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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】防振ブッシュ
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/393 20060101AFI20221026BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20221026BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
F16F1/393
F16F1/38 G
F16F1/387 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019066173
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165478
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】堀 啓介
(72)【発明者】
【氏名】塚原 直也
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-100861(JP,A)
【文献】特開2018-071664(JP,A)
【文献】特開2012-211604(JP,A)
【文献】特開2002-323080(JP,A)
【文献】実開平06-076730(JP,U)
【文献】特開2014-092218(JP,A)
【文献】特開2012-072794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/393
F16F 1/38
F16F 1/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体によって径方向に連結された防振ブッシュであって、
前記インナ軸部材の軸方向の中間部分には球面状の外周面を備える膨出部が設けられて、該膨出部と前記アウタ筒部材の間が前記本体ゴム弾性体によって連結されており、
該インナ軸部材の外周には中間部材が配されて、該中間部材には球殻状の本体部が設けられていると共に、該本体部の軸方向の中間部分には曲率半径が大きくされたストレート状部が設けられて、該本体部が該膨出部の外周に離れて配されており、
該本体部の軸方向の長さ寸法が該膨出部の軸方向の長さ寸法よりも小さくされて、該本体部の軸方向両端部と該膨出部との間の該本体ゴム弾性体が薄肉の狭窄部とされている防振ブッシュ。
【請求項2】
前記本体ゴム弾性体の前記狭窄部の厚さ寸法が、前記中間部材の前記ストレート状部と前記インナ軸部材の前記膨出部との間の該本体ゴム弾性体の厚さ寸法よりも小さくされている請求項1に記載の防振ブッシュ。
【請求項3】
前記中間部材が径方向に対向する一対の分割体で構成されており、
各該分割体には前記本体部から軸方向外方へ突出する突出部が周方向の2箇所に設けられて、少なくとも該突出部の基端部において各該分割体の該突出部間の幅寸法が前記インナ軸部材の幅寸法よりも小さくされている請求項1又は2に記載の防振ブッシュ。
【請求項4】
前記アウタ筒部材には、前記中間部材の前記本体部に向かって内周側に縮径する絞り状部が、該本体部よりも軸方向の外方に設けられている請求項1~3の何れか一項に記載の防振ブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサスペンションブッシュなどに適用される防振ブッシュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車においてサスペンションアームの車両ボデーへの取付部分に用いられるサスペンションブッシュなどの防振ブッシュが知られている。防振ブッシュは、インナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体によって径方向に連結された構造を有している。
【0003】
ところで、防振ブッシュは、軸直角方向において硬いばね特性が要求される場合がある。このような要求を満たすために、例えば特開2014-092218号公報(特許文献1)や特開2018-071664号公報(特許文献2)のように、インナ軸部材とアウタ筒部材の径方向間に中間部材が設けられた構造も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-092218号公報
【文献】特開2018-071664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1に開示された構造では、こじり方向の入力に対して本体ゴム弾性体の耐久性を十分に確保できない場合があった。即ち、特許文献1の構造では、インナ軸部材と中間部材の両方が軸方向に直線的に延びる断面形状を有していることから、こじり方向の入力に対して、インナ軸部材と中間部材の間で本体ゴム弾性体が局所的に圧縮され易くなっており、本体ゴム弾性体の耐久性において未だ改善の余地があった。
【0006】
なお、特許文献1では、中間部材に切損部を設けて、中間部材の軸方向の長さ寸法を部分的に短くすることで、内筒が外筒に対してこじり方向に変位する際に、本体ゴム弾性体の圧縮変形量が低減されている。しかし、切損部によって中間部材の軸方向の長さ寸法を小さくすると、中間部材による軸直角方向での静ばね定数を大きくする効果が低減されて、軸直角方向での硬いばね特性を維持し難い。
【0007】
また、特許文献2では、軸部材の軸方向中央に径方向の外側へ突出する球状の凸部が設けられていると共に、中間筒が凸部の外周面に対応して湾曲する形状とされている。これによれば、こじり方向の入力に対して、軸部材と中間筒の間でゴム弾性体が圧縮され難く、こじり方向の柔らかいばね特性や耐久性の向上が図られる。
【0008】
しかしながら、特許文献2の構造では、こじり方向のばね特性だけでなく、軸直角方向のばね特性も柔らかくなってしまう。即ち、特許文献2の防振ブッシュに軸直角方向の荷重が入力されると、軸部材の凸部と中間筒の間のゴム弾性体が、湾曲面とされた凸部の外周面と中間筒の内周面とに沿って、軸方向の外側へ逃げ易くなる。その結果、ゴム弾性体において圧縮ばね成分による硬いばね特性が発揮され難くなって、軸直角方向のばね特性が柔らかくなり易く、要求されるばね特性を得難い場合もあった。
【0009】
本発明の解決課題は、軸直角方向の硬いばね特性と、こじり方向の柔らかいばね特性とを、両立して得ることができる、新規な構造の防振ブッシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0011】
第一の態様は、インナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体によって径方向に連結された防振ブッシュであって、前記インナ軸部材の軸方向の中間部分には球面状の外周面を備える膨出部が設けられて、該膨出部と前記アウタ筒部材の間が前記本体ゴム弾性体によって連結されており、該インナ軸部材の外周には中間部材が配されて、該中間部材には球殻状の本体部が設けられていると共に、該本体部の軸方向の中間部分には曲率半径が大きくされたストレート状部が設けられて、該本体部が該膨出部の外周に離れて配されており、該本体部の軸方向の長さ寸法が該膨出部の軸方向の長さ寸法よりも小さくされて、該本体部の軸方向両端部と該膨出部との間の該本体ゴム弾性体が薄肉の狭窄部とされているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた防振ブッシュによれば、インナ軸部材とアウタ筒部材の間に中間部材が設けられていることにより、軸直角方向のばね定数を大きく設定することができる。それ故、軸直角方向で硬いばね特性が要求される場合に、要求特性を容易に満たすことができる。しかも、球殻状とされた中間部材の本体部が、軸方向の中間部分にストレート状部を備えている。これにより、インナ軸部材とアウタ筒部材の間に軸直角方向の荷重が入力される際に、本体ゴム弾性体がストレート状部において効率的に圧縮されて、圧縮ばね成分による硬いばね特性を効率的に得ることができる。
【0013】
中間部材は、球殻状の本体部が、インナ軸部材に設けられた膨出部の外周に離れて配されている。それ故、こじり方向の入力によって、インナ軸部材がアウタ筒部材及び中間部材に対して相対変位する際に、インナ軸部材の膨出部と中間部材の本体部との間で本体ゴム弾性体の局所的な圧縮が生じ難い。その結果、本体ゴム弾性体の圧縮ばねによる硬いばね特性の発現が抑えられて、こじり方向での低ばね化が図られる。
【0014】
本体部の軸方向の長さ寸法は、膨出部の軸方向の長さ寸法よりも小さくされており、本体部の軸方向の両端部分が、軸方向外側に向けて膨出部に接近している。そして、本体部の軸方向の両端部と膨出部との間に設けられた本体ゴム弾性体が、薄肉の狭窄部とされている。これにより、本体部のストレート状部と膨出部の間に位置する本体ゴム弾性体が、軸直角方向で圧縮される際に、歪の大きい狭窄部によって軸方向外側へ膨出する変形を制限されて、軸方向外側へ逃げ難い。その結果、軸直角方向の荷重入力に対して、圧縮ばね成分がより支配的となって、軸直角方向で硬いばね特性を得ることができる。
【0015】
第二の態様は、第一の態様に記載された防振ブッシュにおいて、前記本体ゴム弾性体の前記狭窄部の厚さ寸法が、前記中間部材の前記ストレート状部と前記インナ軸部材の前記膨出部との間の該本体ゴム弾性体の厚さ寸法よりも小さくされているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた防振ブッシュによれば、軸直角方向の荷重入力に対して、狭窄部の歪が、中間部材のストレート状部とインナ軸部材の膨出部との間で圧縮される本体ゴム弾性体の歪よりも大きくなる。これにより、ストレート状部と膨出部との間で圧縮される本体ゴム弾性体は、狭窄部において軸方向外側への変形が拘束されて、軸直角方向のばね特性をより硬く設定し易くなる。
【0017】
また、本体ゴム弾性体においてストレート状部と膨出部の間に位置する部分が、狭窄部よりも厚肉とされていることによって、こじり方向の入力に対するばね特性がより柔らかくされる。
【0018】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された防振ブッシュにおいて、前記中間部材が径方向に対向する一対の分割体で構成されており、各該分割体には前記本体部から軸方向外方へ突出する突出部が周方向の2箇所に設けられて、少なくとも該突出部の基端部において各該分割体の該突出部間の幅寸法が前記インナ軸部材の幅寸法よりも小さくされているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた防振ブッシュによれば、少なくとも突出部の基端部において、突出部とインナ軸部材が軸直角方向で重なり合う位置に配される。それ故、軸直角方向の荷重入力時に突出部とインナ軸部材の間でも本体ゴム弾性体が圧縮されて、軸直角方向でより硬いばね特性を実現することができる。
【0020】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された防振ブッシュにおいて、前記アウタ筒部材には、前記中間部材の前記本体部に向かって内周側に縮径する絞り状部が、該本体部よりも軸方向の外方に設けられているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされた防振ブッシュによれば、中間部材の本体部よりも軸方向外方においてアウタ筒部材に絞り状部が設けられていることにより、こじり方向でより柔らかいばね特性が実現され易くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、防振ブッシュにおいて、軸直角方向の硬いばね特性と、こじり方向の柔らかいばね特性とを、両立して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一の実施形態としてのサスペンションブッシュを示す右側面図であって、図2の右側面に相当する図
図2図1のII-II断面図
図3図2のIII-III断面図
図4図2のIV-IV断面図
図5図1に示すサスペンションブッシュを構成する分割体の平面図
図6図5に示す分割体の右側面図
図7図6のVII-VII断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1~4には、本発明に従う構造とされた防振ブッシュの第一の実施形態として、自動車用のサスペンションブッシュ10が示されている。サスペンションブッシュ10は、図2に示すように、インナ軸部材12とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって径方向に連結された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは図1中の上下方向を言う。
【0026】
インナ軸部材12は、金属や硬質の合成樹脂で形成された高剛性の部材とされている。インナ軸部材12は、厚肉小径の略円筒形状を有している。インナ軸部材12は、軸方向の中間部分に膨出部18を備えている。膨出部18は、径方向で外周へ向けて突出して設けられており、外周面が球面状の凸形湾曲面とされている。本実施形態の膨出部18は、インナ軸部材12の軸方向の中央に設けられているが、膨出部18は、インナ軸部材12の軸方向の中央を外れた中間部分に設けられていても良い。
【0027】
アウタ筒部材14は、インナ軸部材12と同様に、金属や硬質の合成樹脂などで形成された高剛性の部材とされている。アウタ筒部材14は、薄肉大径の略円筒形状を有している。アウタ筒部材14の軸方向一方の端部には、外周へ向けて広がるフランジ状部20が設けられている。アウタ筒部材14の軸方向他方の端部は、テーパ形状の絞り状部22によって縮径されている。
【0028】
インナ軸部材12がアウタ筒部材14に対して挿通されて、それらインナ軸部材12とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって径方向で連結されている。本体ゴム弾性体16は略円筒形状とされており、本体ゴム弾性体16の内周面がインナ軸部材12の外周面に固着されていると共に、本体ゴム弾性体16の外周面がアウタ筒部材14の内周面に固着されている。インナ軸部材12の膨出部18は、全体がアウタ筒部材14の内周に差し入れられた状態で配置されており、膨出部18とアウタ筒部材14の径方向間に本体ゴム弾性体16が設けられている。本体ゴム弾性体16は、膨出部18の表面の全体に固着されている。本体ゴム弾性体16は、アウタ筒部材14の絞り状部22の内周面に固着されている。
【0029】
アウタ筒部材14のフランジ状部20には、ストッパゴム24が固着されている。ストッパゴム24は、本体ゴム弾性体16と一体形成されて、フランジ状部20の軸方向外面に固着されている。
【0030】
本体ゴム弾性体16には、中間部材26が固着されている。中間部材26の軸方向の中央部分は、全体として外周へ向けて凸となる球殻状の本体部28とされている。本体部28は、軸方向の中央部分が軸方向に直線的に延びるストレート状部30とされていると共に、ストレート状部30の軸方向両側が、軸方向外方に向けて小径となるテーパ状部32,32とされている。ストレート状部30は、大きな曲率半径で軸方向に延びる直線的な断面形状を有している。テーパ状部32は、ストレート状部30に対して傾斜して延びる直線的な断面形状を有しており、湾曲断面を有する繋ぎ部分によってストレート状部30と滑らかに連続している。
【0031】
本実施形態の中間部材26は、一対の分割体34,34によって構成されている。各分割体34は、図5~7に示すように、本体部28を構成する半球殻形状を有している。また、各分割体34には、4つの突出部36,36,36,36が設けられている。突出部36は、板状とされており、分割体34の周方向の両端部分において軸方向両側へ向けて突出している。各突出部36は、周方向において分割体34の1/4に満たない幅寸法を有している。各突出部36は、互いに対称形状とされているが、互いに非対称となる異なる形状であっても良い。
【0032】
一対の分割体34,34は、図2~4に示すように、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の径方向間において、同一周上に配置されると共に、径方向で互いに向かい合わせに配置されており、本体ゴム弾性体16に固着されている。これにより、全体として球殻状とされた本体部28を有する中間部材26が、それら一対の分割体34,34によって構成されている。中間部材26は、インナ軸部材12の外周に配されており、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の径方向間に配置されている。中間部材26の本体部28は、インナ軸部材12の膨出部18の外周に離れて配置されている。一対の分割体34,34は、図3,4に示すように、周方向の端部が相互に離れている。中間部材26は、本体部28及び各突出部36の基端部分が、本体ゴム弾性体16に埋設状態で固着されていると共に、各突出部36の先端部分が、本体ゴム弾性体16から軸方向外方へ突出して外部に露出している。
【0033】
図2に示すように、中間部材26の本体部28は、軸方向の長さ寸法L1が、インナ軸部材12の膨出部18の軸方向の長さ寸法L2よりも小さくされている。本体部28の軸方向中央は、膨出部18の軸方向中央と略一致している。これらによって、本体部28の全体が膨出部18の外周に離れて位置している。
【0034】
中間部材26の本体部28は、ストレート状部30がインナ軸部材12の膨出部18とアウタ筒部材14の径方向間の略中央に位置している。そして、ストレート状部30から軸方向両側へ延び出すテーパ状部32,32は、軸方向外方に向けてインナ軸部材12の膨出部18に接近しており、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の径方向間の中央よりも内周側に位置している。これにより、膨出部18からテーパ状部32の軸方向両端部までの距離t1が、膨出部18からストレート状部30までの距離t2,t3よりも小さくされている。これにより、本体ゴム弾性体16は、膨出部18とテーパ状部32,32の軸方向外側の端部との間に設けられた部分が、それぞれ薄肉の狭窄部38とされている。更に、本体ゴム弾性体16において、狭窄部38,38よりも軸方向内側で中間部材26の本体部28とインナ軸部材12の膨出部18との間に位置する部分は、厚肉の中央厚肉部40とされている。狭窄部38の厚さ寸法t1は、中央厚肉部40の軸方向中央部分の厚さ寸法t2よりも小さくされている。なお、膨出部18からストレート状部30の軸方向中央までの距離t2は、膨出部18からストレート状部30の軸方向両端までの距離t3よりも小さくされている。
【0035】
図4に示す突出部36の基端部分の横断面において、各分割体34における周方向両端部の突出部36,36間の距離Dは、インナ軸部材12の幅寸法Wよりも小さくされている。これにより、少なくとも突出部36の基端部分は、インナ軸部材12に対して、軸直角方向(図4中の上下方向)の投影において重なり合っている。
【0036】
アウタ筒部材14の絞り状部22は、中間部材26の本体部28よりも軸方向の外方に配置されている。好適には、絞り状部22の内周面が、インナ軸部材12の膨出部18の外周面と対向して配される。
【0037】
このような構造とされたサスペンションブッシュ10は、例えば、インナ軸部材12が図示しない車両ボデーに取り付けられると共に、アウタ筒部材14が図示しないサスペンションアームのアームアイに圧入固定されて、車両に取り付けられる。車両装着状態において、サスペンションブッシュ10には、上下方向の荷重と、こじり方向の荷重とが、主として入力される。
【0038】
上下方向の荷重が入力されると、インナ軸部材12とアウタ筒部材14が上下方向で相対的に変位して、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の間の本体ゴム弾性体16が、上下方向の一方側で圧縮変形する。これにより、圧縮ばね成分による硬いばね特性が発現されて、優れた走行性能や耐荷重性能の実現が可能となる。
【0039】
特に、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の上下方向間に中間部材26が配設されており、インナ軸部材12と中間部材26の間及び中間部材26とアウタ筒部材14の間において、それぞれ本体ゴム弾性体16の実質的な自由長が小さくなる。これにより、入力に対する本体ゴム弾性体16の圧縮率が大きくなって、上下方向の入力に対して硬いばね特性が発揮され易くなる。
【0040】
また、中間部材26の本体部28に設けられたストレート状部30が、アウタ筒部材14の内周面に対して略平行に広がっている。これにより、ストレート状部30とアウタ筒部材14の間において本体ゴム弾性体16が効率的に圧縮されて、圧縮ばね成分による硬いばね特性がより効果的に発揮される。
【0041】
さらに、中間部材26のストレート状部30が、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の径方向間の略中央に位置している。これにより、上下方向の入力に対して、本体ゴム弾性体16において、ストレート状部30の内周側に位置する部分と外周側に位置する部分とが、上下方向に直列配置された状態で略同じ圧縮率で圧縮される。その結果、中間部材26の内周側と外周側の何れか一方において本体ゴム弾性体16が他方よりも大幅に厚肉とされる場合に比して、上下方向のばね定数を大きく設定し易くなる。
【0042】
本体ゴム弾性体16においてテーパ状部32,32と膨出部18の間に位置する部分が、それぞれ薄肉の狭窄部38とされている。これにより、上下方向の入力に対して、狭窄部38がより大きな圧縮率で圧縮されて、硬いばね特性を実現することができる。
【0043】
本体ゴム弾性体16の中央厚肉部40は、上下方向の圧縮時に、ポアソン比に応じて軸方向外方への膨出変形を生じようとするが、中央厚肉部40の軸方向両側に狭窄部38,38が設けられていることで、軸方向外方への膨出(逃げ)が防止されている。即ち、本体ゴム弾性体16が上下方向で圧縮される際に、狭窄部38,38の歪が中央厚肉部40の歪よりも大きくなる。このように、中央厚肉部40の軸方向両外側において、狭窄部38,38が締め込まれることにより、中央厚肉部40の軸方向外側への逃げが狭窄部38,38によって制限される。これにより、中央厚肉部40の上下方向のばね定数が大きくなって、上下方向でより硬いばね特性を実現することができる。
【0044】
中間部材26には、複数の突出部36が設けられており、それら突出部36が膨出部18よりも軸方向外側でインナ軸部材12と対向している。これにより、上下方向においてより硬いばね特性を実現することができる。本実施形態では、各分割体34において周方向に離れて設けられた2つの突出部36,36の基端部分間の距離Dが、インナ軸部材12の幅寸法Wよりも狭くされている。これにより、上下方向の投影において突出部36がインナ軸部材12に少なくとも一部で重なり合っており、上下方向の入力時に、インナ軸部材12と突出部36の間で本体ゴム弾性体16が圧縮されて、より硬いばね特性が発現される。
【0045】
中間部材26に設けられた球殻状の本体部28がインナ軸部材12の膨出部18の外周に離れて配置されていることにより、こじり方向の荷重の入力時には、インナ軸部材12と本体部28の間で本体ゴム弾性体16が圧縮され難い。それ故、こじり方向の入力に対して、圧縮ばねによる高ばね化が抑えられて、より柔らかいばね特性を得ることができる。
【0046】
また、こじり方向の入力によってインナ軸部材12と中間部材26の相対的な変位量が大きくなると、本体ゴム弾性体16の狭窄部38が圧縮されて、ばね定数が非線形的に大きくなる。これにより、こじり方向の入力に対して、初期の低ばね特性を実現しながら、入力が大きい場合には、非線形で硬くなるばね特性によって本体ゴム弾性体16の変形量が制限されて、本体ゴム弾性体16の耐久性の向上が図られる。
【0047】
周方向で隣り合う突出部36,36の基端部間の距離Dが、インナ軸部材12の幅寸法Wよりも小さいことにより、こじり入力に対して、突出部36とインナ軸部材12の間で本体ゴム弾性体16が圧縮される。これにより、こじり方向の入力時にも、ある程度の圧縮ばね成分によって静ばね特性が柔らかくなり過ぎないように調節されている。なお、突出部36,36の基端部間の距離Dとインナ軸部材12の幅寸法Wの差を適宜に調節することによって、こじり方向のばね特性を簡単に調節することができる。
【0048】
アウタ筒部材14に絞り状部22が設けられており、絞り状部22が中間部材26の本体部28よりも軸方向の外方に配置されている。これにより、上下方向の入力に対して、本体ゴム弾性体16の軸方向外方への逃げが、絞り状部22によっても低減されて、上下方向の硬いばね特性を更に得易くなる。こじり方向の入力に対しては、インナ軸部材12の膨出部18とアウタ筒部材14の絞り状部22との間で本体ゴム弾性体16の圧縮ばねが低減されて、こじり方向で柔らかいばね特性を得ることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、中間部材は、必ずしも一対の分割体34,34によって構成されていなくて良く、例えば、全周に連続する球殻状とされ得る。
【0050】
中間部材26における本体部28のテーパ状部32は、前記実施形態では曲率の変化がほとんどない略平坦な断面形状とされているが、例えば、曲率の変化が大きい湾曲した断面形状であっても良い。また、本体部28のストレート状部30は、球殻状とされた本体部28全体の断面の曲率に比して曲率が小さくされていれば、厳密に直線的な断面形状である必要はなく、断面形状の湾曲は許容される。
【0051】
前記実施形態の中間部材26に設けられた突出部36は、必須ではなく、例えば、中間部材は、本体部28だけによって構成されていても良い。また、突出部36を設ける場合に、突出部36の数は限定されない。
【0052】
突出部36の配置は、分割体34の周方向端部に限定されるものではなく、例えば、分割体34の周方向で端部よりも内側にも配置され得る。この場合には、突出部36とインナ軸部材12の軸直角方向で重なり合う面積が大きくなって、軸直角方向及びこじり方向のばねが硬くなることから、突出部36の位置を周方向で適宜に調節することでばね特性のチューニングをすることが可能とされている。
【0053】
前記実施形態では、アウタ筒部材14の軸方向で片側の端部だけに絞り状部22が設けられていたが、絞り状部22は、アウタ筒部材14の軸方向の両側に設けることもできる。
【符号の説明】
【0054】
10 サスペンションブッシュ(防振ブッシュ)
12 インナ軸部材
14 アウタ筒部材
16 本体ゴム弾性体
18 膨出部
20 フランジ状部
22 絞り状部
24 ストッパゴム
26 中間部材
28 本体部
30 ストレート状部
32 テーパ状部
34 分割体
36 突出部
38 狭窄部
40 中央厚肉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7