(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】均質な色印象を有するソーラーモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20221026BHJP
【FI】
H01L31/04 560
(21)【出願番号】P 2020544470
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 CN2019075419
(87)【国際公開番号】W WO2019161762
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-20
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519375963
【氏名又は名称】中建材硝子新材料研究院集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】CNBM RESEARCH INSTITUTE FOR ADVANCED GLASS MATERIALS GROUP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク パルム
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-143384(JP,A)
【文献】特開2016-025247(JP,A)
【文献】特開平11-097733(JP,A)
【文献】特開2013-201223(JP,A)
【文献】特開2001-047568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0049904(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0090412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、太陽光発電エネルギー生成のための太陽電池(16)を有するソーラーモジュール(1):
- 外部環境に面した外面(11)と、前記太陽電池(16)に面した内面(12)とを有する前面カバー(10)、
- 色座標L*
1、a*
1、b*
1を有する第一の色F
1を有する光学活性ゾーン(14)、
- 前記第一の色F
1とは異なり、かつ色座標L*
2、a*
2、b*
2を有する少なくとも一つの第二の色F
2を有する光学不活性ゾーン(15)、
ここで、
前記前面カバー(10)が、その外面又は内面上に下記を有し:
- 少なくとも前記光学活性ゾーン(14)を覆う少なくとも一つの第一のドットグリッド(19)、ここで、前記第一のドットグリッド(19)は、前記第一の色F
1とは異なり、かつ色座標L*
3、a*
3、b*
3を有する第三の色F
3を有し、等間隔の規則的な模様で配置された不透明な着色ドット(21)を複数有しており、前記第一の色F
1と前記第三の色F
3とを加えると、色座標L*
1’、a*
1’、b*
1’を有する付加色F
1’を生じる、
- 少なくとも一つの前記光学不活性ゾーン(15)を覆う少なくとも一つの第二のドットグリッド(20)、ここで、前記第二のドットグリッド(20)は、前記第二の色F
2とは異なり、かつ色座標L*
4、a*
4、b*
4を有する第四の色F
4を有し、等間隔の規則的な模様で配置された不透明な着色ドット(21)を複数有しており、前記第二の色F
2と前記第四の色F
4とを加えると、色座標L*
2’、a*
2’、b*
2’を有する付加色F
2’を生じる、
前記第三の色F
3及び前記第四の色F
4が、下記の色差ΔE
1,2について、ΔE
1,
2≦5という条件を満たすように選択されている:
【請求項2】
前記第三の色F
3及び前記第四の色F
4が、前記色差ΔE
1,2について、ΔE
1,2
≦2という条件を満たすように選択されている、請求項1に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項3】
少なくとも一つの前記第一のドットグリッド(19)及び/又は少なくとも一つの前記第二のドットグリッド(20)の前記不透明な着色ドット(21)が、それぞれ、5mm未満の大きさを有している、請求項1又は2に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項4】
少なくとも一つの前記第一のドットグリッド(19)及び/又は少なくとも一つの前記第二のドットグリッド(20)が、それぞれ、少なくとも80dpiの解像度を有し、かつ前記第一のドットグリッド(19)及び/又は前記第二のドットグリッド(20)の前記不透明な着色ドット(21)が、それぞれ、0.3mm未満の最大寸法を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項5】
少なくとも一つの前記第一のドットグリッド(19)における不透明な複数の着色ドットによる前記光学活性ゾーン(14)の被覆度が、50%未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項6】
少なくとも一つの前記第二のドットグリッド(20)における不透明な複数の着色ドットによるすべての前記光学不活性ゾーン(15)の被覆度が、少なくとも95%である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項7】
少なくとも一つの前記第二のドットグリッド(20)における不透明な複数の着色ドットによるすべての前記光学不活性ゾーン(15)の被覆度が100%であり、前記色座標L*
2’、a*
2’、b*
2’を有する前記付加色F
2’が、前記色座標L*
4、a*
4、b*
4を有する前記第四の色F
4に相当する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項8】
少なくとも一つの前記第二のドットグリッド(20)における不透明な複数の着色ドットによるすべての前記光学不活性ゾーン(15)の被覆度が、95%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項9】
少なくとも一つの前記第一のドットグリッド(19)が、前記ソーラーモジュール(1)における前記光学不活性ゾーン(15)に含まれる縁領域(13)により取り囲まれる内側領域(18)を覆っている、請求項1~8のいずれか一項に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項10】
少なくとも一つの前記第二のドットグリッド(20)が、前記ソーラーモジュール(1)の光学的に不活性な縁領域(13)を覆っている、請求項1~9のいずれか一項に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項11】
前記内側領域(18)の前記光学不活性ゾーン(15)が、それぞれ、前記第二のドットグリッド(20)によって覆われている、請求項9に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項12】
少なくとも一つの前記第一のドットグリッド(19)及び少なくとも一つの前記第二のドットグリッド(20)が、前記前面カバー(10)の前記内面(12)上に配置されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項13】
前記前面カバー(10)が、50%よりも大きいヘイズ値を有するサテンガラスでできている、請求項1~12のいずれか一項に記載の
ソーラーモジュール(1)。
【請求項14】
以下を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の太陽光エネルギー発電のための太陽電池を有するソーラーモジュール(1)の製造方法:
外部環境に面した外面(11)と、前記太陽電池(16)に面した内面(12)とを有する前面カバー(10)を提供し、
ここで、前記太陽電池(16)の光学活性ゾーン(14)が、色座標L*
1、a*
1、b*
1を有する第一の色F1を有し、かつ光学不活性ゾーン(15)が、前記第一の色F1とは異なり、かつ色座標L*
2、a*
2、b*
2を有する少なくとも一つの第二の色F
2を有する、
前記前面カバー(10)の前記外面(11)又は前記内面(12)上に、下記を適用し:
- 少なくとも前記光学活性ゾーン(14)を覆う少なくとも一つの第一のドットグリッド(19)、ここで、前記第一のドットグリッド(19)は、前記第一の色F
1とは異なり、かつ色座標L*
3、a*
3、b*
3を有する第三の色F
3を有し、等間隔の規則的な模様で配置された不透明な着色ドット(21)を複数有しており、前記第一の色F
1と前記第三の色F
3とを加えると、色座標L*
1’、a*
1’、b*
1’を有する付加色F
1’を生じる、
- 少なくとも一つの前記光学不活性ゾーン(15)を覆う少なくとも一つの第二のドットグリッド(20)、ここで、前記第二のドットグリッド(20)は、前記第二の色F
2とは異なり、かつ色座標L*
4、a*
4、b*
4を有する第四の色F
4を有し、等間隔の規則的な模様で配置された不透明な着色ドット(21)を複数有しており、前記第二の色F
2と前記第四の色F
4とを加えると、色座標L*
2’、a*
2’、b*
2’を有する付加色F
2’を生じる、
前記第三の色F
3及び前記第四の色F
4を、下記の色差ΔE
1,2について、ΔE
1,
2≦5という条件を満たすように選択する:
【請求項15】
建物外面の一部としての、ウィンドウ、ファサード、又はルーフの構成要素としての、請求項1~13のいずれか一項に記載のソーラーモジュール(1)の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電エネルギー生成の技術領域にあり、かつ均質な色印象を有するソーラーモジュールに関する。本発明は、さらに、本発明による有するソーラーモジュールの製造方法並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外のシステムでは、ソーラーモジュールの大きな普及を認めることができる。しかしながら、建物と一体化した状況での適用は、現在、依然としてかなり小規模で展開されている。分散化したエネルギーソリューションに向けた強化した努力の観点から、建物外面の一体化した構成要素としての、例えば、ファサード要素、ウィンドウ、又はルーフ要素としての、ソーラーモジュールの使用を開発することが実需である。ソーラーモジュールのその他の分野の適用は、騒音軽減壁(道路、鉄道路線)、戸外でのプライバシー障壁、又は温室用の壁である。この新たな適用は、特に、美観、耐用年数、及びシーリング及び断熱のようなその他の機能の観点から、ソーラーモジュールに対する完全に新しい需要となっている。特に、ソーラーモジュールは、様々な形状、大きさ、及び色で使用できるべきものであり、かつ最大限に均質な色印象を与えるものであるべきである。しかしながら、ここで、ソーラーモジュールの実際の機能、すなわち、太陽光からの電力の生成と対立する技術的な問題がある。
【0003】
効率の最適化の観点から、理想的なソーラーモジュールは、入射する電磁放射線を完全に吸収する黒体であり、それによって、入射する放射エネルギーを電気エネルギーに最適に変換するようになっている。しかしながら、入射放射線が、実際の物体ごとに反射され、かつ吸収された放射線が再放射され、ここで、可視光のスペクトル的に選択された反射と再放射によって、人間の目にその色印象が形成される。可視スペクトル範囲で、太陽のスペクトルは最も高いエネルギー強度を有しており、かつ人間の目は最も大きい感度を有している。ソーラーモジュールが着色されたものとして設計されるとき、言い換えれば、理想的な黒体とは異なる色印象を人間の目に作り出すことが意図されているとき、光学的に活性な半導体で吸収される光の強度、したがって、ソーラーモジュールの出力又は効率は、必然的に低下する。
【0004】
一方で、その設計に起因して、ソーラーモジュールは、一般的に、入射光に面した側に光学的に均質な表面を有さない。言い換えれば、ソーラーモジュールの表面は、何ら均質な色印象を与えない。したがって、シリコンウエハーモジュールの場合には、ウエハー、バスバー、しばしばフレーム、及びウエハーの間の領域が見える。対照的に、薄膜ソーラーモジュールは、典型的にはそれらの色印象がより均一である。しかしながら、とりわけ薄膜ソーラーモジュールの縁領域に、例えば、金属バスバー、縁のコーティングの除去、及び/又は縁のシーリングなどの技術関連の細部が存在し、これらは、光学的に活性な領域の色印象から逸脱する可能性がある。加えて、モノリシックに直列接続した太陽電池のパターニングラインが認識され得る。薄膜ソーラーモジュールの場合は、光学的に活性な電池領域は、通常は、黒色若しくは無煙炭灰色であり、又は暗青色又は暗緑色の残余の色調が与えられている。シリコンウエハーモジュールの場合には、光学的に活性な電池領域は、通常は青色である。
【0005】
この問題を解決するために、国際公開第2017/071703 A1号は、前面ガラスの不透明なカバーを縁領域に備え付けた薄膜ソーラーモジュールを提示している。このカバーは、前面ガラスに適用した塗料によって実現され、塗料は、スクリーン印刷によって、又は前面ガラスの修飾、例えば顔料によって適用されている。カバーは、前面ガラス上に適用したテープによることも可能である。確かに、縁領域の様々な構造が、不透明なカバーで満足のいくように覆われる。しかしながら、一般的に言えば、光学的に活性な領域の色印象はカバーの色から逸脱しており、したがって、縁領域とのはっきりしたコントラストが存在するので、このソーラーモジュール全体にわたって均質な色印象はない。
【0006】
さらに、先行技術では、表面にある特定の色を付与するための様々な方法が知られている。したがって、例えば、国際公開第2014/045142 A1号は、入射光のある特定のスペクトル領域を反射する干渉層を前面ガラスに実施した装置を提示している。しかしながら、このような層の製造は技術的に複雑でありかつ費用が掛かる。国際公開第2011/036209 A1号から、適切な干渉層による前面電極の着色した設計が知られている。これらの取り組みに共通することは、それらが色印象のある特定の方向依存性を示すということである。また、光起電活性なゾーンと、光起電不活性なゾーンとのコントラストがはっきりと認識できる。さらに、色の限定された選択のみが利用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
対照的に、本発明の目的は、モジュール全体にわたって均質な色印象を有する、先行技術において既知のソーラーモジュールを有利に提供することにあり、ここで、特に、光学的に活性な領域と、光学的に不活性な領域との間のはっきりしたコントラストが存在するべきではない。均質な色印象は、可能な限り少ない効率の損失と、低い方向依存性とを有しつつ実現されるべきである。さらに、このソーラーモジュールは、一般的な方法を使って、工業的に連続した製造において、経済的にかつ効率的に製造できるものであるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらのおよび他の目的は、独立請求項に記載したソーラーモジュール並びにその製造方法によって、本発明の提案にしたがって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の特徴によって示されている。
【0009】
本発明によれば、太陽光発電エネルギー生成のための、電気的に直列に接続した太陽電池を有するソーラーモジュールが提示される。基本的に、本発明によるソーラーモジュールは、任意のタイプのソーラーモジュールであってよく、特に、ウエハーベースの若しくはシリコンベースのソーラーモジュール、又はモノリシックに一体化した直列接続した太陽電池を有する薄膜ソーラーモジュールであってよい。
【0010】
好ましくは、本発明によるソーラーモジュールは、薄膜ソーラーモジュールである。有利には、このソーラーモジュールは、熱可塑性中間層(例えば、PVB層)によって互いにしっかりと接合した前面カバー及び黒色基板(例えば、ガラスプレート)を有する複合ペイン構造を有する薄膜ソーラーモジュールである。本発明は、光入射側に面する背面基板の表面に、太陽電池を製造するための層構造が適用されるサブストレート(下側基材)構造の薄膜ソーラーモジュールに言及する。同様に、本発明は、光入射側とは反対側に面する前面の(透明な)カバーの表面に層構造が適用されるスーパーストレート(上側基材)構造の薄膜ソーラーモジュールに言及する。
【0011】
慣習的用法に合わせて、「薄膜ソーラーモジュール」との用語は、適切な機械的安定性のために基板が必要とされるような、例えば数マイクロメートルといった小さい厚みを有する層構造を伴うモジュールを意味する。この基板は、例えば、無機ガラス、プラスチック、金属、又は金属合金でできていてよく、かつそれぞれの層厚及び特定の材料特性に応じて、剛性プレート又は可撓性フィルムとして設計することができる。
【0012】
薄膜ソーラーモジュールとしてのその設計において、それ自体公知の様式で、層構造は、背面電極層、前面電極層、及び背面電極層と前面電極層との間に配置された光起電活性の吸収体層を含む。層構造への光の通過を可能にしなければならないので、前面電極層は、光学的に透明である。光学的に透明な前面電極層は、典型的にはドープした金属酸化物(TCO=透明な導電性酸化物)を含むか又はそれでできており、例えば、n-導電型の、特に、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)を含むか又はそれでできている。
【0013】
光起電活性の吸収体層は、好ましくは、黄銅鉱半導体を含むか又はこれでできており、有利には、銅インジウム/ガリウムジスルフィド/ジセレニド(Cu(In,Ga)(S,Se)2)の群からのI-III-VI族化合物半導体を含むか又はこれでできている。上記の式中、インジウム及びガリウムは、それぞれ単独で又は組み合わせて存在することができる。同じことが硫黄及びセレンに当てはまり、これらはそれぞれ、単独で又は組み合わせて存在することができる。吸収体層の材料として特に適しているのは、CIS(銅インジウムジセレニド/ジスルフィド)又はCIGS(銅インジウムガリウムジセレニド、銅インジウムガリウムジスルフィド、銅インジウムガリウムジスルホセレニド)である。典型的には、吸収体層は、第一の導電型(電荷担体型)のドーピングを有し、かつ前面電極は、相反する導電型(電荷担体型)のドーピングを有する。一般的に言えば、吸収体層は、p-導電型(p-ドープ)、すなわち、電子の欠陥(ホール)が過剰であり、かつ前面電極は、n-導電型(n-ドープ)であって、それによって、自由電子が過剰に存在するようになっている。バッファー層を、典型的には、吸収体層と前面電極層との間に配置する。これは、特に、Cu(In,Ga)(S,Se)2をベースとする吸収体層について当てはまるものであって、この場合には、一般的に言えば、p-導電性Cu(In,Ga)(S,Se)2吸収体層と、n-導電性前面電極との間にバッファー層を必要とする。現在理解されているところによれば、バッファー層は、吸収体と前面電極との間の電子的適合を可能にする。さらに、バッファー層は、前面電極を堆積する後続のプロセス工程でのスパッタリングによる損傷、例えばDCマグネトロンスパッタリングによる損傷に対する保護を提供する。n-導電性前面電極層、バッファー層、及びp-導電性吸収体層が連続することによって、p-n-ヘテロ接合が形成され、言い換えれば、相反する導電型の複数の層間の接合が形成される。光起電活性な吸収体層は、例えば、カドミウムテルル(CdTe)でできていてもよい、
【0014】
本発明による薄膜ソーラーモジュールにおいて、直列接続した太陽電池は、パターニングゾーンによって形成されている。したがって、少なくとも背面電極層は、第一のパターニングライン(P1ライン)によって、互いに完全に分離した複数の区分に分割され、これらの区分が太陽電池の背面電極を形成する。また、少なくとも吸収体層は、第二のパターニングライン(P2ライン)によって、互いに完全に分離した複数の区分に分割され、これらの区分が太陽電池の吸収体を形成し、かつ少なくとも前面電極層は、第三のパターニングライン(P3ライン)によって、互いに完全に分離した複数の区分に分割され、これらの区分が太陽電池の前面電極を形成する。隣り合う太陽電池は、第二のパターニングラインにおける導電性材料を介して直列接続で互いに電気的に接続されており、ここで、一つの太陽電池の前面電極は、隣り合う太陽電池の背面電極に電気的に接続されており、典型的には、ただし強制的にではないが、この背面電極と直接物理的に接触している。各パターニングゾーンは、3つのパターニングラインP1-P2-P3の直接的な連続をこの順番でそれぞれ有している。各パターニングゾーンは、光学的に不活性な領域である。
【0015】
用語の一般的使用を踏まえて、「太陽電池」との用語は、前面電極、光起電活性の吸収体、及び背面電極を有し、かつ互いに直接隣り合う2つのパターニングゾーンで画定される層構造の領域を意味する。これは、類推によってモジュールの縁部領域にもあてはまり、ここでは、パターニングゾーンの代わりに、太陽電池の直列接続と電気的に接触するための接続区分が存在し、それによって、パターニングゾーンと直接隣接する接続区分との間に位置する前面電極、吸収体、及び背面電極を有するこの層領域によって太陽電池を定義するようになっている。太陽電池はそれぞれ、積層体の形態で互いの上に重ねて配置されている背面電極、吸収体、及び前面電極を有しており、かつ光を電流に光起電的に変換することができる。
【0016】
本発明によるソーラーモジュールは、光学活性な電池領域及び光学不活性なパターニングゾーンを有する太陽電池を含む内側領域と、この内側領域を取り囲む光学不活性な縁領域とを有する。縁領域では、層構造を除去するか又は堆積しないかのいずれかである。加えて、通常、縁領域には縁シールが配置されており、かつ太陽電池の電気的接触のための金属バスバーが配置されている。
【0017】
本発明によるソーラーモジュールは、いずれの場合にも、光入射側又は前面の透明なカバー、特にプレート状の剛性カバー、好ましくは剛性ガラスプレートを含む。前面カバーは、剛性プレートの形態で、湾曲がなく、平坦(平面)である。可撓性カバーの形態では、平面形態で提供することができる。前面カバーは、ソーラーモジュール、外部環境に面した外面と、太陽電池に面した内面とを有する。
【0018】
本発明に関して、「透明性」又は「透明な」という用語は、少なくとも85%、特に少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に100%の可視光透過率を指す。典型的には、可視光は、380nm~780nmの波長範囲であり、「不透明性」又は「不透明な」という用語は、5%未満、特に0%の可視光透過率を指す。この百分率のデータは、外部環境から前面カバーに当たる光の強度に対する、前面カバーのモジュール内部側で測定された光の強度を指す。カバーの透明度は測定配置を用いて簡単な方法で決定することができ、例えば、白色光源(可視光のための光源)を前面カバーの一方の側に配置し、かつ可視光のための検出器を前面カバーの他方の側に配置する。
【0019】
本発明によるソーラーモジュールは、入射光を吸収し、かつ電流(光電流)を発生させることができる光学的に活性なゾーン(セル領域)と、入射光を吸収することも、電子(光電子)を発生させることもできない光学的に不活性なゾーンとを含む。薄膜太陽電池の場合には、特に、ソーラーモジュールの縁領域が光学的に不活性であるだけでなく、太陽電池の一体型の直列接続のためのパターニングゾーンも光学的に不活性である。シリコンウエハーモジュールの場合は、特に、ウエハー間の領域が光学的に不活性である。
【0020】
本発明によるソーラーモジュールは、互いに異なる少なくとも2つの色を有する。太陽電池の光学活性ゾーン(セル領域)は、典型的には、実質的に同じ色を有し、これは、色座標L*
1、a*
1、b*
1を有する第一の色F1である。色座標の添え字「1」は、第一の色F1を示す。光学不活性ゾーンは、第1の色F1とは異なり、かつ色座標L*
2、a*
2、b*
2を有する、少なくとも一つの第二の色F2を有する。光学不活性ゾーンは、特に、互いに異なる複数の色を有することができ、この複数の色は、それぞれ、第1の色F1とは異なっている。色座標の添え字「2」は、第二の色F2を示す。
【0021】
ここで、及び以下で使用するように、色についての色座標は、当業者にそれ自体既知の(CIE)L*a*b*色空間の色を指し、ここでは、全ての知覚可能な色が正確に定義されている。色空間は、欧州規格EN ISO 11664-4「色度測定-第4部:CIE 1976 L*a*b* 色空間」に規定されている。ここでは、この規格についてその全体を参照する。この色空間では、各色は、3つのデカルト座標L*、a*、b*を有する色空間によって定義される。緑と赤は、a*軸上で互いに反対側にあり;b*軸は青と黄の間をはしっており;L*軸は、色の明るさ(輝度)を表す。
【0022】
光学活性ゾーンの第一の色F1のデータ及び光学不活性ゾーンの少なくとも一つの第二の色F2のデータは、それぞれ、外部環境側からの観測、すなわち、光が入る側(前面)の透明なカバーを通じた視野における観測を指す。したがって、色データは、光の入る側のカバーの外面に存在するそれぞれの色を指す。色についての色度測定又は色座標の決定は、市販の比色計(分光光度計)によって簡単な方法で行うことができ、ここで、1つの同じ機器を色測定に使用する。この目的のために、比色計を光入射側のカバーの外面に向け、特に、この外面上に配置する。一般的な比色計は、標準化された色測定を可能にし、その構造及び公差は、一般的に国際標準に従うものであり、国際標準は、例えば、DIN 5033、ISO/CIE 10527、ISO 7724、およびASTM E1347によって定義されている。例えば、色測定に関して、規格DIN 5033の全体を参照する。比色計は、光源として、例えば、キセノンフラッシュランプ、タングステンハロゲンランプ、又は一つ若しくは複数のLEDを有し、これによって、物体の外面に生成した光(例えば、白色光)を当て、かつソーラーモジュールから受け取った光を測定する。導入部で説明したように、比色計で測定した物体の色は、反射光及び再放射光に起因するものである。
【0023】
本発明によるソーラーモジュールでは、前面カバーは、その外面及び/又は内面上に少なくとも一つの第一のドットグリッドを有し、これは、(前面カバーの垂直視野において)(完全に)少なくとも光学活性ゾーンを覆っている。カバーの観察のために、光学活性ゾーンは、(平面の)前面カバーの面に(直角に)投影することができる。太陽電池又はソーラーモジュールの内側領域の光学活性ゾーンを、単一の第一のドットグリッドによって(完全に)覆うことができ、ここで、第一のドットグリッドは、特に、光学活性ゾーン間の光学不活性ゾーン(薄膜ソーラーモジュールの場合にはパターニングゾーン、又はシリコンウエハーモジュールの場合にはウエハー間の領域)にわたって延在することもできる。また、各光学活性ゾーンを、別個の第一のドットグリッドによって(完全に)覆うことも可能である。この場合、ソーラーモジュールは、複数の第一のドットグリッドを有する。本発明の一実施形態では、それぞれの第一のドットグリッドは、一つの光学活性ゾーンを正確に覆い、換言すれば、第一のドットグリッドの形状及び寸法は、光学活性ゾーンのものと同一である。ソーラーモジュールの内側領域を覆う単一の第一のドットグリッドが一つだけ設けられている場合には、この第一のドットグリッドの形状及び寸法は、ソーラーモジュールの内側領域の形状及び寸法に相当することが可能である。
【0024】
少なくとも一つの第一のドットグリッド、又は第一のドットグリッドのそれぞれは、多数(複数)の不透明な着色ドットを有しており、この着色ドットは、それぞれ、光学活性ゾーンの第一の色F1と異なり、かつ色座標L*
3、a*
3、b*
3を有する、第三の色F3を有している。
【0025】
本発明によるソーラーモジュールでは、光入射側のカバーは、その外面及び/又は内面上に、少なくとも一つの第二のドットグリッドを有し、これは、(完全に)少なくとも一つの光学不活性ゾーンを覆っている。例えば、ソーラーモジュールは、第二のドットグリッドを有し、この第二のドットグリッドは、ソーラーモジュールの光学不活性ゾーンを(完全に)覆っている。本発明の一実施形態では、第二のドットグリッドは、ソーラーモジュールの光学不活性ゾーンを正確に覆っており、換言すれば、第二のドットグリッドの形状及び寸法は、縁領域のものと同一である。加えて、又は代替的に、ソーラーモジュールは、複数の第二のドットグリッドを有することができ、ここで、太陽電池間の各々の光学的に不活性な中間領域(シリコンウエハーモジュールの場合、ウエハー間のパターニングゾーン又はパターン形成領域)は、それぞれ、別個の第二のドットグリッドによって(完全に)覆われている。本発明の一実施形態では、第二のドットグリッドのそれぞれは、ソーラーモジュールの光学的に不活性な中間領域に正確に合致するように配置されており、換言すれば、第二のドットグリッドの形状及び寸法は、光学的に不活性な中間領域の形状及び寸法と同一である。薄膜ソーラーモジュールの場合には、その他の光学的に不活性な領域は、コンタクトテープ又は縁のコーティング除去ゾーン若しくは縁シールである。
【0026】
少なくとも一つの第二のドットグリッド又は第二のドットグリッドのそれぞれは、多数(複数)の不透明な着色ドットを有しており、この着色ドットはそれぞれ、第二の色F2とは異なり、かつ色座標L*
4、a*
4、b*
4を有する、第四の色F4を有している。
【0027】
本発明に関して、「ドットグリッド」との用語は、多数の不透明な着色ドットの配置を指す。互いに直接隣り合うドットは、それらの間に空間を有する。ドットグリッドにおける着色ドットの配置は、好ましくは均一であり、言い換えれば、互いに直接隣り合う着色ドットは、それらの間に等しい距離を有する。直接隣り合う着色ドット間の距離は、ゼロではないことができ、この場合に、ドットグリッドは、不透明な着色ドット間に(カバーの)透明な場所を含むこともできる。不透明な着色ドットの間の透明な場所では、透明なカバーを通じてその下の構造が識別可能であり、言い換えれば、少なくとも一つの第一のドットグリッドの領域において、光学活性ゾーンだけでなく光学不活性ゾーンも識別可能であり、かつ少なくとも一つの第二のドットグリッドの領域において、光学不活性ゾーンが識別可能である。これは、カバーを半透明にする。ここで、「ドット」という用語は、ドットグリッドの単一の不透明な着色要素について選択されるものであるが、着色ドットの形状は、円形に限定されない。その代わりに、基本的に、ドットグリッド中の不透明な着色ドットは、任意の形状を有することができ、例えば、円板形状、正方形、又は長方形であり得る。本発明に関して、「ドットグリッド」との用語は、直接隣り合う不透明な着色ドット間の距離がゼロである場合、言い換えれば、色の層が表面全体にわたっている場合を含み、ここでは、不透明な着色ドットはもはや個別に異なるものと見なすことができない。例えば、光の入射側のカバーの表面上にブラッシングすることによって、全面着色層を適用することができる。
【0028】
少なくとも一つの第一のドットグリッド及び/又は少なくとも一つの第二のドットグリッドは、従来の適用技術、例えばスクリーン印刷又はデジタル印刷を用いて、光入射側のカバーの外面及び/又は内面上に適用することができる。表面上のドットグリッドの適用は、当業者に周知であるので、ここで詳細に議論する必要がない。好ましくは、少なくとも一つの第一のドットグリッド及び/又は少なくとも一つの第二のドットグリッドは、光入射側のカバーの内面上に適用され、それによって、外部の影響、例えば、耐候性関連の機械的除去、粉塵、及び汚れから保護される。
【0029】
少なくとも一つの光学活性ゾーンを被覆する少なくとも一つの第一のドットグリッドにおいて、直接隣り合う着色ドット間の距離は、常にゼロではなく、それによって、第一のドットグリッドの領域に、カバーの不透明領域(第一のドットグリッドの不透明な着色ドット)と、光学的に透明な領域(ドットグリッドの不透明な着色ドット間の中間領域)とが存在するようになっている。したがって、第一のドットグリッドにおいて、光学活性ゾーンの第一の色F1と、第一のドットグリッドの不透明なドットの第三の色F3とが加えられ(結合され)、それによって、第一のドットグリッドの領域での付加は、第一の色F1と第三の色F3との付加によって、色座標L*
1’、a*
1’、b*
1’を有する付加色(結合色)F1’がもたらされるようになっている。ここで、2つの色F1とF3の付加(結合)は、第一のドットグリッドの一つの領域で観測され、これは、少なくとも0.2cm2、特に少なくとも0.5cm2、特に少なくとも1cm2の大きさを有する。人間の目又は比色計では、観察者とモジュールとの間の典型的な適用距離が、1m又は数メートルでありつつ、2つの色F1とF3とを混合した付加色の結果として、通常は平均付加色F1’に相当する色印象が取得される。本発明に関して、色の「付加(addition)」または「結合(combination)」という用語は、少なくとも0.2cm2のモジュールの外面の色を観察したときの、人間の目又は比色計における全体的な印象を指す。
【0030】
本発明によるソーラーモジュールの一実施形態によれば、少なくとも一つの第二のドットグリッドにおいて、直接隣り合うドット間の距離は、ゼロではなく、それによって、第二のドットグリッドの領域内に、前面カバーの不透明領域(第二のドットグリッドの不透明な着色ドット)と、光学的に透明な領域(第二のドットグリッドの不透明な着色ドット間の中間領域)とが存在するようになっている。したがって、第二のドットグリッドにおいて、観察者とモジュールとの間の典型的な適用距離が、1m又は数メートルでありつつ、第二のドットグリッドの光学不活性ゾーンの少なくとも一つの第二の色F2と、第二のドットグリッドの不透明な着色ドットの第四の色F4とが、加えられ(結合され)、それによって、第2のドットグリッドの領域において、第2の色F2と第4の色F4の付加により、色座標L*
2’、a*
2’、b*
2’を有する付加色(結合色)F2’がもたらされるようになっている。また、第二のドットグリッドについて、色F2とF4との付加(結合)は、例えば、少なくとも0.2cm2、特に少なくとも0.5cm2、特に少なくとも1cm2の大きさを有する第二のドットグリッドの領域において観測される。人間の目又は比色計では、観察者とモジュールとの間の典型的な適用距離が、1m又は数メートルでありつつ、2つの色F2とF4とを混合した付加色の結果として、通常は平均付加色F2’に相当する色印象が取得される。
【0031】
光学活性ゾーンの第一の色F1及び光学不活性ゾーンの少なくとも一つの第二の色F2と同様に、付加色F1’及びF2’は、それぞれ、外部環境からのソーラーモジュールの前面の観測を指す。少なくとも一つの第一のドットグリッド及び少なくとも一つの第二のドットグリッドを前面カバーの内面上に適用する場合、第三の色F3及び第四の色F4のデータは、それぞれ、前面カバーを通じた視野の色、すなわち、前面カバーの外面に存在する色を指す。これに対応して、付加色F1’及びF2’は、それぞれ、前面カバーの外面に存在する色を指す。色F1とF2についてすでに述べたように、付加色F1’とF2’の色座標は、市販の比色計(分光光度計)によって決定することができる。この目的のために、比色計を光入射側のカバーの外面に向け、特に、光入射側の基材の外面上に配置する。
【0032】
ここでは、少なくとも一つの第一のドットグリッドの第三の色F
3、及び少なくとも一つの第二のドットグリッドの第四の色F
4を、付加色F
1’とF
2’の色座標間の差が、以下の式によって示され、ΔE
1,2≦5という条件を満たすように選択することが必要である:
【数1】
【0033】
ΔE1,2に関する上記式は、付加色F1’とF2’との色差を示し、ここで、色差が、特定の最大数を超えてはならないという条件ΔE1,2≦5によって決定される。
【0034】
発明者らが実証することができたように、この条件ΔE1,2≦5によって、光学活性ゾーン及び光学不活性ゾーンの領域における色印象、言い換えれば、ソーラーモジュール全体にわたる領域の色印象が、比較的低いコントラストを有し、したがって、良好な色の均質性を有することを有利に達成することができる。色差をさらにより小さくすることが特に有利であり、好ましくは、下記が当てはまる:ΔE1,2≦2、特にΔE1,2≦1、及び特にΔE1,2≦0.5。基本的に、色差が小さければ小さいほど、ソーラーモジュールの色印象の均質性は、ますます良好になる。
【0035】
したがって、本発明によるソーラーモジュールは、特に有利には、モジュール全体にわたってコントラストが低く、かつ2つの付加色F1’及びF2’に起因して非常に均質な色印象を有しており、ここで、光学活性ゾーン及び光学不活性ゾーンの付加色F1’及びF2’は、互いにわずかに異なるだけである。特に有利には、ソーラーモジュールの色印象は、方向依存性を全く示さないか、又はごくわずかにしか示さない。ドットグリッドは、技術的に簡単でありかつ経済的な様式で、例えば、スクリーン印刷又はデジタル印刷によって製造することができる。この目的のために有利に使用されるのは、ガラスでできた前面カバーの熱処理中に焼成されるセラミック(ガラス)色である。
【0036】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも一つの第一のドットグリッド及び/又は少なくとも一つの第二のドットグリッドの不透明な着色ドットは、それぞれ、5mm未満、特に3mm未満、特に1mm未満の大きさを有する。したがって、モジュールから観測者が数メートルだけさらに離れても、依然として均一な単色カラー像をもたらすことを有利に達成することができる。
【0037】
本発明の有利な実施形態によれば、少なくとも一つの第一のドットグリッド及び/又は少なくとも一つの第二のドットグリッドは、それぞれ、少なくとも80dpi(ドット/インチ、1インチ当たりのドット数)の解像度を有する。この基準の結果、ソーラーモジュールの高い色均質性を達成することができる。少なくとも一つの第一のドットグリッド及び/又は少なくとも一つの第二のドットグリッドの不透明な着色ドットが、それぞれ、0.3mm未満、特に0.2mm未満、特に0.1mm未満の最大寸法を有することが特に有利である。その結果、ドットグリッドの個々の着色ドットの最大寸法は、ソーラーモジュールの表面(すなわち、光の入射側カバーの外面)から1~2mの距離における人間の目の解像度よりも小さくなる。その結果、ソーラーモジュールの特に良好な色の均質性が達成され、非常に高い審美的要件を満たすことができる。
【0038】
本発明の有利な実施形態によれば、光入射側のカバーはサテンガラス(サテン加工ガラス)でできている。これらのガラスは、片面又は両面をエッチング又はサンドブラストすることによって加工し、それによって、高い割合の拡散反射及び拡散透過が存在するようになっている。サテンガラスの使用によって、ドットグリッドが部分的にぼやけ、それによって、比較的大きなドットであっても、均質な色印象が作り出されるようになっている。拡散透過率は、ヘイズメーターによって測定することができる。ASTM D1003によれば、ヘイズとは、全透過率(又は任意に反射)に対する拡散部分の割合である。50%を超え、特に80%を超え、特に90%を超える拡散光-ヘイズを有するサテンガラスは、サテン加工した前面ペインの後側のドットグリッドから均質な色印象を得るために特に適している。
【0039】
導入部ですでに述べたように、本発明によるソーラーモジュールにおいては、対立する課題を解決する必要があり、これによれば、一方では、ソーラーモジュール全体にわたって均質な色印象を達成すべきであるという課題があり、他方では、光の入射側の基材が、光学活性ゾーンに、実際に使用可能なレベルの効率で光電エネルギー変換を可能にするために十分な光学的透明性を有していなければならないという課題がある。このため、少なくとも一つの第一のドットグリッドの直接隣り合う不透明な着色ドット間の距離は、常にゼロではない。本発明の特に有利な実施形態によれば、少なくとも一つの第一のドットグリッドは、光学活性ゾーンの被覆度が50%未満、好ましくは25%未満、さらにより好ましくは10%未満であるようにして実施される。その結果、一方では均質な色効果が得られ、かつ他方では、ソーラーモジュールの高いレベルの効率又は最小限の効率損失を保証することができる。
【0040】
「被覆度」という表現は、光学活性ゾーンの面積に対する、少なくとも一つの第一のドットグリッドの不透明な着色ドットの占める割合を表す。被覆度の計算のために、不透明なドットによる光学活性ゾーンの被覆を、光入射側の基材を通じた垂直視野で考慮することができる。また、光学活性ゾーンを、光入射側のカバーの平面に、特に少なくとも一つの第一のドットグリッドの平面(基材表面に垂直)に、投影することも考えられる。
【0041】
光学不活性ゾーンの領域では、光入射側のカバーが高い光透過性を有する必要はない。代わりに、少なくとも一つの光学不活性ゾーンの被覆度、特にすべての光学不活性ゾーンの被覆度が、少なくとも95%、特に少なくとも97%、特に少なくとも99%であるようにして、少なくとも一つの第二のドットグリッドを実施することが有利である。したがって、典型的には非常に不均質であり、色に関して互いに異なる光学不活性ゾーンについて、有利なことに、光学不活性ゾーンの均質な色印象を伴う実質的に不透明なカバーを達成することができる。これは、構造及び色に関して非常に不均一なソーラーモジュールの縁領域に対して、特に当てはまる。したがって、第二の付加色F2’における光学不活性ゾーンの色の割り当ては、比較的低いか又はゼロであり、その結果、全体として、モジュール全体にわたって非常に高い色の均質性を達成することができる。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも一つの第二のドットグリッドは、少なくとも一つの光学不活性ゾーン、特にすべての光学不活性ゾーンの被覆度が100%であるようにして実施される。このことは、第二のドットグリッドが、不透明なドット間に距離を置かない全面のカラーコートであることを意味する。このため、第二のドットグリッドの個々の着色ドットはもはや識別できない。この場合に、背景色の添加ができなくなるので、色座標L*
2’、a*
2’、b*
2’を有する付加色F2’は、色座標L*
4、a*
4、b*
4を有する第四の色F4に相当する。この手段は、モジュール全体にわたって、特に、構造と色の点で不均一なソーラーモジュールの縁領域において、非常に良好な色の均質性を達成できるという利点を有する。
【0043】
本発明の代替の実施形態によれば、少なくとも一つの光学不活性ゾーンの被覆度、特にすべての光学不活性ゾーンの被覆度が、95%未満になるようにして、少なくとも一つの第二のドットグリッドを実施することも可能である。この場合には、少なくとも一つの第二の付加色F2’を第一の付加色F1’に一致させることにより、ソーラーモジュールの良好な色均質性を達成することができる。この実施形態は、シリコンウエハーを有するモジュールにおいて有利であり得る。ほとんどの場合、ウエハー間の領域には白色の裏面フィルムがある。これは、低い被覆度で、第二のドットグリッドで覆うことができる。したがって、内部反射及び全反射を通じて電池に到達する光を、依然としてこの領域において連結させることができる。
【0044】
光学活性ゾーンの被覆度と同様に、「被覆度」という表現は、光学不活性ゾーンの面積に対する、少なくとも一つの第二のドットグリッドの不透明な着色ドットの占める割合を表す。被覆度の計算のために、不透明なドットによる光学不活性ゾーンの被覆を、光入射側のカバーを通じた垂直視野で考慮することができる。また、光学不活性ゾーンを、光入射側のカバーの平面に、特に少なくとも一つの第二のドットグリッドの平面(基材表面に垂直)に、投影することも可能である。
【0045】
本発明はさらに、上述した本発明によるソーラーモジュールの製造方法に関する。ソーラーモジュールの前面カバーを提供し、かつこの前面カバーの外面及び/又は内面上に下記を適用する:
- 少なくとも光学活性ゾーンを覆う少なくとも一つの第一のドットグリッド、
ここで、第一のドットグリッドは、第一の色F
1とは異なり、かつ色座標L
*
3、a
*
3、b
*
3を有する第三の色F
3を有する不透明な着色ドットを多数有しており、
第一の色F
1と第三の色F
3とを加えると、色座標L
*
1’、a
*
1’、b
*
1’を有する付加色F
1’を生じる、
- 少なくとも一つの光学不活性ゾーンを覆う少なくとも一つの第二のドットグリッド、
ここで、第二のドットグリッドは、第二の色F
2とは異なり、かつ色座標L
*
4、a
*
4、b
*
4を有する第四の色F
4を有する不透明な着色ドットを多数有しており、
第二の色F
2と第四の色F
4とを加えると、色座標L
*
2’、a
*
2’、b
*
2’を有する付加色F
2’を生じる、
ここで、第三の色F
3及び第四の色F
4を、下記のΔE
1,2について、条件ΔE
1,2≦5を満たすように選択する:
【数2】
【0046】
第一のドットグリッド及び/又は第二のドットグリッドは、例えば、スクリーン印刷又はデジタル印刷によって、前面基材上に適用される。少なくとも一つの第二のドットグリッドの全面カラーコーティングの場合、ドットグリッドは、例えば、前面基材の外面及び/又は内面上に広げることも可能である。
【0047】
本発明はさらに、建物外面の一部としての、特に、ウィンドウ、ファサード、又はルーフの構成要素としての、本発明によるソーラーモジュールの使用に関する。
【0048】
本発明のさまざまな実施形態を、個別に又は任意の組合せで実現することができる。特に、以上及び以下で言及する特徴は、指示された組合せでのみならず、他の組合せで又は孤立した形態でも、本発明の範囲から逸脱することなく用いることができる。
【0049】
ここで、本発明について、例示的実施形態を用い、添付図を参照しながら詳細に説明する。これらの図は、簡略化され原寸に比例した縮尺でなく示されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】薄膜ソーラーモジュールの形態で実施された本発明によるソーラーモジュールの一実施形態における、太陽電池の一体化された直列接続の概略的な断面図である。
【
図2】上から見たときの
図1の薄膜ソーラーモジュールの光入射側の面の概略図である。
【
図3】本発明による方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、全体として番号1として言及する本発明の薄膜ソーラーモジュールを、断面図を使って概略的に示したものである(モジュール表面に垂直な断面)。薄膜ソーラーモジュール1は、一体化された形態で互いに直列接続した複数の太陽電池10を含み、ここでは大幅に簡略化した形で2つの太陽電池16のみが描かれている。むろん、一般的に、薄膜ソーラーモジュール1では、多数の太陽電池16(例えば、おおよそ100~150)が直列接続している。
【0052】
薄膜ソーラーモジュール1は、サブストレート構造において複合ペイン構造を有している。このソーラーモジュールは、薄膜でできた層構造3が基板上に適用されている背面基板2を含み、ここで、この層構造3は基板2の光の入射側の面に配置されている。ここでは、背面基板2は、例えば、比較的高い光透過性を有する剛性平面ガラスプレートとして実施され、実施するプロセス工程に対して所望の安定性及び不活性挙動を有する他の電気絶縁性の材料も同様に使用可能である。
【0053】
背面基板2の光入射側の面に配置された層構造3は、例えばモリブデン(Mo)などの光不透過性金属でできており、かつ蒸着またはマグネトロン強化カソードスパッタリング(スパッタリング)によって背面基板2の上に適用された不透明な背面電極層5を含む。背面電極層5は、例えば、300nmから600nmの範囲の層厚を有する。
【0054】
割り当てられる日光を最大限に吸収することのできるバンドギャップを有する金属イオンをドープした半導体でできた光起電活性の吸収体層6を、背面電極層5の上に適用する。吸収体層6は、例えばp-導電型黄銅鉱化合物半導体でできており、例えばCu(In/Ga)(S/Se)2の化合物で、特にナトリウム(Na)-ドープ型Cu(In/Ga)(S/Se)2でできている。上記式において、インジウム(In)及びガリウム(Ga)並びに硫黄(S)及びセレン(Se)は、代替的に又は組み合せて存在することができる。吸収体層6は、例えば1~5μm、特に、おおよそ2μmの層厚を有する。吸収体層6の製造のためには、例えばスパッタリングによって、様々な材料の層を一般的には適用し、その後、これらの層を、任意にS及び/又はSeを含有する雰囲気中で、炉内で加熱することによって、熱変換させて化合物半導体を形成する(RTP=急速加熱処理)。化合物半導体のこの製造方法は、当業者に周知のものであり、したがって、ここで詳細に説明する必要はない。
【0055】
バッファー層7を吸収体層6の上に堆積し、このバッファー層は、ここでは、例えば、
図1には詳細に描かれていない硫化カドミウム(CdS)の単一層及びイントリンシックな(本来の)酸化亜鉛(i-ZnO)の単一層から構成されている。
【0056】
前面電極層8を、例えばスパッタリングによってバッファー層7の上に適用する。前面電極層8は、可視スペクトル範囲内の放射線に対して透過性であり(「ウィンドウ電極」)、それによって、入射する太陽光4(
図1に4つの平行な矢印の記号で示されている)がほんのわずかしか弱められないようになっている。前面電極層8は、例えば、ドープした金属酸化物、例えばn-導電型アルミニウム(Al)-ドープ酸化亜鉛(ZnO)をベースにしている。このような前面電極層8は、一般にTCO層(TCO=透明導電性酸化物)と呼ばれる。前面電極層8の層厚は、例えば、おおよそ500nmである。前面電極層8は、バッファー層7及び吸収体層6と一緒になって、ヘテロ接合(言い換えれば、相反する導電型の層の連続)を形成する。バッファー層7は、吸収体層6と前面電極層8との間の電子適合性をもたらすことができる。
【0057】
環境の影響に対する保護のために、層構造3を密封する役割を果たす(プラスチックの)接着剤層9を前面電極層8の上に適用する。太陽光に対して透明な前面の又は光入射側のカバー10を接着剤層9で接着し、このカバーは、例えば、鉄含有量の少ない特別な白色ガラスでできた剛性(平面)ガラスプレートの形態で実施される。前面カバー10は、シーリングと層構造3の機械的保護のために使用される。前面カバー10は、2つの対向する表面、すなわち、太陽電池16に面した内面12と、太陽電池16とは反対側に面した外面11とを有し、この外面は、同時にモジュール表面である。薄膜ソーラーモジュール1は、外面11を介して太陽光4を吸収し、それによって、2つの電圧接続部(+、-)に電圧を発生させることができるようになっている。結果として生じる電流路を、直列に配置した矢印によって
図1に示す。前面カバー10と背面基板2とは、接着剤層9によって互いに固定して結合しており(「積層しており」)、ここで、接着剤層9は、例えば、加熱によって可塑的に変形可能であり、かつ冷却の際に、カバー10と基板2とを互いに固定して結合する熱可塑性接着剤層として実施される。ここで、接着剤層9は、例えばPVB(ポリビニルブチラール)からなる。カバー10及び基板2は、接着剤層9に組み込まれた太陽電池16とともに積層複合体を形成する。
【0058】
太陽電池16の実施及び直列接続のために、層構造3を、例えば、レーザースクライビング及び/又は機械的アブレーションのような適切なパターニング技術を用いてパターン形成した。典型的には、この目的のために、それぞれ、3つのパターニングラインP1-P2-P3の直接的な連続を層構造3に導入する。ここで、少なくとも背面電極層5を第一のパターニングラインP1によって分割し、太陽電池16の背面電極5-1、5-2を生成する。少なくとも吸収体層6を第2のパターニングラインP2によって分割し、太陽電池16の吸収体6-1、6-2を生成する。少なくとも前面電極層8を第三のパターニングラインP3によって分割し、太陽電池16の前面電極8-1、8-2を生成する。
【0059】
一つの太陽電池16の前面電極8-1が、第二の構造化ラインP2を介して隣接する太陽電池16の背面電極5-2に電気的に接続し、ここで、前面電極8-1は、例えば、背面電極5-2に直接接触する。図示した例示的な実施形態では、第一のパターニングラインP1のトレンチは、吸収体層6の材料で充填されている。第二のパターニングラインP2のトレンチは、前面電極層8の材料で充填されており、第三のパターニングラインP3のトレンチは、接着剤層9で充填されている。第一、第二、及び第三のパターニングラインP1-P2-P3のそれぞれの直接的な連続がパターニングゾーン17を形成している。
図1は、一例として、単一のパターニングゾーン17を一つだけを示している。このゾーンによって、2つの直接隣接する太陽電池16の直列接続が画定され、ここで、薄膜ソーラーモジュール1の太陽電池16をパターン形成し、かつ直列接続するために、多数のこのようなパターニングゾーン17が設けられている。
【0060】
薄膜ソーラーモジュール1の光学活性ゾーンは、
図1において参照番号「14」によって特定されている。これらの領域は、それぞれ、背面電極及び吸収体並びに前面電極の積層体の形態で互いに上下に重ねて配置され、かつ太陽光4を電流に光電変換することができる太陽電池16の領域である。例えば、
図1の左側に描かれた太陽電池16の光学活性ゾーン14は、背面電極5-1、吸収体6-1、及び前面電極8-1を含む。
【0061】
薄膜ソーラーモジュール1は、太陽電池16及び縁領域13を有する内側領域18を含む。内側領域18内の太陽電池16は、光学活性ゾーン14及び光学的に不活性なパターニングゾーン17を含む。光学的に不活性な領域13は、内側領域18を(完全に)取り囲んでいる。縁領域13では、層構造3が除去されている。縁領域13は、特に、バスバー(図示せず)によって、直列接続した太陽電池16の電気的接触の役割を果たす。
図1において、薄膜ソーラーモジュールの光学不活性ゾーン(縁領域13、パターニングゾーン17)は、参照番号「15」によって特定されている。
【0062】
ここで、
図1の薄膜太陽電池モジュール1の光入射側の面の例示的な実施形態を概略的に示す
図2を参照する。
図2によれば、前面カバー10の内面12には、第一のドットグリッド19及び第二のドットグリッド20が適用されている。前面カバー10を通じて直角に見て、すなわち、外面11に垂直な方向に対して見て、第一のドットグリッド19は、薄膜ソーラーモジュール1の内側領域18を完全に覆っており、つまり、第一のドットグリッド19が内側領域18の上にのみ又は内側領域18にわたって配置されている。第一のドットグリッド19の形状及び寸法は、内側領域18の形状及び寸法に対応している。前面カバー10を通じて直角に見て、すなわち、外面11に垂直な方向に対して見て、第二のドットグリッド20は、薄膜ソーラーモジュール1の縁領域13を完全に覆っており、ここで、第二のドットグリッド20は、縁領域13の上にのみ配置されている。第二ドットグリッド20の形状及び寸法は、縁領域13の形状及び寸法に対応している。
図2に示すように、第一のドットグリッド19及び第二のドットグリッド20は、それぞれ、前面透明カバー10を通じて外部環境から識別可能である。
【0063】
第一のドットグリッド19は、等間隔の格子縞模様の形態で配置された多数の不透明な着色ドット21から構成されている。不透明な着色ドット21の間に位置しているのは、前面カバー10の透明な場所22であり、それによって、この前面カバーを通じて光学活性ゾーン14が識別可能であるようになっている。第一のドットグリッド19は、少なくとも80dpiの解像度を有しており、ここで、個々の着色ドット21は、それぞれ、0.3mm未満の最大寸法を有する。第一のドットグリッド19の着色ドット21による光学活性ゾーン14の被覆度は50%(着色ドット21が占有する面積)であり、言い換えれば、前面カバー10を通じた垂直視野、又は内面12上への光学活性ゾーン14の(垂直な)投影で、第一のドットグリッド19の不透明な着色ドット21が、光学活性ゾーン14の面積の50%を占めている。光学活性ゾーン14の残りの領域にあるのは、透明な場所22である。これに対応して、内側領域18における前面カバー10の光学的(半)透明度は50%である。その結果、前面カバー10の光透過性の低下による効率の損失を最小限に抑えることができる。
【0064】
第二のドットグリッド20は、同様に多数の不透明な着色ドット21から構成されており、ここで、光学的に不活性な縁領域13の被覆度は、少なくとも95%であり、言い換えれば、前面カバー10を通じた垂直視野、又は内面12上への縁領域13の(垂直な)投影で、第二のドットグリッド20の着色ドット21は、縁領域13の面積の少なくとも95%を占めている。着色ドット21は、それらの間に対応して小さい距離を有しており、それによって、着色ドット21が、
図2において個々の着色ドット21としてはもはや識別できないようになっている。その代わりに、第二のドットグリッド20は、実質的に、全面カラーコーティングに相当する。その結果、縁領域13は、前面カバー10を通じてはもはや実質的に認識できなくなり、ここで、縁領域13における前面カバー10の光透過性は最大で5%になる(言い換えれば、縁領域13において不透明なカバー10となる)。
図1には、(より良い識別のために、印刷物上での層厚を大幅に拡大した状態で)2つのドットグリッド19、20が概略的に描かれている。
【0065】
図2では、薄膜ソーラーモジュール1の様々な色を、グレートーンを用いて例として示す。光学活性ゾーン14は、(製造条件のために)色座標L
*
1、a
*
1、b
*
1によって定義される第一の色F
1を有する。第一のドットグリッド19の不透明な着色ドット21は、第一のカラーF
1とは異なり、かつ色座標L
*
3、a
*
3、b
*
3を有する第三のカラーF
3を有する。第一の色F
1は透明な場所22を通じて見えるので、薄膜ソーラーモジュール1の内側領域18において、第一の色F
1と第三の色F
3とが加えられて、色座標L
*
1’、a
*
1’、b
*
1’を有する付加色F
1’がもたらされる。したがって、前面カバー10上でみたとき、言い換えれば、薄膜ソーラーモジュール1を外部環境から観察する観察者にとっては、2つの色F
1及びF
3の付加(付加色の混合)によって形成される付加色F
1’に相当する色印象が内側領域18に存在する。このように、観察者にとっては、光学活性ゾーン14の背景色と、第一のドットグリッド19の不透明な着色ドット21の色とから平均した色印象が存在する。付加色F
1’は、一般的な比色計(分光光度計)によって簡単な方法で測定することができ、このために、比色計を、例えば、前面カバー10の外面11上の測定開口部に配置する。また、例えば、外面11から1~2mの距離のところで付加色F
1’を測定することもできる。ここでは、2つの色F
1とF
3を加えて、付加色F
1’を形成するために、少なくとも0.2cm
2の大きさを有する前面カバー10の外面11の領域を考慮することが必要である。
【0066】
縁領域13において、薄膜ソーラーモジュール1は、(製造条件のために)第一の色F
1とは異なり、かつ色座標L
*
2、a
*
2、b
*
2によって定義される第二の色F
2を有する。
図2において、第二の色F
2は、実質的に全面にわたって適用されている第二のドットグリッド20を通じてもはや識別可能ではない。第二のドットグリッド20の不透明な着色ドット21は、第二の色F
2とは異なり、かつ色座標L
*
4、a
*
4、b
*
4によって定義される第四の色F
4を有する。したがって、縁領域13では、第二の色F
2と第四の色F
4が加えられ、色座標L
*
4’、a
*
4’、b
*
4’によって定義される付加色F
2’がもたらされる。縁領域13における光透過性が非常に低い結果、付加色F
2’は、第二のドットグリッド20の不透明な着色ドット21の第四の色F
4に実質的に相当する。したがって、前面カバー10上で見ると、すなわち、薄膜ソーラーモジュール1を外部環境から観察する観察者にとっては、付加色F
2’に相当する色印象、つまり、不透明な着色ドット21の第四の色F
4に実質的に相当する色印象が縁領域13に存在する。
【0067】
2つのドットグリッド19、20の製造において、第三の色F
3及び第四の色F
4を、以下の式から得られる色差について、ΔE
1,2≦5という条件を満足するようにして選択する:
【数3】
【0068】
実際には、色の選択において、第一のドットグリッド19の着色ドット21の第三の色F3とのコントラストが最小限になるようにして、第二のドットグリッド20の第四の色F4を選択することができる。通常、第二のドットグリッド20の第四の色F4は、第三の色F3よりも暗い。実際的な方法として、第二のドットグリッド20の第四の色F4の適切な被覆から始まって、できるだけ明るい第三の色F3を選択する。残余の着色を有する電池領域の場合、それらの色を色混合時に考慮すべきである。不透明な着色ドット21の解像度が比較的小さい場合は、第一のドットグリッド19の不透明な着色ドット21の第三の色F3と、第一の色F1、言い換えれば、電池領域(すなわち、光学活性ゾーン14)の背景色との間のコントラストは、大きすぎないものとすべきである。しかしながら、その結果として、必要な被覆度が増加し、したがって、効率の低下が増加することがある。より高い解像度の場合、不透明な着色ドットとより暗い電池領域との間の強いコントラストを有していても、均質な色の適合を達成することができる。
【0069】
図2の例示的な実施形態において、黒に対する50%の被覆率で、縁領域13における第二のドットグリッド20のドットのL
*値に対する、第一のドットグリッド19の明るいドットのL
*値の比率は、約1.4:1である。したがって、縁領域13の色と内側領域18の色との間のはっきりしたコントラストを回避することができる。内側領域18における不透明な着色ドット21と透明な場所22とからの(例えば、1mの距離からの)全体的な色印象は、縁領域13における光学的に不活性な領域15の色印象にできる限り近い。言い換えれば、不透明な着色ドット21(色F
3)と電池領域(色F
1)の残留反射とを混合した付加色は、色F
1’を生じ、その輝度、色調、及び彩度は、それぞれ、縁領域13における光学的に不活性な領域15にわたって、第四の色F
4の輝度、色調、及び彩度から、相対的に5%未満(好ましくは2%未満、さらに好ましくは1%未満)逸脱する。
【0070】
適切な色の選択のために、当業者は、本発明の主題ではない各種の技術及び方法を利用することができる。ここで、2つのケースについて、例示としてのみ、かつ単純化した様式でこれを説明する。色の計算のために、RGB色空間をここで使用する。CIE-L*a*b*をRGBに変換するための表又はプログラムが利用可能である。
【0071】
ケース1: 適切な処理条件下のCu(In,Ga)(S,Se)2をベースとする薄膜ソーラーモジュールでほぼ実現することができるように、活性電池領域は、実質的に黒色(RGB中のF1=(0,0,0))である。モジュールF1’の所望の色は灰色で、例えばRGB(64,64,64)である。したがって、第一のドットグリッドによる最小限の被覆のために、白色(256,256,256)を色F3として使用する必要がある。このため、第一のドットグリッドの被覆度は、25%で計算される。次に、縁被覆について、第二のドットグリッドの100%被覆率で、色F4=F2’=F1’=(64,64,64)を選択することができる。
【0072】
ケース2: 顧客がRGBカラーコード(0,50,114)を有する青色モジュールを望んでいる。活性領域は黒(RGB 0,0,0)である。金属接触帯のために、縁カバーは、可能な限り不透明であるべきであり;したがって、第二のドットグリッドについて、100%の被覆度が所望される。活性電池領域で最小限の被覆を達成するためには、第一のグリッドのドットの色F3は、最大限明るい色調を有する必要がある。しかしながら、輝度及び彩度は変化してはならない。制限は、最も明るい色座標であり、したがって、ここではRGBで青(114)になる。青色の最大値は、RGB色空間で256である。したがって、最大被覆率は、114/256=44%である。その結果、個々の点の色F3のRGBカラーコードについて、F3=(0,113,256)が得られる。
【0073】
これは、
図2の例示的な実施形態には描かれていないが、パターニングゾーン17を(完全に)覆う第二のドットグリッド20をそれぞれ提供することも同様に可能である。これにより、薄膜ソーラーモジュール1の色の均質性をさらに向上させることができる。
【0074】
次に、
図3を参照すると、本発明による方法の例示的な実施形態が示されている。この方法は、第一の工程Iを含み、ここで、外面11が外部環境に面し、かつ内面12が太陽電池16に面する状態にしながら、前面カバー10を提供する。第二の工程IIでは、太陽電池16の少なくとも光学活性ゾーン14を覆う少なくとも一つの第一のドットグリッド19を、前面カバー10の内面12及び/又は外面11に適用する。第一のドットグリッド19は、多数の不透明な着色ドット21を有し、この着色ドットは、光学活性ゾーン14の第一の色F
1とは異なり、かつ色座標L
*
3、a
*
3、b
*
3を有する第三の色F
3を有し、ここで、第一の色F
1と第三の色F
3との付加によって、色座標L
*
1’、a
*
1’、b
*
1’を有する付加色F
1’が得られる。第三の工程IIIでは、光学的に不活性な領域15を覆う少なくとも一つの第二のドットグリッド20を、光入射側のカバー10の内面12及び/又は外面11に適用する。第二のドットグリッド20は、第二の色F
2とは異なり、かつ色座標L
*
4、a
*
4、b
*
4を有する第四の色F
4を有する多数の不透明な着色ドット21を有し、ここで、第二の色F
2と第四の色F
4との付加によって、色座標L
*
2’、a
*
2’、b
*
2’を有する付加色F
2’が得られる。第三の色F
3及び第四の色F
4を、下記の色差について、ΔE
1,2≦5という条件を満足するようにして選択する:
【数4】
【0075】
第一のドットグリッド19及び第二のドットグリッド20を、例えば、スクリーン印刷法又はデジタル印刷法を用いて、前面カバー10の上に適用する。
【0076】
本発明は、光学活性ゾーンと光学不活性ゾーンとの間のくっきりしたコントラストを回避する、改善したソーラーモジュールとその製造方法を利用可能にする。有利には、このソーラーモジュールは、モジュール全体にわたって、色印象の方向依存性がほとんどないか又は全くない、非常に均質な色印象を与える。このソーラーモジュールの内側領域における少なくとも一つのドットグリッドの比較的低い被覆率は、ソーラーモジュールの効率損失を最小にすることを可能にする。
【符号の説明】
【0077】
1 薄膜ソーラーモジュール
2 背面基板
3 層構造
4 太陽光
5 背面電極層
5-1、5-2 背面電極
6 吸収体層
6-1、6-2 吸収体
7 バッファー層
8 前面電極層
8-1、8-2 前面電極
9 接着剤層
10 前面カバー
11 外面
12 内面
13 縁領域
14 光学活性ゾーン
15 光学不活性ゾーン
16 太陽電池
17 パターニングゾーン
18 内側領域
19 第一のドットグリッド
20 第二のドットグリッド
21 着色ドット
22 透明な場所