(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】サドル揺動装置
(51)【国際特許分類】
B62J 1/04 20060101AFI20221026BHJP
B62K 5/10 20130101ALI20221026BHJP
B62K 5/027 20130101ALI20221026BHJP
【FI】
B62J1/04
B62K5/10
B62K5/027
(21)【出願番号】P 2022077315
(22)【出願日】2022-05-10
【審査請求日】2022-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505178860
【氏名又は名称】小林 克子
(72)【発明者】
【氏名】小林 克子
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-128075(JP,A)
【文献】特開2012-148765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/02
B62K 5/10
B62K 5/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンク機構を用いた
二輪、又は三輪、又は
四輪自転車のサドル揺動装置であって、
連結軸を有した内輪と、該内輪を回動可能に支持する外輪で構成された連結体の
前記外輪が、シートポストに保持具を介して接続された支柱上部の
左右両端に、一定の軸間を有して固着され、前記連結体の下方に位置し、サドル内部の支持レールに接続された揺動体の
左右両端に、
連結軸を有した内輪と、該内輪を回動可能に支持する外輪で構成された別の連結体の
前記外輪が、前記支柱に固着された連結体の軸間以上の長さの軸間を有して固着され、
上方に位置した前記連結体の連結軸と、下方に位置した前記連結体の連結軸が、複数のリンク片で連結され、
前記揺動体が揺動可能に構成されたことを特徴とするサドル揺動装置。
【請求項2】
前記サドルの支持レールに接続された揺動体の揺動時において、前記揺動体の上下方向の中心線と、前記支柱の上下方向の中心線との交点が、前記サドルの中心で最上部となる位置に、前記リンク片のサイズと、前記
支柱の左右両端に固着された連結体の軸間距離と、
前記揺動体の左右両端に固着された連結体の軸間距離との組み合わせにより設定されたことを特徴とする請求項1に記載のサドル揺動装置。
【請求項3】
前記揺動体は、中心部に、前記支柱の軸部が貫通可能な長孔が設けられ、前記長孔の左右両端
面が、前記支柱の軸部で係止する停止部となり、前記揺動体の揺動の停止を可能としたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のサドル揺動装置。
【請求項4】
前記揺動体と、前記リンク片にバネ掛部が設けられ、
前記揺動体のバネ掛け部と、前記リンク片のバネ掛部に引きバネが取り付けられ、
前記揺動体と前記リンク片が引き合ってサドルの中立状態が保てる構成を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のサドル揺動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三輪自転車等のサドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三輪自転車等は通常の二輪自転車に比べ、停車時に自転車に乗車してペダルに足を乗せた状態でも転倒しない車両は、高齢の人、自転車に乗り慣れない人用として開発が進められており、カーブ走行時もハンドルの切れ角に応じて車体が傾斜して遠心力にも対応可能な下記の提案がなされている。
【0003】
例えば、本出願人が既に出願した特許文献1は、二つの前輪で操舵する前二輪三輪自転車において、二つの前輪を支持する前輪支持フレームと、後輪を支持する車体のハンドルポストがスイング可能に連結され、前記前輪支持フレームの中央に配置された回動体と、前記ハンドルポストに内蔵された操向軸に具備された連結部材が連結され、前記ハンドルポストに固着された揺動アームと、前記回動体が、可動可能な連結体と自在継手で連結されて、前記前輪支持フレームをベースとした車体傾斜装置が車体を旋回方向へ機械的に傾斜させる構造で、身体を車体の傾斜方向に傾けやすく、通常の二輪自転車と同様のスムースなカーブ走行が可能となり、前二輪操舵の自転車として安定走行ができる提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された前二輪自転車は、前輪支持フレームと、車体支持フレームがスイング可能に連結され、前輪支持フレームをベースとした車体傾斜装置の導入により、停車した状態でぺダルに両足を乗せても転倒することなく安定した乗車が可能で、カーブ走行時はハンドル操舵に応じて車輪が旋回方向へ自動的に傾斜し、同時に車体も傾斜することにより、安定した走行が可能になっているが、道路状況は平たんではなく、道路の舗装状態により前後左右に道路勾配が発生し、特に道路の左右方向には雨水を側溝に流すための約1~6%の勾配が設けられていることにより、停車した状態でぺダルに両足を乗せても転倒しない三輪自転車においては、車体が道路の勾配に沿って傾いた状態となり、特に直進の場合は、身体が傾いた不安定な走行状態が続くことになる為、身体を垂直方向に調整する無理な動作が必要となり、高齢者には乗り難いという問題が発生していた。
【0006】
本発明は、このような従来の構造が有していた問題を解決しようとするものであり、三輪自転車に乗車してサドルに腰かけた状態で、車体が傾いた場合、身体を垂直に保とうとしてもサドルが固定された状態では身体を垂直に保ち難いことに着目し、リンク機構を用いたサドル揺動装置をサドル内部に組み込み、道路勾配により車体が傾斜した場合は、乗車者がサドルに腰かけた状態で、サドルの中心部は左右への動きが抑止でき、サドルの左右両サイドが上下に揺動することにより、垂直姿勢が可能となり、安定走行ができる構造を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
自転車の車体フレームに連結されるサドルのシートポストに、保持具を介して接続された揺動装置は、基準となる支柱が金属板で略T字状に形成されて、軸部の下方が前記保持具の接続部となり、上部の略T字状部の両端に一定の軸間を有して固着された回動可能な連結体と、該回動可能な連結体の下方に位置し、サドル内部の支持レールに接続された金属板で曲折形成された揺動体の両端に、前記支柱に固着された回動可能な連結体の軸間以上の長い軸間を有して固着された回動可能な連結体とが、複数のリンク片で連結され、該複数のリンク片は正面から見て略ハの字状の連結となり、前記揺動体が揺動可能となる構成のリンク機構を要旨とする。
【0008】
前記サドルの支持レールに接続された、前記揺動体が揺動により傾斜した状態において、揺動体の左右両端に固着された回動可能な連結体の軸間の上下方向の中心線と、前記支柱の両端に固着された回動可能な連結体の軸間の上下方向の中心線とが、前記支柱の上方で交わる交点の位置は、前記リンク片の連結孔のピッチ寸法と、前記回動可能な連結体の軸間距離の組み合わせにより、前記サドルの中心で最上部となる位置に設定され、前記交点が、前記サドルの揺動時の揺動の基点となり、前記サドルの中心で最上部の位置は移動することなく、前記サドルの中心部は左右への動きが抑止された状態で、前記サドルの左右両サイドが上下に揺動する構造を要旨とする。
【0009】
道路勾配に沿って傾斜した車体に合わせて、前記サドルを水平状態に保つ調整と、サドルの傾き過ぎを防止して、一定の傾斜で留める為、前記揺動体の中心部に位置した長孔の左右両端に一定の間隔を有して設けられた停止部が、前記長孔を貫通する前記支柱の軸部に当って前記揺動体の揺動を停止させる構造を要旨とする。
【0010】
前記揺動体と、前記リンク片の双方にバネ掛部が設けられて、複数の引きバネが取り付けられ、前記サドルのふらつきの抑止と、前記サドルに外力が加えられても前記サドルがシートポストの軸線に対して常に中立の位置を保つことができる構造を要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リンク機構を用いた揺動装置をサドルの内部に組み込むことにより、サドルの揺動時は、座面の中心で最上部の位置は横方向への作動が抑止され、サドルに腰かけた乗車者の身体も左右に動くことなく、車体の傾斜に合わせ、身体を垂直に保とうとする身体の動きでサドル座面の左右両サイドが揺動し、座面を水平に保てることにより、無理のない自然な乗車姿勢を維持して走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に関係する三輪自転車の道路勾配に対する状態を示す正面図である。
【
図2】本発明の揺動装置がサドル内に組み込まれた状態を示す側面図である。
【
図3】
図2のA-A断面図で、揺動装置がサドル内に組み込まれた状態を示す正面図である。
【
図4】揺動装置の組み立て状態を示す正面図である。
【
図5】揺動装置の組み立て状態を示す
図4の右側面図である。
【
図6】揺動装置の組み立て状態を示す
図4の上面図である。
【
図9】揺動装置の揺動体の作動状態を示す正面図である。
【
図10】揺動装置の揺動体の作動状態を示す
図9の右側面図である。
【
図12】サドル内部に組み込まれた揺動装置が作動し、サドルの上面が傾斜した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係わるサドル揺動装置について、以下
図1~
図12を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1に示す、前二輪操舵の三輪自転車(以下三輪自転車6)のサドル3の揺動装置の説明においては、
図2に示す、サドル3の左側を前方、右側のつるまきバネ35側を後方(後部)とし、
図3に示す、サドル3の左側のリンク片13R側が右方、右側のリンク片13L側を左方とする。
【0015】
サドル3の形状は、
図2と
図3に示す、一般的なシティサイクル(ママチャリ)に使用されるサドルで、シート31と、クッション材32と、内張り部材33が成形され、支持レール34で支えられたもので説明する。
【0016】
図1は、道路勾配8が約10%勾配の状態を示し、車体傾斜装置64を有した三輪自転車6の前輪62L,62Rが道路勾配8に沿って車体が傾斜した場合、揺動装置1が、サドル3の内部に装着されたことにより、サドル3の最上部の前後の中心線と、三輪自転車6のハンドルポスト61の軸線とが一致した状態で、サドル3の最上部の前後の中心線を基準に揺動してサドル3の最上部の座面が水平になった状態が示されており、以下この状態を成立させるための構成を述べる。
【0017】
図4~
図7に示す、揺動装置1は、左右対称で、略T字状に形成された支柱11の左右両端に平ベルト用アイドラー(回動可能な連結体)12L,12Rが固着され、その下方に配置された揺動金具(揺動体)14の左右両端に、前記支柱11に固着された平ベルト用アイドラー12L,12Rの軸間以上の長さの軸間を有して平ベルト用アイドラー(回動可能な連結体)12L,12Rが固着され、リンク片13L,13Rが左右の平ベルト用アイドラー12L,12Rの連結軸15と連結されて、支柱11を基準としたリンク機構が構成され、揺動金具14の中心部に、支柱11の軸部11aが貫通可能な長孔14aと、その左右両端に揺動の振幅を制御するための停止部14bが設けられ、サドル3の位置を中立に保つため、複数の引きバネ17が装着されて、
図2と
図3に示す、サドル3の支持レール34に揺動金具14が接続板16と低頭ボルト73で固定され、支柱11の軸部11aと連結された保持具2が、シートポスト4に接続された構成となる。
【0018】
図4から
図7に示す支柱11は、金属板の上部が略T字状で、両端が円筒形の平ベルト用アイドラー12L,12Rが固着可能な半円状と、下方に向け、柱となる軸部11aが形成され、下部に保持具2への取付けねじ部が設けられている。
【0019】
図4と
図5に示すリンク片13L,13Rは金属板で両端が平ベルト用アイドラー12L,12Rの外径に合わせた半円状で連結軸15が挿入可能な複数の連結孔を有し、一方のリンク片13L,13Rはバネ掛け部13aを有して形成され、他方のリンク片13L,13Rはバネ掛け部13aを有しない半円状のみで形成され、リンク片13L,13Rの複数の連結孔のピッチ寸法は自由に設定可能である。
【0020】
平ベルト用アイドラー12L,12Rは、市販品が使用され、金属の円筒形で両端にボールベアリングを有し、リンク片13L,13Rで連結される連結軸15がボールベアリングの内輪に挿入されている。
平ベルト用アイドラー12L,12Rは、代替品として、回動可能で、リンク片13L,13Rと連結可能であり、サドル使用時の強度に耐えることができ、安価であれば他の軸受け等を使用することも可能である。
【0021】
図4~
図7に示す、揺動金具14は、金属板で、中心部に支柱11の軸部11aが貫通する長孔14aと、両端に平ベルト用アイドラー12L,12Rの固着用の略半円形部と、サドル3の支持レール34が嵌挿する嵌挿部14dと、バネ掛部14cを有し、乗車者の体重を支えることのできる十分な強度を有して、
図5に示す、略コの字状に曲折形成されている。
【0022】
図7に示す揺動金具14の長孔14aは、中心部に位置し、支柱11の軸部11aが貫通する十分な隙間を有し、左右両端が支柱11の軸部11aに当たって揺動金具14の揺動を停止させる停止部14bが長孔14aの左右に形成され、停止部14bと、支柱11の軸部11aとの間が揺動金具14の揺動の振幅を決める一定の間隔を有して形成されている。
【0023】
図4と
図6と
図7に示す、サドル3と揺動金具14を接続する接続板16は、金属板で中心部に支柱11の軸部11aが貫通する貫通孔16aと、バネ掛部14cが通る抜き孔16bと、左右にネジ部を備え、多角形で、揺動金具14の凹部に挿入可能に形成され、支持レール34の上方からセットされ、低頭ボルト73で前記左右のネジ部が締め付けられてサドル3が固定され、
図2と、
図3に示す、サドル3の内部に揺動装置1が組み込まれた状態となる。
【0024】
図4と
図5と
図8に示す、保持具2は、L形締め付け具23と、I形締め付け具24の双方に回り止め26を有したサイドクランプ22が固着され、L形締め付け具23に支柱11の軸部11aの下部がボルト71で接続され、メインクランプ21の回り止め26と、サイドクランプ22の回り止め26が合わさった状態でクランプ軸25がセットされ、シートポスト4の上部にメインクランプ21が差し込まれ、ストッパー21aで停止されてクランプ軸25とナット72で接続された構成がなされている。
【0025】
L形締め付け具23は、金属板がL字状に曲折形成され、一端部に突起部を有し、他端部が略半円形に形成されている。I形締め付け具24は、長方形で一端部にL形締め付け具23の突起部が緩挿可能な長孔を有して他端部が略半円形に形成されている。
【0026】
メインクランプ21は金属板が、ギザギザ部を有した回り止め26と、シートポスト4への挿入部とストッパー21aと、クランプ軸25の連結孔を有して形成されている。 サイドクランプ22は、ギザギザ部を有した回り止め26と、クランプ軸25の連結孔と、L形締め付け具23とI形締め付け具24の双方への固着部を有して形成されている。
メインクランプ21と、サイドクランプ22は、市販用のサドルに取付けられている保持具用の部品を流用し、部分改造して使用されているが、専用品として製作して使用することも可能である。
【0027】
図2と
図3に示す、揺動装置1、保持具2、サドル3が組み合わされて
図1に示す、三輪自転車6にセットされた状態で乗車し、走行しても、乗車者の体重に十分に耐える強度が確保されている。
【0028】
図9から
図12は、揺動装置1が作動した状態を示したもので、人は、歩行時でも、自転車に乗車時であっても、身体が傾いた場合は垂直な姿勢にたて直そうとする動作が自然に働くことを利用し、サドル3の中心最上部は動きが抑止された状態で、サドル3の左右両サイドが上下に揺動し、サドル3に腰掛けた状態で身体を垂直に保てる揺動装置1の揺動作用と構成について述べる。
【0029】
図1に示す、三輪自転車6が道路勾配8により左に傾斜した状態において、揺動装置1はサドル3の座面上部を水平に保つために、
図9と
図10に示す、支柱11の左右に固着された平ベルト用アイドラー12L,12Rを基準に、サドル3の支持レール34に接続された揺動金具14が左方へ揺動し、リンク機構により、揺動金具14に固着された平ベルト用アイドラー12Lが左方の上部へ、右側の平ベルト用アイドラー12Rが左方の下部へ作動し、支持レール34も同様に作動し、
図11に示す、右側の停止部14bが支柱11の軸部11aに当たり揺動が停止され、
図12に示す、サドル3は、左側が上がり、右側が下がることによりシート31の表面部が右に傾き、
図1に示す、三輪自転車6が左方に傾斜した場合はサドル3が水平状態となる。
道路勾配8が10パーセント以下の小さい場合は支柱11の軸部11aに停止部14bが当たることなく、中間の位置で水平状態が保たれることになる。
【0030】
図12に示す、サドル3の揺動の基点となる交点5は支柱の中心線51に対し、揺動金具の中心線52が揺動時に交わる位置を示しており、サドル3の中心でシート31の最上部に位置するために、支柱11の左右両端に固着された平ベルト用アイドラー12L,12Rの軸間距離に対し、揺動金具14の左右両端に固着された平ベルト用アイドラー12L,12Rの軸間距離が長く設定され、前記双方の軸間距離と、リンク片13L,13Rの連結部の距離(連結孔ピッチ)と、サドル3のクッション材32の厚み、及び内張り部材33の形状、と支持レール34との間隔等が考慮され、各部材が干渉しない状態のサイズで交点5の位置が設定されている。
【0031】
サドル3の交点5は、一定の位置に留まるものではなく、
図3に示す、サドル3のシート31の上面が水平状態から左右への傾斜角度は
図12に示す、5~7度までに変化させる揺動金具14の振れ幅であれば、交点5は左右への位置変化は殆ど無く、上下に約1mm程度の変化である。しかし、シート31の左右への傾斜角度が8度を超え、揺動金具14の振れ幅が大きくなるに従い、交点5の位置が上下左右に揺動し、徐々に大きく変化するため、交点5の位置がキープできる範囲は傾斜角度5~7度と定められ、
図7と
図11に示す、支柱11の軸部11aと揺動金具14の左右の停止部14bとの間隔で揺動金具14の振れ幅が調整されている。サドル3のシート31の左右の傾斜角度が5~7度であれば
図1に示す、道路勾配8の10%勾配に十分対応可能である。
【0032】
図4と
図9に示す引きバネ17は、サドル3を支柱11に対し、常に中立状態に保つためにリンク片13L,13Rのバネ掛部13aと、揺動金具14のバネ掛け部14cに装着され、
図6に示す、支柱11の前後に位置し、
図4と
図6示す、引きバネ17の双方が引き合って中立が保たれた状態となり、
図9は、外力により揺動金具14の揺動で、前方の引きバネ17が伸び、後方の引きバネ17が圧縮した状態となり、引きバネ17には常に中立状態を保つための作用が働き、サドル3に腰かけた時以外の外力が加えられても簡単に揺動することを抑止し、乗車者の身体の動きには追従でき、サドル3の両サイドが上下に揺動可能な設定がなされている。
【0033】
揺動装置1の説明は、
図1の三輪自転車6が道路勾配8に沿って左方に傾斜した場合のサドル3の揺動作用について述べたが、三輪自転車6が右方に傾斜した場合も同様の揺動作用となる。
【0034】
サドル3の揺動装置1の特徴は、サドル3の中心最上部に揺動の基点が有り、サドル3が左右に振れない(左右に振れた場合は走行時に不安を感じてペダルが漕ぎにくい)ことであり、サドル3の中心最上部を基点としてサドル3の両サイドが上下に揺動することにより、サドル3に腰掛け、ペダルを回しても腰が左右に振れることなく安定するため、道路勾配8により三輪自転車6が傾斜した場合は、車体の傾斜角度に応じて身体を垂直に保って走行でき、更に、引きバネ17の作用により、揺動の抑制と、サドル3がシートポスト4の軸線に対して常に中立の位置を保ち、横揺れが抑止されてぺダルが漕ぎやすく疲労軽減にもつながっている。
製造方法については、一般的に流通している市販品を利用したシンプルなリンク機構となり、安価な製造が可能である。
【0035】
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変は可能である。
例えば、本実施例では軸受け体に市販の平ベルト用アイドラー12L,12Rを使用したが回動可能でリンク機構が安価に構成できれば、他の軸受けを使用することも可能で、リンク片の形状も変更可能である。
【0036】
サドル3を一般的なシティサイクルに使用されている製品で説明したが、スポーツ車、特注品等にもサドル3の揺動装置1を使用することは可能である。
【0037】
上記は、前二輪操舵の三輪自転車6に有効な装置ではあるが、他の三輪自転車、四輪自転車又は、二輪自転車でも有効に機能するため使用が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 ・・・・・・・・・ 揺動装置
11 ・・・・・・・・ 支柱
11a ・・・・・・・ 軸部
12L,12R ・・・ 平ベルト用アイドラー(回動可能な連結体)
13L,13R ・・・ リンク片
13a ・・・・・・・ バネ掛部
14 ・・・・・・・・ 揺動金具(揺動体)
14a ・・・・・・・ 長孔
14b ・・・・・・・ 停止部
14c ・・・・・・・ バネ掛部
14d ・・・・・・・ 嵌挿部
15 ・・・・・・・・ 連結軸
16 ・・・・・・・・ 接続板
16a ・・・・・・・ 貫通孔
16b ・・・・・・・ 抜き孔
17 ・・・・・・・・ 引きバネ
2 ・・・・・・・・ 保持具
21 ・・・・・・・・ メインクランプ
21a ・・・・・・・ ストッパー
22 ・・・・・・・・ サイドクランプ
23 ・・・・・・・・ L形締め付け具
24 ・・・・・・・・ I形締め付け具
25 ・・・・・・・・ クランプ軸
26 ・・・・・・・・ 回り止め
3 ・・・・・・・・・ サドル
31 ・・・・・・・・ シート
32 ・・・・・・・・ クッション材
33 ・・・・・・・・ 内張り部材
34 ・・・・・・・・ 支持レール
35 ・・・・・・・・ つるまきバネ
4 ・・・・・・・・・ シートポスト
5 ・・・・・・・・・ 交点
51 ・・・・・・・・ 支柱の中心線
52 ・・・・・・・・ 揺動金具の中心線
6 ・・・・・・・・・ 三輪自転車
61 ・・・・・・・・ ハンドルポスト
62L,62R ・・・ 前輪
63 ・・・・・・・・ 後輪
64 ・・・・・・・・ 車体傾斜装置
71 ・・・・・・・・ ボルト
72 ・・・・・・・・ ナット
73 ・・・・・・・・ 低頭ボルト
74 ・・・・・・・・ ばね座金
8 ・・・・・・・・・ 道路勾配
【要約】
【課題】
停車状態の乗車でも転倒することなく、直立姿勢が保持できる三輪自転車等は、左右の道路勾配に沿って車体が傾斜し、不安定な乗車姿勢となる為、安定した乗車姿勢が保てるサドル揺動装置を提供する。
【解決手段】
シートポスト4に、保持具2を介して接続された支柱11の上部両端に固着された平ベルト用アイドラー12L,12Rと、サドル3の内部の支持レール34に接続された揺動金具14の両端に固着された平ベルト用アイドラー12L,12Rが、リンク片13L,13Rで連結され、支柱の中心線51と、揺動金具の中心線52の揺動時の交点5がサドル3の中心最上部の位置に設定されて、揺動の基点となり、サドル3の中心部は左右への動きが抑止され、左右両サイドは上下に揺動し、乗車者の身体は横揺れすることなく、車体の傾斜に合わせ、サドル3を揺動させ、身体を垂直に保つことが可能な構造。
【選択図】
図12