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7165289N-置換アミノ酸残基を含む環状化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】N-置換アミノ酸残基を含む環状化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/64 20060101AFI20221026BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20221026BHJP
   C07K 1/02 20060101ALI20221026BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C07K7/64
C07K7/08
C07K1/02
C07K1/14
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022547692
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 JP2022019606
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2021079014
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021188473
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】侯 増▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕太
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅英
(72)【発明者】
【氏名】佐近 彩
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/111238(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/117274(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225851(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/100132(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-MeTHF、炭酸ジメチル、アニソール、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、MTBE、CPME、4-メチルテトラヒドロピラン、ヘプタン、トルエン、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、およびジメトキシエタン からなる群より選択される1つまたは複数を含む溶媒中直鎖ペプチド化合物のN末端のアミノ酸残基とC末端のアミノ酸残基とをアミド結合によって連結する工程を含む、液相法によって、下記式(1)で表される化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を製造する方法。
【化1】
【請求項2】
前記直鎖ペプチド化合物のC末端のアミノ酸残基またはN末端のアミノ酸残基の一方が、カルボキシル基のα位炭素に不斉炭素を有しないアミノ酸残基である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記直鎖ペプチド化合物のC末端のアミノ酸残基が、カルボキシル基のα位炭素に不斉炭素を有しないアミノ酸残基である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記直鎖ペプチド化合物が、
【化2】

である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される化合物の溶媒和物である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記式(1)で表される化合物の溶媒和物が、式(1)で表される化合物の水和物である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される化合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される化合物の溶媒和物である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(1)で表される化合物の溶媒和物が、式(1)で表される化合物の水和物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
媒が、2-MeTHF、THF、4-メチルテトラヒドロピラン、MTBE、CPME、炭酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アニソール、アセトニトリル、ヘプタン、およびトルエンからなる群から選択される溶媒を1つ以上含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
式(1)で表される 化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を晶析により単離および/または精製して、式(1)で表される化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶を得る工程をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記式(1)で表される 化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶が、式(1)で表される化合物の非溶媒和物結晶、または溶媒和物結晶である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記式(1)で表される化合物の非溶媒和物結晶、または溶媒和物結晶が、式(1)で表される化合物の溶媒和物結晶である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記式(1)で表される 化合物の溶媒和物結晶が水和物結晶である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも7個のピークを含むC型結晶である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも10個のピークを含むC型結晶である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のピークを含むC型結晶である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
下記式(1)
【化3】

で表される化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶。
【請求項20】
結晶が、非溶媒和物結晶、溶媒和物結晶、塩の結晶、および塩の溶媒和物結晶からなる群より選択される、請求項19に記載の結晶。
【請求項21】
結晶が、溶媒和物結晶である、請求項20に記載の結晶。
【請求項22】
溶媒和物結晶が水和物結晶である、請求項21に記載の結晶。
【請求項23】
水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも7個のピークを含むC型結晶である、請求項22に記載の結晶。
【請求項24】
水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも10個のピークを含むC型結晶である、請求項22に記載の結晶。
【請求項25】
水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のピークを含むC型結晶である、請求項22に記載の結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-置換アミノ酸残基を含む環状化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来経口薬として用いられてきた化合物は、リピンスキーの法則として知られているように、分子量が500g/mol以下であることが望ましいとされてきた(非特許文献1)。近年、分子量が500g/molを超える化合物が、従来の低分子化合物では相互作用することが困難であり、タフターゲットと呼ばれている標的タンパクの表面での相互作用、すなわちタンパク-タンパク相互作用阻害等に寄与しうることが知られるようになってきた。これらの分子は、経口薬として主に用いられてきた分子量が500g/mol以下の低分子でもなく、抗体医薬品のように分子量が100000g/molを超える高分子でもない、中分子化合物(分子量500~2000g/mol)と呼ばれ、タフターゲットに対する創薬を実現しうる、新たなモダリティとして注目されている(非特許文献2)。
【0003】
高血糖症の治療に用いられているインスリンのように、天然アミノ酸からなるペプチドは、代謝安定性に乏しく、従来はペプチドを経口薬として開発することは困難とされてきた。しかし、ペプチドの環化や、ペプチド中にN-メチルアミノ酸に例示される非天然アミノ酸を用いることにより、ペプチドの代謝安定性や膜透過性が向上することが見出されてきた(非特許文献3、4)。
【0004】
非天然アミノ酸を含む環状ペプチドの中でも、特にN-置換アミノ酸を含む環状ペプチドが代謝安定性や膜透過性を有しうる、すなわちドラッグライクネスを有しうることが知られるようになってきた(特許文献1)。
【0005】
非天然型アミノ酸を含む環状ペプチドの化合物が、タンパク-タンパク相互作用の阻害剤の創生に有用であることが示唆されている(非特許文献5)。
【0006】
ペプチドが医薬として重要視されるようになってきたことに伴い、その合成法も盛んに研究されるようになってきた(非特許文献6)。ペプチドの合成は、アミノ酸を順次アミド結合形成反応に付することにより、望みのアミノ酸配列へと伸長することで達成されるが、その配列中に非天然アミノ酸を含むペプチド、とりわけ、N-メチルアミノ酸を含むペプチドの製造は、N-メチル基の立体障害に起因する縮合反応の低反応性、およびアミノ酸残基のα位のラセミ化などによる目的物の収率の低下が課題とされてきた(非特許文献7)。ハロゲン化炭化水素溶媒(例えばジクロロメタンなど)、およびアミド溶媒(例えばDMFなど)は、ペプチド合成において広く使用されているが、このような副反応は、N-置換アミノ酸などの低反応性アミノ酸を有するペプチド合成において観察され得る(非特許文献8)。また、環境負荷の観点から、ハロゲン化炭化水素溶媒(例えばジクロロメタンなど)やアミド溶媒(例えばDMFなど)の使用が制限されている(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/100132号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Adv. Drug Del. Rev. 1997, 23, 3-25.
【文献】Future Med. Chem., 2009, 1, 1289-1310.
【文献】Acc. Chem. Res., 2008, 41, 1331-1342.
【文献】Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 254-269.
【文献】Chem. Rev., 2019, 119, 10360-10391.
【文献】Amino Acids, Peptides and Proteins in Organic Chemistry: Building Blocks, Catalysis and Coupling Chemistry, Volume 3, 2011.
【文献】J. Peptide Res., 2005, 65, 153-166.
【文献】Side Reactions in Peptide Synthesis, Academic Press, 2015.
【文献】Green Chem. Lett. Rev., 2021, 14, 153-164.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、一局面において、本発明は、ペプチド化合物、とりわけN-置換アミノ酸などの非天然アミノ酸を複数含む直鎖または環状のペプチド化合物を、中間体を単離、例えば次工程の前操作として中間体を単離しない大規模スケールにも適用可能な手法で効率的に製造する方法を提供することを課題とする。一局面において、本発明は、カラムクロマトグラフィーに依らずに目的の環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を単離、精製する方法を提供することを課題とする。一態様において、本発明の目的は、ペプチド化合物の製造工程で用いられる溶媒に含まれる安定化剤(例えば、BHT等の抗酸化剤)を、安定化剤を可溶化する溶媒で洗浄することにより、各工程で製造された目的物を単離することなく、安定化剤を除去する方法を提供することにある。一態様において、本発明の目的は、特に、N-置換アミノ酸などの複数の非天然アミノ酸を含有する、例えば直鎖状、または環状のペプチド化合物を、個々の反応工程の中間体、またはペプチド化合物を単離しないことにより各工程における作業時間が短縮され、次の工程を連続的に行う方法を提供することである。 したがって、本明細書に記載された本発明の1つの局面は、安定化剤を可溶化させる溶媒の使用を含む、1つ以上の反応工程を含み得る、ペプチド化合物の製造方法を提供することである。
【0010】
ペプチド合成は、一般に、アミノ酸やペプチドのC末端のカルボキシル基を、アミノ酸やペプチドのN末端のアミノ基と連結する工程を繰り返し、ペプチド鎖を伸長することによって行われるが、この工程ではさまざまな副反応が起こり得ることが知られている(Side Reactions in Peptide Synthesis, Academic Press, 2015.)。したがって、ペプチド合成、とりわけ液相法によるペプチド合成では、伸長工程間や、環化工程の前に生成物を単離、精製するのが通常である。しかし、工業的スケールでのペプチド合成では、中間体の単離、精製は、合成時間の長大化や費用の増大につながるため、目的のペプチドに至る前の中間体を単離、精製せずに連続して次の伸長反応や環化反応をおこなえることが望ましい。
【0011】
一方、ペプチド鎖の伸長反応においては、伸長元のアミノ酸あるいはペプチドのカルボキシル基や、伸長させるアミノ酸またはペプチドのアミノ基は保護されている場合が多く、アミノ酸のω鎖も保護されていることが多い(ペプチド合成の基礎と実験:泉屋信夫(著)丸善(1985).)。このような保護アミノ酸や保護ペプチドは、反応液中から析出しやすく、有機溶媒に不溶である場合がよくある(国際公開第2017/038650号、国際公開第2018/021233号、国際公開第2018/155669号、国際公開第2019/123994号、国際公開第2017/221889号)。また、無保護アミノ酸や無保護ペプチドもその親水性ゆえに有機溶媒に溶解させるのは困難である。さらには、ペプチド鎖を伸長するにつれて凝集が促進され、ペプチド化合物の溶解性が低下することも多い(生物と化学, 2018, 56(8), 558; J. Biol. Chem., 1963, 238, 4074.、Sci Rep, 2016, 6(28), 1.)。
【0012】
これらアミノ酸やペプチドを溶解させるために、ペプチドの合成反応には、溶解能の高い溶媒、例えば、DMFやジメチルスルホキシドが用いられ、また優れた溶解能を有するジクロロメタンも多用される。例えば、ペプチド合成において、DMFは全体の47%で、ジクロロメタンは36%の割合で使用されていると報告されており、それら溶媒の使用例を合わせると、全体の83%となる(Green Chem., 2013,15, 596-600.)。
【0013】
しかしながら、ジクロロメタンには毒性があり、DMFは使用量により法規制の対象となっているため、工業的な製造方法では、これらの溶媒の使用を避けるべきである。加えて、DMFおよびジメチルスルホキシドは、加熱によって分解しうることに加え、沸点が高いため、目的とする生成物にこれらが混入すると除去が困難である。さらには、DMFの分解によって生じるジメチルアミンは、ペプチド伸長反応に関与し得るため、望まないペプチドの副生に繋がることがある(Side Reactions in Peptide Synthesis, Academic Press, 2015.)。ジメチルスルホキシドから生じるジメチルスルフィドは異臭を放つという問題もある。
【0014】
とりわけ、工業的スケールでは、使用する溶媒が大量になり、その留去にも過酷な時間と加熱が必要とされることが多いために、このような操作中に分解物が増すことは容易に推測される。したがって、溶媒を留去する際に熱的に安定で、かつ効率的にペプチド鎖の伸長反応や環化反応が進行させることが可能な溶媒を見出すことは重要である。
【0015】
また、DMFやジメチルスルホキシドは水に対する溶解度が高く、水と混和するため、目的物がこれら有機溶媒と共に水層へ移行して、収量の低下を引き起こす場合があり、水溶液との分液処理操作も非効率となる。例えば、有機層に水が混入すると、目的物を含む有機溶媒の留去後に水が残留し、場合によっては、ペプチド結合の加水分解を引き起こす(Side Reactions in Peptide Synthesis, Academic Press, 2015.)。
【0016】
工業的製法においては、溶媒を留去するために必要な時間も増大することから、収量の低下だけでなく、水の混入による副反応も生じやすくなることが問題となる。
【0017】
そこで、分液操作において水層との分離が良好な有機層を形成する手法や、ペプチドを合成可能であり、かつ水に対する溶解度が低くて水と混和し難い溶媒を見出すことも必要とされている。
【0018】
さらには、溶媒によっては、安定化剤(例えばBHTなどの酸化防止剤)を含有している場合がある。少量スケールや短工程の合成では、残存する安定化剤の総量は多くならず、不純物として際立たない。しかし、工程数や生産量が増加すると、安定化剤が中間体等にそのまま大量に残留するため、その後の工程への影響が無視できない場合がある(例えば、中間体に含まれる安定化剤が次ステップにおける化学反応に影響を及ぼす場合や、医薬品の有効成分の場合、目的とする最終化合物に含まれる安定化剤が薬効以外の予期せぬ作用を引き起こす場合など)。 中間体が単離され、精製されると、安定化剤はこれらの過程を経て除去されうる。 しかし、このような作業を省略することが望ましい工業生産プロセスについては、安定化剤が中間体および最終化合物中に蓄積される可能性がある。 工業生産プロセスでは、安定化剤を効率的に除去するための一般的な技術が求められている。
【0019】
また、中間体を単離、精製せずに連続してペプチド鎖の伸長を行って、最終生成物を合成するためには、縮合や脱保護などの各工程において、副反応を抑制し、分液操作などの後処理のみで次の工程に進めるような反応条件とする必要がある。特に、工業的スケールでのペプチド合成の場合には、目的物のカラムクロマトグラフィーでの精製は非効率であるため、カラムクロマトグラフィーに依らずに、晶析に付すことで精製可能な粗生成物を得る手法や分液操作などの後処理のみで目的物を得る手法が必要であり、そのための反応条件や後処理条件を新たに見出す必要もあった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ペプチドの液相合成に従来から慣用されていたDMF、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシドなどの溶媒とは異なる特定の溶媒、例えば、 (i)加熱によって分解しにくく、(ii)分液操作において水層との分離が良好であり、かつ(iii)ペプチド鎖の伸長反応や環化反応が良好に進行する、といった要件を満たすペプチド合成に有用な溶媒を見出した。本明細書に記載されている方法に有用な溶媒は、熱分解に対して抵抗性を有しうる。このような抵抗性は、好ましくは、測定機器(例えば、GC、LCまたはNMR、好ましくはGC)を用いた、ある温度範囲での溶媒の安定性試験によって決定することができる。特定用途の溶媒は、高温で抵抗性(例えば、沸点付近で48時間安定、または室温付近で2ヶ月間安定、好ましくは沸点付近で48時間安定)を有することでき、上記に例示される条件下、それらの純度を99%以上、好ましくは99.9%以上に保つことができる。本発明の溶媒は、分液操作において、水層から良好な分離を示すことができる。このような分離は、溶媒と水を等量ずつ、分液漏斗、反応フラスコ、または反応槽中、室温付近(例えば、15℃~40℃、好ましくは20℃~30℃)で、30分以内、好ましくは15分以内に混合することにより決定され得る。本発明の溶媒は、ペプチド鎖の伸長反応および環化反応を十分に進行させることができる。このような反応進行は、好ましくは、目的化合物の化学収率、または出発物質の目的化合物への化学変換を測定機器(例えば、GC、LCまたはNMR、好ましくはGC)をもちいることにより決定することができる。特定用途の溶媒は、化学収率70%~100%、または化学変換率70%~100%、好ましくは化学収率と化学変換率の両方が80%~100%を与え得る。より好ましくは、本発明の溶媒は、沸点付近で48時間安定であり得る溶媒、20℃~30℃で15分以内に分液操作で良好な分離を示し得る溶媒、出発物質の化学収率および化学変換の両方を80%~100%で達成し得る溶媒である。これら要件を満たす1種または複数種の溶媒を各反応や反応の後処理操作時に適宜組み合わせて用いることで、中間体を単離することなく、分液やろ過などの簡便な操作のみによってペプチド鎖を連続的に伸長でき、ペプチド化合物を環化でき、溶媒に含まれる安定化剤を除去できる。すなわち、その後の反応については、当該技術分野で理解されているように中間体、例えば単一の生成物を単離する必要はない。むしろ、本発明によれば、次の反応に用いられる溶液は中間体(前の反応の生成物)を含み、および前の反応の1以上の反応物質、または試薬をさらに含み得、それらは次の反応に先立って可溶化されうる。また、本発明者らは、分液操作において、特定の水溶液あるいは有機溶媒を用いることで、有機層あるいは水層を効率的に洗浄できることを見出した。さらには、本発明者らは、本発明の方法により、中間体を単離、精製せずに製造された環状ペプチド化合物を、カラムクロマトグラフィーに依らず、晶析により単離、精製することで、環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物、さらに環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶を得ることができることを見出した。また、本発明者らは、縮合および脱保護の各反応において副生成物の生成を抑制可能な反応条件を見出した。
【0021】
本発明は、非限定の具体的な一態様において以下を包含する。
〔1〕1種または複数種の水と混和しない溶媒、1種または複数種の水溶性アルキルニトリル類、および1種または複数種の水溶性エーテル類からなる群より選択される1つまたは複数を含む溶媒(溶媒A)中、ペプチド化合物のN末端のアミノ酸残基とC末端のアミノ酸残基とを連結する工程を含む、液相法によって、環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を製造する方法。
〔1-1〕溶媒Aが、2-MeTHF、THF、4-メチルテトラヒドロピラン、MTBE、CPME、炭酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アニソール、MeCN、ヘプタン、およびトルエンからなる群から選択される溶媒を1つ以上含む、〔1〕に記載の方法。
〔2〕N末端のアミノ酸残基とC末端のアミノ酸残基が、アミド結合、または-(CH2)nS(CH2)m-、-(CH2)nS(O)(CH2)m-、もしくは-(CH2)nS(O)2(CH2)m-より選択される結合よって連結され、ここでnおよびmはそれぞれ独立して1または2である、〔1〕に記載の方法。
〔3〕環状ペプチド化合物が、8~20のアミノ酸残基を含み、該アミノ酸残基の少なくとも1つが非天然アミノ酸残基である、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕環状ペプチド化合物が、9~15のアミノ酸残基を含み、該アミノ酸残基の少なくとも1つが非天然アミノ酸残基である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕環状ペプチド化合物が、少なくとも1つのN-置換の非天然アミノ酸残基を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕環状ペプチド化合物が、少なくとも1つのN-非置換の非天然アミノ酸残基を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕環状ペプチド化合物が、少なくとも1つのα,αジ置換アミノ酸残基を含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕C末端のアミノ酸残基またはN末端のアミノ酸残基の一方または両方が、カルボキシル基のα位炭素に不斉炭素を有しないアミノ酸残基である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕C末端のアミノ酸残基が、カルボキシル基のα位炭素に不斉炭素を有しないアミノ酸残基である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕N末端のアミノ酸残基が、N-非置換のアミノ酸残基である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が、環状ペプチド化合物の溶媒和物である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕環状ペプチド化合物の溶媒和物が、環状ペプチド化合物の水和物である、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕環状ペプチド化合物が、下記式:
【化1】
で表される、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の方法。
〔14〕環状ペプチド化合物の単離および/または精製にカラムクロマトグラフィーを用いない、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の方法。
〔15〕環状ペプチド化合物を晶析により単離および/または精製して、環状ペプチド化合物の結晶を得る工程をさらに含む、〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕環状ペプチド化合物の結晶が、下記式:
【化2】
で表される環状ペプチド化合物の非溶媒和物結晶、または溶媒和物結晶である、〔15〕に記載の方法。
〔17〕環状ペプチド化合物の溶媒和物結晶が水和物結晶である、〔16〕に記載の方法。
〔18〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも7個のピークを含むC型結晶である、〔17〕に記載の方法。
〔18-1〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも8個のピークを含むC型結晶である、〔17〕に記載の方法。
〔18-2〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも9個のピークを含むC型結晶である、〔17〕に記載の方法。
〔18-3〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも10個のピークを含むC型結晶である、〔17〕に記載の方法。
〔18-4〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも11個のピークを含むC型結晶である、〔17〕に記載の方法。
〔18-5〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも12個のピークを含むC型結晶である、〔17〕に記載の方法。
〔18-6〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のピークを含むC型結晶である、〔17〕に記載の方法。
〔19〕非溶媒和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、5.370°、6.934°、8.940°、9.838°、10.771°、12.181°、13.525°、15.179°、16.202°、および17.554°(±0.2°)のピークを含むF型結晶である、〔16〕に記載の方法。
〔20〕溶媒和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、8.006°、9.002°、9.943°、11.501°、13.067°、14.854°、16.320°、17.275°、19.261°、および20.324°(±0.2°)のピークを含むA型のDMSO-水和物結晶である、〔16〕に記載の方法。
〔21〕溶媒和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、8.223°、9.594°、9.976°、11.879°、13.841°、14.572°、15.934°、16.350°、19.805°、および20.480°(±0.2°)のピークを含むB型のDMSO-水和物結晶である、〔16〕に記載の方法。
〔22〕溶媒和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、7.942°、8.283°、8.861°、10.097°、10.491°、11.805°、12.673°、12.830°、13.514°、13.855°、15.853°、16.405°、16.642°、および17.772°(±0.2°)のピークを含むH型のアセトン-水和物結晶である、〔16〕に記載の方法。
〔23〕溶媒Aが2-MeTHFからなる溶媒、または2-MeTHFを含む溶媒である、〔1〕~〔22〕のいずれかに記載の方法。
〔23-1〕溶媒Aが、2-MeTHF、炭酸ジメチル、アニソール、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、MTBE、CPME、4-メチルテトラヒドロピラン、ヘプタン、およびトルエンからなる群より選択される1つ以上の水と混和しない溶媒を含む、〔1〕~〔22〕のいずれかに記載の方法。
〔24〕溶媒Aが、アセトニトリル、および/またはプロピオニトリルである水溶性アルキルニトリル類を含む、〔1〕~〔22〕のいずれかに記載の方法。
〔25〕溶媒Aが、THF、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、およびジメトキシエタンからなる群より選択される1つ以上の水溶性エーテル類を含む、〔1〕~〔22〕のいずれかに記載の方法。
〔26〕液相法によってペプチド化合物を製造する方法であって、
工程1:C-保護アミノ酸またはC-保護ペプチドに、N-保護アミノ酸またはN-保護ペプチドを連結する工程、
工程2:工程1の後にN-保護基を除去する工程、および
任意で、工程1と工程2を複数回繰り返して、ペプチド化合物を製造する工程、
を含み、工程1と工程2の生成物を単離する工程を含まない、前記方法。
〔27〕ペプチド化合物が直鎖ペプチド化合物である、〔1〕~〔26〕のいずれかに記載の方法。
〔28〕ペプチド化合物が、その部分構造として環状構造を含む、〔26〕または〔27〕に記載の方法。
〔29〕溶媒Aが、ペプチド化合物を製造した後の溶媒を含む、〔1〕~〔25〕のいずれかに記載の方法であって、ペプチド化合物が、〔26〕に記載の方法により製造される、前記方法。
〔30〕工程1と工程2をそれぞれ1回行うか、または工程1と工程2を2回~20回繰り返す、〔26〕~〔29〕のいずれかに記載の方法。
〔31〕ペプチド化合物を製造する方法が、C-保護基を除去する工程3をさらに含む、〔26〕~〔30〕のいずれかに記載の方法。
〔32〕繰り返しの最終回は、工程2を含まない、〔26〕~〔31〕のいずれかに記載の方法。
〔33〕工程3が繰り返しの最終回の工程1の後に行われる、〔31〕または〔32〕に記載の方法。
〔34〕ペプチド化合物を製造する方法に含まれる各工程が、トルエン、アセトン、DMF、アセトニトリル、THF、2-MeTHF、炭酸ジメチル、アニソール、酢酸イソプロピル、ヘプタン、酢酸エチル、MTBE、および4-メチルテトラヒドロピランからなる群より独立して選択される1つまたは複数の溶媒(溶媒B)中で行われる、〔26〕~〔33〕のいずれかに記載の方法。
〔34-1〕溶媒Bが2-MeTHF、MTBE、酢酸イソプロピル、および酢酸エチルからなる群より選択される、〔26〕~〔33〕のいずれかに記載の方法。
〔35〕ペプチド化合物を製造する方法に含まれる各工程の後処理が、分液操作、ろ過操作、および濃縮操作からなる群より選択される1つまたは複数の操作を含む、〔26〕~〔34〕のいずれかに記載の方法。
〔36〕分液操作の前に、水と混和しない溶媒(溶媒C)、水溶性アルキルニトリル類、および/または水溶性エーテル類が添加される、〔35〕に記載の方法。
〔37〕溶媒Cが、2-MeTHF、炭酸ジメチル、アニソール、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、MTBE、CPME、4-メチルテトラヒドロピラン、およびヘプタンからなる群より選択される1つまたは複数である、〔36〕に記載の方法。
〔38〕溶媒Cが、2-MeTHFである、〔36〕または〔37〕に記載の方法。
〔39〕溶媒Cが、水層と有機層に分離可能な量で添加される、〔36〕~〔38〕のいずれかに記載の方法。
〔40〕分離可能な量が、有機層全体に対して、約50重量%~100重量%である、〔39〕に記載の方法。
〔41〕有機層が、2-MeTHFを含む、〔35〕~〔40〕のいずれかに記載の方法。
〔42〕分液操作が、有機層の洗浄操作を含む、〔35〕~〔40〕のいずれかに記載の方法。
〔42-1〕洗浄操作が、クエン酸とリン酸水素二カリウムを含む水溶液を用いて行われる有機層の洗浄操作、または2-MeTHF、ヘプタン、MTBE、もしくは酢酸イソプロピルを用いて行われる水層の洗浄操作を含む、〔35〕~〔41〕のいずれかに記載の方法。
〔43〕洗浄操作が、アセトニトリルと炭酸カリウム水溶液の混合液を用いて行われる有機層の洗浄操作を含む、〔35〕~〔42〕のいずれかに記載の方法。
〔44〕分液操作が、炭酸ナトリウム水溶液、硫酸水素ナトリウム水溶液、および/または炭酸ナトリウム水溶液を用いて行われる有機層の洗浄操作を含む、〔35〕~〔43〕のいずれかに記載の方法。
〔44-1〕分液操作が、炭酸ナトリウム水溶液、硫酸水素ナトリウム水溶液、および炭酸ナトリウム水溶液を用いて行われる有機層の洗浄操作を含む、〔35〕~〔43〕のいずれかに記載の方法。
〔45〕分液操作後に有機層が、目的物に対して2%以下のBHTを含む、〔35〕~〔44〕のいずれかに記載の方法。
〔45-1〕(1) ペプチド化合物が〔26〕~〔45〕のいずれかの方法で製造され、および、(2) 溶媒Aが〔35〕~〔45〕のいずれかの方法で使われる溶媒をさらに含む、〔1〕~〔23-1〕のいずれかに記載の方法。
〔46〕工程1が、C-保護アミノ酸またはC-保護ペプチドのN末端のアミノ基と、N-保護アミノ酸またはN-保護ペプチドのC末端のカルボキシル基とを縮合する工程を含む、〔26〕~〔45〕のいずれかに記載の方法。
〔47〕カルボキシル基が活性化されている、〔46〕に記載の方法。
〔48〕工程1が、縮合試薬の存在下で行われる、〔46〕に記載の方法。
〔49〕縮合試薬がT3P、EDCI、HATU、COMU、BEP、PyBOP、DMT-MM、およびPyOximからなる群より選択される縮合剤を含む、〔48〕に記載の方法。
〔50〕工程2が、触媒の存在下、接触水素化により行われる、〔26〕~〔49〕のいずれかに記載の方法。
〔51〕触媒が、Pd/C、Pd(OH)2/C、またはPtO2より選択される、〔50〕に記載の方法。
〔52〕工程2が、脱保護試薬の存在下で行われる、〔26〕~〔49〕のいずれかに記載の方法。
〔53〕脱保護試薬が、TBAF、LiBH4、ピペリジン、トリフルオロ酢酸、またはメタンスルホン酸より選択される、〔52〕に記載の方法。
〔54〕N-保護基が、Cbz、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2-ナフチルメチルオキシカルボニル、ジフェニルメチルオキシカルボニル、9-アントリルメチルオキシカルボニル、Teoc、Boc、トリフルオロアセチル、Fmoc、またはAllocより選択される、〔26〕~〔53〕のいずれかに記載の方法。
〔55〕工程3が、脱保護試薬の存在下で行われる、〔26〕~〔44〕のいずれかに記載の方法。
〔56〕脱保護反応が、酸性条件で行われる、〔55〕に記載の方法。
〔57〕酸性条件が、HMDSと、TMSOTf、TMSI、TMSBr、およびTMSClからなる群より選択される試薬との組み合わせで達成される、〔56〕に記載の方法。
〔58〕C-保護基が、t-Bu、トリチル、クミル、メチル、またはエチルより選択される、〔26〕~〔57〕のいずれかに記載の方法。
〔59〕C-保護ペプチドおよびN-保護ペプチドの一方または両方が、2~20のアミノ酸残基を含み、該C-保護ペプチドおよびN-保護ペプチドの一方または両方に含まれる該アミノ酸残基の少なくとも1つが非天然アミノ酸残基である、〔26〕~〔58〕のいずれかに記載の方法。
〔60〕C-保護ペプチドおよびN-保護ペプチドの一方または両方が、少なくとも1つのN-置換アミノ酸残基を含む、〔26〕~〔59〕のいずれかに記載の方法。
〔61〕C-保護ペプチドおよびN-保護ペプチドの一方または両方が、少なくとも1つのN-非置換の非天然アミノ酸残基を含む、〔26〕~〔60〕のいずれかに記載の方法。
〔62〕繰り返しの最終回の工程1で用いられるC-保護ペプチドおよびN-保護ペプチドの一方または両方が、N-置換アミノ酸残基を4つ以上含むか、またはN-置換アミノ酸残基を2つ以上含み、かつα,αジ置換アミノ酸残基を1つ以上含む、〔26〕~〔61〕のいずれかに記載の方法。
〔63〕繰り返しの最終回の工程1で用いられるC-保護ペプチドおよびN-保護ペプチドの一方または両方が、5つまたは6つのアミノ酸残基からなり、4つまたは5つの非天然アミノ酸残基を含む〔26〕~〔62〕に記載の方法。
〔64〕繰り返しの最終回の工程1で用いられるC-保護ペプチドが、C-保護されたMeLeu-Ile-MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyであり、繰り返しの最終回の工程1で用いられるN-保護ペプチドが、N-保護されたHph(4-CF3-35F2)-Pro-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp-NMe2である、〔63〕に記載の方法。
〔65〕C-保護アミノ酸、もしくはその塩、またはC-保護ペプチド、もしくはその塩が、
【化3】
である、〔26〕~〔61〕のいずれかに記載の方法。
〔66〕N-保護アミノ酸、もしくはその塩、またはN-保護ペプチド、もしくはその塩が、
【化4】
である、〔26〕~〔61〕のいずれかに記載の方法。
〔67〕ペプチド化合物が、
【化5】
である、〔26〕~〔61〕のいずれかに記載の方法。
〔68〕ペプチド化合物のN末端のアミノ酸残基とC末端のアミノ酸残基とを連結する工程をさらに含む、〔26〕~〔67〕のいずれかに記載の方法。
〔69〕(1)下記式:
【化6】
で表される直鎖ペプチド化合物を用意する工程、
(2)N末端のアミノ酸残基とC末端のアミノ酸残基とを連結する工程、
を含む、下記式:
【化7】
で表される環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。
〔70〕下記式:
【化8】
で表される環状ペプチド化合物の塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物。
〔70-1〕HPLC分析による210nmでのUVArea値により決定される、90%以上、95%以上、98%以上、または99%以上の純度を有する、式1で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物。
〔70-2〕 HPLC分析による210nmでのUVArea%により決定される、総不純物が5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、または検出不能な量であることを特徴とする、高純度の式1で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物。
〔70-3〕HPLC分析による210nmでのUVArea%により決定される、不純物各々がそれぞれ1%未満、0.5%未満、0.1%未満、または検出不能な量であることを特徴とする、〔70-2〕に記載の高純度の式1で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物。
〔70-4〕HPLC分析による210nmでのUVArea%により決定される、不純物が1%未満、0.5%未満、0.1%未満、または検出不能な量であり、該不純物がエピマー、過剰伸長体、欠損体、二量体、および三量体からなる群からされることを特徴とする、〔70-2〕、または〔70-3〕に記載の高純度の式1で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物。
〔70-5〕HPLC分析による210nmでのUVArea%により決定される、不純物が1%未満、0.5%未満、0.1%未満、または検出不能な量であり、該不純物が以下に示す環状二量体(Cyclic dimer)、および/または以下に示す環状三量体(Cyclic trimer)であることを特徴とする、〔70-2〕、〔70-3〕、または〔70-4〕に記載の高純度の式1で表される化合物、その塩、またはそれらの溶媒和物。
【化9】
〔71〕水和物、DMSO-水和物、アセトン-水和物、またはDMSO溶媒和物である、〔70〕に記載の環状ペプチド化合物の溶媒和物。
〔72〕下記式:
【化10】
で表される環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶。
〔73〕結晶が、非溶媒和物結晶、溶媒和物結晶、塩の結晶、および塩の溶媒和物結晶からなる群より選択される、〔72〕に記載の結晶。
〔74〕結晶が、溶媒和物結晶である、〔73〕に記載の結晶。
〔75〕溶媒和物結晶が水和物結晶である、〔72〕に記載の結晶。
〔76〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも7個のピークを含むC型結晶である、〔75〕に記載の結晶。
〔76-1〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも8個のピークを含むC型結晶である、〔75〕に記載の結晶。
〔76-2〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも9個のピークを含むC型結晶である、〔75〕に記載の結晶。
〔76-3〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも10個のピークを含むC型結晶である、〔75〕に記載の結晶。
〔76-4〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも11個のピークを含むC型結晶である、〔75〕に記載の結晶。
〔76-5〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも12個のピークを含むC型結晶である、〔75〕に記載の結晶。
〔76-6〕水和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のピークを含むC型結晶である、〔75〕に記載の結晶。
〔77〕非溶媒和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、5.370°、6.934°、8.940°、9.838°、10.771°、12.181°、13.525°、15.179°、16.202°、および17.554°(±0.2°)のピークを含むF型結晶である、〔73〕に記載の結晶。
〔78〕溶媒和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、8.006°、9.002°、9.943°、11.501°、13.067°、14.854°、16.320°、17.275°、19.261°、および20.324°(±0.2°)のピークを含むA型のDMSO-水和物結晶である、〔73〕に記載の結晶。
〔79〕溶媒和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、8.223°、9.594°、9.976°、11.879°、13.841°、14.572°、15.934°、16.350°、19.805°、および20.480°(±0.2°)のピークを含むB型のDMSO-水和物結晶である、〔73〕に記載の結晶。
〔80〕溶媒和物結晶が、粉末X線回折による回折角(2θ値)として、7.942°、8.283°、8.861°、10.097°、10.491°、11.805°、12.673°、12.830°、13.514°、13.855°、15.853°、16.405°、16.642°、および17.772°(±0.2°)のピークを含むH型のアセトン-水和物結晶である、〔73〕に記載の結晶。
〔81〕下記式:
【化11】
で表される環状ペプチド化合物の水和物結晶を製造する方法であって、
該環状ペプチド化合物を該環状ペプチド化合物が溶解可能な量の極性有機溶媒に溶解させて溶液を得る工程、
該溶液を濃縮して、該環状ペプチド化合物の残渣を得る工程、および
該残渣に水と極性有機溶媒の混合液を加えて、該環状ペプチド化合物の水和物結晶を得る工程
を含む、前記方法。
〔82〕下記式:
【化12】
で表される環状ペプチド化合物の水和物結晶を製造する方法であって、
アモルファス状態の該環状ペプチド化合物をDMSOに溶解させて溶液を得る工程、
該溶液を凍結乾燥して、該環状ペプチド化合物の凍結乾燥体を得る工程、および
該凍結乾燥体に水-アセトニトリル混合液を加えて、該環状ペプチド化合物の水和物結晶を得る工程
を含む、前記方法。
上記番号付けにおいて、従属項が引用する番号は、特に言及がない限りその番号の枝番を含む。例えば、従属項において引用する〔1〕は、〔1〕とともに、その枝番である〔1-1〕を含むことを示す。他の番号付けにおいても同様である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の非天然アミノ酸残基を含む複雑なアミノ酸配列を有する場合であっても、アミノ酸残基のラセミ化や分子間反応を抑制して、環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を効率的に製造することができる。また、本発明によれば、中間体を単離、精製せずに、分液、ろ過、および濃縮などの単純な後処理を行うだけで、ペプチド鎖の連続的な伸長や、それに次ぐ環化を行うことができるため、目的とするペプチド化合物を効率よく製造することができる。本発明の製造方法は、ペプチド化合物の製造コストを削減でき、環境負荷も軽減できるため、大規模スケールでのペプチド合成に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施例25で得られた化合物1の水和物結晶(C型結晶)の粉末X線回折測定の結果を示す。縦軸は回折強度であり、横軸は回折角2θ(°)である。
図2図2は、実施例25-2で得られた化合物1の非溶媒和物結晶(F型結晶)の粉末X線回折測定の結果を示す。縦軸は回折強度であり、横軸は回折角2θ(°)である。
図3図3は、実施例25-3で得られた化合物1の結晶(A型結晶)の粉末X線回折測定の結果を示す。縦軸は回折強度であり、横軸は回折角2θ(°)である。
図4図4は、実施例25-3で得られた化合物1の結晶(B型結晶)の粉末X線回折測定の結果を示す。縦軸は回折強度であり、横軸は回折角2θ(°)である。
図5図5は、実施例25-3で得られた化合物1の結晶(B型結晶)の熱重量・示差熱分析の結果を示す。横軸は温度(℃)であり、右縦軸は熱重量分析におけるサンプルの重量変化(%)である。左縦軸は示差熱分析において観測された熱流を表す。
図6図6は、実施例25-3で得られた化合物1の結晶(B型結晶)のH-NMR測定の結果を示す。
図7図7は、実施例25-4で得られた化合物1の水和物結晶(C型結晶)の、相対湿度75%、30%、0%における粉末X線回折測定の結果を示す。縦軸は回折強度であり、横軸は回折角2θ(°)である。
図8図8は、実施例26で得られた化合物1の水和物結晶(C型結晶)の熱重量・示差熱分析の結果を示す。横軸は温度(℃)および測定時間(分)であり、右縦軸は熱重量分析におけるサンプルの重量変化(mg)である。左縦軸は示差熱分析において観測された熱流(mW)を表す。
図9図9は、実施例26で得られた化合物1の水和物結晶(C型結晶)の単結晶X線構造解析による結晶構造を示す。
図10図10は、実施例26で得られた化合物1の水和物結晶(C型結晶)の動的水蒸気吸着測定の結果を示す。縦軸は重量変化(%)であり、横軸は相対湿度(%)である。図10において、「Cycle1 Sorp」(黒ダイヤモンド印)はサイクル1での吸着を示し、「Cycle1 Desorp」(黒四角印)はサイクル1での脱離を示し、「Cycle2 Sorp」(黒三角印)はサイクル2での吸着を示し、「Cycle2 Desorp」(黒四角印)はサイクル2での脱離を示す。
図11図11は、実施例26-1で得られた化合物1のDMSO-水和物結晶(A型結晶)の単結晶X線構造解析による結晶構造を示す。この結晶構造においては化合物1:DMSO:水が1:6:3でモデル化されている。
図12図12は、実施例26-2で得られた化合物1のアセトン-水和物結晶(H型結晶、単結晶X線構造解析用)の単結晶X線構造解析による結晶構造を示す。この結晶構造においては化合物1:アセトン:水が1:1:4でモデル化されている。
図13図13は、実施例26-2で得られた化合物1のアセトン-水和物結晶(H型結晶、粉末X線回折測定用)の結果を示す。縦軸は回折強度であり、横軸は回折角2θ(°)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において使用される略語を以下に記す。
2-MeTHF:2-メチルテトラヒドロフラン
AcOEt:酢酸エチル
Alloc:アリルオキシカルボニル
BEP:2-ブロモ-1-エチルピリジニウム テトラフルオロホウ酸塩
BHT:2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール
Boc:t-ブトキシカルボニル
Cbz:ベンジルオキシカルボニル
COMU:(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩
CPME:シクロペンチルメチルエーテル
CSA:10-カンファースルホン酸
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMA:ジメチルアセトアミド
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMT-MM:4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド
EDCI:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
HATU:O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩
HMDS:1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン
HOAt:1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
IPAc:酢酸イソプロピル
MeCN:アセトニトリル
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル
MTHP:4-メチルテトラヒドロピラン
NMP:N-メチルピロリドン
PyBOP:1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロリン酸塩
PyOxim:(エチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセタト-O2)-トリ-(1-ピロリジニル)-ホスホニウム ヘキサフルオロリン酸塩
T3P:プロピルホスホン酸無水物
TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオリド
Teoc:2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル
THF:テトラヒドロフラン
TMSOTf:トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル
【0025】
官能基等の定義(以下に例示される用語は、例示であり特に限定を意図していない当業者が共通して理解できるものである)
本明細書における「ハロゲン原子」としては、F、Cl、BrまたはIが例示される。
【0026】
本明細書において「アルキル」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基であり、骨格中にヘテロ原子(炭素及び水素原子以外の原子をいう。)または不飽和の炭素-炭素結合を含有せず、水素及び炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素基構造の部分集合を有する。アルキルは直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状のものも含む。アルキルとして具体的には、炭素原子数1~20(C-C20、以下「C-C」とは炭素原子数がp~q個であることを意味する)のアルキルであり、好ましくはC-C10アルキル、より好ましくはC-Cアルキルが挙げられる。アルキルとして、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソブチル(2-メチルプロピル)、n-ペンチル、s-ペンチル(1-メチルブチル)、t-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)、ネオペンチル(2,2-ジメチルプロピル)、イソペンチル(3-メチルブチル)、3-ペンチル(1-エチルプロピル)、1,2-ジメチルプロピル、2-メチルブチル、n-ヘキシル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。
【0027】
本明細書において「アルケニル」とは、少なくとも1個の二重結合(2個の隣接SP炭素原子)を有する1価の基である。二重結合および置換分(存在する場合)の配置によって、二重結合の幾何学的形態は、エントゲーゲン(E)またはツザンメン(Z)、シスまたはトランス配置をとることができる。アルケニルは、直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状ものも含む。アルケニルとして好ましくはC-C10アルケニル、より好ましくはC-Cアルケニルが挙げられ、具体的には、たとえば、ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル(シス、トランスを含む)、3-ブテニル、ペンテニル、3-メチル-2-ブテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0028】
本明細書において「アルキニル」とは、少なくとも1個の三重結合(2個の隣接SP炭素原子)を有する、1価の基である。アルキニルは、直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状のものも含む。アルキニルとして好ましくはC-C10アルキニル、より好ましくはC-Cアルキニルが挙げられ、具体的には、たとえば、エチニル、1-プロピニル、プロパルギル、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、3-フェニル-2-プロピニル、3-(2'-フルオロフェニル)-2-プロピニル、2-ヒドロキシ-2-プロピニル、3-(3-フルオロフェニル)-2-プロピニル、3-メチル-(5-フェニル)-4-ペンチニルなどが挙げられる。
【0029】
本明細書において「シクロアルキル」とは、飽和または部分的に飽和した環状の1価の脂肪族炭化水素基を意味し、単環、ビシクロ環、スピロ環を含む。シクロアルキルとして好ましくはC-Cシクロアルキルが挙げられ、具体的には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、スピロ[3.3]ヘプチルなどが挙げられる。
【0030】
本明細書において「アリール」とは1価の芳香族炭化水素環を意味し、好ましくはC-C10アリールが挙げられる。アリールとして具体的には、たとえば、フェニル、ナフチル(たとえば、1-ナフチル、2-ナフチル)などが挙げられる。
【0031】
本明細書において「ヘテロシクリル」とは、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有する、非芳香族の環状の1価の基を意味する。ヘテロシクリルは、環中に二重およびまたは三重結合を有していてもよく、環中の炭素原子は酸化されてカルボニルを形成してもよく、単環でも縮合環でもよい。環を構成する原子の数は好ましくは4~10であり(4~10員ヘテロシクリル)、より好ましくは4~7である(4~7員ヘテロシクリル)。ヘテロシクリルとしては具体的には、たとえば、アゼチジニル、オキシラニル、オキセタニル、アゼチジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロピリミジル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、1,2-チアジナン、チアジアゾリジニル、アゼチジニル、オキサゾリドン、ベンゾジオキサニル、ベンゾオキサゾリル、ジオキソラニル、ジオキサニル、テトラヒドロピロロ[1,2-c]イミダゾール、チエタニル、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、3-オキサ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、スルタム、2-オキサスピロ[3.3]ヘプチルなどが挙げられる。
【0032】
本明細書において「ヘテロアリール」とは、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有する、芳香族性の環状の1価の基を意味する。環は単環でも、他の環との縮合環でもよく、部分的に飽和されていてもよい。環を構成する原子の数は好ましくは5~10(5~10員ヘテロアリール)であり、より好ましくは5~7(5~7員ヘテロアリール)である。ヘテロアリールとして具体的には、たとえば、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾジオキソリル、インドリジニル、イミダゾピリジルなどが挙げられる。
【0033】
本明細書において「アルコキシ」とは、前記定義の「アルキル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-Cアルコキシが挙げられる。アルコキシとして具体的には、たとえば、メトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、3-メチルブトキシなどが挙げられる。
【0034】
本明細書において「アルケニルオキシ」とは、前記定義の「アルケニル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-Cアルケニルオキシが挙げられる。アルケニルオキシとして具体的には、たとえば、ビニルオキシ、アリルオキシ、1-プロペニルオキシ、2-プロペニルオキシ、1-ブテニルオキシ、2-ブテニルオキシ(シス、トランスを含む)、3-ブテニルオキシ、ペンテニルオキシ、ヘキセニルオキシなどが挙げられる。
【0035】
本明細書において「シクロアルコキシ」とは、前記定義の「シクロアルキル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-Cシクロアルコキシが挙げられる。シクロアルコキシとして具体的には、たとえば、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシなどが挙げられる。
【0036】
本明細書において「アリールオキシ」とは、前記定義の「アリール」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-C10アリールオキシが挙げられる。アリールオキシとして具体的には、たとえば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシなどが挙げられる。
【0037】
本明細書において「アミノ」とは、狭義には-NHを意味し、広義には-NRR’を意味し、ここでRおよびR’は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールから選択されるか、あるいはRおよびR’はそれらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成する。アミノとして好ましくは、-NH、モノC-Cアルキルアミノ、ジC-Cアルキルアミノ、4~8員環状アミノなどが挙げられる。
【0038】
本明細書において「モノアルキルアミノ」とは、前記定義の「アミノ」のうち、Rが水素であり、かつR’が前記定義の「アルキル」である基を意味し、好ましくは、モノC-Cアルキルアミノが挙げられる。モノアルキルアミノとして具体的には、たとえば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、i-プロピルアミノ、n-ブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノなどが挙げられる。
【0039】
本明細書において「ジアルキルアミノ」とは、前記定義の「アミノ」のうち、RおよびR’が独立して前記定義の「アルキル」である基を意味し、好ましくは、ジC-Cアルキルアミノが挙げられる。ジアルキルアミノとして具体的には、たとえば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが挙げられる。
【0040】
本明細書において「環状アミノ」とは、前記定義の「アミノ」のうち、RおよびR’はそれらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成する基を意味し、好ましくは、4~8員環状アミノが挙げられる。環状アミノとして具体的には、たとえば、1-アゼチジル、1-ピロリジル、1-ピペリジル、1-ピペラジル、4-モルホリニル、3-オキサゾリジル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル-4-イル、3-オキサ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イルなどが挙げられる。
【0041】
本明細書において「保護アミノ」とは、任意の保護基で保護されたアミノ基を意味する。保護アミノとして具体的には、例えば、Boc、Fmoc、Cbz、Troc、Alloc、Teoc、またはトリフルオロアセチルなどの保護基で保護されたアミノが挙げられる。
【0042】
本明細書において「アミノカルボニル」とは、前記定義の「アミノ」が結合したカルボニル基を意味し、好ましくは、-CONH、モノC-Cアルキルアミノカルボニル、ジC-Cアルキルアミノカルボニル、4~8員環状アミノカルボニルが挙げられる。アミノカルボニルとして具体的には、例えば、-CONH、ジメチルアミノカルボニル、1-アゼチジニルカルボニル、1-ピロリジニルカルボニル、1-ピペリジニルカルボニル、1-ピペラジニルカルボニル、4-モルホリニルカルボニル、3-オキサゾリジニルカルボニル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル-4-イルカルボニル、3-オキサ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イルカルボニルなどが挙げられる。
【0043】
本明細書において「アルケニルオキシカルボニル」とは、前記定義の「アルケニルオキシ」が結合したカルボニル基を意味し、好ましくは、C-Cアルケニルオキシカルボニルが挙げられる。アルケニルオキシカルボニルとして具体的には、たとえば、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、1-プロペニルオキシカルボニル、2-プロペニルオキシカルボニル、1-ブテニルオキシカルボニル、2-ブテニルオキシカルボニル(シス、トランスを含む)、3-ブテニルオキシカルボニル、ペンテニルオキシカルボニル、ヘキセニルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0044】
本明細書において「アルキルスルホニル」とは、前記定義の「アルキル」が結合したスルホニル基を意味し、好ましくはC-Cアルキルスルホニルが挙げられる。アルキルスルホニルとして具体的には、たとえば、メチルスルホニルなどが挙げられる。
【0045】
本明細書における「ヒドロキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つ、または複数の水素が水酸基で置換された基を意味し、C-Cヒドロキシアルキルが好ましい。ヒドロキシアルキルとして具体的には、たとえば、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、5-ヒドロキシペンチルなどが挙げられる。
【0046】
本明細書における「ハロアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素がハロゲンで置換された基を意味し、C-Cハロアルキルが好ましく、C-Cフルオロアルキルがより好ましい。ハロアルキルとして具体的には、たとえば、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3-ジフルオロプロピル、4,4-ジフルオロブチル、5,5-ジフルオロペンチルなどが挙げられる。
【0047】
本明細書における「シアノアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素がシアノで置換された基を意味し、C-Cシアノアルキルが好ましい。シアノアルキルとして具体的には、たとえば、シアノメチル、2-シアノエチルなどが挙げられる。
【0048】
本明細書における「アミノアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アミノ」で置換された基を意味し、C-Cアミノアルキルが好ましい。アミノアルキルとして具体的には、たとえば、1-ピリジルメチル、2-(1-ピペリジル)エチル、3-(1-ピペリジル)プロピル、4-アミノブチルなどが挙げられる。
【0049】
本明細書における「カルボキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素がカルボキシで置換された基を意味し、C-Cカルボキシアルキルが好ましい。カルボキシアルキルとして具体的には、たとえば、カルボキシメチルなどが挙げられる。
【0050】
本明細書における「アルケニルオキシカルボニルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アルケニルオキシカルボニル」で置換された基を意味し、C-CアルケニルオキシカルボニルC-Cアルキルが好ましく、C-CアルケニルオキシカルボニルC-Cアルキルがより好ましい。アルケニルオキシカルボニルアルキルとして具体的には、たとえば、アリルオキシカルボニルメチル、2-(アリルオキシカルボニル)エチルなどが挙げられる。
【0051】
本明細書における「アルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アルコキシ」で置換された基を意味し、C-CアルコキシC-Cアルキルが好ましく、C-CアルコキシC-Cアルキルがより好ましい。アルコキシアルキルとして具体的には、たとえば、メトキシメチル、エトキシメチル、1-プロポキシメチル、2-プロポキシメチル、n-ブトキシメチル、i-ブトキシメチル、s-ブトキシメチル、t-ブトキシメチル、ペンチルオキシメチル、3-メチルブトキシメチル、1-メトキシエチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチルなどが挙げられる。
【0052】
本明細書における「シクロアルキルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「シクロアルキル」で置換された基を意味し、C-CシクロアルキルC-Cアルキルが好ましく、C-CシクロアルキルC-Cアルキルがより好ましい。シクロアルキルアルキルとして具体的には、たとえば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
【0053】
本明細書における「シクロアルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「シクロアルコキシ」で置換された基を意味し、C-CシクロアルコキシC-Cアルキルが好ましく、C-CシクロアルコキシC-Cアルキルがより好ましい。シクロアルコキシアルキルとして具体的には、たとえば、シクロプロポキシメチル、シクロブトキシメチルなどが挙げられる。
【0054】
本明細書における「ヘテロシクリルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「ヘテロシクリル」で置換された基を意味し、4~7員ヘテロシクリルC-Cアルキルが好ましく、4~7員ヘテロシクリルC-Cアルキルがより好ましい。ヘテロシクリルアルキルとして具体的には、たとえば、2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)エチル、2-(アゼチジン-3-イル)エチルなどが挙げられる。
【0055】
本明細書における「アルキルスルホニルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アルキルスルホニル」で置換された基を意味し、C-CアルキルスルホニルC-Cアルキルが好ましく、C-CアルキルスルホニルC-Cアルキルがより好ましい。アルキルスルホニルアルキルとして具体的には、たとえば、メチルスルホニルメチル、2-(メチルスルホニル)エチルなどが挙げられる。
【0056】
本明細書における「アミノカルボニルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アミノカルボニル」で置換された基を意味し、アミノカルボニルC-Cアルキルが好ましく、アミノカルボニルC-Cアルキルがより好ましい。アミノカルボニルアルキルとして具体的には、たとえば、メチルアミノカルボニルメチル、ジメチルアミノカルボニルメチル、t-ブチルアミノカルボニルメチル、1-アゼチジニルカルボニルメチル、1-ピロリジニルカルボニルメチル、1-ピペリジ二ルカルボニルメチル、4-モルホリニルカルボニルメチル、2-(メチルアミノカルボニル)エチル、2-(ジメチルアミノカルボニル)エチル、2-(1-アゼチジニルカルボニル)エチル、2-(1-ピロリジニルカルボニル)エチル、2-(4-モルホリニルカルボニル)エチル、3-(ジメチルアミノカルボニル)プロピル、4-(ジメチルアミノカルボニル)ブチルなどが挙げられる。
【0057】
本明細書における「アリールオキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アリールオキシ」で置換された基を意味し、C-C10アリールオキシC-Cアルキルが好ましく、C-C10アリールオキシC-Cアルキルがより好ましい。アリールオキシアルキルとして具体的には、たとえば、フェノキシメチル、2-フェノキシエチルなどが挙げられる。
【0058】
本明細書において「アラルキル(アリールアルキル)」とは、前記定義の「アルキル」の少なくとも一つの水素原子が前記定義の「アリール」で置換された基を意味し、C-C14アラルキルが好ましく、C-C10アラルキルがより好ましい。アラルキルとして具体的には、たとえば、ベンジル、フェネチル、3-フェニルプロピルなどが挙げられる。
【0059】
本明細書において「アラルコキシ」とは、前記定義の「アラルキル」が結合したオキシ基を意味し、C-C14アラルコキシが好ましく、C-C10アラルコキシがより好ましい。アラルコキシとして具体的には、たとえば、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、3-フェニルプロポキシなどが挙げられる。
【0060】
本明細書における「アラルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アラルコキシ」で置換された基を意味し、C-C14アラルコキシC-Cアルキルが好ましく、C-C14アラルコキシC-Cアルキルがより好ましい。アラルコキシアルキルとして具体的には、たとえば、ベンジルオキシメチル、1-(ベンジルオキシ)エチルなどが挙げられる。
【0061】
本明細書において「ヘテロアリールアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の少なくとも一つの水素原子が前記定義の「ヘテロアリール」で置換された基を意味し、5~10員ヘテロアリールC-Cアルキルが好ましく、5~10員ヘテロアリールC-Cアルキルがより好ましい。ヘテロアリールアルキルとして具体的には、たとえば、3-チエニルメチル、4-チアゾリルメチル、2-ピリジルメチル、3-ピリジルメチル、4-ピリジルメチル、2-(2-ピリジル)エチル、2-(3-ピリジル)エチル、2-(4-ピリジル)エチル、2-(6-キノリル)エチル、2-(7-キノリル)エチル、2-(6-インドリル)エチル、2-(5-インドリル)エチル、2-(5-ベンゾフラニル)エチルなどが挙げられる。
【0062】
本明細書において「ヘテロアリールアルコキシ」とは、前記定義の「ヘテロアリールアルキル」が結合したオキシ基を意味し、5~10員ヘテロアリールC-Cアルコキシが好ましく、5~10員ヘテロアリールC-Cアルコキシがより好ましい。ヘテロアリールアルコキシとして具体的には、たとえば、3-チエニルメトキシ、3-ピリジルメトキシが挙げられる。
【0063】
本明細書における「ヘテロアリールアルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「ヘテロアリールアルコキシ」で置換された基を意味し、5~10員ヘテロアリールC-CアルコキシC-Cアルキルが好ましく、5~10員ヘテロアリールC-CアルコキシC-Cアルキルがより好ましい。ヘテロアリールアルコキシアルキルとして具体的には、たとえば、3-ピリジルメトキシメチルなどが挙げられる。
【0064】
本明細書における「ヘテロシクロアルキリデンアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「ヘテロシクロアルキリデン」で置換された基を意味し、4~7員ヘテロシクロアルキリデンC-Cアルキルが好ましく、4~7員ヘテロシクロアルキリデンC-Cアルキルがより好ましい。ヘテロアリールアルコキシアルキルとして具体的には、たとえば、テトラヒドロ-4H-ピラン-4-イリデンメチル、アゼチジン-3-イリデンメチルなどが挙げられる。
【0065】
本明細書における「アルコキシアルケニル」とは、前記定義の「アルケニル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アルコキシ」で置換された基を意味し、C-CアルコキシC-Cアルケニルが好ましい。アルコキシアルケニルとして具体的には、たとえば、(E)-4-メトキシブト-2-エン-1-イルなどが挙げられる。
【0066】
本明細書における「アミノカルボニルアルケニル」とは、前記定義の「アルケニル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アミノカルボニル」で置換された基を意味し、アミノカルボニルC-Cアルケニルが好ましい。アミノカルボニルアルケニルとして具体的には、たとえば、(E)-3-(ジメチルアミノカルボニル)-プロパ-2-エン-1-イルなどが挙げられる。
【0067】
本明細書における「ハロアルコキシ」とは、前記定義の「アルコキシ」の1つまたは複数の水素がハロゲンで置換された基を意味し、C-Cハロアルコキシが好ましい。ハロアルコキシとして具体的には、たとえば、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシなどが挙げられる。
【0068】
本明細書において「アルキレン」とは、前記「アルキル」からさらに任意の水素原子を1個除いて誘導される二価の基を意味し、C-Cアルキレンが好ましい。アルキレンとして具体的には、-CH-、-(CH-、-(CH-、-CH(CH)CH-、-C(CH-、-(CH-、-CH(CH)CHCH-、-C(CHCH-、-CHCH(CH)CH-、-CHC(CH-、-CHCHCH(CH)-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-などが挙げられる。
【0069】
本明細書における「脂環式環」は、非芳香族炭化水素環を意味する。脂環式環は、環中に不飽和結合を有してもよく、2個以上の環を有する多環性の環でもよい。また環を構成する炭素原子は酸化されてカルボニルを形成してもよい。脂環式環として好ましくは3~8員脂環式環が挙げられ、具体的には、たとえば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環などが挙げられる。
【0070】
本明細書における「飽和複素環」は、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有し、環中に二重結合および/または三重結合を含まない、非芳香族の複素環を意味する。飽和複素環は単環でもよく、他の環、例えば、ベンゼン環などの芳香環と縮合環を形成してもよい。飽和複素環として好ましくは4~7員飽和複素環が挙げられ、具体的には、たとえば、アゼチジン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ピロリジン環、4-オキソピロリジン環、ピペリジン環、4-オキソピペリジン環、ピペラジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、オキサゾリジジン環、イソオキサゾリジン環、チアゾリジン環、イソチアゾリジン環、チアジアゾリジン環、サゾリドン環、ジオキソラン環、ジオキサン環、チエタン環、オクタヒドロインドール環、インドリン環などが挙げられる。
【0071】
本明細書における「ペプチド」は、天然アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸がアミド結合あるいはエステル結合して形成されるペプチドであれば特に限定されないが、好ましくは5~30残基、より好ましくは7~15残基、さらに好ましくは9~13残基のペプチドである。ペプチドは、直鎖ペプチドでも環状ペプチドでもよい。
【0072】
本明細書において、「ペプチド鎖」とは、1、2、3、4、またはそれ以上の天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸がアミド結合および/またはエステル結合により連結されているペプチド鎖をいう。ペプチド鎖として好ましくは、1~4のアミノ酸残基を含むペプチド鎖であり、より好ましくは1~4のアミノ酸残基からなるペプチド鎖である。
【0073】
本明細書において「置換されていてもよい」とは、ある基が任意の置換基によって置換されていてもよいことを意味する。
【0074】
本明細書において「保護されていてもよい」とは、ある基が任意の保護基によって保護されていてもよいことを意味する。
【0075】
本明細書において「1つまたは複数の」とは、1つまたは2つ以上の数を意味する。「1つまたは複数の」が、ある基の置換基に関連する文脈で用いられる場合、この用語は、1つからその基が許容する置換基の最大数までの数を意味する。「1つまたは複数の」として具体的には、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、および/またはそれより大きい数が挙げられる。
【0076】
本発明の化合物は、その塩、好ましくはその化学的もしくは薬学的に許容される塩であることができる。また本発明の化合物またはその塩は、それらの溶媒和物、好ましくはその化学的もしくは薬学的に許容される溶媒和物であることができる。本発明の化合物の塩には、例えば、塩酸塩;臭化水素酸塩;ヨウ化水素酸塩;リン酸塩;ホスホン酸塩;硫酸塩;メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩;酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、サリチル酸塩などのカルボン酸塩;または、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩などが含まれる。これらの塩は、たとえば、当該化合物と、医薬品の製造に使用可能である酸または塩基とを接触させることにより製造される。本発明において、化合物の溶媒和物とは、化合物が溶媒とともに、一つの分子集団を形成したものをさし、医薬の投与に付随して摂取が許容される溶媒により形成された溶媒和物であれば特に限定されない。溶媒が水であれば水和物と言う。本発明の化合物の溶媒和物としては、水和物が好ましく、そのような水和物として具体的には1~10水和物、好ましくは1~5水和物、さらに好ましくは1~3水和物が挙げられる。本発明の化合物の溶媒和物には、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなど)、ジメチルホルムアミドなどの単独の溶媒との溶媒和物だけでなく、複数の溶媒との溶媒和物も含まれる。
【0077】
本明細書における「アミノ酸」には、天然アミノ酸、及び非天然アミノ酸が含まれる。本明細書における「天然アミノ酸」とは、Gly、Ala、Ser、Thr、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、His、Glu、Asp、Gln、Asn、Cys、Met、Lys、Arg、Proを指す。非天然アミノ酸は特に限定されないが、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、D型アミノ酸、N置換アミノ酸、α,α-二置換アミノ酸、側鎖が天然と異なるアミノ酸、ヒドロキシカルボン酸などが例示される。本明細書におけるアミノ酸としては、任意の立体配置が許容される。アミノ酸の側鎖の選択は特に制限を設けないが、水素原子の他にも例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、シクロアルキル基から自由に選択され、これらの基の中の隣接しない1又は2個のメチレン基は酸素原子、カルボニル基(-CO-)、又はスルホニル基(-SO-)で置換されていてもよい。それぞれには置換基が付与されていてもよく、それら置換基も制限されず、例えば、ハロゲン原子、O原子、S原子、N原子、B原子、Si原子、又はP原子を含む任意の置換基の中から独立して1つ又は2つ以上自由に選択されてよい。すなわち、置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、シクロアルキル基などが例示される。非限定の一態様において、本明細書におけるアミノ酸は、同一分子内にカルボキシ基とアミノ基を有する化合物であってよい(この場合であっても、プロリン、ヒドロキシプロリンのようなイミノ酸もアミノ酸に含まれる)。
【0078】
アミノ酸の主鎖アミノ基は、非置換(NH基)でもよく、置換されていてもよい(即ち、-NHR基:Rは置換基を有していてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、シクロアルキルを示し、これらの基の中の隣接しない1又は2個のメチレン基は酸素原子、カルボニル基(-CO-)、又はスルホニル基(-SO-)で置換されていてもよく、またプロリンのようにN原子に結合した炭素鎖とα位の炭素原子とが環を形成していてもよい。)。前記Rの置換基は、上述のアミノ酸側鎖における置換基と同様に選択される。主鎖アミノ基が置換されている場合の前記Rは、本明細書における「アミノ酸の側鎖」に含まれる。このような主鎖アミノ基が置換されているアミノ酸を、本明細書において「N置換アミノ酸」と称する。本明細書における「N置換アミノ酸」としては、好ましくはN-アルキルアミノ酸、N-C-Cアルキルアミノ酸、N-C-Cアルキルアミノ酸、N-メチルアミノ酸が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
本明細書におけるペプチド化合物を構成する「アミノ酸」にはそれぞれに対応する全ての同位体を含む。「アミノ酸」の同位体は、少なくとも1つの原子が、原子番号(陽子数)が同じで,質量数(陽子と中性子の数の和)が異なる原子で天然とは異なる存在比で置換されたものである。本発明のペプチド化合物を構成する「アミノ酸」に含まれる同位体の例としては、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子などがあり、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl等が含まれる。
【0080】
本明細書におけるハロゲン原子を含む置換基としては、ハロゲンを置換基に有するアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基などが例示され、より具体的には、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキルなどが例示される。
【0081】
O原子を含む置換基としては、ヒドロキシ(-OH)、オキシ(-OR)、カルボニル(-C=O-R)、カルボキシ(-COH)、オキシカルボニル(-C=O-OR)、カルボニルオキシ(-O-C=O-R)、チオカルボニル(-C=O-SR)、カルボニルチオ(-S-C=O-R)、アミノカルボニル(-C=O-NHR)、カルボニルアミノ(-NH-C=O-R)、オキシカルボニルアミノ(-NH-C=O-OR)、スルホニルアミノ(-NH-SO-R)、アミノスルホニル(-SO-NHR)、スルファモイルアミノ(-NH-SO-NHR)、チオカルボキシル(-C(=O)-SH)、カルボキシルカルボニル(-C(=O)-COH)などの基が挙げられる。
【0082】
オキシ(-OR)の例としては、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシなどが挙げられる。アルコキシとしては、C-Cアルコキシ、C-Cアルコキシが好ましく、なかでもメトキシ、又はエトキシが好ましい。
【0083】
カルボニル(-C=O-R)の例としては、ホルミル(-C=O-H)、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アラルキルカルボニルなどが挙げられる。
【0084】
オキシカルボニル(-C=O-OR)の例としては、アルキルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルキニルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0085】
カルボニルオキシ(-O-C=O-R)の例としては、アルキルカルボニルオキシ、シクロアルキルカルボニルオキシ、アルケニルカルボニルオキシ、アルキニルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アラルキルカルボニルオキシなどが挙げられる。
【0086】
チオカルボニル(-C=O-SR)の例としては、アルキルチオカルボニル、シクロアルキルチオカルボニル、アルケニルチオカルボニル、アルキニルチオカルボニル、アリールチオカルボニル、ヘテロアリールチオカルボニル、アラルキルチオカルボニルなどが挙げられる。
【0087】
カルボニルチオ(-S-C=O-R)の例としては、アルキルカルボニルチオ、シクロアルキルカルボニルチオ、アルケニルカルボニルチオ、アルキニルカルボニルチオ、アリールカルボニルチオ、ヘテロアリールカルボニルチオ、アラルキルカルボニルチオなどが挙げられる。
【0088】
アミノカルボニル(-C=O-NHR)の例としては、アルキルアミノカルボニル(例えば、C-C又はC-Cアルキルアミノカルボニル、なかでもエチルアミノカルボニル、メチルアミノカルボニルなどが例示される。)、シクロアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニルなどが挙げられる。これらに加えて、-C=O-NHR中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0089】
カルボニルアミノ(-NH-C=O-R)の例としては、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、アルケニルカルボニルアミノ、アルキニルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて-NH-C=O-R中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0090】
オキシカルボニルアミノ(-NH-C=O-OR)の例としては、アルコキシカルボニルアミノ、シクロアルコキシカルボニルアミノ、アルケニルオキシカルボニルアミノ、アルキニルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、アラルキルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、-NH-C=O-OR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0091】
スルホニルアミノ(-NH-SO-R)の例としては、アルキルスルホニルアミノ、シクロアルキルスルホニルアミノ、アルケニルスルホニルアミノ、アルキニルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、-NH-SO-R中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0092】
アミノスルホニル(-SO-NHR)の例としては、アルキルアミノスルホニル、シクロアルキルアミノスルホニル、アルケニルアミノスルホニル、アルキニルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ヘテロアリールアミノスルホニル、アラルキルアミノスルホニルなどが挙げられる。これらに加えて、-SO-NHR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0093】
スルファモイルアミノ(-NH-SO-NHR)の例としては、アルキルスルファモイルアミノ、シクロアルキルスルファモイルアミノ、アルケニルスルファモイルアミノ、アルキニルスルファモイルアミノ、アリールスルファモイルアミノ、ヘテロアリールスルファモイルアミノ、アラルキルスルファモイルアミノなどが挙げられる。さらに、-NH-SO-NHR中のN原子と結合した2つのH原子はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、およびアラルキルからなる群より独立して選択される置換基で置換されていてもよく、またこれらの2つの置換基は環を形成しても良い。
【0094】
S原子を含む置換基としては、チオール(-SH)、チオ(-S-R)、スルフィニル(-S=O-R)、スルホニル(-SO-R)、スルホ(-SOH)などの基が挙げられる。
【0095】
チオ(-S-R)の例としては、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオなどの中から選択される。
【0096】
スルホニル(-SO-R)の例としては、アルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、アルケニルスルホニル、アルキニルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アラルキルスルホニルなどが挙げられる。
【0097】
N原子を含む置換基として、アジド(-N、「アジド基」ともいう)、シアノ(-CN)、1級アミノ(-NH)、2級アミノ(-NH-R;モノ置換アミノともいう。)、3級アミノ(-NR(R');ジ置換アミノともいう。)、アミジノ(-C(=NH)-NH)、置換アミジノ(-C(=NR)-NR'R")、グアニジノ(-NH-C(=NH)-NH)、置換グアニジノ(-NR-C(=NR''')-NR'R")、アミノカルボニルアミノ(-NR-CO-NR'R")、ピリジル、ピペリジノ、モルホリノ、アゼチジニルなどの基が挙げられる。
【0098】
2級アミノ(-NH-R;モノ置換アミノ)の例としては、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アラルキルアミノなどが挙げられる。
【0099】
3級アミノ(-NR(R');ジ置換アミノ)の例としては、例えばアルキル(アラルキル)アミノなど、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの中からそれぞれ独立して選択される、任意の2つの置換基を有するアミノ基が挙げられ、これらの任意の2つの置換基は環を形成しても良い。具体的には、ジアルキルアミノ、なかでもC-Cジアルキルアミノ、C-Cジアルキルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが例示される。本明細書において「C-Cジアルキルアミノ基」とは、アミノ基にC-Cアルキル基が2個置換された基をいい、両C-Cアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
【0100】
置換アミジノ(-C(=NR)-NR'R")の例としては、N原子上の3つの置換基R、R'、およびR"が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、例えばアルキル(アラルキル)(アリール)アミジノなどが挙げられる。
【0101】
置換グアニジノ(-NR-C(=NR''')-NR'R")の例としては、R,R'、R"、およびR'''が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらが環を形成した基などが挙げられる。
【0102】
アミノカルボニルアミノ(-NR-CO-NR'R")の例としては、R、R'、およびR"が、水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらは環を形成した基などが挙げられる。
【0103】
本明細書においてペプチド化合物を構成する「アミノ酸残基」を単に「アミノ酸」ということがある。
【0104】
本明細書において、「および/または」との用語の意義は、「および」と「または」が適宜組み合わされたあらゆる組合せを含む。具体的には、例えば、「A、B、および/またはC」には、以下の7通りのバリエーションが含まれる;
(i) A、(ii) B、(iii) C、(iv) AおよびB、(v) AおよびC、(vi) BおよびC、(vii) A、B、およびC。
【0105】
本明細書で使用される「実質的に/実質的になる」という表現は、本明細書に挙げられている成分が主成分(例えば、環状ペプチド化合物、環状ペプチド化合物およびペプチド化合物の結晶形が含まれるが、これらに限定されない)であることを意味し、本発明の実施形態の効果にマイナスの影響を及ぼさない場合、そのようなマイナスの影響を及ぼさない程度の量である場合、またはそのようなマイナスの影響を及ぼさない程度の実施形態では、他の成分が含まれうることを意味する。例えば、他の成分として、本明細書に記載されていない成分(目的とする結晶形以外の結晶、反応副生成物、または未反応物質などに例示される不純物が例示されるが、これらに限定されない)が本発明の実施形態にマイナスの影響を及ぼさない場合、そのようなマイナスの影響を及ぼさない程度の量である場合、またはそのようなマイナスの影響を及ぼさない程度の実施形態では、それらの成分が含まれることがある。
【0106】
本明細書で使用される「実質的に含まれない/含まない」という表現は、本明細書に挙げられている成分が主成分 (例えば、環状ペプチド化合物、環状ペプチド化合物およびペプチド化合物の結晶形が含まれるが、これらに限定されない)であり、他の成分が含まれていないこと、またはそのような成分が本発明の実施形態の効果にマイナスの影響を及ぼさない場合、そのようなマイナスの影響を及ぼさない程度の量である場合、またはそのようなマイナスの影響を及ぼさない程度の実施形態では、他の成分が含まれうることを意味する。例えば、本明細書に記載されるそのような成分は、発明の実施形態の効果にマイナスの影響を及ぼさない場合、そのようなマイナスの影響を及ぼさない程度の量である場合、またはそのようなマイナスの影響を及ぼさない程度の実施形態では、それらの成分が含まれることがある。
【0107】
本発明の効果との関連で使用される「マイナスの影響」という用語は、本発明の効果を打ち消す影響を意味する。例えば、自然に示されるべき作用を100%とした場合、本発明の作用を30%、20%、10%、または5%以下に低下させるものを、「マイナスの影響」があると言うこともできる。
【0108】
環状ペプチド化合物を製造する方法
ある態様において、本発明は、液相法によって環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を製造する方法に関し、該方法は、1種または複数種の水と混和しない溶媒(例えば、水に対する溶解度が低い溶媒、水/オクタノール係数(log Kow)の大きい溶媒、または水/オクタノール係数予測値の大きい溶媒)、1種または複数種の水溶性アルキルニトリル類、および1種または複数種の水溶性エーテル類からなる群より選択される1つまたは複数を含む溶媒(溶媒A)中、ペプチド化合物のN末端のアミノ酸残基とC末端のアミノ酸残基とを連結する工程を含む。
【0109】
ある実施態様において、水と混和しない溶媒は、3以上10以下の炭素原子を有するエステルとして特徴付けることができ、具体的には、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-プロピル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸メチルまたはプロピオン酸エチルなどが例示される。
【0110】
ある実施態様において、水と混和しない溶媒は、4以上および10以下の炭素原子を有する環状エーテルとして特徴付けることができ、具体的には、2-MeTHF、THF、4-メチルテトラヒドロピランまたは1,4-ジオキサンなどが例示される。ある実施態様において、水と混和しない溶媒は、4以上および10以下の炭素原子を有する非環状エーテルとして特徴付けることができ、具体的には、MTBE、ジイソプロピルエーテルまたはジエチルエーテルなどが例示される。
【0111】
ある実施態様において、水と混和しない溶媒は、6以上および10以下の炭素原子を有する環状および非環状アルキル基の両方を有するエーテルとして特徴付けることができ、具体的には、CPMEなどが例示される。
【0112】
ある実施態様において、水と混和しない溶媒は、3以上および10以下の炭素原子を有する炭酸エステルとして特徴付けることができ、具体的には、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルまたは炭酸ジイソプロピルなどが例示される。
【0113】
ある実施態様において、水と混和しない溶媒は、5以上および10以下の炭素原子を有する炭化水素として特徴付けることができ、具体的には、ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンなどが例示される。
【0114】
ある実施態様において、水と混和しない溶媒は、6以上および10以下の炭素原子を有する芳香族炭化水素環として特徴付けることができ、具体的には、トルエン、キシレンまたはベンゼンなどが例示される。
【0115】
ある実施態様において、水と混和しない溶媒は、周囲圧力(約1気圧)で低い沸点を有することを特徴付けることができる。ある実施態様において、常圧(1気圧付近)での低沸点とは、35℃以上140℃未満として例示されている。
【0116】
ある実施態様において、DMF、DMA、NMP又はジメチルスルホキシドのような常圧(約1気圧)で140℃以上の沸点を有する溶媒は、本発明では除外することができる。
【0117】
特定の実施形態において、ペプチド化合物または環状ペプチド化合物と反応する可能性を有し得る溶媒は、本発明において水不混和性溶剤から排除され得る。
ある実施態様において、水と混和しない溶媒としての不適当な溶媒は、アミン(例えば、n-プロピルアミンまたはジイソプロピルアミン)、またはアルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、フェノール)として特徴付けることができる。
【0118】
ある実施態様において、本明細書中で用いられる水と混和しない溶媒は、特に限定を意図しないが、低い水溶性(例えば、150g/L以下の水に対する溶解度を有する)を有する溶媒を含む。水に対する溶解度は、当技術分野で知られているか、本明細書に記載されているいずれの方法によっても決定され得る。溶解性を決定するための例示的な方法には、特に限定を意図するものではないが、ガスクロマトグラフィーが含まれ、溶媒を室温(例えば、15℃~40℃、好ましくは20℃~30℃)で等量の水と混合することによって調製された、水中の前記溶媒の濃度を測定することで決定することもできる。
【0119】
本明細書で使用するように、大きな水/オクタノール係数(log Kow)値を有する溶媒は、好ましくは0(ゼロ)より大きく5未満の係数を有する。水/オクタノール係数(log Kow)は、当該技術分野で知られているか、本明細書に記載されている任意の方法によって決定され得る。大きな水/オクタノール係数(log Kow)を有する溶媒はまた、大きな水/オクタノール係数の予測値を有する溶媒を含み、特に限定しないが、例えばデータベース検索または文献検索により、別々の明示的測定において公知の手段によって決定され得る。
【0120】
ある態様において、水と混和しない溶媒はTHF、2-MeTHF、MTHP、炭酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルからなる群から選択される溶媒であり、好ましくはTHF、または2-MeTHF、さらに好ましくは2-MeTHFである。溶媒の水との混和性は、Merck Index 14th Edition に記載されていて、たとえばDMSOは水に溶解することが、アセトニトリルは水と混和することが記載されている。一方でヘプタンは水に不溶と記載されている。2-MeTHFは、水と混和しない(Org. Process Res. Dev. 2007, 11, 1, 156-159.)。溶媒の水との混和性の決定について、当業者は以下に例示される周知の方法で測定可能である。例えば、室温付近(例えば15℃~40度、好ましくは20℃~30℃)で、同容量の溶媒と水を混和した時に、溶媒と水とが二層に分離することで、示されうる。溶媒の水との混和性試験は、室温付近(例えば15℃~40度、好ましくは20℃~30℃)で、同容量の溶媒と水を分液ロート、反応フラスコ、または反応釜などの容器中で混和し、溶媒と水が二層に分離するかどうかを例えば目視で確認すること、容器中の上層部と下層部の液体を採取して確認することにより行うことができる。このような方法で溶媒と水が二層に分離したことが確認できた場合、該溶媒を水と混和しない溶媒と指す場合もある。
【0121】
溶媒の水との混和性は、溶媒の水に対する溶解度に依存し得る。水と混和しない溶媒には、水に対する溶解度が低い溶媒があげられる。水に対する溶解度は、温度によって変化し得るが、本明細書における溶解度は、室温付近、たとえば20℃~30℃付近における溶解度を意味する。溶媒の水に対する溶解度は、上記に例示された方法に特定されない方法で実際に測定することも可能であるが、商業的供給業者のカタログやMerck Index 14th Edition に記載されていている。Merck Index 14th Editionには、水1Lに対し、炭酸ジメチルは139g、酢酸イソプロピルは43g、酢酸エチルは100g溶解すると記載されている。ヘプタンは水に不溶と記載されている。水1Lに対し、2-MeTHFは140g(Org. Process Res. Dev. 2007, 11, 1, 156-159.)、炭酸ジメチルは、139g(J. Mol. Catal. A Chem. 2010, 317, 1-18.)溶解すると記載されている。また、溶媒の水に対する溶解度予測は、SciFinder(登録商標)などのデータベース検索ツールによって調べることもできる。水1Lに対し、アニソールは3.2g、酢酸イソプロピルは20g、酢酸エチルは39g、ヘプタンは4.7mgが溶解すると記載されている。ChemIDplus Advanced (NIH)([2022年5月1日検索]、インターネット〈URL:https://chem.nlm.nih.gov/chemidplus/〉)でも、水に対する溶解度を調べることができる。水と混和するアセトニトリル、THF、およびDMSOの水に対する溶解度は1000g/Lと記載されている。すなわち、水と混和しない溶媒の水に対する溶解度は、999g/L以下であり、500g/L以下、250g/L以下、好ましくは、200g/L以下、より好ましくは、150g/L以下である。
【0122】
2-MeTHFの室温(例えば、25℃)での水に対する溶解度は150g/Lであることが注目される。したがって、室温(例えば25 ℃)付近において、溶媒の水に対する溶解度が150g/L以下であるという性質は、該溶媒が2-MeTHFと同等かそれより優れた性質を有しているということもできる。本明細書に記載されるように、本発明の溶媒を用いる方法は、(1)反応溶媒として用いた場合、水と混和しないので、反応混合物の水溶液を用いた後処理における抽出溶媒として利用することができること、(2)抽出溶媒として用いた場合、ペプチド化合物を含むする抽出溶液を、後続の工程/反応のための出発材料(すなわち、後続の工程の出発化合物を含有する溶液)として使用することができること、などから水と混和しない溶媒のペプチド化合物合成における使用に有用となりうる。ある実施態様において、本法により、出発反応の溶媒から、中間体を単離することなく、全反応を実施し完了することを可能にする。
【0123】
水に対する溶解度が低い溶媒には、水に対する溶解度が999 g/L以下の溶媒が含まれ、特に限定しないが、例えば、2-MeTHF、炭酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ヘプタン、アニソール、MTBE、CPME、4-メチルテトラヒドロピラン、トルエンなどは、水に対する溶解度が999 g/L以下の溶媒に該当する。環化反応における目的物への変換率を高め、副生成物の生成を抑制する観点から、2-MeTHF、炭酸ジメチル、もしくはアニソール、またはこれらの1種もしくは複数種を含む溶媒が好ましく用いられる。
【0124】
溶媒の水との混和性は、本明細書で述べるように、溶媒固有の水/オクタノール係数(log Kow)、または水/オクタノール係数予測値に依存し得る。水/オクタノール係数は化合物の脂溶性を表し、脂溶性の高いものの数値が大きいことが知られている。log Kowは、本明細書に記載の通り、当業者に周知の方法で実際に測定することも可能である。別の態様として、log Kow値の予測値は、例えば文献記載の値、SciFinder(登録商標)などのデータベース検索ツールを用いた検索、ChemIDplus Advanced (NIH)([2022年5月1日検索]、インターネット〈URL: https://chem.nlm.nih.gov/chemidplus/〉)での検索によっても知ることができる。水と混和しない溶媒のlog Kow値、またはlog Kow値の予測値の例示はそれぞれ、2-MeTHFが1.35、炭酸ジメチルが0.23、アニソールが2.11、酢酸イソプロピルが1.02、酢酸エチルが0.73、ヘプタンが4.66であり、正の値をとる。一方で、水と混和する溶媒のlog Kow値、またはlog Kow値の予測値はそれぞれ、アセトニトリルが-0.34、DMSOが‐0.31であり、負の値をとる。すなわち、水と混和しない溶媒のlog Kow値、またはlog Ko値wの予測値は、正の値をとるものが好ましく、好ましくは0以上5以下が例示される。
【0125】
水/オクタノール係数(log Kow値)の大きい溶媒、または水/オクタノール係数予測値の大きい溶媒として、2-MeTHF、炭酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ヘプタン、アニソール、MTBE、CPME、4-メチルテトラヒドロピランなどが挙げられる。
【0126】
水と混和しない溶媒には、水に対する溶解度が低い溶媒、あるいは水/オクタノール係数(log Kow)が正の数をとるものが挙げられる。
【0127】
水溶性アルキルニトリル類としては、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが挙げられる。
【0128】
水溶性エーテル類としては、THF、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
【0129】
ある態様において、溶媒Aには、水と混和しない溶媒、水溶性アルキルニトリル類、および水溶性エーテル類からなる群に属する溶媒より選択される1つまたは複数が含まれ得る。ある態様において、溶媒Aは、2-MeTHF、THF、MTHP、炭酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アニソール、アセトニトリル、ジクロロメタン、およびトルエンからなる群から選択される溶媒を含みうる。例えば、溶媒Aは、1以上の水と混和しない溶媒、1以上の水溶性アルキルニトリル類、および1以上の水溶性エーテル類からなる群から選択される1種類の溶媒のみからなっていてもよく、これらから選択される2種類以上の溶媒が含まれていてもよい。ある態様において、溶媒Aに水と混和しない溶媒が含まれている場合、溶媒Aに含まれている該溶媒は、水溶性アルキルニトリル類、および水溶性エーテル類から選択される1種類以上でもよい。ある態様において、溶媒Aに水溶性アルキルニトリル類が含まれている場合、溶媒Aに含まれている該溶媒は、水と混和しない溶媒、および水溶性エーテル類から選択される1種類以上でもよい。ある態様において、溶媒Aに水溶性エーテル類が含まれている場合、溶媒Aに含まれている該溶媒は、水溶性アルキルニトリル類、および水と混和しない溶媒から選択される1種類以上でもよい。
【0130】
ある態様において、溶媒Aには、水と混和しない溶媒、水溶性アルキルニトリル類、および水溶性エーテル類に加えて、これらのいずれにも該当しない溶媒、例えば、DMFやアセトンが含まれていてもよい。
【0131】
ある実施態様において、溶媒Aは、本明細書に記載されたペプチド化合物または環状ペプチド化合物と反応する可能性を有し得る溶媒、例えばアルコール(MeOH、EtOH、n-PrOH、iPrOH、nBuOH、iBuOH、tBuOH)、第一級アミン(nPrNH2、iPrNH2、nBuNH2、tBuNH2)、第二級アミン(Et2NH、nPr2NH、iPr2NH、nBu2NH、tBu2NH)、およびカルボン酸(AcOH、EtCO2H、nPrCO2H)などのプロトン性溶媒から選択される溶媒を含まない場合がある。
【0132】
溶媒Aに水と混和しない溶媒、水溶性アルキルニトリル類、および水溶性エーテル類のいずれにも該当しない溶媒が含まれる場合、該溶媒は、溶媒A全体の40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、または5重量%以下であることがより好ましい。
【0133】
ある態様において、本発明のペプチド化合物は、直鎖ペプチド化合物であることができる。別の態様において、本発明のペプチド化合物は、環状ペプチド化合物であることができる。ある態様において、直鎖または環状ペプチド化合物は、その部分構造として環状構造を含んでもよい。環状構造として具体的には、あるアミノ酸残基の側鎖と別のアミノ酸残基の側鎖とが連結したものや、あるアミノ酸残基のN置換基と別のアミノ酸残基の側鎖とが連結したものや、あるアミノ酸残基のN置換基と別のアミノ酸残基のN置換基とが連結したものなどが挙げられる。環状構造のための連結に関与する2つのアミノ酸残基は、隣接していてもよく、その間に任意の数のアミノ酸残基、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、または19個のアミノ酸残基が存在していてもよい。環状構造によって形成される環の大きさは、特に限定を意図しないが、4員環、5員環、6員環、7員環、8員環、9員環、10員環、11員環、12員環、13員環、14員環、15員環、16員環、17員環、18員環、19員環、20員環、21員環、22員環、23員環、24員環、25員環、26員環、27員環、28員環、29員環、30員環、31員環、32員環、33員環、34員環、または35員環などが例示される。ペプチド化合物に環状構造が存在する場合、環状構造の数は限定されないが、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの環状構造が存在することが好ましい。
【0134】
本発明において、ペプチド化合物のN末端側のアミノ酸残基とC末端側のアミノ酸残基は、アミド結合、または-(CH2)nS(CH2)m-、-(CH2)nS(O)(CH2)m-、もしくは-(CH2)nS(O)2(CH2)m-より選択される結合よって連結される。ここでnおよびmはそれぞれ独立して1または2である。
【0135】
ペプチド化合物のN末端側のアミノ酸残基とC末端側のアミノ酸残基とをアミド結合により連結する場合、N末端のアミノ酸残基のアミノ基と、C末端のアミノ酸残基のカルボキシル基とを縮合することにより、環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が製造され得る。アミド結合はN末端アミノ酸残基の主鎖のアミノ基とC末端アミノ酸残基の主鎖のカルボキシル基との間で形成されたものあってもよく、N末端アミノ酸残基の主鎖のアミノ基とC末端アミノ酸残基の側鎖のカルボキシル基との間で形成されたものであってもよく、N末端アミノ酸残基の側鎖のアミノ基とC末端アミノ酸残基の主鎖のカルボキシル基との間で形成されたものであってもよく、N末端アミノ酸残基の側鎖のアミノ基とC末端アミノ酸残基の側鎖のカルボキシル基との間で形成されたものであってもよい。縮合に際し、縮合試薬を用いてカルボキシル基を系中で活性化してもよく、あらかじめカルボキシル基を活性エステルに変換したものを利用してもよい。本明細書において、「アミノ基とカルボキシル基の縮合」とは、アミノ基とカルボキシル基をアミド結合で連結する場合に用いられる。
【0136】
ある態様において、縮合反応は、縮合試薬の存在下または不存在下、溶媒A中、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは-20℃~100℃、好ましくは-5℃~60℃の温度で、反応混合物を10分~48時間攪拌することで行うことができる。縮合反応に縮合試薬を用いる場合、原料および任意で塩基を含む溶媒に縮合試薬や縮合試薬を含む溶液を添加してもよく、縮合試薬を含む溶液に原料および任意で塩基を含む溶液を添加してもよい。本明細書においては、縮合試薬を含む溶液に原料および任意で塩基を含む溶液を滴下する操作を「逆滴下」という場合がある。縮合試薬を含む溶液を長時間、例えば、数時間~数日間、好ましくは1~24時間、より好ましくは1~10時間かけて逆滴下することで、ダイマーやトリマーの副生を抑制することができる。縮合反応に縮合試薬を用いない場合、あらかじめカルボキシル基を活性エステルに変換したものを利用してもよい。
【0137】
アミノ基とカルボキシル基を縮合するときの縮合剤及びその使用量としては、アミド結合を形成できるものであれば特に限定されず、ペプチド合成で一般に使用される縮合剤及び使用量が好ましい(例えば、Peptide Coupling Reagents, More than a Letter Soup (Chem. Rev. 2011, 111, 6557-6602.))。
【0138】
このような縮合剤として具体的には例えば、カルボジイミド骨格を有する縮合剤が挙げられる。例えば、カルボジイミド骨格を有する縮合剤は、活性エステルを形成できるヒドロキシ化合物と組合せて、縮合反応に用いることができる。カルボジイミド骨格を有する縮合剤としては、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI HCl)などが挙げられる(例えば、WATANABE Chemicalのカタログ、Amino acids and chiral building blocks to new medicine参照)。
活性エステルを形成できるヒドロキシ化合物としては、例えば、1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(oxyma)、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBtまたはHODhbt)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド(HONB)、2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノール(HOPfp)、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、6-クロロ-1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール(Cl-HOBt)が挙げられる(例えば、WATANABE Chemicalのカタログ、Amino acids and chiral building blocks to new medicine参照)。また、これらの骨格を有する塩、例えばoxymaのカリウム塩であるK-oxymaなども用いることができる。これらの中では特にHOBt、HOAt、oxyma、HOOBtが好ましい。中でも、DICとHOAtとを組み合わせて用いること、あるいはDICとoxymaとを組み合わせて用いることが好ましい。その他に、ホスホニウム系縮合剤・ウロニウム系縮合剤としてO-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、O-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、N-[1-(シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ(モルホリノ)]ウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HOTU)、O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TATU)、[エチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセタト-O2]トリ-1-ピロリジニルホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyOxim)、2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸塩(BEP)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(BOP)、ブロモトリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBroP)、クロロトリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyCloP)、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸(PyAOP)、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸(Brop)、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(DEPBT)、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロホウ酸(TSTU)、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムヘキサフルオロリン酸(HSTU)、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TDBTU)、テトラメチルチウロニウムS-(1-オキシド-2-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラフルオロホウ酸塩(TOTT)、O-(2-オキソ-1(2H)ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸(TPTU)のうちのいずれかと、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン(TEA)、2,4,6-トリメチルピリジン(2,4,6-コリジン)、2,6-ジメチルピリジン(2,6-ルチジン)のうちのいずれかの塩基とを組み合わせて縮合反応に利用することができる。特にHATUとDIPEAと組み合わせて用いること、あるいはCOMUとDIPEAとを組み合わせて用いることが好ましい。その他に、N,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、1,1’-カルボニル-ジ-(1,2,4-トリアゾール)(CDT)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム塩化物(DMT-MM)、プロピルホスホン酸無水物(T3P)などの縮合剤を利用することもできる。環化反応の変換率を高め、副生成物を抑制する観点から、本発明の縮合剤としては、HATU、PyBOP、PyOximが好ましい。また、溶媒と縮合剤の組合は、HATUとアニソール、炭酸ジメチル、または2-MeTHF、PyBOPとアセトニトリル、アニソール、炭酸ジメチル、2-MeTHF、4-メチルテトラヒドロピラン、または酢酸エチル、PyOximとアセトニトリル、アニソール、炭酸ジメチル、2-MeTHF、酢酸エチルが好ましい。溶媒と縮合剤の組合せは、アニソールとPyBOP、炭酸ジメチルとPyBOP、2-MeTHFとPyBOPの組合せがより好ましい。
【0139】
ペプチド化合物のN末端側のアミノ酸残基とC末端側のアミノ酸残基とを-(CH2)nS(CH2)m-、-(CH2)nS(O)(CH2)m-、または-(CH2)nS(O)2(CH2)m-より選択される結合により連結する場合、例えば、N末端側のアミノ酸残基に含まれるハロアルキル基、またはビニル基と、C末端側のアミノ酸残基に含まれるチオール基とを反応させて、C-S-C結合を形成し、必要に応じて、硫黄原子を酸化してスルホキシド、スルホンに変換することにより、環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が製造され得る。
【0140】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物は、8~20、好ましくは9~15個のアミノ酸残基を含み、該アミノ酸残基のうち、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個は、非天然アミノ酸残基であることができる。ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物に含まれる非天然アミノ酸の割合としては、ペプチド化合物に含まれるアミノ酸の総数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。
【0141】
環状ペプチド化合物に含まれる非天然アミノ酸残基は、N-置換の非天然アミノ酸残基でも、N-非置換の非天然アミノ酸残基でもよい。天然アミノ酸の主鎖のアミノ基が水素以外の何らかの原子あるいは官能基で置換されたアミノ酸残基や、側鎖に天然アミノ酸とは異なる構造を有し、かつ主鎖のアミノ基が水素以外の何らかの原子あるいは官能基で置換されたアミノ酸残基は、N-置換の非天然アミノ酸残基に該当する。また、主鎖のアミノ基は置換されていないが、側鎖に天然アミノ酸とは異なる構造を有するアミノ酸残基は、N-非置換の非天然アミノ酸残基に該当する。
【0142】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個のN-置換アミノ酸残基を含むことができる。ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物に含まれるN-置換アミノ酸残基の割合としては、ペプチド化合物に含まれるアミノ酸の総数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。N-置換アミノ酸残基は、N-置換の非天然アミノ酸残基であることができる。
【0143】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個のN-非置換の非天然アミノ酸残基を含むことができる。ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物に含まれるN-非置換の非天然アミノ酸残基の割合としては、ペプチド化合物に含まれるアミノ酸の総数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。
【0144】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個のα,αジ置換アミノ酸残基を含むことができる。ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物に含まれるα,αジ置換アミノ酸残基の割合としては、ペプチド化合物に含まれるアミノ酸の総数の5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。
【0145】
本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物は、9~11個のアミノ酸残基からなり、そのうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上がN-置換アミノ酸残基であり、そのうちの1つ以上、または2つ以上が、N-非置換の非天然アミノ酸残基であり得る。本発明の方法は、このような非天然アミノ酸残基を数多く含む、環状ペプチド化合物の大規模スケールでの製造に特に有用である。
【0146】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物は、溶媒和物であることが好ましく、水和物、DMSO-水和物、アセトン-水和物、またはDMSO溶媒和物であることがより好ましく、水和物がさらに好ましい。
【0147】
ある態様において、直鎖ペプチド化合物のC末端側のアミノ酸残基またはN末端側のアミノ酸残基の一方または両方は、カルボキシル基のα位炭素に不斉炭素を有しないアミノ酸残基であることができる。環化に供するアミノ酸残基をこのような不斉炭素を有しないものとすることで、環化反応の際のラセミ化を抑制することができる。カルボキシル基のα位炭素に不斉炭素を有しないアミノ酸残基として、α位炭素上の置換基が同一のものが挙げられる。例えばα位炭素が2つの水素原子で置換された、すなわちα位炭素が-CH-であるアミノ酸原子(例えばグリシンやN-メチルグリシンのようなN-置換グリシン)は、不斉炭素を持たない。α位炭素上の置換基が同一のものとして、メチル基とメチル基のような同一の置換基をもつものは不斉炭素を持たない。α位炭素が、スピロシクロプロピル基、スピロシクロブチル基、スピロシクロペンチル基、スピロシクロヘキシル基などのスピロシクリル基で置換されたもの、すなわちα位炭素上の置換基同士が該α位炭素と一緒になって環を形成するもの(例えばcLeuなど)も、カルボキシル基のα位炭素に不斉炭素を有しない。
【0148】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物は、下記式(1):
【化13】
で表される環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である。国際公開第2013/100132号にも記載されているように、式1で表される化合物は、KRAS阻害剤として有用であり、種々のKRASに関連した疾病、たとえばKRASに関連したがんに使用されうる。
【0149】
式(1)の環状ペプチド化合物は、下記式(2):
【化14】
を有する直鎖ペプチド化合物のN末端のアミノ酸残基とC末端のアミノ酸残基とを連結する工程を含む方法によって製造され得る。ある態様において、該連結する工程は、1種または複数種の水と混和しない溶媒、1種または複数種の水溶性アルキルニトリル類、および1種または複数種の水溶性エーテル類からなる群より選択される1つまたは複数を含む溶媒中で、式(2)の化合物のN末端のアミノ基とC末端のカルボキシル基を縮合させることを含む。この環状ペプチド化合物の製造には、水溶性アルキルニトリル類、例えば、アセトニトリルを含む溶媒や、水と混和しない溶媒、例えば、アニソール、炭酸ジメチル、および/または2-MeTHFを含む溶媒を用いることが好ましい。
【0150】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の単離および/または精製には、カラムクロマトグラフィーを用いないことが好ましい。
【0151】
本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、カラムクロマトグラフィーに代えて、例えば、晶析により結晶化することにより、単離および/または精製することができる。
具体的には、例えば、縮合反応後の反応溶液を分液操作に供し、必要に応じて有機層を濃縮、および/またはろ過した後、得られた残渣に晶析に適した溶媒を加え、任意で種晶を加えて、必要に応じて攪拌することで、環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶を得ることができる。晶析の際に添加される溶媒は、環状ペプチド化合物が結晶を形成することができる溶媒であれば特に制限はないが、環状ペプチド化合物が溶解した溶液に対し、環状ペプチド化合物の溶解度を低下させる操作を行うことのできる溶媒が好ましい。例えば貧溶媒の添加や溶液の冷却により、環状ペプチド化合物の溶解度を低下させて結晶化が可能な場合は、そのような操作が可能な溶媒が例示される。また、環状ペプチド化合物の粗結晶を懸濁液状態下、任意の時間懸濁状態を保つことで環状ペプチド化合物の結晶を得ることができる場合は、そのような操作が可能な溶媒を、結晶化に用いることができる。晶析の際に添加される溶媒として、具体的には、例えば、アセトン、水、DMSO、アセトニトリル、またはエタノール、およびこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0152】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶は、後述のとおりの、式(1)の化合物の非溶媒和物結晶、溶媒和物結晶、塩の結晶、または塩の溶媒和物結晶であることができる。ある態様において、非溶媒和物結晶(無溶媒和結晶)は、溶媒和結晶、または水和物結晶でない結晶を指すことがある。式(1)の化合物の溶媒和物結晶は、DMSO-水和物結晶(A型結晶、またはB型結晶)、水和物結晶(C型結晶)、またはアセトン-水和物結晶(H型結晶)であることが好ましく、水和物結晶であることがより好ましい。
【0153】
ペプチド化合物を製造する方法
ある態様において、本発明は、液相法によってペプチド化合物を製造する方法に関する。該方法は、各工程の生成物を単離する工程を含まずに、以下の工程1および工程2、並びに任意で該工程1と該工程2を複数回繰り返すことを含み、これによりペプチド化合物を製造することができる。
(工程1)C-保護アミノ酸またはC-保護ペプチドに、N-保護アミノ酸またはN-保護ペプチドを連結/縮合する工程;
(工程2)工程1の後にN-保護基を除去/脱保護する工程。
【0154】
ある態様において、本発明の方法は、工程1と工程2をそれぞれ1回ずつ含むことができ、ある態様において、本発明の方法は、工程1と工程2を複数回繰り返すことができる。ペプチド鎖を連続的に伸長させるためには、工程1と工程2を複数回、例えば、2~20回繰り返すことが好ましい。
【0155】
本明細書において「C-保護アミノ酸」とは、カルボキシル基が保護された天然または非天然のアミノ酸を意味し、「C-保護ペプチド」とは、C末端のアミノ酸残基のカルボキシル基が保護されたペプチドを意味する。該ペプチドは、天然アミノ酸残基のみから構成されていても、非天然アミノ酸残基のみから構成されていても、天然アミノ酸残基と非天然アミノ酸残基の任意の組合せから構成されていてもよい。
【0156】
C-保護ペプチドは、2~20のアミノ酸残基を含むことができ、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個が非天然アミノ酸残基であることが好ましい。C-保護ペプチドに含まれる非天然アミノ酸残基は、N-置換アミノ酸残基でも、N-非置換の非天然アミノ酸残基でもよい。ある態様において、C-保護ペプチドに含まれる非天然アミノ酸残基の割合としては、C-保護ペプチドに含まれるアミノ酸の総数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。
【0157】
C-保護ペプチドがN-置換アミノ酸残基を含む場合、C-保護ペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個のN-置換アミノ酸残基を含むことができる。ある態様において、C-保護ペプチドに含まれるN-置換アミノ酸残基の割合としては、C-保護ペプチドに含まれるアミノ酸の総数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。N-置換アミノ酸残基は、非天然アミノ酸残基であることができる。
【0158】
C-保護ペプチドがN-非置換の非天然アミノ酸残基を含む場合、C-保護ペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個のN-非置換の非天然アミノ酸残基を含むことができる。ある態様において、C-保護ペプチドに含まれるN-非置換の非天然アミノ酸残基の割合としては、C-保護ペプチドに含まれるアミノ酸の総数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。
【0159】
「C-保護アミノ酸」および「C-保護ペプチド」のカルボキシル基の保護基にはペプチドの溶媒への溶解性を低下させない限り、本技術分野で既知の任意の保護基を利用することができる。C-保護アミノ酸、およびC-保護ペプチドの溶解度は、これらを反応に用いる溶媒に、少なくとも1%(w/v)以上、さらに好ましくは5%(w/v)以上である。このようなカルボキシル基の保護基として、具体的には、メチル基、エチル基、t-Bu基、トリチル基、クミル基などが挙げられ、これらのうちではt-Bu基が好ましい。
【0160】
本明細書において「N-保護アミノ酸」とは、アミノ基が保護された天然または非天然のアミノ酸を意味し、「N-保護ペプチド」とは、N末端のアミノ酸残基のアミノ基が保護されたペプチドを意味する。該ペプチドは、天然アミノ酸残基のみから構成されていても、非天然アミノ酸残基のみから構成されていても、天然アミノ酸残基と非天然アミノ酸残基の任意の組合せから構成されていてもよい。
【0161】
N-保護ペプチドは、2~20のアミノ酸残基を含むことができ、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個が非天然アミノ酸残基であることが好ましい。N-保護ペプチドに含まれる非天然アミノ酸残基は、N-置換アミノ酸残基でも、N-非置換の非天然アミノ酸残基でもよい。ある態様において、N-保護ペプチドに含まれる非天然アミノ酸残基の割合としては、N -保護ペプチドに含まれるアミノ酸の総数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。
【0162】
N-保護ペプチドがN-置換アミノ酸残基を含む場合、N-保護ペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個のN-置換アミノ酸残基を含むことができる。ある態様において、N-保護ペプチドに含まれるN-置換アミノ酸残基の割合としては、N-保護ペプチドに含まれるアミノ酸の総数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。N-置換アミノ酸残基は、非天然アミノ酸残基であることができる。
【0163】
N-保護ペプチドがN-非置換の非天然アミノ酸残基を含む場合、N-保護ペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個のN-非置換の非天然アミノ酸残基を含むことができる。ある態様において、N-保護ペプチドに含まれるN-非置換の非天然アミノ酸残基の割合としては、N-保護ペプチドに含まれるアミノ酸の総数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。
【0164】
「N-保護アミノ酸」および「N-保護ペプチド」のアミノ基の保護基には、ペプチドの溶媒への溶解性を低下させない限り、本技術分野で既知の任意の保護基を利用することができる。このようなアミノ基の保護基として、具体的にはCbz、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2-ナフチルメチルオキシカルボニル、ジフェニルメチルオキシカルボニル、9-アントリルメチルオキシカルボニル、Teoc、Boc、トリフルオロアセチル、またはAllocなどが挙げられ、これらのうちではCbz、Teoc、またはトリフルオロアセチルが好ましい。
【0165】
当技術分野で公知であるように、N-保護およびC-保護アミノ酸、ならびに/もしくはN-保護およびC-保護ペプチドのそれぞれについての保護基は通常、化学反応条件に応じて選択され、当技術分野で公知の通常の方法によって決定することができる。
例えば、水と混和しない溶媒(例えば、親油性溶媒)が用いられる場合、親水性保護基は有機溶媒中の保護化合物の溶解度を低下させうるため、そのような親水性保護基は適した保護基でない場合もある。したがって、本明細書に記載のように水と混和しない溶媒を使用する場合、親油性保護基は、水と混和しない溶媒中での例えばペプチド化合物の溶解度を維持しうることから、好ましい保護基でありうる。
【0166】
そのような保護基の選択は、当該技術分野で知られている方法、または本明細書に記載されている方法、例えば「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, Fifth Edition, 2014」に記載されている方法などにより行うことができる。
非限定的な実施態様として、本発明の方法で使用され得るN-保護基の例示としてはCbz基が挙げられる。アミノ酸がアミノ酸残基中のα位にスピロ-シクロアルキル基のような立体障害の大きい官能基を有する場合、トリフルオロアセチルが好ましく例示される。
【0167】
(縮合)
工程1は、C-保護アミノ酸またはC-保護ペプチドに、N-保護アミノ酸またはN-保護ペプチドを連結して、N末端とC末端がそれぞれ保護された直鎖ペプチド化合物を得る工程である。
【0168】
ある態様において、工程1におけるC-保護アミノ酸またはC-保護ペプチドと、N-保護アミノ酸またはN-保護ペプチドとの連結は、C-保護アミノ酸またはC-保護ペプチドのN末端のアミノ基と、N-保護アミノ酸またはN-保護ペプチドのC末端のカルボキシル基とを、縮合試薬の存在下または非存在下で縮合することによって行われる。縮合試薬の存在下で反応を行う場合、系中でカルボキシル基を活性化することができる。縮合試薬の非存在下で反応を行う場合、カルボキシル基をあらかじめ活性化したN-保護アミノ酸またはN-保護ペプチドを利用してもよい。
【0169】
工程1では、溶媒を除き、先の「環状ペプチド化合物を製造する方法」の項に記載の方法、例えば、反応条件や試薬を採用することができ、本工程で好ましく用いられる縮合試薬には、T3P、EDCI、HATU、COMU、BEP、PyBOP、DMT-MM、およびPyOximからなる群より選択される縮合剤が含まれる。
【0170】
工程1は、トルエン、アセトン、DMF、アセトニトリル、THF、2-MeTHF、炭酸ジメチル、アニソール、酢酸イソプロピル、ヘプタン、酢酸エチル、および4-メチルテトラヒドロピランからなる群より独立して選択される1つまたは複数の溶媒(溶媒B)中で反応およびその後の後処理を行うことができ、生成物、すなわち目的の縮合体を単離や精製することなく、次の工程を行うことができる。溶媒Bには、2-MeTHF、2-MeTHFとアセトニトリルの混合溶媒(混合比:アセトニトリル1重量部に対し、2-MeTHFが0.5重量部以上、好ましくは0.5重量部から20重量部、さらに好ましくは1重量部から10重量部、さらに好ましくは1重量部から5重量部)、4-メチルテトラヒドロピラン、炭酸ジメチル、酢酸エチル、および/またはアニソールが、少なくとも1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、または95重量%以上含まれることが好ましい。この傾向は、とりわけ縮合剤としてHATUを用いた場合に顕著である。また、工程1が複数回行われる場合、そのうちの少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、または少なくとも10回において、あるいは全工程1の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%において、溶媒Bには、2-MeTHFが少なくとも1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、または50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、または95重量%以上含まれることが好ましい。
【0171】
(脱保護)
工程2は、工程1で得られた、N末端とC末端がそれぞれ保護されたペプチドからN末端の保護基を除去する工程である。
【0172】
ある態様において、工程2は、例えば、N-保護基がCbz、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2-ナフチルメチルオキシカルボニル、ジフェニルメチルオキシカルボニル、および9-アントリルメチルオキシカルボニルの場合などには、接触水素化により行うことができる。接触水素化には、本技術分野で既知の任意の触媒を用いることができる。触媒として、具体的には、例えば、Pd/C、Pd(OH)2/C、またはPtO2などが挙げられ、Pd/Cが好ましい。接触水素化に用いる水素は常圧で用いても加圧して用いてもよい。加圧して用いる場合、1 atm (14.7 psi)以上であればよく、好ましくは1 atm (14.7 psi)以上3 atm (44.1 psi)以下、好ましくは1 atm (14.7 psi)以上2 atm (29.4 psi)以下、より好ましくは1 atm (14.7 psi)以上1.8 atm (26.5 psi)以下である。反応の進行に伴い、例えば水素圧が反応開始時の水素圧の90%以下程度に減少した場合、反応開始時の初期水素圧程度まで再度水素を追加することも可能であり、その回数に制限はなく、目的の脱保護反応が目的とする反応転換率に達するまで行うことができる。また、出発原料の存在下で反応容器内を水素で置換して反応を開始することも、出発原料の非存在下で反応容器内を水素で置換した後に、出発原料を反応容器内に投入して反応を開始することもできる。
【0173】
ある態様において、工程2は、脱保護試薬の存在下で行うことができる。脱保護試薬は、N-保護基の種類に応じて、本技術分野で既知の任意の試薬、例えば、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, Fifth Edition, 2014」に記載の試薬を利用することができるが、例えば、N-保護基がTeoc、トリフルオロアセチル、Fmoc、またはBocの場合などには、TBAF、LiBH4、ピぺリジン、トリフルオロ酢酸、またはメタンスルホン酸などが好ましく用いられる。
【0174】
非天然アミノ酸およびペプチドの窒素原子の保護基としてトリフルオロアセチル基が用いられる場合、水素化ホウ素ナトリウムなどの金属ヒドリド還元剤で除去できることが知られているが(Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, Fifth Edition, 2014)、場合によっては、完全に除去できなかったり、副生成物を生じたりすることがある。本発明者らは、トリフルオロアセチル基で保護されたcLeu誘導体(TFA-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp(OtBu)NMe2)を水素化ホウ素ナトリウムで処理すると、望む脱保護体の他にアミド結合が切断されたMeGly(cPent)-MeAsp(OtBu)NMe2が副生することに遭遇した。そこで、水素化ホウ素リチウムを用いると、副反応が抑制されることを見出した。また、反応終了直後に反応停止剤として塩化アンモニウム水溶液を用いると過剰還元体が副生してしまうことがわかった。そこで、反応条件を検討したところ、反応停止剤として塩化アンモニウム水溶液を反応液に投入する前に、トリフルオロエタノールを-20~-10℃で加えた後に1時間かけて0℃にし、その後1時間撹拌してから塩化アンモニウム水溶液を加えて分液処理することで過剰還元体の副生が抑制されることを見出した。また、その分液操作後には、ホウ素原子が脱保護体の窒素原子と結合しているため、10℃~30℃でトリフルオロ酢酸を加えて25℃で撹拌した後に、水酸化ナトリウム水溶液と混合して分液操作をすることで、ホウ素-窒素結合が切断された望むペプチドが得られることを見出した。この時、ホウ素と窒素との再結合を防ぐために、水酸化ナトリウム水溶液へ、上記トリフルオロ酢酸で処理した溶液を10℃~30℃で50~90分かけて滴下することが重要であることを見出した。
【0175】
非限定的な一実施態様として、トリフルオロアセチル基の脱保護反応で、(1)還元試薬としての水素化ホウ素リチウムの使用、および/または(2)停止剤としてのアンモニア水の添加前のトリフルオロエタノールの使用、を含む方法も提供される。トリフルオロアセチル基が保護基として使用される場合、該方法は、(1)還元試薬としての水素化ホウ素リチウムの使用、および(2)停止剤としてのアンモニア水の添加前のトリフルオロエタノールの使用の両方を含むことが好ましい。
【0176】
工程2は、工程1と同様に、トルエン、アセトン、DMF、アセトニトリル、THF、2-MeTHF、炭酸ジメチル、アニソール、酢酸イソプロピル、ヘプタン、酢酸エチル、および4-メチルテトラヒドロピランからなる群より独立して選択される1つまたは複数の溶媒(溶媒B)中で反応およびその後の後処理を行うことができ、生成物、すなわち目的の脱保護体を単離や精製することなく、次の工程を行うことができる。溶媒Bには、2-MeTHFが含まれることが好ましい。
【0177】
ある態様において、工程2は、-40℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは-30℃~100℃の温度、好ましくは-5℃~40℃の温度で、反応混合物を15分~48時間攪拌することで行うことができる。
【0178】
以下に例示的な反応パラメータおよび条件を示す。一態様において、本明細書に記載の方法は、C-保護ペプチドの保護基がtBuであるペプチド化合物のC-末端アミノ酸の脱保護を含み、さらに脱保護試薬がHMDSおよびTMSOTfとの組み合わせであり、脱保護工程における溶媒がIPAcまたは2-MeTHFを含み、C-保護ペプチドは2~13アミノ酸残基からなるペプチド化合物であることができる。
【0179】
関連する、または別の一態様において、本明細書に記載の方法は、ペプチド化合物のN-末端アミノ酸の脱保護反応を含み、ここで、N-保護ペプチドの保護基はCbz基であり、脱保護条件は触媒的水素化であり、水素化における触媒はPd/Cであり、水素化における水素圧は1atm (14.7psi)以上3atm (44.1psi)以下である、脱保護工程における溶媒は2-MeTHFまたはTHFを含み、N-保護ペプチドは2~13アミノ酸残基からなるペプチド化合物であることができる。
【0180】
関連する、または別の一態様において、本明細書に記載の方法は、ペプチド化合物のN末端アミノ酸の脱保護反応を含み、ここで、N-保護ペプチドの保護基はTeocであり、脱保護試薬はフッ化物アニオンを生成することができ、脱保護試薬はTBAFであり、脱保護工程の溶媒は2-MeTHF、酢酸イソプロピル、炭酸ジメチルまたはアニソールを含み、N-保護ペプチドは2~13アミノ酸残基からなるペプチド化合物であることができる。
【0181】
関連する、または別の一態様において、本明細書に記載の方法は、ペプチド化合物のN末端アミノ酸の脱保護反応を含み、ここで、N-保護ペプチドの保護基はトリフルオロアセチル(TFA)であり、脱保護試薬は還元試薬であり、脱保護試薬は水素化ホウ素リチウムであり、脱保護工程の溶媒は2-MeTHFまたはメタノールを含み、N-保護ペプチドは2~13アミノ酸残基からなるペプチド化合物であることができる。
【0182】
ペプチドのN末端のアミノ酸残基の窒素原子の保護基を除去すると、ジケトピペラジンが形成されて、目的とする脱保護体が得られない場合があることが知られている(J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1987, 1155-1156.)。
本発明者らは、Cbz-Ile-MeAla-Aze誘導体の末端窒素原子の保護基であるCbz基を除去するために、加水素分解反応に付すと、反応中にジケトピペラジンが形成されてしまい、続くペプチド伸長ができなくなることを見出した。
そこで、脱Cbz反応とペプチド伸長の反応条件を検討したところ、アミノ酸活性エステル存在下に、Cbz体を加水素分解に付して、脱Cbzをおこなうと、効率的にペプチド伸長できることを見出した。文献(J. Chem. Soc., Chem. Ccmmun., 1987, 1155-6.)には、アミノ酸活性エステル存在下に、Cbz体を加水素分解に付してペプチド伸長する例が報告されているが、Cbz体としては、 Cbz-Ala-D-Pro-OMe、Cbz-Asu(OBut)-D-Pro-OMe‐、Cbz-D-Val-Pro-OMe が報告されているのみで、Aze誘導体についての例については、記されていない。また、N-アルキルアミノ酸活性エステルとの反応についての例も開示されていない。N-アルキルアミノ酸活性エステルは、その立体的要因から、窒素がアルキル化されていない通常のアミノ酸活性エステルよりも反応性が低下していることが容易に推察される。したがって、N-アルキルアミノ酸活性エステルが反応する時間よりも早く脱Cbzが起きると、ジケトピペラジンが生成してしまう。すなわち、脱Cbzの後に、すみやかにN-アルキルアミノ酸活性エステルと反応させる条件を見出す必要がある。本発明者らは、反応条件を検討した結果、N-アルキルアミノ酸活性エステルであるTeoc MeLeu-pFp存在下に、Cbz-Ile-MeAla-Aze-EtPh(4-Me)-MeGly体を、酢酸イソプロピル中、N-メチルモルホリンとPd/Cを加えて、水素圧0.10~0.18MPaGにて加水素分解反応に付すと、ジケトピペラジンの生成を抑制して、Teoc-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPh(4-Me)-MeGly体が得られることを見出した。また、このとき、アセトン存在下に本反応をおこない、反応後に分液操作することにより、未反応の脱保護されたペプチドを除去できることを見出した。すなわち、アセトンを36等量存在させて加水素分解反応をおこなうと、未反応の脱保護されたペプチドのアミノ基がイソプロピリデン化されて、ジケトピペラジンへ変換が抑制されて、このイソプロピリデン化されたペプチドは、末端窒素がアミド化されていない塩基性化合物であるため、反応後の分液処理にて酸洗浄することにより容易に除去できることがわかった。
【0183】
本発明のペプチド化合物を製造する方法は、C-保護基を除去する工程3をさらに含むことができる。
【0184】
工程3は、例えば、C-保護基が、t-Bu、トリチル、クミル、メチル、またはエチルである場合などには、脱保護試薬の存在下、酸性条件で行うことができる。脱保護試薬には、本技術分野で既知の任意の試薬、例えば、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, Fifth Edition, 2014」に記載の試薬を利用することができる。本発明では、酸性条件を達成するために、例えば、HMDSと、TMSOTf、TMSI、TMSBr、およびTMSClからなる群より選択される試薬との組み合わせが好ましく用いられる。
【0185】
工程3は、工程1および工程2と同様に、トルエン、アセトン、DMF、アセトニトリル、THF、2-MeTHF、炭酸ジメチル、アニソール、酢酸イソプロピル、ヘプタン、酢酸エチル、および4-メチルテトラヒドロピランからなる群より独立して選択される1つまたは複数の溶媒(溶媒B)中で反応およびその後の後処理を行うことができ、生成物、すなわち目的の脱保護体を単離や精製することなく、次の工程を行うことができる。溶媒Bには、2-MeTHFが含まれることが好ましい。
【0186】
工程3は、工程1の後(すなわち、工程1と工程2の間)、または工程2の後のいずれに行ってもよい。より具体的には、後述のとおり、本発明の方法では、工程1と工程2が複数回繰り返され得るところ、工程3は、最初の工程1の後または工程2の後に行ってもよく、工程1と工程2の繰り返しのある回の工程1の後または工程2の後に行ってもよく、工程1と工程2の繰り返しの最終回の工程1の後または工程2の後に行ってもよい。ある態様において、工程3は、工程1と工程2の繰り返しの最終回の工程1の後または工程2の後に行うことが好ましく、繰り返しの最終回の工程1の後に行うことがより好ましい。工程3を工程1の後に行った場合には、N末端のみが保護された直鎖ペプチド化合物を得ることができる。工程3を工程2の後に行った場合には、N末端とC末端の両方が脱保護された直鎖ペプチド化合物を得ることができる。
【0187】
ある態様において、工程3は、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは0℃~180℃の温度で、反応混合物を15分~48時間攪拌することで行うことができる。
【0188】
(工程1と工程2の繰り返し)
ある態様において、本発明のペプチド化合物を製造する方法は、前記工程1と前記工程2を繰り返すことを含み、これによりペプチド鎖を伸長することができる。繰り返しの回数は、限定されないが、2回~20回が好ましく、2~15回がより好ましい。工程1と工程2を繰り返すにあたり、繰り返しの最終回は、工程2を含まなくてもよい。ある態様において、繰り返しの最終回が工程2を含まない場合、本発明の方法の最終工程は工程1となり得る。この場合、製造される直鎖ペプチド化合物は、N末端およびC末端の双方が保護された直鎖ペプチド化合物となり得る。ある態様において、繰り返しの最終回が工程2を含まない場合、工程1の後に行われる工程3が本発明の方法の最終工程となり得る。この場合、製造される直鎖ペプチド化合物は、N末端のみが保護された直鎖ペプチド化合物となり得る。
【0189】
(後処理)
工程1~工程3の各反応後には後処理を行うことができ、該後処理により、中間体を単離することなく次の反応を行うことができる。後処理として具体的には、有機層や水層の洗浄を含む分液操作、ろ過操作、および濃縮操作からなる群より選択される1つまたは複数の操作が含まれ、次の工程に適した状態となるようにこれらの操作を適宜組み合わせることができる。例えば、縮合試薬や脱保護試薬を用いて工程1~工程3の各反応を行った場合には、その後処理として、通常、少なくとも1回以上の分液操作が行われる。また、接触水素化により工程2の反応を行った場合には、通常、その後処理としてろ過操作が行われる。いずれの場合でも、例えば、次の工程に備えて溶媒量を調節する目的で、あるいは、溶媒の置換の目的で、さらに濃縮操作を行って溶媒の一部を留去することができる。
【0190】
ある態様において、分液操作は、工程1~工程3の各反応の完了後に、目的物を液液抽出するために行うことができ、これには有機層あるいは水層の洗浄も含まれ得る。分液操作を行う場合には、分液操作に適した量、例えば、有機層:水層が20:80~80:20の体積比の範囲内となる量の水および/もしくは水溶液、並びに/または有機溶媒が、系中に添加される。分液操作のために添加される水溶液としては、硫酸水素ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、リン酸水素二カリウム水溶液、リン酸水素二ナトリウム水溶液、リン酸二水素ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、クエン酸水溶液、アンモニア水溶液、塩酸水溶液などが挙げられる。分液操作のために添加される有機溶媒としては、水と混和しない溶媒、水溶性アルキルニトリル類、および水溶性エーテル類などが挙げられる。本明細書において、分液操作のために添加される、水と混和しない溶媒は「溶媒C」と称することがある。分液操作のために添加される有機溶媒として、具体的には、例えば、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、炭酸ジメチル、アニソール、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、MTBE、CPME、4-メチルテトラヒドロピラン、ヘプタン、およびアセトニトリルからなる群より選択される1つまたは複数などが挙げられる。また、分液操作に際し、有機層には、塩基性に対して安定で、化合物の溶解性に優れた2-MeTHFが含まれていることが好ましい。
【0191】
ある態様において、工程1~工程3の各反応後、アセトニトリルやTHFを多く含む場合など、溶媒Bが水と混和性で、水層と有機層とが適切に分離しない場合には、分液操作の前に、水および/もしくは水溶液に加えて、水と混和しない溶媒(溶媒C)を加えることで、水層と有機層を分離することができる。工程1~工程3の各反応後の分液操作で、水層と有機層とが適切に分離したか否かを決定する、限定を意図しない例示として、工程1~工程3の各反応後の分液操作後1~30分間静置して2層を形成するか否かで決定することができる。溶媒Cとして、水に対する溶解度が低い溶媒、例えば、水に対する溶解度が、999g/L以下の溶媒、500g/L以下の溶媒、250g/L以下の溶媒、好ましくは200g/L以下の溶媒、より好ましくは150g/L以下の溶媒が挙げられる。また、溶媒Cとして、log Kow値、またはlog Kow値の予測値が、正の値、例えば0以上かつ5以下の値をとる溶媒が好ましい。具体的には、2-MeTHF、炭酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ヘプタン、アニソール、MTBE、CPME、4-メチルテトラヒドロピランなどがあげられ、反応による生成物を効率よく有機溶媒で抽出可能であるという観点から、2-MeTHF、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、もしくはヘプタン、またはこれらを含む溶媒が好ましく用いられる。
【0192】
溶媒Cは、水層と有機層に分離可能な量で添加することが好ましく、例えば、有機層全体に対して、約50重量%~100重量%の量で系中に添加することができる。 水層と有機層の分離は、分液操作で溶媒Cを添加した後、水層と有機層の混合物を1~30分間静置して2層を形成するか否かを観察する方法に例示される、標準的な方法で決定することができる。
【0193】
ある態様において、分液操作は有機層または水層の洗浄を含むことができる。分液操作における洗浄は、目的物を含む溶液から、目的物を含まない溶液を用いて、目的物以外の不純物となりうる物質を取り除くために行われ得る。目的物は、通常、有機層に存在しており、この場合には有機層を水溶液で洗浄することにより、水層に不純物となりうる物質を抽出して取り除くことができる。一方、分液操作の過程で目的物を一旦有機層から水層に移す場合など、水層に目的物が存在している場合には、水層を洗浄する。
【0194】
有機層の洗浄には、中性、塩基性または酸性の水溶液を用いることができる。有機層の洗浄に利用可能な水溶液として、具体的には、硫酸水素ナトリウム水溶液、硫酸水素カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、リン酸水素二カリウム水溶液、リン酸水素二ナトリウム水溶液、リン酸二水素ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、クエン酸水溶液、アンモニア水溶液、塩酸水溶液、などの水溶液を利用することができる。ある態様において、系中に存在する未反応のアミノ酸やペプチドを十分に除去するためには、有機層を、炭酸ナトリウム水溶液、硫酸水素ナトリウム水溶液、および/または炭酸ナトリウム水溶液の順で洗浄することが好ましい。それでもなおアミノ酸やペプチドを十分に除去できない場合などには、クエン酸とリン酸水素二カリウムを含む水溶液を用いて有機層を洗浄することで、これらを効率よく除去できる。また、ある態様において、脂溶性の高いアミノ酸やペプチドの除去には、アセトニトリルと炭酸カリウム水溶液の混合液を用いて有機層を洗浄することが有効である。
【0195】
水層の洗浄には、水と混和しない有機溶媒を用いることができ、2-MeTHF、ヘプタン、MTBE、酢酸イソプロピルなどの有機溶媒が好ましく用いられる。
【0196】
本発明は、溶媒由来の安定化剤であるBHT (2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)を除去する方法に関する。具体的には、該方法は、分液操作、例えば本発明の各工程後の分液操作において、有機層として、アセトニトリル、プロピオニトリル、2-MeTHF、およびヘプタンを含む溶媒を用いることを含み、これにより、BHTを効率的に除去できる。この方法により、有機層中のBHTの残存量を、HPLC分析における210nmでのUVArea%値で、目的物に対して2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、または0.05%以下とすることができる。目的物を水と水溶性アルキルニトリルとを含む水層に溶解させた後に、有機層として特定の溶媒を用いることでBHTを除去することが可能である。ここで用いられる水溶性アルキルニトリルはアセトニトリルが好ましい。BHTを除くために用いられ得る有機層には、水と混和しない溶媒が含まれることが好ましい。複数の水と混和しない溶媒を組み合わせて用いることも可能であり、好ましい組み合わせは2-MeTHFとヘプタン、またはMTBEとヘプタンである。好ましい溶媒の比は、水溶性アルキルニトリルに対し、水と混和しない溶媒を100重量%以上用いることが好ましく、より好ましくは100重量%以上400重量%以下の範囲、さらに好ましくは100重量%以上300重量%以下の範囲で用いることで効率的にBHTを除去することが可能である。2-MeTHFとヘプタン、またはMTBEとヘプタンを組み合わせて用いる場合、ヘプタンに対して2-MeTHFまたはMTBEを、10重量%以上100重量%以下の範囲、好ましくは10重量%以上80重量%以下の範囲で用いることで、効率的にBHTを除去することが可能である。
市販されているTHFや2-MeTHFには、安定化剤として150~400 ppm程度のBHTが含まれていることがある。このようなTHFや2-MeTHFを大量に用いた場合、例えば、工程数が20工程以上になると、BHTの残存量は4%に達することになり、反応への悪影響が無視できなくなり得る。本発明の方法を用いることにより、事前に溶媒からBHTを除去する操作や、工程の途中で蓄積したBHTを除去するための単離操作(例えば、カラムクロマトグラフィー)を行う必要がなくなる。したがって、複数工程を含み、大スケールでのペプチドの液相合成の場合などにこの方法を適用することにより、ペプチド鎖を連続的に伸長することができ、目的のペプチド化合物を効率的に得ることができる。
【0197】
本発明におけるろ過操作、および濃縮操作には、本技術分野で既知のろ過操作、および濃縮操作を利用することができる。
【0198】
ある態様において、各工程の後処理として、分液操作、ろ過操作、および濃縮操作からなる群より選択される1つまたは複数の操作の前または後、あるいは次の工程の反応を開始する前に、溶媒、例えば、反応釜などの反応容器を洗浄した溶媒が系中に添加される場合がある。具体的には、例えば、トルエン、アセトン、DMF、アセトニトリル、THF、2-MeTHF、炭酸ジメチル、アニソール、酢酸イソプロピル、ヘプタン、酢酸エチル、および4-メチルテトラヒドロピランからなる群より独立して選択される1つまたは複数の溶媒が、系中に添加され得る。本明細書においては、この溶媒を添加する操作も後処理に含まれる。
【0199】
本発明のペプチド化合物を製造する方法は、中間体を単一化合物として単離する工程を含まない。したがって、初回の工程2の後処理後の溶媒、あるいは工程1と工程2の繰り返しのある回の工程2の後処理後の溶媒が、それらの次の回の工程1の反応溶媒(溶媒B)となり得る。同様に、初回の工程1の後処理後の溶媒、あるいは工程1と工程2の繰り返しのある回の工程1の後処理後の溶媒は、それらの回の工程2の反応溶媒(溶媒B)となり得る。すなわち、工程1と工程2を繰り返すにつれて溶媒Bの組成は変わり得るが、溶媒Bを構成する溶媒種は、それまでの工程1および工程2の反応および後処理に用いられてきた溶媒種と一致し得る。
【0200】
ある態様において、本発明の環状ペプチド化合物を製造する方法に用いられる溶媒(溶媒A)は、本発明のペプチド化合物を製造する方法によって直鎖ペプチド化合物を製造した後の溶媒(溶媒X)を含む。ある態様において、溶媒Xを溶媒Aとして、そのまま環化反応に利用することができる。別の態様において、溶媒Xに、さらに1種または複数種の水と混和しない溶媒、1種または複数種の水溶性アルキルニトリル類、および1種または複数種の水溶性エーテル類からなる群より選択される1つまたは複数を加えて溶媒Aとすることができる。溶媒Xにさらに溶媒を加えて溶媒Aとする場合、加える溶媒として好ましくは、2-MeTHF、炭酸ジメチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アニソール、アセトニトリル、THF、4-MeTHP、クロロベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、MTBE、CPMEなどが挙げられ、アセトニトリル、2-MeTHF、アニソール、炭酸ジメチルが特に好ましい。例えば、溶媒Xに溶媒、例えば、アセトニトリル、2-MeTHF、アニソール、または炭酸ジメチルを加えて溶媒Aとする場合、溶媒Xの重量に対して20~80倍量の溶媒を加えることが好ましい。
【0201】
前述のとおり、本発明のペプチド化合物を製造する方法では、工程1と工程2が繰り返され得るが、その繰り返しの最終回の工程1に用いられるC-保護ペプチドおよびN-保護ペプチドの一方または両方は、N-置換アミノ酸残基を4つ以上含むか、またはN-置換アミノ酸残基を2つ以上含み、かつα,αジ置換アミノ酸残基を1つ以上含むことが好ましい。N-置換アミノ酸残基としては、N-メチルまたはN-エチルアミノ酸残基などのN-アルキルアミノ酸残基、あるいはプロリンやAze(2)などのN-置換環状アミノ酸残基が好ましい。また、α,αジ置換アミノ酸残基としては、α,αジメチルアミノ酸残基などのα,αジアルキルアミノ酸残基やα位に存在する2つの基が連結して脂環式環を形成したcLeuなどのα,αジ置換環状アミノ酸残基などが好ましい。
【0202】
また、ある態様において、繰り返しの最終回の工程1で用いられるC-保護ペプチドおよびN-保護ペプチドの一方または両方は、5つのアミノ酸残基からなり、そのうちの4つが非天然アミノ酸残基であることが好ましい。
別の態様において、繰り返しの最終回の工程1で用いられるC-保護ペプチドおよびN-保護ペプチドの一方または両方は、6つのアミノ酸残基からなり、そのうちの5つが非天然アミノ酸残基であることが好ましい。
【0203】
ある態様において、本発明のペプチド化合物を製造する方法は、本発明の環状ペプチド化合物を製造する方法の原料に用いられる直鎖ペプチド化合物を得るために利用することができる。例えば、本発明の環状ペプチド化合物を製造する方法によって、前記式1の環状ペプチド化合物を製造する場合、その原料となる直鎖ペプチド化合物を製造するために、繰り返しの最終回の工程1で用いられるC-保護ペプチドとして、C-保護されたMeLeu-Ile-MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyを用いることができ、また、繰り返しの最終回の工程1で用いられるN-保護ペプチドとして、N-保護されたHph(4-CF3-35F2)-Pro-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp-NMe2を用いることができる。
【0204】
ある態様において、本発明のペプチド化合物を製造する方法を用いることで、前記式(1)の環状ペプチド化合物の製造原料となり得る、前記式(2)の直鎖ペプチド化合物を製造することができる。
【0205】
具体的には、例えば、1つ目のバッチとして、C-保護アミノ酸として、
【化15】
(MeAsp(OtBu)-NMe2)
を用い、N-保護アミノ酸として、
【化16】
(Z-MeGly(cPent))
を用い、工程1を経て
【化17】
(Z-MeGly(cPent)-MeAsp(OtBu)-NMe2)
を製造し、工程2を経て、
【化18】
(MeGly(cPent)-MeAsp(OtBu)-NMe2)
を製造することができる。
【0206】
次に、この化合物をC-保護アミノ酸として用い、N-保護アミノ酸として、
【化19】
(TFA-cLeu)
または
【化20】
(Cbz-cLeu)
を用い、工程1を経て、
【化21】
(TFA-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp(OtBu)-NMe2)
または
【化22】
(Cbz-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp(OtBu)-NMe2)
を製造し、工程2を経て、
【化23】
(cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp(OtBu)-NMe2)
を製造することができる。
【0207】
次に、この化合物をC-保護ペプチドとして用い、N-保護アミノ酸として、
【化24】
(Z-Pro)
を用い、工程1を経て、
【化25】
(Z-Pro-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp(OtBu)-NMe2)
を製造し、工程2を経て、
【化26】
(Pro-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp(OtBu)-NMe2)
を製造することができる。
【0208】
次に、この化合物をC-保護ペプチドとして用い、N-保護アミノ酸として、
【化27】
(Z-Hph(4-CF3-35F2) Cy2NH)
を用い、工程1を経て、
【化28】
(Z-Hph(4-CF3-35F2)-Pro-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp(OtBu)-NMe2)
を製造し、工程3を経て、このバッチの目的物である
【化29】
(Z-Hph(4-CF3-35F2)-Pro-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp-NMe2)
を製造することができる。
このバッチは、工程1の後に工程3を含み、かつ工程1と工程2の繰り返しの最終回は、工程2を含まないケースである。
【0209】
次に、2つ目のバッチとして、C-保護アミノ酸として、
【化30】
(MeGlyOtBu HCl)
を用い、N-保護アミノ酸として、
【化31】
(Z-EtPhe(4-Me) Cy2NH)
を用い、工程1を経て
【化32】
(Z-EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造し、工程2を経て、
【化33】
(EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造することができる。
【0210】
次に、この化合物をC-保護ペプチドとして用い、N-保護アミノ酸として、
【化34】
(Z-Aze(2))
を用い、工程1を経て、
【化35】
(Z-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造し、工程2を経て、
【化36】
(Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造することができる。
【0211】
次に、この化合物をC-保護ペプチドとして用い、N-保護アミノ酸として、
【化37】
(Z-MeAla)
を用い、工程1を経て、
【化38】
(Z-MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造し、工程2を経て、
【化39】
(MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造することができる。
【0212】
次に、この化合物をC-保護ペプチドとして用い、N-保護アミノ酸として、
【化40】
(Z-Ile)
を用い、工程1を経て、
【化41】
(Z-Ile-MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造し、工程2を経て、
【化42】
(Ile-MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造することができる。
【0213】
次に、この化合物をC-保護ペプチドとして用い、N-保護アミノ酸として、
【化43】
(Teoc-MeLeu-Opfp)
を用い、工程1を経て、
【化44】
(Teoc-MeLeu-Ile-MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造し、工程2を経て、
【化45】
(MeLeu-Ile-MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造することができる。
【0214】
次に、この化合物をC-保護ペプチドとして用い、N-保護アミノ酸として、1つ目のバッチで製造した。
【化46】
を用い、工程1を経て、
【化47】
Z-Hph(4-CF3-35F2)-Pro-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp-NMe2-MeLeu-Ile-MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGlyOtBu)
を製造し、工程3を経て、
【化48】
Z-Hph(4-CF3-35F2)-Pro-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp-NMe2-MeLeu-Ile-MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGly)
を製造し、工程2を経て、このバッチの目的物である化合物(2):
【化49】
Hph(4-CF3-35F2)-Pro-cLeu-MeGly(cPent)-MeAsp-NMe2-MeLeu-Ile-MeAla-Aze(2)-EtPhe(4-Me)-MeGly)
を製造することができる。
このバッチは、工程1と工程2の繰り返しの最終回において、工程1の後に工程3を含むケースである。
また、このバッチで得られた化合物2は、単離や精製することなく、本発明の環状ペプチド化合物を製造する方法の原料として利用することができる。
【0215】
本発明の方法を用いた上記のバッチはいずれも、中間体を単離や精製することなく目的の直鎖ペプチド化合物を効率的に製造ことができるため、本発明の方法は、大規模スケールでのペプチド合成に非常に有用である。
【0216】
ある態様において、本発明のペプチド化合物を製造する方法は、ペプチド化合物のN末端のアミノ酸残基とC末端のアミノ酸残基とを連結する工程をさらに含むことができ、かかる工程を経ることによって環状ペプチド化合物を製造することができる。ある態様において、N末端のアミノ酸残基とC末端のアミノ酸残基との連結は、工程1と工程2を複数回繰り返すことにより製造された、直鎖ペプチド化合物のN末端のアミノ酸残基とC末端のアミノ酸残基を連結することによって達成される。ある態様において、本工程には、前述の「環状ペプチド化合物を製造する方法」の項に記載の方法、例えば、反応条件や試薬を適用することができる。
【0217】
ある態様において、本発明は、前記式(1)で表される環状ペプチド化合物の塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物に関する。該化合物の溶媒和物は、水和物またはDMSO-水溶媒和物であることが好ましい。
【0218】
ある態様において、本発明は、前記式(1)の環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶に関する。この化合物の結晶として、具体的には、この化合物の非溶媒和物結晶、もしくは溶媒和物結晶、またはこの化合物の塩の非溶媒和物結晶、もしくは溶媒和物結晶が挙げられる。溶媒和物結晶として好ましくは水和物結晶、DMSO-水和物結晶、アセトン-水和物結晶が挙げられる。
【0219】
粉末X線回折における回折角2θは、CuKα、またはCuKα1放射線を用いて測定した回折ピークである。これらの溶媒和物結晶がさらに粉末X線回折における回折角2θで特定された結晶を、例えば以下に示す水和物の「C型結晶」と呼ぶこともあるが、単に「C型」と呼ぶこともある。
【0220】
ある態様において、式(1)の化合物の結晶が、水和物結晶である場合、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、下記のうちの少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有するC型結晶である。
4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)
【0221】
ある態様において、式(1)の化合物の結晶が、水和物結晶である場合、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、下記のピークを含む粉末X線回折パターンを有するC型結晶である。
4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)
【0222】
回折角2θの表記において、列記された回折角2θの最後に「(±0.2°)」と記載されている場合は、列記された全ての回折角2θにおいて、記載された各値に対して±0.2°の範囲が許容されることを意味する。
【0223】
ある態様において、該C型結晶は、図1に記載のものと実質的に同一のX線回折パターンを有する。ある態様において、該C型結晶は、図8に記載のものと実質的に同一のDSCおよびTGサーモグラムを有する。
【0224】
ある態様において、式(1)の化合物の結晶が、非溶媒和物結晶である場合、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、下記のうちの少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有するF型結晶である。
5.370°、6.934°、8.940°、9.838°、10.771°、12.181°、13.525°、15.179°、16.202°、または17.554°(±0.2°)
【0225】
ある態様において、該F型結晶は、図2に記載のものと実質的に同一のX線回折パターンを有する。
【0226】
ある態様において、式(1)の化合物の結晶が、溶媒和物結晶である場合、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、下記のうちの少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有するA型のDMSO-水和物結晶である。
8.006°、9.002°、9.943°、11.501°、13.067°、14.854°、16.320°、17.275°、19.261°、または20.324°(±0.2°)
【0227】
ある態様において、該A型結晶は、図3に記載のものと実質的に同一のX線回折パターンを有する。
【0228】
ある態様において、式(1)の化合物の結晶が、溶媒和物結晶である場合、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、下記のうちの少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有するB型のDMSO-水和物結晶である。
8.223°、9.594°、9.976°、11.879°、13.841°、14.572°、15.934°、16.350°、19.805°、20.480°(±0.2°)
【0229】
ある態様において、該B型結晶は、図4に記載のものと実質的に同一のX線回折パターンを有する。ある態様において、該B型結晶は、図5に記載のものと実質的に同一のDSCサーモグラムを有する。
【0230】
ある態様において、式(1)の化合物の結晶が、溶媒和物結晶である場合、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、下記のうちの少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有するH型のアセトン-水和物結晶である。
7.942°、8.283°、8.861°、10.097°、10.491°、11.805°、12.673°、12.830°、13.514°、13.855°、15.853°、16.405°、16.642°、および17.772°(±0.2°)
【0231】
ある態様において、該H型結晶は、図13に記載のものと実質的に同一のX線回折パターンを有する。
【0232】
ある態様において、式(1)の化合物の結晶は、いずれの形態においても不純物を実質的に含まない。例えば、式(1)の化合物の結晶は、少なくとも約90%の純度を有しうる。ある態様において、式(1)の化合物の結晶は少なくとも約95%の純度を有する。ある態様において、式(1)の化合物の結晶は少なくとも約98%の純度を有する。例えば、式(1)の化合物の結晶は少なくとも98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%の純度を有しうる。ある態様において、式(1)の化合物の結晶は他の形態を実質的に含まない。
【0233】
一態様において、C型結晶は、式(1)で表される化合物の他の結晶形態を実質的に含まない。
【0234】
一態様において、F型結晶は、式(1)で表される化合物の他の結晶形態を実質的に含まない。
【0235】
一態様において、A型結晶は、式(1)で表される化合物の他の結晶形態を実質的に含まない。
【0236】
一態様において、B型結晶は、式(1)で表される化合物の他の結晶形態を実質的に含まない。
【0237】
一態様において、H型結晶は、式(1)で表される化合物の他の結晶形態を実質的に含まない。
【0238】
ある態様において、本発明は、前記式(1)で表される環状ペプチド化合物の水和物結晶の製造方法に関する。該製造方法は、以下の工程を含む。
工程A:環状ペプチド化合物を該環状ペプチド化合物が溶解可能な量の極性有機溶媒に溶解させて溶液を得る工程、
工程B: 該溶液を濃縮して、該環状ペプチド化合物の残渣を得る工程、および
工程C: 該残渣に水と極性有機溶媒の混合液を加えて、該環状ペプチド化合物の水和物結晶を得る工程。
【0239】
ある態様において、工程Aに用いられる極性有機溶媒には、式(1)の環状ペプチド化合物、例えば、粗精製物状態の該環状ペプチド化合物が溶解可能な溶媒を用いることができ、具体的には、DMSO、DMF、DMA、NMP、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリルなどが好ましく例示され、アセトン、DMSO、またはエタノールがより好ましく例示される。溶解可能な量として、式(1)の環状ペプチド化合物に対し、3~10w/vの範囲、好ましくは3~7w/vの範囲を用いることができる。
【0240】
ある態様において、工程Bにおける濃縮には、凍結乾燥が含まれる。ある態様において、工程Bで得られた残渣は、アモルファス、油状物質、または固体であることができる。ある態様において、工程Bで得られた残渣は凍結乾燥体であることができる。
【0241】
ある態様において、工程Cに用いられる極性有機溶媒は、工程Aに用いられる極性有機溶媒と同様の溶媒であることができる。工程Cに用いられる混合液における水と極性有機溶媒の混合比としては、極性有機溶媒1重量部に対し、水0.5~10重量部用いることができ、好ましくは、水1~7重量部、さらに好ましくは、水1~5重量部用いることが好ましい。また、工程Cに用いられる極性有機溶媒は、アセトニトリル、エタノール、またはアセトンが好ましい。
【0242】
本発明は、前記式(1)で表される環状ペプチド化合物の結晶の製造方法に関する。該製造方法は、
アモルファス状態の該環状ペプチド化合物をDMSOに溶解させて溶液を得る工程、
該溶液を凍結乾燥して、該環状ペプチド化合物の凍結乾燥体を得る工程、および
該凍結乾燥体に水-アセトニトリル混合液を加えて、該環状ペプチド化合物の水和物結晶を得る工程を含む。
【0243】
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0244】
本発明の内容を以下の実施例でさらに説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。特に記載したものを除き、出発物質、出発原料、溶媒、および試薬は商業的供給業者から入手、もしくは公知の方法を用いて合成した。化合物2、および化合物30は、国際公開第2020/189540号に記載の方法により製造した。
【0245】
HPLCによる分析条件は以下に示した。
HPLC分析条件 method 1
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class
カラム:Ascentis Express 90A C18 (Sigma-Aldrich), 2.1 mm ID×50 mm, 2.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法: B) 5%(0 min)→100%(5 min)→5%(5.1 min)→5%(7 min)
流速:0.5 mL/min
カラム温度:35 ℃
検出波長:210nm(PDA)
【0246】
HPLC分析条件 method 2
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class
カラム:Ascentis Express 90A C18 (Sigma-Aldrich), 2.1 mm ID×50 mm, 2.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B) 5%(0 min)→100%(6 min)→5%(6.1min)→5%(8 min)
流速:0.5 mL/min
カラム温度:35 ℃
検出波長:210nm(PDA)
【0247】
HPLC分析条件 method 3
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class
カラム:CAPCELL CORE ADME (OSAKA SODA), 2.1 mm ID×50 mm, 2.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B):5%(0 min)→100%(5 min)→5%(5.1 min)→5%(7 min)
流速:0.5 mL/min
カラム温度:35℃
検出波長:210nm(PDA)
【0248】
HPLC分析条件 method 4
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class
カラム:ACQUITY UPLC CSH C18 (Waters), 2.1 mm ID×100 mm, 1.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B) 20%(0 min)→100%(10 min)→100%(13.5 min)→20%(13.6 min)→20%(18.0 min)
流速:0.3 mL/min
カラム温度:50 ℃
検出波長:210nm(PDA)
【0249】
HPLC分析条件 method 5
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class
カラム:ACQUITY UPLC CSH C18 (Waters), 2.1 mm ID×150 mm, 1.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B) 20%(0 min)→100%(24 min)→100%(29 min)→20%(29.1 min)→20%(34 min)
流速:0.3 mL/min
カラム温度:50 ℃
検出波長:220nm(PDA)
【0250】
HPLC分析条件 method 6
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class
カラム:CAPCELL CORE ADME (OSAKA SODA), 2.1 mm ID×50 mm, 2.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B):5%(0 min)→100%(10 min)→5%(10.1 min)→5%(12 min)
流速:0.5 mL/min
カラム温度:35℃
検出波長:210nm(PDA)
【0251】
【表1】
【0252】
LCMSによる分析条件は以下に示した。
LCMS分析条件 method 1
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class + ACQUITY QDA
カラム:Ascentis Express 90A C18 (Sigma-Aldrich), 2.1 mm ID×50 mm, 2.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法: B) 5%(0 min)→100%(5 min)→5%(5.1 min)→5%(7 min)
流速:0.5 mL/min
カラム温度:35 ℃
検出波長:210nm(PDA)
【0253】
LCMS分析条件 method 2
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class + ACQUITY QDA
カラム:Ascentis Express 90A C18 (Sigma-Aldrich), 2.1 mm ID×50 mm, 2.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B) 5%(0 min)→100%(6 min)→5%(6.1 min)→5%(8 min)
流速:0.5 mL/min
カラム温度:35 ℃
検出波長:210nm(PDA)
【0254】
LCMS分析条件 method 3
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class + ACQUITY QDA
カラム:CAPCELL CORE ADME (OSAKA SODA), 2.1 mm ID×50 mm, 2.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B) 5%(0 min)→100%(5 min)→5%(5.1 min)→5%(7 min)
流速:0.5 mL/min
カラム温度:35 ℃
検出波長:210nm(PDA)
【0255】
LCMS分析条件 method 4
装置:Waters SQD2
カラム:ACQUITY UPLC CSH C18 (Waters), 2.1 mm ID×100 mm, 1.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B) 20%(0 min)→100%(10 min)→100%(13.5 min)→20%(13.6 min)→20%(18.0 min)
流速:0.3 mL/min
カラム温度:50 ℃
検出波長:210nm(PDA)
【0256】
LCMS分析条件 method 5
装置:Waters SQD2
カラム:ACQUITY UPLC CSH C18 (Waters), 2.1 mm ID×150 mm, 1.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B) 20%(0 min)→100%(24 min)→100%(29 min)→20%(29.1 min)→20%(34 min)
流速:0.3 mL/min
カラム温度:50 ℃
検出波長:220nm(PDA)
【0257】
LCMS分析条件 method 6
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class + ACQUITY QDA
カラム:CAPCELL CORE ADME (OSAKA SODA), 2.1 mm ID×50 mm, 2.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B):5%(0 min)→100%(10 min)→5%(10.1 min)→5%(12 min)
流速:0.5 mL/min
カラム温度:35℃
検出波長:210nm(PDA)
【0258】
【表2】
【0259】
1H-NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置ECX500II(JEOL社製)を用いて測定し、内部標準物質として用いたMe4Siのケミカルシフトを0 ppmとし、サンプル溶媒からの重水素ロック信号を参照した。サンプル溶液は、測定の目的に応じた市販の重水素化溶媒をサンプル溶媒として用い、測定対象化合物と混合して調整した。シグナルの積分値は、各シグナルのシグナル面積強度の比をもとに算出した。
【0260】
qNMRによる測定法は、目的化合物を含む残渣と内部標準物質をDMSO‐dに溶解させ、以下の分析条件により行った。収率の算出は、qNMRにより算出された残渣中の目的物の含量の値、およびHPLC分析により算出された残渣の目的物純度の値を用いて、以下の式により行った。
【数1】
測定装置:JNM-ECZ500R
内部標準物質:3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸
測定条件(H-NMR):DMSO-d, 24.3℃, パルス角度 90℃, デジタル分解能 0.25Hz, 緩和時間 60秒、 スピン無し、積算回数8回
測定条件(19F-NMR):DMSO-d, 24.3℃, パルス角度 90℃, デジタル分解能 0.22Hz, 緩和時間 60秒、 スピン無し、積算回数8回
【0261】
粉末X線(XRPD)回折測定は、以下の条件で測定し、走査範囲の2θ値を算出した。X線回折パターンは、回折の角度(2θ値)を横軸上に、回折強度を縦軸上にプロットした。
(測定方法1)
測定装置:SmartLab System(Rigaku Corporation社製)
線源:CuKα1
管電圧:45 kV
管電流:200 mA
走査範囲:3~35°
サンプリング幅:0.02°
【0262】
(測定方法2)
測定装置:SmartLab System、D/Tex Ultra detector(リガク社製)
線源:CuKα1
管電圧:45 kV
管電流:200 mA
走査範囲:5~30°
走査速度:5°/分
サンプリング幅:0.02°
【0263】
(測定方法3)
測定装置:D8 Discover、2D VANTEC-500 solid state detector(Bruker社製)
線源:CuKα
管電圧、管電流:40 kV、40 mAまたは50 kV、1000 μA(マイクロフォーカスX線源IμS使用時)
測定範囲:5~31°
露光時間:100秒または600秒(マイクロフォーカスX線源IμS使用時)
【0264】
(測定方法4)
測定装置:X’pert-pro MPD(PANalytical社製)
線源:CuKα
管電圧:45 kV
管電流:40 mA
走査範囲:3~40°
走査速度:4.2°/分
サンプリング幅:0.017°
【0265】
(測定方法4)
測定装置:X’pert-pro MPD(PANalytical社製)
線源:Cu
管電圧:45 kV
管電流:40 mA
走査範囲:3~25°
走査速度:0.33°/秒
サンプリング幅:0.026°
測定:サンプリングした懸濁液をX線結晶解析用キャピラリーに詰め,測定した。
【0266】
熱分析は、以下の条件で測定した。
(測定方法1)
測定装置:EXSTAR TG/DTA6200R装置(セイコーインスツルメンツ(現社名:日立ハイテクサイエンス)社製)
測定範囲:30~350℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:窒素
【0267】
(測定方法2)
測定装置:SmartLab System、DSC attachment(リガク社製)
測定範囲:35~270℃
雰囲気:窒素
DSC条件は表3に示す。
【表3】
【0268】
(測定方法3)
測定装置:STA7200RV+AS-3T(日立ハイテクサイエンス製)
測定範囲:30~350℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:窒素
【0269】
(測定方法4)
測定装置:TGA/DSC 3+(Mettler Toledo製)
測定範囲:25~350℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:乾燥窒素
【0270】
HPLCによる測定法は、目的化合物を含む混合液を以下のいずれかの方法にてサンプル調製し、上述の分析条件により行った。
サンプル調製法1:目的化合物を含む混合液を、アセトニトリルで希釈した。
サンプル調製法2:目的化合物を含む混合液を、アセトニトリルとプロピルアミンを9対1の比率で混ぜた混合液で希釈した。
サンプル調製法3:目的化合物を含む混合液を、メタノールで希釈した。
サンプル調整法4:目的化合物を含む混合液を、メタノールと水を4対1の比率で混ぜた混合液で希釈した。
【0271】
反応転換率の算出は、HPLC分析により算出された原料の面積値と目的物の面積値、又は原料の面積値と原料のプロピルアミド体の面積値と目的物の面積値、又は反応前の原料の面積値と反応後の原料の面積値を用いて、以下のいずれかの式により行った。
式1:反応転換率(%)=目的物の面積値/(原料の面積値+目的物の面積値)×100
式2:反応転換率(%)=目的物の面積値/(原料の面積値+原料のプロピルアミド体の面積値+目的物の面積値)×100
式3:反応転換率(%)=100-(反応後の原料の面積値/反応前の原料の面積値×100)
【0272】
実施例1
化合物4:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[ベンジルオキシカルボニル(エチル)アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化50】
【0273】
窒素で置換した反応釜に、室温にて化合物2(4.60kg)および化合物3(1.92kg)を加え、次いで2-MeTHF(22.8kg)を加えて攪拌した。反応釜の外温を10℃に設定し、DIPEA(6.15kg)を加えた後、T3P(50 w/w% 2-MeTHF溶液、13.45kg)を滴下した。反応釜の外温を25℃に設定し、5時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法2)し、HPLC分析により反応転換率が99.6%であることを確認した(反応転換率の算出式2)。反応釜の外温を10℃に設定し、撹拌しながら5%炭酸ナトリウム水溶液(26.6kg)を滴下し、次いで、水(6.9kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、20分間攪拌した後、反応釜から水層を排出した。得られた有機層を、同様に外温25℃にて5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(34.5kgx3)、5%炭酸ナトリウム水溶液(34.5kg)で洗浄した。得られた有機層を保管容器に回収し、反応釜を2-MeTHF(25.6kg)で洗浄した洗浄液をあわせて保管溶液として保管容器に回収した。窒素で置換した反応釜に前記の保管溶液を、2-MeTHF(1.7kg)で保管容器内を洗いこみながら加えた。反応釜の外温を50℃に設定し、液量が12L程度になるまで、減圧濃縮した。得られた残渣を保管容器に回収し、反応釜を2-MeTHF(8.5kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物4を含む2-MeTHF溶液(17.8kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.500分(HPLC分析条件:method 1)
【0274】
実施例2
化合物5:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-(エチルアミノ)-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化51】
【0275】
窒素で置換した反応釜に、実施例1で得られた化合物4を含む2-MeTHF溶液(16.9kg)、2-MeTHF(8.6kg)を加えた後、5% Pd/C(1.78kg、50%含水品)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、反応釜の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。1時間後、内圧の変動がないことを確認した後、窒素置換後にさらに水素で0.18MPaGまで加圧し、1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応容器内を窒素で置換後、反応混合物を加圧濾過した。反応釜と濾過機を2-MeTHF(10.8kg)で洗浄後、濾液と洗浄液を保管溶液として保管容器に回収した。得られた濾液および洗浄液を、液量が5L程度になるまで外温40℃にて減圧濃縮した。反応釜を、2-MeTHF(8.5kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物5を含む2-MeTHF溶液(12.4kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.389分(HPLC分析条件:method 1)
【0276】
実施例3
化合物7:(ベンジル (2S)-2-[[(1S)-2-[(2-tert-ブトキシ-2-オキソ-エチル)-メチル-アミノ]-2-オキソ-1-(p-トリルメチル)エチル]-エチル-カルバモイル]アゼチジン-1-カルボキシラート)の合成
【化52】
【0277】
窒素で置換した反応釜に、撹拌しながら実施例2で得られた化合物5を含む2-MeTHF溶液(12.3kg)と、化合物6(2.92kg)を2-MeTHF(3.87kg)に溶解させた溶液を2-MeTHF(8.0kg)で洗いこみながら加えた。反応釜の外温を10℃に設定し、撹拌しながらDIPEA(5.35kg)を加えた後に、T3P(1.6 M 2-MeTHF溶液、15.53kg)を滴下した。反応釜の外温を25℃に設定し、反応混合物を2時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.6%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜の外温を10℃に設定し、反応混合物に5%炭酸ナトリウム水溶液(25.2kg)を攪拌しながら加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、10分間撹拌後、撹拌を停止し、反応釜から水層を排出した。有機層を5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(33.2kg)で2回洗浄後、5%炭酸ナトリウム水溶液(33.2kg)で洗浄した。有機層を保管容器に回収し、反応釜を、2-MeTHF(25.6kg)で洗浄した洗浄液を合わせて保管溶液として保管容器に回収した。窒素で置換した反応釜に、前記保管溶液を、2-MeTHF(1.7kg)で保管容器内を洗いこみながら加えた。反応釜の外温を50℃に設定し、撹拌しながら液量が12L程度になるまで、減圧濃縮した。得られた残渣、および反応釜を2-MeTHF(8.5kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物7を含む2-MeTHF溶液(18.9kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.065分(HPLC分析条件:method 1)
【0278】
実施例4
化合物8:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[(2S)-アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化53】
【0279】
窒素で置換した反応釜に、実施例3で得られた化合物7を含む2-MeTHF溶液(18.7kg)を、保管容器を2-MeTHF(6.9kg)で洗いこみながら加えた。反応釜に、5% Pd/C(1.74kg、50%含水品)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、反応釜の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。50分攪拌後、内圧の変動がないことを確認した後、窒素置換後にさらに水素で0.18MPaGまで加圧し、1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応容器内を窒素で置換後、反応混合物を加圧濾過した。反応釜と濾過機を2-MeTHF(10.6kg)で洗浄後、濾液と洗浄液を保管溶液として保管容器に回収した。得られた濾液および洗浄液を、液量が6L程度になるまで外温40℃にて減圧濃縮した。残渣、および反応釜を2-MeTHF(8.5kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物8を含む2-MeTHF溶液(14.0kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.538分(HPLC分析条件:method 1)
【0280】
実施例5
化合物10:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[ベンジルオキシカルボニル(メチル)アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化54】
【0281】
窒素で置換した反応釜に、実施例4で得られた化合物8を含む2-MeTHF溶液(13.9kg)、化合物9(2.31kg)、2-MeTHF(10.4kg)を順次加えた。反応釜の外温を10℃に設定し、撹拌しながらDIPEA(4.61kg)を加えた後に、T3P(1.6 M 2-MeTHF溶液, 12.15kg)を滴下した。反応釜の外温を25℃に設定し、反応混合物を1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析により反応転換率が96.8%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜の外温を10℃に設定し、反応混合物に5%炭酸ナトリウム水溶液(24.3kg)を撹拌しながら加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、10分間撹拌後、撹拌を停止し、反応釜から水層を排出した。有機層を5%硫酸水素ナトリウム一水和水溶液(32.4kg)で2回洗浄後、5%炭酸ナトリウム水溶液(32.4kg)で洗浄した。得られた有機層に2-MeTHF(25.6kg)を加えた。反応釜の外温を50℃に設定し、撹拌しながら液量が12L程度になるまで、減圧濃縮後、残渣を保管容器に回収した。反応釜を、2-MeTHF(8.5kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物10を含む溶液(19.0kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.004分(分析条件:method 1)
【0282】
実施例6
化合物11:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[エチル-[(2S)-1-[(2S)-2-(メチルアミノ)プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化55】
【0283】
窒素で置換した反応釜に、実施例5で得られた化合物10を含む溶液(18.8kg)、2-MeTHF(7.0kg)を順次加えた。反応釜に、5% Pd/C(1.70kg、50%含水品)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、反応釜の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。1時間40分後、内圧の変動がないことを確認し、窒素置換後に水素で0.18MPaGまで加圧し、2時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜内を窒素で置換後、反応混合物を加圧濾過した。反応釜と濾過機を2-MeTHF(10.3kg)で洗浄後、濾液と洗浄液を保管溶液として回収した。得られた濾液および洗浄液を、液量が7L程度になるまで外温40℃にて減圧濃縮した。残渣、および反応釜をトルエン(10.4kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物11を含む溶液(16.7kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.510分(HPLC分析条件:method 1)
【0284】
実施例7
化合物13:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化56】
【0285】
窒素で置換した反応釜に、実施例6で得られた化合物11を含む溶液(16.5kg)、2-MeTHF(2.12kg)を室温にて順次加えた。次いで、反応釜に化合物12(2.52kg)を2-MeTHF(8.1kg)に溶解した溶液、2-MeTHF(8.1kg)、アセトニトリル(3.1kg)を室温にて順次加えた。DIPEA(4.51kg)を室温にて攪拌しながら加えた後、反応釜の外温を25℃に設定し、HATU(4.52kg)、2-MeTHF(0.3L)を順次加えた後、25 ℃にて1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜にN-メチルイミダゾール(0.65kg)を加え、さらに5%炭酸ナトリウム水溶液(23.9kg)を撹拌しながら加えた後に1時間撹拌した。次いで、2.5%アンモニア水溶液(23.9kg)を加え、30分撹拌後に、反応釜から水層を排出した。得られた有機層を、2.5%アンモニア水溶液(31.9kg)、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(31.9kg×2)、3%リン酸水素二カリウム水溶液(31.9kg)で洗浄した。得られた有機層に2-MeTHF(25.6kg)を加えた。反応釜の外温を50℃に設定し、撹拌しながら液量が12L程度になるまで減圧濃縮した。残渣、および反応釜をアセトン(7.9kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物13を含む溶液(18.2kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.235分(HPLC分析条件:method 1)
【0286】
化合物11と化合物12の縮合反応(実施例7の反応条件検討)
化合物11と化合物12の縮合反応における溶媒を検討した。縮合反応はHPLC分析により追跡した。収率はHPLC分析により求めたエリア%(Area%)により算出した。
【化57】
【0287】
実施例7-1
化合物13:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成(溶媒の検討)
実施例6で得られた化合物11(50.69mg(0.100mmol))を含む溶液(72.62mg)を反応容器に加え、外温60℃にて減圧濃縮乾固した。次いで、反応容器に化合物12(32.50mg(0.122mmol))を加え、2-MeTHF(0.35mL)を室温にて加えた。DIPEA(58.3mg(0.451mmol))を室温にて攪拌しながら加えた後、反応容器の外温を25℃に設定し、HATU(58.37mg(0.154mmol))を加えた後、25 ℃にて4時間撹拌した。反応容器にN-メチルイミダゾール(8.17mg(0.099mmol))を加え、さらに5%炭酸ナトリウム水溶液(300μL)を撹拌しながら加えた後に2時間30分撹拌した。次いで、不溶物を綿栓にて濾去後、水層を排出した。得られた有機層に2.5%アンモニア水溶液(300μL)を加え、5分間撹拌後に、水層を排出した。得られた有機層を、2.5%アンモニア水溶液(320μL)、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(320μL×2)、3%リン酸水素二カリウム水溶液(320μL)で洗浄した。得られた有機層を外温60℃にて減圧濃縮乾固した。得られた残渣をHPLCで分析した。標品を用いたHPLC分析の結果、得られた化合物13は56.77mg(75.1%収率)であった。
化合物13のLCMS (ESI):保持時間:4.012分、m/z=750 [M+H](LCMS分析条件:method 1)
HPLC分析による保持時間:4.261分(HPLC分析条件:method 1)
【0288】
上記の化合物13の合成法(溶媒の検討)で用いた2-MeTHFに代えて、溶媒として4-メチルテトラヒドロピラン、炭酸ジメチル、酢酸エチル、またはアニソールを用いた場合の結果を下表に示した。
【0289】
【表4】
【0290】
これらの結果より、2-MeTHFに加え、4-メチルテトラヒドロピラン、炭酸ジメチル、酢酸エチル、またはアニソールが、HATUを用いた縮合反応に適した溶媒であることが示された。2-MeTHFに加え、4-メチルテトラヒドロピラン、炭酸ジメチル、酢酸エチル、またはアニソールが、化合物11と化合物12を縮合させて化合物13を製造するのに適した溶媒であることが示された。特に、2-MeTHFが目的物の収率の観点から適した溶媒であることが示された。
【0291】
実施例8
化合物15:((2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル) (2S)-4-メチル-2-[メチル(2-トリメチルシリルエトキシカルボニル)アミノ]ペンタノアート)の合成
【化58】
【0292】
窒素で置換した反応釜に、化合物14(3.0kg)、酢酸イソプロピル(13.7kg)、およびDMF(18.3kg)を室温にて順次加えた。ペンタフルオロフェノール(2.38kg)を酢酸イソプロピル(2.8kg)に溶解した溶液、酢酸イソプロピル(0.6kg)を室温にて攪拌しながら順次加えた。反応釜の外温を0℃に設定し、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(2.48kg)を反応釜に加えた。反応釜の外温を1時間かけて25℃まで昇温した後、外温25℃にて2時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により原料の化合物14が未検出となっていることを確認した(反応転換率の算出式3)。反応釜の外温を0℃に設定し、0.5M 塩酸水溶液(19.4kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定した後10分攪拌し、撹拌を停止後、反応釜から水層を排出した。得られた有機層を0.5M 塩酸水溶液(27.5kg)で洗浄した。得られた有機層に、5%炭酸カリウム水溶液(27.5kg×2)、次いでDMF(2.8kg)を加えた。反応混合物を10分間撹拌し、撹拌を停止後、反応釜から水層を排出した。得られた有機層を、5%炭酸カリウム水溶液(27.5kg)、次いで10%塩化ナトリウム水溶液(27.5kg)で洗浄した。酢酸イソプロピル(27.6kg)を加えた後、液量が8L程度になるまで外温40℃にて減圧濃縮した。残渣、および反応釜をアセトン(8.7kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物15を含む溶液(16.2kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:6.175分(HPLC分析条件:method 2)
【0293】
実施例9
化合物16:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[エチル-[(2S)-1-[(2S)-2-[メチル-[(2S,3S)-3-メチル-2-[[(2S)-4-メチル-2-[メチル(2-トリメチルシリルエトキシカルボニル)アミノ]ペンタノイル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化59】
【0294】
窒素で置換した反応釜に、実施例8で得られた化合物15を含む溶液(7.4kg)と、実施例7で得られた化合物13を含む溶液(9.0kg)、酢酸イソプロピル(4.0kg)、N-メチルモルホリン(2.38kg)を室温にて順次加えた。反応釜に、5% Pd/C(0.83kg、50%含水品)を加えた後に、反応釜の外温を25℃に設定し、反応釜の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。1時間後、内圧の変動がないことを確認した後、水素で0.18MPaGまで加圧し、さらに1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜内を窒素で置換後、反応混合物を加圧濾過した。反応釜内と濾過機を2-MeTHF(10.0kg×2)で洗浄後、濾液と洗浄液をあわせて保管溶液(第一バッチ)として得た。
【0295】
窒素で置換した反応釜に、実施例8で得られた化合物15を含む溶液(7.4kg)と、実施例7で得られた化合物13を含む溶液(9.0kg)、酢酸イソプロピル(4.0kg)、N-メチルモルホリン(2.38kg)を室温にて順次加えた。反応釜に、5%Pd/C(0.83kg、50%含水品)を加えた後に、反応釜の外温を25℃に設定し、反応釜の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。1時間後、内圧の変動がないことを確認した後、水素で0.18MPaGまで加圧し、さらに1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜内を窒素で置換後、反応混合物を加圧濾過した。反応釜内と濾過機を2-MeTHF(10.0kg×2)で洗浄後、濾液と洗浄液をあわせて保管溶液(第二バッチ)として得た。
【0296】
窒素で置換した反応釜に前記のそれぞれの保管溶液および2-MeTHF(1.8kg)を加え、液量が20L程度になるまで外温40℃にて減圧濃縮した。濃縮残渣を加圧濾過した。反応釜内と濾過機を2-MeTHF(8.5kgx2)で洗浄後、濾液と洗浄液をあわせて保管溶液として保管容器に回収した。窒素で置換した反応釜に、上記の保管溶液および2-MeTHF(3.1kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、5%炭酸カリウム水溶液(25.9kg)と4-ジメチルアミノピリジン(0.96kg)を攪拌しながら順次加えた。30分後に撹拌を停止し、反応釜から水層を排出した。有機層を5%硫酸水素カリウム水溶液(34.1kg×2)、5%炭酸カリウム水溶液(34.1kg)で2回洗浄した。2-MeTHF(26.5kg)を加え、液量が12L程度になるまで外温50℃にて減圧濃縮した。得られた残渣と、反応釜内を2-MeTHF(8.5kg)で洗浄した洗浄液とを合わせて化合物16を含む溶液(19.0kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:5.964分(HPLC分析条件:method 2)
【0297】
実施例9-1(実施例9で用いた酢酸イソプロピルに代えて、2-MeTHFを用いた場合)
化合物16(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[エチル-[(2S)-1-[(2S)-2-[メチル-[(2S,3S)-3-メチル-2-[[(2S)-4-メチル-2-[メチル(2-トリメチルシリルエトキシカルボニル)アミノ]ペンタノイル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化60】
【0298】
反応容器に、実施例7で得られた化合物13を含む保管溶液(482.7mg)を加え減圧濃縮し、化合物13を含む残渣を得た。反応容器に、化合物15を含む残渣(91.2mg,81.2wt%)と2-MeTHF(1000μL)を室温にて順次加えた。反応容器に、5%Pd/C(29.8mg、50%含水品)を加えた後に外温を25℃に設定し、水素ガスによる脱気置換を行い1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析に付して反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応混合物を濾過し、残渣を2-MeTHF(400μL×2)で洗浄した。ろ液を含んだ反応容器の外温を25℃に設定し、5%炭酸カリウム水溶液(440μL)と4-ジメチルアミノピリジン(16.6mg)を攪拌しながら順次加えた。30分後に撹拌を停止し、水層を排出した。有機層を5%硫酸水素カリウム水溶液(440μL×2)、5%炭酸カリウム水溶液(440μL×2)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、化合物16を含む残渣(113.3mg)を得た。取得した残渣をアセトニトリルで希釈し、LCMS分析に付した(method 2:化合物16の保持時間;5.573分、m/z=910 [M+Na]+)。得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO-d6に溶解させ、qNMR分析に付した(収率:58%)。
【0299】
実施例9-2(実施例9で用いた酢酸イソプロピルに代えて、炭酸ジメチルを用いた場合)
化合物16(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[エチル-[(2S)-1-[(2S)-2-[メチル-[(2S,3S)-3-メチル-2-[[(2S)-4-メチル-2-[メチル(2-トリメチルシリルエトキシカルボニル)アミノ]ペンタノイル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
反応容器に、実施例7で得られた化合物13を含む保管溶液(477.4mg)を加え減圧濃縮し、化合物13を含む残渣を得た。反応容器に、化合物15を含む残渣(92.0mg,81.2wt%)と炭酸ジメチル(1000μL)を室温にて順次加えた。反応容器に、5%Pd/C(29.7mg、50%含水品)を加えた後に外温を25℃に設定し、水素ガスによる脱気置換を行い1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析に付して反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応混合物を濾過し、残渣を炭酸ジメチル(400μL×2)で洗浄した。ろ液を含んだ反応容器の外温を25℃に設定し、5%炭酸カリウム水溶液(880μL)と4-ジメチルアミノピリジン(17.1mg)を攪拌しながら順次加えた。30分後に撹拌を停止し、水層を排出した。有機層を5%硫酸水素カリウム水溶液(880μL×2)、5%炭酸カリウム水溶液(880μL×2)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、化合物16を含む残渣(107.3mg)を得た。取得した残渣をアセトニトリルで希釈し、LCMS分析に付した(method 2:化合物16の保持時間;5.579分、m/z=910 [M+Na]+)。得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO-d6に溶解させ、qNMR分析に付した(収率:62%)。
【0300】
実施例9-3(実施例9で用いた酢酸イソプロピルに代えて、アニソールを用いた場合)
化合物16の上記の合成法で用いた2-MeTHFに代えて、溶媒として炭酸ジメチル、アニソールを用いた場合の結果を下表に示した。
【0301】
【表5】
【0302】
実施例10
化合物17:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[エチル-[(2S)-1-[(2S)-2-[メチル-[(2S,3S)-3-メチル-2-[[(2S)-4-メチル-2-(メチルアミノ)ペンタノイル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化61】
【0303】
窒素で置換した反応釜に、実施例9で得られた化合物16を含む溶液(18.8kg)、2-MeTHF(5.8kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を47℃に設定し、テトラブチルアンモニウムフロリド(1 M THF溶液、17.6kg)を1時間かけて加えた。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により原料の化合物16が未検出となっていることを確認した(反応転換率の算出式1)。撹拌停止後、反応混合物を半分ずつに分割した。分割した反応混合物に酢酸イソプロピル(9.1kg)を加え、反応釜の外温を25℃に設定し、撹拌しながら有機層を5%炭酸カリウム水溶液(10.3kgx3)で洗浄した。得られた有機層を保管溶液で保管した。分割したもう一方の反応混合物も同様の操作を行い、得られた有機層を合わせ、液量が12L程度になるまで減圧濃縮した。得られた残渣と、反応釜内を2-MeTHF(8.5kg)で洗浄した洗浄液とを合わせて化合物17を含む溶液(12.6kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:3.057分(HPLC分析条件:method 1)
【0304】
実施例11
化合物19:(tert-ブチル (3S)-3-[ベンジルオキシカルボニル(メチル)アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアート)の合成
【化62】
【0305】
窒素で置換した反応釜に、化合物18(4.78kg)、2-MeTHF(23.8kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を10℃に設定し、反応混合物を撹拌しながらDIPEA(3.22kg)、ジメチルアミン-THF溶液(2 M、THF溶液、5.49kg)を順次加えて30分間撹拌した。T3P (50%w/w 2-MeTHF溶液、8.64kg)を加えた後、反応釜の外温を25℃に設定し、6時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法3)し、HPLC分析により反応転換率が96.2%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜の外温を10℃に設定し、反応混合物に10%クエン酸一水和物水溶液(28.7kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、10分間撹拌後、撹拌を停止し、反応釜から水層を排出した。得られた有機層を10%クエン酸一水和物水溶液(28.7kg×2)および5%炭酸ナトリウム水溶液(28.7kgx3)で洗浄した。得られた有機層に2-MeTHF(26.0kg)を加え、液量が7L程度になるまで外温60℃にて減圧濃縮した。残渣、および反応釜を2-MeTHF(6.8kg×2)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物19を含む溶液(19.8kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:3.510分(HPLC分析条件:method 3)
【0306】
実施例12
化合物20:(tert-ブチル (3S)-4-(ジメチルアミノ)-3-(メチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアート)の合成
【化63】
【0307】
窒素で置換した反応釜に、5% Pd/C(1.31kg、50%含水品)、実施例11で得られた化合物19を含む溶液(19.8kg)、2-MeTHF(6.0kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、反応釜の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。2時間撹拌後、内圧の変動がないことを確認した後、反応釜を水素で0.18MPaGまで加圧し、さらに1.5時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が100%(原料が未検出)であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜内を窒素で置換後、反応混合物を加圧濾過した。反応釜内と濾過機を2-MeTHF(11.3kgx3)で洗浄後、濾液と洗浄液を保管溶液として保管容器に回収した。窒素置換した反応釜に、前記保管溶液、および2-MeTHF(0.4kg)を加え、液量が4L程度になるまで外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。残渣、および反応釜を2-MeTHF(6.8kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物20を含む溶液(10.4kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:1.560分(HPLC分析条件:method 3)
【0308】
実施例13
化合物22:(tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-[ベンジルオキシカルボニル(メチル)アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアート)の合成
【化64】
【0309】
実施例12で得られた化合物20を含む溶液(10.3kg)を加え、液量が10L程度になるまで外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。化合物21(61 w/w% MeTHF溶液、4.97kg)、2-MeTHF(1.0L)、アセトニトリル(2.8kg)を室温にて加えた。外温を10℃に冷却し、DIPEA(4.93kg)、HATU (4.95kg)を順次加えた後、外温を25℃に昇温した。反応混合物を25 ℃にて4時間撹拌した後、反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.3%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜にCPME(4.0kg)、5%炭酸カリウム水溶液(3.5kg)、N-メチルイミダゾール(712g)を順次加え、30分間撹拌した。ついで、2.5%アンモニア水溶液(14.1kg)と2-MeTHF(3.9kg)を加え10分撹拌後、水層を排出した。得られた有機層を2.5%アンモニア水溶液(17.6kg)、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(17.6kgx3)、5%炭酸カリウム水溶液(17.6kg)で洗浄した。得られた有機層を液量が9L程度になるまで、外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。2-MeTHF(13.6kg)で洗浄した洗浄液を合わせて加え、化合物22を含む溶液(21.6kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.356分(HPLC分析条件:method 3)
【0310】
化合物20と化合物21の縮合反応(実施例13の反応条件検討)
化合物20と化合物21の縮合反応における溶媒を検討した。縮合反応はHPLC分析により追跡した。収率はHPLC分析により求めたエリア%(Area%)、およびqNMRの測定値より算出した。
【0311】
実施例13-1実施例13で用いた2-MeTHF及びアセトニトリルに代えて、アニソールを用いた場合)
化合物22 (tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-[ベンジルオキシカルボニル(メチル)アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアート)の合成
【化65】
【0312】
反応容器に実施例12で得られた化合物20を含む溶液(590.9mg)に、化合物21(61w/w% 2-MeTHF溶液、252.7mg)を順次加えて減圧濃縮し、化合物20、および21を含む残渣を得た。反応容器にアニソール(800μL)を室温にて加え、残渣を溶解させた。外温を10℃に冷却し、反応混合物にDIPEA(334μL)、HATU (248.2mg)を順次加えた後、外温を25℃に昇温した。反応混合物を25 ℃にて5時間撹拌した後、反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が97.0%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。外温を10℃に設定し、反応容器にN-メチルイミダゾール(34.6μL)、5%炭酸カリウム水溶液(200μL)を順次加え、外温を25℃に設定し30分間撹拌した。ついで、2.5%アンモニア水溶液(800μL)とアニソール(260μL)を加え10分撹拌後、水層を排出した。得られた有機層を2.5%アンモニア水溶液(1000μL)、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(1000μL×3)で洗浄した。得られた有機層に溶媒(アニソール(260μL))を加え、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(1000μL×1)、5%炭酸カリウム水溶液(1000μL×2)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、化合物22(175.7 mg、収率:82%)を含む残渣を得た。
LCMS(ESI):保持時間:4.269分、m/z=526 [M+Na](LCMS分析条件 method 3)
収率:82%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐d6に溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0313】
実施例13-1の化合物22の合成法(溶媒の検討)で用いたアニソールに代えて、溶媒として炭酸ジメチル、酢酸エチル、または2-MeTHFを用いた場合の結果を下表に示した。
【0314】
【表6】
【0315】
これらの結果より、アセトニトリルに代えて、アニソール、炭酸ジメチル、酢酸エチル、および2-MeTHFが、化合物22の製造において適した溶媒であることが示された。特に、アニソール、または酢酸エチルを溶媒として用いると目的物の収率の観点から適していることが示された。
【0316】
実施例14
化合物23:(tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-シクロペンチル-2-(メチルアミノ)アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアート)の合成
【化66】
【0317】
窒素で置換した反応釜に、5% Pd/C(1.26kg、50%含水品)、実施例13で得られた化合物22を含む溶液(21.0kg)、2-MeTHF(5.1kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、反応容器の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。40分間撹拌後、内圧の変動がないことを確認した後、反応釜を水素で0.18MPaGまで加圧し、さらに1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転化率が100%(原料が未検出)であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜内を窒素で置換後、反応混合物を加圧濾過した。反応釜内と濾過機を2-MeTHF(10.9kgx4、5.4kg)で洗浄し、濾液と洗浄液を保管溶液として回収した。得られた濾液および洗浄液を、反応混合物の液量が6L程度になるまで外温60℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。残渣、および反応釜を2-MeTHF(6.8kg)を用いて洗浄した洗浄液を合わせて化合物23を含む溶液(11.8kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.297分(HPLC分析条件:method 3)
【0318】
実施例15
化合物25:(tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-シクロペンチル-2-[メチル-[1-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]シクロペンタンカルボニル]アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアート)の合成
【化67】
【0319】
窒素で置換した反応釜に、化合物24(3.76kg)、2-MeTHF(13.0kg)を室温にて加えた。反応釜の外温を10℃に設定し、DIPEA(5.39kg)、実施例14で得られた化合物23を含む溶液(11.7kg)、T3P(50% 2-MeTHF溶液、14.1kg)、およびDMAP(2.04kg)を順次加えた。反応釜の外温を50℃に設定し、4時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析により反応転化率が99.0%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜の外温を10℃に設定し、5%炭酸ナトリウム水溶液(25.3kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、30分間撹拌後、撹拌を停止し、反応釜から水層を排出した。ついで、反応釜の外温を15℃に設定し、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(25.3kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、10分間撹拌後、撹拌を停止し、反応釜から水層を排出した。得られた有機層を、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(25.3kg)、5%炭酸ナトリウム水溶液(25.3kg)で洗浄した。2-MeTHF(26.0kg)を加え、液量が10L程度になるまで外温60℃にて減圧濃縮した。残渣、反応釜を2-MeTHF(4.5kg)とMeOH(2.1kg)の混合溶媒で洗浄した洗浄液、および反応釜を2-MeTHF(6.8kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物25を含む溶液(22.6kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:6.166分(HPLC分析条件:method 3)
【0320】
実施例16
化合物26:(tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-[(1-アミノシクロペンタンカルボニル)-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアート)の合成
【化68】
【0321】
窒素で置換した反応釜に、実施例15で得られた化合物25を含む溶液(22.4kg)、2-MeTHF(0.76kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を-20℃に設定し、撹拌しながらLiBH4(10w/w% THF溶液、3.67kg)を加えた後、2時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法4)し、HPLC分析により反応転換率が100%(原料が未検出)であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜に2,2,2-トリフルオロエタノール(16.5kg)を外温-20~-30℃にて3時間かけて滴下した。ついで、反応釜の外温を1時間かけて0℃に昇温した後、外温0℃にてさらに1時間攪拌した。反応釜に20%塩化アンモニウム水溶液(14.3kg)を加え、13分間攪拌後、撹拌を停止し、反応釜から水層を排出した。反応釜の外温を10℃に設定し、トリフルオロ酢酸(1.88kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、1時間撹拌した。得られた反応混合物、および反応釜を2-MeTHF(6.7kg)で洗浄した洗浄液を合わせて保管容器に回収した。窒素で置換した別の反応釜に2 M 水酸化ナトリウム水溶液(61.9kg)を室温にて加え、反応釜の外温を10℃に設定した。これに対し、上記の保管容器に回収した反応混合物を70分間かけて滴下した後、2-MeTHF(0.6kg)を加え、反応釜の外温を25℃に設定した。10分間攪拌後、撹拌を停止し、反応釜から水層を排出した。得られた有機層を2M 水酸化ナトリウム水溶液(47.6kgx2)、10%リン酸水素二カリウム水溶液(23.8kg)で洗浄した。得られた有機層を、液量が40L程度になるまで外温40℃にて減圧濃縮した。得られた濃縮液に2-MeTHF(30.5kg)を加えた後、有機層を2.5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(34kg)、常水(34kg)で洗浄し、目的物を水層に抽出した。合わせた水層を2-MeTHF(48.9kg)とヘプタン(3.9kg)の混液で2回洗浄した後、2-MeTHF (53.8kg)を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液(15.2kg)を攪拌しながら加えた。水層を排出した後、有機層を5%リン酸水素二カリウム水溶液(31.5kg)で洗浄した。得られた有機層に2-MeTHF(25.9kg)を加えた後、反応混合物の液量が8L程度になるまで外温40℃にて減圧濃縮した。得られた残渣に2-MeTHF(9.8kg)を加え、反応混合物の液量が8L程度になるまで外温40℃にて減圧濃縮した。残渣、および反応釜をアセトニトリル(6.2kgx2)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物26を含む溶液(19.3kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.725分(HPLC分析条件:method 3)
【0322】
実施例15-1
化合物25a: tert-ブチル N 2 -{(2S)-2-[(1-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}シクロペンタン-1-カルボニル)(メチル)アミノ]-2-シクロペンチルアセチル}-N,N,N 2 -トリメチル-L-α-アスパラギナートの合成
【化69】
【0323】
反応容器に、化合物23 HCl塩(1.00g)、アセトニトリル(10.01mL)を室温にて順次加えた。次いで、DIPEA(2.72mL)を室温にて撹拌しながら加えた後、化合物24a(1.74g)、HATU(2.75g)を加え、50℃で6時間攪拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析に付して反応転換率が99.7%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応容器に、N-メチルイミダゾール(0.78mL)、市水(3.99mL)を加えた後に1時間攪拌した。次いで、25℃まで冷却した後に14時間攪拌した。反応混合物を濾過し、残渣をアセトニトリル/水混液(8:3 (v/v),5.33mL)で洗浄した。濾別した固体を減圧乾燥し、化合物25a(1.27g)を得た。
取得した固体をアセトニトリルに希釈し、HPLC分析に付した(method 6化合物25aの保持時間;6.712分)
LCMS(ESI):保持時間:6.696分、m/z=637.29 [M+Na](LCMS分析条件 method 6)
収率:84%
【0324】
実施例16-1
化合物26: tert-ブチル N 2 -{(2S)-2-[(1-アミノシクロペンタン-1-カルボニル)(メチル)アミノ]-2-シクロペンチルアセチル}-N,N,N 2 -トリメチル-L-α-アスパラギナートの合成
【化70】
【0325】
反応容器に、5%Pd/C(0.85g、50%含水品)とTHF(14.04mL)を室温にて加えた後に外温を25℃に設定した。次いで、反応容器にTHF(42.12mL)に溶解させた化合物25a(3.51g)を室温にて加えた後に外温を25℃に設定し、水素ガスによる脱気置換を行い2時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析に付して反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応混合物を濾過し、残渣をTHF(14.04mL×2)で洗浄した。得られた溶液を減圧濃縮し、化合物26を含む残渣(7.37g)を得た。得られた残渣と得られた残渣と1,3,5-トリメトキシベンゼンをDMSO‐d6に溶解させ、qNMR分析に付した(収率:93%)。
LCMS(ESI):保持時間:2.421分、m/z=503.19 [M+Na](LCMS分析条件 method 3)
【0326】
実施例17
化合物28:(ベンジル (2S)-2-[[1-[[(1S)-2-[[(1S)-3-tert-ブトキシ-1-(ジメチルカルバモイル)-3-オキソ-プロピル]-メチル-アミノ]-1-シクロペンチル-2-オキソ-エチル]-メチル-カルバモイル]シクロペンチル]カルバモイル]ピロリジン-1-カルボキシラート)の合成
【化71】
【0327】
窒素で置換した反応釜に、化合物27(2.65kg)、アセトニトリル(2.9kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を10℃に設定し、実施例16で得られた化合物26を含む溶液(19.1kg)、DIPEA(3.17kg)、および2-ブロモ-1-エチルピリジニウム テトラフルオロホウ酸塩(3.36kg)を順次加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、2時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.3%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜の外温を10℃に設定し、CPME(34.1kg)、5%炭酸ナトリウム水溶液(23.6kg)、N-メチルイミダゾール(0.67kg)を順次加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、40分間撹拌した後、反応釜から水層を排出した。反応釜の外温を10℃に設定し、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(23.6kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、10分間撹拌した後、反応釜から水層を排出した。得られた有機層を5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(23.6kg×2)、5%炭酸ナトリウム水溶液(23.6kgx2)で洗浄後、2-MeTHF(26.0kg)を加えた。得られた有機層を、液量が12L程度になるまで外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。得られた残渣に対して、THF(19.7kg)を加えた後、液量が12L程度になるまで外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。反応釜の外温を20℃に設定した後、反応釜にCPME(9.0kg)を加えた。液量が12L程度になるまで外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。反応釜にCPME(10.0kg)を加え、液量が12L程度になるまで外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。撹拌停止後、反応釜にTHF(14.1kg)を加えた。得られた残渣、および反応釜をTHF(5.2kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物28を含む溶液(28.8kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.189分(HPLC分析条件:method 3)
【0328】
実施例17-1実施例17の合成法で用いたアセトニトリルに代えて、2-MeTHFを用いた場合)
化合物28:(ベンジル (2S)-2-[[1-[[(1S)-2-[[(1S)-3-tert-ブトキシ-1-(ジメチルカルバモイル)-3-オキソ-プロピル]-メチル-アミノ]-1-シクロペンチル-2-オキソ-エチル]-メチル-カルバモイル]シクロペンチル]カルバモイル]ピロリジン-1-カルボキシラート)の合成
【化72】
【0329】
反応容器に化合物26を含む保管溶液(1.29g)を反応容器に加え、外温40度で減圧濃縮乾固した。次いで、反応容器に2-MeTHF(0.91mL)、化合物27(126.90mg)を加えた。DIPEA(0.37mL)を室温にて撹拌しながら加えた後、HATU(338.30mg)を加え、室温で3時間撹拌した。反応容器に2-MeTHF(1.84mL)、5%炭酸ナトリウム水溶液(1.09mL)を加え、さらにN-メチルイミダゾール(30.30μL)を加えた後に30分撹拌した。水層を排出したのち、得られた有機層を2.5%アンモニア水溶液(1.09mL)、5%硫酸水素ナトリウム一水素和物水溶液(1.09mL×2)、5%炭酸ナトリウム水溶液(1.09mL×2)、2.5%アンモニア水溶液(1.09mL×3)、5%硫酸水素ナトリウム一水素和物水溶液(1.09mL×2)、5%炭酸ナトリウム水溶液(1.09mL×2)で洗浄した。得られた有機層を外温40℃にて減圧濃縮乾固し、化合物28を含む残渣(0.19g、収率50.9%)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:4.178分、m/z=735 [M+Na](LCMS分析条件 method 3)
収率:50.9%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐d6に溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0330】
実施例18
化合物29:(tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-シクロペンチル-2-[メチル-[1-[[(2S)-ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアート)の合成
【化73】
【0331】
窒素で置換した反応釜に、5%Pd/C(1.16kg、50%含水品)、実施例17で得られた化合物28を含む溶液(27.4kg)、THF(0.4kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、反応釜の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。2時間30分後、内圧の変動がないことを確認した後、窒素置換後に水素で0.18MPaGまで加圧し、さらに1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)しHPLC分析により反応転換率が99.6%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜内を窒素で置換後、反応混合物を加圧濾過した。反応釜と濾過機を2-MeTHF(10.0kgx3)で洗浄した。得られた濾液および洗浄液を、液量が9L程度になるまで外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。得られた残渣に2-MeTHF(6.9kg)を加え、再度、反応混合物の液量が9L程度になるまで外温40℃にて減圧濃縮した。再度、得られた残渣に2-MeTHF(4.3kg)を加え、反応混合物の液量が9L程度になるまで外温40℃にて減圧濃縮し、化合物29を含む反応混合物の濃縮液を得た。
HPLC分析による保持時間:2.846分(HPLC分析条件:method 3)
【0332】
実施例18-1実施例18の合成法で用いたTHF/2-MeTHFに代えて、2-MeTHFを用いた場合)
化合物29:(tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-シクロペンチル-2-[メチル-[1-[[(2S)-ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアート)の合成
【化74】
【0333】
実施例17で得られた化合物28(121.49mg)を含む溶液(1014.92mg)を反応容器に加え、外温60℃にて減圧濃縮乾固した。次いで、窒素で置換した反応容器に、2-MeTHF(2081mg)、5%Pd/C(25.89mg、50%含水品)を室温にて順次加えた。反応容器の外温を25℃に設定し、反応容器の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。7時間後、反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析により反応転換率が99.9%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応容器内を窒素で置換後、反応混合物を減圧濾過した。反応容器と桐山漏斗およびフィルターを2-MeTHF(1041mgx3)で洗浄した。得られた溶液をHPLCで分析した。標品を用いたHPLC分析の結果、得られた化合物29は91.00mg(92.3%収率)であった。
化合物29のLCMS(ESI):保持時間:2.826分、m/z=578 [M+H](LCMS分析条件:method 3)
【0334】
実施例19
化合物31:(tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアート)の合成
【化75】
【0335】
実施例18で得られた化合物29を含む反応混合物の濃縮液が入った、窒素で置換した反応釜に、2-MeTHF(5.0kg)、化合物30(3.08kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を10℃に設定し、DIPEA(2.44kg)、T3P(50wt% 2-MeTHF溶液(6.56kg))、2-MeTHF(0.4kg)を攪拌しながら順次加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.3%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜の外温を15℃に設定し、撹拌しながら5%炭酸カリウム水溶液(15.9kg)、N-メチルイミダゾール(352.4g)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、3時間30分間撹拌後、反応釜から水層を排出した。反応釜の外温を20℃に設定し、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(14.9kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、15分間撹拌後、反応釜から水層を排出した。得られた有機層を10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(14.9kg)で洗浄した後、得られた有機層にアセトニトリル(4.5kg)、MTBE(4.4kg)、ヘプタン(6.2kg)、および2.5%炭酸カリウム水溶液(14.1kg)を外温25℃にて順次加えた。10分間撹拌した後、撹拌を停止後、反応釜から水層を排出した。得られた有機層に2.5%炭酸カリウム水溶液(21.3kg)、アセトニトリル(6.6kg)、および2-MeTHF(2.1kg)を加え10分間撹拌し、撹拌を停止後、反応釜から水層を排出した。得られた有機層に2.5%炭酸カリウム水溶液(21.3kg)、およびアセトニトリル(6.6kg)を加え10分間撹拌し、撹拌を停止後、反応釜から水層を排出した。得られた有機層に2-MeTHF(26.0kg)を追加し、反応混合物の液量が9L程度になるまで外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。得られた残渣に酢酸イソプロピル(15.1kg)を加え、反応混合物の液量が9L程度になるまで減圧濃縮する操作を2度繰り返した。残渣、および反応釜を酢酸イソプロピル(7.0kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物31を含む溶液(16.5kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.978分(HPLC分析条件:method 3)
【0336】
実施例20
化合物32:((3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタン酸)の合成
【化76】
【0337】
窒素で置換した反応釜に、実施例19で得られた化合物31を含む溶液(16.3kg)、酢酸イソプロピル(5.7kg)、ヘキサメチルジシラザン(1.69kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を10℃に設定し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(1.87kg)を攪拌しながら加えた。外温を20℃から30℃に保ちながら、反応混合物を1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜の外温を0℃に設定し、反応釜に2-MeTHF(17.6kg)、5%リン酸水素二カリウム水溶液(41.1kg)を順次加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、反応混合物を10分撹拌後、撹拌を停止し、反応釜から水層を排出した。ついで、有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(41.1kg)で洗浄した。得られた有機層に、撹拌しながらDIPEA(2.39kg)と2-MeTHF(26.0kg)を加えた後、液量が8L程度になるまで外温30~33℃にて減圧濃縮した。残渣、および反応釜を2-MeTHF(6.8kgx2)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物32を含む溶液(14.7kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.220分(HPLC分析条件:method 3)
【0338】
実施例20-1実施例20の合成法で用いた酢酸イソプロピルに代えて、2-MeTHFを用いた場合)
化合物32:((3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタン酸)の合成
【化77】
【0339】
反応容器に、実施例19で得られた化合物31(93.45mg)を含む溶液(401.94mg)を加え、外温60℃にて減圧濃縮乾固した。2-MeTHF(402mg)、ヘキサメチルジシラザン(38.6mg)を室温にて順次加えた。反応容器の外温を0℃に設定し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(43.4mg)を攪拌しながら加えた。反応容器の外温を25℃に設定し、反応混合物を1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析により反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応容器の外温を0℃に設定し、反応容器に2-MeTHF(402mg)、5%リン酸水素二カリウム水溶液(0.93mL)を順次加えた。反応容器の外温を室温に設定し、反応混合物を10分撹拌後、撹拌を停止し、反応容器から水層を排出した。ついで、有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(0.93mL)で洗浄した。得られた有機層に、撹拌しながらDIPEA(54.4mg)を加えた。得られた溶液をHPLCで分析した。標品を用いたHPLC分析の結果、得られた化合物32は81.01mg(92.0%収率)であった。
化合物32のLCMS(ESI):保持時間:4.132分、m/z=921 [M+H]+(LCMS分析条件:method 3)
【0340】
実施例21
化合物33:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化78】
【0341】
窒素で置換した反応釜に、実施例10で得られた化合物17を含む溶液(11.9kg)、実施例20で得られた化合物32を含む溶液(12.84kg)、および2-MeTHF(3.1kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を10℃に設定し、反応混合物にDMF(6.4kg)、DIPEA(1.6kg)、およびHATU(2.78kg)を加えた。外温を20℃から30℃に保ちながら、3時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.6%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。外温10℃にて2.5%アンモニア水溶液(19.9kg)を加えた後、反応釜の外温を25℃に設定し、10分間撹拌した。撹拌を停止し、反応釜から水層を排出後、得られた有機層を外温20℃にて10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(19.9kg)を加えた後、反応釜の外温を25℃に設定し、10分間撹拌した。撹拌を停止し、反応釜から水層を排出後、得られた有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液(19.9kg)で洗浄した。得られた有機層を、液量が10L程度になるまで、外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。反応混合物に、2-MeTHF(17.0kg)を加え、液量が10L程度になるまで外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮する操作を2回行った。残渣、および反応釜を2-MeTHF(6.8kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物33を含む溶液(23.9kg)として保管容器に回収した。
HPLC分析による保持時間:10.272分(HPLC分析条件:method 4)
【0342】
化合物17と化合物32の縮合反応(実施例21の反応条件検討)
化合物17と化合物32の縮合反応における溶媒を検討した。縮合反応はHPLC分析により追跡した。収率はHPLC分析により求めたエリア%(Area%)、およびqNMRの測定値より算出した。
【0343】
実施例21-1(の合成法で用いた2-MeTHF及びDMFに代えて、2-MeTHF及びアセトニトリルを用いた場合)
化合物33:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
【化79】
【0344】
フラスコに、実施例10で得られた化合物17を含む溶液(1017.1mg)、実施例20で得られた化合物32を含む溶液(1133.0mg)、及び2-MeTHF(313.7μL)を室温にて順次加えた。外温を10℃に冷却し、反応混合物にアセトニトリル(575μL)、DIPEA(266μL)、およびHATU(238.0mg)を加えた後、外温を25℃に昇温した。反応混合物を25℃にて3時間撹拌した後、反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.8%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。外温を10℃に設定し、2.5%アンモニア水溶液(1700μL)を加えた後、外温を25℃に設定し10分間撹拌し、水層を排出した。得られた有機層を10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(1700μL)、5%炭酸ナトリウム水溶液(1700μL)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、化合物33を含む残渣(622.6mg)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:10.35分、m/z=1669 [M+Na](LCMS分析条件 method 4)
収率:83%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐d6に溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0345】
実施例21-2実施例21の合成法で用いた2-MeTHF及びDMFに代えて、2-MeTHFを用いた場合)
化合物33:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
フラスコに、実施例10で得られた化合物17を含む溶液(4062.5mg)、実施例20で得られた化合物32を含む溶液(4534.0mg)、および2-MeTHF(1254μL)を室温にて順次加えて、化合物17と化合物31を含む溶液を得た。反応容器に化合物17と化合物31を含む溶液(969.5mg)を加え、外温40℃にて減圧濃縮し、化合物17及び31を含む残渣を得た。反応容器に2-MeTHF(1140μL)を室温にて加え、残渣を溶解させた。外温を10℃に冷却し、反応混合物にDIPEA(106μL)、およびHATU(94.9mg)を加えた後、外温を25℃に昇温した。反応混合物を25℃にて3時間撹拌した後、反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.8%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。外温を10℃に設定し、2.5%アンモニア水溶液(680μL)を加えた後、外温を25℃に設定し10分間撹拌し、水層を排出した。得られた有機層を10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(680μL)、5%炭酸ナトリウム水溶液(680μL)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、化合物33を含む残渣(262.3mg)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:10.49分、m/z=1669 [M+Na](LCMS分析条件 method 4)
収率:85%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐d6に溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0346】
実施例21-3実施例21の合成法で用いた2-MeTHF及びDMFに代えて、アニソールを用いた場合)
化合物33:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
フラスコに、実施例10で得られた化合物17を含む溶液(4062.5mg)、実施例20で得られた化合物32を含む溶液(4534.0mg)、及び2-MeTHF(1254μL)を室温にて順次加えて、化合物17と化合物32を含む溶液を得た。反応容器に化合物17と化合物32を含む溶液(969.8mg)を加え、外温40℃にて減圧濃縮し、化合物17及び32を含む残渣を得た。反応容器にアニソール(1140μL)を室温にて加え、残渣を溶解させた。外温を10℃に冷却し、反応混合物にDIPEA(106μL)、およびHATU(97.7mg)を加えた後、外温を25℃に昇温した。反応混合物を25℃にて3時間撹拌した後、反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.9%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。外温を10℃に設定し、2.5%アンモニア水溶液(680μL)を加えた後、外温を25℃に設定し10分間撹拌した。反応容器にアニソール(570μL)と2.5%アンモニア水溶液(340μL)を加え、10分間攪拌し、水層を排出した。得られた有機層を10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(920μL)、5%炭酸ナトリウム水溶液(920μL)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、化合物33を含む残渣(207.3mg)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:10.38分、m/z=1669 [M+Na](LCMS分析条件 method 4 )
収率:68%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐d6に溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0347】
実施例21-4実施例21の合成法で用いた2-MeTHF及びDMFに代えて、炭酸ジメチルを用いた場合)
化合物33:(tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタート)の合成
フラスコに、実施例10で得られた化合物17を含む溶液(4062.5mg)、実施例20で得られた化合物32を含む溶液(4534.0mg)、及び2-MeTHF(1254μL)を室温にて順次加えて、化合物17と化合物32を含む溶液を得た。反応容器に化合物17と化合物32を含む溶液(968.4mg)を加え、外温40℃にて減圧濃縮し、化合物17及び32を含む残渣を得た。反応容器に炭酸ジメチル(1140μL)を室温にて加え、残渣を溶解させた。外温を10℃に冷却し、反応混合物にDIPEA(106μL)、およびHATU(95.2mg)を加えた後、外温を25℃に昇温した。反応混合物を25℃にて3時間撹拌した後、反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.9%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。外温を10℃に設定し、2.5%アンモニア水溶液(680μL)を加えた後、外温を25℃に設定し10分間撹拌した。反応容器に炭酸ジメチル(1140μL)と2.5%アンモニア水溶液(680μL)を加え、10分間攪拌し、水層を排出した。得られた有機層を10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(1360μL)、5%炭酸ナトリウム水溶液(1360μL)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、化合物33を含む残渣(264.6mg)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:10.35分、m/z=1669 [M+Na](LCMS分析条件method 4 )
収率:84%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐d6に溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0348】
実施例21-5および実施例21-6
2-MeTHF/アセトニトリルに代えて、酢酸エチル(実施例21-5)、または酢酸イソプロピル(実施例21-6)を用いた点を除き、実施例21-1と同様の条件で化合物33を合成した。実施例21-5では76%の収率で、実施例21-6では75%の収率で化合物33を得た。
【0349】
実施例21-1~21-6の結果を下表に示した。
【表7】
【0350】
これらの結果より、実施例21に使用している2-MeTHFとDMFの混合溶媒に代えて、2-MeTHFとアセトニトリルの混合溶媒や、2-MeTHF、アニソール、炭酸ジメチル、酢酸エチル、または酢酸イソプロピルを用いた場合も、化合物33を高収率で製造可能であることが見出された。
【0351】
実施例22
化合物34:(2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S-1)-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]酢酸)の合成
【化80】
【0352】
窒素で置換した反応釜に、実施例21で得られた化合物33を含む溶液(23.7kg)、2-MeTHF(32.0kg)、ヘキサメチルジシラザン(3.46kg)を室温にて順次加えた。反応釜の外温を0℃に設定し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(3.99kg)を攪拌しながら加えた。外温を20℃から30℃に保ちながら、3時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.6%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜の外温を0℃に設定し、反応混合物に5%リン酸水素二カリウム水溶液(23.8kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、10分間撹拌した後に、反応釜から水層を排出した。得られた有機層を、クエン酸一水和物(0.57kg)およびリン酸水素二カリウム(0.88kg)を含む水溶液(23.3kgx4)で洗浄後、さらに5%炭酸ナトリウム水溶液(23.8kg)で洗浄した。得られた有機層に2-MeTHF(26.0kg)を加え、液量が10L程度になるまで、外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。得られた残渣にTHF(13.6kg)を追加し、液量が10L程度になるまで、外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。次いで、2-MeTHF(8.5kg)を追加し、液量が10L程度になるまで、外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した。得られた残渣にTHF(6.8kg)を加えた溶液、および反応釜をTHF(6.6kg)、2-MeTHF(7.1kg)で洗浄した洗浄液を合わせて化合物34を含む溶液(29.0kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:9.215分(HPLC分析条件:method 4)
【0353】
実施例23
化合物35:(2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-アミノ-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]酢酸)の合成
【化81】
【0354】
実施例23は、実施例22で得られた化合物34を含む溶液(14.5kg)を用い、下記操作を二回に分けて実施した。
窒素で置換した反応釜に、5% Pd/C(756.6g、50%含水品)を加えた後に、THF(7.5kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定した。実施例22で得られた化合物34を含む溶液(14.5kg)、THF(0.7kg)を順次加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、撹拌しながら反応釜の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。2.5時間後、内圧の変動がないことを確認した後、反応釜を水素で0.18MPaGまで加圧し、さらに1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.6%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜内を窒素で置換後、反応混合物を加圧濾過した。反応釜内と濾過機を2-MeTHF(4.9kgx2)で洗浄後、濾液と洗浄液を合わせて、化合物34を含む保管溶液(第一バッチ)を得た。
【0355】
窒素で置換した反応釜に、5% Pd/C(756.6g、50%含水品)を加えた後に、THF(7.5kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定した。実施例22で得られた化合物34を含む溶液(14.5kg)、THF(0.7kg)を順次加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、撹拌しながら反応釜の内圧が0.18MPaGになるまで水素で加圧した。1時間後、内圧の変動がないことを確認した後、反応釜を水素で0.18MPaGまで加圧し、さらに1時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.6%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜内を窒素で置換後、反応混合物を加圧濾過した。反応釜内と濾過機を2-MeTHF(4.9kgx3)で洗浄後、濾液、洗浄液、および上記で得た第一バッチの保管溶液を合わせて、化合物34を含む保管溶液(60.5kg)を得た。
【0356】
窒素で置換した反応釜に、上記の化合物34を含む保管溶液(60.5kg)、2-MeTHF(0.4kg)を室温にて順次加えた。液量が7.3Lになるまで、外温40℃にて攪拌しながら減圧濃縮した後、外温を25℃に設定した。得られた残渣に、アセトニトリル(20.3kg)、2-MeTHF(6.3kg)、およびヘプタン(35.4kg)を加え、30分間撹拌した。撹拌を停止後、下層を保管容器に回収した。得られた下層の有機層に、アセトニトリル(52.7kg)、およびDIPEA(1.6kg)を加え、化合物35を含む溶液(83.6kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:6.480分(HPLC分析条件:method 4)
【0357】
実施例23-1実施例23の合成法で用いたTHFに代えて、2-MeTHFを用いた場合)
化合物35:(2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-アミノ-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]酢酸)の合成
【化82】
【0358】
反応容器に実施例22で得られた化合物34を含む溶液(2447.7mg)を加え減圧濃縮し、化合物34を含む残渣を得た。反応容器に、2-MeTHF(2040μL)、5% Pd/C(96.8mg、50%含水品)を加えた後に、水素ガスによる脱気置換を行い4時間撹拌した。反応容器に、2-MeTHF(460μL)、5% Pd/C(47.3mg、50%含水品)を加えた後に、水素ガスによる脱気置換を行い4時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析に付して反応転換率が99.7%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応混合物を濾過し、残渣を2-MeTHF(690μL×2)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、化合物35を含む残渣(670.1mg)を得た。取得した残渣をアセトニトリルで希釈し、LCMS分析に付した(LCMS分析条件:method 4:化合物35の保持時間;保持時間:6.94分、m/z=1457 [M+H]+)。得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO-d6に溶解させ、qNMR分析に付した(収率:95%)。
【0359】
実施例24
化合物1:((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)の合成
【化83】
【0360】
窒素で置換した反応釜に、アセトニトリル(21.4kg)、HATU(3.86kg)を加え、さらにアセトニトリル(55.0kg)を加えた。反応釜の外温を25℃に設定し、実施例23で得られた化合物35を含む溶液(82.8kg)を、0.3~0.4kg/分で反応混合物に滴下した。アセトニトリル(6.1kg)で洗いこみを実施し、リンス液を加え、30分間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製(サンプル調製法1)し、HPLC分析により反応転換率が99.9%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応釜の外温を30℃に設定し、撹拌しながら液量が27L程度になるまで減圧濃縮した。反応釜の外温を25℃に設定し、得られた残渣に酢酸エチル(104.7kg)を加えた。外温25℃にて撹拌しながら2.5%アンモニア水溶液(77.8kg)を加え、85分間撹拌した。反応釜から水層を排出後、得られた有機層に外温20℃にて撹拌しながら5%硫酸水素カリウム一水和物水溶液(89.8kg)を加えた。外温25℃にて12分攪拌した。反応釜から水層を排出後、外温25℃にて得られた有機層を5%リン酸水素二ナトリウム水溶液(89.8kg)、5%塩化ナトリウム水溶液(89.8kg)、および0.5%塩化ナトリウム水溶液(89.8kgx2)で洗浄した。得られた有機層を、撹拌しながら液量が19L程度になるまで、反応釜の外温を40℃に設定し減圧濃縮した。得られた残渣を加圧濾過し、反応釜と濾過機を酢酸エチル(17.4kg)で洗浄後、濾液と洗浄液を酢酸エチル(17.4kg)で洗いこみながら化合物1を含む溶液(63.1kg)を得た。上記化合物1を含む保管溶液(63.1kg)に、アセトン(15.3kg)を加え、液量が8~12L程度になるまで減圧濃縮する操作を7回繰り返した。得られた残渣を加圧濾過し、保管溶液として回収した。反応釜と濾過機をアセトン(15.3kgx2)で洗浄後、加圧濾過し、洗浄液を合わせて化合物1を含む溶液(51.4kg)として保管容器に回収した。
HPLC分析による保持時間:18.008分(HPLC分析条件:method 5)
【0361】
化合物35の環化反応(実施例24の反応条件検討)
化合物35を出発原料として用い、化合物1への環化反応における、縮合剤、および溶媒を検討した。環化反応はHPLC分析により追跡した。収率は安息香酸メチルを内部標準物質として用い、HPLC分析によるArea%比から算出した。
【化84】
【0362】
実施例24-1
化合物1:((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)の合成(縮合剤としてHATUを使用、溶媒としてアセトニトリルを使用)
反応容器に化合物35(10.44mg(7.17 μmol))と内部標準物質(安息香酸メチル、3.60mg(26.44μmol))を秤量し、溶媒(アセトニトリル、2mL(200v/w))で溶解した。室温で撹拌しながら、DIPEA(5.74μL(32.9μmol))を加えた。反応容器の外温を25℃に設定し、縮合剤(HATU、10.39mg(27.3μmol))を加えて30分撹拌した。反応液(50μL)をMeCN/プロピルアミン(9:1)の混合液(100μL)で希釈し、HPLC分析用の溶液を調製した。安息香酸メチルを内部標準物質として用いたHPLC分析の結果、収率は76%であった(HPLC分析条件:method 5)。
化合物1のLCMS(ESI):保持時間:18.08分、m/z=1439 [M+H](LCMS分析条件 method 5)
化合物35のプロピルアミド体のLCMS(ESI):保持時間:13.39分、m/z=1498[M+H]+(LCMS分析条件 method 5)
環状ダイマー(c-Dimer)のLCMS(ESI):保持時間:23.18分、m/z=2898[M+Na](LCMS分析条件 method 5)
環状トリマー(c-Trimer)のLCMS(ESI):保持時間:25.74分、m/z=2157 [M+2H]2+(LCMS分析条件 method 5)
【0363】
種々の縮合剤、および溶媒を用いて、化合物1の合成をおこなった結果を表7に示した。実験操作は、縮合剤としてHATUを使用、溶媒としてアセトニトリルを使用したとき(実施例24-1)に準じた。表中のSMは、化合物35と化合物35のプロピルアミド体の残存量の合算(HPLCのArea%比)である。また、表中のTMは、目的物(化合物1)であり、c-Dimerおよびc-Trimerは、それぞれ副生成物である環状ダイマーおよび環状トリマーであり、それらの生成量を、HPLC測定におけるArea%比として示した(HPLC分析条件:method 5)。安息香酸メチルを内部標準物質として用いたHPLC分析により、収率を算出した。
【0364】
【表8】
【0365】
これらの結果から、目的物への変換率が高く、副生成物の生成率が低いこと、並びに環境負荷を考慮して、溶媒としてアニソール、炭酸ジメチル、および2-MeTHFが、好ましい溶媒であることが示された。縮合剤はHATU、PyBOP、およびPyOximが好ましいことが示された。溶媒と縮合剤の組み合わせは、アニソールとPyBOP、炭酸ジメチルとPyBOP、および2-メチルテトラヒドロフランとPyBOPの組み合わせが好ましいことが示された。
【0366】
実施例24-15と実施例24-16の反応スケールを上げて、化合物1の合成(縮合剤としてPyBOPを使用、溶媒として2-MeTHFまたは炭酸ジメチルを使用)の実験と同様の操作を行った。
【0367】
実施例24-39
化合物1:((3S,9S,12S,17S,20S,23S,27S,30S,36S)-30-シクロペンチル-3-[2-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-10-エチル-23-イソブチル-N,N,7,17,18,24,28,31-オクタメチル-20-[(1S)-1-メチルプロピル]-2,5,8,11,16,19,22,25,29,32,35-ウンデカオキソ-9-(p-トリルメチル)スピロ[1,4,7,10,15,18,21,24,28,31,34-ウンデカザトリシクロ[34.3.0.0 12,15 ]ノナトリアコンタン-33,1'-シクロペンタン]-27-カルボキサミド)の合成
【化85】
【0368】
実施例23で得られた化合物35(100.16mg(0.069mmol))を含む溶液(2152.63mg)を加え、外温40℃にて減圧濃縮乾固した。濃縮残渣に2-MeTHF(2150mg)およびDIPEA(42.2mg)を加え、化合物35を含む溶液を得た。窒素で置換した反応容器にPyBOP(141.10mg)、2-MeTHF(2150mg)を加えた。反応容器の外温を25℃に設定し、化合物35を含む溶液を、4時間かけて反応混合物に滴下した。2-MeTHF(172mg)で洗いこみを実施し、リンス液を加え、2時間撹拌した。外温25℃にて撹拌しながら2.5%アンモニア水溶液(2mL)を加え、90分間撹拌した。反応混合物を減圧濾過した。反応容器と桐山漏斗を2-MeTHF(172mg)で洗浄した。水層を排出後、得られた有機層に外温25℃にて撹拌しながら5%硫酸水素カリウム一水和物水溶液(2mL)を加えた。外温25℃にて4分攪拌した。水層を排出後、外温25℃にて得られた有機層を5%リン酸水素二ナトリウム水溶液(2mL)、5%塩化ナトリウム水溶液(2mL)、および0.5%塩化ナトリウム水溶液(2mLx2)で洗浄した。得られた有機層をHPLCで分析した。標品を用いたHPLC分析の結果、得られた化合物1は78.38mg(79.2%収率)であった。
HPLC分析による保持時間:17.992分(HPLC分析条件:method 5)
【0369】
上記の縮合剤にPyBOPを用いた化合物1の合成法において、溶媒に用いた2-MeTHFに代えて、溶媒として炭酸ジメチルを用いた場合の結果を下表に示した。
【0370】
【表9】
【0371】
実施例25
化合物1の結晶化:((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)の水和物結晶(C型結晶)の合成
窒素で置換した化合物1を含む溶液が入った反応釜に、反応釜の外温を40℃に設定し、濾過した精製水(10.9kg)を加えた。アセトン(59.2g)/水(61.2g)の混合液に、実施例25-1と同様の操作により得られた、化合物1の粉砕結晶(10.2g)を加えて得た懸濁液を反応釜に加えた。懸濁液の入った容器をアセトン(59.2g)/水(61.2g)の混合液で洗いこみながら反応釜に加えた後、2時間1分間撹拌した。濾過した精製水(2.7kg)を加え、7時間10分間撹拌した。さらに、アセトン(59.2g)/水(61.2g)の混合液に、実施例25-1と同様の操作により、得られた化合物1の粉砕結晶 (10.2g)を加えて得た懸濁液を反応釜に加えた。懸濁液の入った容器をアセトン(59.2g)/水(61.2g)の混合液で洗いこみながら、反応釜に加え、12時間40分間撹拌した。濾過した精製水(2.7kg)を加え、2時間撹拌した。反応釜の外温を40℃から25℃へ1時間かけて降温後、反応混合物を18時間44分間攪拌した。反応混合物を、加圧濾過し、反応釜内と濾過機を、濾過したアセトン(7.5kg)と精製水(7.5kg)の混合液で洗浄しながら得られた結晶を洗浄した。得られた結晶を、濾過した精製水(17.0kgx2)で洗浄し、結晶を回収した濾過装置を減圧し、濾過装置の外温を70℃に設定して結晶を17時間乾燥した。さらに、外温を室温~30℃にて結晶を27時間乾燥した。乾燥末を濾過機から回収し、白色の粉末(2.6kg)を得た。
HPLC分析による保持時間:18.199分(HPLC分析条件:method 5)
XRPD装置を用いた粉末X線解析(測定方法4)の結果、2θ値は、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)が主要なピークとして観測された。図1に分析結果を示した。
【0372】
実施例25-1:実施例25で使用した種結晶の製造実施例
アモルファス状態の化合物1(122.3mg)をDMSO(0.612mL)に溶解させ、この溶解液(0.015mL)を-20℃で2日間凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物に水-アセトニトリル混合液(3:1,0.015mL)を加え、室温にて7日間振とう攪拌することで化合物1の水和物結晶(C型結晶)を得た。
【0373】
化合物1の結晶化の検討
実施例25-2
化合物1 ((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)の非溶媒和物結晶(F型)の合成
実施例24と同様の方法で得られた化合物1の水和物結晶(C型結晶)を7mm×7mm×0.25mmアルミニウムサンプル容器に密に詰め、以下の条件(粉末X線(XRPD)回折測定の測定方法2、および熱分析の測定方法2)でXRD-DSC同時測定を行うことにより、測定終了後サンプルとして化合物1の非溶媒和物結晶(F型)を得た。
XRPD装置を用いた粉末X線解析(測定方法2)の結果、2θ値は、5.370°、6.934°、8.940°、9.838°、10.771°、12.181°、13.525°、15.179°、16.202°、および17.554°(±0.2°)が主要なピークとして観測された。図2に分析結果を示した。
【0374】
実施例25-3
化合物1 ((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)のDMSO-水和物結晶(A型、およびB型)の合成
化合物1の水和物結晶(C型結晶、104.3mg)にDMSO(0.52mL)を加え、室温にて17時間100rpmで振とう攪拌することで標題化合物のDMSO-水和物結晶(33.8mg)を粉末状結晶として得た。ろ過直後の粉末状結晶をDMSO-水和物結晶A型、ろ過後、室温で8時間減圧乾燥した粉末状結晶をDMSO-水和物結晶B型とした。
【0375】
化合物1のDMSO-水和物結晶(DMSO-水和物結晶A型、およびDMSO-水和物結晶B型)を、それぞれ粉末X線回折測定(測定方法3)に供した。結果を以下に示した。
【0376】
DMSO-水和物結晶A型の2θ値は、8.006°、9.002°、9.943°、11.501°、13.067°、14.854°、16.320°、17.275°、19.261°、および20.324°(±0.2°)が主要なピークとして観測された。図3に分析結果を示した。
【0377】
DMSO-水和物結晶B型の2θ値:8.223°、9.594°、9.976°、11.879°、13.841°、14.572°、15.934°、16.350°、19.805°、および20.480°(±0.2°)が主要なピークとして観測された。図4に分析結果を示した。
【0378】
熱重量・示差熱分析
実施例25-3で得られた化合物1のDMSO-水和物結晶(DMSO-水和物結晶 B型)を、熱分析(測定方法3)に供した。結果を図5に示す。
【0379】
H-NMR測定
実施例25-3で得られた化合物1のDMSO-水和物結晶(DMSO-水和物結晶B型)を、H-NMR測定に供した。結果を図6に示す。
【0380】
熱重量・示差熱分析における重量変化、およびH-NMR測定における化合物1とDMSOピークの積分値面積比から、DMSO-水和物結晶B型は、化合物1に対して2.5当量のDMSOを含むDMSO-水和物結晶であることが確認された。
【0381】
実施例25-4
化合物1 ((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)の水和物結晶(C型結晶)の合成
アモルファス状態の化合物1(293.2mg)をエタノール(0.586mL)に室温溶解した。この溶液に水(0.147mL)と、実施例25-1と同様の方法で得た化合物1の水和物結晶(C型結晶)の種結晶を加え、室温で30分間撹拌した。さらに水(0.147mL)を加え、室温で2時間撹拌した。さらに水(0.147mL)を加え、室温で30分間撹拌した後、水(0.147mL)を加え、室温で30分間撹拌し、沈殿物を濾過回収、水で洗浄、減圧乾燥することで化合物1の水和物結晶(C型結晶、256.0mg)を粉末状結晶として得た。
【0382】
実施例26
化合物1の水和物結晶(C型結晶)の物理化学的性質の測定
実施例25と同様の用法で得られた化合物1の水和物結晶(C型結晶)を用いて、粉末X線回折測定、熱重量・示差熱分析、水分量の測定、および単結晶X線構造解析を行った。
(1)粉末X線回折測定
以下の方法で、実施例26で調製した化合物1の水和物結晶(C型結晶)の湿度変化粉末X線回折測定を実施した。
測定装置:SmartLab System、D/Tex Ultra detector、水蒸気発生装置HUM-SL(リガク社製)
対陰極:Cu
管電圧:45kV
管電流:200mA
走査範囲:5~30°
走査速度:0.7°/分
サンプリング幅:0.02°
湿度変化条件:
【0383】
【表10】
【0384】
相対湿度75%から0%までの環境下で、2θ値のシフトは実施例25で得られた水和物結晶(C型結晶)の2θ値±0.2°の範囲に入ることが確認された。結果を図7に示す。
【0385】
湿度75%における水和物結晶(C型結晶)の2θ値:7.904°、8.277°、8.833°、9.937°、10.416°、11.711°、12.683°、13.533°、13.885°、15.887°、16.627°、17.799°(±0.2°)に回折ピークを有していた。
【0386】
湿度30%における水和物結晶(C型結晶)の2θ値:7.892°、8.286°、8.839°、9.921°、10.424°、11.703°、12.710°、13.556°、13.903°、15.891°、16.664°、17.846°(±0.2°)に回折ピークを有していた。
【0387】
湿度0%における水和物結晶(C型結晶)の2θ値:7.883°、8.306°、8.845°、9.923°、10.446°、11.702°、12.767°、13.546°、13.896°、15.875°、16.694°、17.935°(±0.2°)に回折ピークを有していた。
【0388】
(2)熱重量・示差熱分析
実施例26で調製した化合物1の水和物結晶(C型結晶)の熱重量・示差熱分析を熱分析の測定方法4で実施した。結果を図8に示す。
【0389】
(3)水分量の測定
実施例26で調製した化合物1の水和物結晶(C型結晶)の水分量を、カールフィッシャー滴定法で測定した。測定は、試料を実験室環境下で馴化させた後にCA-310(日東精工アナリテック製)を用いて行った。測定の結果、化合物1の水和物結晶(C型結晶)の水分量は6.50wt%であった。
(4)単結晶X線構造解析
以下の方法で、実施例26で調製した化合物1の水和物結晶(C型結晶)の単結晶X線構造解析を行った。
測定装置:Rigaku R-AXIS RAPID-II with a VariMax Cu diffractometer(リガク社製)
対陰極:Cu
管電圧:40 kV
管電流:30 mA
温度:-180℃
測定:構造解析に十分な回折斑点が得られると考えらえるストラテジー、露光時間で測定を行った。
構造解析:初期構造決定は直接法(SIR2004、CrystalStructure、Rigaku)で行い、構造精密化はfull-matrix least-squares法(SHELXL-2017/1、APEX3、Bruker)で行った。全ての非水素原子は異方性温度因子で精密化した。水分子の水素原子はリストレインを用いて適切な位置に置き、結合している酸素原子の1.5倍の大きさの等方性温度因子で精密化した。そのほかの水素原子はライディングモデルを用いて適切な位置に置き、結合している非水素原子の1.2倍の大きさの等方性温度因子とした。
結果を図9に示す。
【0390】
粉末X線回折測定、熱重量・示差熱分析、水分量の測定、および単結晶X線構造解析の結果から、実施例26で調製した化合物1の水和物結晶(C型結晶)は、結晶構造中に水分子を有する、まさに水和物結晶であることが確認された。
【0391】
以下の方法で、実施例26で調製した化合物1の水和物結晶(C型結晶)の動的水蒸気吸着測定を実施した。結果を図10に示す。
測定装置:DVS Intrinsic(Surface Measurement Systems製)
温度:25℃
相対湿度(%)測定点:
サイクル1:0, 10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 95, 90, 80, 70, 60, 50, 40, 30, 20, 10, 0(%); サイクル2:10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 95, 90, 80, 70, 60, 50, 40, 30, 20, 10, 0(%)
閾値:0.001 dm/dt(%/分)
最小収着時間:10分
最大収着時間:1440分
【0392】
測定の結果、化合物1の水和物結晶(C型結晶)は相対湿度0~95%の範囲において、水和数変化に伴い、相対湿度0%時の重量と比較して、3.3%重量の範囲で水和数が変化しうる水和物結晶であることが確認された。
【0393】
実施例26-1
化合物1のDMSO-水和物結晶(A型)の単結晶X線の測定
化合物1((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)のDMSO-水和物結晶(A型)の合成
化合物1の水和物結晶(C型結晶)(54.9mg)をDMSO(0.784mL)に室温溶解した。この溶液を室温で110分振とうしたところ、化合物1のDMSO-水和物結晶(A型)をDMSO中に得た。
【0394】
単結晶X線構造解析
以下の方法で、実施例26-1で調製した化合物1のDMSO-水和物結晶(A型結晶)の単結晶X線構造解析を行った。
測定装置:Rigaku XtaLAB Synergy Custom with a VariMax Cu diffractometer(リガク社製)
対陰極:Cu
管電圧:40 kV
管電流:30 mA
温度:-180℃
測定:構造解析に十分な回折斑点が得られると考えらえるストラテジー、露光時間で測定を行った。
構造解析:初期構造決定は直接法(SHELXT-2018/2、CrysAlisPro、Rigaku)で行い、構造精密化はfull-matrix least-squares 法(SHELXL-2017/1、APEX3、Bruker)で行った。非水素原子の温度因子は、基本的には異方性としたが、ディスオーダーしている原子は等方性で精密化した。水分子の水素原子はリストレインを用いて適切な位置に置き、結合している酸素原子の1.5倍の大きさの等方性温度因子で精密化した。そのほかの水素原子はライディングモデルを用いて適切な位置に置き、結合している非水素原子の1.2倍または1.5倍の大きさの等方性温度因子とした。結果を図11に示す。
【0395】
実施例26-2
化合物1のアセトン-水和物結晶(H型)の物理化学的性質の測定
(1)単結晶X線構造解析
化合物1((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)のアセトン-水和物結晶(H型、単結晶X線構造解析用)の合成
9mLバイアルにアセトン(0.8mL)と水(0.2mL)を添加後に混和し、その中に化合物1の非晶質固体(約1mg)を添加した0.3mLバイアルを入れ、9mLバイアルにキャップをし、溶媒を蒸気拡散させることで3時間後に結晶を得た。
【0396】
以下の方法で、上記で得られた化合物1のアセトン-水和物結晶(H型、単結晶X線構造解析用)の単結晶X線構造解析を行った。
測定装置:Rigaku XtaLAB Synergy Custom with a VariMax Cu diffractometer(リガク社製)
対陰極:Cu
管電圧:40 kV
管電流:30 mA
温度:-180℃
測定:構造解析に十分な回折斑点が得られると考えらえるストラテジー、露光時間で測定を行った。
構造解析:初期構造決定は直接法(SHELXT-2018/2、CrysAlisPro、Rigaku)で行い、構造精密化はfull-matrix least-squares 法(SHELXL-2018/3、Olex2、OlexSys)で行った。非水素原子の温度因子は異方性として精密化した。水分子の水素原子は適切な位置に置き、結合している酸素原子の1.5倍の大きさの等方性温度因子で精密化した。そのほかの水素原子はライディングモデルを用いて適切な位置に置き、結合している非水素原子の1.2倍または1.5倍の大きさの等方性温度因子とした。結果を図12に示す。
【0397】
(2)粉末X線回折測定
化合物1((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)のアセトン-水和物結晶(H型、粉末X線回折測定用と溶媒含有量の測定用)の合成
反応容器にて、化合物1の水和物結晶(C型結晶)(2.1g)とアセトン(16mL)を加えた。外温を40℃に設定し、水(6.4mL)を攪拌しながら加えた。ガラスバイアルに乳鉢粉砕した化合物1の水和物結晶(6mg)を加え、アセトン水混液(80μL、5/4v/v)で懸濁させたのち、懸濁液を反応容器に加えた。さらにガラスバイアルにアセトン水混液(80μL、5/4v/v)を加え、懸濁液を反応容器に加えた。晶析液を2時間攪拌した。水(1.6mL)を10分かけ加えた後、懸濁液を3時間攪拌した。水(1.6mL)を10分かけ加えた後、懸濁液を2時間攪拌した。懸濁液を1時間かけて外温25℃へ冷却した。懸濁液を終夜静置保管した。翌日、外温25℃で攪拌した後、懸濁液を一部サンプリングし、懸濁液のまま粉末X線回折測定(測定方法4)を実施した。懸濁液を桐山漏斗にて濾過した後に、結晶をアセトン水混液(5.6mL、4.4mL)で洗浄した。つづいて、結晶を水(10mL)で2回洗浄した。得られた湿性末を溶媒含有量の測定に用いた。
【0398】
以下の方法で、上記で得られた化合物1のアセトン-水和物結晶(H型、粉末X線回折測定用)を、粉末X線回折測定(測定方法4)に供した。結果を以下に示した。
【0399】
アセトン-水和物結晶(H型)の2θ値は、7.942°、8.283°、8.861°、10.097°、10.491°、11.805°、12.673°、12.830°、13.514°、13.855°、15.853°、16.405°、16.642°、および17.772°(±0.2°)が主要なピークとして観測された。図13に分析結果を示した。
【0400】
(3)溶媒含有量の測定
GCによるアセトン量の分析条件を以下に示した。
装置:GC-2010(島津社製)
カラム:DB-624(Agilent), 0.530 mm ID×30 m, 3.00 μm
カラム温度:50 ℃(5min)→10 ℃/min→90 ℃(0min)→50 ℃/min→240 ℃(5min)
注入口温度:230 ℃
検出器温度:250 ℃
スプリット比:20/1
流量:30 cm/sec
【0401】
カールフィッシャー滴定法による水分量の分析条件を以下に示した。
装置:CA-200(日東精工アナリテック社製)
陽極液:アクアミクロンAKX
陰極液:アクアミクロンCXU
これらの測定では、湿性末のアセトン量は3.7%、水分量が17.5%であった。
【0402】
調製例1:アモルファス状態の化合物1の製造
下記の構造を有する化合物1(「(5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド」)は下記のスキーム1に従って合成した。
【0403】
化合物1
【化86】
【0404】
スキーム1
【化87】
【0405】
化合物aa033-b((2S)-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]-4-オキソ-4-プロプ-2-エノキシブタン酸)の合成
【化88】
【0406】
Fmoc-Asp(OAl)-OH((2S)-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-4-オキソ-4-プロプ-2-エノキシブタン酸、CAS番号146982-24-3)(200g,506mmol),p-トルエンスルホン酸(5.7g,0.05当量)、パラホルムアルデヒド(45.6g,3当量)をトルエンに混合し、110℃にて16時間撹拌した。反応液を減圧下溶媒留去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、0/100~30/70)で精製し、化合物aa033-a(9H-フルオレン-9-イルメチル (4S)-5-オキソ-4-(2-オキソ-2-プロプ-2-エノキシエチル)-1,3-オキサゾリジン-3-カルボキシラート)(175g,85%)を得た。同様に合成した別のバッチを混合し、次の反応に用いた。
LCMS(ESI)m/z=408(M+H)
保持時間:1.407分(分析条件SMDmethod_20)
【0407】
化合物aa033-a(100g,245mmol),臭化亜鉛(ZnBr)(110g,496mmol),トリエチルシラン(TES)(56g,481.6mmol)のジクロロメタン(DCM)(1L)混合溶液を、窒素雰囲気下、室温にて48時間撹拌した。同じスケールの4バッチの反応液を混合し、減圧下溶媒留去した。残渣をTBMEに溶解し、0.5Mリン酸バッファー(pH=約7.5)で10回抽出した。水層を混合し5M塩酸水でpHを2に調整し、酢酸イソプロピル(IPAC)で2回抽出した。有機層を混合し無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。IPACを除くため、得られた残渣にTBMEを添加し減圧下溶媒留去することを6回繰り返し、化合物aa033-b((2S)-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]-4-オキソ-4-プロプ-2-エノキシブタン酸)を得た。(270g,54%)
LCMS(ESI)m/z=410(M+H)
保持時間:1.956分(分析条件SMDmethod_05)
【0408】
化合物aa011-aの合成
窒素雰囲気下、氷冷下にてWSCI・HCl(27.4g,143mmol)のDMF(217mL)溶液にHOBt(17.72g,131mmol)を加え、更に化合物aa033b(48.8g,119mmol)をDCM(90mL)とDMF(90mL)の混合溶液として加え、0℃で30分攪拌した。そこにジメチルアミンのTHF溶液(2mol/L,65.6mL,131mmol)を滴下にて加え、0℃で30分攪拌した。反応液を酢酸エチル(488mL)で希釈し、有機層を塩酸(1mol/L,390mL)で2回洗浄し、更に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と水の混合溶液(1:1,488mL))で2回洗浄し、さらに、飽和食塩水と水の混合溶液(1:1、488mL)で1回洗浄後、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去して化合物aa011-aを得た。(51.16g,収率98%)。
LCMS(ESI)m/z=437.0(M+H)
保持時間:1.262分(分析条件SMDFA05)
【0409】
化合物aa079、(2S)-2-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]酢酸(Fmoc-MeGly(cPent)-OH)の合成
【化89】
【0410】
化合物aa079-a((2S)-2-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ]酢酸、Fmoc-Gly(cPent)-OH)(CAS番号:220497-61-0)(30.0g,82mmol)、パラホルムアルデヒド(7.39g,246mmol)およびCSA(0.954g,4.10mmol)のトルエン(160mL)混合液に、トリフルオロ酢酸(TFA)(9.0mL)を加えた後、60℃で4時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、固体をろ過により除去した。ろ液を減圧下濃縮し、酢酸エチル(220mL)で希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後に減圧濃縮し、化合物aa079-bを粗生成物として得た。これ以上の精製は実施せずに次の反応を行った。
LCMS(ESI)m/z=378(M+H)
保持時間:1.01分(分析条件SQDFA05)
【0411】
上記で得られた化合物aa079-bの全量を用いて、トリエチルシラン(TES)(65.5mL,410mmol)とaa079-bのジクロロエタン(DCE)(90mL)の混合液にトリフルオロ酢酸(TFA)(76mL,984mmol)を加えて60℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後に減圧濃縮し、得られた固体をn-ヘキサン/酢酸エチル(95/5)で洗浄し、減圧乾燥することで化合物aa079((2S)-2-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]酢酸、Fmoc-MeGly(cPent)-OH)を得た(29.1g,2工程93%)。
LCMS(ESI)m/z=380(M+H)
保持時間:0.92分(分析条件SQDFA05)
【0412】
化合物1217-aの合成
化合物aa079(42.2g,111mmol)とOxyma(19.99g,141mmol)のDMF(391mL)溶液に、WSCI・HCl(31.5g,164mmol)を室温にて加え、30分攪拌して溶液Aを得た。
【0413】
窒素雰囲気下、化合物aa011-a(51.16g,117mmol)のDMF(391mL)溶液にDBU(17.49mL,117mmol)を室温で滴下にて加え、5分攪拌した。そこにピリジン塩酸塩(14.9g,129mmol)を加え、10分攪拌した。得られた反応液に溶液AとDIPEA(22.46mL,129mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温にて7時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(422mL)で希釈し、塩酸(1mol/L,422mL)で2回洗浄した、得られた水層を酢酸エチル(422mL)で2回抽出した。すべての有機層を混合し、水(422mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と水の混合溶液(1:1,422mL)、飽和食塩水と水の混合溶液(1:1、422mL)で順に洗浄後、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去した。得られた残渣にDCM(422mL)を加えて0.5時間攪拌した。そこに硫酸マグネシウム(30g)を加え、30分攪拌したのちに、濾過にて固形物を取り除いた。得られた溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、化合物1217-aを得た。(55.55g、収率87%)
LCMS(ESI)m/z=598.2(M+Na)
保持時間:1.320分(分析条件SMDAM05)
【0414】
化合物1217-bの合成
窒素雰囲気下、室温にて化合物1217-a(55.55g,96mmol)のDCM(193mL)溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.115g,0.965mmol)を加え、更にフェニルシラン(8.31mL、67.5mmol)を滴下にて加え、30分攪拌した。反応液をMTBE(556mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と水の混合溶液(1:1,556mL)で抽出した。得られた有機層を水(278mL)で抽出した。水層を混合し、DCM(556mL)を加えた。そこにリン酸(56.7g,579mmol)を滴下にて加えてpHを2~3に調整し、有機層を分離後、水層をDCM(556mL)にて抽出した。得られた有機層を混合し、飽和食塩水と水の混合溶液(1:1、556mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去して化合物1217-bを得た。(48.87g,収率95%)
LCMS(ESI)m/z=536(M+H)
保持時間:1.138分(分析条件SMDAM05)
【0415】
化合物1217-b-resinの合成
フィルター付きの反応容器に2-クロロトリチルクロライドレジン(SUNRESIN社から購入、1.36mmol/g,114g、155mmol)をセットし、DCM(1140mL)を加え、25℃で45分攪拌後、フィルターから溶媒を排出した。反応容器に化合物1217-b(48.87g,91mmol)とメタノール(29.6mL,730mmol)とDIPEA(76mL,438mmol)のDCM(798mL)溶液を加え、25℃で60分攪拌し、フィルターから溶液を排出した。続けて、反応容器にメタノール(111mL,2737mmol)とDIPEA(76mL,438mmol)のDCM(684mL)溶液を加え、25℃で90分攪拌し、フィルターから溶液を排出した。反応容器にDCM(570mL)を加えて5分攪拌し、フィルターから溶液を排出した。このレジンの洗浄操作を更に4回繰り返し、得られたレジンを減圧下乾燥して化合物1217-b-resinを得た(140.5g)。レジンに結合している化合物のFmoc基を定量することにより、担持量を0.482mmol/gと算出した。
【0416】
化合物1217-c-resinの合成
上記で得られたレジン(0.482mmol/g、60g、28.92mmol)をプラスチック製固相反応容器にセットした。室温にて、この固相反応容器にDCM(600mL)を加え、5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(420mL)を加え、5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。この固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、420mL)を添加しFmoc基の脱保護を行った。10分振盪後に溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(420mL)を加え、5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にトリエチルアミン塩酸塩(7.96g、57.8mmol)のDCM(420mL)溶液を加え、5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDCM(420mL)を加え、5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(420mL)を加え、5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。
【0417】
Fmoc-cLeu-OH(37.98g、108mmol)(CAS番号:117322-30-2)とOxyma(9.6g、67.6mmol)のDMF(180mL)溶液と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10%、216mL)を混合し、2分後、上記により得られた固相反応容器に加えた。この固相反応容器を50℃にて24時間振盪後、溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(420mL)を加え、室温で5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に4回繰り返した。この固相反応容器にDCM(420mL)を加え、室温で5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。このDCMによるレジンの洗浄工程を更に5回繰り返した。得られたレジンを減圧下にて乾燥し、化合物1217-c-resin(62.5g)を得た。
【0418】
化合物aa134の合成
化合物aa134、(2S)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)ブタン酸、Fmoc-Hph(4-CF3-35-F2)-OHの合成
【化90】
【0419】
化合物aa132-a、(1-O-ベンジル 5-O-(1,3-ジオキソイソインドル-2-イル) (2S)-2-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]ペンタンジオエート)の合成
【化91】
【0420】
(4S)-4-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]-5-オキソ-5-フェニルメトキシペンタン酸(Boc-Glu-OBn、CAS番号30924-93-7)(200g,592.82mmol)、N-ヒドロキシフタルイミド(106g,649.78mmol,1.10当量)、DMAP(3.6g,29.47mmol,0.05当量)のTHF(2L)溶液に、窒素雰囲気下、0℃にてDIC(138mL,1.54当量)を滴下にて加えた。反応液を25℃で16時間撹拌し、固形物をろ過にて取り除き、ろ液を減圧下溶媒留去した。残渣をトルエンで希釈し、生じた固体をろ過にて取り除き、ろ液を減圧下溶媒留去した。残渣を再結晶(アセトン/ヘプタン)にて精製し、化合物aa132-a(1-O-ベンジル 5-O-(1,3-ジオキソイソインドル-2-イル) (2S)-2-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]ペンタンジオエート)を得た。(230g,80%)
LCMS(ESI)m/z=505.2(M+Na)
保持時間:0.992分(分析条件SMDmethod_16)
【0421】
臭化ニッケル三水和物(NiBr・3HO)(13.5g,49.7mmol,0.3当量)および4,4'-ジ-tert-ブチル-2,2'-ビピリジル(dtbbpy,CAS番号72914-19-3)(13.3g,49.7mmol、0.3当量)をDMA(400mL)に加え、窒素雰囲気下、50℃で3時間撹拌しNi溶液を調製した。
【0422】
化合物aa132-a(1-O-ベンジル 5-O-(1,3-ジオキソイソインドル-2-イル) (2S)-2-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]ペンタンジオエート)(80g,166mmol)、亜鉛粉末(54.2g,829mmol,5当量)および4-ブロモ-1,3-ジフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン(CAS番号156243-64-0,86.6g,332mmol、2当量)のDMA(400mL)混合液を窒素雰囲気下、室温にて1時間撹拌し、先に調整したNi溶液を添加し、室温で16時間撹拌した。反応液にEDTA・2Na水溶液(800mL,10%)を加え、固体をろ過にて取り除いた。ろ液を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)で精製し、化合物aa134-aを得た。(57.2g,69%)。
LCMS(ESI)m/z=496(M+Na)
保持時間:1.544分(分析条件SMDmethod_15)
【0423】
化合物aa134-a(57.2g,121mmol)のトルエン混合液(690mL)を0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)(54.4g,362mmol,3当量)を滴下にて加えた。室温で1時間撹拌後、水(58mL)を加えた。この混合液を水で抽出し、合わせた水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去し、60gの残渣を得た。残渣にアセトニトリル/水(400/400mL)を加え、水酸化ナトリウム水溶液(48%)でpHを7に調整した。この溶液にFmoc-OSu(36.6g,108.6mmol,0.9当量)を加え、水酸化ナトリウム水溶液(48%)でpHを8.0に調整後、室温で16時間撹拌した。アセトニトリル/水(1/1)で洗いこみながら反応液をろ過して固体成分を除去し、ろ液をアセトニトリルで希釈し、6mol/L塩酸水で酸性に調整することで析出した固体をろ過にて集めることで、化合物aa134((2S)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)ブタン酸、Fmoc-Hph(4-CF3-35-F2)-OH)を得た。(52g,83%)
【0424】
LCMS(ESI)m/z=528.45(M+Na)
保持時間:3.538分(分析条件SMDmethod_14)
H-NMR(300MHz,DMSO-d)δ:12.69(s,1H),7.90(d,J=7.5Hz,2H),7.78-7.54(m,3H),7.48-7.20(m,6H),4.33(d,J=6.3Hz,2H),4.24(t,J=6.9Hz,1H),3.97-3.84(m,1H),2.79-2.65(m,2H),2.15-2.00(m,1H),2.00-1.83(m,1H)
【0425】
化合物aa113、(2S)-2-[エチル(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル)アミノ]-3-(4-メチルフェニル)プロパン酸(Fmoc-EtPhe(4-Me)-OH)の合成
【化92】
【0426】
窒素雰囲気下、化合物aa113-a((2S)-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-3-(4-メチルフェニル)プロパン酸、Fmoc-Phe(4-Me)-OH)(5.62g,14.0mmol,CAS番号199006-54-7)をジクロロエタン(DCE)(17.5mL)に懸濁させ、パラアルデヒド(5.61mL,42.0mmol)、トリフルオロ酢酸(TFA)(9.65mL,126mmol)を加え、60度で6時間撹拌した。得られた化合物aa113-bを含む反応液をそのまま次の工程に用いた。
LCMS(ESI)m/z=428(M+H)
保持時間:1.03分(分析条件SQDFA05)
【0427】
得られた化合物aa113-bの反応液に、ジクロロエタン(DCE)(17.5mL)、トリフルオロ酢酸(TFA)(19.3mL,252mmol)、トリエチルシラン(TES)(20.1mL,126mmol)を加え、60度で17時間撹拌した。室温に冷却し、減圧濃縮した後、得られた残渣を酢酸エチル(40mL)に溶解させた。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)、飽和食塩水(40mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。得られた残渣をアセトニトリル(30mL)に溶解させ、ヘキサン(15mL)で2回洗浄し、減圧下溶媒留去した。得られた残渣を逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%-ギ酸入りアセトニトリル/0.1%-ギ酸入り蒸留水)で精製して、化合物aa113((2S)-2-[エチル(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル)アミノ]-3-(4-メチルフェニル)プロパン酸、Fmoc-EtPhe(4-Me)-OH)を得た。(4.4g,2工程73%)
LCMS(ESI)m/z=430(M+H)
保持時間:0.95分(分析条件SQDFA05)
【0428】
以降のFmoc-Pro-OH(CAS番号:71989-31-6)、Fmoc-Hph(4-CF3-35-F2)-OH(化合物aa134)、Fmoc-MeGly-OH(CAS番号:77128-70-2)、Fmoc-EtPhe(4-Me)-OH(化合物aa113)、Fmoc-Aze(2)-OH(CAS番号:136552-06-2)、Fmoc-MeAla-OH(CAS番号:84000-07-7)およびFmoc-Ile-OH(CAS番号:71989-23-6)の伸長はIntavis社製ペプチド合成機(Multipep RSi)を用いて、Fmoc固相合成法により合成した。操作の詳細な手順については合成機に付属のマニュアルに従った。
【0429】
上記により得られた化合物1217-c-resin(固相反応容器1本に対して200mg)を30本の固相反応容器に加え、ペプチド合成機にセットした。この30本すべての固相反応容器にジクロロメタン(DCM)を加えて1時間静置することでレジンの膨潤を行った。その後、溶媒をフリットから排出した。
【0430】
Fmoc-Pro-OHの伸長
30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、30℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-Pro-OH(CAS番号71989-31-6)(0.6mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて4時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0431】
Fmoc-Hph(4-CF3-35-F2)-OH(化合物aa134)の伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-Hph(4-CF3-35-F2)-OH(化合物aa134)(0.45mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて2.5時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0432】
Fmoc-MeGly-OHの伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-MeGly-OH(0.6mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて2.5時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0433】
Fmoc-EtPhe(4-Me)-OH(化合物aa113)の伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、前述のとおり製造したFmoc-EtPhe(4-Me)-OH(0.6mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて2.5時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0434】
Fmoc-Aze(2)-OHの伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-Aze(2)-OH(0.6mol/L)とHOOBt(0.375mol/L)のNMPとDMSOの混合溶液(7:3)(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、60℃にて5時間静置した。その後、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を30本すべての固相反応容器に対して添加し、60℃にて5時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0435】
Fmoc-MeAla-OHの伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-MeAla-OH(0.6mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて2.5時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0436】
Fmoc-Ile-OHの伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-Ile-OH(0.6mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて10時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。続いて、30本すべての固相反応容器に対してDCM(固相反応容器1本に対して1.6mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に5回繰り返した。30本すべての固相反応容器からレジンを回収し、混合して続く操作を行った。
【0437】
Fmoc-MeLeu-OH(CAS番号:103478-62-2)の伸長
上記で得られたレジンを200mLのプラスチック製固相反応容器に加え、ここにDCM(60mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。この固相反応容器にトルエン(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このトルエンによるレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。この固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のトルエン溶液(2v/v%、45mL)を添加し、30℃で5分振盪後に溶液をフリットから排出した。
【0438】
この固相反応容器にトルエン(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このトルエンによるレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。この固相反応容器にDCM(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDCMによるレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。この固相反応容器に、Fmoc-MeLeu-OH(4.25g、11.57mmol)、[エチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセタト-O2]トリ-1-ピロリジニルホスホニウムヘキサフルオロリン酸(PyOxim)(6.10g、11.57mmol)、DIPEA(3.03mL、17.35mmol)のDCM(45mL)溶液を加え、30℃で3時間振盪した。その後、溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に4回繰り返した。この固相反応容器にDCM(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDCMによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。その後、得られたレジンは減圧下乾燥した。
【0439】
上記の固相反応容器にDCM(60mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。この固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、45mL)を添加し、30℃で15分振盪後に溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に4回繰り返した。この固相反応容器にDCM(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDCMによるレジンの洗浄工程を更に4回繰り返し、化合物1217-dが担持されたレジンを得た。
【0440】
化合物1217-dの合成(ペプチドのレジンからの切り出し)
上記により得られたレジンを含む固相反応容器に、2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)(60mL)とDCM(60mL)とDIPEA(0.909mL)の混合溶液を加え、室温にて2時間振盪した。その後、溶液をフリットから回収した。この固相反応容器に2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)(30mL)とDCM(30mL)の混合溶液を加え、室温にて5分間振盪後、溶液をフリットから回収した。更にこの固相反応容器に、2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)(30mL)とDCM(30mL)の混合溶液を加え、室温にて5分間振盪後、溶液をフリットから回収した。回収したすべての溶液を混合し、減圧下にて溶媒留去して化合物1217-dを粗生成物として得た。(3.85g)
LCMS(ESI)m/z=1453.9(M-H)
保持時間:0.67分(分析条件SQDAA50)
【0441】
化合物1の合成(ペプチドの環化と精製)
上記により得られた化合物1217-d(3.85g)を酢酸イソプロピル(529mL)とDIPEA(0.915mL、5.24mmol)の混合液に溶解し、HCTU(O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸、CAS番号330645-87-9)(1.805g、4.36mmol)を加え、室温にて21時間攪拌した。その後、溶液量が約半分になるまで減圧下溶媒留去した。得られた溶液に、飽和塩化アンモニウム水溶液(40mL)と水(40mL)の混合溶液を加え、酢酸イソプロピル(350mL)で抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)と水(40mL)の混合溶液、飽和食塩水(40mL)と水(40mL)の混合溶液で順に洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去して3.36gの残渣を得た。得られた残渣を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Daisogel SP-120-40/60-ODS-RPS、溶出液としてアセトニトリル(0.1%のギ酸を含む)/水(0.1%のギ酸を含む)を使用)で精製し、目的物を含む溶出液を凍結乾燥することでアモルファス状態の化合物1(1.36g、収率34%)を得た。得られた化合物1のマススペクトルの値と液体クロマトグラフィーの保持時間は下記のとおりであった。
LCMS(ESI)m/z=1437.7(M+H)
保持時間:7.496分(分析条件SSC-A-AF-01)
【0442】
調製例1におけるLC/MSの分析条件を表11に示す。
【表11】
【0443】
【表12】
【0444】
実施例27 Step H’1
化合物a03:tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[ベンジルオキシカルボニル(メチル)アミノ]-3-シクロヘキシル-プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化93】
【0445】
反応容器に化合物a01(2.00g)および化合物a02(1.37g)を加え、次いで2-MeTHF(19.0mL)を加えて攪拌した。さらにDIPEA(5.5mL)を加えた後、反応混合物の内温を32℃以下に保ちながらT3P(50 w/w% 2-MeTHF溶液、11.7mL)を滴下し、その後室温にて1時間撹拌した。5%炭酸ナトリウム水溶液(12mL)を反応混合物の内温を36℃以下に保つように滴下し攪拌したのち、水層を排出した。得られた有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液(12mLx1)、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(12mLx1)、10%塩化ナトリウム水溶液(50mLx2)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し化合物a03を含む残渣(2.72g)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.499分(HPLC分析条件:method 3)
【0446】
実施例28 Step H’2-1
化合物a04:tert-ブチル 2-[[(2S)-3-シクロヘキシル-2-(メチルアミノ)プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化94】
【0447】
Step H’1で得られた化合物a03を含む残渣(2.70g)に2-MeTHF(18mL)を加えた後、5%Pd/C(1.27g、50%含水品)を加えた。水素ガスによる脱気置換を3回実施し、その後2時間攪拌した。反応混合物をろ紙を用いて吸引濾過し、残渣を2-MeTHF溶液(18mLx3)で洗浄した。得られた濾液および洗浄液を合わせて減圧濃縮し化合物a04を含む残渣(1.77g)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.419分(HPLC分析条件:method 3)
【0448】
実施例29 Step H’2-2
化合物a06:tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[2-[ベンジルオキシカルボニル(メチル)アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-3-シクロヘキシル-プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化95】
【0449】
Step H’2-1で得られた化合物a04を含む残渣(1.71g)と、化合物a05(1.29g)を2-MeTHF(11.6mL)に溶解させて攪拌した。さらにDIPEA(3.4mL)を加えた後、反応混合物の内温を27℃以下に保ちながらT3P(50 w/w% 2-MeTHF溶液、7.2mL)を滴下し、その後室温にて2時間撹拌した。5%炭酸ナトリウム水溶液(7.2mL)を反応混合物の内温を29℃以下に保つように滴下し攪拌したのち、水層を排出した。得られた有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液(7.2mLx1)、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(7.2mLx1)、10%塩化ナトリウム水溶液(7.2mLx2)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し化合物a06を含む残渣(2.70g)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.458分(HPLC分析条件:method 3)
【0450】
実施例30 Step H’3-1
化合物a07:tert-ブチル 2-[[(2S)-3-シクロヘキシル-2-[メチル-[2-(メチルアミノ)アセチル]アミノ]プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化96】
【0451】
Step H’2-2で得られた化合物a06を含む残渣(2.70g)に2-MeTHF(10mL)を加えた後、5%Pd/C(0.71g、50%含水品)を加えた。水素ガスによる脱気置換を3回実施し、その後2時間攪拌した。反応混合物をろ紙を用いて吸引濾過し、残渣を2-MeTHF溶液(10mLx3)で洗浄した。得られた濾液および洗浄液を合わせて減圧濃縮し化合物a07を含む残渣(1.82g)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.848分(HPLC分析条件:method 3)
【0452】
実施例31 Step H’3-2
化合物a09:tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[2-[[2-[ベンジルオキシカルボニル(メチル)アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-3-シクロヘキシル-プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化97】
【0453】
Step H’3-1で得られた化合物a07を含む残渣(1.80g)と、化合物a08(1.57g)を2-MeTHF(14.2mL)に溶解させて攪拌した。さらにDIPEA(4.1mL)を加えた後、反応混合物の内温を30℃以下に保ちながらT3P(50 w/w% 2-MeTHF溶液、8.8mL)を滴下し、その後室温にて2時間撹拌した。5%炭酸ナトリウム水溶液(10.8mL)を反応混合物の内温を33℃以下に保つように滴下し攪拌したのち、水層を排出した。得られた有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液(10.8mLx1)、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(10.8mLx1)、5%炭酸ナトリウム水溶液(10.8mLx1)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し化合物a09を含む残渣(2.61g)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.055分(HPLC分析条件:method 3)
【0454】
実施例32 Step H’4-1
化合物a10:tert-ブチル 2-[[(2S)-3-シクロヘキシル-2-[メチル-[2-[メチル-[2-(メチルアミノ)アセチル]アミノ]アセチル]アミノ]プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化98】
【0455】
Step H’3-2で得られた化合物a09を含む残渣(2.40g)に2-MeTHF(12.3mL)を加えた後、5%Pd/C(0.44g、50%含水品)を加えた。水素ガスによる脱気置換を3回実施し、その後1時間攪拌した。
反応混合物をろ紙を用いて吸引濾過し、残渣を2-MeTHF溶液(12mLx3)で洗浄した。得られた濾液および洗浄液を合わせて減圧濃縮し化合物a10を含む残渣(1.97g)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.521分(分析条件:method 3)
【0456】
実施例33 Step H’4-2
化合物a12:tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[2-[[2-[[(2S,3S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-3-シクロヘキシル-プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化99】
【0457】
Step H’4-1で得られた化合物a10を含む残渣(1.92g)と、化合物a11(1.69g)を2-MeTHF(12.8mL)に溶解させて攪拌した。さらにDIPEA(3.7mL)を加えた後、反応混合物の内温を29℃以下に保ちながらT3P(50 w/w% 2-MeTHF溶液、7.8mL)を滴下し、その後室温にて2時間撹拌した。5%炭酸ナトリウム水溶液(14.4mL)を反応混合物の内温を33℃以下に保つように滴下し攪拌したのち、水層を排出した。得られた有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液(14.4mLx1)、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(14.4mLx1)、5%炭酸ナトリウム水溶液(14.4mLx1)で洗浄した。得られた有機層をさらに5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(14.4mLx1)、5%炭酸ナトリウム水溶液(14.4mLx1)での洗浄を2回繰り返した。2-MeTHF(14.4mL)を加え、これを5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(14.4mLx1)、5%炭酸ナトリウム水溶液(14.4mLx1)で洗浄した。さらに1%炭酸ナトリウム水溶液(14.4mLx3)、5%炭酸ナトリウム水溶液(14.4mLx5)、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(14.4mLx1)、5%炭酸ナトリウム水溶液(14.4mLx1)、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(14.4mLx1)、5%炭酸ナトリウム水溶液(14.4mLx1、7.2mLx10)で洗浄した。さらに2.5%アンモニア水(7.2mLx3)、10%塩化ナトリウム水溶液(1mLx1)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し化合物a12を含む残渣(2.39g)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.006分(HPLC分析条件:method 1)
【0458】
実施例34 Step H’5-1
化合物a13:tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[2-[[2-[[(2S,3S)-2-アミノ-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-3-シクロヘキシル-プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化100】
【0459】
Step H’4-2で得られた化合物a12を含む残渣(2.15g)に2-MeTHF(9.3mL)を加えた後、5%Pd/C(0.66g、50%含水品)を加えた。水素ガスによる脱気置換を3回実施し、その後2時間攪拌した。反応混合物をろ紙を用いて吸引濾過し、残渣を2-MeTHF溶液(10mLx3)で洗浄した。得られた濾液および洗浄液を合わせて減圧濃縮し化合物a13を含む残渣(1.95g)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.776分(HPLC分析条件:method 1)
【0460】
実施例35 Step H’5-2
化合物a15:tert-ブチル 2-[[(2S)-3-シクロヘキシル-2-[メチル-[2-[メチル-[2-[メチル-[(2S,3S)-3-メチル-2-[[(2S)-4-メチル-2-[メチル(2-トリメチルシリルエトキシカルボニル)アミノ]ペンタノイル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]アセチル]アミノ]アセチル]アミノ]プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化101】
【0461】
Step H’5-1で得られた化合物a13を含む残渣(1.94g)と、化合物a14(1.49g)を2-MeTHF(10.3mL)に溶解させて攪拌した。反応容器を氷浴にて冷却し、DIPEA(3.0mL)を加えた後、反応混合物の内温を9℃以下に保ちながらT3P(50 w/w% 2-MeTHF溶液、6.3mL)を滴下し、その後氷浴を外して室温にて1時間撹拌した。5%炭酸ナトリウム水溶液(12mL)を反応混合物の内温を22℃以下に保つように滴下し攪拌したのち、水層を排出した。得られた有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液(12mLx1)、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(12mLx1)、5%炭酸ナトリウム水溶液(12mLx1)で洗浄し、得られた有機層を減圧濃縮した。2-MeTHF(20mL)に再度溶解し、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(12mLx2)、5%炭酸ナトリウム水溶液(12mLx2)で洗浄した。有機層にN-メチルイミダゾール(0.3mL)および5%炭酸ナトリウム水溶液(12mL)を加えて6.5時間攪拌したのち、水層を排出した。5%炭酸ナトリウム水溶液(12mLx1)、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(12mLx2)、5%炭酸ナトリウム水溶液(12mLx2)で洗浄し、減圧濃縮した。2-MeTHF(20mL)に再度溶解し、さらにヘプタン:MTBE混合液(1.5:1)(20mL)を加え、5%炭酸ナトリウム水溶液(20mLx2)で洗浄し、減圧濃縮することで化合物a15を含む残渣(2.38g)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.919分(HPLC分析条件:method 1)
【0462】
実施例36 Step H’6
化合物a16:tert-ブチル 2-[[(2S)-3-シクロヘキシル-2-[メチル-[2-[メチル-[2-[メチル-[(2S,3S)-3-メチル-2-[[(2S)-4-メチル-2-(メチルアミノ)ペンタノイル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]アセチル]アミノ]アセチル]アミノ]プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化102】
【0463】
Step H’5-2で得られた化合物a15を含む残渣(2.35g)に2-MeTHF(14mL)を加えた後、反応容器の外温を50℃に設定し、テトラブチルアンモニウムフロリド(1M THF溶液、7.0mL)を加えた。そのまま反応液を2時間攪拌した。室温まで冷却ののち酢酸イソプロピル(7mL)を加え、5%炭酸カリウム水溶液(7mLx6)で洗浄後、減圧濃縮し、化合物a16を含む残渣(1.92g)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.909分(HPLC分析条件:method 1)
【0464】
実施例37 Step S’0
化合物a19:tert-ブチル (3S)-3-[ベンジルオキシカルボニル(メチル)アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノアートの合成
【化103】
【0465】
反応容器に化合物a17(2.01g)、2-MeTHF(11.7mL)を加えて撹拌した。DIPEA(1.8mL)、化合物a18(0.53mL)を加えた後、室温にてT3P(50w/w% 2-MeTHF溶液、3.61mL)を添加し、その後1時間撹拌した。10%クエン酸水溶液(12mL)を撹拌しながら加えた後、水層を排出した。得られた有機層を10%クエン酸水溶液(12mL×1)、5%炭酸ナトリウム水溶液(12mL×2)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し化合物a19を含む残渣(1.56g)を得た。
HPLC分析による保持時間:3.934分(HPLC分析条件:method 3)
【0466】
実施例38 Step S’1-1
化合物a20:tert-ブチル (3S)-3-(メチルアミノ)-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノアートの合成
【化104】
【0467】
Step S’0で得られた化合物a19を含む残渣(3.08g)に2-MeTHF(21.3 mL)を加えた後、5%Pd/C (4.09g、50%含水品)を添加した。水素ガスによる脱気置換を3回実施し、その後2時間撹拌した。反応混合物をろ紙を用いて吸引ろ過し、残渣を2-MeTHF溶液(21.3 mL×3)で洗浄した。得られたろ液及び洗浄液を合わせて減圧濃縮し化合物a20を含む残渣(2.09g)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.058分(HPLC分析条件:method 3)
【0468】
実施例39 Step S’1-2
化合物a22:tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-[ベンジルオキシカルボニル(メチル)アミノ]-3-メチル-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノアートの合成
【化105】
【0469】
Step S’1-1で得られた化合物a20を含む残渣(2.04g)と化合物a21(2.14g)を2-MeTHF(6.3mL)に溶解させて撹拌した。さらにDIPEA(5.3mL)を加えた後、室温にて2-MeTHF(5.9mL)とMeCN(4.1mL)に溶解させたHATU(3.95g)を添加し、その後50℃で5時間撹拌した。CPME(5.3mL)を室温で加えた後、5%炭酸カリウム水溶液(4.1mL)とNMI(0.55mL)を加え、1時間30分撹拌した。2.5%アンモニウム水溶液(16.3mL)を撹拌しながら加えた後、水層を排出した。得られた有機層を2.5%アンモニウム水溶液(16.3mL×1)、10%硫酸水素ナトリウム一水素和物水溶液(20.4mL×4)、5%炭酸カリウム水溶液(20.4mL×1)、10%硫酸水素ナトリウム一水素和物水溶液(20.4mL×3)、5%炭酸カリウム水溶液(20.4mL×1)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し化合物a22を含む残渣(3.66g)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.428分(HPLC分析条件:method 3)
【0470】
実施例40 Step S’2-1
化合物a23:tert-ブチル (3S)-3-[メチル-[(2S)-3-メチル-2-(メチルアミノ)ブタノイル]アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノアートの合成
【化106】
【0471】
Step S’1-2で得られた化合物a22を含む残渣(3.56g)に2-MeTHF(18.3mL)を加えた後、5%Pd/C (2.10g、50%含水品)を添加した。水素ガスによる脱気置換を3回実施し、その2時間30分撹拌した。反応混合物をろ紙を用いて吸引ろ過し、残渣を2-MeTHF(18.3mL×3)で洗浄した。得られたろ液及び洗浄液を合わせて減圧濃縮し化合物a23を含む残渣(2.58g)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.393分(HPLC分析条件:method 3)
【0472】
実施例41 Step S’2-2
化合物a25:tert-ブチル (3S)-3-[メチル-[(2S)-3-メチル-2-[メチル-[1-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]シクロペンタンカルボニル]アミノ]ブタノイル]アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノアートの合成
【化107】
【0473】
化合物a24を(2.90g)を2-MeTHF(18.6mL)に溶解させて撹拌した。さらにDIPEA(5.4mL)とStep S’2-1で得られた化合物a23を含む残渣(2.50g)を加えた後、室温にてT3P(50w/w% 2-MeTHF溶液、10.4mL)とDMAP(1.59g)を添加し、その後8時間撹拌した。化合物a24(1.47g)、DMAP(0.80g)、T3P(50w/w% 2-MeTHF溶液、5.5mL)、DIPEA(2.8mL)をそれぞれ追加したのち、2時間撹拌した。5%炭酸ナトリウム水溶液(20.5mL)を撹拌しながら加えた後、水層を排出した。得られた有機層を5%硫酸水素ナトリウム一水素和物水溶液(20.5mL×4)、5%炭酸ナトリウム水溶液(20.5mL×2)、5%硫酸水素ナトリウム一水素和物水溶液(20.5mL×2)、5%炭酸ナトリウム水溶液(20.5mL×1)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し化合物a25を含む残渣(3.45g)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.002分(HPLC分析条件:method 3)
【0474】
実施例42 Step S’3-1
化合物a26:tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-[(1-アミノシクロペンタンカルボニル)-メチル-アミノ]-3-メチル-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノアートの合成
【化108】
【0475】
Step S’2-2で得られた化合物a25を含む残渣(3.41g)を2-MeTHF(1362mL)とMeOH(1.4mL)に溶解させて撹拌した。-20℃にてLiBH4(2M THF溶液、4.5mL)を滴下し、その後2時間撹拌した。2,2,2-トリフルオロエタノール(6.4mL)を滴下したのち0℃まで昇温し、その後20分撹拌した。20%塩化アンモニウム水溶液(10.2mL)を滴下し、水層を排出した。得られた有機層に対し、室温でトリフルオロ酢酸(0.69mL)を加えた後10分撹拌した。2M水酸化ナトリウム水溶液(44.3mL)を含む反応容器に対し、化合物a25を含む反応溶液を滴下した。水層を排出し、その後2M水酸化ナトリウム水溶液(34.1mL×2),10%リン酸水素二カリウム水溶液(17.0mL×1)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し化合物a26を含む残渣(2.90g)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.868分(HPLC分析条件:method 3)
【0476】
実施例43 Step S’3-2
化合物a28:ベンジル (2S)-2-[[1-[[(1S)-1-[[(1S)-3-tert-ブトキシ-3-オキソ-1-(ピペリジン-1-カルボニル)プロピル]-メチル-カルバモイル]-2-メチル-プロピル]-メチル-カルバモイル]シクロペンチル]カルバモイル]ピロリジン-1-カルボキシラートの合成
【化109】
【0477】
Step S’3-1で得られた化合物a26を含む残渣(2.90g)と化合物a27(1.66g)をMeCN(14.5mL)に溶解させて撹拌した。さらにDIPEA(2.67mL)を加えた後、室温にてBEP(2.11g)を添加し、その後3時間撹拌した。CPME(29.3mL)を加えた後, 5%炭酸カリウム水溶液(17.4mL)とN-メチルイミダゾール(0.41mL)を加え、室温で30分撹拌した。水層を排出した後、得られた有機層を5%硫酸水素ナトリウム一水素和物水溶液(17.4mL×5)、5%炭酸ナトリウム水溶液(17.4mL×2)、5%硫酸水素ナトリウム一水素和物水溶液(17.4mL×3)、5%炭酸ナトリウム水溶液(17.4mL×2)で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し化合物a28を含む残渣(3.86g)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.323分(HPLC分析条件:method 3)
【0478】
実施例44 Step S’4-1
化合物a29:tert-ブチル (3S)-3-[メチル-[(2S)-3-メチル-2-[メチル-[1-[[(2S)-ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]アミノ]ブタノイル]アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノアートの合成
【化110】
【0479】
Step S’3-2で得られた化合物a28を含む残渣(3.81g)にTHF(16.8mL)を加えた後、5%Pd/C(0.40g、50%含水品)を添加した。水素ガスによる脱気置換を3回実施し、その後4時間30分撹拌した。5%Pd/C(0.20g、50%含水品)を追加し、その後1時間30分撹拌した。反応混合物をろ紙を用いて吸引ろ過し、残渣を2-MeTHF溶液(6.6mL×3)で洗浄した。得られたろ液及び洗浄液を合わせて減圧濃縮し化合物a29を含む残渣(3.12g)を得た。
HPLC分析による保持時間:2.970分(HPLC分析条件:method 3)
【0480】
実施例45 Step S’4-2
化合物a31:tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-フェニル-ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-3-メチル-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノアートの合成
【化111】
【0481】
Step S’4-1で得られた化合物a29を含む残渣(2.06g)と化合物a30(1.10g)を2-MeTHF(10.3mL)に溶解させて撹拌した。さらにDIPEA(2.8mL)を加えた後、室温にてT3P(50w/w% 2-MeTHF溶液、5.4mL)を添加し、その後2時間撹拌した。化合物a30(0.55g)、DIPEA(1.1mL)、T3P(50w/w% 2-MeTHF溶液、2.2mL)をそれぞれ追加した後、5時間撹拌した。さらに、化合物a30(0.57g)、DIPEA(1.1mL)、T3P(50w/w% 2-MeTHF溶液、2.2mL)を追加し一晩静置し、翌日2時間撹拌した。5%炭酸カリウム水溶液(12.4mL)とN-メチルイミダゾール(0.29mL)を加え、室温で3時間撹拌した。N-メチルイミダゾール(0.23mL)を加え、1時間撹拌した後水層を排出した。2-MeTHF(12.4mL)、N-メチルイミダゾール(0.23mL)、5%炭酸カリウム水溶液(12.4mL)を加え、1時間撹拌した後、水層を排出した。得られた有機層を10%硫酸水素ナトリウム一水素和物水溶液(12.4mL×2)、5%炭酸カリウム水溶液(12.4mL×1)で洗浄した。有機層にヘプタンとMTBEの混合溶液(ヘプタン/MTBE=1.5:1、12.4mL)、MeCN(4.7mL)を加え水層を排出した。有機層に2-MeTHF(2.1mL)を加えた後、MeCN(7.0mL)と5%炭酸カリウム水溶液(17.7mL)で7回洗浄した。有機層に対し酢酸イソプロピル(7.6mL)を加えた後に減圧濃縮し、得られた残渣に酢酸イソプロピル(7.6mL)を加え、化合物a31を含む溶液(10.31g)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.794分(HPLC分析条件:method 3)
【0482】
実施例46 Step 1’
化合物a32:(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-フェニル-ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-3-メチル-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタン酸の合成
【化112】
【0483】
Step S’4-2で得られた化合物a31を含む残渣(10.27g)を酢酸イソプロピル(51.4mL)に溶解させて撹拌した。HMDS(2.1mL)を加えた後、0℃でTMSOTf(1.4mL)を滴下し、その後室温で2時間30分撹拌した。2-MeTHFを(51.4mL)、5%リン酸水素二カリウム水溶液(102.8mL)を室温で加え、水層を排出した。有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(102.8mL)で洗浄した後、得られた有機層にDIPEA(3.0mL)を加え減圧濃縮し、酢酸イソプロピル(7.6mL)を加え化合物a32を含む溶液(7.92g)を得た。
HPLC分析による保持時間:4.001分(HPLC分析条件:method 3)
【0484】
実施例47 Step 2’
化合物a33:tert-ブチル 2-[[(2S)-2-[[2-[[2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-フェニル-ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-3-メチル-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-3-シクロヘキシル-プロパノイル]-メチル-アミノ]アセタートの合成
【化113】
【0485】
Step 2’で得られた化合物a32を含む残渣(7.92g)とStep H’6で得られた化合物a16を含む残渣(1.33g)を2-MeTHF(4.6mL)に溶解させて撹拌した。室温でDIPEA(1.6mL)、HATU(1.43g)を添加し、その後2時間撹拌した。化合物a16を含む残渣(約300mg)を添加し、さらに2時間撹拌した。その後、化合物a16を含む残渣(約300mg)を追加し、1時間30分撹拌した。HATU(0.79g)を加えた後、1時間撹拌した。CPME(3.5mL)、N-メチルイミダゾール(0.13mL)、5%炭酸カリウム水溶液(2.7mL)を加え、室温で3時間撹拌した。水層を排出した後、2.5%アンモニア水溶液(9.2mL×1)、10%硫酸水素ナトリウム一水素和物水溶液(9.2mL×1)、5%炭酸ナトリウム水溶液(9.2mL×1)、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(9.2mL×3)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(9.2mL×2)で洗浄した。有機層にヘプタン/MTBE(1.5:1、9.2mL)を加えた後、5%炭酸ナトリウム水溶液(9.2mL×2)で洗浄した。得られた有機層に対し、2-MeTHF(9.2mL)を加え、減圧濃縮し化合物a33を含む残渣(4.49g)を得た。
HPLC分析による保持時間:10.65分(分析条件:method 4)
【0486】
実施例48 Step 3’
化合物a34:2-[[(2S)-2-[[2-[[2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-4-フェニル-ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-3-メチル-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-3-シクロヘキシル-プロパノイル]-メチル-アミノ]酢酸の合成
【化114】
【0487】
Step 2’で得られた化合物a33を含む残渣(4.49g)を2-MeTHF(49.5mL)に溶解させて撹拌した。室温でHMDS(2.9mL)とTMSOTf(2.1mL)を添加し、その後2時間撹拌した。5%リン酸水素二カリウム水溶液(14.2mL)を加えた後、水層を排出した。得られた有機層を10%クエン酸水溶液(3.4mL)と5%リン酸水素二カリウム水溶液(10.5mL)の混合水溶液で3回、5%炭酸ナトリウム水溶液で1回洗浄した。有機層に対し、THF(20.9mL)を加え共沸脱水を3回した後、得られた残渣に対しTHF(5.9mL)を加え、化合物a34を含む溶液(9.59g)を得た。
HPLC分析による保持時間:9.26分(分析条件:method 4)
【0488】
実施例49 Step 4’
化合物a35:2-[[(2S)-2-[[2-[[2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-[(2S)-2-アミノ-4-フェニル-ブタノイル]ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-3-メチル-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-オキソ-4-(1-ピペリジル)ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-3-シクロヘキシル-プロパノイル]-メチル-アミノ]酢酸の合成
【化115】
【0489】
5%Pd/C(0.49g50%含水品)を反応容器に加え、THF(8mL)に懸濁し、水素雰囲気下として30分攪拌した。その後窒素置換し、Step 3’で得られた化合物a34を含む残渣(9.3g)をTHF(8mL)に溶解した溶液を加え、水素雰囲気下にて6時間攪拌したところ反応転換率は76%だった。窒素置換して冷蔵庫にて一晩保管したのち、翌日室温にもどして2時間攪拌したところ反応転換率は87%だった。窒素置換したのち、5%Pd/C(0.24g、50%含水品 )のTHF (4mL)懸濁液を反応液に加え、水素置換したのち4時間攪拌した(反応転換率99.0%)。窒素置換して冷蔵庫にて一晩保管したのち、翌日室温にもどして測定したところ、反応転換率は99.4%だった。反応混合物をろ紙を用いて吸引濾過し、残渣を2-MeTHF溶液(6.5mLx10)で洗浄した。得られた濾液および洗浄液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をアセトニトリル(16.3mL)および2-MeTHF(6.5mL)に溶解し、ヘプタン(37.1mL)にて洗浄後濃縮した。得られた残渣を再度アセトニトリル(16.3mL)および2-MeTHF(6.5mL)に溶解し、ヘプタン(37.1mL)にて洗浄後濃縮し、化合物a35を含む残渣(2.96g)を得た。
HPLC分析による保持時間:12.39分(HPLC分析条件:method 4)
【0490】
実施例50 Step 5’
化合物a36:(3S,9S,18S,21S,25S,28S,34S)-9-(シクロヘキシルメチル)-21-イソブチル-28-イソプロピル-7,10,13,16,22,26,29-ヘプタメチル-18-[(1S)-1-メチルプロピル]-3-(2-フェニルエチル)-25-(ピペリジン-1-カルボニル)スピロ[1,4,7,10,13,16,19,22,26,29,32-ウンデカザビシクロ[32.3.0]ヘプタトリアコンタン-31,1'-シクロペンタン]-2,5,8,11,14,17,20,23,27,30,33-ウンデカオンの合成
【化116】
【0491】
前工程で得られた化合物a35を含む残渣(2.90g)とDIPEA(1.44mL)を含む炭酸ジメチル溶液(72.5mL)を調製し、これをPyBOP(4.34g)の炭酸ジメチル溶液(72.5mL)に3時間かけて滴下した。滴下終了後30分の時点でサンプリングして反応を確認したのち、不溶物をろ紙を用いて吸引濾過にて濾去し、残渣を炭酸ジメチル(15mL)で洗浄した。ろ液と洗浄液を合わせた溶液を、2.5%アンモニア水溶液(58mL)、5%硫酸水素カリウム水溶液(58mL)、5%リン酸水素二ナトリウム水溶液(58mL)、5%塩化ナトリウム水溶液(58mL)、0.5%塩化ナトリウム水溶液(58mL)で洗浄した。得られた有機層を減圧下濃縮することで、化合物a36を含む残渣(2.72g)を得た。
HPLC分析による保持時間:18.69分(HPLC分析条件:method 5)
【0492】
実施例50-1
化合物a36:(3S,9S,18S,21S,25S,28S,34S)-9-(シクロヘキシルメチル)-21-イソブチル-28-イソプロピル-7,10,13,16,22,26,29-ヘプタメチル-18-[(1S)-1-メチルプロピル]-3-(2-フェニルエチル)-25-(ピペリジン-1-カルボニル)スピロ[1,4,7,10,13,16,19,22,26,29,32-ウンデカザビシクロ[32.3.0]ヘプタトリアコンタン-31,1'-シクロペンタン]-2,5,8,11,14,17,20,23,27,30,33-ウンデカオンの合成(縮合剤としてPyBOP、溶媒として炭酸ジメチルを使用)
【化117】
【0493】
反応容器に化合物a35(9.7mg)を秤量し、炭酸ジメチル(2mL)で溶解した。室温で攪拌しながらDIPEA (6.1μL)を加えた。これにPyBOP(14.9mg)を加えて30分攪拌した。反応液(50μL)をMeCN/プロピルアミン(9:1)の混合液(100μL)で希釈し、その溶液を用いてHPLC分析した。目的物:環状ダイマーのエリア%比、および目的物のLC純度(%)を表13に示した。
【0494】
実施例50-2
アニソールおよび2-メチルテトラヒドロフランを溶媒として用いた場合の結果も表13に示した(実験操作は、実施例50-1と同様に行った)。いずれの場合も、環状トリマーは観測されなかった。
【0495】
実施例50-3
化合物a36:(3S,9S,18S,21S,25S,28S,34S)-9-(シクロヘキシルメチル)-21-イソブチル-28-イソプロピル-7,10,13,16,22,26,29-ヘプタメチル-18-[(1S)-1-メチルプロピル]-3-(2-フェニルエチル)-25-(ピペリジン-1-カルボニル)スピロ[1,4,7,10,13,16,19,22,26,29,32-ウンデカザビシクロ[32.3.0]ヘプタトリアコンタン-31,1'-シクロペンタン]-2,5,8,11,14,17,20,23,27,30,33-ウンデカオンの合成(縮合剤としてPyBOP、溶媒として炭酸ジメチルを使用、逆滴下法による製造)
反応容器にPyBOP (59.9mg)を秤量し、炭酸ジメチル(1mL)に懸濁した。別容器に化合物a35 (39.9mg)を炭酸ジメチル(1mL)に溶解し、これにDIPEA (24.3μL)を加えた。この原料の溶液をPyBOP懸濁液へシリンジポンプを用いて室温にて3時間かけて加えた。加え終わったのち容器に残った原料溶液を炭酸ジメチル(0.2mL)で洗いこみ、その後30分攪拌した。反応液(50μL)をMeCN/プロピルアミン(9:1)の混合液(100μL)で希釈し、その溶液を用いてHPLC分析した。結果は、表13に示した。
【0496】
【表13】
【0497】
【化118】
a37: 本誘導体におけるc-dimer
【0498】
実施例51
化合物b1:(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-ベンジルオキシカルボニルピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタン酸の合成
【化119】
反応容器に、化合物28を含む2-MeTHF溶液(17.45g、11.7wt%)を加え減圧濃縮し、得られた残渣にIPAc(10.2mL)を加えた。室温で攪拌しながらHMDS(1.52mL)を加えた後、外温を0℃に冷却し、TMSOTf(1.04mL)をゆっくり滴下した。室温まで昇温し、30分攪拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調整法1)、HPLC分析に付して反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。外温を0℃に冷却し、反応液に5%リン酸水素二カリウム水溶液(14.3mL)を滴下し、室温で10分間攪拌した。有機層を除去し、水層に0.5M塩酸水溶液(11.2mL)とIPAc(10.2mL)を加え10分間攪拌した。水層を排出し、有機層を5%塩化ナトリウム水溶液(14.3mL)で洗浄後、水層を排出した。得られた有機層を外温30℃にて減圧濃縮乾固し、化合物b1を含む残渣(1.88g、収率94.1%)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:2.929分、m/z=678.61 [M+Na]+(LCMS分析条件 method 1)
収率:94.1%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐dに溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0499】
実施例52
化合物b2:(2S)-2-[[1-[[(1S)-2-[[(1S)-3-[[(1S)-1-[[(1S,2S)-1-[[(1S)-2-[(2S)-2-[[(1S)-2-[(2-tert-ブトキシ-2-オキソ-エチル)-メチル-アミノ]-2-オキソ-1-(p-トリルメチル)エチル]-エチル-カルバモイル]アゼチジン-1-イル]-1-メチル-2-オキソ-エチル]-メチル-カルバモイル]-2-メチル-ブチル]カルバモイル]-3-メチル-ブチル]-メチル-アミノ]-1-(ジメチルカルバモイル)-3-オキソ-プロピル]-メチル-アミノ]-1-シクロペンチル-2-オキソ-エチル]-メチル-カルバモイル]シクロペンチル]カルバモイル]ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルの合成
【化120】
反応容器に化合物17を含むIPAc溶液(1.50g、55.0wt%)および化合物b1(0.98g、78.3wt%)を秤量し、2-MeTHF(5.44mL)およびMeCN(0.80mL)を加えた。室温で攪拌しながらDIPEA(1.05mL)を加えた後、HATU(988.4mg)を加えた。室温で4時間攪拌後、反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調整法2)、HPLC分析に付して反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式2)。外温を0℃に冷却し、反応液にN-メチルイミダゾール(86μL)、および5%炭酸ナトリウム水溶液(5.6mL)を加え、室温で10分攪拌した。水層を排出し、有機層を2.5%アンモニア水溶液(5.6mL)、5%硫酸水素ナトリウム水溶液(5.6 mL×2)、5%炭酸ナトリウム水溶液(8.2mL×3)で洗浄した。得られた有機層を外温30℃にて減圧濃縮乾固し、化合物b2を含む残渣(1.88g、収率93.8%)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:21.17分、m/z=1403.06 [M+Na]+(LCMS分析条件 method 5)
収率:93.8%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐dに溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0500】
実施例53
化合物b3:2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-[[(2S)-1-ベンジルオキシカルボニルピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]酢酸の合成
【化121】
反応容器に、実施例52で得られた化合物b2を含む残渣(1.44g、90.3wt%)を加えIPAc(6.50mL)を加えた。室温で攪拌しながらHMDS(0.50mL)を加えた後、外温を0℃に冷却し、TMSOTf(0.340mL)をゆっくり滴下した。室温まで昇温し、2時間攪拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調整1)、HPLC分析に付して反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応液に5%リン酸水素二カリウム水溶液(9.10mL)を滴下し、室温で10分間攪拌した。有機層を除去し、水層に0.5M塩酸水溶液(7.41 mL)と2-MeTHF(9.0mL)を加え10分間攪拌した。水層を排出し、有機層を5%塩化ナトリウム水溶液(13.0mL)で洗浄後、水層を排出した。得られた有機層を外温35℃にて減圧濃縮乾固し、化合物b3を含む残渣(3.36g、収率92.7%)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:18.19分、m/z=1325.02 [M+H]+(LCMS分析条件 method 5)
収率:92.7%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐dに溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0501】
実施例54
化合物b4:2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-シクロペンチル-2-[メチル-[1-[[(2S)-ピロリジン-2-カルボニル]アミノ]シクロペンタンカルボニル]アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]酢酸の合成
【化122】
反応容器に、実施例53で得られた化合物b3(1.01g、0.762 mmol)と2-MeTHF (2.02mL)、THF(6.87mL)を室温にて順次加えた。反応容器に、5%Pd/C(0.162g、50%含水品)を加えた後、水素ガスによる脱気置換を3回行い2時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析に付して反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応混合物をろ紙およびメンブレンフィルターを用いて濾過し、残渣を2-MeTHF(5.0mL×2)で洗浄した。得られた濾液を減圧濃縮し、化合物b4を含む残渣(1.43g、収率96.7%)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:2.921分、m/z=1191.00 [M+H]+(LCMS分析条件 method 1)
収率:96.7%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐dに溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0502】
化合物b4の環化反応(実施例55の反応条件検討)
化合物b4を出発原料として用い、化合物b5への環化反応における、縮合剤、および溶媒を検討した。環化反応はHPLC分析により追跡した。
【化123】
【0503】
実施例55-6
化合物b5:(6S,9S,14S,17S,20S,24S,27S,33S)-27-シクロペンチル-7-エチル-20-イソブチル-N,N,4,14,15,21,25,28-オクタメチル-17-[(1S)-1-メチルプロピル]-2,5,8,13,16,19,22,26,29,32-デカオキソ-6-(p-トリルメチル)スピロ[1,4,7,12,15,18,21,25,28,31-デカザトリシクロ[31.3.0.09,12]ヘキサトリアコンタン-30,1'-シクロペンタン]-24-カルボキサミドの合成
反応容器に化合物b4(9.99mg(8.39μmol))を秤量し、溶媒(2-MeTHF、2.0mL(200v/w))を加えた。室温で攪拌しながら、DIPEA(6.74μL(38.6μmol))を加えた。反応容器の外温を25℃に設定し、縮合剤(PyAOP、17.2mg (33.0μmol))を加えて30分攪拌した。反応液(50μL)をMeCN/プロピルアミン(9:1)の混合液(100μL)で希釈し、HPLC分析用の溶液を調製した。
化合物b5のLCMS(ESI):保持時間:16.81分、m/z=1173.51 [M+H]+(LCMS分析条件 method 5)
環状ダイマーb6(c-Dimer)のLCMS(ESI):保持時間:22.36分、m/z=2367.91 [M+Na]+(LCMS分析条件 method 5)
環状トリマーb7(c-Trimer)のLCMS(ESI):保持時間:24.41分、m/z=1759.26 [M+2H]2+(LCMS分析条件 method 5)
【化124】
【0504】
下表に示す、縮合剤、および溶媒を用い、実施例55-6(縮合剤としてPyAOPを使用、溶媒として2-MeTHFを使用)の実験と同様の操作を行い、出発原料(SM,化合物b5)の消費、目的物(TM,化合物b5)の生成、および副生成物(環状ダイマーb6(c-Dimer)、および環状トリマーb7(c-Trimer))の生成量を測定し、好ましい反応条件を検討した。表には出発原料:出発原料のプロピルアミド体(化合物b8):目的物:環状ダイマー:環状トリマーのエリア%比をまとめた。
【表14】
【化125】
【0505】
実施例55-11(実施例55-6の逆滴下法による製造)
バイアルに化合物b4(9.89mg(8.31μmol))と2-MeTHF(0.99mL(100v/w))を加え、50℃で10分間攪拌した。原料の溶解を確認後、DIPEA(6.67μL (38.2μmol))を加え、反応液をシリンジに吸い上げた。別の反応容器にPyAOP(17.1mg(32.8μmol))と2-MeTHF(0.99mL(100v/w))を加え、室温で攪拌しながら前記シリンジ内の溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液(50μL)をMeCN/プロピルアミン(9:1)の混合液(100μL)で希釈し、HPLC分析用の溶液を調製した。
【表15】
【0506】
実施例56
化合物c1:tert-ブチル (3S)-3-[[(2S)-2-[[1-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノアートの合成
【化126】
反応容器に、室温にて化合物23を含む2-MeTHF溶液(16.006g、32.5wt%)を加えて、減圧濃縮した。残渣をMeCN(10.0mL)に溶解させ、減圧濃縮する操作を3回繰り返した。反応容器に、室温にてMeCN(53.9mL)、1-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)シクロペンタン-1-カルボン酸(9.604g)およびDIPEA(12.7mL)を加えて攪拌した。反応容器の外温を55℃に設定し、攪拌しながら反応混合物にHATU(15.257g)を2回に分けて加えて、6時間攪拌した。反応混合物をMeCN/プロピルアミン(9:1)の混合液で希釈し、HPLC分析に付して反応転換率が99.6%以上であることを確認した(反応転換率の算出式2)。反応混合物に、N-メチルイミダゾール(4.3mL)を加えて5分間攪拌し、次いで水道水(27.0mL)を加えて30分間攪拌した後、反応容器の外温を55℃から25℃に降温し、反応混合物を終夜攪拌した。反応混合物をろ紙を用いて吸引濾過し、残渣をMeCN(18.0mL)および水道水(9.0mL)の混合液にて洗浄した。ろ取した結晶を40℃にて3時間真空乾燥し、化合物c1を含む白色の粉末(6.957g)を得た。得られた結晶をMeCNで希釈し、下記の分析条件でLCMS測定した(化合物c1の保持時間;6.914分、m/z=637.30 [M+Na]+)。
LCMS分析条件
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class + ACQUITY QDA
カラム:CAPCELL CORE ADME (OSAKA SODA), 2.1 mm ID×50 mm, 2.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B) 5%(0 min)→100%(10 min)→5%(10.1 min)→5%(12 min)
流速:0.5 mL/min
カラム温度:35 ℃
検出波長:210 nm(PDA)
得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐dに溶解させ、qNMR分析に付した(収率:78.32%)。
【0507】
実施例57
化合物c2:(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタン酸の合成
【化127】
反応容器に、室温にて化合物c1を含む白色の粉末(2.504g、95.9wt%)およびジクロロメタン(12.0mL)を加えた後、HMDS(2.07mL)を加えた。反応容器を氷浴にて冷却し、TMSOTf(1.41mL)を攪拌しながら加えた。反応容器を氷浴から外し、室温にて1時間攪拌した。反応混合物をMeCNで希釈し、HPLC分析に付して反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応容器を氷浴にて冷却し、ジクロロメタン(12.0mL)と5%リン酸水素二カリウム水溶液(24.0mL)を加えて、10分間攪拌し、有機層を排出した。水層に2-MeTHF(72.0mL)を加えた後、有機層を0.5M塩酸水溶液(12.0mL)、5%塩化ナトリウム水溶液(24.0mL)にて洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、化合物c2を含む白色の粉末(1.977g)を得た。得られた白色の粉末をMeCNで希釈し、LCMS分析に付した(method 3化合物c2の保持時間;3.307分、m/z=581.13 [M+Na]+)。得られた白色の粉末と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐dに溶解させ、qNMR分析に付した(収率:81.51%)。
【0508】
実施例58
化合物c3:2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]酢酸 tert-ブチルの合成
【化128】
反応容器に化合物c2(618.1mg、90.0wt%)および化合物17を含む2-MeTHF溶液(1.22g、55.0wt%)を秤量し、2-MeTHF(10.9mL)およびMeCN(1.22mL)を加えた。室温で攪拌しながらDIPEA(0.885mL)を加えた後、HATU(792mg)を加えた。室温で2時間攪拌後、反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調整法2)、HPLC分析に付して反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式2)。外温を0℃に冷却し、反応液にN-メチルイミダゾール(72μL)、および5%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)を加え、室温で10分攪拌した。水層を排出し、有機層を2.5%アンモニア水溶液(10mL)、5%硫酸水素ナトリウム水溶液(10mL×2)、5%炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2)で洗浄した。得られた有機層を外温30℃にて減圧濃縮乾固し、化合物c3を含む残渣1.94g、収率91.2%)を得た。
HPLC:保持時間:4.606分(HPLC分析条件 method 1)
収率:91.2%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐dに溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0509】
実施例59
化合物c4:2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[[1-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)シクロペンタンカルボニル]-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]酢酸の合成
【化129】
反応容器に、実施例58で得られた化合物c3を含む残渣(1.41g、50.2wt%)を加え2-MeTHF(7.0mL)を加えた。室温で攪拌しながらHMDS(579μL)を加えた後、外温を0℃に冷却し、TMSOTf(394μL)をゆっくり滴下した。室温まで昇温し、2時間攪拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調整法1)、HPLC分析に付して反応転換率が99.9%以上であることを確認した(反応転換率の算出式1)。外温を0℃に冷却し、反応液に5%リン酸水素二カリウム水溶液(5.25mL)を滴下し、室温で10分間攪拌した。水層を排出し、有機層を5%リン酸水素二カリウム水溶液(5.25mL)と0.5M塩酸水溶液(3.5mL)で2回洗浄後、5%塩化ナトリウム水溶液(7.0mL)で洗浄し、水層を排出した。得られた有機層を外温30℃にて減圧濃縮乾固し、化合物c4を含む残渣(0.85g、収率95.2%)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:3.974分、m/z=1228.38 [M+H]+(LCMS分析条件 method 1)
収率:95.2%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐dに溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0510】
実施例60
化合物c5:2-[[(2S)-2-[[(2S)-1-[(2S)-2-[[(2S,3S)-2-[[(2S)-2-[[(3S)-3-[[(2S)-2-[(1-アミノシクロペンタンカルボニル)-メチル-アミノ]-2-シクロペンチル-アセチル]-メチル-アミノ]-4-(ジメチルアミノ)-4-オキソ-ブタノイル]-メチル-アミノ]-4-メチル-ペンタノイル]アミノ]-3-メチル-ペンタノイル]-メチル-アミノ]プロパノイル]アゼチジン-2-カルボニル]-エチル-アミノ]-3-(p-トリル)プロパノイル]-メチル-アミノ]酢酸の合成
【化130】
反応容器に、実施例59で得られた化合物c4(462mg、53.5wt%)と2-MeTHF(2.47mL)を室温にて順次加えた。反応容器に、5%Pd/C(74.7mg、50%含水品)を加えた後、水素ガスによる脱気置換を3回行い8時間撹拌した。反応混合物をサンプリングしてサンプル調製し(サンプル調製法1)、HPLC分析に付して反応転換率が99.7%であることを確認した(反応転換率の算出式1)。反応混合物に2-MeTHF(10mL)を加えた後、ろ紙およびメンブレンフィルターを用いて濾過し、残渣を2-MeTHF(5.0mL×2)で洗浄した。得られた濾液を減圧濃縮し、化合物c5を含む溶液(1.16g、収率91.0%)を得た。
LCMS(ESI):保持時間:2.920分、m/z=1093.88 [M+H]+(LCMS分析条件 method 1)
収率:91.0%(得られた残渣と3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸をDMSO‐dに溶解させ、qNMR分析に付した。)
【0511】
化合物c5の環化反応(実施例61の反応条件検討)
化合物c5を出発原料として用い、化合物c6への環化反応における、縮合剤、および溶媒を検討した。環化反応はHPLC分析により追跡した。
【化131】
【0512】
実施例61-1
化合物c6:(3S,6S,9S,13S,16S,25S,28S)-16-シクロペンチル-26-エチル-9-イソブチル-N,N,3,4,10,14,17,23-オクタメチル-6-[(1S)-1-メチルプロピル]-2,5,8,11,15,18,21,24,27-ノナオキソ-25-(p-トリルメチル)スピロ[1,4,7,10,14,17,20,23,26-ノナザビシクロ[26.2.0]トリアコンタン-19,1'-シクロペンタン]-13-カルボキサミドの合成
反応容器に化合物c5(44.19mg、21.8wt%(8.81μmol))を秤量し、濃縮乾固後に溶媒(MeCN、1.9mL(200v/w))を加えた。室温で攪拌しながら、DIPEA(7.19μL(41.2μmol))を加えた。縮合剤(HATU、12.84mg(33.8μmol))を加えて30分攪拌した。反応液(50μL)をMeCN/プロピルアミン(9:1)の混合液(100μL)で希釈し、HPLC分析用の溶液を調製した。
化合物c6のLCMS(ESI):保持時間:17.22分、m/z=1076.38 [M+H]+(LCMS分析条件 method 5)
環状ダイマーc7(c-Dimer)のLCMS(ESI):保持時間:21.85分、m/z=2151.42 [M+H]+(LCMS分析条件 method 5)
環状トリマーc8のLCMS(ESI):保持時間:24.50分、m/z=1614.13 [M+2H]2+(LCMS分析条件 method 5)
【化132】
【0513】
下表に示す、縮合剤、および溶媒を用い、実施例61-1(縮合剤としてPyAOPを使用、溶媒として2-MeTHFを使用)の実験と同様の操作を行い、出発原料(SM、化合物c5)の消費、目的物(TM、化合物c6)の生成、および副生成物(環状ダイマーc7(c-Dimer)、および環状トリマーc8(c-Trimer))の生成量を測定し、好ましい反応条件を検討した。表には出発原料:出発原料のプロピルアミド体(化合物c9):目的物:環状ダイマー:環状トリマーのエリア%比をまとめた。
【表16】
【化133】
【0514】
実施例61-5(実施例61-4の逆滴下法による製造)
バイアルに化合物c5(45.0mg、21.8wt%(8.97μmol))を秤量し、濃縮乾固後に2-MeTHF(0.98mL(100v/w))を加え、50℃で10分間攪拌した。原料の溶解を確認後、DIPEA(7.21μL(41.2μmol))を加え、反応液をシリンジに吸い上げた。別の反応容器にPyAOP(17.8mg(34.1μmol))と2-MeTHF(0.98mL(100v/w))を加え、室温で攪拌しながら前記シリンジ内の溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液(50μL)をMeCN/プロピルアミン(9:1)の混合液(100μL)で希釈し、HPLC分析用の溶液を調製した。
【表17】
【産業上の利用可能性】
【0515】
本発明により、医薬品として有用な環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を製造する方法、および該環状ペプチド化合物、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の製造に用いられるペプチド化合物を製造する方法が提供される。
【要約】
水と混和しない溶媒、水溶性アルキルニトリル類、および水溶性エーテル類からなる群より選択される1つまたは複数を含む溶媒中で、ペプチド化合物のN末端のアミノ酸残基をC末端のアミノ酸残基と連結させることで、環状ペプチド化合物を効率的に製造できることを見出した。
図1
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