IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 泉州三安半導体科技有限公司の特許一覧

<>
  • 特許-紫外パッケージ素子 図1(a)
  • 特許-紫外パッケージ素子 図1(b)
  • 特許-紫外パッケージ素子 図2
  • 特許-紫外パッケージ素子 図3
  • 特許-紫外パッケージ素子 図4
  • 特許-紫外パッケージ素子 図5
  • 特許-紫外パッケージ素子 図6
  • 特許-紫外パッケージ素子 図7
  • 特許-紫外パッケージ素子 図8
  • 特許-紫外パッケージ素子 図9
  • 特許-紫外パッケージ素子 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】紫外パッケージ素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/56 20100101AFI20221026BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20221026BHJP
【FI】
H01L33/56
H01L33/58
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020553647
(86)(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2018116256
(87)【国際公開番号】W WO2020102948
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520374807
【氏名又は名称】泉州三安半導体科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時 軍朋
(72)【発明者】
【氏名】林 秋霞
(72)【発明者】
【氏名】黄 永特
(72)【発明者】
【氏名】余 長治
【審査官】淺見 一喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-318448(JP,A)
【文献】国際公開第2014/178288(WO,A1)
【文献】特開2007-311707(JP,A)
【文献】中国実用新案第204668355(CN,U)
【文献】登録実用新案第3130478(JP,U)
【文献】特開2006-310505(JP,A)
【文献】特開2004-346233(JP,A)
【文献】特開2002-240144(JP,A)
【文献】特開2011-146523(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108134007(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームと、光学素子と、LEDチップとを含み、前記ベースフレームの真ん中に凹みが形成され、前記凹み内の底部に前記LEDチップが固定されており、前記光学素子の下方の凹み部分に含フッ素樹脂を充填すると共に、前記光学素子の上の孔構造を介して前記光学素子の一部の上表面を覆うまで含フッ素樹脂を充填し、
前記孔構造の直径は少なくとも20μm、多くとも1mmであり、前記孔構造の内側が粗面化処理され、少なくとも≧0.2μmの算術平均粗さを有することを特徴とする紫外パッケージ素子。
【請求項2】
前記LEDチップはその発光ピーク値の波長が290nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項3】
前記凹み内側壁に沿って互いに隔てると共に同じ高さ又は環状の複数の階段部が形成され、前記光学素子のエッジが前記階段部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項4】
前記光学素子は前記階段部の上に設けられ、前記階段部と前記光学素子の間に一層又は複数層の接着層が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項5】
前記接着層の接着力は前記含フッ素樹脂よりも高いことを特徴とする請求項4に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項6】
前記光学素子の一部のエッジは前記階段部の上に設けられ、且つ一部のエッジは前記階段部の上に設けられておらず、前記階段部の上に設けられていない一部のエッジと前記凹みの内側壁との間に形成されたギャップを介して前記含フッ素樹脂が前記光学素子の一部の上表面を覆うまで充填されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項7】
前記階段部は前記LEDチップの光射出面よりも高く、前記凹みの内側面の頂部よりも低いことを特徴とする請求項3に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項8】
前記孔構造は複数であることを特徴とする請求項1に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項9】
前記孔構造は前記凹みの上方に位置し、前記孔構造は前記光学素子のエッジに近接していることを特徴とする請求項1に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項10】
前記光学素子のエッジは前記ベースフレームの頂部のエッジに設けられ、前記光学素子と前記ベースフレームの頂部のエッジとの間に接着層を形成することを特徴とする請求項1に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項11】
ベースフレームと、光学素子と、LEDチップとを含み、前記ベースフレームの真ん中に凹みが形成され、前記凹み内の底部に前記LEDチップが固定されており、前記光学素子の下方の凹み部分に含フッ素樹脂を充填すると共に、前記光学素子のエッジと前記凹みの内側壁との間に形成されたギャップを介して前記光学素子の一部の上表面を覆うまで含フッ素樹脂を充填しており、
前記LEDチップはその発光ピーク値の波長が290nm以下であり、
前記凹みにおいて前記内側壁に沿って互いに隔てると共に同じ高さ又は環状の複数の階段部が形成され、前記光学素子のエッジが前記階段部に設けられており、前記光学素子は外表面がアーク形状のレンズであり、
前記アーク形状のレンズの頂面は球形状の一部を形成しているアーク形状であり、
前記アーク形状の球心の位置と前記LEDチップの光射出面の中心点とを結ぶ直線が前記LEDチップの光射出面に対して垂直であり、
前記レンズのエッジは平台部を有し、前記光学素子の一部のエッジの平台部が前記階段部の上に設けられ、前記一部のエッジの平台部が前記階段部の上に設けられておらず、
前記階段部の上に設けられていない一部のエッジと前記凹みの内側壁との間に形成されたギャップを介して前記含フッ素樹脂が前記光学素子の一部の上表面を覆うまで充填されていて、
前記平台部の少なくとも一部の上表面或いは下表面又は前記エッジの側辺が粗面化処理され、少なくとも≧0.2μmの算術平均粗さを有することを特徴とする紫外パッケージ素子。
【請求項12】
前記互いに隔てる階段部は4つであることを特徴とする請求項11に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項13】
前記含フッ素樹脂は非晶質含フッ素樹脂であり、結晶化度が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項14】
前記含フッ素樹脂はパーフルオロ酸素複素環とパーフルオロオレフィンの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項15】
前記含フッ素樹脂の複素屈折率の虚部が0.001@300nmより小さいことを特徴とする請求項1に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項16】
前記含フッ素樹脂は下記式1で表される重合物であり、
【化1】
ここで、n/(n+m)%の比率値が40~60%であることを特徴とする請求項1に記載の紫外パッケージ素子。
【請求項17】
前記LEDチップの放射波長は275nm~285nmであることを特徴とする請求項1に記載の紫外パッケージ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外パッケージ素子に関し、具体的には紫外LED光源パッケージ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、固体半導体発光素子である。LED技術の発達に伴って、LEDモジュールの波長域が徐々に近紫外の方向へ、更には遠紫外の方向に発展している。紫外LEDは新たな緑光源として発光効果が高く、寿命が長く、省エネ、環境保護等多くの利点を有していることが知られており、例えば、室内外の消毒、バックライト、UV印刷、医療、飲食、植物の成長等、その応用分野はますます幅広くなっている。しかし現段階の紫外(UV)LEDパッケージ構造、特に遠紫外(DUV)LEDパッケージ構造は一般的に完全無機パッケージを用い、このようなパッケージ構造の光はLEDチップから大気中に放射され、その後さらに、石英ガラス等の材質の光学素子を通って外部へ伝達する。光路全体において光密媒質から光疎媒質を数回経る上、さらに境界面は平面構造であるため、大きな全反射現象が存在し、発光効率に大きな影響を与える。
【0003】
従来技術の欠点を解決するため、例えば中国特許出願公開第108134007号公報に開示されているように、従来技術ではチップから放射された光が大気よりもその屈折率が高い充填媒質を通り、その後光学素子を通過して外部に射出され、この構成によって全反射による影響を改善し、光取り出し効率を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、不定形のフッ素樹脂パッケージ材料が知られており、その屈折率が一般的には1.3~1.6であり、紫外線の光透過率が高く、信頼性がよいので、将来性がある遠紫外LEDパッケージ材料である。しかし、中国特許出願公開第108134007号公報に開示されたパッケージ構造では、図1(a)と図1(b)に示されているように、パッケージ構造中に充填された材料が液体であるため、気泡が発生しても除くことができないという問題点がある。この気泡が密閉状のパッケージ構造に存在していることによって光取り出し効率に影響を与え、また上記構造はリフローはんだ付けの過程において光学素子が変形するという問題点もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術の問題点を解決すべく、本発明は、ベースフレームと光学素子とLEDチップとを含んでおり、前記ベースフレームの真ん中に凹みが形成され、前記凹み内の底部に前記LEDチップが固定されている紫外パッケージ素子において、前記光学素子の下方の凹み部分にパッケージコロイドを充填し、前記光学素子の上の貫通孔構造或いは前記光学素子のエッジと前記凹みの内側壁の間に形成されたギャップを介して前記光学素子の一部の上表面を覆うまで充填することを特徴とする紫外パッケージ素子を提供する。
【0006】
好ましくは、前記パッケージコロイドは含フッ素樹脂である。含フッ素樹脂の耐熱性及び耐紫外線性能は優れており、より好ましくは、紫外線に対する光透過性を高めるために、前記非フッ素樹脂は非晶質含フッ素樹脂である。
【0007】
好ましくは、前記紫外LEDチップはその発光ピーク値の波長が290nm以下である。
【0008】
好ましくは、前記凹みにおいて前記内側壁に沿って複数の互いに隔てており且つ同じ高さを有する階段部又は連続的に形成された環状の階段部が形成され、前記光学素子のエッジが前記階段部に位置するように設けられている。
【0009】
好ましくは、前記光学素子は前記階段部の上に位置するように設けられ、前記階段部と前記光学素子の間に一層又は複数層の接着層が形成されている。前記接着層の接着力が前記含フッ素樹脂よりも高い。
【0010】
好ましくは、前記光学素子の一部の前記エッジは前記階段部の上に設けられ、且つ一部の前記エッジは前記階段部の上に設けられておらず、前記階段部の上に設けられていない一部の前記エッジと前記凹みの内側壁との間に形成されたギャップを介して前記含フッ素樹脂を前記光学素子の一部の上表面を覆うまで充填する。
【0011】
好ましくは、前記階段部は前記チップの光射出面よりも高く前記凹みの内側面の頂部よりも低い。
【0012】
好ましくは、前記互いに隔てる階段部は4つである。
【0013】
好ましくは、前記孔は複数である。
【0014】
好ましくは、前記孔は前記凹みの上方に位置され、前記孔は前記光学素子のエッジに近接して設けられている。前記孔構造のサイズは20μm以上であり、好ましくは100μm~1mmである。前記サイズは孔の最大直径である。好ましくは、前記ギャップはそのサイズが20μm以上である。好ましくは、100μm~1mmである。前記サイズは、凹みの側壁の面から光学素子のエッジまでの最大のレベル距離である。前記孔の内側壁は粗さを有しており、好ましくは少なくとも≧0.2μmの粗さを有する。
【0015】
好ましくは、前記光学素子のエッジが前記ベースフレームの頂部のエッジに設けられ、前記光学素子と前記ベースフレームの頂部のエッジとの間に接着層が形成されている。
【0016】
好ましくは、前記光学素子の外表面がアーク形状のレンズである。
【0017】
好ましくは、前記レンズの底面が平面であり、その球面の球心と前記LEDチップの光射出面の中心とを結ぶ直線が前記LEDチップの光射出面に対して垂直である。
【0018】
好ましくは、前記レンズのエッジは平台部を有する。好ましくは、前記平台部の少なくとも一部の上表面或いは下表面又は前記エッジの側辺が粗面化処理され、少なくとも≧0.2μmの粗さを有する。
【0019】
好ましくは、前記含フッ素樹脂は非晶質含フッ素樹脂であり、結晶化度が10%以下である。好ましくは、前記フッ素樹脂の複素屈折率の虚部が0.001@300nmより小さい。
【0020】
好ましくは、前記含フッ素樹脂はパーフルオロ酸素複素環とパーフルオロオレフィンの共重合体である。
【0021】
好ましくは、前記含フッ素樹脂の構造単位は五員環を含んでおり、環には1つ又は2つの酸素が含まれている。前記含フッ素樹脂は下記式1の構造であり、
【0022】
【化1】
【0023】
ここで、n/(n+m)%の比率値が40~60%である。
【0024】
好ましくは、前記LEDの放射波長が275nm~285nmの間である。前記ベースフレームの本体部が窒化アルミニウムの絶縁材料からなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る紫外チップパッケージ構造によれば、従来技術と比べて以下の有益な効果を奏することができる。
【0026】
1.液体の含フッ素樹脂をパッケージに充填した後、硬化過程において含まれている空気或いは生成された気体が孔構造又はギャップを通って効果的に排出されることができる。かかる孔構造又はギャップは1つ又は複数であり、その中の1つの孔構造又はギャップのサイズが20μm以上である。このような構造によって、含フッ素樹脂がチップ・光学素子の間に隙間なく完全に充満され、空気が残らず、光取り出し効率を高めることができる。
【0027】
2.光学素子の孔構造又は光学素子と凹みの内側壁の間に形成されたギャップによって含フッ素樹脂の充填の高さは光学素子の底面のエッジより高く、一部の外表面まで覆うことを実現する。剛性の含フッ素樹脂は光学素子のエッジとフッ素樹脂の間に固定作用を形成し、光学素子がベースフレームの表面に固定される効果を高めることができる。これによって、光学素子及びベースフレームの間の接着の問題を解消することができ、素子の信頼性を高めることができ、全反射を低減し、光の取り出しを増やす。この構造設計は紫外線とりわけ遠紫外(DUV)の発光領域のパッケージ構造に効果的に利用され、接着剤が長期使用又は紫外線の照射下での老化により接着性が弱くなり、光学素子が脱落しやすい問題をも解消することができる。
【0028】
3.ベースフレームの凹みにおいて側壁に沿って隔てる又は連続する階段部を設け、階段部の高さはチップの高さより高く、ベースフレームの高さより低く、光学素子のエッジが階段部の上に設けられている。より好ましくは、光学素子への支えをなすように接着層が階段部と光学素子の間に設けられている。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は以下の説明において陳述するが、一部は明細書から明白なものであり、或いは本発明を実施することにより理解される。本発明の目的及びその他の利点は、明細書、特許請求の範囲、添付の図面により特に示される構造によって実現し獲得される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面は本発明のより一層の理解のために供するものであり、また明細書の一部を構成するものであり、本発明の実施例と共に本発明の解釈に用いられ得るが、本発明を限定するものではない。また、図面における数値は概要を示すにすぎず、比率に応じて描かれたものではない。
図1(a)】背景技術による従来の紫外パッケージ構造を示す図である。
図1(b)】背景技術による従来の紫外パッケージ構造を示す図である。
図2】実施例1に係る紫外パッケージ構造を示す図である。
図3】実施例1におけるベースフレーム上にチップと光学素子とが装着された状態を示す上面図である。
図4】実施例1におけるベースフレーム上にチップと光学素子とが装着された状態を示す上面図である。
図5】実施例1においてベースフレーム内にチップが装着された構造を示す図である。
図6】実施例1においてベースフレーム内にチップと光学素子とが装着された構造を示す図である。
図7】改善された実施例2に係る紫外パッケージ構造を示す図である。
図8】実施例3に係る紫外パッケージ構造を示す図である。
図9】実施例4に係る紫外パッケージ構造を示す図である。
図10】実施例1に係る紫外パッケージ構造に用いられている含フッ素樹脂の光透過率と波長分布を示す曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明に係る紫外LEDパッケージ構造の詳細について説明する。本発明を説明する前に、特定の実施例を変更でき、下記の特定の実施例に制限されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲だけに限定され、用いられる実施例は説明のために例示されるが、これに制限されないことを理解されたい。他に説明されていない限り、ここで用いられる全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の当事者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0032】
実施例1
図2に示されるように、本実施例ではベースフレーム1と光学素子6とLEDチップ4とを備えている紫外LEDパッケージを提供する。このベースフレーム1は真ん中に凹みを有しており、この凹み内の底部にLEDチップ4が固定されている。ベースフレーム1の凹み内には含フッ素樹脂5が充填されている。光学素子6は凹み内に嵌め込まれてLEDチップ4の上方に位置している。光学素子6のエッジと凹みの内側壁との間にはギャップが有り、このギャップ内に含フッ素樹脂5が充填されている。光学素子6のエッジと凹みの内側壁との間にあるギャップによって気泡の除去を実現し、含フッ素樹脂5はギャップを介して光学素子の一部の上表面までを覆うことにより固定作用を得ることができる。
【0033】
具体的には、ベースフレーム1は好ましくはセラミック材料による一体成型、又は、底面がセラミックであり、側面が金属である複合構造である。高い放熱性を確保するために例えばセラミック材料を含む絶縁材料を選ぶことができる。セラミック材料は同時焼成される低温同時焼成セラミック(LTCC)又は高温同時焼成セラミック(HTCC)を含む。ベースフレーム10の本体材料はAINでもよく、140W/(m・K)或いはより高い熱伝導性の金属窒化物からなってもよい。ベースフレーム1はその中央に凹み部分を有し、凹みの底部に紫外LEDチップ構造が装着されている。紫外LEDチップ4は1つ又は複数である。凹みの底部に正負電極が設けられている。LEDチップの正負電極はワイヤボンディング或いはチップボンディングの方法により凹みの底部の正負電極まで連結されている。正負電極が外部まで延伸することによって電気的に接続された正負電極として実現される。LEDチップ4は、フェイスアップ型チップ、フリップ型チップ又は垂直型チップであってもよい。LEDチップ4は紫外チップである。かかるLEDチップが支持フレームの上に配置されており、その波長は200~380nmの間であり、具体的には、長波長(略称UVA、波長315~380nm)、中波長(UVB、波長280~315nm)、又は短波長(UVC、波長200~280nm)であってもよい。発光波長は実際用途の需要に応じて選ぶことができ、例えば表面殺菌、表面硬化などに用いられる。紫外LEDチップ4の数は出力の要求等の要素に応じて選ぶことができ、異なる用途に応じて同一の紫外LEDパッケージ構造において波長が異なる紫外LEDチップ4を選んでもよく、また、少なくとも1つの紫外LEDチップ4と他の波長のチップとを組み合わせてもよい。
【0034】
光学素子6は外表面がアーク形状であり、底面がフラットであるレンズ構造であり例えば石英ガラス材質である。かかるレンズが凹み内に嵌まり込んで、凹みの内側壁との間にギャップが形成されている。
【0035】
含フッ素樹脂5はLEDチップ4、凹み内の底部表面及び少なくとも側表面の一部を覆うまで充填すると共に、かかるレンズのエッジ及び少なくとも外表面のアーク形状の少なくとも一部を覆う。好ましくは、かかるアーク形状のレンズの頂面は球形状の一部を形成しているアーク形状である。アーク形状の球心の位置はチップの光射出面の中心点とを結ぶ直線がチップの光射出面に対して垂直であることが最もよい。これによって光学素子から散出する光をあらゆる角度に均一にすることが確保される。アーク形状のレンズのサイズはチップのサイズに対して大きければ大きいほどよい。これによってチップの位置が球心の位置とより近くなり、チップが放射する光は、含フッ素樹脂及びアーク形状のレンズ、アーク形状のレンズ及び空気の間の光射出境界面の順に到達し、できるだけ小さい角度で射出することができ、反射率を低減することを確保する。
【0036】
かかる含フッ素樹脂は屈折率が空気より高く、1.3~1.6の間である。含フッ素樹脂はLEDチップエピタキシャル構造の屈折率とガラスの屈折率との間の屈折率を有するので、異なる材料境界面による全反射を効果的に低減することができ、直接光取り出し効率を高めることができる。
【0037】
かかる含フッ素樹脂は安定した耐UV放射且つ高い光透過率の樹脂であり、かかる安定した耐UV放射且つ高い光透過率の含フッ素樹脂はより好ましくは、非晶質含フッ素樹脂である。より好ましくは、かかる含フッ素樹脂はモノマー又は共重合体であり、具体的には例えばパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(perfluoroalkyl vinyl ether copolymer)、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)・エチレン・テトラフルオロエチレンの共重合体である。モノマー又は共重合体を構成する構造単位は含フッ素脂肪族環構造単位を有する。含フッ素脂肪族環構造単位はさらに非晶質化に有用であり透明度が高い。
【0038】
かかる含フッ素樹脂のモノマー又は共重合体は含フッ素脂肪族環構造単位を有し、好ましくは、環状含フッ素モノマーの単位、或いはジエン系含フッ素モノマーの環化重合によって形成された単位に基づいている。具体的には、環状含フッ素モノマーの単位は、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子の間に重合性の二重結合のモノマーを有し、又は含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子と含フッ素脂肪族環外の炭素原子の間に重合性の二重結合のモノマーを有してもよい。当該含フッ素脂肪族環はその骨格中にエーテル性酸素原子(-O-)を有してもよい。このとき、含フッ素脂肪族環中のエーテル性酸素原子の数は好ましくは1又は2である。上記の環状含フッ素モノマーとその他のモノマーの共重合体であってもよい。環状含フッ素モノマーの比率は当該共重合体を構成する全繰り返し単位の合計に対して、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは40モル%以上であり、100モル%であってもよい。他のモノマーは、具体的に挙げると、後記のジエン系含フッ素モノマー、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等である。かかるジエン系含フッ素モノマーは2つの重合性の二重結合とフッ素原子のモノマーを有している。当該重合性の二重結合として好ましくは、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メチルアクリロイル基等である。ジエン系含フッ素モノマーとして好ましくは下記の化合物である。
【0039】
CF2=CF-Q-CF=CF2 (2)
式中、Qは、エーテル性酸素原子を有し且つフッ素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換された炭素原子の数が1~3のパーフルオロアルキリデン基である。
【0040】
非晶質フッ素樹脂は、ジエン系含フッ素モノマーだけからなる重合体であってもよく、上記のジエン系含フッ素モノマーとその他のモノマーとを含む共重合体であってもよい。ジエン系含フッ素モノマーの比率は当該共重合体を構成する全繰り返し単位の合計に対して50モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは100%モルである。タイプIの非晶質フッ素樹脂の平均分子量は好ましくは3000~1000000、より好ましくは10000~300000、さらに好ましくは100000~250000である。なお、上記のモノマーの環化重合法としては、単独重合法及び共重合法である。本実施例では、下記の非晶質含フッ素樹脂が用いられる。
【0041】
【化2】
【0042】
その結晶度が10%以下であり、含フッ素樹脂の複素屈折率の虚部が0.001@300nmより小さい。これによって、紫外線とりわけ遠紫外の光源による照射でより高い光透過率を有し、具体的には200nm以上で90%の光透過率を有することを確保することができる。特には、275~285nmの光源による照射で光透過率が95%以上であり、更に好ましくはn/n+mの値が40~60%である。この類の重合物は、高温安定性、良好な疎水性、耐薬品性を示し、フッ化溶媒における溶解度が高く、溶液粘度が低い利点がある。例えばn/n+mの値が60%の場合、その屈折率が1.327、ガラス転移温度が125℃である。図9は当該含フッ素樹脂が200nm~800nmの間の光透過率テストを示している。そこから明らかに高い紫外線の透過性を有することが分かり、とりわけ200nm以上の波長範囲内で90%以上の光透過率を得ることができ、典型的な280nmの紫外線の光透過率が95%以上に達することが示されている。
【0043】
かかる凹みの底部における側壁寄りには複数の互いに分離すると共に同じ高さの階段部3を設けている。階段部3はかかるベースフレームと同じ又は異なる材料からなる。光学素子6のエッジは階段部3の上に配置されている。階段部3の高さはチップの高さよりも高く側壁の高さよりも低い。階段部3の高さはチップと光学素子との間の距離を制御することによって調節ができ、光をなるべく垂直に近い角度で放射するように制御することができる。かかる凹みが方形状の場合、互いに隔たっている階段部の数は、好ましくは、4つであり、且つそれぞれの高さが同じであり、即ちかかる光学素子を固定するように各方向の凹み側壁に階段部を有する。かかる光学素子は階段部を覆うことにより、凹みの内部に完全な密閉状空間を形成しているのではなくギャップを有する。即ち、光学素子のエッジと凹みの内側壁との間にギャップを形成している。かかる階段部の側壁はベースフレームと同じ材料、例えば、窒化アルミニウムからなるが、窒化アルミニウムより高い反射率を有する材料例えば金属からなってもよい。
【0044】
強固性を高めるために、かかる光学素子6及び階段部3の間に接着層を形成してもよい。接着層の接着性は含フッ素樹脂より高いことが好ましい。ここで、接着層は一層又は複数層の材料からなってもよく、好ましくは、一層の材料からなり、接着力は2MPaより大きい又は等しく、厚さは5μmを上回らないことが好ましく、接着力は含フッ素樹脂より高いことが好ましい。
【0045】
より好ましくは、光学素子6とフッ素樹脂の間の接着力を増やすために、図3の外表面の側面から見たパッケージ構造の概略図のように、かかるアーク形状のレンズのエッジは平台部を有し、レンズの一部の平台部が階段部3の上に配置されており、これによって接着面積を大きくする。レンズの一部の平台部は階段部3の上に配置されておらず、階段部3の間で宙に浮いた状態になっており、且つ、この一部の平台部と凹みの側壁はギャップを形成しており、ギャップ内に含フッ素樹脂を充填し、含フッ素樹脂をこの一部のレンズの平台部と少なくとも一部の外表面を覆うまで充填することによって、レンズ下方の含フッ素樹脂の気泡がギャップを介して大気中に排出することができると共に、固定構造を形成することができる。なお、図3の点線の中の部分は、即ちレンズの平台部及び凹みの側壁の間に形成されたギャップである。レンズの平台部のエッジ及び凹みの側壁の全ての面の間のレベル距離はその最大値が少なくとも20μm以上である。
【0046】
より好ましくは、かかる平台部の少なくとも一部の上表面或いは下表面又はエッジの側辺が粗面化処理され、少なくとも≧0.2μmの粗さを有する。少なくとも平台部及び階段部の間に粗面化処理を行うことにより、接着面積又は平台部と含フッ素樹脂とを連結する位置の接着性を高めることができ、固定効果を上げることができる。
【0047】
より好ましくは、図3に示されているように、かかるレンズの平台部のエッジはその全体がレンズのアーク形状と一致している、又は、図4に示されているように、かかるレンズの平台部のエッジは凹みの形状例えば図4に示されている方形状に合わせている。
【0048】
本実施例のパッケージ構造を得るために、図5に示されているように、まず、カット済みの紫外LEDチップ4をベースフレーム1の凹み内の底部の金属正負電極2の上に装着する。なお、紫外LEDチップはフリップチップであることが好ましい。
【0049】
その後、図6に示されているように、頂面がアーク形状であり、底面が平面であるレンズを凹みの側壁の階段部3の上に装着し、接着層を用いて階段部3とレンズとの間を接着する。接着層は従来の接着樹脂からなり、接着層の接着性は含フッ素樹脂の接着性よりも高い。レンズの一部のエッジは階段部の上に設置されておらず、レンズと凹みの側壁との間のギャップ7(ギャップ7は図5の点線円の部分を示す)を形成することによって、完全に密閉状になっていない下方の凹み部分が形成されている。
【0050】
そして、レンズと凹みとの間のギャップを介して、含フッ素溶媒、好ましくは非プロトン性含フッ素溶媒中に上記の非晶質フッ素樹脂を溶かした塗布液をベースフレームの凹み内に注入して、レンズ下方のLEDチップ4、底部の金属正負電極2、凹みの空間及びレンズのエッジを覆うと共にレンズのアーク形状の一部の外表面まで覆うようにする。徐々に塗布液を加熱しながら溶媒を揮発させる。溶媒を揮発させる場合、なるべく気泡が樹脂内に残らないようにするため、溶媒の沸点以下の低温領域(例えば室温付近)から溶媒の沸点以上の高温領域(例えば200℃付近)まで緩加熱して溶媒を揮発させる。
【0051】
使用する含フッ素溶媒の分子量が大きすぎると、塗布液の粘度を上昇させるだけではなく、更にタイプIの非晶質フッ素樹脂の溶解性も低下するため、1000以下であることが好ましい。また、タイプIの非晶質フッ素樹脂の溶解性を上げるために、溶媒のフッ素含有量は好ましくは60~80重量%である。
【0052】
非プロトン性含フッ素溶媒としては、ポリフルオロ芳香族化合物、ポリフルオロトリアルキルアミン、ポリフルオロパラフィン、ポリフルオロ環状エーテル、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等が例示される。これらの非プロトン性含フッ素溶媒は単独で用いてよく、混合で用いてもよい。
【0053】
高温硬化により溶媒を揮発させた後室温まで冷却し、得られた含フッ素樹脂は剛性の状態であり、光学素子の下方の空間内を充填し、ギャップを介して光学素子の一部の上表面を覆うまで充填する。剛性のフッ素樹脂と光学素子のエッジとを固定する効果が得られ、光学素子の固定に有用であり、滑りを防止し、光学素子が接着剤の老化により引き起こされる脱落問題を解消し、信頼性を高め、また、光学素子のエッジに形成された平台部は固定作用による強固性により有益である。
【0054】
実施例2
実施例1の変形として、図7に示されるように、かかる凹みの底部の側壁寄りに連続した環形になった階段部3が設けられている。かかる環形階段部3の高さは同じであり、光学素子6の一部のエッジが階段部3の上に配置され、階段部3の高さはチップの高さより大きく、凹みの側壁の高さより低い。かかる階段部の高さの配置によって、チップと光学素子との間の距離を有効に制御することができ、それによって、光射出角がなるべく略垂直になる角度で放射できることを有効に制御することができる。かかる光学素子及び階段部の間に接着層を形成し、接着層の材料は、含フッ素樹脂材料と同じであってもよく、異なってもよく、又は、接着層の粘着性は含フッ素樹脂より高い。この接着層は一層又は複数層の材料からなってもよい。かかる光学素子の一部のエッジは階段部の上に配置されておらず、光学素子の下方の凹み内部は完全密閉状になっていない空間であり、即ち、光学素子の一部の階段部の上のエッジ及び凹みの内側壁の間にギャップ7を形成している。含フッ素樹脂は光学素子の下方の凹み内に充填されて、光学素子の頂面のアーク形状の側壁の上まで覆い、又はエッジが平台部を有している場合は少なくともエッジの平台部を覆う。
【0055】
実施例3
本実施例は上記の実施例と異なる紫外パッケージ素子を提供する。図8に示されているように、この紫外パッケージ素子はベースフレーム1と、光学素子6と、LEDチップ4とを備えている。ベースフレーム1はその真ん中に凹みが設けられ、この凹み内の底部に前記LEDチップ4が固定されている。光学素子6のエッジはベースフレームの凹み内の階段部の上に配置されている。かかる光学素子は好ましくはそのエッジに平台部を有し、平台部が階段部の上に配置されている。平台部及び階段部の間に接着層が設けられており、接着層の接着力は好ましくは含フッ素樹脂より高い。かかる含フッ素樹脂5はベースフレームの凹み内を充填する。かかる光学素子は孔8を有する。かかる含フッ素樹脂は孔を充填し孔の周りの外表面を覆う。かかる含フッ素樹脂が孔から溢れることによって、光学素子と含フッ素樹脂との間の固定作用を果たすことができる。これによって光学素子の固定に役立つことが可能である。かかる階段部の高さはチップの光取り出し面より高く、ベースフレームの頂部の高さより低い。
【0056】
孔8は凹みの上方に位置しており、かかる含フッ素樹脂は光学素子及びチップの間を充満する。
【0057】
孔8は少なくとも2つであり、光学素子上に均一に又は非均一に分散している。かかる孔は相対的にチップ上方の両側に分散してもよい。かかる孔の位置は光学素子の真ん中から離れて光学素子のエッジに近寄るように配置されてもよい。孔8は円形、楕円形又は多辺形である。孔8の構造のサイズは20μmより大きく、好ましくは100μm~1mmの間である。光学素子6はアーク形状のレンズである。かかる光学素子の平台部及び階段部の間が接触するところは粗面化処理を行うことで接合面積を増やすことができる。かかる孔の内側は粗面化処理を行ってもよく、少なくとも≧0.2μmの粗さを有する。これによって光学素子と含フッ素樹脂の間の固定効果を高めることができる。
【0058】
実施例4
実施例3の代替手段として、図9に示されているように、かかる凹みの内側壁に光学素子のエッジの階段部が配置されず、光学素子6はベースフレームのエッジの上に配置される。光学素子及びベースフレームのエッジの間に接着層を形成し、かかる接着層は一層であってもよく複数層であってもよい。
【0059】
以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本技術分野の当事者は、本発明の要旨を逸脱しない条件において、改善や修正が可能であり、これらの改善や修正も本発明の保護の範囲であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0060】
1 ベースフレーム
2 正負電極
3 階段部
4 LEDチップ
5 含フッ素樹脂
6 光学素子
7 ギャップ
8 孔
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10