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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】反射鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
G02B5/08 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019066178
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020166106
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 徹彌
(72)【発明者】
【氏名】吉田 政生
(72)【発明者】
【氏名】飯田 直人
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-138339(JP,A)
【文献】特開2003-185811(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0052468(US,A1)
【文献】特開2002-182018(JP,A)
【文献】特開2010-243683(JP,A)
【文献】特開2001-350103(JP,A)
【文献】特開2012-230149(JP,A)
【文献】米国特許第05076700(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08、7/182
B64G 1/66
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と裏面とを有する基体と、前記表面に配置された反射体とを備え、前記裏面に複数の凹部と、前記凹部を画定する複数のリブ部とを備え、前記表面または前記裏面の外周付近に配置された、複数の凸状の支持部を備える反射鏡であって、
前記表面および前記裏面の外形状と前記支持部と前記リブ部の配置は、3回対称であり、前記リブ部は、前記外周沿いを1周する、第1リブ部と、前記裏面から透視して、前記支持部同士を接続する、略正三角形状の第2リブ部と、前記裏面から透視して、前記第1リブ部の前記支持部同士の中間点である第1中間点と前記支持部とを接続する、略正六角形状の第3リブ部と、前記第1中間点と前記第2リブ部の各辺の中間点である第2中間点とを接続する第4リブ部とを有し、前記裏面の中心と前記第2中間点を接続する第5リブ部、前記裏面から透視して、前記中心と前記支持部を接続する第6リブ部、前記第2中間点同士を接続する第7リブ部、のうち、少なくともいずれかを有し、
前記リブ部の、複数の前記リブ部が集合する箇所にも前記凹部を有する反射鏡。
【請求項2】
前記第5リブ部または前記第6リブ部のうち、少なくともいずれかを有する、請求項1に記載の反射鏡。
【請求項3】
前記凹部の深さと前記リブ部の高さが、前記裏面の全体で一定である、請求項2に記載の反射鏡。
【請求項4】
前記表面が水平方向に、前記支持部が鉛直方向下方に配置される、請求項1から3のいずれかに記載の反射鏡。
【請求項5】
外形状が円形である、請求項1から4のいずれかに記載の反射鏡。
【請求項6】
前記裏面に対する前記リブ部の面積比率が、31%以下である、請求項1からのいずれかに記載の反射鏡。
【請求項7】
前記基体の前記凹部を含むかさ体積に対する基体の体積比率が、43%以下である、請求項1からのいずれかに記載の反射鏡。
【請求項8】
前記基体が低熱膨張セラミック材料からなる、請求項1からのいずれかに記載の反射鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高精度な光学機器に使用される反射鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
天体望遠鏡、露光装置、3次元形状測定機などの高い精度が要求される光学機器に使用される反射鏡には、軽量、高剛性、高精度などの特性が求められる。特に、反射鏡が大型(例えば直径300mm以上)になり重量が大きくなると、自重によるたわみや関連部位の変形による精度の悪化、取付作業性の悪化が問題になる。反射鏡の軽量化と高剛性を両立させるため、裏面に凹部とリブ部を有する反射鏡が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、反射鏡が、製造時と異なる温度環境や、温度変化のある環境で使用される場合、反射鏡の基体は、熱膨張係数の小さい、低熱膨張材料で作製することが好ましい。低熱膨張材料の一例として、コージェライトセラミックスがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-49257号公報
【文献】特開平11-194206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、軽量で、自重によるたわみが小さい、高精度な反射鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の反射鏡は、表面と裏面とを有する基体と、前記表面に配置された反射体とを備え、前記裏面に複数の凹部と、前記凹部を画定する複数のリブ部とを備え、前記表面または前記裏面の外周付近に配置された、複数の凸状の支持部を備えた反射鏡であって、前記表面および前記裏面の外形状と前記支持部と前記リブ部の配置は、3回対称であり、前記リブ部は、前記外周沿いを1周する、第1リブ部と、前記裏面から透視して、前記支持部同士を接続する、略正三角形状の第2リブ部と、前記裏面から透視して、前記第1リブ部の前記支持部同士の中間点である第1中間点と前記支持部とを接続する、略正六角形状の第3リブ部と、前記第1中間点と前記第2リブ部の各辺の中間点である第2中間点とを接続する第4リブ部とを有し、前記裏面の中心と前記第2中間点を接続する第5リブ部、前記裏面から透視して、前記中心と前記支持部を接続する第6リブ部のうち、前記第2中間点同士を接続する第7リブ部、少なくともいずれかを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、自重によるたわみが小さい、高精度な反射鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の比較例の反射鏡の概略図である。
図2】本開示の比較例の反射鏡の概略図である。
図3】本開示の比較例の反射鏡の概略図である。
図4】本開示の比較例の反射鏡の概略図である。
図5】本開示の一実施形態の反射鏡の概略図である。
図6】本開示の他の実施形態の反射鏡の概略図である。
図7】本開示の他の実施形態の反射鏡の概略図である。
図8】本開示の他の実施形態の反射鏡の概略図である。
図9】本開示の他の実施形態の反射鏡の概略図である。
図10】本開示の他の実施形態の反射鏡の概略図である。
図11】本開示の反射鏡の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の反射鏡について、反射鏡が平面鏡である場合を例として、図を参照しながら説明する。図5~11は、本実施形態の反射鏡を示す概略図、図1~4は、比較例の反射鏡を示す概略図である。
【0010】
反射鏡1は、表面2aと裏面2bとを有する基体2と、表面2aに配置された反射体3と、表面2aまたは裏面2bの外周付近に配置された、少なくとも3つの凸状の支持部6を備える。反射鏡1は、球面鏡、放物面鏡などの曲面鏡であってもよい。
【0011】
基体2は、反射鏡1の形状を規定する、反射鏡1の主要な構成要素である。基体2は、裏面2bに複数の凹部4と、凹部4を画定する複数のリブ部5とを有する。基体2は、例えば直径300mm以上の円板状である。基体2は、低熱膨張材料からなる。本開示において、低熱膨張材料とは、熱膨張係数が、±1×10/K以下の材料をいう。低熱膨張材料の中でも、コージェライトセラミックは、比剛性が高く、基体2の材質として好適である。
【0012】
反射体3は、反射鏡1に入射した入射光を反射するための構成要素である。反射体3は、銀、アルミニウムなどの入射光を反射する材料からなり、入射光の波長、反射率などから適宜選択される。反射体3の厚みは、基体2の厚みに対して非常に小さく、例えば1/100以下である。
【0013】
支持部6は、表面2aまたは裏面2bの外周付近に配置される。なお、外周付近に配置されるとは、支持部6から外周までの距離が、反射鏡1の中心から外周までの距離(円形であれば半径、正多角形であれば中心から頂点までの距離)に対し、1/8以下であることをいう。
【0014】
反射鏡1が3つの支持部6を有していれば、反射鏡1を安定して支持できる。支持部6は、基体2と一体で形成されていてもよいし、基体2と別体で形成され、締結、接着などの方法で、基体2に固定されていてもよい。支持部6は、基体2と同じ材質であると特によい。
【0015】
反射鏡1の外形状、すなわち基体2を表面2aまたは裏面2bから見た時の外周の形状、および支持部6の配置は、3回対称を有する。反射鏡1の外形状は、例えば円形、正三角形、正六角形である。各辺が円弧などの曲線状の多角形や、各頂点が丸まっている角丸多角形であってもよい。
【0016】
リブ部5は、第1リブ部5aと第2リブ部5bと第3リブ部5cと第4リブ部5dとを含む。
【0017】
第1リブ部5aは、裏面2bを外周に沿って1周する。第2リブ部5bは、裏面2bから透視して、支持部6同士を接続する、略正三角形状である。第3リブ部5cは、裏面2bから透視して、第1リブ部5aの支持部6同士の中間点(隣接する二つの支持部6と等距離の点)である第1中間点と支持部6とを接続する、略正六角形状である。第4リブ部
5dは、前記第1中間点と第2リブ部5bの各辺の中間点である第2中間点とを接続する。
【0018】
第1リブ部5aと第2リブ部5bと第3リブ部5cと第4リブ部5dの高さは、全て同じであることが好ましい。第1リブ部5aの幅は一定であることが好ましい。同様に、第2リブ部5bの幅、第3リブ部5cの幅、第4リブ部5dの幅は、それぞれ一定であることが好ましい。第2リブ部5bと第3リブ部5cは、その機能を発揮できる範囲において湾曲していてもよい。例えば、正三角形または正六角形の各辺(頂点を結ぶ線分)の総距離のうち50%以上が第2リブ部5bまたは第3リブ部5cと重なっていればよい。
【0019】
リブ部5は、第5リブ部5eと第6リブ部5fと第7リブ部5gのうち、少なくともいずれかを含む。
【0020】
第5リブ部5eは、裏面2bの中心と前記第2中間点を接続する。第6リブ部5fは、前記第2中間点同士を接続する。第7リブ部5gは、裏面2bから透視して、裏面2bの中心と支持部6を接続する。
【0021】
反射鏡1は、表面2aが水平方向に配置される。本開示の反射鏡1は、上記構成を備えているので、軽量で、自重によるたわみが小さく、高精度な反射鏡1を提供することができる。
【0022】
リブ部5として、第1リブ部5a~第4リブ部5dに加え、第5リブ部5eと第6リブ部5fの少なくともいずれかを有していると、特にたわみ量が小さくなる。さらに凹部4の深さとリブ部5の高さが、裏面2bの全体で一定であると特によい。
【0023】
支持部6を裏面2bに配置すると、表面2aの反射可能な領域が大きくなる。一方、支持部6を表面2aに配置すると、凹部4とリブ部5の配置の障害とならない。支持部6を表面2aに配置する場合、表面2aの外周付近に配置すると、反射可能な領域を大きくできる。
【0024】
支持部6は鉛直方向上方または、下方に配置される。支持部6が上方に配置される場合は、支持部6を吊り下げる部材が必要である。支持部6を下方に配置すると、反射鏡1を、支持部6と当接する部分が同一平面状にある部材に載置すればよいので、上方に配置する場合と比べて構成がより簡略化できる。
【0025】
リブ部5の、複数のリブ部5が集合する箇所に、さらに凹部4を有していてもよい。これにより、軽量化が可能となる。
【0026】
裏面2bの面積に対する、リブ部5の総面積の比率(リブ部5の面積比率)が、31%以下であると、軽量化の観点から好適である。同様に、基体2の凹部4を含むかさ体積に対する、基体2の体積の比率(基体2の体積比率)が、43%以下であると、軽量化の観点から好適である。反射鏡1は、第1リブ部5aと第2リブ部5bと第3リブ部5cと第4リブ部5dとを備えているので、リブ部5の面積比率が31%以下、基体2の体積比率が43%以下であっても、高い剛性を有している。
【0027】
反射鏡1は、裏面2bに接合される、板状の裏カバーを備えていてもよい。これにより、さらに剛性が向上する。
【0028】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組合せ等が可
能である。
【実施例
【0029】
図1図10に示す裏面2bの形状モデル(それぞれ条件1~条件10とする)の基体2について、シーメンス社製の有限要素法を用いた応力解析ソフトであるNX(バージョン11.0.0.33)を用いて重力加速度を9810mm/sec^2とした際の自重によるたわみを解析した。基体2は直径340mm、厚み70mmのコージェライトセラミックとし、支持部6は表面2aのPCD305mm上、3点(図1~10における0時、4時、8時の方向)とした。解析に用いる物性値は、見かけ密度を2.5g/cm^3、ヤング率を140GPa、ポアソン比を0.31とした。また、リブ部5の高さ(凹部4の深さ)は、58mmとした。
【0030】
条件1~4は比較例、条件5~10は実施例である。条件1は、リブ部5の幅が4mmである。以下、特に記載がないリブ部5の幅は4mmである。条件2は、第2リブ部5bの幅が10mmである。条件3は、図3における塗りつぶし部分の幅が8mmである。条件4は、図4における塗りつぶし部分の幅が8mmである。条件5、7、8、9は、第1リブ部5aと第3リブ部5cの幅が6mm、第2リブ部5bの幅が10mmである。条件6は、条件5に対し、第2リブ部5bの幅が16mmである。条件10は、条件9に対し、中心から第5リブ部5eの長さまで(Φ130mm)の同心円内のリブ部5の厚みが38mmである(凹部4の底面の高さは同じで、リブ部5の高さが20mm低い)。複数のリブ部5が集合する箇所には、適宜凹部4を形成した。
【0031】
NXの設定は、メッシュタイプとして3D四面体を選択し、メッシュパラメータの要素サイズは4mmとした。また、フリーマップドメッシュの試行を選択した。多角形ジオメトリの高解像度化、接点の接続は、使わなかった。
【0032】
各条件おけるリブ部5の面積比率、基体2の体積比率、基体2の自重によるたわみ量を表1に示す。表1に示すように、本開示の実施例である条件5~10では、リブ部5の面積比率が、31%以下、基体2の体積比率が、43%以下という軽量化を実現しながら、全体のたわみ量が45nm以下、反射鏡1の中央領域である、中心から250mm以内の領域のたわみ量が30nm以下となった。特に、第1リブ部5a~第4リブ部5dを有し、第5リブ部5eと第6リブ部5fの少なくともいずれかを有する、条件5、6、7、9、10では、全体のたわみ量が40nm以下、中央領域のたわみ量が40nm以下、中央領域のたわみ量がx28μm以下となった。このうち、リブ部5の高さが、全て同じである条件5、6、7、9では、全体のたわみ量が39nm以下、中央領域のたわみ量が27μm以下となった。
【0033】
【表1】
【符号の説明】
【0034】
1 反射鏡
2 基体
2a 表面
2b 裏面
3 反射体
4 凹部
5 リブ部
6 支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11