(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】作業機械の管理システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20221026BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20221026BHJP
F15B 20/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/22 R
F15B20/00 D
(21)【出願番号】P 2019160201
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】倉迫 彬
(72)【発明者】
【氏名】秋田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】本木 豪一
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-292238(JP,A)
【文献】特開2017-191064(JP,A)
【文献】特開2018-178747(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/22
F15B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油により複数のアクチュエータを駆動する油圧システムと、前記作動油の密度、誘電率を含む複数のオイル性状を検出するオイルセンサとを搭載した作業機械と、
前記複数のオイル性状のそれぞれの異常判定値を記憶した記憶装置と、
前記オイルセンサによって検出した前記複数のオイル性状のそれぞれの値と、前記記憶装置に記憶した前記複数のオイル性状のそれぞれの異常判定値とを比較して前記作動油の異常を診断する制御装置とを備えた作業機械の管理システムにおいて、
前記記憶装置は、
前記作動油の油交換履歴情報と、前記作動油の密度と誘電率の少なくとも1つにより設定された、前記作動油が鉱物油、生分解性油、鉱物油と生分解性油の混合油のいずれであるかを判定するための油種判定値と、前記異常判定値として前記作動油の種類毎の異常判定値を記憶しておき、
前記制御装置は、
前記記憶装置に記憶された前記油交換履歴情報に油種判定がなされていない油交換情報があるかどうかを確認し、油種判定がなされていない油交換情報があるとき、前記オイルセンサによって検出した前記複数のオイル性状の少なくとも1つの値と前記記憶装置に記憶した前記油種判定値とに基づいて前記作動油の種類を判定し、前記作動油の種類毎の異常判定値のうち前記作動油の種類の判定結果に対応する作動油の異常判定値を用いて前記作動油の異常を判定することを特徴とする作業機械の管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械の管理システムにおいて、
前記記憶装置は、
前記油種判定値として、前記作動油の密度と誘電率のそれぞれにより設定された油種判定値を記憶し、
前記制御装置は、
前記オイルセンサによって検出した前記作動油の密度と誘電率と前記記憶装置に記憶したそれぞれの前記油種判定値を用いて、前記作動油の種類を判定することを特徴とする作業機械の管理システム。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械の管理システムにおいて、
前記オイルセンサは前記作動油の温度を更に検出し、
前記制御装置は、
前記オイルセンサによって検出した前記作動油の密度と誘電率を前記作動油の温度に影響されない値に補正し、この補正した前記作動油の密度と誘電率を用いて、前記作動油の種類を判定することを特徴とする作業機械の管理システム。
【請求項4】
請求項2記載の作業機械の管理システムにおいて、
前記記憶装置は、
前記作動油の密度と誘電率のそれぞれに対して、前記油種判定値として第1閾値及びこの第1閾値よりも大きい第2閾値を記憶し、
前記制御装置は、
前記オイルセンサによって検出した前記作動油の密度と誘電率がともに前記第1閾値以下であるとき、前記作動油は鉱物油であると判定し、
前記作動油の密度及び誘電率がともに前記第2閾値以上であるとき、前記作動油は生分解性油であると判定し、
前記作動油の密度及び誘電率がともに前記第1閾値と前記第2閾値との間の値であるとき、前記作動油は鉱物油と生分解性油の混合油であると判定することを特徴とする作業機械の管理システム。
【請求項5】
請求項4記載の作業機械の管理システムにおいて、
前記制御装置は、
前記作動油の密度及び誘電率がともに、前記第1閾値及び前記第2閾値の区分以外の組み合わせであるときは、原因調査が必要であると判定し、原因調査要求を出力することを特徴とする作業機械の管理システム。
【請求項6】
請求項1記載の作業機械の管理システムにおいて、
前記オイルセンサは前記作動油の温度を更に検出し、
前記記憶装置は、
前記作動油のオーバヒートの判定に用いる前記作動油の種類毎の温度閾値を記憶し、
前記制御装置は、
前記作動油の種類毎の温度閾値のうち前記作動油の種類の判定結果に対応する作動油の温度閾値を前記オイルセンサによって検出した前記作動油の温度と比較し、前記作動油がオーバヒート状態にあるかどうかを判定することを特徴とする作業機械の管理システム。
【請求項7】
請求項6記載の作業機械の管理システムにおいて、
前記作動油の種類毎の温度閾値は、鉱物油、生分解性油、混合油の順に低くなることを特徴とする作業機械の管理システム。
【請求項8】
請求項1記載の作業機械の管理システムにおいて、
前記油圧システムは複数のアクチュエータに圧油を供給する可変容量型の油圧ポンプを有し、
前記制御装置は、
前記作動油が鉱物油と生分解性油の混合油であると判定したとき、前記油圧ポンプの最大トルクの設定値を小さくする電気信号を出力し、前記油圧ポンプの出力を低減するように制御することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械の油圧回路に動力伝達媒体として用いられる作動油として、鉱物油に代えて環境に優しい生分解性作動油が使用されつつある。特許文献1は、そのような生分解性作動油を使用する建設機械(作業機械)において、「建設機械に使用される作動油の種類を鉱物油系作動油から生分解性作動油へ変更したときに、鉱物油系作動油を用いる場合のポンプ出力馬力に関する複数のパワーモードの中から必要なものを選択する機能とは別個のバイオ・オイルモード設定用スイッチを操作して、油圧ポンプの出力馬力を制限するように切換えることを特徴とする建設機械の油圧システム制御方法」を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧ショベル等の作業機械の油圧システムに用いられる作動油は、その初期充填油として、メーカ純正の鉱物油が用いられるのが一般的である。一方、作動油は作業機械の稼動に伴って劣化するため、例えば1~2年の間隔で交換が行われる。このとき、鉱物油に代えて生分解性作動油が使用されることがある。その場合、次のような課題がある。
【0005】
作動油を交換する場合、オイルタンクの作動油を抜き取って新油に入れ替えるが、新油の入れ替えに際して、油圧回路の配管やアクチュエータ(例えば油圧シリンダ)等に旧油が残ってしまう。そのため、アクチュエータを作動させて油圧回路内の残油を循環させるフラッシングと呼ばれる操作を行うことによって、可能な限り100%近くの旧油を新油に入れ替えるようにしている。
【0006】
しかし、フラッシングにかかるコストや工数から、フラッシングを怠る、或いはフラッシングの回数を減らすことがあり、鉱物油から生分解性油に入れ替える際は、十分に鉱物油を生分解性油に入れ替えることができず、鉱物油と生分解性油が混じり合った混合油の状態となる。一般に種類の異なる油が混ざると、混合油の性能は悪い性能に引っ張られる、或いは性能上好ましくない反応を引き起こすなどの理由で、作動油としての性能が低下し、この状態で作動油を使用し続けた場合は、作業機械の油圧部品が損傷するリスクが高まる。
【0007】
特許文献1は、作動油を鉱物油から生分解性油に変更したとき、バイオ・オイルモード設定用スイッチを操作して油圧ポンプの出力馬力を制限し、油温の上昇を抑えることはできるが、鉱物油と生分解性油が混合使用される場合の上述した課題を解決することはできない。
【0008】
本発明の目的は、油圧システムの作動油が交換され、作動油が鉱物油と生分解性油が混じり合った混合油となったときでも、作動油の性能低下による作業機械の油圧部品の破損を未然に防ぐことができる作業機械の管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明は、作動油により複数のアクチュエータを駆動する油圧システムと、前記作動油の密度、誘電率を含む複数のオイル性状を検出するオイルセンサとを搭載した作業機械と、前記複数のオイル性状のそれぞれの異常判定値を記憶した記憶装置と、前記オイルセンサによって検出した前記複数のオイル性状のそれぞれの値と、前記記憶装置に記憶した前記複数のオイル性状のそれぞれの異常判定値とを比較して前記作動油の異常を診断する制御装置とを備えた作業機械の管理システムにおいて、前記記憶装置は、前記作動油の油交換履歴情報と、前記作動油が鉱物油、生分解性油、鉱物油と生分解性油の混合油のいずれであるかを判定するための油種判定値と、前記異常判定値として前記作動油の種類毎の異常判定値を記憶しておき、前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記油交換履歴情報に油種判定がなされていない油交換情報があるかどうかを確認し、油種判定がなされていない油交換情報があるとき、前記オイルセンサによって検出した前記複数のオイル性状のそれぞれの値と前記記憶装置に記憶した前記油種判定値とに基づいて前記作動油の種類を判定し、かつ前記作動油の種類の判定結果に応じて前記作動油の種類毎の異常判定値のうちの対応する異常判定値を選択し、この異常判定値を用いて前記作動油の異常を判定するものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油圧システムの作動油が交換され、作動油が鉱物油と生分解性油が混じり合った混合油となったときでも、作動油の性能低下による作業機械の油圧部品の破損を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る作業機械(油圧ショベル)の管理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】作業機械である油圧ショベルの全体構成を示す図である。
【
図3】油圧ショベルに備えられる油圧システムを示す図である。
【
図4】作業機械用コントローラとメーカ用コンピュータの概略構成を示す図である。
【
図5】異常判定部、油種判定部及びオーバヒート判定部で用いる記憶装置に記憶された管理基準値と、油種判定部で用いる記憶装置に記憶された油交換履歴情報を示す図である。
【
図6】異常判定部の異常判定の概念を示す図である。
【
図7】作動油が鉱物油である場合と生分解性油である場合の物性値特性図であって、作動油の密度の温度特性(上側)と作動油の誘電率の温度特性(下側)を示す図である。
【
図8】油種判定部の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】記憶装置に記憶されている作動油の種類毎のオーバヒート判定値(温度閾値)の大小関係を示す図である。
【
図10】油種判定部における作動油の種類の判定結果によりなされる処理と閾値変更部の処理の一覧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0013】
以下では、本発明に係わる作業機械として油圧ショベルを例にとり説明するが、本発明は油圧ショベルに限らず、作動油を用いる油圧システムを搭載した作業機械であれば、ダンプトラック、ホイールローダ、ブルドーザ、フォークリフト、クレーンなどのその他の作業機械にも同様に適用可能である。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る作業機械(油圧ショベル)の管理システムの概略構成を示す図である。
【0015】
図1において、作業機械の管理システムは、油圧ショベル300(
図2参照)に搭載されたコントローラ(作業機械用コントローラ)110と、油圧ショベル300を製造したメーカの管理下にあるメーカ用コンピュータ(サーバ)112と、油圧ショベル300の管理者(ユーザ)が使用するコンピュータ(管理者用コンピュータ)114と、作業機械メーカ又はその営業所若しくは代理店等に所属し油圧ショベル300の故障修理・メンテナンスを行うサービス担当者(サービスマン)が使用するコンピュータ(サービス用コンピュータ)116とを備えている。
【0016】
図示はしないが、コントローラ110及びコンピュータ112,114,116は、各種プログラムを実行するための演算手段としての演算処理装置(例えば、CPU)と、当該プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶手段としての記憶装置(例えば、ROM、RAMおよびフラッシュメモリ等の半導体メモリや、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置(記憶部))と、演算処理装置及び記憶装置等へのデータ及び指示等の入出力制御を行うための入出力演算処理装置を備えている。また、コントローラ110及びコンピュータ112,114,116は、無線または有線でネットワーク(例えば、LAN、WAN、インターネット)に接続されており、相互にデータの送受信が可能に構成されている。さらに、コントローラ110及びコンピュータ112,114,116の操作者をはじめとする人への情報提供が必要な場合には演算処理装置の処理結果等を表示するための表示装置(例えば、液晶モニタ等)を備えても良いし、人からの情報入力が必要な場合には入力装置(例えば、テンキー、キーボード、タッチパネル等)を備えても良い。
【0017】
図2は、油圧ショベル300の全体構成を示す図である。
【0018】
図2において、作業機械としてよく知られている油圧ショベル300は、下部走行体301と、下部走行体301上に旋回可能に搭載された上部旋回体302と、上部旋回体302の前部に俯仰可能に取り付けられたフロント作業機303とを有している。
【0019】
下部走行体301は、左右の走行モータ(油圧モータ)310,311の回転により左右の履帯313,314を駆動することによって走行を行う。上部旋回体302は下部走行体301に対して、旋回装置316に備えられた旋回モータ(油圧モータ)317の回転によって旋回可能である。
【0020】
フロント作業機303は、ブーム306、アーム307、バケット308とから構成され、ブーム306,アーム307,バケット308は、それぞれ、ブームシリンダ(油圧シリンダ)321、アームシリンダ(油圧シリンダ)322、バケットシリンダ(油圧シリンダ)323の伸縮により上下方向に回動可能である。
【0021】
上部旋回体302は運転室を形成するキャビン318を備え、キャビン318内にオペレータが着座する運転席330やオペレータが操作する操作装置331などが配置されている。また、キャビン318内に前述した作業機械用コントローラ110が配置され、上部旋回体302の後部に、上述した複数のアクチュエータ(走行モータ310,311、旋回モータ317、ブームシリンダ321、アームシリンダ322、バケットシリンダ323)を駆動する油圧システムの駆動源であるエンジン320が搭載されている。油圧システムは動力伝達媒体である作動油を複数のアクチュエータに供給し、複数のアクチュエータを駆動する。
【0022】
図3は、油圧ショベル300に備えられる油圧システムを示す図である。
【0023】
図3において、符号500で示される油圧システムは、前述したエンジン320と、作動油タンク502、油圧ポンプ504、コントロールバルブ506、油圧シリンダ508、オイルクーラ510及び作動油フィルタ512とを備えている。油圧シリンダ508は
図2に示した複数のアクチュエータ(走行モータ310,311、旋回モータ317、ブームシリンダ321、アームシリンダ322、バケットシリンダ323)を代表するものであり、コントロールバルブ506も同様に複数のアクチュエータのそれぞれのコントロールバルブを代表するものである。
【0024】
油圧ポンプ504は可変容量型であり、油圧ポンプ504の傾転角(押しのけ容積、つまり容量)を制御し、油圧ポンプ504の吐出流量を制御するレギュレータ504aを備えている。また、レギュレータ504aは、油圧ポンプ504aの吐出圧の上昇に応じて油圧ポンプ504の傾転角を小さくすることで、油圧ポンプ504の吸収トルクがバネ(図示せず)によって設定された最大トルクを超えないように制御され、過負荷によるエンジン320のストールが防止される。
【0025】
作動油タンク502内の作動油は、エンジン320によって駆動される油圧ポンプ504によって汲み上げられ、コントロールバルブ506を経由して油圧アクチュエータ508(例えばブームシリンダ321)に供給される。コントロールバルブ506は、操作装置331(例えばブーム用の操作装置)の切換位置に応じて油圧アクチュエータ508に供給される圧油の流れ方向と流量を制御する。これにより油圧アクチュエータ508が駆動され、例えばブーム306が動作する。また、油圧アクチュエータ508から流出した作動油は、コントロールバルブ506を経由してオイルクーラ510に導かれて冷却された後、作動油フィルタ512を介して作動油タンク502に戻される。オイルクーラ510はエンジン320によって駆動される冷却ファン514が取り込む空気によって冷却される。
【0026】
また、油圧システム500の例えばコントロールバルブ506と油圧アクチュエータ508(例えばブームシリンダ321)の間の油路にオイルセンサ120が配置され、油路を通過する作動油の粘度、密度、誘電率などの複数のオイル性状と作動油の温度を検出する。
【0027】
本実施の形態において、オイルセンサ120は、作動油の粘度、密度、誘電率の3つの性状と作動油の温度を検出する場合について説明するが、オイルセンサ120は、複数のオイル性状として、密度、誘電率の2つのオイル性状を検出するようにシステムを構成してもよい。また、オイルセンサ120は更にオイルの色差を検出するようにシステムを構成してもよい。更に、オイルセンサ120は、温度、粘度、密度、誘電率、色差を複数のオイルセンサで適宜分担して検出するようにシステムを構成してもよいし、同じ性状を異なる複数の箇所で検出するようにシステムを構成してもよい。
【0028】
また、ここでは説明を簡略化するために作動油のオイル性状及び温度を検出するオイルセンサ120だけを説明したが、油圧ショベル300にはそれ以外に、例えばエンジンオイルのオイル性状及び温度を検出するオイルセンサを備えてもよい。
【0029】
図4は、作業機械用コントローラ110とメーカ用コンピュータ112の概略構成を示す図である。
【0030】
作業機械用コントローラ110は記憶装置103を備え、油圧ショベル300に搭載されたオイルセンサ120のセンサ信号は適宜処理されてオイル性状及び温度の物理量を示す情報(センサ情報102と称する)として作業機械用コントローラ110に入力され、記憶装置103に記憶される。このとき、
図4に示すように、或る時刻におけるオイルセンサ120による密度のセンサ情報102は、作業機械用コントローラ110で適宜処理され、センサ情報A1として作業機械用コントローラ110の記憶装置103に測定時刻と関連づけて記憶される。
図4中のセンサ情報A1,A2,A3,A4…は、オイルセンサ120が異なる時刻に測定した密度のセンサ情報を示しており、時間経過とともに末尾の数字が増加している。このようにオイルセンサ120による密度のセンサ情報A1,A2,A3,A4…が時系列データとして作業機械用コントローラ110に記憶される。同様に図中のセンサ情報B1,B2,B3,B4…はオイルセンサ120による誘電率のセンサ情報102を示す。説明は省略するが、オイルセンサ120で検出される粘度及び温度についても同様にセンサ情報C1,C2,C3,C4…,D1,D2,D3,D4…として記憶装置103に記憶される。以下これらのセンサ情報102は適宜センサ情報A,B,C,Dと添え字を省略して表記することがある。
【0031】
メーカ用コンピュータ(サーバ)112はコントローラ(制御装置)112aと記憶装置112bとを備えており、作業機械用コントローラ110の記憶装置103に記憶されたセンサ情報A,B,C,Dは、所定の周期でメーカ用コンピュータ112に送信され、コントローラ104aを介して記憶装置112bに記憶される。センサ情報A,B,C,Dは、コントローラ112a内の記憶装置210a(後述)に記憶されてもよい。
【0032】
また、メーカ用コンピュータ112のコントローラ104aは、演算途中の値が記憶される記憶装置(RAM)210aと、異常判定部211、原因特定部212、対処マニュアル送信部213、油種判定部214、オーバヒート判定部215、閾値変更部216の各処理を実行する演算装置(CPU)210bとを有している。
【0033】
メーカ用コンピュータ112の記憶装置112bには、作動油の複数のオイル性状のそれぞれの異常判定値(後述)が記憶され、異常判定部211(制御装置)は、オイルセンサ120によって検出した複数のオイル性状のそれぞれの値と、記憶装置112bに記憶した複数のオイル性状のそれぞれの異常判定値とを比較して作動油の異常を診断する。
【0034】
原因特定部212は、異常判定部211で作動油の異常が判定されたとき、異常と判定されたオイル性状の時間変化の傾向を示す変化量指標値を算出し、この変化量指標値を記憶装置112bに予め記憶された変化量判定値と比較して作動油の異常の原因を特定する。この原因特定部212の処理内容の詳細は、WO2019/021502A1に詳しい。
【0035】
対処マニュアル送信部213は、原因特定部212で特定された原因に応じた補修・整備の対処マニュアルを他の端末(例えば、作業機械用コントローラ110、管理者用コンピュータ114及びサービス用コンピュータ116の少なくとも1つ)に送信する処理を実行する。
【0036】
また、記憶装置112bには、作動油の油交換履歴情報と、作動油の密度と誘電率の少なくとも1つにより設定された、作動油が鉱物油、生分解性油、鉱物油と生分解性油の混合油のいずれであるかを判定するための油種判定値(後述)と、異常判定値として作動油の種類毎の異常判定値(後述)が記憶され、油種判定部214(制御装置)は、記憶装置112bに記憶された油交換履歴情報に油種判定がなされていない油交換情報があるかどうかを確認し、油種判定がなされていない油交換情報があるとき、オイルセンサ120によって検出した複数のオイル性状の少なくとも1つの値と記憶装置112bに記憶した油種判定値とに基づいて作動油の種類を判定し、異常判定部211(制御装置)は、作動油の種類毎の異常判定値のうち作動油の種類の判定結果に対応する異常判定値を用いて作動油の異常を判定する。
【0037】
好ましくは、記憶装置112bには、前述した油種判定値として、作動油の密度と誘電率のそれぞれにより設定された油種判定値(後述)が記憶され、油種判定部214(制御装置)は、オイルセンサ120によって検出した作動油の密度と誘電率と記憶装置112bに記憶したそれぞれの油種判定値を用いて、作動油の種類を判定する。
【0038】
また、油種判定部214(制御装置)は、オイルセンサ120によって検出した作動油の密度と誘電率をオイルセンサ120によって検出した作動油の温度に影響されない値に補正し、この補正した作動油の密度と誘電率を用いて作動油の種類を判定する。
【0039】
また、記憶装置112bには、油種判定値として、作動油の密度と誘電率のそれぞれに対する第1閾値及びこの第1閾値よりも大きい第2閾値が記憶され、油種判定部214(制御装置)は、オイルセンサ120によって検出した作動油の密度と誘電率がともに第1閾値以下であるとき、作動油は鉱物油であると判定し、作動油の密度及び誘電率がともに第2閾値以上であるとき、作動油は生分解性油であると判定し、作動油の密度及び誘電率がともに第1閾値と第2閾値との間の値であるとき、作動油は鉱物油と生分解性油の混合油であると判定する。
【0040】
また、油種判定部214(制御装置)は、作動油の密度及び誘電率が上述した第1閾値及び第2閾値の区分以外の組み合わせであるときは、原因調査が必要であると判定し、原因調査要求を出力する。
【0041】
更に、記憶装置112bには、作動油のオーバヒートの判定に用いる作動油の種類毎の温度閾値(後述)が記憶され、オーバヒート判定部215(制御装置)は、作動油の種類毎の温度閾値のうち作動油の種類の判定結果に対応する温度閾値をオイルセンサ120によって検出した作動油の温度と比較し、作動油がオーバヒート状態にあるかどうかを判定する。
【0042】
閾値変更部216(制御装置)は、作動油の種類の判定結果に応じて作動油の種類毎の異常判定値のうちの対応する異常判定値を選択し、異常判定部211(制御装置)は、その異常判定値を用いて作動油の異常を判定する。
【0043】
また、閾値変更部216(制御装置)は、作動油の種類毎の温度閾値のうち作動油の種類の判定結果に対応する温度閾値を選択し、オーバヒート判定部215(制御装置)は、その温度閾値を用いて作動油がオーバヒート状態にあるかどうかを判定する。
【0044】
図5は、上述した異常判定部211、油種判定部214及びオーバヒート判定部215で用いる記憶装置112bに記憶された管理基準値と、油種判定部214で用いる記憶装置112bに記憶された油交換履歴情報を示す図である。
【0045】
記憶装置112bには、管理基準値として以下の閾値が記憶されている。
【0046】
<異常判定値>
作動油が鉱物油の場合
密度:Aa1,Aa2 誘電率:Ba1,Ba2 粘度:Ca1,Ca1
作動油が生分解性油の場合
密度:Ab1,Ab2 誘電率:Bb1,Bb2 粘度:Cb1,Cb2
作動油が混合油の場合
密度:Ac1,Ac2 誘電率:Bc1,Bc2 粘度:Cc1.Cc2
<油種判定値>
密度:A1,A2
誘電率:B1,B2
<オーバヒート判定値(温度閾値)>
鉱物油:Ta
生分解性油:Tb
混合油:Tc
なお、これら管理基準値としての閾値は、油圧ショベル300の機械番号、機種、作動油の銘柄毎に管理され、保存されている。
【0047】
また、記憶装置112bには、油交換履歴情報として以下のような日付データが記憶されている。
【0048】
XX年XX月XX日、XX年XX月XX日、…
この油交換履歴情報は、油圧ショベル300の機械番号毎に管理され、記録されている。
【0049】
図4に示すように、メーカ用コンピュータ112のコントローラ104aには、モニタ112cや、オペレータからの情報入力を行う図示しない入力装置(例えば、テンキー、キーボード、タッチパネル等)が接続されており、管理基準値(異常判定値、油種判定値及びオーバヒート判定値)は、モニタ112cや入力装置をオペレータが操作することで、記憶装置112bに保存される。
【0050】
作業機械用コントローラ110にもモニタ110a(
図4参照)や図示しない入力装置が接続されており、油交換履歴は、モニタ110aや入力装置をオペレータが操作して油圧ショベル300内の作動油を交換したことを知らせるスイッチ信号をメーカ用コンピュータ112に送信し、このスイッチ信号をコントローラ104aが入力することにより、記憶装置112bに保存される。
【0051】
油交換履歴は、油圧ショベル300の管理者(ユーザ)或いは油圧ショベル300の故障修理・メンテナンスを行うサービス担当者(サービスマン)から油交換情報を入手し、メーカ用コンピュータ112のオペレータがモニタ112cや入力装置を操作して記憶装置112bに保存してもよい。また、メーカ用コンピュータ112のコントローラ104aがセンサ情報102から油交換の有無を判定できる機能を有する場合は、その判定により得た油交換情報を記憶装置112bに保存してもよい。
【0052】
図6は、異常判定部211の異常判定の概念を示す図である。
図6の異常判定の概念は作動油が鉱物油である場合のものである。
【0053】
図6において、本実施形態では、作動油(鉱物油)の密度に、正常な初期値より大きい上方異常判定値Aa1と、当該初期値より小さい下方異常判定値Aa2の2つを規定している。作動油(鉱物油)の誘電率及び粘度についても、同様に、正常な初期値より大きい上方異常判定値Ba1,Ca1と、当該初期値より小さい下方異常判定値Ba2,Ca2の2つを規定している。異常判定部211は、密度、誘電率、粘度のそれぞれについて、センサ情報A,B,Cの密度、誘電率、粘度が上方異常判定値Aa1,Ba1,Ca1を上回ったときと、下方異常判定値Aa2,Ba2,Ca2を下回ったときに異常と判定する。
【0054】
なお、作動油(鉱物油)の性状の計時的変化の特性に鑑み、作動油(鉱物油)の粘度のみ、上方異常判定値Ca1と下方異常判定値Ca2の2つを規定し、作動油(鉱物油)の密度及び誘電率には上方の異常判定値Aa1,Ba1のみを規定してもよい。この場合、異常判定部211は、粘度については、センサ情報Cが上方異常判定値Ca1を上回ったときと下方異常判定値Ca2を下回ったときに異常と判定し、密度と誘電率については、センサ情報A,Bがそれぞれ異常判定値Aa1,Ba1を上回ったときに異常と判定する。
【0055】
作動油が生分解性油である場合、混合油である場合も、異常判定値が生分解性油、混合油の閾値に変わるだけであり、異常判定の考え方は同じである。
【0056】
図7は、作動油が鉱物油である場合と生分解性油である場合の物性値特性図であって、作動油の密度の温度特性(上側)と作動油の誘電率の温度特性(下側)を示す図である。
【0057】
作業機械に用いられている多種の作動油を調査したところ、密度と誘電率において鉱物油と生分解性油は大きく物性値が異なることが確認された。例えば、40℃において鉱物油の密度は0.84~0.86、誘電率は2.2~2.3に対し、40℃における生分解性油の密度は0.9~0.92、誘電率は3.0~3.4である。この違いを基にセンサ情報Aの密度x及びセンサ情報Bの誘電率yに対して油種判定値A1,A2及び油種判定値B1,B2を設定し、以下の(1)~(4)のように場合分けをして判定することで、作動油が鉱物油か生分解性油かそれらの混合油か、若しくはそれ以外かに分類することができる。
【0058】
密度:x<A1 かつ 誘電率:y<B1 → 「鉱物油」 (1)
密度:A2<x かつ 誘電率:B2<y → 「生分解性油」 (2)
密度:A1<x<A2 かつ 誘電率:B1<x<B2 → 「鉱物油と生分解油の混合油」 (3)
上記以外の組合せの → 「原因調査」 (4)
ここで、油種判定値A1,A2、B1,B2は例えば以下のように設定されている。
【0059】
油種判定値A1
鉱物油(40℃)の密度0.84~0.86の上限値0.86に第1所定値を加算した値
油種判定値A2
生分解性油(40℃)の密度0.9~0.92の下限値0.9から第2所定値を減算した値
油種判定値B1
鉱物油(40℃)の誘電率2.2~2.3の上限値2.3に第3所定値を加算した値
油種判定値B2
生分解性油(40℃)の誘電率3.0~3.4の下限値3.0から第4所定値を減算した値
本発明では、鉱物油と生分解性油のいずれか一方の油に他方の油が5重量%以上含まれている場合に、その油は混合油であると定義する。この定義に基づき、上記第1~第4所定値は以下のように設定すればよい。
【0060】
第1所定値:鉱物油に生分解性油が5重量%含まれた場合の密度の変化量相当の値。
【0061】
第2所定値:生分解性油に鉱物油が5重量%含まれた場合の密度の変化量相当の値。
【0062】
第3所定値:鉱物油に生分解性油が5重量%含まれた場合の誘電率の変化量相当の値。
【0063】
第4所定値:生分解性油に鉱物油が5重量%含まれた場合の誘電率の変化量相当の値。
【0064】
このように設定した油種判定値A1,A2、B1,B2が記憶装置112bに記憶されている。
【0065】
一方、油種判定値と比較されるセンサ情報A,Bの密度及び誘電率については、作動油の温度の影響を排除するため、センサ情報A,Bの密度及び誘電率を作動油の温度に影響されない値に補正し、この補正した作動油の密度と誘電率を用いて、作動油の種類を判定する。具体的には、油種判定値A1,A2、B1,B2は作動油の温度40℃の密度と誘電率を基準にして設定されているため、センサ情報Dの温度と予め設定した密度と誘電率の温度特性に基づいて、センサ情報A,Bの密度及び誘電率も40℃の密度及び誘電率に補正する。
【0066】
なお、この例では作動油の温度40℃の密度と誘電率に基づいて油種判定値を設定したが、40℃以外の適宜の温度の密度と誘電率に基づいて油種判定値を設定してもよい。また、油種判定値の密度及び誘電率は温度に依存しない値に変換し、センサ情報A,Bの密度及び誘電率も同様に温度に依存しない値に変換してもよい。
【0067】
また、判定に関して、密度又は誘電率のうちの1つの物性値を参照することで鉱物油か生分解性かを区別することは可能であるが、精度が悪くなる。例えば油交換時に鉱物油に水が混入した場合、密度はあまり変化なく、誘電率が極端に高くなる。それにより、密度は鉱物油の判定となり、誘電率は生分解性の判定となるため、誘電率のみの判定では正確に判定できない場合がある。そのため、密度と誘電率の両方の値を用いることで、上記のような異常な場合も切り分けが可能となる。
【0068】
図8は、油種判定部214の処理手順を示すフローチャートである。
【0069】
まず、油種判定部214は、記憶装置112bに記憶されている油交換履歴情報に油種判定がなされていない油交換情報があるかないかを確認する(ステップS100)。油種判定がなされていない油交換情報がある場合は、記憶装置112bに記憶されている油種判定値A1,A2、B1,B2を読み出し、上記(1)~(4)のように場合分けをして判定する(ステップS110~S170)。
【0070】
図9は、記憶装置112bに記憶されている作動油の種類毎のオーバヒート判定値(温度閾値)の大小関係を示す図である。
【0071】
作業機械に用いられている多種の作動油を調査したところ、作動油としての性能を維持するための温度の上限は鉱物油、生分解性油、混合油の順で低くなることが確認された。このため、記憶装置112bに記憶されているオーバヒート判定値(温度閾値)は、鉱物油、生分解性油、混合油の順に低くなるようにTa>Tb>Tcに設定されている。
【0072】
オーバヒート判定部215は、このように設定された温度閾値Ta,Tb,Tcの中から油種判定部214における作動油の種類の判定結果に応じて作動油の種類に対応する温度閾値を選択し、センサ情報Dの温度がその温度閾値を超えると、作動油がオーバヒート状態にあると判定する。
【0073】
図10は、油種判定部214における作動油の種類の判定結果によりなされる処理と閾値変更部216の処理の一覧を示す図である。
【0074】
油種判定部214の判定結果が「鉱物油と生分解性油の混合油」と「原因調査」である場合、顧客・サービスマンにアクションを起こしてもらうために、油種判定部214は、モニタ112cに警告を表示する。また、好ましくは、それらの警告情報を他の端末(例えば、作業機械用コントローラ110、管理者用コンピュータ114及びサービス用コンピュータ116の少なくとも1つ)に送信する処理を実行し、それぞれの端末のモニタにも警告を表示する。
【0075】
これにより作動油が混合油である場合、或いは作動油が鉱物油、生分解性油、混合油のいずれであるか不明な場合に、顧客・サービスマンへのアクションを促し、適切な対応をとることができる。
【0076】
閾値変更部216は油種判定部214の判定結果が「鉱物油」、「生分解性油」及び「鉱物油と生分解性油の混合油」であるとき、その判定結果に応じて異常判定部211及びオーバヒート判定部215が用いる異常判定値及び温度閾値を変更する。
【0077】
これにより油圧システムの作動油が交換され、作動油が生分解性油となったおき、或いは作動油が鉱物油と生分解性油が混じり合った混合油となったときでも、作動油の性能低下による作業機械の油圧部品の破損を未然に防ぐことができる。また、作動油の種類・状態に応じて作動油のオーバヒートを適切に管理することができる。
【0078】
なお、コントローラ104aの演算装置210bは、
図4に二点鎖線で示すように、更にポンプ出力制限部217を備え、油種判定部214で作動油が鉱物油と生分解性油の混合油であると判定されたとき、油圧ポンプ504のレギュレータ504aの上述した最大トルクの設定値を小さくする電気信号を出力し、油圧ポンプ504の最大吸収トルク(出力)を低減するように制御してもよい。この制御は、例えば、油圧ポンプ504のレギュレータ504aに油圧ポンプ504の最大トルクを設定するバネに対向する側に電磁弁の出力圧が導かれる受圧部を設け、ポンプ出力制限部217から電気信号を電磁弁に出力し、電磁弁を作動させることで行うことができる。これにより作動油が混合油である場合に、油圧ポンプ504の最大トルクを低減し、油圧ショベル300の動作出力を下げることにより、オペレータに作動油が混合油であることを認識させ、作動油の適切な交換を促すことができる。
【0079】
以上のように本実施の形態によれば、油交換履歴情報に油種判定がなされていない油交換情報があるがあるとき、オイルセンサ120によって検出した複数のオイル性状の少なくとも1つの値と油種判定値とに基づいて作動油の種類を判定し、作動油の種類の判定結果に対応する異常判定値を用いて作動油の異常を判定するため、油圧システムの作動油が交換され、作動油が鉱物油と生分解性油が混じり合った混合油となったときでも、作動油の性能低下による作業機械の油圧部品の破損を未然に防ぐことができる。
【0080】
また、オイルセンサ120によって検出した作動油の密度と誘電率と記憶装置112bに記憶したそれぞれの油種判定値を用いて、作動油の種類を判定するため、正確に油種を判定することができる。
【0081】
また、温度補正した作動油の密度と誘電率を用いて、作動油の種類を判定するため、これによっても正確に油種を判定することができる。
【0082】
また、油種判定がなされていない油交換情報がある場合に、記憶装置112bに記憶されている油種判定値A1,A2、B1,B2を読み出し、上記(1)~(4)のように場合分けをして判定することにより、作動油が鉱物油、生分解性油、混合油のいずれであるかを判定することができる。また、作動油が混合油である場合、或いは作動油が鉱物油、生分解性油、混合油のいずれであるか不明な場合に、顧客・サービスマンへのアクションを促し、適切な対応をとることができる。
【0083】
更に、作動油の種類毎の温度閾値のうち作動油の種類の判定結果に対応する温度閾値をオイルセンサ120によって検出した作動油の温度と比較し、作動油がオーバヒート状態にあるかどうかを判定するため、作動油が生分解性油となったとき、或いは作動油が鉱物油と生分解性油が混じり合った混合油となったときでも、作動油の性能低下による作業機械の油圧部品の破損を未然に防ぐことができる。また、作動油の種類・状態に応じて作動油のオーバヒートを適切に管理することができる。
【0084】
また、作動油が鉱物油と生分解性油の混合油であると判定されたとき、油圧ポンプ504の出力を低減するように制御することにより、油圧ショベル300の動作出力を下がるため、オペレータに作動油が混合油であることを認識させ、作動油の適切な交換を促すことができる。
【符号の説明】
【0085】
102 センサ情報
103 記憶装置
110 作業機械用コントローラ
110a モニタ
112 メーカ用コンピュータ(サーバ)
112a コントローラ(制御装置)
112b 記憶装置
112c モニタ
114 管理者用コンピュータ
116 サービス用コンピュータ
120 オイルセンサ
211 異常判定部
212 原因特定部
213 対処マニュアル送信部
214 油種判定部
215 オーバヒート判定部
216 閾値変更部
300 油圧ショベル
301 下部走行体
302 上部旋回体
303フロント作業機
310,311,317,321,322,323 複数のアクチュエータ
500 油圧システム
Aa1,Aa2,Ba1,Ba2,Ca1,Ca1 異常判定値(鉱物油の密度、誘電率、粘度)
Ab1,Ab2,Bb1,Bb2,Cb1,Cb2 異常判定値(生分解性油の密度、誘電率、粘度)
Ac1,Ac2,Bc1,Bc2,Cc1.Cc2 異常判定値(混合油の密度、誘電率、粘度)
A1,A2 油種判定値(密度)
B1,B2 油種判定値(誘電率)
Ta,Tb,Tc 温度閾値(鉱物油、生分解性油、混合油)