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特許7165237不確実性を伴う液滴ベースの付加製造プロセスのための加工形状推定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】不確実性を伴う液滴ベースの付加製造プロセスのための加工形状推定
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20221026BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20221026BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20221026BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20221026BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20221026BHJP
   G06F 113/10 20200101ALN20221026BHJP
   G06F 119/18 20200101ALN20221026BHJP
【FI】
G06F30/10 100
B22F3/16
B22F10/85
B29C64/386
B33Y50/00
G06F113:10
G06F119:18
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021091623
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2021197169
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】16/899,005
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】スヴィヤトスラフ・コルニーブ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィダヤンナサン・ティアガラジャン
(72)【発明者】
【氏名】サイゴパル・ネラトゥリ
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/217903(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0329499(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0143006(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0166909(US,A1)
【文献】Svyatoslav Korneev et al.,Fabricated shape estimation for additive manufacturing processes with uncertainty,Computer-Aided Design [online],2020年05月,Vol.127, Article 102852,Pages 1-12,<DOI: 10.1016/j.cad.2020.102852>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
B22F 3/16
B22F 10/85
B29C 64/386
B33Y 50/00
G06F 113/10
G06F 119/18
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品部品の複数の走査された印刷部及び走査経路を受信することと、
走査経路表現内のそれぞれの前記印刷部を解析することによって、前記製品部品の最小印刷可能特徴部の形状を決定することと、
前記解析に基づいて前記最小印刷可能特徴部の製造誤差を決定することと、
前記最小印刷可能特徴部の決定された製造誤差に基づいて前記製品部品の形状の製造誤差を決定することと、
前記製品部品の決定された製造誤差に基づいて前記製品部品の推定製造形状を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記製品部品は、前記走査経路に沿って堆積された複数の最小印刷可能特徴部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記製品部品の製造誤差を決定することは、前記最小印刷可能特徴部を前記走査経路で掃引することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記製品部品の形状の製造誤差及び前記推定製造形状を決定することは、前記複数の最小印刷可能特徴部が前記印刷部のあらゆる場所にあると仮定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記最小印刷可能特徴部は、基板上で固化した後の液滴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記走査経路表現内のそれぞれの前記印刷部を解析することは、前記走査経路表現内のそれぞれの前記印刷部を統計的に解析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記最小印刷可能特徴部の形状の製造誤差を決定することを更に含み、前記最小印刷可能特徴部の形状の製造誤差を決定することは、複数の表面上の前記最小印刷可能特徴部の推定された形状を使用して、前記最小印刷可能特徴部の形の製造誤差を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最小印刷可能特徴部の製造誤差を決定することは、確率モデルを使用して、前記最小印刷可能特徴部の製造誤差を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記製品部品は、磁気流体力学堆積システムを使用して印刷される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
システムであって、
プロセッサと、
コンピュータプログラム命令を記憶しているメモリと、を含み、前記コンピュータプログラム命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
製品部品の複数の走査された印刷部及び走査経路を受信することと、
走査経路表現内のそれぞれの前記印刷部を統計的に解析することによって前記製品部品の最小印刷可能特徴部の形状を決定することと、
前記印刷部を統計的解析することに基づいて前記最小印刷可能特徴部の製造誤差を決定することと、
前記最小印刷可能特徴部の決定された製造誤差に基づいて前記製品部品の形状の製造誤差を決定することと、
前記製品部品の決定された製造誤差に基づいて前記製品部品の推定製造形状を生成することとを、含む、動作を実施させる、システム。
【請求項11】
前記製品部品は、前記走査経路に沿って堆積された複数の最小印刷可能特徴部を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記製品部品の製造誤差を決定することは、前記最小印刷可能特徴部を前記走査経路で掃引することを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記製品部品の形状の製造誤差及び前記推定製造形状を決定することは、前記複数の最小印刷可能特徴部が前記印刷部のあらゆる場所にあると仮定することを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記最小印刷可能特徴部は、基板上で固化した後の液滴を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記走査経路表現内のそれぞれの前記印刷部を解析することは、前記走査経路表現内のそれぞれの前記印刷部を統計的に解析することを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記最小印刷可能特徴部の形状の製造誤差を決定することを更に含み、前記最小印刷可能特徴部の形状の製造誤差を決定することは、複数のランダムに生成された表面上の前記最小印刷可能特徴部の推定された形状を使用して、前記最小印刷可能特徴部の形の製造誤差を決定することを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記最小印刷可能特徴部の製造誤差を決定することは、確率モデルを使用して、前記最小印刷可能特徴部の製造誤差を決定することを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記製品部品は、磁気流体力学堆積システムを使用して印刷される、請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
多人数会話において質問に対する回答を決定するためのコンピュータプログラム命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータプログラム命令は、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
製品部品の複数の走査された印刷部及び走査経路を受信することと、
走査経路表現内のそれぞれの前記印刷部を解析することによって前記製品部品の最小印刷可能特徴部の形状を決定することと、
前記解析に基づいて前記最小印刷可能特徴部の製造誤差を決定することと、
前記最小印刷可能特徴部の決定された製造誤差に基づいて前記製品部品の形状の製造誤差を決定することと、
前記製品部品の決定された製造誤差に基づいて前記製品部品の推定製造形状を生成することとを、含む、動作を実施させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記製品部品は、前記走査経路に沿って堆積された複数の最小印刷可能特徴部を含む、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械部品の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造技術の近年の進歩により、強力な設計方法の開発が活発となり、高度に複雑な機能性部品を設計者が作製することを可能にした。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載される実施形態には、製品部品の複数の走査された印刷部及び走査経路を受信することを含む方法が含まれる。製品部品の最小印刷可能特徴部の形状は、走査経路表現内のそれぞれの印刷部を解析することによって決定される。最小印刷可能特徴部の製造誤差は、解析に基づいて決定される。部品の形状の製造誤差は、最小印刷可能特徴部の決定された製造誤差に基づいて決定される。部品の推定製造形状は、その部品の決定された製造誤差に基づいて生成される。
【0004】
システムは、プロセッサと、プロセッサによって実行されると、プロセッサに動作を実施させるコンピュータプログラム命令を記憶しているメモリと、を含む。その動作は、製品部品の複数の走査された印刷部及び走査経路を受信することを含む。製品部品の最小印刷可能特徴部の形状は、走査経路表現内のそれぞれの印刷部を解析することによって決定される。最小印刷可能特徴部の製造誤差は、解析に基づいて決定される。部品の形状の製造誤差は、最小印刷可能特徴部の決定された製造誤差に基づいて決定される。部品の推定製造形状は、その部品の決定された製造誤差に基づいて生成される。
【0005】
非一時的コンピュータ可読媒体がコンピュータプログラム命令を記憶し、コンピュータプログラム命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに動作を実施させる。その動作は、製品部品の複数の走査された印刷部及び走査経路を受信することを含む。製品部品の最小印刷可能特徴部の形状は、走査経路表現内のそれぞれの印刷部を解析することによって決定される。最小印刷可能特徴部の製造誤差は、解析に基づいて決定される。部品の形状の製造誤差は、最小印刷可能特徴部の決定された製造誤差に基づいて決定される。部品の推定製造形状は、その部品の決定された製造誤差に基づいて生成される。
【0006】
上記の概要は、各実施形態又は全ての実装態様を説明することを意図したものではない。添付図面と併せて、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによって、より完全な理解が明らかとなり、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本明細書に記載される実施形態による、基板上の固化液滴の形状を予測するためのプロセスを示す。
図2】本明細書に記載される実施形態による、基板及び液滴を有する出力シミュレーションを示す。
図3A】本明細書に記載される実施形態による、3つの訓練セットを代表する基板形状の例を示す。
図3B】本明細書に記載される実施形態による、3つの訓練セットを代表する基板形状の例を示す。
図3C】本明細書に記載される実施形態による、3つの訓練セットを代表する基板形状の例を示す。
図4A】本明細書に記載される実施形態による、3つの訓練セットからの例示的な代表的出力を示す。
図4B】本明細書に記載される実施形態による、3つの訓練セットからの例示的な代表的出力を示す。
図4C】本明細書に記載される実施形態による、3つの訓練セットからの例示的な代表的出力を示す。
図4D】本明細書に記載される実施形態による、3つの訓練セットからの例示的な代表的出力を示す。
図4E】本明細書に記載される実施形態による、3つの訓練セットからの例示的な代表的出力を示す。
図4F】本明細書に記載される実施形態による、3つの訓練セットからの例示的な代表的出力を示す。
図5A】本明細書に記載される実施形態による、形状の推定高さ場の例を示す。
図5B】本明細書に記載される実施形態による、形状の推定高さ場の例を示す。
図6A】本明細書に記載される実施形態による、例示的なドロップオンデマンド型磁気流体力学(magnetohydrodynamic、MHD)堆積システムを示す。
図6B】本明細書に記載される実施形態による、パルス状磁気コイルによって生成された磁界、並びに射出された液体アルミニウムの体積分率を示すシミュレーションモデルを示す。
図7】本明細書に記載される実施形態による、異なる時間における基板表面上の液滴の固体分画を示す。
図8】本明細書に記載される実施形態による、異なる時間における液滴の緩やかな冷却及び基板への熱伝達を示す固化液滴の温度マップを示す。
図9】本明細書に記載される実施形態による、2つの液滴の温度マップを示す。
図10】本明細書に記載される実施形態による、三次元における表面として可視化された、均質なディリクレ境界条件を伴う正方形領域上の最初の4つのラプラシアン固有関数を示す。
図11】本明細書に記載される実施形態による、3Dプリンタによって印刷された一組の線の上面図の画像を示す。
図12A】本明細書に記載される実施形態による、高さ場の二次元配列出力を示す。
図12B】本明細書に記載される実施形態による、単一の液滴のボクセル表現を示す。
図13】本明細書に記載される実施形態による、色強度が確率に対応するボクセル確率の体積プロットを示す。
図14】本明細書に記載される実施形態による、ニューラルネットワークを使用した計算のためのサロゲートモデルを示す。
図15】本明細書に記載される実施形態による、液滴の個数に対する時間のプロットを示す。
図16A】本明細書に記載される実施形態による、製造時の形状の表現を示す。
図16B】本明細書に記載される実施形態による、製造時の形状の表現を示す。
図16C】本明細書に記載される実施形態による、製造時の形状の表現を示す。
図17】本明細書に記載される実施形態を実現することが可能なシステムのブロック図を示す。
【0008】
図面は、必ずしも縮尺どおりではない。図面に使用される同様の数字は、同様の構成要素を指す。しかしながら、所与の図の構成要素を指す数字の使用は、同じ数字でラベル付けされた別の図における構成要素を制限することを意図していないことが理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、付加製造(additive manufacturing、AM)に関する。多くのこのような方法はしばしば、任意の設計された形状を、例えば3Dプリンタを使用して加工することができ、また、結果として得られる部品は、設計された形状に完全に一致するか、あるいは許容可能な誤差を伴って一致するという仮定の下で機能する。しかしながら、実際には、選択されたAMプロセス、プリンタの機械的特性、又は使用される材料が、最小印刷可能特徴部サイズの形態で特定の設計の印刷可能性に著しい制限をもたらし得る。
【0010】
本明細書に記載される実施形態は、液滴ベースの付加製造プロセスにおける印刷時の形状を推定するための計算効率的なアルゴリズムを含む。製造プロセスにおける不確実性は、起こり得る印刷時の形状の範囲につながり得る。本開示では、最初に、完全な印刷時の形状の計算、すなわち、付加製造機械が所定の計画を正確に実行することについて説明し、また、液滴の堆積位置、周波数、温度、及び他のパラメータにおける変動性などの製造不完全性を考慮したときの印刷時の形状の予測について説明する。印刷時の形状の予測は、三次元での多相流及び熱伝達など、複雑な物理現象を捕捉する高度に非線形な時間依存性の偏微分方程式を解くことを伴う。このような複雑な方程式系を、最高仕様の最新のデスクトップコンピュータ上で解くには計算コストがかかる。例えば、高忠実度モデルを使用して単一の液滴が堆積する物理現象をシミュレートするには、約1時間のコンピュータ時間が必要となる。部品の構築をシミュレートするために、数百万(又は数十億)の液滴が必要となり得る。したがって、このような複雑性に対処するために、本明細書に記載される実施形態は、ハイブリッド機械学習に基づいた液滴体積の物理現象に対する効率的な低次元化モデルを伴う。この低次元化モデルは、液滴堆積をシミュレートするための計算時間を1ミリ秒に短縮するという利点を有する。この高度に効率的な低次元化モデルを使用することにより、印刷される部品の形状を分単位で推定することが可能となり、それにより、ユーザーが、プリンタを実際に稼働させることなく印刷プロセス計画の結果を可視化することが可能となる。
【0011】
本明細書に記載される実施形態は、様々な条件下で固化した液滴の形状を予測する方法を示す。考えられる1つの解決策は、固液界面を好適に追跡する熱流体多相モデルなどの高忠実度モデルを解くことである。固化をモデル化するための1つの単純な方法は、追加の温度依存性の運動量損失項をナビエストークスの式に加えることによるものである。このような高忠実度モデルの欠点は、その高い計算コストである。例えば、(このようなモデルを使用した)単一の液滴の堆積シミュレーションは、最高仕様の最新のデスクトップコンピュータ上で1時間超を要することもある。このように、部品形状を予測するための数百万の液滴のコンピュータシミュレーションは非常に不経済であり、したがって実行不可能である。様々な実施形態によれば、平坦な表面上の固化した液滴の形状のための解析解を開発して、平坦な表面上の固化した液滴の形状を予測することができる。これらの方法は、基板形状の影響を考慮したものではない。このことは制限的な要因となるが、それは、固化した液滴の形状に対して、また結果として得られる機械的特性に対して基材形状が高度な影響を及ぼすことが見出されているからである。
【0012】
図1は、本明細書に記載される実施形態による、基板上の固化した液滴の形状を予測するためのプロセスを示す。基板の幾何学的形状は、ニューラルネットワークで受信される(110)。基板は、少なくとも1つの液滴を受容するように構成される。ニューラルネットワークは、1つ以上の訓練セットを使用して訓練されてもよく、各訓練セットは、異なるタイプの基材形状、及び製造プロセスパラメータの集合を含む。様々な実現形態によれば、訓練セットは、わずかに湾曲した表面、高度に湾曲した表面、粗い表面、及び階段状の表面のうちの1つ以上を含む。基板の受容形状は、基材の3D表現であってもよい。
【0013】
少なくとも1つの液滴の形状が、その液滴が基板上に堆積された後に、受信された形状に基づいて決定される(120)。様々な実施形態によれば、その形状は、基材上に堆積した後の少なくとも1つの液滴の3D表現を含む。いくつかの実現形態によれば、基材上に堆積された後の少なくとも1つの液滴の形状を決定することは、高忠実度モデル及び定常状態モデルのうちの1つ以上を使用して、少なくとも1つの液滴の形状を決定することを含む。
【0014】
少なくとも1つの液滴の決定された形状を表現する出力が生成される(130)。出力は、受信された形状に基づいて形状を決定することによって取得された形状の3D表現であってもよい。印刷時の部品の形状は、考えられる全ての液滴形状の確率密度関数とツール経路との重畳積分を使用して推定され得る。この方法はまた、部品形状の効率的な推定を可能にする。しかしながら、これは部品形状を表す確率場に過ぎず、印刷時の部品(全体的)の形状に対する液滴レベル(局所的)の影響を捕捉するものではない。本明細書に記載される実施形態によると、製品部品の形状は、その製品部分が複数の液滴を含む出力に基づいて推定される。
【0015】
本明細書に記載される高忠実度の実施形態は、より伝統的なアプローチと比較して非常に高い計算効率を有する。この効率は、ハイブリッド機械学習アプローチを使用してモデルの複雑性を低減することによって達成される。この方法のコアアイデアは、任意の形状の基材上に落下する液滴の定常状態形状を学習するように人工ニューラルネットワーク(ANN)を訓練することである。具体的には、ネットワークへの入力は基板形状であり、ネットワークからの出力は、固化した液滴の形状である。ネットワークが訓練されると(これは1回の努力である)、任意の所与の幾何学的形状に対して固化した液滴の形状を予測することは、一組の行列とベクトルの乗算/加算に帰着する。これらの基本的な線形代数演算は、(CPU及び/又はGPUコア上で)並列化によって非常に効率的に実施され得る。したがって、訓練されたネットワークは、固化した液滴の形状を非常に効率的に予測することができる。このアプローチの別の利点として、訓練データセットは、高忠実度モデル(例えば、熱流体多相流動シミュレーション)、簡素化モデル(液滴の定常状態形状など)及び/又は実際の実験を組み合わせることによって取得され得る。
【0016】
様々な実施形態によれば、訓練データセットは、ランダムに生成された基材形状への液滴堆積の簡素化された定常状態シミュレーションに基づいて生成される。定常状態シミュレーションは計算効率的であるが、それらは、全ての関連する物理現象を液滴スケールで捕捉するものではない。したがって、定常状態シミュレーションの精度を改善するために、訓練セットは、直接的な実験測定から得られる固化した液滴の形状で増補されてもよい。いくつかの実現形態では、定常状態モデルは、訓練データセットの生成を更に加速するために、高忠実度解法と組み合わされ得る。
【0017】
本明細書に記載される実施形態の計算効率は、一連の近似法及びモデル次数低減を使用することによって達成され得る。3Dの液滴形状の次元は、2Dの高さ場へと低減され得る。固化した液滴はその形状を変化させないと仮定され得る。後者の仮定は、堆積現象の分離を可能にし、それによって、ある湾曲した表面への単一の液滴の堆積へと問題が低減される。一般に、この分離は、固化した液滴の形状が液滴の堆積速度及び隣接する液滴からの熱伝達率に依存するため、有効ではない。換言すれば、この分離は、液滴堆積の頻度が低い場合、及び/又は液滴が重ならない様式で堆積されるときにのみ有効である。液滴堆積の頻度が高いほど、熱流束が高くなり、それによって、固化した液滴の再溶融が誘発される。重ならない様式での液滴堆積は、直接的な液滴の相互作用が回避され、したがって局所的な熱伝達が回避されるため、再溶融を回避する。第3に、液滴モデルの計算複雑性を低減するために、人工ニューラルネットワーク(ANN)が使用される。ニューラルネットワークは、2つの主要構成要素を有する。第1の構成要素は、ネットワークアーキテクチャの設計、すなわち、層/ニューロンの数/種類、及びその相互作用である。第2の主要構成要素は、ニューラルネットワークを訓練するために用いられる訓練データセットである。
【0018】
ネットワーク構造のある実施形態では、線形層、双曲線正接活性化関数、重畳層、及びバッチ正規化層の組み合わせである。最終層は、出力を適切に閾値設定するためのランプ活性化関数を有する。このアプローチの一部として、入力としての基板の形状と、出力としての固化した液滴の高さ場と、を含む訓練セットが作成される。ここで、高さは、堆積基板から基板上に装着されたカメラ又はセンサまでの距離として測定される。訓練セットを作成するために、ソフトウェアを使用して、総合的な液滴エネルギーを最小化することによって液滴の定常状態形状を予測してもよい。液滴エネルギーは、表面張力、圧力、及び/又は重力の影響を考慮することによって計算され得る。基板220と液滴210とを有する出力シミュレーションが図2に示されている。
【0019】
本明細書に記載される実施形態によれば、2つの自由に調整可能なパラメータ、すなわち、重力定数及び液滴接触角が使用される。これらのパラメータを調整することにより、平坦な表面上の液滴の定常状態形状が、実際の実験によって観察された形状と一致することが確実となり得る。ANNを訓練することは、大きな代表的な訓練データセットを使用することを伴い得る。ここでは、様々な種類の基板形状を表現する3組の訓練データセットが生成された。各訓練セットは、約10,000のデータポイントを有する。各訓練セットからの液滴形状310、330、350の例が図3A図3Cに示されている。3つの訓練データセットは、主に基板形状の性質において異なる。図3A図3B、及び図3Cはそれぞれ、第1のセット、第2のセット、及び第3のセットの例を示す。第1のセットにおいて、基板形状320は、わずかに湾曲した表面である。第2のセットにおいて、基板形状340は、1つ以上の段差特徴部345を有する階段状の表面を含む。第3のセットは、高度に湾曲した表面を有する基材形状360を含む。
【0020】
第1のセットのためのランダムな表面を生成するために、基板形状は、制御点、パッチ表面、細分化表面などを有するスプライン表面などの湾曲した表面を表現するために、いくつかの技術の中でも、高調波基底関数の一次結合として表現され得る。このような表面ごとに、定常状態の液滴形状が計算される。次いで、堆積表面の高さ場が、堆積表面から測定された液滴高さ(すなわち、堆積表面からのオフセット)に加えて、ファイルにエクスポートされる。堆積表面の幾何学的形状はネットワークへの入力であり、液滴高さ(すなわち、オフセット)はネットワークからの出力である。各入力及び出力は、例えば、画像である。
【0021】
訓練セットからの例が図4A図4Fに示されている。図4Aは、高さ場として表現された例示的な基板形状を示す。この例では、第1のセクション410は、第2のセクション420よりも更に離れている。2つの異なるセクションが示されているが、高さ場に表現された高さのスペクトルが存在することを理解されたい。図4B図4Dは、固化した液滴の例を示す。同様に、図4Eは、高さ場として表現された別の例示的な基板形状を示す。この例では、第1のセクション450は、第2のセクション460よりも更に離れている。図4Fは、例示的な固化した液滴を示す。
【0022】
ニューラルネットワークを訓練した後、部品の印刷は、スライスごとに経路(Gコードによって決定される)に沿って液滴を反復的に配置することによって推定され得る。したがって、推定される形状を表現する出力が生成される。図5A及び図5Bは、本明細書に記載される実施形態による、形状の推定高さ場の例を示す。
【0023】
いかなる製造プロセスにおいても不確実性があると、名目設計と加工物との間に狂いが生じてしまう。名目上の設計形状及び材料レイアウトが、AMプロセスにおいて常に変更され、形状のばらつきが、(意図しない)多孔性及び表面粗さなどの望ましくない影響をもたらす可能性がある。これらはひいては、残留応力、亀裂の発生などの疲労破壊メカニズムによる性能劣化につながる可能性があり、あるいはバルク機械特性に悪影響を及ぼす可能性もある。高応力用途向けに設計された金属部品は、使用中の破損の可能性を最小限に抑えるために、滑らかな表面で完全に高密度化されるべきである。このような特性は機械加工でも実現可能であるが、AMを使用して実現可能である外形の複雑性は、それ以外の方法では加工が不可能となり得る機能的な高性能軽量部品の製造を可能にする。金属AMのこの特徴は、公称設計と、選択されたAMプロセスパラメータと製造誤差との組み合わせに起因して生じる、その対応する様々なクラスの形状と、の関係を理解する要求を高めることになる。本明細書に記載される実施形態は、金属AMプロセスを選択することに関連するが、同様の問題がポリマーAMにおいても生じることが観察され得る。
【0024】
AMプロセスパラメータと加工された部品の特性との複雑な関係は、主として部品を加工し、それらの微細構造を研究すること又は(異方性の)材料特性を決定するための機械的試験によって、相当な注目を集めてきた。金属AMについては、LOM及びSEMによる微細構造イメージングを使用して、粒形態、粒質、及び粉末床溶融結合法(Powder Bed Fusion)及び指向性エネルギー堆積(Direct Energy Deposition)プロセスのための相識別など、微細構造詳細が研究される。これらのプロセスで見られる柱状粒子の配向は、AMプロセスの鍵となる材料の相変化を誘起するための走査戦略と印加エネルギーの組み合わせによって大きく影響される。プロセスパラメータを特定の製造駆動構造及び材料変動にマッピングするための実験分析は、金属AMプロセスにおける各材料及びプロセスの組み合わせにつき、1件ずつ行われる。いくつかのAM技術、応用、及び試験戦略の利用可能性が故に、冶金及び加工科学に関する多くの文献が存在する。
【0025】
AMは独立型のプロセスではなく、典型的には、残留応力を緩和するため及び/又は機械的性能を改善するための熱処理に続くものであり、また部品表面の品質を改善するため及び/又は支持材料を除去するための機械加工に続くものである。後処理を使用する用途では、支持材料の除去及び/又は荒い部品表面の仕上げなどの後処理作業が計画され得る。装置製造業者は、(支持材料を除く)全体的な加工形状が、公称設計に可能な限り近いことを確実にするために、最小特徴サイズ/解像度、表面粗さ、及び精度などの外形特性に関心を持っている。したがって、公称設計からの多孔性、粗さ、及び幾何学的形状のずれなどの重要な特性が加工前に特徴付けられ得るように、公称設計に対応する加工形状の推定は、AMプロセスパラメータの関数としてなされ得る。これまで、製造されたままの部品形状の計算上のモデル化と表現については、ほとんど注目されていなかった。製造時の部品形状を効果的に形状モデル化することで、多数の構築によるコストのかかる試行錯誤を省き、許容可能な部品品質をもたらすパラメータ値に迅速に収束することによって、プロセス計画を支援することになる。
【0026】
本明細書に記載される実施形態は、製造不確実性を考慮しながら、AMプロセスパラメータの関数としての製造時の形状として効率的に推定する手法を示す。このアプローチは、不確実性の定量化を伴う予測推定という古典的なアイデアを用いたものである。実験データはまず、固定された一組のプロセスパラメータについて、単純な形状の走査された印刷部の形態で取り入れられる。局所的な材料堆積に関連する入力の不確定性が定量化される。これは、逆問題を解いて、走査された部品を構築するために使用される工具経路との重畳積分が、一群の走査された形状を最良に表現する確率カーネルのパラメータを推定することによってなされる。この逆問題は2段階で解かれる。最初に、一群の走査された形状が、反復的な逆重畳積分アルゴリズムを解くことによって、カーネルのパラメータ化されていない表現にマッピングされる。反復アルゴリズムの良好な初期条件は、最小製造スケール(すなわち、最小特徴部サイズのスケール)でAM物理現象を捕捉するマルチフィジックス問題を解くことによって取得される。逆重畳積分から生じるパラメータ化されていない場は、最小の製造可能特徴部に対する材料堆積の空間確率(測定誤差と結合される)に近似する。次いで、この場は、確率カーネルと見なされる既知の空間的に変化する関数(例えば、ガウス分布)に関してパラメータ化される。パラメータ化されていない場を最良に近似するカーネルパラメータを解くと、固定されたAMプロセスパラメータからカーネルパラメータへのマッピングがもたらされる。プロセスパラメータを変更することによって、いくつかの実験に対してこのプロセスを繰り返すことにより、AMプロセスパラメータからカーネルパラメータへのマッピングを学習するニューラルネットワークに供給されるデータセットが生成される。したがって、一組のAMプロセスパラメータを与えられると、局所的な材料堆積における不確実性を捕捉するカーネルパラメータが迅速に推定され得る。本明細書に記載される実施形態では、計算アプローチを説明するために、図6Aに示されるドロップオンデマンド型磁気流体力学(MHD)堆積システムが使用され得る。他の種類の印刷プロセス及び/又はシステムが使用されてもよいことを理解されたい。
【0027】
MHD法では、スプールされた中実金属ワイヤ(例えば、アルミニウムワイヤ)610が、磁気流体力学的印刷ヘッドのセラミック加熱チャンバ620内に連続的に供給され、抵抗溶融され、毛管力を介して射出チャンバに供給する液体金属の貯蔵器を形成する。コイル625は、射出チャンバを少なくとも部分的に取り囲み、かつ電気的にパルス化され(640)、液体金属に浸透し、その中に閉ループ過度電界を誘起する過渡磁界を作る。電界は、過渡磁界にバックカップリングする循環電流密度を生じさせ、チャンバ内に磁気流体力学的ローレンツ力密度を作り出す。この力の動径成分は、液体金属液滴をノズル開口部から射出するように作用する圧力を生成する。射出された液滴は、基材650に移動し、そこで、融合し、凝固し、伸長した固体構造体を形成する。三次元構造体は、精密なパターン堆積を可能にするコントローラによって制御される移動基材650を使用して、層ごとに印刷される。図6Bは、パルス状磁気コイルによって生成された磁界、並びに射出された液体アルミニウムの体積分率を示すシミュレーションモデルを示す。
【0028】
本明細書に記載される実施形態は、特定の堆積パターン(又は工具経路)に沿って材料の蓄積を追跡する順問題を解くことによって、製造時の部品形状を構築する方法を含む。この良設定問題を解くことは、堆積パターンに沿った各場所に蓄積された材料の局所的推定を伴う。したがって、局所的な材料堆積の物理現象は、最小の製造スケール、すなわち、最小の印刷可能特徴部のスケールで解決される。ドロップオンデマンド型MHDシステムでは、局所的な材料蓄積の推定は、液滴合体を捕捉するマルチフィジックス問題をモデリングすることを伴う。最小印刷可能特徴部は固化した液滴であり、その形状は、プロセスパラメータ、すなわち、液滴温度、堆積頻度、堆積が生じる基板の形状(層が増大するとき、表面粗さ及び曲率が合体に影響を及ぼす)、堆積パターン、及び製造不確実性の組み合わせに依存する。
【0029】
製造不確実性を考慮しながら製造時の形状を推定するためのプロセスが本明細書に記載される。製品部品の複数の走査された印刷部及び走査経路が受信される。様々な実現形態によれば、部品は、磁気流体力学堆積システムを使用して印刷される。本明細書に記載される実施形態によれば、部品は、走査経路に沿って堆積された複数の最小印刷可能特徴部を含む。製品部品の最小印刷可能特徴部の形状は、走査経路表現内のそれぞれの印刷部を解析することによって決定される。場合によっては、最小印刷可能特徴部の形状は、走査経路表現内のそれぞれの印刷部を統計的に解析することによって決定される。様々な実施形態によれば、最小印刷可能特徴部は、基板上で固化した後の液滴を含む。最小印刷可能特徴部の形状は、基板上で固化した後の最小印刷可能特徴部の高さを含み得る。
【0030】
上述のような基板形状を含むプロセスパラメータの組み合わせに依存する、最小印刷可能特徴部の製造誤差は、解析に基づいて決定される。様々な実現形態によれば、最小印刷可能特徴部の形状の製造誤差を決定することは、複数のランダムに生成された表面上の最小印刷可能特徴部の推定された形状を使用して、最小印刷可能特徴部の形状の製造誤差を決定することを含む。場合によっては、最小印刷可能特徴部の製造誤差を決定することは、確率モデル(例えば、多変量ガウス)を使用して、最小印刷可能特徴部の製造誤差を決定することを含む。
【0031】
部品の形状の製造誤差は、最小印刷可能特徴部の決定された製造誤差に基づいて決定される。様々な実現形態によれば、部品の形状の製造誤差は、最小印刷可能特徴部を走査経路で掃引することを含む。本明細書に記載される様々な実施形態によれば、部品の形状の製造誤差及び推定された製造形状を決定することは、複数の最小印刷可能特徴部が全ての場所で同じ形状を有すると仮定することを含む。部品の推定製造形状は、その部品の決定された製造誤差に基づいて生成される。
【0032】
様々な実施形態によれば、最初に、順問題は、製造不確実性を考慮することなく解決され、湾曲した表面上での液滴合体に対するマルチフィジックスモデルを提示する。このマルチフィジックス問題に対する解決策は、相当な計算リソースを必要とすることがあり、また、実用的な部品製造のために1滴ずつの基準で解決することは実用的ではない。しかしながら、プロセスパラメータ値のいくつかの組み合わせについてこの数値的問題を解決することは、製造不確実性を考慮しながら、離散化されたPDEソルバーのサロゲートモデルを構成するために使用され得る訓練セットを構築するのに役立つ。ドロップオンデマンド型MHDシステムでは、結合された多相非圧縮性のナビエストークス及び熱伝達の連立方程式を解くことによって、ガウスの曲率κを有する表面上での局所的な材料堆積がモデル化される。
【0033】
【数1】
zzzImage1zzz
ここで、下付き文字iは、相、例えば、液相又は気相を表し、tは時間であり、uは速度ベクトルであり、vは動粘度であり、pは圧力、g重力定数であり、fσは、表面張力をモデル化する力であり、D(T)は相転移をモデル化するダルシー項であり、σは表面張力定数であり、κは相間の境界の曲率であり、Tは温度である。1msの時間ステップが使用されて、中間の液滴固化及び温度プロファイルが取得される。図7は、異なる時間における基板表面上の液滴の固体画分を示す。時間ステップ710は、基板上に位置する前の完全に液状の液滴を示す。時間ステップ712、714、716、718、720、722、724、726は、固化の様々な段階における液滴を示し、時間ステップ728は、基板上で完全に固化した液滴を示す。同様に、図8Bは、異なる時間における液滴の緩やかな冷却及び基板への熱伝達を示す固化液滴の温度マップを示す。時間ステップ810は、基板上に位置する前の完全に液状の液滴を示す。時間ステップ812、814、816、818、820、822、824、826は、固化の様々な段階における液滴を示し、時間ステップ828は、基板上で完全に固化した液滴を示す。
【0034】
図8及び図9は、平坦な表面に落下する単一の液滴の場合についてシミュレーションが行われているところを示すが、本明細書に記載される実施形態は、表面上の複数の液滴の固化形状を決定するために使用され得ることを理解されたい。複数の液滴が堆積され、同時に固化すると、以前に堆積され固化する液滴の曲率及び温度は、製造時の形状に影響を及ぼす。図9に液滴合体が示されているが、結合された進行型温度プロファイルを見ることができる。時間ステップ910において、第1の液滴922及び第2の液滴924は、基板920にまだ到達していない。時間ステップ930において、第1の液滴922は基板920と接触しており、また液滴924が基板に到達していない間に冷却及び固化を開始している。時間ステップ950において、第1の液滴922と第2の液滴924の両方が、基材920の表面に到達しており、固化し始めている。最後に、時間ステップ970は、第1の液滴922と第2の液滴924の両方を伴う950よりも後の時間ステップが基材920の表面に到達しており、固化し始めているところを示す。第1の液滴922は、第2の液滴924の前に堆積されたため、固化プロセスに更に沿っていることが観察され得る。各時間ステップは、完了するまで約1時間を要する。したがって、完全に結合された数値的方法を使用した製造時の部品形状のシミュレーションは、現実的な部品には縮尺されない。
【0035】
本明細書に記載される実施形態は、最小製造スケール(すなわち、液滴スケール)での製造プロセスにおける不確実性を特徴付ける方法を含む。これを行うために、様々なガウス曲率を有するランダムに生成された表面上での液滴堆積のシミュレーションを実行することによって、訓練セットが構築される。最終部品の表面粗さ及び多孔性は、以前に固化した層上の材料の蓄積的な構築(平坦な基材とみなすことができない)によって直接影響されるため、湾曲した表面上での液滴固化を捕捉することが重要である。
【0036】
本明細書に記載される実施形態は、6つの基底関数の一次結合を使用してランダム表面を生成することを含み、各基底関数は、均質なディリクレ境界条件を伴う正方形領域における(2D)ラプラス演算子の固有関数であり、線形係数はランダム値である。この単純な例におけるラプラス固有値は、2変数の三角関数である。図10は、三次元における表面として可視化された、均質なディリクレ境界条件を伴う正方形領域上の最初の4つのラプラシアン固有関数1010、1020、1030、1040を示す。固有値の加重和は、R3に埋め込まれた表面として表現される。ランダムな湾曲した表面を生成するための多数の他のアプローチも考えられる。
【0037】
堆積点における基板のガウス曲率κに加えて、液滴温度Td及び基板温度Tsも、液滴形状を決める重要なプロセスパラメータと見なされる。固化した液滴の形状は重要となることもあり、シミュレーション時間は、1283のグリッドサイズに対して約1時間の計算時間を要し得る。最終の時間ステップにおける各シミュレーションの出力は、三次元グリッド上の2進値(指標関数)として表現される固化した液滴であるが、印刷された液滴がシミュレートされた液滴と厳密に同じ形状を有する可能性は非常に低い。これは、製造誤差及び材料蓄積誤差によるものである。この誤差をモデル化するために、MHDプロセスを使用して、T、T、κの固定値について、いくつかの液滴が別個の(重ならない)位置で印刷される。これらの異質の形状は、それぞれの空間方向において20μmの走査解像度を有するKaysen表面スキャナを使用して個別に走査される。図11は、3Dプリンタによって印刷された一組の線の上面図の画像を示す。画像は、Kaysenスキャナによって取得される。カラーコーディングは、カメラ位置に対する走査された画素の高さを示す。図12Aは、図11と同様の画像を示すが、経路のうちの1つにおける拡大図を示す。スキャナからの出力は、走査平面内のサンプル点におけるスキャナの位置と印刷部品上の点との間の高さ値を記憶した画像である、図12Aに示されるような高さ場の二次元配列である。液滴形状がアンダーカットを有さないと仮定すると、この高さマップは、製造された液滴P(T、T、κ)の3D表現を指標関数として再構成するのに十分である。単一の液滴のボクセル表現の例が図12Bに示されている。最後に、全てのP(T、T、κ)の平均値を取ることによって、ボクセルが材料で充填される確率が計算される。得られたボクセル確率の体積プロットが図13に示されているが、色強度は確率に対応している。
【0038】
【数2】
zzzImage2zzz
実際には、任意に変動する基板の湾曲(すなわち、以前に固化した液滴)について走査データを取得することは極めて困難であることに留意されたい。表面曲率の測定は、液滴長スケールで行われなければならず、これは20μmの解像度スキャナで実現可能となり得るが、予想される曲率の範囲で以前に固化した液滴上に液滴が到着するような精度で液滴が堆積されることを確実にすることは極めて困難である。それ故に、κ=0は、P(T、T、0)を得るために固定される(すなわち、平坦な基板)。
【0039】
したがって、古典的な画像復元問題の変種が観察され、液滴の公称形状N(T、T、κ)は、マルチフィジックスPDEソルバーを使用して計算され得、印刷された液滴の平均(「ぼけ」)推定は、プロセスパラメータの固定セットに対して実験的に取得され得る。液滴堆積における不確実性を仮定することは、確率カーネルDとしてモデル化される。
【0040】
【数3】
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カーネルD(T、T、κ)は、平坦な表面上での液滴固化に関して収集されたデータを使用して、湾曲した表面上での液滴固化の可能性を近似するものであり、したがって、平坦でない基板に対するカーネルパラメータは常に、平坦な表面のパラメータと比べると、精度の低いものとなる。
【0041】
所与の一組のプロセスパラメータについての局所的な材料堆積(画像復元におけるPSFのアナログ)における誤差D(T、T、κ)は、古典的な反復的なリチャードソン・ルーシー(RL)逆重畳積分アルゴリズムを使用して計算され得る。
【0042】
【表1】
RL逆重畳積分アルゴリズムの出力は、PDEソルバーの解像度に等しいグリッドサイズでサンプリングされた、パラメータ化されていない確率カーネルである。製造不確実性は、少数のパラメータを使用して表現され得、液滴形状を表現する2進値体積における1283のパラメータが多変量ガウス関数に適合される。
【0043】
【数4】
zzzImage10zzz
ここで、σ、σ、σは、ガウス関数とD(T、T、κ)との間のノルムを最小化することによって推定される標準偏差である。プロセスパラメータとカーネルパラメータ({Td、Ts、κ{σ、σ、σ})との間のマップが、双曲線正接活性化関数を有する完全に接続されたニューラルネットワークを使用して確立される。図14は、ニューラルネットワークを使用して本明細書で論じられる計算のためのサロゲートモデルを示す。RL逆重畳積分プロセスは、印刷された液滴1420から走査された3Dデータ及び液滴固化1410のためのマルチフィジックスソルバーを使用して実施される。ソルバー1410は、入力としてTd、Ts、及びκを取る。液滴固化の不確実性は、多変量ガウス1440として近似される。ネットワークは、入力層と、5つの隠れ層と、出力層と、を有する。ネットワークを訓練するために、単一の液滴及び{T、T、κ}の固定値についてのマルチフィジックスシミュレーションを実行することによって液滴形状が計算される。最終時間ステップにおける各シミュレーションの出力は、公称形状Nとして使用される、三次元グリッド上の2進値(指標関数)として表現される固化した液滴である(T、T、液滴固化の不確実性は多変量ガウスとして近似される)。次いで、P(T、T、κ)の表現が、プロセスパラメータの固定セットに対して収集されたデータを使用して計算される。次いで式3が、RRL逆重畳積分を使用して解かれてD(T、T、κ)が推定され、これが次いでガウス関数を使用して適合される。次いでプロセスパラメータが変更され、訓練データの生成がパラメータの各例示されたセットごとに繰り返されて大きな訓練セットが作成され、ニューラルネットワークの精度が高められる。
【0044】
本明細書に記載される実施形態によれば、重なり合いかつ冷却する液滴が同時に固化することを考慮しながら、複数液滴合体の最も正確な表現が取得される。液滴堆積の頻度及び間隔をマルチフィジックスモデルに含めることによってこのシナリオをモデル化することが可能であるが、このタイプのモデルは、考慮される固化液滴の数に応じて指数関数的により多くの計算時間を伴い得る。したがって、合理的な時間枠内でニューラルネットワークに十分な訓練データを生成する目的で、液滴は常に、以前に固化した液滴上か又は平坦な基板上のいずれかに堆積すると仮定される。しかしながら、原理的には、このセクションで提示される同じ考え方は、追加のパラメータとしての堆積頻度を考慮しながら、複数の液滴合体のサロゲートモデルを構築するために拡張され得ることに留意されたい。実際には、このようなサロゲートモデルの訓練セットを構築するために要する計算時間は、非常に大きくなり得る。
【0045】
設計時の形状と製造時の形状との間の変動は、液滴が走査経路に沿って堆積されるときに、連鎖する誤差のために生じる。液滴固化の不確実性は、多変量ガウスとして近似される。入力プロセスパラメータTd、Ts、κとガウス関数のパラメータとの間のマッピングが学習される。不確実性の表現は、部品スケールでの蓄積された不確実性を推定するために、液滴スケールで使用される。プロセスパラメータTd、Tsを固定しながら、公称設計H*に対応する部品の集合が印刷され、空間位置における値がその場所に堆積された材料の確率を示すスカラー確率場H(Td、Ts)が構成される。式3の形式は、部品スケールにおける不確実性をモデル化するために再び使用される。
【0046】
【数5】
zzzImage11zzz
【0047】
場M(T,T)は、工具経路に沿った液滴合体を考慮しながら、構築時の形状の近似を表現する。この場を計算するために、原則として、先に固化した液滴における曲率となるようにκを設定することによって、サロゲートモデルを再帰的に呼び出すことができることが観察される。液滴が、先に固化した液滴上にのみあるいは平坦な基板上でのみ固化すると仮定しても、数百万の液滴の形状を近似するために機械学習モデルを再帰的に呼び出すことは、相当な時間(百万の液滴に対して約16分)を要する。単純な実験では、製造時の形状を計算する時間は、各液滴ごとにニューラルネットワークを呼び出し、次いで得られた確率場のレベルセットを取り、高い尤度の予想される液滴形状を表現することによって推定される。図15は、時間が、神経網の呼び出し回数とほぼ線形をなすことを示す。
【0048】
液滴の固化ごとにソルバーを呼び出すことなく、製造時の形状を迅速に計算するために、液滴スケールにおける不確実性はシフト不変であり、すなわち、不確実性は、個々の液滴が堆積される位置に依存しないという仮定がなされる。これは、材料の相変化及び製造不確定性が位置依存性ではないため、なすべき妥当な仮定である。点像分布関数をモデル化するために、同じ仮定が画像復元においてなされることに留意されたい。この仮定により、ここで場M(T,T)が重畳積分としてモデル化され得ることが観察される。
【0049】
【数6】
zzzImage12zzz
ここで、
【0050】
【数7】
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は、指定された一組のプロセスパラメータT、T、κに対してガウス関数としてパラメータ化された液滴スケールの不確定性を表す。実際には、κ=0と仮定される。ここで、磁界M(T,T)は、重畳積分定理を使用して迅速に計算され、周波数領域での重畳積分が実現され得る。M(T,T)を迅速に推定するために、フーリエ変換を計算する高速並列アルゴリズムが使用される。M(T,T)に関する本発明者らのモデルは、部品を構築するために使用される走査経路Tとは無関係であるが、実際には、走査経路はまた、設計時の部品と製造時の部品との間のずれの発生源であり得る。走査経路をM(T,T)の公式に含めるために、(液滴不確実性推定と同様に)同じ公称設計Hのいくつかの別個の計画(すなわち、別個の走査経路)が印刷され、結果として生じる重畳積分が平均化され得る。
【0051】
【数8】
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【0052】
【数9】
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が和において変化しないことが確認され、重畳積分が加算に及ぶ特性が用いられる。
【0053】
【数10】
zzzImage16zzz
したがって、いくつかの重畳積分の計算は、走査経路の合計にわたって単一の重畳積分に低減され得る。走査経路のボクセル表現が与えられると、合計が点ごとに、また並列に計算され得る。ここで、次のH(T,T)の記述があると仮定する。
【0054】
【数11】
zzzImage17zzz
これはいくつかの標本Hm(T,T)を、プロセスパラメータT、Tを固定して印刷することによって得られるものであり、一群の印刷された部品の表現は、確率場として同じプロセス計画を使用して表現される。したがって、未知のカーネルK(T、T)は、もう一度RL逆重畳積分アルゴリズムを使用して部品レベルの不確実性を推定することによって解決され得る。
部品スケールにおける製造誤差は、液滴スケールの不確実性と較正部品を印刷するための計画を表現する走査経路とを重畳積分することによって生成される公称表現と、較正部品の走査された(平均化された)印刷部とを逆重畳積分することによって取得される。
【0055】
K(Td,Ts)及び
【0056】
【数12】
zzzImage18zzz
が決定されると、プロセスパラメータT、Tを与えられた所与の走査経路Tに対する製造時の部品の表現は次のように記述され得る。
【0057】
【数13】
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関連性により、これは次式と等価である。
【0058】
【数14】
zzzImage20zzz
【0059】
【数15】
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をX(T,T)として記述すると(ガウス関数パラメータはT、Tに直接関連するため)、次式となる。
【0060】
【数16】
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式12は、走査経路及び所与のプロセスパラメータに対応する製造時の形状をモデル化するために使用される。重畳積分定理は、式16を実現するために使用される。
【0061】
【数17】
zzzImage23zzz
ここで、・は、点ごとの乗算を表す。これにより、図16A図16Cに示されるような製造時の形状の正確な表現が得られる。
【0062】
上記の方法は、周知のコンピュータプロセッサ、メモリユニット、記憶デバイス、コンピュータソフトウェア、及び他の構成要素を使用してコンピュータに実装することができる。このようなコンピュータの高レベルブロック図が図17に示されている。コンピュータ1700は、そのような動作を定義するコンピュータプログラム命令を実行することによって、コンピュータ1700の全体的な動作を制御するプロセッサ1710を含む。プロセッサ1710は、命令を実行することができる任意の種類のデバイスを含み得ることを理解されたい。例えば、プロセッサ1710は、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び特定用途向け集積回路(ASIC)のうちの1つ以上を含んでもよい。コンピュータプログラム命令は、記憶デバイス1720(例えば、磁気ディスク)内に記憶され、コンピュータプログラム命令の実行が所望されるときにメモリ1730にロードされてもよい。したがって、本明細書に記載される方法のステップは、メモリ1730に記憶され、コンピュータプログラム命令を実行するプロセッサ1710によって制御されるコンピュータプログラム命令によって定義され得る。コンピュータ1700は、ネットワークを介して他のデバイスと通信するための1つ以上のネットワークインターフェース1750を含んでもよい。コンピュータ1700はまた、コンピュータ1700とのユーザー対話を可能にするユーザーインターフェース1760を含む。ユーザーインターフェース1760は、ユーザーがコンピュータと対話することを可能にするために、I/Oデバイス1762(例えば、キーボード、マウス、スピーカー、ボタンなど)を含んでもよい。このような入力/出力デバイス1762は、本明細書に記載される実施形態に従って、コンピュータプログラムのセットと共に使用されてもよい。ユーザーインターフェースはまた、ディスプレイ1764を含む。様々な実施形態によれば、図17は、例示目的のためのコンピュータの可能な構成要素の高レベル表現であり、コンピュータは、他の構成要素を含んでもよい。
【0063】
別途指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される形状サイズ、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって改変されるものとして理解されるべきである。したがって、それと異なる指示がない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本明細書に開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。端点による数値範囲の使用は、その範囲内の全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)、並びにその範囲内の任意の範囲を含む。
【0064】
上記の様々な実施形態は、特定の結果を提供するために相互作用する回路及び/又はソフトウェアモジュールを使用して実装され得る。コンピューティング技術分野の当業者は、当該技術分野で一般的に知られている知識を使用して、モジュールレベルで又は全体としてのいずれかで、このような記載された機能を容易に実装することができる。例えば、本明細書に例解されるフローチャートは、プロセッサによる実行のためのコンピュータ可読命令/コードを作成するために使用されてもよい。このような命令は、コンピュータ可読媒体に記憶され、当該技術分野において既知のように実行するためにプロセッサに転送されてもよい。上に示された構造及び手順は、上記のような実施形態を容易にするために使用することができる実施形態の代表的な例に過ぎない。
【0065】
例示的な実施形態の前述の説明は、例解及び説明の目的のために提示されている。本発明の概念に網羅的であること、又は本発明の概念を開示される正確な形態に限定することは意図されていない。上記の教示に照らして、多くの修正及び変形が可能である。開示される実施形態のいずれか又は全ての特徴は、個別に、又は任意の組み合わせで適用することができ、限定することを意図するものではなく、純粋に例解的なものである。発明の範囲は、詳細な説明によってではなく、本明細書に添付の特許請求の範囲によって限定されるものであることが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17