(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】消火手段を備える喫煙物品
(51)【国際特許分類】
A24D 1/10 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
A24D1/10
(21)【出願番号】P 2019529644
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2017083383
(87)【国際公開番号】W WO2018114848
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】アルヴァレス デ ラ カデナ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ベッソ クレマン
(72)【発明者】
【氏名】グランジャン エメリク
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-139797(JP,U)
【文献】米国特許第4121597(US,A)
【文献】国際公開第2015/162730(WO,A1)
【文献】特開平2-238874(JP,A)
【文献】特開平10-57042(JP,A)
【文献】中国実用新案第201467987(CN,U)
【文献】国際公開第03/073877(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/00-1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙物品であって、
一回分のたばこ材料と、
前記一回分のたばこ材料を囲むラッパーと、
前記一回分のたばこ材料の下流に配置されたフィルターと、
内側くぼみを画定し、前記フィルターを前記ラッパーに取り付ける中空管であって、前記ラッパーの貼り付け部分が前記内側くぼみ内に受けられ、かつ前記中空管に永久的に固定された中空管とを備え、
接着剤の非活性化に伴い、前記一回分のたばこ材料の少なくとも一部分が、前記ラッパー内で前記フィルターに対して摺動可能となるように、前記一回分のたばこ材料の外表面上、または前記ラッパーの内表面上、またはその両方の上に提供された熱的に非活性化可能な接着剤によって、前記一回分のたばこ材料の下流端が前記ラッパーに固定されている、喫煙物品。
【請求項2】
前記一回分のたばこ材料の長さが
40ミリメートル未満である、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
前記一回分のたばこ材料の長さが少なくとも
12ミリメートルである、請求項1または請求項2に記載の喫煙物品。
【請求項4】
前記ラッパーの前記貼り付け部分の長さが少なくとも
1ミリメートルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項5】
前記ラッパーの前記貼り付け部分の長さが
10ミリメートル未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項6】
前記一回分のたばこ材料がたばこカットフィラーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項7】
前記一回分のたばこ材料が捲縮した再構成たばこを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項8】
前記熱的に非活性化可能な接着剤が、前記一回分のたばこ材料の前記外表面、または前記ラッパーの前記内表面、またはその両方の貼り付け領域の上に提供されていて、前記貼り付け領域が前記一回分のたばこ材料の周囲に円周方向に延びる、請求項1~7のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項9】
前記熱的に非活性化可能な接着剤が、前記一回分のたばこ材料の前記外表面上、または前記ラッパーの前記内表面上、またはその両方の上に、前記一回分のたばこ材料の周囲に螺旋状のパターンで提供されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項10】
前記フィルターに沿った位置で換気ゾーンを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項11】
前記中空管に沿った位置で換気ゾーンを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項12】
前記非活性化後の前記接着剤の接着力が
0.15ニュートン未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項13】
非活性化前の前記接着剤の接着力が、非活性化後の前記接着剤の接着力の少なくとも
2倍である、請求項1~12のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項14】
前記接着剤が
120℃未満の非活性化温度を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項15】
前記接着剤が
90℃未満の非活性化温度を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこロッドおよびフィルターを含む喫煙物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルター紙巻たばこは典型的に、紙ラッパーで囲まれた一回分の喫煙可能材料(たばこカットフィラーなど)を含むロッドと、包まれた一回分のたばこと端と端を接して整列され、チッピングペーパーによってそれに取り付けられた円筒形のフィルターとを備える。喫煙中、喫煙可能材料のロッドはフィルターから最も遠い端部で点火され、ロッドの点火端からの煙はロッドに沿ってフィルターを通して消費者に引き出される。喫煙可能材料のロッドが喫煙されると、燃焼する炭化部はロッドの口側端に向かって進む。
【0003】
消費者は典型的に、燃焼する炭化部がフィルターに到達しつつある時に紙巻たばこを消す。これは一般的に、紙巻たばこが消火される灰皿またはその他の適切な表面の使用を必要とする。これは望ましくないことに、消費者の指に不快な匂いを残す場合がある。その他にも、消費者が紙巻たばこを消火するために適切な表面にアクセスすることがいつも容易であるとは限らない場合がある。
【0004】
そのため、消費者の体験を促進する目的で、フィルター付き喫煙物品の特徴および機能を改善するニーズがあると思われる。特に、消費者が灰皿またはその他の適切な表面を使用することなく、喫煙物品を簡単に消火できるように、斬新でありかつ改善されたフィルター付き喫煙物品を提供することが望ましいであろう。加えて、既存の装置に何らかの大々的な修正を施す必要なく簡単に製造できる、フィルター付き喫煙物品を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明によると、一回分のたばこ材料と、たばこロッドを囲むラッパーと、一回分のたばこ材料の下流に配置されたフィルターと、内側くぼみを画定し、フィルターをラッパーに取り付ける中空管とを備える喫煙物品が提供されている。ラッパーの貼り付け部分は内側くぼみ内に受けられ、中空管に永久的に固定されている。接着剤の非活性化に伴い、一回分のたばこ材料の少なくとも一部分がラッパー内でフィルターに対して摺動可能になるように、一回分のたばこ材料の下流端は、一回分のたばこ材料の外表面上、またはラッパーの内表面上、またはその両方の上に提供された熱的に非活性化可能な接着剤によって、ラッパーに固定されている。
【0006】
本明細書で使用する「上流」および「下流」という用語は、主流煙がフィルターを通して喫煙物品の点火する末端から引き出される時の主流煙の方向に対する、喫煙物品の要素間の相対的位置を記述するために使用される。
【0007】
本明細書で使用する「長軸方向」という用語は、下流または近位端とそれに向かい合った上流または遠位端との間の方向を描写するために使用され、また「横断」という用語は、長軸方向と実質的に直角を成す方向を描写するために使用される。
【0008】
本発明の文脈内で「非活性化可能」という用語は、所定の条件下でのその粘着力または接着力の少なくとも有意な部分を失う(すなわち、「非活性化される」)接着剤を説明するために使用される。「熱的に非活性化可能な接着剤」は、接着剤の「非活性化温度」またはそれ以上の温度に加熱された後のその接着力の減少を示す。
【0009】
熱的に非活性化可能な接着剤の「非活性化温度」は、接着剤が非活性化される温度、すなわち接着剤の接着が著しく減少する温度である。非活性化が温度範囲で達成される実施形態において、非活性化温度は接着の減少が始まる温度である。
【0010】
一部の実施形態において、非活性化温度は、接着剤の融点、すなわち接着剤の状態が固体から液体に変化する温度と一致する。こうした物質の状態の変化に、接着剤の接着強度の著しい減少が伴い、接着剤の粘性の増加と随意に関連付けられうる。これは典型的に、結晶性ポリマーを含む接着剤での場合であり、溶融は体積およびエンタルピーの不連続的な変化を伴う。
【0011】
その他の実施形態において、非活性化温度は接着剤のガラス転移温度と一致し、すなわち接着剤が硬質および比較的脆いガラス状態から粘性のあるゴム状態へと変化する温度と一致する。ガラス転移には接着剤の接着強度の著しい減少が伴う。これは典型的に、非晶質ポリマーを含む接着剤での場合であり、ガラス転移には熱容量および熱膨張係数の不連続的な変化が伴う。理論に拘束されることを望むものではないが、これはポリマー骨格の剛性の変化に関連すると理解される。
【0012】
さらなる実施形態において、非活性化温度は、接着剤の分解温度、すなわち水分の喪失または主要ポリマー骨格にゆるく結合された他の基の喪失、または熱分解、またはその他の反応に起因する重量減少を典型的に伴う分解プロセスを接着剤が経る温度と一致する。
【0013】
本明細書で使用される「接着力」という用語は、接着剤が表面に貼り付けられ、二つの表面を一つに結合する能力を意味する。この力は、二つの紙の細片の両方の幅を横切って横断する線に沿って提供された接着剤によって互いに接着されたこれら二つの紙の細片を取り外すまたは剥がすために必要な最小引張応力を評価することによって測定される。増大する牽引(動的負荷)が室温で紙の細片にかけられ、繊維が引き裂かれることなく二つの紙の細片が分離される引張応力が「接着力」であると見なされる。
【0014】
同じ設定が、非活性化温度を決定するために使用されうる。室温での接着力よりも小さい所定の荷重が紙の細片に適用され、所定の荷重が紙の細片を分離するのに十分な状態になるまで温度が増加する。紙の細片が分離される温度は、「非活性化温度」であると見なされる。
【0015】
「ガス浸透性」という用語は本明細書を通して、浸透、すなわち材料を通したガスまたはガス状混合物(浸透物)の分子の拡散を可能にする所定の材料の傾向を説明するために使用される。浸透は拡散を通じて起こり、従って浸透物は濃度勾配に基づき移動する。浸透性は、面積の単位で、一般には平方メートルで測定される。
【0016】
本明細書で使用する「不通気性」という用語は、材料の隙間または空孔を通して、流体(特に、空気および煙)の通過を可能にしない材料を説明するために使用される。中空管が空気および煙に対して不通気性の材料から形成される場合、中空管内に引き出された空気および煙は、内側くぼみに沿ってフィルターに向かってのみ流れることができる。
【0017】
本発明による喫煙物品において、フィルターは、フィルターと一回分のたばこ材料の間に延びる内側くぼみを画定する中空管によって、一回分のたばこ材料(例えば、たばこカットフィラーまたは再構成たばこ)を囲むセルロース系ラッパーに取り付けられている。ラッパーの貼り付け部分はくぼみ内に受けられ、またラッパーの外表面上、または中空管の内表面上、またはその両方の上に提供された接着剤は、ラッパーを中空管に固定する。一方で、一回分のたばこ材料は、熱的に非活性化可能な接着剤によって、ラッパーに貼り付けられている。こうして、非活性化に伴い、一回分のたばこ材料の少なくとも一部分は、中空管内へと、フィルターに向かって自由に摺動するようになる。
【0018】
中空管をラッパーに取り付ける接着剤は、熱的に非活性化可能ではない。一方で、一回分のたばこ材料をラッパーに固定する接着剤は、非活性化温度よりも高い温度にさらされた時に不活性化される。使用中、この状態は、燃焼する炭化部がラッパーの下流端の貼り付け部分に近づく時に達成されうる。従って、フィルターを吸煙する消費者は、一回分のたばこ材料の残りの部分(および潜在的にいくらかの灰)を中空管内へと効果的に引き出すことができる。これによって、喫煙物品の消火が生じる。理論に拘束されることを望むものではないが、これは特にフィルター付近の位置で、くぼみ内での酸素の可用性の低下に関連すると理解される。
【0019】
従って、消費者にとって、灰皿を必要とせず、または喫煙物品をもみ消すための別の表面の必要とせずに、本発明による喫煙物品を消火することが特に容易である。これは、喫煙物品を使用する斬新かつ独特な方法を提供する方法で喫煙物品を扱うことによって有利に達成される。
【0020】
さらに、たばこのもみ消しを手作業で行う必要性が著しく低減されるため、消費者の指に不快な匂いが残る可能性は低い。実際に、消費者は喫煙中にフィルターによって紙巻たばこを保持し続けることができる。
【0021】
本発明による喫煙物品は製造が簡単であり、既存の装置に対する何らかの大幅な修正を必要としない。
【0022】
本発明による喫煙物品において、たばこロッドの長さは約40ミリメートル未満であることが好ましい。たばこロッドの長さは、約30ミリメートル未満であることがより好ましい。加えて、または別の方法として、たばこロッドの長さは少なくとも10ミリメートルであることが好ましい。たばこロッドの長さは、少なくとも約15ミリメートルであることがより好ましい。特に好ましい実施形態において、たばこロッドの長さは約20ミリメートルである。長さが40ミリメートル未満のたばこロッドでは、使用中に接着剤が非活性化されると、消費者がたばこロッドの残りや灰を中空管に引き出すのに十分な吸引力をフィルターに簡単に適用できることが分かっている。同時に、たばこロッドは、従来的なフィルター紙巻たばこによって得られるものにできるだけ近い喫煙体験、すなわちたばこロッドを実質的に消費するために約6~8回の吸煙が必要とされる喫煙体験を消費者に提供するような長さを有することが望ましい。
【0023】
好ましい実施形態において、一回分のたばこ材料の貼り付け部分の長さは、少なくとも約1ミリメートルである。加えて、または別の方法として、貼り付け部分の長さは、約10ミリメートル未満であることが好ましい。貼り付け部分の長さは、約8ミリメートル未満であることがより好ましい。特に好ましい実施形態において、一回分のたばこ材料の貼り付け部分の長さは約5ミリメートルである。
【0024】
一部の実施形態において、一回分のたばこ材料は、たばこカットフィラーを含む。たばこカットフィラーのたばこ密度は、少なくとも約200ミリグラム/立方センチメートルであることが好ましい。たばこカットフィラーのたばこ密度は、少なくとも約250ミリグラム/立方センチメートルであることがより好ましい。たばこカットフィラーのたばこ密度は、少なくとも約300ミリグラム/立方センチメートルであることがより一層好ましい。加えて、または別の方法として、たばこカットフィラーのたばこ密度は、約700ミリグラム/立方センチメートル未満であることが好ましい。たばこカットフィラーのたばこ密度は、約600ミリグラム/立方センチメートル未満であることがより好ましい。たばこカットフィラーのたばこ密度は、約500ミリグラム/立方センチメートル未満であることがより一層好ましい。一回分のたばこ材料のたばこ密度は、一回分のたばこ材料の全長にわたって実質的に一定であってもよい。その他の実施形態において、たばこ密度は一回分のたばこ材料の長さに沿って変化し、一回分のたばこ材料の貼り付け部分でのたばこ密度は、一回分のたばこ材料の上流端でのたばこ密度よりも大きい。
【0025】
その他の実施形態において、一回分のたばこ材料は捲縮した再構成たばこを含む。これは、一回分のたばこ材料が単一片の再構成たばこから実質的に形成されうるという点で有利であり、そのため一回分のたばこ材料とラッパーの間で、より強い接続が創出されうる。一例として、たばこロッドは捲縮したキャストリーフから形成されうる。
【0026】
少なくとも接着剤の点が、一回分のたばこ材料をラッパーに固定するために貼り付け部分に沿った位置に提供されている。一部の実施形態において、熱的に非活性化可能な接着剤は、一回分のたばこ材料の外表面、またはラッパーの内表面、またはその両方の貼り付け領域の上に提供されていて、貼り付け領域は一回分のたばこ材料の周囲に円周方向に延びる。実際には、一回分のたばこ材料をラッパーに固定するために接着剤のリングが提供されている。
【0027】
理論に拘束されることを望むものではないが、燃焼する炭化部が一つのこうした喫煙物品の貼り付け部分に接近し、接着剤が非活性化温度に等しいかそれを上回る温度に加熱された時に、一回分のたばこ材料とこうした一つの接着リングによって提供されたラッパーチューブとの間の構造的接続が実質的に完全に排除されることが理解される。これは、リング全体が実質的に同一の温度に加熱されるためであり、そのため中空管の内部にある一回分のたばこ材料の残りの部分を引き出すために必要な力は、ほぼ瞬時に減少する。
【0028】
代替的な実施形態において、熱的に非活性化可能な接着剤は、一回分のたばこ材料の外表面上に、またはラッパーの内表面上に、またはその両方の上に、たばこロッドの周りで所定の長さにわたり螺旋状のパターンで提供されている。実際には、接着剤は、たばこロッドの周囲に、および異なる長軸方向の位置に提供されている。理論に拘束されることを望むものではないが、燃焼する炭化部が一つのこうした喫煙物品の貼り付け部分に接近し、接着剤が非活性化温度に等しいかそれを上回る温度に加熱された時に、一回分のたばこ材料とこうした一つの接着剤の螺旋によって提供されたラッパーとの間の構造的接続は、燃焼する炭化部が接近するにつれて次第に弱まる。これは、より上流の位置での接着剤の螺旋の部分が、より下流の位置での接着剤の螺旋の部分よりも早く非活性化温度に達するためである。従って、中空管内の一回分のたばこ材料の残りを引き出すのに必要な力は緩やかに減少する。
【0029】
従って、貼り付け部分のための異なる接着剤パターンを選択することによって、使用中に喫煙物品を効果的に消火するために必要な力を微調整することが有利なことに可能となる。
【0030】
中空管のガス浸透性は、約10コレスタ単位未満であることが好ましい。中空管は実質的に不通気性であることがより好ましい。
【0031】
一部の実施形態において、喫煙物品は換気ゾーンを含む。換気ゾーンは、フィルターに沿った位置、または中空管に沿った位置にありうる。喫煙中、消費者は、一回分のたばこ材料の残りを中空管の中に引き出す時になると、指で換気開口部を塞ぐべきであり、これは、そうしなければ換気ゾーンによって生じる圧力降下が、消費者の塞ぐ能力に影響を与えうるためである。
【0032】
喫煙済みの一回分のたばこ材料の残りを中空管内へと引き出すために、消費者は、喫煙済みの一回分のたばこ材料のRTD(引き出し抵抗)と喫煙済みの一回分のたばこ材料の断面積との積に比例した力を喫煙済みの一回分のたばこ材料にかける。喫煙済みの一回分のたばこ材料のRTDは、灰のRTDと、燃焼する炭化部のRTDと、残りのたばこのRTDとの和に、ほぼ一致する。
【0033】
本発明による喫煙物品において、喫煙済みのたばこロッドのRTDは少なくとも約20ミリメートルH2Oであることが好ましい。喫煙済みのたばこロッドのRTDは好ましくは、少なくとも約30ミリメートルH2Oであることがより好ましい。喫煙済みのたばこロッドのRTDは好ましくは、少なくとも約40ミリメートルH2Oであることがより一層好ましい。加えて、または別の方法として、喫煙済みのたばこロッドのRTDは約200ミリメートルH2O未満であることが好ましい。喫煙済みのたばこロッドのRTDは、約180ミリメートルH2O未満であることがより好ましい。喫煙済みのたばこロッドのRTDは、約160ミリメートルH2O未満であることがより一層好ましい。特に好ましい実施形態において、喫煙済みのたばこロッドのRTDは、約50ミリメートルH2Oである。換気ゾーンを含む実施形態において、消費者は、喫煙済みの一回分のたばこ材料の重み付けされたRTD値と、喫煙済みの一回分のたばこ材料の断面積との積に比例する力を喫煙済みの一回分のたばこ材料にかける必要があり、ここで重み付けされたRTD値は、換気ゾーンによって誘発される圧力降下を考慮して、通気されていない喫煙物品について補正される。理論に拘束されることを望むものではないが、換気レベルが高いほど、喫煙済みの一回分のたばこ材料のRTDが低くなることが理解される。
【0034】
非活性化後の接着剤の接着力は、約0.15ニュートン未満であることが好ましい。非活性化後の接着剤の接着力は、実質的にゼロであることがより好ましい。
【0035】
非活性化の前に、接着剤は意図された機能(すなわち、一回分のたばこ材料をラッパーに取り付けること)を実施するために十分な接着力を有することが好ましい。非活性化前の熱的に非活性化可能な接着剤の接着力は、非活性化後の接着剤の少なくとも約2倍であることが好ましい。非活性化前の熱的に非活性化可能な接着剤の接着力は、非活性化後の接着剤の少なくとも約3倍であることがより好ましい。非活性化前の熱的に非活性化可能な接着剤の接着力は、非活性化後の接着剤の少なくとも約5倍であることがより一層好ましく、また非活性化後の接着剤の少なくとも約10倍でありうる。
【0036】
非活性化温度は、接着剤が喫煙物品の燃焼する炭化部にさらされた時に経験されうる任意の温度としうる。接着剤は、約120℃未満の非活性化温度を有することが好ましい。接着剤は、約90℃未満の非活性化温度を有することがより一層好ましい。加えて、または別の方法として、接着剤は少なくとも約70℃の非活性化温度を有することが好ましい。
【0037】
適切な熱的に非活性化可能な接着剤は、ろう、樹脂、ガムまたはタンパク質化合物に由来する接着剤など、天然由来接着剤の中から選択されうる。こうした天然の接着剤は、安定した結合特性を促進するように随意に変更されうる。別の方法として、デンプン、修飾デンプン、炭水化物、および多糖類(デキストリンなど)も、本発明の熱的に非活性化可能な接着剤として使用されうる。デンプン接着剤とデキストリン接着剤は特に、高い利用可能性と比較的低いコストに加えて、優れた接着性と生分解性を提供する。一つのさらなる代替案として、本発明で使用する適切な熱的に非活性化可能な接着剤は、一液型および二液型の接着剤ならびに嫌気性接着剤および湿気硬化型接着剤を含む、合成接着剤の中から選択されうる。
【0038】
一部の実施形態において、非活性化温度は、接着剤の融点、すなわち接着剤の状態が固体から液体に変化する温度と一致する。非活性化温度が接着剤の融点と一致する適切な接着剤の例には、ゼラチン、寒天、蔗糖、微結晶ろう、グアーガムが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
その他の実施形態において、非活性化温度は接着剤のガラス転移温度と一致し、すなわち接着剤が硬質および比較的脆いガラス状態から粘性のあるゴム状態へと変化する温度と一致する。非活性化温度が接着剤のガラス転移温度と一致する適切な接着剤の例には、デンプン、転化糖、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ乳酸、カラゲナンが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
さらなる実施形態において、非活性化温度は、接着剤の分解温度、すなわち水分の喪失または主要ポリマー骨格にゆるく結合された他の基の喪失、または熱分解、またはその他の反応に起因する重量減少を典型的に伴う分解プロセスを接着剤が経る温度と一致する。
【0041】
適切な接着剤の他の例としては、デキストリン、アルギネート、アラビアゴム、天然樹脂(マスティックガムなど)、ロジンエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
また、非活性化可能な接着剤の非活性化に必要な所要時間は、本発明による喫煙物品の性能に影響を与えうる。非活性化は、消費者が過剰な取り外し力をかける必要性を防ぐために十分に急速であるべきである。典型的に、非活性化に必要な所要時間は10秒未満であるべきであり、好ましくは約5秒未満、より一層好ましくは約1秒未満である。
【0043】
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながらさらに本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、本発明による喫煙前の喫煙物品の概略側面図を示す。
【
図2】
図2は、消火直前の
図1の喫煙物品の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明による喫煙物品10を示す。喫煙物品10は、一回分のたばこ材料12と、一回分のたばこ材料12を囲むラッパー14とを備える。さらに、喫煙物品10は、一回分のたばこ材料12の下流に配置されたフィルター16を備える。換気ゾーン160は、フィルター16に沿った位置に提供されている。
【0046】
さらに、喫煙物品は、フィルター16をラッパー14に取り付ける中空管18を備える。従って、内側くぼみ20は、一回分のたばこ材料12とフィルター16の間に画定されている。
【0047】
より詳細には、ラッパー14の貼り付け部分22は内側くぼみ20内に受けられ、ラッパー14の貼り付け部分22の外表面と中空管18の内表面との間に提供された永久接着剤24によって中空管18に永久的に固定されている。
【0048】
一回分のたばこ材料12の下流端26は、一回分のたばこ材料12の外表面上に提供された熱的に非活性化可能な接着剤28によって、ラッパー14に固定されている。
図1の実施形態において、熱的に非活性化可能な接着剤28は、一回分のたばこ材料とラッパーの間の強力な接続を確実にするために、一回分のたばこ材料12の周囲に円周方向に延びる、一回分のたばこ材料12の外表面の貼り付け領域の上に提供されている。熱的に非活性化可能な接着剤28は、約70℃の非活性化温度を有する。
【0049】
使用中に、燃焼する炭化部が中空管18に近づき、灰30が生成されると(
図2を参照)、一回分のたばこ材料12とラッパー14の下流端での温度は上昇する。貼り付け部分22での温度が接着剤28の非活性化温度に達する時、接着剤28は非活性化されて、一回分のたばこ材料12の残りの部分とラッパー14の間の構造的接続がもはやなくなる。こうして、一回分のたばこ材料12の残りの部分は、ラッパー14の残りの部分および中空管18内で、フィルター14に対して摺動可能になる。よって、消費者が次にフィルター14を吸煙する時、一回分のたばこ材料12の残りの部分は灰30とともに、中空管18内へと引き出され(
図3を参照)、これは有利なことに、消費者が灰皿を使用する必要なく、喫煙物品を消火させる。