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特許7165242支保工用支持体及び支保工の撤去、設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】支保工用支持体及び支保工の撤去、設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
E02B3/06 301
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021106258
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 将
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-62768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
E02B 7/00- 7/54
E01D 21/00-21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物下に支保工を設置する際又は構造物下に設置された支保工を撤去する際に使用する支保工用支持体であって、
クレーンに吊り持ちされた上部フレームと、該上部フレームと上下に間隔をおいて配置された下部フレームと、前記上部フレームと前記下部フレームとの同一端部側を連結する天秤連結材と、前記上部フレームに支持された複数の仮支持手段とを備え、該仮支持手段が前記上部フレームより下向きに突出した伸縮可能な支持脚を有し、前記上部フレームが前記仮支持手段を介して前記構造物に支持された状態で前記支保工下に挿し込まれた前記下部フレームに前記支保工が支持されるようにしたことを特徴とする支保工用支持体。
【請求項2】
下端部が前記構造物に固定され、上端部が前記上部フレーム上に載置された押さえ部材に固定される反動抑止部材を備え、該反動抑止部材が前記各仮支持手段の天秤連結材側に配置され、前記構造物上面から離間する方向への前記上部フレームの揺動を抑止するようにした請求項1に記載の支保工用支持体。
【請求項3】
構造物下に支持された支保工を撤去する支保工の撤去方法において、
クレーンに吊り持ちされた上部フレームと、該上部フレームと上下に間隔をおいて配置された下部フレームと、前記上部フレームと前記下部フレームとの同一端部側を連結する天秤連結材と、前記上部フレームに支持された複数の仮支持手段とを備え、該仮支持手段が前記上部フレームより下向きに突出した伸縮可能な支持脚を有してなる支保工用支持体を前記構造物の前方に吊り降ろした後、前記構造物を前記上部フレームと前記下部フレームで挟み込むように前記支保工用支持体を前記構造物側へ水平移動させて前記上部フレームを前記構造物上に移動させるとともに、前記下部フレームを前記支保工下に挿し込み、しかる後、前記仮支持手段を介して前記上部フレームを前記構造物に支持させ、その状態で前記支保工を前記構造物から切り離し、前記支保工を前記下部フレームに支持させた後、前記仮支持手段による支持を解除し、前記支保工用支持体を前記構造物の前方へ水平移動させて前記支保工用支持体に支持された前記支保工を前記構造物下より引き出すことを特徴とする支保工の撤去方法。
【請求項4】
前記下部フレームを前記支保工下に挿し込んだ後、下端部が前記構造物に固定され、上端部が前記上部フレーム上に載置された押さえ部材に固定される反動抑止部材を前記仮支持手段よりも天秤連結材側に配置し、前記構造物上面から離間する方向への前記上部フレームの揺動を抑止した状態で、前記仮支持手段を介して前記構造物に前記上部フレームを支持させる請求項3に記載の支保工の撤去方法。
【請求項5】
前記支保工を保持した前記支保工用支持体を前記構造物下より引き出した後、前記支保工用支持体を新たに構築される他の構造物の前方に吊り降ろした後、前記支保工用支持体を前記他の構造物側に水平移動させて前記下部フレームに支持された前記支保工を前記他の構造物の所定の位置に移動させ、その位置で前記下部フレームに支持された前記支保工を前記他の構造物に支持させる請求項3又は4に記載の支保工の撤去方法。
【請求項6】
構造物に支保工を設置する支保工の設置方法において、
クレーンに吊り持ちされた上部フレームと、該上部フレームと上下に間隔をおいて配置された下部フレームと、前記上部フレームと前記下部フレームとの同一端部側を連結する天秤連結材と、前記上部フレームに支持された複数の仮支持手段とを備え、該仮支持手段が前記上部フレームより下向きに突出した伸縮可能な支持脚を有してなる支保工用支持体を使用し、前記下部フレームに予め組み立てられた前記支保工を支持させた状態で前記支保工用支持体を前記構造物の前方に吊り降ろした後、前記支保工用支持体を前記構造物側に水平移動させて前記下部フレームに支持された前記支保工を前記構造物の所定の位置に移動させ、その位置で前記下部フレームに支持された前記支保工を前記構造物に支持させることを特徴とする支保工の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸や波除堤等の構造物の構築に際し、上部工を構成するコンクリートスラブの形成に使用する支保工を撤去又は設置するための支保工用支持体及びそれを使用した支保工の撤去、設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、護岸や波除堤等を構成する構造物1には、水底部に立設された複数の杭2,3と、杭2,3に支持されたコンクリート製のカーテンウォール等の防波部4とを備え、この防波部4の上面部に場所打ちコンクリートによる上部工としてのスラブ5が設けられたものが知られている。
【0003】
この種の構造物1の構築に際しては、図12に示すように、角筒型又はH型の鋼材等からなる部材を格子状に組み立てた下部支保工6を形成し、この下部支保工6を所定の高さで杭頭頂間を連結する支保工連結材7等に吊り部材8,8を介して吊下げ支持させ、この下部支保工6上に支柱9,9を介してスラブ5を形成するためのスラブ構築用支保工10を設置し、スラブ構築用支保工10に支持された型枠内に場所打ちコンクリートを打設してスラブ5を形成するようにしている(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、スラブ5が完成した後は、構造物1の上面部がスラブ5で塞がれ、構造物1の上方から支保工6,10全体をクレーン等で吊り上げることができないため、スラブ5下に設置された下部支保工6及びスラブ構築用支保工10を構成する各部材に解体し、解体した部材毎に海底に落下させるか、或いは海側又はスラブ5の未施工部分からクレーン船等でスラブ5下より引き出し撤去するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-202106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、下部支保工及びスラブ構築用支保工を構成する部材を解体してスラブ下より撤去する際に、各部材をスラブ下より引き出された部分しかクレーンにより吊り持ちすることができないためバランスを取るのが難しく、また、各部材を海底に落下させて回収する際の部材の落下に潜水士が巻き込まれる等の重大な災害が発生することが懸念される。
【0007】
また、従来の技術では、解体した支保工を次の未施工箇所で再利用する場合、解体した部材を再度組み立てて設置しなければならないため、多大な労力と時間を要するという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上述の如き従来の問題を鑑み、スラブ下に設置された支保工を解体せずに効率よく撤去することができ、且つ、撤去した支保工を好適に再利用することができる支保工用支持体及び支保工の撤去、設置方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、構造物下に支保工を設置する際又は構造物下に設置された支保工を撤去する際に使用する支保工用支持体であって、クレーンに吊り持ちされた上部フレームと、該上部フレームと上下に間隔をおいて配置された下部フレームと、前記上部フレームと前記下部フレームとの同一端部側を連結する天秤連結材と、前記上部フレームに支持された複数の仮支持手段とを備え、該仮支持手段が前記上部フレームより下向きに突出した伸縮可能な支持脚を有し、前記上部フレームが前記仮支持手段を介して前記構造物に支持された状態で前記支保工下に挿し込まれた前記下部フレームに前記支保工が支持されるようにしたことにある。
【0010】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、下端部が前記構造物に固定され、上端部が前記上部フレーム上に載置された押さえ部材に固定される反動抑止部材を備え、該反動抑止部材が前記各仮支持手段の天秤連結材側に配置され、前記構造物上面から離間する方向への前記上部フレームの揺動を抑止するようにしたことにある。
【0011】
請求項3に記載の発明の特徴は、構造物下に支持された支保工を撤去する支保工の撤去方法において、クレーンに吊り持ちされた上部フレームと、該上部フレームと上下に間隔をおいて配置された下部フレームと、前記上部フレームと前記下部フレームとの同一端部側を連結する天秤連結材と、前記上部フレームに支持された複数の仮支持手段とを備え、該仮支持手段が前記上部フレームより下向きに突出した伸縮可能な支持脚を有してなる支保工用支持体を前記構造物の前方に吊り降ろした後、前記構造物を前記上部フレームと前記下部フレームで挟み込むように前記支保工用支持体を前記構造物側へ水平移動させて前記上部フレームを前記構造物上に移動させるとともに、前記下部フレームを前記支保工下に挿し込み、しかる後、前記仮支持手段を介して前記上部フレームを前記構造物に支持させ、その状態で前記支保工を前記構造物から切り離し、前記支保工を前記下部フレームに支持させた後、前記仮支持手段による支持を解除し、前記支保工用支持体を前記構造物の前方へ水平移動させて前記支保工用支持体に支持された前記支保工を前記構造物下より引き出すことにある。
【0012】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、前記下部フレームを前記支保工下に挿し込んだ後、下端部が前記構造物に固定され、上端部が前記上部フレーム上に載置された押さえ部材に固定される反動抑止部材を前記仮支持手段よりも天秤連結材側に配置し、前記構造物上面から離間する方向への前記上部フレームの揺動を抑止した状態で、前記仮支持手段を介して前記構造物に前記上部フレームを支持させることにある。
【0013】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項3又は4の構成に加え、前記支保工を保持した前記支保工用支持体を前記構造物下より引き出した後、前記支保工用支持体を新たに構築される他の構造物の前方に吊り降ろした後、前記支保工用支持体を前記他の構造物側に水平移動させて前記下部フレームに支持された前記支保工を前記他の構造物の所定の位置に移動させ、その位置で前記下部フレームに支持された前記支保工を前記他の構造物に支持させることにある。
【0014】
請求項6に記載の発明の特徴は、構造物に支保工を設置する支保工の設置方法において、 クレーンに吊り持ちされた上部フレームと、該上部フレームと上下に間隔をおいて配置された下部フレームと、前記上部フレームと前記下部フレームとの同一端部側を連結する天秤連結材と、前記上部フレームに支持された複数の仮支持手段とを備え、該仮支持手段が前記上部フレームより下向きに突出した伸縮可能な支持脚を有してなる支保工用支持体を使用し、前記下部フレームに予め組み立てられた前記支保工を支持させた状態で前記支保工用支持体を前記構造物の前方に吊り降ろした後、前記支保工用支持体を前記構造物側に水平移動させて前記下部フレームに支持された前記支保工を前記構造物の所定の位置に移動させ、その位置で前記下部フレームに支持された前記支保工を前記構造物に支持させることにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る支保工用支持体は、請求項1に記載の構成を具備することによって、支保工を構造物から切り離した際の衝撃を抑制し、安定した状態で取り外すことができ、構造物下に設置された支保工を解体せずに撤去することができる。
【0016】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、支保工を構造物から切り離した際に生じる反動を抑制し、支保工用支持体の揺動を抑制することができる。
【0017】
さらに、本発明に係る支保工の撤去方法は、請求項3に記載の構成を具備することによって、支保工を構造物から切り離した際の衝撃を抑制し、安定した状態で取り外すことができ、構造物下に設置された支保工を解体せずに撤去することができる。
【0018】
また、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、支保工を構造物から切り離した際に生じる反動を抑制し、支保工用支持体の揺動を抑制することができる。
【0019】
さらに、請求項5に記載の構成を具備することによって、支保工の最組立てが不要となり、労力の低減及び工期の短縮により、費用の削減を図ることができる。
【0020】
さらにまた、本発明に係る支保工の設置方法は、請求項6の構成を具備することによって、支保工を予め地上の作業ヤード等で組み立てることができ、支保工の品質向上を図るとともに、水上での作業を減らし、作業効率の向上及び安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る支保工用支持体の一例を示す正面図である。
図2】同上の平面図である。
図3】同上の側面図である。
図4図3中の仮支持手段及び反動抑止部材部分を示す拡大図である。
図5】本発明に係る支保工の撤去方法の手順を示す側面図であって、構造物にアンカーナットを埋設した状態を示す図である。
図6】同上の支保工用支持体の移動作業中の状態を示す図である。
図7】同上の支保工用支持体を所定の位置まで挿し込んだ状態を示す図である。
図8】同上の反動抑止部材を設置した状態を示す図である。
図9】同上の仮支持手段を設置した状態を示す図である。
図10】同上の支保工撤去作業の状態を示す図である。
図11】同上の支保工の再設置又は新規設置作業の状態を示す図である。
図12】構造物のスラブ下に支保工が設置された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る支保工用支持体の実施態様を図1図4に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号20は、構造物1下に支保工6,10を設置する際又は構造物1下に設置された支保工6,10を撤去又は設置する際に使用する支保工用支持体である。
【0023】
支保工用支持体20は、クレーンに吊り持ちされた上部フレーム21と、上部フレーム21と上下に間隔をおいて配置された下部フレーム22と、上部フレーム21と下部フレーム22との同一端部側を連結する天秤連結材23と、上部フレーム21に支持された一又は複数の仮支持手段24,24とを備え、支保工6,10を撤去する際、上部フレーム21が仮支持手段24,24を介して構造物1に支持された状態で支保工10下に挿し込まれた下部フレーム22に支保工6,10を支持させることができるようになっている。
【0024】
また、この支保工用支持体20は、下端部が構造物1に固定され、上端部が上部フレーム21上に載置された押さえ部材25に固定される反動抑止部材26を備えている。
【0025】
上部フレーム21は、水平方向に並列された複数の上腕部材27,27…と、各上腕部材27,27…間に各上腕部材27,27…と直交するように架け渡された複数の横梁材28,28…とを備え、各上腕部材27,27…が横梁材28,28…によって互いに間隔をおいて保持されている。
【0026】
横梁材28,28…は、H型鋼や角型鋼等で一定長さを有する梁状に形成され、所定位置の下面が上腕部材27,27…の上面にボルト締めや溶接等によって固定されている。
【0027】
また、上腕部材27,27…の両端部に配置された横梁材28,28…には、その上面に横梁材28,28…の長手方向に間隔をおいて複数の吊り具29,29が溶接等によって固定され、各吊り具29,29に吊りワイヤ30を連結することによって支保工用支持体20がクレーンに吊り持ちされるようになっている。
【0028】
また、上腕部材27,27…の上面には、複数の横梁材28,28のほかに、各上腕部材27,27と直交するように鋼板等による板状の複数の押さえ部材25が所定の間隔を置いて載置され、各押さえ部材25,25が上腕部材27にボルト等で固定されている。
【0029】
各上腕部材27,27…は、H型鋼や角型鋼等によって形成され、フランジ又は角型鋼の面を上下に向けて配置され、一方の端部下面に天秤連結材23の上端が溶接等によって固定され、上腕部材27,27…の一端部より下向きに天秤連結材23が垂下されている。
【0030】
また、各上腕部材27,27…には、天秤連結材23とは反対側の端部からそれぞれ所定の間隔をおいた所定位置の側面部に仮支持手段保持部31が突設され、仮支持手段保持部31に仮支持手段24,24が支持されている。
【0031】
仮支持手段24,24は、仮支持手段保持部31に固定されたジャッキ装置によって構成されている。
【0032】
本実施例では、キリンジャッキを使用し、キリンジャッキは、図4に示すように、仮支持手段保持部31に固定された台座部32と、台座部32に螺合されたネジからなる軸部33aを有する支持脚33と、軸部33aの上端に固定された操作ハンドル34とを備え、操作ハンドル34を回転させることによって軸部33aが回転しながら上下に螺進し、上部フレーム21より下向きに突出した支持脚33が上下方向に伸縮できるようになっている。
【0033】
支持脚33は、下端部に平板状の当接部33bを備え、当接部33bが構造物1を構成するスラブ5の上面に当接するようになっている。
【0034】
天秤連結材23は、H型鋼や角型鋼等によって構成され、フランジ又は角型鋼の表面を上腕部材27,27…の他端側に向けて配置し、下端より所定の高さに下部フレーム22を構成する下腕部材35,35…の一端がボルト締めや溶接等によって固定されている。
【0035】
下部フレーム22は、天秤連結材23に一端が支持されて水平方向に向けて並列された複数の下腕部材35,35…によって構成され、各下腕部材35,35…が互いに水平方向に間隔をおいて配置されてフォーク状を成している。
【0036】
上腕部材27,27…と下腕部材35,35…との上下方向間隔は、下腕部材35,35…に支保工10を支持させた状態で構造物1の上面と上腕部材27,27…との間に所定の間隔が形成される高さとしている。
【0037】
各下腕部材35,35…は、H型鋼や角型鋼等によって形成され、フランジ又は角型鋼の表面からなる受面35aを上に向けて配置され、受面35aに支保工10の下面が支持されるようになっている。尚、下腕部材35,35…は、上腕部材27,27…よりも長手方向が短く形成されている。
【0038】
また、下腕部材35,35…は、下腕部材35,35…と天秤連結材23,23との連結部より一定の距離を置いた天秤連結材23の下方の面に一端が固定され、他端が下腕部材35の下面部に固定された補強部材36によって補強され、支保工6,10の荷重を支持できるようになっている。
【0039】
反動抑止部材26は、少なくとも上部及び下部にネジ部26a,26bを備えた棒状に形成され、上部ネジ26aを押さえ部材25に螺合させ、下部ネジ部26bを構造物1に埋設されたアンカーナット37に螺合させるようになっている。
【0040】
次に、上述の支保工用支持体20を使用した支保工の撤去方法について図5図11に基づいて説明する。尚、上述の従来例及び実施例と同様の構成には同一符号を付して説明し、図中符号1は護岸や波除堤等の構造物、符号6,10は支保工である。
【0041】
構造物1は、図12に示す従来例と同様に、水底部に立設された複数の杭2,3と、杭2,3に支持されたコンクリート製のカーテンウォール等の防波部4とを備え、防波部4の上面部に場所打ちコンクリートによる上部工としてのスラブ5が設けられている。
【0042】
支保工は、角筒型又はH型の鋼材等からなる部材を格子状に組み立てた下部支保工6と、下部支保工6上に支柱9,9を介して設置されたスラブ構築用支保工10とによって構成され、スラブ構築用支保工10を支持する下部支保工6が所定の高さで杭2,3の頭頂間を連結する支保工連結材7等に吊り部材8,8を介して吊り持ちされている。
【0043】
このようなスラブ5下に設置された支保工6,10を撤去するには、先ず、事前準備として、スラブ5上の不要な物資及び機材を撤去し、図5に示すように、スラブ5上面部の所定に位置にアンカーナット37を埋設する。
【0044】
次に、図6に示すように、クレーンに吊り持ちされた支保工用支持体20を構造物1の前方、即ち、構造物1の法線と直交する方向の前方側に移動させ、所定の高さまで降下させる。
【0045】
その際、支保工用支持体20を降下させる位置は、本実施例の場合、スラブ構築用支保工10下に下腕部材35,35…が挿し込める高さであって、上腕部材27,27…とスラブ5上面との間に十分な間隔が確保されている位置である。
【0046】
次に、図6図7に示すように、クレーンを操作して、構造物1を構成するスラブ5を上部フレーム21と下部フレーム22で挟み込むように構造物1側へ水平移動させ、構造物1を構成するスラブ5上に上部フレーム21を移動させるとともに、下部フレーム22のフォーク状に配列された各下腕部材35,35…をスラブ構築用支保工10下に挿し込む。
【0047】
そして、図8に示すように、支保工用支持体20を上昇させて下部フレーム22を構成する各下腕部材35,35…の受面35aをスラブ構築用支保工10の下面に当接させ、下部フレーム22に支保工6,10を支持させる。
【0048】
また、図8に示すように、上腕部材27,27…上に押さえ部材25を載置し、載置した押さえ部材25をずれないように上腕部材27にボルト等で固定する。そして、反動抑止部材26の一端を押さえ部材25に螺合させるとともに、反動抑止部材26の他端をスラブ5に埋設されたアンカーナット37に螺合させる。
【0049】
次に、図9に示すように、仮支持手段24,24の操作ハンドル34を回転させて、軸部33aを回転させ、上腕部材27に突設された仮支持手段保持部31に支持された台座32から下向きに突出した支持脚33をスラブ5側に伸長させ、支持脚33の下端をスラブ5上面に当接させる。
【0050】
これにより、支保工用支持体20は、ワイヤ30により吊り持ちされた状態から仮支持手段24,24を介してスラブ5に支持された状態となり、支保工6,10が支保工用支持体20を介して構造物1に支持された状態となるので、この状態で吊り部材8,8を切断し、支保工6,10を構造物1より切り離す。
【0051】
その際、支保工6,10を構造物1から切り離したことで、支保工6,10の荷重が下部フレーム22に作用し、下部フレーム22に反時計回りのモーメントが作用し、支保工用支持体20全体が上部フレーム21をスラブ5側に押し付ける方向に揺動しようとするが、上部フレーム21が支持脚33を介してスラブ5に支持されているので、支保工用支持体20全体の上部フレーム21をスラブ5側に押し付ける方向への揺動が抑止される。
【0052】
一方、上部フレーム21には、下部フレーム22に支保工6,10を支持させた反動で支持脚33を介してスラブ5からの反力が作用し、上部フレーム21に時計回りのモーメントが作用し、支保工用支持体20全体が上部フレーム21をスラブ5側から離間させる方向に揺動しようとするが、反動抑止部材26を介してアンカーナット37でスラブ5に連結された押さえ部材25に上腕部材27,27…の上面が押さえられているので、支保工用支持体20全体の上部フレーム21をスラブ5側から離間させる方向への揺動が抑止される。
【0053】
これによって、支保工6,10を支持する支保工用支持体20と構造物1との間で力の釣り合いが取られ、支保工6,10を支持した状態で支保工用支持体20の揺動が抑止され、安定した状態となる。
【0054】
支保工6,10を支持した支保工用支持体20が安定した状態になったら、反動抑止部材26をスラブ5より離脱させ、上腕部材27上に載置された押さえ部材25及び反動抑止部材26を撤去する。
【0055】
また、仮支持手段24,24の操作ハンドル34を回転させて、軸部33aを回転させ、スラブ5上面に当接した支持脚33を上部フレーム21側に移動させ、支保工用支持体20をスラブ5から切り離す。
【0056】
そして、支保工用支持体20が構造物1から切り離されたら、図10に示すように、支保工用支持体20の水平度を維持しつつ、クレーンにより支保工6,10を支持した支保工用支持体20を水平移動させ、支保工用支持体20に支持された支保工6,10を、構造物1を構成するスラブ5下より完全に引き出し、その後、上方に吊り上げて撤去する。
【0057】
次に、図11に示すように、必要に応じて、撤去した支保工6,10を新たに構築される他の構造物、例えば、他のスパンにおけるスラブを含む上部工の構築に再利用する。
【0058】
新たに構築される他の構造物は、水底に立設された杭2,3と、所定の高さで杭2,3頭頂間を連結する支保工連結材7を備えた状態となっており、この状態の他の構造物に支保工6,10を設置する。
【0059】
具体的には、支保工6,10を保持した支保工用支持体20を構造物1下より引き出した後、図11に示すように、支保工6,10を保持したまま支保工用支持体20を未施工の他の構造物の前方に移動させ、その位置で支保工用支持体20を所定の高さに吊り降ろした後、支保工用支持体20を他の構造物側に水平移動させて下部フレーム22に支持された支保工6,10を他の構造物の所定の位置に移動させ、その位置で所定の高さで杭2,3の頭頂間を連結する支保工連結材7等に吊り部材8,8を介して下部フレーム22に支持された支保工6,10を吊り下げ支持させる。
【0060】
そして、支保工6,10が新たに構築される構造物を構成する支保工連結材7に支持されたら、クレーンを操作し、支保工用支持体20を若干下降させて支保工6,10が下部フレーム22に支持された状態を解除し、その状態から支保工用支持体20を支保工6,10から離脱する方向に水平方向に移動させて撤去する。
【0061】
尚、新たに構築する構造物1に支保工6,10を設置する場合には、地上の作業ヤード等において、予め支保工6,10を組み立てておき、これを下部フレーム22に支持させることによって、図11に示す場合と同様に、支保工6,10を保持したまま支保工用支持体20を上部工4が新たな構造物1の前方に移動させ、その位置で支保工用支持体20を所定の高さに吊り降ろした後、支保工用支持体20を他の構造物1側に水平移動させて下部フレーム22に支持された支保工を他の構造物1の所定の位置に移動させ、その位置で所定の高さで杭2,3頭頂間を連結する支保工連結材7等に吊り部材8,8を介して下部フレーム22に支持された支保工を吊り下げ支持させることができる。
【0062】
尚、上述の実施例では、下部フレーム22にスラブ構築用支保工10を支持させた場合について説明したが、下部フレーム22に下部支保工6の下面を支持させるようにしてもよい。
【0063】
また、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、支保工用支持体20で支保工6,10を支持し、構造物1から切り離した後に、一旦陸上の作業ヤード等に支保工6,10を仮置きし、整備し直してから新たに構築する構造物1に支保工6,10を設置するようにしてもよい。
【0064】
また、最初から上腕部材27,27…上に押さえ部材25をボルトや溶接等で固着させておいてもよい。
【0065】
また、上述の実施例では、仮支持手段24,24を操作ハンドル34の操作によって軸部を回転させることによって伸縮させる構造であったが、支持脚を油圧式で高さ調整できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 構造物
2 杭
3 杭
4 防波部
5 スラブ
6 下部支保工
7 支保工連結材
8 吊り部材
9 支柱
10 スラブ構築用支保工
20 支保工用支持体
21 上部フレーム
22 下部フレーム
23 天秤連結材
24 仮支持手段
25 押さえ部材
26 反動抑止部材
27 上腕部材
28 横梁材
29 吊り具
30 吊りワイヤ
31 仮支持手段保持部
32 台座部
33 支持脚
34 操作ハンドル
35 下腕部材
36 補強部材
37 アンカーナット
【要約】
【課題】スラブ下に設置された支保工を解体せずに効率よく撤去することができ、且つ、撤去した支保工を好適に再利用することができる支保工用支持体及び支保工の撤去、設置方法の提供。
【解決手段】支保工用支持体20は、クレーンに吊り持ちされた上部フレーム21と、上部フレーム21と上下に間隔をおいて配置された下部フレーム22と、上部フレーム21と下部フレーム22との同一端部側を連結する天秤連結材23と、上部フレーム21に支持された複数の仮支持手段24とを備え、上部フレーム21が仮支持手段24を介して構造物に支持された状態で支保工下に挿し込まれた下部フレーム22に支保工が支持されるようにしたものである。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12