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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】軸封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20221026BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
F16J15/34 H
F16J15/10 C
F16J15/10 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019071319
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020169690
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084342
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 久巳
(74)【代理人】
【識別番号】100213883
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 雅史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理
(72)【発明者】
【氏名】奥村 淳矢
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-146857(JP,U)
【文献】特開2018-123953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34-15/38
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールケースに設けたケース側密封環と回転軸に設けた軸側密封環とを具備するメカニカルシールにより機内領域の被密封流体をシールするように構成された軸封装置であって、
当該メカニカルシールより機内領域側に非常時用シールを配設してあり、
当該非常時用シールが、前記回転軸に固定された固定密封環と、前記シールケースに、その端面である可動密封端面が当該固定密封環の端面である固定密封端面に接触して前記被密封流体をシールするシール位置と可動密封端面が固定密封端面から離間する非シール位置とに亘って、軸線方向に移動可能に保持された可動密封環と、可動密封環を前記非シール位置に保持する可動密封環保持手段と、可動密封環を当該非シール位置から前記シール位置へと強制移動させる可動密封環移動手段と、所定温度で溶融することによって、前記可動密封環移動手段による強制移動機能を発動させる低融点部材と、を具備するものであり、
前記可動密封環保持手段がシールケースと可動密封環との間に装填されて当該可動密封環を前記非シール位置に附勢保持するスプリングであり、
前記可動密封環移動手段が、シールケースと可動密封環との間に形成された密閉状の背圧室と、当該背圧室に供給されることにより可動密封環を前記スプリングの附勢力に抗して当該非シール位置から前記シール位置へと移動させる高圧流体と、当該高圧流体の供給源と背圧室とを連通する連通路とを具備するものであり、
前記低融点部材が、前記連通路への前記高圧流体の供給を阻止する状態で当該連通路に装填された栓体であることを特徴とする軸封装置。
【請求項2】
前記高圧流体が被密封流体であり、前記高圧流体の供給源が機内領域であり、前記連通路が前記背圧室と機内領域とを連通する状態で可動密封環又はシールケースに形成されており、前記栓体が当該被密封流体との接触及び/又は前記メカニカルシールを構成するメカニカルシール構成部材からの伝熱により溶融されるものであることを特徴とする、請求項1に記載する軸封装置。
【請求項3】
前記高圧流体が被密封流体以外の加圧ガスであり、当該高圧流体の供給源が当該加圧ガスの貯留タンクであり、前記連通路が前記背圧室と当該貯留タンクとを連通するものであって、その少なくとも背圧室側部分がシールケースに形成されたものであり、前記栓体が、シールケースに形成された連通路部分に装填されたものであって、シールケースからの伝熱により溶融されるものであることを特徴とする、請求項1に記載する軸封装置。
【請求項4】
前記可動密封環移動手段が、シールケースと可動密封環との間に装填されて当該可動密封環を前記シール位置へと附勢するスプリングであり、前記可動密封環保持手段が、可動密封環を当該スプリングの附勢力に抗して前記非シール位置に保持する状態で当該可動密封環とシールケースとを連結する連結体であり、当該連結体の少なくとも一部分が前記低融点部材で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載する軸封装置。
【請求項5】
前記連結体における前記低融点部材で構成された部分が、被密封流体との接触及び/又はシールケースからの伝熱により溶融されるものであることを特徴とする、請求項4に記載する軸封装置。
【請求項6】
前記固定密封環が回転軸に固定された前記メカニカルシールを構成するメカニカルシール構成部材で兼用構成されていることを特徴とする、請求項1~5の何れかに記載する軸封装置。
【請求項7】
前記固定密封環と前記回転軸との間及び前記可動密封環と前記シールケースとの間が、前記メカニカルシールを構成するメカニカルシール構成部材間をシールするOリングより耐熱性に優れた弾性シールリングでシールされていることを特徴とする、請求項1~6の何れかに記載する軸封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ給水ポンプ、ボイラ循環ポンプ、熱油ポンプ等の回転機器に装備される軸封装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の軸封装置としては、特許文献1又は特許文献2に示す如く、シールケースに設けたケース側密封環と回転軸に設けた軸側密封環とを具備するメカニカルシールにより機内領域の被密封流体をシールするように構成されたものが周知である。
【0003】
かかる軸封装置は、メカニカルシールにより両密封環の対向端面である密封端面の相対回転部分において被密封流体をシール(以下「一次シール」という)するものであり、この一次シール機能を適正に発揮させるために、メカニカルシールを構成するメカニカルシール構成部材間(例えば、ケース側密封環とこれを保持するシールケースとの間や軸側密封環とこれを保持するスリーブとの間等)をOリングによりシール(以下「二次シール」という)している。
【0004】
而して、かかる軸封装置にあっては、例えば、特許文献1に開示される如く、シールケースの給液路から冷却液をフラッシングするフラッシング手段を設けたり、特許文献2に開示される如く、シールケースに形成した中空室に冷却液を循環供給させる冷却ジャケットを設ける等、冷却液による冷却手段を設けることにより、シールケースや密封環等のメカニカルシール構成部材が必要以上に高温化しないように工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-081626号
【文献】国際公開2013/187322号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような冷却手段に予期しないトラブル(例えば、冷却液の冷却機器や循環ポンプが故障したり、これらを駆動、制御する電気回路が停電等で機能しなくなる等)によりメカニカルシール構成部材が想定外の異常高温となったり、当該軸封装置が装備される回転機器側(回転機器又はその周辺機器等)の予期しないトラブルにより被密封流体が想定範囲を超えるような異常高温となることがある。
【0007】
一方、メカニカルシール構成部材間を二次シールするOリングとしては、被密封流体の性状等のシール条件が余程特殊な場合でない限り、このようなメカニカルシール構成部材や被密封流体の想定外の高温化を考慮することなく、NBR(ニトリルゴム)製Oリング等、耐熱温度100~150℃程度の一般的なOリングが使用されている。
【0008】
したがって、上記のようにメカニカルシール構成部材や被密封流体が想定外の異常高温になった場合、Oリングがメカニカルシール構成部材からの伝熱や被密封流体との接触により耐熱温度以上に加熱されて破損し(以下「加熱破損」という)、所定の二次シール機能を発揮しなくなる。その結果、被密封流体が一次シール部分から漏洩せずとも二次シール部分から大量漏れして、軸封機能の喪失による大事故が発生する。
【0009】
本発明は、メカニカルシール構成部材や被密封流体が想定外の異常高温になる状況下においても、これを事前に察知してメカニカルシール構成部材間を二次シールするOリングの加熱破損を防止し、軸封機能の喪失による大事故の発生を未然に回避することができる軸封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シールケースに設けたケース側密封環と回転軸に設けた軸側密封環とを具備するメカニカルシールにより機内領域の被密封流体をシールするように構成された軸封装置であって、上記の目的を達成すべく、特に、当該メカニカルシールより機内領域側に非常時用シールを配設してあり、当該非常時用シールが、前記回転軸に固定された固定密封環と、前記シールケースに、その端面である可動密封端面が当該固定密封環の端面である固定密封端面に接触して前記被密封流体をシールするシール位置と可動密封端面が固定密封端面から離間する非シール位置とに亘って、軸線方向に移動可能に保持された可動密封環と、可動密封環を前記非シール位置に保持する可動密封環保持手段と、可動密封環を当該非シール位置から前記シール位置へと強制移動させる可動密封環移動手段と、所定温度で溶融することによって、前記可動密封環移動手段による強制移動機能を発動させる低融点部材と、を具備するものであることを特徴とする軸封装置を提案するものである。
【0011】
かかる軸封装置の好ましい実施の形態にあって、前記可動密封環保持手段、可動密封環移動手段及び低融点部材は、(1)又は(2)のように構成される。
【0012】
(1)前記可動密封環保持手段がシールケースと可動密封環との間に装填されて当該可動密封環を前記非シール位置に附勢保持するスプリングであり、前記可動密封環移動手段が、シールケースと可動密封環との間に形成された密閉状の背圧室と、当該背圧室に供給されることにより可動密封環を前記スプリングの附勢力に抗して当該非シール位置から前記シール位置へと移動させる高圧流体と、当該高圧流体の供給源と背圧室とを連通する連通路とを具備するものであり、前記低融点部材が、前記連通路への前記高圧流体の供給を阻止する状態で当該連通路に装填された栓体である。かかる構成においては、前記高圧流体が被密封流体であり、前記高圧流体の供給源が機内領域であり、前記連通路が前記背圧室と機内領域とを連通する状態で可動密封環又はシールケースに形成されており、前記栓体が当該被密封流体との接触及び/又は前記メカニカルシールを構成するメカニカルシール構成部材からの伝熱により溶融されるものであることが好ましく、或いは、前記高圧流体が被密封流体以外の加圧ガスであり、当該高圧流体の供給源が当該加圧ガスの貯留タンクであり、前記連通路が前記背圧室と当該貯留タンクとを連通するものであって、その少なくとも背圧室側部分がシールケースに形成されたものであり、前記栓体が、シールケースに形成された連通路部分に装填されたものであって、シールケースからの伝熱により溶融されるものであることが好ましい。
【0013】
(2)前記可動密封環移動手段が、シールケースと可動密封環との間に装填されて当該可動密封環を前記シール位置へと附勢するスプリングであり、前記可動密封環保持手段が、可動密封環を当該スプリングの附勢力に抗して前記非シール位置に保持する状態で当該可動密封環とシールケースとを連結する連結体であり、当該連結体の少なくとも一部分が、被密封流体との接触及び/又はシールケースからの伝熱により溶融する前記低融点部材で構成されている。
【0014】
また、上記軸封装置にあっては、上記(1)及び(2)の何れの構成をなす場合にも、前記固定密封環を回転軸に固定された前記メカニカルシールを構成するメカニカルシール構成部材で兼用構成しておくことが好ましく、また前記固定密封環と前記回転軸との間及び前記可動密封環と前記シールケースとの間を、前記メカニカルシールを構成するメカニカルシール構成部材間をシールするOリングより耐熱性に優れた弾性シールリングでシールしておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の軸封装置は、被密封流体及び/又はシールケース等のメカニカルシール構成部材が予期しないトラブルによりOリングを耐熱温度以上に加熱する異常高温となる状況下においても、これを事前に察知して非常時用シールを作動させることにより、当該Oリングの加熱破損を確実に防止して、当該Oリングによる二次シール部分から大量漏れを生じるような大事故の発生を未然に回避しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る軸封装置の一例を示す断面図である。
図2図1の要部を拡大して示す詳細図である。
図3図2の要部を拡大して示す詳細図である。
図4】本発明に係る軸封装置の変形例を示す図2相当の要部の断面図である。
図5】本発明に係る軸封装置の他の変形例を示す図2相当の要部の断面図である。
図6】本発明に係る軸封装置の更に他の変形例を示す断面図である。
図7図6の要部を拡大して示す詳細図である。
図8】本発明に係る軸封装置の更に他の変形例を示す図2相当の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る軸封装置の構成を図面に基づいて具体的に説明する。
【0018】
図1は本発明に係る軸封装置の一例を示す断面図であり、図2図1の要部を拡大して示す詳細図であって、(a)図は非常時用シールの不作動状態を示すものであり、(b)図は非常時用シールの作動状態を示すものであり、図3図2(b)の要部を拡大して示す詳細図である。
【0019】
図1に示す軸封装置(以下「第1軸封装置」という)は、回転機器(ボイラ給水ポンプ、ボイラ循環ポンプ、熱油ポンプ等)のハウジング(図示せず)とこれを貫通して回転機器外に突出する水平な当該回転機器の回転軸との間に組み込まれた1個のメカニカルシールMで構成されている。
【0020】
メカニカルシールMは、図1に示す如く、当該回転機器外に突出する回転軸部分(以下、単に「回転軸」という)1と、シールケース2と、シールケース2に設けられたケース側密封環3と、回転軸1に設けられた軸側密封環4とを具備して、両密封環3,4の対向端面である密封端面3a,4aの相対回転摺接作用により、当該回転機器の機内領域Aと機外領域Bとを区画して、機内領域Aの被密封流体F(図2(b)参照)をシール(一次シール)するように構成された端面接触形のメカニカルシールである。この例では、被密封流体Fは液体であり、機外領域Bは大気領域である。なお、以下において、前後とは図1及び図2における左右をいうものとする。
【0021】
シールケース2は、前記回転機器のハウジングに、回転軸1が同心をなして左右方向に貫通する状態で取り付けられた金属製の円筒構造物であり、当該ハウジングに取り付けられた第1ケース体21と、これに取り付けられた第2ケース体22及び第3ケース体23とからなる。第1ケース体21は、図1に示す如く、内径を回転軸1の外径より大きくした先端側保持部21aと、これに連なって機外領域B方向(前方)に延びており、内径を先端側保持部21aより大きくした中間保持部21bと、これに連なって機外領域B方向に延びており、内径を中間保持部21bより大きくした基端側保持部21cと、これに連なって機外領域B方向に延びており、内径を基端側保持部21cより大きくした第1取付部21dと、先端側保持部21aに連なって機内領域A方向(後方)に延びて、前記回転機器のハウジングに取り付けられたハウジング取付部(図示せず)とからなる円筒状の一体構造物である。第2ケース体22は、図1に示す如く、内径を第1ケース体21の第1取付部21dと略同一とした第2取付部22aと、これに連なって機外領域B方向に延びており、内径を第2取付部22aより小さくした機外側保持部22bとからなる円筒状の一体構造物であり、第2取付部22aを第1ケース体21の第1取付部21dに取り付けることによって第1ケース体21に連結されている。第1ケース体21と第2ケース体22との連結部にはOリング5aが装填されている。第3ケース体23は、図1及び図2に示す如く、第1ケース体21の中間保持部21bに対向する状態で第1ケース体21の基端側保持部21cに取り付けられたスプリング受け板23aと、スプリング受け板23aの内周部との間で下方に開口する円環状凹部を形成する状態でスプリング受け板23aに取り付けられた断面L字状の弾性シールリング受け板23bとからなる円環状体である。
【0022】
ケース側密封環3は、図1に示す如く、先端面(後端面)を回転軸1の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に直交する平滑環状平面である密封端面3aに形成した円環状体であり、第2ケース体22の機外側保持部22bの内周部にOリング5b,5cを介して固定されている。
【0023】
軸側密封環4は、図1に示す如く、先端面(前端面)を軸線方向に直交する平滑環状平面である密封端面4aに形成した円環状体であり、当該密封端面4aをケース側密封環3の密封端面3aに直対向させた状態で、夫々金属製のスリーブ41、保持環42、スプリング受け体43及びスプリング保持体44を介して回転軸1に保持されている。なお、各密封環3,4は、一般的な密封環材料(例えば、カーボン、炭化珪素等のセラミックス又は超硬合金等)で構成されている。
【0024】
スリーブ41は、先端部(後端部)をシールケース2の第1取付部21d内に位置させると共に、基端部(前端部)をシールケース2外に位置させた状態で固定環45及びセットスクリュー46,47により回転軸1に取外し可能に取り付けることにより、回転軸1に固定された円筒体である。保持環42はその先端部(前端部)に軸側密封環4を固着した円環状体であって、スリーブ41にOリング5dを介して嵌合されて、軸側密封環4をスリーブ41つまり回転軸1に軸線方向移動可能に保持させている。スプリング受け体43は、保持環42にドライブピン48により相対回転不能に連結された円環状板である。スプリング保持体44は、スリーブ41の先端部に固定されており、スプリング受け体43に設けたドライブピン(図示せず)を係合させることにより、軸側密封環4を保持環42及びスプリング受け体43を介してスリーブ41つまり回転軸1に対して所定範囲での軸線方向移動を許容した状態で相対回転不能に保持している。
【0025】
而して、軸側密封環4は、スプリング受け体43とスプリング保持体44との間に介装したスプリング6により、密封端面4aをケース側密封環3の密封端面3aに押圧接触させる状態に附勢されている。
【0026】
また、シールケース2には、第2ケース体22の第2取付部22aの内周面において密封環3,4に向けて開口する給排液路2a,2bが形成されていると共に、図示していない中空の冷却室(冷却ジャケット)が形成されていて、冷却液Cを給液路2aからフラッシングすると共に冷却ジャケットに循環供給することにより、密封端面3a,4aが接触状態で相対回転することによって発生する摩擦熱や被密封流体Fが高温である場合において当該被密封流体Fからの伝熱等によりメカニカルシールMを構成する密封環3,4やシールケース2等のメカニカルシール構成部材が必要以上に高温化することを防止している。
【0027】
ところで、メカニカルシールMを構成するメカニカルシール構成部材間(第1ケース体21と第2ケース体22との間、ケース側密封環3と第2ケース体22との間、回転軸1とスリーブ41との間及びスリーブ41と保持環42との間)には、上記した如く、Oリング5a~5dが装填されていて、当該シール構成部材間をシール(二次シール)しているが、この例では、上記したフラッシング手段等の冷却手段により当該メカニカルシール構成部材が必要以上に高温化することがないことから、これらのOリング5a~5dとして高度の耐熱性を有しない弾性材製のものが使用されている。具体的には、Oリング5a~5dとして、冒頭に述べた軸封装置と同様に、耐熱温度が100~150℃程度の一般的なゴム製Oリングが使用されている。
【0028】
而して、以上のように構成された第1軸封装置にあっては、メカニカルシールMより機内領域A側(後側)に次のような非常時用シールmを配設してある。
【0029】
すなわち、非常時用シールmは、図1及び図2に示す如く、回転軸1に固定された固定密封環7と、前記シールケース2に、その端面である可動密封端面8aが固定密封環7の端面である固定密封端面7aに接触して被密封流体Fをシールするシール位置(図2(b)に示す位置)と可動密封端面8aが固定密封端面7aから離間する非シール位置(図1及び図2(a)に示す位置)とに亘って、軸線方向に移動可能に保持された可動密封環8と、可動密封環8を当該非シール位置から前記シール位置へと強制移動させる可動密封環移動手段9と、可動密封環8を前記非シール位置に保持する可動密封環保持手段10と、所定温度で溶融することによって、前記可動密封環移動手段9による強制移動機能を発動させる低融点部材11と、を具備するものであり、可動密封環8が前記シール位置に位置されることにより可動密封端面8aと固定密封環7の固定密封端面7aとの相対回転摺接作用により当該相対回転摺接部分7a,8aの外周側領域であるメカニカルシール側機内領域(メカニカルシールMと非常時用シールmとの間における機内領域A部分)A1とその内周側領域である回転機器側機内領域(非常時用シールmと回転機器との間における機内領域A部分)A2とを遮蔽シールするように構成されている。なお、低融点部材11が溶融する前記所定温度は、例えば、後述するようにOリング5a~5dの耐熱温度の近傍温度であって当該耐熱温度以下の温度である。
【0030】
固定密封環7は、図1及び図2に示す如く、回転軸1に固定された環状体であって、先端面(後端面)を軸線方向に直交する平滑環状平面である固定密封端面7aに形成したものであり、回転軸1との対向周面間には弾性シールリング12aが装填されている。この例では、固定密封環7は、回転軸1に固定されたメカニカルシール構成部材であるスリーブ41で兼用構成されている。すなわち、固定密封環7は、図1及び図2に示す如く、スリーブ41の先端部(後端部)71とこれに取り付けた断面L字形の密封端面形成リング72とで構成されており、密封端面形成リング72の先端面(後端面)を軸線方向に直交する平滑環状平面である固定密封端面7aに形成してある。密封端面形成リング72は金属材(例えば、スリーブ41と同質の金属材)で構成されており、固定密封端面7aには酸化クロム等のセラミックス層(図示せず)が形成されている。なお、弾性シールリング12aは、後述する如く、固定密封環7と回転軸1との対向周面間に形成されたシールリング装填空間13aに装填されている。
【0031】
可動密封環8は、図1及び図2に示す如く、シールケース2の第1ケース体21の基端側保持部21cの内周面に近接する第1被保持部81と、外径を第1被保持部81より小径として第1被保持部81から機外領域B方向(前方)に延びる密封端面形成部82と、当該第1ケース体21の中間保持部21bの内周面に近接して第1被保持部81から機内領域A方向(後方)に延びる第2被保持部83と、当該第1ケース体21の先端側保持部21aの内周面に近接して第2被保持部83から機内領域A方向に延びる第3被保持部84とからなる内径一定の円環状体であり、シールケース2に弾性シールリング12b,12c,12dを介して軸線方向移動可能に保持されている。
【0032】
すなわち、可動密封環8は、図2に示す如く、密封端面形成部82の端面(前端面)を軸線方向に直交する平滑環状平面である可動密封端面8aに形成したものであり、可動密封端面8aを固定密封端面7aに直対向させると共に第3被保持部84をシールケース2の第1ケース体21の先端側保持部21aの内周部に近接させた状態で、密封端面形成部82を弾性シールリング12bを介してシールケース2の第3ケース体23の内周部に、第1被保持部81を弾性シールリング12cを介して当該シールケース2の第1ケース体21の基端保持部21cの内周部に、及び第3被保持部84を弾性シールリング12dを介して当該第1ケース体21の中間保持部21bの内周部に、夫々嵌合させることにより、シールケース2の第1及び第3ケース体21,23に前記シール位置と非シール位置とに亘って軸線方向に移動可能に保持されている。可動密封環8は、金属材(例えば、固定密封環7と同質の金属材)で構成されており、可動密封端面8aには固定密封端面7aと同様に酸化クロム等のセラミックス層(図示せず)が形成されている。なお、可動密封環8は、図1に示す如く、第3ケース体23のスプリング受け板23aに取り付けたドライブピン85を第1被保持部81に形成した凹部81aに係合させることにより、前記シール位置と非シール位置との間に亘る軸線方向移動を許容する状態でシールケース2に対する相対回転を阻止されている。
【0033】
ところで、固定密封環7と回転軸1との間をシールする弾性シールリング12a及び可動密封環8とシールケース2との間をシールする弾性シールリング12b~12dは、前記Oリング5a~5dより耐熱温度が高い高耐熱性シール部材である。すなわち、弾性シールリング12aは、図3に示す如く、円環状の本体部12eと、本体部12eから軸線方向に突出する円筒状の内外周リップ部12f,12gと、本体部12e及び内外周リップ部12f,12gで囲繞形成された環状溝12hに充填した断面コ状の円環状板バネ12iとからなる断面コ字状の複合構造物であり、本体部12e及び内外周リップ部12f,12gを耐熱性弾性材(ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂やこれにガラス繊維、炭素繊等の充填材を配合してなる弾性複合材等)で構成した高耐熱性のものである。弾性シールリング12aは、図3に示す如く、固定密封環7を構成するスリーブ41の先端部71と密封端面形成リング72との連結の内周面に形成された環状凹部を回転軸1の外周面で閉塞してなる円環状のシールリング装填空間13aに、前記環状溝12hにシールすべき流体(被密封流体F)が侵入しうる状態で装填されており、当該流体の圧力によって、本体部12eが前記シールリング装填空間13aの底面7b(固定密封環7の内周部に形成された環状凹部における機外領域B側の端面)に、内周リップ部12fが当該シールリング装填空間13aの内周面1a(回転軸1の外周面)に、及び外周リップ部12gが当該シールリング装填空間13aの外周面7c(固定密封環7の内周部に形成された環状凹部における外周面)に、夫々、押し付けられることにより、固定密封環7と回転軸1との間をシールするものである。また、この弾性シールリング12a以外の弾性シールリング12b~12dも、径が異なる点を除いて、当該弾性シールリング12aと同一構造、同一機能を有するものであるから、その詳細は省略するが、当該弾性シールリング12aと同様に、図1及び図2に示す如く、弾性シールリング12bは可動密封環8の密封端面形成部82と第3ケース体23との対向周面間に形成された円環状のシールリング装填空間13bに装填されて、両部材23,82間をシールするものであり、弾性シールリング12cは可動密封環8の第1被保持部81と第1ケース体21の基端側保持部21cとの対向周面間に形成された円環状のシールリング装填空間13cに装填されて、両部材21c,81間をシールするものであり、弾性シールリング12dは可動密封環8の第3被保持部84と第1ケース体21の中間保持部21bとの対向周面間に形成された円環状のシールリング装填空間13dに装填されて、両部材21b,84間をシールするものである。なお、弾性シールリング12a~12dは、メカニカルシール構成部材間を二次シールするOリング5a~5dより耐熱性に優れるものであればよく、上記した複合構造物に限定されるものでなく、例えば耐熱性Oリングや金属Oリング等を使用することができる。
【0034】
可動密封環移動手段9は、図2に示す如く、シールケース2と可動密封環8との間に形成された密閉状の背圧室9aと、当該背圧室9aに供給されることにより可動密封環8を非シール位置からシール位置へと移動させる高圧流体と、当該高圧流体の供給源と背圧室9aとを連通する連通路9bとからなり、連通路9bから高圧流体を背圧室9aに供給することにより、その圧力により可動密封環8をシール位置へと強制移動させるものである。
【0035】
背圧室9aは、図2に示す如く、可動密封環8の第1被保持部81及び第2被保持部83とシールケース1の第1ケース体21の中間保持部21b及び基端側保持部21cとで囲繞された空間であって、弾性シールリング12c,12dによりシールされた密閉空間である。また、可動密封環8と第1ケース体21の基端側保持部21c及び第3ケース体23のスプリング受け板23aとで囲繞された空間10aは、図2に示す如く、基端側保持部21cとスプリング受け板23aとの接合部に装填された金属ガスケット(例えば、金属フープを使用する渦巻き形ガスケット)12jと前記弾性シールリング12b,12cとによりシールされた密閉大気空間であり、背圧室9a及び被密封流体領域Aと区画されている。
【0036】
連通路9bは、図2に示す如く、可動密封環8の第1被保持部81と第2被保持部83との境界部分を径方向に貫通する貫通孔であって、背圧室9aと機内領域Aとを連通して機内領域Aの被密封流体Fを背圧室9aに供給しうるように構成されている。すなわち、この例では、背圧室9aに供給される高圧流体として機内領域A(回転機器側機内領域A2)の被密封流体Fが使用され、当該高圧流体Fの供給源として機内領域A(回転機器側機内領域A2)が使用されている。
【0037】
而して、可動密封環移動手段9によれば、連通路9bから背圧室9aに被密封流体Fが供給されると、当該被密封流体Fの圧力によって可動密封環8が後述するスプリング10により附勢力に抗して図2(a)に示す非シール位置から同図(b)に示すシール位置へと強制移動されるようになっている。
【0038】
可動密封環保持手段10は、図2に示す如く、前記空間10aに配置されてシールケース2と可動密封環8の間に装填されたスプリングで構成されている。スプリング10は、図2(a)に示す如く、シールケース2の第3ケース体23のスプリング受け板23aと可動密封環8の第1被保持部81との間に装填されていて、可動密封環8を非シール位置方向に附勢する。この例では、可動密封環8の第1被保持部81の背面(後端面)における内周側部分に円環状の膨出部81bを形成して、可動密封環8が、スプリング10の附勢力により、当該膨出部81bがシールケース2の第1ケース体21の中間保持部21bに押し付けられて、可動密封端面8aが固定密封端面7aから離間する非シール位置に保持されるように構成されている。
【0039】
低融点部材11は、図2(a)に示す如く、連通路9bを閉塞する状態で当該連通路9bに装填された栓体に構成されており、前記Oリング5a~5dの耐熱温度の近傍温度であって当該耐熱温度以下の温度(以下「加熱破損予知温度」という)で溶融する固体部材であり、加熱破損予知温度を融点とする低融点材料で構成されている。
【0040】
栓体11は、その全体を低融点部材で構成されたものであり、加熱破損予知温度を下回る温度条件下では高圧流体(被密封流体)Fの圧力に抗して連通路9bを閉塞するに十分な強度を有する固体をなし、且つ加熱破損予知温度以上の温度条件下では当該栓体11の全部分が溶融して連通路9bを開放するか或は当該栓体11の一部分が溶融して高圧流体Fの圧力によって連通路9bから排除されるものである。栓体11又はその一部分が溶融して連通路9bが開放されると、連通路9bから背圧室9aに被密封流体Fが供給されて、可動密封環8がスプリング10の附勢力に抗してシール位置へと強制移動される。すなわち、可動密封環移動手段9による強制移動機能が発動される。栓体11を構成する低融点材料としては、Oリング5a~5dの耐熱温度に応じて当該耐熱温度よりやや低温(加熱破損予知温度)を融点とする金属、合金や熱可塑性樹脂等が使用される。この例では、栓体11を融点(加熱破損予知温度)が110~140℃程度のBi-Sn系又はSn-In系の鉛フリーはんだで構成してある。
【0041】
なお、上記した第1軸封装置にあっては、図1に示す如く、スリーブ41の基端部に形成した環状溝41aにシールケース2の第2ケース体22の機外側保持部22bに取り付けた適当数のセットプレート14を係合させることにより、メカニカルシールM及び非常時用シールmを組み立てた状態つまり第1軸封装置を組み立てた状態で回転機器に組み込み及び取外しすることができるように工夫されている。したがって、フラッシング手段等のトラブルが発生することにより非常時用シールmが作動した場合、つまり栓体11が溶融して可動密封環8がシール位置へと動作した場合、当該トラブルを解消した後、メカニカルシールM及び非常時用シールmを回転機器から取り外し、非常時用シールmを新たな栓体11を装填した非作動状態に復元した上で、再びメカニカルシールM及非常時用シールmを回転機器に組み込むといった一連のメンテナンス作業を極めて容易且つ効率的に行うことができる。
【0042】
ところで、冒頭で述べた如く、第1軸封装置が装備された回転機器側や冷却液Cによるフラッシング手段や冷却ジャケットに予期しないトラブルが発生した場合において、被密封流体Fやシールケース2等のメカニカルシール構成部材が想定外の異常高温となったときには、当該メカニカルシール構成部材間を二次シールしているOリング5a~5dが、被密封流体Fとの接触により或いは当該Oリング5a~5dが接触しているメカニカルシール構成部材からの伝熱により耐熱温度以上に加熱され加熱破損する虞れがある。一方、炭素材や金属材等で構成される密封環3,4等のメカニカルシール構成部材は上記したようなOリング5a~5dが加熱破損するような異常高温状態においても加熱破損するようなことがなく、メカニカルシールMによる一次シール機能(ケース側密封環3の密封端面3aと軸側密封環4の密封端面4aとの相対回転摺接作用によるシール機能)は、そのまま維持されることになる。しかし、このように一次シール機能が維持されていても、Oリング5a~5dが加熱破損すると、当該Oリング5a~5dによる二次シール機能が損なわれて、二次シール部分であるメカニカルシール構成部材間から被密封流体Fが機外領域Bに大量漏れする大事故を招来することになる。
【0043】
しかし、第1軸封装置によれば、このようにOリング5a~5dが加熱破損するような異常高温状態となる状況においても、これを事前に察知して非常時用シールmが作動し、Oリング5a~5dの加熱破損を確実に防止して、メカニカルシールMの二次シール部分から機外領域Bへの被密封流体Fの大量漏れといった大事故の発生を未然に回避することができる。
【0044】
すなわち、例えば、被密封流体Fの温度がこれと接触してもOリング5a~5dが加熱破損しないような非高温状況下においては、つまり被密封流体Fが加熱破損予知温度に達しない状況下においては、図2(a)に示す如く、栓体11が溶融しないため、可動密封環移動手段9の強制移動機能は発動せず、非常時用シールmは作動しない。また、メカニカルシールMのOリング5a~5dも加熱破損しない。したがって、被密封流体Fの温度が加熱破損予知温度に達しない通常の温度条件下においては、メカニカルシール側機内領域A1と回転機器側機内領域A2とが連通して、被密封流体FがメカニカルシールMにより一次シールされると共にOリング5a~5dにより二次シールされて、非常時用シールmが設けられていない軸封装置と同様に適正な軸封機能が発揮される。つまり、非常時用シールmは通常の軸封機能を何ら妨げない。
【0045】
一方、被密封流体Fがこれとの接触によりOリング5a~5dが加熱破損するような異常高温(Oリング5a~5dの耐熱温度以上の高温)となるような状況では、被密封流体Fの温度が加熱破損予知温度に達すると、栓体11が溶融して連通路9bが開放され、被密封流体Fが連通路9bから背圧室9aに供給されることになる。
【0046】
而して、背圧室9aに被密封流体Fが供給されると、その圧力によって非常時用シールmが作動する。すなわち、図2(b)に示す如く、背圧室9aに供給された被密封流体Fの圧力により、可動密封環8がスプリング10の附勢力に抗して固定密封環7方向へと押圧されてシール位置へと移動し、可動密封端面8aが固定密封端面7aに接触して、両密封端面7a,8aの相対回転摺接作用により一般的な端面接触形メカニカルシールと同様のシール機能が発揮され、高温化した被密封流体Fの回転機器側機内領域A2からメカニカルシール側機内領域A1への流入が阻止される。
【0047】
したがって、このように回転機器側機内領域A2の被密封流体Fは、その温度が栓体11の融点に達した時点で、つまりOリング5a~5dの耐熱温度近傍ではあるが当該Oリング5a~5dが未だ加熱破損していない温度(加熱破損予知温度)に達した時点で、非常時用シールmによりメカニカルシール側機内領域A1への侵入が阻止されるから、回転機器側機内領域A2の被密封流体Fの温度が加熱破損予知温度を超えて上昇し、Oリング5a~5dの耐熱温度以上の高温となった場合にも、メカニカルシール側機内領域A1における被密封流体Fの温度は当該耐熱温度より低温に保持されることになり、当該メカニカルシール側機内領域A1の被密封流体Fと接触することによってOリング5a~5dが加熱破損されることはない。
【0048】
ところで、回転機器側機内領域A2においては、被密封流体Fの温度が上昇し続けて加熱破損予知温度を超えるようになると、この被密封流体Fとの接触によりシールケース2の温度がOリング5a~5dの耐熱温度以上に加熱される虞れがある。かかる場合、シールケース2から直接的に或いはシールケース2に接触しているメカニカルシール構成部材から間接的に伝熱されることにより、Oリング5a~5dがその耐熱温度以上に加熱される虞れがある。
【0049】
しかし、Oリング5a~5dに接触する被密封流体Fは非常時用シールmで回転機器側機内領域A2と隔離されたメカニカルシール側機内領域A1に滞留するものであり、回転機器側機内領域A2の圧力つまり非常時用シールmが作動しない状態における機内領域Aの圧力より大幅に減圧されたものである。一方、Oリング5a~5dの加熱破損は、高圧下で耐熱温度以上の異常高温に晒されることにより生じるものであり、低圧下で異常高温に晒されることによっては生じない。したがって、上記した回転機器側機内領域A2の被密封流体Fとの直接的、間接的な接触によりOリング5a~5dが接触するメカニカルシール構成部材が当該Oリング5a~5dの耐熱温度以上に加熱された場合にも、被密封流体Fの高温化への対応作業が完了するまでの間においては、Oリング5a~5dが加熱破損して二次シール部分からの大量漏れを招来すること虞れはない。
【0050】
また、被密封流体Fが高温化しない場合にあっても、フラッシング手段等の冷却手段のトラブル(停電等)によりメカニカルシール構成部材がOリング5a~5dの耐熱温度以上の異常高温となることもありうるが、かかる場合には、シールケース2からの伝熱により可動密封環8が加熱されて加熱破損予知温度に達すると、可動密封環8に形成された連通路9bを閉塞している栓体11が溶融して非常時用シールmが作動し、被密封流体Fが高温化した上記の場合と同様に、当該冷却手段のトラブル解消処理が完了するまでの間においては、Oリング5a~5dが加熱破損することがなく、メカニカルシールMによる一次シール機能及びOリング5a~5dによる二次シール機能が適正に発揮されて、機外領域Bへの大量漏れが生じることがない。かかる点は、被密封流体Fも高温化する場合、つまり被密封流体F及びメカニカルシール構成部材が共に高温化する場合も同様である。
【0051】
ところで、固定密封環7と回転軸1との間に装填された弾性シールリング12aや可動密封環8とシールケース2との間に装填された弾性シールリング12b~12d(及び第1ケース体21と第3ケース体23との間に装填された金属ガスケット12j)は、メカニカルシールMのOリング5a~5dより耐熱性に優れたものであるから、被密封流体F及び/又はシールケース2等のメカニカルシール構成部材がOリング5a~5dの耐熱温度以上に高温化した場合にも、被密封流体Fとの接触及び/又はシールケース2からの伝熱により加熱破損することがなく、両密封環7,8による一次シール機能や背圧室9a(及びスプリング10が装填された空間10a)を密閉するシール機能が損なわれることがない。
【0052】
以上のように、第1軸封装置によれば、被密封流体F及び/又はシールケース2等のメカニカルシール構成部材が予期しないトラブルによりOリング5a~5dの耐熱温度以上に高温化するような状況下においては、これを事前に察知して(栓体11が加熱破損予知温度で溶融して可動密封環8がシール位置に移動されて)非常時用シールmが作動することにより、Oリング5a~5dの加熱破損を確実に防止して、Oリング5a~5dによる二次シール部分から大量漏れを生じるような大事故の発生を未然に回避することができる。
【0053】
ところで、従来からも、例えば特許文献2に開示される如く、被密封流体の温度検知手段により、上記したような異常な温度状況を予知するように構成された軸封装置が提案されているが、かかる温度検知手段は電源を必要とする電気的手段であるため停電等の電気的トラブルが生じた場合には機能せず、停電等の電気的トラブルによりフラッシング手段等の冷却手段が機能しないことによりメカニカルシール構成部材が異常高温となるような状況下では役に立たない。しかし、上記した第1軸封装置の非常時用シールmでは、その作動が栓体11の溶融により行われて電源を必要としないため、停電等の電気的トラブルが発生した時においても適正に機能する。
【0054】
なお、本発明に係る軸封装置は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に改良、変更することができる。
【0055】
例えば、第1軸封装置では、非常時用シールmの連通路9bを可動密封環8に形成したが、図4に示す如く、連通路9cはシールケース2に形成することもできる。すなわち、図4に示す軸封装置(以下「第2軸封装置」という)の非常時用シールmでは、連通路9cをシールケース2の第1ケース体21の中間保持部21b及び基端側保持部21cを貫通する貫通孔に形成して、背圧室9aと回転機器側機内領域A2とを連通させてあり、連通路9cにおける回転機器側機内領域A2に開口する部分に低融点部材である栓体11を密着状に装填してある。このように連通路9cをシールケース2に形成しておくと、栓体11が被密封流体F及びシールケース2の何れからも伝熱されるから、被密封流体F及びシールケース2の何れかが加熱破損予知温度に達すると栓体11が溶出して連通路9cが開放される。したがって、回転機器側のトラブルにより被密封流体Fが異常高温となる状況及び冷却手段のトラブルによりシールケース2等のメカニカルシール構成部材が異常高温となる状況の何れにおいても非常時用シールmが作動する。なお、図4に示す非常時用シールm及びこれを備えた第2軸封装置の構成及び機能は、上記した点を除いて図1図3に示す第1軸封装置と同一であるから、同一構成部材については図4において図1図3と同一の符号を付することにより、その詳細は省略する。
【0056】
また、上記した第1及び第2軸封装置における非常時用シールmの可動密封環移動手段9にあっては、背圧室9aに供給される高圧流体として被密封流体Fを使用し、当該高圧流体の供給源として機内領域A(回転機器側機内領域A2)を使用したが、当該可動密封環移動手段9は、図5に示す如く構成しておくこともできる。すなわち、図5に示す軸封装置(以下「第3軸封装置」という)における非常時用シールmの可動密封環移動手段9にあっては、高圧流体が被密封流体F以外の高圧ガスGであり、当該高圧流体の供給源が当該加圧ガスGの貯留タンク91であり、連通路92が背圧室9aと貯留タンク91とを連通するものであって、その少なくとも背圧室9a側部分がシールケース2に形成されたものであり、連通路92を閉塞する低融点部材である栓体11が、シールケース2に形成された連通路部分92aに装填されたものであって、シールケース2からの伝熱により溶融されるものである。連通路部分92aは、図5(a)に示す如く、シールケース2の第1シールケース21における先端側保持部21cと中間保持部21bとの境界部に形成されていて、背圧室9に開口する部分に低融点部材である栓体11が密着状に装填されている。而して、図5に示す非常時用シールmにあっては、回転機器側のトラブルにより高温化した被密封流体Fとの接触によりシールケース2が加熱破損予知温度に達した場合及び/又はフラッシング手段等の冷却手段のトラブルによりシールケース2が加熱破損予知温度に達した場合、シールケース2から伝熱により栓体11が溶融して連通路92が開放されて、貯留タンク91から背圧室9aに高圧ガスGが供給され、高圧ガスGの圧力により可動密封環8がスプリング10に抗して非シール位置(同図(a)に示す位置)から非シール位置(同図(b)に示す位置)へと移動され、固定密封端面7aと可動密封端面8aとの相対回転摺接作用によりメカニカルシール側機内領域A1と回転機器側機内領域A2とを遮蔽シールする。図5に示す非常時用シールm及びこれを備えた第3軸封装置の構成及び機能は、上記した点を除いて、図1図3に示す第1軸封装置と同一であるから、同一構成部材については図5において図1図3と同一の符号を付することにより、その詳細は省略する。
【0057】
また、軸封装置が1個のメカニカルシールMで構成される場合にあって当該メカニカルシールMの形式、構成は任意であり、例えば、図6に示す軸封装置(以下「第4軸封装置」という)にあっては、メカニカルシールMとして遊動環形のメカニカルシールが使用されており、上記した第1~第3軸装置と同様に、非常時用シールmを設けておくことによりメカニカルシール構成部材間に装填されたOリングの加熱破損事故を未然に防止することができる。
【0058】
すなわち、図6は第4軸封装置を示す断面図であり、図7はその要部の詳細図であって、(a)図は非常時用シールmの不作動状態を示すものであり、(b)図は非常時用シールmの作動状態を示すものである。
【0059】
第4軸封装置にあって、メカニカルシールMは、図6に示す如く、シールケース102に設けたケース側密封環である遊動環103とシールケース102を洞貫する回転軸101に設けた軸側密封環である回転環104との対向端面である密封端面103a,104aの相対回転摺接作用により機内領域Aと機外領域(大気領域)Bとを区画して、機内領域Aの被密封流体F(図7(b)参照)である液体をシール(一次シール)するように構成された遊動環形のメカニカルシールである。なお、以下において、前後とは図6及び図7における左右をいうものとする。
【0060】
シールケース102は、図6に示す如く、ボイラ給水ポンプ等の回転機器のハウジング(図示せず)に取り付けられた第1ケース体102aと、これにOリング105aを介して取り付けられた第2ケース体102bと、第1ケース体102aに取り付けられた第3ケース体102cと、第2ケース体102bの内周部にOリング105bを介して取り付けられた第4ケース体102dと、第1ケース体102aにOリング105cを介して取り付けられると共に第2及び第4ケース体102b,102dに前記Oリング105bを介して取り付けられた第5ケース体102eとからなる金属製の円筒構造物である。第1ケース体102a及び第3ケース体102cは、夫々、図1に示すシールケース2の第1ケース体21及び第3ケース体23と同様構造をなすものであるから、同一部材について図6及び図7において図1と同一の符号を付することにより、これらケース体102a,102cの構成についての詳細は省略する。
【0061】
遊動環103は、図6に示す如く、貫通孔103bを有する円環状体であり、第2ケース体102bに設けた保持環113に接触する状態で、当該保持環113にOリング105d及びドライブピン114を介して相対回転不能に連結されている。保持環113は、第4ケース体102dにOリング105e及びドライブピン115を介して回転軸101の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に移動可能に且つ相対回転不能に保持された金属製の円環状体であり、第2ケース体102dとの間に装填したスプリング106により機内領域A方向(前方)に押圧附勢されている。したがって、遊動環103は、保持環113を介して、後述する回転環104に押圧接触した状態で軸線方向に移動可能にシールケース102に保持されている。
【0062】
回転環104は、図6に示す如く、遊動環103の機内領域A側に配して、回転軸101に嵌合したスリーブ141に固定された円環状体である。スリーブ141は、シールケース102外に位置する基端部(前端部)を固定環145、セットスクリュー146及びキー147により取外し可能に取り付けることにより、回転軸101に固定された金属製の円筒体である。スリーブ141の先端部(後端部)には外方に延びる断面L字状の環状部141aが一体形成されていて、この環状部141aにOリング105fを介して回転環104が固定されている。
【0063】
遊動環103と回転環104との対向端面は軸線方向に直交する平滑環状平面である密封端面103a,104aに形成されており、遊動環103及び回転環104は、夫々、第1軸封装置の密封環3,4と同様に、前記した密封環材料で構成されている。
【0064】
シールケース102には、冷却液Cをフラッシングする給排液路102f,102g及び冷却液を循環供給する冷却ジャケット(図示せず)が形成されていて、密封端面103a,104aが接触状態で相対回転することによって発生する摩擦熱や被密封流体Fが高温である場合において当該被密封流体Fからの伝熱等によりメカニカルシールMを構成する密封環103,104やシールケース102等のメカニカルシール構成部材が必要以上に高温化することを防止している。なお、スリーブ141の環状部141aは、その外周部を周方向に複数の凹溝141bが並列してなるポンピング羽根部としたポンピング体に構成されていて、給液路102fからフラッシングされた冷却液Cを排液路102gへとポンピングするようになっている。
【0065】
ところで、メカニカルシールMを構成するメカニカルシール構成部材間には、上記した如く、Oリング105a~105fが装填されていて、当該シール構成部材間をシール(二次シール)しているが、第1軸封装置と同様に、上記したフラッシング手段や冷却ジャケットにより当該メカニカルシール構成部材が必要以上に高温化することがないことから、これらのOリング105a~105fとして、前記Oリング5a~5dと同様に、耐熱温度が100~150℃程度の一般的なゴム製Oリングが使用されている。
【0066】
而して、第4軸封装置は、図6及び図7に示す如く、メカニカルシールMより機内領域A側(後側)に非常時用シールmを配設して、第1軸封装置と同様に、メカニカルシール構成部材や被密封流体FがOリング105a~105fの耐熱温度以上の高温となるような異常事態が発生した場合にも、非常時用シールmが作動して、Oリング105a~105fの加熱破損を防止し、当該軸封装置による軸封機能を良好に維持できるように構成されている。
【0067】
第4軸封装置の非常時用シールmにあっては、図6及び図7に示す如く、回転軸101に固定されたスリーブ141を固定密封環107として兼用構成している。すなわち、固定密封環7は、図6及び図7に示す如く、スリーブ141に一体形成された環状部(ポンピング体)141aの先端部(後端部)の内周側部分171とこれに取り付けた断面L字形の密封端面形成リング172とで構成されており、密封端面形成リング172の先端面(後端面)を軸線方向に直交する平滑環状平面である固定密封端面107aに形成してある。密封端面形成リング172は金属材(例えば、スリーブ141と同質の金属材)で構成されており、固定密封端面107aには酸化クロム等のセラミックス層(図示せず)が形成されている。なお、第1軸封装置と同様に、固定密封環107と回転軸101との対向周面間に形成されたシールリング装填空間13aには弾性シールリング12aが装填されている。
【0068】
而して、第4軸封装置の非常時用シールmは、上記した点を除いて、図1図3に示す第1軸封装置の非常時用シールmと同一構成をなし、同一機能を発揮するものである。すなわち、第4軸封装置が装備された回転機器側や冷却手段にトラブルが発生した場合(例えば、回転軸101が停止して、ポンピング体141aによるポンピング機能が停止して、フラッシングによる冷却機能が低下、喪失した場合等)にあって、被密封流体F及び/又はシールケース102が加熱破損予知温度(Oリング105a~105fの耐熱温度の近傍温度であって当該耐熱温度以下の温度)に達した場合、非常時用シールmが作動して、Oリング105a~105fの加熱破損を防止する。
【0069】
したがって、非常時用シールmを含む第4軸封装置の構成、機能については、上記した点を除いて、第1軸封装置と同一であるから、図6及び図7において第1軸封装置と同一構成部材について図1図3に示す符号と同一符号を付することにより、その詳細は省略する。なお、第4軸封装置にあっても、図6に示す如く、第1軸封装置と同様に、スリーブ141の基端部に形成した環状溝141cにシールケース102の第2ケース体102bに取り付けた適当数のセットプレート116を係合させることにより、メカニカルシールM及び非常時用シールmを組み立てた状態で回転機器に組み込み及び取外しすることができるように工夫されている。また、第4軸封装置においても、非常時用シールmを、図4に示す第2軸封装置3の非常時用シールm又は図5に示す非常時用シールmと同様構造のものとすることができる。
【0070】
また、第1~第4軸封装置においては、固定密封環7,107を回転軸1,101に固定されたメカニカルシール構成部材41,141で兼用構成して、その一部71,171を固定密封環7,107の構成部分として利用すると共に、高圧流体(被密封流体F又は高圧ガスG)の圧力によって可動密封環8をシール位置へと強制移動させることにより非常時用シールmを作動させるようにしたが、例えば、図8に示す如く、固定密封環207をメカニカルシール構成部材で兼用せず独立部材として回転軸201に固定し、非常時用シールmの作動をこのような高圧流体の圧力を使用せず機械的手段により作動させるように構成することも可能である。
【0071】
すなわち、図8に示す軸封装置(以下「第5軸封装置」という)にあっては、シールケース202を、メカニカルシールMが設けられる第1ケース部分221と、これに連なって機内領域A方向に延びる第2ケース部分222と、第2ケース部分222にOリング205aを介して連結されており、機内領域A方向に延びて回転機器のハウジング(図示せず)に取り付けられた第3ケース部分223と、第3ケース部分223の内周部に弾性シールリング212aを介して取り付けられた第4ケース部分224とを具備するものに構成し、メカニカルシールMの機内領域A側に配設した非常時用シールmを、次のような固定密封環207、可動密封環208、可動密封環移動手段209、可動密封環保持手段210及び低融点部材211を具備してなるものに構成してある。なお、シールケース202には、第1又は第4軸封装置と同様に、フラッシング手段等の冷却手段(図示せず)が設けられている。また、メカニカルシールMを構成するメカニカルシール構成部材間には、上記Oリング205aを含めて、前記Oリング5a~5d、105a~105fと同質弾性材製のOリング(図示せず)が装填されている。
【0072】
すなわち、固定密封環207は、メカニカルシール構成部材とは独立した金属材製の円環状体であって、回転軸201に固定した保持リング271とこれに取り付けた密封端面形成リング272とからなる。固定密封環207と回転軸201との対向周面間には弾性シールリング212bが装填されている。可動密封環208は、金属材(例えば、固定密封環207と同質の金属材)製の円環状体であって、シールケース202の第4ケース部分224に弾性シールリング212cを介して軸線方向移動可能に保持されている。固定密封環207の密封端面形成リング272と可動密封環208との対向端面は、軸線方向に直交する平滑環状平面である固定密封端面207a及び可動密封端面208aに形成されている。各密封端面207a,208aには、前記密封端面7a,8と同様に酸化クロム等のセラミックス層(図示せず)が形成されている。なお、弾性シールリング212a~212cは前記弾性シールリング12a~12dと同一構成のものであって、メカニカルシール構成部材間をシールするOリング(Oリング205a等)より耐熱性に優れるものである。
【0073】
可動密封環移動手段209は、シールケース202の第4ケース部分224と可動密封環208との間に装填されたスプリングで構成されており、可動密封環208を、図8(b)に示す如く、スプリング209の附勢力により、可動密封端面208aが固定密封端面207aに接触するシール位置へと移動させる。
【0074】
可動密封環保持手段210は、図8(a)に示す如く、可動密封環208とシールケース202とを連結する連結体で構成されており、可動密封環8をスプリング209の附勢力に抗して可動密封端面208aが固定密封端面207aから離間する非シール位置に保持する。この例では、連結体210が、その少なくとも一部分を加熱破損予知温度(メカニカルシール構成部材間をシールするOリング(Oリング205a等)の耐熱温度の近傍温度であって当該耐熱温度以下の温度)で溶融する低融点部材211で構成された杆状体又は棒状体であり、両端部をシールケース202の第2ケース部分222の適所と可動密封環208の適所とに係合、鋲止め、溶着等により連結固着することによって、可動密封環208をシールケース202に連結するものである。すなわち、可動密封環208は、連結体210により、スプリング209の附勢力に抗して非シール位置に保持される状態でシールケース202に連結されている。
【0075】
したがって、第5軸封装置にあっては、回転機器側のトラブルにより被密封流体がOリング205aの耐熱温度以上の異常高温となる状況下及び/又は冷却手段のトラブルによりシールケース202等のメカニカルシール構成部材が当該異常高温となる状況下において、被密封流体、シールケース202又は可動密封環208が加熱破損予知温度に達すると、連結体210における低融点部材11で構成された部分が溶融して、連結体210による可動密封環208の非シール位置への保持機能が消失して(可動密封環208とシールケ202との連結が解除されて)、可動密封環208がスプリング9により非シール位置からシール位置へと強制移動され、第1~第4軸封装置と同様に、両密封端面207a,208aが接触することによりメカニカルシール側機内領域A1と回転機器側機内領域A2とが区画シールされる。連結体210は、溶融することによってシールケース202と可動密封環208との連結を解除させる(可動密封環208の非シール位置への保持機能を消失させる)ものであればよく、少なくとも一部分を低融点部材211で構成したものであればよい。なお、非常時用シールmを含む第5軸封装置の構成、機能については、上記した点を除いて、第1~第4軸封装置と同一であるから、その詳細は省略することとする。
【0076】
また、本発明は、第1~第5軸封装置のように1個の端面接触形のメカニカルシールMで構成される軸封装置に限定されるものではなく、1個の非接触形のメカニカルシールで構成された軸封装置やダブルシール、タンデムシール等、複数個のメカニカルシールを軸線方向に縦列させてなる軸封装置にも、第1~第5軸封装置と同様に適用することができ、同一の作用効果を奏しうる。軸線方向に縦列する複数個のメカニカルシールで構成される軸封装置にあっては、これらのメカニカルシールのうち最機内領域側に位置するメカニカルシールの機内領域側に非常時用シールmを配設しておくのである。
【符号の説明】
【0077】
1 回転軸
2 シールケース
3 ケース側密封環
4 軸側密封環
5a Oリング
5c Oリング
5d Oリング
7 固定密封環
7a 固定密封端面
8 可動密封環
8a 可動密封端面
9 可動密封環移動手段
9a 背圧室
9b 連通路
9c 連通路
10 可動密封環保持手段(スプリング)
11 低融点部材(栓体)
12a 弾性シールリング
12b 弾性シールリング
12c 弾性シールリング
12d 弾性シールリング
91 高圧ガスの貯留タンク(高圧流体の供給源)
92 連通路
92a シールケースに形成された連通路部分
101 回転軸
102 シールケース
103 ケース側密封環(遊動環)
104 軸側密封環(回転環)
105a Oリング
105b Oリング
105c Oリング
105d Oリング
105e Oリング
105f Oリング
107 固定環
107a 固定密封端面
201 回転軸
202 シールケース
205a Oリング
207 固定密封環
207a 固定密封端面
208 可動密封環
208a 可動密封端面
209 可動密封環移動手段(スプリング)
210 可動密封環保持手段(連結体)
211 低融点部材
212a 弾性シールリング
212b 弾性シールリング
212c 弾性シールリング
A 機内領域
A2 回転機器側機内領域(高圧流体の供給源)
F 被密封流体(高圧流体)
M メカニカルシール
m 非常時用シール
G 高圧ガス(高圧流体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8