(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ガスタービンにおいて燃焼安定性を向上させるシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
F23R 3/34 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
F23R3/34
(21)【出願番号】P 2020564086
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 US2019032395
(87)【国際公開番号】W WO2019222334
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-13
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】マーク ダニエル ダゴスティーニ
(72)【発明者】
【氏名】アヌプ バサント サン
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0047900(US,A1)
【文献】特開2002-195563(JP,A)
【文献】特開平10-185196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0054301(US,A1)
【文献】特開平06-212910(JP,A)
【文献】特開2003-217602(JP,A)
【文献】特開2016-075448(JP,A)
【文献】特表2015-513060(JP,A)
【文献】特表2012-529006(JP,A)
【文献】特表2009-506290(JP,A)
【文献】特開2009-041848(JP,A)
【文献】特開2008-122067(JP,A)
【文献】特表2006-507466(JP,A)
【文献】特開平08-028873(JP,A)
【文献】特許第2987361(JP,B1)
【文献】実開平05-096728(JP,U)
【文献】国際公開第2018/038278(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0221582(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0162333(US,A1)
【文献】特開2008-096099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0282097(US,A1)
【文献】特開平08-014565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00- 7/36
F23R 3/00- 3/60
F23D 14/00-14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器の上流にある空気圧縮器、および前記燃焼器の下流にあるタービンを含むガスタービンエンジン用の燃焼器であって、
燃焼器チャンバーと、
前記燃焼器チャンバーの端部において中央に位置決めされたオキシ燃料パイロットバーナーであって、前記オキシ燃料パイロットバーナー中の酸素濃度が少なくとも30体積%であるオキシ燃料パイロットバーナーと、
空気および燃料を少なくとも部分的に予混合するように構成された空気燃料予混合バーナーであって、環状構成で前記オキシ燃料パイロットバーナーを取り囲んでいる空気燃料予混合バーナーと、を備える、燃焼器を動作させる方法であって、以下の工程、
空気および燃料を、当量比で、前記空気および前記燃料を少なくとも部分的に予混合するように構成された燃焼器内の空気燃料予混合バーナーへと供給すること、
前記空気燃料予混合バーナー内で空気燃料燃焼を開始させること、
前記空気のフローおよび前記燃料のフローの一方または両方を、前記空気燃料予混合バーナー中で約0.5以上の当量比を得るように調整すること、
前記燃焼器の前記燃焼器チャンバーの中央に配置され、そして前記空気燃料予混合バーナーによって取り囲まれた前記オキシ燃料パイロットバーナーに燃料および酸素を流すことによって、パイロット火炎を起こすこと、ならびに、
前記空気のフローおよび前記燃料のフローの一方または両方を、前記燃焼器中で約0.5未満の総括当量比を得るように調整すること、
を含む、方法。
【請求項2】
化学量論的燃焼に必要なものの30%~60%の酸素対燃料モル比において、前記オキシ燃料パイロットバーナーを動作させることをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記オキシ燃料パイロットバーナーに流れる前記燃料、および前記空気燃料予混合バーナーに流れる前記燃料の合計として、前記燃焼器への総燃料フローを計算することと、
前記オキシ燃料パイロットバーナーに流れる前記燃料が、前記燃焼器への総燃料フローの10%以下となるように、前記オキシ燃料パイロットバーナーに流れる前記燃料、および前記空気燃料予混合バーナーに流れる前記燃料のうちの1つ以上を制御することと、をさらに含む、請求項
1または
2に記載の方法。
【請求項4】
前記オキシ燃料パイロットバーナーに流れる前記燃料が、前記燃焼器への前記総燃料フローの6%以下となるように、前記オキシ燃料パイロットバーナーに流れる前記燃料、および前記空気燃料予混合バーナーに流れる前記燃料のうちの1つ以上を制御すること、をさらに含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
酸素濃縮レベルが0.5%未満であるように制御することをさらに含む、請求項
1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
酸素濃縮レベルが0.3%未満であるように制御することをさらに含む、請求項
1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記オキシ燃料パイロットバーナーが、局所的な音速に等しい第1の速度を有する火炎を生成させるように構成された、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記空気燃料予混合バーナーが、前記第1の速度よりも小さい第2の速度を有する火炎を生成させるように構成された、請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月15日に出願された米国仮特許出願第62/671,861号から優先権を主張し、その出願は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明者が知る限り、ガスタービン燃焼器における酸素使用についての先行技術文献は、酸素を含む燃焼空気のバルク濃縮を排他的に考慮している。しかしながら、ガスタービンエンジンにおいて燃焼安定性を著しく向上させるために必要な燃焼空気のバルク酸素濃縮量は、a)実際のタービンエンジン動作に対して費用対効果の高い選択肢ではなく、b)NOx排出量の増加をもたらす。加えて、燃焼器は典型的には、燃料リーン条件において稼働し、したがって、酸化剤ストリーム中にすでに余分な酸素が存在する。
【0003】
図1に例示した産業用発電に通常使用されるガスタービンエンジンの基本構成は、圧縮器により特徴付けられる低温セクションを備え、続いて燃焼器セクションおよびタービンにより特徴付けられる高温セクションを備える。低温セクションは、空気取り込み口を含み、任意選択的に周囲に離間させた入口ガイドベーンの組を含み、続いて燃焼器セクションに高圧空気を送出する多段階軸流圧縮器を含む。燃焼器セクションの下流にあるタービンは、圧縮器を駆動するシャフトを介して電力を提供する。タービンの動作圧力比は、圧縮器取り込み口における空気の圧力に対する圧縮器出口における空気の圧力として定義され、通常、約18:1未満である。
【0004】
燃焼器の設計は、製造業者、サイズ、および用途に基づいてさまざまであるが、多くの、特に多缶型(
図2に示すように)および缶環状型(
図3に示すように)のものは、タービンシャフトの周りに円周状に配設された円筒チューブまたは「缶」のアレイを介して燃焼を実行する。これらの2つの燃焼器構成の主な違いは、多缶型燃焼器では、各缶の空気取り込み口が圧縮器の対応する出口ポートに機械的に結合されるが、缶環状型燃焼器では、各缶の空気取り込み口が圧縮器出口に接続された共通の単一環状部に対して開いていることである。いずれの場合も、燃焼生成物は各缶から遷移ダクトを通じて放出され、それらは続いて360°の円弧の周りに分散させ、軸流タービンセクションの第1段階に入る。
【0005】
個々の缶燃焼器は典型的には、環状構成における缶燃焼器の入口面の周りに配設した1つ以上の空気燃料ノズルにより供給される燃焼器チャンバーを有する。空気燃料ノズルは、通常ある程度の予混合を行った空気および燃料を燃焼器チャンバーに導入する。多くの場合、空気燃料パイロットバーナーが燃焼器軸に沿って追加的に配設されている。空気燃料パイロットバーナーは、燃焼安定性を向上させるために利用され、予混合設計またはノズル混合(すなわち、拡散または非予混合)設計のいずれかであってもよい。予混合ノズルおよびパイロットバーナーの組み合わせは、本明細書ではガスタービンバーナーとしてまとめて表され、各缶燃焼器はそれ自体のガスタービンバーナーを含む。
【0006】
図4および5はそれぞれ、マルチノズル構成および環状ノズル構成用のガスタービンバーナー入口面の概略図を提供し、それぞれ中央空気燃料パイロットバーナーを使用する。
図4のようなガスタービンバーナー500において、複数の別個の予混合ノズル502は、中央空気燃料パイロットバーナー504の周りに環状構成で配列され、各予混合ノズルは、対応する空気ストリームに放出する燃料噴射器を有する。
図5に示すようなガスタービンバーナー510では、環状ノズル512は、中央空気燃料パイロットバーナー514の周りの空気環状部518により取り囲まれた環状構成で配置された1つ以上の燃料噴射器516を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
態様1.燃焼器の上流にある圧縮器、および燃焼器の下流にあるタービンを含むガスタービンエンジン用の燃焼器であって、燃焼器チャンバーと、燃焼器チャンバーの端部において中央に位置決めされたオキシ燃料パイロットバーナーと、空気および燃料を少なくとも部分的に予混合するように構成された空気燃料予混合バーナーであって、環状構成でオキシ燃料パイロットバーナーを取り囲んでいる空気燃料予混合バーナーと、を備える、燃焼器。
【0008】
態様2.オキシ燃料パイロットバーナーは、出口端部を有する中央燃料ノズルと、燃料ノズルを取り囲む環状酸素ノズルと、を備える、態様1に記載の燃焼器。
【0009】
態様3.オキシ燃料パイロットバーナーは、中央燃料ノズルおよび環状酸素ノズルからのフローを受け取るように位置決めされたパイロットバーナーノズルをさらに備え、前記パイロットバーナーノズルはスロートを有し、中央燃料ノズルの出口端はスロートの上流に配置されている、態様2に記載の燃焼器。
【0010】
態様4.オキシ燃料パイロットバーナーは、スロートを有するパイロットバーナーノズルと、第1の反応物を流すように構成された中央ノズルであって、スロートの上流に配置された出口端部を有する中央ノズルと、第2の反応物を流すように構成された環状ノズルとを備え、前記第1および第2の反応物の一方は燃料であり、前記第1および第2の反応物の他方は酸化剤である、態様1~3のいずれか一項に記載の燃焼器。
【0011】
態様5.中央燃料ノズルは、局所的な音速において燃料を放出するように構成された収束ノズルを備える、態様2~4のいずれか一項に記載の燃焼器。
【0012】
態様6.パイロットバーナーノズルは、スロートにおいて終端する収束ノズルであり、局所的な音速においてオキシ燃料火炎を放出するように構成されている、態様3または態様4に記載の燃焼器。
【0013】
態様7.中央燃料ノズルは、局所的な音速よりも速く燃料を放出するように構成された収束発散ノズルを備える、態様2~4のいずれか一項に記載の燃焼器。
【0014】
態様8.パイロットバーナーノズルは、局所的な音速よりも速くオキシ燃料火炎を放出するように構成された収束発散ノズルである、態様3または態様4に記載の燃焼器。
【0015】
態様9.空気燃料予混合バーナーは、環状構成で複数の空気燃料予混合ノズルを備える、態様1~8のいずれか一項に記載の燃焼器。
【0016】
態様10.空気燃料予混合バーナーは、複数の燃料噴射器を備え、それぞれが空気環状部により取り囲まれている、態様1~8のいずれか一項に記載の燃焼器。
【0017】
態様11.ガスタービンエンジンに引き込まれた空気を圧縮する空気圧縮器と、空気圧縮器の下流に位置決めされ、空気圧縮器により提供された圧縮空気とともに燃料を燃焼し、高圧燃焼ガスを生成するように構成された態様1~10のいずれか一項の燃焼器と、圧縮器と燃焼器の間に位置決めされ、圧縮器により提供された圧縮空気に熱を供給するように構成された一次熱交換器と、熱源と、一次熱交換器と熱源との間で熱伝達流体を運び、圧縮空気が燃焼器に入る前に熱源から圧縮空気に熱を伝達する熱伝達流体ループと、を備える、ガスタービンエンジン。
【0018】
態様12.熱源は、タービンの下流に位置決めされ、タービン排気ガスから熱を抽出するように構成された二次熱交換器であり、熱伝達流体ループは、一次熱交換器と二次熱交換器との間で熱伝達流体を運び、圧縮空気が燃焼器に入る前に、タービン排気ガスストリームから圧縮空気に熱を伝達するように構成されている、態様11に記載のガスタービンエンジン。
【0019】
態様13.熱源は、炉内プロセスまたは燃焼プロセスからの廃熱源を含む、態様11に記載のガスタービンエンジン。
【0020】
態様14.化学量論的燃焼に必要とされるものよりも低い酸素対燃料モル比において、オキシ燃料パイロットバーナーに燃料および酸素を流すことを含む、態様1~10のいずれか一項に記載のガスタービンエンジン用の燃焼器の動作方法。
【0021】
態様15.化学量論的燃焼に必要なものの30%~60%の酸素対燃料モル比において、オキシ燃料パイロットバーナーを動作させることをさらに含む、態様14に記載の方法。
【0022】
態様16.オキシ燃料パイロットバーナーに流れる燃料、および空気燃料予混合バーナーに流れる燃料の合計として、燃焼器への総燃料フローを計算することと、オキシ燃料パイロットバーナーに流れる燃料が、燃焼器への総燃料フローの10%以下となるように、オキシ燃料パイロットバーナーに流れる燃料、および空気燃料パイロットバーナーに流れる燃料のうちの1つ以上を制御することと、をさらに含む、態様14または態様15に記載の方法。
【0023】
態様17.オキシ燃料パイロットバーナーに流れる燃料が、燃焼器への総燃料フローの6%以下となるように、オキシ燃料パイロットバーナーに流れる燃料、および空気燃料予混合バーナーに流れる燃料のうちの1つ以上を制御することをさらに含む、態様14~16のいずれか一項に記載の方法。
【0024】
態様18.空気燃料予混合バーナーに燃料および空気を流すことと、燃焼器の酸素濃縮レベルを計算することと、酸素濃縮レベルを0.5%以下に制御することと、をさらに含み、総酸化剤フローは、オキシ燃料パイロットバーナーへの酸素の流量、および空気燃料予混合バーナーへの空気の流量の合計として定義され、酸素濃縮レベルは、(総酸化剤フロー内の酸素分子の量)/(総酸化剤フロー)-(空気燃料予混合バーナーに流れる空気中の酸素分子の濃度)として定義される、態様14に記載の方法。
【0025】
態様19.酸素濃縮レベルを0.3%以下に制御することをさらに含む、態様18に記載の方法。
【0026】
態様20.ガスタービンエンジンに引き込まれた空気を圧縮する空気圧縮器と、空気圧縮器の下流に位置決めされ、空気圧縮器により提供される圧縮空気とともに燃料を燃焼し、高圧燃焼ガスを生成するように構成される態様1~10のいずれか一項の燃焼器と、燃料器の下流にあり、高圧燃焼ガスから電力を生成するタービンと、を備え、タービン全体の圧力比が約20:1以上であり、燃焼器は、燃焼器チャンバーと、燃焼器チャンバーの端部に位置決めされたオキシ燃料パイロットバーナーと、環状構成でオキシ燃料パイロットバーナーを取り囲んでいる空気燃料予混合バーナーと、を備える、ガスタービンエンジン。
【0027】
態様21.オキシ燃料パイロットバーナーは、中央燃料ノズルと、燃料ノズルを取り囲む環状酸素ノズルと、を備える、態様20に記載のガスタービンエンジン。
【0028】
態様22.中央燃料ノズルは、局所的な音速において燃料を送出するように構成された収束ノズルを備える、態様21に記載のガスタービンエンジン。
【0029】
態様23.中央燃料ノズルは、局所的な音速よりも速く燃料を送出するように構成された収束発散ノズルを備える、態様21に記載のガスタービンエンジン。
【0030】
態様24.空気燃料予混合バーナーは、環状構成で複数の空気燃料予混合ノズルを備える、態様20に記載のガスタービンエンジン。
【0031】
態様25.空気燃料予混合バーナーは、空気環状部により取り囲まれた複数の燃料噴射器を備える、態様20に記載のガスタービンエンジン。
【図面の簡単な説明】
【0032】
これ以降、添付の図面とともに本発明を説明するが、ここで、同様の番号は同様の要素を示す。
【0033】
【
図1】
図1は、従来のガスタービンの側断面図である。
【0034】
【
図2】
図2は、
図1のようなガスタービンの多重缶燃焼器セクションの正面斜視図である。
【0035】
【
図3】
図3は、
図1のようなガスタービンの缶環状燃焼器セクションの正面斜視図である。
【0036】
【
図4】
図4は、環状配置で複数の予混合空気燃料ノズルを有する缶燃焼器のガスタービンバーナーの一実施形態の前端概略図であり、
図2および3の構成において使用可能な空気燃料パイロットバーナーを備えている。
【0037】
【
図5】
図5は、環状予混合空気燃料ノズル配置を有する缶燃焼器のガスタービンバーナーの別の実施形態の前端概略図であり、
図2および
図3の構成で使用可能な空気燃料パイロットバーナーを備えている。
【0038】
【
図6】
図6は、
図4のガスタービンバーナーの実施形態の前端概略図であり、オキシ燃料パイロットバーナーを使用している。
【0039】
【
図7】
図7は、
図5のガスタービンバーナーの実施形態の前端概略図であり、オキシ燃料バーナーパイロットバーナーを使用している。
【0040】
【
図8】
図8は、直ノズルを有するオキシ燃料パイロットバーナーの一実施形態の側断面概略図および端面図である。
【0041】
【
図9】
図9は、収束ノズルを有するオキシ燃料パイロットバーナーの一実施形態の側断面概略図および端面図である。
【0042】
【
図10】
図10は、収束発散ノズルを有するオキシ燃料パイロットバーナーの一実施形態の側断面概略図および端面図である。
【0043】
【
図11】
図11は、
図7または
図8のような缶燃焼器のガスタービンバーナーの側断面概略図であり、中央オキシ燃料パイロット火炎による環状予混合空気燃料火炎の取り込みを示している。
【0044】
【
図12】
図12は、燃焼器の上流にある熱交換器および追加の圧縮部と組み合わせたオキシ燃料パイロットバーナーとともに、ガスタービンバーナーを使用しているガスタービンの一実施形態の概略図であり、空気燃料パイロットバーナーを使用して対応する従来のガスタービンバーナーのタービン入口温度に一致させて、より高い熱効率を実現する。
【0045】
【
図13】
図13は、入力熱交換器と組み合わせたオキシ燃料パイロットバーナーとともに、ガスタービンバーナーを使用しているガスタービンの実施形態の概略図であり、空気燃料パイロットバーナーを使用して対応する従来のガスタービンバーナーのタービン入口温度に一致させ、より高い熱効率を実現する。
【0046】
【
図14】
図14は、本発明によるパイロットバーナーの一実施形態の概略端面図であり、二次空気用の外側スワールベーンを備えている。
【0047】
【
図15】
図15は、ガスタービンバーナーにおいて使用するパイロットバーナーの別の実施形態の概略側断面図であり、中央導管の出口面は、パイロットバーナーのスロートの上流に配置されている(スロートを通って火炎を放出する前に部分的な予混合および点火を容易にする)。
【0048】
【
図16】
図16は、ノズルの下流にスワールベーンを有する単一の予混合ノズルを備えたパイロットバーナーの概略端面図である。
【0049】
【
図17】
図17は、
図16のものと同様のパイロットバーナーの概略端面図であるが、パイロットバーナーとスワールベーンとの間に別の環状部を備え、パイロットバーナーを直に取り囲んでいる環状部はスワールベーンを有しておらず、単一の空気燃料予混合フローは、外側スワール部を一部が通り、かつパイロットバーナーを直に取り囲んでいる非スワール環状部を一部が通って分離する。
【0050】
【
図18】
図18は、
図17のガスタービン燃焼器構成により生成されたフローフィールドの概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書に説明され試験されるように、酸素は、軸流ガスタービンエンジンの燃焼器セクションにおいてガスタービンバーナーに導入され、主予混合空気燃料燃焼の燃焼安定性を向上させ、それにより動作エンベロープを拡張し、NOx排出量の低減および熱力学的効率の増大を促進する。これは、ガスタービンバーナー内のパイロットバーナーとして特定の特徴部を有するオキシ燃料バーナーを利用することにより実現される。
【0052】
より具体的には、オキシ燃料パイロットバーナーは、缶または缶環状ガスタービン燃焼器の軸上またはその近傍に配置されている。空気燃料パイロットバーナーをすでに利用している従来のガスタービンエンジンの改良では、空気燃料パイロットバーナーからの既存の空気環状部はそのままであってもよく、その場合、必須ではないが、オキシ燃料バーナーを取り囲んでいる空気を流すために使用できる。以降の説明では、空気環状部により取り囲まれたオキシ燃料バーナーの組み合わせは、オキシ燃料バーナーが一次バーナーとして動作する場合でも、オキシ空気燃料パイロットバーナーと呼ばれることもあり、環状の「二次」空気はパイロットバーナーおよび偶発的な燃焼酸素用の冷却フローを主に提供してもよく、同時に、必要に応じて、火炎特性に作用し、それを調整し、パイロットバーナーと燃焼器の主空気燃料ストリームとの間の混合を最適化する。例えば、燃焼器の主空気燃料ノズルがスワールベーンを備える場合、パイロットのオキシ燃料コアを取り囲んでいる環状空気は、スワールベーン、特に主空気燃料ノズルのスワールベーンと同じ方向において円周のフローを生成するスワールベーンを含んでもよい(例えば、
図14を参照)。
【0053】
最低30%の空気オキシ燃料バーナー内の酸素濃度を使用して、安定性の向上を実現できる。これは、例えば、オキシ燃料バーナー内の高純度酸素としてパイロット内の約13%の複合酸化剤のフロー、および空気環状部内の(20.9%の酸素を有する)空気としての残りの87%を流すことにより実現できる。好ましくは、少なくとも50%の酸素濃度レベルが使用され、オキシ燃料バーナー内の酸素としての約38%の複合酸化剤のフロー、および環状部内の空気としての62%を流すことに対応している。パイロットバーナーは、空気なしで動作させてもよい。
【0054】
図6および
図7はそれぞれ、ガスタービンバーナーのマルチノズルおよび環状ノズル構成と組み合わせてオキシ燃料パイロットバーナーを使用することを示す。
図6では、パイロットバーナー100は、
図4の構成のように、複数の予混合ノズル102を有するが、ただし、中央オキシ燃料バーナー104が設けられている。同様に、
図7では、パイロットバーナー
110は、
図5の構成のように、空気環状部118により取り囲まれた複数の燃料噴射器116を備えた環状ノズル112を有するが、ただし、中央オキシ燃料バーナー114が設けられている。したがって、両方の構成において、中央に位置決めされたオキシ燃料バーナーが空気燃料パイロットバーナーの代わりに使用され、オキシ燃料火炎の本質的に強い燃焼安定性を活用する。中央に位置決めされたオキシ燃料パイロットバーナーは、この用途のために具体的に設計および動作させたとき、缶燃焼器チャンバー内の周囲の空気燃料予混合物の燃焼安定性を向上可能な火炎を生成する。これは、空気燃料パイロットバーナーを使用して実現できない缶燃焼器の有用な動作条件をもたらす。
【0055】
ガスタービンエンジンにおいて酸素濃縮を経済的にするために、各缶燃焼器における(すなわち、各ガスタービンバーナーにおける)有効酸素濃縮レベルは、好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.3%以下である。本明細書において使用される場合、酸素濃縮レベルは、複合燃焼酸化剤中の酸素分子(予混合ノズル内の空気、環状部内の二次空気、加えてオキシ燃料パイロットバーナーに供給される工業グレード酸素中の酸素分子を含む)のモル分率の増加として定義され、これは、空気中のみの酸素のモル分率を超え、例えば、99.5%の空気および0.5%の工業グレードの酸素の複合酸化剤のフローは、約0.4%の濃縮レベルを有するであろう。加えて、オキシ燃料パイロットバーナーを通して導入される燃料は、缶燃焼器(またはガスタービンバーナー)に送出される総燃料の10%以下であり、好ましくは総燃料の6%以下にするべきである。
【0056】
例示的な実施形態では、以降の表1に示すように、ガスタービンバーナーは、約0.15%の総酸素濃縮レベルにおいて動作させ、空気オキシ燃料パイロットバーナー自体は、約55%の酸素濃度で動作させ、オキシ燃料パイロットバーナー内の高純度酸素のフローは、既存の環状部の空気に取り囲まれ、空気のフローに対する高純度酸素のフローの比率は約0.75である(すなわち、酸化剤のフローの約43%が酸素中にあり、酸化剤のフローの約57%が空気中にある)。これは、オキシ燃料パイロットバーナーへの酸素流量に対応し、これは、ガスタービンバーナーへの総酸化剤流量のわずか約0.19%、またはガスタービンバーナーへの総酸素分子流量の約0.89%である。同時に、オキシ燃料パイロットバーナーは燃料リッチで動作させが、空気燃料予混合ノズル燃料リーン動作させるため、ガスタービンバーナー内の総燃料の約4.9%がオキシ燃料パイロットバーナーを通じて導入された。
【0057】
マルチノズル型および環状ノズル型の両方のガスタービンバーナーを試験し、これらの試験の結果を本明細書にまとめる。
【0058】
バーナーの説明。
【0059】
さまざまなオキシ燃料バーナーがオキシ燃料パイロットバーナーとして機能できることが予想される。オキシ燃料パイロットバーナー40の一実施形態は、ノズル混合(すなわち、非予混合)の同軸パイプインパイプ設計を有し、燃料Fは中心パイプ42を通って流れ、酸化剤Oは、
図8に示すように、周囲の環状パイプ46を通って流れ、燃料は燃料ノズル44から噴出する。好ましくは、燃料ノズル内部通路は、収束設計(
図9、収束ノズル44aを有する)または収束分散設計(
図10、収束分散ノズル44bを有する)のいずれかにおいて輪郭形成される。十分な供給圧力の場合、収束設計は、ノズルから出る燃料速度が局所的な音速に等しくなることを可能にする。同様に、十分な供給圧力の場合、収束分散設計は、ノズルから出る燃料速度が局所的な音速を超えることを可能にする。
【0060】
音波(マッハ1、つまり音速に等しい)または超音波(マッハ1よりも速い、つまり音速よりも速い)である出口燃料速度が、2つの主要な理由のため好ましい。第1に、音速以上のノズルガス出口速度を実現するには、ノズル「スロート」(最小フロー面積)におけるフローをチョークする必要があることが知られている。適切に設計したノズルから生じるいわゆる「チョークした」フローは、缶燃焼器内からの外乱の上流伝播に対して、ノズル出口のフローの条件が影響を受けないことにより特徴付けられる。したがって、燃焼器内の圧力変動がパイロット燃料の流量に影響を及ぼす可能性はなく、それにより、全体的な燃焼器動作に対するパイロットバーナーの安定性をさらに向上させる。第2に、局所的な音速以上の出口燃料速度は、オキシ燃料パイロットバーナーから生じる噴射火炎が局所的なフローフィールド内で支配的な速度を保有することを保証する(環状部内の缶から生じる火炎の速度は亜音速である、つまり局所的な音速未満の速度である)。したがって、オキシ燃料パイロット噴射火炎の後に形成される圧力損失は、
図11に示されるように、空気燃料予混合ノズルにより生成された周囲のフローフィールドストリームラインの半径方向内向きの偏向を誘導するであろう。
図11では、矢印52は、高速オキシ燃料パイロットバーナー火炎に対する空気燃料予混合フローフィールドの内向きの偏向を定性的に表現する。これは、オキシ燃料パイロット火炎により生成される高温、高活性の火炎ラジカルの豊富な供給と、周囲の空気燃料予混合物(および燃焼反応生成物)との間の接触を増大させ、缶燃焼器内での持続的かつ安定な燃焼に必要な連鎖反応の伝播を最終的に促進および強化する。
【0061】
オキシ燃料パイロットバーナーを構成する際に、いくつかの考慮事項は、中央チューブまたは噴射内で燃料を流し、環状部内で酸化剤を流す選択を示した。燃料が酸素で囲まれている場合、当業者には知られている通常の拡散火炎を構成し、いわゆる逆拡散火炎(酸素が燃料に囲まれている場合)より高い固有安定性を保有する。加えて、追加の酸素の効率を最適化するために(言い換えると、所望の安定性および全体的な燃焼器効率の改善を得るために必要な酸素量を最小化するために)、オキシ燃料パイロットバーナーは燃料リッチで動作する可能性が高く、その結果、燃料流量に対する酸化剤の比率は完全燃焼に必要な化学量論的割合より低く(おそらく有意に低く)なるであろう。中央噴射の速度が火炎噴射の勢いを制御するため、中央チューブ内を流れる燃料は、中央チューブ内を流れる酸化剤より勢いのある火炎を生成することが予想される。
【0062】
パイロットバーナー140の別の実施形態が
図15に示されており、そこでは、ノズルスロートを通過する前に燃料および酸素が共混合され、点火される。具体的には、第1の反応物R1(好ましくは燃料)を流す中央導管は、第2の反応物R2(好ましくは酸化剤)を流す環状導管146により取り囲まれ、中央導管は、中央導管142の出口端部を画定する中央ノズル144において終端する。中央導管142および環状導管146からの燃料および酸化剤は、スロート150を有するパイロットバーナーノズル148に流れ込む。重要なことに、中央導管142の出口端部または中央ノズル144は、パイロットバーナーノズル148のスロート150から上流の距離Lに位置決めされている。
【0063】
適切に設計された場合、チョーク型の、高温、高速反応の噴射火炎は、パイロットバーナーノズル148からタービン燃焼器に内に生じる。ノズル混合実施形態の好ましい特徴部に加えて、この「部分的予混合型の」パイロットバーナー実施形態は、燃焼器外乱の上流伝播がパイロット燃料および酸素フローの両方に影響を及ぼさないようにする噴射を生成し、したがって、より高度な安定性の向上を燃焼器に提供する。その上、反応噴射は、ノズルスロートを通過する際に、1000℃、1500℃もしくはそれを超える「混合」または平均温度を有してもよい。音速はスロートにおける(絶対)温度の平方根に比例しているため、パイロット火炎の速度はノズル混合パイロットバーナーの中央噴射より数倍高くなる可能性がある。したがって、「部分的予混合型の」実施形態からのパイロット火炎は、そのはるかに高いスロート温度のため、ノズル混合パイロットバーナーに対してより高い反応性および勢いを保有するであろう。部分的予混合型のパイロットバーナーを使用した安全で長期的な動作は、スロートの上流で燃料および酸素を混合する方法の本質により可能になる。特に、スロートの境界と接触している反応物、燃料または酸素の一部が、スロートを通過する際、未反応のままであることが必要である(すなわち、反応物R2の一部は、導管146の外壁に沿って進み、未反応のままであり、ノズル148を冷却するであろう)。これを実現可能な方法はあまりにも多く、規定を開始することさえできないことを当業者は理解するであろう。したがって、部分的予混合型のパイロットバーナーの幾何学的形状の唯一の制限は、燃料であろうと酸素であろうと、中央反応物の出口平面がスロートの上流になければならないことである(
図15参照)。
【0064】
燃料リッチ動作モードにおいてオキシ燃料パイロットバーナーを稼働し、炭素および/または水素を含有する高い割合の活性化学ラジカルを生成することがさらに好ましく、続いて、これは、空気燃料予混合物と好ましくは反応できる。これは、缶または缶環状部内の空気燃料予混合物が燃料リーンであり、したがって、オキシ燃料バーナー混合物内の過剰な燃料をより補完する過剰な酸素を保有するからである。
【実施例】
【0065】
試験結果。
【0066】
実験室試験の第1のシリーズでは、単一の予混合ノズル設計および複数の空気燃料予混合ノズル設計の両方を使用しているモデル缶燃焼器を、空気燃料予混合ノズル中にスワールベーンがある場合とない場合で試験した。使用時、スワールベーンは、予混合ノズルの軸の周りの予混合フローに対して20°または40°の円周スワール角度を与えるように設計した。なお、単一の予混合ノズル構成の場合、ノズル軸は各缶の軸と一致するが(
図6)、複数の予混合ノズル構成では、ノズル軸はパイロットバーナー軸と一致する(
図7)。これらの試験の主な目的は以下の通りであった。
【0067】
試験を実施して、酸素濃縮の有無にかかわらず缶燃焼器の安定性限界を決定した。安定性限界は、以降の事象の1つの発生として本明細書で定義される。(a)圧力振動の大きな振幅および/または減衰されない増大、(b)明らかに不安定な火炎脈動、(c)一酸化炭素排出量の大きな振幅および/または減衰されない増大、ならびに/あるいは(d)火炎噴出。
【0068】
いったん安定性限界が決定されると、試験を実施して安定性限界におけるNOx排出量を決定した。
【0069】
加えて、試験を実施して、安定性限界における特定のNOx排出量での動作を生成するために必要な酸素および燃料の概算の最小量を決定した。
【0070】
予想通り、両方の種類のガスタービンバーナーが、40°スワールベーンを装備している場合、最も広範囲の空気燃料燃焼安定性を示した。したがって、これらの結果のみを本明細書ではまとめる。その上、両方のガスタービンバーナーが定量的に同様の結果をもたらすことが決定された。しかしながら、複数の予混合ノズル構成を使用してより広範囲の試験を実施したため、これらの結果を本明細書では提示し、調査した両方のバーナー形式の代表として使用する。
【0071】
試験は、3~5MMBtu/時間の複合燃焼速度(空気燃料予混合+オキシ燃料)で実施した。すべての試験稼働中、燃焼器圧力はほぼ大気圧であった。燃料はパイプライン天然ガスであり、酸素は市販の高純度液体酸素(LOX)から蒸発させた。結果の概要を表1に提示する。なお、当量比は、[(燃料流量/酸素流量)実際/(燃料流量/酸素流量)化学量論的]の比として定義され、酸素流量は、空気および高純度酸素の両方からの酸素分子の寄与を含む。実際の酸素流量は実際の燃焼条件を指すが、化学量論的酸素流量は、化学量論的燃焼を仮定した理論的条件を指す(すなわち、炭化水素燃料を水および二酸化炭素に完全に燃焼させるのに正確に十分な酸素)。さらに、酸素濃縮レベルは、複合酸化剤(空気+酸素)のモル酸素濃度が、空気のモル酸素濃度を超える量を酸素パーセントで表現する。最後に、オキシ燃料バーナーの燃料ノズル速度は、すべての場合において、局所的な音速(マッハ1)、つまり約1020フィート/秒であった。オキシ燃料パイロットバーナーは典型的には、燃料リッチのO2:燃料モル比が1.5未満で稼働させ、ここで2.0は、酸素メタン燃焼に対するO2:燃料モル比であり、より典型的には、オキシ燃料パイロットバーナーは、0.6~1.2のオキシ燃料比において動作させた。約1.2を超えるパイロットバーナーのオキシ燃料比は燃焼安定性を著しく向上させるようではなかったが、約0.6未満のものは視認可能なスス粒子を生成する傾向があり、タービン動作に問題が生じる可能性があった。
【0072】
【0073】
なお、表1にまとめられた試験では、オキシ燃料バーナー試験中には燃焼安定性限界に達しなかった。したがって、提示される結果は、最も低い当量比(すなわち、全体的に最も燃料リーンの燃焼条件)を表し、利用可能な機器を使用して試験中に安定な燃焼が実現されたが、安定な燃焼用の可能な最も低い当量比ではないかもしれない。
【0074】
約120psigの燃焼器圧力において、単一の空気燃料予混合ノズル(
図16参照)を備えたモデル缶燃焼器について試験の第2のシリーズを行った。これらの試験は、燃焼安定性の定性的および定量的特性分析を改善する高周波燃焼器圧力測定を含んでいた。第1のシリーズと同様に、非予混合型および部分的予混合型のパイロットバーナーの両方を試験し、同様の挙動が生じた。その上、燃焼器安定性の延長に対する本発明のパイロットバーナーの全体的な効果は、試験の第1のシリーズからの大気圧試験のものと同様であることが見出された。特に、同様のパイロットバーナー燃料流量(全体の約5%)および酸素濃縮レベル(約0.15%)において、平均圧力の5%を超えるrms圧力変動により定義される燃焼器のリーン噴出限界における当量比は、約0.58から少なくとも0.47に減少した。本発明のパイロットバーナーを使用した実際のリーン噴出限界には、バーナーの特性に関連していない制約のために到達しなかった。
【0075】
本明細書において試験されない追加の缶燃焼器ノズル構成は、
図17に例示されるものである。このノズルは、3つの基本構成要素、つまり本発明による中央パイロットバーナー(任意選択的に
図14の実施形態による二次空気ストリームを含んでいる)と、パイロットバーナーの周りに空気燃料混合物の基本的に非スワール型の第1の成分を送出するように構成された第1の(内側)環状部と、スワールベーンのシリーズを通してバランスのとれた空気燃料混合物を送出するように構成された第2の(外側)環状部とを備える。このノズル設計の主な顕著な効果は、非スワール型の内側環状部を通って燃焼器に入る空気燃料混合物の第1の部分が、外側のスワール型の成分より高速、チョーク型のパイロットバーナー火炎に容易に引き込まれることである。パイロット火炎および第1の空気燃料成分の共混合およびその後の反応は、
図18に示すように、パイロット火炎の影響領域の拡大を実質的にもたらす。第1の環状部を通って燃焼器に入る空気燃料混合物の第1の成分は、好ましくはガスタービン燃焼器に入る燃料の5~25%を含有する。
【0076】
実験室結果は、比較的少量の成分の酸素を活用して、燃焼器安定性の比較的大きな増大およびNOx排出量の比較的大きな減少をもたらす能力を明確に実証する。ガスタービンの設計および動作についてのこれらの実質的な効果の主な利点は、以降のとおりである。
【0077】
(1)燃焼不安定性の他の有害な影響の中での燃焼安定性の範囲の拡大、ならびに火炎噴出および大規模な圧力振動のリスク低下。
【0078】
(2)電力出力が電力需要の頻繁な変動の影響を受ける産業用ガスタービン用のより信頼性が高く、リスクのない負荷追従能力。
【0079】
(3)特に、工業用に通常流通される天然ガスより有意に低い発熱量を有するガス燃料の場合の、燃料品質の変動に対するタービン動作のより大きな順応性。これは、空気燃料ガス化プロセスから生成される合成ガス状燃料を含み、最低約150Btu/scfの発熱量を有することができる。
【0080】
(4)従来の空気燃料駆動ガスタービンに典型的に使用されるよりも低い燃焼当量比での動作は、最新の空気燃料駆動ガスタービンにおいて現在使用中のもの(最高約2900~3000°Fである)よりも低いタービン入口温度をもたらし、それにより、新しい装置およびサイクルの設計を可能にし、具体的には、より高い圧縮器圧力比(圧縮器入口における空気圧に対する圧縮器出口における空気圧の比)または圧縮後の熱回収のいずれかを含むものの設計を可能にし、動作モードAおよびBにおいて以降で説明されるように、より低いNOx排出量をもたらす。しかしながら、これらのモードの利点を理解するために、ガスタービン性能のいくつかの熱力学的原理を最初に見直すことが有用である。
【0081】
最新のガスタービンエンジンの動作は、Brayton Cycleに従い、それは、a)断熱圧縮、b)定圧熱付加(燃焼器内)、c)タービン内の断熱膨張、およびd)ガスの理想的な定圧熱除去のステップを備える。ガスタービンは実際にはサイクルでは稼働せず、むしろ安定なフロー、つまりワンスループロセスであるため、この後者のステップ、すなわちd)は実際には発生しないが、圧縮器に連続的に入る空気の新鮮な充填によりシミュレートされる。Brayton Cycleに従って動作しているガスタービンのエネルギー効率は圧縮器圧力比に比例するが、電力出力はタービンエキスパンダーに入るガスの絶対温度に比例することは、当業者にはよく知られている。
【0082】
動作モードA。オキシ燃料パイロットバーナーを使用して燃焼安定性の上記の改善を得ることで、ガスタービンエンジン、したがって燃焼器は、空気燃料燃焼のみで実現可能なものより有意に高い空気燃料比(すなわち、より低い当量比、より燃料リーンな動作)で動作可能になる。他のすべての因子が等しい場合、このより希薄な燃焼は、空気燃料燃焼のみで発生するものより火炎温度を低下させ、したがってタービン入口温度を低下させる。しかしながら、燃焼器入口の空気温度、したがってタービン入口温度が圧縮器圧力比とともに増加するにつれて、改善された燃焼安定性を活用する1つの有利な方式は、タービンサイクルを修正し、従来の空気燃料駆動ガスタービンにおいて使用されるより高い圧縮器圧力比において動作させ、特に、最新の空気燃料ガスタービンにおいて使用される動作温度限界レベルまたはそれに近いレベルにタービン入口温度を戻す圧縮器圧力比において動作させることである。一実施形態では、少なくとも33:1の圧縮器圧力比を使用することができる(表2参照)。より一般的には、圧縮器圧力比の増加は、本明細書において説明されるようなオキシ燃料パイロットバーナーの使用により与えられる燃焼空気燃料比において増加関数となるであろう。
【0083】
動作モードB。オキシ燃料パイロットバーナーを使用することは、圧縮後の熱回収を可能にし、最新の空気燃料ガスタービンにおいて使用されるレベルまでタービン入口温度を増大させる。この概念の一実施形態は、
図12に示すように、圧縮器の下流および燃焼器の上流に配置された一次熱交換器と、タービン(エキスパンダー)の下流に配置された二次熱交換器とを使用する。2つの熱交換器は、空気、水、N2、CO2、または適切な熱力学的特性を備えた任意の他の熱伝達流体などの熱伝達流体を介して互いにエネルギー的に連絡し、熱伝達流体は、二次熱交換器内のタービン排気ガスから熱エネルギーを回収し、一次熱交換器を介して圧縮空気に前記熱エネルギーを送出する。空気温度の圧縮後/燃焼器前の上昇を発生させるように構成可能な多数の他の実施形態があることも理解されるべきである。一般に、これらは、温度T1を有する熱伝達流体を流す一次熱交換器により(すでに説明したように)広く分類され、温度T1は圧縮器空気出口温度より高い。熱伝達流体は、タービン排気ストリームに接続されていない手段により温度T1まで加熱してもよく、熱交換器内では、その熱エネルギーを圧縮空気に伝達する。例えば、
図13参照。そのような手段の例は、隣接する炉内プロセスからの廃熱、および空気または他の適切な酸化剤を使用した廃燃料の直接燃焼からの燃焼生成物を含む。なお、
図12および
図13の両方に示される圧縮器およびタービンは、必ずしも共通のシャフトを使用して動作するわけではない。
【0084】
また、オキシ燃料パイロットバーナーを使用することは、従来の空気燃料駆動ガスタービンにおいて実現可能なものよりも低いNOx排出量を可能にする。
【0085】
【0086】
公称180MWまでの正味電力出力に値する既存の産業用ガスタービン発電機に関連する設計および動作データでプログラムされた市販のASPENソフトウェアを使用して計算を行い、例えば、上記の動作モードAおよびBにおいて提案された新規設計および動作モードにより可能な熱効率の改善を推定した。表2にまとめられた計算の結果は、モードAの場合、基準空気燃料動作より熱効率の約10%の(相対的)増加、およびモードBの基準空気燃料動作より熱効率の17%の(相対的)増加を示している。
【0087】
なお、表2に規定される当量比は、試験中に得られ、表1に提示されたものと大きさが異なり、具体的には、表2に列挙された当量比は、表1のそれぞれの経験的な空気燃料当量比およびオキシ燃料当量比よりも高く、より低い燃焼空気燃料比を示している。これは、実験室試験を完了する前にモデル計算が行われたためである。経験的に得られた空気燃料当量比とオキシ燃料当量比との間には、モデルにおいて想定されるものより実質的に大きな相違があるため、オキシ燃料の場合に計算された効率利得は、モデル計算が入力として経験的当量比を使用した場合になるものよりも低いと仮定することが妥当である。
【0088】
本発明は、それらの例において開示された特定の態様または実施形態により範囲を限定されるものではなく、それらは本発明のいくつかの態様の例示として意図され、機能的に等価である任意の実施形態は、本発明の範囲内にある。本明細書に示され、説明されるものに加えて、本発明のさまざまな修正が、当業者には明らかになり、添付の請求項の範囲内にあることと意図される。