面は、れんが積体1の一方の短辺側側面の基準面となる。すなわち、これら12個の短辺ブロック51の表面と当接することで、れんが積体1の一方の短辺側側面の垂直度を精度良く形成することができる。なお、短辺ブロック51を上下に設ける理由は、れんがの上下の2つの面に当接することで、れんがが斜めになることを防止するためである。
【0033】
次に、このれんが積補助具2を使用してれんが積体1を製造する手順について説明する。
図7においてまず、3つのパネル3~5で形成されるコーナー部に、1段目の1列目の右端のれんがを配置する。このとき、底面ブロック31、長辺ブロック41及び短辺ブロック51のそれぞれの表面にれんがの表面がしっかりと当接するように配置する。続いて、前述のれんがの左隣に次のれんがをモルタルを介して配置する。このとき、長辺パネル4の3つの長辺ブロック41の表面にれんがをしっかりと当接させるとともに、モルタルの厚みを調整して、このれんがの右上のコーナー部17の右側面をこの部位に位置する長辺ブロック41の右側面と一致させることで、れんがの長手方向の位置決めを行う。さらに、1列目の次のれんがも同様に施工する。続いて、図7において右から4番目のれんがの施工では、溝12の際に設けた長辺ブロック41の側面と溝12の内面とが一致するようにれんがを配置する。さらに、図7において左端のれんがも同様に施工することでれんが積体の1段目の1列目のれんがの施工が終わる。
【0034】
次に、れんが積体の1段目の2列目の短辺パネル5側のれんがをモルタルを介して前述のコーナー部のれんがに接合する。このとき、短辺ブロック51の表面と底面ブロック31のそれぞれの表面にれんがの表面がしっかりと当接するように配置する。右から2番目のれんがは、その貫通孔13部分が1列目のれんがの貫通孔13部分と合致するように施工する。さらに、右から3番目と4番目のれんがは、底面ブロック33に設けた溝用突起36がれんがの溝12に嵌合するように配置して施工する。最後に、左端のれんがも同様に施工することでれんが積体の1段目の施工が終わる。
【0035】
2段目以降のれんがの施工に関して、まず1列目においてコーナー部のれんがについては、短辺ブロック51と長辺ブロック41にれんがの2つの側面をしっかりと当接し、しかもモルタルの厚みを調整して、長い短辺ブロック52の上面54と長辺ブロック41の上面42とれんがの上面とを一致させることで、れんがの高さ方向の位置決めと水平度の調整を行う。
【0036】
続いて、1列目の右から2番目のれんがをモルタルを介して配置する。このとき、長辺パネル4の3つの長辺ブロック41の表面にれんがをしっかりと当接させるとともに、モルタルの厚みを調整して、このれんがの右上のコーナー部17の右側面をこの部位に位置する長辺ブロック41の右側面と一致させることで、れんがの長手方向の位置決めを行う。さらに、モルタル厚みを調整して長辺ブロックの上面42とれんがの上面とを一致させることで、れんがの高さ方向の位置決めと水平度の調整を行う。1列目の右から3番目以降のれんがも同様に施工する。
【0037】
次に2列目の右端のれんがは、コーナー部のれんがと短辺パネル5の短辺ブロック51を基準に、モルタルの厚みで高さ方向の位置決めを行い、また、短辺側側面の垂直度を確保する。2列目の右から2番目のれんがは、2段目1列目のれんがと2段目2列目の右側のれんがを基準として高さと水平度を合わせながら施工する。2列目の右から3番目以降のれんがも同様に施工を行う。なお、パネルを使用しない2つの側面側では水糸を使用して上面の水平面を確保することでより寸法精度を確保することができる。
【0038】
ここで、長辺パネル4及び短辺パネル5は架台6に対して着脱可能に設けられているため、れんが積体の施工が完了後は、これらのパネルを取り外して別の架台に取り付けることができ、れんが積体を養生しながら直ぐに次の別のれんが積作業に取り掛かることができる。
【0039】
以上の第二の実施例により、10個のれんが積体1を製造した際の作業は、2名で60分を要した。一方、従来の定盤と水糸を使用して製造した場合には2名で120分を要した。
【0040】
以上説明したように、各パネルに設けられた位置決めブロックにれんがを当接し、しかも位置決めブロックの側面とれんがの側面、あるいは位置決めブロックの上面とれんがの上面とをモルタル厚みを調整しながら一致させてれんがを1個ずつ施工して行く簡単な作業で、高い寸法精度でれんが積体を製造することができる。
【0041】
なお、以上の実施例では、位置決めブロックにれんがを当接し、しかも位置決めブロックの側面とれんがの側面、あるいは位置決めブロックの上面とれんがの上面とを一致させることで、れんがの位置決めを行うようにしたが、これ以外に、例えば位置決めブロックの表面に基準線を設け、この基準線とれんがの側面又は上面とを一致させることで、れんがの位置決めを行うこともできる。この場合も「位置決めブロックにれんがを当接しながら当該れんがを位置決めして施工する」ということになる。
【0042】
また、以上の実施例では位置決めブロックの形状を直方体状としたが、これには限定されない。例えば、底面ブロックは、底パネルの表面に対して水平な表面を有する直方体以外の形状とすることができ、長辺ブロックは、底パネルに対して、水平な上面と垂直な表面、又は水平な上面と垂直な表面と垂直な側面を有する直方体以外の形状とすることができ、短辺ブロックは、底パネルに対して、水平な上面と垂直な表面、又は水平な上面と垂直な表面と垂直な側面を有する直方体以外の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 れんが積体
11 れんが
12 溝
13 貫通孔
14 モルタル
15 凸ダボ
16 凹ダボ
17 コーナー部
18 下端部
19 れんが積体の1列目
20 れんが積体の2列目
2 れんが積補助具
3 底パネル
31 底面ブロック
32 底面ブロックの表面
33 底面ブロックの側面
34 底面ブロックどうしの長辺側の隙間
35 底面ブロックどうしの短辺側の隙間
36 溝用突起
4 長辺パネル
41 長辺ブロック
42 長辺ブロックの上面
43 長辺ブロックの表面
44 長辺ブロックの側面
45 溝用長辺ブロック
5 短辺パネル
51 短辺ブロック
52 長い短辺ブロック
53 短い短辺ブロック
54 長い短辺ブロックの上面
6 架台
61 上板
62 脚
63 長辺側基板
64 短辺側基板
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9