(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】低圧配電系統の電圧管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20221026BHJP
H02J 3/12 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/12
(21)【出願番号】P 2020027532
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2021-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 泰治
(72)【発明者】
【氏名】横井 瑛
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 達矢
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109103896(CN,A)
【文献】特開2016-036252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持するための電圧管理システムであって、
前記低圧配電系統に接続されているとともに、
前記低圧配電系統の電圧が所定範囲外となったときに
前記低圧配電系統に無効電力を供給し、
前記低圧配電系統の電圧を所定範囲内に
回復させる電圧調整器と、
前記低圧配電系統に接続されているとともに、前記低圧配電系統において前記電圧調整器よりも下流に配置されており、前記低圧配電系統に有効電力を供給する分散電源と、
前記分散電源に配置されており、
Volt-Var機能を有し、前記低圧配電系統
の電圧変動に伴い前記低圧配電系統に無効電力を供給す
るスマートインバータと、
を備えており、
前記電圧調整器は、
前記低圧配電系統の電圧を所定範囲内に
回復させた後、
前記低圧配電系統の電圧を所定範囲内に回復させるために要した時間よりも長い時間をかけて
前記低圧配電系統への出力を設定値まで低下させる電圧管理システム。
【請求項2】
低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持するための電圧管理システムであって、
前記低圧配電系統に接続されているとともに、
前記低圧配電系統の電圧が所定範囲外となったときに
前記低圧配電系統に無効電力を供給し、
前記低圧配電系統の電圧を所定範囲内に
回復させる電圧調整器と、
前記低圧配電系統に接続されているとともに、前記低圧配電系統において前記電圧調整器よりも下流に配置されており、前記低圧配電系統に有効電力を供給する分散電源と、
前記分散電源に配置されており、
Volt-Var機能を有し、前記低圧配電系統
の電圧変動に伴い前記低圧配電系統に無効電力を供給す
るスマートインバータと、
を備えており、
前記電圧調整器は、
前記低圧配電系統の電圧を所定範囲内に
回復させた後、
前記低圧配電系統の電圧を所定範囲外に変動させ、前記スマートインバータの
Volt-Var機能を利用して前記スマートインバータに対して前記低圧配電系統に無効電力を供給
させ、前記低圧配電系統への出力を設定値まで低下させる電圧管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、低圧配電系統の電圧管理システムに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、配電系統に電圧変動が生じた際、配電系統に無効電力を供給し、配電系統の電圧変動を抑制する(基準電圧に復帰させる)技術が開示されている。特許文献1では、SVC(Static Var Compensator)、STATCOM(Static Synchronous Compensator)といった電圧調整器(無効電力補償装置)を用いて配電系統に無効電力を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、太陽光発電システム等の分散電源が急速に普及している。配電系統に接続される分散電源の数が増加すると、配電系統において短周期の逆潮流が頻繁に発生し、電圧調整器の調整幅を超えることがある。その結果、低圧配電系統(変圧器より下流の配電系統)の電圧を管理値(基準電圧)に維持できなくなることが起こり得る。一方、分散電源の急速な普及に対策するため、各分散電源にスマートインバータを取り付け、スマートインバータから配電系統(高圧配電系統または低圧配電系統)に無効電力を供給することが検討されている。しかしながら、スマートインバータから配電系統に無効電力を供給する際は、配電系統の電圧が急激に変化することを防止するため、無効電力の出力をゆっくりと一定速度で上昇(ソフトランプ応答)させる規定を導入することが検討されている。例えば米国では、スマートインバータから配電系統に無効電力を供給する際は、ソフトランプ応答させることが規格化されている(UL規格1741SA11)。しかしながら、ソフトランプ応答では、配電系統の急激な電圧変化に対応することができない。そのため、新たな電圧管理システムを構築することが必要とされている。本明細書は、低圧配電系統の新たな電圧管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する電圧管理システムは、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持するために用いられる。電圧管理システムは、電圧調整器とスマートインバータを備えていてよい。電圧調整器は、配電系統に接続されているとともに、配電系統の電圧が所定範囲外となったときに配電系統に無効電力を供給し、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持してよい。スマートインバータは、配電系統に有効電力を供給する分散電源に配置されており、配電系統に無効電力を供給することが可能であってよい。この電圧管理システムでは、電圧調整器は、配電系統の電圧を所定範囲内に保持した後、配電系統の電圧を所定範囲内に回復させるために要した時間よりも長い時間をかけて配電系統への出力を設定値まで低下させてよい。
【0006】
本明細書では、他の電圧管理システムも提供する。その電圧管理システムは、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持するために用いられる。電圧管理システムは、電圧調整器とスマートインバータを備えていてよい。電圧調整器は、配電系統に接続されているとともに、配電系統の電圧が所定範囲外となったときに配電系統に無効電力を供給し、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持してよい。スマートインバータは、配電系統に有効電力を供給する分散電源に配置されており、配電系統に無効電力を供給することが可能であってよい。この電圧管理システムでは、電圧調整器は、配電系統の電圧を所定範囲内に保持した後、配電系統の電圧をスマートインバータが配電系統に無効電力を供給する状態に維持し、配電系統への出力を設定値まで低下させてよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】配電系統に対する電圧調整器及びスマートインバータの出力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示する電圧管理システムは、配電系統への負荷接続、分散電源による配電系統への有効電力の供給等により低圧配電系統の電圧が所定範囲外になったときに、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に回復(復帰)させ、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に維持するために用いられる。なお、分散電源の一例として、太陽光発電装置が挙げられる。電圧管理システムは、電圧調整器とスマートインバータを備えていてよい。電圧調整器は、配電系統の電圧変動に応じて配電系統に無効電力を供給することが可能な機器であってよい。電圧調整器として、例えば、SVC、STATCOM等が挙げられる。電圧調整器は、配電系統の電圧が所定範囲外になったときに、能動的に(制御装置等からの指令を受けずに)配電系統に無効電力を供給してよい。電圧調整器から配電系統に無効電力を供給することにより、低圧配電系統の電圧を所定範囲内に回復することができる。電圧調整器は、変圧器より上流の高圧配電系統に接続されていてもよいし、変圧器より下流の低圧配電系統に接続されていてもよい。すなわち、電圧調整器は、高圧配電系統に無効電力を供給してもよいし、低圧配電系統に無効電力を供給してもよい。
【0009】
電圧調整器は、数m秒から十数m秒で、配電系統の電圧を所定範囲内に回復してよい。すなわち、電圧調整器は、数m秒から十数m秒で、無効電力の出力を目的の出力まで上昇させてよい。電圧調整器は、配電系統に無効電力を供給した後、配電系統に供給している無効電力の出力を低下させてよい。具体的には、電圧調整器は、配電系統の電圧を所定範囲内に回復させるために要した時間(数m秒から十数m秒)よりも長い時間(例えば、数百m秒から数十秒)かけて、配電系統への出力を設定値まで低下させさせてよい。「設定値」は、再度配電系統の電圧が所定範囲外になったときに、配電系統の電圧を所定範囲内に回復し得る容量が確保される値に設定されていてよい。設定値は、電圧調整器の能力に応じて決められた固定値であってよい。
【0010】
電圧調整器が配電系統に対する出力を低下させていくと、配電系統の電圧が変動していく。スマートインバータは、Volt-Var機能を有するので、配電系統の電圧が変動すると、配電系統に無効電力を供給する。スマートインバータからの無効電力の供給により、配電系統の電圧は、電圧調整器の出力低下速度より遅い速度で変動する。電圧調整器は、配電系統に対する出力が設定値まで低下したときに、配電系統に対する出力を保持してよい。また、電圧調整器は、出力が設定値まで低下したときの配電系統の電圧を管理基準値(例えば、上記所定範囲の中央値)に設定してよい。電圧調整器は、出力が設定値まで低下しているので、次に配電系統の電圧が所定範囲外になったときに、配電系統に供給する余力(無効電力の残量)を確保することができる。また、電圧調整器が配電系統に対する出力を保持すると、配電系統の電圧が変動しなくなり、配電系統に対するスマートインバータの出力も保持される。
【0011】
あるいは、電圧調整器は、配電系統の電圧を所定範囲内に回復させた後、配電系統の電圧を変動させ、スマートインバータから配電系統に無効電力を供給させてよい。また、電圧調整器は、配電系統の電圧を変動させながら、配電系統に対する出力を設定値まで低下させてよい。スマートインバータは、Volt-Var機能により、電圧調整器の出力が設定値に低下するまで、配電系統に無効電力を供給し続ける。なお、電圧調整器は、配電系統に対する出力が設定値まで低下したときに、配電系統に対する出力を保持してよい。その結果、配電系統の電圧が変動しなくなり、配電系統に対するスマートインバータの出力も保持される。なお、電圧調整器が配電系統の電圧を変動させてから配電系統に対する出力を保持するまでの時間は、スマートインバータが無効電力を配電系統に供給する速度に依存する。スマートインバータは無効電力の出力をゆっくりと一定速度で上昇(ソフトランプ応答)させるので、電圧調整器が配電系統の電圧を変動させてから配電系統に対する出力を保持までの時間は、配電系統の電圧を所定範囲内に回復させるために要した時間(数m秒から十数m秒)よりも長い時間(例えば、数百m秒から数十秒)となる。
【0012】
スマートインバータは、配電系統に有効電力を供給することが可能な分散電源に設けられていてよい。配電系統に複数の分散電源が接続されている場合、スマートインバータは、複数の分散電源の各々に設けられていてよいし、複数の分散電源のうちの一部の分散電源に設けられていてもよい。なお、スマートインバータは、電圧調整器と同じ配電系統、すなわち、電圧調整器が高圧配電系統に無効電力を供給する場合は高圧配電系統に、電圧調整器が低圧配電系統に無効電力を供給する場合は低圧配電系統に無効電力を供給してよい。すなわち、電圧調整器及びスマートインバータは、高圧配電系統と低圧配電系統のいずれか一方に接続されていてよい。電圧調整器及びスマートインバータが低圧配電系統に接続されていれば、低圧配電系統の電圧を直接制御(管理基準値に維持)することができる。なお、典型的に、高圧配電系統の電圧が所定範囲外(管理基準値外)に変動すると、低圧配電系統の電圧も所定範囲外(管理基準値外)に変動する。そのため、電圧調整器、及び/又は、スマートインバータが高圧配電系統に接続(高圧配電系統に無効電力を供給)する場合であっても、高圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持することにより、結果として低圧配電系統の電圧を所定範囲内に保持することができる。
【0013】
上記したように、配電系統に電圧調整器を接続することにより、配電系統の急激な電圧変動に対応することができる(低圧配電系統の電圧を所定範囲内に回復することができる)。しかしながら、電圧調整器は、常に余力(出力可能な無効電力)を確保しておかないと、配電系統に急激な電圧変動が発生したときに無効電力出力が不足し、配電系統の電圧を管理値(基準電圧)に維持できなくなることが起こり得る。しかしながら、本明細書で開示する電圧管理システムは、スマートインバータが配電系統に無効電力を供給することにより、電圧調整器が常に余力を確保した状態を維持することができる。すなわち、スマートインバータのVolt-Var機能を利用してスマートインバータに配電系統に対して無効電力を供給させることにより、電圧調整器は,配電系統の電圧調整を行うために必要な無効電力量を常に確保することができる。
【実施例】
【0014】
図1を参照し、電圧管理システム100について説明する。電圧管理システム100は、STATCOM(電圧調整器)20と、複数のスマートインバータ12を備えている。STATCOM20及びスマートインバータ12は、低圧配電系統32に接続されている。低圧配電系統32は、変圧器(ポールトランス)Trを介して高圧配電系統30に接続されている。一例として、日本では、高圧配電系統30の電圧は6.6kVであり、低圧配電系統32の電圧は100Vまたは200Vである。また、一例として、米国では、高圧配電系統30の電圧は12kVであり、低圧配電系統32の電圧は120Vまたは240Vである。なお、高圧配電系統30及び低圧配電系統32には、各々負荷34,36が接続される。スマートインバータ12は、太陽光発電装置10に取り付けられている。全てのスマートインバータ12が低圧配電系統32に無効電力を供給可能であり、全ての太陽光発電装置10が低圧配電系統32に発電した有効電力を供給可能である。スマートインバータ12は、低圧配電系統32の電圧が変動すると、Volt-Var機能により、低圧配電系統32に無効電力を供給する。
【0015】
STATCOM20は、低圧配電系統32に供給する無効電力の出力を変化させ、低圧配電系統32の電圧を所定範囲内に維持する。そのため、STATCOM20は、低圧配電系統32に対する負荷36の接続、あるいは、低圧配電系統32に対する太陽光発電装置10からの有効電力の供給により、低圧配電系統32の電圧が所定範囲外に変動すると、低圧配電系統32に無効電力を供給し、低圧配電系統32の電圧を所定範囲内に維持する(回復させる)。また、STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧を所定範囲内に回復させた後、低圧配電系統32に対する出力を変化させることができる。さらに、STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧を所定範囲内に回復させた後、低圧配電系統32の電圧を変動させることもできる。この場合も、STATCOM20は、低圧配電系統32に対する出力を変化させ、低圧配電系統32の電圧を変動させる。
【0016】
(第1電圧管理方法)
図2及び
図3を参照し、電圧管理システム100を利用した電力管理方法を説明する。以下の説明では、低圧配電系統32の電圧が低下して管理基準値(所定範囲)を外れた場合について説明する。低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0(幅を持った値)に維持されている場合、STATCOM20の出力は、出力B1(var)に保持されている(ステップS2,タイミングt0~t1)。出力B1は、低圧配電系統32に電圧変動が生じたときに、電圧変動を補償(回復)する余力(無効電力の残量)を有した状態に設定されている。STATCOM20は、常に低圧配電系統32の電圧を検出しており、低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0を満足している間(ステップS4:YES)、出力を出力B1に保持し続ける。なお、出力B1は、例えば0varであってよいし、一定の値であってもよい。また、STATCOM20の出力が出力B1に保持されている間(タイミングt0~t1)、スマートインバータ12の出力は、出力A1(var)に保持されている。出力A1も、例えば0varであってよいし、一定の値であってもよい。
【0017】
STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0を外れたことを検知すると(ステップS4:NO,タイミングt1)、低圧配電系統32に無効電力を供給し、低圧配電系統32の電圧を管理基準値V0に回復させる(ステップS6,タイミングt1~t2)。STATCOM20は、数十m秒以内に低圧配電系統32の電圧を管理基準値V0に回復させる。
【0018】
次に、STATCOM20は、低圧配電系統32に対する出力を、出力B1まで除々に低下させていく(ステップS8,タイミングt2~t4)。
図2に示すように、STATCOM20の出力低下に伴って、低圧配電系統32の電圧が低下する。その結果、スマートインバータ12が、低圧配電系統32に無効電力の供給を開始する(ステップS10,タイミングt3)。
【0019】
スマートインバータ12は、低圧配電系統32に対して無効電力の供給を数百m秒~数十秒行う。スマートインバータ12は、低圧配電系統32に対する出力をゆっくりと一定速度で上昇(ソフトランプ応答)させる。なお、スマートインバータ12は、常に低圧配電系統32の電圧を検出しており、低圧配電系統32の電圧が変動している間、低圧配電系統32に無効電力を供給する(タイミングt3~t4)。すなわち、STATCOM20の出力が出力B1まで低下していない場合(ステップS12:NO,タイミングt2~t4)、低圧配電系統32の電圧が低下し続けるので、スマートインバータ12は低圧配電系統32に無効電力を供給し続ける(出力を上昇させ続ける)。
【0020】
STATCOM20は、低圧配電系統32に対する出力が出力B1まで低下すると(ステップS12:YES,タイミングt4)、低圧配電系統32に対する出力を保持(固定)する(ステップS14:YES,タイミングt4以降)。その結果、低圧配電系統32の電圧が変動しなくなり、スマートインバータ12の出力も保持される。また、STATCOM20は、低圧配電系統32に対する出力を保持したときの低圧配電系統32の電圧V1を、管理基準値として記憶する。すなわち、STATCOM20は、次に低圧配電系統32の電圧が管理基準値V1を外れたことを検知すると、低圧配電系統32に無効電力を供給し、低圧配電系統32の電圧を管理基準値V1に回復させる。なお、管理基準値V1を外れた後に回復させる電圧は、管理基準値V0に設定することもできる。
【0021】
第1管理方法では、STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧を回復させた後、自身の出力を出力B1まで除々に低下させるだけで、スマートインバータ12に無効電力の供給を促し、自身は無効電力を確保することができる。第1管理方法によると、STATCOM20が出力を出力B1まで低下させるという簡単な制御(動作)で、STATCOM20の無効電力が枯渇することを防止することができ、低圧配電系統32の電圧が管理基準値を外れたときに低圧配電系統32に確実に無効電力を供給することができる。
【0022】
(第2電圧管理方法)
図4を参照し、第2電圧管理方法について説明する。第2電圧管理方法は、第1電圧管理方法の変形例である。そのため、以下の説明において、第1電圧管理方法と実質的に同一の工程については、重複説明を省略することがある。なお、第2電圧管理方法においても、低圧配電系統32に対するSTATCOM20及びスマートインバータ12の出力は、
図2に示すタイミングチャートのように変化する。以下の説明では、必要に応じて
図2も参照する。
【0023】
第2電圧管理方法において、低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0に維持されている間はSTATCOM20の出力を出力B1に保持し、低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0外になったときにSTATCOM20が低圧配電系統32に無効電力を供給するまでの工程(ステップS22~ステップS26,タイミングt0~t2)は、第1電圧管理方法のステップS2~ステップS6と同一である。
【0024】
第2電圧管理方法では、STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧を回復した後、低圧配電系統32の電圧を除々に低下させ始める(ステップS28,タイミングt2)。さらに、STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧が低下する(変動する)状態を維持したまま、低圧配電系統32に対する出力を出力B1まで除々に低下させていく(ステップS30,タイミングt2~t4)。低圧配電系統32の電圧が低下(変動)すると、スマートインバータ12が、低圧配電系統32に対して無効電力の供給を開始する(ステップS32,タイミングt3)。その後の工程(ステップS32~ステップS36)は、第1電圧管理方法のステップS10~S14と実質的に同一である(
図3も参照)。
【0025】
第2電圧管理方法は、低圧配電系統32の電圧を管理基準値V0に維持するためのSTATCOM20が積極的に低圧配電系統32の電圧を管理基準値V0外に変動させるという点において、従来とは全く異なる電圧管理方法といえる。
【0026】
上記した第1及び第2管理方法は、何れも、低圧配電系統32の電圧が管理基準値V0を外れたときに、STATCOM20が、低圧配電系統32の電圧を即座に管理基準値V0に回復させる。また、第1及び第2管理方法によると、STATCOM20は、低圧配電系統32の電圧が再度管理基準値V0を外れた場合に備え、低圧配電系統32に供給可能な無効電力を確保することができる。すなわち、STATCOM20が、低圧配電系統32に電圧を供給するための余力を確保することができる。
【0027】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0028】
10:分散電源
12:スマートインバータ
20:電圧調整器(STATCOM)
30:高圧配電系統
32:低圧配電系統
50:制御装置
100:電圧管理システム