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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】静電容量タッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20221026BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G06F3/041 490
G06F3/044 122
G06F3/044 128
G06F3/041 422
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019068108
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020166705
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(73)【特許権者】
【識別番号】000117940
【氏名又は名称】ノリタケ伊勢電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】中尾 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】那須 和也
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/021168(WO,A1)
【文献】特開2018-165962(JP,A)
【文献】特開2011-253263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0306459(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0212622(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ面を有するガラス基板と、ダイヤモンド形状のX軸格子をX軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたX軸センサー部と、前記X軸格子と同一形状のY軸格子を前記X軸方向と直交するY軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたY軸センサー部と、前記X軸センサー部と前記Y軸センサー部との間に設けた絶縁層とが積層された静電容量タッチパネルであって、
前記タッチ面から見た平面視において、前記X軸格子と前記Y軸格子とは重ならずマトリックス状に配置され、前記X軸格子の枠線と前記Y軸格子の枠線の間に隙間が形成されており、
前記X軸格子および前記Y軸格子はそれぞれ微細格子からなる金属薄膜で形成され、前記隙間に、前記X軸格子の枠線または前記Y軸格子の枠線から前記微細格子の格子辺と平行に延びた金属薄膜が設けられ
前記X軸センサー部において、X軸方向で隣接するX軸格子同士はX軸接続部によって接続され、前記Y軸センサー部において、Y軸方向で隣接するY軸格子同士はY軸接続部によって接続されており、
前記X軸接続部は、前記微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で形成され、前記Y軸接続部は、前記微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で形成され、
前記X軸格子は、前記Y軸接続部と積層方向で重なる箇所に、前記微細格子の格子辺の少なくとも一部が欠損した欠損部を有することを特徴とする静電容量タッチパネル。
【請求項2】
前記Y軸格子は、前記X軸接続部と積層方向で重なる箇所に、前記微細格子の格子辺の少なくとも一部が欠損した欠損部を有することを特徴とする請求項記載の静電容量タッチパネル。
【請求項3】
タッチ面を有するガラス基板と、ダイヤモンド形状のX軸格子をX軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたX軸センサー部と、前記X軸格子と同一形状のY軸格子を前記X軸方向と直交するY軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたY軸センサー部と、前記X軸センサー部と前記Y軸センサー部との間に設けた絶縁層とが積層された静電容量タッチパネルであって、
前記タッチ面から見た平面視において、前記X軸格子と前記Y軸格子とは重ならずマトリックス状に配置され、前記X軸格子の枠線と前記Y軸格子の枠線の間に隙間が形成されており、
前記X軸格子および前記Y軸格子はそれぞれ微細格子からなる金属薄膜で形成され、前記隙間に、前記X軸格子の枠線または前記Y軸格子の枠線から前記微細格子の格子辺と平行に延びた金属薄膜が設けられ、
前記X軸センサー部において、X軸方向で隣接するX軸格子同士はX軸接続部によって接続され、前記Y軸センサー部において、Y軸方向で隣接するY軸格子同士はY軸接続部によって接続されており、
前記X軸接続部は、前記微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で形成され、前記Y軸接続部は、前記微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で形成され、
前記Y軸格子は、前記X軸接続部と積層方向で重なる箇所に、前記微細格子の格子辺の少なくとも一部が欠損した欠損部を有することを特徴とする静電容量タッチパネル。
【請求項4】
前記隙間に設けられた金属薄膜は、前記微細格子を構成する金属薄膜と同一のピッチおよび同一の線幅で形成されることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項記載の静電容量タッチパネル。
【請求項5】
前記X軸格子または前記Y軸格子の微細格子に、格子辺のうち少なくとも1つの辺の一部が切り離された切り離し部が複数設けられており、隣り合う微細格子の内部空間が連通していることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項記載の静電容量タッチパネル。
【請求項6】
前記切り離し部は、X軸方向またはY軸方向の一方向に向かって、前記微細格子の内部空間の空気が流れ出るように形成されることを特徴とする請求項記載の静電容量タッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ面(XY平面)の任意の位置にユーザーの指などが接近したことを静電容量の変化により検出する静電容量タッチパネルに関し、特にガラス基板にセンサー電極を設けた静電容量タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、AV機器、PC/OA機器、産業機械、その他の電子デバイスにおいて、各機器への入力手段の1つとして投影型静電容量方式のタッチパネルが使用されている。投影型静電容量方式は、X軸方向とY軸方向にそれぞれ所定パターンで配列された複数のセンサー電極を有している。
【0003】
従来のタッチパネルの具体的な構造として、一方のガラス基板にX軸方向の検知用のセンサー電極が形成され、他方のガラス基板にY軸方向の検知用のセンサー電極が形成され、X軸のセンサー電極およびY軸のセンサー電極が、2つのガラス基板間において、対向して挟み込まれた構造が知られている。センサー電極のパターンとしては、ダイヤモンド形の格子を縦(Y)横(X)に並べた形状のパターン(以下、ダイヤモンドパターンとも言う。)が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
従来のダイヤモンドパターンのセンサー電極の構造について、図7および図8に基づいて説明する。図7には、タッチパネルをタッチ面から見た場合(平面視)のセンサー電極の拡大図を示す。図7に示すように、X軸方向に複数のX軸格子21が並べられており、Y軸方向に複数のY軸格子22が並べられている。各格子21、22はそれぞれ、より微細な格子で形成されている。微細格子は金属薄膜で形成されている。なお、図7では、説明の便宜上、Y軸格子22を斜線で示している。このタッチパネルにおいて、X軸格子21とY軸格子22は電気的に分離する必要があるため、ある程度離す必要がある。そのため、図7に示すように、X軸格子21およびY軸格子22は積層方向で重なっておらず、X軸格子21とY軸格子22の間に隙間23が設けられている。この隙間23には金属薄膜は設けられていないため、各格子21、22に比べて透過率が高くなっている。
【0005】
図7のD部拡大図を図8(a)に示し、図8(a)のうち、X軸センサー部を図8(b)に示し、Y軸センサー部を図8(c)に示す。図8(b)に示すように、X軸方向で隣接するX軸格子21A、21Bは、X軸方向と平行に延びた接続部24によって接続されている。また、図8(c)に示すように、Y軸方向で隣接するY軸格子22A、22Bは、Y軸方向と平行に延びた接続部25によって接続されている。接続部24と接続部25は、X軸格子およびY軸格子の格子辺の方向とは異なる方向で結線され、図8(a)に示すように、直交して交差している。図8(a)において、接続部が設けられる部分(β部)は、X軸格子21およびY軸格子22に比べて透過率が高く、かつ、隙間23のうちβ部以外の部分(α部)に比べて透過率が低くなっている。
【0006】
従来のダイヤモンドパターンのタッチパネルでは、上述のとおり、X軸格子21およびY軸格子22と、隙間23のα部と、隙間23のβ部との透過率がそれぞれ異なっている。そのため、接続部24、25などが目立ってしまい、センサー部の存在を感じてしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/137477号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、ダイヤモンドパターンで形成されたセンサー部を有するタッチパネルにおいて、センサー部が目立ちにくい構造の静電容量タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の静電容量タッチパネルは、タッチ面を有するガラス基板と、ダイヤモンド形状のX軸格子をX軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたX軸センサー部と、上記X軸格子と同一形状のY軸格子を上記X軸方向と直交するY軸方向に複数並べたパターンが、複数列、平行に設けられたY軸センサー部と、上記X軸センサー部と上記Y軸センサー部との間に設けた絶縁層とが積層された静電容量タッチパネルであって、上記タッチ面から見た平面視において、上記X軸格子と上記Y軸格子とは重ならずマトリックス状に配置され、上記X軸格子の枠線と上記Y軸格子の枠線の間に隙間が形成されており、上記X軸格子および上記Y軸格子はそれぞれ微細格子からなる金属薄膜で形成され、上記隙間に、上記X軸格子の枠線または上記Y軸格子の枠線から上記微細格子の格子辺と平行に延びた金属薄膜が設けられることを特徴とする。
【0010】
上記X軸センサー部において、X軸方向で隣接するX軸格子同士はX軸接続部によって接続され、上記Y軸センサー部において、Y軸方向で隣接するY軸格子同士はY軸接続部によって接続されており、上記X軸接続部は、上記微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で形成され、上記Y軸接続部は、上記微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で形成されることを特徴とする。
【0011】
上記X軸格子は、上記Y軸接続部と積層方向で重なる箇所に、上記微細格子の格子辺の少なくとも一部が欠損した欠損部を有することを特徴とする。
【0012】
上記Y軸格子は、上記X軸接続部と積層方向で重なる箇所に、上記微細格子の格子辺の少なくとも一部が欠損した欠損部を有することを特徴とする。
【0013】
上記隙間に設けられた金属薄膜は、上記微細格子を構成する金属薄膜と同一のピッチおよび同一の線幅で形成されることを特徴とする。
【0014】
上記X軸格子または上記Y軸格子の微細格子に、格子辺のうち少なくとも1つの辺の一部が切り離された切り離し部が複数設けられており、隣り合う微細格子の内部空間が連通していることを特徴とする。
【0015】
上記切り離し部は、X軸方向またはY軸方向の一方向に向かって、上記微細格子の内部空間の空気が流れ出るように形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の静電容量タッチパネルは、X軸方向に配列したダイヤモンド形状のX軸格子と、Y軸方向に配列したダイヤモンド形状のY軸格子とがマトリックス状に配列されたタッチパネルであり、X軸格子の枠線とY軸格子の枠線の間に形成される隙間に、X軸格子の枠線またはY軸格子の枠線から微細格子の格子辺と平行に延びた金属薄膜が設けられるので、格子間の隙間が金属薄膜で埋まり、隙間の部分と格子の部分との透過率が略同一となる。その結果、センサー部全体の透過率が略均一になるため、センサー部の存在が目立ちにくく、品位を向上させることができる。
【0017】
X軸接続部は、微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で形成され、Y軸接続部は、微細格子の格子辺と平行な金属薄膜で形成されるので、各接続部が格子辺の方向と異なる方向で結線される場合に比べて、接続部の存在を目立ちにくくできる。
【0018】
X軸格子またはY軸格子は、Y軸接続部またはX軸接続部と積層方向で重なる箇所に、微細格子の格子辺の少なくとも一部が欠損した欠損部を有するので、金属薄膜が積層方向で重なる部分が少なくなり、センサー部全体の透過率や反射率を均一にすることができる。
【0019】
隙間に設けられた金属薄膜は、微細格子を構成する金属薄膜と同一のピッチおよび同一の線幅で形成されるので、隙間の部分をより目立ちにくくできる。
【0020】
X軸格子またはY軸格子の微細格子に、格子辺のうち少なくとも1つの辺の一部が切り離された切り離し部が複数設けられており、隣り合う微細格子の内部空間が連通しているので、切り離し部が空気抜きの機能を果たし、センサー部やガラス基板の貼り合わせ時において微細格子内で気泡が発生することを抑制できる。その結果、気泡による動作不良などを回避できるとともに、センサー部全体を均一で高い透過率とすることができる。
【0021】
切り離し部は、X軸方向またはY軸方向の一方向に向かって、微細格子の内部空間の空気が流れ出るように形成されるので、貼り合わせ後のローラー処理によって、空気がスムーズに抜けることで、気泡の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の静電容量タッチパネルの一例を示す平面図および側面図である。
図2図1のタッチパネルの拡大断面を示す模式図である。
図3図1のX軸格子およびY軸格子の境界を示す拡大図などである。
図4図3のX軸格子を構成する微細格子の拡大図である。
図5】タッチパネルのX軸方向端部におけるX軸格子の拡大図である。
図6図5の部分拡大図である。
図7】従来のタッチパネルのX軸格子およびY軸格子の部分拡大図である。
図8図7のX軸格子およびY軸格子の境界を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の静電容量タッチパネルの一例を図1に基づいて説明する。図1(a)は静電容量タッチパネルを示す平面図であり、図1(b)はその側面図である。図1(b)に示すように、静電容量タッチパネル1は、X軸方向検知用のX軸センサー部3を有する透光性の第1のガラス基板2と、Y軸方向検知用のY軸センサー部5を有する透光性の第2のガラス基板4とを備えてなり、第1のガラス基板2および第2のガラス基板4とが貼り合わされた積層構造を有する。第1のガラス基板2の表面がタッチ面2aとなり、このタッチ面2aの反対面2bにX軸センサー部3が設けられている。また、第2のガラス基板4の片面にY軸センサー部5が設けられている。X軸センサー部3およびY軸センサー部5は、2つのガラス基板間において対向して挟み込まれている。2つのセンサー部間にガラス基板を介在させない構造であるため、介在させる場合と比較してセンサー部間のギャップが大幅に少ない。
【0024】
各センサー部のセンサー電極と配線7で接続された外部接続端子8にフレキシブルプリント配線板(FPC)9が接続されている。FPC9を介してタッチ検出を行なうコントロール部(図示省略)が接続される。また、耐環境特性を向上させるために、FPC9に替えて金属製のリードフレームを設けてもよい。本発明の静電容量タッチパネルは、センサー電極と指との間で静電結合が起きて電極の静電容量が変化することを利用するものであり、コントロール部における具体的な検出手順などは公知の手順を採用できる。
【0025】
図2にパネルの拡大断面の模式図を示す。図2に示すように、X軸センサー部3は、第1のガラス基板2のタッチ面2aの反対面に形成された中間層3bと、その上に形成された金属薄膜からなるセンサー電極3aとを有する。また、Y軸センサー部5は、第2のガラス基板4の片面(第1のガラス基板側)に形成された金属薄膜からなるセンサー電極5aと、その上に形成された中間層5bとを有する。タッチ面2aから見ると、いずれのセンサー部においても、中間層の下に金属薄膜が位置するように形成されている。これにより、可視光の反射率を低減させて視認性を確保している。
【0026】
センサー電極3a、5aを構成する金属薄膜は、アルミニウム(Al)、Al合金、ニオビウム、モリブデン、金、銀、銅などの材料を用いて、公知の薄膜成形方法により形成される。これらの中でも、耐環境特性に優れ、低コストであることから、Al薄膜を採用することが好ましい。
【0027】
中間層3b、5bは、(1)Cr、Mo、Wから選ばれる少なくとも1つの金属を含む薄膜である。また、中間層3b、5bは、可視光の干渉により入射光を吸収して黒色に見える層(黒色層)である。タッチ面2aからは、スイッチ部は黒色に見え、反射を抑制できる。中間層は、上述のAl薄膜などの形成と同様に、スパッタリングなどにより形成できる。また、中間層には、(2)Alの酸化物(Alなど)およびTiの酸化物(TiOなど)から選ばれる少なくとも1つの酸化物を所定量含むことが好ましい。これら酸化物を所定量含むことで、反射率の更なる低減が図れる。中間層として、より好ましくはMoとAlの混合層である。また、中間層の膜厚は、5nm~500nmが適当であり、より好ましくは20nm~200nmである。
【0028】
第1のガラス基板2および第2のガラス基板4は、透光性の絶縁基板であり、ソーダライムガラス、石英ガラス、硼珪酸ガラス、アルカリ成分を含まない無アルカリガラスなどを採用できる。高い透過率を有し、かつ、一般建材の窓ガラスに使用され非常に安価であることから、ソーダライムガラスを用いることが好ましい。 また、各ガラス基板の厚みは、それぞれ0.5~5mm程度、好ましくは0.5~3.0mm程度である。
【0029】
図2において、X軸センサー部3とY軸センサー部5との間、厳密にはX側のセンサー電極3aとY側の中間層5bとの間には、各センサー電極を絶縁するために絶縁層6が形成されている。絶縁層の厚みは、50μm~500μmが適当である。絶縁層の厚みが500μmをこえると、センサー電極間のギャップが大きくなり、X軸センサー部とY軸センサー部に感度差が生じる。
【0030】
また、図1および図2ではタッチ面側の第1のガラス基板にX軸センサー部を設けているが、第1のガラス基板にY軸センサー部を設け、第2のガラス基板にX軸センサー部を設ける形態としてもよい。
【0031】
ここで、図1(a)に示すように、タッチパネル1の各センサー部3、5は、ダイヤモンドパターンでパターニングされている。具体的には、X軸センサー部3は、ダイヤモンド形のX軸格子10をX軸方向に一直線上に複数並べたパターンが、複数列、平行に配列されて構成される。Y軸センサー部5は、X軸格子10と同一形状のY軸格子14をX軸方向と直交するY軸方向に一直線上に複数並べたパターンが、複数列、平行に配列されて構成される。X軸センサー部3とY軸センサー部5とは、XY平面で見ると(平面視で)重ならない位置に配置され、X軸格子10およびY軸格子14がマトリックス状に配列されている。X軸格子10およびY軸格子14の格子内は、より微細な格子状部分(微細格子)で形成されている。
【0032】
本発明のタッチパネルにおけるX軸格子とY軸格子の境界の拡大図を図3に示す。図3(a)は図1のA部拡大図であり、図3(b)はX軸センサー部のみを示す図であり、図3(c)はY軸センサー部のみを示す図である。図3(a)~(c)は、従来構成を示す図8(a)~(c)にそれぞれ対応している。
【0033】
図3(a)に示すように、X軸格子(10A)とY軸格子(14B)の格子間に隙間17が設けられている。隙間17の幅CL(X軸格子の枠線とY軸格子の枠線の距離)は、センサー部全体において一定となるように形成される。幅CLは例えば、10~600μmの範囲に設定される。従来構成では、隙間の部分とダイヤモンド格子の部分とで透過率に差が生じることで、接続部や隙間などが目立ちやすい構成となっていた(図8参照)。これに対して、本発明では、この隙間を埋めるために、ダイヤモンド格子の枠線から格子辺と平行に延びた金属薄膜を設けることで、隙間の部分とダイヤモンド格子の部分との透過率を略同一にしている。
【0034】
X軸格子について、図3(b)に基づいて説明する。X軸格子10AとX軸格子10Bは、それぞれ枠線10aで囲まれたダイヤモンド形状をしている。枠線10a内は微細格子で形成されており、該微細格子は、後述するように、所定のピッチ、所定の線幅の金属薄膜で形成される。X軸格子10AおよびX軸格子10Bには、枠線10aから外側に突き出した突起部12が設けられている。突起部12は、微細格子の格子辺の延長線として設けられており、微細格子の格子辺と平行に形成される。図3(b)において、突起部12は、後述の欠損部を除いて、微細格子と同一のピッチおよび同一の線幅で形成されている。突起部12の突起長さHは、特に限定されないが、隙間の幅CLの60~95%の長さであることが好ましく、70~90%の長さであることがより好ましい。
【0035】
図3(b)において、X軸方向で隣接するX軸格子10AおよびX軸格子10Bは、接続部11を介して接続されている。接続部11は、微細格子の格子辺と平行な辺で形成されており、突起部12の一部を用いている。接続部11および突起部12は、微細格子の構成と同様に、金属薄膜で構成される。具体的には、上述のセンサー電極と中間層で構成される。接続部11は、X軸格子のX軸方向における中央線に対して非対称に設けられる。また、X軸格子10Aは、接続部15(図3(c)参照)と積層方向で重なる箇所に、微細格子の格子辺の一部が欠損した欠損部13を有する。
【0036】
Y軸格子について、図3(c)に基づいて説明する。Y軸格子14AとY軸格子14Bは、それぞれ枠線14aに囲まれたダイヤモンド形状をしている。枠線14a内は、X軸格子と同様に微細格子で形成されている。Y軸方向で隣接するY軸格子14AおよびY軸格子14Bは、接続部15を介して接続されている。接続部15は、微細格子の格子辺と平行な辺で形成されており、微細格子の構成と同様に、金属薄膜で構成される。具体的には、上述のセンサー電極と中間層で構成される。接続部15は、Y軸格子のY軸方向における中央線に対して非対称に設けられる。また、Y軸格子14Aは、接続部11(図3(b)参照)と積層方向で重なる箇所に、微細格子の格子辺の一部が欠損した欠損部16を有する。図3(c)では、欠損部16は枠線14a上に設けられている。
【0037】
X軸センサー部とY軸センサー部の静電容量の検出を精度良く行うため、X軸のセンサー電極とY軸のセンサー電極とは積層方向において重ならない構成とすることが好ましい。このような観点から、図3(b)、図3(c)に示すように、X軸格子またはY軸格子がY軸接続部またはX軸接続部と積層方向で重なる箇所に、欠損部13、16を設けている。これにより、検出精度を高めるとともに、センサー部全体でよりムラのない透過率や反射率を実現できる。なお、図3(a)では、XY平面で互いに隣接し合う4つの格子(10A、10B、14A、14B)は、X軸格子10Aの枠線と接続部15とが交差する交点P以外では重なっていない。また、X軸センサー部とY軸センサー部との交点は隙間17上に位置しないことが好ましい。
【0038】
図3の形態では、X軸センサー部のX軸格子10A、10Bに突起部12を設けたが、その突起部12に代えて、Y軸センサー部のY軸格子14A、14Bに突起部を設けてもよい。
【0039】
図4に微細格子の部分拡大図を示す。この格子状部分は、センサー電極と中間層が上記順序で重なったものである。格子間が開口部18であり、この部分にはセンサー電極や中間層は形成されていない。格子状部分は、非常に微細な格子状であることから、一見して目視で透明に見える透光部となる。格子状部分は、通常、線幅Wとして3μm~50μm、線ピッチPとして0.2mm~1mm程度とする。
【0040】
各センサー部のセンサー電極は、金属薄膜から構成される。例えば、金属薄膜がAl薄膜である場合、Al薄膜は、Alの固体ターゲット(蒸着材)を用いて、真空プロセスである、スパッタリングまたは真空蒸着により形成される。また、配線7(図1(a)参照)もセンサー電極と同時に一体に形成されている。真空プロセスとしては、均一な膜の形成が可能であることからスパッタリングを採用することがより好ましい。スパッタリングは、固体ターゲットに加速したアルゴンイオンを衝突させて、ターゲット表面から飛び出した原子または分子をガラス基板上に付着させて形成する方法である。
【0041】
Al薄膜を格子状などの所定形状に加工する方法は特に限定されないが、センサー電極に接続される配線や、上述の微細格子部分を精度よく形成可能であることから、公知のフォト解像技術を用いることが好ましい。例えば、Al薄膜をスパッタリングまたは真空蒸着で形成した後、エッチングパタンのマスク層をレジスト材料を用いてスクリーン印刷により形成し、所定のエッチング液を用いて湿式エッチングにより湿式エッチングして微細配線を形成する。なお、Al薄膜の膜厚は、100nm~5000nmが適当である。
【0042】
ここで、絶縁層6(図2参照)は、光学粘着フィルム(OCA)や光学樹脂(OCR)によって形成される。本発明のタッチパネルは、センサー電極3aおよび中間層5bのいずれか一方の表面にOCAを貼り、他方のセンサー基板を貼り合わせる方法や、センサー電極3aおよび中間層5bのいずれか一方の表面にOCRを充填して上記センサー基板を貼り合わせる方法などによって得られる。貼り合わせた後には、X軸方向またはY軸方向の一方向に向かってローラー処理が行われる。しかし、OCAの貼り付けやOCRを充填する際には、Al薄膜の凹凸(段差)によって空気の逃げ場がなくなり、微細格子の内部に気泡を巻き込むおそれがある。その結果、気泡による不具合や動作不良などが生じる場合がある。
【0043】
図5および図6の形態では、微細格子の内部が閉塞しないようにX軸センサー部3’に泡抜き部が形成された構造となっている。図5は、X軸方向の一方側端部におけるX軸格子10CとX軸格子10Dを示している。これらX軸格子についても、上述のように、枠線10aから隙間に向かって突き出した突起部12が設けられている。また、X軸格子10CとX軸格子10Dは、微細格子の格子辺と平行な辺で構成された接続部11によって接続されている。ここで、点線L1は接続配線を示しており、X軸方向に配列した各X軸格子を接続するための配線である。
【0044】
図5のC部拡大図を図6に示す。図6に示すように、泡抜き部として、微細格子の格子辺の1つの辺の一部が切り離された切り離し部19が設けられている。切り離し部19を設けることで、隣り合う微細格子の内部空間が連通するので、ローラー処理の際に気泡が抜けやすくなる。その結果、格子内部の気泡の発生を防止でき、センサーエリア全体が均一で高い透過率を実現できる。
【0045】
切り離し部19の格子辺の切り離し距離(開口距離)は、特に限定されないが、20~50μmであることが好ましい。また、格子辺の一辺の長さとの関係でいうと、格子辺の一辺の長さの1/20~1/5であることが好ましく、格子辺の1/10~1/6であることがより好ましい。
【0046】
切り離し部19の形成位置は、特に限定されず、接続配線L1を構成する格子辺以外の格子辺に形成することができる。切り離し部19は、X軸方向の一方向(図6では左側)に向かって、微細格子の内部空間の空気が流れるように形成されることが好ましい。また、空気の流れをスムーズにするため、切り離し部19が格子辺と平行な直線状に連続して配置されることが好ましい。
【0047】
図1図6の形態では、静電容量タッチパネルを、2つのガラス基板が重ね合わせてその間に各センサー部が挟み込まれた構造としたが、これに限らず、ガラス基板1枚の構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の投影型静電容量タッチスイッチパネルは、センサー部が目立ちにくいので、家電機器、AV機器、PC/OA機器、産業機械、その他の電子デバイス等における各機器への入力手段として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 静電容量タッチパネル
2 第1のガラス基板
3 X軸センサー部
4 第2のガラス基板
5 Y軸センサー部
6 絶縁層
7 配線
8 外部接続端子
9 フレキシブルプリント配線板(FPC)
10 X軸格子
10a 枠線
11 接続部
12 突起部
13 欠損部
14 Y軸格子
14a 枠線
15 接続部
16 欠損部
17 隙間
18 開口部
19 切り離し部
L1 接続配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8