(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】表面形状監視装置、摩耗量測定システム及び表面形状監視システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20221026BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20221026BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20221026BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20221026BHJP
B65G 43/02 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G01B11/30 A
G01B11/06 H
G01N21/892 A
B65G43/02 Z
(21)【出願番号】P 2019194352
(22)【出願日】2019-10-25
(62)【分割の表示】P 2019536611の分割
【原出願日】2019-03-20
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018061262
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】永谷 修一
(72)【発明者】
【氏名】荒木 伸介
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-50713(JP,A)
【文献】特開2014-222156(JP,A)
【文献】特開2003-57004(JP,A)
【文献】特開2014-240800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/892
B65G 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプーリ―と共にコンベヤシステムに含まれ、搬送物を搬送するコンベヤベルトの表面形状監視装置であって、
上記コンベヤベルトの表面の幅方向に広角でレーザを照射するラインレーザと、
上記コンベヤベルトの表面からの上記ラインレーザの反射光を撮影するカメラと、
上記カメラの撮影画像から上記反射光が描く特定のパターンを抽出するパターン抽出部と、
上記抽出タイミングに基づいて上記パターン抽出部で抽出されたパターンの上記コンベヤベルトの表面での位置を特定する位置特定機構と、
上記位置特定機構が特定した位置の上記コンベヤベルトの表面画像を取得する画像取得部と
を備え
、
上記ラインレーザのレーザ光照射位置が、上記コンベヤベルトの搬送方向の上流側のプーリの中心軸と水平方向又は水平方向より上方で上記上流側プーリと対向する位置であり、
上記カメラの画像撮影方向の中心軸と上記ラインレーザの照射方向の中心軸とのなす角が20度以上60度以下であり、
上記位置特定機構が、上記コンベヤベルトの搬送方向における上記画像取得部の上流側に配置されている表面形状監視装置。
【請求項2】
上記画像取得部の画像取得に上記カメラを用いる請求項1に記載の表面形状監視装置。
【請求項3】
上記ラインレーザのレーザ光の波長が500nm以上800nm以下である請求項
1又は請求項
2に記載の表面形状監視装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の表面形状監視装置と、
上記コンベヤベルトの幅方向の少なくとも1箇所のベルト厚さを、上記コンベヤベルトの搬送方向に連続的に測定可能な厚さ測定装置と、
上記厚さ測定装置により測定される上記コンベヤベルトのベルト厚さ及び上記表面形状監視装置により抽出されるパターンを用いて、上記コンベヤベルトの摩耗量を算出する摩耗量算出部と
を備える摩耗量測定システム。
【請求項5】
上記コンベ
ヤシステムがブレード型クリーナを有し、
上記厚さ測定装置が一対の反射型変位計を備え、
上記反射型変位計が、上記ブレード型クリーナより上記搬送方向下流側で、上記ラインレーザのレーザ光照射範囲内に位置する箇所に配置され、
上記反射型変位計のレーザ光の照射軸が上記コンベヤベルト表面の法線方向から30°以内である請求項
4に記載の摩耗量測定システム。
【請求項6】
一対のプーリ、及びこの一対のプーリ間に架け渡され、走行可能に構成されるコンベヤベルトを有するコンベヤシステムと、
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の表面形状監視装置と
を備え、
上記表面形状監視装置が、上記パターン抽出部が抽出するパターンを上記コンベヤベルトの厚さに基づく濃淡分布画像で表示する表示部をさらに備える表面形状監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状監視装置、摩耗量測定システム及び表面形状監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば物を搬送するコンベヤベルトには、両端を接合したエンドレスベルト(無端ベルト)が本体ベルトとして用いられる。この本体ベルトは、搬送物が表面に繰り返し積載されるため、使用するにつれ本体ベルトの外面を構成するカバーゴムが摩耗していく。この摩耗量が一定値を超えると、本体ベルト内部に埋設されている帆布、スチールコード等の芯体が露出し、切断され、さらには本体ベルトが切断してしまうおそれがある。本体ベルトが切断するとその復旧に多くの時間と費用とを要する。このため、コンベヤベルトの本体ベルトの摩耗量(残存厚)を定期的に検査し、摩耗量が大きい場合は、本体ベルトの摩耗位置を特定して補修したり、本体ベルトの交換を行ったりするメンテナンス作業が必要である。
【0003】
コンベヤベルトの摩耗量測定装置としては、本体ベルトの厚さ方向に沿って断面積が次第に変化する摩耗視認部材をカバーゴム層に埋め込み、この摩耗視認部材がコンベヤベルト表面に露出する部分を撮像して、その画像情報に基づいてコンベヤベルトの摩耗量を検出する摩耗量測定装置が公知である(特開2015-202933号公報参照)。
【0004】
上記従来の摩耗量測定装置では、検出されたコンベヤベルトの摩耗量の大きさに応じて報知装置を制御することにより警報を報知し、この警報に基づいて本体ベルトのメンテナンス作業が行われる。このメンテナンス作業は、コンベヤベルトを停止して行う必要がある。ところが、一般に画像情報に基づいた判定では誤判定が生じ易く、コンベヤベルトを停止して確認したところ、異常が発見されないという場合がある。コンベヤベルトの停止及び再開には、比較的時間を要するため、このような誤判定により発生する操業損失は無視できず、操業損失の低減が求められている。
【0005】
さらに、メンテナンス作業が必要となる本体ベルトの異常は、本体ベルトの摩耗以外にも、本体ベルトへの付着物の堆積、本体ベルトの亀裂、縦裂きや噛込等を挙げることができるが、上記従来の摩耗量測定装置では、これらの異常を検出することができない。従って、種々の異常を検知するためには、別に多数の検出装置を用意しなければならず、設置するための場所や装置コストが必要となる。このため、種々の本体ベルトの異常を検出できる表面形状監視装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、種々のコンベヤベルト表面の異常を1つの安価な装置で検出でき、コンベヤベルト表面の異常の誤判定により発生する操業損失を低減できる表面形状監視装置及びこの表面形状監視装置を用いた摩耗量測定システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、一対のプーリ―と共にコンベヤシステムに含まれ、搬送物を搬送するコンベヤベルトの表面形状監視装置であって、上記コンベヤベルトの表面の幅方向に広角でレーザを照射するラインレーザと、上記コンベヤベルトの表面からの上記ラインレーザの反射光を撮影するカメラと、上記カメラの撮影画像から上記反射光が描く特定のパターンを抽出するパターン抽出部と、上記抽出タイミングに基づいて上記パターン抽出部で抽出されたパターンの上記コンベヤベルトの表面での位置を特定する位置特定機構と、上記位置特定機構が特定した位置の上記コンベヤベルトの表面画像を取得する画像取得部とを備える。
【0009】
当該表面形状監視装置は、コンベヤベルトの表面に照射したラインレーザの反射光を用いた、いわゆる光切断法によりコンベヤベルト表面の幅方向の凹凸を検出することができる。当該表面形状監視装置は、このコンベヤベルト表面の凹凸のパターンによりパターン抽出部がコンベヤベルト表面に生じる摩耗、付着物の堆積、亀裂、縦裂きや噛込等の種々の異常を検知することができる。また、当該表面形状監視装置は、位置特定機構が上記パターンのコンベヤベルトの表面での位置を特定し、画像取得部が上記位置特定機構が特定した位置の上記コンベヤベルトの表面画像を取得する。このため、当該表面形状監視装置では、コンベヤベルトの表面に異常が観測された場合においても、コンベヤベルトを停止することなく、表面の状態を確認できる。従って、当該表面形状監視装置を用いることでコンベヤベルト表面の異常の誤判定により発生する操業損失を低減できる。さらに、当該表面形状監視装置は、必要とする装置の数が少なく安価に構成することができる。
【0010】
上記画像取得部の画像取得に上記カメラを用いるとよい。上記画像取得部の画像取得に上記カメラを用いることで、当該表面形状監視装置を構成する装置の数をさらに削減できるので、当該表面形状監視装置の製造コストを低減できる。
【0011】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、当該表面形状監視装置と、上記コンベヤベルトの幅方向の少なくとも1箇所のベルト厚さを、上記コンベヤベルトの搬送方向に連続的に測定可能な厚さ測定装置と、上記厚さ測定装置により測定される上記コンベヤベルトのベルト厚さ及び上記表面形状監視装置により抽出されるパターンを用いて、上記コンベヤベルトの摩耗量を算出する摩耗量算出部とを備える摩耗量測定システムである。
【0012】
当該摩耗量測定システムは、厚さ測定装置により、コンベヤベルトの幅方向の少なくとも1箇所のベルト厚さが測定される。このため、コンベヤベルトが幅方向に一様に摩耗した場合、当該摩耗量測定システムは、この厚さ測定装置の測定結果から摩耗を検出することができる。また、当該摩耗量測定システムは、本発明の当該表面形状監視装置を備えるので、コンベヤベルト表面の幅方向の凹凸を検出することができる。このため、当該摩耗量測定システムは、コンベヤベルトの幅方向の一部が摩耗した場合、コンベヤベルト表面の幅方向の凹凸から摩耗を検出することができる。このように当該摩耗量測定システムは、摩耗のパターンによらずコンベヤベルトの摩耗を検出することができる。また、当該摩耗量測定システムは、本発明の当該表面形状監視装置を備えるので、コンベヤベルトの摩耗が観測された場合において、コンベヤベルトを停止することなく、表面の状態を確認できる。従って、当該摩耗量測定システムを用いることでコンベヤベルト表面の異常の誤判定により発生する操業損失を低減できる。さらに、当該摩耗量測定システムは、必要とする装置の数が少なく安価に構成することができる。
【0013】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、一対のプーリ、及びこの一対のプーリ間に架け渡され、走行可能に構成されるコンベヤベルトを有するコンベヤシステムと、本発明の表面形状監視装置とを備え、上記ラインレーザのレーザ光照射位置が、上記プーリと対向する位置であり、上記表面形状監視装置が、上記パターン抽出部が抽出するパターンを上記コンベヤベルトの厚さに基づく濃淡分布画像で表示する表示部をさらに備える表面形状監視システムである。
【0014】
当該表面形状監視システムは、ラインレーザのレーザ光照射位置を上記プーリと対向する位置とする。コンベヤベルトは、プーリにより位置が固定され易いので、コンベヤベルトの片側から表面形状を測定する場合であっても、レーザ光照射位置でのコンベヤベルトの厚さを算出することができる。これにより当該表面形状監視システムは、表面が均等に摩耗している場合であっても検知することができる。また、当該表面形状監視システムでは、パターン抽出部が抽出するパターンをこのコンベヤベルトの厚さに基づいた濃淡分布画像として表示するので、視認性が高まり、コンベヤベルトの表面の状態を画像上で確認し易くすることができる。
【0015】
ここで、コンベヤベルトの「搬送方向」とは、稼働しているコンベヤベルトの表面に積載された搬送物が進行する方向を指す。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の表面形状監視装置は、種々のコンベヤベルト表面の異常を1つの安価な装置で検出できる。また、本発明の表面形状監視装置及びこの表面形状監視装置を用いた摩耗量測定システムは、コンベヤベルト表面の異常の誤判定により発生する操業損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る表面形状監視装置を示す模式的側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の表面形状監視装置の模式的上面図である。
【
図3】
図3は、コンベヤベルトが摩耗した状態にあることを示すパターンである。
【
図4】
図4は、コンベヤベルトに付着物が堆積した状態にあることを示すパターンである。
【
図5】
図5は、コンベヤベルトに亀裂が生じた状態にあることを示すパターンである。
【
図6】
図6は、コンベヤベルトに縦裂が生じた状態にあることを示すパターンである。
【
図7】
図7は、コンベヤベルトに噛込が生じた状態にあることを示すパターンである。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る摩耗量測定システムを示す模式的側面図である。
【
図9】
図9は、
図8の摩耗量測定システムの模式的上面図である。
【
図10】
図10は、
図8とは異なる本発明の一実施形態に係る摩耗量測定システムを示す模式的側面図である。
【
図12】
図12は、
図8の摩耗量測定システムのコンベヤベルトの厚さの算出方法を示す説明図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態に係る表面形状監視システムを示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第一実施形態]
以下、本発明の表面形状監視装置及び摩耗量測定システムの第一実施形態について適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0019】
〔表面形状監視装置〕
図1及び
図2に示す表面形状監視装置1は、コンベヤシステムXの本体ベルトとして用いられるコンベヤベルトX1の表面形状監視装置であり、コンベヤベルトX1の表面の幅方向に広角でレーザを照射するラインレーザ11と、コンベヤベルトX1の表面からのラインレーザ11の反射光を撮影するカメラ12と、カメラ12の撮影画像から上記反射光が描く特定のパターンを抽出するパターン抽出部13と、上記抽出タイミングに基づいてパターン抽出部13で抽出されたパターンのコンベヤベルトX1の表面での位置を特定する位置特定機構14と、位置特定機構14が特定した位置のコンベヤベルトX1の表面画像を取得する画像取得部15とを備える。なお、当該表面形状監視装置1では、画像取得部15にカメラ12を用いる。
【0020】
<コンベヤシステム>
コンベヤシステムXは、コンベヤベルトX1が一対のプーリX2間に架け渡され、走行可能に構成される。また、
図1及び
図2に示すようにコンベヤシステムXは、必要に応じてプーリX2間に、コンベヤベルトX1を下方から支持する支持ローラX3を備える。
【0021】
コンベヤベルトX1は、帯状の平ベルトの両端が接合部Zで接合された無端ベルトとして構成される。コンベヤベルトX1は、内部に帆布等の芯体を有してもよいが、少なくとも外面及び内面がカバーゴムで構成される。
【0022】
コンベヤベルトX1のカバーゴムの材質としては、可撓性及び弾性を有する限り特に限定されないが、例えば天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴム(NBR、NIR等)等を単独又は混合して用いることができる。また、コンベヤベルトX1は多層構造としてもよい。
【0023】
コンベヤベルトX1の幅は、搬送物Yの大きさや時間当たりの搬送量等により適宜決定されるが、例えば300mm以上3000mm以下とできる。また、コンベヤベルトX1の長さは、搬送物Yを搬送する距離により適宜決定されるが、例えば10m以上40000m以下とできる。
【0024】
コンベヤベルトX1の平均厚さの下限としては、8mmが好ましく、10mmがより好ましい。一方、コンベヤベルトX1の平均厚さの上限としては、50mmが好ましく、30mmがより好ましい。コンベヤベルトX1の平均厚さが上記下限未満であると、コンベヤベルトX1の強度が不足するおそれがある。逆に、コンベヤベルトX1の平均厚さが上記上限を超えると、コンベヤベルトX1の可撓性が不足し、プーリX2の外周に巻き付けることが困難となるおそれがある。
【0025】
また、コンベヤベルトX1には、例えば複数のスチールコード等が搬送方向(
図1の矢印の方向)と平行になるように埋設されていてもよい。このように複数のスチールコードを埋設することでコンベヤベルトX1に加わる張力を保持でき、幅広のベルトや長距離搬送を行うベルトが実現できる。
【0026】
プーリX2及び支持ローラX3の材質としては、コンベヤベルトX1を駆動又は支持できる限り特に限定されないが、例えば鋼等の金属を用いることができる。
【0027】
プーリX2の径は、コンベヤシステムXの用途等に応じて適宜決定されるが、プーリX2の径の下限としては、80mmが好ましく、100mmがより好ましい。一方、プーリX2の径の上限としては、3000mmが好ましく、2500mmがより好ましい。プーリX2の径が上記下限未満であると、コンベヤベルトX1の走行速度を高めるには高速回転が必要となるため、エネルギー消費が不要に増大するおそれがある。一方、プーリX2の径が上記上限を超えると、コンベヤシステムXの高さが不要に高くなり、設置が困難となるおそれがある。
【0028】
コンベヤシステムXは、
図1に示すように搬送物Yの搬送完了地点より後方のリターン側にブレード型クリーナX4を備えてもよい。
【0029】
コンベヤシステムXの稼働中(コンベヤベルトX1の走行中)、搬送物Yは架け渡されたコンベヤベルトX1の上側の外面に載置され、コンベヤベルトX1の下流側へ(
図1では右方向へ)搬送される。そして、下流側のプーリX2でコンベヤベルトX1が折り返される際に、搬送物Yは
図1に示す搬送物Y1のように下方へ離脱し、搬送が完了する。しかしながら、
図1に示す搬送物Y2のように搬送物Yが下流側のプーリX2付近でコンベヤベルトX1から脱離せず、そのままコンベヤベルトX1表面に付着し、上流側へ移動していくものがある。ブレード型クリーナX4は、このような搬送物Yの付着を防止する。
【0030】
ブレード型クリーナX4は、1枚又は複数枚のブレード(
図1では1枚のブレード)を走行するコンベヤベルトX1に圧接することで、コンベヤベルトX1に付着する搬送物Y2等を取り除くことができる。
【0031】
<ラインレーザ>
ラインレーザ11は、レーザ光をコンベヤベルトX1の表面にライン状に照射する。ラインレーザ11としては、公知のラインレーザを用いることができる。
【0032】
コンベヤベルトX1の表面へのラインレーザ11の照射により描かれるラインは、連続的な直線で形成されていることが好ましいが、断続的な複数の直線や、複数の輝点により形成されてもよい。上記ラインが複数の直線や、複数の輝点により形成される場合、表面形状の抽出制度の観点から、その間隔としては0.5mm以下が好ましい。
【0033】
上記ラインレーザ11の照射方向は、コンベヤベルトX1の表面の搬送方向に対して傾斜していないことが好ましい。つまり、ラインレーザ11は、コンベヤベルトX1の法線方向からレーザを照射することが好ましい。このように上記レーザ光を照射することで、搬送方向に短く、ベルト厚さ方向に深い傷、例えば亀裂であっても、その傷の内側までレーザ光が届き易いので、当該表面形状監視装置1が種々の異常を的確に捉えることができる。ここで、ラインレーザ11の照射方向である「コンベヤベルトの法線方向」には、ラインレーザ11の照射方向の中心軸が、上記レーザ光の照射位置でのコンベヤベルトX1の接面となす角度が80度以上90度以下の範囲を含むものとする。なお、ラインレーザ11がレーザ光を幅方向へスキャンしながら照射する場合、「ラインレーザの照射方向の中心軸」とは、スキャンされる範囲の中央位置におけるレーザ照射に対する中心軸を指すものとする。
【0034】
上記レーザ光が形成するラインとコンベヤベルトX1の搬送方向とは垂直である。このようにレーザ光をコンベヤベルトX1の表面にライン状に照射し、上記レーザ光が形成するラインとコンベヤベルトX1の搬送方向とを垂直にすることで、コンベヤベルトX1の幅方向に対して局所的に発生する異常について短いライン長でより確実に判定することができる。
【0035】
上記レーザ光のライン長の下限としては、コンベヤベルトX1の幅の50%が好ましく、70%がより好ましい。一方、上記レーザ光のライン長の上限としては、コンベヤベルトX1の幅の100%が好ましく、90%がより好ましい。上記レーザ光のライン長を上記範囲内とすることで、コンベヤベルトX1に局所的に発生する異常を見逃し難くすることができる。
【0036】
ラインレーザ11のレーザ光照射位置は、プーリX2と対向する位置が好ましい。プーリX2を通過するコンベヤベルトX1は、プーリX2により位置が固定され易いので、コンベヤベルトX1の振動等により当該表面形状監視装置1がコンベヤベルトX1表面の異常を誤判定する可能性を低減できる。
【0037】
上記ラインレーザ11のレーザ光照射位置は、一対のプーリX2のうち、上流側のプーリX2と対向する位置とすることがより好ましく、プーリX2の中心軸と水平方向又は上記水平方向より上方で対向する位置がさらに好ましく、プーリX2の中心軸と水平方向で対向する位置が特に好ましい。上流側のプーリX2を通過するコンベヤベルトX1は、ブレード型クリーナX4により付着物が除去されているため、上記レーザ光照射位置を上流側のプーリX2と対向する位置とすることで、当該表面形状監視装置1がコンベヤベルトX1表面の異常を誤判定する可能性を低減できる。また、コンベヤベルトX1は、通常下流側のプーリX2により駆動されるため、上流側のプーリX2には駆動装置等が付帯しておらず、ラインレーザ11を容易に設置することができる。また、上記レーザ光照射位置をプーリX2の中心軸と水平方向又は上記水平方向より上方で対向させることで、カメラ12の撮影方向が上方を向かないため、カメラ12のレンズに粉塵等が堆積し、撮影能力が低下することを抑止できる。さらに、プーリX2の中心軸と水平方向に対向する位置は、コンベヤベルトX1に加わる搬送方向の張力が最も大きくなるため、コンベヤベルトX1の振動等が特に発生し難く、当該表面形状監視装置1がコンベヤベルトX1表面の異常を誤判定する可能性をさらに低減できる。
【0038】
上記レーザ光のライン幅の上限としては、5mmが好ましく、3mmがより好ましい。上記レーザ光のライン幅が上記上限を超えると、ラインレーザ11の出力が不必要に大きくなり、当該表面形状監視装置1の監視コストが上昇するおそれがある。一方、上記レーザ光のライン幅の下限としては、コンベヤベルトX1表面の凹凸が確認できる限り特に限定されないが、例えば0.1mmとできる。
【0039】
上記レーザ光の波長は、カメラ12で撮影できる限り特に限定されないが、例えば上記レーザ光の波長の下限としては、500nmが好ましく、550nmがより好ましい。一方、上記レーザ光の波長の上限としては、800nmが好ましく、750nmがより好ましい。上記レーザ光の波長が上記範囲内であると、特に黒色系のコンベヤベルトX1に対して強い反射光を得易い。
【0040】
なお、1本のラインレーザ11によりコンベヤX1の幅方向に広角でレーザを照射してもよいが、
図2に示すように複数本(
図2では2本)のラインレーザ11によりコンベヤベルトX1の幅方向に広角でレーザを照射してもよい。複数本のラインレーザ11を用いる方が、1つのラインレーザ11が照射する幅方向の端部においてもレーザ光の照射角度がコンベヤベルトX1の表面に対して直角に近づくため、当該表面形状監視装置1が種々の異常をさらに的確に捉えることができる。
【0041】
<カメラ>
カメラ12は、上述のようにコンベヤベルトX1の表面からのラインレーザ11の反射光をコンベヤベルトX1の搬送方向に傾斜した位置から撮影する。このように傾斜位置から撮影することで、コンベヤベルトX1の表面の凹凸によりラインレーザ11の反射光に陰影が生じた画像を得ることが得ることができる。カメラ12としては、公知の撮像装置、例えばCCDカメラ、CMOSカメラ等を用いることができる。また、高速画像撮影が行え、後述するパターン抽出部13の画像データ解析も行えるスマートカメラを用いることもできる。
【0042】
カメラ12の画像撮影方向の中心軸は、側面視で、コンベヤベルトX1の表面においてラインレーザ11の照射位置と重なることが好ましい。カメラ12の画像撮影方向の中心軸とラインレーザ11の照射方向の中心軸とのなす角度(
図1のθで以下、単に「角度θ」ともいう)の下限としては、20度が好ましく、30度がより好ましい。一方、上記角度θの上限としては、60度が好ましく、45度が好ましい。上記角度θが上記下限未満であると、例えばコンベヤベルトX1の表面の水濡れ等によるレーザ光の乱反射の影響が発生し易くなるおそれがある。逆に、上記角度θが上記上限を超えると、コンベヤベルトX1の表面の凹凸形状の抽出精度が低下するおそれがある。
【0043】
カメラ12は、少なくともラインレーザ11により形成されるライン全体が撮影可能となるように配設されるとよい。例えばカメラ12とコンベヤベルトX1表面との距離を調整することで、上記ライン全体を撮影可能とできる。
【0044】
複数台のカメラ12により上記ライン全体を撮影してもよいが、1台のカメラ12で撮影することが好ましい。1台のカメラ12で撮影することで、異なるカメラで撮影された画像の合成や輝度の調整等を行う必要がなくなるため、パターン抽出部13でのパターン抽出が容易化できる。
【0045】
<パターン抽出部>
パターン抽出部13は、例えばカメラ12の撮影画像データを入力とし、解析を行うマイクロコントローラにより実現できる。
【0046】
パターン抽出部13は、カメラ12の撮影画像データから光切断法によりコンベヤベルトX1表面の凹凸を取得する。具体的には、以下の手順による。カメラ12の撮影画像データの陰影から、画像の各座標位置におけるラインレーザ11からの反射光のカメラ12への入射角を求めることができる。ラインレーザ11のコンベヤベルトX1表面への該当位置における入射角は既知であるから、三角測量の原理により該当位置のラインレーザ11あるいはカメラ12からの距離を知ることができる。従って、ラインレーザ11の反射光を用いて、コンベヤベルトX1の幅方向に距離を算出することで、コンベヤベルトX1の表面の凹凸を表すパターンを得ることができる。
【0047】
このようにして取得したパターンの一例をコンベヤベルトX1とともに
図3に示す。
図3のコンベヤベルトX1は表面の中央部が摩耗し、凹んでいる。この場合、パターン抽出部13により、ラインレーザ11あるいはカメラ12からの距離が大きい、つまりコンベヤベルトX1の表面がラインレーザ11あるいはカメラ12から遠ざかり薄くなった状態であることが算出される。その程度はラインレーザ11あるいはカメラ12からの距離により特定されるから、パターン抽出部13は、
図3に示すように中央部がなだらかに凹んだパターンL1を抽出する。従って、このパターンL1の形状がコンベヤベルトX1の表面の凹凸に対応するから、コンベヤベルトX1は表面中央部が摩耗した状態にあると判定することができる。
【0048】
実際には、コンベヤベルトX1表面の異常と判断する必要がない軽微な摩耗である場合も考えられる。このため、例えば得られたパターンから凹みの深さ(
図3のD)を算出し、その深さDが一定値以上であれば、コンベヤベルトX1に摩耗の異常があるパターンであると特定する等の閾値を設けることが好ましい。
【0049】
以下、上述の摩耗以外にコンベヤベルトX1表面の異常と判断できる特定のパターンについて、説明する。なお、以下の説明は例示であって、ここで説明した以外の異常が検出できないことを意味するものではない。また、各パターンにおいて軽微なものと区別するため、上述の摩耗と同様に各パターンの形状に応じて閾値を設けることが好ましい。上記閾値は、検出する異常の種類やコンベヤベルトX1の仕様によって適宜決定される。
【0050】
図4に示すパターンL2は、コンベヤベルトX1の表面の中央部がなだらかに膨らんでいるパターンである。このパターンL2は、ブレード型クリーナX4によっても除去することができない堆積物がコンベヤベルトX1の表面に堆積していることを意味する。
【0051】
図5に示すパターンL3は、コンベヤベルトX1表面の一部に断面が三角形状の鋭い切れ込みが入っているパターンである。断面が三角形状であることは、表面からの切れ込みがコンベヤベルトX1の裏面まで達していないことを意味する。つまり、このパターンL3は、コンベヤベルトX1表面に亀裂が生じた状態にあることを示すパターンである。
【0052】
図6に示すパターンL4は、コンベヤベルトX1表面の一部に断面が台形状の切れ込みが入っているパターンである。断面が台形状であることは、表面からの切れ込みが裏面にまで達していることを意味する。つまり、このパターンL4は、コンベヤベルトX1表面に縦裂が生じた状態にあることを示すパターンである。
【0053】
図7に示すパターンL5は、コンベヤベルトX1表面の狭い範囲に凸部が生じているパターンである。このパターンL5は、コンベヤベルトX1の一部に噛込が生じて、めくれ上がっている場合に生じる。
【0054】
<位置特定機構>
位置特定機構14は、反射型変位計を備えている。反射型変位計は、レーザ光を用いてコンベヤベルトX1表面の検知位置までの距離を比較的容易かつ精度よく計測できる。コンベヤベルトX1は、特に接合部Z付近の表面に凹凸を有する。このため、反射型変位計によりコンベヤベルトX1の表面の凹凸を測定し、解析することで、例えば接合部Zを認識することが可能である。コンベヤベルトX1は一定の速度で走行しているので、位置特定機構14は、この接合部Zを一定の時間間隔で認識する。その周期からコンベヤベルトX1の走行速度を算出することができる。
【0055】
ここで、パターン抽出部13によりコンベヤベルトX1に異常が抽出された場合を考える。カメラ12と位置特定機構14との距離は、表面形状監視装置1の各装置の配置により決まり既知である。一方、位置特定機構14は、コンベヤベルトX1の走行速度と、上記抽出タイミングでの接合部Zの位置とを算出できるので、これらの情報からコンベヤベルトX1に異常が抽出された位置の接合部Zに対する相対位置を特定可能である。つまり、位置特定機構14は、上記抽出タイミングに基づいてパターン抽出部13で抽出されたパターンのコンベヤベルトX1の表面での位置を特定することができる。
【0056】
このように凹凸周期に基づき、上記パターンの位置特定を行うことができるので、コンベヤベルトX1に位置特定のための特別な構成を設ける必要がない。従って、当該表面形状監視装置1を例えば既存のコンベヤベルトにも用いることができ、汎用性を高めることができる。
【0057】
なお、位置特定機構14が接合部Zの位置を認識し、その接合部Zの位置を基準に抽出されたパターンのコンベヤベルトX1の表面での位置を特定する方法を説明したが、他の手法により位置を特定してもよい。例えば、位置特定機構14がコンベヤベルトX1表面全体の凹凸の繰り返しパターンを直接認識する方法を用いてもよい。
【0058】
位置特定機構14の配設位置は、コンベヤベルトX1の表面の凹凸が計測できる限り特に限定されないが、画像取得部15の近傍で、搬送方向上流側が好ましい。画像取得部15の上流側に一定の距離をおいて配設することで、後述する画像取得部15での画像取得位置を認識し、画像取得部15により撮影する際に生じるタイムラグを吸収し易い。また、画像取得部15の近傍に配設することで、位置特定機構14が位置を特定してから画像取得位置に至るまでの時間が比較的短くなるため、コンベヤベルトX1の走行速度の変動等により画像取得位置に誤差が生じることを抑止できる。
【0059】
<画像取得部>
当該表面形状監視装置1では、画像取得部15の画像取得にカメラ12を用いる。このように画像取得部15の画像取得にカメラ12を用いることで、当該表面形状監視装置1を構成する装置の数を削減できるので、当該表面形状監視装置1の製造コストを低減できる。
【0060】
具体的には、位置特定機構14により特定されたコンベヤベルトX1の表面をカメラ12により撮影する。撮影された画像は、例えばその場で作業者が確認してもよいが、例えば公知のLAN等の通信設備を用いて、リアルタイムに所定の場所に送信し、集中管理を行ってもよい。
【0061】
当該表面形状監視装置1では、画像取得部15で得られた画像を確認し、さらにコンベヤベルトX1表面に異常が認められる場合に、コンベヤベルトX1を停止してメンテナンス作業を行うことができる。
【0062】
<利点>
当該表面形状監視装置1は、コンベヤベルトX1の表面に照射したラインレーザ11の反射光を用いた、いわゆる光切断法によりコンベヤベルトX1表面の幅方向の凹凸を検出することができる。当該表面形状監視装置1は、このコンベヤベルトX1表面の凹凸のパターンによりパターン抽出部13がコンベヤベルトX1表面に生じる摩耗、付着物の堆積、亀裂、縦裂きや噛込等の種々の異常を検知することができる。また、当該表面形状監視装置1は、位置特定機構14が上記パターンのコンベヤベルトX1の表面での位置を特定し、画像取得部15が位置特定機構14が特定した位置のコンベヤベルトX1の表面画像を取得する。このため、当該表面形状監視装置1では、コンベヤベルトX1の表面に異常が観測された場合においても、コンベヤベルトX1を停止することなく、表面の状態を確認できる。従って、当該表面形状監視装置1を用いることでコンベヤベルトX1表面の異常の誤判定により発生する操業損失を低減できる。さらに、当該表面形状監視装置1は、必要とする装置の数が少なく安価に構成することができる。
【0063】
〔摩耗量測定システム〕
図8及び
図9に示す摩耗量測定システム2は、
図1及び
図2に示す表面形状監視装置1と、コンベヤベルトX1の幅方向の1箇所のベルト厚さを、コンベヤベルトX1の搬送方向に連続的に測定可能な厚さ測定装置20と、厚さ測定装置20により測定されるコンベヤベルトX1のベルト厚さ及び表面形状監視装置1により抽出されるパターンを用いて、コンベヤベルトX1の摩耗量を算出する摩耗量算出部30とを備える。
【0064】
コンベヤベルトX1及び表面形状監視装置1は、
図1及び
図2に示すコンベヤベルトX1及び表面形状監視装置1と同様に構成できるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
<厚さ測定装置>
厚さ測定装置20は、コンベヤベルトX1を挟んで対向する一対の反射型変位計21を備える。
【0066】
反射型変位計21は、レーザ光をコンベヤベルトX1表面に照射し、その反射光をレーザ照射位置で検知することで、照射位置までの距離を精度よく計測することができる。一対の反射型変位計21は、そのレーザ光の照射軸が重なるように対向して配設されている。この一対の反射型変位計21によりそれぞれコンベヤベルトX1の表面及び裏面までの距離が測定でき、一対の反射型変位計21間の距離は既知であるので、これらの距離からレーザ光照射位置でのコンベヤベルトX1のベルト厚さを算出することができる。また、コンベヤベルトX1は、搬送方向に走行しているので、一対の反射型変位計21によりコンベヤベルトX1のベルト厚さをコンベヤベルトX1の搬送方向に連続的に測定することができる。
【0067】
厚さ測定装置20のコンベヤベルトX1の搬送方向に対する配設位置としては、搬送物の搬送完了地点より後方のリターン側でブレード型クリーナX4より後方が好ましい。ブレード型クリーナX4より後方はコンベヤベルトX1に対する付着物が最も少ない位置であるため、コンベヤベルトX1のベルト厚さを比較的精度よく測定することができる。
【0068】
厚さ測定装置20のコンベヤベルトX1の幅方向に対する測定位置は、ラインレーザ11のレーザ光照射範囲内に設定される。上記測定位置は、特に限定されないが、コンベヤベルトX1の斜行や蛇行の影響を受け易い端部を避けることが好ましい。具体的には、コンベヤベルトX1の幅方向の端部から全幅の10%以上離れていることが好ましい。一方、上記測定位置は、コンベヤベルトX1の中央とすることもできるが、比較的摩耗し難い位置、すなわちコンベヤベルトX1の幅方向の端部から全幅の30%以下の位置とすることが好ましい。
【0069】
一対の反射型変位計21のレーザ光の照射軸は、レーザ光照射位置におけるコンベヤベルトX1表面に対して直交してもよいが、コンベヤベルトX1表面の法線方向から搬送方向に傾斜していてもよい。一対の反射型変位計21のレーザ光の照射軸を搬送方向に傾斜させることで、コンベヤベルトX1の搬送側とリターン側との間の狭い空間に反射型変位計21を配設することが容易となる場合がある。また、特に下方側に位置し、上方に向かってレーザ光を照射する反射型変位計21では、コンベヤベルトX1のリターン側ベルトの下面から落下し得る粉塵等がレーザ放射面に堆積することを抑止することができる。
【0070】
反射型変位計21のレーザ光の照射軸を搬送方向に傾斜させる場合、法線方向からの傾斜角としては、30°以下が好ましい。上記傾斜角を上記上限以下とすることで、コンベヤベルトX1のベルト厚さを精度よく測定することができる。
【0071】
<摩耗量算出部>
摩耗量算出部30は、例えば厚さ測定装置20により測定されるコンベヤベルトX1のベルト厚さ及び表面形状監視装置1のパターン抽出部13により抽出されるパターンを入力とし解析を行うマイクロコントローラにより実現できる。なお、パターン抽出部13にマイクロコントローラを用いる場合、パターン抽出部13のマイクロコントローラと摩耗量算出部30のマイクロコントローラとは、同一のマイクロコントローラとすることもできる。
【0072】
具体的には、摩耗量算出部30は、以下の手順によりコンベヤベルトX1の幅方向のベルト厚さを算出する。まず、摩耗量算出部30は、パターン抽出部13によりコンベヤベルトX1表面の幅方向の凹凸情報を得ることができる。また、摩耗量算出部30は、厚さ測定装置20によりこのパターンで対応する位置のコンベヤベルトX1のベルト厚さを得ることができる。ここで、コンベヤベルトX1裏面はほとんど摩耗せず平らであると仮定できるので、摩耗量算出部30は、特定の一点のベルト厚さから、幅方向の凹凸量を補正していくことで、コンベヤベルトX1の幅方向のベルト厚さを算出できる。
【0073】
当該摩耗量測定システム2は、この幅方向のコンベヤベルトX1のベルト厚さにより直接コンベヤベルトX1の摩耗を判断することができる。このため、仮にコンベヤベルトX1のベルト厚さが一様に摩耗し、表面に凹凸が生じない摩耗であっても、摩耗したことを検出できる。
【0074】
<利点>
当該摩耗量測定システム2は、厚さ測定装置20により、コンベヤベルトX1の幅方向の1箇所のベルト厚さが測定される。このため、コンベヤベルトX1が幅方向に一様に摩耗した場合、当該摩耗量測定システム2は、この厚さ測定装置20の測定結果から摩耗を検出することができる。また、当該摩耗量測定システム2は、本発明の当該表面形状監視装置1を備えるので、コンベヤベルトX1表面の幅方向の凹凸を検出することができる。このため、当該摩耗量測定システム2は、コンベヤベルトX1の幅方向の一部が摩耗した場合、コンベヤベルトX1表面の幅方向の凹凸から摩耗を検出することができる。このように当該摩耗量測定システム2は、摩耗のパターンによらずコンベヤベルトX1の摩耗を検出することができる。また、当該摩耗量測定システム2は、本発明の表面形状監視装置1を備えるので、コンベヤベルトX1の摩耗が観測された場合において、コンベヤベルトX1を停止することなく、表面の状態を確認できる。従って、当該摩耗量測定システム2を用いることでコンベヤベルトX1表面の異常の誤判定により発生する操業損失を低減できる。さらに、当該摩耗量測定システム2は、必要とする装置の数が少なく安価に構成することができる。
【0075】
[第二実施形態]
以下、本発明の摩耗量測定システムの第二実施形態について適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0076】
図10及び
図11に示す摩耗量測定システム3は、表面形状監視装置1と、コンベヤベルトX1の幅方向の1箇所のベルト厚さを、コンベヤベルトX1の搬送方向に連続的に測定可能な厚さ測定装置40と、厚さ測定装置40により測定されるコンベヤベルトX1のベルト厚さ及び表面形状監視装置1により抽出されるパターンを用いて、コンベヤベルトX1の摩耗量を算出する摩耗量算出部30とを備える。
【0077】
当該摩耗量測定システム3の表面形状監視装置1及び摩耗量算出部30は、
図8及び
図9に示す表面形状監視装置1及び摩耗量算出部30とそれぞれ同様である。このため、同一符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0078】
<厚さ測定装置>
当該摩耗量測定システム3の厚さ測定装置40は、照射したレーザ光の反射光の受光によりその光路長を測定する一対の反射型変位計41と、上記一対の反射型変位計41が照射するレーザ光を反射する一対の鏡42と、コンベヤベルトX1の側方の床面Gに自立可能に構成され、一対の反射型変位計41及び一対の鏡42を支持するフレーム43とを備える。
【0079】
一対の反射型変位計41は、平面視でコンベヤベルトX1の外側で、一方の反射型変位計41のレーザ光Q1がコンベヤベルトX1の内面側へ水平に照射され、他方の反射型変位計41のレーザ光Q2がコンベヤベルトX1の外面側へ水平に照射されるように鉛直方向に並べて配設される。
【0080】
上記一対の鏡42は、それぞれフレーム43から水平方向へ延びる一対の支持棒43aに取り付けられている。また、一方の鏡42は、コンベヤベルトX1の内面側に水平に照射される上記レーザ光Q1の反射光がコンベヤベルトX1の厚さ測定位置Pの内面側を鉛直方向から照射されるように配設され、他方の鏡42が、コンベヤベルトX1の外面側に水平に照射される上記レーザ光Q2の反射光がコンベヤベルトX1の厚さ測定位置Pの外面側を鉛直方向から照射されるように配設される。
【0081】
鏡42とコンベヤベルトX1との距離の下限としては、70mmが好ましく、150mmがより好ましい。一方、鏡42とコンベヤベルトX1との距離の上限としては、2500mmが好ましく、2000mmがより好ましい。鏡42とコンベヤベルトX1との距離が上記下限未満であると、コンベヤベルトX1の振動等により鏡42の端部がコンベヤベルトX1に接触するおそれがある。逆に、上記鏡42とコンベヤベルトX1との距離が上記上限を超えると、鏡42をプーリX2に架け渡されたコンベヤベルトX1の内面側に配設することが困難となるおそれがある。
【0082】
コンベヤベルトX1の外面側の測定に用いられる鏡42とコンベヤベルトX1との距離と、コンベヤベルトX1の内面側の測定に用いられる鏡42とコンベヤベルトX1との距離とは、異なってもよいが、等しくすることが好ましい。両者の距離を等しくすることで、レーザ光の往復に要する時間がバランスするので、測定タイミングの同期がとり易くなる。
【0083】
コンベヤベルトX1の幅方向に対する厚さ測定装置40の測定位置Pは、
図8及び
図9の摩耗量測定システム2と同様とできる。
【0084】
この厚さ測定装置40では、
図12に示すように、コンベヤベルトX1の内面側の測定に用いられる反射型変位計41から鏡42を経てコンベヤベルトX1の厚さ測定位置Pの内面側に至る距離(H1+W1)と、コンベヤベルトX1の外面側の測定に用いられる反射型変位計41から鏡42を経てコンベヤベルトX1の厚さ測定位置Pの外面側に至る距離(H2+W2)が計測される。ここで、コンベヤベルトX1の内面側の測定に用いられる反射型変位計41と鏡42との間隔H1、及びコンベヤベルトX1の外面側の測定に用いられる反射型変位計41と鏡42との間隔H2は既知であるから、鏡42とコンベヤベルトX1の厚さ測定位置Pの内面側との距離W1及び鏡42とコンベヤベルトX1の厚さ測定位置Pの外面側との距離W2が算出可能である。さらに、一対の反射型変位計41の間隔Dも基地であるから、コンベヤベルトX1の厚さTは、下記式(1)で算出できる。
T=D-(W1+W2) ・・・(1)
【0085】
なお、上述の厚さ測定装置40では、鏡42の反射光が、コンベヤベルトX1の厚さ測定位置Pに鉛直方向から照射される場合を説明したが、この反射光は既知の角度を持って照射されても、その鉛直方向の長さを算出することで同様にコンベヤベルトX1の厚さTを求めることができる。ただし、反射光は、上記厚さ測定位置Pに鉛直方向から照射されることが好ましい。反射型変位計41では、上記厚さ測定位置Pでの反射光をレーザ照射位置で検知することで、光路長を測定する。このように上記厚さ測定位置Pに鉛直方向から照射することで、厚さ測定位置Pからの反射光が反射型変位計41に届き易くなるため、測定精度を高められる。同様に、反射型変位計41が照射するレーザ光は、例えば一定の俯角をもって照射されても、コンベヤベルトX1の厚さTを求めることができる。ただし、測定精度の観点から、反射型変位計41が照射するレーザ光は水平方向とすることが好ましい。
【0086】
<利点>
当該摩耗量測定システム3の厚さ測定装置40では、反射型変位計41がレーザ光を水平に照射し、その反射光をレーザ照射位置で検知する。つまり、当該摩耗量測定システム3では、レーザ光の照射面やセンサ面が横向きに設けられるので、レーザ光の照射面やセンサ面に粉塵等が堆積することを抑止できる。また、一対の反射型変位計41が平面視でコンベヤベルトX1の外側に配設されるので、厚さ測定装置40のメンテナンスが容易化される。さらに、当該摩耗量測定システム3の厚さ測定装置40は、フレーム43によりコンベヤベルトX1の側方の床面Gに自立可能に構成されているので、厚さ測定装置40を当該摩耗量測定システム3から取り出すことで、鏡42の清掃も容易に行える。
【0087】
[第三実施形態]
以下、本発明の表面形状監視システムについて適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0088】
図13に示す表面形状監視システム4は、コンベヤシステム5と、表面形状監視装置6とを備える。
【0089】
〔コンベヤシステム〕
コンベヤシステム5は、一対のプーリ52と、一対のプーリ52間に架け渡され、走行可能に構成されるコンベヤベルト51とを有する。
【0090】
一対のプーリ52及びコンベヤベルト51は、第一実施形態で説明した
図1の一対のプーリX2及びコンベヤベルトX1とそれぞれ同様である。また、
図13に示すコンベヤシステム5の他の構成は、第一実施形態で説明した
図1のコンベヤシステムXと同様に構成できるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0091】
〔表面形状監視装置〕
表面形状監視装置6は、コンベヤベルト51の表面形状監視装置であって、
図13に示すように、コンベヤベルト51の表面の幅方向に広角でレーザを照射するラインレーザ61と、コンベヤベルト51の表面からのラインレーザ61の反射光を撮影するカメラ12と、カメラ12の撮影画像から上記反射光が描く特定のパターンを抽出するパターン抽出部62と、上記抽出タイミングに基づいてパターン抽出部62で抽出されたパターンのコンベヤベルト51の表面での位置を特定する位置特定機構14と、位置特定機構14が特定した位置のコンベヤベルト51の表面画像を取得する画像取得部15と、パターン抽出部62が抽出するパターンをコンベヤベルト51の厚さに基づく濃淡分布画像で表示する表示部63とを備える。
【0092】
なお、カメラ12、位置特定機構14及び画像取得部15については、第一実施形態で説明した
図1の表面形状監視装置1と同様に構成できるので、同一符号を付し、説明を省略する。
【0093】
<ラインレーザ>
表面形状監視装置6は、ラインレーザ61のレーザ光照射位置が、プーリ52と対向する位置である。上記ラインレーザ61のレーザ光照射位置は、一対のプーリ52のうち、上流側のプーリ52と対向する位置とすることがより好ましく、プーリ52の中心軸と水平方向又は上記水平方向より上方で対向する位置がさらに好ましく、プーリ52の中心軸と水平方向で対向する位置が特に好ましい。上記ラインレーザ61のレーザ光照射位置をこのような位置とすることで、後述するコンベヤベルト51の厚さの測定精度が向上する。なお、「上流側のプーリ」とは、搬送物Yが搬送される方向に対して起点側に位置するプーリを指す。
【0094】
ラインレーザ61は、レーザ光照射位置が上述の通りである点を除き、第一実施形態で説明した
図1のラインレーザ11と同様に構成されるので、他の説明は省略する。
【0095】
<パターン抽出部>
パターン抽出部62は、カメラ12の撮影画像データから光切断法によりコンベヤベルト51表面の凹凸を取得する。この凹凸は、第一実施形態で説明したように、例えばカメラ12とラインレーザ61のレーザ光照射位置との距離(その距離をAとする)として知ることができる。上述のようにラインレーザ61のレーザ光照射位置は、プーリ52と対向する位置である。このレーザ光照射位置が対向するプーリ52の位置とカメラ12との距離は既知であり(その距離をBとする)、コンベヤベルト51は、裏面側がこの位置と接するように移動していくから、距離(B-A)が、レーザ光照射位置におけるコンベヤベルト51の厚さであると分かる。このようにしてパターン抽出部62では、レーザ光照射位置におけるコンベヤベルト51の厚さを用いて、コンベヤベルト51の表面の凹凸を表すパターンを得ることができる。
【0096】
パターン抽出部62は、レーザ光照射位置におけるコンベヤベルト51の厚さを用いてコンベヤベルト51の表面の凹凸を表すパターンを得る点を除き、第一実施形態で説明した
図1のパターン抽出部13と同様に構成されるので、他の説明は省略する。
【0097】
<表示部>
表示部63は、例えば演算装置と表示装置とにより構成できる。上記演算装置としては、公知のマイクロコントローラ等を用いることができ、上記表示装置としては、公知の液晶ディスプレイ等を用いることができる。この構成の場合、表示部63では、演算装置により濃淡分布画像データを作成し、この画像データを表示装置に表示する。以下、濃淡分布画像データを作成する手順について詳説する。
【0098】
(画像の調整)
表示部63は、パターン抽出部13が抽出するパターンのみを用いて濃淡分布画像データを作成してもよいが、画像取得部15を兼ねるカメラ12の撮影するコンベヤベルト51の画像を併用するとよい。コンベヤベルト51の画像を併用する場合、表示部63は、画像取得部15の画像を参照する。
【0099】
このように表示部63が画像取得部15の画像を参照する構成とする場合、表示部63は画像の調整機能を有してもよい。
【0100】
例えば表示部63が、コンベヤベルト51のレーザ照射位置での照度を検出する露光センサを備え、測定される照度によりカメラ12の絞り等の撮影条件を調整する調整機能を有してもよい。
【0101】
また、照度の高い昼間においては表示部63により表示される画像での確認がより有効であり、逆に照度の低い夜間においては位置特定機構14による位置特定がより有効である。このため、上記調整機能は、昼夜のような極端な照度の変化を検出し、濃淡分布画像の表示の有無を制御してもよい。つまり、上記調整機能は、照度が所定値より大きい場合に濃淡分布画像を表示するように制御してもよい。なお、昼夜の別は露光センサが測定する照度によって判断してもよいが、露光センサに代えて時計を備え、時刻によって管理してもよい。
【0102】
照度が高い場合にはカメラ12でラインレーザ61の反射光を検出し難いことがある。このため、照度が所定値より大きい場合に、上記調整機能はラインレーザ61の出力を高める制御を行ってもよい。なお、安全上の制約等によりラインレーザ61の単体出力を十分に高められない場合がある。このような場合にあっては、1箇所に集光可能な複数のラインレーザ61を設け、出光するラインレーザ61の本数でラインレーザ61の反射光の強度を調整するとよい。
【0103】
また、照度が高く、カメラ12でラインレーザ61の反射光を検出し難い場合に、ラインレーザ61の波長域を選択的に透過させる透過フィルタを用いてもよい。カメラ12が照度に関係なく透過フィルタを通じてラインレーザ61の反射光を検出してもよいが、照度が低い場合には、利得が下がるおそれがある。このため、上記調整機能は、照度が所定値より大きい場合に透過フィルタを用いる制御を行うことが好ましい。
【0104】
(歪み補正)
ラインレーザ61のレーザ光照射位置が対向するプーリ52と、ラインレーザ61及びカメラ12の設置位置の相対関係によりパターン抽出部13が抽出するパターンに歪みが生じる場合がある。この歪みはカメラ12のレンズとして広角レンズ、対角魚眼レンズ、全天球レンズ等を搭載している場合に生じ易い。一方、これらのレンズには少ないカメラ数でコンベヤベルト51の表面形状を監視できる利点がある。
【0105】
この歪みは一様に生じるため、このパターンをそのまま濃淡分布画像データに変換してもよいが、表示部63が、パターン抽出部13が抽出するパターンの歪み補正機能を有するとよい。この歪み補正機能は、演算装置により実現できる。
【0106】
まず、パターンの歪みについて説明する。
図14に歪みが生じているパターンL6を示す。このように全体が傾斜した歪みは、プーリ52に対してカメラ12の平行度がずれている場合に生じ易い。また、
図15に
図14とは異なる歪みが生じているパターンL7を示す。このように全体が湾曲した歪みは、プーリ52に対してラインレーザ61の平行度がずれている場合に生じ易い。
【0107】
ここで、
図14及び
図15で、両端にある高さの低い部分(
図14のL61、
図15のL71)は、プーリ部を示すパターンである。このプーリ部パターンL61、L71は、厚さ0の基準となる線であり、水平方向に延びる直線となるべきものである。従って、このプーリ部パターンL61、L71が水平となるようにパターンを補正することで、歪み補正をすることができる。
【0108】
(濃淡分布画像)
表示部63は、演算装置により、パターン抽出部62が抽出したレーザ光照射位置におけるコンベヤベルト51の厚さを濃淡画像に変換する。具体的には、所定の値(例えばコンベヤベルト51の初期の厚さ)を基準として、コンベヤベルト51の厚さが大きい場合を黒、小さい場合を白となるようなグレースケールデータを作成するとよい。なお、これは一例であって、白黒は逆の割り付けであってもよいし、パターンの種類に応じたカラーデータとしてもよい。
【0109】
また、コンベヤベルト51の画像を併用している場合は、コンベヤベルト51の画像に上記グレースケールデータを重ね合わせて濃淡画像データを作成する。面形状監視装置6は、位置特定機構14を備えているので、パターン抽出部62が抽出したパターンのコンベヤベルト51上での位置が特定できる。従って、容易に位置合わせを行ってコンベヤベルト51の画像に上記グレースケールデータを重ね合わせることができる。
【0110】
上述のようにして作成した濃淡分布画像データは、表示装置に表示される。表示装置はコンベヤシステム5の近傍に配設されていてもよいが、表示装置を遠隔地に配設し、濃淡分布画像データを無線通信等により転送することで表示してもよい。つまり、表示部63は無線通信装置を備えていてもよい。
【0111】
このようにして得られる濃淡分布画像の一例を、
図16を用いて説明する。なお、
図16で、本来グレースケールの濃淡分布画像となるところ、濃淡の相違はハッチングの種類の相違で示している。ハッチングが施されていないベース部分(
図16で白い部分)は、基準となるグレーである。
【0112】
図16において、K1のハッチングは、色が黒い部分を表す。色が黒い部分は、コンベヤベルト51が厚いことを意味し、K1は一定の領域を占めていることから、突起付着であることが分かる。
【0113】
K2、K3及びK4のハッチングは、色が白い部分を表す。色が白い部分は、コンベヤベルト51が薄いことを意味し、K2、K3及びK4は筋状であることから、損傷であり、その方向等から、損傷K2は縦裂き、損傷K3は横割れ、損傷K4は斜行割れに分類される。
【0114】
同様にK5及びK6のハッチングは、色が白い部分を表す。K5及びK6は一定の領域を占めていることから、損耗であることが分かる。その搬送方向の長さから、損耗K5は削れ、損耗K6は摩耗に分類される。
【0115】
K7及びK8のハッチングは、濃い灰色(K1の黒より薄く、ベース部分の灰色より濃い)を表す。このK7及びK8は、周期的に現れ、両者でその周期が一致している。そして、この周期をコンベヤベルト51の搬送速度で除した時間(この周期を通過するのに要する時間)は、プーリ52が1周する時間と等しい。つまり、このK7及びK8は、プーリの異物付着によりコンベヤベルト51が外周側へ押し出された結果、見かけ上コンベヤベルト51が厚く見えていることが分かる。なお、K7及びK8が現れる周期と、プーリ52の周長は概略一致するため、その一致性で判断してもよいが、コンベヤベルト51の厚みの分だけK7及びK8が現れる周期の方が長いこと、コンベヤベルト51とプーリ52との間に滑りによるロスがあることなどにより誤差が生じ易い。このため、上述のようにプーリ52が1周する時間との対比で判断することが好ましい。
【0116】
プーリ52はモータにより回転する場合が一般的であるため、プーリ52が1周する時間は、このモータの磁力の変化から容易に測定することができる。表面形状監視システム4が、このようなプーリ52が1周する時間を測定する周期検出機構を備え、表示部63がこの周期検出機構により測定される時間と同期して発生するパターンを削除するとよい。このような機能を有することで、プーリ52に起因するパターンを除外することができる。
【0117】
なお、K9のハッチングは、搬送方向の中央部で色が黒く、ベース部分の境界に近づくにつれて色がベース部分の灰色に近づく部分を表す。またK9は、コンベヤベルト51を斜めに横断している。このK9はコンベヤベルト51のジョイント部である。
【0118】
<利点>
当該表面形状監視システム4は、ラインレーザ61のレーザ光照射位置をプーリ52と対向する位置とする。コンベヤベルト51は、プーリ52により位置が固定され易いので、コンベヤベルト51の片側から表面形状を測定する場合であっても、レーザ光照射位置でのコンベヤベルト51の厚さを算出することができる。これにより当該表面形状監視システム4は、表面が均等に摩耗している場合であっても検知することができる。また、当該表面形状監視システム4では、パターン抽出部62が抽出するパターンをこのコンベヤベルト51の厚さに基づいた濃淡分布画像として表示するので、視認性が高まり、コンベヤベルト51の表面の状態を画像上で確認し易くすることができる。
【0119】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0120】
上記実施形態では、表面形状監視装置の画像取得部の画像取得にラインレーザの反射光を撮影するカメラを流用する場合を説明したが、画像取得部の画像取得に上記カメラとは別のカメラを設ける構成も本発明の意図するところである。
【0121】
上記実施形態では、表面形状監視装置の位置特定機構に反射型変位計を用いる場合を説明したが、他の方法により位置特定を行ってもよい。例えば位置特定機構が、コンベヤベルトの特定位置に埋め込まれた位置発信機と、この位置発信機からの信号を検出する受信機とを備え、位置発信機から発信する信号を検出することで、コンベヤベルトの表面での位置を特定してもよい。このような位置発信機としては、RFIDタグ、光電センサ、渦電位センサ等を用いることができる。また、コンベヤベルトの特定位置に、コンベヤベルトの表面に露出するように反射マークを埋設し、この反射マークからのラインレーザの反射光を、その輝度や色の違いにより検出することで位置特定を行ってもよい。
【0122】
上記実施形態では、摩耗量測定システムの厚さ測定装置がコンベヤベルトの幅方向の1箇所のベルト厚さを測定する場合を説明したが、2箇所以上の厚さを測定してもよい。複数箇所のベルト厚さを測定することで、コンベヤベルトの幅方向のベルト厚さの測定精度を高めることができる。一方、測定箇所を1箇所とする場合は、厚さ測定装置の装置数を減らすことができるので、摩耗量測定システムの製造コストを低減できる。
【0123】
上記実施形態では、摩耗量測定システムの厚さ測定装置として、一対の反射型変位計を用いる場合を説明したが、コンベヤベルトのベルト厚さが測定できる限り、厚さ測定装置は一対の反射型変位計に限定されない。例えば、コンベヤベルトの両面に接触してその接触子間の距離によりベルト厚さを測定する接触型の厚さ測定装置を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の表面形状監視装置は、種々のコンベヤベルト表面の異常を1つの安価な装置で検出できる。また、本発明の表面形状監視装置及びこの表面形状監視装置を用いた摩耗量測定システムは、コンベヤベルト表面の異常の誤判定により発生する操業損失を低減できる。
【0125】
従って、本発明の表面形状監視装置及び摩耗量測定システムは、製鉄所、火力発電所、採掘所等の連続稼働を行うコンベヤベルトの予防保全に有効である。また、本発明の表面形状監視装置は、種々の異常を検知できるので、伝動ベルトの摩耗、シンクロ歯部摩耗、蛇行、乗り上げ、切断等の異常検知に用いることもできる。
【符号の説明】
【0126】
1、6 表面形状監視装置
2、3 摩耗量測定システム
4 表面形状監視システム
5 コンベヤシステム
11 ラインレーザ
12 カメラ
13 パターン抽出部
14 位置特定機構
15 画像取得部
20 厚さ測定装置
21 反射型変位計
30 摩耗量算出部
40 厚さ測定装置
41 反射型変位計
42 鏡
43 フレーム
43a 支持棒
51 コンベヤベルト
52 プーリ
61 ラインレーザ
62 パターン抽出部
63 表示部
X コンベヤシステム
X1 コンベヤベルト
X2 プーリ
X3 支持ローラ
X4 ブレード型クリーナ
Y、Y1、Y2 搬送物
Z 接合部
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7 パターン
L61、L71 プーリ部パターン
K1 突起付着
K2、K3、K4 損傷
K5、K6 摩耗
K7、K8 プーリ異物付着
K9 ジョイント部
P 測定位置
Q1、Q2 レーザ光