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特許7165102ねじの締付不良検出システム及びねじの締付不良検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ねじの締付不良検出システム及びねじの締付不良検出方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
B23P19/06 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019094075
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020189343
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓太
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-043970(JP,A)
【文献】特開平10-115028(JP,A)
【文献】米国特許第04219922(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00-21/00
B25B 23/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏ボードにより形成された面材木質系材料により形成された下地材に固定するねじを回転させることで当該ねじの締め付けを行う電動式のドライバ部と、
そのドライバ部による前記ねじの締め付けを制御するドライバ制御手段と、
前記ドライバ部による前記ねじの締付トルクを検出するトルク検出手段と、
そのトルク検出手段により検出される締付トルクに基づいて、前記ねじの締付不良が生じているか否かを検出する締付不良検出手段と、
を備えるねじ締め不良検出システムであって、
前記ドライバ制御手段は、
前記ドライバ部により前記ねじを所定の第1回転速度で回転させることで、前記ねじを所定の締付位置に達するまで締め付けるねじ締め処理と、
前記ねじ締め処理の後、前記ドライバ部により前記ねじを前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で所定量だけさらに回転させて締め付けを行う後締め処理とを行うものであり、
前記締付不良検出手段は、前記後締め処理の実施時に前記トルク検出手段により検出される締付トルクに基づき、前記ねじの締付不良が生じているか否かを検出し、
前記後締め処理では、前記ねじを1回転以下である所定角度だけ回転させることを特徴とするねじの締付不良検出システム。
【請求項2】
石膏ボードにより形成された面材木質系材料により形成された下地材に固定するねじを回転させることで当該ねじの締め付けを行う電動式のドライバ部と、そのドライバ部による前記ねじの締付トルクを検出するトルク検出手段とを備えるねじ締め装置を用いて前記ねじの締付不良が生じているか否かを検出するねじの締付不良検出方法であって、
前記ドライバ部により前記ねじを所定の第1回転速度で回転させることで、前記ねじを所定の締付位置に達するまで締め付けるねじ締め工程と、
前記ねじ締め工程の後、前記ドライバ部により前記ねじを前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で所定量だけさらに回転させて締め付けを行う後締め工程と、
前記後締め工程の実施時に前記トルク検出手段により検出される締付トルクに基づき、前記ねじの締付不良が生じているか否かを検出する締付不良検出工程と、を備え
前記後締め工程では、前記ねじを1回転以下である所定角度だけ回転させることを特徴とするねじの締付不良検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじの締付不良検出システム及びねじの締付不良検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物を製造するにあたっては、予め製造工場において天井パネルや壁パネルなどを製造し、その製造した天井パネルや壁パネルなどを施工現場へ持ち込んで組み付けるといったことが行われている。例えば、製造工場において天井パネルを製造する場合、天井梁に木製の野縁を取り付け、その野縁に石膏ボードからなる天井面材をねじ(ビス)により固定するといった作業が行われる。この場合、野縁に天井面材をねじ固定するにあたっては、自動でねじ締めを行うねじ締め装置が用いられることが多い。例えば、特許文献1には、かかるねじ締め装置が開示されている。
【0003】
ねじ締め装置によりねじ締めを行う場合、天井梁に対する野縁の取付位置のずれ等に起因して、ねじの締付不良が生じることが想定される。このため、ねじ締め装置によりねじ締めを行う場合には、締付不良が生じていないか否かを都度確認する必要がある。特許文献1には、こうした締付不良を検出する検出機能が、ねじ締め装置に設けられた構成が開示されている。特許文献1のねじ締め装置には、ねじ締め時の締付トルクを検出するトルク検出部が設けられ、そのトルク検出部により検出される締付トルクに基づいて、締付不良が生じているか否かを検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-20353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、木質材料や石膏ボードはねじ締め時の負荷が比較的低い材料であるため、木製の野縁に石膏ボードからなる天井面材をねじ締め固定する際には、小さいトルクでかつ高速回転でねじ締めが行われると考えられる。このため、ねじの締付不良が生じた場合と、生じていない場合とで、それほどトルクの値に差が出ないことが想定される。したがって、このような場合に、上記特許文献1の技術を用いてねじの締付不良を検出することは難しいと考えられる。
【0006】
そこで、野縁に天井面材をねじ締め固定する際において、低速回転でねじ締めを行うようにすることが考えられる。この場合、ねじ締め時に発生するトルクが大きくなるため、締付不良が生じた場合と、生じていない場合とでトルクの値に差が出ると考えられ、そのため、締付不良が生じた場合、その不良を検出することができると考えられる。ただ、低速回転でねじ締めを行う場合、ねじ締めに要する時間が長くなってしまうため、ねじ締め工数の増大という問題が発生することになってしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ねじ締め工数が増大するのを抑制しながら、ねじの締付不良を好適に検出することができるねじの締付不良検出システム及びねじの締付不良検出方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明のねじの締付不良検出システムは、第1部材を第2部材に固定するねじを回転させることで当該ねじの締め付けを行う電動式のドライバ部と、そのドライバ部による前記ねじの締め付けを制御するドライバ制御手段と、前記ドライバ部による前記ねじの締付トルクを検出するトルク検出手段と、そのトルク検出手段により検出される締付トルクに基づいて、前記ねじの締付不良が生じているか否かを検出する締付不良検出手段と、を備えるねじ締め不良検出システムであって、前記ドライバ制御手段は、前記ドライバ部により前記ねじを所定の第1回転速度で回転させることで、前記ねじを所定の締付位置に達するまで締め付けるねじ締め処理と、前記ねじ締め処理の後、前記ドライバ部により前記ねじを前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で所定量だけさらに回転させて締め付けを行う後締め処理とを行うものであり、前記締付不良検出手段は、前記後締め処理の実施時に前記トルク検出手段により検出される締付トルクに基づき、前記ねじの締付不良が生じているか否かを検出することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1部材を第2部材に固定するねじがドライバ部により回転されることでねじの締め付けが行われる。このねじの締め付けに際しては、ねじが所定の第1回転速度(換言すると高い回転速度)で回転されることで、当該ねじが所定の締付位置に達するまで締め付けられる(ねじ締め処理)。ねじ締め処理が行われた後は、ねじが第1回転速度よりも低い第2回転速度で所定量だけさらに回転される後締め処理が行われる。この後締め処理の際には、ねじの締付トルクが検出され、その検出される締付トルクに基づき、ねじの締付不良が生じているか否かが検出される。この場合、ねじが低速で回転している際の締付トルクに基づいて、締付不良の検出が行われる。ねじが低速回転している際には、ねじ締め時に発生する締付トルクが大きくなるため、この場合、締付不良が生じた場合と生じていない場合とで締付トルクに差が生じることになる。そのため、締付トルクに基づいて、ねじの締付不良を好適に検出することが可能となる。
【0010】
また、ねじ締め処理においては、高速回転(第1回転速度)でねじ締めが行われ、そのねじ締め処理の後の後締め処理においては、低速回転(第2回転速度)でねじ締めが行われるため、ねじ締めの工程の大部分を高速回転で行うことができる。このため、ねじ締め工数が増大するのを抑制しながら、ねじの締付不良を好適に検出することが可能となる。
【0011】
第2の発明のねじの締付不良検出システムは、第1の発明において、前記後締め処理では、前記ねじを1回転以下である所定角度だけ回転させること特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ねじ締め処理によりねじが所定の締付位置まで締め付けられた後、後締め処理において、ねじが上記締付位置からさらに1回転以下(つまり360°以下)である所定角度だけ回転される。この場合、後締め処理によりねじを締め付け過ぎてしまう等、ねじの締付状態に悪影響を及ぼしてしまうのを抑制することができる。
【0013】
第3の発明のねじの締付不良検出システムは、第1又は第2の発明において、前記第1部材は石膏ボードにより形成された面材であり、前記第2部材は木質系材料により形成され、前記面材の裏面側に設けられる下地材であることを特徴とする。
【0014】
ところで、建物を構成する天井パネルや壁パネル等のパネルはあらかじめ製造工場において製造されることが多い。この種のパネルは、面材(例えば天井面材)と、その裏面側に設けられる下地材(例えば野縁)とを備えて構成される。かかるパネルでは、面材が石膏ボードにより形成され、下地材が木質系材料により形成されることがある。石膏ボードや木質系材料はねじ締め時の負荷が小さい材料であるため、石膏ボードからなる面材を木質系材料からなる下地材にねじ締め固定を行う際は、小さいトルクでかつ高速回転でねじ締めが行われると考えられる。
【0015】
しかしながら、この場合、ねじの締付不良が生じている場合と、生じていない場合とで、それほど締付トルクの値に差が出ないことが想定される。そのため、ねじ締め時の締付トルクに基づいて、ねじの締付不良を検出するのが困難であると考えられる。この点、本発明では、石膏ボードからなる面材を木質系材料からなる下地材にねじ締め固定を行う場合に、上記第1の発明を適用している。すなわち、本発明では、ねじ締め処理の後の後締め処理において低速回転でねじの締め付けを行うようにし、その低速回転時における締付トルクに基づき締付不良を検出するようにしている。このため、かかる場合にもねじの締付不良を好適に検出することができる。
【0016】
第4の発明のねじの締付不良検出方法は、第1部材を第2部材に固定するねじを回転させることで当該ねじの締め付けを行う電動式のドライバ部と、そのドライバ部による前記ねじの締付トルクを検出するトルク検出手段とを備えるねじ締め装置を用いて前記ねじの締付不良が生じているか否かを検出するねじの締付不良検出方法であって、前記ドライバ部により前記ねじを所定の第1回転速度で回転させることで、前記ねじを所定の締付位置に達するまで締め付けるねじ締め工程と、前記ねじ締め工程の後、前記ドライバ部により前記ねじを前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で所定量だけさらに回転させて締め付けを行う後締め工程と、前記後締め工程の実施時に前記トルク検出手段により検出される締付トルクに基づき、前記ねじの締付不良が生じているか否かを検出する締付不良検出工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、上記第1の発明と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)が天井パネルの構成を示す斜視図であり、(b)が天井パネルを構成する天井フレームの構成を示す斜視図であり、(c)が天井パネルの構成を示す縦断面図である。
図2】(a)がねじ締め装置を示す平面図であり、(b)がねじ締め装置を示す正面図である。
図3】ねじの締付不良が生じている状態を示す縦断面図。
図4】ねじ締付制御処理の流れを示すフローチャート。
図5】ドライバによりねじの締め付けが行われる際の流れを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物を構成する天井パネルが製造工場において製造されるものとなっており、その天井パネルの製造に際し行われるねじ締めの工程がねじ締め装置を用いて行われるようになっている。そこで、以下では、まず天井パネルの構成について説明を行い、その後、ねじ締め装置についての説明を行うこととする。
【0020】
本実施形態では、建物として、直方体状をなす複数の建物ユニットが互いに組み合わされてなるユニット式建物を想定している。図示は省略するが、建物ユニットは、矩形形状(長方形状)をなす天井パネル及び床パネルと、それら各パネルを連結する複数の柱とを備えて構成されている。建物ユニットは、製造工場において製造されるようになっており、その製造に際しては、まず天井パネル及び床パネルがそれぞれ製造され、その後製造された各パネルが柱により連結されることで建物ユニットが製造されるようになっている。そして、本実施形態では、その建物ユニットの天井パネルの製造に際し行われるねじ締めの工程がねじ締め装置により行われるものとなっており、以下においてはその天井パネルの構成について図1に基づき説明する。なお、図1は(a)が天井パネルの構成を示す斜視図であり、(b)が天井パネルを構成する天井フレームの構成を示す斜視図であり、(c)が天井パネルの構成を示す縦断面図である。また、図1(a)及び(c)では、天井パネルを、ねじ締め工程が行われる際の設置向きで示している。すなわち、天井パネルについてねじ締めが行われる際には、天井パネルが実際の設置向きとは上下逆向きの状態でねじ締めが行われる。このため、図1(a)及び(c)では、天井パネルが上下に反転された状態で示されている。また、同様に、図1(b)では、天井フレームが上下に反転された状態で示されている。
【0021】
図1(a)に示すように、天井パネル11は、天井面材12と、その天井面材12を支持する天井フレーム13とを備える。天井面材12は、石膏ボードにより形成されている。天井フレーム13は、図1(b)に示すように、その四辺に設けられた複数の天井大梁15と、その四隅に設けられた複数の天井仕口16とを備える。天井大梁15は、例えば溝形鋼よりなり、天井仕口16は、例えば角形鋼よりなる。各天井大梁15はそれぞれ、その両端部にて天井仕口16に連結されており、それにより、各天井大梁15と各天井仕口16とにより天井フレーム13の外枠が構成されている。
【0022】
天井パネル11には、対向する長辺側の各天井大梁15の間に複数の天井小梁17が所定の間隔で架け渡されている。これらの天井小梁17は、例えばリップ溝形鋼よりなる。図1(c)に示すように、各天井小梁17の上面(実際の設置状態では下面)にはそれぞれ野縁18が取り付けられている。野縁18は木製の長尺材であり、例えばパーティクルボードにより形成されている。野縁18は、天井小梁17の長手方向に延びる向きで当該天井小梁17に取り付けられている。なお、野縁18は、例えば釘により天井小梁17に取り付けられている。
【0023】
各野縁18の上面(実際の設置状態では下面)には天井面材12が固定されている。天井面材12は横並びに複数配置されており、それら各天井面材12がそれぞれねじ19(ビス)により野縁18に固定されている。この場合、ねじ19は野縁18の長手方向において複数箇所に配置されている。なお、この場合、天井面材12が第1部材及び面材に相当する。また、野縁18が第2部材及び下地材に相当する。
【0024】
ここで、本実施形態では、天井面材12を野縁18にねじ19により固定するにあたり、ねじ締め装置20を用いることとしている。そこで以下では、そのねじ締め装置20について図2に基づいて説明する。なお、図2は、(a)がねじ締め装置20を示す平面図であり、(b)がねじ締め装置20を示す正面図である。
【0025】
図2(a)及び(b)に示すように、製造工場における天井パネルの製造エリアには、天井パネル11が載置されるテーブル21が設けられている。このテーブル21上には、天井パネル11が上下に反転された状態で載置される。また、このテーブル21上に天井パネル11が載置される際には、天井面材12が野縁18に仮固定された状態とされる。
【0026】
天井パネルの製造エリアには、ねじ締め装置20が設けられている。ねじ締め装置20は、テーブル21上を跨ぐように設けられた門型のベース部22と、そのベース部22に設けられた複数の電動式のドライバ23とを有する。ベース部22は、テーブル21に沿って、換言するとテーブル21上に載置される天井パネル11の長手方向に沿ってスライド移動が可能とされている。ベース部22には制御装置30が接続されており、その制御装置30の指令に基づきベース部22は所定の位置へスライド移動されるようになっている。
【0027】
ドライバ23は、テーブル21上に載置される天井パネル11に対してねじ19の締め付けを行うものである。ドライバ23は、ベース部22において左右方向に所定の間隔で複数設けられ、テーブル21上の天井パネル11に対して上方に配置されている。これらのドライバ23は、天井パネル11において各ねじ19を締め付ける締付箇所に対応させて配置されている。すなわち、天井パネル11には、野縁18の長手方向に所定の間隔で複数の締付箇所が設定されているが、それら各締付箇所に対応させて各ドライバ23がそれぞれ配置されている。
【0028】
各ドライバ23は、ベース部22に支持部25を介して上下移動可能に支持されている。支持部25は、上下に延びており、その上端側がベース部22に取り付けられ、その下端側にドライバ23が取り付けられている。支持部25は、ベース部22に対して上下方向にスライド可能に取り付けられ、そのスライドによりドライバ23が上下移動可能とされている。なお、支持部25を駆動させる駆動部(モータ等)については図示を省略するが、その駆動部は制御装置30の指令に基づいて支持部25を上下移動させる。
【0029】
ドライバ23によりねじ19の締め付けを行う際には、ドライバ23を天井パネル11に向けて下降させながら締め付けを行う。ベース部22には、ドライバ23によりねじ19が所定の締付位置まで締め付けられたことを検出する締付検出センサ32が設けられている。締付検出センサ32は制御装置30に接続され、その検出結果を制御装置30に逐次出力する。
【0030】
各ドライバ23は、ねじ19を回転させることでねじ19の締め付けを行う回転軸23aを有している。各ドライバ23は制御装置30と接続され、その制御装置30の指令に基づきねじ19の締め付けを行う。また、各ドライバ23は、ねじ19(換言すると回転軸23a)の回転速度を調整する機能と、ねじ19(換言すると回転軸23a)の回転角度を調整する機能とをそれぞれ有している。ねじ19の回転速度及び回転角度は制御装置30により制御される。
【0031】
各ドライバ23は、ねじ19の締め付けを行うねじ締付時における締付トルクを検出するトルク検出機能(トルク検出手段に相当)を有している。各ドライバ23により検出される締付トルクは制御装置30に逐次出力される。そして、制御装置30は、ドライバ23より出力される締付トルクに基づいて、ねじ19の締付不良が生じているか否かを検出(判定)する締付不良検出処理を行う。
【0032】
ここで、この締付不良検出処理について図3を参照しながら説明する。図3は、ねじ19の締付不良が生じている状態を示す縦断面図である。図3の例では、各ねじ19のうち、ねじ19aは正常に締め付けられているのに対し、ねじ19bは先端側が野縁18から外れて締付不良が生じている。かかる締付不良が生じる要因としては、天井小梁17に対する野縁18の取付位置のずれや、天井小梁17の撓み等が挙げられる。
【0033】
ねじ19の締付不良が生じている場合には、ねじ19の締め付け時にいわゆる空回りが生じる。このため、締付不良が生じている場合には、ねじ19の締付時における締付トルクが、ねじ19が正常に締め付けられている場合と比べて小さくなると考えられる。そこで、ねじ締め不良検出処理では、ドライバ23により検出されるねじ19の締付トルクに基づいて、ねじ19の締付不良が生じているか否かを検出(判定)するようにしている。具体的には、締付不良検出処理では、ドライバ23により検出される締付トルクが予め定められた規定トルク以上である場合には締め付け状態が正常であると検出する。その一方で、検出される締付トルクが規定トルクを下回った場合には締め付け状態が異常であると検出する。つまり、この場合、締付不良が生じていることを検出する。
【0034】
図2の説明に戻り、制御装置30には、ねじ19の締付不良を検出した場合にその旨を報知する報知部33が接続されている。報知部33はスピーカ等の音声出力機器からなり、制御装置30からの指令に基づきアラーム音を出力する。
【0035】
次に、ねじ締め装置20により行われるねじ締め処理について説明する。なお、ねじ締め処理は、制御装置30により実行されるものとなっている。
【0036】
ねじ締め装置20によりねじ19の締め付けを行う際には、ベース部22を移動させて各ドライバ23を天井パネル11におけるねじ19の締付箇所の真上に位置させる。そして、その後各ドライバ23を下降させ、それら各ドライバ23によりねじ19の締め付けを行う。ねじ19の締め付けが終了した後は、各ドライバ23を上昇させ、その後ベース部22を移動させて次の締付箇所へ各ドライバ23を配置する。そして、その締付箇所において各ドライバ23によりねじ19の締め付けを行う。このように、ねじ締め処理では、ベース部22を移動させながら、天井パネル11の各締付箇所に順次ドライバ23によりねじ19の締め付けを行っていく。
【0037】
続いて、ドライバ23によりねじ19の締め付けを行う際の処理の流れについて説明する。つまり、ここでは、ドライバ23が天井パネル11におけるねじ19の締付箇所(所定の締付箇所)の真上に配置された後、その所定の締付箇所に対してドライバ23によりねじ19の締め付けを行う際の処理(ねじ締付制御処理)の流れについて説明する。本処理は、制御装置30により実行され、ドライバ23が上記所定の締付箇所の真上に配置されたことに基づき開始される。また、以下では、図4及び図5に基づいて、ねじ締付制御処理について説明する。なお、図4は、ねじ締付制御処理の流れを示すフローチャートであり、図5は、ドライバ23によりねじ19の締め付けが行われる際の流れを示す縦断面図である。
【0038】
図4に示すように、まずステップS11では、ねじ締め処理を行う。このねじ締め処理では、ドライバ23によりねじ19を所定の第1回転速度で回転させることで、ねじ19を所定の締付位置に達するまで締め付ける。ここで、第1回転速度は、比較的高い回転速度に設定されている。したがって、ねじ締め処理は、ねじ19を高速回転させることで締め付けを行う処理となっている。
【0039】
ねじ締め処理では、ねじ19を、図5(a)に示す位置から図5(b)に示す所定の締付位置に達するまで締め付けを行う。ねじ19が所定の締付位置まで締め付けられると、ねじ19の頭部19aの表面(基端面)が天井面材12の表面(上面)よりも低い(深い)位置に位置する。本実施形態では、かかる締め付け状態において、天井面材12の表面からねじ頭部19aの表面までの距離Hが1mmとされる。なお、図5(b)では、当該距離Hが生じていることを分かり易くするため、ねじ19を天井面材12に対して実際よりも深くまで締め込んだ状態を示している。また、この点は、後述する図5(c)においても同様である。
【0040】
具体的には、ステップS11にてねじ締め処理が開始された後、続くステップS12において、締付検出センサ32からの検出結果に基づき、ねじ19が所定の締付位置まで締め付けられたか否かを判定する。この判定は、ねじ19が所定の締付位置(図5(b)参照)に達するまで繰り返し行われる。そして、ねじ19が所定の締付位置まで締め付けられるとステップS13に進む。このようにして、ステップS11のねじ締め処理は、ねじ19が所定の締付位置に達するまで連続して行われるようになっている。
【0041】
ステップS13では、後締め処理を行う。この後締め処理では、ドライバ23によりねじ19を第1回転速度よりも低い第2回転速度で所定量だけさらに回転させて締め付けを行う。したがって、後締め処理は、ねじ19を低速回転させることで締め付けを行う処理となっている。後締め処理では、ねじ19を所定の締付位置からさらに90°回転させることで締め付けを行う。この後締め処理によりねじ19は図5(b)に示す位置から図5(c)に示す位置へと変位する。この場合、後締め処理にてねじ19を90°回転させているだけであるため、後締め処理の前後でねじ19の締付位置にほとんど変化はない。このため、後締め処理の前後で、天井面材12の表面からねじ19の頭部19aの表面までの距離Hはほぼ同じとなっている。
【0042】
後締め処理の実施時においてドライバ23により検出される締付トルクは、ドライバ23から制御装置30に出力される。そこで、後締め処理(ステップS13)の後のステップS14では、ドライバ23から出力される締付トルクを取得(入力)する処理を行う。この処理により取得される締付トルクは、ねじ19を低速回転(第2回転速度)により締め付けた際の締付トルクであるため、そのトルク値が比較的大きくなっている。
【0043】
続くステップS15~S17では、上記ステップS14で取得したねじ19の締付トルクに基づいて、当該ねじ19について締付不良が生じているか否かを検出(判定)する締付不良検出処理を行う(締付不良検出手段に相当)。この処理ではまずステップS15において、上記取得した締付トルクが規定トルクに達しているか否かを判定する。ここで、規定トルクは締付状態が正常か異常かを判定するための指標値となっている。締付トルクがこの規定トルクに達している場合にはステップS16に進み、ねじ19の締付状態が正常であると判定する。その後、本処理を終了する。一方、締付トルクが規定トルクに達していない場合にはステップS17に進み、ねじ19の締付状態が不良(異常)であると判定する。つまり、この場合、ねじ19の締付不良が生じていると判定する。
【0044】
締付不良が生じていると判定された場合には、ステップS18に進み、アラーム処理を行う。この処理では、報知部33によりアラーム音を出力することで、締付不良が生じている旨を作業者に報知する。その後、本処理を終了する。なお、アラーム処理では、いずれのねじ19で締付不良が生じているかを報知部33によりアナウンスして報知するようにしてもよい。
【0045】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0046】
天井面材12を野縁18に固定するねじ19がドライバ23により回転されることでねじ19の締め付けが行われる。このねじ19の締め付けに際しては、ねじ19が所定の第1回転速度(換言すると高い回転速度)で回転されることで、当該ねじ19が所定の締付位置に達するまで締め付けられる(ねじ締め処理)。ねじ締め処理が行われた後は、ねじ19が第1回転速度よりも低い第2回転速度で所定量だけさらに回転される後締め処理が行われる。この後締め処理の際には、ねじ19の締付トルクが検出され、その検出される締付トルクに基づき、ねじ19の締付不良が生じているか否かが検出される。この場合、ねじ19が低速で回転している際の締付トルクに基づいて、締付不良の検出が行われる。ねじ19が低速回転している際には、ねじ締め時に発生する締付トルクが大きくなるため、この場合、締付不良が生じた場合と生じていない場合とで締付トルクに差が生じることになる。そのため、締付トルクに基づいて、ねじ19の締付不良を好適に検出することが可能となる。
【0047】
また、ねじ締め処理においては、高速回転(第1回転速度)でねじ締めが行われ、そのねじ締め処理の後の後締め処理においては、低速回転(第2回転速度)でねじ締めが行われるため、ねじ締めの工程の大部分を高速回転で行うことができる。このため、ねじ締め工数が増大するのを抑制しながら、ねじ19の締付不良を好適に検出することが可能となる。
【0048】
ねじ締め処理によりねじ19が所定の締付位置まで締め付けられた後、後締め処理において、ねじ19が上記締付位置からさらに1回転以下(つまり360°以下)である所定角度だけ回転されるようにした。この場合、後締め処理によりねじ19を所定の締付位置よりも締め付け過ぎてしまう等、ねじ19の締付状態に悪影響を及ぼしてしまうのを抑制することができる。
【0049】
具体的には、後締め処理において、ねじ19が上記締付位置からさらに90°だけ回転されるようにした。この場合、後締め処理によりねじ19の締付状態に悪影響を及ぼしてしまうのをより一層抑制することができる。
【0050】
また、後締め処理におけるねじ19の回転角度を45°より小さくすると、後締め処理時の締付トルクを上手く検出できなくなるおそれがある。このため、この点を鑑みると、後締め処理におけるねじ19の回転角度は45°以上とするのが望ましい。
【0051】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、後締め工程の際、ねじ19を所定の締付位置からさらに90°だけ回転させるようにしたが、この場合の回転角度は必ずしも90°とする必要はない。例えば、回転角度を180°や270°、360°等にしてもよい。これらの場合も、ねじ19の回転角度は1回転以下であるため、後締め工程により、ねじ19を所定の締付位置よりも締め込み過ぎてしまう等の不都合が生じるのを抑制することができる。また、かかる不都合を抑制できるのあれば、回転角度は1回転(つまり360°)より大きい角度であってもよい。
【0053】
・上記実施形態では、天井パネル11に対してねじ締めを行う際にねじ締め装置20を用いたが、壁パネルや床パネル等、その他のパネルにねじ締めを行う際にねじ締め装置20を用いてもよい。例えば、床パネルにおいて、パーティクルボードからなる床面材を木製角材からなる根太にねじ固定する際にねじ締め装置20を用いることが考えられる。その場合にも、ねじ締め装置20を用いてねじの締付不良を検出することが可能となる。
【0054】
また、ねじ締め装置20をパネル以外の建材に対するねじ締めに用いてもよい。例えば、ドア等の建具を製造する際のねじ締めに用いることが考えられる。また、ねじ締め装置20を、電気製品等、建材以外の製品に対するねじ締めに用いてもよい。これらの場合にも、ねじ締め装置20を用いてねじの締付不良を検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
11…天井パネル、12…第1部材及び面材としての天井面材、18…第2部材及び下地材としての野縁、19…ねじ、20…ねじ締め装置、23…ドライバ、30…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5