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特許7165137背景分離補正を用いた蛍光トレーサ剤の非侵襲的モニタリングのためのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】背景分離補正を用いた蛍光トレーサ剤の非侵襲的モニタリングのためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/20 20060101AFI20221026BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20221026BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
A61B5/20
A61B10/00 E
G01N21/64 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019541064
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 US2018016053
(87)【国際公開番号】W WO2018140984
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2019-09-27
(31)【優先権主張番号】62/452,021
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517175301
【氏名又は名称】メディビーコン,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キーティング、ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ、キンバリー
(72)【発明者】
【氏名】ベッチェル、ケイト
(72)【発明者】
【氏名】ソロモン、エドワード
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0006116(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/20
A61B 10/00
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経時的に変化する光学特性を有する拡散反射媒体内に存在する外因性蛍光剤から放出された経時的に変化する蛍光をモニタリングするためのシステムであって、
少なくとも1つのセンサヘッドと、
前記少なくとも1つのセンサヘッドに接続されたコントローラとを備え、
前記センサヘッドの各々は、
励起波長光及び/または発光波長光を患者の第1の領域に送達するように適合された1つ以上の光源と、
前記患者の第2の領域で励起波長光及び/または発光波長光を検出するように構成された第1の光検出器であって、励起波長光を遮断するフィルタ付きでない、該第1の光検出器と、
前記患者の第3の領域で励起波長及び/または発光波長光を検出するように構成された第2の光検出器であって、励起波長光を遮断するフィルタ付きの、該第2の光検出器とを備え、
前記コントローラは、
1つ以上のプロセッサと、
命令を格納するメモリとを備え、
前記1つ以上のプロセッサによる前記命令の実行の結果、前記システムは、
外因性蛍光剤の投与の前後にわたる所定のデータ取得期間において前記患者から取得された少なくとも2つの測定値を各々有する複数の測定データ項目を含む測定データセットを用意する動作であって、
前記少なくとも2つの測定値が、前記第1の領域を介した、励起波長光による前記拡散反射媒体の照明中に、前記第2の光検出器によって前記拡散反射媒体に隣接する前記第3の領域で検出されたFlr信号と、少なくとも1つのDR信号とを含み、
前記少なくとも1つのDR信号が、
前記拡散反射媒体に隣接する前記第1の領域を介した、励起波長光による前記拡散反射媒体の照明中に、前記第1の光検出器によって前記拡散反射媒体に隣接する前記第2の領域で検出されたDR 号、
前記第1の領域を介した発光波長光による前記拡散反射媒体の照明中に、前記第1の光検出器によって前記第2の領域で検出されたDRem信号、及び、
前記第1の領域を介した発光波長光による前記拡散反射媒体の照明中に、前記第2の光検出器によって前記第3の領域で検出されたDRem,filtered信号から選択される、該動作と、
前記測定データセットの薬剤投与後部分を識別する動作と、
前記測定データセットの前記薬剤投与後部分における前記各測定項目の前記各Flr信号を、補正された蛍光信号に変換する動作であって、(i)前記Flr信号に対する励起波長光の漏出の影響を除去する動作、及び(ii)前記Flr信号に対する自家蛍光の寄与を除去する動作を含む、該動作と、
前記測定データセットの前記薬剤投与後部分における前記各測定項目の前記補正された蛍光信号をモニタリングする動作と、
を実施するように構成され、
(i)前記Flrに対する励起波長光の漏出の影響を除去する前記動作は、
下記の方程式(21)
(式中、CExLTは較正係数)を用いて、前記D 号を、励起波長光の漏出のレベルを表すExLT信号に変換する動作と、
下記の方程式(23)
用いて、前記Fr信号を、検出された発光波長蛍光のみを表す補正されたFlrphotons信号に変換する動作とを含み、
(ii)前記Flr信号に対する自家蛍光の寄与を除去する動作は、
前記外因性蛍光剤の投与前に取得された前記測定データセットの部分についてのFlr、平均値または中央値のいずれかの値を決定することによって、前記拡散反射媒体内に存在する内因性発色団から放射された固有の自家蛍光を表すIFauto信号を求める動作と、
前記Flrphotons信号から前記IFauto信号を減算して前記補正された蛍光信号を求める動作とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記CExLTを取得する動作をさらに含み、
前記CExLTを取得する前記動作は、
非蛍光固体ファントムから測定値を取得する動作であって、前記測定値が、
前記第2の光検出器を用いて測定された前記Flr信号、及び
前記第1の光検出器を用いて測定された励起波長光信号DRex, measを含む、該動作と、
下記の方程式(22)を用いて前記CExLTを算出する動作と、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
患者の腎機能を測定するためのシステムであって、
少なくとも1つのセンサヘッドと、
前記少なくとも1つのセンサヘッドに接続されたコントローラとを備え、
前記センサヘッドの各々は、
励起波長光及び/または発光波長光を患者の第1の領域に送達するように適合された1つ以上の光源と、
前記患者の第2の領域で励起波長光及び/または発光波長光を検出するように構成された第1の光検出器であって、励起波長光を遮断するフィルタ付きでない、該第1の光検出器と、
前記患者の第3の領域で励起波長及び/または発光波長光を検出するように構成された第2の光検出器であって、励起波長光を遮断するフィルタ付きの、該第2の光検出器とを備え、
前記コントローラは、
1つ以上のプロセッサと、
命令を格納するメモリとを備え、
前記1つ以上のプロセッサによる前記命令の実行の結果、前記システムは、
外因性蛍光剤の投与の前後に対応するデータ取得期間において患者の組織から取得された少なくとも2つの測定値を各々有する複数の測定データ項目を含む測定データセットを用意する動作であって、
前記少なくとも2つの測定値が、前記第1の領域を介した、励起波長光による拡散反射媒体の照明中に、前記第2の光検出器によって前記拡散反射媒体に隣接する前記第3の領域で検出されたFlr信号と、少なくとも1つのDR信号とを含み、
前記少なくとも1つのDR信号が、
前記拡散反射媒体に隣接する前記第1の領域を介した、励起波長光による前記拡散反射媒体の照明中に、前記第1の光検出器によって前記拡散反射媒体に隣接する前記第2の領域で検出されたDR 号、
前記第1の領域を介した、発光波長光による前記拡散反射媒体の照明中に、前記第1の光検出器によって前記第2の領域で検出されたDRem信号、及び、
前記第1の領域を介した発光波長光による前記拡散反射媒体の照明中に、前記第2の光検出器によって前記第3の領域で検出されたDRem,filtered信号から選択される、該動作と、
前記測定データセットの薬剤投与後部分を識別する動作と、
前記測定データセットの前記薬剤投与後部分における前記各測定データ項目の各Flr信号を、前記拡散反射媒体内に存在する前記外因性蛍光剤から放射された蛍光についての補正された蛍光強度を表すIFagent信号に変換する動作であって、
(i)前記Flrに対する励起波長光の漏出の影響を除去する動作、及び(ii)前記Flr信号に対する自家蛍光の寄与を除去する動作を含む、該動作と
前記測定データセットの平衡後部分を識別する動作と、
前記測定データセットの異なる複数の平衡後部分における前記IF agent 信号について減衰曲線適合を行う動作と、
前記減衰曲線適合によって得られる前記IF agent 信号の変化率に基づいて前記患者の前記腎機能を判定する動作と、
を実施するように構成され、
(i)前記Flrに対する励起波長光の漏出の影響を除去する前記動作は、
下記の式(21)
(式中、CExLTは較正係数)を用いて、前記D 号を、励起波長光の漏出のレベルを表すExLT信号に変換する動作と、
下記の式(23)
を用いて、前記Fr信号を、検出された発光波長蛍光のみを表す補正されたFlrphotons信号に変換する動作とを含み、
(ii)前記Flr信号に対する自家蛍光の寄与を除去する前記動作は、
前記外因性蛍光剤の投与前に取得された前記測定データセットの部分についてのFlr信、平均値または中央値のいずれかの値を決定することによって、前記拡散反射媒体内に存在する内因性発色団から放射された固有の自家蛍光を表すIFauto信号を求める動作と、
前記Flrphotons信号から前記IFauto信号を減算して前記IFagent信号を求める動作とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、
前記CExLTを取得する動作をさらに含み、
前記CExLTを取得する前記動作は、
非蛍光固体ファントムから測定値を取得する動作であって、前記測定値が、
前記第2の光検出器を用いて測定された前記信号Flr、及び
前記第1の光検出器を用いて測定された励起波長光信号DR 含む、該動作と、
下記の方程式(22)を用いて前記CExLTを算出する動作と、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のシステムであって、
前記IF agent 信号について減衰曲線適合を行う動作が、
下記の方程式
(式中、IF post-equilibration は、前記測定データセットの前記平衡後部分に対応するIF agent 信号を表し、C 及びC は曲線適合定数であり、tは時間であり、τは時定数である)にしたがって前記IF agent 信号の単一指数関数適合計算を実施する動作と、
前記時定数τを、腎崩壊時定数(RDTC)として割り当てる動作と、
を含み、
前記腎崩壊時定数(RDTC)の逆数が、前記IF agent 信号の時間変化率を表すことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項3に記載のシステムであって、
前記IF agent 信号について減衰曲線適合を行う動作が、
前記各対応するデータ取得時間における前記IF agent 信号の部分を対数変換する動作と、
前記対応するデータ取得時間の関数として、前記対数変換された前記IF agent 信号の線形回帰を行って傾きを求める動作とを含み、
前記傾きが前記IF agent 信号の変化率を表すことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、
前記Flr信号に対する自家蛍光の寄与を除去する前記動作(ii)は、
前記DR ex 信号、DR em 信号、及びDR em,filtered 信号の少なくとも1つと前記Flr信号とを組み合わせに基づいて、前記外因性蛍光剤の投与前に取得された背景固有の自家蛍光を表すIF bkrnd 信号を求める動作を含む、ことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムであって、
前記Flr信号に対する自家蛍光の寄与を除去する前記動作(ii)はさらに、
前記外因性蛍光剤の投与前に取得された前記測定データセットの部分についての前記IF bkrnd 信号の平均値または中央値のいずれかの値を求めることにより、前記拡散反射媒体内に存在する発色団から放射された固有の自家蛍光を表すIF auto 信号を求める動作を含む、ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、
前記Flr信号に対する自家蛍光の寄与を除去する前記動作(ii)はさらに、
前記Flr信号から前記IF auto 信号を減算して前記IF agent 信号を求める動作を含む、ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項8に記載のシステムであって、
前記Flr信号に対する自家蛍光の寄与を除去する前記動作(ii)はさらに、
前記DR ex 信号、DR em 信号、及びDR em,filtered 信号の少なくとも1つと前記IF auto 信号とを組み合わせに基づいて、前記外因性蛍光剤の投与前に取得された背景固有の自家蛍光を表すFlr auto 信号を投影する動作を含む、ことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、
前記Flr信号に対する自家蛍光の寄与を除去する前記動作(ii)はさらに、
前記Flr信号から前記Flr auto 信号を減算して前記IF agent 信号を求める動作を含む、ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年1月30日出願の米国特許仮出願第62/452、021号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般的に、光の散乱及び/または吸収によって特徴付けられる媒体内の蛍光トレーサ剤の非侵襲的モニタリング方法に関する。より詳細には、本開示は、患者の組織内の外因性蛍光トレーサのクリアランスをインビボでモニタリングすることによる腎機能の非侵襲的評価方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な臨床的、生理学的及び病理学的状態によって引き起こされる急性腎不全のリスクを最小限に抑えるために、患者の腎機能をベッドサイドでリアルタイムに動的モニタリングすることが非常に望ましい。このことは、重症患者または重症外傷患者の場合に特に重要である。なぜなら、これらの患者の大部分は、急性肺損傷(ALI)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、代謝亢進、低血圧症、持続性炎症、及び/または敗血症などの重度機能不全の1つまたは複数によって引き起こされる多臓器不全(MOF)のリスクに直面するためである。腎機能はまた、血管造影、糖尿病、自己免疫疾患、及び、腎障害と因果関係がある他の機能不全及び/または傷害などの処置の一部としての腎毒性薬物投与に伴う腎障害に起因して損なわれ得る。患者の状態を評価するため、及び、腎機能の重症度及び/または進行を長期間にわたってモニタリングするために、好ましくは非侵襲的な手法による、腎不全の判定のための簡単、正確、かつ連続的な方法を開発することに大きな関心がある。
【0004】
腎機能の内因性マーカーである血清クレアチニン濃度は、一般的に血液試料から測定され、体重、年齢、及び/または民族性などの患者の人口統計学的因子と組み合わせて、腎機能の一指標である糸球体濾過速度(GFR)を推定するために用いられる。しかしながら、クレアチニンに基づく腎機能の評価は、年齢、水分補給状態、腎灌流、筋肉量、食事摂取、及び他の種々の身体測定的及び臨床的変数などの様々な潜在因子に起因して不正確になる傾向がある。これらのばらつきを補償するために、性別、人種、及び、血清クレアチニン測定値に基づく糸球体濾過速度(eGFR)の推定のための他の関連因子などの因子を組み込んだ、一連のクレアチニンに基づく方程式(ごく最近、シスタチンCに拡張された)が開発された。しかしながら、このeGFR方程式は、上記のばらつき源の大部分を補償するための手段を備えていないため、比較的精度が低い。さらに、このeGFR法は、一般的に、実際のGFRよりも最大72時間遅れて結果が得られる。
【0005】
イヌリン、イオタラム酸塩、51Cr‐EDTA、Gd‐DTPA、及び99mTc‐DTPAなどの外因性マーカー化合物が、GFR測定のための既存の方法で使用されている。123I及び125Iで標識されたo-ヨード馬尿酸または99mTc-MAG3などの他の内因性マーカーが、尿細管分泌過程を評価するための他の既存の方法で使用されている。しかしながら、一般的な外因性マーカー化合物の使用は、患者への放射性物質及び/または電離放射線の導入、及び、血液及び尿試料の体外での労力を要する処理などの様々な望ましくない影響を伴い得るため、これらの外因性マーカーを使用する既存の方法は、患者のベッドサイドでの腎機能のリアルタイムなモニタリングには不適当である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
患者特異的であり、さらには潜在的に変化する状況下での、外因性マーカーを使用した腎排泄率のリアルタイム、正確、かつ繰り返し可能な測定の可用性は、現在実施されているあらゆる方法に対する大幅な改善をもたらすであろう。さらに、外因性化学物質の腎排泄のみに依存する方法は、年齢、筋肉量、及び血圧などに基づく主観的な解釈を必要としない直接的かつ連続的な薬物動態測定を提供するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下の詳細な説明を参照することにより、本開示をより良く理解することができ、また、上記以外の特徴、態様及び利点も明らかになるであろう。以下の詳細な説明は、下記の添付図面を参照して行われる。
【0008】
図1】一態様における単波長腎臓モニタリング装置の概略図である。
図2】一態様における二波長腎臓モニタリングシステムの概略図である。
図3】約430nm~約650nmの範囲の光波長にわたって定義された、外因性蛍光剤のインビボでの非侵襲的モニタリングに関連する様々な装置、材料、及び化合物の吸収率、透過率、及び発光スペクトルを要約したグラフである。
図4】約200nm~約650nmの範囲の光波長にわたって定義された、酸素ヘモグロビン(HbO)及びデオキシヘモグロビン(Hb)の吸収スペクトルを要約したグラフである。
図5】一態様における二波長腎臓モニタリングシステムによるデータ取得に関連する光パルスサイクルのタイミングの概略図であり、各光パルスサイクルは、励起波長及び発光波長において連続的に生成される光パルスを含む。
図6】一態様における腎機能モニタリングシステムのセンサヘッドの側面図である。
図7図6のセンサヘッドの底面図である。
図8】一態様における腎機能モニタリングシステムのセンサヘッドのハウジング内の様々な電気部品の配置を示す、図6のセンサヘッドの上側内部図である。
図9図8の内部図の拡大図である。
図10】一態様における腎機能モニタリングシステムのセンサヘッドの接触面に形成された開口部の概略図である。
図11】一態様におけるセンサヘッドの光検出器による光の同期検出の概略図である。
図12】一態様におけるセンサヘッドによる光信号の変調及び復調の概略図である。
図13】一態様における処理ユニットのサブユニットを示すブロック図である。
図14】合計信号に寄与する様々な現象を示す、時間の関数としての生の蛍光信号のグラフである。
図15】自家蛍光補正を行った場合と行わなかった場合の、時間の関数としての固有の蛍光信号のグラフであり、固有の蛍光信号の分析から誘導された腎低下時定数(RDTC)に対する自家蛍光補正の効果を示す。
図16】時間の関数としての生の蛍光信号のグラフである。合計信号に寄与する様々な現象に起因して、最終的な蛍光信号は、元の背景蛍光信号レベルを下回っている。
図17A】生の蛍光信号及び励起光漏出の、時間の関数としてのグラフである。
図17B図17Aの生の蛍光信号と、図17Aの励起光漏出が除去された生の蛍光信号を含む補正された蛍光信号とを示すグラフである。
図18】外因性蛍光剤の注入前に取得された生の蛍光信号(青色の線)と、自家蛍光信号(緑色の線)とを比較したグラフである。
図19A】外因性蛍光剤の注入前に取得された、生の蛍光信号、自家蛍光信号、及び、拡散反射信号DRex,meas、DRem、及びDRem,filteredを比較したグラフである。
図19B】外因性蛍光剤の注入後に取得された、生の蛍光信号、自家蛍光信号、及び、拡散反射信号DRex,meas、DRem、及びDRem,filteredを比較したグラフである。
図20】生の測定蛍光信号から励起波長光漏出及び自家蛍光の影響を除去するための背景補正方法のステップを要約したフローチャートである。
図21】外因性蛍光剤の注入前及び注入後に取得された、腎臓モニタリング装置によって検出された代表的な生の蛍光信号測定値(IFagent)のグラフである。
図22A】一態様における前処理サブユニットの複数のモジュールを示すブロック図である。
図22B】第2の態様における前処理サブユニットの複数のモジュールを示すブロック図である。
図23】第2の態様における腎機能モニタリングシステムのセンサヘッドの等角図である。
図24図23に示した腎機能モニタリングシステムのセンサヘッドの底面図である。
図25】上側ハウジング及び様々な電気構成要素を除去して内側ハウジングを露出させた、図23に示した腎機能モニタリングシステムのセンサヘッドの等角図である。
図26図25に示したセンサヘッドの内側ハウジングの分解図である。
図27】外因性蛍光剤を投与しない場合の終日にわたるDRex,meas及びFlrmeasを示すグラフである。
図28】外因性蛍光剤の投与の直前及び直後のDRex,meas及びFlrmeasを示すグラフである。
図29】33人の患者のデータベース由来の、経験的に決定されたFlrleakthroughとDRem/DRemFiltとの間の関係を要約したグラフである。
【0009】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ本発明を当業者が実施(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに記載内容に組み入れられたあらゆる方法の実施を含む)することを可能にしている。本発明の特許される技術範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって特定され、当業者が想到可能な他の実施形態もそれに含まれ得る。そのような他の実施形態は、各請求項の文言と異なっていない構成要素を含む場合、またはそれらが各請求項の文言とは実質的には異ならない均等な構成要素を含む場合、それらの請求項の特定する技術範囲内にあるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載された方法及び材料と同一または均等の任意の方法及び材料が本開示の実施または試験に使用され得るが、好ましい材料及び方法は以下に記載される。
【0011】
本明細書で使用するとき、サンプルは、単一の取得/遠隔測定チャネルのための信号及び/または遠隔測定アナログデジタル変換器(ADC)から取得された単一の離散データ値を指す。
【0012】
本明細書で使用するとき、測定値は、1つの取得チャネルから取得された一連のサンプルを復調または蓄積することによって生成された単一の離散データ値を指す。
【0013】
本明細書で使用するとき、測定値は、1つの取得チャネルから取得された、復調された同位相の測定値、復調された異位相の測定値、及び平均化された測定値を含むセットを指す。
【0014】
本明細書で使用するとき、測定値サブセットは、単一のLED光源による照明中の全ての取得チャネルについての全ての測定値を含むセットを指す。例えば、1つの取得チャネルの全ての測定値は、復調された同相の測定値、復調された異位相の測定値、及び平均化された測定値を含み得る。
【0015】
本明細書で使用するとき、測定値セットは、各LED光源についての1つの測定値サブセットを含むセットを指す。
【0016】
本明細書で使用するとき、取得とは、測定値セットを取得する全体的なプロセスを指す。
【0017】
本明細書で使用するとき、測定値シーケンスは、1以上の測定値セットのシーケンスを指す。
【0018】
本明細書で使用するとき、遠隔測定値は、遠隔測定ADCの単一チャネルから取得された単一の離散データ値を指す。
【0019】
本明細書で使用するとき、遠隔測定セットは、各遠隔測定チャネルから取得された1つの遠隔測定値を含むセットを指す。
【0020】
本明細書で使用するとき、拡散反射媒体は、光を伝播させる任意の材料を指し、そのような材料には、光が伝播するときに、光を散乱、反射、及び/または吸収することができる複数の部分(moieties)、粒子、または分子が含まれる。複数の部分、粒子、及び/または分子の分布は、均一であってもよいし、不均一であってもよいし、さらには、経時的に変化してもよい。
【0021】
様々な態様では、光学特性が経時的に変化する拡散反射媒体内の蛍光剤から放出される、経時的に変化する蛍光(時変蛍光)をモニタリングするためのシステム及び方法が開示される。一態様では、患者の組織内の外因性蛍光剤から放出される時変蛍光をモニタリングするシステム及び方法が開示される。この一態様のシステム及び方法は、様々な状況、これに限定しないが例えば、外因性患者の腎臓からの蛍光剤の除去に伴う、患者の組織内の外因性蛍光剤から放射される蛍光の減少をモニタリングすることによる、者の生体内の腎機能のインビボでのリアルタイムなモニタリングに使用することができる。本開示のシステム及び装置は、腎機能をモニタリングするための方法及び装置に関連して以下に説明されるが、本開示のシステム及び方法は、光学特性が経時的に変化する拡散反射媒体内の蛍光剤から放射される時変蛍光をモニタリングする任意のシステム及び方法に適用され得ることを理解されたい。
【0022】
図1は、非限定的な例として提供されたシステム100の概略図である。このシステム100は、発光波長(λem)を有する光子のみを検出するように構成された光検出器110を使用して、患者104の関心領域から、発光波長(λem)を有する蛍光102を検出する。一般的に、外因性蛍光剤112は、これに限定しないが、例えば、励起波長(λex)の光106による照明、酵素反応の発生、局所電位の変化、及び外因性蛍光剤に関連する任意の他の既知の励起事象などの励起事象に応答して蛍光102を生成する。一態様では、システム100は、励起波長(λex)の光106を患者104に送達するように構成された光源108を含み得る。この態様では、蛍光102は、光106による照明に応答して生成される。加えて、光106の励起波長(λex)及び蛍光102の発光波長(λem)は、スペクトル的に互いに異なり(すなわち、λexはλemと十分に異なる)、光検出器110は、これに限定しないが例えば光学フィルタなどの任意の既知の光学波長分離デバイスを含むことによって、蛍光102のみを選択的に検出するように構成され得る。
【0023】
いくつかの態様では、蛍光102の変化は、患者の生理学的機能または状態に関する情報を取得するためにモニタリングされ得る。非限定的な例として、外因性蛍光剤112を患者104の循環血管に導入した後に測定された蛍光102の時間依存性減少を分析することによって、患者104の腎機能に関する情報を取得することができる。この非限定的な例では、蛍光102の減少速度は、患者104の腎臓による外因性蛍光剤112の除去速度に比例すると仮定することができ、そのため、これに限定しないが、腎崩壊時定数(RDTC)及び糸球体濾過率(GFR)を含む腎機能の測定値が提供される。
【0024】
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、光検出器110によって検出された蛍光102の強度は、1以上の様々な因子の影響を受け得る。様々な因子としては、これに限定しないが例えば、患者104に送達されるλexの光106の強度またはパワー、光源108と外因性蛍光剤112との間に介在する患者104の介在組織114を通過する光106の散乱及び吸収、光106によって照明される外因性蛍光剤112の濃度、外因性蛍光剤112と光検出器110との間に介在する患者104の介在組織114を通過するλemの蛍光102の散乱及び吸収、発光波長λemの光のみを透過するように構成された任意の光学フィルタを通じた光106(励起光)の漏出、及び、内因性皮膚成分から放出された蛍光が挙げられる。
【0025】
図14は、励起波長光による照明に応答して患者の組織内の内因性蛍光剤から放射された蛍光の波長に対応する発光波長λemで取得された生の蛍光信号の代表的な時間履歴を示すグラフである。内因性蛍光剤の注入前に測定して取得された生の蛍光信号(すなわち、背景信号1402)は、内因性構造体から放出された自家蛍光(Fauto)、及び、生の蛍光信号を生成する光検出器に発光波長光のみを透過させるように構成された任意の光学フィルタを通じた励起波長光(ExLT)の漏出を含み得る。内因性蛍光剤の注入後に測定して取得された生の蛍光信号(Flrmeas1404)は、背景信号1402(Fagent)上に重畳された内因性蛍光剤から放出された蛍光(すなわち、Fauto及びExLT)の強度を含み得る。
【0026】
既存の方法は、一般的に、システム100が測定値を取得する期間を通して、介在組織114内の光学特性が本質的に変化しないと仮定している。そのため、既存の方法は一般的に、外因性蛍光剤112の導入前に、患者104の介在組織114から初期測定値を取得しておき、この初期測定値を差し引くことによって、外因性蛍光剤112の導入後に取得した全てのその後のデータを補正する。しかしながら、患者104の長期間のモニタリング中は、様々な特性の変化に起因して、介在組織114の光学特性の変化が生じ得る。そのような特性の変化としては、これに限定しないが、例えば、光検出器110の患者104に対する光結合効率の変化;血管の拡張、収縮または圧迫によって生じる血液量の変化に起因する例えばヘモグロビンなどの発色団の濃度の変化;酸素状態の変化に起因する例えばヘモグロビンなどの発色団の光学特性の変化;及び、例えば水腫に関連した変化などの組織構造の変化が挙げられる。
【0027】
図16は、内因性蛍光剤の注入の前後に測定された生の蛍光信号のグラフであり、患者からの内因性蛍光剤の腎クリアランスに伴い、背景信号が長期間のデータ取得期間にわたって変化することを示す。図16に示すように、初期背景信号レベル1602は、初期背景信号レベル1602の測定の約9時間後に測定された最終背景信号レベル1604よりも、強度単位が約0.01高い。いかなる特定の理論に限定されるものではないが、データ取得期間中の血圧剤の投与は、励起波長と発光波長の両波長の光を吸収することができる既知の内因性発色団であるヘモグロビンを含む血液の濃度の増加に起因して、患者の皮膚の光学特性を変化させる皮膚紅潮及び関連する皮膚毛細血管の血管拡張を引き起こした可能性があると考えられる。
【0028】
介在組織114の光学特性におけるこれらの動的変化は、蛍光102の長期間測定値に不確実性を導入し得る。非限定的な例として、介在組織114の光学特性の変化は、外因性蛍光剤112を照明する光106の強度またはパワーを変化させて、外因性蛍光剤112によって生成される蛍光102の変化を引き起こし、その結果、外因性蛍光剤112の濃度の変化として誤って解釈され得る。別の非限定的な例として、介在組織114の光学特性の変化は、光検出器110に到達する蛍光102の強度またはパワーを変化させ、この場合もまた、外因性蛍光剤112の濃度の変化として誤って解釈され得る。介在組織114の光学特性の変化の潜在的変化は、蛍光102の測定値、とりわけ上述したような蛍光102の長期間モニタリングに関連する測定値に不確実性を導入し得る。
【0029】
同様に、内因性発色団によって生成される自家蛍光(Fauto)は、外因性蛍光剤によって生成される蛍光と同様の態様で生じるので、介在組織の光学特性の動的変化は、蛍光102の長期の測定期間にわたって自家蛍光(Fauto)レベルの変動性をもたらし得る。非限定的な例として、介在組織114を通過する光106の散乱及び吸収の変化は、内因性発色団を照射する光106の強度またはパワーを変化させ、これにより、データ取得期間にわたって背景蛍光を変化させ得る自家蛍光の変調を引き起こし得る。別の非限定的な例として、介在組織114を通過する自家蛍光の散乱及び吸収の変化は、データ取得期間にわたって、光検出器110によって検出される自家蛍光の強度の変調(自家蛍光の強度の変調は背景蛍光を変調させ得る)を引き起こし得る。背景蛍光の潜在的な変調は、適切に補正しなければ、生の蛍光測定値に不確実性を導入し、さらには、これらの蛍光測定値の分析から得られるパラメータに不確実性を導入し得る。
【0030】
非限定的な例として、患者の皮膚の光学特性の動的変化に関連する自家蛍光の変化は、後述するような、腎機能の尺度である腎崩壊時定数(RDTC)の計算に不確実性を導入し得る。図15は、自家蛍光(IFAgent+AutoFlr、青色の線)を含む内因性蛍光剤の注入前後で測定された生の蛍光信号のグラフである。図15のグラフはまた、後述する方法を用いて生の蛍光信号から自家蛍光の影響を除去することによって算出される補正された蛍光信号(IFAgent,緑色の線)を含む。各信号には、RDTCの計算に関連する曲線適合が重畳されている。図15に示すように、生の蛍光信号を用いて計算された2.76時間のRDTC値は、それに対応する、補正された蛍光信号を用いて計算される2.31時間のRDTC値と比較してかなり高い。
【0031】
様々な態様では、外因性蛍光剤からの蛍光のリアルタイムな測定値をインビボで補正して、患者の組織内の光学特性の変化の影響を除去する方法が提供される。蛍光測定の光学経路とは別の光学経路(すなわち、拡散反射)を通って患者の組織を通過する光の追加の測定値を含めることによって、患者の体内の外因性蛍光剤からの蛍光の長期間モニタリング中の組織の光学特性の変化の定量化を向上させることができる。様々な態様の補正方法にこの追加の測定値を含めることにより、蛍光測定値の忠実度が大幅に向上することが見出された。
【0032】
外因性蛍光剤の蛍光をインビボでモニタリングするための装置、及び、背景信号の変化の影響を除去するために蛍光測定値を補正する方法の詳細は以下に説明する。
【0033】
本開示の装置及び方法は、腎機能の非侵襲性光学的モニタリングに関連して以下に説明されるが、本開示の補正方法は、適切な変更を行った上で、任意の散乱媒体を介して外部線源からEM放射線を送達することによって、及び/または任意の散乱媒体を介して外部検出器に伝播されるEM放射線を受け取ることによって測定を実施するように構成された任意の適合可能な装置に適用され得ることを理解されたい。EM放射線の非限定的な例としては、可視光、近赤外線、赤外線、UV線、及びマイクロ波放射線が挙げられる。散乱媒体としては、これに限定しないが、少なくとも1つのEM周波数のEM放射線を伝播することができる任意の生体材料または非生体材料が挙げられる。散乱媒体の少なくとも一部は、EM放射線を反射及び/または吸収することができる1以上の下部構造体または化合物をさらに含み得る。散乱媒体の非限定的な例としては、哺乳動物の皮膚などの生きているまたは死んでいる生物の組織、追加の粒子(粉塵、流体液滴、または固体粒子物質など)を含むまたは含まない空気などの気体、及び、追加の粒子(気泡または固体粒子物質など)を含むまたは含まない水などの流体が挙げられる。さらに、以下に説明する本開示の装置及び方法は、腎機能の検出に限定されるものではなく、これに限定しないが、肝臓系または胃腸系を含む他の生理学的系の機能の検出に使用するために改変してもよい。
【0034】
システムの説明
【0035】
様々な態様では、上述したような局所的な皮膚特性の差異の影響を除去するために蛍光測定値を補正する本方法は、任意の蛍光モニタリングシステムに組み込まれ得る。そのような蛍光モニタリングシステムとしては、これに限定しないが例えば、患者に注入された外因性蛍光剤が患者から腎排泄されることに伴う、外因性蛍光剤の蛍光の変化を測定することによって腎機能をインビボでリアルタイムに光学的にモニタリングするためのシステムが挙げられる。図2は、一態様における、患者202に注入された外因性蛍光剤の蛍光の測定によって患者202の腎機能を光学的にモニタリングするためのシステム200のブロック図である。システム200は、励起波長(λex)の光を患者202の第1の領域206に送達するように構成された少なくとも1つのセンサヘッド204を含み得る。システム200は、患者202の第2の領域208で発光波長(λem)の光を検出し、かつ、患者202の第3の領域210で励起波長(λex)及び/または発光波長(λem)の光を検出するようにさらに構成される。
【0036】
システム200は、少なくとも1つのセンサヘッド204、操作ユニット214、及び表示ユニット216に動作可能に接続されたコントローラ212をさらに含み得る。様々な態様では、コントローラ212は、詳細については後述する少なくとも1つのセンサヘッド204の動作を制御するように構成される。コントローラ212は、少なくとも1つのセンサヘッド204から、光の測定値を受信するようにさらに構成される。コントローラ212は、少なくとも1つの方法にしたがって、外因性蛍光剤から放射された蛍光に対応する光測定値を補正するようにさらに構成される。そのような方法としては、これに限定しないが例えば、自家蛍光の変化、及び/または、発光波長光のみを検出するように構成された第2の光検出器224に対しての励起波長光の漏出の変化に関連する背景信号の動的変化を示す測定値を用いて蛍光測定値を補正する本開示の方法が挙げられる。コントローラ212は、少なくとも1つのセンサヘッド204から受信した蛍光測定値を、患者202の腎機能を表す要約パラメータに変換するようにさらに構成される。さらに、コントローラ212は、操作ユニット214からのユーザ入力を表す少なくとも1つの信号を受信し、これに限定しないが例えばグラフィカルユーザインターフェース(GUI)などの表示ユニット216上に表示するための1以上のフォームを生成するように構成される。
【0037】
センサヘッド204及びコントローラ212の詳細について以下に説明する。
【0038】
A.センサヘッド
【0039】
様々な態様では、センサヘッド204は、ハウジング内に、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つの光検出器とを含む。図6は、一態様における、センサヘッド204のハウジング600の側面図であり、このハウジング600は、2つの光源及び2つの光検出器を収容するために互いに結合された上側ハウジング602及び下側ハウジング604を含む。下側ハウジング604の底面608は、これに限定しないが例えば外科用接着剤などの生体適合性の接着材料を用いて患者202の皮膚に取り付けられるように構成された接触面606をさらに含む。使用時には、接着材料の接触面606とは反対側の面が、患者202の皮膚に貼着され得る。様々な態様では、接着材料は、光源から患者に光を送達し、かつ、患者から光検出器に蛍光を送達するように構成され得る。一態様では、接着材料は、光学的に透明な材料であり得る。別の態様では、接着材料は、交絡因子となる蛍光が接着材料から生成されることを防止するために、非蛍光材料から製造され得る。
【0040】
様々な他の態様では、上側ハウジング602は、これに限定しないが例えばUSBケーブルなどのケーブルのための内部へのアクセスを提供する、及び/または、インジケータLEDなどの、ハウジング600内に収容された回路によって生成される表示のためのウィンドウを提供するように構成された1以上のケーブル開口部806をさらに含み得る。
【0041】
図7は、図6に示したハウジング600の底面図である。接触面606は、患者の皮膚と、ハウジング600内に収容された光源及び光検出器との間で光を送達するように構成された1以上の開口部704を有する開口プレート702を含み得る。一態様では、開口プレート702は、液体がハウジング600の内部に侵入することを防止するために、下側ハウジング604にエポキシ樹脂で接着され得る。様々な態様では、1以上の開口部704の寸法、配置、及び/または間隔は、詳細については後述するように、システム200の動作の様々な側面を向上させるように選択され得る。別の態様では、接触面606は、患者の皮膚表面から、患者の皮膚表面の温度をモニタリングするように構成された追加の温度センサ228への熱経路を提供するように構成された温度センサ開口部706をさらに含み得る。
【0042】
図8は、ハウジング600内の電子部品の配置を示す概略図である。図8を参照すると、上側ハウジング602及び下側ハウジング604は、ねじ802によって互いに結合され得る。ねじ穴と、2つのハウジング部品との間の接合部分には、液体がハウジング600の内部に侵入することを防止するために、耐水性充填材804が充填され得る。耐水性充填材804としては、これに限定しないが例えば室温加硫シリコーン(RTV)などのシリコーン材料が挙げられる。
【0043】
一態様では、ハウジング600は、上側ハウジング602を貫通して形成されたケーブル開口部806をさらに含み得る。ケーブル開口部806は、これに限定しないが例えばUSBケーブルなどの電気ケーブルのための内部へのアクセスを提供するように構成され得る。一態様では、ケーブルは、後述するように、光源、光検出器、インジケータライト、並びに、関連する電子機器及び回路への電力の供給を可能にし得る。別の態様では、ケーブルは、ハウジング600内の電子部品の動作を可能にするために、ハウジング内への制御信号の通信をさらに可能にし得る。また、ケーブルは、ハウジング600内に収容された1以上のセンサデバイスによって得られた測定値をエンコードするデータ信号の通信を可能にし得る。ハウジング600内に収容された1以上のセンサデバイスとしては、これに限定しないが例えば、第1の光検出器222、第2の光検出器224、追加の光検出器(例えば、第1のモニタフォトダイオード904及び第2のモニタフォトダイオード906)、及び、追加の温度センサ228(図9参照)などが挙げられる。一態様では、ケーブルは、これに限定しないが例えば黒色エポキシ樹脂などの光吸収性接着剤によって、ケーブル開口部806及び隣接する上側ハウジング602に取り付けられ得る。また、ケーブルは、これに限定しないが例えばRTVなどの耐水性充填剤によって、水の侵入に対してシールされ得る。
【0044】
さらなる態様では、ハウジング600は、上側ハウジング602を貫通して形成された少なくとも1つのディスプレイ開口部808をさらに含み得る。一態様では、各ディスプレイ開口部808は、ハウジング600内に収容された電子機器、例えばインジケータLED810によって生成される表示のためのウィンドウを提供するように構成され得る。一態様では、各インジケータLED810は、回路基板812上に配置され得る。一態様では、光パイプ814が、各インジケータLED810の上方の上側ハウジング602のディスプレイ開口部808に、エポキシ樹脂で接着され得る。各光パイプ814には、液体侵入に対する保護のために、RTVなどの耐水性充填材が充填され得る。様々な態様では、少なくとも1つのインジケータLED810は、システム200のユーザがセンサヘッド204の動作状態をモニタリングすることを可能にするために、予め定められたパターンで照明され得る。
【0045】
図9は、一態様におけるハウジング600内の第1の光源218/第2の光源220及び第1の光検出器222/第2の光検出器224の配置を示す、センサヘッド204の内部光学領域の拡大図である。一態様では、第1の光源218及び第2の光源220は第1の光検出器222及び第2の光検出器224から離間されており、第1の光検出器222は第2の光検出器224から離間されており、それらは開口プレート702に固定されたセンサマウント912によって互いに離間されている。一態様では、センサマウント912は、第1の光源218及び第2の光源220からの光が、必ず、患者202の皮膚を通って組み合わされて第1の光検出器222及び第2の光検出器224に到達することを確実にする。第1の検出ウェル908内の第1の光検出器222と、第2の検出ウェル910内の第2の光検出器224との間の離間は、患者202の組織内に存在する外因性蛍光剤によって生成された蛍光信号を、第1の光源218によって生成されたフィルタリングされていない励起光と区別できることを確実にする。
【0046】
再び図9を参照すると、センサマウント912は、アライメントピン914を用いて、第1の光源218と、第2の光源220及び第1の光検出器222及び第2の光検出器224とを含む回路基板(図示せず)に対して位置合わせされ、ねじ916を用いて所定の位置に保持され得る。一態様では、センサマウント912は、これに限定しないが例えば黒色エポキシ樹脂などの光吸収性接着剤を用いて、第1の光源218/第2の光源220及び第1の光検出器222/第2の光検出器224を含む回路基板に固定され得る。この態様では、回路基板とセンサマウント912との間のこの遮光結合は、第1の光源218/及び第2の光源220と第1の光検出器222/第2の光検出器224との間の漏光を防止し、かつ、第1の光検出器222と第2の光検出器224との間の漏光を防止する。詳細については後述するが、センサヘッド204の接触面606とそれに接触する皮膚との間で光を送達するように構成された開口部704は、それに対応する第1の光源218/第2の光源220及び第1の光検出器222/第2の光検出器224に対して正確に位置合わせさせるために、構造的に別体の開口プレート702(図7参照)として形成される。
【0047】
様々な態様では、センサマウント912は、センサヘッド204内の任意の敏感な電子機器、これに限定しないが例えば第1の光検出器222及び第2の光検出器224などのための電気的シールドをさらに提供し得る。一態様では、センサマウント912は、これに限定しないが例えばアルミニウム及びアルミニウム合金などの導電性材料から構成され得る。この態様では、センサマウント912は、導電性のねじ916を用いて回路基板のグランドに電気的に接続され得る。加えて、後述するように、開口プレート702に隣接する光源ウェル902及び/または検出ウェル908/910内に配置されたガラス窓(図2参照)は、これに限定しないが例えば光学フィルタ244及び透明なガラス246などの導電性コーティングをさらに含み得る。センサマウントのガラス窓に適した導電性コーティングの非限定的な例としては、導電性酸化インジウムスズ(ITO)コーティング、及び任意の他の適切な透明な導電性コーティングが挙げられる。
【0048】
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、センサマウント912の導電性材料は、電気的に敏感な検出器222/224を、患者の体から生成または伝達された電気ノイズからシールドするための部分的なファラデーケージを提供する。センサマウント912によって提供される部分的なファラデーケージは、光源ウェル902及び/または検出ウェル908/910内のガラス窓への導電性ITOコーティングによって完成され得る。一態様では、ITOコーティングなどのガラス窓の導電性コーティングは、電気的シールドを提供するために十分な導電性を有し、かつ、患者202の皮膚表面との間の光の送達のために十分に透明である。別の態様では、各ガラス窓のITOコーティングは、任意の既知の電気接地方法を用いて、導電性のセンサマウント912に接地され得る。任意の既知の電気接地方法としては、これに限定しないが例えば、ガラスコーティングをセンサマウント912に接続するワイヤであって、その両端に導電性エポキシ樹脂が取り付けられたワイヤ、または、コーティングされたガラスを、導電性エポキシ樹脂を使用して、各光源ウェル902及び/または検出ウェル908/910内に形成されたレッジまたはフレームなどのガラスフィッティングに直接取り付けるワイヤなどが挙げられる。
【0049】
様々な態様では、ハウジング600の接触面606は、図6及び図7に示すように、これに限定しないが例えば医療グレードの透明な両面接着剤などの生体適合性の接着材料610を用いて患者の皮膚に結合され得る。任意の接着材料が、本開示のシステム100で使用される励起波長及び発光波長において光学的な透過性を有するように選択される。接着材料610は、接触面606上に、開口部704を覆うが、患者202の皮膚との十分な熱接触を確保するために温度センサ開口部706を露出させるように配置され得る。一態様では、センサヘッド204は、必要に応じて、これに限定しないが例えばテガダーム包帯、医療テープ、または他の適切な生体適合性医療ファスナデバイスなどの1以上の追加の生体適合性医療ファスナデバイスを用いて、患者202にさらに固定され得る。
【0050】
一態様では、接触面606は、患者の皮膚の選択された領域での接触面606の正確な位置決めを提供するために、センサヘッド204の前縁の近くに配置され得る。別の態様では、開口部704は、周囲光の侵入を低減するために、接触面606の中心に配置され得る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、接触面606の患者の皮膚への不完全な接着に起因して、及び/または、接触面606のフットプリントのすぐ外側に位置する患者の露出した皮膚を介した周囲光の開口部704への伝播に起因して、周囲光が1以上の開口部704に侵入し得る。
【0051】
再び図6を参照すると、センサヘッド204の底面608は、接触面606の平面から遠ざかるように湾曲しており、これにより、様々な体型及び身体位置へのセンサヘッド204の取り付けが可能になる。センサヘッド204を比較的平坦なまたは凹状の面に取り付ける場合には、底面608と患者202の皮膚表面との間の隙間612に生体適合性フォームを充填することによって、患者202との密接な接触を確実にすることができる。
【0052】
(i)光源
【0053】
様々な態様では、各センサヘッド204は、患者202の第1の領域206に光を送達するように構成された第1の光源218及び第2の光源220を含む。第1の光源218は、励起波長の光を送達するように構成され、第2の光源220は、発光波長の光を送達するように構成される。一態様では、励起波長は、外因性蛍光剤が比較的高い吸光度を示すスペクトル範囲内に入るように選択され得る。別の態様では、放射波長は、外因性蛍光剤が比較的高い発光度を示すスペクトル範囲内に入るように選択され得る。外因性蛍光剤は、患者202の組織内の他の発色団、これに限定しないが例えば赤血球内のヘモグロビン及び/またはメラノサイト内のメラニンなどに対するコントラストを高めるように選択され得る。様々な態様では、外因性蛍光剤は、使用中に患者202の組織内の他の発色団、例えばヘモグロビンなどによる吸光度のばらつきが少ないスペクトル範囲内で測定を行うように選択され得る。
【0054】
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、ヘモグロビン(Hb)は、患者202の組織内の可視光吸収体であり、Hbの吸光度がシステム200の測定期間にわたって変化すると外因性蛍光剤の蛍光の測定が妨げられる可能性がある。ヘモグロビン(Hb)は、循環系の血管を含む実質的にすべての組織内でガス交換を可能にするので、実質的にすべての組織は、ヘモグロビン濃度の変動に起因するシステム200の蛍光測定の干渉を受けやすい。また、ほとんどの組織内で、外部から加えられた圧力によって、皮膚表面で測定された蛍光の明らかな減衰として現れる血液の貯留が生じる可能性がある。また、皮膚の表面近くの血管の定期的な開閉(「血管運動」)は、システム200による外因性蛍光剤の蛍光の測定にさらなるノイズをもたらし得るヘモグロビン濃度の変動を引き起こす可能性がある。さらに、肺障害を有する患者などの、一部の患者202では、Hb酸化状態の変化も観察される可能性があり、図3に示すように、デオキシヘモグロビン(Hb)とオキシヘモグロビン(HbO)との吸収スペクトルの差異に起因するバックグラウンド皮膚吸収においてさらなる潜在的な変化をもたらす。
【0055】
一態様では、外因性蛍光剤に対する励起波長及び発光波長は、HbO/Hb等吸収点の対と一致するように選択され得る。各等吸収点は、本明細書では、HbO及びHbによるほぼ等しい光吸収によって特徴付けられた波長として定義される。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、各等吸収波長で行われる蛍光測定は、システム200による蛍光測定中、HbOとHbとの合計濃度が比較的安定している限り、ヘモグロビンの酸化の変化に起因する変動に対する感度は低い。Hb/HbO等吸収波長の非限定的な例としては、例えば、約390nm、約422nm、約452nm、約500nm、約530nm、約538nm、約545nm、約570nm、約584nm、約617nm、約621nm、約653nm、及び約805nmが挙げられる。
【0056】
様々な態様では、励起波長及び発光波長は、システム200の選択された外因性蛍光剤の吸収及び発光波長に基づいて選択され得る。一態様では、励起波長は、HbO/Hb等吸収波長であり得、同時に、外因性蛍光剤の高吸光度のスペクトル範囲内の波長であり得る。別の態様では、発光波長はHbO/Hb等吸収波長であってもよく、同時に、外因性蛍光剤による発光のスペクトル範囲内の波長であり得る。表3は、200nm~約1000nmのスペクトル範囲内のHbO/Hb等吸収波長の概要を示す。図4は、表1のHbO/Hb等吸収波長を識別するために使用される吸光スペクトルのグラフである。
【0057】
【表1】
【0058】
実例として、図3は、HbO及びHbの吸収スペクトル、並びに一態様における外因性蛍光剤であるMB-102の周波数スペクトルの吸収及び発光スペクトルを要約したグラフである。青色LED光源及び緑色LED光源の発光スペクトルも、図3の他のスペクトル上に重ねて示されている。この態様では、システム200は第1の光源218として青色LEDを含み得、システム200の励起波長は約450nmの等吸収波長であり得る。表1及び図3に示すように、Hb吸収スペクトルは、約420nm~約450nmの等吸収波長で大きく傾いており(表1の列3及び列4を参照)、このことは、約450nmの等吸収波長でのHbO及びHbの相対吸収は、励起波長の小さな変化に対して感度が高いことを示す。しかしながら、約500nmを超える波長では、HbO/Hbスペクトルの傾斜は緩やかになり、広帯域光源、これに限定しないが例えばバンドパスフィルタ付きのLEDなどが第1の光源218として使用するのに十分であり得る。
【0059】
別の態様では、励起波長は、外因性蛍光剤と患者202の組織内の発色団との間の吸光度のコントラストを高めるように選択され得る。非限定的な例として、図3に示すように、452nmの等吸収波長では、MB-102の光吸収は、HbO及びHbの光吸収よりも3倍大きい。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、約450nmの波長で患者202の組織を照明する光は、HbO及びHbと比較してより大きい割合でMB-102によって吸収され、これにより、MB-102による吸収効率が増加し、検出可能な蛍光信号を誘起するために必要な励起波長光の強度が減少する。
【0060】
様々な態様では、第2の等吸収波長もまた、システム200の発光波長として選択され得る。非限定的な例として、図3は、約550nmの波長での発光ピークを特徴とするMB-102外因性造影剤の発光スペクトルを示す。この非限定的な例では、570nmの等吸収波長が、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって検出されるべき発光波長として選択され得る。様々な他の態様では、システム200の発光波長は、患者202の組織内の発色団の比較的低い吸収によって特徴付けられるスペクトル範囲内に入るように選択され得る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、選択された発光波長における発色団の低い吸収は、外因性蛍光剤から放射された光の損失を低減させ、蛍光の検出効率を高めることができる。
【0061】
様々な態様では、第1の光源218及び第2の光源220は、励起波長及び発光波長で光を送達するように構成された任意の光源であり得る。一般的に、第1の光源218は、外因性蛍光剤による放射波長の光の放射を誘起するのに十分な強度を維持し、かつ、患者202の組織を通過して外因性蛍光剤に達するのに十分な強度で光を送達する。一般的に、第1の光源218は、外因性蛍光剤からの放射波長の蛍光を誘起するための散乱及び/または吸収後に、患者202の組織を通過して外因性蛍光剤に達するのに十分な強度が維持されるような強度で光を送達する。しかしながら、第1の光源218によって送達される光の強度は、例えば、組織の燃焼、細胞の損傷、及び/または、外因性蛍光剤及び/または皮膚内の内因性発色団(「自家蛍光」)の光退色などの悪影響を防止するために、所定の上限値に制限される。
【0062】
同様に、第2の光源220は、外因性蛍光剤の発光波長の光を、患者の第1の領域206を通って散乱及び吸収して伝播させ、かつ、第1の光検出器222及び第2の光検出器224による検出のための十分な強度を維持して第2の領域208及び第3の領域210に達するのに十分なエネルギーを提供するように構成された強度で送達する。第1の光源218と同様に、第2の光源220によって生成される光の強度は、前述したように、組織損傷または光退色などの悪影響を防止するために、所定の上限値に制限される。
【0063】
様々な態様では、第1の光源218及び第2の光源220は、蛍光医療イメージングシステム及びデバイスでの使用に適した任意の光源であり得る。好適な光源の非限定的な例としては、LED、ダイオードレーザ、パルスレーザ、連続発振レーザ、キセノンアークランプまたは励起フィルタ付き水銀灯、レーザ、及びスーパーコンティニウム光源が挙げられる。一態様では、第1の光源218及び/または第2の光源220は、本明細書に記載の方法を用いて外因性蛍光剤の濃度のモニタリングに適した狭いスペクトル帯域幅で光を生成し得る。別の態様では、第1の光源218及び第2の光源220は、比較的広いスペクトル帯域幅で光を生成し得る。
【0064】
一態様では、システム200による第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光の強度の選択は、これに限定しないが例えば、ANSI規格Z136.1などの適用される規制基準に準拠した、レーザビームへの皮膚曝露に対する最大許容露光量(MPE)などの少なくともいくつかの要因のうちのいずれか1以上に影響を及ぼす可能性がある。別の態様では、システム200の光強度は、これに限定しないが例えば、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、赤血球内のヘモグロビン、及び/またはメラニン細胞内のメラニンなどの、患者202の組織内の外因性蛍光源及び/または他の発色団の光退色の可能性を低減するように選択され得る。さらに別の態様では、システム200の光強度は、患者202の組織内、並びに、第1の光検出器222及び/または第2の光検出器の外因性蛍光源から検出可能な蛍光信号を誘起するために選択され得る。さらなる別の態様では、システム200の光強度は、適切に高い光エネルギーを提供すると共に、電力消費を削減し、第1の光源218及び第2の光源220の加熱/過熱を抑制し、及び/または、第1の光検出器222及び/または第2の光検出器からの光に対する患者の皮膚の曝露時間を短縮するように選択され得る。
【0065】
様々な態様では、第1の光源218及び第2の光源220の強度は、これに限定しないが、患者202内の発色団の濃度の個体差、例えば皮膚色素沈着のばらつきなどの少なくともいくつかの要因のうちのいずれか1以上を補償するように調節され得る。様々な他の態様では、光検出器の検出ゲインは、皮膚特性の個体差のばらつきを同様に補償するために調節され得る。一態様では、皮膚色素沈着のばらつきは、2人の異なる患者202間、または同一の患者202の2箇所の異なる位置の間であり得る。一態様では、光の調節は、患者202の組織を通る光によって得られる光学経路のばらつきについて補償することができる。光学経路は、これに限定しないが例えば、システム200の光源と光検出器との間の離間距離のばらつき;患者202の皮膚へのセンサヘッド204の確実な取り付けのばらつき;熱及び湿気などの環境要因への光源の曝露による光源の光出力のばらつき;熱及び水分などの環境要因への光検出器の曝露による光検出器の感度のばらつき;光源による照明の持続時間の調節;及び、任意の他の関連する動作パラメータなどの少なくともいくつかの要因のうちのいずれか1以上によって変化し得る。
【0066】
様々な態様では、第1の光源218及び第2の光源220は、上述した要因のいずれか1以上にしたがって、必要に応じて、生成される光の強度を調節するように構成され得る。一態様では、第1の光源218及び第2の光源220が、必要に応じて出力フルエンスを連続的に変化させるように構成されたデバイス、例えばLED光源である場合、光の強度は、これに限定しないが例えば、第1の光源218及び/または第2の光源220に供給される電位、電流、及び/または電力を調節する方法を用いて電気的に調節され得る。別の態様では、光の強度は、様々な光学的方法を用いて調節され得る。そのような光学的方法としては、これに限定しないが例えば、アイリス、シャッタ、及び/または1以上のフィルタなど光学デバイスを使用して第1の光源218及び第2の光源220から放射される光を部分的または完全に遮るステップと、レンズ、ミラー、及び/またはプリズムなの光学デバイスを使用して第1の光源218及び第2の光源220から放射される光の経路を患者の第1の領域206から迂回させるステップとを含む方法が挙げられる。
【0067】
様々な態様では、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光の強度は、本明細書では、生成された光ビーム中のエネルギーの割合として定義されるレーザーフルエンスの制御によって調節され得る。一態様では、レーザーフルエンスは、これに限定しないが、レーザーエネルギーへの曝露に関するANSI規格、例えばANSI Z13.1などの安全規格によって定義された範囲に制限され得る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、患者202に送達される光の最大フルエンスは、これに限定しないが例えば、送達光の波長及び光への曝露の持続時間などの様々な要因による影響を受ける可能性がある。様々な態様では、光の最大フルエンスは、最大約10秒の持続時間では、約302nm未満の波長で送達される光での約0.003J/cmから、約1500nm~約1800nmの範囲の波長で送達される光での約1J/cmまでの範囲であり得る。約400nm~約1400nmの範囲の波長で送達される光(可視光/NIR光)の場合、最大フルエンスは、最大約10秒の持続時間では約0.6J/cmであり得、約10秒~約30,000秒の範囲の持続時間では最大約0.2J/cmであり得る。長時間曝露の場合、送達光は、ANSI規格にしたがって最大出力密度(W/cm)に制限される。すなわち、可視光/NIR光は0.2W/cmに制限され、IR光は約0.1W/cmに制限される。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、UV波長で送達される光への長時間曝露は、一般的に、ANSI規格では推奨されていない。
【0068】
別の態様では、第1の光源218によって生成された励起波長の光のフルエンスは、患者202の第1の領域206の皮膚を通って外因性蛍光剤まで光退色することなく伝播するのに十分なエネルギーを提供するため、及び、第1の光検出器222及び/または第2の光検出器224で検出可能な蛍光を誘起するのに十分なエネルギーで外因性蛍光剤を照射するために調節され得る。さらなる態様では、第2の光源220によって生成された発光波長の光のフルエンスは、患者202の第1の領域206の皮膚を通って、次いで第2の領域208及び第3の領域210を通って光退色することなく伝播し、第1の光検出器222及び第2の光検出器224で検出可能な光として現れるのに十分なエネルギーを提供するために調節され得る。非限定的な例として、光源によって生成された450nmまたは500nmの光のフルエンスは、光退色を防ぐために、それぞれ1.5及び5mW/cmに制限され得る。
【0069】
様々な態様では、第1の光源218及び第2の光源220によって生成された光のフルエンスは、上述したように、これに限定しないが、任意の適切なシステム及び/またはデバイスによって調節され得る。この調節は、システム200の動作毎に行ってもよく、この場合、第1の光源218及び第2の光源220のそれぞれによって生成された光のフルエンスは、システム200の動作全体を通じて比較的一定であり得る。別の態様では、光調節はシステム200の動作期間にわたって離散時間で行ってもよいし、または、光調節はシステム200の動作期間にわたって連続的に行ってもよい。
【0070】
一態様では、システム200がエンジニアリングモードで構成されている場合、光のフルエンスは、上記の電源設定及び/または光学デバイス設定のいずれかの手動調節によって調節され得る。別の態様では、光のフルエンスは、後述するように、コントローラ212の光源制御ユニットにエンコードされた1以上の制御スキームを介して自動的に調節され得る。この態様では、調節の程度は、詳細については後述するように、システム200のセンサヘッド204に設置される様々なセンサ、これに限定しないが例えば追加の光検出器226及び温度センサ228などによって取得されるフィードバック測定値に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。
【0071】
様々な態様では、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光は、本明細書では、生成された光の持続時間として定義されるパルス幅によってさらに特徴付けられる。パルス幅は、一般的に、パルスレーザなどの離散パルスで光を生成する光源の性能を特徴付けるために使用されるが、本明細書で使用される用語「光パルス」は、システム200による蛍光の単一測定値の取得を可能にするために、単一光源によって生成される単波長の光の任意の離散バーストを指すことを理解されたい。同様に、本明細書で使用される用語「パルス幅」は、システム200によって生成される単一の光パルスの持続時間を指す。パルス幅は、一般的に、これに限定しないが例えば、患者202の組織内の外因性蛍光剤または他の発色団を光退色させることなく、外因性蛍光剤から検出可能な蛍光を誘起するのに十分な光エネルギーの送達;ANSI規格などの、患者への光送達に関する安全規格の遵守;腎機能のリアルタイムモニタリングに適合する速度でのデータ取得を可能にするのに十分な高速度での光送達;選択された光源、光検出器、及びシステム200の他のデバイスの性能;光源、光検出器、及び、光エネルギーの生成及び検出に関連する他のデバイスの動作寿命の維持;及び、他の関連要因などの少なくともいくつかの要因のうちの1以上に基づいて選択される。
【0072】
様々な態様では、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光のパルス幅は、持続時間が約0.0001秒~約0.5秒の範囲になるように独立的に選択され得る。様々な他の態様では、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光のパルス幅は、持続時間が、約0.0001秒~約0.001秒、約0.0005秒~約0.005秒、約0.001秒~約0.010秒、約0.005秒~約0.05秒、約0.01秒~約0.1秒、約0.05秒~約0.15秒、約0.1秒~約0.2秒、約0.15秒~約0.25秒、約0.2秒~約0.3秒、約0.25秒~約0.35秒、約0.3秒~約0.4秒、約0.35秒~約0.45秒、及び約0.4秒~約0.5秒の範囲になるように独立的に選択され得る。一態様では、図5に概略的に示されるように、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光のパルス幅は、両方とも約0.1秒である。
【0073】
別の態様では、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光は、本明細書では、光源によって1秒あたりに生成されるパルスの数として定義されるパルスレートによってさらに特徴付けられ得る。パルスレートは、一般的に、パルスレーザなどの光を離散パルスで生成する光源の性能を特徴付けるために使用されるが、本明細書で使用される用語「パルスレート」は、システム200による蛍光の測定値の取得に関連する単一光源による単波長での離散光パルスの生成レートを指すことを理解されたい。様々な態様では、パルスレートは、これに限定しないが例えば、ANSI規格などの、患者への光送達に関する安全規格の遵守;選択された光源、光検出器、及びシステム200の他のデバイスの性能;腎機能のリアルタイムモニタリングに適合する速度でのデータ取得を可能にするのに十分な高速度での光送達;光源、光検出器、及び、光エネルギーの生成及び検出に関連する他のデバイスの動作寿命の維持;及び、他の関連要因などの少なくともいくつかの要因のうちの1以上に基づいて選択される。
【0074】
様々な態様では、光源は、図2に概略的に示すように、第1の領域206などの単一の位置で患者202の組織に光を送達するように構成される。一態様では、同一の第1の領域206に励起波長の光及び発光波長の光の両方を送達することにより、両方の光パルスが、第1の領域206での入射点と第2の領域208及び第3の領域210での検出点との間の患者202の組織を通る光路の少なくとも一部を共有することが可能になる。詳細については後述するが、光路のこの構成は、システム200によって生成されるデータの品質を向上させる。
【0075】
一態様では、第1の光源218及び第2の光源220は、光送達の共通手段に動作可能に接続され得る。一態様では(図示せず)、第1の光源218及び第2の光源220はそれぞれ第1の光ファイバ及び第2の光ファイバに動作可能に接続される。そして、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバは、第1の光ファイバ及び/または第2の光ファイバから患者202の第1の領域206に光を導くように構成された第3の光ファイバに接続され得る。別の態様では、第1の光源218及び第2の光源220は、第1の光源218及び/または第2の光源220からの光を患者202の第1の領域206に導くように構成された共通の光ファイバまたは他の光学アセンブリに動作可能に接続され得る。この態様では、第1の光源218及び第2の光源220によって生成された光は、これに限定しないが例えばダイクロイックミラーまたは回転ミラーなどの調節可能な光学デバイスを使用して、共通の光ファイバまたは他の光学アセンブリに交互パターンで導かれ得る。
【0076】
一態様では、システム200は、第1の光源218/第2の光源220及び第1の光検出器222/第2の光検出器224が所定の配置で取り付けられ得る1以上のウェルで構成されたセンサマウント912を備えたセンサヘッド204を含み得る。一態様では、図9及び図10に示すように、第1の光源218及び第2の光源220は、センサヘッド204(図9参照)内に配置されたセンサマウント912の光源ウェル902内に配置され得る。一態様では、光源ウェル902は、励起波長の光を生成する第1の光源218(第1のLED光源)と、発光波長の光を生成する第2の光源220(第2のLED光源)とを含み、両光源は、開口プレート702を貫通して形成された単一の光送達開口部1002(図10参照)に動作可能に接続されており、これにより、両波長の光(励起波長光及び発光波長光)が、患者202の皮膚の略同一の位置、これに限定しないが例えば図2に概略的に示されている第1の領域206に照射されることを確実にする。一態様では、詳細については後述するが、光源ウェル902は、LED光源からの出力電力のばらつきを補正するために使用される第1のモニタフォトダイオード904及び第2のモニタフォトダイオード906をさらに含む。
【0077】
一態様では、LED光源によって生成された光エネルギーの一部のみが、単一の光送達開口部1002を介して患者202の皮膚に送達される。一態様では、患者202の皮膚は、LED光源によって生成された光エネルギーの約1%を受け取る。様々な他の態様では、患者202の皮膚は、LED光源によって生成された光エネルギーの約2%、約3%、約4%、約5%、約7.5%、約10%、約20%、及び約50%を受け取る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、患者202の皮膚に送達される、LED光源によって生成された光の割合は、各LED光源からの光を光送達開口部1002に焦点を合わせる、及び/または導くように構成された追加の光学要素を組み込むことによって増加し得る。別の態様では、光源の出力を混合し、患者の皮膚の表面で光エネルギーを均一にするためにディフューザが使用され得る。
【0078】
(ii)光検出器
【0079】
再び図2を参照すると、システム200は、様々な態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224をさらに含む。一態様では、第1の光検出器222は、第2の領域208で患者202の組織から放射されたフィルタリングされていない光を測定するように構成され、第2の光検出器224は、第3の領域210で患者202の組織から放射されたフィルタリングされた光を測定するように構成される。この態様では、第2の光検出器224は、励起波長の光を遮断するように構成された光学フィルタ244をさらに備える。その結果、第1の光検出器222は、励起波長及び発光波長の両波長で受け取った光を測定するように構成され、第2の光検出器224は、発光波長で受け取った光のみを検出するように構成される。そして、患者202の組織に対して励起波長の光のみと発光波長の光のみとを交互に照射することによって(図5参照)、第1の光検出器222及び第2の光検出器224からの測定値を後述するように分析して外因性蛍光剤の蛍光を測定し、次いで、後述する補正方法にしたがって光の拡散反射の影響を除去して蛍光測定値を補正することができる。
【0080】
様々な態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によってそれぞれ光が検出される患者202の組織内の第2の領域208及び第3の領域210は、第1の光源218及び第2の光源220によって生成された光が送達される第1の領域206から、それぞれノミナル値(公称寸法)だけ離間している。この公称離間寸法は、光検出器によって検出されるデータの品質に影響を与える可能性のある2以上の効果のバランスを取るように選択され得る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、公称離間寸法が増加すると、光源と光検出器との間のより長い光路に沿った光散乱によって、光検出器からの検出信号全体が減少する可能性がある。この影響は、発光波長の選択によって軽減することができ、公称離間寸法が増加するにしたがって、検出された蛍光信号(すなわち、発光波長の光)は、励起波長の検出光に関連する信号と比較して緩やかに減少する。公称離間寸法が長いほど、組織の光学特性の変化に起因する信号変化に対する感度は高くなる。
【0081】
一態様では、公称離間寸法は、0mm(すなわち、光源及び光検出器の共通配置)~約10mmの範囲であり得る。様々な他の態様では、公称離間寸法は、約1mm~約8mm、約2mm~約6mm、及び約3mm~約5mmの範囲であり得る。様々な別の態様では、公称離間寸法は、0mm、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約8mm、及び約10mmであり得る。一態様では、信号の対数的減少と、外因性蛍光剤からの信号に対する背景信号のサイズの減少との競合的な影響のバランスをとるために、公称離間寸法は約4mmであり得る。
【0082】
再び図9を参照すると、第1の光検出器222は、センサマウント912の第1の検出ウェル908内に配置され得、第2の光検出器224は、センサヘッド204内のセンサマウント912の第2の検出ウェル910内に配置され得る。第1の光検出器222及び第2の光検出器224は、それぞれ第1の検出器開口部1004及び第2の検出器開口部1006を通して患者202の組織から光を受け取ることができる。一態様では、第1の検出器開口部1004、第2の検出器開口部1006、及び光送達開口部1002は、上記の公称離間寸法、これに限定しないが例えば4mmの公称離間寸法によって互いに離間されている。一態様では、センサマウント912の第1の検出ウェル908、第2の検出ウェル910、及び光源ウェル902は、第1の光源218及び第2の光源220からの光が、必ず、患者202の皮膚を通って組み合わされて第1の光検出器222及び第2の光検出器224に到達することを確実にするように、互いに光学的に離間され得る。詳細については後述するが、2つの検出ウェル908/910間の離間は、外因性蛍光剤から検出された蛍光信号を、フィルタリングされていない励起光と区別できることを確実にする。
【0083】
一態様では、開口プレート702の3つの開口部704(図7参照)は、約0.5mm~約5mmの範囲の直径を有する円形である。様々な他の態様では、開口部の直径は、約0.5mm~約1.5mm、約1mm~約2mm、約1.5mm~約2.5mm、約2mm~約3mm、約2.5mm~約3.5mm、約3mm~約4mm、約3.5mm~約4.5mm、及び約4mm~約5mmの範囲であり得る。
【0084】
一態様では、開口プレート702の3つの開口部704は、約1mmの直径を有する円形の開口部である。センサヘッド204の皮膚接触面では、光源からの離間距離が増加するにしたがって信号は対数的に減少するので、開口部のこの有限幅は、公称離間寸法より小さい効果的な光源及び検出器間の離間をもたらし得る。
【0085】
様々な態様では、システム200の第1の光検出器222及び第2の光検出器224は、これに限定しないが、任意の適切な光検出デバイスであり得る。適切な光検出デバイスの非限定的な例としては、光電子増倍管、光電管、及びマイクロチャネルプレート検出器などの光電子放出検出器;フォトダイオード、フォトレジスタ、フォトダイオード、フォトトランジスタとして機能するように逆バイアスされたLEDなどの光電検出器;及び、任意の他の適切な光検出デバイスが挙げられる。一態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224は、表皮に約1%~約40%の範囲のメラニンが含まれ、かつ血液量が皮膚体積の約0.5%~約2%の範囲で含まれる、患者202の組織内の外因性蛍光剤から放射された蛍光を検出するのに十分感度が高い。一態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224は、シリコン光電子増倍管(SPM)デバイスであり得る。
【0086】
一態様では、第1の光検出器222は、励起周波数及び発光周波数の両方で光を検出するように構成され得、第2の光検出器224は、発光周波数の光のみを検出するように構成され得る。一態様では、第2の光検出器224は、第2の光検出器224のセンサ素子の設計及び材料の結果として、発光波長の光のみに応答し得る。別の態様では、第2の光検出器224は、より広い範囲の光波長に応答し得るが、入射光における発光波長の部分のみを通過させ、かつ発光波長以外の波長の光の通過を妨げるようにさらに構成された光学フィルタの下流に配置され得る。
【0087】
発光波長の光を選択的に検出するべく第2の光検出器224と共に使用するための任意の適切な光学フィルタが選択され得る。適切な光学フィルタの非限定的な例としては、吸収フィルタ、及び干渉/ダイクロイックフィルタが挙げられる。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、吸収フィルタの性能は入射光の角度によって大きく変化しないが、干渉/ダイクロイックフィルタの性能は、入射光の角度に対する感度が高く、患者202の皮膚から放射された光を表すランバーシアン光分布を効果的にフィルタリングするために、追加のコリメート光学系を必要とし得る。
【0088】
一態様では、第2の光検出器224は、所定の波長を超える光を第2の光検出器224に通過させるように構成された吸収性ロングパスフィルタの下流に配置され得る。非限定的な例として、第2の光検出器224は、約530nmを超える波長の光を通過させるように構成されたロングパスOG530フィルタの下流に配置され得る。適切なフィルタの他の非限定的な例として、Hoya O54フィルタ、及びHoya CM500フィルタが挙げられる。
【0089】
様々な態様では、励起波長の光を吸収するように構成された光学フィルタ244は、第2の光検出器224と第2の検出器開口部1006との間の第2の検出ウェル910内に配置され得る。一態様では、光学フィルタ244は、OG530 Schottガラス製であり得る。光学フィルタ244の厚さは、励起光を約1,000倍フィルタリングするのに十分な光学密度であるように選択され得る。一態様では、光学フィルタ244の厚さは、約1mm~約10mmの範囲であり得る。様々な他の態様では、光学フィルタ244の厚さは、約1mm~約8mm、約2mm~約6mm、及び約3mm~約5mmの範囲であり得る。様々なさらなる態様では、光学フィルタ244の厚さは、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、及び約10mmであり得る。一態様では、光学フィルタ244は、OG530ショットガラス製の厚さ3mmのフィルタである。
【0090】
さらなる態様では、光源ウェル902内に光学ディフューザが設けられ得る。この態様では、光学ディフューザは、第1の光源218及び第2の光源220から光源ウェル902に入射する光を混合させる。患者202の第1の領域206を照明する前に、光学ディフューザを使用して第1の光源218及び第2の光源220からの光を混合することにより、患者の組織を通る発光波長光及び励起波長光の光路の類似性は、非混合光の対応する光路に比べて向上し、それにより、ばらつきの潜在的な原因が低減する。
【0091】
一態様では、励起波長及び発光波長の両波長の光を通過させるように構成された透明材料が、第1の光検出器222と第1の検出器開口部1004との間の第1の検出ウェル908内に配置され得る。この態様では、透明材料は、光学フィルタ244の材料と同様の光学特性、これに限定しないが例えば厚さ及び屈折率を有する任意の材料であり得る。一態様では、第1の検出ウェル908内の透明材料は、光学フィルタ244と同一の厚さの溶融シリカガラスであり得る。
【0092】
非限定的な例として、OG530フィルタの透過スペクトルが図3に提供される。図3に示すように、OG530フィルタの透過スペクトルは、MB-102外因性蛍光剤の発光スペクトル、及び第2の光源220(発光波長)として使用される緑色LEDの発光スペクトルと重なり合う。さらに、OG530フィルタの透過スペクトルは、第1の光源218として使用される青色LEDの発光スペクトル、及びMB-102外因性蛍光剤(励起波長)の吸収スペクトルを除外する。
【0093】
一態様では、ガラス246及び光学フィルタ244などの透明材料は、第1の検出ウェル908及び第2の検出ウェル910内に形成されたレッジに固定され得る。ガラス246及び光学フィルタ244などの透明材料は、第1の検出器開口部1004及び第2の検出器開口部1006を通じて受け取られるすべての光が、第1の光検出器222及び第2の光検出器224による検出の前に光学フィルタ244またはガラス246を通過することを確実にするために、これに限定しないが例えば黒色エポキシ樹脂などの不透明及び/または光吸収性の接着剤を用いて所定の位置に固定され得る。別の態様では、光学フィルタ244またはガラス246の側面は、光が、必ず、光学フィルタ244またはガラス246を通過して、第1の光検出器222及び第2の光検出器224に到達することを確実にするために、これに限定しないが例えば,墨汁などの光吸収コーティングで黒色に塗装され得る。
【0094】
一態様では、検出器開口部1004/1006の直径と組み合わされた検出ウェル908/910の高さは、患者の皮膚から出射する光の角度のランバーシアン分布に起因して、患者の皮膚の第2の領域208及び第3の領域210から放出された光のうちの第1の光検出器222及び第2の光検出器224の作用領域に到達する光の割合を制限し得る。一態様では、患者の皮膚の第2の領域208及び第3の領域210から放出された光のうちの、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって受け取られる光の割合は、約5%~約90%の範囲であり得る。様々な他の態様では、上記の光の割合は、約5%~約15%、約10%~約20%、約15%~約25%、約20%~約30%、約25%~約35%、約30%~約40%、約35%~約45%、約40%~約60%、約50%~約70%、及び約60%~約90%の範囲であり得る。
【0095】
一態様では、直径1mmの開口部1002/1004/1006を有する図6及び図7に示したセンサヘッド204では、患者の皮膚の表面から放出された光の約10%が、第1の光検出器222及び第2の光検出器224の作用領域に到達して検出され得る。様々な態様では、センサヘッド204は、患者の皮膚から放出された光のうちの、第1の光検出器222及び第2の光検出器224の作用領域に導かれる光の割合を高めるために、光角のランバーシアン分布を補償するように構成された、これに限定しないが例えばレンズ及び/またはプリズムなどの追加の光学要素をさらに含み得る。
【0096】
(iii)温度センサ
【0097】
図2を参照すると、センサヘッド204は、センサヘッド204内及びセンサヘッド204の近傍の様々な領域の温度をモニタリングするように構成された1以上の追加の温度センサ228をさらに含み得る。1以上の追加の温度センサ228によってモニタリングされ得る適切な領域の非限定的な例としては、患者202の皮膚表面の温度;第1の光源218及び/または第2の光源220の近傍の温度;センサヘッド204の外側の周囲温度;センサヘッド204のハウジング600の温度;及び、その他の適切な領域が挙げられる。一態様では、追加の温度センサ228は、これに限定しないが例えば、LEDなどの第1の光源218及び第2の光源220、シリコン光電子増倍管(SPM)などの第1の光検出器222及び第2の光検出器224、及びセンサヘッド204の任意の他の温度敏感性電気部品などの、温度敏感性の電気部品の近傍の温度をモニタリングするように構成され得る。いくつかの態様では、1以上の追加の温度センサ228によって測定された1以上の温度は、後述するシステム200の1以上の温度敏感性デバイスの制御方法において、フィードバックとして使用され得る。
【0098】
非限定的な例として、温度測定は、第1の光源218及び第2の光源220として使用されるLEDによって生成される光エネルギーの量を制御するために使用され得る。この例では、第2の温度センサ1108(図11参照)によって測定されたLED温度を制御スキームで使用することにより、LED光源に供給される電力量を調節してLEDの光出力に対するLED温度の影響を補償することができる。別の態様では、追加の温度センサ228は、第1の光源218及び第2の光源220の温度をモニタリングすることによって、LED温度の変動をモニタリング及び/または補償、並びに、比較的一定の出力波長を維持するための光学フィルタの温度依存性透過のモニタリング及び/または補償を行うことができる。
【0099】
別の非限定的な例として、追加の温度センサ228は、センサヘッド204の接触面606の近傍でハウジング600の温度をモニタリングするように構成された温度センサ816(図8参照)の形態でセンサヘッド204に含まれ得る。図7図8及び図9に示されるように、一態様では、温度センサ816は、開口プレート702の温度センサ開口部706内にエポキシ樹脂で接着され得る。この態様では、回路基板(図示せず)と下側ハウジング604との間の空間918は、良好な熱伝導及び熱放出を確実にするために、熱伝導性パテで埋められる。
【0100】
この例では、測定されたハウジング温度は、センサヘッド204の光出力を調節し、使用中の患者202の皮膚の過熱を防止するために使用され得る。別の態様では、追加の温度センサ228は、第1の光源218及び第2の光源220による比較的一定の出力波長を維持するために、第1の光源218及び第2の光源220の温度をモニタリングすることによって、LED光源の温度の変動をモニタリング及び/または補償する。
【0101】
別の態様では、1以上の追加の温度センサ228によって測定される温度は、過熱状態が検出された場合、第1の光源218及び第2の光源220及び/または第1の光検出器222及び第2の光検出器224を含む1以上の電子機器を無効化することにより、対象への安全性を提供することができる。一態様では、過熱状態は、温度センサ816によって検出されたハウジング温度が約40℃を超える場合に示され得る。様々な他の態様では、過熱状態は、ハウジング温度が約40.5℃を超えるか、または約41.0℃を超える場合に検出され得る。
【0102】
B.コントローラ
【0103】
再び図2を参照すると、様々な態様のシステム200は、患者202の組織内の外因性蛍光剤の蛍光を取得するために使用される複数の測定値を取得し、後述するように蛍光データを補正して背景信号の影響を除去し、かつ、蛍光測定値を患者202の腎機能を表すパラメータに変換するために、第1の光源218及び第2の光源220と第1の光検出器222及び第2の光検出器224とを協調的に動作させるように構成されたコントローラ212を含み得る。図11は、一態様における、システム200の動作を可能にする様々な電気部品の配置を示す電子回路1100の概略図である。一態様では、コントローラ212は、操作ユニット214及び表示ユニット216をさらに含むコンピュータ装置であり得る。
【0104】
(i)光源制御ユニット
【0105】
再び図2を参照すると、コントローラ212は、第1の光源218及び第2の光源220を動作させて励起波長及び発光波長の光をそれぞれ協調的に生成することによって、図5に概略的に示す繰り返しパルスシーケンスを生成するように構成された光源制御ユニット230を含み得る。様々な態様では、光源制御ユニット230は、1以上の光制御パラメータをエンコードする複数の光制御信号を生成し得る。上記の1以上の光制御パラメータとしては、これに限定しないが例えば、各光源のアクティブ化または非アクティブ化;光パルス幅、パルス繰り返し率、光源に供給される電力、または光パルスフルエンス若しくは光パルス電力に関連する他のパラメータを有効にするための、各光源のアクティブ化及び非アクティブ化の相対的タイミング;光源の光出力を制御する他の光源特有のパラメータ;及び、任意の他の関連する光制御パラメータが挙げられる。一態様では、光源制御ユニット230は、光源からの光の比較的安定した出力を維持するべく、複数の制御信号を調節して光源の性能のばらつきを補償するために使用される1以上のフィードバック測定値を受信し得る。光源制御ユニット230によって使用されるフィードバック測定値の非限定的な例としては、第1のモニタフォトダイオード904及び第2のモニタフォトダイオード906によって光源ウェル902内でそれぞれ測定される第1の光源218及び第2の光源220の光出力、第1の光源218及び第2の光源220の温度、及び、第1の光源218及び第2の光源220の性能のモニタリングに関連する任意の他のフィードバック測定値が挙げられる。
【0106】
非限定的な例として、光源制御ユニット230は、第1の光源218及び第2の光源220を動作させるように構成され得る。この例では、第1の光源218及び第2の光源220の光出力は、各LEDに供給される電流の大きさを制御することによって制御され得る。一態様では、光源制御ユニット230は、少なくとも1つの波形発生器1122、これに限定しないが例えば、図11に示すような、LED電流源1126に動作可能に接続された16ビットDAC1124を有するフィールドプログラマブルゲートアレイFPGAを含み得る。一態様では、少なくとも1つの波形発生器122によって生成される波形、これに限定しないが例えば矩形波によって、LED電流源1126からの出力が制御され得る。一態様では、第1の光源218及び第2の光源220に供給される電流の大きさは、波形発生器1122(FPGA)によって提供される波形信号に基づいて調節され得る。
【0107】
図5を参照すると、一態様では、各光パルスシーケンス500は、発光波長光パルス502及び励起波長光パルス504を含む。発光波長光パルス502及び励起波長光パルス504は両方とも、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される複数の方形波506から構成される。図11を参照すると、波形発生器1122によって生成される方形波は、LED電流源1126により受信される。LED電流源によって生成される電流は、波形発生器1122によって生成される波形に類似する方形波を含む。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光の強度は、受け取った電流の大きさに比例するため、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光は、図5に示されるような方形波も含む。詳細につては後述する別の態様では、波形発生器1122によって生成される方形波はまた、様々な交絡因子の影響を低減するために同期検波方法で取得ユニット234によって使用され得る。様々な交絡因子としては、これに限定しないが、例えば、第1の光源218及び第2の光源220による発光波長及び励起波長での患者の組織の照明中に、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によってそれぞれ生成された検出信号から周囲光が検出されることが挙げられる。
【0108】
様々な他の態様では、これに限定しないが、様々な代替のLEDパルス調節スキームが等価的に使用され得る。一態様では、励起パルス及び発光パルスは、各パルスの後に暗期が存在する交互パターンで送達される。別の態様では、第1の光源218及び第2の光源220は、それぞれ50%のデューティサイクルで、ただし変調周波数が互いに異なるように調節され、これにより、励起パルス及び発光パルスに関連する信号を周波数フィルタリングによって分離することが可能になる。
【0109】
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、患者の皮膚に送達される全体光出力は、少なくとも2つの要因、すなわち、外因性蛍光剤及び/または内因性発色団の光退色、並びに、システム200によって照射される患者の組織の過熱によって限定され得る。一態様では、組織加熱は、これに限定しないが例えばANSI/IESNA RP-27.1-0.5などの安全基準に基づいて、皮膚に送達される光出力に約9mWの絶対的な制限が課され得る。別の態様では、内因性発色団、これに限定しないが例えばコラーゲン、ヘモグロビン、及びメラニンなどに関連する皮膚自家蛍光の光退色は、測定された蛍光に、発色団の自己退色が生じない限り比較的一定に維持される背景信号を提供し得る。この一定の自家蛍光背景信号は、生の蛍光信号から差し引いてもよいが、光退色に起因して自家蛍光が経時的に変化する場合、この背景信号補正は腎崩壊時定数(RDTC:renal decay time constant)の運動学的計算に干渉する可能性がある。一態様では、第1の光源218及び/または第2の光源220の光出力は、発色団の光退色に関連する電力閾値未満のレベルに制限され得る。
【0110】
再び図9を参照して、様々な態様では、第1の光源218及び第2の光源220の光出力は、第1のモニタフォトダイオード904及び第2のモニタフォトダイオード906を用いて測定され得る。これらの第1のモニタフォトダイオード904及び第2のモニタフォトダイオード906に到達する光の強度は、一般的に、患者の皮膚を通って第1の光検出器222及び第2の光検出器224に到達する光の強度よりもはるかに強いので、第1の光源218及び第2の光源220の出力をモニタリングするために、低感度の光検出デバイス、これに限定しないが例えばPINフォトダイオードなどが使用され得る。
【0111】
様々な態様では、システム200は、ヒト個体群において観察される皮膚の色合いの範囲で動作するように構成され得る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、異なる患者202間の肌の色調のばらつきは、検出された蛍光信号において約1,000倍を超える範囲のばらつきをもたらし得る。加えて、各患者202内の外因性蛍光剤の濃度のばらつきは、薬剤の経時的な腎排泄のために約100倍の範囲で変化し得る。様々な態様では、システム200は、100,000倍を超える強度の範囲で内因性蛍光剤からの蛍光を検出するように構成され得る。これらの様々な態様では、システム200は、少なくとも1つの動作パラメータ、これに限定しないが例えば、第1の光源218及び第2の光源220による光出力の大きさ、及び検出器ゲインに対応する第1の光検出器222及び第2の光検出器224の感度などの調節によって構成され得る。
【0112】
一態様では、第1の光源218及び第2の光源220によって出力される光の強度は、操作ユニット214を介してユーザによって手動で設定され得る。別の態様では、光源制御ユニット230は、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光の強度を自動的に調節するように構成され得る。一態様では、光源制御ユニット230は、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光強度を、0(オフ)~1(最大電力)の正規化された出力強度の範囲内で制御するように構成され得る。一態様では、後述するように、第1の光源218及び第2の光源220の強度は、光検出器制御ユニット232によって設定される第1の光検出器222及び第2の光検出器224の検出器ゲインと協調して光源制御ユニット230によって設定され得る。
【0113】
一態様では、データ取得の初期化後、かつ外因性蛍光剤の注入前にシステム200によって得られる最初の10回の検出サイクル中に取得される信号は、第1の光源218及び第2の光源220によって生成される光強度、及び第1の光検出器222及び第2の光検出器224のゲインを自動的に調節するために光源制御ユニット230によって使用され得る。この例では、初期検出サイクルは、最大LED強度の約10%(正規化された出力強度0.1に対応)に設定された第1の光源218及び第2の光源220、及び第1の光検出器222及び第2の光検出器224の低いゲイン設定で取得され得る。1回の検出サイクル毎に、第1の光検出器222及び第2の光検出器224が受信した励起波長及び発光波長の光の検出強度に基づいて、対応するLED強度は、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって生成されるアナログ信号が低検出器ゲイン設定での各検出器アナログ/デジタル変換器(ADC)の全範囲の約1/4に対応するように調節され得る。第2の光源220によって生成された発光波長の光に応答して第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって生成された信号が一致しない場合、第2の光源220の電力設定を調節するために、より大きな信号が使用され得る。上記の方法によって最大強度(正規化された出力強度0.1に対応)よりも高いLED強度設定に調節される場合、LED強度設定は最大設定に設定される。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって生成される信号の目標レベル(すなわち、ADC範囲の1/4)を選択することによって、追加の光検出容量を確保し、これに限定しないが例えば患者202への外因性蛍光剤の導入などの複数の要因のうちのいずれか1以上に起因する研究中に、患者202の組織の光学特性のばらつきから生じる信号を検出することができる。
【0114】
上記の一態様では、光源制御ユニット230によってLED強度が、最初の10回の検出サイクルにわたって光検出器制御ユニット232によって設定された第1の光検出器222及び第2の光検出器224の検出器ゲインと協調して設定されると、特定の患者202の組織特性を考慮してシステム200の動作に対するこれらの設定の適合性を確認するために、追加の10回の検出サイクルが実施され、その後、本明細書に記載のLED強度設定及び検出器ゲインの再計算が行われる。新しく計算されたLED強度が以前に決定された設定の2倍以内であり、検出器ゲインが変更されない場合、以前に決定された設定は、腎機能の決定に使用されるその後のデータ取得サイクルのために維持される。それ以外の場合、本開示の方法を用いて設定が更新され、設定の安定性を確認するために別の10回のデータ取得サイクルが実施される。このプロセスは、設定が許容できる程度に安定していると判断されるか、または設定を取得するために10回のデータ取得サイクルが実施されるまで繰り返され、その場合、最後に決定された設定がその後のすべてのデータ取得に使用され、設定が最適ではない可能性があることが、表示ユニット216によってユーザに通知される。
【0115】
(ii)光検出器制御ユニット
【0116】
再び図2を参照すると、コントローラ212は、第1の光検出器222及び第2の光検出器224を動作させることにより、発光波長の光及びすべての波長のフィルタリングされていない光の検出を可能にするように構成された光検出器制御ユニット232を含み得る。様々な態様では、光検出器制御ユニット232は、1以上の検出器制御パラメータ、これに限定しないが例えば検出器ゲインをエンコードする複数の検出器制御信号を生成し得る。様々な他の態様では、光検出器制御ユニット232は、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって検出される光の強度をエンコードする複数の光測定信号、これに限定しないが例えば、様々な態様ではアナログデジタル変換器(ADC)1102(図11参照)によって受信され得る生の検出器信号を生成し得る。別の態様では、システム200がエンジニアリングモードで構成される場合、検出器ゲイン及び/または他の検出器制御信号は、ユーザ検出器ゲインによって手動で設定され得る。
【0117】
様々な他の態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって受け取られる光の量は、少なくともいくつかの要因、これに限定しないが例えば、個々の患者202間で観察される皮膚の色合いのばらつき、各患者202の体内での外因性蛍光剤の濃度のばらつき、及び任意の他の関連パラメータなどのいずれか1以上に起因して変化し得る。一態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224のゲインは、操作ユニット214を介してユーザによって設定され得る。別の態様では、光検出器制御ユニット232は、バイアス電圧発生器1112のバイアス電圧ゲインによって、第1の光検出器222及び第2の光検出器224のゲインを自動的に調節するように構成され得る(図11参照)。
【0118】
一態様では、データ取得の初期化後、かつ外因性蛍光剤の注入前にシステム200によって得られる最初の10回の検出サイクル中に取得される信号は、第1の光検出器222及び第2の光検出器224のゲイン、及び第1の光源218及び第2の光源220の出力強度を自動的に調節するために光検出器制御ユニット232によって使用され得る。前述したように、初期検出サイクルは、最大LED強度の約10%(0.1の正規化された出力強度に対応)に設定された第1の光源218/第2の光源220及び第1の光検出器222/第2の光検出器224の低いゲイン設定で取得され得る。そして、LED強度は、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって生成されるアナログ信号が低検出器ゲイン設定での各検出器アナログ/デジタル変換器(ADC)の全範囲の約1/4に対応するように調節され得る。
【0119】
この一態様では、第1の光源218(励起波長で光を生成する)の強度がLED電力範囲の最大に設定される場合、励起波長のみのフィルタリングされた測定値に対応する第2の光検出器224については、高い検出器ゲインが想定され得る。様々な態様では、高検出器ゲインは、所定の光検出器の対応する低検出器ゲインより10倍高くあり得る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、外因性蛍光剤が、患者の体重1kgあたり約4μmolの用量レベルで患者202に導入されるMB-102であると仮定すると、予想ピークは、注入の過程にわたって外因性蛍光剤からの蛍光信号を検出し、腎排泄は、一般的に、第1の光源218による励起波長での照射中に受信される信号の大きさの約10%であると予想される。一態様では、最大LED強度での照射中に受信器ゲインを高い設定に設定して受信される予想検出器信号が検出器ADCの範囲の10%未満のままである場合、その測定の検出器ゲインは10倍増加する。別の態様では、飽和状態は、スプリアス信号スパイクへの反応を避けるために、検出器ゲインまたはLED電力の調節が行われる前に、これに限定しないが例えば30秒間などの所定期間持続され得る。
【0120】
別の態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224の1つから検出された光信号が最大ADC範囲の閾値パーセントを超えて信号飽和を避ける場合、光検出器制御ユニット232は、検出器ゲインをより低いゲインレベルに調節し得る。信号飽和に関連する最大ADC範囲の最も高い閾値の割合は100%であるが、検出器の非線形性は約40%以上の閾値の割合で開始され、検出器の穏やかな非線形性は約15%を超える閾値の割合で発生する。様々な態様では、最大ADC範囲の閾値の割合は、最大ADC範囲の40%、35%、30%、25%、20%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、または5%であり得る。一態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224の1つから検出された光信号が最大ADC範囲の約8%を超える場合、ゲイン設定が調節される。非限定的な例として、略飽和した信号の検出器ゲインが高い場合、検出器ゲインは低く調節される。電流検出器のゲインを低く設定し、対応する検出光信号が最大ADC範囲の閾値の割合を超えたままの場合、対応するLED光源のLED出力電力設定は10分の1に減少し得る。
【0121】
一態様では、光検出器制御ユニット232は、温度、及び/または光源出力のばらつきに起因する光検出器の性能のばらつきを補償するべく、複数の検出器信号を調節するために使用される1以上のフィードバック測定値を受信し得る。光検出器制御ユニット232によって使用されるフィードバック測定値の非限定的な例としては、例えば、第1のモニタフォトダイオード904及び第2のモニタフォトダイオード906によってそれぞれ光源ウェル902内で測定される第1の光源218及び第2の光源220の光出力(図11参照)、第1の温度センサ1106によって測定された第1の光検出器222及び第2の光検出器224の温度、第2の温度センサ1108によって測定されたLED温度、第3の温度センサ1128によって測定されたセンサヘッドハウジングの温度、LED電流源1126からのLED供給電流、及び第1の光検出器222及び第2の光検出器224の性能のモニタリングに関連する他のフィードバック測定値が挙げられる。
【0122】
様々な態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224は、低雑音内部増幅を含み得るシリコン光子増倍管(SPM)検出器であり得、PINフォトダイオードなどの他の光センサデバイスと比較してより低い光レベルで機能し得る。第1の光検出器222(SPM)及び第2の光検出器224(SPM)によって生成された検出器信号は、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によってそれぞれ生成された電流を測定可能な検出器電圧に変換するために、トランスインピーダンス増幅器1120/1118(図11参照)を用いてそれぞれ増幅され得る。第2の光検出器224上のトランスインピーダンス増幅器1118(すなわち、励起波長のみでフィルタリングされた光を検出する)は、第1の光源218が活性化されて発光波長の光を生成するときに、蛍光測定のより広いダイナミックレンジを検出するように構成された低ゲインを選択し得る切り替え可能な検出器ゲインを含み得る。切り替え可能な検出器ゲインは、検出サイクルのフェーズ中に、第2の光源220が非アクティブである場合、第2の光検出器224の感度を向上させるために、第2の光検出器224において高ゲイン設定をさらに選択し、患者202の組織内の外因性蛍光剤によって生成された発光波長の光が検出されたときに、第2の光検出器224からの予想される暗電流が全ADC出力レンジの1/4未満を占めるようにする。一態様では、第2の光検出器224の第2のトランスインピーダンス増幅器は、差動動作に起因するトランスインピーダンス抵抗器の値の約2倍に対応する約4kΩのトランスインピーダンスゲインを提供するように構成された低検出器ゲインを含み得、約40kΩのトランスインピーダンスゲインを提供するように構成された高検出器ゲインをさらに含み得る。別の態様では、第1の光検出器222の第1のトランスインピーダンス増幅器は、約2kΩのトランスインピーダンスゲインを提供するように構成された一定の検出器ゲインを含み得る。
【0123】
(iii)取得ユニット
【0124】
再び図2を参照すると、様々な態様では、コントローラ212は、取得ユニット234をさらに含み得る。取得ユニット234は、第1の光源218及び第2の光源220、第1の光検出器222及び第2の光検出器224及び追加の光検出器226、並びに追加の温度センサ228から複数の信号を受信し、その複数の信号を処理して1以上の生の信号を生成するように構成され得る。1以上の生の信号としては、これに限定しないが例えば、励起波長での照明中に第2の光検出器224によって検出される蛍光の強度をエンコードする生の蛍光信号、及び、励起波長での照明中に第1の光検出器222によって検出される励起波長の光の強度と発光波長での照明中に第1の光検出器222及び第2の光検出器224の両方によって検出される発光波長の光の強度とに対応する生の内部反射信号が挙げられる。
【0125】
上述した様々なセンサ及びデバイスから受信した複数の信号は、一般的に、アナログ信号、これに限定しないが例えば電圧及び電流である。様々な態様では、取得ユニット234は、アナログ信号を1以上のアナログデジタル変換器(ADC)へ送信することによって、処理ユニット236によるその後の処理のためにアナログ信号をデジタル信号に変換することを可能にし得る。図11は、センサヘッド204の様々な電子機器及び電子部品の配置を示す電子回路1100の概略図である。一態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって検出される光の強度をエンコードするアナログ信号は、第1のADC1102によって受信され得る。
【0126】
様々な態様では、第1の光検出器222及び第2の光検出器224、並びに様々なモニタセンサによって生成されたアナログ信号は、少なくとも1つの24ビットシグマ-デルタADCを用いてデジタル化され得る。再び図11を参照すると、一態様では、時間依存(time-sensitive)センサからの測定値をエンコードするアナログ信号は、高速24ビットシグマ-デルタのADC1102を用いてデジタル化され得る。この態様では、時間依存センサは、急速に変化する可能性のある信号によって特徴付けられる光パルスの生成及び検出に関連するセンサを含む。システム200の時間依存センサの非限定的な例として、トランスインピーダンス増幅器1118/1120(第2の光検出器/第1の光検出器)と、第1のモニタフォトダイオード904及び第2のモニタフォトダイオード906とが挙げられる。別の態様では、非時間依存(less time-sensitive)センサからの測定値をエンコードするアナログ信号は、低速の24ビットシグマ-デルタのADC1104を用いてデジタル化され得る。この他の態様では、非時間依存センサは、一般的に緩やかに変化する信号によって特徴付けられるシステム状態、これに限定しないが例えば様々なシステム構成要素及び/または領域の温度のモニタリングに関連するセンサを含む。システム200の非時間依存センサの非限定的な例としては、第1の光検出器222及び第2の光検出器224並びに第1の光源218及び第2の光源220の温度をそれぞれモニタリングするように構成された第1の温度センサ1106及び第2の温度センサ1108と、センサヘッド204のハウジング600の温度をモニタリングするように構成された第3の温度センサ1128とが挙げられる。
【0127】
様々な態様では、取得ユニット234は、第1の光検出器222及び第2の光検出器224による光の同期検出を可能にするようにさらに構成され得る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、同期検出法は、周囲光または他の干渉源の検出に関連するノイズから検出器信号を区別することによって、光源118/120によって生成される光、及び患者202の組織内の外因性蛍光剤によって生成される蛍光の検出に関連する検出器信号からノイズを除去すると考えられている。
【0128】
図12は、一態様における同期検出法の概略図である。図11及び図12を参照すると、波形発生器/FPA1122は、DAC1124によって受信されるデジタル方形波1202を生成することができ、結果として生じるアナログ変換方形波は、LED電流源1126によって受信される。アナログ変換された方形波に比例する波形によっても特徴付けられる、LED電流源1126によって生成された電流は、第1の光源218及び第2の光源220を駆動する。患者202の組織を通過した後、第1の光源218及び第2の光源220によって生成された光は、内因性蛍光剤によって生成された蛍光と共に、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって検出され、高速のADC1102によってデジタル化される。
【0129】
再び図11及び図12を参照すると、波形発生器/FPA1122によって生成されたデジタル方形波1202はまた、DAC1110(図11参照)によって、同相基準正弦波1210及び異相/直角位相基準余弦波1212に変換され得る。一態様では、ADC1102からのデジタル化された検出器信号及び同相基準正弦波1210は、サンプリングされ、複数の同相変調信号を生成するために第1の乗算器1214で符号付き乗算され得る。さらに、デジタル化された検出器信号及び直角位相基準余弦波1212は、サンプリングされ、複数の直角位相(異相)変調信号を生成するために、第2の乗算器1216で符号付き乗算され得る。この態様では、取得ユニット234は、基準波1210/1214を生成するDAC1124と、基準波1210/1214を取得中の検出器データに同調させるために検出器信号をデジタル化するADC1102との間の相対遅延に相当する量だけ、基準波1210/1214からのサンプルを遅延させ得る。
【0130】
再び図12を参照すると、同相変調信号は、同相強度信号1224を生成するために、第1のアキュムレータ1218で加算され得る。同様に、直角位相変調信号は、直角位相強度信号1228を生成するために、第3のアキュムレータ1222で加算され得る。生のデジタル化された検出器信号はまた、平均強度信号1226を生成するために、第2のアキュムレータ1220で加算され得る。さらに、同相強度信号1224及び直角位相強度信号1228は、振幅信号1230を生成するために、二乗和平方根され得る。
【0131】
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、アキュムレータ1218/1220/1222の積算間隔は、測定信号のバイアスを回避するために、変調サイクル(デジタル方形波1202のサイクルに対応)の整数に対応し得る。同期検出の制御に使用される位相アキュムレータ1218/1220/1222は整数で動作するが、サンプルクロック周波数及び変調周波数は整数で割り切れないため、サイクル数は正確には整数ではない。しかしながら、実現可能なサンプリング間隔にできるだけ一致するように実際の変調周波数を調節し、適切なビット数を位相アキュムレータに割り当てることによって、この不一致に関連する誤差を最小限に抑えることができる。一態様では、変調周波数とサンプリング間隔との間の不整合に関連する誤差は、約10分の1の大きさであり得る。
【0132】
一態様では、第1の光源218及び第2の光源220を調節し、上述した同期検出法を可能にするために使用されるデジタル方形波1202は、約1kHzの周波数で生成される。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、矩形波を変調波形として選択することにより、同一のピーク電力レベルに対する変調波形としての純粋な正弦波と比較して、信号対雑音比(SNR)を向上させることが可能になる。
【0133】
別の態様では、取得ユニット234は、同相強度信号1224、平均強度信号1226、及び直角位相強度信号1228の復調を可能にするようにさらに構成され得る。一態様では、取得ユニット234は、強度信号1224/1226/1228を変調するために使用されるデジタル方形波1202の振幅よりも(4/π)倍大きい振幅を特徴とする基本波の各構成要素を選出し得る。様々な態様では、交流電源によって生成された50/60Hzの電気ノイズ、及びそれらの電源から電力供給される周囲光源によって生成された対応する100/120Hzの光学ノイズを除去するために、アキュムレータ1218/1220/1222の積算期間は、100ミリ秒の倍数であるように選択され得る。これらの様々な態様では、この選択された積算期間は、アキュムレータ1218/1220/1222による積算が、50、60、100、及び120Hzの信号の整数サイクルにわたって発生することを確実にする。
【0134】
(iv)処理ユニット
【0135】
再び図2を参照すると、コントローラ212は、様々な態様では、復調された検出器信号に対して補正を適用し、補正された検出器信号の選択部分を腎機能の測定値に変換するように構成された処理ユニット236をさらに含み得る。図13は、一態様における処理ユニット236のサブユニットを示すブロック図である。図13に示すように、処理ユニット236は、様々な交絡影響に関連する信号アーチファクトを除去するために、検出器信号を決定及び修正するように構成された前処理サブユニット1302を含み得る。様々な交絡影響としては、これに限定しないが、例えば、生理学的に誘発された信号のばらつき、第1の光源218及び第2の光源220に供給される電力のばらつき、検出器応答の非線形性、周囲温度のばらつき、及び組織の不均一性などが挙げられる。処理ユニット236は、組織の自家蛍光及び/または第2の光検出器224の光学フィルタ244を通過する励起波長光の漏光などの背景要因に起因する検出器信号の部分を除去するように構成された背景減算サブユニット1304をさらに含み得る。処理ユニット236は、自家蛍光の変化、及び/または、発光波長光のみを検出するように構成された第2の光検出器224への励起波長光の漏出に関連する背景信号の動的変化の影響を除去するため、及び、第1の検出器に背景補正を適用してDRex,measをDRex,photonsに変換するために、背景補正法を適用する方法を用いることを可能にするように構成された背景補正サブユニット1306をさらに含み得る。処理ユニット236は、患者の腎機能を測定することを目的としたその後の分析のために、検出器データにおける、平衡後期間に関連する部分を選択するように構成された薬剤投与後選択サブユニット1308をさらに含み得る。処理ユニット236は、平衡後の期間にわたって得られた検出器信号を変換して患者の腎機能を示す腎低下時定数(RDTC)を生成するように構成されたRDTC計算サブユニット1310をさらに含み得る。処理ユニット236は、検出器信号の大きさ(magnitude)をモニタリングしてシステムの異常を検出するように構成された障害検出サブユニット1312をさらに含み得る。
【0136】
(a)前処理サブユニット
【0137】
一態様では、第1の光源218及び第2の光源220による励起波長及び発光波長での照明にそれぞれ対応する第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって検出された光強度に対応する生の信号は、該信号から複数の交絡因子の影響を除去するために、前処理サブユニット1302の様々なモジュールを用いて前処理され、その結果、対象となる特定の信号をより正確に反映した信号が生成される。
【0138】
いくつかの非限定的な例として、光源によって生成される光の強度は、これに限定しないが例えば、光源に供給される電流の変化、及び光源の周囲温度の変化を含む複数の要因のうちの1以上に起因して変化し得る。センサヘッドの同一の光源開口部から放射される2以上の波長によって特徴付けられる光は、同一の検出器への同一の経路を共有しなくてもよい。検出器は、熱依存性の感度及びゲインを有し得る。さらに、第2の光検出器224に関連する光学フィルタは、温度依存性の透過特性を有し得る。
【0139】
一態様では、前処理サブユニット1302は、システム200のデバイス及び構成要素、並びに、患者特有の要因に関連する1以上の測定誤差、これに限定しないが例えば上記の複数の要因を除去するために、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって検出された光強度に対応する生の信号を処理するように構成される。図22Aは、一態様における前処理サブユニット1302のモジュールを示すブロック図である。図22Bは、第2の態様における前処理サブユニット1302aのモジュールを示すブロック図である。
【0140】
図22Aに示す一態様では、前処理サブユニット1302は、(1)後述するリサンプリングモジュール2202の方法を用いて信号をリサンプルし、(2)後述する検出器出力飽和検出及び除去モジュール2204の方法を用いて飽和した検出器信号を除去し、(3)後述する検出器温度補正モジュール2206の方法を用いて温度依存性の検出器ゲインを補正し、(4)後述する光方向性補正モジュール2208の方法を用いて器具の光方向性に関する信号を補正し、(5)後述するフィルタスループット温度補正(発光)モジュール2212の方法を用いてフィルタスループット及び蛍光の温度依存性のばらつきに関する信号を補正し、(6)後述する組織不均一性補正モジュール2216の方法を用いて組織不均一性を補正し、(7)後述するフィルタスループット温度補正(励起)モジュール及び信号分解モジュール2214の方法を用いてフィルタスループット及び励起光の温度依存性のばらつき、並びに信号分解に関する信号を補正し、(8)後述する分数光子正規化モジュール2218の方法を用いて光学パワーのばらつきを補正する。
【0141】
一態様では、図22Bに示すように、前処理サブユニット1302aは、後述する検出器温度補正モジュール2206aの方法を用いて信号の大きさを計算し、後述するリサンプリングモジュール2202aの方法を用いて信号をリサンプルし、後述する検出器出力飽和検出及び除去モジュール2204aの方法を用いて飽和サンプルを除去し、後述する検出器温度補正モジュール2206aの方法を用いて温度依存性検出器ゲインの信号を補正し、後述する分数光子正規化モジュール2218aの方法を用いて光学パワーのばらつきの信号を補正し、後述するフィルタスループット温度補正(励起)モジュール及び信号分解モジュール2214aの方法を用いて測定蛍光信号への励起光の漏光を補正し、後述するフィルタスループット温度補正(発光)モジュール2212aの方法を用いて励起拡散反射信号への蛍光の漏光を補正する。
【0142】
リサンプリングモジュール
【0143】
図22A及び図22Bを参照すると、様々な態様の前処理サブユニット1302/1302aは、患者202の生理学的プロセス、これに限定しないが例えば心拍及び呼吸などに関連する信号のばらつきを低減するように構成されたリサンプリングモジュール2202/2202aを含む。一般的に、取得シーケンスは、無照明の間隔(すなわち、暗間隔)で区切られた、励起時と発光時との交互の照明間隔によって特徴付けられる。上述したように両方の照明間隔(励起/放射)は同一のタイムスタンプ値でタイムスタンプされているが、励起照明間隔と発光照明間隔との間の暗間隔は、励起照明間隔と発光照明間隔との間の分離間隔になる。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、取得シーケンスに関連する分離間隔が、心拍または呼吸などの生理学的事象の間の分離間隔とほぼ同じである場合、生理学的ノイズが信号に導入され得る。様々な態様では、この生理学的ノイズは、信号の後続処理の前に、励起照明及び発光照明に関連する信号をリサンプリングしてオーバーラップすることにより低減され得る。
【0144】
非限定的な例として、サンプルシーケンスは、100ミリ秒の暗間隔、励起波長での100ミリ秒の照明間隔、2回目の100ミリ秒の暗間隔、及び発光波長での100ミリ秒の照明間隔を含み得る。各サンプルパケットは単一のタイムスタンプで記録され、各サンプルパケットは400ミリ秒間隔で区切られる。例えば心拍からの、生理学的信号の変動はこの同一のタイムスケールで発生するため、励起波長及び発光波長に関連する信号取得の間の200ミリ秒の差が信号に表れる。この生理学的信号ノイズは、前処理サブユニット1302を用いて、後述する追加の信号処理を実施する前に、励起波長照明及び発光波長照明での照明に関連する信号を最初にリサンプリングしてオーバーラップすることにより低減され得る。この非限定的な例では、励起波長での照明に関連する信号を100ミリ秒だけ前方にシフトし、発光波長での照明に関連する信号を100ミリ秒だけ後方にシフトすることによって、両信号がオーバーラップされる。
【0145】
様々な態様では、リサンプリングモジュール2202は、第1の光検出器222及び第2の光検出器224の両方によって検出された信号に対して、上述したリサンプリングを実施する。一態様では、リサンプリングモジュール2202は、ローパスフィルタの形態として機能する。
【0146】
検出器出力飽和検出及び除去モジュール
【0147】
再び図22A及び図22Bを参照すると、様々な態様における前処理サブユニット1302/1302aは、第1の光検出器222及び第2の光検出器224の検出範囲外にある信号値を検出及び除去するように構成された検出器出力飽和検出及び除去モジュール2204/2204aを含む。一態様では、前処理サブユニット1302は、検出された信号を最大ADC信号と比較する。信号の平均またはピーク信号値が最大ADC信号の閾値範囲内に入る場合、検出器出力飽和検出及び除去モジュール2204は、その値を識別し、さらなる処理から除去する。
【0148】
検出器温度補正モジュール
【0149】
再び図22A及び図22Bを参照すると、様々な態様における前処理サブユニット1302/1302aは、第1の光検出器222及び第2の光検出器224の熱感受性を補償するべく、温度補正を可能にするように構成された検出器温度補正モジュール2206/2206aを含む。一態様では、光検出器として一般的に使用されるシリコン光電子増倍管(SPM)デバイスの固有の検出器ゲインは、本明細書では過電圧と呼ばれる、デバイスの破壊電圧とバイアス電圧発生器1112(図11を参照)によって印加されるバイアス電圧との差に比例する。この態様では、破壊電圧は、温度によって、よく特徴付けられた態様で変化する。一態様では、温度補正は、この内部検出器のゲイン変動と、さらに光子検出効率の温度関連の変動との両方を考慮する。
【0150】
一態様では、温度補正は、検出器測定値に適用される、測定された検出器温度に基づくスケール補正であり得る。一態様では、温度依存性を除去するために、測定された光検出器信号は、計算されたゲインG(t)で除算され得る。スケール補正G(t)は、以下の方程式(2)にしたがって計算され得る。
【0151】
【数2】
【0152】
方程式(2)において、動作温度T(モニタリング温度)は、第1の光検出器222及び第2の光検出器224の温度をモニタリングするように構成された第1の温度センサ1106(図11を参照)から取得される。バイアス電圧(Vbias)は、バイアス電圧発生器1112によって測定され得る。破壊電圧(Vbreakdown)及び基準温度(T)は、システム200に含まれる特定の光検出器デバイスに特有の定数である。非限定的な例として、第1の光検出器222及び第2の光検出器224がシリコン光電子増倍管(SPM)デバイスである場合、Vbreakdownは24.5Vであり得、Tは21℃であり得る。別の態様では、方程式(2)で使用される係数C及びCは、約18°C~約26°Cの範囲の周囲温度で均質ファントムを用いて得られた測定値に基づいて経験的に導き出され得る。
【0153】
別の態様では、ゲイン補正の温度部分は、以下の方程式(3)―(5)によって決定される。
【0154】
【数3】
【0155】
【数4】
【0156】
【数5】
【0157】
このゲイン補正は、以下のように、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって測定される信号の大きさのそれぞれに適用することができる。
【0158】
【数6】
【0159】
一態様では、各検出器及びモニタフォトダイオードから取得した測定値の大きさは、以下の方程式(1)にしたがって、振幅信号1230(同相マグニチュード信号)(I)、及び直角位相マグニチュード信号1232(Q)の二乗和平方根から算出される。
【0160】
【数1】
【0161】
方程式(1)を用いて計算された第1の光検出器222及び第2の光検出器224からの信号の大きさは、励起波長または発光波長での第1の光源218及び第2の光源220の1つによる照明中に得られた測定値に対応する各測定値セットに対するモニタフォトダイオードの大きさによって正規化される。モニタフォトダイオード904/906の両方が第1の光源218及び第2の光源220(図9を参照)の両方と同一の光源ウェル902に配置され得るので、対応する測定値セットからの2つのモニタフォトダイオードの大きさの平均が使用される。
【0162】
一態様では、同相強度信号1224、直角位相強度信号1228、及び平均強度信号1226(図12を参照)は、強度信号1224/1226/1228が、高速のADC1102の全範囲(すなわち、最小0から最大1までの範囲)の一部として返されるように、累積サンプル及びADCスケールの数に対してさらに処理される。モニタフォトダイオード904/906(図11参照)の測定値は、低速のADC1104の全範囲の一部として同様にスケーリングされる。
【0163】
一態様では、Gcorrectionは、LED電源の変動の影響を補正するための電力補正を組み込むことができる。この態様では、第1のモニタフォトダイオード904及び第2のモニタフォトダイオード906からの信号は、第1の光源218及び第2の光源220からの光強度が変化するときにパワーメータで光出力パワーを測定することによって較正される。各第1の光源218及び第2の光源220、Csource1及びCsource2の較正係数は、記録されたモニタフォトダイオード信号値ごとに、検出器で測定されたミリワットとして計算される。Csource1及びCsource2は、各波長での組織への絶対光出力を決定するために使用される。
【0164】
再び図22Bを参照すると、検出器温度補正モジュール2206aは、第1のモニタフォトダイオード904及び/または第2のモニタフォトダイオード906によって測定されたLED出力信号PDmagnitudeを用いて温度補正された検出信号を正規化することにより、LEDの変化する強度についての信号の大きさを補正する。この場合、上記の各第1の光源218及び第2の光源220のGcorrection変数は、以下のように修正される。
【0165】
【数7】
【0166】
光方向性補正モジュール
【0167】
再び図22Aを参照すると、この態様における前処理サブユニット1302は、データ取得中に患者202の組織を通過する異なる波長の光の散乱及び吸収の違いに関連する検出信号の変動を補正することができるように構成された光方向性補正モジュール2208を含む。一態様では、光方向性の補正項は、1以上の均質な組織ファントムからデータを取得し、発光フィルタが存在しないセンサ構成を使用することによって測定され得る。第1の光検出器222によって検出された信号(Det1)と、第2の光検出器224によって検出された信号(Det2)との比は、励起波長の光及び発光波長の光による照明に関連して得られた信号の係数GexまたはGemをそれぞれ決定するために使用される。上記の係数は、第1の光検出器222によって検出された信号を修正するために使用される。一態様では、第1の光検出器222によって均質媒体で取得された信号を、係数GexまたはGemを使用して補正することによって、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって測定された信号は、互いの20%以内に相当するように補正される。他の態様では、第1の光検出器222によって均質媒体で取得された信号を、係数GexまたはGemを使用して補正することにより、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって測定された信号は、約10%以内、約5%以内、約2%以内、及び約1%以内に相当するように補正される。
【0168】
検出器非線形性応答補正モジュール
【0169】
再び図22Aを参照すると、この態様における前処理サブユニット1302は、検出器の非線形応答に関連する検出信号の変動の補正を可能にするように構成された検出器非線形応答補正モジュール2210を含む。この態様では、平均データに基づく較正曲線を使用して、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって取得された大きさのデータをスケーリングすることができる。
【0170】
フィルタスループット温度補正(発光)モジュール
【0171】
再び図22Aを参照すると、この態様における前処理サブユニット1302は、発光波長での照射中、第2の光検出器224に関連する光学フィルタ244の温度依存性の光学特性に関連する検出信号の変動を補正することができるように構成されたフィルタスループット温度補正(発光)モジュール2212を含み得る。この態様では、第2の光検出器224によって検出された信号Det2は、以下の方程式(8)にしたがって補正され得る。
【0172】
【数8】
【0173】
様々な態様では、第2の光検出器224によって測定された信号Det2は、周囲温度が、動作温度範囲を含む範囲、または発光フィルタの温度依存性を適切に決定するための範囲の十分に大きいサブセットにわたって循環している間にモニタリングされ得る。これらのデータは、第2の光検出器224に取り付けられた光学フィルタ244によって均質な非蛍光ファントムから取得される。さらに、第1の光検出器222から同時測定値がモニタリングされ、測定値の比Det2/Det1が決定される。公称フィルタ係数CemF,nomは、公称動作温度Tnomで得られたDet2/Det1の公称比として計算される。この態様では、係数CemF,slopeTは、均質な非蛍光ファントムの発光波長の照明中に周囲温度の範囲にわたって取得されたDet2/Det1の傾きから得られる。
【0174】
組織不均一性補正モジュール
【0175】
再び図22Aを参照すると、この態様における前処理サブユニット1302は、第1の光源218及び第2の光源220によって照明される第1の領域206と第1の光検出器222及び第2の光検出器224が配置される第2の領域208及び第3の領域210との間に介在する組織の不均一性に関連する検出信号の変動に対する補正を可能にするように構成された組織不均一性補正モジュール2216を含む。この態様では、光方向性補正モジュール2208によって光の方向性が補正された信号Det1と、フィルタスループット温度補正(発光)モジュール2212によってフィルタ効果が補正された信号Det2とを使用することにより、以下の方程式(9)にしたがって、組織の不均一性を補正するための係数であるCheteroを計算することができる。
【0176】
【数9】
【0177】
フィルタスループット温度補正(励起)及び信号分解モジュール
【0178】
再び図22Aを参照すると、この態様における前処理サブユニット1302は、励起波長での照射中、第2の光検出器224に関連する光学フィルタ244の温度依存性の光学特性に関連する検出信号の変動を補正することができるように構成されたフィルタスループット温度補正(励起)モジュール及び信号分解モジュール2214を含む。この態様では、発光フィルタは励起波長の光を遮断するように構成されているので、フィルタスループット温度補正(励起)モジュール及び信号分解モジュール2214は、光学フィルタ244の光学特性における温度に関連する変化に起因する励起光漏光量のばらつきの補正を行う。さらに、フィルタスループット温度補正(励起)モジュール及び信号分解モジュール2214は、信号における励起波長の照明に関連する部分に、励起波長の照明を重ね合わせることによって誘起された蛍光の存在に起因して、励起波長での照射中における、第1の光検出器222によって測定された信号の補正を可能にする。
【0179】
この態様では、光学フィルタ244による励起波長光の漏光に対する温度依存性のばらつきの影響は、方程式(2)で表すようにして計算される。
【0180】
【数10】
【0181】
この態様では、CexLT,nomは、励起波長での照射中に、公称動作温度Tnomで均一な非蛍光ファントムから測定された信号であるDet1とDet2との比から計算される。CexLT,slopeTは、励起波長での照明中に、動作温度Tの範囲で均一な非蛍光ファントムから測定された信号Det2の勾配として計算される。
【0182】
この態様では、フィルタスループット温度補正(励起)モジュール及び信号分解モジュール2214は、信号抽出をさらに実施して、励起波長照明の拡散反射及び蛍光に関連する検出信号の部分を分離する。光学フィルタ244が存在しない場合に第2の光検出器224に衝突する励起光の量であるDRex2は、光学フィルタ244の存在に起因して測定することができない。さらに、第1の光検出器222によって測定される信号Det1は、励起波長照明DRex1の拡散反射と蛍光Flr1との両方からの複合信号である。CHeteroは、上記の組織不均一性補正モジュール2216を用いて取得される。基礎信号(underlying signal)は、以下の方程式(11)~(14)を用いて得られる。
【0183】
【数11】
【0184】
【数12】
【0185】
【数13】
【0186】
【数14】
【0187】
この態様では、Flrは、以下に示すように、測定可能な信号Det及びDetのみを用いて上記の連立方程式を解くことによって求められる。
【0188】
【数15】
【0189】
【数16】
【0190】
【数17】
【0191】
【数18】
【0192】
【数19】
【0193】
この態様では、Flrが上記のようにして求められると、他の信号Flr、DRex1、及びDRex2は、上記の連立方程式(方程式(11)~(14))に代入することによって容易に求めることができる。
【0194】
分数光子正規化モジュール
【0195】
再び図22Aを参照すると、この態様における前処理サブユニット1302は、上述の前処理の後、検出器信号を、本明細書に記載の後続の背景減算及び自家蛍光補正アルゴリズムにおいて使用するための分数光子の単位に変換するように構成された分数光子正規化モジュール2218を含む。この態様では、検出器信号は、ADCに関連するスケールと、検出信号を取得して光電流の単位の信号を得るために使用されるトランスインピーダンス増幅器とを逆にすることによって、光電流に変換され得る。光電流が得られると、光検出器の製造業者によって提供される検出器の応答性を用いて、検出器の光電流がワット単位に変換される。ワット単位の検出器信号は、その後、第1の光源218及び第2の光源220の出力をモニタリングして検出された分数光子の数を取得するために使用される追加の光検出器226によって測定されるワット単位の光源電力に比例させられる。
【0196】
光学パワー補正モジュール
【0197】
再び図22A及び図22Bを参照すると、この態様における前処理サブユニット1302/1302aは、上述の前処理の後、検出器信号を、本明細書に記載の後続の背景減算及び自家蛍光補正アルゴリズムにおいて使用するための分数光子の単位に変換するように構成された分数光子正規化モジュール2218/2218aを含む。この態様では、検出器信号は、ADCに関連するスケールと、検出信号を取得して光電流の単位の信号を得るために使用されるトランスインピーダンス増幅器とを逆にすることによって、光電流に変換され得る。光電流が得られると、光検出器の製造業者によって提供される検出器の応答性、検出器の光電流がワット単位に変換される。ワット単位の検出器信号は、その後、第1の光源218及び第2の光源220の出力をモニタリングして検出された分数光子の数を取得するために使用される追加の光検出器226によって測定されるワット単位の光源電力に比例させられる。
【0198】
励起光漏出減算モジュール
【0199】
再び図22Bを参照すると、この態様における前処理サブユニット1302aは、Flrmeas信号に対して励起光漏出減算を行うように構成された分数光子正規化モジュール2222を含む。蛍光光子Flrphotonsのみに起因する蛍光信号を求めるために、励起光漏出減算が行われる。励起光の寄与を除去するために、励起光漏出は拡散反射励起(DRexmeas)信号の一部であると見なされ、ユニバーサル較正係数であるCExLTは、以下で表されるFlrmeasから減算する信号の部分を決定する。
【0200】
【数38】
【0201】
式中、CExLTは、後述するように、非蛍光光学ファントム上の両方の検出器によって検出された励起光間の比率を計算することによって得られる較正係数である。
【0202】
【数39】
【0203】
この信号は、その後、Flrmeastoから減算され、以下の方程式(40)に示すように蛍光光子のみに起因する蛍光信号が提供される。
【0204】
【数40】
【0205】
蛍光漏出減算モジュール
【0206】
再び図22Bを参照すると、この態様における前処理サブユニット1302aは、Flrmeas信号に対して蛍光漏出減算を行うように構成された蛍光漏出減算モジュール2224aを含む。励起光子(DRexphotons)のみに起因する励起信号として本明細書で定義される拡散反射を得るために、蛍光漏出減算が行われる。蛍光漏出を除去するために、ヒト対象データのデータベースで観察される蛍光漏出の量と、拡散反射、発光信号(DRemFilt/DRem)間の関係によって測定された組織不均一性との間の関係に基づいて較正係数CFlrLTを決定した。上記の関係は、以下に示す線形関係である。
【0207】
【数41】
【0208】
式中、上記の関係によって決定されるように、一態様では、p1及びp2は、それぞれ約0.61及び0.01である。別の態様では、p1及びp2は、上記の関係によって定義されるように、制限なしに他の値をとってもよい。
【0209】
DRexphotons信号は、その後、以下の方程式(42)に示すように、拡散反射励起信号から測定された蛍光のこの部分を減算することによって計算される。
【0210】
【数42】
【0211】
背景減算サブユニット
【0212】
再び図13を参照すると、処理ユニット236は、背景減算サブユニット1304(ベースライン減算サブユニット)をさらに含む。一態様では、背景減算サブユニット1304は、自家蛍光及び光漏出の影響を補正するために、光検出器測定値からベースライン信号を減算する。本明細書で使用されるベースライン期間は、外因性蛍光剤の注入前に得られる測定の初期期間を指す。ベースライン期間中に、システム200によって測定された蛍光信号は、第2の光検出器224の光学フィルタ244(吸収フィルタ)を通って漏出する第1の光源218及び第2の光源220からの組織自家蛍光及び/または励起光に関連すると見なされ得る。一態様では、本明細書でベースライン信号と呼ばれるベースライン期間中に測定された平均信号は、患者の組織内の外因性蛍光剤によって生成される蛍光のみに関連する測定値を生成するために、後続の蛍光測定値から減算され得る。
【0213】
別の態様では、励起光漏出の補正及び自家蛍光の補正は、背景補正サブユニット1306と協働して実施され得る。この別の態様では、ベースライン期間中に測定された平均信号を減算するのではなく、背景補正サブユニット1306が、各データ取得サイクルにおいて、励起光漏出及び自家蛍光の影響を動的に計算する。その結果、後述する拡散反射補正の前に励起光漏出の影響の減算が実施され得、背景補正サブユニット1306によって各データ取得サイクルで自家蛍光の影響の減算が更新され得る。
【0214】
背景補正サブユニット
【0215】
一態様では、背景補正サブユニット1306は、患者の組織内の外因性蛍光剤の腎排泄のモニタリング中に患者202の組織の光学特性(吸収及び散乱)の変化の影響を除去するために、測定された蛍光データを補正する。上述したように、組織の光学特性は、これに限定しないが例えば、血管拡張、血管収縮、酸素飽和度、水分補給、水腫、並びに、ヘモグロビン及びメラニンなどの内因性発色団の濃度の変化に関連するシステムによってモニタリングされる対象の領域内の任意の他の適切な要因などの、任意の1以上の要因に起因して変化する。
【0216】
一態様では、背景補正サブユニット1306は、データ取得中に患者の組織内の内因性蛍光体から放射された発光波長光を表す固有の自家蛍光(IFauto)信号を決定し得る。この態様では、IFauto信号は、IFbkrnd(薬剤注入前の背景固有の蛍光データ)の平均値または中央値から取得される。IFbkrnd信号を、下記の方程式(43)に示す。
【0217】
【数43】
【0218】
式中、係数bkx、bkm、及びkmFiltは、グローバル誤差面方法によって得られる。
【0219】
一態様では、上記の方程式(43)で使用されるべき指数は、グローバル誤差面方法(global error surface method)を用いて経験的に決定される。この態様における本方法は、ユーザによって選択された各拡散反射信号(DRex、DRem、DRem,filtered)について、各べき指数(bkx、bkm、bkmFilt)の値の範囲を選択するステップを含む。様々な態様では、各べき指数の範囲は、1以上の様々な要因影響を受け得る。様々な要因影響としては、これに限定しないが、例えば、センサヘッド204の設計を含むシステム200の設計、励起/放射波長、吸収効率、発光効率、患者の組織内の初期量の濃度などの選択された外因性蛍光剤の特性、患者202の人種及び対応する内因性発色団の濃度、患者202上のセンサヘッド204の位置、及び、任意の他の関連要因が挙げられる。
【0220】
一態様では、本方法は、各係数(bkx、bkm、bkmFilt)について広範囲を選択するステップを含んでいてもよく、広範囲の検索を実行する。この広範囲の検索からの誤差面を分析して、誤差面内のウェル、及び各係数の関連範囲を特定する。この一態様における方法は、誤差面内のウェルが観察された広範囲の検索からの領域を含めるように各係数の範囲を適合させるステップと、分析を繰り返すステップとを含む。この方法は、最小誤差を正確にキャプチャすることができる適切な高分解能が得られるまで繰り返される。
【0221】
各べき指数(bkx、bkm、bkmFilt)について選択された値の範囲に対して、刻み幅がステップ1404で選択される。一態様では、各因子の刻み幅は、これに限定しないが例えば、上記で計算された、各因子の変化に対するIF値の予想感度、様々な因子(利用可能な計算リソース、許容可能なデータ処理時間、または任意の他の関連する因子など)を考慮してIFを計算するために使用されるべき指数の組み合わせの適切な総数、及び、刻み幅のその他の適切な基準などの様々な因子の1以上に基づいて選択される。
【0222】
様々な態様では、刻み幅は、すべてのべき指数(bkx、bkm、bkmFilt)で同一の値である。非限定的な例として、すべてのべき指数の刻み幅は0.5である。様々な他の態様では、刻み幅は、単一のべき指数(bkx、bkm、bkmFilt)のすべての値で一定であるが、各べき指数で選択される刻み幅は、異なるべき指数間で異なる。非限定的な例として、bkxについて選択される刻み幅は0.01であり、bkm及びbkmFiltについて選択される刻み幅は0.6である。様々な追加の態様では、1以上のべき指数内の刻み幅は、各べき指数の範囲内で異なる。これらの様々な追加の態様では、上記で計算されたIFが、そのべき指数の小さな変化についてより敏感であると予測されるべき指数のサブレンジ内で、刻み幅が小さくなる。単一のべき指数の範囲内の適切な可変刻み幅の非限定的な例としては、ユーザによって選択される異なる刻み幅、ランダムな刻み幅、刻み幅の線形増加及び/または減少、対数分布などの異なる刻み幅の非線形分布、指数分布、または任意の他の適切な刻み幅の非線形分布が挙げられる。
【0223】
選択された指数の範囲は、選択された刻み幅と共に、bkx、bkm、bkmFiltの可能性のある値のベクトルを形成するために使用される。指数の各組み合わせについて、複数のIF値が計算され、各IF値は、データ収集サイクルの1つに対応する。非限定的な例として、本明細書で上記に列挙された可能性のある指数のベクトルを用いて、合計405(5*9*9)の複数のIF信号が計算される。
【0224】
一態様では、可能性のある指数の複数の組み合わせは、1つの指数の組み合わせを複数から選択し、上記の方程式を用いて計算される後続の拡散反射補正での使用に割り当てるために評価される。補正Flr信号データ(すなわち、上記の方程式を用いて計算されたIF信号データ)の誤差の推定値が計算される。これに限定しないが例えば、IF信号データの曲線適合に対するIF信号データの残差に関連する量などの誤差の推定値が計算される。任意のタイプの既知の曲線適合方法が、IF信号データに対して曲線適合、これに限定しないが例えば単一指数曲線適合などを行うために使用される。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、MB-102などの外因性蛍光剤の腎臓からのクリアランス率は、腎崩壊時定数RDTCによって特徴付けられる一定の指数関数的減衰であると期待されると考えられる。
【0225】
固有の自家蛍光(IFauto)は、単にIFbkrndの平均値または中央値である。以下のように、背景拡散反射の逆補正を行うことによって、自家蛍光信号であるFlrautoが投影される。
【0226】
【数44】
【0227】
この自家蛍光信号Flrautoは、外因性蛍光剤から放射された発光波長光を具体的に表す薬剤固有の蛍光(IFagent)を決定するために、測定された蛍光信号であるFlrから除去される。
【0228】
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、腎機能を測定するために使用されるシステム200によって得られる蛍光測定値は、(フィルタ付きの)第2の光検出器224によって検出された発光波長光子を含む。発光波長光子は、励起波長光子による照明に応答して、患者の組織に導入された外因性蛍光剤から放射される。発光波長光子は、蛍光源(すなわち、外因性蛍光剤)から、患者の皮膚の第3の領域210を通って(フィルタ付きの)第2の光検出器224へ移動する。しかしながら、(フィルタ付きの)第2の光検出器224によって検出された発光波長光は、患者の組織内のケラチン及びコラーゲンなどの内因性蛍光体から放射された自家蛍光、及び第2の光検出器224の光学フィルタ244を通過した励起波長光の漏れも含む。外因性蛍光剤の蛍光を誘起する励起波長光子は、第1の光源218によって生成され、患者の皮膚の第1の領域206に導かれる。患者の皮膚の光学特性(散乱及び/または吸収)が、腎機能を測定するために使用される検出器データの取得期間(すなわち、数時間から約24時間、またはそれ以上)にわたって変化する場合、前述したように、蛍光測定の精度に影響が出る。
【0229】
一態様における各測定サイクル中、システム200は、発光波長光のパルスと励起波長光のパルスとを交互に出力して患者の皮膚の第1の領域206に光を導き、患者の皮膚の第2の領域から放射されたすべての光を(フィルタが付いていない)第1の光検出器222を用いて検出し、かつ、患者の皮膚の第3の領域210から放射された光の一部を(フィルタ付きの)第2の光検出器224を用いて検出する。第1の領域206の励起波長及び発光波長の照明と、フィルタが付いていない第1の光検出器222及びフィルタ付きの第2の光検出器224による検出との各組み合わせによって検出された光強度は、患者の組織内の外因性蛍光剤の濃度に関する情報だけでなく、患者の皮膚の光学特性に関する情報も含む。
【0230】
【表2】
【0231】
蛍光の主な測定値は、フィルタ光検出器で測定された蛍光の強度を表すFlrmeasである。
【0232】
拡散反射測定値Flrmeasは、フィルタが付いていないアームへの光子の伝播を表し、主に励起光子によって構成される。
【0233】
DRem及びDRem,filteredは、発光光子のみの伝播を表す。
【0234】
表2を参照すると、励起波長光による照射中に(フィルタ付きの)第2の光検出器224によって測定された光強度は、様々な面における組織の光学特性の補正前に外因性蛍光剤から放射された生の光強度(Flrmeas)をキャプチャする。内因性発色団に起因する自家蛍光の寄与は僅かであるため、前述の背景減算補正後、Flrmeasに含まれる発光波長光は、主に外因性蛍光剤に由来すると見なされ、そのため「Flragent」と呼ばれる。一態様では、患者の皮膚の光学特性の変化が想定されない場合、上記のベースライン補正中にすべての自家蛍光の寄与が減算される。
【0235】
一方、データの取得中に患者の皮膚の光学特性が変化する場合、若干の自家蛍光が患者の皮膚から発光波長で放射され、これにより、事前に行われた背景減算補正の精度に不確実性が導入される。さらに、皮膚の光学特性が変化すると、外因性蛍光剤に到達する励起波長光の強度をさらに変化させる恐れがあり、これにより、外因性蛍光剤によって吸収されたエネルギー量、及び、励起波長光による照明に応答して外因性蛍光から放射された誘起蛍光の強度が変化する。様々な態様では、残りの3つの光測定値は、患者の皮膚の光学特性のモニタリングを可能にし、自家蛍光及び励起波長光の漏出の影響を含む患者の皮膚の光学特性の変化を調節するために使用されるデータを提供する。
【0236】
再び表2を参照すると、励起波長光による照明中に、(フィルタが付いていない、基準の)第1の光検出器222によって測定された光強度は、患者の皮膚を通って伝播した励起波長光の拡散反射の測定値をキャプチャする(DRex,meas)。第1の光検出器222は、励起波長光及び発光波長光の両方を検出するように構成されるが、蛍光による光生成効率は低いため、励起波長光の強度は、発光波長光の強度よりも数桁高い。様々な態様では、DRex,measにおける発光波長光の割合は無視できると見なされる。他の態様では、DRex,measにおける発光波長光の割合が推定され、減算される。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、患者の皮膚に導かれた励起波長光の強度は、外因性蛍光剤による吸収に起因する損失が無視できることにより比較的一定であると見なされ、かつ前述したように累乗補正が行わるため、DRex,measは、励起波長光に対する患者の皮膚の光学特性の変化を評価するためのベンチマーク測定値としての役割を果たす。
【0237】
放射波長光による照明中に、(フィルタが付いていない、基準の)第1の光検出器222によって測定された光強度は、患者の皮膚を伝播する発光波長光の拡散反射の測定値をキャプチャする(DRem)。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、データ取得サイクルのこのフェーズ中に励起波長光の照明が行われないことに起因して、外因性蛍光剤が発光波長光を放射するように誘起されないので、並びに、患者の皮膚に導かれた発光波長光の強度は比較的一定であり、かつ前述したように累乗補正が行われるので、DRemは、放射波長光に対する患者の皮膚の光学特性の変化を評価するためのベンチマーク測定値としての役割を果たす。
【0238】
放射波長光による照明中に、(フィルタ付きの)第2の光検出器224によって測定された光強度は、患者の皮膚を通って伝播した発光波長光の拡散反射の第2の測定値をキャプチャする(DRem,filtered)。一態様では、DRem,filteredは、上述したDRemと同一の仮定にしたがう。さらに、DRem,filteredは、組織の光学特性の不均一性を評価する手段を提供する。DRem,filteredは、第3の領域210(図2を参照)で患者の皮膚から放射された光を検出するように構成された第2の光検出器224によって測定されるので、DRem,filteredで測定された光の強度は、DRemで測定された光が進む光路とは異なる光路である患者の皮膚を通る光路に沿って伝播する。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、光を第1の光検出器222及び第2の光検出器224にそれぞれ送達する第1の検出器開口部1004と第2の光開口部2006との間の距離は、光送達開口部1002から等距離になるように設計されているので(図10参照)、DRem,filteredとDRemとの差違は、互いに異なる2つの光路が横切る皮膚の光学特性の不均一性の結果であると見なされる。
【0239】
励起波長光の漏出補正
【0240】
一態様では、DRexmeasは、本明細書に記載の背景信号におけるばらつきの影響を除去する方法の一部として使用される第2の(フィルタ付きの、基準の)光検出器224への励起波長光の漏れの推定の基準として機能する。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、第2の(フィルタ付きの、基準の)光検出器224への励起波長光の漏出量はDRex信号に比例し、この割合は患者の皮膚の光学特性に関連する要因ではなく、デバイスに関連する要因のみの影響を受けると見なされる。結果として、後述のように、漏光を表すDRex信号の割合は一定であると見なされる。
【0241】
一態様では、生の蛍光信号(Flr)内に含まれる励起波長光の漏れ(ExLT)は、下記の方程式(21)にしたがって、DRexmeas信号の一定の割合CExLTであると見なされる。
【0242】
【数21】
【0243】
式中、CExLTは、センサヘッド特有の較正の因子である。
【0244】
一態様では、CExLTは、下記の方程式(22)にしたがって、非蛍光光学ファントム上の第1の光検出器222と第2の光検出器224とによって検出された励起光間の比(Det1/Det2)を計算することによって得られる。
【0245】
【数22】
【0246】
別の態様では、フィルタ付きの検出器に到達する励起光は、組織の不均一性に起因して、フィルタが付いていない検出器に到達する光とは異なると見なされる。この態様では、各検出器での発光波長光の比率は、この不均一性を補正するために使用される。
【0247】
様々な態様では、較正係数CExLTは、個々のセンサヘッド204に特有であり得、または、CExLTは、これに限定しないが例えば製造公差などの様々な要因に応じてシステム200のすべてのセンサヘッド204に適用可能であり得る。一態様では、システム200がCExLTを取得するために使用される場合、Flrmeas及びDRexmeasは、上述したシステム200における非蛍光の均質ファントムに由来するものである。上記の方程式(22)は、システム200によってモニタリングされた組織が均質であると仮定していることに注意されたい。
【0248】
一態様では、上記の方程式(21)によって決定される励起波長光の漏れ(ExLT)は、下記の方程式(23)に示すように、補正された蛍光信号Fphotonsを取得するために生の蛍光信号(Flrmeas)から減算される。
【0249】
【数23】
【0250】
図17Aは、外因性蛍光剤の注入の前後の、生の蛍光信号(Flrmeas、青線)と、一態様におけるシステム200によって得られた方程式(23)を用いて決定された対応する励起波長光漏出(ExLT、赤線)とのグラフである。図17Aに示すように、ExLT信号は、データ収集の過程にわたって変化する。図17Bは、生の蛍光信号(Flrmeas、青線)と、方程式(23)で上記のように励起波長光の漏出が除去された蛍光信号(FlrphotnsT、緑色の線)とを比較したグラフである。
【0251】
一態様では、生の蛍光信号Flrmeasは、方程式(23)を用いて励起波長光の漏出の影響を除去するために最初に補正される。この態様では、自家蛍光の影響を除去するためのその後の補正は、後述するように、補正された蛍光信号Flrphotonsを基準として用いて実施される。
【0252】
蛍光漏出補正
【0253】
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、励起波長での光による照明中にフィルタの付いていない光検出器によって検出された光は、励起波長光の拡散反射と薬剤蛍光からの光との混合である。一態様では、フィルタの付いていない検出器測定への蛍光の寄与が無視できるように、拡散反射は蛍光よりも十分に強いと見なされる。
【0254】
別の態様では、フィルタの付いていない検出器測定への蛍光の寄与は無視できない。非限定的な例として、図27は、外因性蛍光剤の投与がない場合の1日の間のDRexmeas及びFlrmeasを示すグラフである。しかしながら、図28に示すように、DRexmeasシグナルは蛍光の漏出を示すことがあり、これは患者の血流への薬剤投与後の相関信号の上昇から明らかである。
【0255】
一態様では、励起光子のみに起因する拡散反射励起信号の部分は、以下の方程式(24)にしたがって生のDRexmeas信号から除去される。
【0256】
【数24】
【0257】
様々な態様では、係数CFlrLTは、DRexFilt/DRemの比率で表される組織の不均一性に関連して、DRexmeas信号で測定された蛍光漏出(Flrleakthrough)の量の関係を用いて経験的に決定される(以下の説明を参照)。一態様では、測定値は、複数の対象から取得され得る。非限定的な例として、図29は、経験的に決定されたFlrleakthroughと33人の患者のデータベースから得られたDRem/DRemFiltとの間の関係を要約するグラフである。この態様では、この経験的に導出された関係は、複数の患者データセットで確認され、一致していることがわかった。下記に定義するように、組織の不均一性と蛍光の漏れの量との関係を組み込むように補正係数CFlrLTを設定した。
【0258】
【数25】
【0259】
一態様では、上記の方程式(25)は、図29に示された関係へのバイアス加重線形適合によって決定されるp1=0.6138及びP2=0.01095を含む。
【0260】
別の態様では、CFlrLTは、蛍光濃度の増加とともに提供される光学ファントムの測定値を取得することによって決定され、唯一の変化信号は、外因性蛍光剤濃度の濃度に起因する。
【0261】
蛍光と励起波長拡散反射との分離
【0262】
様々な態様では、下記の方程式(26)及び(27)に示すように、フィルタ付きの検出器またはフィルタが付いていない検出器のDRexまたはFlrのいずれかに起因する光子の数は、検出された波長での各検出器の光の方向性と、ゲインとに依存する。
【0263】
【数26】
【0264】
【数27】
【0265】
式中、係数A、A、B、及びBには方向性及びゲイン係数が含まれる。非限定的な例として、Aは下記の方程式(28)の形式で提供され得る。
【0266】
【数28】
【0267】
式中、d450SPM1及びGSPM1@450は、450nmの照明波長での検出器SPM1の方向性及びゲイン係数である。
【0268】
一態様では、光子信号は、下記の方程式(29)及び(30)に表されるように分解され得る。
【0269】
【数29】
【0270】
【数30】
【0271】
様々な態様では、本明細書に記載の腎機能のモニタリングは下記の方程式(31)に表されるように固有の蛍光(IF)の変化率を測定するので、B(B/B-A/A)などの光子信号の前の定数項は不要である。
【0272】
【数31】
【0273】
一態様では、用語A/A(すなわち、CExLT)及びB/B(すなわち、CFlrLT)を、上記のように実験的に決定することによって、Flrphotons及びDRex,photonsをそれぞれ分解することができる。
【0274】
自家蛍光補正
【0275】
様々な態様では、背景の経時変化効果を除去するために測定された蛍光を補正する方法は、励起波長の漏れの影響を除去するステップに加えて、自家蛍光の影響を除去するステップをさらに含み得る。本明細書で使用されるとき、自家蛍光は、励起波長光による照明に応答して、ケラチン及びコラーゲンなどの内因性発色団によって生成された放射波長光を指す。様々な態様では、自家蛍光は、本明細書に記載のシステム及び方法を使用して蛍光測定値を取得する過程にわたって変化し得る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、ヘモグロビン及び/またはメラニンなどの発色団の濃度の変化などの、患者の皮膚の光学特性の変化は、自家蛍光レベルの変動を引き起こし得る。
【0276】
図18は、患者の組織が外因性蛍光剤を含んでいないと見なされる場合に、患者202への外因性蛍光剤の注入前の間隔として定義される背景間隔中に取得された生の蛍光の測定値(Flrmeas、青線)を要約するグラフである。図18には、上記の方程式(5)を使用してFlrmeasから励起波長光(ExLT)の漏れの影響を除去した結果の信号も示されている。図18に緑線で示される、背景期間中に検出された残りの蛍光信号は、様々な態様において自家蛍光に起因すると見なされ得る。
【0277】
一態様では、ケラチン及びコラーゲンなどの内因性発色団による発光のみに起因する、発光波長での測定された蛍光として定義される固有の自家蛍光(IFauto)は、下記の方程式(32)にしたがって、背景期間中に取得された補正された蛍光信号Flrphotons(方程式(23)を参照)の中央値として計算され得る。
【0278】
【数32】
【0279】
式中、endBackgroundは、外因性蛍光剤を注入する直前の背景間隔の終了に対応するデータセット内のデータ取得のインデックスである。
【0280】
一態様では、自家蛍光は、外因性蛍光剤の注入後の間隔を含むデータ取得プロセス全体を通じて比較的安定していると見なされ得る。この態様では、下記の方程式(33)で表されるように、補正された蛍光信号Flrphotonsから上記の方程式(32)で得られたIFAuto値を減算することによって、自家蛍光の影響が除去され得る。
【0281】
【数33】
【0282】
式中、IFagentは、外因性蛍光剤から放射された発光波長光を具体的に表す固有の蛍光を示す。
【0283】
図19Aは、背景期間中に得られた様々な測定値を要約するグラフである:生の蛍光(Flrmeas)、DRex,meas(赤線)、DRem(オレンジ色の線)、及びDRem,filtered(紫色の線)。さらに、上記の方程式(32)を使用して計算された固有の自家蛍光(IFauto、緑色の線)も図19Aに示されている。図19Aに示された背景間隔中、すべての値の量が比較的安定していた。
【0284】
図19Bは、図19Aに示した拡散反射測定値を要約するグラフである:DRex,meas(赤線)、DRem(オレンジ色の線)、及びDRem,filtered(紫色の線)。外因性蛍光剤の注入後(すなわち、図18に示すように約9:07の時間の後)に蛍光測定値を取得する過程にわたって、拡散反射測定値は大幅に減少し、自家蛍光から測定された信号に影響を与える患者の皮膚の光学特性も、この期間中に変化し得ることを示す。
【0285】
さらなる態様では、拡散反射測定値を使用して、測定期間全体について基礎自家蛍光信号を射影し、これにより、データ測定の全過程にわたる患者の皮膚の光学特性の変化を考慮する。一態様では、拡散反射測定値を使用して補正された蛍光信号Flrphotonsをスケーリングすることによって患者の皮膚の光学特性の変化を考慮し、その結果、固有の蛍光が得られる。一態様では、外因性蛍光剤の注入後に得られた蛍光測定値を補正するために、上記の方程式(32)から計算された固有の蛍光(IFauto)は、下記の方程式(34)に表されるように、上記の方程式(33)から得られた、組み合わされた固有の蛍光(IFAgentAndAuto)から減算され得る。
【0286】
【数34】
【0287】
一態様では、背景補正サブユニット1306は、図20のブロック図に要約されるように、背景補正方法2000を可能にし得る。方法2000は、上記の方程式(29)、(30)、及び(31)で示されたように、発光波長光が(フィルタ付きの、基準の)第2の光検出器224に漏出する影響を除去するために、ステップ2002で補正を実行するステップを含み得る。方法2000は、上記の方程式(32)で示されたように、背景期間中に得られた測定値の分析から、ステップ2004で自家蛍光(IFauto)のレベルを推定するステップをさらに含み得る。方法2000は、上記の方程式(33)で示されたように、蛍光測定値から自家蛍光の影響を除去するために、ステップ2006で補正を実行するステップをさらに含み得る。実際には、自家蛍光信号IFautoは、後続の蛍光測定の前に射影され、ステップ2006で除去される。生の蛍光測定値からの背景効果の除去から生じる固有の蛍光IFagentは、後述するように、RDTC計算サブユニット1310によって、これに限定しないが、例えば糸球体濾過率(GFR)及び/または腎機能を表す腎崩壊時定数(RDTC)などのパラメータに変換され得る。
【0288】
(e)障害検出サブユニット
【0289】
再び図13を参照すると、コントローラ212の処理ユニット236は、光源218/220及び光検出器222/224の機能をモニタリングし、表示ユニット216によってシステム200内で検出された障害である異常をユーザに通知するように構成された障害検出サブユニット1312をさらに含む。様々な態様では、障害検出サブユニット1312は、センサヘッド204(図2を参照)の光源218/220、光検出器222/224、関連する追加の温度センサ228、及び追加の光検出器226から受信した信号レベルを検査することによって、障害状態及び通知状態の基本的な識別を可能にする。様々な態様では、信号強度(方程式(1)を参照)及び平均信号は、LED光源218/220の変調のピーク及び最下点レベルを決定するために使用される。本明細書では、平均信号からピークツーピーク信号の半分を引いたものとして定義される信号の最下点は、一態様では、周囲光レベルをモニタリングするために使用される。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、増幅器のDCオフセットなどの変調信号の最下点レベルに対する追加の影響は、周囲光の漏出の影響に比べると小さくかつ一定であるので、無視することができる。一態様では、検出された周囲光レベルが、低検出器用増幅器ゲインで、高速のADC1102の範囲の約4分の1を超えて記録される場合、周囲光通知が表示ユニット216を介してユーザに通知される。
【0290】
様々な他の態様では、光検出器222/224の検出器の飽和は、障害検出サブユニット1312によってもモニタリングされる。これらの他の態様では、飽和は、平均信号値にピークツーピーク信号の半分を加えたものとして本明細書では定義される信号のピーク値を計算することによってモニタリングされる。信号のピーク値がADC範囲の飽和の5%以内に収まる場合、障害検出サブユニット1312は、表示ユニット216を介してユーザに飽和通知を通知する。飽和イベントが障害検出サブユニット1312によって検出された場合、次に、上述した周囲光通知と同時に発生する飽和イベントとして本明細書で定義される飽和イベントが、周囲光飽和に関連するかどうかを判定するために、周囲光レベルがチェックされる。周囲光飽和イベントが検出された場合、障害検出サブユニット1312は、表示ユニット216を介して周囲光飽和通知をユーザに通知し、この通知状態では、ユーザがこの状態を解決することを可能にするために、取得ユニット234によるデータ取得は継続される。周囲光の過多に関連しない飽和イベントが検出された場合、障害検出サブユニット1312は、検出器ゲインの調節を行うために、光検出器制御ユニット232に信号を送信し、及び/または、LED強度を調節するべくLED電流源1126の調節を行うために、光源制御ユニット230に信号を送信する。様々な態様では、障害検出ユニットは、周囲光飽和イベントまたは周囲光の過多に関連しない飽和イベントのいずれかを伝えるために、表示ユニットを介してユーザに通知する。いくつかの態様では、飽和イベントが検出され、かつ、システム200が上述したエンジニアリングモードで構成されており、ユーザによって自動ゲイン調節が無効にされている場合には、そのことを、ユーザは表示ユニットを介して通知を受ける。
【0291】
(e)薬剤投与後選択サブユニット
【0292】
再び図13を参照すると、処理ユニット236は、後述するように、測定データセットにおける、薬剤投与後領域に対応する部分を自動的に識別するように構成された薬剤投与後選択サブユニット1308をさらに含み得る。
【0293】
図21は、注入前期間2102の約3時間後のMB?102などの外因性蛍光剤の注入後、約10時間の期間にわたって患者から取得した蛍光測定値のグラフである。図21を参照すると、注入前期間2102(ベースライン期間)は、患者の血液内に外因性蛍光剤が存在しないことにおそらく起因して、比較的低いかつ安定した蛍光レベルによって特徴付けられる。外因性蛍光剤の注入2103の後、蛍光測定値はピーク濃度2108まで急激な増加2106を示し、腎臓が患者の血液から外因性蛍光剤を除去するため、背景蛍光レベルに戻る比較的滑らかな指数関数的減少が続く。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、注射された外因性蛍光剤は、指数関数的な濃度減少の期間の経過後に恐らくよく混ざったと考えられる。
【0294】
再び図21を参照すると、MB-102などの外因性蛍光剤が患者の血流に注入された後、外因性蛍光剤は、血流から患者の細胞外組織の残りの部分へ拡散する平衡期間を経る。薬剤の注入2103の後、蛍光信号IFの時間プロファイルは、下記の方程式(35)によって示される2指数の信号プロファイルとして特徴付けられ得る。
【0295】
【数35】
【0296】
式中、Cは、上述したように背景減算によって一般的に除去されるベースライン信号である。
【0297】
再び図21を参照すると、外因性蛍光剤の患者の細胞外組織への拡散が準定常状態に達すると、平衡後期間2110は完了し、蛍光信号は線形減衰として特徴付けられ得る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、測定データセットの平衡後期間2110(平衡後領域)は、対数変換されたときに線形方程式によって十分に説明されるIFデータセットの時間領域として特徴付けられると見なされる。一態様では、平衡化後領域は、下記の方程式(36)によって十分に説明される。
【0298】
【数36】
【0299】
一態様では、薬剤投与後選択サブユニット1308は、IFデータセットにおける互いに異なる部分で単一指数関数曲線適合(曲線あてはめ)を行い、IFデータセットにおける互いに異なる部分の各々について、単一指数関数曲線適合に関連する曲線適合誤差を分析することによって、平衡後期間2110を自動的に識別することができる。様々な態様では、薬剤投与後選択サブユニット1308は、単一指数曲線適合に関連する曲線適合誤差が閾値を下回る、IFデータセットの最も初期の部分を、上述のデータ補正及び分析に適した、IFデータセットの平衡後初期部分として選択することができる。IFデータセットの互いに異なる部分の、単一指数関数曲線適合に関連する曲線適合誤差を比較するのに適した任意の分析方法が、薬剤投与後選択サブユニット1308で使用され得る。上記の任意の分析方法としては、これに限定しないが例えば、IFデータセットにおける、互いに重なったデータウィンドウまたは互いに重なっていないデータウィンドウの範囲内の部分の線形曲線適合を行い、それに対応するデータウィンドウの曲線適合誤差を比較することが挙げられる。一態様では、薬剤投与後選択サブユニット1308は、IFデータセットにおける、本明細書に記載の補正及び分析に適した部分を選択することを可能にするために、IFデータセットにおける、平衡後期間2110に対応する時間範囲を、RDTC計算サブユニット1310に伝えるように構成された少なくとも1つの信号を生成することができる。
【0300】
別の態様では、IFデータに対する線形適合と二指数関数適合とが比較され得る。この別の態様では、適合誤差が同等である場合に(二指数関数適合における余分な自由度について補正したもの)、平衡が完了したと識別され得る。
【0301】
(f)RDTC計算サブユニット
【0302】
様々な態様では、システム200は、第1の光検出器222/第2の光検出器224、それに関連する第1の光源218/第2の光源220、及び他の熱光センサ/光センサからの様々な測定値を、励起波長の光による照明に応答して外因性蛍光剤から発光された発光波長の蛍光のみに起因する検出蛍光に対応する、補正された内因性蛍光(IF)信号に変換するように構成される。様々な態様では、IFデータセットの薬剤投与後部分の期間中のIF信号の指数関数的減少を分析することによって、腎機能をモニタリングし、定量化することができる。
【0303】
一態様では、IFデータセットの薬剤投与後部分の期間中のIF信号の指数関数的減少は、腎機能を定量化するように構成された糸球体濾過率(GFR)に変換され得る。別の態様では、IFデータセットの平衡化後部分の期間中のIF信号の指数関数的減少は、腎機能を定量化するように構成された腎崩壊時定数(RDTC)に変換され得る。別の態様では、IFデータセットの平衡後部分の期間中のIF信号の指数関数的減少は、腎機能を定量化するように構成された腎崩壊率に変換され得る。
【0304】
再び図13を参照すると、処理ユニット236は、IF信号を腎崩壊時定数(RDTC)に自動的に変換するように構成されたRDTC計算サブユニット1310をさらに含み得る。本明細書で使用するとき、腎崩壊時定数(RDTC)は、上記の方程式(36)で表される、平衡後の単一指数関数的崩壊に関連する時定数として定義される。一態様では、背景減算サブユニット1304による正確な背景減算の後、下記の方程式(37)に示すように、対数変換されたIF信号データ(log(IF))に対する線形回帰を行うことによって、腎崩壊時定数τを計算することができる。
【0305】
【数37】
【0306】
様々な態様では、RDTC計算サブユニット1310は、計算されたRDTCを表示ユニット216上に表示するように構成された信号を生成することができる。計算されたRDTCは、任意の適切な表示フォーマットで表示ユニット216上に表示され得る。任意の適切なフォーマットとしては、これに限定しないが、例えば、時間の関数としてのRDTCのグラフ、単一の離散RDTC値、時間の関数としてのRDTC値のテーブル、色分けされた表示、または、計算されたRDTCを正常/健康、異常、高、低、及び任意の他の適切な分類として分類することができるかどうかを特定するように構成された他の表示フォーマットが挙げられる。様々な他の態様では、上述したどの表示フォーマットも、追加データが取得され分析されるにしたがって、連続的または非連続的に更新され得る。一態様では、RDTC計算サブユニット1310は、IFデータセットにおける互いに重なっていないウィンドウ及び/または互いに重なったウィンドウ内で、上述したようにしてRDTCを計算することができる。
【0307】
別の態様では、RDTC計算サブユニット1310は、既知の方法を用いて、RDTCを糸球体濾過率(GFR)に変換することができる。この態様では、RDTCを逆数に変換し、傾きを掛けることによって、身体サイズ(例えば、体の表面積、または分布容積)について補正されたGFRの予測値であるcGFRが得られる。
【0308】
(v)メモリ
【0309】
再び図2を参照すると、システム200のコントローラ212は、システム200におけるデータ格納を容易にするように構成されたメモリ242をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、メモリ242には、これに限定しないが、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスク、及び光ディスクなどの複数の記憶装置が含まれる。代替的または追加的に、メモリ242は、コントローラ212と通信するサーバなどのリモート記憶装置を含み得る。メモリ242は、少なくとも1つのプロセッサによって受信されたときに少なくとも1つのプロセッサに上述したコントローラ212の機能のいずれかを実行させる少なくとも1つのコンピュータプログラムを格納する。一実施形態では、メモリ242は、例えばフロッピーディスク装置、ハードディスク装置、光ディスク装置、またはテープ装置などのコンピュータ可読媒体、フラッシュメモリまたは他の同様のソリッドステートメモリ装置、あるいは、ストレージエリアネットワークまたは他の構成内の装置を含む装置のアレイであり得るか、またはそれらを含み得る。コンピュータプログラム製品は、情報キャリア内に明白に具現化することができる。コンピュータプログラム製品はまた、実行されたときに、本明細書に記載したような1以上の機能を実行する命令を含み得る。情報キャリアは、プロセッサ238上のメモリ242またはメモリなどの、一時的でないコンピュータまたは機械可読媒体であり得る。
【0310】
様々な態様では、システム200は、生の測定値及び処理されたデータを一連のファイルに記録し得る。各ファイルは、操作者、機器、及びセッションに関する情報を含むヘッダーを含み得る。各実験セッションでは、一連のファイルは、そのセッションで使用されたセンサヘッド毎に別々のフォルダに記録される。生データファイルは、LEDの励起波長及び発光波長の両方のアクティブ期間中の検出器及びモニタから取得された同相測定値、直角位相測定値、及び平均測定値を、データ取得時のLED及び検出器の利得設定値と共に含み得る。
【0311】
様々な別の態様では、処理されるデータファイルは、モニタ読取り値の大きさの計算及び補正後の蛍光及び拡散反射測定値を、LED及び検出器のゲイン設定と共に含み得る。固有の蛍光データファイルは、生の蛍光信号の拡散反射補正により得られる固有の蛍光測定値を含み得る。GFRファイルは、平衡後部分が生じたかどうかを示すために分類された時間の関数として計算されたGFRを、信頼限界と共に含み得る。遠隔測定ファイルは、温度及び電圧の測定値を含み得る。イベント記録ファイルは、ユーザにより生成されたイベント記録と、自動的に生成されたイベント記録との両方を含み得る。
【0312】
(vi)GUIユニット
【0313】
再び図2を参照して、コントローラ212は、様々な態様におけるシステムの他のユニットからの様々な測定及び変換されたデータをエンコードする複数の信号を受信するように構成されたGUIユニット240を含み得る。加えて、GUIユニットは、データ、フレーム、フォーム、及び/または、ユーザとシステム200との間の他の通信情報を表示するために表示ユニット216を動作させるように構成された信号を生成するように構成され得る。
【0314】
(vii)プロセッサ
【0315】
再び図2を参照すると、コントローラ212は、プロセッサ238をさらに含み得る。プロセッサ238は、命令を解釈し実行する任意のタイプの従来のプロセッサ、マイクロプロセッサ、または処理論理回路を含み得る。プロセッサ238は、コントローラ212内で実行するための命令、例えば、高速インターフェースに接続された表示ユニット216などの外部入出力装置上にGUI用のグラフィカル情報を表示するためにメモリ242内に格納された命令を処理するように構成され得る。別の実施形態では、複数のプロセッサ及び/または複数のバスが、必要に応じて、複数のメモリ及びメモリ種類と共に使用され得る。また、複数のコントローラ212が接続されてもよく、その場合、各コントローラは、システム200の機能を可能にするために必要な動作の一部を提供する。いくつかの実施形態では、プロセッサ238は、取得ユニット234、光検出器制御ユニット232、光源制御ユニット230、及び/または処理ユニット236を含み得る。
【0316】
本明細書で使用するとき、プロセッサ238などのプロセッサは、マイクロコントローラ、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、及び本明細書で説明した機能を実行することができる任意の他の回路またはプロセッサを使用するシステムを含む、任意のプログラム可能なシステムを含み得る。上記の例は単なる例であり、したがって、用語「プロセッサ」の定義及び/または意味をいかなる方法において制限することを意図しない。
【0317】
本明細書で使用するとき、コンピュータ装置及びコンピュータシステムは、プロセッサ及びメモリを含む。なお、本明細書で言及されるコンピュータ装置の任意のプロセッサは、1または複数のプロセッサを指してもよく、その場合、プロセッサは、1つのコンピュータ装置内にあってもよいし、または並列に動作する複数のコンピュータ装置内にあってもよい。加えて、本明細書で言及されるコンピュータ装置内の任意のメモリは、1または複数のメモリを指してもよく、その場合、メモリは、1つのコンピュータ装置にあってもよいし、または並列に動作する複数のコンピュータ装置内であってもよい。
【0318】
C.操作ユニット
【0319】
操作ユニット214は、ユーザがコントローラ212とインターフェースして(例えば、視覚、音声、タッチ、ボタン押下、スタイラスタップなど)、システム200の動作を制御することを可能にするように構成され得る。いくつかの実施形態では、操作ユニット214は、各センサヘッド204の動作を制御するために、各センサヘッド204にさらに接続され得る。
【0320】
D.表示ユニット
【0321】
再び図2を参照すると、システム200は、ユーザがシステム200のデータ及び制御情報を見ることを可能にするように構成された表示ユニット216をさらに含み得る。表示ユニット216は、センサヘッド204などのシステム200の他の構成要素にさらに接続され得る。表示ユニット216は、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、または「電子インク」ディスプレイなどの表示装置を含み得る。いくつかの実施形態では、表示ユニット216は、グラフィカルユーザインターフェース(例えば、ウェブブラウザ及び/またはクライアントアプリケーション)をユーザに提供するように構成され得る。グラフィカルユーザインターフェースは、例えば、システム200によって生成された上述したGFR値、及びシステム200の動作データの表示を含み得る。
【0322】
外因性マーカー
【0323】
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、高親水性で、サイズが小(クレアチニン、分子量=113)から中程度(イヌリン、分子量=約5500)の分子は、糸球体濾過によって体循環から迅速に除去されることが知られている。これらの性質に加えて、理想的なGFR物質は、尿細管で再吸収も分泌もされず、血漿タンパク質との結合は無視できる程度であり、かつ、毒性が非常に低い。これらの要件の全てを満たす光学プローブを設計するために、光物理的特性と、蛍光体(フルオロフォア)の分子サイズ及び親水性との間でバランスが取られた。例えば、疎水性シアニン及びインドシアニン色素は、近赤外(NIR)生物学的ウィンドウ(700~900nm)内で最適な吸収及び放出を示すが、親水性は、純粋なGFR剤として機能できるほど高くない。より小さい色素分子は、腎クリアランスに必要とされる極めて親水性種により容易に変換され得るが、これらのより低い分子量の化合物から生じる限られたπ系は、一般に、紫外線(UV)での一光子の励起及び発光を可能にする。
【0324】
光物理的特性を向上させるのと同時に、薬物動力学的な問題を解決するために、2,5-ジアミノピラジン-3,6-ジカルボン酸の単純な誘導体は、電磁スペクトルの黄色から赤色領域で明るい発光を有する非常に低い分子量の蛍光足場系として作用する。GFRの薬物動力学的性質と光物理的特性との同時最適化のために、これらの誘導体のアミド結合変異体を使用してSAR研究が行われた。炭水化物、アルコール、アミノ酸、及び様々なPEGベースのリンカーストラテジーを含むこのクラスのピラジン蛍光体の迅速な腎クリアランスを可能にするための様々な親水機能性が用いられ得る。PEG置換は、親水性及び溶解性を増加させ、毒性を低下させ、かつ、結果として得られたピラジン誘導体の凝集を調節するために用いられ得る。一連の中程度のサイズのPEG-ピラジン誘導体における分子量及び構造(したがって、流体力学的体積)のバリエーションもまた、内因性蛍光剤としての使用に適し得る。
【0325】
一態様では、外因性蛍光剤は、MB-102である。
【0326】
実施例
【0327】
以下の実施例は、本開示のシステム及び方法の様々な態様を示す。
【0328】
実施例1:フレア状ハウジングを有するセンサヘッド
【0329】
図23は、別の態様におけるセンサヘッド204aの斜視図である。この別の態様では、センサヘッド204aは、上側ハウジング602aと、フレア状の下側ハウジング604aとから形成されたハウジング600aを含む。下側ハウジング604aの表面積は、拡大された底面608aを形成するように拡大する。ハウジング600aは、上側ハウジング602aを貫通して形成されたケ-ブル開口部806aをさらに含む。
【0330】
図24は、ハウジング600aの底面608aを示すセンサヘッド204aの底面図である。底面608aは、患者の皮膚とハウジング600内に収容された光源及び光検出器との間で光を送達するように構成された1以上の開口部704aを有する開口部プレート702aを含み得る。図24に示すように、開口部704aは、第1の光源218及び第2の光源220によって生成された照明光を患者202の組織に送達するように構成された光送達開口部1002aと、患者202の組織から光を受け取るように構成された第1の検出器開口部1004及び第2の検出器開口部1006とを含む。一態様では、底面608aは、底面608aによって周囲光条件から遮られる比較的大きな領域下に開口部704aを配することを可能にする。第1の検出器開口部1004及び第2の検出器開口部1006に入射する散乱周囲光のこの減少は、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって取得される光強度測定値に導入されるノイズを減少させる。
【0331】
様々な態様では、ハウジング600aの底面608aは、図24に示すような、生物学的適合性を有する透明な接着材料610aを用いて、患者の皮膚に取り付けられ得る。透明な接着材料610aは、開口部704aを覆うようにして底面608a上に配置され得る。
【0332】
図25は、上側ハウジング602a及び様々な電気部品を除去して内側ハウジング2502を露出させた、センサヘッド204aの等角図である。図26は、図25に示した内側ハウジング2502及びそれに関連する電気部品の分解図である。図25及び図26を参照して、内側ハウジング2502は、ハウジング600a内に収容され、下側ハウジング604aの底面608aに取り付けられている。内側ハウジング2502は、センサマウント912を収容する。センサマウント912は、それを貫通して形成された、第1の検出ウェル908と、第2の検出ウェル910と、光源ウェル902とを有する。第1の光検出器222は第1の検出ウェル908内に取り付けられ、第2の光検出器224は第2の検出ウェル910内に取り付けられる。第1の光源218及び第2の光源220は、光源ウェル902内に取り付けられる。一態様では、センサマウント912の第1の検出ウェル908、第2の検出ウェル910、及び光源ウェル902は、第1の光源218及び第2の光源220からの光が、必ず、患者202の皮膚を通って組み合わされて第1の光検出器222及び第2の光検出器224に到達することを確実にするために、光学的に互いに離間されている。第1の検出ウェル908と第2の検出ウェル910とを光学的に離間することにより、上述したように、外因性蛍光剤から検出された蛍光信号と、フィルタ処理されていない励起光とを確実に識別することができる。
【0333】
図26を参照すると、内側ハウジング2502は、第1の検出開口部2602と、第2の検出開口部2604と、光源開口部2606とを含む。センサマウント912は、第1の検出開口部2602、第2の検出開口部2604、及び光源開口部2606が、センサマウント912の第1の検出ウェル908、第2の検出ウェル910、及び光源ウェル902とそれぞれ整列するようにして、内側ハウジング2502に取り付けられる。
【0334】
一態様では、光学的に透明な窓2610、2612、及び2614が、第1の検出開口部2602、第2の検出開口部2604、及び光源開口部2606内にそれぞれ取り付けられ、開口部を密封すると共に、組織とセンサヘッド204aの内部との間に光学的に透明な導管を提供する。加えて、拡散器2616、2618、及び2620が、光学的に透明な窓2610、2612、及び2614の表面にそれぞれ取り付けられている。拡散器2616、2618、及び2620は、第1の光源218及び第2の光源220から組織に送達される光を空間的に均質化し、かつ、第1の光検出器222及び第2の光検出器224によって検出される光を空間的に均質化するために設けられる。一態様では、光学フィルタ244が、拡散器2616に取り付けられる。一態様では、光学的に透明な接着剤を使用して、光学フィルタ244を拡散器2616に結合させる。
【0335】
上記に鑑みて、本開示のいくつかの利点が達成され、また、他の有利な結果が得られることが分かるであろう。本開示の範囲から逸脱することなく、上記の方法及びシステムに様々な変更を加えることができるので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は、限定する意味ではなく、例示として解釈されるべきである。
【0336】
本開示またはその様々な変形例、実施形態または態様の要素を紹介するとき、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、[この(the)]、及び「前記の(said)」は、1以上の要素の存在を意味することが意図される。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加的な要素が存在し得ることを意味する。
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