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特許7165141エレクトロポレーションシステム及びカテーテルへの通電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】エレクトロポレーションシステム及びカテーテルへの通電方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/00 20060101AFI20221026BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20221026BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20221026BHJP
【FI】
A61B18/00
A61B18/14
A61M25/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019555482
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018026679
(87)【国際公開番号】W WO2018191149
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2019-12-17
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】62/483,749
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック オルソン
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】井上 哲男
【審判官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0256682(US,A1)
【文献】特表2016-515442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0065340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 18/12
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロポレーションシステムであって、
電極アセンブリを含むカテーテルであって、前記電極アセンブリは、身体内の静脈に位置付けられるように構成され、前記電極アセンブリは、前記静脈に少なくとも部分的に接触するように構成される構造体と、前記構造体の周囲に分布する複数の電極であって、前記複数の電極の各電極は、個別に通電されるよう構成される、前記複数の電極と、を備える、前記カテーテルと、
前記カテーテルに結合される直流(DC)エネルギー源であって、前記複数の電極のうちの電極のサブセットに選択的に通電するよう構成される前記直流(DC)エネルギー源と、
前記カテーテル及び前記直流(DC)エネルギー源に結合されるコンピューティングシステムであって、前記コンピューティングシステムは、前記静脈内の前記複数の電極のそれぞれの位置を検出し、前記静脈の中心軸と同心である通電された電極の円周リングを形成するように、前記電極のサブセットを選択するように構成される、前記コンピューティングシステムと、を備え、
前記コンピューティングシステムは、
前記カテーテルを楕円体と近似し、
前記静脈の前記中心軸に略直交する平面を特定し、
前記楕円体と特定済みの前記平面との交点を計算し、
前記複数の電極のうち、計算済みの前記交点からの閾値距離内にある電極を選択する
ことによって、前記複数の電極のうちのどの電極が略円形又は略楕円形の閉路を形成するのかを、検出済みの各位置に基づいて自動的に決定する、エレクトロポレーションシステム。
【請求項2】
前記コンピューティングシステムは、前記静脈に対する前記複数の電極のそれぞれの位置を表示するように構成される視覚化システムをさらに備える、請求項1に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項3】
前記視覚化システムは、3次元ディスプレイをレンダリングするようにさらに構成される、請求項2に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項4】
前記コンピューティングシステムは、前記電極のサブセットのユーザによる選択を可能にするように構成されるユーザインターフェースをさらに備える、請求項2又は3に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項5】
前記コンピューティングシステムは、前記複数の電極と前記静脈とのそれぞれの接触を検出するようにさらに構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項6】
コンピューティングシステムによって実行されるカテーテルへの通電方法であって、
前記カテーテルの遠位部は、身体内の静脈の中心軸に対して位置付けされ、前記遠位部は、構造体の周囲に分布する複数の電極を備え、前記構造体は、少なくとも部分的に前記中心軸の周囲を囲み、
前記方法は、
前記コンピューティングシステムが、前記中心軸に対する前記複数の電極のそれぞれの配置を決定することと、
前記コンピューティングシステムが、前記複数の電極の中から電極のサブセットを選択することであって前記電極のサブセットは、前記中心軸と同心である電極の円周リングを形成する、前記選択することと、
前記コンピューティングシステムが、前記電極のサブセットへ通電することと、
を備え、
前記コンピューティングシステムが、
前記カテーテルを楕円体と近似し、
前記静脈の前記中心軸に略直交する平面を特定し、
前記楕円体と特定済みの前記平面との交点を計算し、
前記複数の電極のうち、計算済みの前記交点からの閾値距離内にある電極を選択する
ことによって、前記複数の電極のうちのどの電極が略円形又は略楕円形の閉路を形成するのかを、前記複数の電極のそれぞれの配置に基づいて自動的に決定する、方法。
【請求項7】
前記コンピューティングシステムが、前記複数の電極のそれぞれの位置を視覚化システムに表示することをさらに備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記カテーテルは、バスケットカテーテルを備え、
前記方法は、前記遠位部が位置付けされた後に、前記コンピューティングシステムが、前記バスケットカテーテルを前記中心軸に対して拡張させることをさらに備える、
請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記コンピューティングシステムが、前記電極のサブセットに通電することは、
直流(DC)信号を生成することと、
前記カテーテルを介して前記電極のサブセットに前記直流(DC)信号を送電することと、を備え、
前記複数の電極のうちの残りの電極への通電は、前記コンピューティングシステムによって実行されない、
請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カテーテルは、バルーンカテーテルを備え、
前記方法は、前記遠位部が位置付けされた後に、前記コンピューティングシステムが、前記バルーンカテーテルを前記中心軸に対して拡張させることをさらに備える、
請求項6又は7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月10日に出願した米国仮出願第62/483、749号の優先権を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、人体に使用される医療装置に関する。特に、多くの実施形態において、本開示は、エレクトロポレーションシステム、及びエレクトロポレーションを実行するためにカテーテルに通電する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、アブレーション治療は、ヒトの生体構造に悪影響を及ぼす種々の状態を治療するために使用され得ることが知られている。例えば、アブレーション治療が特定の有用性を見出す状態の1つには、心房不整脈の治療がある。組織が取り除かれるか、又はアブレーション発生器によって生成されアブレーションカテーテルによって送達されるアブレーションエネルギーに、組織が少なくとも曝されると、組織内に損傷が形成される。アブレーションカテーテル上又は内部に取り付けられた電極を使用して、心房不整脈(これには、異所性心房頻拍、心房細動、及び心房粗動が含まれるが、これらに限定されない)等の状態を正すために、心臓組織に組織壊死を生じさせる。不整脈(即ち不規則な心臓のリズム)は、同期心房心室収縮の消失や血流の停滞など、さまざまな危険な状態を引き起こし、さまざまな病気や死に至ることもある。心房不整脈の主因は心臓の左右の心房内の電気信号の乱れであると考えられている。アブレーションカテーテルは心臓組織にアブレーションエネルギー(例えば、高周波エネルギー、冷凍アブレーション、レーザー、化学物質、高強度集束超音波等)を与え、心臓組織に損傷を与える。この損傷は望ましくない電気経路を中断し、それによって不整脈を引き起こす電気信号の乱れを制限又は防止する。
【0004】
心臓不整脈の治療における用途の1つの候補は、エレクトロポレーションである。エレクトロポレーション法は細胞膜上に電場誘導の細孔を形成することを含む。電場は、例えば、ナノ秒から数ミリ秒まで持続し得る比較的短い持続時間のパルスとして送達される直流(DC)信号を印加することによって誘導され得る。このようなパルスを繰り返してパルス列を形成することができる。このような電場を生体内で組織に印加すると、組織中の細胞は膜貫通電位に曝され、これにより細胞壁上の細孔が開かれるため、エレクトロポレーション(電気穿孔法)と呼ばれる。エレクトロポレーションは可逆的(即ち、一時的に開いた細孔は再び封じられる)、又は不可逆的(即ち、細孔は開いたまま)であってよい。例えば、遺伝子治療の分野では、可逆的エレクトロポレーション(即ち、一時的に細孔を開く)を使用して、高分子量医療用ベクターを細胞に遺伝子導入する。他の治療用途では、適切に構成されたパルス列のみを使用して、例えば不可逆的エレクトロポレーションを引き起こすことによって細胞破壊を引き起こすことができる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、概して、エレクトロポレーションシステム、及びエレクトロポレーションを実行するためにカテーテルに通電する方法に関する。多くの実施形態において、エレクトロポレーションシステムは、直流(DC)エネルギー源に接続されたカテーテルを含む。カテーテル及び直流エネルギー源は、特定の実施形態では、身体の静脈内のカテーテルの3次元又は2次元可視化を可能にするコンピュータシステムにさらに接続される。カテーテルは、その周囲に複数の電極が分布する構造体を有する電極アセンブリを含む。構造体は、例えば、フープカテーテル、バスケットカテーテル、又はバルーンカテーテルを含んでよい。電極は、例えば、フレキシブル回路、プリント電極、又はリング電極を含んでよい。多くの実施形態では、コンピュータシステムは、静脈内のカテーテルの位置を特定し、直流エネルギー源を制御して、複数の電極のうち、選択された電極に通電する。特定の実施形態では、電極の選択は自動的である。他の実施形態では、電極の選択は、視覚化(visualization)に基づいて臨床医又は医師によって行われる。通電されるように選択された電極は、カテーテルが位置付けされる静脈の中心軸と同心の電極リングを形成する。本開示の他の実施形態及び説明を以下に記載する。
【0006】
一実施形態では、本開示は、エレクトロポレーションを実行するためのカテーテルを提供する。カテーテルは、遠位部及び電極アセンブリを含む。遠位部は、体内の静脈内に位置付けられるように構成される。静脈は中心軸を画定する。電極アセンブリは、遠位部に結合され、構造体と、その周囲に分布する複数の電極とを含む。構造体は、静脈へ少なくとも部分的に接触するように構成される。電極の各々は、静脈の中心軸と同心の、通電された電極の円周リングを形成するように、選択的に通電されるように構成される。
【0007】
別の実施形態では、本開示は、エレクトロポレーションシステム、及びコンピューティングシステムに関し、エレクトロポレーションシステムは、カテーテルと直流エネルギー源を含む。カテーテルは、身体の静脈内に位置付けされるように構成された電極アセンブリを含む。静脈は中心軸を画定する。電極アセンブリは、静脈に少なくとも部分的に接触するように構成された構造体と、その構造体の周囲に分布する複数の電極とを含む。複数の電極の各電極は、個別に通電されるように構成される。直流エネルギー源は、カテーテルに結合され、複数の電極のうちの、電極サブセットに選択的に通電するように構成される。コンピューティングシステムは、カテーテル及び直流エネルギー源に結合される。コンピューティングシステムは、静脈内の複数の電極のそれぞれの位置を検出し、電極サブセットを選択して、静脈の中心軸と同心の、通電された電極の円周リングを形成するように構成される。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、カテーテルに通電する方法に関する。この方法は、空間の中心軸に対して、カテーテルの遠位部の位置付けを含む。遠位部は、構造体の周囲に分布する複数の電極を含み、構造体は、少なくとも部分的に中心軸を囲む。この方法は、中心軸に対する複数の電極のそれぞれの配置を特定することを含む。この方法は、複数の電極のそれぞれの配置に基づいて、複数の電極から電極のサブセットを選択して、中心軸と同心である電極の円周リングを形成することを含む。この方法は、電極サブセットに通電することを含む。
【0009】
本開示の前述及び他の態様、特徴、詳細、有用性及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲を読むこと、及び添付の図面を検討することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エレクトロポレーション法の実施形態を組み込んだシステムの概略及びブロック図である。
図2図1に示すエレクトロポレーションシステムで使用するための例示的なバスケットカテーテルの概略図である。
図3図2に示すバスケットカテーテルの例示的な視覚化の概略図である。
図4図1に示すエレクトロポレーションシステムで使用するための例示的バルーンカテーテルの概略図である。
図5図1に示すエレクトロポレーションシステムで使用するための例示的なヘリカルカテーテルの概略図である。
図6図1から図5に示すカテーテルに通電する例示的な方法のフローチャートである。
図7】肺静脈を表す平面とカテーテルを表す楕円体との例示的な交点を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
同一の参照符号は、図面のいくつかの図を通して同一の部分を示す。図は必ずしも縮尺通りではないことが理解される。
【0012】
本開示は、概して、人体に使用される医療装置に関する。特に、多くの実施形態において、本開示は、複数の電極に高電圧を送達し、その複数の電極を通して治療電流が心臓の左心房の肺静脈へ流れる、例えばスパイラルカテーテル、又は「電圧」カテーテルのような、心臓カテーテルを使用して不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を実行するためのカテーテルへの通電方法及び、エレクトロポレーションシステムに関する。このような処置の間、医師は肺静脈口又は肺静脈洞部にカテーテルを配置するように、カテーテルを操作する。好ましくは、カテーテルのフープが肺静脈の中心軸と同心になるように、カテーテルは方向付けられるべきである。本明細書によると、このような方向付けを達成することは困難であり、潜在的には複数回の試行を必要とする可能性があり、ある特定の状況では、カテーテルの適切な位置付け及び方向付けは実現できないことが認識される。本明細書ではさらに、より良い同心性のためにカテーテルを配置するタスクを単純化し、カテーテルを配置する時間を短縮することが望ましいことが、理解される。また、カテーテルの電極が心臓組織に確実に接触することが望ましい。この接触は、肺静脈の様々な形状及び偏心性、心内膜の複雑さ、及び肺静脈への入口、ならびにカテーテルの円形形状と及び変形しにくさのため、実現が困難である。
【0013】
本明細書に記載されるエレクトロポレーションシステムの実施形態は、カテーテルを提供し、このカテーテルは、電極群を有し、電極群は肺静脈内に配置されマッピングされると、選択的に通電され、肺静脈の中心軸と同心の電極のリングを形成し、それを介して治療用IRE電流が送達される。カテーテルは、特定の実施形態において、医師に視覚化及びインターフェースを提供するナビゲーションシステムによってマッピングされる。特定の実施形態において、カテーテルは、線状カテーテルとして操作できるように折り畳んだ状態で配置可能なバスケットカテーテルである。このようなカテーテルを肺静脈内で拡張させ、肺静脈の全周に確実に接触させる。電極の選択されたリングは、理想的に配置されたフープ又はスパイラルカテーテルと同程度、IRE電流を送電するのに操作的に有効であって、配置においては実質的により容易な、電極の仮想リング又は仮想スパイラルを確立する。しかしながら、本明細書に記載される本開示の、記載された特徴及び方法は、本明細書の開示に基づいて当業者によって理解されるように、任意の数のシステムに組み込まれてもよいことが企図される。
【0014】
次に図面を参照すると、図1は、エレクトロポレーション治療法のためのシステム10の模式的なブロック図である。一般に、様々な実施形態は、カテーテルの遠位部に配置された電極アセンブリを含む。本明細書中で使用されるように、「近位」は、臨床医の近くのカテーテルの端部に向かう方向を指し、「遠位」は、臨床医から離れる方向、及び患者の体内へ(一般的に)の方向を指す。カテーテルの「遠位部」とは、一般に、遠位端又はその近くで、患者の体内に挿入されるカテーテルの一部を指す。さらに、本明細書に記載する実施形態は、カテーテルの遠位端に配置された電極アセンブリを有する実施形態に限定されず、その代わりに、カテーテルが、遠位領域において、ある一定の長さだけ電極アセンブリを越えて遠位方向に延在する実施形態を含む。電極アセンブリは、1つ又は複数の個別の電気的に絶縁された電極素子を含む。本明細書ではカテーテル電極と称される各電極素子は、双極又は多極電極として作用するために、他の任意の電極素子と選択的に対にするか、又は組み合わせることができるように、個別に配線される。
【0015】
システム10は、細胞組織を破壊するための不可逆的エレクトロポレーションに使用される。特に、システム10は、エレクトロポレーション誘導一次壊死療法に使用してもよく、これは、その破壊及び細胞壊死に至る細胞膜(細胞壁)統合性の不可逆的損失を直接引き起こすような方法で電流を送達する作用を示す。この細胞死のメカニズムは、細胞の外壁の破壊が細胞の内部に有害な影響をもたらすことを意味する、「アウトサイド・イン」プロセスとみなしてもよい。一般的に、古典的な細胞膜エレクトロポレーション法では、電流は、約0.1から1.0kV/cmの電界強度を送電することができる、近接して配置された電極間で、短時間の直流(DC)パルス(例えば、0.1から20msの持続時間)の形態のパルス電界として送電される。
【0016】
多電極フープカテーテルを介した不可逆的エレクトロポレーションは、静脈あたりわずか1回のショックで肺静脈隔離を可能にし、これは、静脈の周りに高周波(RF)アブレーションチップを連続的に位置する場合と比較して、はるかに短い処置時間となり得る。
【0017】
通電の際の戦略は、DCパルスを含むものと記載されているが、実施形態は、変形例を使用してもよく、本願の精神及び範囲内に留まることを理解されたい。例えば、指数関数的に減衰するパルス、指数関数的に増加するパルス、及びそれらの組み合わせを使用してもよい。
【0018】
エレクトロポレーションにおける細胞破壊のメカニズムは主に加熱効果によるものではなく、高電圧電場の印加による細胞膜の破壊によるものであることを理解されたい。従って、エレクトロポレーションは、高周波(RF)エネルギーの使用時に発生する可能性のある熱影響を回避することができる。この「寒冷療法」は、望ましい特性を有する。
【0019】
このような背景の下、再び図1を参照すると、システム10は、カテーテル電極のコンステレーション又はアレイを含むカテーテル電極アセンブリ12を含み、カテーテル電極は、上記で簡単に概説し及び以下でより詳細に説明するように構成される。電極アセンブリ12は、患者の身体17の組織16のエレクトロポレーション治療のためのカテーテル14のような医療装置の一部として組み込まれる。例示的な実施形態では、組織16は心臓又は心臓組織を備える。しかしながら、様々な他の身体組織に関してエレクトロポレーション法を実施するために実施形態を使用してもよいことを理解されたい。
【0020】
図1は、さらに、18、20、及び21で示される複数のリターン電極を示し、これらは、エレクトロポレーション発生器26、ECGモニタ28といった電気生理学(EP)モニタ、及び体内構造の視覚化、マッピング、及びナビゲーションのための、配置特定ナビゲーションシステム30といった、システム10全体に含まれるさまざまなサブシステムによって使用され得る身体との接続部を概略したものである。図示の実施形態では、リターン電極18、20、及び21はパッチ電極である。1つのパッチ電極の図は概略のみであり(明瞭化のため)、これらのパッチ電極が接続されるサブシステムは、1つよりも多いパッチ(体表面)電極を含んでもよく、通常は含むであろうことを理解されたい。他の実施形態では、リターン電極18、20、及び21は、例えば、カテーテル電極のコンステレーションを含む、リターン電極としての使用に適した任意の他のタイプの電極であってもよい。カテーテル電極であるリターン電極は、電極アセンブリ12の一部又は別体のカテーテル(図示されていない)の一部であってもよい。システム10は、特定の実施形態において、配置特定ナビゲーションシステム30と統合されたコンピュータシステム32(電子制御ユニット50及びデータ記憶部、即ちメモリ52を含む)をさらに含んでもよい。コンピュータシステム32は、他の構成要素の中でも特に、いくつかのユーザ入出力機構34a及びディスプレイ34bのような、従来のインターフェース構成要素をさらに含んでもよい。
【0021】
エレクトロポレーション発生器26は、予め決定されていてもよく、又はユーザが選択可能であってもよい、エレクトロポレーション通電戦略に従って電極素子に通電するように構成される。電極素子は、単極電極、双極電極、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。エレクトロポレーション誘導一次壊死療法のために、発生器26は、約0.1から1.0kV/cmの電界強度を送電する(即ち、組織部位へ)ことができる、近接して配置された電極間で、短時間のDCパルス(例えば、ナノ秒から数ミリ秒の持続時間、即ち0.1から20ミリ秒の持続時間、又はエレクトロポレーションに適した任意の持続時間)の形態のパルス電界として、電極アセンブリ12を介して送電される電流を生成するように構成される。不可逆的エレクトロポレーションに必要な振幅とパルス持続時間は、逆相関する。パルス持続時間が減少すると、振幅は増加してエレクトロポレーションを可能にする。
【0022】
エレクトロポレーション発生器26は、本明細書においてDCエネルギー源と称され、全てが同じ方向に電流を生成する一連のDCエネルギーパルスを発生させるように構成される単相のエレクトロポレーション発生器26である。他の実施形態では、エレクトロポレーション発生器は、全てが同じ方向に電流を生成するのではないDCエネルギーパルスを生成するように構成される二相又は多相のエレクトロポレーション発生器である。エレクトロポレーション法を成功させるために、いくつかの実施形態は、200ジュールの出力レベルを利用する。エレクトロポレーション発生器26は、200ジュールの出力レベルで、約マイナス1kVと約マイナス2kVとの間のピーク振幅を有するDCパルスを出力する。いくつかの実施形態では、エレクトロポレーション発生器26は、約マイナス1.5kVと約マイナス2.0kVとの間にピーク振幅を有するDCパルスを出力する。他の実施形態では、正電圧を含む任意の他の適切な電圧を出力してもよい。いくつかの実施形態では、エレクトロポレーション発生器26は、例えば、アメリカ合衆国ワシントン州レドモンドのフィジオコントロール社(Physio-Control、Inc.)から入手可能なライフパック(Lifepak)9除細動器といった単相除細動器である。
【0023】
引き続き図1を参照すると、上述のように、カテーテル14は、エレクトロポレーションのための機能性を備えてよく、特定の実施形態では、アブレーション機能(例えば、RFアブレーション)も備えてよい。しかしながら、これらの実施形態では、提供されるアブレーションエネルギーのタイプに関して、変形例(例えば、冷凍アブレーション、超音波等)があってもよいことを理解されたい。
【0024】
例示的な実施形態では、カテーテル14は、ケーブルコネクタ又はインターフェース40と、ハンドル42と、近位端46及び遠位部48を有するシャフト44とを含む。カテーテル14はまた、温度センサ、追加の電極、及び対応する導体又はリードといった、本明細書には図示されていない他の従来の構成要素を含んでもよい。コネクタ40は、発生器26から延びるケーブル56の、機械的及び電気的接続を提供する。コネクタ40は、当技術分野で公知の従来の構成要素を備え、図示されるように、カテーテル14の近位端に配置される。
【0025】
ハンドル42は、臨床医がカテーテル14を把持するための配置を提供し、さらに、身体17内でシャフト44を操作や案内するための手段を提供してもよい。例えば、ハンドル42は、カテーテル14を通ってシャフト44の遠位部48まで延びるガイドワイヤの長さを変更する手段、又は、電極アセンブリ12を肺静脈内の好ましい配置及び方向に設置するようにシャフト44を操作する手段を含んでもよい。さらに、いくつかの実施形態では、ハンドル42は、カテーテルの一部の形状、サイズ、及び/又は方向を変更できるように構成されてもよい。例えば、遠位部48がバルーン又はバスケットカテーテルを含む場合、ハンドル42は、遠位部48を収縮状態から拡張状態に移行させるように構成されていてもよい。ハンドル42もまた当技術分野で周知の技術であり、ハンドル42の構造は変更してもよいことを理解されたい。別の例示的な実施形態では、カテーテル14は、ロボットによって駆動又は制御されてもよい。従って、臨床医がカテーテル14(及び、特にシャフト44)を前進/後退させ、及び/又は誘導又は案内するためにハンドルを操作するのではなく、ロボットを使用してカテーテル14を操作する。
【0026】
シャフト44は、身体17内で移動するように構成された細長い管状可撓性部材である。シャフト44は、電極アセンブリ12を支持するとともに、関連する導体、及び場合によっては、通電される電極の選択、信号処理、又は調整に使用される、追加の電子機器を含むように構成される。シャフト44はまた、流体(洗浄液や体液を含む)、薬剤、及び/又は外科用具又は器具の、輸送、送達及び/又は除去を可能にする。シャフト44は、ポリウレタンのような従来の材料から作られてよく、導電体、流体又は外科用具を、収容及び/又は輸送するように構成された一つ又は複数の管腔(ルーメン)を画定する。シャフト44は、従来のイントロデューサを介して、身体17内の血管又は他の組織に導入されてよい。次いで、シャフト44は、ガイドワイヤ又は当技術分野で公知の他の手段の使用を含めて、身体17を通って組織16の部位といった所望の配置まで、前進/後退及び/又は操作又は案内されてよい。
【0027】
シャフト44は、電極に電流を流し、電極によって受け取られたエレクトログラム信号を伝導するための、電極ワイヤ(図示されていない)を収容している。電極ワイヤは、ハンドル42と、シャフト44の内部の電極との間に延在する。このため、シャフト44は絶縁体又は絶縁材料を含んでもよい。例えば、シャフト44は絶縁材料で包まれてよく、及び/又は絶縁材料の筒状の層がシャフト44の内部に周方向に配置されていてもよい。このような絶縁体の厚さ及び材料特性は、1000ボルト及び/又は10アンペアの範囲の電圧及び電流で安全に使用するためにシャフト44を構成するように選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、カテーテル14は、スパイラルカテーテルと称されることもあるフープカテーテルであり、電極アセンブリ12は、シャフト44の遠位部48に1つ又は複数のフープの構造体の周りに分布するカテーテル電極(図示されていない)を含む。フープの直径は変化してもよい。いくつかの実施形態では、フープカテーテルは、約27ミリメートル(mm)の最大直径を有する。いくつかの実施形態において、フープの直径は、約15mmから約28mmの間で変更することができる。カテーテルは、固定直径フープカテーテルであってもよく、又は異なる直径間で可変であってもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル14は、14個のカテーテル電極を有する。他の実施形態では、カテーテル14は、10個のカテーテル電極、20個のカテーテル電極、又はエレクトロポレーションを実施するための任意の他の適切な数の電極を含む。いくつかの実施形態では、カテーテル電極はリング電極である。あるいは、カテーテル電極は、片面電極又は可撓性材料に印刷された電極といった、任意の他の適切なタイプの電極であってもよい。様々な実施形態では、カテーテル電極は、1.0mm、2.0mm、2.5mm、及び/又はエレクトロポレーションに適した他の任意の長さを有する。
【0029】
別の実施形態では、カテーテル14はバスケットカテーテルであり、電極アセンブリ12は、シャフト44の遠位部48において複数のスプラインの周りに分布するカテーテル電極(図示されていない)を含む。スプラインの数、直径、偏心は変化してもよい。いくつかの実施形態では、バスケットカテーテルは、8本のスプラインを含む。他の実施形態では、バスケットカテーテルは、12から16本のスプラインを含む。このようにスプラインの数が増加すると、各カテーテル電極間の角度間隔は減少する。しかしながら、スプラインの数、従って電極の数が増加すると、電極アセンブリ12をハンドル42及びインターフェース40に十分に接続するために、追加のワイヤが必要となる。いくつかの実施形態では、スプラインの数が増加すると、1スプライン当たりの電極の数は減らし、赤道周りの帯域に、又は赤道周りを中心とし、例えば緯度がプラス又はマイナス45度に延びる帯域内に、より集中させる。さらに別の代替的な実施形態では、カテーテル14はバルーンカテーテルであり、電極アセンブリ12は、シャフト44の遠位部48においてバルーンの周囲に分布するカテーテル電極(表示されない)を含む。
【0030】
配置特定ナビゲーションシステム30には、体内構造の視覚化、マッピング、及びナビゲーションのための視覚化システムが含まれてよい。システム30は、当該技術分野で一般的に知られている従来の装置(例えば、セント・ジュード・メディカル社(St.JudeMedical、Inc.))から市販されており、本明細書に参照としてその全体が組み込まれる、同一出願人に譲渡された米国特許第7、263、397号「心臓内におけるカテーテルのナビゲーション及び配置特定、及びマッピングのための方法及び装置(Method and Apparatus for Catheter Navigation and Location and Mapping in the Heart)」を参照して一般的に示されているEnSite NAVX(商標)Navigation and Visualization System(配置特定ナビゲーションシステム)を備えてよい。しかしながら、このシステムは例示的なものに過ぎず、本質的に限定するものではないことを理解されたい。空間におけるカテーテルの配置特定とナビゲーションのための(及び視覚化のための)他の技術が知られているが、例えば、バイオセンスウェブスター社(BiosenseWebster、Inc.)のCARTOナビゲーション及び配置特定システム、一般的に利用可能な蛍光透視システムである、ノーザンデジタル社(NorthernDigitalInc.)のAURORA(登録商標)システム、又はメディカイド社(MediguideLtd.)のgMPSシステムのような磁気配置特定システムなどがある。この点に関して、配置特定、ナビゲーション及び/又は視覚化システムのいくつかは、カテーテルの配置情報を示す信号を生成するためにセンサを含むであろう、例えばインピーダンスベースの配置特定システムの場合、1つ又は複数の電極を含んでよく、例えば磁界ベースの配置特定システム又は、例えばセント・ジュード・メディカル社(St.JudeMedical、Inc.)のEnSitePrecision(商標)システムのようなインピーダンスベースと磁界ベースの配置特定システムの組み合わせの場合は、磁場の1つ又は複数の特性を検出するように構成された1つ又は複数のコイル(つまりワイヤ巻線)を含んでもよい。
【0031】
配置特定ナビゲーションシステム30は、カテーテル14が位置付けされる肺静脈内に対する、カテーテル電極のそれぞれの位置を決定する。配置特定ナビゲーションシステム30の視覚化システムは、ディスプレイ34b上に二次元又は三次元でカテーテル14及びカテーテル電極のそれぞれの位置付けをレンダリングし、表示する。特定の実施形態では、配置特定ナビゲーションシステム30は、臨床医又は医師による、ディスプレイ34b上の肺静脈に対するカテーテル電極の位置の視覚化を可能にし、また、例えば入出力機構34aといったユーザインターフェースを使用したカテーテル電極のサブセットの選択を可能にする。配置特定ナビゲーションシステム30により、臨床医又は医師が、カテーテル14上のどの電極が肺静脈の中心軸に対して最も同心の電極リングを形成するかの決定に基づいて、通電すべき電極のサブセットを選択することを可能にする。特定の実施形態では、配置特定ナビゲーションシステム30は、臨床医又は医師による選択の代わりに、カテーテル14上の電極のデフォルトのサブセットを提案してもよい。
【0032】
代替の実施形態では、配置特定ナビゲーションシステム30は、肺静脈の中心軸と同心の電極リングを達成するためにどのカテーテル電極に通電すべきかを自動的に決定する。このような自動判定は、例えば、特定されたカテーテル電極のそれぞれの位置、又は各電極と肺静脈とのそれぞれの接触に基づいて行ってよい。例えば、一実施形態では、配置特定ナビゲーションシステム30は、どの電極が概して円形又は楕円形の閉路を形成するかを決定する。いくつかの実施形態では、経路は、アブレーションされる肺静脈の開口部又は洞部にほぼ直交しており、即ち、電極は、肺静脈の中心軸にほぼ直交する平面上にあることになる。このような選択は、アブレーション処置の成功率を向上し得る。円形又は楕円形の閉路は、カテーテルを楕円体として近似させることによって見出され、肺静脈にほぼ直交する平面が識別され、平面と楕円体の交点は、例えば、ピー・クライン氏(P.Klein)の(2012)、「Onthe Ellipsoid and Plane IntersectionEquation、 Applied Mathematics」、Vol.3 No.11、pp.1634-1640に従って計算される。
【0033】
バスケット、バルーン、又はヘリカルカテーテルをモデル化する楕円体は、以下のように表される。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、a、b、及びcは、楕円体の主軸を示す。楕円体と交差する平面は、例えば、次のように表される。
【0036】
【数2】
【0037】
ここで、nは平面の法線ベクトルであり、肺静脈の中心軸を表し、xは、平面が通過する交点である。代替的な実施形態では、平面の方向はユーザによって制御され、肺静脈の中心軸からずれた法線ベクトルnで方向付けられるように平面の方向が選択されてよい。このような実施形態では、カテーテルを表す楕円体に対する平面の回転を可能にするグラフィカル・ユーザ・インターフェースを提供してよく、これにより、ユーザは損傷の形状と方向を選択できる。
【0038】
平面と楕円体との交差が図7に図示されており、楕円体702と交差平面704とのグラフ700が示されている。交点xは、肺静脈の中心軸706に沿ってより遠位又は近位に設定することができる損傷の深さを定義する。xをある数値とすると、平面は次のように表される。
【0039】
【数3】
【0040】
図7を参照すると、楕円体702の軸は座標フレームを画定する。次いで、式3で定義された平面は、楕円体702の軸によって画定された座標フレームの中で回転される。
【0041】
一般的に、平面と楕円体の交点は楕円形である。このような楕円は、通常は、カテーテル上の電極の位置を正確には通過しない。カテーテル電極は閉路を形成するように楕円に近似する。一実施形態では、平面の閾値距離内にある電極が選択される。いくつかの実施形態において、閾値距離は、例えば、4.0mmと画定されてよい。代替実施形態では、交点を画定する楕円に最も近い電極が選択される。そのような実施形態では、電極は、例えば勾配降下法のような、反復探索によって識別される。従って、探索距離の値は、楕円経路の幅、従って損傷の幅を画定する。例えば、10mmの探索距離は、4.0mmの探索距離よりも大きい損傷を産出するであろう。
【0042】
特定の実施形態では、配置特定ナビゲーションシステム30は、例えば、所与の電極が肺静脈と接触しているかどうかを決定する電気インピーダンス感知システムといった接触感知システムを含んでよい。そのような実施形態では、配置特定ナビゲーションシステム30は、カテーテル電極のサブセットを選択する際に、所与の電極が肺静脈と接触しているかどうかを思考する。電極と組織間の接触は、例えば、イメージング、電位図振幅、インピーダンス測定、接触感知、超音波ベースの距離測定(例えばm-mode)、及び温度に基づく接触感知を含む、様々な技術を用いて決定されてもよい。温度に基づく接触感知は、RF電流が電極を介して供給されると、血液中の電極は冷却されて比較的安定した温度を維持する一方で、心内膜に接触する電極は通常は温度が上昇する、という原理に基づいて動作する。
【0043】
図2は、図1に示すエレクトロポレーションシステム10で使用するための例示的なバスケットカテーテル200の概略図である。バスケットカテーテル200は、遠位部48、より具体的には遠位端に図示されたシャフト44を含み、このシャフトに電極アセンブリ12が結合される。電極アセンブリ12は、複数のスプライン202からなる構造体を含む。複数のスプライン202は、それぞれ、個別にかつ選択的に通電されるように構成された複数の電極204を含む。スプライン202は、スプライン202が結合する第1極206及び第2極208を画定する。
【0044】
電極204は、エレクトロポレーション電極として使用するために構成される。一部の実形態では、電極204は、追加使用のために構成されてもよい。例えば、電極204のうちの1つ又は複数は、配置又は位置感知機能を実行してもよい。より詳細には、1つ又は複数の電極204は、ある時点において、カテーテル14の配置(位置と方向)及びそのシャフト44の遠位部48に関する情報を提供する位置特定センサとして構成してもよい。従って、カテーテル14が組織16の対象構造の表面に沿って、及び/又は構造の内部の周りを動かされるとき、センサは、対象構造の表面及び/又は対象構造内の他の配置に対応する配置データポイントの収集に使用されてもよい。これらの配置データポイントは、例えばモデル構築システムによって、対象構造の3次元モデルの構築に使用されてもよい。他の実施形態では、別体のカテーテル電極が、エレクトロポレーション及び位置付けに使用される。
【0045】
電極204は、スプライン202の周りに均一に分布してもよい。図2の実施形態における電極204は、電極にそれぞれ結合され、シャフト44内に収容された導体によって給電される、フレキシブル回路を含む。代替実施形態では、電極204は、1000ボルト及び/又は10アンペアの範囲の電流を伝導及び/又は放電するように構成された白金リング電極である。特定の実施形態では、バスケットカテーテル200のスプライン202は、電極アセンブリ12の中心軸の周りを回転するヘリカルスプラインである。このようなヘリカル形状は、バスケットカテーテル200の表面上に、電極204をより均一に分布させる。他の実施形態では、バスケットカテーテル200は、任意の適切な材料で作られた、任意の適切な数の電極204を含んでよい。電極204は、高電圧及び/又は高電流(例えば、1000ボルト及び/又は10アンペアの範囲)を伝導するのに適した任意のカテーテル電極を備えてよい。各カテーテル電極204は、絶縁ギャップ210によって互いに分離されている。例示的な実施形態では、各電極204は、同じ長さ212を有し、各絶縁ギャップ210は、他のギャップ210と互いに同じ長さを有する。他の実施形態では、電極204及び絶縁ギャップ210の長さは互いに異なっていてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、電極204はすべて同じ長さ212を有していなくてもよく、及び/又は絶縁ギャップ210はすべて同じ長さを有していなくてもよい。一部の実施形態では、電極204は、スプライン202の周囲に均等に分布していない。
【0046】
図3は、図2に示すバスケットカテーテル200に使用する、例示的な電極アセンブリ12の例示的な視覚化300の概略図である。電極アセンブリ12は、肺静脈302内に位置付けされる。肺静脈302は中心軸304を画定する。電極アセンブリ12は、スプライン202の周囲に分布する、複数の電極204を含む。スプライン202は、スプライン202が結合する第1極206及び第2極208を画定する。電極204は、スプライン202の周囲に均一には分布していない。電極204は、第1極206及び第2極208から離れるように集めてあるが、これは、バスケットカテーテル200が位置付けされるときに、第1極206及び第2極208が、肺静脈302と接触する可能性が低いためである。換言すれば、電極204は、第1極206及び第2極208から離れるように集めた場合に、肺静脈302に接触する可能性が高い。
【0047】
視覚化300は、電極204の中から選択される、電極306のサブセットを図示する。サブセット電極306は、上述のように自動的に選択されても、又は臨床医又は医師といったユーザによって選択されてもよい。特定の実施形態では、サブセット電極306は、例えば各電極の接触状態に基づき、配置特定ナビゲーションシステム30によって最初に自動的に選択され、システムを操作する臨床医又は医師に提案される。次に、このシステムでは、臨床医又は医師がサブセット電極306を確認又は修正できる。サブセット電極306は、バスケットカテーテル200の周囲の大円に最も近似する、電極306を通る経路を形成し、さらに肺静脈302の中心軸304と最も同心である電極リング306を形成するように選択される。このようなリングは、特定の状況下では実質的に円形であってもよく、特定の状況下では非円形であってもよい。通電されると、電極306は、理想的に配置されたフープ又はスパイラルカテーテルによって達成されるであろうものとほぼ同じ幾何学的パターンでDCエネルギーを送達する仮想スパイラルカテーテルを形成する。
【0048】
代替の実施形態では、より高密度の電極204のアレイが電極アセンブリ12上に配置され、肺静脈302の中心軸304とより同心であるサブセット電極306の選択を可能にする。選択に利用できる電極204の数がより少ない実施形態では、電極306の、よりおおよそ同心円のリングの選択を可能にする。
【0049】
視覚化300は、サブセット電極306のユーザによる選択のための、ユーザインターフェース308をさらに示す。ユーザインターフェース308は、図1に示される配置特定ナビゲーションシステム30内に統合してもよく、及び肺静脈302内の電極アセンブリ12の三次元又は二次元表示のための視覚化システムとも統合してもよい。
【0050】
図4は、図1に示すエレクトロポレーションシステム10で使用するための例示的なバルーンカテーテル400の概略図である。バルーンカテーテル400は、図1に示すカテーテル14の遠位部48から膨張するバルーン表面402を含む。バルーンカテーテル400は、バルーン表面402上に印刷された複数の電極404を有する、電極アセンブリ12を含む。電極404の各々は、図3に示される肺静脈302の中心軸304と同心である電極のリングを形成するように、個別にかつ選択的に通電されるように構成される。
【0051】
図5は、図1に示すエレクトロポレーションシステム10で使用するための例示的なヘリカルカテーテル500の概略図である。ヘリカルカテーテル500は、中心軸504を中心として回転し、端部506で結合する複数のヘリカルスプライン502を含む。複数の電極(図示されていない)が、ヘリカルスプライン502上に分布し、電極アセンブリ12を形成する。電極の各々は、図3に示される肺静脈302の中心軸304と同心である電極のリングを形成するために、個別にかつ選択的に通電されるように構成される。
【0052】
図6は、図1から図4に示すカテーテル14、より具体的には、電極アセンブリ12に通電する例示的な方法600のフローチャートである。図1から図6を参照すると、方法600は、例えば、肺静脈302によって画定される中心軸304のような、空間の中心軸に対するカテーテル14の遠位部48の位置付けを行うことから始まる(610)。遠位部48は、電極アセンブリ12の構造体の周りに分布する電極204を含む、電極アセンブリ12を位置付けするように操作可能である。電極アセンブリ12の構造体は、例えば、スプライン202又はバルーン表面402を含んでよい。電極アセンブリ12の構造体は、少なくとも部分的に中心軸を取り囲んでいる。
【0053】
カテーテル14が位置付けされると(610)、配置特定ナビゲーションシステム30は、中心軸に対する複数の電極204のそれぞれの配置を特定する(620)。次いで、電極306のサブセットが、電極204のそれぞれの配置に基づいて選択される(630)。電極306は、中心軸と同心であり、実質的に円形又は非円形であってもよい電極の円周リングを形成する。配置特定ナビゲーションシステム30は、電極306を選択し(630)、電極306のサブセットに通電する(640)ようにエレクトロポレーション発生器26を制御するように構成されている。電極306の選択(630)及び電極306への通電(640)は、スイッチのネットワークを制御、又は生成された直流(DC)信号がシャフト44を介して遠位部48の電極アセンブリ12に到達することを可能にするアドレス指定回路を制御することにより、エレクトロポレーション発生器26によって実行されてよい。従って、エレクトロポレーション発生器26は、配置特定ナビゲーションシステム30によってさらに制御されて、電極204の残りの電極が通電されていないことを保証し、又は代替方法として、残りの電極をリターン電極として利用してもよい。
【0054】
上述の実施形態の技術的効果は、(a)エレクトロポレーションを心臓組織に送達するために、カテーテルを適切に位置付けするのに必要な時間を短縮すること、(b)標的静脈の中心軸に対する周辺損傷の同心性の改善、(c)エレクトロポレーション法の有効性の改善、(d)エレクトロポレーション治療セッションの全体的な時間の短縮、(e)折り畳んだ状態のバスケットカテーテル又はバルーンカテーテルを用いてエレクトロポレーションを送達するためのカテーテルの位置付けの簡便化、(f)バスケットカテーテル又はバルーンカテーテルを用いて、それぞれのカテーテル電極と心臓組織との接触を改善すること、を含んでよい。
【0055】
本開示の特定の実施形態は、ある程度詳細に上述されているが、当業者であれば、本開示の精神又は範囲から逸脱することなく、開示されている実施形態に対して様々な変更を加えることができる。全ての方向に関する言及(例えば、上方、下方、上向き、下向き、左、右、左側、右側、上部、下部、上、下、垂直、水平、時計回り、及び反時計回り)は、読者の本開示の理解を助けるための識別を目的としてのみ使用されているに過ぎず、特に、本開示の位置、向き、又は使用に関する限定を生じない。接合に関する言及(例えば、取り付けられている、結合されている、接続されている等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続の間の中間部材、及び要素間の相対移動を含んでもよい。このように、接合に関する言及は、必ずしも、2つの要素が直接的に接続され、互いに固定された関係にあることを意味するとは限らない。上記の説明に含まれる事項や、添付の図面に示される事項のすべては、例示的なものとしてのみ解釈され、限定的に解釈されない。詳細又は構造の変更は、添付の特許請求の範囲に定義されている本開示の精神から逸脱することなく行うことができる。
【0056】
本開示又はその好ましい実施形態の要素を紹介する際に、「ある(a,an)」、「上記」、及び「上述」という冠詞は、要素の1つ又は複数が存在するという意味であることを意図する。「含む」、「含む」、及び「有する」という用語は、包括的であることが意図され、リストされた要素以外の追加の要素があってもよいことを意味する。
【0057】
本開示の範囲から逸脱することなく、上記構成に様々な変更を加えることができるため、上記の説明に含まれる事項や、添付の図面に示される事項の全ては、例示的なものとして解釈され、限定的に解釈されないことが意図される。
以下の項目は、国際出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
エレクトロポレーションを実行するためのカテーテルであって、
身体内の静脈に位置付けられるように構成される遠位部であって、前記静脈は、中心軸を画定する、前記遠位部と、
前記遠位部に結合された電極アセンブリと、を備え、
前記電極アセンブリは、
前記静脈に少なくとも部分的に接触するように構成される構造体と、
前記構造体の周囲に分布する複数の電極であって、前記複数の電極の各電極は、通電された電極の円周リングを形成するように選択的に通電されるよう構成され、前記円周リングは、前記静脈の前記中心軸と同心である、前記複数の電極と、を備える、カテーテル。
(項目2)
前記構造体は、バルーンを備え、
前記複数の電極は、前記バルーンの周囲に分布する、
項目1に記載のカテーテル。
(項目3)
前記構造体は、複数のスプラインを有するバスケットを備え、
前記複数の電極は、前記複数のスプラインに沿って分布する、
項目1に記載のカテーテル。
(項目4)
前記複数のスプラインは、前記複数のスプラインが結合する第1極及び第2極を画定し、
前記複数の電極は、前記第1極及び前記第2極から離れるように集められている、
項目3に記載のカテーテル。
(項目5)
通電された電極の前記円周リングは、非円形である、
項目1に記載のカテーテル。
(項目6)
エレクトロポレーションシステムであって、
電極アセンブリを含むカテーテルであって、前記電極アセンブリは、身体内の静脈に位置付けられるように構成され、前記静脈は、中心軸を画定し、前記電極アセンブリは、前記静脈に少なくとも部分的に接触するように構成される構造体と、前記構造体の周囲に分布する複数の電極であって、前記複数の電極の各電極は、個別に通電されるよう構成される、前記複数の電極と、を備える、前記カテーテルと、
前記カテーテルに結合される直流(DC)エネルギー源であって、前記複数の電極のうちの電極のサブセットに選択的に通電するよう構成される前記直流(DC)エネルギー源と、
前記カテーテル及び前記直流(DC)エネルギー源に結合されるコンピューティングシステムであって、前記コンピューティングシステムは、前記静脈内の前記複数の電極のそれぞれの位置を検出し、前記電極のサブセットを選択して、通電された電極の円周リングを形成するように構成され、前記円周リングは、前記静脈の前記中心軸と同心である、前記コンピューティングシステムと、を備える、
エレクトロポレーションシステム。
(項目7)
前記コンピューティングシステムは、前記静脈に対する前記複数の電極のそれぞれの位置を表示するように構成される視覚化システムをさらに備える、項目6に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目8)
前記視覚化システムは、3次元ディスプレイをレンダリングするようにさらに構成される、項目7に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目9)
前記コンピューティングシステムは、前記電極のサブセットのユーザによる選択を可能にするように構成されるユーザインターフェースをさらに備える、項目7に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目10)
前記コンピューティングシステムは、前記複数の電極と前記静脈とのそれぞれの接触を検出するようにさらに構成される、項目6に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目11)
カテーテルへの通電方法であって、
空間の中心軸に対してカテーテルの遠位部を位置付けすることであって、前記遠位部は、構造体の周囲に分布する複数の電極を備え、前記構造体は、少なくとも部分的に前記中心軸の周囲を囲む、前記位置付けすることと、
前記中心軸に対する前記複数の電極のそれぞれの配置を決定することと、
前記複数の電極のそれぞれの配置に基づいて、前記複数の電極の中から電極のサブセットを選択して、前記中心軸と同心である電極の円周リングを形成することと、
前記電極のサブセットへ通電することと、
を備える、方法。
(項目12)
前記複数の電極のそれぞれの位置を視覚化システムに表示することをさらに備える、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記カテーテルは、バスケットカテーテルを備え、
前記方法は、前記遠位部を位置付けした後に、前記バスケットカテーテルを前記中心軸に対して拡張させることをさらに備える、
項目11に記載の方法。
(項目14)
前記電極のサブセットに通電することは、
直流(DC)信号を生成することと、
前記カテーテルを介して前記電極のサブセットに前記直流(DC)信号を送電することと、
前記複数の電極のうちの残りの電極への通電を切断することと、を備える、
項目11に記載の方法。
(項目15)
前記カテーテルは、バルーンカテーテルを備え、
前記方法は、前記遠位部を位置付けした後に、前記バルーンカテーテルを前記中心軸に対して拡張させることをさらに備える、
項目11に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7